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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136870
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】金属材切断用刃物
(51)【国際特許分類】
   B23D 23/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B23D23/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048163
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】高田 宗則
(72)【発明者】
【氏名】相川 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】今枝 義宏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 静人
【テーマコード(参考)】
3C039
【Fターム(参考)】
3C039DA05
(57)【要約】
【課題】 一か所に堆積し難いスクラップを生成することが可能な金属材切断用刃物を提供する。
【解決手段】 上刃250は、傾斜部140を介して板状の山頂部110と板状の谷底部120,130とが幅方向Wにおいて交互に連続する成形ワーク10Aを切断する金属材切断用刃物である。上刃250は、成形ワーク10Aに対向する対向面250Fに複数の刃を有する。これら複数の刃は、山頂部110に接する第1の刃251と、谷底部120,130に接する第2の刃252とを含む。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜部を介して板状の山頂部と板状の谷底部とが幅方向において交互に連続する金属材を切断する金属材切断用刃物であって、
前記金属材に対向する対向面に、所定の角度をなして前記金属材に向かって突出する複数の刃を有し、
前記複数の刃は、前記山頂部に接する第1の刃と、前記谷底部に接する第2の刃とを含む、金属材切断用刃物。
【請求項2】
前記複数の刃が突出する方向において、前記第1の刃の先端から前記第2の刃の先端までの距離は、前記山頂部から前記谷底部までの距離よりも短い、請求項1に記載の金属材切断用刃物。
【請求項3】
前記複数の刃が突出する方向において、前記第2の刃の先端は、前記第1の刃の先端と同じ位置又は前記第1の刃の先端よりも前記複数の刃が突出する側にある、請求項1に記載の金属材切断用刃物。
【請求項4】
前記対向面のうち隣り合う前記第1の刃と前記第2の刃との間の部分は、前記複数の刃が並ぶ方向に沿って前記第1の刃側から前記第2の刃側に向かうにつれて前記複数の刃が突出する側とは反対側に傾斜する第1の傾斜面と、前記複数の刃が並ぶ方向に沿って前記第2の刃側から前記第1の刃側に向かうにつれて前記複数の刃が突出する側とは反対側に傾斜する第2の傾斜面とを含む、請求項1に記載の金属材切断用刃物。
【請求項5】
前記複数の刃が突出する方向及び前記複数の刃が並ぶ方向に垂直な厚み方向から見る場合に、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面とは、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面との接続部に対して対称に形成されている、請求項4に記載の金属材切断用刃物。
【請求項6】
前記金属材は、2つの前記谷底部と1つの前記山頂部と2つの前記傾斜部とを含むユニットが前記幅方向において2つ並んだ構成を有しており、
前記金属材は、前記幅方向における一方側の前記ユニットの他方側の前記谷底部と前記幅方向における他方側の前記ユニットの一方側の前記谷底部とが連結された連結谷底部を含み、
前記複数の刃は、6つの刃を含み、
前記6つの刃は、2つの前記山頂部に接する2つの前記第1の刃と、2つの前記谷底部に接する2つの前記第2の刃と、1つの前記連結谷底部に接する2つの前記第2の刃とからなる、請求項1から5のいずれか1項に記載の金属材切断用刃物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材切断用刃物に関し、具体的には、デッキプレートを製造する際に金属材を切断するための金属材切断用刃物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋根又は床は、コンクリートとデッキプレートとにより形成されたスラブにより構築されている。例えば、傾斜部を介して幅方向に山頂部及び谷底部が交互に連続して波形状をなすデッキプレートが知られている。
【0003】
デッキプレートは、例えば、以下のように製造される。まず、所定の幅にスリットされコイル状に巻かれた帯状鋼板をアンコイラにより連続的にロール成形機に送り込み、順次、成形ロールにより曲げ加工をして、所望の断面形状を有する金属材である成形ワークを形成する。次いで、この成形ワークを切断機の切断金型に挿入(通板)し、切断金型に通板された成形ワークを、金属材切断用刃物である上刃によって切断する。こうして、所定の長さに切断された製品としてのデッキプレートが製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-132667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、デッキプレートは、上記のように成形ワークが上刃によって切断されることで製造されるため、この切断の際に、成形ワークのうち上刃の厚みに相当する部分(すなわち、成形ワークのうち上刃によって切断される部分)がスクラップとなる。このスクラップは、概して、コンベアなどによってスクラップバックへと運ばれ、廃棄等される。
【0006】
スクラップバックに落下したスクラップは、スクラップの形状や大きさに起因して互いに絡まる傾向がある。すなわち、スクラップは、ばらけずにスクラップバックの一か所(例えば、スクラップがコンベアからスクラップへと落下する軌跡上にあるスクラップバックの領域)に堆積してしまう傾向がある。そのため、スクラップバックに十分な収容容量が残存しているにも関わらずスクラップバックを交換しなければならない状況が生じていた。また、スクラップバックの収容容量を使い切るためにスクラップバックの全域に満遍なくスクラップを堆積させようとすると、絡み合って一か所に堆積したスクラップを、適宜、人力でスクラップバックの他の領域に掻き出す必要がある。このような作業は、重筋作業であるだけでなく、切創災害の原因にもなり得る。
【0007】
そこで、本発明は、一か所に堆積し難いスクラップを生成することが可能な金属材切断用刃物を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、傾斜部を介して板状の山頂部と板状の谷底部とが幅方向において交互に連続する金属材を切断する金属材切断用刃物であって、前記金属材に対向する対向面に、所定の角度をなして前記金属材に向かって突出する複数の刃を有し、前記複数の刃は、前記山頂部に接する第1の刃と、前記谷底部に接する第2の刃とを含む。
【0009】
また、本発明に係る金属材切断用刃物は、以下に記載する構成の少なくとも1つをさらに備えてもよい。
【0010】
前記複数の刃が突出する方向において、前記第1の刃の先端から前記第2の刃の先端までの距離は、前記山頂部から前記谷底部までの距離よりも短いことが好ましい。
【0011】
前記複数の刃が突出する方向において、前記第2の刃の先端は、前記第1の刃の先端と同じ位置又は前記第1の刃の先端よりも前記複数の刃が突出する側にあってもよい。
【0012】
前記対向面のうち隣り合う前記第1の刃と前記第2の刃との間の部分は、前記複数の刃が並ぶ方向に沿って前記第1の刃側から前記第2の刃側に向かうにつれて前記複数の刃が突出する側とは反対側に傾斜する第1の傾斜面と、前記複数の刃が並ぶ方向に沿って前記第2の刃側から前記第1の刃側に向かうにつれて前記複数の刃が突出する側とは反対側に傾斜する第2の傾斜面とを含んでもよい。この場合、前記複数の刃が突出する方向及び前記複数の刃が並ぶ方向に垂直な厚み方向から見る場合に、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面とは、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面との接続部に対して対称に形成されていてもよい。
【0013】
前記金属材は、2つの前記谷底部と1つの前記山頂部と2つの前記傾斜部とを含むユニットが前記幅方向において2つ並んだ構成を有しており、前記金属材は、前記幅方向における一方側の前記ユニットの他方側の前記谷底部と前記幅方向における他方側の前記ユニットの一方側の前記谷底部とが連結された連結谷底部を含み、前記複数の刃は、6つの刃を含み、前記6つの刃は、2つの前記山頂部に接する2つの前記第1の刃と、2つの前記谷底部に接する2つの前記第2の刃と、1つの前記連結谷底部に接する2つの前記第2の刃とからなってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一か所に堆積し難いスクラップを生成することが可能な金属材切断用刃物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態におけるデッキプレートの一例を示す斜視図である。
図2図1に示されるII-II線に沿った断面図である。
図3】デッキプレートの製造ラインの一例を概略的に示す図である。
図4図3のIV-IV線における切断部端面図であり、成形ワークを省略して示す図である。
図5図3に示される上刃と、当該上刃の直下に位置する成形ワークとを送り方向に視線を向けて見た正面図である。
図6】上刃に形成された複数の刃の一部がデッキプレートの山頂部に接した様子を示す正面図である。
図7】上刃に形成された複数の刃の他の一部がデッキプレートの谷底部に接する前の様子を示す正面図である。
図8】上刃に形成された複数の刃の他の一部がデッキプレートの谷底部に接した様子を示す正面図である。
図9】成形ワークの一部が上刃によって切断されてスクラップが生じた様子を概略的に示す図である。
図10】実施形態に係る上刃の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る金属材切断用刃物(上刃)を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張して示されていたり縮小して示されていたりする場合がある。
【0017】
上述の上刃について説明する前に、製造ラインによって製造されたデッキプレートについて説明する。図1は、製造ラインによって製造された本実施形態に係るデッキプレートの一例を示す斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿ったデッキプレートの断面図である。
【0018】
本実施形態に係るデッキプレート100は、ロールフォーミング(ロール成形)することによって形成した波形鋼板である。図1及び図2に示すように、デッキプレート100は、平板状の山頂部110と、平板状の谷底部120,130と、傾斜部140と、嵌合部(折返し部)150,160と、を有する。デッキプレート100は、それぞれ長さ方向L及び長さ方向Lに交差する幅方向Wを有する。本実施形態において、幅方向Wは長さ方向Lに垂直である。なお、幅方向L及び幅方向Wに垂直な方向が高さ方向Hである。
【0019】
山頂部110及び谷底部120,130は、長さ方向Lに延びる傾斜部140を介して互いに幅方向Wに連続し、デッキプレート100は、波形状をなしている。デッキプレート100のプレート単体では、2つの山頂部110と、3つの谷底部120,130と、2組の一対の傾斜部140とからなり、幅方向Wに沿った断面において波形に形成されている。高さ方向Hにおいて、2つの山頂部110のそれぞれは同じ位置にあり、3つの谷底部120,130のそれぞれは同じ位置にある。なお、デッキプレート100は、長さ方向Lの両端部においてエンドクローズ加工が施されていてもよい。
【0020】
山頂部110は、例えば、スラブにおいて支持梁と支持梁との間に架け渡された状態において、支持梁に対して離間して高さ方向Hにおける上側に位置する平坦に形成された部分であり、長さ方向Lに延在する板状の部分である。山頂部110は、溝111を有する。本実施形態では、1つの山頂部110に2つの溝111が形成されている。ただし、溝111の数は限定されるものではなく、1つであっても3つ以上であってもよく、あるいは溝111を形成しなくてもよい。溝111は、谷底部120の側に向けて凹状に形成されている。2つの溝111のそれぞれは、長さ方向Lに延在しており、本実施形態では、幅方向Wにおける山頂部110の中央に対して対称の位置に形成されている。ただし、溝111の山頂部110における位置はこれに限定されるものではない。
【0021】
谷底部120,130は、山頂部110に対して平行又は略平行であり、支持梁と支持梁との間に架け渡された状態において、支持梁に載置される平坦に形成された部分である。谷底部120,130は、長さ方向Lに延在する平坦な板状の部分である。谷底部120,130は、幅方向Wにおいて山頂部110とは重ならない。
【0022】
3つの谷底部120,130のうち、谷底部120は、幅方向Wにおいて谷底部130に挟まれており、デッキプレート100の中央部分に設けられている。幅方向Wにおいて谷底部120の両側には後述する傾斜部140が連続している。谷底部120は、谷底部130に対して幅方向Wにおいて幅広に形成されている。谷底部120は、幅方向Wにおいて中央又は略中央に設けられた突出部121を有する。突出部121は、山頂部110に向かって(すなわち、高さ方向Hにおける上側に向かって)凸に形成されている。突出部121は、エンボス部や溝部として形成されてもよい。本実施形態において、突出部121は、長さ方向Lに沿って連続的に延在しているが、これに限定されず、長さ方向において所定の間隔をあけて形成されてもよい。突出部121により、デッキプレート100の剛性が高まると共に形状が安定する。なお、本実施形態では、長さ方向Lから見る場合に突出部121が概ね1/2円弧状に掲載されているが、これに限定されるものではなく、例えば矩形状や台形状に形成されていてもよく、あるいは、このような突出部121を設けなくてもよい。
【0023】
また、本実施形態では、谷底部120は、幅方向Wにおける突出部121の中央を通る仮想直線121Lに対して対称に形成されている。すなわち、谷底部120は、仮想直線121Lに対して幅方向Wにおける一方側の谷底部120Aと他方側の谷底部120Bとが仮想直線121Lに沿って連結されてなる連結谷底部として構成されている。なお、仮想直線121Lは、デッキプレート100の幅方向Wにおける中央を通る線であるため、以下、符号121Lをデッキプレート100(又は後述する成形ワーク10A)の幅方向Wにおける中央を表すものとして使用する場合がある。
【0024】
谷底部130は、デッキプレート100の幅方向Wにおける両端に設けられている。幅方向Wにおいて、各谷底部130の谷底部120側には、後述する傾斜部140が連続している。幅方向Wにおいて、傾斜部140が連続している側とは反対側の谷底部130の端部にはそれぞれ、後述する嵌合部150,160が設けられている。
【0025】
傾斜部140は、山頂部110と谷底部120,130とを連結する部分であり、長さ方向Lに延在する平坦な板状の部分である。傾斜部140は、幅方向Wにおいて山頂部110の両端部の側から斜めに谷底部120,130に向かって延びている。幅方向Wにおいて互いに隣り合う傾斜部140は、高さ方向Hに沿って延びる直線に対して概ね同一の角度で、山頂部110側から谷底部120,130側に向かうにつれて(すなわち、高さ方向Hにおける下側に向かうにつれて)幅方向Wにおいて互いに離間するように延びている。傾斜部140は、山頂部110及び谷底部120,130に対して所定の角度、例えば、鈍角を形成するように傾斜している。
【0026】
傾斜部140には複数のエンボス部141が形成されている。各エンボス部141は、長さ方向Lに沿って所定の間隔をあけて設けられている。エンボス部141は、傾斜部140が連続する谷底部120,130に向かって凸に形成されている。エンボス部141により、デッキプレート100の剛性が高まると共に形状が安定する。ただし、このようなエンボス部141を形成することは必須ではない。
【0027】
本実施形態におけるデッキプレート1は、上述の仮想直線121Lに対して幅方向Wにおける一方側に位置するユニット100Aと他方側に位置するユニット100Bとが並んだ構成を有している。ユニット100Aは、2つの谷底部(谷底部120A、谷底部130)と、1つの山頂部110と、2つの傾斜部140,140と含んでいる。ユニット100Aの2つの谷底部のうち谷底部130は、ユニット100Aにおいて幅方向Wにおける一方側に位置しており、谷底部120Aはユニット100Aにおいて幅方向Wにおける他方側に位置している。ユニット100Bは、2つの谷底部(谷底部120B、谷底部130)と、1つの山頂部110と、2つの傾斜部140,140と含んでいる。ユニット100Bの2つの谷底部のうち谷底部120Bは、ユニット100Bにおいて幅方向Wにおける一方側に位置しており、谷底部130はユニット100Bにおいて幅方向Wにおける他方側に位置している。上述のように、谷底部120Aと谷底部120Bとが連結して谷底部120(連結谷底部)となる。
【0028】
ユニット100A,100Bのそれぞれにおいて、谷底部120,130と傾斜部140との間の移行部には膨出部142が形成されている。膨出部142は、各山頂部110に接続する一対の傾斜部140(各山頂部110の幅方向Wにおける両端に接続する傾斜部140)において、互いに反対の側に突出した部分である。谷底部120を挟んで幅方向Wにおいて対向する一対の傾斜部140において、膨出部142は対向するように形成されており、互いに近づく方向に膨出している。また、ユニット100A,100Bのそれぞれにおいて、谷底部130側に形成された膨出部142は、谷底部120側とは反対の側に膨出している。なお、このような膨出部142を設けることは必須ではない。
【0029】
ユニット100A,100Bのそれぞれにおいて、高さ方向Hにおける膨出部142と谷底部120,130との間には、長さ方向Lに沿って延在する蟻溝143が形成されている。蟻溝143は、幅方向Wに沿った断面が湾曲するように形成されている。谷底部120を挟んで対向する一対の傾斜部140において、蟻溝143は、幅方向Wにおいて対向するように形成されており、互いに離れる方向、つまり、谷底部130の側に向かって湾曲している。また、ユニット100A,100Bのそれぞれにおいて、谷底部130側に形成された蟻溝143は、谷底部120側に向かって湾曲している。なお、このような蟻溝143を設けることは必須ではない。
【0030】
嵌合部150は、ユニット100Aの谷底部130に連続して設けられている。一方、嵌合部160は、ユニット100Bの谷底部130に連続して設けられている。嵌合部150,160は、スラブを構築する際、幅方向Wに隣合うデッキプレート100同士の連結の用に供されている。具体的には、一のデッキプレート100の嵌合部150と、他のデッキプレート100の嵌合部160とが互いに嵌合することにより、2枚のデッキプレート100は、幅方向Wにおいて連結される。嵌合部150,160は、互いに異なる側に折り返されている。
【0031】
嵌合部150は、山頂部110側とは反対側(すなわち、高さ方向Hにおける下側)に折り返されている。嵌合部150は、起立部位151と、フック部位152と、を有する。起立部位151は、傾斜部140から離れるように谷底部130から上側に斜めに延在している。フック部位152は、起立部位151の先端側に位置し、起立部位151から谷底部130と平行又は略平行に傾斜部140側とは反対側に延びている。フック部位152の先端は、下側にかつ起立部位151に向かって折り返されている。
【0032】
嵌合部160は、山頂部110側(すなわち、高さ方向Hにおける上側)に折り返されている。嵌合部160は、起立部位161と、フック部位162と、を有する。起立部位161は、傾斜部140から離れるように谷底部130から上側に斜めに延在している。フック部位162は、起立部位161の先端側に位置し、起立部位161から傾斜部140に向かって(すなわち下側に)折り返されている。
【0033】
次に、図3を用いて上記デッキプレート100を製造する製造ラインについて説明する。図3は、デッキプレート100を製造する製造ラインを概略的に示す図である。
【0034】
図3に示すように、製造ライン200は、アンコイラ210と、ロール成形設備(ロール成形機)220と、切断機230と、ローラテーブル240と、を含んでいる。アンコイラ210には、所定の幅にスリット加工された帯状の帯状鋼板が巻かれた鋼板コイルがセットされている。アンコイラ210は、製造ラインを稼働させることにより帯状鋼板をロール成形設備220に向かって送出方向Fに沿って送り出す。
【0035】
アンコイラ210から送出された帯状鋼板は、不図示の加工部により角隅部が切り落とされた後、ロール成形設備220に達する。ロール成形設備220は、送出方向Fにおいてアンコイラ210よりも下流側にあり、複数のロールスタンド221を有する。ロールスタンド221には所定のロールが支持されている。各ロールスタンド221のロールは、ロール成形設備220に送られた帯状鋼板10に曲げ加工を施す。こうして、ロール成形設備220に送られた帯状鋼板10には、複数段に亘って順次曲げ加工が施される。その結果、帯状鋼板10から、山頂部110、谷底部120,130、傾斜部140及び嵌合部150,160等が成形され、所定の断面形状をもった成形ワーク10Aが形成される。本実施形態では、図2に示す断面形状をもった成形ワーク10Aが形成される。ここで「成形ワーク10A」とは、切断されてデッキプレート100となる前の中間製品をいい、成形ワーク10Aは、帯状鋼板10と連続した状態にある。送出方向Fから見る場合において、成形ワーク10Aの形状及び寸法は、デッキプレート100の形状及び寸法と一致している。
【0036】
切断機230は、送出方向Fにおいてロール成形設備220よりも下流側にある。切断機230は、ロール成形設備220において所定の断面形状に成形された成形ワーク10Aを幅方向Wに沿って切断して、送出方向Fにおける所定の長さをもったデッキプレート100に個別化する。なお、図3において、幅方向Wは紙面に対して垂直な方向であり、長さ方向Lは送出方向Fと平行な方向である。
【0037】
切断機230は、切断金型231と金属材切断用刃物としての上刃250とを備える。
【0038】
図3に例示的に示すように、切断金型231は、例えば、送出方向Fに沿って所定の間隙Gを空けて、送出方向Fにおける上流側にある第1セグメント231Aと、下流側にある第2セグメント231Bとに分かれている。第1セグメント231Aと第2セグメント231Bとの幅方向Wに沿った断面形状は同一であってもよい。
【0039】
図4は、図3に示すIV-IV線に沿った切断部端面図である。すなわち、図4は、第1セグメント231A及び第2セグメント231Bの幅方向Wに沿った断面を表している。なお、図4において便宜上ハッチングが省略されている。図4に示すように、切断金型231には、製品となるデッキプレート100の形状に対応する刃物(下刃)ブロック232,233,234が設けられており、成形ワーク10Aが通板される通板開口235が形成されている。通板開口235は、送出方向Fから見た場合の成形ワーク10Aの形状とほぼ一致した開口の形状に形成されている。したがって、通板開口235を通る成形ワーク10Aは、送出方向F以外の方向に移動することが規制されるように、間隙Gを挟んで両側に位置する第1セグメント231A及び第2セグメント231Bによって支持されている。切断金型231内の成形ワーク10Aは、間隙Gの部分において切断金型231から露出している。
【0040】
連続的に送り出されてくる金属材としての成形ワーク10Aを切断する場合、切断機230は、走行レール(図示せず)に沿って(すなわち、送出方向Fに沿って)走行しつつ、成形ワーク10Aを所定の長さに切断してもよい。このように切断機230が走行することで、ラインを止めることなく成形ワーク10Aを切断することができる。図3に示すように、成形ワーク10Aは、間隙Gから露出する部分において、金属材切断用刃物としての上刃250によって切断される。その結果、成形ワーク10Aのうち第2セグメント231B内に位置する部分が、上述のデッキプレート100となる。なお、送出方向Fにおける間隙Gの長さ(厚み)は、特に限定されるものではないが、例えば、8mmより大きく10mm以下であってもよい。上刃250によって切断されたデッキプレート100(すなわち、成形ワーク10Aが切断された後の第2セグメント231B内の金属材)は、送出しローラテーブル240を通じて下流側の、例えば、出荷等の作業を行う領域に送られる。
【0041】
図3に示すように、高さ方向Hにおける間隙Gの直上には、間隙Gの厚みよりもやや小さな厚みを有する上刃250が配置されている。上刃250の厚み、すなわち、長さ方向L(送出方向F)における上刃250の長さ(厚み)、さらに言えば、幅方向W及び高さ方向Hに垂直な方向における上刃250の長さ(厚み)は、特に限定されるものではないが、例えば概ね8mmであってもよい。
【0042】
図5は、間隙Gにおいて、図3に示される上刃250と当該上刃250の直下に位置する成形ワーク10Aとを、送出方向Fに視線を向けて見た正面図である。図5において、紙面に垂直な方向が長さ方向L、すなわち上刃250の厚み方向である。したがって、図5では、幅方向W及び高さ方向Hに垂直な厚み方向から見た上刃250及び成形ワーク10Aが示されている。
【0043】
図5に示すように、上刃250は、傾斜部140を介して板状の山頂部110と板状の谷底部120とが幅方向Wにおいて交互に連続する金属材としての成形ワーク10Aを、幅方向Wに垂直な高さ方向Hに沿って切断する金属材切断用刃物である。上刃250は、厚みが例えば概ね8mmの金属板を所定の形状に成形したものであり、高さ方向Hにおいて成形ワーク10Aに対向する対向面250Fを有する。上刃250の幅方向Wにおける中央部250wcは、成形ワーク10Aの幅方向Wにおける中央121Lの直上に位置している。本実施形態において、上刃250は、中央部250wcに対して概ね対称に形成されている。
【0044】
上刃250の対向面250Fには、幅方向Wに沿って間隔を空けて複数の刃が形成されている。本実施形態において、上刃250の複数の刃が並ぶ方向は幅方向Wに平行である。しかし、例えば、上刃250の複数の刃が並ぶ方向は、製造誤差の範囲において幅方向Wに平行でなくてもよい。また、複数の刃は、所定の角度をなして成形ワーク10Aに向かって(すなわち、高さ方向Hにおける下側に向かって)突出している。本実施形態において、複数の刃が突出する方向は高さ方向Hに平行である。しかし、例えば、上刃250の複数の刃が突出する方向は、製造誤差の範囲において高さ方向Hに平行でなくてもよい。
【0045】
具体的には、複数の刃は、高さ方向Hにおいて成形ワーク10Aの山頂部110に対向する2つの第1の刃251と、高さ方向Hにおいて成形ワーク10Aの谷底部120,130に対向する4つの第2の刃252とを含む。2つの第1の刃251のうち幅方向Wにおける一方側に位置する第1の刃251Aは、2つの山頂部110のうちユニット100Aの山頂部110に対向しており、他方側に位置する第1の刃251Bは、ユニット100Bの山頂部110に対向している。本実施形態では、第1の刃251A,251Bは、それぞれが対向している山頂部110のうち当該山頂部110の幅方向Wにおける概ね中央の部分に対向している。ただし、第1の刃251A,251Bが対向する山頂部110の部位は山頂部110の幅方向Wにおける中央に限定されるものではない。
【0046】
4つの第2の刃252のうち第1の刃251Aに対して中央部250wc側とは反対側にある第2の刃252Aは、ユニット100Aの谷底部130に対向しており、第1の刃251Aに対して第2の刃252A側とは反対側において第1の刃251Aと隣り合う第2の刃252Bは、ユニット100Aの谷底部120に対向している。残り2つの第2の刃252のうち第1の刃251Bに対して中央部250wc側とは反対側にある第2の刃252Dは、ユニット100Bの谷底部130に対向しており、第1の刃251Bに対して第2の刃252B側とは反対側において第1の刃251Bと隣り合う第2の刃252Cは、ユニット100Bの谷底部120に対向している。このように、本実施形態では、幅方向Wにおいてユニット100A側からユニット100B側に向かって、第2の刃252A、第1の刃251A、第2の刃252B、第2の刃252C、第1の刃251B、第2の刃252Dの順に、6つの刃が並んでいる。第2の刃252B及び第2の刃252Cは、いずれも谷底部120(連結谷底部)に対向している。
【0047】
このように、本実施形態における上刃250では、成形ワーク10Aに向かって突出する6つの刃(2つの第1の刃251及び4つの第2の刃252)が幅方向Wに沿って並んでいる。
【0048】
また、本実施形態では、対向面250Fのうちユニット100Aに対向する部分及びユニット100Bに対向する部分(すなわち、中央部250wcに対して幅方向Wにおける一方側の部分及び他方側の部分)のそれぞれにおいて、第1の刃251から谷底部130に対向する第2の刃252までの幅方向Wにおける距離と、第1の刃251から谷底部120(連結谷底部)に対向する第2の刃252までの幅方向Wにおける距離とが概ね等しい。すなわち、本実施形態では、中央部250wcに対して幅方向Wにおける一方側の部分及び他方側の部分のそれぞれにおいて、2つの第2の刃252の間の中央の位置に1つの第1の刃251が形成されている。ただし、この構成は必須ではない。
【0049】
また、本実施形態では、第2の刃252A,252B,252C,252Dは、それぞれが対向している谷底部130,120A,120B,130の幅方向Wにおける概ね中央の部分に対向している。つまり、第2の刃252Aはユニット100Aの谷底部130の中央に対向し、第2の刃252Bはユニット100Aの谷底部120Aの中央に対向し、第2の刃252Cはユニット100Bの谷底部120Bの中央に対向し、第2の刃252Dはユニット100Bの谷底部130の中央に対向している。ただし、第2の刃252A,252B,252C,252Dが対向する谷底部120,130の部位は谷底部120,130の幅方向における中央に限定されるものではない。
【0050】
本実施形態では、上記6つの刃(2つの第1の刃251及び4つの第2の刃252)は、概ね同一の形状及び寸法に形成されている。ただし、6つの刃が異なる形状や寸法に形成されていてもよい。例えば、本実施形態では、6つの刃のそれぞれは、厚み方向(長さ方向L)から見る場合に概ね正三角形の形状を有しており、概ね60°の鋭角に形成されている。すなわち、本実施形態では、6つの刃のそれぞれは、所定の角度として概ね60°の角度をなして成形ワーク10Aに向かって突出している。なお、これら刃の形状は正三角形に限定されるものではないが、後述するように成形ワーク10Aを切断する観点から鋭角であることが好ましい。また、本実施形態では、高さ方向Hにおいて、6つの刃のそれぞれの先端Tは同じ位置にある。すなわち、高さ方向Hにおいて、4つの第2の刃252のそれぞれの先端Tは、2つの第1の刃251のそれぞれの先端Tと同じ位置にある。したがって、高さ方向Hにおいて、第1の刃251の先端Tから第2の刃252の先端Tまでの距離は、ゼロであり、成形ワーク10Aの山頂部110から谷底部120,130までの距離hmよりも短い。
【0051】
対向面250Fのうち幅方向Wにおいて隣り合う第1の刃251と第2の刃252との間の第1の部分271は、第1の刃251及び第2の刃252のそれぞれに鈍角を成して接続している。第1の部分271は、幅方向Wに沿って第1の刃251側から第2の刃252側に向かうにつれて高さ方向Hにおける成形ワーク10A側とは反対側に傾斜する第1の傾斜面253と、幅方向Wに沿って第2の刃252側から第1の刃251側に向かうにつれて高さ方向Hにおける成形ワーク10A側とは反対側に傾斜する第2の傾斜面254とを含む。さらに、本実施形態では、厚み方向から見る場合に、第1の傾斜面253と第2の傾斜面254とは、第1の傾斜面253と第2の傾斜面254との接続部256に対して対称に形成されている。なお、特に限定されるものではないが、成形ワーク10Aの山頂部110と傾斜部140との連結部190の直上に接続部256が位置するようにしてもよい。
【0052】
対向面250Fのうち第2の刃252B,252Cとの間の第2の部分272は、第2の刃252B,252Cのそれぞれに鈍角を成して接続している。本実施形態では、第2の部分272は、厚み方向から見る場合に中央部250wcに対して対称の傾斜状に形成されている。なお、第2の部分272の形状はこれに限定されるものではない。
【0053】
対向面250Fのうち第2の刃252Aに対して第1の刃251側とは反対側の部分及び第2の刃252Dに対して第1の刃251B側とは反対側の部分は、第3の部分273である。2つの第3の部分273のそれぞれは、第2の刃252(第2の刃252A,252D)に接続する第3の傾斜面257と、第3の傾斜面257に接続する第4の傾斜面259と、第4の傾斜面259に接続する起立面260と、起立面260に接続する平坦面261とを含んでいる。
【0054】
第3の傾斜面257は、第2の刃252に鈍角を成して接続しており、第2の刃252から幅方向Wに沿って離れるにつれて、高さ方向Hにおける成形ワーク10A側とは反対側(上側)に傾斜している。第4の傾斜面259は、第3の傾斜面257に鈍角を成して接続しており、第3の傾斜面257から幅方向Wに沿って離れるにつれて、高さ方向Hにおける成形ワーク10A側(下側)に傾斜している。起立面260は、第4の傾斜面259に鈍角を成して接続しており、本実施形態では、高さ方向Hに対してやや傾いた方向(例えば、高さ方向Hに対して10°以下の角度で傾いた方向)に延びている。平坦面261は、起立面260に鈍角を成して接続している。平坦面261は、幅方向W及び厚み方向(長さ方向L)に概ね平行である。高さ方向Hにおいて、平坦面261は、第1の刃251及び第2の刃252のそれぞれの先端Tよりも下側(成形ワーク10Aに近い側)にある。ただし、高さ方向Hにおいて、平坦面261は、第1の刃251及び第2の刃252のそれぞれの先端Tと同じ位置にあってもよく、あるいは、それぞれの先端Tよりも上側にあってもよい。起立面260と、平坦面261と、上刃250の幅方向Wにおける縁部とによって、上刃250の2つの端部258,258が画定されている。本実施形態では、端部258,258のそれぞれは、概ね台形の形状を有しているがこれに限定されるものではない。図5では、端部258の上端を示すために仮想線としての破線が引かれている。
【0055】
なお、第3の部分273の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、第3の傾斜面257及び第4の傾斜面259の部分を平坦面261に平行にしてもよいし、起立面260を高さ方向Hに平行な(すなわち、幅方向Wに垂直な)面にしてもよい。
【0056】
このように、本実施形態の上刃250は、傾斜部140を介して板状の山頂部110と板状の谷底部120,130とが幅方向Wにおいて交互に連続する成形ワーク10A(金属材)を切断する金属材切断用刃物であり、幅方向Wに垂直な高さ方向Hにおいて成形ワーク10Aに対向する対向面250Fに複数の刃を有する。そして、これら複数の刃は、山頂部110に接する第1の刃251と、谷底部120,130に接する第2の刃252とを含んでいる。そして、本実施形態の上刃250では、複数の刃が突出する方向(高さ方向H)において、第2の刃252の先端Tは、第1の刃251の先端Tと同じ位置にあり、複数の刃が突出する方向において、第1の刃251の先端Tから第2の刃252の先端Tまでの距離は、山頂部110から谷底部120,130までの距離hmよりも短い。
【0057】
次に、このような上刃250によって成形ワーク10Aを切断する切断工程について説明する。
【0058】
上述したように及び図3に示すように、切断金型231内の成形ワーク10Aは、間隙Gにおいて切断金型231から露出している。上述したように及び図5に示すように、この間隙Gにおいて切断金型231から露出している成形ワーク10Aの露出部10AEの直上には、上刃250が配置されている。図5において矢印で示すように、切断工程では、上刃250が、高さ方向Hに沿って初期位置から下側(露出部10AE側)に向かって間隙G内を移動する。そうすると、まず、図6に示すように、2つの第1の刃251のそれぞれの先端Tが、成形ワーク10Aの2つの山頂部110に同時に接する。具体的には、第1の刃251Aの先端Tがユニット100Aの山頂部110に、第1の刃251Bの先端Tがユニット100Bの山頂部110に、同時に接する。本実施形態では、第1の刃251A,251Bのそれぞれは、山頂部110の幅方向Wにおける概ね中央かつ2つの溝111,111の間に接する。なお、上述のように、高さ方向Hにおいて、第2の刃252の先端Tは、第1の刃251の先端Tと同じ位置にありかつ成形ワーク10Aの谷底部120,130に対向しているため、図6の時点では、成形ワーク10Aにまだ接していない。
【0059】
図7は、図6の状態からさらに上刃250が下側に移動した様子を示している。図7の時点においてもまだ、第2の刃252の先端Tは成形ワーク10Aに接していない。図7に示すように、第1の刃251A,251Bのそれぞれの先端Tが下側に移動して山頂部110を押圧することにより、ユニット100Aの山頂部110及びユニット100Bの山頂部110のそれぞれが、幅方向Wにおける中央部において下側に押し潰されるように変形する。具体的には、2つの山頂部110のそれぞれが、幅方向Wにおける中央部において第1の刃251の先端Tによって押圧されることにより、それぞれの山頂部110は、上刃250の第1の傾斜面253に沿って変形する。
【0060】
図8は、図7の状態からさらに上刃250が下側に移動した様子を示している。図8に示すように、図7の状態からさらに上刃250が下側に移動すると、ユニット100Aの山頂部110及びユニット100Bの山頂部110のそれぞれが、幅方向Wにおける中央部において下側にさらに押し潰され、それぞれの山頂部110は、上刃250の第1の傾斜面253だけでなく、さらに第2の傾斜面254に沿って変形する。その結果、それぞれの山頂部110は、幅方向Wにおける中央に対する両側の部分のそれぞれが弧を描くように変形する。このように、図8の状態において、山頂部110は、幅方向Wの中央部(第1の刃251が押圧する部分)に対して2つの弧をなす形状(例えば、略M字状)に変形する。
【0061】
また、図8の状態では、第2の刃252のそれぞれが谷底部120,130に接する。具体的には、第2の刃252Aがユニット100Aの谷底部130に、第2の刃252Bがユニット100Aの谷底部120に、第2の刃252Cがユニット100Bの谷底部120に、第2の刃252Dがユニット100Bの谷底部130に、それぞれほぼ同時に接する。そして、この状態から成形ワーク10Aが第1の刃251の先端T及び第2の刃252の先端Tによってさらに下側に押圧される結果、谷底部120,130が変形する。具体的には、第2の刃252A,252Dによって谷底部130,130が押圧されることによって、ユニット100Aの谷底部130及びユニット100Bの谷底部130のそれぞれは、上側に折り曲げられ、最終的には、第3の傾斜面257及び第4の傾斜面259に沿って弧状に変形する。また、第2の刃252B,252Cによって谷底部120(連結谷底部)が押圧される結果、谷底部120(連結谷底部)は、幅方向Wにおける中央が上側に凸になるように曲げられ、上刃250の対向面250Fの第2の部分272に沿って弧状に変形する。
【0062】
図9は、図8の状態からさらに上刃250が下側に移動した様子を示している。図9に示すように、図8の状態からさらに上刃250が下側に移動することにより、成形ワーク10Aの露出部10AEが、第1の刃251及び第2の刃252によって7つのスクラップ10AE1,10AE2,10AE3,10AE4,10AE5,10AE6,10AE7に切断される。そして、その結果、成形ワーク10Aが、切断金型231の第2セグメント231B内にあるデッキプレート100と、第1セグメント231A内にある切断処理後の成形ワーク10Aと分断される。こうして、切断工程が終了する。
【0063】
上記7つのスクラップのうちスクラップ10AE1は、第2の刃252Aによって切断されて生じたスクラップである。スクラップ10AE1は、第2の刃252Aによって押圧され、第3の傾斜面257及び第4の傾斜面259に沿って変形したことにより、両端部が内向きになるように弧状に丸まっており、第2の刃252Aから上刃250の一方側の端部258までの幅(幅方向Wにおける長さ)と概ね等しい幅W1に切断されている。スクラップ10AE2は、第1の刃251Aと第2の刃252Aとによって切断されて生じたスクラップである。スクラップ10AE2は、第1の刃251Aと第2の刃252Aとによって押圧され、第1の傾斜面253及び第2の傾斜面254に沿って変形したことにより、両端部が内向きになるように弧状に丸まっており、第1の刃251Aから第2の刃252Aまでの幅と概ね等しい幅W2に切断されている。スクラップ10AE3は、第1の刃251Aと第2の刃252Bとによって切断されて生じたスクラップである。スクラップ10AE3は、第1の刃251Aと第2の刃252Bとによって押圧され、第1の傾斜面253及び第2の傾斜面254に沿って変形したことにより、両端部が内向きになるように弧状に丸まっており、第1の刃251Aから第2の刃252Bまでの幅と概ね等しい幅W3に切断されている。
【0064】
スクラップ10AE4は、第2の刃252Bと第2の刃252Cとによって切断されて生じたスクラップである。スクラップ10AE4は、第2の刃252Bと第2の刃252Cとによって押圧され、対向面250Fの第2の部分272に沿って変形したことにより、両端部が内向きになるように弧状に丸まっており、第2の刃252Bから第2の刃252Cまでの幅と概ね等しい幅W4に切断されている。
【0065】
スクラップ10AE5は、第1の刃251Bと第2の刃252Cとによって切断されて生じたスクラップである。スクラップ10AE5は、第1の刃251Bと第2の刃252Cとによって押圧され、第1の傾斜面253及び第2の傾斜面254に沿って変形したことにより、両端部が内向きになるように弧状に丸まっており、第1の刃251Bから第2の刃252Cまでの幅と概ね等しい幅W5に切断されている。スクラップ10AE6は、第1の刃251Bと第2の刃252Dとによって切断されて生じたスクラップである。スクラップ10AE6は、第1の刃251Bと第2の刃252Dとによって押圧され、第1の傾斜面253及び第2の傾斜面254に沿って変形したことにより、両端部が内向きになるように弧状に丸まっており、第1の刃251Bから第2の刃252Dまでの幅と概ね等しい幅W6に切断されている。スクラップ10AE7は、第2の刃252Dによって切断されて生じたスクラップである。スクラップ10AE7は、第2の刃252Dによって押圧され、第3の傾斜面257及び第4の傾斜面259に沿って変形したことにより、両端部が内向きになるように弧状に丸まっており、第2の刃252Bから上刃250の他方側の端部258までの幅と概ね等しい幅W7に切断されている。
【0066】
図3及び図9に示すように、切断金型231の間隙Gの下には、送出方向Fと交差する方向に延びるコンベア280が配置されている。なお、本実施形態では、コンベア280は、幅方向W(図3及び図9の紙面に垂直な方向)に平行に延びているが、これに限定されるものではない。コンベア280の下流端の下には、スクラップバック290が配置されている。したがって、上述の7つのスクラップ10AE1,10AE2,10AE3,10AE4,10AE5,10AE6,10AE7は、コンベア280によって移送されてスクラップバック290へと落下し、回収される。
【0067】
このように、本実施形態に係る上刃250は、山頂部110に接する複数の第1の刃251と、谷底部120,130に接する複数の第2の刃252とを備えるため、例えば、上刃の有する刃が山頂部110に接する第1の刃251のみである場合に比べて、成形ワーク10Aの露出部10AEを細かく切断することができる。例えば上刃が第1の刃251A,251Bのみ有する場合は3つのスクラップが生じるが、本実施形態の上刃250は、2つの第1の刃251A,251Bに加えて、4つの第2の刃252A~252Dを有するため、露出部10AEを7つのスクラップ10AE1~10AE7に切断することができる。このように細かく切断されたスクラップは互いに絡み合い難いため、スクラップバック290の一か所にスクラップが堆積することが抑制される。
【0068】
また、本実施形態に係る上刃250では、高さ方向Hにおいて、第2の刃252の先端Tが第1の刃251の先端Tと同じ位置にあり、第1の刃251の先端Tから第2の刃252の先端Tまでの距離が山頂部110から谷底部120,130までの距離hmよりも短い。このような構成により、第1の刃251が山頂部110に接してから第2の刃252が谷底部120,130に接するまでの間にタイムラグが生じる。このタイムラグにより、例えば、第1の刃251Aと第2の刃252Aとの間の部分に着目すると、山頂部110の概ね半分と、傾斜部140と、谷底部130の概ね半分とを、上刃250の第1の傾斜面253及び第2の傾斜面254によって弧状に変形させた後に切断することができる(図7及び図8参照)。このため、細分化されたスクラップ10AE2が形成されるだけでなく、スクラップ10AE2を弧状に丸まった形状にすることができる。スクラップ10AE3,10AE5,10AE6も同様である。そのため、スクラップの直線状の部分同士が絡み合うことが抑制され、スクラップバック290の一か所にスクラップが堆積することがより抑制される。
【0069】
また、上述のように本実施形態に係る上刃250によれば、7つのスクラップ10AE1~10AE7のそれぞれにおいて、両端部が内向きになるように丸まっているため、巣スクラップの両端部が外向きになっている場合に比べてスクラップ同士が絡まることがより抑制される。
【0070】
特に、成形ワーク10Aのうち第1の刃251と第2の刃252とが接する部分の間には、比較的長い距離に亘って直線状に延在する傾斜部140がある。上刃250によれば、上述のように、第1の刃251Aと第2の刃252Aとがタイムラグをもって成形ワーク10Aに接し、かつ、第1の傾斜面253及び第2の傾斜面254に沿って変形するため、長い直線状の傾斜部140を丸めてスクラップにすることができる。このため、スクラップに占める直線状の部分の割合が減り、スクラップが絡み合うことがさらに抑制される。したがって、上刃250によれば、スクラップバック290の一か所にスクラップが堆積することがさらに抑制される。
【0071】
また、本実施形態に係る上刃250によれば、比較的長い直線状の部分である谷底部120(連結谷底部)に対して2つの第2の刃252B,252Cが接して押圧し、谷底部120が切断される。そして、長い直線状の谷底部120は、中央部250wcに対して対称の傾斜状に形成されている第2の部分272に沿って変形して丸められるため、連結谷底部のスクラップが直線状になることも抑制される。なお、上記のように、2つの谷底部130の幅方向Wにおける他の半分の部分も、第3の傾斜面257及び第4の傾斜面259に沿って変形し、丸まったスクラップとなる。このため、本実施形態に係る上刃250によれば、7つのスクラップ10AE1,10AE2,10AE3,10AE4,10AE5,10AE6,10AE7の全てにおいて直線状の部分が占める割合が減るため、スクラップが絡み合うことがさらに抑制され、スクラップバック290の一か所にスクラップが堆積することがより抑制される。
【0072】
また、本実施形態に係る上刃250では、厚み方向(長さ方向L)から見る場合に、第1の傾斜面253と第2の傾斜面254とが、第1の傾斜面253と第2の傾斜面254との接続部256に対して対称に形成されている。このような構成によれば、接続部256に対する両側で成形ワーク10Aが同程度に曲げられるため、スクラップに占める直線状の部分をより減らすことができるとともに、スクラップの幅をより小さくすることができる。そのため、本実施形態に係る上刃250によれば、スクラップが絡み合うことがさらに抑制され、スクラップバック290の一か所にスクラップが堆積することがさらに抑制される。
【0073】
以上、本発明について上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記実施形態では、高さ方向Hにおいて、第2の刃252の先端Tが第1の刃251の先端Tと同じ位置にある例を説明した。しかし、例えば図10に示すように、高さ方向H(複数の刃が突出する方向)において、第1の刃251の先端Tから第2の刃252の先端Tまでの距離hcが、山頂部110から谷底部120,130までの距離hmよりも短い場合、第2の刃252の先端Tが第1の刃251の先端Tよりも、成形ワーク10A側(複数の刃が突出する側)にあってもよく、あるいは、成形ワーク10A側とは反対側(複数の刃が突出する側とは反対側)にあってもよい。図10の変形例では、第1の刃251から接続部256までの第1の傾斜面253と第2の刃252から接続部256までの第2の傾斜面254とが、接続部256に対して非対称に形成されることより、第2の刃252の先端Tが、第1の刃251の先端Tよりも複数の刃が突出する側にある。このような構成によっても、第1の刃251が山頂部110に接してから第2の刃252が谷底部120,130に接するまでの間にタイムラグが生じるため、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。なお、距離hcの距離hmに対する比率hc/hmは、例えば1/2以下であってもよく、1/4以下であってもよく、1/8以下であってもよく、1/16以下であってもよく、あるいは、その他の比率以下であってもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、成形ワーク10Aが2つのユニット100A,100Bからなる例を説明したが、例えば、1つのユニット100Aからなってもよい。この場合、上刃は、例えば、1つの第1の刃251と、幅方向Wにおいて第1の刃251の両側に位置する第2の刃252とを含んでもよい。すなわち、この場合、第2の刃252は3つである。あるいは、成形ワーク10Aが3つのユニットからなってもよい。この場合、上刃は、例えば、3つの第1の刃251と、3つの第1の刃251に対して幅方向の両側に位置する第2の刃252を含んでもよい。すなわち、この場合、第2の刃252は6つである。したがって、例えば、ユニットの数がn(nは自然数)の場合、n個の第1の刃251と2n個の第2の刃252とを含むように上刃を形成してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、第1の傾斜面253と第2の傾斜面254とが、第1の傾斜面253と第2の傾斜面254との接続部256に対して対称に形成されている例を説明したが、この構成は必須ではない。例えば、上記実施形態では、谷底部120(連結谷底部)に対向する第2の刃252を2つ(第2の刃252B,252C)にしたが、谷底部120(連結谷底部)に対向する第2の刃252を第2の刃252B,252Cの一方のみにしてもよい。この場合も、第1の刃251から接続部256までの第1の傾斜面253と第2の刃252から接続部256までの第2の傾斜面254とが、接続部256に対して非対称になり得る。
【0077】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の金属材切断用刃物を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
10A…成形ワーク(金属材)、100A,100B…ユニット、110…山頂部、120…谷底部(連結谷底部)、130…谷底部、140…傾斜部、250…上刃(金属材切断用刃物)、250F…対向面、251…第1の刃、252…第2の刃、253…第1の傾斜面、254…第2の傾斜面、256…接続部
図1
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図7
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図9
図10