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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136874
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】描画装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240927BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H05K3/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048167
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】茂野 幸英
【テーマコード(参考)】
2H197
5E343
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197AA22
2H197AA29
2H197CA03
2H197CA07
2H197CB16
2H197CC05
2H197CC11
2H197CC16
2H197CD12
2H197CD15
2H197DB23
2H197EA19
2H197EB16
2H197EB23
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA10
2H197JA03
5E343AA02
5E343AA23
5E343AA26
5E343CC67
5E343DD68
5E343DD80
5E343FF30
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】描画ヘッドのメンテナンスを容易とする。
【解決手段】第2ヘッド支持部62によって支持される第2描画ヘッド群402は、第1ヘッド支持部61によって支持される第1描画ヘッド群401と走査方向において隣接して配置される。第2描画ヘッド群402は、X方向に関して第1描画ヘッド群401とは異なる位置に、変調された光を照射する。描画装置1では、第2ヘッド支持部62を、第1ヘッド支持部61に対して走査方向に相対的に移動させることにより、第2描画ヘッド群402が、走査方向において第1描画ヘッド群401に隣接する描画位置と、当該描画位置よりも第1描画ヘッド群401から走査方向に離れた退避位置との間で移動する。これにより、第1描画ヘッド41および第2描画ヘッド42のメンテナンスを容易とすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射してパターンの描画を行う描画装置であって、
前記基板を保持するステージと、
前記基板の上面に変調された光を照射する第1描画ヘッド群と、
前記ステージの上方にて前記第1描画ヘッド群を支持する第1ヘッド支持部と、
前記基板の前記上面に平行な走査方向に、前記ステージを前記第1描画ヘッド群に対して相対的に移動する走査機構と、
前記走査方向において前記第1描画ヘッド群と隣接して配置され、前記基板の前記上面において前記走査方向に垂直な幅方向に関して前記第1描画ヘッド群とは異なる位置に変調された光を照射する第2描画ヘッド群と、
前記ステージの上方にて前記第2描画ヘッド群を支持する第2ヘッド支持部と、
を備え、
前記第2ヘッド支持部を、前記第1ヘッド支持部に対して前記走査方向に相対的に移動させることにより、前記第2描画ヘッド群が、前記走査方向において前記第1描画ヘッド群に隣接する描画位置と、前記描画位置よりも前記第1描画ヘッド群から前記走査方向に離れた退避位置との間で移動する描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記第1描画ヘッド群は、前記幅方向に直線状に配列された複数の第1描画ヘッドを含み、
前記第2描画ヘッド群は、前記幅方向に直線状に配列された複数の第2描画ヘッドを含む描画装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記第1描画ヘッド群は、前記第1ヘッド支持部のうち前記走査方向において前記第2ヘッド支持部と対向する側面に配置され、
前記第2描画ヘッド群は、前記第2ヘッド支持部のうち前記走査方向において前記第1ヘッド支持部と対向する側面に配置される描画装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記第1描画ヘッド群の各第1描画ヘッドおよび前記第2描画ヘッド群の各第2描画ヘッドはそれぞれ、
光源からの光を変調して出射する空間光変調部と、
上下方向に直線状に配置された複数の光学素子を有し、前記光源からの光を前記空間光変調部へと導く照明光学系と、
前記空間光変調部の下方にて上下方向に直線状に配置された複数の光学素子を有し、前記空間光変調部からの光を前記基板の前記上面へと導く投影光学系と、
を備える描画装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記第1ヘッド支持部は基台上に固定されており、
前記第2ヘッド支持部は、前記第1ヘッド支持部の前記走査方向の一方側において前記基台上にて移動可能とされ、
前記第2描画ヘッド群が前記描画位置に位置する状態で、前記第2ヘッド支持部に前記走査方向の他方側から当接して前記第2ヘッド支持部の前記走査方向の前記他方側への移動を制限する第1移動制限部が、前記基台上に設けられる描画装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記第1ヘッド支持部は基台上に固定されており、
前記第2ヘッド支持部は、前記第1ヘッド支持部の前記走査方向の一方側において前記基台上にて移動可能とされ、
前記第2描画ヘッド群が前記退避位置に位置する状態で、前記第2ヘッド支持部に前記走査方向の前記一方側から当接して前記第2ヘッド支持部の前記走査方向の前記一方側への移動を制限する第2移動制限部が、前記基台上に設けられる描画装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記第1ヘッド支持部は基台上に固定されており、
前記第2ヘッド支持部は、前記第1ヘッド支持部の前記走査方向の一方側において前記基台上にて移動可能とされ、
前記描画装置は、前記第1ヘッド支持部の前記走査方向の他方側にて支持されて前記基板の前記上面上に予め設けられているアライメントマークを撮像する撮像部をさらに備え、
前記撮像部により取得された撮像画像に基づいて前記基板の位置が検出される描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に光を照射してパターンの描画を行う描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板や半導体基板等(以下、「基板」という。)に対するパターンの描画において、基板上に形成された感光材料に変調された光を照射し、当該光の照射領域を走査することによりパターンを直接的に描画する描画装置が利用されている。
【0003】
このような描画装置では、1枚の基板の描画に要する時間(すなわち、タクトタイム)を短縮するために、基板の走査方向に垂直な幅方向に複数の描画ヘッドを配列し、基板上において幅方向に並ぶ複数の領域を同時に描画することが行われている。ただし、描画ヘッドの大きさを考慮すると、幅方向に配列可能な描画ヘッドの数には限界がある。
【0004】
そこで、特許文献1の描画装置では、5つの描画ヘッドを千鳥状に2列に配列することで、描画ヘッドの数を増やすことが行われている。具体的には、当該描画装置では、X方向(幅方向)に並ぶ3つの描画ヘッドと、X方向に並ぶ2つの描画ヘッドとが、Y方向(走査方向)に隣接して配置される。また、当該2つの描画ヘッドは、X方向に関して上記3つの描画ヘッドの間に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-21782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の描画装置では、(+Y)側に配置される3つの描画ヘッドは、(-Y)側に配置される2つの描画ヘッドと、描画ヘッドを支持する支持部との間に挟まれている。このため、描画ヘッドの清掃等のメンテナンスを行う際に、当該3つの描画ヘッドに手が届きにくく、作業効率が低下して描画装置のダウンタイムが増大するおそれがある。また、Y方向に隣接する2列の描画ヘッドの図示されていない光源部等が、門形の支持部上にてX方向に隣接して配置されるため、複数の描画ヘッドの取付位置に干渉が生じるおそれもある。
【0007】
一方、描画ヘッドのメンテナンスを容易にするために上記2列の描画ヘッドをY方向に離間させると、基板に対する描画の際に、基板のY方向における移動距離が大きくなるため、タクトタイムが増大するおそれがある。なお、特許文献1の描画装置では、(-Y)側に配置される2つの描画ヘッドを取り付けるための取付部が、上記2列の描画ヘッドの間に設けられるため、当該2列の描画ヘッドのY方向における間隔をある程度以上小さくすることは難しい。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、描画ヘッドのメンテナンスを容易とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様1は、基板に光を照射してパターンの描画を行う描画装置であって、前記基板を保持するステージと、前記基板の上面に変調された光を照射する第1描画ヘッド群と、前記ステージの上方にて前記第1描画ヘッド群を支持する第1ヘッド支持部と、前記基板の前記上面に平行な走査方向に、前記ステージを前記第1描画ヘッド群に対して相対的に移動する走査機構と、前記走査方向において前記第1描画ヘッド群と隣接して配置され、前記基板の前記上面において前記走査方向に垂直な幅方向に関して前記第1描画ヘッド群とは異なる位置に変調された光を照射する第2描画ヘッド群と、前記ステージの上方にて前記第2描画ヘッド群を支持する第2ヘッド支持部と、を備える。前記第2ヘッド支持部を、前記第1ヘッド支持部に対して前記走査方向に相対的に移動させることにより、前記第2描画ヘッド群が、前記走査方向において前記第1描画ヘッド群に隣接する描画位置と、前記描画位置よりも前記第1描画ヘッド群から前記走査方向に離れた退避位置との間で移動する。
【0010】
本発明の態様2は、態様1の描画装置であって、前記第1描画ヘッド群は、前記幅方向に直線状に配列された複数の第1描画ヘッドを含む。前記第2描画ヘッド群は、前記幅方向に直線状に配列された複数の第2描画ヘッドを含む。
【0011】
本発明の態様3は、態様1または2の描画装置であって、前記第1描画ヘッド群は、前記第1ヘッド支持部のうち前記走査方向において前記第2ヘッド支持部と対向する側面に配置される。前記第2描画ヘッド群は、前記第2ヘッド支持部のうち前記走査方向において前記第1ヘッド支持部と対向する側面に配置される。
【0012】
本発明の態様4は、態様1または2(態様1ないし3のいずれか1つ、であってもよい。)の描画装置であって、前記第1描画ヘッド群の各第1描画ヘッドおよび前記第2描画ヘッド群の各第2描画ヘッドはそれぞれ、光源からの光を変調して出射する空間光変調部と、上下方向に直線状に配置された複数の光学素子を有し、前記光源からの光を前記空間光変調部へと導く照明光学系と、前記空間光変調部の下方にて上下方向に直線状に配置された複数の光学素子を有し、前記空間光変調部からの光を前記基板の前記上面へと導く投影光学系と、を備える。
【0013】
本発明の態様5は、態様1または2(態様1ないし4のいずれか1つ、であってもよい。)の描画装置であって、前記第1ヘッド支持部は基台上に固定されている。前記第2ヘッド支持部は、前記第1ヘッド支持部の前記走査方向の一方側において前記基台上にて移動可能とされる。前記第2描画ヘッド群が前記描画位置に位置する状態で、前記第2ヘッド支持部に前記走査方向の他方側から当接して前記第2ヘッド支持部の前記走査方向の前記他方側への移動を制限する第1移動制限部が、前記基台上に設けられる。
【0014】
本発明の態様6は、態様1または2(態様1ないし5のいずれか1つ、であってもよい。)の描画装置であって、前記第1ヘッド支持部は基台上に固定されている。前記第2ヘッド支持部は、前記第1ヘッド支持部の前記走査方向の一方側において前記基台上にて移動可能とされる。前記第2描画ヘッド群が前記退避位置に位置する状態で、前記第2ヘッド支持部に前記走査方向の前記一方側から当接して前記第2ヘッド支持部の前記走査方向の前記一方側への移動を制限する第2移動制限部が、前記基台上に設けられる。
【0015】
本発明の態様7は、態様1または2(態様1ないし6のいずれか1つ、であってもよい。)の描画装置であって、前記第1ヘッド支持部は基台上に固定されている。前記第2ヘッド支持部は、前記第1ヘッド支持部の前記走査方向の一方側において前記基台上にて移動可能とされる。前記描画装置は、前記第1ヘッド支持部の前記走査方向の他方側にて支持されて前記基板の前記上面上に予め設けられているアライメントマークを撮像する撮像部をさらに備える。前記撮像部により取得された撮像画像に基づいて前記基板の位置が検出される。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、描画ヘッドのメンテナンスを容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一の実施の形態に係る描画装置を示す斜視図である。
図2】描画装置の斜視図である。
図3】第1描画ヘッドの側面図である。
図4】描画装置の一部を示す側面図である。
図5】描画装置の一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る描画装置1を示す斜視図である。描画装置1は、空間変調された略ビーム状の光を基板9上の感光材料に照射し、当該光の照射領域を基板9上にて走査することによりパターンの描画を行う直接描画装置である。図1では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示している。図1に示す例では、X方向およびY方向は互いに垂直な水平方向であり、Z方向は鉛直方向(すなわち、上下方向)である。他の図においても同様である。
【0019】
基板9は、例えば、略矩形平板状のプリント基板である。基板9の(+Z)側の主面(以下、「上面91」とも呼ぶ。)では、感光材料により形成されたレジスト膜が銅層上に設けられる。描画装置1では、基板9の当該レジスト膜に回路パターンが描画(すなわち、形成)される。なお、基板9の種類および形状等は様々に変更されてよい。
【0020】
描画装置1は、ステージ21と、ステージ移動機構22と、アライメント部3と、描画部4と、キャリブレーション部5と、第1ヘッド支持部61と、第2ヘッド支持部62とを備える。
【0021】
ステージ21は、アライメント部3および描画部4よりも下側(すなわち、(-Z)側)に配置された略矩形平板状の部材である。ステージ21は、水平状態の基板9を下側から保持する基板保持部25を備える。基板保持部25は、例えば、基板9の下面を吸着して保持するバキュームチャックである。基板保持部25は、バキュームチャック以外の構造を有していてもよく、例えば、メカニカルチャックであってもよい。基板保持部25上に載置された基板9の上面91は、Z方向に対して略垂直であり、X方向およびY方向に略平行である。
【0022】
ステージ移動機構22は、ステージ21をアライメント部3および描画部4に対して水平方向(すなわち、基板9の上面91に略平行な方向)に相対的に移動する移動機構である。ステージ移動機構22は、基台11の上面上に取り付けられ、基台11によって下側から支持される。基台11は、例えば、X方向の長さよりもY方向の長さの方が長い略直方体状の部材である。
【0023】
ステージ移動機構22は、第1移動機構23と、第2移動機構24とを備える。第2移動機構24は、ステージ21を下側から支持するとともに、ステージ21をガイドレールに沿ってX方向に直線移動する。第1移動機構23は、第2移動機構24を下側から支持するとともに、ステージ21を第2移動機構24と共にガイドレールに沿ってY方向に直線移動する。第1移動機構23および第2移動機構24の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。第1移動機構23および第2移動機構24の構造は、様々に変更されてよい。
【0024】
描画装置1では、Z方向に延びる回転軸を中心としてステージ21を回転するステージ回転機構が設けられてもよい。また、ステージ21をZ方向に移動するステージ昇降機構が描画装置1に設けられてもよい。ステージ回転機構として、例えば、サーボモータが利用可能である。ステージ昇降機構として、例えば、リニアサーボモータが利用可能である。ステージ回転機構およびステージ昇降機構の構造は、様々に変更されてよい。
【0025】
第1ヘッド支持部61および第2ヘッド支持部62は、基台11の上面上に立設する。図1に示す例では、第1ヘッド支持部61および第2ヘッド支持部62はそれぞれ、ステージ21およびステージ移動機構22を跨ぐ門形の部材(いわゆる、ガントリー)である。第1ヘッド支持部61と第2ヘッド支持部62とは、略同形状であり、Y方向に並んで配置される。第1ヘッド支持部61および第2ヘッド支持部62は、例えば、グラナイト等の石材により形成される。本実施の形態では、第1ヘッド支持部61は、基台11に固定されており、水平方向および上下方向に移動しない。
【0026】
第2ヘッド支持部62は、第1ヘッド支持部61の(+Y)側に配置される。第2ヘッド支持部62の(+X)側の下端部および(-X)側の下端部は、ステージ移動機構22の(+X)側および(-X)側に位置する一対のガイド63に取り付けられる。各ガイド63は、例えば、Y方向に略平行に略直線状に延びるLMガイドであり、第2ヘッド支持部62をY方向に関して移動可能な状態で支持する。第2ヘッド支持部62は、基台11上にて、第1ヘッド支持部61よりも(+Y)側においてY方向に移動可能とされる。本実施の形態では、第2ヘッド支持部62は、X方向および上下方向には移動しない。
【0027】
図1に例示する描画装置1では、第2ヘッド支持部62のY方向への移動は、作業者の手作業により行われる。なお、描画装置1では、第2ヘッド支持部62をY方向へと移動させる支持部移動機構(例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたもの等)が設けられてもよい。また、描画装置1では、第2ヘッド支持部62は第1ヘッド支持部61に対してY方向に相対的に移動可能であればよく、例えば、第2ヘッド支持部62が基台11に固定され、第1ヘッド支持部61がY方向に移動可能とされてもよい。あるいは、第1ヘッド支持部61および第2ヘッド支持部62の双方が、Y方向に移動可能とされてもよい。
【0028】
各ガイド63の(-Y)側の端部には、第1移動制限部64が設けられている。第1移動制限部64は、第1ヘッド支持部61よりも(+Y)側において、ガイド63の(-Y)側の端部近傍に配置される。第1移動制限部64は、例えば、基台11の上面から上方へと延びる略四角柱状の部材である。第1移動制限部64は、例えば、グラナイト等の石材により形成される。第1移動制限部64は、基台11上に固定される。第1移動制限部64は、基台11に直接的に固定されてもよく、基台11に直接的に固定されている第1ヘッド支持部61に固定されることによって、基台11に間接的に固定されてもよい。
【0029】
図1に示す状態では、第2ヘッド支持部62の下端部の(-Y)側の側面が、第1移動制限部64の(+Y)側の側面に(+Y)側から当接している。これにより、第2ヘッド支持部62の(-Y)方向への移動が制限される。このため、第2ヘッド支持部62は、図1に示す位置(以下、「描画位置」とも呼ぶ。)よりも(-Y)側へ移動することはできない。
【0030】
各ガイド63の(+Y)側の端部には、第2移動制限部65が設けられている。第2移動制限部65は、第2ヘッド支持部62よりも(+Y)側において、ガイド63の(+Y)側の端部近傍に配置される。第2移動制限部65、例えば、基台11の上面から上方へと延びる略四角柱状の部材である。第2移動制限部65は、例えば、グラナイト等の石材により形成される。第2移動制限部65は、基台11上に固定される。第2移動制限部65は、例えば、基台11の上面に直接的に固定される。
【0031】
図2に示すように、第2ヘッド支持部62が一対のガイド63の(+Y)側の端部近傍に移動した状態では、第2ヘッド支持部62の下端部の(+Y)側の側面が、第2移動制限部65の(-Y)側の側面に(-Y)側から当接している。これにより、第2ヘッド支持部62の(+Y)方向への移動が制限される。このため、第2ヘッド支持部62は、図2に示す位置(以下、「退避位置」とも呼ぶ。)よりも(+Y)側へ移動することはできない。
【0032】
描画装置1では、基板9に対するパターンの描画が行われる際には、第2ヘッド支持部62および後述する第2描画ヘッド群402は、図1に示す描画位置に配置される。また、後述する第1描画ヘッド群401および第2描画ヘッド群402に対するメンテナンスやキャリブレーションが行われる際には、第2ヘッド支持部62および第2描画ヘッド群402は、図2に示す退避位置に配置される。
【0033】
図1に示すように、アライメント部3は、X方向に配列される複数(図1に示す例では、3つ)のアライメントカメラ31を備える。各アライメントカメラ31は、例えば、CCD(Charged Coupled Devices)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を撮像素子として有するデジタルカメラである。各アライメントカメラ31は、ステージ21およびステージ移動機構22の上方にて第1ヘッド支持部61によって支持される。図1に示す例では、3つのアライメントカメラ31は、第1ヘッド支持部61の(-Y)側の部位に取り付けられる。3つのアライメントカメラ31のうち、例えば、中央の1つのアライメントカメラ31は第1ヘッド支持部61に固定されており、他の2つのアライメントカメラ31は第1ヘッド支持部61上においてX方向に移動可能である。これにより、アライメントカメラ31間のX方向の距離を変更することができる。なお、アライメント部3では、中央のアライメントカメラ31もX方向に移動可能とされてよい。また、アライメント部3のアライメントカメラ31の数は1つまたは2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0034】
各アライメントカメラ31は、基板9の上面91に予め設けられているアライメントマーク(図示省略)を撮像する撮像部である。描画装置1では、アライメントカメラ31により取得された撮像画像(すなわち、アライメントマークの画像)に基づいて、ステージ21上における基板9の位置が検出される。そして、検出された基板9の位置に基づいて、基板9のアライメント(すなわち、第1描画ヘッド群401および第2描画ヘッド群402に対する基板9の相対位置の補正)が行われる。
【0035】
描画部4は、第1ヘッド支持部61によって支持される第1描画ヘッド群401と、第2ヘッド支持部62によって支持される第2描画ヘッド群402と、を備える。第1描画ヘッド群401は、複数の第1描画ヘッド41を含み、第2描画ヘッド群402は、複数の第2描画ヘッド42を含む。各第1描画ヘッド41および各第2描画ヘッド42は、基板9の上面91に変調された光を照射する。
【0036】
図1に示す例では、第1描画ヘッド群401は、X方向に略平行に略直線状に並ぶ4つの第1描画ヘッド41を備える。4つの第1描画ヘッド41のY方向およびZ方向における位置は略同じである。4つの第1描画ヘッド41は、互いに略同じ形状および略同じ構造を有する。また、第2描画ヘッド群402は、X方向に略平行に略直線状に並ぶ4つの第2描画ヘッド42を備える。4つの第2描画ヘッド42のY方向およびZ方向における位置は略同じである。4つの第2描画ヘッド42は、互いに略同じ形状および略同じ構造を有する。また、第1描画ヘッド41と第2描画ヘッド42とも、略同じ形状および略同じ構造を有する。なお、第1描画ヘッド群401に含まれる第1描画ヘッド41の数および配置、並びに、第2描画ヘッド群402に含まれる第2描画ヘッド42の数および配置は様々に変更されてよい。
【0037】
第1描画ヘッド群401の4つの第1描画ヘッド41は、第1ヘッド支持部61の(+Y)側の部位に取り付けられ、ステージ21およびステージ移動機構22の上方にて第1ヘッド支持部61によって支持される。すなわち、第1描画ヘッド群401は、第1ヘッド支持部61のうち、Y方向において第2ヘッド支持部62と対向する側面に配置される。また、第2描画ヘッド群402の4つの第2描画ヘッド42は、第2ヘッド支持部62の(-Y)側の部位に取り付けられ、ステージ21およびステージ移動機構22の上方にて第2ヘッド支持部62によって支持される。すなわち、第2描画ヘッド群402は、第2ヘッド支持部62のうち、Y方向において第1ヘッド支持部61と対向する側面に配置される。描画位置に位置する第2描画ヘッド群402は、第1描画ヘッド群401の(+Y)側において第1描画ヘッド群401とY方向に隣接しており(すなわち、近接または接触した状態で配置され)、第1描画ヘッド群401とY方向にて対向する。
【0038】
4つの第1描画ヘッド41は、X方向に関して略等ピッチにて配列される。4つの第2描画ヘッド42も、X方向に関して略等ピッチにて配列される。4つの第1描画ヘッド41のX方向におけるピッチと、4つの第2描画ヘッド42のX方向におけるピッチとは、略同じである。以下の説明では、第1描画ヘッド群401における第1描画ヘッド41のX方向におけるピッチ、および、第2描画ヘッド群402における第2描画ヘッド42のX方向におけるピッチを、「描画ヘッドピッチ」とも呼ぶ。
【0039】
4つの第2描画ヘッド42は、4つの第1描画ヘッド41とX方向に関して異なる位置に配置される。これにより、第2描画ヘッド群402は、基板9の上面91において、X方向に関して第1描画ヘッド群401とは異なる位置に変調された光を照射する。具体的には、4つの第2描画ヘッド42は、4つの第1描画ヘッド41よりも描画ヘッドピッチの半分の距離だけ(+X)側にずれた位置に配置される。したがって、4つの第2描画ヘッド42のうち(-X)側の3つの第2描画ヘッド42はそれぞれ、Y方向にて対向する2つの第1描画ヘッド41のX方向に関する略中央に位置する。
【0040】
図3は、1つの第1描画ヘッド41を(+X)側から拡大して見た側面図である。図3では、第1ヘッド支持部61の一部も併せて示す。第1描画ヘッド41は、第1ヘッド支持部61の(+Y)側の側面に取り付けられる。第1描画ヘッド41の上部は、第1ヘッド支持部61の上面(すなわち、(+Z)側の端面)から上方へと突出している。なお、第1描画ヘッド41の上部と第1ヘッド支持部61の上面とは、例えば、側面視において略三角形状の平板部材である補助具71にて接続される。これにより、第1ヘッド支持部61を第1描画ヘッド41の上部までZ方向に伸ばす場合に比べて、第1ヘッド支持部61の重量を抑制しつつ第1描画ヘッド41の安定性を向上することができる。図1および図2に示す他の第1描画ヘッド41、および、各第2描画ヘッド42の構造は、図3に示すものと略同様である。なお、各第2描画ヘッド42は、図3に示す第1描画ヘッド41とは左右反対に(すなわち、Y方向における向きが逆に)配置され、第2ヘッド支持部62(図1参照)に取り付けられる。各第2描画ヘッド42の上部と第2ヘッド支持部62の上面とは、例えば、補助具71と略同形状の補助具72にて接続される。これにより、第2ヘッド支持部62を第2描画ヘッド42の上部までZ方向に伸ばす場合に比べて、第2ヘッド支持部62の重量を抑制しつつ第2描画ヘッド42の安定性を向上することができる。
【0041】
第1描画ヘッド41は、光源部412と、照明光学系413と、空間光変調部414と、投影光学系415とを備える。光源部412、照明光学系413、空間光変調部414および投影光学系415は、描画ヘッドカバー416の内部に収容される。図3に示す例では、描画ヘッドカバー416は、Z方向に略平行に直線状に延びる略矩形筒状の単一の部材である。図3では、図の理解を容易にするために、描画ヘッドカバー416を断面にて示し、描画ヘッドカバー416の内部の構造を実線にて示す。
【0042】
図3に示す例では、光源部412は、図示省略の光源から出射された光を描画ヘッドカバー416内へと導く光ファイバである。当該光源としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)またはLD(Laser Diode)等が利用可能である。なお、当該光源は、LEDおよびLD以外の光源であってもよい。光源部412は、第1描画ヘッド41の下部に配置され、上方に向かって光を出射する。
【0043】
光源部412の略鉛直上方には、照明光学系413が配置される。照明光学系413は、上下方向に略平行に略直線状に配置された複数のレンズ等の光学素子を有する。照明光学系413は、光源部412から出射された上記光源からの光を上方へと導き、第1描画ヘッド41の上端部に配置された空間光変調部414へと入射させる。
【0044】
空間光変調部414は、例えば、DMD(Digital Micro Mirror Device)またはGLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サニーベール、カリフォルニア)の登録商標)等の光変調器を備える。当該光変調器は、照明光学系413によって導かれた上記光源からの光を変調して(すなわち、空間変調して)下方へと出射する。なお、当該光変調器は、DMDおよびGLV以外のものであってもよい。
【0045】
空間光変調部414の略鉛直下方には、投影光学系415が配置される。空間光変調部414および投影光学系415は、照明光学系413よりも(+Y)側に配置される。投影光学系415は、上下方向に略平行に略直線状に配置された複数のレンズ等の光学素子を有する。投影光学系415は、空間光変調部414から出射された変調された光を下方へと導く。投影光学系415の下端から出射された光は、描画ヘッド41の下方に位置する基板9の上面91(図1参照)に照射される。図3に示す例では、描画ヘッドカバー416の下端は開口しており、投影光学系415の下端部は、描画ヘッドカバー416の下端開口から下方に突出している。投影光学系415の下端部近傍には、第1描画ヘッド41のフォーカス調整に利用されるフォーカス用センサ等が設けられてもよい。
【0046】
なお、第1描画ヘッド41の光源部412では、上述の光ファイバが省略され、光源が描画ヘッドカバー416内に配置されてもよい。また、第1描画ヘッド41では、光源部412、照明光学系413、空間光変調部414および投影光学系415が、描画ヘッドカバー416の内部において(+Z)側から(-Z)側に向かってこの順に配列されてもよい。第2描画ヘッド42についても同様である。
【0047】
描画装置1では、基板9に対するパターンの描画が行われる際には、上述のように、第2ヘッド支持部62および第2描画ヘッド群402が図1に示す描画位置に配置される。描画位置に位置する第2ヘッド支持部62は、第1移動制限部64に当接する。これにより、第2ヘッド支持部62のY方向における位置が正確かつ迅速に決定され、第1ヘッド支持部61と第2ヘッド支持部62との間のY方向における距離が所望の距離とされる。また、第1描画ヘッド群401に対する第2描画ヘッド群402の相対位置が所定の位置となるように、第2描画ヘッド群402が精度良く配置される。これにより、基板9に対するパターンの描画精度が向上される。図1に示す例では、複数の第2描画ヘッド42は、所定の僅かな間隙を介して、複数の第1描画ヘッド41に(+Y)側から近接する。なお、複数の第1描画ヘッド41と複数の第2描画ヘッド42とは、互いに接触していてもよい。
【0048】
描画装置1における基板9に対するパターン描画は、いわゆるマルチパス方式で行われる。具体的には、第1ヘッド支持部61に支持された複数の第1描画ヘッド41、および、描画位置に位置する第2ヘッド支持部62に支持された複数の第2描画ヘッド42から、変調された光を基板9の上面91上に照射しつつ、ステージ移動機構22の第1移動機構23により基板9をY方向に移動して描画部4の下方を通過させる。これにより、複数の第1描画ヘッド41および複数の第2描画ヘッド42からの光の照射領域が基板9上にてY方向に走査され、基板9に対する描画が行われる。
【0049】
続いて、第2移動機構24により、基板9をX方向に所定距離だけステップ移動させる。そして、第1移動機構23による基板9のY方向への移動、および、当該移動と並行した複数の第1描画ヘッド41および複数の第2描画ヘッド42から基板9への光の照射が再度行われ、基板9に対する描画が行われる。描画装置1では、Y方向に移動する基板9への光の照射と、X方向への基板9のステップ移動とが交互に行われることにより、基板9に対するパターンの描画が行われる。
【0050】
以下の説明では、Y方向を「主走査方向」または「走査方向」とも呼び、X方向を「副走査方向」または「幅方向」とも呼ぶ。主走査方向および副走査方向は、基板9の上面91に略平行な方向である。ステージ移動機構22では、第1移動機構23は、ステージ21を描画ヘッド41に対して主走査方向に相対的に移動する主走査機構である。第2移動機構24は、ステージ21を描画ヘッド41に対して副走査方向に相対的に移動する副走査機構である。
【0051】
なお、描画装置1では、基板9を描画ヘッド41に対してY方向に1回のみ相対移動することにより基板9上へのパターンの描画が完了するシングルパス方式(ワンパス方式とも呼ばれる。)により、基板9に対する描画が行われてもよい。この場合、パターンの描画時には、第2移動機構24による基板9の副走査(すなわち、X方向へのステップ移動)は行われない。すなわち、ステージ移動機構22は、ステージ21を描画ヘッド41に対して少なくとも走査方向に移動する走査機構である。
【0052】
描画装置1では、描画部4等のメンテナンスを行う際には、上述のように、第2ヘッド支持部62および第2描画ヘッド群402が、図2に示す退避位置に配置される。退避位置に位置する第2描画ヘッド群402は、図1に示す状態よりも、第1描画ヘッド群401から(+Y)側に比較的大きく離れている。このため、メンテナンスを行う作業者は、複数の第1描画ヘッド41に(+Y)側から容易にアクセスすることができる。また、当該作業者は、複数の第2描画ヘッド42に(-Y)側から容易にアクセスすることもできる。その結果、当該作業者は、描画部4のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0053】
また、描画装置1では、第1ヘッド支持部61に対する第1描画ヘッド41の取り付け、および、第2ヘッド支持部62に対する第2描画ヘッド42の取り付けの際にも、第2ヘッド支持部62が図2に示す退避位置に配置される。このように、第2ヘッド支持部62を第1ヘッド支持部61から比較的大きく離間させることにより、第1描画ヘッド41および第2描画ヘッド42の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0054】
描画装置1では、描画部4のキャリブレーションを行う際にも、第2ヘッド支持部62が図2に示す退避位置に配置される。第1描画ヘッド群401のキャリブレーションが行われる際には、ステージ移動機構22によってステージ21がY方向に移動され、図4に示すように、キャリブレーション部5が第1描画ヘッド群401の略鉛直下方に配置される。
【0055】
また、第2描画ヘッド群402のキャリブレーションが行われる際には、ステージ移動機構22によってステージ21がY方向に移動され、図5に示すように、キャリブレーション部5が退避位置に位置する第2描画ヘッド群402の略鉛直下方に配置される。上述のように、第2ヘッド支持部62および第2描画ヘッド群402が退避位置に位置する状態では、第2ヘッド支持部62が第2移動制限部65に当接する。これにより、第2ヘッド支持部62のY方向における位置が正確かつ迅速に決定される。したがって、第2描画ヘッド群402に対するキャリブレーション部5の相対位置が所定の位置となるように、キャリブレーション部5を精度良く配置することができる。その結果、第2描画ヘッド群402に対するキャリブレーションを精度良く行うことができる。
【0056】
図4および図5に示す例では、キャリブレーション部5は、ステージ21の(+Y)側において、ステージ移動機構22の第1移動機構23のステージ上に固定されている。なお、キャリブレーション部5は、ステージ21上において基板保持部25の(+Y)側に設けられてもよい。
【0057】
キャリブレーション部5は、目盛部52と、キャリブレーションカメラ53と、カメラ移動機構54とを備える。目盛部52は、ステージ21の上面と略同じ高さに設けられるZ方向に略垂直な略平板状の部材である。目盛部52は、例えば、X方向に略平行に延びる略矩形帯状の部材であり、透光性を有する。目盛部52の上面には、当該上面上におけるX方向の位置を示す多数の目盛が設けられている。換言すれば、目盛部52は、透光性目盛部材であり、例えば、略透明なガラススケールである。目盛部52の当該目盛は、例えば、クロスパターンまたは他の形状のパターンである。なお、目盛部52は、半透明の部材であってもよい。
【0058】
キャリブレーションカメラ53は、目盛部52の略鉛直下方において、上方を向けて配置される。キャリブレーションカメラ53は、例えば、CCDまたはCMOSを撮像素子として有するデジタルカメラである。なお、キャリブレーションカメラ53の種類や性能は、適宜設定されてよい。カメラ移動機構54は、キャリブレーションカメラ53をガイドレールに沿ってX方向に直線移動する移動機構である。カメラ移動機構54の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。カメラ移動機構54の構造は、様々に変更されてよい。
【0059】
図4に示すように、第1描画ヘッド群401の複数の第1描画ヘッド41のキャリブレーションが行われる際には、カメラ移動機構54によってキャリブレーションカメラ53が移動され、キャリブレーション対象である1つの第1描画ヘッド41の鉛直下方に配置される。そして、当該1つの第1描画ヘッド41から、所定のキャリブレーションパターンが目盛部52に照射される。キャリブレーションパターンは、例えば、十字型のパターンである。なお、キャリブレーションパターンの形状は様々に変更されてよい。
【0060】
キャリブレーションカメラ53は、目盛部52上における第1描画ヘッド41からの光の照射領域(すなわち、キャリブレーションパターン)を、上記目盛と共に下方から撮像する。そして、キャリブレーションカメラ53により取得された画像(以下、「検査画像」とも呼ぶ。)に基づいて、上記1つの第1描画ヘッド41のキャリブレーションが行われる。また、他の第1描画ヘッド41についても同様に、カメラ移動機構54によってキャリブレーションカメラ53がX方向へと移動し、当該他の第1描画ヘッド41の鉛直下方に位置した後、同様の手順にてキャリブレーションが行われる。キャリブレーションは、検査画像から検出された各第1描画ヘッド41の照射領域の位置(以下、「照射位置」とも呼ぶ。)と、設計上の理想的な照射位置(以下、「設計位置」とも呼ぶ。)とのずれ量に基づき、第1描画ヘッド41の取り付け状態を調整することで行われてよい。
【0061】
図5に示す第2描画ヘッド群402の複数の第2描画ヘッド42に対するキャリブレーションは、上述の複数の第1描画ヘッド41に対するキャリブレーションと略同様の手順で行われる。すなわち、キャリブレーションカメラ53が1つの第2描画ヘッド42の鉛直下方に位置し、当該第2描画ヘッド42から目盛部52に照射されるキャリブレーションパターンを目盛と共に撮像する。そして、取得された検査画像に基づいて、当該第2描画ヘッド42のキャリブレーションが行われる。その後、カメラ移動機構54によってキャリブレーションカメラ53がX方向に移動され、他の第2描画ヘッド42についても同様の手順にてキャリブレーションが行われる。
【0062】
このように、描画装置1では、第1描画ヘッド群401と第2描画ヘッド群402とがY方向に比較的大きく離間した状態で、第1描画ヘッド群401および第2描画ヘッド群402のキャリブレーションが行われる。このため、キャリブレーションの結果、第1描画ヘッド41および/または第2描画ヘッド42の調整が必要になった場合、上述のメンテナンス時と略同様に、当該調整を容易に行うことができる。なお、第2描画ヘッド群402を描画位置に配置した状態で、再び第1描画ヘッド群401および第2描画ヘッド群402のキャリブレーションを行ってもよい。この時のキャリブレーションは、上述の照射位置と設計位置とのずれに基づき、パターン描画に用いられる描画データの補正や、描画時のステージ21の走査位置の補正によって行われてもよい。
【0063】
以上に説明したように、基板9に光を照射してパターンの描画を行う描画装置1は、ステージ21と、第1描画ヘッド群401と、第1ヘッド支持部61と、走査機構(上記例では、ステージ移動機構22)と、第2描画ヘッド群402と、第2ヘッド支持部62とを備える。ステージ21は、基板9を保持する。第1描画ヘッド群401は、基板9の上面91に変調された光を照射する。第1ヘッド支持部61は、ステージ21の上方にて第1描画ヘッド群401を支持する。走査機構は、基板9の上面91に平行な走査方向(上記例では、Y方向)に、ステージ21を第1描画ヘッド群401に対して相対的に移動する。第2描画ヘッド群402は、走査方向において第1描画ヘッド群401と隣接して配置される。第2描画ヘッド群402は、基板9の上面91において、走査方向に垂直な幅方向(上記例では、X方向)に関して第1描画ヘッド群401とは異なる位置に、変調された光を照射する。第2ヘッド支持部62は、ステージ21の上方にて第2描画ヘッド群402を支持する。
【0064】
描画装置1では、第2ヘッド支持部62を、第1ヘッド支持部61に対して走査方向に相対的に移動させることにより、第2描画ヘッド群402が、走査方向において第1描画ヘッド群401に隣接する描画位置と、当該描画位置よりも第1描画ヘッド群401から走査方向に離れた退避位置との間で移動する。
【0065】
このように、描画装置1では、第1描画ヘッド群401を支持する第1ヘッド支持部61と、第2描画ヘッド群402を支持する第2ヘッド支持部62とを別々に設け、さらに、第1ヘッド支持部61と第2ヘッド支持部62とを走査方向に離間可能とすることにより、描画装置1にて行われる作業に合わせて、第1描画ヘッド群401と第2描画ヘッド群402との間の走査方向における距離を変更することができる。
【0066】
具体的には、基板9に対するパターンの描画が行われる際には、第2描画ヘッド群402を第1描画ヘッド群401に隣接する描画位置に配置することにより、第1描画ヘッド群401と第2描画ヘッド群402との間の走査方向における距離を小さくすることができる。また、第1描画ヘッド群401および第2描画ヘッド群402を別々の支持部にて支持することにより、1つの支持部にて支持する場合に比べて、第1描画ヘッド群401と第2描画ヘッド群402との間の走査方向における距離を小さくすることができる。その結果、パターン描画時における基板9の走査方向における移動距離を小さくし、1枚の基板の描画に要する時間(すなわち、タクトタイム)を短くすることができる。
【0067】
描画部4等のメンテナンスが行われる際には、第2描画ヘッド群402を第1描画ヘッド群401から比較的大きく離れた退避位置に配置することにより、上述のように、第1描画ヘッド群401および第2描画ヘッド群402のメンテナンスを容易とすることができる。また、第1ヘッド支持部61に対する第1描画ヘッド群401の取付作業、および、第2ヘッド支持部62に対する第2描画ヘッド群402の取付作業が行われる際も同様に、第2ヘッド支持部62を退避位置に配置することにより、上述のように取付作業を容易とすることができる。さらに、第1描画ヘッド群401および第2描画ヘッド群402に対するキャリブレーションが行われる際も同様に、第2描画ヘッド群402を退避位置に配置することにより、上述のようにキャリブレーションを精度良く行うことができる。
【0068】
描画装置1では、第1描画ヘッド群401は、幅方向に直線状に配列された複数の第1描画ヘッド41を含むことが好ましい。また、第2描画ヘッド群402は、幅方向に直線状に配列された複数の第2描画ヘッド42を含むことが好ましい。これにより、基板9の1回の走査による描画面積を増大させることができ、タクトタイムをさらに短縮することができる。また、描画装置1では、複数の第2描画ヘッド42を退避位置へと移動させることにより、複数の第1描画ヘッド41および複数の第2描画ヘッド42のメンテナンスおよび取付作業を容易とすることができる。
【0069】
上述のように、第1描画ヘッド群401は、第1ヘッド支持部61のうち走査方向において第2ヘッド支持部62と対向する側面(上記例では、(+Y)側の側面)に配置されることが好ましい。また、第2描画ヘッド群402は、第2ヘッド支持部62のうち走査方向において第1ヘッド支持部61と対向する側面(上記例では、(-Y)側の側面)に配置されることが好ましい。これにより、第1描画ヘッド群401と第2描画ヘッド群402との間の走査方向における距離を容易に小さくすることができる。その結果、タクトタイムを容易に短くすることができる。
【0070】
上述のように、第1描画ヘッド群401の各第1描画ヘッド41および第2描画ヘッド群402の各第2描画ヘッド42はそれぞれ、照明光学系413と、空間光変調部414と、投影光学系415とを備える。好ましくは、照明光学系413は、上下方向に直線状に配置された複数の光学素子を有し、光源からの光を空間光変調部414へと導く。空間光変調部414は、光源からの光を変調して出射する。また、投影光学系415は、空間光変調部414の下方にて上下方向に直線状に配置された複数の光学素子を有し、空間光変調部414からの光を基板9の上面91へと導く。
【0071】
このように、照明光学系413が空間光変調部414から上下方向に延びるI型の第1描画ヘッド41および第2描画ヘッド42は、それぞれ一繋がりの部材として構成される。一方、照明光学系413が空間光変調部414から側方へと延びるL型の描画ヘッドは、水平に延びる第1部材と、第1部材の端部から下方に延びる第2部材との2つの部材によって構成される。このため、I型の第1描画ヘッド41および第2描画ヘッド42は、L型の描画ヘッドに比べて、第1ヘッド支持部61および第2ヘッド支持部62への取付作業を容易とすることができる。また、複数の描画ヘッドが密集して配置された場合、通常、I型の描画ヘッドはL型の描画ヘッドに比べて照明光学系や空間光変調部等へのアクセスが難しくなるが、上述の描画装置1では、第2描画ヘッド群402を退避位置へと移動することにより、I型の第1描画ヘッド41および第2描画ヘッド42においても、照明光学系413や空間光変調部414等に容易にアクセスすることができる。
【0072】
上述のように、第1ヘッド支持部61は基台11上に固定されており、第2ヘッド支持部62は、第1ヘッド支持部61の走査方向の一方側(上記例では、(+Y)側)において基台11上にて移動可能とされる。描画装置1では、第2描画ヘッド群402が描画位置に位置する状態で、第2ヘッド支持部62に走査方向の他方側(上記例では、(-Y)側)から当接して第2ヘッド支持部62の走査方向の当該他方側への移動を制限する第1移動制限部64が、基台11上に設けられることが好ましい。これにより、描画位置における第2描画ヘッド群402の位置決めを精度良く行うことができる。その結果、上述のように、基板9に対するパターンの描画精度を向上することができる。
【0073】
また、描画装置1では、第2描画ヘッド群402が退避位置に位置する状態で、第2ヘッド支持部62に走査方向の一方側(上記例では、(+Y)側)から当接して第2ヘッド支持部62の走査方向の当該一方側への移動を制限する第2移動制限部65が、基台11上に設けられることが好ましい。これにより、退避位置における第2描画ヘッド群402の位置決めを精度良く行うことができる。したがって、上述のように、退避位置に位置する第2描画ヘッド群402に対してキャリブレーションを行う場合、第2描画ヘッド群402に対するキャリブレーション部5の相対位置が所定の位置となるように、キャリブレーション部5を精度良く配置することができる。その結果、第2描画ヘッド群402に対するキャリブレーションを精度良く行うことができる。
【0074】
描画装置1は、基板9の上面91上に予め設けられているアライメントマークを撮像する撮像部(すなわち、アライメントカメラ31)をさらに備えることが好ましい。また、アライメントカメラ31は、第1ヘッド支持部61の走査方向の他方側(上記例では、(-Y)側)にて支持されることが好ましい。そして、アライメントカメラ31により取得された撮像画像に基づいて基板9の位置が検出される。
【0075】
このように、第1描画ヘッド群401を支持する第1ヘッド支持部61によってアライメントカメラ31も支持することにより、アライメントカメラ31用の支持部を第1ヘッド支持部61および第2ヘッド支持部62とは別に設ける場合に比べて、描画装置1の構造を簡素化することができる。また、基台11に固定されている第1ヘッド支持部61によってアライメントカメラ31を支持することにより、基台11上にて移動可能な第2ヘッド支持部62によってアライメントカメラ31を支持する場合に比べて、ステージ21に対するアライメントカメラ31の相対位置を精度良く取得することができる。その結果、基板9の位置を精度良く検出することができる。
【0076】
上述の描画装置1では、様々な変更が可能である。
【0077】
例えば、第1描画ヘッド群401は、第1ヘッド支持部61の(+Y)側の側面以外の部位に取り付けられてもよい。また、第2描画ヘッド群402は、第2ヘッド支持部62の(-Y)側の側面以外の部位に取り付けられてもよい。
【0078】
第1描画ヘッド41および第2描画ヘッド42の構造は、上述の例には限定されず、様々に変更されてよい。例えば、光源部412は、描画ヘッドカバー416の内部に収容される光源(例えば、LEDまたはLD等)を備えていてもよい。また、第1描画ヘッド41はL型の描画ヘッドとされ、Y方向に直線状に配置された複数の光学素子を有する照明光学系413が、空間光変調部414から(-Y)側へと略水平に延びていてもよい。第2描画ヘッド42も略同様に、L型の描画ヘッドとされてもよい。
【0079】
第1描画ヘッド群401に含まれる第1描画ヘッド41の数は、1つであってもよく、2つ以上の範囲で適宜変更されてもよい。第2描画ヘッド群402に含まれる第2描画ヘッド42の数も、1つであってもよく、2つ以上の範囲で適宜変更されてもよい。
【0080】
第1描画ヘッド群401に含まれる第1描画ヘッド41の配置、および、第2描画ヘッド群402に含まれる第2描画ヘッド42の配置も様々に変更されてよい。例えば、第1描画ヘッド群401では、複数の第1描画ヘッド41が千鳥状に配置されてもよい。具体的には、例えば、第1描画ヘッド群401に5つの第1描画ヘッド41が含まれる場合、X方向に略直線状に配列された3つの第1描画ヘッド41が第1ヘッド支持部61の(+Y)側の側面に取り付けられ、当該3つの第1描画ヘッド41の(+Y)側に、残り2つの第1描画ヘッド41が取り付けられる。(+Y)側の2つの第1描画ヘッド41は、(-Y)側の3つの第1描画ヘッド41のX方向に関するそれぞれの間に配置される。第2描画ヘッド群402においても略同様に、複数の第2描画ヘッド42が、例えば千鳥状に配置されてもよい。
【0081】
描画装置1では、第1移動制限部64および/または第2移動制限部65が、基台11上から省略されてもよい。
【0082】
アライメント部3の各アライメントカメラ31は、第2ヘッド支持部62によって支持されてもよく、第1ヘッド支持部61および第2ヘッド支持部62とは異なる支持部によって支持されてもよい。また、アライメントカメラ31は省略されてもよい。
【0083】
ステージ21は、第1移動機構23により、第1描画ヘッド群401および第2描画ヘッド群402に対して主走査方向に相対的に移動すればよい。したがって、例えば、ステージ21が固定されており、ステージ21の上方において、第1描画ヘッド群401および第2描画ヘッド群402が第1移動機構23によって主走査方向に移動されてもよい。同様に、第1描画ヘッド群401および第2描画ヘッド群402が、第2移動機構24によって副走査方向に移動されてもよい。
【0084】
上述の基板9は、必ずしもプリント基板には限定されない。描画装置1では、例えば、半導体基板、半導体パッケージ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置等のフラットパネル表示装置用のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板、太陽電池パネル用の基板等に対するパターンの描画が行われてもよい。
【0085】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0086】
1 描画装置
9 基板
11 基台
21 ステージ
22 ステージ移動機構
31 アライメントカメラ
41 第1描画ヘッド
42 第2描画ヘッド
61 第1ヘッド支持部
62 第2ヘッド支持部
64 第1移動制限部
65 第2移動制限部
91 (基板の)上面
401 第1描画ヘッド群
402 第2描画ヘッド群
413 照明光学系
414 空間光変調部
415 投影光学系
図1
図2
図3
図4
図5