(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136872
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】細隙灯顕微鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 3/135 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B3/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048165
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100107010
【弁理士】
【氏名又は名称】橋爪 健
(72)【発明者】
【氏名】新井 慎平
(72)【発明者】
【氏名】本田 成
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA02
4C316AA25
4C316AB16
4C316AB19
4C316FA04
4C316FA18
4C316FB12
4C316FB21
4C316FY09
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】 それぞれの病変に対する動作モードに応じた撮影条件での撮影を可能にすること。
【解決手段】 被検眼画像(特に前眼部画像)のライブ表示中(被検眼の観測中)に、結膜炎や角膜傷などの所見が見られた場合、該当の動作モードのボタンを押下する事で、それぞれの病変に応じた撮影条件(明るさや位置等)が自動設定される。その動作モードにあった撮影条件になるように、架台移動(固視標移動)や明るさ(例、スリット幅・スリット照明光量・スリット旋回角度等)等を制御することができる。また、動作モードに応じた個別の病変強調・描画をすることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各動作モードに対して、固視位置制御の要否を予め定めた固視標制御情報及び特徴量を記憶した記憶部と、
入力部と、固視標制御部と、撮影部と、表示部と、制御部と、
を備え、
前記表示部に前眼部画像が表示されているとき、前記入力部により動作モードが入力され、
前記制御部は、
(i) 前記記憶部を参照し、前記動作モードに対する固視標制御情報に従い、固視位置制御を要すると判断した場合、前記動作モードに対する特徴量が最大となる固視位置に前記固視標制御部により固視を移動させ、前記特徴量が最大になるようにスリット旋回角度及びスリット照明光量及びスリット幅のいずれかひとつ又は複数を設定し、一方、
(ii) 前記記憶部を参照し、前記動作モードに対する固視標制御情報に従い、固視位置制御を要しないと判断した場合、前記動作モードに対する特徴量が最大になるようにスリット旋回角度及びスリット照明光量及びスリット幅のいずれかひとつ又は複数を設定し、
前記制御部は、前記撮影部により、設定されたスリット旋回角度及びスリット照明光量及びスリット幅のいずれかひとつ又は複数で照射されるスリット光により被検眼を撮影し、撮影された前眼部画像を記憶部に記憶及び/又は表示部に表示する及び/又は外部に出力すること、
を特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項2】
照明発光駆動部と、照明発光部と、スリット幅駆動部、
をさらに備え、
前記制御部は、
動作モードが結膜炎モードと判断した場合、
前記特徴量を予め定められた色成分に設定し、
前記制御部は、前記固視標制御部により、固視位置を予め定められた範囲移動させて色成分面積が最大となる固視位置に設定し、
前記照明発光駆動部により、前記スリット旋回角度を予め定められた範囲変化させて、色成分が最大となるスリット旋回角度に設定し、
前記照明発光部により、前記スリット照明を予め定められた範囲変化させて、色成分が最大となるスリット照明光量に設定し、
前記スリット幅駆動部により、スリット幅を予め定められた範囲変化させて、色成分が最大となるスリット幅に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載された細隙灯顕微鏡。
【請求項3】
照明発光駆動部と、照明発光部と、スリット幅駆動部、
をさらに備え、
前記制御部は、
動作モードが傷モードと判断した場合、
前記特徴量を予め定められた輝度値又はエッジ強度に設定し、
前記固視標制御部により、固視位置を予め定められた範囲移動させて輝度値又はエッジ強度が最大となる固視位置に設定し、
前記照明発光駆動部により、前記スリット旋回角度を予め定められた範囲変化させて、輝度値又はエッジ強度が最大となるスリット旋回角度に設定し、
前記照明発光部により、前記スリット照明を予め定められた範囲変化させて、輝度値又はエッジ強度が最大となるスリット照明光量に設定し、
前記スリット幅駆動部により、スリット幅を予め定められた範囲変化させて、輝度値又はエッジ強度が最大となるスリット幅に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載された細隙灯顕微鏡。
【請求項4】
照明発光駆動部と、照明発光部と、スリット幅駆動部、
をさらに備え、
前記制御部は、
動作モードが新生血管モードと判断した場合、
前記特徴量を予め定められたエッジ強度又は色成分に設定し、
前記照明発光駆動部により、前記スリット旋回角度を予め定められた範囲変化させて、エッジ強度又は色成分が最大となるスリット旋回角度に設定し、
前記照明発光部により、前記スリット照明を予め定められた範囲変化させて、エッジ強度又は色成分が最大となるスリット照明光量に設定し、
前記スリット幅駆動部により、スリット幅を予め定められた範囲変化させて、エッジ強度又は色成分が最大となるスリット幅に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載された細隙灯顕微鏡。
【請求項5】
照明発光駆動部と、照明発光部と、スリット幅駆動部、
をさらに備え、
前記制御部は、
動作モードがドライアイモードと判断した場合、
前記特徴量を予め定められたエッジ強度に設定し、
前記照明発光駆動部により、前記スリット旋回角度を予め定められた範囲変化させて、エッジ強度が最大となるスリット旋回角度に設定し、
前記照明発光部により、前記スリット照明を予め定められた範囲変化させて、エッジ強度が最大となるスリット照明光量に設定し、
前記スリット幅駆動部により、スリット幅を予め定められた範囲変化させて、エッジ強度が最大となるスリット幅に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載された細隙灯顕微鏡。
【請求項6】
前記制御部は、
取得済の前眼部画像、又は、設定されたスリット旋回角度及びスリット照明光量及びスリット幅のいずれかひとつ又は複数で照射されるスリット光で前記撮影部により撮影された前眼部画像に基づき、涙液メニスカスの高さを計算し、
涙液メニスカスの高さと前眼部画像を表示部に表示及び/又は記憶部に記憶する及び/又は外部に出力する、
ことを特徴とする請求項5に記載された細隙灯顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細隙灯顕微鏡に係る。
【背景技術】
【0002】
細隙灯顕微鏡(スリットランプ顕微鏡)に関しては、例えば、次のような従来技術がある。
例えば、特許文献1には、「実施形態のスリットランプ顕微鏡は、1以上の動作モードの動作内容を示す動作モード情報を予め記憶する。照明系は、出力波長が異なる2以上の光源を含む。いずれかの動作モードには照明波長が関連付けられている。指定された動作モードに照明波長が関連付けられているとき、制御部は、この照明波長に基づいて2以上の光源のいずれかに光を出力させるように制御を行う。」(要約)ということが記載されている。
また、特許文献2には、「涙液状態評価方法、コンピュータプログラム、装置」において、「被検者に痛みや不快感を与えることない、非侵襲的に涙液メニスカスの涙液の状態や涙液量を評価するもの」(段落0012)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-58786号公報
【特許文献2】特許第7165660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、被検眼の表示中(特に、ライブ表示中(観測中))に、病変が疑われる所見が見られた場合に、簡単な操作で病変毎の撮影条件に対応することが望まれる場合があった。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、それぞれの病変に対する動作モードに応じた撮影条件での撮影を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の解決手段によると、
各動作モードに対して、固視位置制御の要否を予め定めた固視標制御情報及び特徴量を記憶した記憶部と、
入力部と、固視標制御部と、撮影部と、表示部と、制御部と、
を備え、
前記表示部に前眼部画像が表示されているとき、前記入力部により動作モードが入力され、
前記制御部は、
(i) 前記記憶部を参照し、前記動作モードに対する固視標制御情報に従い、固視位置制御を要すると判断した場合、前記動作モードに対する特徴量が最大となる固視位置に前記固視標制御部により固視を移動させ、前記特徴量が最大になるようにスリット旋回角度及びスリット照明光量及びスリット幅のいずれかひとつ又は複数を設定し、一方、
(ii) 前記記憶部を参照し、前記動作モードに対する固視標制御情報に従い、固視位置制御を要しないと判断した場合、前記動作モードに対する特徴量が最大になるようにスリット旋回角度及びスリット照明光量及びスリット幅のいずれかひとつ又は複数を設定し、
前記制御部は、前記撮影部により、設定されたスリット旋回角度及びスリット照明光量及びスリット幅のいずれかひとつ又は複数で照射されるスリット光により被検眼を撮影し、撮影された前眼部画像を記憶部に記憶及び/又は表示部に表示する及び/又は外部に出力すること、
を特徴とする細隙灯顕微鏡である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、それぞれの病変に対する動作モードに応じた撮影条件での撮影を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図7】細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャートの変形例。
【
図10】新生血管モードの動作を表すフローチャート。
【
図11】ドライアイモードの動作を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明に係る細隙灯顕微鏡の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
まず方向を定義しておく。装置光学系において最も被検者側に位置する光学素子から被検者に向かう方向を前方向(z方向)とし、その逆方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向(x方向)とする。更に、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向(y方向)とする。
【0010】
A.細隙灯顕微鏡の一例
図1に、細隙灯顕微鏡の一例の外観構成図を示す。
図2に、細隙灯顕微鏡の一例の概要構成図を示す。
この実施形態に係る細隙灯顕微鏡の外観構成について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
細隙灯顕微鏡1には、制御部(CPU、コンピュータ)100が接続されている。制御部100は、各種の制御処理や演算処理を行う。制御部100には、被検眼Eの前眼部の画像を撮影し結果を出力するまでの一連の動作指令を予め記憶部90に記憶させておき、後述する顎受け台10に配置した圧力センサー等で被検者を検知した後自動的に動作を行わせることができる。一連の動作指令はバージョンアップされるごとに書き換えることができる。なお、顕微鏡本体(光学系等を格納する筐体)とは別に制御部100を設ける代わりに、顕微鏡本体に同様の制御部、演算部、CPU、コンピュータを搭載した構成を適用することも可能である。またモニター等の表示部(表示装置)80を接続し撮影カメラ5aで撮影した被検眼Eの前眼部Ea等の画像を表示することも可能である。
【0011】
細隙灯顕微鏡1は架台2上に載置される。なお、制御部100は他のテーブル上又はその他の場所に設置されていてもよい。支持部8は、架台駆動部(移動機構部)40を介して水平方向、左右方向及び上下方向に移動可能に構成されている。
支持部8は、撮影部(撮影系)5及び照明発光部(照明系)6を支持する。支持部8の一端には、撮影系5を支持する固定柱7が取り付けられている。固定柱7の上部には、中央に撮影カメラ5aが設置され、撮影カメラ5aを中心に左右に第1ステレオカメラ5b、第2ステレオカメラ5cがステレオカメラ支持部5dに固定配置され、照明系6を取り囲むように設置されている。なお、第1ステレオカメラ5b、第2ステレオカメラ5cをステレオカメラ支持部5dに配置せずに、撮影系5が第1ステレオカメラ5b及び第2ステレオカメラ5cを撮影カメラ5aと一体に備えるようにしても良い。
【0012】
撮影カメラ5aの上部には、平行投影光を発光する光源9a、9bが設置され、撮像カメラレンズを兼用し、被検眼Eの角膜Eaに平行投影光が投影され、被検眼Eと細隙灯顕微鏡1のアラメントが調整される。
支持部8の他端の上部には、照明発光部50を支持する回動筒部基部6e、照明発光駆動部(照明部回動部)55が設置され、照明部6bを旋回軸周りに旋回させ、スリット照明光を被検眼Eに対し左側から、あるいは右側から照射することができる。
回動筒部基部6eの上部には、回動筒部6dが旋回軸のまわりに回動可能に設置され、回動筒部6dにはスリット照明部回動アーム6cを介しスリット6aを支持する照明部6bが配置されている。図示されていないが、スリット照明部回動アーム6cを鉛直下方に傾斜させる回動部が回動筒部6dに配置されている。
なお、スリット照明部回動アーム6cは、取り外し可能に構成してもよく、被検眼Eを斜め下部方向から斜め照明させるカーブした回動アームを装着することもできる。
【0013】
固定柱7は架台駆動部40のXYZ駆動部3aのz方向駆動部3a1によりz方向駆動台3a2が移動し、被検眼Eに対しz方向(前後方向)に移動可能に取り付けられている。被検眼Eへのアライメント調整の際に移動される。
左右眼を切り替える際に移動される。被検眼Eの右眼が観察撮影された後、左眼が観察撮影される。
また、固定柱7は架台駆動部40のXYZ駆動部3aのx方向駆動部(図示せず)によりx方向駆動台3b2が移動され、被検眼Eに対しx方向(左右方向)に移動可能に取り付けられている。被検眼Eの左右眼を切り替える際に移動される。被検眼Eの右眼が撮影された後、左眼が撮影される。
さらに、固定柱7は架台駆動部40のXYZ駆動部3aのy方向駆動部3cにより上下方向に移動され、被検眼Eに対し、撮影カメラ5aが正面に対峙するように高さ調整することができる。
【0014】
撮影部30は、光源9a、9bから、被検眼Eの角膜Eaに平行投影光が発光され、撮影部の対物レンズと撮像素子の間に配置されたハーフミラーを介して被検眼Eの前眼部に平行投影光が投影され、前眼部にプルキンエ輝点が投影され、前眼部画像が撮影される。撮影された前眼部画像に基づき被検眼Eの位置が検出され、自動的に支持台8及び固定柱7がxyz方向に移動し、被検眼Eと細隙灯顕微鏡1本体のアラメントが調整され、被検眼Eの撮影に最適な距離に細隙灯顕微鏡1本体が配置される。
【0015】
ここで、オートアライメント(ラフアライメント)について説明する。
被検者が顎受けに顎を乗せ、被検眼Eの検査を開始し、ステレオカメラ5b、5cにより被検眼Eを撮影する。撮影した画像から被検眼Eの瞳孔を検出し、被検眼Eの3次元位置を特定する。瞳孔の代わりにプルキン輝点を検出してもよい。
すなわち、制御部100は顕微鏡1本体のXYZ駆動部3aを駆動し、被検眼Eと顕微鏡1本体が測定開始の基準位置である規定の位置まで移動させる。以上により、被検眼Eと顕微鏡1本体はアライメントが行われる。
【0016】
照明発光部50は、被検眼Eに照明光を照射する。照明発光部50は、前述のように、回動筒の旋回軸を中心に左右方向に駆動することができる。それにより被検眼Eに対する照明光の照射方向が変更される。回動筒部6dの、図示しないスリット照明部回動アーム6cを鉛直下方に傾斜させる回動部により、スリット照明部回動アーム6cを下方に傾斜させ、斜め方向から被検眼Eが斜め照明される。
なお、照明部回動アーム6cを、被検眼Eを斜め下部方向から斜め照明させるカーブした回動アームに取り換え、装着することにより、照明発光部50は上下方向にも移動可能又は回動可能なように構成してもよい。照明光の仰角や俯角を変更できるように構成してもよい。
また、照明部回動アーム6cを被検眼Eの視線に対し、下部の位置に配置させるように平行移動可能又は回動可能なリンク機構からなるアームを装着し、かつ、照明部6bを被検眼に対し後方に傾斜可能にすることで同様の斜め下部照明が可能となり、斜め下部からの被検眼Eの照明および撮影を可能にすることができる。
撮影部30に対峙する位置には顎受け台10が配置されている。顎受け台10には、被検者の顔を安定配置させるための顎受部10aと額当て10bが設けられている。
撮影カメラ5aには、対物レンズ、平行光を導光する光学レンズから構成されている。
なお、撮影倍率を変更するためのオートフォーカス機構を配置してもよく、自動的に撮影倍率が調整される。更に、撮影カメラ5aには、被検眼Eを撮影するための撮像装置が接続されている。撮像装置は撮像素子を含んで構成されている。撮像素子は、光を検出して画像信号(電気信号)を出力する光電変換素子である。画像信号は制御部100に入力される。撮像素子としては、たとえばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
【0017】
固視標は被検眼の視線方向を固定する視標である。内部固視標は固視光源、絞り、レンズを介して、撮影系の対物レンズを通り、被検眼に投影される。
外部固視標は、撮影系の対物レンズを通らずに被検眼に投影する固視標と定義する。例えば外部固視標はステレオカメラ支持部5dに複数個配置されてもよい。また、額当て10bに配置した蛇腹機構を用いて固視標を任意の位置に動かしてもよい。
固視標制御部70は複数ある固視標のいずれかを点灯させるかを制御する。また額当て10bに配置した固視標がある場合には、蛇腹機構を制御して指定された位置に固視標を移動させる。
更に、制御部100の代わりに、モバイル等の携帯端末装置200の表示画面100aに前眼部Ea等の画像を表示し、携帯端末装置200の演算処理装置を介して遠隔操作し、被検眼Eの観察撮影を行うこともできる。
【0018】
B.概要
本実施の形態の細隙灯顕微鏡は、特に、被検眼画像(特に前眼部画像)のライブ表示中(被検眼の観測中)に、結膜炎や角膜傷などの所見が見られた場合、所見に対応する動作モードのボタンを押下する事で、それぞれの病変に応じた撮影条件(明るさや位置等)を自動設定することができる。
その際、上述した動作モードにあった撮影条件になるように、固視標移動や明るさ(例、スリット幅・スリット照明光量・スリット旋回角度等)等を制御することができる。また、動作モードに応じた個別の病変強調・描画をすることができる。
動作モード毎の共通処理としては、病変毎に応じた特徴量が最大となるように撮影条件(ピントや明るさ)を自動制御することができる。例えば、特徴量が最大になるように、固視標移動、明るさ調整等を行うことができる。動作モード毎の特徴量は、一例としては、結膜炎や新生血管強調では画像の色成分(例、R成分、G成分)・輝度値、傷やドライアイではエッジ強度や輝度値とすることができる。
なお、ライブ表示中の被検眼画像(特に前眼部画像)に限らず、撮影された被検眼画像(特に前眼部画像)を、例えば記憶部から読み出したり、外部から取得・入力したりしてもよい。以下では、一例として、主にライブ表示中の例について説明する。
【0019】
図3に、表示画面の説明図を示す。
図3aには、病変ごとの選択ボタン(動作モード)による表示画面切り替えの様子が示される。例えば、ライブ表示画面中に、前眼部画像と、「結膜炎モード」、「傷モード」、「新生血管モード」、「ドライアイモード」の選択ボタンが表示される。
ここで、「結膜炎モード」のボタンを押すと、
図3bに示すような結膜炎に対応した画像が表示され、また、「傷モード」のボタンを押すと、
図3cに示すような傷に対応した画像が表示される。
動作モードはこれらに限らず、適宜のものを設定することができ、それに対応して以下に詳述するように、各動作モードに応じて、特徴量、固視標制御、スリット幅・スリット照明光量・スリット旋回角度・撮影位置等が予め定められ、各動作モードに対応する制御・処理を実行して強調画像等を出力することができる。
【0020】
以下に、動作モードに応じた装置設定・制御の一例の概略を説明する。
(i)動作モードの特徴量が最大なるように固視位置を移動する。
結膜炎モード又は傷モードでは固視移動をする。例えば、明るさや架台位置などの撮影条件を決める前に、固視位置を全体的に移動させてから、特徴量が最大となるところで固視標を止めるようにしてもよい。例えば、動作モードの選択ボタンの押下後に、固視標位置を適宜の範囲で(例えば、上下左右-60度~60度、上下左右0度~180度、等)振って、特徴量が最大となる位置に固視標位置を移動させることができる。
その後、特徴量が最大となるように撮影条件を制御することができる。特徴量が最大となった箇所に、固視標を固定し、その後で特徴量が最大となるように撮影条件を設定することができる。固視標位置制御について動作モードごとに以下に説明する。
【0021】
・結膜炎モード:固視標を全体的に(耳側~鼻側、上下)に移動させ、特徴量(例、特定の色成分)が最大の箇所を見つけることで固視標位置を調整することができる。結膜炎モードでは、固視標移動して、例えば、赤くなっている部分が多い所(前眼部内の画像のRed成分面積が一番多くなる位置)、又は、緑になっている部分が多い所(前眼部内の画像のGreen成分面積が一番多くなる位置)等に固視を移動するようにしてもよい。
・傷モード:固視標を全体的に(耳側~鼻側、上下)に移動させ、特徴量(例、散乱による輝度値が高い)が最大の箇所を見つけることで固視標位置を調整することができる。傷モードでは、固視標を移動して、散乱している部分に固視標位置してもよい。例えば、傷が多く検出される場所(エッジ強度大又は散乱による輝度が最大)に移動させるようにしてもよい。
・新生血管モード:固視標を移動せず、正面画像を用いることができる。
・ドライアイ:固視標を移動せず、正面画像を用いることができる。
【0022】
(ii)動作モードの以下に示す特徴量が最大になるように、照明角度・スリット長・光量・バックグラウンド照明のいずれかひとつ又は複数を変更する。
・結膜炎モード:色成分、
・傷モード:エッジ強度、輝度値、
・新生血管モード:エッジ強度、色成分、
・ドライアイモード:エッジ強度、
【0023】
(iii)動作モードに応じた出力を行う。
動作モード毎の出力画像の例を以下に説明する。
・結膜炎モード:結膜炎部分を強調画像(例えば、R成分やG成分等)が一番強くなるような位置、明るさとすることができる。また、例えば、特定成分(例えばR成分、G成分等)だけ取り出した画像に変更することができる。
・傷モード:傷部分の強調画像(例えば、ピントを角膜に移動、傷を判定し、描画することができる。傷の部分は機械学習または2値化等画像処理を行い、散乱が多くなる箇所を特定することができる。)
・新生血管モード:血管位置を強調画像(例えば、R成分やG成分等が一番強くなるような位置、明るさ)
・ドライアイモード:涙液メニスカスの高さと涙液メニスカス線の強調画像
【0024】
C.本実施の形態の細隙灯顕微鏡の詳細説明
図4に、細隙灯顕微鏡の制御系のブロック構成図を示す。
本実施の形態の細隙灯顕微鏡は、入力部(操作部)102、制御部(CPU)100、撮影部30、架台駆動部40、照明発光部50、照明発光駆動部55、スリット幅駆動部60、固視標制御部70、表示部80、記憶部90、を備える。
【0025】
図5に、記憶部に記憶される制御テーブルの説明図を示す。
制御テーブルは、それぞれの動作モード(以下、「モード」と呼ぶ場合がある。)に対する、固視位置制御の要否を予め定めた固視標制御情報と、予め定めた特徴量と、スリット幅・スリット照明光量・スリット旋回角度・撮影位置等のスリット設定についてのスリット調整処理情報が記憶される。なおスリット設定としては、スリット幅及びスリット照明光量及びスリット旋回角度のいずれかひとつ又は複数を含むようにしてもよい。なお、制御テーブルには、固視標制御情報と特徴量だけを記憶するようにして、スリット調整処理はフローチャート中に予め定められていてもよい。
【0026】
図6に、細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャートを示す。
まず、表示部80には、ライブ表示中の被検眼画像(特に前眼部画像)と各動作モードの選択ボタン(動作ボタン)が表示されているとする。
なお、ライブ表示中の被検眼画像(特に前眼部画像)に限らず、撮影された被検眼画像(特に前眼部画像)を、例えば記憶部から読み出したり、外部から取得・入力したりしてもよい。以下では、一例として、主にライブ表示中の例について説明する。
【0027】
以下各ステップについて説明する。
S100: 表示部80に表示された被検眼画像(特に前眼部画像)について、入力部102で操作者が、病変ごとの各動作モードの選択ボタン(動作モードボタン)により、モードを選択する。
S110: 制御部100は、入力されたモードに従い記憶部90の制御テーブルを参照し、各モードに対する、固視標制御情報と特徴量を読み出し、設定する。
S101:制御部100は、固視標制御情報により、選択されたモードで固視標を用いて固視標位置を制御(移動)するかどうか判断を行う。固視標位置を制御する場合(例、「耳側~鼻側」)、S103に処理を移行し、固視位置を制御しない場合(例、「中心/消灯」、S105に移行する。
S103: 撮影部30が撮影した画像から、S110で設定した特徴量が最大になるように、制御部100が固視標制御部70の制御を行い、固視標の位置を移動する(各モードの処理の詳細は後述)。
【0028】
S105: 撮影部30が撮影した画像から、制御部100が、S110で設定した特徴量が最大になるように、照明発光駆動部55によるスリット旋回角度の制御・調整、及び、照明発光部50によるスリット照明光量の制御・調整、及び、スリット幅駆動部60によるスリット幅の制御・調整のいずれかひとつ又は複数の制御・調整を実行する。その間、撮影部30は画像を取得し続けることができる。なお、制御・調整の処理については、特徴量を最大になるように処理する他にも、適宜の処理としてもよい。また、例えば記憶部90の制御テーブルに各モード毎に処理方法をセットしておき、制御部100がそのセットに従い処理を実行するようにしても良い。各モードの処理の詳細は後述する。
S106: S105で特徴量が最大になるように設定されたら、制御部100が撮影部30に指示を出し、S105で自動制御されたスリット幅・スリット照明光量・スリット旋回角度・撮影位置等で照射されるスリット光により、撮影部30で画像の撮影を行う。制御部100は、撮影した画像と解析された画像又はその一方を制御部100で表示をする。さらに、画像を記憶部90に記憶してもよいし、外部装置・回線に出力してもよい。
【0029】
図7に、細隙灯顕微鏡の動作を表すフローチャートの変形例を示す。
上述のフローチャートにおけるS110で、制御部100が制御テーブルを参照して固視情報、特徴量等のデータを読み出し・設定する処理を、
図7のフローチャートの他の例では、主に、固視標制御(S103)のためのステップ(S102)と、自動調整(S105)のステップ(S104)に分けたものであり、他の各ステップについては、上述した各ステップ番号での処理と同様である。
【0030】
以下各モードにおける詳細動作について説明する。ここでは、
図6のフローチャートに対応して説明するが、
図7のフローチャートの他の例に適用することもできる。
<結膜炎モード>
図8は、結膜炎モードの動作を表すフローチャートである。
なお、
図6のフローチャートを参照すると、S100で「結膜炎モード」が選択されたとき、制御部100は、S110、S101の処理を経て、以下のフローチャートで説明するようにS103及びS105、S106に相当する処理を実行する。また、主に、S201~S205がS103(
図6)に対応し、S206~S217がS105(
図6)に対応し、S218がS106(
図6)に対応する。
以下各ステップについて説明する。
【0031】
S201: 制御部100は、固視標制御部70により、機器に搭載されている固視標のいずれかを点灯させ、また外部固視標の場合はX、Y方向に移動させ、被験者の固視を誘導するように制御する。なお、固視の誘導範囲(XY方向)、固視の種類(内部固視や外部固視)は問わない。
S202: 制御部100は、取得した各固視標位置においての前眼部画像を、眼の範囲でマスク処理を行った画像を作成する。
S203: 制御部100は、S202で作成した画像において、固視移動中の、固視位置と色成分面積を記憶部90に記憶するように制御する。
S204: S201の誘導範囲で固視移動が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS201に戻り固視位置移動を続行させる。
S205: 制御部100は、S204にて記憶した色部分面積が最大となる固視標位置を取得する。制御部100は、固視標制御部70に、色成分面積が最大となる固視標位置に移動させるように通知し、固視標視制御部70は固視標位置に固視標を移動する。
【0032】
S206: 制御部100は、照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)を設定範囲内の最小から最大範囲(又は、予め定められた範囲)変化させる。
S207: 記憶部90に固視標位置と色成分を記憶させる。
S208:S206の誘導範囲で固視移動が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS206に戻り固視位置移動を続行させる。
【0033】
S209: 制御部100は、記憶部90から色成分が最大となる照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)を取得し、照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)として設定する。
S210: 制御部100は、照明発光駆動部55の位置をS209で設定した位置に配置し、照明発光部50の光量を最小から最大の設定範囲または予め定められた範囲で調整し、被検眼に照射する。
S211:撮影部30は被検眼を撮影し、記憶部90に記憶させる。記憶した画像を撮影したときの光量と色成分面積を記憶部90に記憶するように制御する。
S212:S209の設定範囲で光量の調整が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS206に戻り光量を変更して撮影を続行させる。
S213:制御部100は、記憶部90から色成分が最大となる照明発光部50の光量を取得し、照明発光部50のスリット光量として設定する。
【0034】
S214: 制御部100は、スリット幅駆動部60において、スリット光の幅を設定範囲内の最小から最大範囲(又は、予め定められた範囲)変化させ、被検眼にS209で得られた位置、S213で得られた光量にて被検眼に照射する。
S215:制御部100は、撮影部30は被検眼を撮影し、記憶部90に記憶させる。記憶した画像を撮影したときのスリット光の幅と色成分面積を記憶部90に記憶するように制御する。
S216:S214の設定範囲でスリット光の幅の調整が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS214に戻り光量を変更して撮影を続行させる。
S217:制御部100は、記憶部90から色成分が最大となるスリット幅駆動部60のスリット幅を取得し、スリット幅駆動部60のスリット幅として設定する。
なお、S206~S208、S209~S213、S214~S217の各設定処理において、各駆動部の制御順は問わない。
S213: 制御部100は、制御されたスリット幅・スリット照明光量・スリット旋回角度等で照射されるスリット光により、被検眼の撮影を行う。制御部100は、制御部100に取得画像を表示する及び/又は記憶部90に記憶する。
【0035】
<傷モード>
図9は、傷モードの動作を表すフローチャートである。
なお、
図6のフローチャートを参照すると、S100で「傷モード」が選択されたとき、制御部100は、S110、S101の処理を経て、以下のフローチャートで説明するようにS103及びS105、S106に相当する処理を実行する。また、主に、S301~S306がS103(
図6)に対応し、S307~S318がS105(
図6)に対応し、S319(
図6)に対応する。
以下各ステップについて説明する。
【0036】
S301: 制御部100は、固視標制御部70により、機器に搭載されている固視標のいずれかを点灯させ、また外部固視標の場合はX、Y方向に移動させ、被験者の固視を誘導するように制御する。固視の誘導範囲(XY方向)、固視の種類(内部固視や外部固視)は問わない。
S302: 制御部100は、取得した各固視標位置においての前眼部画像を、眼の範囲でマスク処理を行った画像を作成する。
S303: 制御部100は、マスク画像内から、エッジ検出を行い、エッジ位置(エッジ強度)を検出する(ここが傷位置に相当)。また、特徴量として輝度値を採用してもよい。輝度値の場合、エッジ検出はせずに、閾値以上の輝度値を持つ画素数をカウントし、記憶する。
S304: 制御部100は、 S302で作成した画像において、固視標移動中の、固視標位置とS303で推定した傷位置のエッジ強度または輝度値を記憶部90に記憶するように制御する。
S305: S301の誘導範囲で固視標移動が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS301に戻り固視標位置移動を続行させる。
S306: 制御部100は、S304にて記憶したエッジ強度または輝度値(傷部分)が最大となる固視標位置を取得し、制御部100は、固視標制御部70により、エッジ強度または輝度値(傷部分)が最大となる固視標位置に移動させる。
【0037】
S307: 制御部100は、照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)を設定範囲内の最小から最大範囲(又は、予め定められた範囲)変化させる。
S308: 撮影部30は被検眼を撮影し制御部は記憶部90に固視標位置とエッジ強度または輝度値を記憶させる。
S309:S307の誘導範囲で照明発光駆動部55の位置移動が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS307に戻り照明発光駆動部55の移動を続行させる。
S310: 制御部100は、記憶部90からエッジ強度または輝度値が最大となる照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)を取得し、照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)として設定する。
【0038】
S311: 制御部100は、照明発光駆動部55の位置をS310で設定した位置に配置し、照明発光部50の光量を最小から最大の設定範囲または予め定められた範囲で調整し、被検眼に照射する。
S312:撮影部30は被検眼を撮影し、記憶部90に記憶させる。記憶した画像を撮影したときの光量とエッジ強度または輝度値を記憶部90に記憶するように制御する。
S313:S310の設定範囲で光量の調整が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS311に戻り光量を変更して撮影を続行させる。
S314:制御部100は、記憶部90からエッジ強度または輝度値が最大となる照明発光部50の光量を取得し、照明発光部50のスリット光量として設定する。
【0039】
S315: 制御部100は、スリット幅駆動部60において、スリット光の幅を設定範囲内の最小から最大範囲(又は、予め定められた範囲)変化させ、被検眼にS310で得られた位置、S314で得られた光量にて被検眼に照射する。
S316:制御部100は、撮影部30は被検眼を撮影し、記憶部90に記憶させる。記憶した画像を撮影したときのスリット光の幅とエッジ強度または輝度値を記憶部90に記憶するように制御する。
S317:S315の設定範囲でスリット光の幅の調整が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS315に戻り光量を変更して撮影を続行させる。
S318:制御部100は、記憶部90からエッジ強度または輝度値が最大となるスリット幅駆動部60のスリット幅を取得し、スリット幅駆動部60のスリット幅として設定する。
なお、S307~S310、S311~S314、S315~S318において、各駆動部の制御順は問わない。
S319: 制御部100は、制御されたスリット幅・スリット照明光量・スリット旋回角度等で照射されるスリット光により、被検眼の撮影を行う。制御部100は、撮影部30で取得したライブ画像内の検出した傷位置を描画し、制御部100に表示する及び/又は記憶部90に記憶する。
【0040】
<新生血管モード>
図10は、新生血管モードの動作を表すフローチャートである。
なお、
図6のフローチャートを参照すると、S100で「新生血管モード」が選択されたとき、制御部100は、S110、S101の処理を経て、以下のフローチャートで説明するようにS103及びS105、S106に相当する処理を実行する。また、主に、S401~S414がS105(
図6)に対応し、S415がS106(
図6)に対応する。
以下各ステップについて説明する。
【0041】
S401: 制御部100は、取得した前眼部画像に対し、マスク処理を行い、虹彩部分の画像を抽出する。
S402: 制御部100は、 S401で取得したマスク輪郭部分(虹彩輪郭部分)から伸びている血管のエッジ検出を行い、エッジ強度を検出する。なお、特徴量として、エッジ強度を検出する代わりに、予め定められた色成分を検出してもよい。
S403: 制御部100は、照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)を調整し(S403-01)、設定範囲内の最小から最大範囲(又は、予め定められた範囲)変化させ、被検眼に照射させる。
S404:撮影部30は被検眼を撮影し制御部100は記憶部90に照明光駆動部55の位置と血管のエッジ(エッジ強度)または色成分を記憶させる。
S405:S403の誘導範囲で固視移動が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS307に戻り固視位置移動を続行させる。
S406: 制御部100は、記憶部90からエッジ強度または色成分が最大となる照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)を取得し、照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)として設定する。
【0042】
S407: 制御部100は、照明発光駆動部55の位置をS406で設定した位置に配置し、照明発光部50の光量を最小から最大の設定範囲または予め定められた範囲で調整し、被検眼に照射する。
S408:撮影部30は被検眼を撮影し、記憶部90に記憶させる。記憶した画像を撮影したときの光量とエッジを記憶部90に記憶するように制御する。
S409:S406の設定範囲で光量の調整が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS407に戻り光量を変更して撮影を続行させる。
S410:制御部100は、記憶部90からエッジ強度または色成分が最大となる照明発光部50の光量を取得し、照明発光部50のスリット光量として設定する。
【0043】
S411: 制御部100は、スリット幅駆動部60において、スリット光の幅を設定範囲内の最小から最大範囲(又は、予め定められた範囲)変化させ、被検眼にS406で得られた位置、S410で得られた光量にて被検眼に照射する。
S412:制御部100は、撮影部30は被検眼を撮影し、記憶部90に記憶させる。記憶した画像を撮影したときのスリット光の幅とエッジ強度または色成分を記憶部90に記憶するように制御する。
S413:S411の設定範囲でスリット光の幅の調整が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS411に戻り光量を変更して撮影を続行させる。
S414:制御部100は、記憶部90からエッジ強度または色成分が最大となるスリット幅駆動部60のスリット幅を取得し、スリット幅駆動部60のスリット幅として設定する。
なお、S403~406、S407~S410、S411~S414の各設定処理において、各駆動部の制御順は問わない。
S415: 制御部100は、制御されたスリット幅・スリット照明光量・スリット旋回角度等で照射されるスリット光により、被検眼の撮影を行う。制御部100は、制御部100に取得画像を表示する及び/又は記憶部90に記憶する。
【0044】
<ドライアイモード>
図11は、ドライアイモードの動作を表すフローチャートである。
なお、
図6のフローチャートを参照すると、S100で「ドライアイモード」が選択されたとき、制御部100は、S110、S101の処理を経て、以下のフローチャートで説明するようにS103及びS105、S106に相当する処理を実行する。また、主に、S501~S515がS105(
図6)に対応し、S516がS106(
図6)に対応する。
以下各ステップについて説明する。
【0045】
S501: 制御部100は、取得した前眼部画像に対し、涙液メニスカスの位置を検出する。液メニスカスとは、下まぶたの上の涙の溜まりのことである。通常、涙液が少なければ涙液メニスカスの高さは低く、涙液が多ければ涙液メニスカスの高さは高くなる。
S502:制御部100は、S501で取得した涙液メニスカス位置が画像中心に来るように、架台駆動部を駆動させる。例えば、装置を全体的に下げ、涙液メニスカスを画像中心に持ってくることができる。
【0046】
S503: 制御部100は、照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)を設定範囲内の最小から最大範囲(又は、予め定められた範囲)変化させる。
S504: 撮影部30は被検眼を撮影し制御部は記憶部90に固視標位置と涙液メニスカス線のエッジ強度を記憶させる。
S505:S503の誘導範囲で照明発光駆動部55の位置移動が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS503に戻り照明発光駆動部55の移動を続行させる。
S506: 制御部100は、記憶部90から涙液メニスカス線のエッジ強度が最大となる照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)を取得し、照明発光駆動部55の位置(スリット旋回角度)として設定する。
【0047】
S507: 制御部100は、照明発光駆動部55の位置をS506で設定した位置に配置し、照明発光部50の光量を最小から最大の設定範囲または予め定められた範囲で調整し、被検眼に照射する。
S508:撮影部30は被検眼を撮影し、記憶部90に記憶させる。記憶した画像を撮影したときの光量と涙液メニスカス線のエッジ強度を記憶部90に記憶するように制御する。
S509:S707の設定範囲で光量の調整が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS507に戻り光量を変更して撮影を続行させる。
S510:制御部100は、記憶部90から涙液メニスカス線のエッジ強度が最大となる照明発光部50の光量を取得し、照明発光部50のスリット光量として設定する。
【0048】
S511: 制御部100は、スリット幅駆動部60において、スリット光の幅を設定範囲内の最小から最大範囲(又は、予め定められた範囲)変化させ、被検眼にS506で得られた位置、S510で得られた光量にて被検眼に照射する。
S512:制御部100は、撮影部30は被検眼を撮影し、記憶部90に記憶させる。記憶した画像を撮影したときのスリット光の幅と涙液メニスカス線のエッジ強度を記憶部90に記憶するように制御する。
S513:S511の設定範囲でスリット光の幅の調整が終了した場合は、次の処理へ遷移させる。移動終了していない場合はS511に戻り光量を変更して撮影を続行させる。
S514:制御部100は、記憶部90から涙液メニスカス線のエッジ強度が最大となるスリット幅駆動部60のスリット幅を取得し、スリット幅駆動部60のスリット幅として設定する。
なお、S503~S506、S507~S510、S511~S514の各種設定処理において、各駆動部の制御順は問わない。
S515:制御部100は、取得画像からメニスカスの高さを計算する。涙液メニスカスの高さ測定方法としては、公知又は周知の手法を採用することができる。(例えば、エッジフィルタでエッジ強調してラベリングすること、4点で高さを測定してその位置とそれぞれの高さと平均を取得/表示すること等を用いることができる)。
S516: 制御部100は、制御されたスリット幅・スリット照明光量・スリット旋回角度等で照射されるスリット光により、被検眼の撮影を行う。制御部100は、S515で算出されたメニスカスの高さと取得画像を、制御部100に表示する及び/又は記憶部90に記憶する。
【0049】
D.実施の形態の効果
実施の形態は、次のような効果を奏する。
・病変ごとの選択ボタンにより、各病変モードによる強調画像を取得することができるので診断支援に役立つことを期待することができる。
・ライブ像表示画面に、病変ごとの動作モード(結膜炎モード、傷モードなど)の操作・選択ボタン等を実装し、ライブ中にボタン等を押す事などで、病変モードの撮影条件に選択される。また、被検眼の病状に応じて特徴量が最適化されるので、病変がより視認しやすい画像として得られる。
・結膜炎モード、新生血管強調モードでは、ボタン切替でライブ中の画像をR成分又はG成分のみの画像に変更する事が可能である。
・選択ボタン押下後、デジタルズームも可能である。
・ボタンを押した後に、キャンセルボタンで元の撮影条件に戻すことが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 細隙灯顕微鏡
2 架台
40、3a、3a1、3a2、3b、3b1、3b2、3c 架台駆動部(移動機構部)
30、5a、5b、5c、5d、5e、5d 撮影部(撮影系)
50、6a、6b、6c、6d、6e、6f 照明発光部(照明系)
6f 照明発光駆動部
7 固定柱
8 支持部
9、9a、9b 平行投影光光源
10 顎受け台
60 スリット幅駆動部
70 固視標制御部
100制御部(CPU、コンピュータ)
101 記憶部
102 入力部(操作部)
80 表示部
200、200a 携帯端末装置
E 被検眼