(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136869
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電子ミラー、およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20240927BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20240927BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20240927BHJP
G02F 1/1347 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
G02F1/1335 510
G02F1/133 580
B60R1/04 D
G02F1/1347
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048162
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘章
(72)【発明者】
【氏名】三谷 尚寛
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 徹也
【テーマコード(参考)】
2H189
2H193
2H291
【Fターム(参考)】
2H189AA22
2H189AA35
2H189JA05
2H189MA01
2H189NA05
2H193ZH07
2H193ZH15
2H193ZH17
2H193ZH37
2H193ZH53
2H193ZR20
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA25X
2H291FA25Z
2H291FA40X
2H291FA40Z
2H291FA46X
2H291FA46Z
2H291FA95X
2H291FA95Z
2H291FA99X
2H291FA99Z
2H291FB13
2H291GA23
2H291LA21
2H291MA06
(57)【要約】
【課題】防眩機能を提供する電子ミラーにおいて、ユーザの視認性の低下を抑制するための構成を提供する。
【解決手段】電子ミラーは、第1の偏光板と、前記第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層と、前記液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、前記液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板と、前記反射型偏光板の背面側に配置される第2の偏光板と、前記第2の偏光板の背面側に配置される液晶セルと、前記液晶セルの背面側に配置されるバックライトと、を有し、前記第2の偏光板の曇り度は、3.0%~8.0%の範囲内にて構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光板と、
前記第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層と、
前記液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、前記液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板と、
前記反射型偏光板の背面側に配置される第2の偏光板と、
前記第2の偏光板の背面側に配置される液晶セルと、
前記液晶セルの背面側に配置されるバックライトと、
を有し、
前記第2の偏光板の曇り度は、3.0%~8.0%の範囲内にて構成される、
電子ミラー。
【請求項2】
前記第2の偏光板は、アンチグレア処理が適用されている、請求項1に記載の電子ミラー。
【請求項3】
前記反射型偏光板と前記第2の偏光板との間にはエアギャップが形成される、請求項1に記載の電子ミラー。
【請求項4】
第1の偏光板と、
前記第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層と、
前記液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、前記液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板と、
前記反射型偏光板の背面側に配置される第2の偏光板と、
前記第2の偏光板の背面側に配置される液晶セルと、
前記液晶セルの背面側に配置されるバックライトと、
を有し、
前記反射型偏光板と前記第2の偏光板は、接着部材にて接着される、
電子ミラー。
【請求項5】
前記接着部材は、アクリル系粘着剤またはシリコン系粘着剤である、請求項4に記載の電子ミラー。
【請求項6】
前記接着部材は、光を拡散させるための拡散材料を含む、請求項4に記載の電子ミラー。
【請求項7】
前記拡散材料は、ケイ素系粒子である、請求項6に記載の電子ミラー。
【請求項8】
前記第2の偏光板と前記液晶セルとの間にはエアギャップが存在する、請求項4に記載の電子ミラー。
【請求項9】
第1の偏光板と、
前記第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層と、
前記液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、前記液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板と、
前記反射型偏光板の背面側に配置される液晶セルと、
前記液晶セルの背面側に配置されるバックライトと、
を有する電子ミラー。
【請求項10】
前記反射型偏光板と前記液晶セルとの間にはエアギャップが存在する、請求項9に記載の電子ミラー。
【請求項11】
防眩機能を切り替え可能に構成される電子ミラーであって、
光の反射率が制御される表示構造と、
前記表示構造の前面側からの第1の照度と、前記表示構造の背面側からの第2の照度とを取得する照度センサと、
前記第1の照度および前記第2の照度に基づいて、前記表示構造が備える液晶層に対する印加電圧を調整することにより、前記防眩機能を制御する制御回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記防眩機能の動作時において、前記表示構造の反射率が所定の範囲になるように前記印加電圧を調整する、電子ミラー。
【請求項12】
前記制御回路は、前記第2の照度が第1の閾値より大きい場合、前記防眩機能を停止し、前記表示構造の反射率が最大値になるように前記液晶層に対する印加電圧を調整する、請求項11に記載の電子ミラー。
【請求項13】
前記制御回路は、前記第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、前記第1の照度が第2の閾値より大きい場合、前記表示構造の反射率が前記所定の範囲になるように前記液晶層に対する印加電圧を調整する、請求項11に記載の電子ミラー。
【請求項14】
前記表示構造は、前記液晶層の背面側に位置する反射型偏光板と、当該反射型偏光板の背面側に位置する偏光板を含んで構成され、
前記所定の範囲は、前記前面側から入射した光に対する、前記偏光板の拡散反射成分が、最大値に対して70%以下となるように規定される、請求項13に記載の電子ミラー。
【請求項15】
前記所定の範囲は、前記表示構造のSCI(Specular Component Include)が17~20%の範囲となるように規定される、請求項13に記載の電子ミラー。
【請求項16】
前記制御回路は、前記第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、前記第1の照度が第2の閾値以下である場合、前記第2の照度の増加に伴って前記表示構造の反射率が減少するように印加電圧を調整する、請求項11に記載の電子ミラー。
【請求項17】
前記電子ミラーの周辺温度を取得する温度センサを有し、
前記制御回路は、前記周辺温度に基づいて、前記液晶層に対する印加電圧を補正する、請求項11に記載の電子ミラー。
【請求項18】
前記制御回路は、前記第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、前記第1の照度が第2の閾値より大きい場合、前記電子ミラーが備えるバックライトの黒画レベルが最大となるように調整する、請求項11に記載の電子ミラー。
【請求項19】
前記制御回路は、前記第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、前記第1の照度が第2の閾値以下である場合、前記電子ミラーが備えるバックライトの黒画レベルを前記第1の照度に応じて調整する、請求項11に記載の電子ミラー。
【請求項20】
防眩機能を切り替え可能に構成される電子ミラーの制御方法であって、
前記電子ミラーの表示構造の前面側からの第1の照度と、前記表示構造の背面側からの第2の照度とを取得する取得工程と、
前記第1の照度および前記第2の照度に基づいて、前記電子ミラーの表示構造が備える液晶層に対する印加電圧を調整して、前記表示構造の光の反射率を制御することにより、前記防眩機能を制御する制御工程と、
を有し、
前記防眩機能の動作時において、前記表示構造の反射率が所定の範囲になるように前記印加電圧が調整される、電子ミラーの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子ミラー、およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転中などに、周辺車両などからの照射光が車載ミラーにて反射されることで、運転者の車両の操作性を低下させるような事象が生じ得る。従来、このような事象に対応して、車載の電子ミラーでは防眩機能を備えるものがある。
【0003】
例えば、特許文献1では、防眩・被防眩を切り替え可能な液晶防眩ミラーにおいて、透過損失が少なく、明るい画面を提供可能とする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防眩機能を提供する電子ミラーでは、一定の状況下では、ユーザの視認性の低下が生じ得る。
【0006】
本開示は、上記のような課題を鑑み、防眩機能を提供する電子ミラーにおいて、ユーザの視認性の低下を抑制するための構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、第1の偏光板と、前記第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層と、前記液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、前記液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板と、前記反射型偏光板の背面側に配置される第2の偏光板と、前記第2の偏光板の背面側に配置される液晶セルと、前記液晶セルの背面側に配置されるバックライトと、を有し、前記第2の偏光板の曇り度は、3.0%~8.0%の範囲内にて構成される、電子ミラーを提供する。
【0008】
また、本開示は、第1の偏光板と、前記第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層と、前記液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、前記液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板と、前記反射型偏光板の背面側に配置される第2の偏光板と、前記第2の偏光板の背面側に配置される液晶セルと、前記液晶セルの背面側に配置されるバックライトと、を有し、前記反射型偏光板と前記第2の偏光板は、接着部材にて接着される、電子ミラーを提供する。
【0009】
また、本開示は、第1の偏光板と、前記第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層と、前記液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、前記液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板と、前記反射型偏光板の背面側に配置される液晶セルと、前記液晶セルの背面側に配置されるバックライトと、を有する電子ミラーを提供する。
【0010】
また、本開示は、防眩機能を切り替え可能に構成される電子ミラーであって、光の反射率が制御される表示構造と、前記表示構造の前面側からの第1の照度と、前記表示構造の背面側からの第2の照度とを取得する照度センサと、前記第1の照度および前記第2の照度に基づいて、前記表示構造が備える液晶層に対する印加電圧を調整することにより、前記防眩機能を制御する制御回路と、を有し、前記制御回路は、前記防眩機能の動作時において、前記表示構造の反射率が所定の範囲になるように前記印加電圧を調整する、電子ミラーを提供する。
【0011】
また、本開示は、防眩機能を切り替え可能に構成される電子ミラーの制御方法であって、前記電子ミラーの表示構造の前面側からの第1の照度と、前記表示構造の背面側からの第2の照度とを取得する取得工程と、前記第1の照度および前記第2の照度に基づいて、前記電子ミラーの表示構造が備える液晶層に対する印加電圧を調整して、前記表示構造の光の反射率を制御することにより、前記防眩機能を制御する制御工程と、を有し、前記防眩機能の動作時において、前記表示構造の反射率が所定の範囲になるように前記印加電圧が調整される、電子ミラーの制御方法を提供する。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システム、記憶媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、防眩機能を提供する電子ミラーにおいて、ユーザの視認性の低下を抑制するための構成を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電子ミラーの機能構成の例を示すブロック図
【
図2】電子ミラーにおける白ボケを説明するための概略図
【
図3】本発明の実施の形態1に係る電子ミラーの層構造を説明するための概略図
【
図4】電子ミラーでの二重反射、虹、および白ボケを説明するための概念図
【
図5】本発明の実施の形態1に係る評価例を示す表図
【
図6】本発明の実施の形態2に係る電子ミラーの層構造を説明するための概略図
【
図7】本発明の実施の形態3に係る電子ミラーの層構造を説明するための概略図
【
図8】本発明の実施の形態4に係る電子ミラーの層構造を説明するための概略図
【
図9】本発明の実施の形態4に係る液晶層への印加電圧と、反射光との関係を説明するためのグラフ図
【
図10】本発明の実施の形態5に係る電子ミラーの制御方法のフローチャート
【
図11】本発明の実施の形態5に係る制御を説明するためのグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本開示に係る電子ミラー、および電子ミラーの制御方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、あるいは、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されない。
【0016】
(発明者の知見)
例えば、電子ミラーは、通常の鏡として機能するモード(以下、「ミラーモード」とも称する)と、液晶ディスプレイにより任意の画像を表示させるモード(以下、「ディスプレイモード」とも称する)を切り替え可能に構成される。また、ミラーモードにおいて、上述したような防眩機能を実現することが知られている。ミラーモードで動作させている際には、通常、電子ミラーが備える液晶ディスプレイは動作を停止している。したがって、その構造に由来して、液晶ディスプレイの表面による反射光が増加する傾向がある。そして、このような反射光が増加することに伴い、電子ミラーにおける光路上の部材の反射特性によって、液晶電子ミラーからの反射光が散乱し、輪郭がぼやけた光(以下、「白ボケ」とも称する)が現れることがある。また、液晶電子ミラーの層構造に起因して、意図しない反射光が生じ、表示構造の表面に二重反射や虹などが発生しうる。このような現象は、運転者の視認性を低下させ、その結果として、車両の操作性の低下につながる可能性がある。
【0017】
<実施の形態1>
本実施の形態に係る液晶電子ミラー(以下、単に「電子ミラー」とも称する)の構成例について説明する。電子ミラーは、例えば、車載のインナーミラーであってもよいし、アウターミラーであってもよい。また、電子ミラーが搭載される移動体の種類についても特に限定するものではなく、普通乗用車などの四輪車であってもよいし、バイクなどの2輪車であってもよい。
【0018】
[機能構成]
図1は、本実施の形態に係る電子ミラー1の装置構成の例を示す図である。電子ミラー1は、表示構造10、温度センサ11、照度センサ12、制御回路13、記憶装置14、および外部IF15を含んで構成される。なお、電子ミラー1の構成は一例であり、
図1に示す部位の一部が車両(不図示)側に設けられ、車両に搭載された際に、当該車両側の部位と連携することで後述する機能が実現されてもよい。
【0019】
表示構造10は、後述する層構造を有し、ミラーモードおよびディスプレイモードそれぞれにて切り替えて機能する。温度センサ11は、電子ミラー1の周辺温度を温度情報として検出する。照度センサ12は、電子ミラー1が受光する光の照度を照度情報として検出する。
【0020】
制御回路13は、記憶装置14に記憶された各種プログラムやデータを読み出して実行することで、電子ミラー1、特に表示構造10の動作を制御する。記憶装置14は、例えば、Random Access Memory(以下、「RAM」と称する)やRead Only Memory(以下、「ROM」と称する)などの揮発性/不揮発性の記憶装置により構成され、電子ミラー1の動作の実行に必要な各種プログラムやデータを記憶する。RAMは、例えば電子ミラー1の動作時に使用されるワークメモリである。ROMは、例えば電子ミラー1を制御するためのプログラム及びデータを予め記憶して保持する。
【0021】
外部IF15は、外部装置(不図示)とデータの送受信を行うためのインタフェースであり、例えば、電子ミラー1が搭載される車両の制御装置とController Area Network(以下、「CAN」と称する)などを介して通信可能に接続される。また、外部IF15は、電子ミラー1に対する電源を供給するためのインタフェースとして動作してもよい。
【0022】
[白ボケ]
以下、本実施の形態に係る「白ボケ」について、
図2を用いて説明する。白ボケは、例えば、電子ミラー1に対して他車両から光が照射された際に、電子ミラー1の構造などに起因して、その光の輪郭やその周辺がぼやけたように表示構造10にて現れる現象である。このような白ボケは、電子ミラー1を利用する車両の運転者の視認性を低下させる要因となり得る。
【0023】
図2(a)は、電子ミラー1の外観構成例を示す図である。ここでは、電子ミラー1はミラーモードであり、通常の鏡として動作しているものとする。
図2(a)において、表示構造10は暗い状態を示している。
図2(b)は、表示構造10の中心に対して光が照射されているが、光の中心201にボケが生じ、その周辺領域202もぼやけた状態となっている。周辺領域203は、暗い状態の領域である。つまり、白ボケが生じている状態である。
図2(c)は、
図2(b)と同様に光が照射されているが、光の中心211は、
図2(b)よりも鮮明に表れている。中心211の周辺領域212にはボケが生じている。また、周辺領域213は、暗い状態の領域である。つまり、
図2(c)の状態は、
図2(b)の状態よりも白ボケの程度が抑制されている状態の例である。
【0024】
[表示構造の層構造]
図3は、本実施の形態に係る表示構造10の層構造を説明するための概略図である。
図3において、上側(ガラス層311側)が電子ミラー1の前面側に対応し、下側(バックライト334側)が電子ミラー1の背面側に対応する。ここでの前面側とは、例えば、電子ミラー1を利用する運転者が位置する側である。
【0025】
本実施の形態に係る電子ミラー1は、前面構造310とディスプレイ330とから構成され、前面構造310とディスプレイ330との間には、エアギャップ320が位置する。
【0026】
前面構造310において、前面側から順に、ガラス層311、接着層312、保護層313、接着層314、偏光板315、液晶層316、反射型偏光板317が積層されて構成される。本実施の形態では、偏光板315、液晶層316、および反射型偏光板317を含む構造を、反射率制御機構と呼ぶことがある。接着層312、および接着層314は、例えば、Optical Clear Adhesive(以下、「OCA」と称する)にて構成される。ガラス層311と接着層312は、例えば、接着層312の端部領域312aにて蒸着により付着される。保護層313は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephthalate;以下、「PET」と称する)にて構成される。
【0027】
液晶層316は、公知のNT(Twisted Nematic)液晶にて構成される。液晶層316は、印加する電圧が切り替えられることで、液晶分子の方向を切り替えるように構成される。液晶分子の方向を切り替えることで、偏光板315、および反射型偏光板317の偏光方向に応じて、光の透過/遮断が制御される。NT液晶の場合には、電圧を印加していない状態では光の旋光性を発現させることでNT液晶の周辺に位置する偏光板を透過させ、電圧を印加した状態では光は偏光板により遮断される。TN液晶の構成およびその特性は公知であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0028】
液晶層316の周辺に位置する偏光板315および反射型偏光板317は、それぞれの偏光軸が直交するように設けられ、当該偏光軸に対応した偏光成分を透過させる。また、反射型偏光板317において、偏光軸に直交する光は高い反射率にて反射され、平行軸に平行な成分は低い反射率にて反射される。つまり、平行軸に平行な成分は反射型偏光板317を透過するように構成される。言い換えると、反射率制御機構を構成する液晶層316への印加電圧によって、反射型偏光板317による光の反射が調整されることで、反射率制御機構による反射率の調整が行われる。
【0029】
また、ディスプレイ330において、前面側から順に、上偏光板331、液晶セル332、下偏光板333、バックライト334が積層されて構成される。上偏光板331および下偏光板333は、所定の方向に沿って偏光軸が設けられ、当該偏光軸により光の成分を透過させる。なお、上偏光板331および下偏光板333における上下は、液晶セル332に対する相対的な位置関係を示しているに過ぎず、限定的に解釈されることを意図するものではない。液晶セル332には、R(赤)、G(緑)、B(青)それぞれに対応したセル332a、セル332b、およびセル332cが所定の規則に従って配置される。バックライト334は、光源として機能し、例えば、Light Emitting Diode(以下、「LED」と称する)などを含んで構成される。
【0030】
[反射原理]
ここで、表示構造の層構造に起因する反射の発生原理について
図4を用いて説明する。
図4(a)は、
図3に示したような表示構造のディスプレイにおける液晶セル付近の拡大図である。ディスプレイ400において、上偏光板401と液晶セル402を示している。また、液晶セル402には、RGBに対応したセル402a、セル402b、およびセル402cが所定の規則に従って配置されている。このとき、上偏光板401は、ハードコート(HC)やアンチリフレクション(AR)の表面処理が行われ、拡散反射の低減がなされているものとする。
【0031】
図3を用いて説明したように、液晶層316への電圧印加に応じて、反射率制御機構における光の透過率が制御される。このとき、反射型偏光板317で光を反射するように、すなわち、反射型偏光板317での反射率を高反射とするように反射率制御機構が制御された場合、ディスプレイ330へ光が到達する程度は小さくなる。一方、反射型偏光板317で光を透過させるように、すなわち、反射型偏光板317での反射率を低反射とするように反射率制御機構が制御された場合、ディスプレイ330へ光が到達する程度は大きくなる。
【0032】
このような構成において、前面構造310の反射型偏光板317での反射光と、ディスプレイ330の上偏光板401の上面による反射光404とによる二重反射が、表示構造10の表面に現れる場合がある。この二重反射が生じる程度は、液晶層316への印加電圧、すなわち、防眩の程度によって異なる。また、液晶セル402を構成する各セルにより入射光に対して回折格子のような事象が生じ、虹のような反射光403として、表示構造10の表面に現れる場合がある。便宜上、上記のような表示構造の表面に現れる事象をそれぞれ、「二重反射」、「虹」と称して説明する。
【0033】
図4(b)も、
図3に示したような表示構造のディスプレイにおける液晶セル付近の拡大図である。ディスプレイ410において、上偏光板411と液晶セル412を示している。また、液晶セル412には、RGBに対応したセル412a、セル412bおよびセル412cが所定の規則に従って配置されている。このとき、上偏光板411は、アンチグレア(AG)の処理が行われ、拡散反射の低減がなされているものとする。この構成では、上偏光板411は、フィラー411aが含んで構成される。フィラー411aにより、入射光413に対し、
図4(a)の構成では生じ得る虹のような反射光は抑制される。また、フィラー411aが上偏光板411の表面に現れることで、入射光414に対する反射が抑制され、二重反射の発生が抑制される。拡散反射の程度は、フィラー411aの粒子のサイズに影響される。一方、フィラー411aに起因して拡散反射が生じることで、
図2を用いて説明したような白ボケが生じる程度が上昇してしまうという側面がある。
【0034】
[評価]
上記を踏まえ、本発明の発明者は、
図4(b)の構造において、上偏光板の曇り度(Haze)を調整することで、二重反射、虹、白ボケのいずれの発生も抑制可能とすることを特定した。以下、その検証結果としての評価例について、
図5を用いて示す。なお、曇り度(Haze)の測定方法は公知のものを用い、ここでの詳細な説明は省略する。曇り度は、拡散透過光の全光線透過光に対する割合により算出される。また、ここでの評価例では、上偏光板の曇り度のみを切り替え、それ以外の構成は同一であるものとする。
【0035】
まず、本実施の形態では、二重反射および虹の発生を抑制するために、上偏光板に対してアンチグレア(AG)処理を適用している。そのうえで、上偏光板の曇り度を調整することで、白ボケの発生も抑制する。
【0036】
図5に示す評価例では、5つの構成例1~構成例5とし、それぞれ曇り度を変化させている。それらの構成において、人の視認により、二重反射、虹、白ボケの発生に対する官能評価を行っている。官能評価では、5段階(1~5)にて評価を行い、「5」が最も評価が高く、「1」が最も評価が低いものとする。
図4を用いて示したように、アンチグレア(AG)の処理が行われているため、構成1~構成5のいずれでも、二重反射および虹の発生は抑制できていると評価されている。一方、構成3~構成5における曇り度では、白ボケが発生し、その結果、評価値が低いものとなっている。
【0037】
これに対し、構成1、構成2における曇り度では、白ボケの発生を抑制でき、その結果、評価値が高いものとなっている。
図5に示す構成では、少なくとも上偏光板の曇り度が5.7~7.9[%]の範囲である場合に、白ボケの発生を抑制でき、表示品質の高い表示構造を実現することができている。本発明の発明者の更なる検証では、曇り度が3.0~8.0[%]の範囲にて、白ボケの発生を抑制できていることが確認できており、この範囲にて電子ミラーの上偏光板の曇り度を設計することが好ましい。
【0038】
以上、本実施の形態により、電子ミラー(例えば、電子ミラー1)は第1の偏光板(例えば、偏光板315)と、第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層(例えば、液晶層316)と、液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板(例えば、反射型偏光板317)と、反射型偏光板の背面側に配置される第2の偏光板(例えば、上偏光板331)と、第2の偏光板の背面側に配置される液晶セル(例えば、液晶セル332)と、液晶セルの背面側に配置されるバックライト(例えば、バックライト334)と、を有し、第2の偏光板の曇り度は、3.0%~8.0%の範囲内にて構成される。
【0039】
これにより、電子ミラーの表示構造の表面における白ボケの発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0040】
また、第2の偏光板は、アンチグレア処理が適用されている。
【0041】
これにより、電子ミラーの表示構造の表面における二重反射や虹の発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0042】
また、反射型偏光板と第2の偏光板との間にはエアギャップが形成される。
【0043】
これにより、電子ミラーを構成する際のコスト、例えば、接着コストや、製造工程を抑制することができ、低コストにて電子ミラーを製造することが可能となる。
【0044】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については、説明を省略し、差分に着目して説明を行う。
【0045】
実施の形態1の
図3に示した電子ミラー1の構成例においては、前面構造310とディスプレイ330の間にエアギャップ320が存在する構成を示した。本発明の発明者は、エアギャップ320が二重反射の出現に影響を及ぼしていることを特定している。そこで、本実施の形態では、二重反射の出現の程度を更に抑制することを目的として、エアギャップに代えた構成について説明する。
【0046】
[表示構造の層構造]
図6は、本実施の形態に係る表示構造10の層構造を説明するための概略図である。
図6において、上側(ガラス層611側)が電子ミラー1の前面側に対応し、下側(バックライト634側)が電子ミラー1の背面側に対応する。
【0047】
本実施の形態に係る電子ミラー1は、
図3に示した実施の形態1の構成と同様、前面構造610と、ディスプレイ630とから構成され、これらの各構成要素も同様である。
図3との差分として、前面構造610とディスプレイ630との間には、エアギャップ320に代えて、接着層620が設けられる。
【0048】
接着層620は、前面構造610とディスプレイ630を所定の接着部材にて接着するように構成される。ここでの接着部材としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤などが利用可能である。また、接着部材には、
図4(b)のフィラー411aに相当するような拡散機能を有する材料を含めてよい。このような拡散材料としては、シリカ粒子、すなわち、ケイ素系粒子などが用いられてよい。なお、拡散成分が無い構成の場合として、接着層620には、OCAやOptical Clear Resin(以下、「OCR」と称する)が用いられてよい。
【0049】
実施の形態1にて示したような、二重反射や虹の発生を抑制することを目的として、接着層620を構成する接着部材の成分と、上偏光板631の構成との組み合わせを以下のように設計してよい。
【0050】
(組み合わせ1)
接着層620を構成する接着剤:拡散成分無し
上偏光板631:ハードコート(HC)
これにより、二重反射の発生を抑制することが可能となる。
【0051】
(組み合わせ2)
接着層620を構成する接着剤:拡散成分無し
上偏光板631:アンチグレア(AG)
これにより、二重反射と虹の発生を抑制することが可能となる。
【0052】
(組み合わせ3)
接着層620を構成する接着剤:拡散成分有り
上偏光板631:ハードコート(HC)またはアンチグレア(AG)
これにより、二重反射と虹の発生を抑制することが可能となる。
【0053】
以上、本実施の形態により、電子ミラー(例えば、電子ミラー1)は、第1の偏光板(例えば、偏光板615)と、第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層(例えば、液晶層616)と、液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板(例えば、反射型偏光板617)と、反射型偏光板の背面側に配置される第2の偏光板(例えば、上偏光板631)と、第2の偏光板の背面側に配置される液晶セル(例えば、液晶セル632)と、液晶セルの背面側に配置されるバックライト(例えば、バックライト634)と、を有し、反射型偏光板と第2の偏光板は、接着部材(例えば、接着層620)にて接着される。
【0054】
これにより、電子ミラーの表示構造における二重反射や虹の発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0055】
また、接着部材は、アクリル系粘着剤またはシリコン系粘着剤である。また、接着部材は、光を拡散させるための拡散材料を含む。また、拡散材料は、ケイ素系粒子である。
【0056】
これにより、任意の接着部材を用いて反射型偏光板と上偏光板を接着させることで、電子ミラーの表示構造における二重反射や虹の発生を抑制することが可能となる。
【0057】
<実施の形態3>
本発明の実施の形態3について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については、説明を省略し、差分に着目して説明を行う。
【0058】
実施の形態1の
図3に示した電子ミラー1の構成例においては、前面構造310とディスプレイ330の間にエアギャップ320が存在する構成を示した。また、実施の形態2では、二重反射の出現に影響を及ぼしているエアギャップを無くす構成について説明した。一方、本実施の形態では、二重反射の出現の程度を更に抑制することを目的として、エアギャップの位置を変更した構成について説明する。
【0059】
[表示構造の層構造]
図7は、本実施の形態に係る表示構造10の層構造を説明するための概略図である。
図7において、上側(ガラス層711側)が電子ミラー1の前面側に対応し、下側(バックライト733側)が電子ミラー1の背面側に対応する。
【0060】
本実施の形態に係る電子ミラー1は、
図3に示した実施の形態1の構成と同様、前面構造710と、ディスプレイ730とから構成され、これらの各構成要素も同様である。また、前面構造710とディスプレイ730との間には、エアギャップ720が存在する。
【0061】
図3に示した実施の形態1との差分として、ディスプレイに設けられていた上偏光板を前面構造に移動させている。そのため、前面構造710は、前面側から順に、ガラス層711、接着層712、保護層713、接着層714、偏光板715、液晶層716、反射型偏光板717、接着層718、上偏光板719が積層されて構成される。実施の形態1と同様、反射率制御機構として、偏光板715、液晶層716、および反射型偏光板717を含んで構成される。接着層712、接着層714、および接着層718は、例えば、OCAにて構成される。ガラス層711と接着層712は、例えば、接着層712の端部領域712aにて蒸着により付着される。保護層713は、例えば、PETにて構成される。上偏光板719は、例えば、ハードコート(HC)にて構成される。
【0062】
また、ディスプレイ730は、前面側から順に、液晶セル731、下偏光板732、バックライト733が積層して構成される。
【0063】
上記のような構成により、
図4(a)にて示したような上偏光板に起因する反射光が抑制されるため、その結果、二重反射の発生を抑制することが可能となる。
【0064】
以上、本実施の形態により、電子ミラー(例えば、電子ミラー1)は、第1の偏光板(例えば、偏光板715)と、第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層(例えば、液晶層716)と、液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板(例えば、反射型偏光板717)と、反射型偏光板の背面側に配置される第2の偏光板(例えば、上偏光板719)と、第2の偏光板の背面側に配置される液晶セル(例えば、液晶セル731)と、液晶セルの背面側に配置されるバックライト(例えば、バックライト733)と、を有し、反射型偏光板と第2の偏光板は、接着部材(例えば、接着層718)にて接着される。更に、第2の偏光板と液晶セルとの間にはエアギャップ(例えば、エアギャップ720)が存在する。
【0065】
これにより、電子ミラーの表示構造における二重反射や虹の発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0066】
<実施の形態4>
本発明の実施の形態4について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については、説明を省略し、差分に着目して説明を行う。
【0067】
図4等を用いて説明したように、二重反射は、前面構造310の反射型偏光板317による反射光と、ディスプレイ330の上偏光板331による反射光とにより生じる。そこで、本実施の形態では、二重反射の出現を抑制することを目的として、これらの構成要素を統合して、1つの構成要素にて対応する構成について説明する。
【0068】
[表示構造の層構造]
図8は、本実施の形態に係る表示構造10の層構造を説明するための概略図である。
図8において、上側(ガラス層811側)が電子ミラー1の前面側に対応し、下側(バックライト833側)が電子ミラー1の背面側に対応する。
【0069】
本実施の形態に係る電子ミラー1は、
図3に示した実施の形態1の構成と同様、前面構造810と、ディスプレイ830とから構成され、これらの各構成要素も同様である。また、前面構造810とディスプレイ830との間には、エアギャップ820が存在する。
【0070】
図3に示した実施の形態1との差分として、ディスプレイに設けられていた上偏光板を除去している。そのため、ディスプレイ830は、前面側から順に、液晶セル831、下偏光板832、バックライト833が積層して構成される。つまり、実施の形態1にて示された前面構造310の反射型偏光板317と、ディスプレイ330の上偏光板331の機能を、本実施の形態では、前面構造810の反射型偏光板817にて実現させる。
【0071】
本実施の形態により、
図4(a)にて示したような上偏光板に起因する反射光が抑制されるため、その結果、二重反射の発生を抑制することが可能となる。
【0072】
以上、本実施の形態により、電子ミラー(例えば、電子ミラー1)は、第1の偏光板(例えば、偏光板815)と、第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層(例えば、液晶層816)と、液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板(例えば、反射型偏光板817)と、反射型偏光板の背面側に配置される液晶セル(例えば、液晶セル831)と、液晶セルの背面側に配置されるバックライト(例えば、バックライト833)と、を有する。
【0073】
これにより、電子ミラーの表示構造における二重反射の発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0074】
また、反射型偏光板と液晶セルとの間にはエアギャップが存在する。
【0075】
これにより、電子ミラーを構成する際のコスト、例えば、接着コストや、製造工程を抑制することができ、低コストにて電子ミラーを製造することが可能となる。
【0076】
<実施の形態5>
本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態では、上述したような構成の電子ミラーに対する制御について説明する。本実施の形態にて説明する制御方法は、上記の各実施の形態にて示した電子ミラーのいずれの構成にも適用可能である。
【0077】
図9は、液晶層への印加電圧と、反射光との関係を説明するためのグラフ図である。
図9において、横軸は液晶層への印加電圧[V]を示し、縦軸はSCI(Specular Component Include:正反射光含む)[%]を示す。ここでは、
図3に示した実施の形態1の構成の電子ミラー1を用いた例を示す。また、上偏光板331は、二重反射や虹を考慮し、アンチグレア(AG)にて構成されているものとする。
【0078】
実線901は、印加電圧を変化させた際の電子ミラー1、すなわち、表示構造10のSCIの変化を示す。また、破線902は、印加電圧を変化させた際の上偏光板331の拡散反射成分の変化を示す。実線901に示すように、印加電圧を上昇させると、反射型偏光板317での反射率が低下するため、電子ミラー1のSCIは低下する傾向がある。また、破線902に示すように、印加電圧を上昇させると、透過率が上昇するため、前面構造310を透過した光の、上偏光板331の拡散反射成分が上昇する傾向がある。
【0079】
電子ミラー1が提供する防眩機能において、一例として、表示構造10のSCIの値が最小となる電圧範囲で液晶層316を制御することが考えられる。表示構造10のSCIの値が最小となる、液晶層316を制御する電圧範囲は、例えば表示構造10のSCIが13%となる電圧範囲である。一方、SCIが最小となる電圧範囲で液晶層316を制御すると、破線902に示すように、上偏光板331の拡散反射成分が増加する。上偏光板331の拡散反射成分の増加は、電子ミラー1における白ボケの増大につながる。
図3に示す電子ミラー1の構成において、SCIの値が17~20%程度の範囲になるような電圧範囲で液晶層316を制御すると、SCIの値を最大値と比較して低下させつつ、上偏光板331の拡散反射成分を最大値に対して70%以下程度まで低減でき、それによって、白ボケを低減できることが、本発明の発明者による検証により特定された。そこで、本実施の形態では、
図9に示すような印加電圧と反射光の関係に基づいて印加電圧を調整して、防眩時における反射率制御機構の反射率、すなわち、透過率を制御することで、白ボケを低減する。
【0080】
なお、印加電圧とSCIの関係は、電子ミラー1の層構造に含まれる部位、例えば、反射型偏光板等の構成に応じて変動し得る。そのため、電子ミラー1の構成に応じて、印加電圧は調整される。また、印加電圧とSCIの関係は、電子ミラー1の周辺環境に応じても変動し得る。周辺環境としては、例えば、電子ミラー1の環境温度や環境湿度が挙げられる。ここでは、環境温度を例に挙げて説明する。
【0081】
[処理フロー]
図10は、本実施の形態に係る電子ミラー1の制御処理のフローチャートである。本処理フローは、例えば、制御回路13が記憶装置14に備えられたプログラムや各種データを読み出して実行することにより実現されてよい。ここでは、説明を簡潔にするために、処理主体を制御回路13としてまとめて記載する。
【0082】
制御回路13は、車両(不図示)側から電子ミラー1の起動信号を受け付ける(ステップS1001)。起動信号は、例えば、電子ミラー1に対する電力供給の開始のほか、電子ミラー1が搭載された車両(不図示)が走行可能な状態(例えば、イグニッションONの状態)となった通知信号であってよい。
【0083】
制御回路13は、ミラーモードをONにする設定を受け付けたか否かを判定する(ステップS1002)。ミラーモードは、車両の運転者が任意に設定可能であってもよいし、車両側で自動的に設定可能であってもよい。本実施の形態に係る電子ミラー1は、ミラーモードおよびディスプレイモードに切り替え可能に構成される。ミラーモードをONにする設定を受け付けた場合(ステップS1002:YES)、制御回路13の処理は、ステップS1005へ進む。一方、ミラーモードをOFF、すなわち、ディスプレイモードをONにする設定を受け付けた場合(ステップS1002:NO)、制御回路13の処理は、ステップS1003へ進む。
【0084】
制御回路13は、ディスプレイモードに設定する(ステップS1003)。そして、制御回路13の処理は、ステップS1004へ進む。
【0085】
制御回路13は、ディスプレイモードにて、所定の映像出力制御を行う(ステップS1004)。表示される映像としては、例えば、車両のリア部分に設けられた不図示のカメラにて撮影された車両後方の周辺の映像であってよい。そして、制御回路13の処理は、ステップS1021へ進む。
【0086】
制御回路13は、ミラーモードに設定する(ステップS1005)。そして、制御回路13の処理は、ステップS1006へ進む。
【0087】
制御回路13は、照度センサ12を介して電子ミラー1が受光している光の照度を示す照度情報を取得する(ステップS1006)。ここでの照度情報は、車両の前方側(すなわち、電子ミラー1の背面側)から車両に向けて照射されている光の照度(以下、「車両前方照度」と称する)と、車両の後方側(すなわち、電子ミラー1の表示構造10が位置する前面側)から車両に向けて照射されている光の照度(以下、「車両後方照度」と称する)とを含む。
【0088】
制御回路13は、ステップS1006にて取得した照度情報に基づき、車両前方照度が第1の閾値以下か否かを判定する(ステップS1007)。第1の閾値は予め規定されて、記憶装置14に保持されているものとする。車両前方照度が第1の閾値以下である場合(ステップS1007:YES)、制御回路13の処理はステップS1010へ進む。一方、車両前方照度が第1の閾値より大きい場合(ステップS1007:NO)、制御回路13の処理はステップS1008へ進む。
【0089】
制御回路13は、電子ミラーの防眩モードをOFFに設定する(ステップS1008)。本実施の形態に係る電子ミラー1は、ミラーモードがONの場合に、防眩モードのON/OFFを切り替えることが可能である。
【0090】
制御回路13は、反射率制御機構において液晶層316に対する印加電圧を制御し、反射率が固定値になるように設定する(ステップS1009)。ここで用いられる反射率の固定値は予め規定されていてよく、ここでは反射型偏光板317の反射率が最大になるように制御される。つまり、通常の鏡と同様に機能させる。そして、制御回路13の処理は、ステップS1021へ進む。
【0091】
制御回路13は、ステップS1006にて取得した照度情報に基づき、車両後方照度が第2の閾値以下か否かを判定する(ステップS1010)。第2の閾値は予め規定されて、記憶装置14に保持されているものとする。なお、第1の閾値および第2の閾値はそれぞれ特に限定するものでは無いが、運転者が電子ミラー1を確認する際の視認性を考慮して、その値が定義されてよい。本実施の形態において、第2の閾値は、電子ミラー1がハイビーム相当の光を受光している場合を判定するために規定される。具体例については、
図11を用いて後述する。車両後方照度が第2の閾値以下である場合(ステップS1010:YES)、制御回路13の処理はステップS1016へ進む。一方、車両後方照度が第2の閾値より大きい場合(ステップS1010:NO)、制御回路13の処理はステップS1011へ進む。
【0092】
制御回路13は、バックライト334を制御し、黒画レベルが最大となるようにバックライト334を点灯させる(ステップS1011)。つまり、制御回路13は、バックライト334の発光を制御し、黒色の表現が最も高くなるように制御する。なお、バックライト334にて表現可能な黒画レベルは、例えば、ダイナミックレンジなどの構成によって異なる。
【0093】
制御回路13は、第1の防眩モードをONに設定する(ステップS1012)。ここでの第1の防眩モードとは、反射率制御機構の反射率が固定値となるように制御して、防眩機能を動作させるモードである。第1の防眩モードは、例えば、車両が後方の他車両によりハイビームの光を受けている状態に動作し、当該後方の他車両からのハイビームによる電子ミラー1の視認性の低下を防止させる。
【0094】
制御回路13は、温度センサ11を介して、電子ミラー1の周辺温度を示す温度情報を取得する(ステップS1013)。
【0095】
制御回路13は、ステップS1013にて取得された温度情報に基づいて、液晶層316に対する印加電圧を補正する(ステップS1014)。電子ミラー1の周辺温度により、
図9に示したような印加電圧とSCIの関係に変化が生じ得る。このような周辺温度の変化による相関関係の変化に伴い、補正前の液晶層316に対する印加電圧では、目的とする程度の拡散反射成分の低減ができないことが考えられる。そのため、本実施の形態では、取得された温度情報に基づいて、印加電圧を補正することで、目的とする程度の拡散反射成分の低減を実現し、白ボケを低減させる。ここでの補正方法は特に限定するものではなく、例えば、予め規定されているテーブルを用いて補正量を決定してもよいし、予め規定された算出式を用いて印加電圧の値を決定してもよい。
【0096】
制御回路13は、ステップS1014にて決定した印加電圧を液晶層316に印加し、反射率制御機構の反射率を固定値に設定する(ステップS1015)。ここで用いられる反射率の固定値は予め規定されていてよく、ステップS1009の工程における固定値とは異なる。便宜上、ステップS1009の工程にて用いる固定値を「第1の固定値」とも称し、本工程における固定値を「第2の固定値」とも称する。そして、制御回路13の処理はステップS1021へ進む。
【0097】
制御回路13は、バックライト334を制御し、車両後方照度に応じて黒画レベルが可変となるようにバックライト334を点灯させる(ステップS1016)。つまり、制御回路13は、検出した車両後方照度に基づいて、バックライト334の発光を制御する。ここでのバックライト334の点灯制御は、例えば、車両後方照度に対応付けて予め規定されているテーブルに基づいて行われてよい。
【0098】
制御回路13は、第2の防眩モードをONに設定する(ステップS1017)。ここでの第2の防眩モードとは、反射率制御機構の反射率が可変となるように制御して、防眩機能を動作させるモードである。第2の防眩モードは、例えば、ハイビーム以外の状態に動作し、車両後方照度に応じて反射率制御機構において反射率を切り替えることで、電子ミラー1の視認性の低下を防止させる。
【0099】
制御回路13は、温度センサ11を介して周辺温度を示す温度情報を取得する(ステップS1018)。
【0100】
制御回路13は、ステップS1018にて取得された温度情報に基づいて、液晶層316に対する印加電圧を補正する(ステップS1019)。ここでの補正は特に限定するものではなく、ステップS1014の工程と同様であってもよいし、他の情報(例えば、テーブルや算出式)を用いて行われてもよい。
【0101】
制御回路13は、ステップS1019にて決定した印加電圧を液晶層316に印加し、反射率制御機構の反射率を調整する(ステップS1020)。ここでの反射率は、電子ミラー1が受光している光の照度(特に、車両後方照度)に応じて変動する。そして、制御回路13の処理はステップS1021へ進む。
【0102】
制御回路13は、電子ミラー1に対する停止信号を受け付けたか否かを判定する(ステップS1021)。停止信号は、例えば、電子ミラー1に対する電力供給の停止のほか、電子ミラー1が搭載された車両(不図示)の動作が停止(例えば、イグニッションOFFの状態)となった通知信号であってよい。停止信号を受け付けた場合(ステップS1021:YES)、本処理フローを終了する。一方、停止信号を受け付けていない場合(ステップS1021:NO)、制御回路13の処理は、ステップS1002へ戻り、処理を繰り返す。
【0103】
図11は、
図10にて示した処理フローの制御に係る反射率/印加電圧と、照度との関係を示すグラフ図である。
図11において、縦軸は、反射率/印加電圧を示し、横軸は照度センサ12が検出する車両後方照度を示す。
【0104】
図11(a)は、ミラーモード、かつ、防眩モードがOFFである場合、すなわち、
図10のステップS1008~ステップS1009の工程の動作に対応するグラフである。グラフ1101は反射率を示し、グラフ1102は印加電圧を示す。このモードでは、検出された車両後方照度に関わらず、反射率制御機構において印加電圧が一定となるように制御する。本実施の形態では、反射率は固定値であり、最大値に設定される。
【0105】
図11(b)は、ミラーモード、かつ、防眩モードがONである場合に対応するグラフである。上述したように、本実施の形態では更に、第1の防眩モードと、第2の防眩モードを用いる。
図10のステップS1010の工程にて用いる第2の閾値が、
図11(b)に示す閾値Tに対応する。したがって、検出される車両後方照度が閾値T以下である場合には第2の防眩モードが動作し、検出される車両後方照度が閾値Tよりも大きい場合(例えば、ハイビームを検出した場合)には第1の防眩モードが動作する。
【0106】
グラフ1111は反射率を示し、グラフ1112は印加電圧を示す。第2の防眩モードにおいて、車両後方照度が大きくなるに従って、反射率制御機構において印加電圧が高くなるように制御する。その結果、車両後方照度が大きくなるに従って、反射率は小さくなるように制御される。一方、第1の防眩モードにおいては、検出された車両後方照度の変化に関わらず、反射率制御機構において印加電圧が一定となるように制御する。これにより、反射率は固定値となる。
【0107】
上述したように、本発明の発明者は、防眩モードにおいてSCIを17~20%となる範囲で制御することにより、電子ミラー1の構造に起因する拡散反射成分に対する、目的とする程度の低減を実現し、白ボケの低減を実現することが可能であることを特定した。よって、
図11(b)のグラフにおいても上記のパラメータの範囲内となるように制御する。
【0108】
なお、
図11では、反射率制御機構において、印加電圧を上昇させることで、反射率が低下する構成の液晶層の例を示したが、これに限定するものではない。したがって、反射率制御機構において、印加電圧を低下させることで、反射率が上昇するような構成であっても同様に制御可能である。また、第2の防眩モードにおいて、車両後方照度の増加に伴って、反射率が比例して減少する例を示した。しかし、このときの減少は、
図11(b)に示すように一定の減少係数による負比例に限定するものではない。例えば、反射率の減少が曲線にて表されるような構成であってもよい。
【0109】
以上、本実施の形態により、防眩機能を切り替え可能に構成される電子ミラー(例えば、電子ミラー1)は、光の反射率が制御される表示構造(例えば、表示構造10)と、表示構造の前面側からの第1の照度(例えば、車両後方照度)と、表示構造の背面側からの第2の照度(例えば、車両前方照度)とを取得する照度センサ(例えば、12)と、第1の照度および第2の照度に基づいて、表示構造が備える液晶層(例えば、液晶層316)に対する印加電圧を調整することにより、防眩機能を制御する制御回路(例えば、制御回路13)と、を有し、制御回路は、防眩機能の動作時において、表示構造の反射率が所定の範囲になるように印加電圧を調整する。また、制御回路は、第2の照度が第1の閾値より大きい場合、防眩機能を停止し、表示構造の反射率が最大値になるように液晶層に対する印加電圧を調整する(例えば、ステップS1008~ステップS1009)。また、制御回路は、第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、第1の照度が第2の閾値より大きい場合、表示構造の反射率が所定の範囲になるように液晶層に対する印加電圧を調整する(例えば、ステップS1015)。また、表示構造は、液晶層の背面側に位置する反射型偏光板(例えば、反射型偏光板317)と、当該反射型偏光板の背面側に位置する偏光板(例えば、上偏光板331)を含んで構成され、所定の範囲は、前面側から入射した光に対する、偏光板の拡散反射成分が、最大値に対して70%以下となるように規定される。また、所定の範囲は、表示構造のSCI(Specular Component Include)が17~20%の範囲となるように規定される。また、制御回路は、第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、第1の照度が第2の閾値以下である場合、第2の照度の増加に伴って表示部の反射率が減少するように印加電圧を調整する(例えば、ステップS1020)。
【0110】
これにより、電子ミラーの表示構造において白ボケの発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0111】
また、電子ミラーの周辺温度を取得する温度センサ(例えば、11)を有し、制御回路は、周辺温度に基づいて、液晶層に対する印加電圧を補正する。
【0112】
これにより、周辺温度の変化に対応して、白ボケの発生を抑制した防眩機能を提供することが可能となる。
【0113】
また、制御回路は、第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、第1の照度が第2の閾値より大きい場合、電子ミラーが備えるバックライトの黒画レベルが最大となるように調整する(例えば、ステップS1011)。
【0114】
これにより、ハイビームなどの一定以上の照度が高い光を受けた際に、上偏光板における反射を目立たなくすることが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0115】
また、制御回路は、第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、第1の照度が第2の閾値以下である場合、電子ミラーが備えるバックライトの黒画レベルを第1の照度に応じて調整する。
【0116】
これにより、検出している照度に応じて、黒画レベルを調整することでユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0117】
<その他の実施形態>
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に相当し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0118】
また、本明細書において、用語「第1」、「第2」といった表現は、他の要素と区別することを意図して用いているに過ぎず、特定の構成要素に限定して解釈されるべきではない。したがって、本発明が適用される構成や関係に応じて、これらの表現は適宜読み替えられてよい。
【0119】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
(技術1)
第1の偏光板と、前記第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層と、前記液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、前記液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板と、前記反射型偏光板の背面側に配置される第2の偏光板と、前記第2の偏光板の背面側に配置される液晶セルと、前記液晶セルの背面側に配置されるバックライトと、を有し、前記第2の偏光板の曇り度は、3.0%~8.0%の範囲内にて構成される、電子ミラー。
この構成により、電子ミラーの表示構造の表面における白ボケの発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0120】
(技術2)
前記第2の偏光板は、アンチグレア処理が適用されている、技術1に記載の電子ミラー。
この構成により、電子ミラーの表示構造の表面における二重反射や虹の発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0121】
(技術3)
前記反射型偏光板と前記第2の偏光板との間にはエアギャップが形成される、技術1または技術2に記載の電子ミラー。
この構成により、これにより、電子ミラーを構成する際のコスト、例えば、接着コストや、製造工程を抑制することができ、低コストにて電子ミラーを製造することが可能となる。
【0122】
(技術4)
第1の偏光板と、前記第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層と、前記液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、前記液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板と、前記反射型偏光板の背面側に配置される第2の偏光板と、前記第2の偏光板の背面側に配置される液晶セルと、前記液晶セルの背面側に配置されるバックライトと、を有し、前記反射型偏光板と前記第2の偏光板は、接着部材にて接着される、電子ミラー。
この構成により、電子ミラーの表示構造における二重反射や虹の発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0123】
(技術5)
前記接着部材は、アクリル系粘着剤またはシリコン系粘着剤である、技術4に記載の電子ミラー。
この構成により、任意の接着部材を用いて反射型偏光板と上偏光板を接着させることで、電子ミラーの表示構造における二重反射や虹の発生を抑制することが可能となる。
【0124】
(技術6)
前記接着部材は、光を拡散させるための拡散材料を含む、技術4または技術5に記載の電子ミラー。
この構成により、任意の接着部材を用いて反射型偏光板と上偏光板を接着させることで、電子ミラーの表示構造における二重反射や虹の発生を抑制することが可能となる。
【0125】
(技術7)
前記拡散材料は、ケイ素系粒子である、技術6に記載の電子ミラー。
この構成により、
任意の接着部材を用いて反射型偏光板と上偏光板を接着させることで、電子ミラーの表示構造における二重反射や虹の発生を抑制することが可能となる。
【0126】
(技術8)
前記第2の偏光板と前記液晶セルとの間にはエアギャップが存在する、技術4から技術7のいずれかに記載の電子ミラー。
この構成により、任意の接着部材を用いて反射型偏光板と上偏光板を接着させることで、電子ミラーの表示構造における二重反射や虹の発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0127】
(技術9)
第1の偏光板と、前記第1の偏光板の背面側に配置され、印加電圧により光の旋光性が制御される液晶層と、前記液晶層の背面側に配置され、偏光軸に基づいて、前記液晶層からの光を反射または透過させる反射型偏光板と、前記反射型偏光板の背面側に配置される液晶セルと、前記液晶セルの背面側に配置されるバックライトと、を有する電子ミラー。
この構成により、電子ミラーの表示構造における二重反射の発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0128】
(技術10)
前記反射型偏光板と前記液晶セルとの間にはエアギャップが存在する、技術9に記載の電子ミラー。
この構成により、電子ミラーを構成する際のコスト、例えば、接着コストや、製造工程を抑制することができ、低コストにて電子ミラーを製造することが可能となる。
【0129】
(技術11)
防眩機能を切り替え可能に構成される電子ミラーであって、光の反射率が制御される表示構造と、前記表示構造の前面側からの第1の照度と、前記表示構造の背面側からの第2の照度とを取得する照度センサと、前記第1の照度および前記第2の照度に基づいて、前記表示構造が備える液晶層に対する印加電圧を調整することにより、前記防眩機能を制御する制御回路と、を有し、前記制御回路は、前記防眩機能の動作時において、前記表示構造の反射率が所定の範囲になるように前記印加電圧を調整する、電子ミラー。
この構成により、電子ミラーの表示構造において白ボケの発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0130】
(技術12)
前記制御回路は、前記第2の照度が第1の閾値より大きい場合、前記防眩機能を停止し、前記表示構造の反射率が最大値になるように前記液晶層に対する印加電圧を調整する、技術11に記載の電子ミラー。
この構成により、電子ミラーの表示構造において白ボケの発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0131】
(技術13)
前記制御回路は、前記第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、前記第1の照度が第2の閾値より大きい場合、前記表示構造の反射率が前記所定の範囲になるように前記液晶層に対する印加電圧を調整する、技術11または技術12に記載の電子ミラー。
この構成により、電子ミラーの表示構造において白ボケの発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0132】
(技術14)
前記表示構造は、前記液晶層の背面側に位置する反射型偏光板と、当該反射型偏光板の背面側に位置する偏光板を含んで構成され、前記所定の範囲は、前記前面側から入射した光に対する、前記偏光板の拡散反射成分が、最大値に対して70%以下となるように規定される、技術13に記載の電子ミラー。
この構成により、電子ミラーの表示構造において白ボケの発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0133】
(技術15)
前記所定の範囲は、前記表示構造のSCI(Specular Component Include)が17~20%の範囲となるように規定される、技術13に記載の電子ミラー。
この構成により、電子ミラーの表示構造において白ボケの発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0134】
(技術16)
前記制御回路は、前記第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、前記第1の照度が第2の閾値以下である場合、前記第2の照度の増加に伴って前記表示構造の反射率が減少するように印加電圧を調整する、技術11から技術15のいずれかに記載の電子ミラー。
この構成により、電子ミラーの表示構造において白ボケの発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0135】
(技術17)
前記電子ミラーの周辺温度を取得する温度センサを有し、前記制御回路は、前記周辺温度に基づいて、前記液晶層に対する印加電圧を補正する、技術11から技術16のいずれかに記載の電子ミラー。
この構成により、周辺温度の変化に対応して、白ボケの発生を抑制した防眩機能を提供することが可能となる。
【0136】
(技術18)
前記制御回路は、前記第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、前記第1の照度が第2の閾値より大きい場合、前記電子ミラーが備えるバックライトの黒画レベルが最大となるように調整する、技術11から技術17のいずれかに記載の電子ミラー。
この構成により、ハイビームなどの一定以上の照度が高い光を受けた際に、上偏光板における反射を目立たなくすることが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0137】
(技術19)
前記制御回路は、前記第2の照度が第1の閾値以下で、かつ、前記第1の照度が第2の閾値以下である場合、前記電子ミラーが備えるバックライトの黒画レベルを前記第1の照度に応じて調整する、技術11から技術18のいずれかに記載の電子ミラー。
この構成により、検出している照度に応じて、黒画レベルを調整することでユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【0138】
(技術20)
防眩機能を切り替え可能に構成される電子ミラーの制御方法であって、前記電子ミラーの表示構造の前面側からの第1の照度と、前記表示構造の背面側からの第2の照度とを取得する取得工程と、前記第1の照度および前記第2の照度に基づいて、前記電子ミラーの表示構造が備える液晶層に対する印加電圧を調整して、前記表示構造の光の反射率を制御することにより、前記防眩機能を制御する制御工程と、を有し、前記防眩機能の動作時において、前記表示構造の反射率が所定の範囲になるように前記印加電圧が調整される、電子ミラーの制御方法。
この構成により、電子ミラーの表示構造において白ボケの発生を抑制することが可能となる。その結果、ユーザの視認性を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本開示は、電子ミラー、および電子ミラーの制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0140】
1…電子ミラー
10…表示構造
11…温度センサ
12…照度センサ
13…制御回路
14…記憶装置
15…外部IF
310…前面構造
311…ガラス層
312,314…接着層
313…保護層
315…偏光板
316…液晶層
317…反射型偏光板
320…エアギャップ
330…ディスプレイ
331…上偏光板
332…液晶セル
333…下偏光板
334…バックライト