(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136880
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】供給設備
(51)【国際特許分類】
F17C 9/00 20060101AFI20240927BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20240927BHJP
F17C 13/08 20060101ALI20240927BHJP
F17C 13/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F17C9/00 A
F17C13/00 302Z
F17C13/08 302Z
F17C13/12 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048175
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 優
(72)【発明者】
【氏名】森 晃一
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA06
3E172AB20
3E172BA06
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172DA41
3E172DA90
3E172EB03
3E172EB10
3E172GA03
(57)【要約】
【課題】液状化学物質の供給設備であって、用地面積を縮小できる新たな供給設備を提供すること。
【解決手段】液状化学物質を貯蔵および供給するための供給設備であって、前記液状化学物質を貯蔵するための貯槽と、前記供給設備を操作するための操作部と、を備え、前記供給設備は、複数階層からなり、前記供給設備は、前記貯槽が設置された第1階層および前記操作部が設置された第2階層を有し、前記第1階層は、前記貯槽の側方を取り囲む壁部を有し、前記第1階層は、前記貯槽と前記壁部との間に空隙を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状化学物質を貯蔵および供給するための供給設備であって、
前記液状化学物質を貯蔵するための貯槽と、
前記供給設備を操作するための操作部と、を備え、
前記供給設備は、複数階層からなり、
前記供給設備は、前記貯槽が設置された第1階層および前記操作部が設置された第2階層を備え、
前記第1階層は、前記貯槽の側方を取り囲む壁部を有し、
前記第1階層は、前記貯槽と前記壁部との間に空隙を有する、供給設備。
【請求項2】
前記第1階層は、前記第2階層よりも上層に設置されている、請求項1に記載の供給設備。
【請求項3】
前記第2階層は、前記液状化学物質を除害するための除害装置を有し、
前記第1階層と前記除害装置とが接続されている、請求項2に記載の供給設備。
【請求項4】
前記貯槽に貯蔵された前記液状化学物質を前記第1階層の外部に導出するための導出部を備え、
前記導出部は、手動弁である貯槽弁および電磁弁である緊急遮断弁を有し、
前記貯槽弁および前記緊急遮断弁の操作部は、前記壁部の外部に設置されている、請求項1に記載の供給設備。
【請求項5】
前記第1階層は、その上部を覆う屋根部を有する、請求項2に記載の供給設備。
【請求項6】
前記壁部に開口部が設置されている、請求項5に記載の供給設備。
【請求項7】
式(1):
第1容積-第2容積≧第3容積・・・(1)
の関係を満たし、前記式(1)中、
前記第1容積は、前記壁部と前記第1階層の床部と前記開口部の高さとで取り囲まれる空間の容積であり、
前記第2容積は、前記空間内に存在する前記貯槽の容積であり、
前記第3容積は、前記貯槽の容積である、請求項6に記載の供給設備。
【請求項8】
前記貯槽の底面と、前記第1階層の床部とが離間している、請求項1に記載の供給設備。
【請求項9】
前記液状化学物質は、毒性を有する、請求項1に記載の供給設備。
【請求項10】
前記液状化学物質は、液化アンモニアである、請求項1に記載の供給設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液状化学物質を貯蔵および供給するための供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱炭素社会に向けて、化石燃料に替わる炭酸ガスを発生しない代替エネルギーが注目されている。このような代替エネルギーとして、アンモニアは、火力発電、工業炉用の燃料等として既に利用されている。アンモニアは、容易に液化でき、輸送や貯蔵に適していることから、今後ますますニーズが高まるものと考えられる。
【0003】
一方、アンモニアは毒性ガスであるため、高圧ガス保安法や電気事業法等により、供給設備に制限が設けられている。例えば、貯蔵能力が5トン以上の貯槽において、液化アンモニアの流出を防止するために、防液堤の設置が求められている。また、アンモニアの供給設備は、屋外に設置されていることが一般的であるが、学校や病院等の保安物件と一定の距離を取る必要がある。
【0004】
特許文献1(特開2015-147606号公報)には、屋内にアンモニアの供給設備を設置することが開示されている。また、特許文献2(特開2021-173372号公報)には、屋内かつ2階建て構造の液化天然ガスの供給設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-147606号公報
【特許文献2】特開2021-173372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のアンモニアの供給設備では、設置に要する用地面積が広くなる、アンモニアが漏洩した場合に、安全に作業を行うことが困難である、といった課題がある。また、特許文献2に記載の液化天然ガスの供給設備では、2階建て構造とすることで用地面積を縮小しているが、アンモニア等の特定の液状化学物質の貯蔵や供給の設置要件を満たすことを想定していない。
【0007】
本開示は、液状化学物質の供給設備であって、用地面積を縮小できる新たな供給設備の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕 液状化学物質を貯蔵および供給するための供給設備であって、
前記液状化学物質を貯蔵するための貯槽と、
前記供給設備を操作するための操作部と、を備え、
前記供給設備は、複数階層からなり、
前記供給設備は、前記貯槽が設置された第1階層および前記操作部が設置された第2階層を備え、
前記第1階層は、前記貯槽の側方を取り囲む壁部を有し、
前記第1階層は、前記貯槽と前記壁部との間に空隙を有する、供給設備。
【0009】
〔2〕 前記第1階層は、前記第2階層よりも上層に設置されている、〔1〕に記載の供給設備。
【0010】
〔3〕 前記第2階層は、前記液状化学物質を除害するための除害装置を有し、
前記第1階層と前記除害装置とが接続されている、〔2〕に記載の供給設備。
【0011】
〔4〕 前記貯槽に貯蔵された前記流体を前記第1階層の外部に導出するための導出部を備え、
前記導出部は、手動弁である貯槽弁および電磁弁である緊急遮断弁を有し、
前記貯槽弁および前記緊急遮断弁の操作部は、前記壁部の外部に設置されている、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の供給設備。
【0012】
〔5〕 前記第1階層は、その上部を覆う屋根部を有する、〔2〕または〔3〕に記載の供給設備。
【0013】
〔6〕 前記壁部に開口部が設置されている、〔5〕に記載の供給設備。
〔7〕 式(1):
第1容積-第2容積≧第3容積・・・(1)
の関係を満たし、前記式(1)中、
前記第1容積は、前記壁部と前記第1階層の床部と前記開口部の高さとで取り囲まれる空間の容積であり、
前記第2容積は、前記空間内に存在する前記貯槽の容積であり、
前記第3容積は、前記貯槽の容積である、〔6〕に記載の供給設備。
【0014】
〔8〕 前記貯槽の底面と、前記第1階層の床部とが離間している、〔1〕から〔7〕のいずれかに記載の供給設備。
【0015】
〔9〕 前記液状化学物質は、毒性を有する、〔1〕から〔8〕のいずれかに記載の供給設備。
【0016】
〔10〕 前記液状化学物質は、液化アンモニアである、〔1〕から〔9〕のいずれかに記載の供給設備。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、液状化学物質の供給設備であって、用地面積を縮小できる新たな供給設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態における供給設備の構成の一例を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の供給設備が備える各階層の平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における供給設備の一部の構成を示す概略側面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における供給設備を用いた、液化アンモニアの貯蔵および供給を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
【0020】
図1は、本実施形態における供給設備の構成の一例を示す概略側面図である。
図2は、
図1の供給設備が備える各階層の平面図である。
図3は、本実施形態における供給設備の一部の構成を示す概略側面図である。まず、
図1~3を参照して、本実施形態における供給設備の構造について説明する。
【0021】
図1および2に示すように、液状化学物質を貯蔵および供給するための供給設備50は、液状化学物質を貯蔵するための貯槽1と、供給設備50を操作するための操作部2と、を備える。供給設備50は、複数階層からなり、貯槽1が設置された第1階層20Aおよび操作部2が設置された第2階層20Bを備える。
図1および2に示す例において、供給設備50は、1階部分が第2階層20Bであり、2階部分が第1階層20Aである。第1階層20Aは、貯槽1の側方を取り囲む壁部21を有し、第1階層20Aは、貯槽1と壁部21との間に空隙Xを有する。
【0022】
本実施形態における「液状化学物質」とは、液体状の単体または化合物であり、自然物であってもよく、人工物であってもよい。本実施形態においては、例えば、毒性を有するものや可燃性のもの等が挙げられる。このような液状化学物質としては、例えば、液化アンモニア、硫酸、メタノール等が挙げられる。液状化学物質は、貯槽1内で貯蔵されている状態において液体であればよい。
【0023】
貯槽1は、液状化学物質を貯蔵するための容器である。貯槽1は、耐圧構造を有する。
操作部2は、供給設備50に設置された各種の設備の動作を操作するための部分である。
【0024】
供給設備50は、複数階層からなり、少なくとも貯槽1が設置された第1階層20Aおよび操作部2が設置された第2階層20Bを備える。供給設備50が複数階層からなることにより、用地面積の縮小が可能となる。供給設備50は、少なくとも2階建て構造を有していればよく、3階建て構造であってもよく、4階建て構造であってもよい。
【0025】
第1階層20Aは、貯槽1の側方を取り囲む壁部21を有する。壁部21は、第1階層20Aの床部24と気密となるように設置されている。また、貯槽1と壁部21との間には空隙Xが存在する。このような構造とすることにより、液状化学物質の漏洩時に、壁部21の内部から液状化学物質が供給設備50の外部に漏洩することを防ぐことができる。すなわち、壁部21は、防液堤として機能し得る。
【0026】
壁部21の構成材料は、防液堤としての機能を有する観点から、鉄筋コンクリート、鉄骨・鉄筋コンクリート、金属、土系壁材またはこれらの組み合わせからなることが好ましい。
【0027】
貯槽1の底面と、第1階層20Aの床部24とは、離間していることが好ましい。貯槽1の底面と第1階層20Aの床部24とが離間していることにより、液状化学物質の漏洩時の安全性の向上に繋がる。
【0028】
供給設備50は、液状化学物質の漏洩時に、漏洩した液状化学物質を除害するための除害設備9(希釈槽9aおよび排水槽9b)を備える。希釈槽9aに送出された液状化学物質は、排水可能な濃度まで希釈され、排水槽9bから排水される。また、供給設備50は、非常用ポンプ(図示せず)を備えていてもよい。非常用ポンプは、漏洩した液状化学物質を除害設備9に排出するためのものである。
【0029】
供給設備50は、1階部分が第2階層20Bであり、2階部分が第1階層20Aであることが好ましい。この場合、除害設備9は、第2階層20Bに設置されていることが好ましく、第1階層20Aと除害設備9とは、非常用配管43を介して接続されている。このような構造とすることにより、液状化学物質の漏洩時に、液状化学物質は非常用配管43を介して位置水頭により除害装置9へ送出される。すなわち、上述したような非常用ポンプの設置を省略することができ、設備投資の削減が可能となる。
【0030】
また、漏洩した液状化学物質の非常用配管43への送出は、非常用配管43に設置された送出弁44を開閉することにより行われる。送出弁44は、手動であることが好ましい。送出弁44が手動であることにより、例えば、停電時にも送出弁44の開閉が可能であり、安全性の向上に繋がる。
【0031】
供給設備50は、貯槽1に液状化学物質を導入するための導入部(図示せず)および貯槽1から液状化学物質を導出するための導出部40を備える。導出部40は、手動弁である貯槽弁41と、電磁弁である緊急遮断弁42とを有する。貯槽弁41は手動にて操作することができ、緊急遮断弁42は遠隔にて操作することができる。液状化学物質の漏洩時においては、まず緊急遮断弁42を遠隔にて閉じることにより、液状化学物質の壁部21の外部への漏洩を防止する。一方、緊急遮断弁42が機能しない場合等においては、貯槽弁41を手動にて閉じることにより、液状化学物質の壁部21の外部への漏洩を防止することができる。貯槽弁41および緊急遮断弁42の操作部は、壁部21の外部に設置されていることが好ましい。このように、貯槽弁41および緊急遮断弁42を壁部21の内部に設置し、貯槽弁41および緊急遮断弁42の操作部のみを壁部21の外部に設置することで、これらの操作部が漏洩した液状化学物質に浸かることを防ぐことができ、液状化学物質の漏洩時であっても、液状化学物質が曝露していない環境下で貯槽弁41の操作を安全に行うことができる。
【0032】
また、貯槽弁41および緊急遮断弁42の操作部の貫通部は、貫通部の間隙からの液状化学物質の漏洩を防止するために、気密性を有することが好ましい。なお、
図3に示すように、1階部分が第2階層20Bであり、2階部分が第1階層20Aである場合、貯槽弁41の操作部は、例えば、第1階層20Aの床部24を貫通させ、第2階層20Bの上部に設置してもよく、緊急遮断弁42の操作部は、壁部21を貫通させ、壁部21に外部に設置してもよい。
【0033】
第1階層20Aは、その上部を覆う屋根部22を有することが好ましい。第1階層20Aが屋根部を有する場合、壁部21の内部に雨水が溜まるのを防ぐことができる。その結果、液状化学物質の漏洩時に液状化学物質を壁部21の内部に収容できる容量を容易に確保することができる。なお、
図1に示すように、屋根部22は、少なくとも壁部21の内部の上部を覆っていればよく、第1階層20A全体を覆っていてもよい。
【0034】
第1階層20Aが屋根部22を有する場合、屋根部22と壁部21とは接している、すなわち、壁部21と屋根部22と床部24とで囲まれた部分は密閉されていることが好ましい。この場合、壁部21には開口部23が設置されていることが好ましい。開口部23を開口することで、液状化学物質の漏洩時に、上記部分内の圧力を逃したり、漏洩したガスを外部に逃したりすることができる。開口部23は、1箇所設けられていてもよく、複数箇所設けられていてもよい。開口部23は、高所に、すなわち、屋根部22に近接するように設置することが好ましい。開口部23を、例えば、床部24に近接するように設置した場合、液状化学物質の漏洩時に開口部23から液状化学物質が上記部分の外部に漏出するおそれがあるからである。開口部23は、
図1に示すように、貯槽1の上端よりも高所に設置することがより好ましい。
【0035】
壁部21に開口部23が設置されている場合、液状化学物質の貯蔵に関する規制の観点から、下記式(1)の関係を満たしていることが好ましい。
【0036】
第1容積-第2容積≧第3容積・・・(1)
ここで、第1容積は、壁部21と第1階層20Aの床部24と開口部23の高さTとで取り囲まれる空間の容積であり、第2容積は、空間内に存在する貯槽1の容積であり、第3容積は、貯槽1の容積である。なお、「開口部の高さ」とは、第1階層20Aの床部24から開口部23の下端までの長さを示す(
図3参照)。
【0037】
供給設備50は、蒸発器3およびバッファタンク4を備えていてもよい。液状化学物質を気体として供給先に供給する場合、貯槽1から導出された液状化学物質は、蒸発器3によって蒸発され、気体がバッファタンク4に貯蔵される。貯蔵された気体は、必要な量が供給先に供給される。
【0038】
供給設備50は、液ポンプユニット5を備えていてもよい。液状化学物質を液体として供給先に供給する場合、液ポンプユニット5により貯槽1から必要な量が供給先に供給される。
【0039】
供給設備50は、ローディングアーム6、バルブユニット7およびガスコンプレッサ8を備えていてもよい。車両や船舶等に積載された液状化学物質の貯蔵タンクから貯槽1に液状化学物質を移送する場合、例えば、ガスコンプレッサ8により貯蔵タンクの圧力を上げることで生じた圧力差によって、貯蔵タンクの液状化学物質がローディングアーム6を介して貯槽1に移送される。なお、車両から貯槽1に液状化学物質を移送する場合は、ローディングアーム6やガスコンプレッサ8によらず、送液ポンプ(図示せず)により液状化学物質を貯槽1に移送してもよい。一方、貯槽1から車両や船舶等に積載された液状化学物質の貯蔵タンクに液状化学物質を移送する場合、例えば、ガスコンプレッサ8により貯槽1の圧力を上げることで生じた圧力差によって、貯槽1の液状化学物質がローディングアーム6を介して貯蔵タンクに移送される。移送は、バルブユニット7の開閉により調整される。
【0040】
供給設備50は、散水設備10(散水槽10aおよび散水ポンプ10b)を備えていてもよい。散水ポンプ10bにより、散水槽10aに貯蔵された水を、貯槽1の内部や壁部21の内部に散水する。壁部21の内部への散水は、例えば、防水や消火のために、外気温の上昇に伴う温度上昇を抑制するために、行われる。また、貯槽1の内部および壁部21の内部への散水は、液状化学物質の漏洩時に液状化学物質を希釈するために行われる。
【0041】
供給設備50は、非常用換気設備(図示せず)を備えていてもよい。非常用換気設備により、液状化学物質の漏洩時に散水設備10による散水後、壁部21の内部を換気する。
【0042】
供給設備50は、歩廊30および階段31を備えていてもよい。構造上の基準を満たす観点からである。
【0043】
導出部40は、貯槽1に貯蔵された液状化学物質を貯槽1から導出する導出ポンプ(図示せず)を有していてもよい。
【0044】
供給設備50は、外気取込部および内気排出部を備えていてもよい(図示せず)。壁部21と床部24と屋根部22とで囲まれた部分が気密性を有する場合、外気取込部によって上記部分の外部から内部に外気を取り込み、内気排出部によって上記部分の内部から外部に内気を排気することができる。
【0045】
供給設備50は、液状化学物質検知器(図示せず)を備えていてもよい。液状化学物質検知器は、壁部21の内部に設置されており、貯槽1の外部であって壁部21の内部における液状化学物質の有無を検知する。すなわち、液状化学物質検知器は、壁部21の内部における液状化学物質の漏洩を検知する。
【0046】
貯槽1は、貯槽用液面計(図示せず)を備えていてもよい。貯槽用液面計は、貯槽1に貯蔵された液状化学物質の液面レベルを検出する。
【0047】
第2階層20Bは、操作部2を含む設備の側方を取り囲む壁部を有することが好ましい。
【0048】
図4は、本実施形態における供給設備を用いた、液化アンモニアの貯蔵および供給を説明するための図である。
図4を参照して、液状化学物質が液化アンモニアである場合の、本実施形態における供給設備の動作について説明する。なお、供給設備の動作は、操作部2により行われるものとする。また、
図4に記載の供給設備では、
図1~3に記載の各構造を備えているものとする。
【0049】
図4に示すように、タンクローリー等の車両に積載された液化アンモニアの貯蔵タンクから貯槽1に液化アンモニアを移送する場合、ガスコンプレッサ8により貯蔵タンクの圧力を上げることで生じた圧力差によって、貯蔵タンクの液化アンモニアがローディングアーム(図示せず)を介して貯槽1に移送されてもよく、送液ポンプ(図示せず)により貯槽1に移送されてもよい。一方、貯槽1から車両に積載された液化アンモニアの貯蔵タンクに液化アンモニアを移送する場合、ガスコンプレッサ8により貯槽1の圧力を上げることで生じた圧力差によって、貯槽1の液化アンモニアがローディングアームを介して貯蔵タンクに移送されてもよい。
【0050】
液化アンモニアが液体として使用される場合、液化アンモニアは液ポンプユニット5により貯槽1から必要な量が供給先に供給される。液化アンモニアが気体(アンモニアガス)として使用される場合、液化アンモニアは蒸発器3によって蒸発され、アンモニアガスがバッファタンク4に貯蔵される。貯蔵されたアンモニアガスは、必要な量が供給先に供給される。
【0051】
図4に示された供給設備50は、貯槽1が設置された第1階層20Aおよび操作部2等の設備が設置された第2階層20Bを備えた複数階層からなる。このような構造とすることで、第2階層20Bの空きスペースを有効活用することができ、用地面積の縮小に繋がる。また、用地面積を縮小することができる結果、供給設備50の建設に必要な部品の削減や工事の工期の短縮等にも繋がり、コスト削減も可能となる。
【0052】
また、液化アンモニアは毒性を有するため、漏洩を防止するために防液堤を設置する必要がある。本実施形態においては、第1階層20Aは、貯槽1の側方を取り囲む壁部21を有する。壁部21と第1階層20Aの床部24とは、気密にするように設置されている。貯槽1と壁部21との間には空隙Xが存在する。このような構造とすることで、壁部21が防液堤として機能し、液化アンモニアの漏洩時に液化アンモニアが供給設備50の外部に漏洩することを防ぐことができる。
【0053】
次に、液化アンモニアが漏洩した場合の本実施形態における供給設備50の動作について説明する。
【0054】
壁部21の内部に設置された液化アンモニア検知器が、貯槽1の外部であって壁部21の内部において液化アンモニアを検知した場合、貯槽弁41および緊急遮断弁42を閉鎖し、導出部40からの液化アンモニアの供給設備50の外部への液化アンモニアの漏洩を防止する。また、送出弁44を開放し、非常用配管43を介して液化アンモニアを除害設備9に送出する。貯槽弁41および送出弁44は手動で開閉することができ、緊急遮断弁42は遠隔で開閉することができる。貯槽弁41および緊急遮断弁42の操作部は壁部21の外部に設置されている。
【0055】
また、散水設備10から貯槽1の内部および壁部21の内部に散水されることにより、アンモニアが水に溶解し、アンモニア水となる。このアンモニア水も、非常用配管43を介して除害設備9に送出される。
【0056】
除害設備9に送出された液化アンモニアおよびアンモニア水は、希釈槽9aにより排水可能な濃度まで希釈され、排水槽9bから排水される。
【0057】
図4に示された供給設備50では、貯槽1が設置された第1階層20Aが2階部分であり、操作部2等の設備が設置された第2階層20Bが1階部分である。このような構造とすることで、2階部分である壁部21の内部に漏洩した液化アンモニアおよびアンモニア水は、位置水頭により1階部分に設置された除害設備9に送出することができ、送出ポンプ等の設備投資の削減に繋がる。また、貯槽弁41および緊急遮断弁42の操作部のみを壁部21の外部に設置することで、これらの操作部が漏洩した液化アンモニアに浸かることを防ぐことができ、液化アンモニアの漏洩時であっても、液化アンモニアが曝露していない環境下で貯槽弁41の操作を安全に行うことができる。さらに、貯槽弁41および送出弁44の操作が手動であることにより、停電時にも開閉が可能であり、安全性の向上に繋がる。
【0058】
また、
図4に示された供給設備50では、第1階層20Aは、その上部を覆う屋根部22を有することが好ましい。これにより、壁部21の内部に雨水が溜まるのを防ぐことができ、液化アンモニアの漏洩時に液化アンモニアを壁部21の内部に収容できる容量を容易に確保することができる。第2階層20Bも、操作部2を含む設備の側方を取り囲む壁部を有することが好ましい。
【0059】
また、屋根部22と壁部21とは接しており、壁部21と屋根部22と床部24とで囲まれた部分は密閉されていることが好ましい。この場合、壁部21には開口部23が設置されていることが好ましく、液化アンモニアの漏洩時に開口部23を開放することにより、上記部分内の圧力を逃したり、漏洩したガスを外部に逃したりすることができる。
【0060】
また、壁部21に開口部23が設置されている場合、液化アンモニアの貯蔵に関する規制の観点から、下記式(1)の関係を満たしていることが好ましい。
【0061】
第1容積-第2容積≧第3容積・・・(1)
第1容積は、壁部21と第1階層20Aの床部24と開口部23の高さとで取り囲まれる空間の容積であり、第2容積は、空間内に存在する貯槽1の容積であり、第3容積は、貯槽1の容積である。
【0062】
また、貯槽1の底面と、第1階層20Aの床部24とは、離間していることが好ましい。貯槽1の底面と第1階層20Aの床部24とが離間していることにより、液化アンモニアの漏洩時の安全性の向上に繋がる。
【0063】
このように、本開示に記載の用地面積が縮小された供給設備を、例えば、液化アンモニアの貯槽および供給に用いることによって、火力発電所や工業炉に近接した箇所に設置することができる。また、該供給設備の普及により、化石燃料に替わる炭酸ガスを発生しない代替エネルギーとしての液化アンモニアのニーズがより高まり、持続可能な開発目標(SDGs)の一部活動に貢献することができる。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 貯層、2 操作部、3 蒸発器、4 バッファタンク、5 液ポンプユニット、6 ローディングアーム、7 バルブユニット、8 ガスコンプレッサ、9 除害設備、9a 希釈槽、9b 排水槽、10 散水設備、10a 散水槽、10b 散水ポンプ、20A 第1階層、20B 第2階層、21 壁部、22 屋根部、23 開口部、24 床部、30 歩廊、31 階段、40 導出部、41 貯槽弁、42 緊急遮断弁、43 非常用配管、44 送出弁、50 供給設備、T 開口部の高さ、X 空隙。