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特開2024-136877アクティブクランプ回路及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136877
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】アクティブクランプ回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/78 657G
H01L29/78 657D
H01L29/78 657B
H01L29/78 652T
H01L29/78 652P
H01L29/78 657A
H01L29/78 652N
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048170
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博美
(57)【要約】
【課題】大型のダイオードを用いなくてもサージ電圧を吸収して電圧をクランプすることができ、かつ、スイッチング回路の動作をより一層安定させることが可能なアクティブクランプ回路を提供する。
【解決手段】第1の主電極が主スイッチQ1の主電極と電気的に接続され、第2の主電極が主スイッチQ1の制御電極と電気的に接続されたクランプ電圧制御用スイッチ20と、一方の端子がクランプ電圧制御用スイッチ20の第1の主電極と電気的に接続され、他方の端子がクランプ電圧制御用スイッチ20の制御電極と電気的に接続されたクランプ電圧決定部30を備え、クランプ電圧決定部30は、ツェナーダイオード33及びダイオード34が逆極性で直列に接続された組31が複数直列に接続されたダイオード部36と、ダイオード部36と直列に接続された温度特性調整抵抗35とを有するアクティブクランプ回路10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主スイッチの制御電極と主電極との間に接続され、前記主スイッチのクランプ電圧を制御するためのアクティブクランプ回路であって、
第1の主電極、第2の主電極及び制御電極を有し、前記第2の主電極が前記主スイッチの前記主電極と電気的に接続され、前記第1の主電極が前記主スイッチの前記制御電極と電気的に接続されたクランプ電圧制御用スイッチと、
一方の端子が前記クランプ電圧制御用スイッチの前記第2の主電極と電気的に接続され、他方の端子が前記クランプ電圧制御用スイッチの前記制御電極と電気的に接続されたクランプ電圧決定部とを備え、
前記クランプ電圧決定部は、少なくともツェナーダイオード及びダイオードが逆極性で直列に接続された組が複数直列に接続されたダイオード部と、前記ダイオード部と直列に接続された温度特性調整抵抗とを有することを特徴とするアクティブクランプ回路。
【請求項2】
一方が前記クランプ電圧制御用スイッチの制御電極と接続され、他方が前記主スイッチの制御電極及び前記クランプ電圧制御用スイッチの前記第1の主電極と電気的に接続されているゲート保護部をさらに備え、
前記ゲート保護部は、少なくともゲート保護用ツェナーダイオードとゲート保護用ダイオードとが逆極性で接続された組を少なくとも1組有することを特徴とする請求項1に記載のアクティブクランプ回路。
【請求項3】
前記ゲート保護部の前記組はそれぞれ、前記ゲート保護用ツェナーダイオードと前記ゲート保護用ダイオードとの間にゲート保護用温度特性調整抵抗が電気的に接続された構造を有することを特徴とする請求項2に記載のアクティブクランプ回路。
【請求項4】
主スイッチの制御電極と主電極間に接続され、前記主スイッチのクランプ電圧を制御するためのアクティブクランプ回路であって、
アノード電極及びカソード電極を有し、前記アノード電極が前記主スイッチの前記制御電極と電気的に接続され、前記カソード電極が前記主スイッチの前記主電極と電気的に接続されたバイパスダイオードと、
一方の端子が前記バイパスダイオードの前記カソード電極と電気的に接続され、他方の端子が前記バイパスダイオードの前記アノード電極及び前記主スイッチの前記制御電極と電気的に接続されるクランプ電圧決定部とを備え、
前記クランプ電圧決定部は、少なくともツェナーダイオード及びダイオードが逆極性で直列に接続された組が複数直列に接続されたダイオード部と、前記ダイオード部と直列に接続された温度特性調整抵抗とを有することを特徴とするアクティブクランプ回路。
【請求項5】
前記温度特性調整抵抗は、前記ダイオード部に印加される電圧の温度変化を低減する温度特性を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のアクティブクランプ回路。
【請求項6】
主スイッチの制御電極と主電極間に接続され、前記主スイッチのクランプ電圧を制御するためのアクティブクランプ回路を構成し、デバイス領域と前記デバイス領域の周囲に形成された耐圧分離領域とが画定された半導体基体に形成された半導体装置であって、
前記デバイス領域においては、
前記半導体基体と、
前記半導体基体の表面側の表面上に形成された第1の主電極と、
前記半導体基体の表面側の表面上に、前記第1の主電極とは離隔した位置に形成されているゲートパッドと、
前記半導体基体の裏面側の表面上に形成されている第2の主電極とを備え、
前記第1の主電極が形成されている領域にMOS構造が形成されており、
前記耐圧分離領域においては、
前記半導体基体と、
前記半導体基体の裏面側の表面上に形成されている前記第2の主電極と、
前記半導体基体の表面に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に、平面的に見て前記デバイス領域を囲む領域に配置され、一方端が前記ゲートパッドと電気的に接続されており、他方端が前記第2の主電極と電気的に接続されているクランプ電圧決定部とを備え、
前記クランプ電圧決定部は、複数の第1の第1導電型領域と複数の第1の第2導電型領域とが互いに隣接して交互に配置されたダイオード部、及び、前記ダイオード部と直列に接続された温度特性調整抵抗を有し、
前記温度特性調整抵抗は、前記ダイオード部の温度特性に対応した温度特性を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁膜上における平面的に見て前記ゲートパッドを囲む領域に、少なくとも1つの第2の第1導電型領域と少なくとも2つの第2の第2導電型領域とが互いに隣接して交互に配置されたゲート保護部をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート保護部において、2つの前記第2の第2導電型領域に挟まれた前記第2の第1導電型領域の不純物総量は、前記第2の第1導電型領域と隣接する2つの前記第2の第2導電型領域の不純物総量のどちらよりも小さいことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
主スイッチの制御電極と主電極間に接続され、前記主スイッチのクランプ電圧を制御するためのアクティブクランプ回路を構成し、デバイス領域と前記デバイス領域の周囲に形成された耐圧分離領域とが画定された半導体基体に形成された半導体装置であって、
前記デバイス領域においては、
前記半導体基体と、
前記半導体基体の表面側の表面上に形成された第1の主電極と、
前記半導体基体の裏面側の表面上に形成されている第2の主電極とを備え、
前記第1の主電極が形成されている領域にダイオード構造が形成されており、
前記耐圧分離領域においては、
前記半導体基体と、
前記半導体基体の裏面側の表面上に形成されている前記第2の主電極と、
前記半導体基体の表面に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に、平面的に見て前記デバイス領域を囲む領域に配置され、一方端が前記第1の主電極と電気的に接続されており、他方端が前記第2の主電極と電気的に接続されているクランプ電圧決定部とを備え、
前記クランプ電圧決定部は、複数の第1の第1導電型領域と複数の第1の第2導電型領域とが互いに隣接して交互に配置されたダイオード部、及び、前記ダイオード部と直列に接続された温度特性調整抵抗を有し、
前記温度特性調整抵抗は、前記ダイオード部の温度特性に対応した温度特性を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
前記温度特性調整抵抗の抵抗値は、前記ダイオード部における前記第1の第1導電型領域と、前記第1の第1導電型領域の一方側で隣接する前記第1の第2導電型領域とで形成されるダイオードの順方向電圧と、前記第1の第1導電型領域と、前記第1の第1導電型領域の他方側で隣接する前記第1の第2導電型領域とで形成されるツェナーダイオードのツェナー電圧と、を重ね合わせた電圧の温度変化を打ち消す温度特性を有することを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記クランプ電圧決定部は、平面的に見て前記デバイス領域を全周にわたって囲んでいることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記耐圧分離領域において、前記半導体基体の表面には、第1導電型のリサーフ領域が形成されていることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記デバイス領域の表面には、表面第1導電型領域が形成されており、
前記表面第1導電型領域と前記リサーフ領域との境界を覆うように形成された第1導電型の境界半導体領域が形成されていることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記デバイス領域の表面には、表面第1導電型領域が形成されており、
前記表面第1導電型領域と前記リサーフ領域との間には、前記半導体基体の前記表面第1導電型領域及び前記リサーフ領域のどちらと同じ、又はどちらよりも深い深さ位置まで形成された第1導電型の境界半導体領域が形成されていることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記温度特性調整抵抗は、P型不純物を導入したポリシリコン層からなることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項16】
前記温度特性調整抵抗は、前記第1の第2導電型領域の第2導電型不純物とは異なる第2導電型不純物を導入してなることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項17】
前記半導体装置は、最外周に形成された金属製のチャネルストップ配線と,
前記チャネルストップ配線の内側に前記チャネルストップ配線と離隔して前記ダイオード部を一周囲むように形成された金属配線とをさらに有し、
前記温度特性調整抵抗は、前記チャネルストップ配線と前記金属配線との間の領域に形成された外周第1導電型領域からなり、
前記チャネルストップ配線と前記金属配線とは、導電性部材で構成された接続配線で接続されていることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項18】
前記温度特性調整抵抗は、前記デバイス領域の周囲のうちの所定の部分のみに形成されていることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブクランプ回路及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング回路(特に高周波のスイッチング回路)においては、配線の寄生インダクタによってスイッチング時にサージ電圧が発生する。このサージ電圧による主スイッチの破壊などの不具合を防ぐために、従来、様々な対策が取られてきた。
【0003】
図16は、従来の第1のスイッチング回路800を示す回路図である。図16において、符号Vccは外部電源を示し、符号Cは入力コンデンサを示し、符号T1,T2,T3は出力端子を示し、符号VBH,VBLは、主スイッチQ1,Q2のゲート電極G1、G2に主スイッチをオンオフする信号を送信する端子である。
【0004】
従来の第1のスイッチング回路800では、スイッチング時のサージ電圧をクランプしたい場合には、Q1,Q2の耐圧よりも少し低いか、ほぼ同等の耐圧を持ったクランプ用ダイオード812,814を第1の主スイッチQ1、第2の主スイッチQ2にそれぞれ並列に接続するクランプ回路810を追加する必要がある。クランプ用ダイオード812のアノード電極は、第1の主スイッチQ1及び第2の主スイッチQ2の接続点と接続されており、クランプ用ダイオード812のカソード電極は、第1の主スイッチQ1のドレイン電極D1と接続されている。クランプ用ダイオード814のアノード電極は、第2の主スイッチQ2のソース電極S2と接続されており、クランプ用ダイオード814のカソード電極は、第1の主スイッチQ1及び第2の主スイッチQ2の接続点と接続されている。
【0005】
従来の第1のスイッチング回路800によれば、クランプ用ダイオード812,814を有するため、クランプ用ダイオード812,814でサージ電圧を吸収し、第1の主スイッチQ1及び第2の主スイッチQ2のドレイン・ソース間電圧をクランプすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4054155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の第1のスイッチング回路800においては、主スイッチQ1,Q2に流れる電流をクランプ回路810にバイパスしてドレイン・ソース間電圧をクランプすることから、クランプ回路810に流れる電流が大きくなる。このため、クランプ回路810に用いるクランプ用ダイオード812,814を大電流に耐え得るものとする必要があり、大型のダイオードが必要になる、という問題がある。また、クランプ用ダイオード812,814に大電流が流れることにより、クランプ用ダイオード812,814の動作抵抗(インピーダンス)によるクランプ電圧の変動(図6の破線参照)が大きくなったり、クランプ用ダイオード812,814の温度上昇が大きくなりクランプ電圧の変動が大きくなったりしてしまうことから、サージ電圧をクランプする機能が狙い通りに動作せず、スイッチング回路の動作が安定しなくなるおそれがあるという問題もある。そこで、従来、主スイッチQ1,Q2のドレイン電極D1,D2とゲート電極G1,G2との間にアクティブクランプ回路910を設けた従来の第2のスイッチング回路900が知られている(図17(a)参照。例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
図17は、従来の第2のスイッチング回路900を示す回路図である。図17(a)は従来の第2のスイッチング回路900を示す回路図であり、図17(b)はアクティブクランプ回路910を示す回路図である。従来の第2のスイッチング回路900において、アクティブクランプ回路910は、ツェナーダイオード943とダイオード944とが逆特性で接続された組941を複数有する(図17(b)参照)。
【0009】
従来の第2のスイッチング回路900において、主スイッチQ1(Q2)のドレイン・ソース間電圧がツェナーダイオード943のツェナー電圧、ダイオード944の順方向電圧VF及び主スイッチQ1(Q2)のゲート電極G1(G2)の閾値電圧VTHを足し合わせた電圧よりも大きくなると、主スイッチQ1(Q2)の帰還容量が充電され、ドレイン・ソース間電圧が増加を始めるタイミングでオフになっていた主スイッチQ1(Q2)が再びオンすることとなる。これにより、主スイッチQ1(Q2)は、ドレイン・ソース間電圧を印加した状態でドレイン電流を流すことになるため、従来の第1のスイッチング回路800よりもクランプ回路に流れる電流が小さい状態でサージ電圧を吸収することができる。
【0010】
ところで、インバータ回路や電源等の技術分野においては、クランプ用ダイオードに流れる電流をより一層小さくしてスイッチング回路の動作をより一層安定させることができるアクティブクランプ回路が求められている。
【0011】
そこで、本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、大型のダイオードを用いなくてもサージ電圧を吸収して電圧をクランプすることができ、かつ、スイッチング回路の動作をより一層安定させることが可能なアクティブクランプ回路及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1のアクティブクランプ回路は、主スイッチの制御電極と主電極との間に接続され、前記主スイッチのクランプ電圧を制御するためのアクティブクランプ回路であって、第1の主電極、第2の主電極及び制御電極を有し、前記第2の主電極が前記主スイッチの前記主電極と電気的に接続され、前記第1の主電極が前記主スイッチの前記制御電極と電気的に接続されたクランプ電圧制御用スイッチと、一方の端子が前記クランプ電圧制御用スイッチの前記第2の主電極と電気的に接続され、他方の端子が前記クランプ電圧制御用スイッチの前記制御電極と電気的に接続されたクランプ電圧決定部とを備え、前記クランプ電圧決定部は、少なくともツェナーダイオード及びダイオードが逆極性で直列に接続された組が複数直列に接続されたダイオード部と、前記ダイオード部と直列に接続された温度特性調整抵抗とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の第2のアクティブクランプ回路は、主スイッチの制御電極と主電極間に接続され、前記主スイッチのクランプ電圧を制御するためのアクティブクランプ回路であって、アノード電極及びカソード電極を有し、前記アノード電極が前記主スイッチの前記制御電極と電気的に接続され、前記カソード電極が前記主スイッチの前記主電極と電気的に接続されたバイパスダイオードと、一方の端子が前記バイパスダイオードの前記カソード電極と電気的に接続され、他方の端子が前記バイパスダイオードの前記アノード電極及び前記主スイッチの前記制御電極と電気的に接続されるクランプ電圧決定部とを備え、前記クランプ電圧決定部は、少なくともツェナーダイオード及びダイオードが逆極性で直列に接続された組が複数直列に接続されたダイオード部と、前記ダイオード部と直列に接続された温度特性調整抵抗とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の第1の半導体装置は、主スイッチの制御電極と主電極間に接続され、前記主スイッチのクランプ電圧を制御するためのアクティブクランプ回路を構成し、デバイス領域と前記デバイス領域の周囲に形成された耐圧分離領域とが画定された半導体基体に形成された半導体装置であって、前記デバイス領域においては、前記半導体基体と、前記半導体基体の表面側の表面上に形成された第1の主電極と、前記半導体基体の表面側の表面上に、前記第1の主電極とは離隔した位置に形成されているゲートパッドと、前記半導体基体の裏面側の表面上に形成されている第2の主電極とを備え、前記第1の主電極が形成されている領域にMOS構造が形成されており、前記耐圧分離領域においては、前記半導体基体と、前記半導体基体の裏面側の表面上に形成されている前記第2の主電極と、前記半導体基体の表面に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に、平面的に見て前記デバイス領域を囲む領域に配置され、一方端が前記ゲートパッドと電気的に接続されており、他方端が前記第2の主電極と電気的に接続されているクランプ電圧決定部とを備え、前記クランプ電圧決定部は、複数の第1の第1導電型領域と複数の第1の第2導電型領域とが互いに隣接して交互に配置されたダイオード部、及び、前記ダイオード部と直列に接続された温度特性調整抵抗を有し、前記温度特性調整抵抗は、前記ダイオード部の温度変化に対応した温度特性を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の半導体装置は、主スイッチの制御電極と主電極間に接続され、前記主スイッチのクランプ電圧を制御するためのアクティブクランプ回路を構成し、デバイス領域と前記デバイス領域の周囲に形成された耐圧分離領域とが画定された半導体基体に形成された半導体装置であって、前記デバイス領域においては、前記半導体基体と、前記半導体基体の表面側の表面上に形成された第1の主電極と、前記半導体基体の裏面側の表面上に形成されている第2の主電極とを備え、前記第1の主電極が形成されている領域にダイオード構造が形成されており、前記耐圧分離領域においては、前記半導体基体と、前記半導体基体の裏面側の表面上に形成されている前記第2の主電極と、前記半導体基体の表面に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に、平面的に見て前記デバイス領域を囲む領域に配置され、一方端が前記第1の主電極と電気的に接続されており、他方端が前記第2の主電極と電気的に接続されているクランプ電圧決定部とを備え、前記クランプ電圧決定部は、複数の第1の第1導電型領域と複数の第1の第2導電型領域とが互いに隣接して交互に配置されたダイオード部、及び、前記ダイオード部と直列に接続された温度特性調整抵抗を有し、前記温度特性調整抵抗は、前記ダイオード部の温度変化に対応した温度特性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1のアクティブクランプ回路によれば、クランプ電圧制御用スイッチと、一方の端子が第2の主電極と電気的に接続され、他方の端子が制御電極と電気的に接続されたクランプ電圧決定部を備えるため、従来のスイッチング回路と同様に、サージ電圧を吸収することができる。また、このクランプ電圧制御用スイッチは、主スイッチの制御電極にオン信号を送るドライバーとしての機能を有する。従って、駆動電流は小さく、かつ、トリガーとなるオフ電圧を決定するクランプ電圧決定部に流れる電流も小さくできる一方、クランプ電圧制御用スイッチや主スイッチをオンしてサージ電圧が発生する期間に主スイッチを電圧クランプ用の電流経路として利用することができるため、大型のダイオードを用いなくてもよくなる。
【0017】
本発明の第2のアクティブクランプ回路によれば、バイパスダイオードと、一方の端子がバイパスダイオードのカソード電極と電気的に接続され、他方の端子がバイパスダイオードのアノード電極及び主スイッチの制御電極と電気的に接続されるクランプ電圧決定部とを備えるため、従来のスイッチング回路と同様に、サージ電圧を吸収して電圧をクランプすることができる。また、クランプ電圧決定部に流れる電流も小さくできる一方、主スイッチをオンしてサージが発生する期間に主スイッチを電圧クランプ用の電流経路として利用することができ、大型のダイオードを用いなくてもよくなる。
【0018】
また、本発明の第1及び第2のアクティブクランプ回路によれば、クランプ電圧制御用スイッチ又はバイパスダイオードと、クランプ電圧決定部を備えるため、上記したようにクランプ回路に流れる電流が小さくなり、ツェナーダイオードの動作抵抗(インピーダンス)が小さくなる。従って、ツェナーダイオードの動作抵抗(インピーダンス)によるクランプ電圧の変動(図6の破線参照)が小さくなる。また、クランプ回路に流れる電流が小さくなるため、ツェナーダイオードの温度上昇が小さくなり、クランプ電圧の変動を小さくすることができる。従って、サージ電圧をクランプする機能を狙い通りに動作させることができ、スイッチング回路の動作を安定させることが可能となる。
【0019】
また、本発明の第1及び第2のアクティブクランプ回路によれば、クランプ電圧決定部は温度特性調整抵抗を有するため、ダイオードの順方向電圧の温度特性(温度上昇に対して電圧が減少する特性)の影響を、温度特性調整抵抗の温度特性(温度上昇に対して電圧が増加する特性)によって打ち消しあうことができ、クランプ電圧の温度変動を抑制することができる。
【0020】
本発明の第1の半導体装置によれば、第1の主電極が形成されている領域にMOS構造が形成されており、耐圧分離領域においては、複数の第1の第1導電型領域と複数の第1の第2導電型領域とが互いに隣接して交互に配置されたクランプ電圧決定部を備えるため、クランプ電圧制御用スイッチと、一方の端子がクランプ電圧制御用スイッチの第1の主電極と電気的に接続され、他方の端子がクランプ電圧制御用スイッチの制御電極と電気的に接続されたクランプ電圧決定部とを備えるアクティブクランプ回路を構成することができる。従って、第1のアクティブクランプ回路と同様に、サージ電圧を吸収することができる。また、このクランプ電圧制御用スイッチ(MOS構造)は、主スイッチの制御電極にオン信号を送るドライバーとしての機能を有するため、駆動電流は小さく且つ、トリガーとなるオフ電圧を決定するクランプ電圧決定部に流れる電流も小さくできる一方、クランプ電圧制御用スイッチや主スイッチをオンしてサージ電圧が発生する期間に主スイッチを電圧クランプ用の電流経路として利用することができ、大型のダイオードを用いなくてもよくなる。すなわち、これらのデバイスと機能をワンチップ上で実現することで、個々のツェナーダイオードやダイオード、温度調整抵抗間のバラツキを抑えることができ、さらに小型化することができるので、精度良く省電力で低コストとなるだけでなく、設置面積も小さくすることができる。
【0021】
本発明の第2の半導体装置によれば、第1の主電極が形成されている領域にダイオード構造が形成されており、複数の第1の第1導電型領域と複数の第1の第2導電型領域とが互いに隣接して交互に配置されたクランプ電圧決定部を備えるため、バイパスダイオードと、一方の端子がバイパスダイオードの第1の主電極と電気的に接続され、他方の端子がバイパスダイオードの第2の電極と電気的に接続されたクランプ電圧決定部とを備えるアクティブクランプ回路を構成することができる。従って、サージ電圧を吸収して電圧をクランプすることができる。また、クランプ電圧決定部に流れる電流も小さくできるため、主スイッチをオンしてサージが発生する期間に主スイッチを電圧クランプ用の電流経路として利用することができ、大型のダイオードを用いなくてもよくなる。すなわち、これらのデバイスと機能をワンチップ上で実現することで、個々のツェナーダイオードやダイオード、温度調整抵抗間のバラツキを抑えることができ、さらに小型化することができるので、精度良く省電力で低コストとなるだけでなく、設置面積も小さくすることができる。
【0022】
また、本発明の第1及び第2の半導体装置によれば、第1の主電極が形成されている領域にMOS構造又はダイオード構造が形成されており、耐圧分離領域に、複数の第1の第1導電型領域と複数の第1の第2導電型領域とが互いに隣接して交互に配置されたクランプ電圧決定部を備えることから、クランプ電圧制御用スイッチとクランプ電圧決定部とを構成することができる。従って、アクティブクランプ回路やツェナーダイオードに流れる電流が小さくなるため、ツェナーダイオードの動作抵抗(インピーダンス)が小さくなり、ツェナーダイオードの動作抵抗(インピーダンス)によるクランプ電圧の変動(図6の破線参照)を小さくすることができる。また、ツェナーダイオードの温度上昇が小さくなり、ツェナーダイオードの温度上昇によるクランプ電圧の変動を小さくすることができる。従って、サージ電圧をクランプする機能を狙い通りに動作させることができ、スイッチング回路の動作を安定させることが可能となる。
【0023】
また、本発明の第1及び第2の半導体装置によれば、クランプ電圧決定部は、複数の第1の第1導電型領域と複数の第1の第2導電型領域とが互いに隣接して交互に配置されたダイオード部、及び、ダイオード部と直列に接続された温度特性調整抵抗を有し、温度特性調整抵抗は、ダイオード部の温度変化に対応した温度特性を有するため、第1の第1導電型領域と第1の第2導電型領域との間で形成されるダイオードの順方向電圧の温度特性(温度上昇に対して電圧が減少する特性)の影響を、温度特性調整抵抗の温度特性(温度上昇に対して電圧が増加する特性)によって打ち消しあうことができ、クランプ電圧の温度変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1におけるスイッチング回路1及びアクティブクランプ回路10を示す回路図である。
図2】実施形態1における温度特性調整抵抗32の抵抗値、ダイオード34の順方向電圧、ツェナーダイオード33のツェナー電圧及びアクティブクランプ回路10のクランプ電圧の温度特性を示す図及びグラフである。
図3】実施形態1に係る半導体装置100を示す平面図である。
図4図3のA-A’断面図である。
図5図3のB-B’断面図である。
図6】アクティブクランプ回路のクランプ電圧とダイオードの電流との関係を示す模式的なグラフである。
図7】実施形態2に係るアクティブクランプ回路10aを示す回路図である。
図8】実施形態2に係る半導体装置101を示す平面図である。
図9】実施形態3に係る半導体装置102を示す平面図である。
図10】実施形態4に係る半導体装置103を示す平面図である。
図11】実施形態5に係る半導体装置104を示す平面図である。
図12】実施形態6に係る半導体装置105を示す平面図である。
図13】実施形態7に係る半導体装置106を示す平面図である。
図14】実施形態8に係るアクティブクランプ回路10bを示す回路図である。
図15】実施形態8に係る半導体装置200を示す平面図である。
図16】従来の第1のスイッチング回路800を示す回路図である。
図17】従来の第2のスイッチング回路900を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のアクティブクランプ回路及び半導体装置について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
[実施形態1]
1.実施形態1におけるスイッチング回路1の構成
図1は、実施形態1におけるスイッチング回路1及びアクティブクランプ回路10を示す回路図である。図1(a)はスイッチング回路1を示す回路図であり、図1(b)はアクティブクランプ回路10を示す回路図である。なお、符号50は、プルダウン抵抗を示し、符号Vccは外部電源を示し、符号T1,T2,T3は出力端子を示し、符号VBH,VBLは、主スイッチQ1,Q2のゲート電極G1,G2に主スイッチをオンオフする信号を送信する端子を示す。
【0027】
実施形態1に係るスイッチング回路1は、図1(a)に示すように、ハイサイドの第1の主スイッチQ1と、第1の主スイッチQ1と直列に接続されたローサイドの第2の主スイッチQ2と、入力コンデンサCと、2つのアクティブクランプ回路10とを備える。主スイッチQ1,Q2としては、MOSFET、IGBT等適宜のトランジスタを用いることができる。第1の主スイッチQ1のソース電極S1は、第2の主スイッチQ2のドレイン電極D2と接続され、第1の主スイッチQ1のドレイン電極D1は、外部電源Vccと接続されている。第2の主スイッチQ2のソース電極S2は基準電位と接続されている。
【0028】
2.実施形態1に係るアクティブクランプ回路10の構成
2つのアクティブクランプ回路10はそれぞれ、主スイッチQ1,Q2のドレイン電極D1,D2と接続され、他方が主スイッチQ1,Q2のゲート電極G1,G2と接続されている。なお、2つのアクティブクランプ回路10は、いずれも同じ特徴を有しているため、以後、第1の主スイッチQ1に接続されているアクティブクランプ回路10について説明し、第2の主スイッチQ2に接続されているアクティブクランプ回路10についての説明を省略する。
【0029】
アクティブクランプ回路10は、第1の主スイッチQ1のドレイン・ソース間電圧をクランプする。アクティブクランプ回路10は、図1(b)に示すように、クランプ電圧制御用スイッチ20と、クランプ電圧決定部30と、ゲート保護部40を有する。
【0030】
クランプ電圧制御用スイッチ20は、ドレイン電極D3(第1の主電極)、ソース電極S3(第2の主電極)及びゲート電極G3(制御電極)を有する3端子のスイッチ素子である。実施形態1においては、MOSFETを用いるが、IGBTを用いてもよいし、その他適宜のスイッチ素子を用いてもよい。クランプ電圧制御用スイッチ20において、ドレイン電極D3は、外部電源Vcc及び第1の主スイッチQ1のドレイン電極D1と電気的に接続されており、ソース電極S3は、第1の主スイッチQ1のゲート電極G1と電気的に接続されている。
【0031】
クランプ電圧決定部30は、一方の端子がクランプ電圧制御用スイッチ20のドレイン電極D3、外部電源Vcc及び第1の主スイッチQ1のドレイン電極D1と電気的に接続され、他方の端子がクランプ電圧制御用スイッチ20のゲート電極G3と電気的に接続されている。クランプ電圧決定部30は、ツェナーダイオード33及びダイオード34が逆極性で直列に接続された組31が複数直列に接続されているダイオード部36と、ダイオード部36と直列に接続された温度特性調整抵抗35とを有する。
【0032】
クランプ電圧決定部30では、抵抗(抵抗による電圧降下)が温度上昇に対して正の相関関係を有する温度特性調整抵抗35と、順方向電圧が温度上昇に対して負の相関関係を有するダイオード34と、ツェナー電圧が温度上昇に対して正又は負の相関関係を有するツェナーダイオード33とを組み合わせて、クランプ電圧決定部30に印加される電圧に対する温度係数を調整して、クランプ電圧決定部30として温度上昇に対して温度特性がほぼ一定となるように構成されている(後述する図2参照)。言い換えると、温度特性調整抵抗35は、各組31のツェナーダイオード33のツェナー電圧、及び、ダイオード34の順方向電圧を重ね合わせた電圧の温度変化を低減する温度特性を有する。
【0033】
ゲート保護部40は、一方がクランプ電圧制御用スイッチ20のゲート電極G3と接続され、他方がクランプ電圧制御用スイッチ20のソース電極S3、及び、主スイッチQ1のゲート電極G1と接続されている。ゲート保護部40は、ゲート保護用温度特性調整抵抗42と、ゲート保護用温度特性調整抵抗42の一方端に接続されたゲート保護用ツェナーダイオード43と、ゲート保護用温度特性調整抵抗42の他方端にゲート保護用ツェナーダイオード43と逆特性となるように接続されたゲート保護用ダイオード44とで構成された組41を複数有し、ゲート保護用ツェナーダイオード43がゲート電極G3側となるように直列に接続されている。ゲート保護部40は、使用されるゲート駆動電圧以上でゲート酸化膜が絶縁破壊しない電圧となるように(クランプ電圧制御用スイッチ20のゲート電極G3に用いるゲート絶縁膜(図4の符号122参照)が静電破壊することを防ぐように)、組41を必要な段数で直列に接続する。
【0034】
アクティブクランプ回路10は、以下のように動作する。すなわち、第1の主スイッチQ1のドレイン・ソース間電圧が、クランプ電圧決定部30で設定された電圧が、「(ツェナーダイオード33のツェナー電圧+ダイオード34の順方向電圧VF)×段数+温度特性調整抵抗35の電圧降下分+クランプ電圧制御用スイッチ20の閾値電圧」以上になると、クランプ電圧制御用スイッチ20がオン状態となり、更なる電圧の上昇の抑制を開始するとともに主スイッチQ1のゲートを駆動することで、更に主スイッチQ1もオン状態となり、ドレイン電圧の上昇を抑える、すなわち電圧クランプ状態となる。
【0035】
このようにして第1の主スイッチQ1のドレイン・ソース間電圧をクランプすることができ、かつ、クランプ電圧決定部30に流れる電流を小さくすることができる。
【0036】
3.実施形態1における温度特性調整抵抗35について
次に、クランプ電圧決定部30の温度特性調整抵抗35について詳細に説明する。図2は、実施形態1における温度特性調整抵抗35の抵抗値R、ダイオード34の順方向電圧VF、ツェナーダイオード33のツェナー電圧Vz及びアクティブクランプ回路10のクランプ電圧の温度特性を示す図及びグラフである。図2(a)は温度特性調整抵抗35の抵抗値Rの温度特性を示し、図2(b)はダイオード34の順方向電圧VFの温度特性を示し、図2(c)はツェナーダイオード33のツェナー電圧Vzの温度特性を示し、図2(d)はクランプ電圧決定部30の構成を示し、図2(e)はクランプ電圧決定部30のクランプ電圧の温度特性を示す。
【0037】
クランプ電圧決定部30は、ツェナーダイオード33及びダイオード34の組31(図2(d)参照)が複数段直列に接続されたダイオード部36と温度特性調整抵抗35とが直列に接続されてなるため、温度特性調整抵抗35の抵抗値R(抵抗による電圧降下)と、各組31のダイオード34の順方向電圧VF、及び、ツェナーダイオード33のツェナー電圧Vzとを足し合わせることでクランプ電圧が決定される。従って、クランプ電圧の温度特性も、上記した3つの要素それぞれの温度特性の影響を受ける。
【0038】
ここで、ダイオード34の順方向電圧VFの温度特性は、温度が高くなるに従って右肩下がりに低下する(図2(b)参照)。このため、温度特性調整抵抗35を、温度が高くなるに従って右肩上がりに増加する温度特性を有するものとすることにより、ダイオード34の順方向電圧の温度変化を低減する温度特性を有するものとすることができる。これにより、クランプ電圧決定部30のクランプ電圧の温度変化を低減することができる。
【0039】
また、ツェナーダイオード33のツェナー電圧Vzの温度特性は、ツェナーダイオードの特性によって異なる(図2(c)参照)。従って、ツェナーダイオード33のツェナー電圧Vzの温度特性によって温度特性調整抵抗32の温度変化に対する傾きを変化させることによって、クランプ電圧決定部30のクランプ電圧の温度変化をより一層低減することができ、高温になってもクランプ電圧を略一定に保つことができる(図2(e)参照)。
【0040】
具体的には、ツェナーダイオード33のツェナー電圧Vzが、温度が高くなるに従って右肩上がりに増加する温度特性を有する場合、温度が高くなるに従って右肩下がりに低下するダイオード34の順方向電圧VFの温度特性と打ち消しあう。このため、温度特性調整抵抗35の抵抗値を小さくして(図2(a)の「小」のグラフ参照)、ツェナー電圧Vzと順方向電圧VFを足し合わせた温度特性の微調整をする。
【0041】
ツェナーダイオード33のツェナー電圧Vzが、温度が高くなっても略一定である温度特性を有する場合、各組31は、右肩下がりに低下するダイオード34の順方向電圧VFの温度特性を有することとなる。このため、温度特性調整抵抗35の抵抗値をやや大きくして(図2(a)の「中」のグラフ参照)、順方向電圧VFの温度特性を打ち消しあい、クランプ電圧決定部30のクランプ電圧の温度変化を低減する。
【0042】
ツェナーダイオード33のツェナー電圧Vzが、温度が高くなるに従って右肩下がりに減少する温度特性を有する場合、温度が高くなるに従って右肩下がりに低下するダイオード34の順方向電圧VFの温度特性を強めあうこととなる。このため、温度特性調整抵抗35の抵抗値を大きくして(図2(a)の「大」のグラフ参照)、ダイオード部36の温度特性を打ち消し、クランプ電圧決定部30のクランプ電圧の温度変化を低減する。
【0043】
4.実施形態1に係る半導体装置100の構成
次に、アクティブクランプ回路10のデバイス構造について説明する。従来の第1のスイッチング回路800や従来の第2のスイッチング回路900においては、クランプ回路と主スイッチQ1とを1つのチップに入れてしまうことも考えられるが、その分、主スイッチQ1のチップサイズが大きくなってしまう、というデメリットがある。特に、主スイッチがSiCやGaNなどのワイドギャップ半導体の場合、周辺領域が狭く、クランプ回路を形成すると不必要に耐圧分離領域が広くなるので必要以上にチップサイズが大きくなってしまう。また、ワイドギャップ半導体自体が高価であるため、クランプ回路と主スイッチQ1とを別々に構成することで主スイッチQ1のコスト上昇を抑えることができる。そこで、実施形態1においては、アクティブクランプ回路10を主スイッチQ1とは別のチップに構成し、主スイッチQ1のチップサイズが大きくなることを防いでいる。
【0044】
図3は、実施形態1に係る半導体装置100を説明するために示す平面図である。なお、クランプ電圧決定部180については、複数の第1のN型領域182と複数の第1のP型領域184とが互いに隣接して交互に配置された構造を有するが、説明を簡便なものとするために、最もデバイス領域A1側の第1のP型領域184及び隣接した第1のN型領域182と、中途の位置の第1のP型領域184及び隣接した第1のN型領域182のみを図示し、その他の第1のP型領域184及び第1のN型領域182については図示を省略する。同様に、ゲート電極120についても2本のみ記載し、その他のゲート電極の図示を省略している。また、ソース電極130及びゲートパッド140においては、外部と接続するためのパッド部分を白く表示し、それ以外部分(ポリシリコン部分)にハッチングをしている。さらにまた、図3においてゲート配線は1本に見えるが、図4に示すように第1ゲート配線145及び第2ゲート配線147に分離されている。図4は、図3のA-A'断面図である。
【0045】
実施形態1に係る半導体装置100は、図3に示すように、中央部に形成されたデバイス領域A1とデバイス領域A1の周囲に形成された耐圧分離領域A2とが画定された半導体基体110に形成されており、デバイス領域A1にクランプ電圧制御用スイッチ20が構成され、耐圧分離領域A2にクランプ電圧決定部30が構成されている。すなわち、実施形態1に係る半導体装置100は、主スイッチQ1,Q2のゲート電極・ドレイン電極間に接続され、主スイッチQ1,Q2のクランプ電圧を制御するためのアクティブクランプ回路10を構成し、デバイスとして実現したものである。
【0046】
(1)デバイス領域A1について
デバイス領域A1は、クランプ電圧制御用スイッチ20が構成されている領域である。デバイス領域A1は、ソース電極130と重なる領域にMOS構造が形成された活性領域A11(図4参照)と、活性領域A11の周辺に形成され、ゲートパッド140や第1ゲート配線145、第2ゲート配線147が形成されている周辺領域A12(図4及び図5参照)とで構成されている。
【0047】
(1-1)活性領域A11について
デバイス領域A1の活性領域A11において、実施形態1に係る半導体装置100は、図3及び図4に示すように、半導体基体110と、ゲート電極120と、ゲート絶縁膜122と、層間絶縁膜124と、ソース電極130(第1の主電極)と、ドレイン電極150(第2の主電極)と、保護絶縁膜160とを備える。実施形態1に係る半導体装置100は、デバイス領域A1のソース電極130が形成されている領域において、ゲート電極120、ゲート絶縁膜122及び半導体基体110のMOS構造をするプレーナーゲート型のMOSFETである。なお、プレーナーゲート型ではなくトレンチゲート型のMOSFETを用いてもよい。
【0048】
半導体基体110は、図4に示すように、N型の低抵抗半導体層111と、低抵抗半導体層111の上方に形成されたN型のドリフト層112と、ドリフト層112の表面の所定の領域に形成されたP型のベース領域113と、ベース領域113の表面の一部にドリフト層112とは離隔して形成されたN型のソース領域114とを有する。半導体基体110の材料としてはシリコンを用いることができるが、高速スイッチングを行うことが可能な炭化珪素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)などの材料を用いるものにも好適である。
【0049】
低抵抗半導体層111の厚さは、例えば100μm~400μmの範囲内にあり、低抵抗半導体層111の不純物濃度は、例えば1×1019cm-3~1×1020cm-3の範囲内にある。ドリフト層112の厚さは、例えば5μm~120μmの範囲内にある。ドリフト層112の不純物濃度は、例えば5×1013cm-3~1×1016cm-3の範囲内にある。ベース領域113の最深部の深さ位置は、例えば0.5μm~4.0μmの範囲内にあり、ベース領域113の不純物濃度は、例えば5×1016cm-3~1×1018cm-3の範囲内にある。ソース領域114の最深部の深さ位置は、例えば0.1μm~1.5μmの範囲内にあり、ソース領域114の不純物濃度は、例えば5×1019cm-3~2×1020cm-3の範囲内にある。
【0050】
ゲート電極120は、半導体基体110上にゲート絶縁膜122を介して配置されており、ソース領域114とドリフト層112とに挟まれたベース領域113とゲート絶縁膜122を挟んで対向している。ゲート電極120は、図3に示すように、平面的に見て所定の間隔で半導体基体110上を縦断するようにストライプ状に配置されており、両方の端部は、後述する引き出し配線146(図4参照)を介して第1ゲート配線145に接続されている。
【0051】
層間絶縁膜124は、ゲート電極120の上部及び側部に形成され、ゲート電極120をソース電極130から絶縁する。層間絶縁膜124は、例えばCVD法により形成された厚さが0.5μm~2.0μmのリン又は、リン及びボロンを含む酸化膜で形成されたものを用いるが、その他適宜の絶縁膜を用いてもよい。
【0052】
ソース電極130は、層間絶縁膜124上に形成されており、層間絶縁膜124に形成されたコンタクト溝などを介して半導体基体110の表面のソース領域114及びベース領域113と接続されている。ソース電極130は、例えばAl膜又はAl合金膜(例えばAlSi膜)からなり、ソース電極130の厚さは1μm~10μm(例えば3μm)である。
【0053】
ドレイン電極150は、半導体基体110の裏面側の表面上(低抵抗半導体層111の表面上)の全体に配置されている。ドレイン電極150は、Ti、Ni、Au(又はAg)が半導体基体110側からこの順序で積層された積層膜からなり、ドレイン電極150の厚さは0.2μm~1.5μm(例えば1μm)である。
【0054】
保護絶縁膜160は、半導体基体110の表面上をソース電極130のパット部分(図3の中央の白い矩形部分)及びゲートパッド140とチップを切り分けるダイシング領域を除いて全面に形成されている。保護絶縁膜160の材料は例えば、ポリイミドである。
【0055】
(1-2)周辺領域A12について
図5は、図3のB-B’断面図である。デバイス領域A1の周辺領域A12においては、図3図5に示すように、半導体基体110上にゲートパッド140、第1ゲート配線145及び第2ゲート配線147が配置されている。引き出し配線146及びゲート保護部142上には層間絶縁膜124が形成されている。ゲートパッド140は、図3に示すように、矩形のソース電極の一方の短辺の外側の位置に、ソース電極130と離隔した位置に配置されている。第1ゲート配線145及び第2ゲート配線147は、内周側が第1ゲート配線145、外周側が第2ゲート配線147となるようにソース電極130を略一周囲むように配置されており(図3及び図4参照)、ゲートパッド140と接続されている。
【0056】
ゲートパッド140は、フィールド絶縁膜170上に形成されたポリシリコン層141を介して配置されている(図3及び図5参照)。ゲートパッド140は、ポリシリコン層141及び後述するゲート保護部142を介してソース電極130と接続されている。また、ゲートパッド140は、第1ゲート配線145及び第2ゲート配線147とも接続されている。なお、ポリシリコン層141は、例えばCVD法によって形成されたポリシリコン層にイオン注入法によってN型不純物を導入してなる。
【0057】
第1ゲート配線145は、層間絶縁膜124上に配置された引き出し配線146上に配置されている(図4参照)。引き出し配線146は、ストライプ状に配置されたゲート電極120の端部と接続されている。第1ゲート配線145は、引き出し配線146と接続されており、引き出し配線146を介してゲート電極120と接続されている。なお、引き出し配線146は、ポリシリコンに不純物を導入してなる。
【0058】
第2ゲート配線147は、耐圧分離領域A2のクランプ電圧決定部180と接続されている。なお、ゲートパッド140、第1ゲート配線145及び第2ゲート配線147は、ソース電極130と一括して形成されたものである。
【0059】
また、デバイス領域A1の周辺領域A12において、実施形態1に係る半導体装置100は、図5に示すように、半導体基体110と、フィールド絶縁膜170と、ゲート保護部142と、ドレイン電極150と、保護絶縁膜160とを備える。なお、ドレイン電極150及び保護絶縁膜160は、活性領域A11と同様の構成を有する。
【0060】
半導体基体110は、図5に示すように、N型の低抵抗半導体層111と、低抵抗半導体層111の上方に形成されたN型半導体層115と、P型半導体層119とを有する。N型の低抵抗半導体層111は活性領域A11の低抵抗半導体層111と同じ構成を有する。N型半導体層115は活性領域A11のドリフト層112と同じ構造を有する。P型半導体層119は、活性領域A11のベース領域113と同様の深さを有する。
【0061】
フィールド絶縁膜170は、半導体基体110の表面上に形成された酸化膜その他適宜の絶縁膜である。
【0062】
ゲート保護部142は、フィールド絶縁膜170上において、平面的に見てゲートパッド140(厳密にはゲートパッド140の下のポリシリコン層141)を一周囲む領域に配置されている。従って、ゲートパッド140は、ゲート保護部142を介してソース電極130と電気的に接続されており(図5の右側参照)、かつ、図示は省略するがゲート保護部142を介して第1ゲート配線145と電気的に接続されている。
【0063】
ゲート保護部142は、少なくとも1つの第2のN型領域143と少なくとも2つの第2のP型領域144とが互いに隣接して交互に配置されている。ゲート保護部142において、2つの第2のN型領域143に挟まれた第2のP型領域144の不純物総量は、第2のP型領域144と隣接する2つの第2のN型領域143の不純物総量のどちらよりも小さい。従って、第2のP型領域144の内部抵抗をゲート保護用温度特性調整抵抗42とすることができる。また、第2のP型領域144と一方の第2のN型領域143とでゲート保護用ツェナーダイオード43を構成し、第2のP型領域144と他方の第2のN型領域143とでゲート保護用ダイオード44を構成することができる。
【0064】
(2)耐圧分離領域A2について
耐圧分離領域A2は、クランプ電圧決定部30が構成されている領域である。
実施形態1に係る半導体装置100は、耐圧分離領域A2において、図3図5に示すように、半導体基体110と、フィールド絶縁膜170と、クランプ電圧決定部180と、チャネルストップ電極190と、ドレイン電極150とを備える。なお、ドレイン電極150及びフィールド絶縁膜170は、デバイス領域A1と同様の構成を有する。また、クランプ電圧決定部180上には層間絶縁膜124が形成されている。
【0065】
半導体基体110は、耐圧分離領域A2において、N型の低抵抗半導体層111と、低抵抗半導体層111の上方に形成されたN型半導体層115と、N型半導体層115の表面に形成されたP型のリサーフ領域116と、チャネルストップ領域117とを有する。また、デバイス領域A1から耐圧分離領域A2にわたって、ベース領域113の端部を覆うように形成されたP型の境界半導体領域118を有する。なお、N型の低抵抗半導体層111はデバイス領域A1の低抵抗半導体層111と同じ構成を有する。N型半導体層115は活性領域A11のドリフト層112と同じ構造を有する。また、境界半導体領域118の深さは、ベース領域113よりも深い深さ位置まで形成したが、ベース領域113と同じ深さでもよい。
【0066】
リサーフ領域116は、少なくともクランプ電圧決定部180と重なる領域に、深さがP型領域の118と同等かそれよりも浅くなるように形成されている。リサーフ領域116は、端部がデバイス領域A1のベース領域113及びP型の境界半導体領域118と接続されている。チャネルストップ領域117は、半導体基体110の最外周表面に形成されているN型の半導体領域であり、チャネルストップ電極190と接続されている。
【0067】
クランプ電圧決定部180は、図3に示すように、平面的に見てデバイス領域A1を全周にわたって囲んでおり、図4に示すように、デバイス領域A1側で第2ゲート配線147と接続され、最外周側で、ドレイン電極150と同電位となるように構成されているチャネルストップ電極190と接続される。従って、クランプ電圧決定部180は、一方端(デバイス領域A1側)が第2ゲート配線147を介してゲートパッド140と接続され、他方端(最外周側)が、ドレイン電極150と電気的に接続されていることとなる。
【0068】
クランプ電圧決定部180は、フィールド絶縁膜170上に形成されており、ダイオード部186と温度特性調整抵抗185とを有する。クランプ電圧決定部180は、アクティブクランプ回路10のクランプ電圧決定部30に対応する構造を有する。
【0069】
ダイオード部186は、複数の第1のP型領域184と複数の第1のN型領域182とが互いに隣接して交互に配置されている。第1のP型領域184とデバイス領域A1側の第1のP型領域184との間でダイオード34を形成し、第1のP型領域184と外周側の第1のP型領域184との間でツェナーダイオード33を形成する。
【0070】
温度特性調整抵抗185は、ダイオード部186の外周側に形成されており、ダイオード部186と直列に接続されている。温度特性調整抵抗185は、P型不純物を導入したポリシリコン層からなる。温度特性調整抵抗185の内部抵抗は、温度特性調整抵抗185の不純物濃度と、温度特性調整抵抗185の電流経路に沿った方向の長さ(図4の横方向の長さ)、及び、温度特性調整抵抗185の電流経路に対する断面積(電流経路に直交する面の断面積)で決定される。
【0071】
クランプ電圧決定部180の第1のN型領域182、第1のP型領域184及び温度特性調整抵抗185は、同一のポリシリコン層に対してP型不純物又はN型不純物をそれぞれ所定の領域に導入して形成されたものである。なお、実施形態1においては、クランプ電圧決定部180、ポリシリコン層141、引き出し配線146及びゲート保護部142は一括して形成されたものである。
【0072】
温度特性調整抵抗185の抵抗値は、ダイオード部186における第1のP型領域184と、第1のP型領域184の一方側で隣接する第1のN型領域182とで形成されるダイオードの順方向電圧と、第1のP型領域184と、第1のP型領域184の他方側で隣接する第1のN型領域182とで形成されるツェナーダイオードのツェナー電圧と、を重ね合わせた電圧の温度変化を打ち消す温度特性を有する。
【0073】
チャネルストップ電極190は、半導体基体110の最外周で半導体基体110を一周取り囲むように形成されており、ドレイン電極150と電気的に接続されている。
【0074】
5.実施形態1に係るアクティブクランプ回路10及び半導体装置100の効果
実施形態1に係るアクティブクランプ回路10によれば、クランプ電圧制御用スイッチ20と、一方の端子がドレイン電極と電気的に接続され、他方の端子がゲート電極と電気的に接続されたクランプ電圧決定部30を備えるため、従来のスイッチング回路と同様に、サージ電圧を吸収することができる。また、このクランプ電圧制御用スイッチ20は、主スイッチQ1,Q2のゲート電極G1,G2にオン信号を送るドライバーとしての機能を有するため、駆動電流は小さく且つ、トリガーとなるオフ電圧を決定するクランプ電圧決定部30に流れる電流も小さくできる一方、クランプ電圧制御用スイッチや主スイッチをオンしてサージが発生する期間に主スイッチQ1,Q2を電圧クランプ用の電流経路として利用することができ、大型のダイオードを用いなくてもよくなる。
【0075】
図6は、実施形態1に係るアクティブクランプ回路及び従来のアクティブクランプ回路におけるクランプ電圧とダイオード電流との関係を示す模式的なグラフである。図6中の破線は、従来のアクティブクランプ回路におけるクランプ電圧とダイオード電流との関係を示し、実線は実施形態1のアクティブクランプ回路におけるクランプ電圧とダイオード電流との関係を示す。
ところで、従来のアクティブクランプ回路910においては、主スイッチQ1に流れる電流をバイパスしてクランプするため、ツェナーダイオード943に流れる電流が大きくなり、ツェナーダイオードの動作抵抗(インピーダンス)が大きくなる。従って、ツェナーダイオードの動作抵抗(インピーダンス)によるクランプ電圧の変動(図6の破線の曲線参照)が大きくなる。また、ツェナーダイオードの温度上昇が大きくなり、クランプ電圧の変動が大きくなる。よって、サージ電圧をクランプする機能を狙い通りに動作させることが難しく、スイッチング回路の動作を安定させることが難しい。
これに対して、実施形態1に係るアクティブクランプ回路10によれば、クランプ電圧制御用スイッチ20とクランプ電圧決定部30とを備えるため、クランプ電圧決定部30やツェナーダイオード33に流れる電流が小さくなり、ツェナーダイオードの動作抵抗(インピーダンス)が小さくなる。従って、ツェナーダイオード33の動作抵抗(インピーダンス)によるクランプ電圧の変動(図6の実線参照)を小さくすることができる。また、クランプ電圧決定部30やツェナーダイオード33に流れる電流が小さくなるため、ツェナーダイオードの温度上昇が小さくなり、クランプ電圧の変動を小さくすることができる。よって、サージ電圧をクランプする機能を狙い通りに動作させることができ、スイッチング回路の動作を安定させることが可能となる。
【0076】
また、実施形態1に係るアクティブクランプ回路10によれば、温度特性調整抵抗35を有するため、温度上昇に対して減少する特性を有するダイオード34の順方向電圧の低下の影響と、温度上昇に対して増加する特性を有する温度特性調整抵抗35の抵抗値の上昇の影響とを互いに打ち消しあうことができ、クランプ電圧の温度変動を抑制することができる(図6参照)。
【0077】
また、実施形態1に係るアクティブクランプ回路10によれば、温度特性調整抵抗35を有するため、次段の主スイッチQ1の閾値電圧の温度特性を打ち消すように任意のクランプ電圧の温度傾向を調整することができる。例えば主スイッチQ1の閾値電圧VTHが-100mVの温度特性の場合に温度特性調整抵抗35によって+100mVとして回路全体の動作として、温度依存を打ち消すことができる。
【0078】
また、実施形態1に係るアクティブクランプ回路10によれば、ゲート保護部40は、ゲート保護用ツェナーダイオード43とゲート保護用ダイオード44とが逆極性で接続された組を有するため、スイッチングのサージ電圧によって、ゲート電極に誤信号を伝達することを防ぐとともに、破壊耐量を高くすることができる。
【0079】
また、実施形態1に係るアクティブクランプ回路10によれば、ゲート保護部40の組41はそれぞれ、ゲート保護用ツェナーダイオード43とゲート保護用ダイオード44との間にゲート保護用温度特性調整抵抗42を備える構造を有するため、ゲート保護部40においても温度変化に伴うクランプ電圧の変動を吸収することができる。その結果、温度変化があってもゲートが破壊されにくくなる。
【0080】
また、実施形態1に係るアクティブクランプ回路10によれば、温度特性調整抵抗35は、ダイオード部36に印加される電圧の温度変化を低減する温度特性を有するため、ダイオード部36の各組31の、温度上昇に対して減少する特性を有するダイオードの順方向電圧の低下の影響を、温度上昇に対して増加する特性を有する温度特性調整抵抗35の抵抗値の影響とを互いに打ち消しあうことができ、さらには、ツェナーダイオード33のツェナー電圧の温度特性にも対応することができる。その結果、クランプ電圧決定部30のクランプ電圧の温度変動をより確実に抑制することができる。
【0081】
実施形態1に係る半導体装置100によれば、ソース電極130が形成されている領域にMOS構造が形成されており、耐圧分離領域A2に、複数のN型領域182と複数のP型領域184とが互いに隣接して交互に配置されたクランプ電圧決定部180を備え、クランプ電圧制御用スイッチと、一方の端子がクランプ電圧制御用スイッチの第1の主電極と電気的に接続され、他方の端子がクランプ電圧制御用スイッチの制御電極と電気的に接続されたクランプ電圧決定部とを備えるアクティブクランプ回路を構成することができる。従って、サージ電圧を吸収することができる。また、このクランプ電圧制御用スイッチ(MOS構造)は、主スイッチの制御電極にオン信号を送るドライバーとしての機能を有するため、駆動電流は小さく且つ、トリガーとなるオフ電圧を決定するクランプ電圧決定部に流れる電流も小さくできる。これにより、サージが発生する期間のみ主スイッチを電圧クランプ用の電流経路として利用することができ、大型のダイオードを用いなくてもよくなる。すなわち、これらのデバイスと機能をワンチップ上で実現することで、個々のツェナーダイオードやダイオード、温度調整抵抗間のバラツキを抑えることができ、さらに小型化することができるので、精度良く省電力で低コストとなるだけでなく、設置面積も小さくすることができる。
【0082】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、ソース電極130が形成されている領域にMOS構造が形成されており、耐圧分離領域A2に、複数のN型領域182と複数のP型領域184とが互いに隣接して交互に配置されたクランプ電圧決定部180を備えることから、アクティブクランプ回路のクランプ電圧制御用スイッチ20とクランプ電圧決定部30とを構成することができる。従って、アクティブクランプ回路10やツェナーダイオードに流れる電流が小さくなるため、ツェナーダイオード33の動作抵抗(インピーダンス)が小さくなり、ツェナーダイオード33の動作抵抗(インピーダンス)によるクランプ電圧の変動(図6の破線参照)を小さくすることができる。また、アクティブクランプ回路10やツェナーダイオードに流れる電流が小さくなるため、ツェナーダイオード33の温度上昇が小さくなりクランプ電圧の変動を小さくすることができる。従って、サージ電圧をクランプする機能を狙い通りに動作させることができ、スイッチング回路の動作を安定させることが可能となる。
【0083】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、クランプ電圧決定部180は、複数の第1のP型領域184と複数の第1のN型領域182とが互いに隣接して交互に配置されたダイオード部186、及び、ダイオード部186と直列に接続された温度特性調整抵抗185を有し、温度特性調整抵抗185は、ダイオード部186の温度変化に対応した温度特性を有するため、第1のP型領域184と第1のN型領域182との間で形成されるダイオードの順方向電圧の温度特性(温度上昇に対して減少する特性)の影響を、温度特性調整抵抗185の温度特性(温度上昇に対して増加する特性)によって打ち消しあうことができ、クランプ電圧の温度変動を抑制することができる。
【0084】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、フィールド絶縁膜170上における平面的に見てゲートパッド140を囲む領域に、少なくとも1つの第2のN型領域143と少なくとも2つの第2のP型領域144とが互いに隣接して交互に配置されたゲート保護部142を備えるため、破壊耐量を高くすることができる。また、デバイスを小さくするにつれてゲート電圧の静電破壊耐量が小さくなるおそれがあるが、ゲート保護部142を備えるため、デバイスを小さくしても静電破壊耐量を維持することができる。
【0085】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、2つの第2のN型領域143に挟まれた第2のP型領域144の不純物総量は、第2のP型領域144と隣接する2つの第2のN型領域143の不純物総量のどちらよりも小さいことから、第2のP型領域144の内部抵抗を大きくすることができ、第2のP型領域144の内部抵抗がゲート保護用温度特性調整抵抗となる。従って、第2のP型領域144と第2のN型領域143との間で形成されるダイオードの順方向電圧の温度特性(温度上昇に対して減少する特性)の影響を、第2のP型領域144の内部抵抗の温度特性(温度上昇に対して増加する特性)によって打ち消しあうことができ、ゲート保護部142の保護電圧の温度変動を抑制することができる。
【0086】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、温度特性調整抵抗185の抵抗値は、ダイオード部186における第1のP型領域184と、第1のP型領域184の一方側で隣接する第1のN型領域182とで形成されるダイオードの順方向電圧と、第1のP型領域184と、第1のP型領域184の他方側で隣接する第1のN型領域182とで形成されるツェナーダイオードのツェナー電圧と、を重ね合わせた電圧の温度変化を打ち消す温度特性を有するため、より高い精度でクランプ電圧の温度変化を抑制することができる。
【0087】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、クランプ電圧決定部180は、平面的に見てデバイス領域A1を全周にわたって囲んでいるため、電流経路の断面積(中央から外周側に向かう断面積)が大きくなり、比較的大きな電流を流すことができる。従って、インピーダンスが小さくなり、クランプ電圧を上昇し難くすることができる。その結果、より所望の範囲のクランプ電圧を適用することができる。
【0088】
ところで、耐圧分離領域A2において、半導体基体110の表面に複数本のp型のガードリングが形成された場合には、隣接するガードリングの間のガードリングがない領域に電界集中が起こり易くなることに起因して電界の粗密が発生し、周辺耐圧が低下するおそれがある。これを防ぐためには、ガードリングの間隔を狭くする必要があるが、現実的に細かいピッチでガードリングを形成することは困難であり、また、フィールド絶縁膜170上のクランプ電圧決定部180のツェナー電圧に影響を与えてしまうおそれがある、という問題がある。これに対して、実施形態1に係る半導体装置100によれば、耐圧分離領域A2において、半導体基体110の表面には、P型のリサーフ領域が形成されているため、電位分布がなだらかになり、電界集中が起こりにくくなるため、安定した周辺耐圧が得られる。
【0089】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、ベース領域113とリサーフ領域116との境界を覆うようにP型の境界半導体領域118が形成されているため、デバイス領域A1と耐圧分離領域A2の境界付近の電位分布がなだらかになり耐圧を維持しやすくなる。また、リサーフ領域116と同じ、又はそれよりも深い深さ位置まで形成されているため、境界付近の電位分布がより一層なだらかになり耐圧をより維持しやすくなる。
【0090】
また、実施形態1に係る半導体装置100によれば、温度特性調整抵抗185は、P型不純物を導入したポリシリコン層からなるため、P型不純物の不純物濃度や体積を変更するだけで容易に抵抗値を調整することができる。また、ダイオード部186の第1のP型領域184や第1のN型領域182、さらには、ゲート保護部142や引き出し配線146等と一括して形成することができる。
【0091】
[実施形態2]
図7は、実施形態2におけるアクティブクランプ回路10aを示す回路図である。図8は、実施形態2に係る半導体装置101を説明するために示す平面図である。
【0092】
実施形態2に係るアクティブクランプ回路10aは、基本的には実施形態1に係るアクティブクランプ回路10と同様の構成を有するが、クランプ電圧決定部の構成が実施形態1に係るアクティブクランプ回路10の場合とは異なる。実施形態2に係るアクティブクランプ回路10aにおいて、クランプ電圧決定部30のダイオード部36aは、図7に示すように、第2の温度特性調整抵抗32をさらに有する。
【0093】
ダイオード部36aは、第2の温度特性調整抵抗32の一方端(主スイッチQ1のドレイン電極D1側)にツェナーダイオード33が接続され、第2の温度特性調整抵抗32の他方端(主スイッチQ1のゲート電極G1側)にツェナーダイオード33と逆特性となるように接続されたダイオード34と、で構成された組31を複数有し、各組31が直列に接続されている。
【0094】
実施形態2に係る半導体装置101は、基本的には実施形態1に係る半導体装置100と同様の構成を有するが、クランプ電圧決定部の構成が実施形態1に係る半導体装置100の場合とは異なる。実施形態2に係る半導体装置101のクランプ電圧決定部180において、2つの第1のN型領域182に挟まれた第1のP型領域184の不純物総量は、第1のP型領域184と隣接する2つの第1のN型領域182のどちらの不純物総量よりも小さい。これにより、2つの第1のN型領域182に挟まれた第1のP型領域184には抵抗成分を有することとなり、第2の温度特性調整抵抗32を構成することができる。
【0095】
実施形態2においては、第1のP型領域184の不純物濃度は、第1のN型領域182の不純物濃度よりも低い。従って、キャリアが少なくなるため、不純物濃度の観点からすると、第1のP型領域184の内部抵抗は、第1のN型領域182の内部抵抗よりも大きくなっている。なお、第1のP型領域184の図8及び図9の横幅(半径方向の長さ=電流経路の長さ)が、第1のN型領域182の横幅よりも長くなっている。これは、第1のP型領域184の不純物濃度に導入するP型不純物の不純物濃度を調整して内部抵抗の厳密なコントロールをすることは容易ではないことから、第1のP型領域184の横幅(半径方向の長さ=電流経路の長さ)を調整することによって、第1のP型領域184内の不純物総量を調整している。従って、第1のP型領域184の横幅(半径方向の長さ=電流経路の長さ)が第1のN型領域182の横幅よりも長いが、内部抵抗の観点でいうと、第1のP型領域184の内部抵抗は、第1のN型領域182の内部抵抗よりも大きくなっている。
【0096】
クランプ電圧決定部において、2つの第1のN型領域182に挟まれた第1のP型領域184の内部抵抗は、第1のP型領域184と、第1のP型領域184の一方側で隣接する第1のN型領域182とで形成されるダイオードの順方向電圧と、第1のP型領域184と、第1のP型領域184の他方側で隣接する第1のN型領域182とで形成されるツェナーダイオードのツェナー電圧と、を重ね合わせた電圧の温度変化を、温度特性調整抵抗185と合わせて打ち消す温度特性を有する。
【0097】
このように、実施形態2に係るアクティブクランプ回路10a及び半導体装置101は、クランプ電圧決定部の構成が実施形態1に係るアクティブクランプ回路10及び半導体装置100の場合とは異なるが、実施形態1の場合と同様に、クランプ電圧制御用スイッチ20と、一方の端子がドレイン電極と電気的に接続され、他方の端子がゲート電極と電気的に接続されたクランプ電圧決定部30を備えるため、従来のスイッチング回路と同様に、サージ電圧を吸収することができる。また、このクランプ電圧制御用スイッチ20は、主スイッチQ1,Q2のゲート電極G1,G2にオン信号を送るドライバーとしての機能を有するため、駆動電流は小さく且つ、トリガーとなるオフ電圧を決定するクランプ電圧決定部30に流れる電流も小さくできる一方、クランプ電圧制御用スイッチや主スイッチをオンしてサージが発生する期間に主スイッチQ1,Q2を電圧クランプ用の電流経路として利用することができ、大型のダイオードを用いなくてもよくなる。
【0098】
また、実施形態2に係るアクティブクランプ回路10a及び半導体装置101によれば、ダイオード部36aは、第2の温度特性調整抵抗32の一方端(主スイッチQ1のドレイン電極D1側)にツェナーダイオード33が接続され、第2の温度特性調整抵抗32の他方端(主スイッチQ1のゲート電極G1側)にツェナーダイオード33と逆特性となるように接続されたダイオード34と、で構成された組31を複数有し、各組31が直列に接続されているため、でダイオード34の順方向電圧と、ツェナーダイオード33のツェナー電圧と、を重ね合わせた電圧の温度変化を、温度特性調整抵抗35と各組31の第2の温度特性調整抵抗32とで打ち消すことができる。その結果、より高い精度でクランプ電圧の温度変動を抑制することができる。
【0099】
なお、実施形態2に係るアクティブクランプ回路10a及び半導体装置101は、クランプ電圧決定部の構成以外の点においては実施形態1に係るアクティブクランプ回路10及び半導体装置100と同様の構成を有するため、実施形態1に係るアクティブクランプ回路10及び半導体装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0100】
[実施形態3~7]
図9は、実施形態3に係る半導体装置102を示す平面図である。図10は、実施形態4に係る半導体装置103を示す平面図である。図11は、実施形態5に係る半導体装置104を示す平面図である。図12は、実施形態6に係る半導体装置105を示す平面図である。図13は、実施形態7に係る半導体装置106を示す平面図である。
【0101】
実施形態3~7に係る半導体装置102~106は、基本的には実施形態1、2に係る半導体装置100、101と同様の構成を有するが、クランプ電圧決定部の構成が実施形態1、2に係る半導体装置100、101の場合とは異なる。なお、図9~13においては、実施形態2(第2の温度特性調整抵抗32を有する実施形態)を基にした図となっているが、第2の温度特性調整抵抗32がなくてもよい。
【0102】
実施形態3に係る半導体装置102においては、図9に示すように、温度特性調整抵抗185がダイオード部186の内周側に形成されている。
【0103】
また、実施形態4に係る半導体装置103は、図10に示すように、最外周に形成された金属製のチャネルストップ配線190と,チャネルストップ配線190の内側にチャネルストップ配線190と離隔してダイオード部186を一周囲むように形成された金属配線192とをさらに有し、温度特性調整抵抗は、チャネルストップ配線190と金属配線192との間の領域に形成された外周P型領域187からなり、チャネルストップ配線190と金属配線192とは、導電性部材(例えば、Al-Si)で構成された接続配線194で接続されている。
【0104】
接続配線194は、チャネルストップ配線190と金属配線192とを短絡しているため、外周第1導電型領域187の温度特性調整抵抗としての機能を停止するものである。従って、ツェナーダイオードやダイオード、さらには主スイッチQ1の温度特性によって、レーザー溶断や電流溶断で接続配線194を切断することで外周第1導電型領域187の温度特性調整抵抗としての機能を発揮させることもできるし、接続配線194で短絡させたままにして外周第1導電型領域187の温度特性調整機能を停止することもできる(例えば、温度特性が調整するまでもなく整っているようなときに有効である)。すなわち、チップがある程度完成した後に接続配線をカットするか否かを選択することで、温度特性調整機能を活用するか停止するかを選択することができ、チップ完成後に温度特性をチューニングすることが可能となる。
【0105】
また、実施形態5に係る半導体装置104においては、図11に示すように、温度特性調整抵抗188は、第1のP型領域184に導入されたP型不純物とは異なるP型不純物を導入してなる。異なるP型不純物とは例えば、不純物元素が異なるものや同じ不純物であっても不純物濃度や導入された不純物量が異なるもの等をいう。なお、実施形態5では、同じ不純物元素(例えばボロン)で不純物量を変更して導入している。これにより、不純物濃度を変更するだけで不純物量や温度係数の調整が可能となる、というメリットがある。また、実施形態6に係る半導体装置105においては、図12に示すように、温度特性調整抵抗188が内周側に形成されている。
【0106】
また、実施形態7に係る半導体装置106において、温度特性調整抵抗189は、図13に示すように、ダイオード部186の内周側にデバイス領域A1を一周取り囲むポリシリコン層のうち所定の領域のみにP型不純物を導入している。これにより、電流が流れる方向に対する断面積が小さくなり、抵抗成分となるため、温度特性調整抵抗としての機能を果たすことができる。
【0107】
このように、実施形態3~7に係る半導体装置102~106は、クランプ電圧決定部の構成が実施形態1、2に係る半導体装置100、101の場合とは異なるが、実施形態1、2に係る半導体装置100、101の場合と同様に、クランプ電圧制御用スイッチ20と、一方の端子がドレイン電極と電気的に接続され、他方の端子がゲート電極と電気的に接続されたクランプ電圧決定部30を備えるため、従来のスイッチング回路と同様に、サージ電圧を吸収することができる。また、このクランプ電圧制御用スイッチ20は、主スイッチQ1,Q2のゲート電極G1,G2にオン信号を送るドライバーとしての機能を有するため、駆動電流は小さく且つ、トリガーとなるオフ電圧を決定するクランプ電圧決定部30に流れる電流も小さくできる一方、クランプ電圧制御用スイッチや主スイッチをオンしてサージが発生する期間に主スイッチQ1,Q2を電圧クランプ用の電流経路として利用することができ、大型のダイオードを用いなくてもよくなる。
【0108】
なお、実施形態3~7に係る半導体装置102~106は、クランプ電圧決定部の構成以外の点においては実施形態1、2に係る半導体装置100、101と同様の構成を有するため、実施形態1、2に係る半導体装置100、101が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0109】
[実施形態8]
図14は、実施形態8におけるアクティブクランプ回路10bを示す回路図である。図15は、実施形態8に係る半導体装置200を説明するために示す図である。図15(a)は半導体装置200の平面図を示し、図15(b)は図15(a)の断面図を示す。なお、図15において、符号213はアノード領域を示し、符号230はアノード電極を示し、符号250はカソード電極を示す。
【0110】
実施形態8に係るアクティブクランプ回路10b及び半導体装置200は、基本的には実施形態1に係るアクティブクランプ回路10及び半導体装置100と同様の構成を有するが、クランプ電圧制御用スイッチの代わりにバイパスダイオードを有する点で実施形態1に係るアクティブクランプ回路10及び半導体装置100の場合とは異なる(図14及び図15参照)。実施形態8に係るアクティブクランプ回路10bにおいては、ゲート保護部40や抵抗50も有しない。
【0111】
バイパスダイオード60は、アノード電極A及びカソード電極Kを有し、アノード電極Aが主スイッチQ1のゲート電極G1と電気的に接続され、カソード電極Kが主スイッチQ1のドレイン電極D1と電気的に接続されている。クランプ電圧決定部30は、一方の端子がバイパスダイオード60のカソード電極Kと電気的に接続され、他方の端子がバイパスダイオード60のアノード電極Aと電気的に接続されている。
【0112】
実施形態8に係る半導体装置200は、デバイス領域A1にゲートパッド140、第1ゲート配線145及び第2ゲート配線147を有しない(図15参照。)。
【0113】
デバイス領域A1において、半導体基体210は、図15に示すように、低抵抗半導体層211と、N型半導体領域212(ドリフト領域)と、P型のアノード領域213とを有し、アノード領域213とドリフト領域212との間でダイオード構造を有する。
耐圧分離領域A2において、クランプ電圧決定部280は、フィールド絶縁膜270上に、複数のN型領域282と複数のP型領域284とが互いに隣接して交互に配置されており、デバイス領域A1に最も近いN型領域282は、アノード電極と電気的に接続されており、デバイス領域A1から最も遠いN型領域282は、カソード電極と電気的に接続されている。
【0114】
このように、実施形態8に係るアクティブクランプ回路10b及び半導体装置200は、クランプ電圧制御用スイッチの代わりにバイパスダイオード有する点で実施形態1に係るアクティブクランプ回路10及び半導体装置100の場合とは異なるが、バイパスダイオード60と、一方の端子がバイパスダイオード60のアノード電極Aと電気的に接続され、他方の端子がバイパスダイオード60のカソード電極Kと電気的に接続されたクランプ電圧決定部30とを備えるため、サージ電圧を吸収して電圧をクランプすることができる。また、クランプ電圧決定部30に流れる電流も小さくできる。一方、主スイッチをオンしてサージが発生する期間に主スイッチを電圧クランプ用の電流経路として利用することができ、大型のダイオードを用いなくてもよくなる。
【0115】
実施形態8に係る半導体装置200によれば、アノード電極230が形成されている領域にダイオード構造が形成されており、複数の第1のP型領域284と複数の第1のN型領域282とが互いに隣接して交互に配置されたクランプ電圧決定部280を備えるため、バイパスダイオード60と、一方の端子がバイパスダイオード60のアノード電極Aと電気的に接続され、他方の端子がバイパスダイオード60のカソード電極Kと電気的に接続されたクランプ電圧決定部30とを備えるアクティブクランプ回路10bとすることができる。従って、サージ電圧を吸収して電圧をクランプすることができる。また、クランプ電圧決定部30に流れる電流も小さくできる一方、主スイッチをオンしてサージ電圧が発生する期間に主スイッチを電圧クランプ用の電流経路として利用することができ、大型のダイオードを用いなくてもよくなる。
【0116】
なお、実施形態8に係るアクティブクランプ回路10b及び半導体装置200は、クランプ電圧制御用スイッチの代わりにバイパスダイオードを有する点以外の点においては実施形態1に係るアクティブクランプ回路10及び半導体装置100と同様の構成を有するため、実施形態1に係るアクティブクランプ回路10及び半導体装置100が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0117】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0118】
(1)上記各実施形態において記載した位置、接続、個数等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0119】
(2)上記実施形態1~7においては、ゲート保護部を設けることとしたが、本発明はこれに限定するものではない。ゲート保護部を設けなくてもよい。また、ゲート保護部の抵抗として、温度特性調整抵抗を用いたが、温度特性を調整した抵抗ではない一般的な抵抗を用いてもよいし、抵抗を用いなくてもよい。
【0120】
(3)上記各実施形態においては、ベース領域とリサーフ領域とが接しており、ベース領域とリサーフ領域との境界を覆うように境界半導体領域を形成したが、本発明はこれに限定するものではない。ベース領域とリサーフ領域とが接していなくてもよい。この場合、境界半導体領域はベース領域とリサーフ領域との間に形成されることとなる。境界半導体領域の深さは、リサーフ領域の深さと同じかそれよりも深い深さであることが好ましい。これにより、デバイス領域と耐圧分離領域の境界付近の電位分布がなだらかになり耐圧を維持しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0121】
1…スイッチング回路、10,10a,10b…アクティブクランプ回路、20…クランプ電圧制御用スイッチ、30,30a…クランプ電圧決定部、31…組、32…第2の温度特性調整抵抗、33…ツェナーダイオード、34…ツェナーダイオード、35…温度特性調整抵抗、36…ダイオード部、40…ゲート保護部、41…組、42…ゲート保護用温度特性調整抵抗、43…ゲート保護用ツェナーダイオード、44…ゲート保護用ダイオード、50…抵抗、60…バイパスダイオード、100,101,102,103,104,105,106,200…半導体装置、110…半導体基体、111,211…低抵抗半導体層、112,212…ドリフト層、113…ベース領域、114…ソース領域、115…N型半導体層、116…リサーフ領域、117…チャネルストップ領域、118…境界半導体領域、119…P型半導体層、120…ゲート電極、122…ゲート絶縁膜、124…層間絶縁膜、130…ソース電極、140…ゲートパッド、141…ポリシリコン層、142…ゲート保護部、143…第2のN型領域、144…第2のP型領域、145…ゲート配線、146…ゲート引き出し配線、147…第2ゲート配線、150…ドレイン電極、160…保護絶縁膜、170,270…フィールド絶縁膜、172…ポリシリコン層、180,280…クランプ電圧決定部、182,282…第1のN型領域、184,284…第1のP型領域、186…第3のP型領域、190…チャネルストップ電極、213…アノード領域、230…アノード電極、A1…デバイス領域、A11…活性領域、A12…周辺領域、A2…耐圧分離領域、Q1…第1の主スイッチ、Q2…第2の主スイッチ、Vcc…外部電源
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