(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136888
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ラッピング施工冶具
(51)【国際特許分類】
B29C 63/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B29C63/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048185
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】大坂 庸仁
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AC03
4F211AG01
4F211AH17
4F211AH46
4F211AH51
4F211AR01
4F211AR06
4F211AR07
4F211AR12
4F211SA07
4F211SC05
4F211SD01
4F211SH06
4F211SH16
4F211SJ21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ラッピングフィルムを被装着物に対して貼り付けるのにあたり、ラッピングフィルムをバランス良く伸張させることが可能なラッピング施工治具の提供を目的とした。
【解決手段】ラッピング施工治具10は、被装着物の表面に貼付されるラッピングフィルムFを伸張させて貼り付けるラッピング施工において用いられるものであって、ラッピングフィルムFの伸張方向一端側を保持する第一保持部40と、ラッピングフィルムFの伸張方向他端側を保持する第二保持部50と、第一保持部40及び第二保持部50のうち少なくとも一方を、伸張方向において相対的に離反する離反方向に移動するように案内するガイド部60と、を備えたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被装着物の表面に貼付されるラッピングフィルムを伸張させて貼り付けるラッピング施工において用いられるラッピング施工冶具であって、
前記ラッピングフィルムの伸張方向一端側を保持する第一保持部と、
前記ラッピングフィルムの伸張方向他端側を保持する第二保持部と、
前記第一保持部及び前記第二保持部のうち少なくとも一方を、前記伸張方向において相対的に離反する離反方向に移動するように案内するガイド部と、
を備えていること、を特徴とするラッピング施工治具。
【請求項2】
前記ラッピングフィルムの端部を把持する把持部材を有し、
前記第一保持部及び前記第二保持部の少なくとも一方が、前記把持部材を装着することにより、前記ラッピングフィルムを保持するものであること、
を特徴とする請求項1に記載のラッピング施工治具。
【請求項3】
前記ラッピングフィルムにおいて前記第一保持部及び前記第二保持部により保持される箇所の中間に存在する中間領域を加温する加温部を備えていること、を特徴とする請求項1又は2に記載のラッピング施工治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッピング施工冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているようなラッピングフィルムが、自動車をはじめ、建物や家具などの物品に貼り付けることにより、物品に対して装飾を施したり、表面を保護したりするために使用されている。ラッピングフィルムは、塗装等を行うよりも施工が容易であり、施工後も剥がしやすい等の特徴を有する。そのため、ラッピングフィルムを被装着物の表面に貼付して行うラッピング施工方法によれば、物品の装飾や表面保護等を行うために必要な費用や、手間、施工時間の抑制が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般的に、上述したようにラッピングフィルムを物品に対して貼り付けるラッピング施工を行う際には、ヒートガン等の加温装置によってラッピングフィルムを加熱しながら、ラッピングフィルムを引っ張って伸張させる前処理を行った後、車体等からなる物品に対して貼り付ける作業を行う必要がある。しかしながら、前述のような前処理を行う場合には、ラッピングフィルムの各部をバランス良く引っ張って伸張させないと、ラッピングフィルムの延びに偏りが生じてしまい、ラッピング施工の施工性の低下や、施工品質の低下を招いてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明は、ラッピングフィルムを被装着物に対して貼り付けるのにあたり、ラッピングフィルムをバランス良く伸張させることが可能なラッピング施工治具の提供を目的とした。
【0006】
(1)本発明のラッピング施工治具は、被装着物の表面に貼付されるラッピングフィルムを伸張させて貼り付けるラッピング施工において用いられるものであって、前記ラッピングフィルムの伸張方向一端側を保持する第一保持部と、前記ラッピングフィルムの伸張方向他端側を保持する第二保持部と、前記第一保持部及び前記第二保持部のうち少なくとも一方を、前記伸張方向において相対的に離反する離反方向に移動するように案内するガイド部と、を備えていること、を特徴とするものである。
【0007】
本発明のラッピング施工治具は、ラッピングフィルムの伸張方向一端側及び他端側を保第一保持部及び第二保持部によって保持しつつ、第一保持部及び第二保持部のうち少なくとも一方を、ガイド部によってガイドされた状態で離反方向に移動させることにより、ラッピングフィルムをバランス良く伸張させることができる。従って、本発明のラッピング施工治具によれば、ラッピングフィルムを被装着物に対して貼り付けるのにあたりラッピングフィルムを伸張させる作業の作業性の向上、ラッピング品質の向上を図ることができる。
【0008】
(2)本発明のラッピング施工治具は、前記ラッピングフィルムの端部を把持する把持部材を有し、前記第一保持部及び前記第二保持部の少なくとも一方が、前記把持部材を装着することにより、前記ラッピングフィルムを保持するものであること、を特徴とするものであると良い。
【0009】
本発明のラッピング施工治具は、上記(2)のようなものとすることにより、ラッピングフィルムを第一保持部や第二保持部に対して保持させる作業を行いやすくなる。従って、本発明のラッピング施工治具によれば、ラッピングフィルムを伸張させるための作業について、より一層作業性の向上を図ることができる。
【0010】
(3)本発明のラッピング施工治具は、前記ガイド部が、前記第一保持部及び前記第二保持部のうち、前記離反方向に移動可能とされたものを、前記離反方向に向けてスライド可能に支持するものであること、を特徴とするものであると良い。
【0011】
本発明のラッピング施工治具は、上記(3)のようなものとすることにより、第一保持部及び第二保持部のうち移動可能とされたものを、離反方向に向けてスムーズかつ安定的に移動させることができる。これにより、本発明のラッピング施工治具は、ラッピングフィルムを伸張させる作業の作業性をより一層できるとともに、ラッピングフィルムをムラなく伸張させることができる。
【0012】
(4)本発明のラッピング施工治具は、前記第一保持部及び前記第二保持部により、前記ラッピングフィルムの伸張方向一端側及び他端側の全域に亘って保持するものであると良い。
【0013】
本発明のラッピング施工治具は、上記(4)のようなものとすることにより、ラッピングフィルムの各部においてバランス良く引張力を作用させることができる。これにより、本発明のラッピング施工治具は、ラッピングフィルムの各部をバランス良く伸張させることができる。
【0014】
(5)本発明のラッピング施工治具は、前記ラッピングフィルムにおいて前記第一保持部及び前記第二保持部の中間に存在する中間領域を加温する加温部を備えているものであると良い。
【0015】
本発明のラッピング施工治具は、上記(5)のようなものとすることにより、ラッピングフィルムの中間領域を加熱する作業の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上述した本発明の課題を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るラッピング施工治具を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したラッピング施工治具の側方断面図である。
【
図3】(a),(b)はそれぞれ、
図2のA部及びB部の拡大図である。
【
図4】
図1に示したラッピング施工治具の正面図である。
【
図5】変形例に係るラッピング施工治具の側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るラッピング施工治具10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明においては、先ずラッピング施工治具10の構成について説明した後、ラッピング施工治具10を用いてラッピングフィルムFを伸張させる方法について説明する。なお、以下の説明において、上下左右等の位置関係を示す用語は、特に断りのない限り、ラッピング施工治具10の通常の使用状態を基準として説明する。
【0019】
≪ラッピング施工治具10の構成について≫
ラッピング施工治具10は、被装着物の表面に貼付されるラッピングフィルムFを伸張させて貼り付けるラッピング施工において用いられるものである。
図1~
図4に示すように、ラッピング施工治具10は、本体部20と、把持部材70とを備えている。ラッピング施工治具10は、把持部材70を介して本体部20に対してラッピングフィルムFを保持させることにより、ラッピングフィルムFを所定の伸張方向に向けて伸張させる作業を行うことができる。
【0020】
図1や
図4に示すように、本体部20は、矩形状の開口部分を有する枠状部30と、これを立設させるための脚部32とを有する。枠状部30は、第一保持部40、第二保持部50、ガイド部60,60によって構成されている。
【0021】
第一保持部40は、ラッピングフィルムFの伸張方向一端側を保持するものである。本実施形態のラッピング施工治具10は、本体部20が立設された状態において、上下方向にラッピングフィルムFを伸張するものとされている。そのため、第一保持部40は、ラッピングフィルムFをラッピング施工治具10に設置した状態において、上下方向の一方側(本実施形態では上方側)の端部を保持するものとされている。
【0022】
第一保持部40は、後述する把持部材70を係合させるための第一係合部42を有する。第一係合部42は、把持部材70を係合可能なものであればどのようなものでも良いが、本実施形態では、
図1~
図3に示すように、把持部材70を嵌め込み可能な凹状の形状とされている。第一保持部40は、ラッピングフィルムFの端部を把持した状態で把持部材70を係合させることにより、把持部材70に把持されたラッピングフィルムFを保持することができる。これにより、第一保持部40は、把持部材70を介して間接的にラッピングフィルムFを保持するものとされている。
【0023】
第一保持部40は、把持部材70を介して、ラッピングフィルムFの伸張方向一端側において、幅方向(伸張方向に対して交差する方向)の略全域に亘って保持することができる。第一保持部40は、本体部20(枠状部30)において伸張方向に移動不能に固定されている。
【0024】
第二保持部50は、ラッピングフィルムFを、第一保持部40により保持されるのとは反対側(伸張方向他端側)において保持するものである。本実施形態では、第二保持部50は、ラッピングフィルムFをラッピング施工治具10に設置した状態において、上下方向の他方側(本実施形態では下方側)の端部を保持するものとされている。
【0025】
第二保持部50は、上述した第一保持部40と同様に、後述する把持部材70を係合させるための第二係合部52を有する。第二係合部52は、第一係合部42と同様に、把持部材70を係合可能なものであればどのようなものでも良い。本実施形態では、
図1~
図3に示すように、第二係合部52は、第一係合部42と同様に把持部材70を嵌め込み可能な凹状の形状とされている。第二保持部50は、ラッピングフィルムFの端部を把持した状態で把持部材70を係合させることにより、把持部材70に把持されたラッピングフィルムFを保持することができる。これにより、第二保持部50は、把持部材70を介して間接的にラッピングフィルムFを保持するものとされている。
【0026】
第二保持部50は、把持部材70を介して、ラッピングフィルムFの伸張方向一端側において、幅方向(伸張方向に対して交差する方向)の略全域に亘って保持することができる。第二保持部50は、本体部20(枠状部30)において伸張方向に向けて、後に詳述するガイド部60,60によってガイドされつつ、自由に移動可能なように設けられている。具体的には、
図1に示すように、第二保持部50は、長手方向両端部(幅方向の両端部)に、後述するガイド部60,60に設けられたガイド溝62,62に嵌まり込むように凸状に形成されたガイド係合部54,54を有する。第二保持部50は、ガイド係合部54,54をガイド溝62,62に嵌め込むことにより、
図2において矢印で示すように、ガイド溝62,62に沿ってラッピングフィルムFの伸長方向(図示例では上下方向)に移動可能とされている。
【0027】
ガイド部60は、上述した第二保持部50を、伸張方向(図示例においては上下方向)に向けて、第一保持部40に対して相対的に離反する方向(離反方向)に向けて直線的に移動するように案内するものである。本実施形態では、一対のガイド部60,60が、第二保持部50の長手方向(本体部20の幅方向)の一端側、及び他端側に設けられている。ガイド部60は、ラッピングフィルムFの伸張方向(上下方向)に向けて延びるガイド溝62を有する。一対のガイド部60,60に設けられたガイド溝62,62に対して、第二保持部50の長手方向の一端側及び他端側の端部が差し込まれている。これにより、ガイド部60,60は、第二保持部50を伸張方向(上下方向)に向けてガイドしつつ、自由に移動可能なように支持することができるものとされている。
【0028】
把持部材70は、ラッピングフィルムFの端部を把持するための部材である。把持部材70は、長手方向の端部から側面視した状態において、C字状、U字状、コ字状、三角形状、矩形状、あるいはこれらのいずれかに類する形状であって、スリット状の開口部分72を有するレール状の部材である。
【0029】
把持部材70は、その長手方向一方側から他方側に向けてラッピングフィルムFを差し込む等して、開口部分72をなすスリットの間にFを挟み込むことにより、ラッピングフィルムFの端部を把持することができる。把持部材70は、ラッピングフィルムFの伸張方向の端部において、幅方向(伸張方向に対して交差する方向)の長さと同等あるいはそれ以上の長さを有するものとされている。そのため、把持部材70は、ラッピングフィルムFを幅方向の各部において同等の把持力で把持することができる。
【0030】
ここで、ラッピングフィルムFが、フィルムの裏面に接着剤や糊状物質等を塗布したものであって、接着剤等の上から貼り付けられている剥離紙を剥がして使用するタイプのものである場合には、把持部材70により把持される部分について剥離紙を残しつつ、伸張させる部分については剥離紙を剥がすようにすると良い。これにより、把持部材70に対するラッピングフィルムFの着脱を行いやすくなる。
【0031】
図1~
図4に示すように、本実施形態のラッピング施工治具10においては、ラッピングフィルムFの一端側に取り付けられる把持部材70(第一把持部材70a)、及び他端側の双方に取り付けられる把持部材70(第二把持部材70b)からなる二つの把持部材70が設けられている。第一把持部材70aは、
図1において矢印で示すように、上述した第一保持部40の第一係合部42に嵌め込むことにより、第一保持部40に対して取り付け可能とされている。同様に、
図1において矢印で示すように、第二把持部材70bは、上述した第二保持部50の第二係合部52に嵌め込むことにより、第二保持部50に対して取り付け可能とされている。本実施形態においては、第一係合部42及び第二係合部52をなす溝が、それぞれ上方及び下方に向けて解放されている。そのため、第一係合部42及び第二係合部52に対し、ラッピングフィルムFを把持した第一把持部材70a及び第二把持部材70bを嵌め込む際には、
図2や
図3に示すように、ラッピングフィルムFによって第一保持部40や第二保持部50の表面を巻き込むようにして取り付けられる。
【0032】
≪ラッピング施工治具10によるラッピングフィルムFの伸張方法について≫
以下、ラッピング施工治具10によるラッピングフィルムFの伸張方法について説明する。ラッピング施工治具10によりラッピングフィルムFを伸張させるときには、先ず、ラッピングフィルムFにおいて伸張させたい方向の一端側及び他端側のそれぞれに、把持部材70(第一把持部材70a、第二把持部材70b)を取り付ける。これにより、ラッピングフィルムFの一端側及び他端側において、幅方向(伸張方向に対して交差する方向)の各部が、第一把持部材70a及び第二把持部材70bにより同等の把持力で把持された状態になる。
【0033】
上述したようにしてラッピングフィルムFに対する第一把持部材70a及び第二把持部材70bの取り付けが完了すると、
図2や
図4等に示すように、第一把持部材70a及び第二把持部材70bを、それぞれ枠状部30の上端側に位置する第一保持部40の第一係合部42、及び下端側に位置する第二保持部50の第二係合部52に嵌め込む。これにより、第一把持部材70a及び第二把持部材70bを介して、第一保持部40及び第二保持部50においてラッピングフィルムFの一端部及び他端部が保持された状態とされる。
【0034】
上述したようにして第一保持部40及び第二保持部50においてラッピングフィルムFが保持された状態になると、
図4において矢印で示すように、第二保持部50をガイド部60,60のガイド溝62,62に沿って第一保持部40から離れる方向(本実施形態では下方)に向けて移動させる。この状態において、
図2において二点鎖線で示すように、第一保持部40及び第二保持部50の中間に位置するラッピングフィルムFの中間領域をヒートガンやヒータ等の加温装置によって加温しつつ、第二保持部50に対して下方に向けて移動するように外力を加える。これにより、ラッピングフィルムFの中間領域を、所定の伸張方向(本実施形態では上下方向)に向けて伸張させることができる。
【0035】
上述したようにしてラッピングフィルムFが十分に伸張した状態になると、第一保持部40及び第二保持部50から第一把持部材70a及び第二把持部材70bを取り外す。この状態において、第一把持部材70a及び第二把持部材70bを使用者が把持することにより、第一把持部材70a及び第二把持部材70bを持ち手として、伸張させたラッピングフィルムFを持つことができる。これにより、ラッピングフィルムFを伸張させてから被装着物の表面に貼り付けるまでの間に、ラッピングフィルムFを容易に持ち運ぶことができる。また、必要に応じて第一把持部材70a及び第二把持部材70bの開口部分72からラッピングフィルムFを抜き取ったり、第一把持部材70a及び第二把持部材70bに把持されている箇所を切断したりすることにより、ラッピングフィルムFを被装着物に対して貼り付ける際に第一把持部材70aや第二把持部材70bが邪魔になるのを抑制できる。このように。ラッピング施工治具10は、ラッピングフィルムFを用いたラッピング施工に際して、ラッピングフィルムFを伸張させる際に有効利用できる。
【0036】
≪作用効果≫
上述した本実施形態のラッピング施工治具10は、以下の(a)~(d)のような特徴的構成を備えている。これにより、ラッピング施工治具10は、以下に記載のような特有の効果を奏することができる。
【0037】
(a)本実施形態のラッピング施工治具10は、被装着物の表面に貼付されるラッピングフィルムFを伸張させて貼り付けるラッピング施工において用いられるものであって、ラッピングフィルムFの伸張方向一端側を保持する第一保持部40と、ラッピングフィルムFの伸張方向他端側を保持する第二保持部50と、第一保持部40及び第二保持部50のうち少なくとも一方を、伸張方向において相対的に離反する離反方向に移動するように案内するガイド部60と、を備えたものである。
【0038】
本実施形態のラッピング施工治具10は、ラッピングフィルムFの伸張方向一端側及び他端側を第一保持部40及び第二保持部50によって保持しつつ、第一保持部40及び第二保持部50のうち少なくとも一方を、ガイド部60によってガイドされた状態で離反方向に移動させることにより、ラッピングフィルムFをバランス良く伸張させることができる。従って、本実施形態のラッピング施工治具10によれば、ラッピングフィルムFを被装着物に対して貼り付けるのにあたりラッピングフィルムFを伸張させる作業の作業性の向上、ラッピング品質の向上を図ることができる。
【0039】
(b)本実施形態のラッピング施工治具10は、ラッピングフィルムFの端部を把持する把持部材70を有し、第一保持部40及び第二保持部50の少なくとも一方が、把持部材70を係合させることにより、ラッピングフィルムFを保持するものであること、を特徴とするものである。
【0040】
本実施形態のラッピング施工治具10は、上記(b)のようなものとすることにより、ラッピングフィルムFを第一保持部40や第二保持部50に対して保持させる作業を行いやすくなる。従って、本実施形態のラッピング施工治具10によれば、ラッピングフィルムFを伸張させるための作業について、より一層作業性の向上を図ることができる。
【0041】
(c)本実施形態のラッピング施工治具10は、ガイド部60が、第一保持部40及び第二保持部50のうち、離反方向に移動可能とされたものを、離反方向に向けてスライド可能に支持するものであること、を特徴とするものである。
【0042】
本実施形態のラッピング施工治具10は、上記(c)のようなものとすることにより、第一保持部40及び第二保持部50のうち移動可能とされたものを、離反方向に向けてスムーズかつ安定的に移動させることができる。これにより、本実施形態のラッピング施工治具10は、ラッピングフィルムFを伸張させる作業の作業性をより一層できるとともに、ラッピングフィルムFをムラなく伸張させることができる。
【0043】
(d)本実施形態のラッピング施工治具10は、第一保持部40及び第二保持部50により、ラッピングフィルムFの伸張方向一端側及び他端側の全域に亘って保持するものである。
【0044】
本実施形態のラッピング施工治具10は、上記(e)のようなものとすることにより、ラッピングフィルムFの各部においてバランス良く引張力を作用させることができる。これにより、本実施形態のラッピング施工治具10は、ラッピングフィルムFの各部をバランス良く伸張させることができる。
【0045】
≪変形例≫
上記実施形態において例示したラッピング施工治具10は本発明の一例を示したものに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、例えば上述した(a)~(d)に係る構成を上記実施形態において例示したものとは異なるものとすることが可能である。また、ラッピング施工治具10は、上述した(a)~(d)に含まれる構成に加えて、あるいは(a)~(d)に含まれる構成に代えて他の構成を備えたものとしたり、一部の構成を省略した構成としたりしても良い。具体的には、以下に説明するような変形例が考えられる。
【0046】
具体的には、上述したラッピング施工治具10は、ラッピングフィルムFの中間領域を、別途準備したヒートガンやヒータ等の加温装置を用いて加温するものとした例を示したが、本発明はこれに限定されない。ラッピング施工治具10は、例えば、
図5に示すように、枠状部30において、ラッピングフィルムFの中間領域と対向する位置に、ラッピングフィルムFの中間領域を面的に加熱可能な板状のヒータ等からなる加温部80を備えたものとすることができる。すなわち、ラッピング施工治具10は、以下の(e)のような構成を備えたものとすることができる。
【0047】
(e)本実施形態のラッピング施工治具10は、上述した構成に加えて、ラッピングフィルムFにおいて第一保持部40及び第二保持部50の中間に存在する中間領域を加温する加温部80を備えているものである。
【0048】
本実施形態のラッピング施工治具10は、上記(e)のようなものとすることにより、ラッピングフィルムFの中間領域を加熱する作業の作業性を向上させることができる。
【0049】
また、上述したラッピング施工治具10は、第一保持部40が固定され、第二保持部50が離反双方に自由に移動可能な構成とすることにより、第一保持部40と第二保持部50とをラッピングフィルムFの伸張方向において相対的に離反する離反方向に移動できるようにしたものであるが、本発明はこれに限定されない。具体的には、ラッピング施工治具10は、第一保持部40を離反方向に自由に移動可能としつつ、第二保持部50を離反双方に固定された構成としたり、第一保持部40及び第二保持部50の双方を離反方向に移動可能としたものとしたりすることができる。
【0050】
本実施形態のラッピング施工治具10は、ラッピングフィルムFを上下方向に伸張可能なものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態における枠状部30について、正面視した状態において90度回転させたような構成とすることにより、ラッピングフィルムFを左右方向に向けて伸張可能なものとすることも可能である。また、ラッピング施工治具10は、ラッピングフィルムFを上下方向のみ、あるいは左右方向のみに伸張可能なものとするのに代えて、上下方向及び左右方向の双方に向けて伸張可能なものとする等して、複数方向にラッピングフィルムFを伸張可能なものとすることも可能である。
【0051】
上述したラッピング施工治具10は、上記(b)のように、第一保持部40及び第二保持部50の双方において、把持部材70を介してラッピングフィルムFを保持するものであるが、本発明はこれに限定されない。具体的には、ラッピング施工治具10は、第一保持部40及び第二保持部50のいずれか一方又は双方において、把持部材70を介することなく、直接的にラッピングフィルムFを保持するものとすることが可能である。
【0052】
上述したラッピング施工治具10は、上記(c)のように、ガイド部60が、離反方向に移動可能とされた第二保持部50を、離反方向に向けてスライド可能に支持するものを例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ラッピング施工治具10は、上述のように第二保持部50を移動不能に固定されたものとしつつ、第一保持部40をラッピングフィルムFの伸張方向に移動可能なものとした場合には、ガイド部60は、第一保持部40の移動をガイドするものとすると良い。また、第一保持部40及び第二保持部50の双方を伸張方向に移動可能とする場合には、ガイド部60は、第一保持部40及び第二保持部50お双方の移動をガイドするものとすると良い。
【0053】
上述したラッピング施工治具10は、上記(d)のように、第一保持部40及び第二保持部50により、ラッピングフィルムFの伸張方向一端側及び他端側の全域に亘って保持するものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ラッピング施工治具10は、第一保持部40及び第二保持部50のいずれか一方又は双方について、ラッピングフィルムFの伸張方向一端側及び他端側において、幅方向(伸張方向に対して交差する方向)の一部のみを保持するものとしたり、幅方向に間隔を開けつつ複数箇所においてラッピングフィルムFを保持可能なものとしたりすることも可能である。
【0054】
ラッピング施工治具10は、上述した変形例の他にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な変形例に係る構成を備えたものとすることができる。例えば、ラッピング施工治具10は、ガイド部60が、第一保持部40や第二保持部50を滑らかに移動可能とするべく、ローラーや滑り軸受等を設けたものとすることが可能である。また、第一保持部40(第一把持部材70a)及び第二保持部50(第二把持部材70b)の少なくとも一方が、ラッピングフィルムFの把持強度を向上させるためのクランプや締め付け部材を備えたものとしても良い。
【0055】
また、上述したラッピング施工治具10は、手動により第一保持部40と第二保持部50との間隔を広げる動作を行えるものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ラッピング施工治具10は、別途設けた駆動源からの動力を受けて動作するモータやシリンダ装置等のアクチュエータを備え、これにより第一保持部40と第二保持部50との間隔を広げる動作を行えるようにすることも可能である。
【0056】
また、ラッピング施工治具10は、ラッピングフィルムFの伸張量を計測可能な計測装置を備えたものや、ラッピングフィルムFが必要以上に伸張するのを抑制するためのストッパや伸張抑制機構等を備えたものとすることも可能である。また、前述のように第一保持部40と第二保持部50との間隔を広げるためのアクチュエータを設ける場合には、ラッピングフィルムFの伸張量を計測可能な計測装置からの出力を受けて、ラッピングフィルムFの伸張量が所定値に達することを条件としてアクチュエータの動作を自動停止できるもの等としても良い。
【0057】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素又は課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正又は分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、被装着物の表面に貼付されるラッピングフィルムを伸張させて貼り付けるラッピング施工においてラッピングフィルムを伸張させる用途全般において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 :ラッピング施工治具
40 :第一保持部
50 :第二保持部
60 :ガイド部
70 :把持部材
F :ラッピングフィルム