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特開2024-136894干渉推定装置およびコンピュータに実行させるためのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136894
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】干渉推定装置およびコンピュータに実行させるためのプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20240927BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H04B7/08 422
G01S7/02 218
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048195
(22)【出願日】2023-03-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度 国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Intelligent Reflecting Surfaceによるプロアクティブな無線空間制御と耐干渉型空間多重伝送技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】侯 亜飛
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一人
(72)【発明者】
【氏名】菅 宜理
(72)【発明者】
【氏名】坂野 寿和
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC11
5J070AD05
5J070AD09
5J070AH04
5J070AH19
5J070AH31
5J070AH50
5J070AK35
(57)【要約】
【課題】望ましくない無線送信機からの干渉の有無を判定可能な干渉判定装置を提供する。
【解決手段】受信手段42は、干渉が無いとき又は有るときに、送信元からL個のアンテナで送信したL個の電波をK個のアンテナで受信することをN個の送信元について実行してN個の第1の受信信号を受信し、干渉の有無が不明であるときに送信元からのL個の電波をK個のアンテナで受信して第2の受信信号を受信する。演算手段43は、第1の受信信号に基づいて、各々が雑音部分空間におけるN個の第1のMUSICスペクトラムを算出し、第2の受信信号に基づいて、雑音部分空間における第2のMUSICスペクトラムを算出する。推定手段44は、N個の第1のMUSICスペクトラムと第2のMUSICスペクトラムとに基づいて干渉の有無を推定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信元から電波が直接送信先へ送信される第1の伝搬路と、前記送信元から入射した電波を反射する反射方向を制御可能な反射体を介して電波が前記送信元から前記送信先へ送信される第2の伝搬路とを少なくとも介して前記送信元から電波を受信する干渉推定装置であって、
干渉が無いときに、前記送信元からL(Lは、1以上の整数)個のアンテナを用いて送信したL個の電波を前記第1および第2の伝搬路を介してK(Kは、(L+1)以上の整数)個のアンテナを用いて受信することをN(Nは、3以上の整数)回実行してN個の第1の受信信号を受信するとともに、前記干渉の有無が不明であるときに前記送信元から前記L個の電波を前記第1および第2の伝搬路を介して前記K個のアンテナで受信したときの第2の受信信号を受信する受信手段と、
前記第1の受信信号に基づいて、雑音部分空間において仰角および方位角の関数として表わされるMUSICスペクトラムを算出することを前記N個の第1の受信信号に適用してN個の第1のMUSICスペクトラムを算出するとともに、前記第2の受信信号に基づいて、前記雑音部分空間において仰角および方位角の関数として表わされる第2のMUSICスペクトラムを算出する演算手段と、
前記演算手段によって算出された前記N個の第1のMUSICスペクトラムおよび前記第2のMUSICスペクトラムに基づいて干渉の有無を推定する干渉推定処理を実行する推定手段とを備える干渉推定装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記受信手段によって受信された受信信号の相関関数を演算し、その演算した相関関数を固有値分解してK個の固有値とK個の固有ベクトルとを求め、前記K個の固有ベクトルのうちの前記雑音部分空間を張る(K-L)個の固有ベクトルを用いて表わされる角度スペクトラムであって前記仰角および前記方位角の関数である角度スペクトラムを算出する算出処理を前記N個の第1の受信信号に適用して前記N個の第1のMUSICスペクトラムを算出し、前記算出処理を前記第2の受信信号に適用して前記第2のMUSICスペクトラムを算出し、
前記推定手段は、前記第2のMUSICスペクトラムと前記N個の第1のMUSICスペクトラムとの関連性の強さに応じて、干渉の有無を推定する、請求項1に記載の干渉推定装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記N個の第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ)~PNK(θ,φ)から相互に異なる第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ),P(θ,φ)(i≠j)の相関係数を算出することを{i,j}(i≠j)の全ての組合せについて実行してW(Wは、3以上の整数)個の相関係数を算出し、前記第2のMUSICスペクトラムPnew(θ,φ)と前記N個の第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ)~PNK(θ,φ)との間のN個の相関係数を算出し、
前記推定手段は、前記W個の相関係数と、前記N個の相関係数とに基づいて干渉の有無を推定する、請求項2に記載の干渉推定装置。
【請求項4】
前記推定手段は、前記N個の相関係数からN(Nは、2≦N≦Nを満たす整数)個の相関係数を選択し、前記W個の相関係数から最小の相関係数を検出し、N個の相関係数のうちの少なくとも1つが前記最小の相関係数以上であるとき、干渉が無いと推定し、N個の相関係数の全てが前記最小の相関係数以上でないとき、干渉が有ると推定する、請求項3に記載の干渉推定装置。
【請求項5】
前記推定手段は、前記N個の相関係数から前記N個の相関係数をランダムに選択する、請求項4に記載の干渉推定装置。
【請求項6】
前記推定手段は、前記干渉が有ると推定したとき、更に、干渉源の位置および干渉の到来方向を推定する、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の干渉推定装置。
【請求項7】
前記演算手段は、干渉源が電波を送信しているときの受信信号に基づいて第3のMUSICスペクトラムを算出することをN(Nは、2以上の整数)個の干渉源の全てについて実行してN個の第3のMUSICスペクトラムを算出し、前記干渉源が電波を送信しているか否かが不明であるときの受信信号に基づいて第4のMUSICスペクトラムを算出し、前記N個の第3のMUSICスペクトラムと前記第4のMUSICスペクトラムとのN個の相関係数を算出し、
前記推定手段は、前記N個の第3のMUSICスペクトラムと前記N個の干渉源のN個の位置との対応関係を示す対応表を参照して、前記N個の相関係数のうちの最大の相関係数が得られるときの前記第3のMUSICスペクトラムに対応付けられた干渉源の位置を前記第4のMUSICスペクトラムの算出の元になった電波を送信した送信元の位置とすることによって前記干渉源の位置を推定する、請求項6に記載の干渉推定装置。
【請求項8】
前記N個の第1のMUSICスペクトラムおよび前記第1のMUSICスペクトラムの各々は、前記雑音部分空間において仰角および方位角のうちのいずれか一方の関数として表わされる、請求項1に記載の干渉推定装置。
【請求項9】
前記干渉が有ると推定されたとき、所定の期間、キャリアセンスを実行し、キャリアセンスの時系列データである第1の時系列データを取得する第1の処理を実行するキャリアセンス手段と、
前記キャリアセンス手段によって取得された前記第1の時系列データに基づいて、前記干渉源が通信を行っている期間であるビジー期間と前記干渉源が通信を行っていない期間であるアイドル期間との時系列データである第2の時系列データを生成する第2の処理を実行する処理手段と、
前記処理手段によって生成された前記第2の時系列データに基づいて将来の前記ビジー期間と前記アイドル期間との時系列データである第3の時系列データを予測する第3の処理を実行する予測手段とを更に備える、請求項1に記載の干渉推定装置。
【請求項10】
複数の干渉源の複数の位置が特定されたとき、
前記キャリアセンス手段は、前記複数の干渉源の各々について前記第1の処理を実行して複数の前記第1の時系列データを取得し、
前記処理手段は、前記複数の第1の時系列データの各々について前記第2の処理を実行して複数の前記第2の時系列データを生成し、
前記予測手段は、前記複数の第2の時系列データの各々について前記第3の処理を実行して複数の前記第3の時系列データを予測する、請求項9に記載の干渉推定装置。
【請求項11】
前記複数の第3の時系列データに基づいて、前記複数の干渉源が通信を行っていない期間を検出する検出手段を更に備える、請求項10に記載の干渉推定装置。
【請求項12】
送信元から電波が直接送信先へ送信される第1の伝搬路と、前記送信元から入射した電波を反射する反射方向を制御可能な反射体を介して電波が前記送信元から前記送信先へ送信される第2の伝搬路とを少なくとも介して前記送信元から電波を受信する干渉推定装置においてコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
受信手段が、干渉が無いときに、前記送信元からL(Lは、1以上の整数)個のアンテナを用いて送信したL個の電波を前記第1および第2の伝搬路を介してK(Kは、(L+1)以上の整数)個のアンテナを用いて受信することをN(Nは、3以上の整数)回実行してN個の第1の受信信号を受信するとともに、前記干渉の有無が不明であるときに前記送信元から前記L個の電波を前記第1および第2の伝搬路を介して前記K個のアンテナで受信したときの第2の受信信号を受信する第1のステップと、
演算手段が、前記第1の受信信号に基づいて、雑音部分空間において仰角および方位角の関数として表わされるMUSICスペクトラムを算出することを前記N個の第1の受信信号に適してN個の第1のMUSICスペクトラムを算出するとともに、前記第2の受信信号に基づいて、前記雑音部分空間において仰角および方位角の関数として表わされる第2のMUSICスペクトラムを算出する第2のステップと、
推定手段が、前記第2のステップにおいて算出された前記N個の第1のMUSICスペクトラムおよび前記第2のMUSICスペクトラムに基づいて干渉の有無を推定する干渉推定処理を実行する第3のステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項13】
前記演算手段は、前記第2のステップにおいて、前記受信手段によって受信された受信信号の相関関数を演算し、その演算した相関関数を固有値分解してK個の固有値とK個の固有ベクトルとを求め、前記K個の固有ベクトルのうちの前記雑音部分空間を張る(K-L)個の固有ベクトルを用いて表わされる角度スペクトラムであって前記仰角および前記方位角の関数である角度スペクトラムを算出する算出処理を前記N個の第1の受信信号に適用して前記N個の第1のMUSICスペクトラムを算出し、前記算出処理を前記第2の受信信号に適用して前記第2のMUSICスペクトラムを算出し、
前記推定手段は、前記第3のステップにおいて、前記第2のMUSICスペクトラムと前記N個の第1のMUSICスペクトラムとの関連性の強さに応じて、干渉の有無を推定する、請求項12に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
前記演算手段は、前記第2のステップにおいて、前記N個の第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ)~PNK(θ,φ)から相互に異なる第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ),P(θ,φ)(i≠j)の相関係数を算出することを{i,j}(i≠j)の全ての組合せについて実行してW(Wは、3以上の整数)個の相関係数を算出し、前記第2のMUSICスペクトラムPnew(θ,φ)と前記N個の第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ)~PNK(θ,φ)との間のN個の相関係数を算出し、
前記推定手段は、前記第3のステップにおいて、前記W個の相関係数と、前記N個の相関係数とに基づいて干渉の有無を推定する、請求項13に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項15】
前記推定手段は、前記第3のステップにおいて、前記N個の相関係数からN(Nは、2≦N≦Nを満たす整数)個の相関係数を選択し、前記W個の相関係数から最小の相関係数を検出し、前記N個の相関係数のうちの少なくとも1つが前記最小の相関係数以上であるとき、干渉が無いと推定し、前記N個の相関係数の全てが前記最小の相関係数以上でないとき、干渉が有ると推定する、請求項14に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
前記推定手段は、前記第3のステップにおいて、前記N個の相関係数から前記N個の相関係数をランダムに選択する、請求項15に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項17】
前記推定手段は、前記第3のステップにおいて、前記干渉が有ると推定したとき、更に、干渉源の位置および干渉の到来方向を推定する、請求項14から請求項16のいずれか1項に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項18】
前記演算手段は、前記第2のステップにおいて、干渉源が電波を送信しているときの受信信号に基づいて第3のMUSICスペクトラムを算出することをN(Nは、1以上の整数)個の干渉源の全てについて実行してN個の第3のMUSICスペクトラムを算出し、前記干渉源が電波を送信しているか否かが不明であるときの受信信号に基づいて第4のMUSICスペクトラムを算出し、前記N個の第3のMUSICスペクトラムと前記第4のMUSICスペクトラムとのN個の相関係数を算出し、
前記推定手段は、前記第3のステップにおいて、前記N個の第3のMUSICスペクトラムと前記N個の干渉源のN個の位置との対応関係を示す対応表を参照して、前記N個の相関係数のうちの最大の相関係数が得られるときの前記第3のMUSICスペクトラムに対応付けられた干渉源の位置を第4のMUSICスペクトラムの算出の元になった電波を送信した送信元の位置とすることによって前記干渉源の位置を推定する、請求項17に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項19】
前記N個の第1のMUSICスペクトラムおよび前記第1のMUSICスペクトラムの各々は、前記雑音部分空間において仰角および方位角のうちのいずれか一方の関数として表わされる、請求項12に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項20】
キャリアセンス手段が、前記干渉が有ると推定されたとき、所定の期間、キャリアセンスを実行し、キャリアセンスの時系列データである第1の時系列データを取得する第1の処理を実行する第4のステップと、
処理手段が、前記キャリアセンス手段によって取得された前記第1の時系列データに基づいて、前記干渉源が通信を行っている期間であるビジー期間と前記干渉源が通信を行っていない期間であるアイドル期間との時系列データである第2の時系列データを生成する第2の処理を実行する第5のステップと、
予測手段が、前記処理手段によって生成された前記第2の時系列データに基づいて将来の前記ビジー期間と前記アイドル期間との時系列データである第3の時系列データを予測する第3の処理を実行する第6のステップとを更にコンピュータに実行させる、請求項12に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項21】
複数の干渉源の複数の位置が特定されたとき、
前記キャリアセンス手段は、前記第4のステップにおいて、前記複数の干渉源の各々について前記第1の処理を実行して複数の前記第1の時系列データを取得し、
前記処理手段は、前記第5のステップにおいて、前記複数の第1の時系列データの各々について前記第2の処理を実行して複数の前記第2の時系列データを生成し、
前記予測手段は、前記第6のステップにおいて、前記複数の第2の時系列データの各々について前記第3の処理を実行して複数の前記第3の時系列データを予測する、請求項20に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項22】
検出手段が、前記複数の第3の時系列データに基づいて、前記複数の干渉源が通信を行っていない期間を検出する第7のステップを更にコンピュータに実行させる、請求項21に記載のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、干渉推定装置およびコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
次の10年間は、Beyond5G/6Gの時代が到来し、より高いデータレート、より低い電力消費、より広いワイヤレスカバレッジ、よりスマートな通信環境が必要になる。
【0003】
ミリ波(mm波)MIMO(Multi Input Multi Output)システムは、5Gワイヤレスネットワークの最も主要なテクノロジの1つと見なされている。多数のアンテナを備えたアンテナアレイは、ワイヤレスシステムの容量を強化する。また、30~300GHzのミリ波帯において広いスペクトラムを使用することができ、送信レートを100倍に増加できる。
【0004】
ミリ波MIMOシステムは、ワイヤレスHD、V2V/V21通信、メディケアのような5G/6G時代の新しいアプリケーションの実現を容易にする(非特許文献1)。
【0005】
MIMOビームフォーミング、受信電力向上およびローカリゼーション等のテクノロジの強化のために、スマート無線環境(SRE:low power Small optical remote Radio Equipment)を構成できる再構成可能インテリジェントサーフェス(RIS:Reconfigurable Intelligent Surface)の技術が登場している。
【0006】
また、シールドルームで得られた実験的なインバータ電子レンジ(MWO)信号データを使用して、信頼性の高い無線通信のための時間および周波数ドメインでの信号検出方法が提案されている(非特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M.M. Azari et.al., “Evolution of non-terrestrial networks from 5G to6G: a survey,” IEEE Communications Surveys & Tutorials, vol. 24, no. 4, pp. 2633-2672, Fourthquarter 2022.
【非特許文献2】K. Nakanishi, H. Mori, etc., “A novel signal detection method for interference from inverter microwave ovens in WLAN systems,” in Proc. 2017 IEEE Global Communications Conference (GLOBECOM 2017), pp. 1-6, 2017.
【非特許文献3】K. Nakanishi, H. Mori, etc., “Signal detection method for interference from inverter microwave ovens in WLAN systems,” IEEE Transactions on Cognitive Communications and Networking, vol. 4, no. 2, pp. 368-378, June 2018.
【非特許文献4】菊間信良:アダプティブアンテナ技術, オーム社(2003).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献2,3においては、望ましくない無線送信機からの干渉が考慮されていないため、望ましくない無線送信機による干渉の発生を検出することが困難である。
【0009】
そこで、この発明の実施の形態によれば、望ましくない無線送信機からの干渉の有無を推定可能な干渉推定装置を提供する。
【0010】
また、この発明の実施の形態によれば、望ましくない無線送信機からの干渉の有無の推定をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(構成1)
この発明の実施の形態によれば、干渉推定装置は、送信元から電波が直接送信先へ送信される第1の伝搬路と、送信元から入射した電波を反射する反射方向を制御可能な反射体を介して電波が送信元から送信先へ送信される第2の伝搬路とを少なくとも介して送信元から電波を受信する干渉推定装置であって、受信手段と、演算手段と、推定手段とを備える。受信手段は、干渉が無いときに、送信元からL(Lは、1以上の整数)個のアンテナを用いて送信したL個の電波を第1および第2の伝搬路を介してK(Kは、(L+1)以上の整数)個のアンテナを用いて受信することをN(Nは、3以上の整数)回実行してN個の第1の受信信号を受信するとともに、干渉の有無が不明であるときに送信元からL個の電波を第1および第2の伝搬路を介してK個のアンテナで受信したときの第2の受信信号を受信する。演算手段は、第1の受信信号に基づいて、雑音部分空間において仰角および方位角の関数として表わされるMUSICスペクトラムを算出することをN個の第1の受信信号に適用してN個の第1のMUSICスペクトラムを算出するとともに、第2の受信信号に基づいて、雑音部分空間において仰角および方位角の関数として表わされる第2のMUSICスペクトラムを算出する。推定手段は、演算手段によって算出されたN個の第1のMUSICスペクトラムおよび第2のMUSICスペクトラムに基づいて干渉の有無を推定する干渉推定処理を実行する。
【0012】
(構成2)
構成1において、演算手段は、受信手段によって受信された受信信号の相関関数を演算し、その演算した相関関数を固有値分解してK個の固有値とK個の固有ベクトルとを求め、K個の固有ベクトルのうちの雑音部分空間を張る(K-L)個の固有ベクトルを用いて表わされる角度スペクトラムであって仰角および方位角の関数である角度スペクトラムを算出する算出処理をN個の第1の受信信号に適用してN個の第1のMUSICスペクトラムを算出し、算出処理を第2の受信信号に適用して第2のMUSICスペクトラムを算出する。推定手段は、第2のMUSICスペクトラムとN個の第1のMUSICスペクトラムとの関連性の強さに応じて、干渉の有無を推定する。
【0013】
(構成3)
構成2において、演算手段は、N個の第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ)~PNK(θ,φ)から相互に異なる第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ),P(θ,φ)(i≠j)の相関係数を算出することを{i,j}(i≠j)の全ての組合せについて実行してW(Wは、3以上の整数)個の相関係数を算出し、第2のMUSICスペクトラムPnew(θ,φ)とN個の第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ)~PNK(θ,φ)との間のN個の相関係数を算出する。推定手段は、W個の相関係数と、N個の相関係数とに基づいて干渉の有無を推定する。
【0014】
(構成4)
構成3において、推定手段は、N個の相関係数からN(Nは、2≦N≦Nを満たす整数)個の相関係数を選択し、W個の相関係数から最小の相関係数を検出し、N個の相関係数のうちの少なくとも1つが最小の相関係数以上であるとき、干渉が無いと推定し、N個の相関係数の全てが最小の相関係数以上でないとき、干渉が有ると推定する。
【0015】
(構成5)
構成4において、推定手段は、N個の相関係数からN個の相関係数をランダムに選択する。
【0016】
(構成6)
構成3から構成5のいずれかにおいて、推定手段は、干渉が有ると推定したとき、更に、干渉源の位置および干渉の到来方向を推定する。
【0017】
(構成7)
構成6において、演算手段は、干渉源が電波を送信しているときの受信信号に基づいて第3のMUSICスペクトラムを算出することをN(Nは、2以上の整数)個の干渉源の全てについて実行してN個の第3のMUSICスペクトラムを算出し、干渉源が電波を送信しているか否かが不明であるときの受信信号に基づいて第4のMUSICスペクトラムを算出し、N個の第3のMUSICスペクトラムと第4のMUSICスペクトラムとのN個の相関係数を算出する。推定手段は、N個の第3のMUSICスペクトラムとN個の干渉源のN個の位置との対応関係を示す対応表を参照して、N個の相関係数のうちの最大の相関係数が得られるときの第3のMUSICスペクトラムに対応付けられた干渉源の位置を第4のMUSICスペクトラムの算出の元になった電波を送信した送信元の位置とすることによって干渉源の位置を推定する。
【0018】
(構成8)
構成1において、N個の第1のMUSICスペクトラムおよび第1のMUSICスペクトラムの各々は、雑音部分空間において仰角および方位角のうちのいずれか一方の関数として表わされる。
【0019】
(構成9)
構成1において、干渉推定装置は、キャリアセンス手段と、処理手段と、予測手段とを更に備える。キャリアセンス手段は、干渉が有ると推定されたとき、所定の期間、キャリアセンスを実行し、キャリアセンスの時系列データである第1の時系列データを取得する第1の処理を実行する。処理手段は、キャリアセンス手段によって取得された第1の時系列データに基づいて、干渉源が通信を行っている期間であるビジー期間と干渉源が通信を行っていない期間であるアイドル期間との時系列データである第2の時系列データを生成する第2の処理を実行する。予測手段は、処理手段によって生成された第2の時系列データに基づいて将来のビジー期間とアイドル期間との時系列データである第3の時系列データを予測する第3の処理を実行する。
【0020】
(構成10)
構成9において、複数の干渉源の複数の位置が特定されたとき、キャリアセンス手段は、複数の干渉源の各々について第1の処理を実行して複数の第1の時系列データを取得し、処理手段は、複数の第1の時系列データの各々について第2の処理を実行して複数の第2の時系列データを生成し、予測手段は、複数の第2の時系列データの各々について第3の処理を実行して複数の第3の時系列データを予測する。
【0021】
(構成11)
構成10において、干渉推定装置は、検出手段を更に備える。検出手段は、複数の第3の時系列データに基づいて、複数の干渉源が通信を行っていない期間を検出する。
【0022】
(構成12)
また、この発明の実施の形態によれば、プログラムは、送信元から電波が直接送信先へ送信される第1の伝搬路と、送信元から入射した電波を反射する反射方向を制御可能な反射体を介して電波が送信元から送信先へ送信される第2の伝搬路とを少なくとも介して送信元から電波を受信する干渉推定装置においてコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
受信手段が、干渉が無いときに、送信元からL(Lは、1以上の整数)個のアンテナを用いて送信したL個の電波を第1および第2の伝搬路を介してK(Kは、(L+1)以上の整数)個のアンテナを用いて受信することをN(Nは、3以上の整数)回実行してN個の第1の受信信号を受信するとともに、干渉の有無が不明であるときに送信元からL個の電波を第1および第2の伝搬路を介してK個のアンテナで受信したときの第2の受信信号を受信する第1のステップと、
演算手段が、第1の受信信号に基づいて、雑音部分空間において仰角および方位角の関数として表わされるMUSICスペクトラムを算出することをN個の第1の受信信号に適してN個の第1のMUSICスペクトラムを算出するとともに、第2の受信信号に基づいて、雑音部分空間において仰角および方位角の関数として表わされる第2のMUSICスペクトラムを算出する第2のステップと、
推定手段が、第2のステップにおいて算出されたN個の第1のMUSICスペクトラムおよび第2のMUSICスペクトラムに基づいて干渉の有無を推定する干渉推定処理を実行する第3のステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0023】
(構成13)
構成12において、演算手段は、第2のステップにおいて、受信手段によって受信された受信信号の相関関数を演算し、その演算した相関関数を固有値分解してK個の固有値とK個の固有ベクトルとを求め、K個の固有ベクトルのうちの雑音部分空間を張る(K-L)個の固有ベクトルを用いて表わされる角度スペクトラムであって仰角および方位角の関数である角度スペクトラムを算出する算出処理をN個の第1の受信信号に適用してN個の第1のMUSICスペクトラムを算出し、算出処理を第2の受信信号に適用して第2のMUSICスペクトラムを算出し、
推定手段は、第3のステップにおいて、第2のMUSICスペクトラムとN個の第1のMUSICスペクトラムとの関連性の強さに応じて、干渉の有無を推定する。
【0024】
(構成14)
構成13において、演算手段は、第2のステップにおいて、N個の第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ)~PNK(θ,φ)から相互に異なる第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ),P(θ,φ)(i≠j)の相関係数を算出することを{i,j}(i≠j)の全ての組合せについて実行し、W(Wは、3以上の整数)個の相関係数を算出し、第2のMUSICスペクトラムPnew(θ,φ)とN個の第1のMUSICスペクトラムP(θ,φ)~PNK(θ,φ)との間のN個の相関係数を算出し、
推定手段は、第3のステップにおいて、W個の相関係数と、N個の相関係数とに基づいて干渉の有無を推定する。
【0025】
(構成15)
構成14において、推定手段は、第3のステップにおいて、N個の相関係数からN(Nは、2≦N≦Nを満たす整数)個の相関係数を選択し、W個の相関係数から最小の相関係数を検出し、N個の相関係数のうちの少なくとも1つが最小の相関係数以上であるとき、干渉が無いと推定し、N個の相関係数の全てが最小の相関係数以上でないとき、干渉が有ると推定する。
【0026】
(構成16)
構成14において、推定手段は、第3のステップにおいて、N個の相関係数からN個の相関係数をランダムに選択する。
【0027】
(構成17)
構成14から構成16のいずれかにおいて、推定手段は、第3のステップにおいて、干渉が有ると推定したとき、更に、干渉源の位置および干渉の到来方向を推定する。
【0028】
(構成18)
構成17において、演算手段は、第2のステップにおいて、干渉源が電波を送信しているときの受信信号に基づいて第3のMUSICスペクトラムを算出することをN(Nは、2以上の整数)個の干渉源の全てについて実行してN個の第3のMUSICスペクトラムを算出し、干渉源が電波を送信しているか否かが不明であるときの受信信号に基づいて第4のMUSICスペクトラムを算出し、N個の第3のMUSICスペクトラムと前記第4のMUSICスペクトラムとのN個の相関係数を算出し、
推定手段は、第3のステップにおいて、N個の第3のMUSICスペクトラムとN個の干渉源のN個の位置との対応関係を示す対応表を参照して、N個の相関係数のうちの最大の相関係数が得られるときの前記第3のMUSICスペクトラムに対応付けられた干渉源の位置を第4のMUSICスペクトラムの算出の元になった電波を送信した送信元の位置とすることによって前記干渉源の位置を推定する。
【0029】
(構成19)
構成12において、N個の第1のMUSICスペクトラムおよび前記第1のMUSICスペクトラムの各々は、雑音部分空間において仰角および方位角のうちのいずれか一方の関数として表わされる。
【0030】
(構成20)
構成12において、プログラムは、キャリアセンス手段が、干渉が有ると推定されたとき、所定の期間、キャリアセンスを実行し、キャリアセンスの時系列データである第1の時系列データを取得する第1の処理を実行する第4のステップと、
処理手段が、キャリアセンス手段によって取得された第1の時系列データに基づいて、干渉源が通信を行っている期間であるビジー期間と干渉源が通信を行っていない期間であるアイドル期間との時系列データである第2の時系列データを生成する第2の処理を実行する第5のステップと、
予測手段が、処理手段によって生成された第2の時系列データに基づいて将来のビジー期間とアイドル期間との時系列データである第3の時系列データを予測する第3の処理を実行する第6のステップとを更にコンピュータに実行させる。
【0031】
(構成21)
構成20において、複数の干渉源の複数の位置が特定されたとき、
キャリアセンス手段は、第4のステップにおいて、複数の干渉源の各々について第1の処理を実行して複数の第1の時系列データを取得し、
処理手段は、第5のステップにおいて、複数の第1の時系列データの各々について第2の処理を実行して複数の第2の時系列データを生成し、
予測手段は、第6のステップにおいて、複数の第2の時系列データの各々について第3の処理を実行して複数の第3の時系列データを予測する。
【0032】
(構成22)
構成21において、検出手段が、複数の第3の時系列データに基づいて、複数の干渉源が通信を行っていない期間を検出する第7のステップを更にコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0033】
望ましくない無線送信機からの干渉の有無を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】この発明の実施の形態による通信システムの概略図である。
図2図1に示す基地局4の概略図である。
図3】RIS3のチャネルモデルを説明するための図である。
図4】干渉源の位置を検出する方法を説明するための図である。
図5】対応表TBL1の概略図である。
図6】対応表TBL2の概略図である。
図7】時系列データRSSI(t)の概念図である。
図8】B/I時系列データB/I(t)の概念図である。
図9】予測手段46の概略図である。
図10図9に示す予測手段46の動作を説明するための図である。
図11】確率的ニューラルネットワーク462の概略図である。
図12】時系列データB/I(t)、予測処理用データおよび目標データの概念図である。
図13図2に示す基地局4の動作を説明するためのフローチャートである。
図14図13に示すステップS3の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
図15図13に示すステップS11の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
図16図13に示すステップS13の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
図17図13に示すステップS14の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0036】
図1は、この発明の実施の形態による通信システムの概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による通信システム10は、端末装置1,2と、再構成可能インテリジェントサーフェス3と、基地局4とを備える。そして、通信システム10は、室内に配置され、ミリ波帯で無線通信を行う。なお、以下においては、再構成可能インテリジェントサーフェス3を「RIS3」と表記する。
【0037】
端末装置1,2の各々は、L(Lは、1以上の整数)個のアンテナを備える。そして、端末装置1,2の各々は、L個のアンテナからL個の電波を放射して信号を送信する。
【0038】
RIS3は、M(Mは、2以上の整数)個の素子を碁盤目状に配列した構成を有する。そして、RIS3は、入射した電波を反射するときの反射方向を制御する機能を有する。
【0039】
RIS3は、端末装置1,2から出射された電波を入射し、その入射した電波を基地局4の方向へ反射する。
【0040】
基地局4は、K(Kは、(L+1)以上の整数)個のアンテナを有する。そして、基地局4は、デジタルビームフォーミングまたはアナログビームフォーミングによってK個のアンテナの指向性をk(kは、1~K)個の指向性に制御して端末装置1,2から放射された電波をK個のアンテナを用いて受信する。
【0041】
この場合、基地局4は、端末装置1(または端末装置2)からの電波が基地局4へ直接伝搬する第1の伝搬路と、端末装置1(または端末装置2)から入射した電波を反射する反射方向を制御可能なRIS3(反射体)を介して電波が端末装置1(または端末装置2)から基地局4へ送信される第2の伝搬路と、端末装置1,2と基地局4との間に存在する反射体5によって端末装置1(または端末装置2)からの電波が反射されて基地局4へ送信される第3の伝搬路とを介して端末装置1(または端末装置2)からの電波をK個のアンテナによって受信する。
【0042】
また、基地局4は、デジタルビームフォーミングまたはアナログビームフォーミングによって形成したk個の指向性ビームをK個のアンテナから放射することによってk個の指向性を有するk個の電波を放射して信号を送信する。
【0043】
図2は、図1に示す基地局4の概略図である。図2を参照して、基地局4は、アンテナ41と、受信手段42と、演算手段43と、推定手段44と、処理手段45と、予測手段46と、制御手段47と、送信手段48とを備える。
【0044】
アンテナ41は、K個のアンテナ41-1~41-Kからなる。K個のアンテナ41-1~41-Kは、電波の波長をλとすると、λ/2の間隔で一列(線形)に配列される。
【0045】
受信手段42は、デジタルビームフォーミングまたはアナログビームフォーミングによって指向性の電波をK個のアンテナ41-1~41-Kから放射し、K個のアンテナ41-1~41-Kを介して受信信号を受信する。また、受信手段42は、受信信号を演算手段43へ出力するための制御信号CTL1と、受信信号を処理手段45へ出力するための制御信号CTL2とを制御手段47から受ける。そして、受信手段42は、制御信号CTL1を制御手段47から受けると、受信信号を演算手段43へ出力し、制御信号CTL2を制御手段47から受けると、受信信号を処理手段45へ出力する。
【0046】
演算手段43は、受信手段42から受信信号を受けると、その受けた受信信号に基づいて、後述する方法によって、MUSICスペクトラムを演算し、その演算したMUSICスペクトラムを推定手段44へ出力する。
【0047】
推定手段44は、MUSICスペクトラムを演算手段43から受け、その受けたMUSICスペクトラムに基づいて、後述する方法によって、干渉の有無を判定する。そして、推定手段44は、干渉の有無の判定結果を制御手段47へ出力する。
【0048】
処理手段45は、一定期間におけるキャリアセンスの結果であるキャリアセンスの時系列データCAR(t)を受信手段42から受ける。そして、処理手段45は、時系列データCAR(t)に基づいて、後述する方法によって、干渉源が通信を行っている期間を示すビジー期間B_periodと干渉源が通信を行っていない期間を示すアイドル期間I_periodとの時系列データである時系列データB/I(t)を生成し、その生成した時系列データB/I(t)を予測手段46へ出力する。
【0049】
予測手段46は、時系列データB/I(t)を処理手段45から受け、その受けた時系列データB/I(t)に基づいて、後述する方法によって、将来のビジー期間とアイドル期間との時系列データである時系列データB/I(t)_Fを予測する。そして、予測手段46は、時系列データB/I(t)_Fを制御手段47へ出力する。
【0050】
制御手段47は、基地局4の動作モードとして、干渉源からの干渉の有無を推定する干渉推定モードMode_ESTと、将来のアイドル期間I_periodとビジー期間B_periodを予測する予測モードMode_PDICTとを有する。
【0051】
そして、制御手段47は、基地局4が端末装置1,2との間で無線通信を開始するとき、制御信号CTL1を生成して受信手段42へ出力する。
【0052】
一方、制御手段47は、推定手段44から干渉の有無の判定結果を受け、その受けた判定結果が“干渉が有る”であるとき、制御信号CTL2を生成して受信手段42へ出力する。また、制御手段47は、キャリアセンスの開始を指示する指示信号S_INSTを生成して送信手段48へ出力する。
【0053】
送信手段48は、指示信号S_INSTを制御手段47から受けると、デジタルビームフォーミングまたはアナログビームフォーミングによって指向性の電波をK個のアンテナ41-1~41-Kから放射する。
【0054】
端末装置1が送信したL個の電波を基地局4で受信するときの基地局4のi番目のアンテナ41-iで受信する受信信号y(t)は、次式によって表わされる。
【0055】
【数1】
【0056】
式(1)において、h RISBSは、i番目の受信アンテナ(アンテナ41-i)とRIS3との間のチャネルであり、θは、送信機(端末装置1または端末装置2)とRIS3との間の位相を2π(d/λ)で表したものであり、ρ(P)α(P)は、RIS3の場所に関連する複素振幅値のベクトルであり、ρ(P)は、RIS3の素子と送信機(端末装置1または端末装置2)との間で無線チャネルの振幅を含むベクトルであり、α(P)は、チャネル位相のベクトルであり、him UEBSLOS(t)は、m番目の送信アンテナとi番目の受信アンテナ(アンテナ41-i)との間の直接波であり、hima UEBSNLOS(t)は、m番目の送信アンテナとi番目の受信アンテナ(アンテナ41-i)との間で発生するN個の反射波のうちのa番目の反射波であり、s は、m番目の送信アンテナから送信されたシンボルであり、n(t)は、i番目の受信アンテナ(アンテナ41-i)の内部雑音ベクトルである。
【0057】
また、ρ(P)〇α(P)における“〇”は、ρ(P)の要素と、α(P)の要素との積を演算することを表わす。例えば、ρ(P)={ρ,ρ,・・・,ρ}であり、α(P)={α,α,・・・,α}であるとき、ρ(P)〇α(P)は、{ρ・α,ρ・α,・・・,ρ・α}を演算することを表わす。
【0058】
[RIS3のチャネルモデル]
図3は、RIS3のチャネルモデルを説明するための図である。図3を参照して、RIS3は、xyz座標の原点に配置される。送信機(端末装置1または端末装置2)の位置は、P(x,y,z)によって表わされる。
【0059】
そして、RIS3と送信機(端末装置1または端末装置2)との距離は、dである。送信機(端末装置1または端末装置2)からRIS3への方向がz軸と成す角は、θである。また、送信機(端末装置1または端末装置2)の位置P(x,y,z)の座標(x,y)と原点との線分がy軸と成す角は、φである。
【0060】
その結果、P(x,y,z)は、次式によって表わされる。
【0061】
【数2】
【0062】
RIS3のFar field modelは、送信機(端末装置1または端末装置2)とRIS3または受信機(基地局4)との距離が2D/λによって表わされるレイリー距離よりも大きいフィールドにおけるモデルであり、次式によって表わされる。
【0063】
【数3】
【0064】
式(3)において、kは、RIS3の各素子を表す引数であり、Rは、RIS3のk番目の素子の中心位置である。
【0065】
式(3)におけるベクトル1は、次式によって表わされる。
【0066】
【数4】
【0067】
式(4)において、“1”の個数は、RIS3の素子の総数M(Mは、2以上の整数)に等しい。
【0068】
また、式(3)において、κ(θ,φ)は、次式によって表わされる。
【0069】
【数5】
【0070】
式(5)において、λは、通信システム10における無線通信に用いられる電波の波長である。
【0071】
距離dがレイリー距離(=2D/λ)よりも小さいとき、RIS3のチャネルモデルは、球面波モデルでNear field modelとして扱われるべきである。そして、ミリ波システムに対しては、短波長であるため、インドアケースのチャネルモデルは、通常、Near field modelが選択される。
【0072】
Near field modelは、次式によって表わされる。
【0073】
【数6】
【0074】
式(6)において、ベクトル1は、式(4)によって表わされる。
【0075】
[MUSICスペクトラムの導出]
MUSICスペクトラムを導出する方法について説明する。K素子アレーに到来波がL波入射するとする。各到来波の信号波形をs(t)で表し、到来角をθl(l=1, 2,・・・,L)で表す。
【0076】
この場合、アレーアンテナは、垂直方向に並び、それぞれのアレー応答ベクトルは、a(θ)と表わされる。よって、入力ベクトルx(t)は、次式によって表わされる。
【0077】
【数7】
【0078】
式(2)において、Aは、方向行列である。また、n(t)は、内部雑音ベクトルであり、その成分は、平均が0で分散(電力)σ(=P)の独立な複素ガウス過程である。
【0079】
このとき、相関行列Rxxは、次式によって表わされる。
【0080】
【数8】
【0081】
到来波間の相関を表す式(8b)の行列Sは、信号(波源)相関行列と呼ばれ、到来波が全て互いに無相関であれば、次式によって表わされる。
【0082】
【数9】
【0083】
以下においては、簡単のために、到来波が互いに無相関であるとして、MUSIC法について説明する。
【0084】
MUSIC法は、相関行列の固有値・固有ベクトルを用いる。到来波が互いに無相関であれば、行列Sは、対角行列(対角成分i,i以外が“0”である行列)となり、そのランクは、明らかにLでフルランクである。方向行列Aも、到来波の到来方向が異なれば、その列ベクトルは、独立となり、ランクは、Lのフルランクとなる(列正則であるともいう)。
【0085】
従って、この場合の入力相関行列Rxx=ASAは、ランクLの非負定値エルミート行列であることが導かれる(非特許文献4)。この行列の固有値をμ(i=1,2,・・・,K)、対応する固有ベクトルをe(i=1,2,・・・,K)で表すと、次式が得られる。
【0086】
【数10】
【0087】
そして、その固有値は、実数であり、次式の関係を有する。
【0088】
【数11】
【0089】
また、対応する固有ベクトルは、次式の関係を有する。
【0090】
【数12】
【0091】
式(12)において、δikは、クロネッカーのデルタである。
【0092】
次に、内部雑音が存在する場合、入力相関行列Rxx=ASA+σIであるので、次式が得られる。
【0093】
【数13】
【0094】
式(13)によれば、内部雑音が無いときの相関行列の固有値に内部雑音電力(σ)が上乗せされただけで、固有ベクトルは、内部雑音の有無には無関係であることが分かる。
【0095】
そこで、
【0096】
【数14】
【0097】
とおいて、相関行列Rxxの固有値を表すと、次式が得られる。
【0098】
【数15】
【0099】
従って、相関行列の固有値を求め、内部雑音電力σよりも大きい固有値の数から到来波数Lを推定することができる。
【0100】
なお、簡単のため、到来波数は、正確に推定できたとして以後の説明を行う。
【0101】
雑音固有値λL+1,・・・,λに対して
【0102】
【数16】
【0103】
と表わされるので、次式が導かれる。
【0104】
【数17】
【0105】
更に、行列Aと行列Sがフルランクであることから、次の式(18)および式(19)が得られる。
【0106】
【数18】
【0107】
【数19】
【0108】
式(19)は、内部雑音電力に等しい固有値に対応する固有ベクトルは、全て、到来波のアレー応答スペクトルと直交することを意味している。
【0109】
アレーアンテナの指向性パターンを考えると、固有ベクトルeL+1,・・・,eをアレーアンテナのウエイトベクトルとして用いた場合、到来波の方向に指向性のヌル(零点)が向けられることになる。
【0110】
通常、L個の固有ベクトル{e,e,・・・,e}の張る線形空間を信号部分空間(signal subspace)、残りの固有ベクトル{eL+1,・・・,e}の張る空間を雑音部分空間(noise subspace)と呼ぶ。
【0111】
MUSIC法では、雑音部分空間の(K-L)個の固有ベクトルを用いて式(20)および式(21)に示す角度スペクトラムを構成する。
【0112】
【数20】
【0113】
【数21】
【0114】
式(20)によって表わされるPMU(θ,φ)および式(21)によって表わされるPMU(θ)は、MUSICスペクトラムと呼ばれる。そして、MUSICスペクトラムPMU(θ,φ)においては、(θ,φ)に対するスペクトラムのL個のピークを探すことにより{(θ,φ),(θ,φ)・・・,(θ,φ)}を求める。また、MUSICスペクトラムPMU(θ)においては、(θ)に対するスペクトラムのL個のピークを探すことにより{(θ),(θ)・・・,(θ)}を求める。
【0115】
なお、式(15)から分かるように、内部雑音に等しい最小固有値を少なくとも1つ確保するため、アレーの素子数については、K≧L+1が必要条件となる。
【0116】
また、MUSICスペクトラムPMU(θ,φ)は、仰角θおよび方位角φの関数であり、MUSICスペクトラムPMU(θ)は、仰角θの関数である。
【0117】
MUSIC(MUtiple Signal Classificatio)スペクトラムは、電波の空間スペクトラムの一種である(非特許文献4)。
【0118】
なお、上記においては、アレーアンテナを垂直方向に並べた場合について説明したが、アレーアンテナを水平方向に並べて方位角方向でMUSICスペクトラムを算出することもあり、その場合、上述した方法と類似の方法によってMUSICスペクトラムを算出することができる。
【0119】
[MUSICスペクトラムを用いた干渉の有無の推定]
(I)干渉の有無の推定方法1
干渉の有無の推定方法1においては、基地局4の演算手段43は、受信手段42から受けた受信信号y(t)に基づいて、上述した方法によって、MUSICスペクトラムPMU(θ,φ)を算出する。
(1)そして、演算手段43は、干渉の無いN(Nは、3以上の整数)個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)~PNK MU_FP(θ,φ)をN個の電子指紋(Fingerprint)として算出する。
(2)その後、演算手段43は、N個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)~PNK MU_FP(θ,φ)から、相互に異なるMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)(i≠j)を検出し、その検出したMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)(i≠j)の相関係数ρ{P MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)}を演算することを{i,j}(i≠j)の全ての組み合わせについて実行する。
【0120】
ここで、演算手段43は、次式によって相関係数ρMU_FP{P MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)}を演算する。
【0121】
【数22】
【0122】
式(22)において、Nは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)の各々の要素の総数であり、μは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)の要素の平均であり、σは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)の要素の標準偏差であり、μは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)の要素の平均であり、σは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)の要素の標準偏差であり、Aは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)の要素であり、Bは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)の要素である。
【0123】
ここで、相互に異なる{i,j}(i≠j)の全ての組み合わせの個数をW(Wは、3以上の整数)とすると、演算手段43は、N個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)~PNK MU_FP(θ,φ)に基づいて、W個の相関係数ρ MU_FP{P MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)},ρ MU_FP{P MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)},・・・,ρ MU_FP{P MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)}(i≠j)を演算する。これは、干渉が存在しないときのN個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)~PNK MU_FP(θ,φ)のうちのMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)とMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)(i≠j)との間の相関係数の値の最小値を探索するためである。
【0124】
以下、W個の相関係数ρ MU_FP{P MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)},ρ MU_FP{P MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)},・・・,ρ MU_FP{P MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)}(i≠j)を“ρ MU_FP~ρ MU_FP”と表記する。
(3)更に、演算手段43は、干渉の有無が不明であるときの受信信号ynew(t)に基づいて、上述した方法によって、MUSICスペクトラムPnew MU_FP(θ,φ)を算出する。
(4)そして、演算手段43は、干渉の有無を判定したいMUSICスペクトラムPnew MU_FP(θ,φ)と、干渉が存在しないときのN個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)(i=1~N)との間のN個の相関係数ρnew MU_FP{Pnew MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)}~ρnew MU_FP{Pnew MU_FP(θ,φ),PNK MU_FP(θ,φ)}を演算する。
【0125】
以下、N個の相関係数ρnew MU_FP{Pnew MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)}~ρnew MU_FP{Pnew MU_FP(θ,φ),PNK MU_FP(θ,φ)}を“ρ1,new MU_FP~ρNK,new MU_FP”と表記する。
(5)推定手段44は、W個の相関係数ρ MU_FP~ρ MU_FPと、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNK,new MU_FPとを演算手段43から受ける。
【0126】
そして、推定手段44は、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNK,new MU_FPからN(Nは、2≦N≦Nを満たす整数)個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPをランダムに選択する。
【0127】
その後、推定手段44は、W個の相関係数ρ MU_FP~ρ MU_FPから最小の相関係数ρmin MU_FPを選択する。
【0128】
なお、推定手段44は、複数の最小の相関係数が有るとき、複数の最小の相関係数のうちの任意の1つの最小の相関係数をρmin MU_FPとして選択する。
【0129】
また、この発明の実施の形態においては、推定手段44は、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNK,new MU_FPからN個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPを相関係数の大きい順または相関係数の小さい順に選択してもよく、一般的には、何らかの規則に基づいてN個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPを選択してもよい。
【0130】
そうすると、推定手段44は、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPのうちの少なくとも1つが最小の相関係数ρmin MU_FP以上であるか否かを判定する。
【0131】
そして、推定手段44は、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPのうちの少なくとも1つが最小の相関係数ρmin MU_FP以上であると判定したとき、干渉が無いと推定する。
【0132】
一方、推定手段44は、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPの全てが最小の相関係数ρmin MU_FPよりも小さいと判定したとき、干渉が有ると推定する。
【0133】
ここで、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPの全てが最小の相関係数ρmin MU_FPよりも小さいと判定したときに、干渉が有ると推定するのは、干渉が無いときのMUSICスペクトラムと、干渉が有るときのMUSICスペクトラムとの間の相関係数の値は、干渉が無いときのMUSICスペクトラム同士の相関係数(=W個の相関係数ρ MU_FP~ρ MU_FP)の値よりも小さくなるからである。
【0134】
図4は、干渉源の位置を検出する方法を説明するための図である。なお、図4は、部屋の平面図を表す。
【0135】
図4を参照して、部屋20は、例えば、正方形の平面形状からなり、壁面21~24を有する。壁面21,24は、y軸方向に沿って配置され、壁面22,23は、x軸方向に沿って配置される。
【0136】
端末装置1は、y軸方向において壁面21の中央部に配置され、端末装置2は、x軸方向において壁面22の中央部に配置され、RIS3は、x軸方向において壁面23の中央部に配置され、基地局4は、y軸方向において壁面24の中央部に配置される。
【0137】
そして、N(Nは、空間分解能に応じて決定され、フィンガープリント(fingerprint)の個数である)個のフィンガープリント(fingerprint)が、図4に示すように配置されている。N個のフィンガープリントは、干渉源から送信された信号が存在することを前提とする。フィンガープリント(fingerprint)の●は、フィンガープリント(fingerprint)の位置、即ち、干渉源の位置を表す。ここで、Nは、2以上の整数である。
(6)推定手段44が、上述した方法によって、干渉が有ると判定したとき、演算手段43は、1つの干渉源が電波を送信したときの受信信号に基づいて、上述した方法によってMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)を演算することをN個の干渉源の全てについて実行し、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)を演算する。
【0138】
そして、推定手段44は、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)を演算手段43から受け、その受けたN個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)をそれぞれN個のフィンガープリント(fingerprint)のN個の位置に対応付け、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)と、N個のフィンガープリント(fingerprint)のN個の位置との対応関係を示す対応表TBL1を作成して保持する。
【0139】
図5は、対応表TBL1の概略図である。図5を参照して、対応表TBL1は、MUSICスペクトラムと干渉源の位置とを含む。MUSICスペクトラムおよび干渉源の位置は、相互に対応付けられる。
【0140】
干渉源の位置FP(x,y)は、MUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)に対応付けられ、干渉源の位置FP(x,y)は、MUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)に対応付けられ、干渉源の位置FP(x,y)は、MUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)に対応付けられ、以下、同様にして、干渉源の位置FP(xNL-1,yNL-1)は、MUSICスペクトラムPNL-1 FP_intf(θ,φ)に対応付けられ、干渉源の位置FP(xNL,yNL)は、MUSICスペクトラムPNL FP_intf(θ,φ)に対応付けられる。
(7)演算手段43は、干渉源が存在すると推定されたときの受信信号に基づいて、上述した方法によって、MUSICスペクトラムPnew FP_intf(θ,φ)を演算する。
(8)そして、演算手段43は、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)とMUSICスペクトラムPnew FP_intf(θ,φ)とのN個の相関係数ρ FP_intf{P FP_intf(θ,φ),Pnew FP_intf(θ,φ)}~ρNL FP_intf{PNL FP_intf(θ,φ),Pnew FP_intf(θ,φ)}を算出する。
【0141】
以下、N個の相関係数ρ FP_intf{P FP_intf(θ,φ),Pnew FP_intf(θ,φ)}~ρNL FP_intf{PNL FP_intf(θ,φ),Pnew FP_intf(θ,φ)}を“ρ FP_intf~ρNL FP_intf”と表記する。
(9)推定手段44は、N個の相関係数ρ FP_intf~ρNL FP_intfを演算手段43から受ける。
【0142】
そして、推定手段44は、N個の相関係数ρ FP_intf~ρNL FP_intfから最大の相関係数ρmax FP_intfを検出する。
【0143】
そうすると、推定手段44は、対応表TBL1を参照して、最大の相関係数ρmax FP_intfが得られるときのMUSICスペクトラムPmax FP_intf(θmax,φmax)(=MUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)のいずれか)に対応付けられた干渉源の位置FP(xmax,ymax)(=FP(x,y)~FP(xNL,yNL)のいずれか)を、MUSICスペクトラムPnew FP_intf(θ,φ)が得られたときの干渉源の位置として検出することによって干渉源の位置を推定する。
【0144】
また、推定手段44は、最大の相関係数ρmax FP_intfが得られるときのMUSICスペクトルPmax FP_intf(θmax,φmax)の(θmax,φmax)を干渉の到来方向と推定する。
【0145】
従って、上述した干渉の有無の推定方法においては、干渉の有無を推定することができ、干渉が有ると推定されたとき、干渉源の位置と、干渉の到来方向とを推定することができる。
(II)干渉の有無の推定方法2
上述した(I)干渉の有無の推定方法1においては、仰角θおよび方位角φの関数であるMUSICスペクトラムPMU(θ,φ)(式(20)参照)を用いた。
【0146】
しかし、仰角θおよび方位角φの関数であるMUSICスペクトラムPMU(θ,φ)(式(20)参照)を用いた場合、仰角θと方位角φとの全ての組み合わせによってMUSICスペクトラムPMU(θ,φ)におけるL個のピークを検出する必要がある。その結果、計算量が増大する。
【0147】
そこで、干渉の有無の推定方法2においては、仰角θのみの関数であるMUSICスペクトラムPMU(θ)(式(21)参照)を用いて干渉の有無および干渉源の位置を推定する。
【0148】
[MUSICスペクトラムPMU(θ)を用いて干渉の有無の推定方法1を実行する場合]
MUSICスペクトラムPMU(θ)を用いて干渉の有無の推定方法1を実行する場合、基地局4の演算手段43は、受信手段42から受けた受信信号y(t)に基づいて、上述した方法によって、MUSICスペクトラムPMU(θ)を算出する。
(10)そして、演算手段43は、干渉の無いN個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ)~PNK MU_FP(θ)をN個の電子指紋(Fingerprint)として算出する。
(11)その後、演算手段43は、N個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ)~PNK MU_FP(θ)から、相互に異なるMUSICスペクトラムP MU_FP(θ),P MU_FP(θ)(i≠j)を検出し、その検出したMUSICスペクトラムP MU_FP(θ),P MU_FP(θ)(i≠j)の相関係数ρ{P MU_FP(θ),P MU_FP(θ)}を演算することを{i,j}(i≠j)の全ての組み合わせについて実行する。
【0149】
ここで、演算手段43は、上述した式(22)によって相関係数ρMU_FP{P MU_FP(θ),P MU_FP(θ)}を演算する。
【0150】
この場合、式(22)において、Nは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ),P MU_FP(θ)の各々の要素の総数であり、μは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ)の要素の平均であり、σは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ)の要素の標準偏差であり、μは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ)の要素の平均であり、σは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ)の要素の標準偏差であり、Aは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ)の要素であり、Bは、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ)の要素である。
【0151】
ここで、相互に異なる{i,j}(i≠j)の全ての組み合わせの個数をWとすると、演算手段43は、N個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ)~PNK MU_FP(θ)に基づいて、W個の相関係数ρ MU_FP{P MU_FP(θ),P MU_FP(θ)},ρ MU_FP{P MU_FP(θ),P MU_FP(θ)},・・・,ρ MU_FP{P MU_FP(θ),P MU_FP(θ)}(i≠j)を演算する。これは、干渉が存在しないときのN個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ)~PNK MU_FP(θ)のうちのMUSICスペクトラムP MU_FP(θ)とMUSICスペクトラムP MU_FP(θ)(i≠j)との間の相関係数の値の最小値を探索するためである。
【0152】
以下、W個の相関係数ρ MU_FP{P MU_FP(θ),P MU_FP(θ)},ρ MU_FP{P MU_FP(θ),P MU_FP(θ)},・・・,ρ MU_FP{P MU_FP(θ),P MU_FP(θ)}(i≠j)を“ρ MU_FP_SG~ρ MU_FP_SG”と表記する。
(12)更に、演算手段43は、干渉の有無が不明であるときの受信信号ynew(t)に基づいて、上述した方法によって、MUSICスペクトラムPnew MU_FP(θ)を算出する。
(13)そして、演算手段43は、干渉の有無を判定したいMUSICスペクトラムPnew MU_FP(θ)と、干渉が存在しないときのN個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ)(i=1~N)との間のN個の相関係数ρnew MU_FP{Pnew MU_FP(θ),P MU_FP(θ)}を演算する。
【0153】
以下、N個の相関係数ρnew MU_FP{Pnew MU_FP(θ),P MU_FP(θ)}を“ρ1,new MU_FP_SG~ρNK,new MU_FP_SG”と表記する。
(14)推定手段44は、W個の相関係数ρ MU_FP_SG~ρ MU_FP_SGと、N個の関係数ρ1,new MU_FP_SG~ρNK,new MU_FP_SGとを演算手段43から受ける。
【0154】
そして、推定手段44は、N個の相関係数ρ1,new MU_FP_SG~ρNK,new MU_FP_SGからN個の相関係数ρ1,new MU_FP_SG~ρNS,new MU_FP_SGをランダムに選択する。
【0155】
その後、推定手段44は、W個の相関係数ρ MU_FP_SG~ρ MU_FP_SGから最小の相関係数ρmin MU_FP_SGを選択する。
【0156】
なお、推定手段44は、複数の最小の相関係数が有るとき、複数の最小の相関係数のうちの任意の1つの最小の相関係数をρmin MU_FP_SGとして選択する。
【0157】
そうすると、推定手段44は、N個の相関係数ρ1,new MU_FP_SG~ρNS,new MU_FP_SGのうちの少なくとも1つが最小の相関係数ρmin MU_FP_SG以上であるか否かを判定する。
【0158】
そして、推定手段44は、N個の相関係数ρ1,new MU_FP_SG~ρNS,new MU_FP_SGのうちの少なくとも1つが最小の相関係数ρmin MU_FP_SG以上であると判定したとき、干渉が無いと推定する。
【0159】
一方、推定手段44は、N個の相関係数ρ1,new MU_FP_SG~ρNS,new MU_FP_SGの全てが最小の相関係数ρmin MU_FP_SGよりも小さいと判定したとき、干渉が有ると推定する。
【0160】
ここで、N個の相関係数ρ1,new MU_FP_SG~ρNS,new MU_FP_SGの全てが最小の相関係数ρmin MU_FP_SGよりも小さいと判定したときに、干渉が有ると推定するのは、干渉が無いときのMUSICスペクトラムと、干渉が有るときのMUSICスペクトラムとの間の相関係数の値は、干渉が無いときのMUSICスペクトラム同士の相関係数(=W個の相関係数ρ MU_FP_SG~ρ MU_FP_SG)の値よりも小さくなるからである。
(15)推定手段44が、上述した方法によって、干渉が有ると判定したとき、演算手段43は、1つの干渉源が電波を送信したときの受信信号に基づいて、上述した方法によってMUSICスペクトラムP FP_intf(θ)を演算することをN個の干渉源の全てについて実行し、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ)~PNL FP_intf(θ)を演算する。
【0161】
そして、推定手段44は、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ)~PNL FP_intf(θ)を演算手段43から受け、その受けたN個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ)~PNL FP_intf(θ)をそれぞれN個のフィンガープリント(fingerprint)のN個の位置に対応付け、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ)~PNL FP_intf(θ)と、N個のフィンガープリント(fingerprint)のN個の位置との対応関係を示す対応表TBL2を作成して保持する。
【0162】
図6は、対応表TBL2の概略図である。図6を参照して、対応表TBL2は、MUSICスペクトラムと干渉源の位置とを含む。MUSICスペクトラムおよび干渉源の位置は、相互に対応付けられる。
【0163】
干渉源の位置FP(x,y)は、MUSICスペクトラムP FP_intf(θ)に対応付けられ、干渉源の位置FP(x,y)は、MUSICスペクトラムP FP_intf(θ)に対応付けられ、干渉源の位置FP(x,y)は、MUSICスペクトラムP FP_intf(θ)に対応付けられ、以下、同様にして、干渉源の位置FP(xNL-1,yNL-1)は、MUSICスペクトラムPNL-1 FP_intf(θ)に対応付けられ、干渉源の位置FP(xNL,yNL)は、MUSICスペクトラムPNL FP_intf(θ)に対応付けられる。
(16)演算手段43は、干渉源が存在すると推定されたときの受信信号に基づいて、上述した方法によって、MUSICスペクトラムPnew FP_intf(θ)を演算する。
(17)そして、演算手段43は、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ)~PNL FP_intf(θ)とMUSICスペクトラムPnew FP_intf(θ)とのN個の相関係数ρ FP_intf{P FP_intf(θ),Pnew FP_intf(θ)}~ρNL FP_intf{PNL FP_intf(θ),Pnew FP_intf(θ)}を算出する。
【0164】
以下、N個の相関係数ρ FP_intf{P FP_intf(θ),Pnew FP_intf(θ)}~ρNL FP_intf{PNL FP_intf(θ),Pnew FP_intf(θ)}を“ρ FP_intf_SG~ρNL FP_intf_SG”と表記する。
(18)推定手段44は、N個の相関係数ρ FP_intf_SG~ρNL FP_intf_SGを演算手段43から受ける。
【0165】
そして、推定手段44は、N個の相関係数ρ FP_intf_SG~ρNL FP_intf_SGから最大の相関係数ρmax FP_intf_SGを検出する。
【0166】
そうすると、推定手段44は、対応表TBL2を参照して、最大の相関係数数ρmax FP_intf_SGが得られるときのMUSICスペクトラムPmax FP_intf(θmax)(=MUSICスペクトラムP FP_intf(θ)~PNL FP_intf(θ)のいずれか)に対応付けられた干渉源の位置FP(xmax,ymax)(=FP(x,y)~FP(xNL,yNL)のいずれか)を、MUSICスペクトラムPnew FP_intf(θ)が得られたときの干渉源の位置として検出することによって干渉源の位置を推定する。
【0167】
また、推定手段44は、最大の相関係数数ρmax FP_intf_SGが得られるときのMUSICスペクトルPmax FP_intf(θmax)の(θmax)を干渉の到来方向と推定する。
【0168】
従って、MUSICスペクトラムPMU(θ)を用いて干渉の有無の推定方法1を実行する場合においては、干渉の有無を推定することができ、干渉が有ると推定されたとき、干渉源の位置と、干渉の到来方向とを推定することができる。
【0169】
[Busy/Idle継続時間の予測]
基地局4の制御手段47は、干渉の有無、干渉源の位置および干渉の到来方向を推定手段44から受けると、キャリセンスを指示する指示信号S_carrierを生成する。
【0170】
そして、制御手段47は、指示信号S_carrierを受信手段42へ出力する。
【0171】
受信手段42は、指示信号S_carrierを制御手段47から受ける。そして、受信手段42は、ビームをデジタルビームフォーミングまたはアナログビームフォーミングによって形成し、その形成したビームをK個のアンテナ41-1~41-Kから放射してキャリアセンスを行い、K個のアンテナ41-1~41-Kを介して受信信号強度RSSIを受信する。
【0172】
この場合、受信手段42は、一定期間、キャリアセンスを行い、受信信号強度RSSIの時系列データRSSI(t)を受信する。
【0173】
そして、受信手段42は、時系列データRSSI(t)を処理手段45へ出力する。
【0174】
図7は、時系列データRSSI(t)の概念図である。また、図8は、B/I時系列データB/I(t)の概念図である。
【0175】
図7において、縦軸は、受信信号強度RSSIを表し、横軸は、時間を表す。また、RSSI_thは、受信信号強度RSSIに基づいて、干渉源が電波を送信していることを表わすビジー状態Bと、干渉源が電波を送信していないことを表わすアイドル状態Iとを検出するためのしきい値である。しきい値RSSI_thは、例えば、-68dBmに設定される。
【0176】
処理手段45は、時系列データRSSI(t)を受信手段42から受ける。そして、処理手段45は、時系列データRSSI(t)の受信信号強度RSSIがしきい値RSSI_th以上になる時間間隔t~t,t~t,t~t,・・・と、時系列データRSSI(t)の受信信号強度RSSIがしきい値RSSI_th未満になる時間間隔t~t,t~t,・・・とを検出する。
【0177】
そうすると、処理手段45は、時間tから時間tまでの区間、時間tから時間tまでの区間、および時間tから時間tまでの区間をビジー状態Bとし、時間tから時間tまでの区間、および時間tから時間tまでの区間をアイドル状態Iとしてビジー状態Bとアイドル状態Iとの時系列データB/I(t)を生成する(図8参照)。そして、処理手段45は、時系列データB/I(t)を予測手段46へ出力する。
【0178】
図9は、予測手段46の概略図である。図10は、予測手段46の動作を説明するための図である。図12は、時系列データB/I(t)、予測処理用データおよび目標データの概念図である。
【0179】
図9を参照して、予測手段46は、生成ユニット461と、確率的ニューラルネットワーク(PNN:Probabilistic Neural Network)462と、予測ユニット463とを備える。
【0180】
生成ユニット461は、処理手段45から時系列データB/I(t)を受ける。そして、生成ユニット461は、図10に示す学習期間において、その受けた時系列データB/I(t)から(N+k)個のサンプルを取得することをN回実行してシーケンス#1~シーケンス#Nのデータとする。
【0181】
シーケンス#1~シーケンス#Nの各々において、N個のサンプルが入力であり、k個のサンプルが学習結果である。
【0182】
生成ユニット461は、学習期間において、シーケンス#1のN個のサンプル、シーケンス#2のN個のサンプル、・・・、シーケンス#NのN個のサンプルを確率的ニューラルネットワーク462へ順次出力する。
【0183】
また、生成ユニット461は、学習期間において、シーケンス#1のk個のサンプル、シーケンス#2のk個のサンプル、・・・、シーケンス#Nのk個のサンプルを予測ユニット463へ出力する。
【0184】
また、生成ユニット461は、予測期間において、予測用入力を確率的ニューラルネットワーク462へ出力する。
【0185】
確率的ニューラルネットワーク462は、学習期間において、生成ユニット461から、シーケンス#1のN個のサンプル、シーケンス#2のN個のサンプル、・・・、シーケンス#NのN個のサンプルを順次受ける。そして、確率的ニューラルネットワーク462は、シーケンス#1のN個のサンプル、シーケンス#2のN個のサンプル、・・・、シーケンス#NのN個のサンプルに基づいて学習を行う。
【0186】
また、確率的ニューラルネットワーク462は、予測期間において、図10に示す予測用入力を生成ユニット461から受けると、その受けた予測用入力に基づいて、将来のビジー状態Bとアイドル状態Iとの時系列データB/I(t)_Fを特定するための評価値を取得し、その取得した評価値を予測ユニット463へ出力する。
【0187】
予測ユニット463は、生成ユニット461からシーケンス#1のk個のサンプル、シーケンス#2のk個のサンプル、・・・、シーケンス#Nのk個のサンプルを受け、確率的ニューラルネットワーク462から時系列データB/I(t)_Fを特定するための評価値を受ける。
【0188】
そして、予測ユニット463は、シーケンス#1のk個のサンプル、シーケンス#2のk個のサンプル、・・・、シーケンス#Nのk個のサンプルと、時系列データB/I(t)_Fを特定するための評価値とに基づいて、後述する方法によって、時系列データB/I(t)_Fを予測する。
【0189】
図11は、確率的ニューラルネットワーク462の概略図である。図11を参照して、確率的ニューラルネットワーク462は、入力層と、隠れ層と、総和計算総と、クラス評価値取得部とを備える。
【0190】
入力層は、N個のシナプスを有する。入力層の1番目のシナプスは、入力ベクトルv(=図10に示す予測用入力)の1番目の要素を入力として受け、入力層の2番目のシナプスは、入力ベクトルv(=図10に示す予測用入力)の2番目の要素を入力として受け、以下、同様にして、入力層のN番目のシナプスは、入力ベクトルv(=図10に示す予測用入力)のN番目の要素を入力として受ける。
【0191】
隠れ層は、G(=N)個のクラスに対応するG個のシナプス群Blk_class_1~Blk_class_Gを有する。G個のシナプス群Blk_class_1~Blk_class_Gの各々は、N個のシナプスを有する。
【0192】
第1番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class_1の第s(sは、1≦s≦Nを満たす整数)番目のシナプスは、クラス1に対応するベクトルvのs番目の要素v1,sで表される重み付けデータが割り当てられる。
【0193】
即ち、第r(rは、1≦r≦Gを満たす整数)番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class_rの第s番目のシナプスは、vr,sで表される重み付けデータが割り当てられる。
【0194】
ここで、各クラスに対して、図12に示すデータP{1}からデータP{N}が割り当てられる場合について、説明する。つまり、入力データが学習用データData_P(N×Nの行列Pのデータ)である場合の教師データ(正解のデータ)が目標データData_T(N×kの行列Tのデータ)として、学習する場合について、説明する。
【0195】
第1番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class_1の第1番目のシナプスには、データP{1}の1番目の要素をv1,1として、v1,1で表される重み付けデータが割り当てられる。
【0196】
第1番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class_1の第2番目のシナプスには、データP{1}の2番目の要素をv1,2として、v1,2で表される重み付けデータが割り当てられる。
【0197】
以下、同様にして、第1番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class_1の第N番目のシナプスには、データP{1}のN番目の要素をv1,NCとして、v1,NCで表される重み付けデータが割り当てられる。
【0198】
上記と同様にして、第r番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class_rの第s番目のシナプスに、データP{r}のs番目の要素vr,sで表される重み付けデータが割り当てる。
【0199】
そして、第c(cは、1≦c≦Gを満たす整数)番目のクラスのシナプス群Blk_class_cでは、予測処理用データv(N個の要素v,v,・・・,vNC)に対して、次式に相当する処理が実行される。
【0200】
【数23】
【0201】
式(23)において、σは、第c(cは、1≦c≦Gを満たす整数)番目のクラスの標準偏差である。
【0202】
上記処理により、第c(cは、1≦c≦Gを満たす整数)番目のクラスのシナプス群Blk_class_cのj番目のシナプスから、データD_vcjが総和計算層へ出力される。
【0203】
総和計算層では、第c(cは、1≦c≦Gを満たす整数)番目のシナプスは、隠れ層の第c番目のクラスに対応するシナプス群Blk_class_cに含まれる各シナプスからの出力データを入力とし、入力データに対して総和計算処理を実行し、第c番目のクラスの放射基底関数(RBF:Radial Basis Function)の値を、第c番目のクラスの放射基底関数データgとして取得する。すなわち、総和計算層は、次式に相当する処理を実行して、第c番目のクラスの放射基底関数データgを取得する。
【0204】
【数24】
【0205】
式(24)において、σは、第c番目のクラスの標準偏差である。
【0206】
そして、取得された第c番目のクラスの放射基底関数データgは、クラス評価値取得部へ出力される。
【0207】
クラス評価値取得部は、総和計算層から出力されるG個の放射基底関数データg~gを入力する。クラス評価値取得部は、入力されたG個の放射基底関数データg~gに基づいて、クラス評価値データD2pを生成する。具体的には、クラス評価値取得部は、次式に示すベクトルからなるデータD2pとして生成する。
【0208】
【数25】
【0209】
クラス評価値取得部は、生成したクラス評価値データD2pを予測ユニット463へ出力する。
【0210】
予測ユニット463は、目標データData_Tとクラス評価値データD2pとに基づいて、予測処理の結果データの精度を判定する。ここで、第c番目のクラスに対応する入力データ(長さNのベクトル)をData_Pとし、その教師データ(正解のデータ)をData_Tとする。そうすると、v=Data_Pのとき、第c番目のクラスに対応する放射基底関数データgの値は、最大値をとり、vがData_Pに近いパターンであればあるほど、第c番目のクラスに対応する放射基底関数データgの値は大きな値となる。
【0211】
予測ユニット463は、データD2pの要素の中で最大値をとる放射基底関数データgを特定し、その特定した放射基底関数データgに対応するクラスを特定する。そして、予測ユニット463は、特定したクラスに対応する教師データ(正解のデータ)Data_Tにより、予測パターンを特定する。例えば、予測ユニット463は、データD2pの要素の中で最大値をとる放射基底関数データgがgであると特定した場合、特定したクラスである第1番目のクラスに対応する教師データ(正解のデータ)Data_TのT{N}を予測パターンとして特定する。ここで、学習用データData_Pに含まれるP{1}がData_Pであり、その教師データがT{1}であるとする。図12を参照して、vがP{1}と同じく「11110000」であり、このvが基地局4に入力された場合、T{1}が「010」であるので、vに後続するデータは、「010」であると予測される。つまり、この場合、予測ユニット463は、目標データData_TのT{1}={010}を予測パターンとして特定する。
【0212】
即ち、予測ユニット463は、最大値をとる放射基底関数データgがgであると特定した場合、放射基底関数データgは、クラス1の放射基底関数データであるので、クラス1に対応する目標データT{1}={0,1,0}を将来の時点t_nowにおける予測パターンとする。
【0213】
予測ユニット463は、上述した方法によって、ビジー状態Bとアイドル状態Iとの将来の時系列データである時系列データB/I(t)_Fを予測し、その予測した時系列データB/I(t)_Fを制御手段47へ出力する。
【0214】
制御手段47は、時系列データB/I(t)_Fを予測手段46から受けると、その受けた時系列データB/I(t)_Fに基づいてアイドル状態Iの開始時刻tstart_Iを検出する。
【0215】
そして、制御手段47は、送信元からコアネットワーク(例えば、5G)を介して送信データを受信すると、その受信した送信データと開始時刻tstart_Iとを送信手段48へ出力し、送信データを開始時刻tstart_Iで送信するように送信手段48を制御する。
【0216】
送信手段48は、送信データおよび開始時刻tstart_Iを制御手段47から受けると、MIMO伝送を用いて、開始時刻tstart_Iに送信データを送信する。これによって、干渉源からの干渉が無いときに送信データを送信できる。
【0217】
図13は、図2に示す基地局4の動作を説明するためのフローチャートである。なお、図13に示すフローチャートは、上述した“干渉の有無の推定方法1”を実行するためのフローチャートである。
【0218】
図13を参照して、基地局4の動作が開始されると、演算手段43は、z’=1を設定する(ステップS1)。
【0219】
そして、受信手段42は、位置が既知である干渉源S_z’からL個のアンテナを用いて送信されたL個の電波をK個のアンテナを用いて受信したときの受信信号yz’(t)を検出する(ステップS2)。そして、受信手段42は、受信信号yz’(t)を演算手段43へ出力する。
【0220】
演算手段43は、受信信号yz’(t)を受信手段42から受け、その受けた受信信号yz’(t)に基づいてMUSICスペクトラムPz’ FP_intf(θ,φ)を算出する(ステップS3)。そして、演算手段43は、MUSICスペクトラムPz’ FP_intf(θ,φ)を推定手段44へ出力する。
【0221】
そうすると、演算手段43は、z’=Nであるか否かを判定する(ステップS4)。
【0222】
ステップS4において、z’=Nでないと判定されたとき、演算手段43は、z’=z’+z’1を設定する(ステップS5)。その後、基地局4の動作は、ステップS2へ移行し、ステップS4において、z’=Nであると判定されるまで、ステップS2~ステップS5が繰り返し実行される。
【0223】
そして、ステップS5において、z’=Nであると判定されると、演算手段43は、z=1を設定する(ステップS6)。ここで、zは、1~Nである。
【0224】
ステップS6の後、受信手段42は、干渉が無いときにL個のアンテナを用いて送信源S_zから送信されたL個の電波をK個のアンテナを用いて受信したときの受信信号y(t)を検出する(ステップS7)。そして、受信手段42は、受信信号y(t)を演算手段43へ出力する。
【0225】
演算手段43は、受信信号y(t)を受信手段42から受け、その受けた受信信号y(t)に基づいてMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)を算出する(ステップS8)。そして、演算手段43は、MUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)を推定手段44へ出力する。
【0226】
そうすると、演算手段43は、z=Nであるか否かを判定する(ステップS9)。
【0227】
ステップS9において、z=Nでないと判定されたとき、演算手段43は、z=z+1を設定する(ステップS10)。その後、基地局4の動作は、ステップS7へ移行し、ステップS9において、z=Nであると判定されるまで、ステップS7~ステップS10が繰り返し実行される。
【0228】
そして、ステップS9において、z=Nであると判定されると、推定手段44は、N個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)~MUSICスペクトラムPNK MU_FP(θ,φ)を用いて干渉の有無を推定する(ステップS11)。
【0229】
なお、ステップS9において、z=Nであると判定されたとき、受信手段42は、N個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)~MUSICスペクトラムPNK MU_FP(θ,φ)を推定手段44へ出力しているので、推定手段44は、ステップS11において、N個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)~MUSICスペクトラムPNK MU_FP(θ,φ)を用いて干渉の有無を推定することが可能である。
【0230】
ステップS11の後、推定手段44は、干渉が有るか否かを判定する(ステップS12)。
【0231】
ステップS12において、干渉が有ると推定されたとき、推定手段44は、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)を用いて干渉の位置および干渉の到来方向を推定する(ステップS13)。
【0232】
なお、ステップS4において、z’=Nであると判定されたとき、受信手段42は、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)を推定手段44へ出力しているので、推定手段44は、ステップS13において、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)を用いて干渉の位置および干渉の到来方向を推定することが可能である。
【0233】
ステップS13の後、予測手段46は、将来における干渉源の時系列データB/I(t)_Fを予測する(ステップS14)。
【0234】
そして、送信手段48は、時系列データB/I(t)_Fのアイドル期間において端末装置(端末装置1または端末装置2)との間でMIMO伝送によって通信を実行する(ステップS15)。
【0235】
そして、ステップS12において、干渉が無いと判定されたとき、またはステップS15の後、基地局4の動作が終了する。
【0236】
図14は、図13に示すステップS3の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0237】
図14を参照して、図13のステップS2の後、演算手段43は、受信信号y(t)の相関行列Rxxを算出し(ステップS31)、その算出した相関行列Rxxを固有値に分解して固有値λ~λ,λL+1~λおよび固有ベクトルe~e,eL+1~eを算出する(ステップS32)。
【0238】
そして、演算手段43は、固有ベクトルe~e,eL+1~eに基づいて、L個の固有ベクトル{e,e,・・・,e}の張る線形空間を信号部分空間とし、(K-L)個の固有ベクトル{eL+1,eL+2,・・・,e}の張る線形空間を雑音部分空間とする(ステップS33)。
【0239】
そうすると、演算手段43は、雑音部分空間における(K-L)個の固有ベクトル{eL+1,eL+2,・・・,e}を用いてMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)(式(20)参照)を算出する(ステップS34)。
【0240】
そして、ステップS34の後、一連の動作は、図13のステップS4へ移行する。
【0241】
なお、図13のステップS8の詳細な動作も図14に示すフローチャートによって算出される。
【0242】
この場合、図14の説明において、“受信信号yz’(t)”を“受信信号y(t)”に読み替え、“MUSICスペクトラムPz’ FP_intf(θ,φ)”を“MUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)”に読み替えればよい。
【0243】
図15は、図13に示すステップS11の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0244】
図15を参照して、図13のステップS9において、z=Nであると判定されたとき、受信手段42は、干渉の有無が不明であるときにL個のアンテナを用いて送信源から送信されたL個の電波をK個のアンテナを用いて受信したときの受信信号ynew(t)を検出する(ステップS111)。そして、受信手段42は、受信信号ynew(t)を演算手段43へ出力する。
【0245】
演算手段43は、受信信号ynew(t)を受信手段42から受けると、その受けた受信信号ynew(t)に基づいてMUSICスペクトラムPnew MU_FP(θ,φ)を算出する(ステップS112)。この場合、演算手段43は、図14に示すフローチャートに従って、MUSICスペクトラムPnew MU_FP(θ,φ)を算出する。
【0246】
ステップS112の後、演算手段43は、N個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)~PNK MU_FP(θ,φ)から相互に異なるMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ),P MU_FP(θ,φ)(i≠j)の相関係数を算出することを{i,j}(i≠j)の全ての組合せについて実行し、W個の相関係数ρ MU_FP~ρ MU_FPを算出する(ステップS113)。
【0247】
そして、演算手段43は、MUSICスペクトラムPnew MU_FP(θ,φ)と、N個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)~PNK MU_FP(θ,φ)との間のN個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNK,new MU_FPを算出する(ステップS114)。
【0248】
そして、演算手段43は、W個の相関係数ρ MU_FP~ρ MU_FPと、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNK,new MU_FPとを推定手段44へ出力する。
【0249】
推定手段44は、W個の相関係数ρ MU_FP~ρ MU_FPと、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNK,new MU_FPとを演算手段43から受ける。
【0250】
そして、推定手段44は、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNK,new MU_FPからN個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPをランダムに選択する(ステップS115)。
【0251】
また、推定手段44は、W個の相関係数ρ MU_FP~ρ MU_FPから最小の相関係数ρmin MU_FPを選択する(ステップS116)。
【0252】
そうすると、推定手段44は、n=1を設定する(ステップS117)。n=1~Nである。
【0253】
ステップS117の後、推定手段44は、相関係数ρnS,new MU_FPが最小の相関係数ρmin MU_FP以上であるか否かを判定する(ステップS118)。
【0254】
ステップS118において、相関係数ρnS,new MU_FPが最小の相関係数ρmin MU_FP以上でないと判定されたとき、推定手段44は、n=Nであるか否かを判定する(ステップS119)。
【0255】
ステップS119において、n=Nでないと判定されたとき、推定手段44は、n=n+1を設定する(ステップS120)。その後、ステップS119において、n=Nであると判定されるまで、ステップS118の“NO”→ステップS119の“NO”→ステップS120が、連続してN回、実行されたとき、推定手段44は、干渉が有ると推定する(ステップS121)。
【0256】
一方、ステップS119において、n=Nであると判定されるまでに、ステップS118の“YES”が少なくとも1回実行されたとき(即ち、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPの少なくとも1つが最小の相関係数ρmin MU_FP以上であると判定されたとき、推定手段44は、干渉が無いと推定する(ステップS122)。
【0257】
そして、ステップS121またはステップS122の後、基地局4の操作は、図13のステップS12へ移行する。
【0258】
図15に示すフローチャートにおいては、n=1であるときに、ステップS118において、相関係数ρnS,new MU_FPが最小の相関係数ρmin MU_FP以上であると判定されたとき、推定手段44は、干渉が無いと推定する(ステップS122参照)。
【0259】
つまり、図15に示すフローチャートにおいては、n=Nになるまでに、ステップS118において、相関係数ρnS,new MU_FPが最小の相関係数ρmin MU_FP以上であると、少なくとも1回、判定されると、ステップS122において、干渉が無いと推定される。
【0260】
即ち、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPのうちの少なくとも1つの相関係数が最小の相関係数ρmin MU_FP以上であると判定されたとき、干渉が無いと推定される。
【0261】
一方、図15に示すフローチャートにおいては、ステップS118において、相関係数ρnS,new MU_FPが最小の相関係数ρmin MU_FP以上でないと判定されることが継続する限り、ステップS118の“NO”→ステップS119の“NO”→ステップS120が繰り返し実行される。
【0262】
そして、ステップS119において、n=Nであると判定されるまで、ステップS118の“NO”→ステップS119の“NO”→ステップS120が繰り返し実行されたとき、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPの全てが最小の相関係数ρmin MU_FP以上で無いと判定され、ステップS121において、干渉が有ると推定される。
【0263】
このように推定されるのは、ステップS119において、n=Nであると判定されるまで、ステップS118の“NO”→ステップS119の“NO”→ステップS120が繰り返し実行されたとき、N個の相関係数ρ1,new MU_FP~ρNS,new MU_FPの全てが最小の相関係数ρmin MU_FP以上でなく(よりも小さく)、干渉の有無が不明であるときのMUSICスペクトラムPnew MU_FP(θ,φ)が、干渉が無いときのN個のMUSICスペクトラムP MU_FP(θ,φ)~PNK MU_FP(θ,φ)との間の相関が小さいと考えられるからである。
【0264】
図16は、図13に示すステップS13の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0265】
図16を参照して、図13のステップS11において、z’=Nであると判定されたとき、演算手段43は、n=1を設定する(ステップS131)。ここで、n=1~Nである。
【0266】
そして、ステップS131の後、受信手段32は、干渉源S_intf_nがL個のアンテナを用いて送信したL個の電波をK個のアンテナを用いて受信したときの受信信号yintf_nLを検出し(ステップS132)、その検出した受信信号yintf_nLを演算手段43へ出力する。
【0267】
演算手段43は、受信信号yintf_nLを受信手段42から受けると、その受けた受信信号yintf_nLに基づいてMUSICスペクトラムPnL FP_intf(θ,φ)を算出する(ステップS133)。そして、演算手段43は、MUSICスペクトラムPnL FP_intf(θ,φ)を推定手段44へ出力する。
【0268】
その後、演算手段43は、n=Nであるか否かを判定する(ステップS134)。
【0269】
ステップS134において、n=Nでないと判定されたとき、演算手段43は、n=n+1を設定する(ステップS135)。その後、基地局4の動作は、ステップS132へ移行し、ステップS134において、n=Nであると判定されるまで、ステップS132~ステップS135が繰り返し実行される。
【0270】
そして、ステップS134において、n=Nであると判定されると、推定手段44は、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)をそれぞれN個の位置(x,y)~(xNL,yNL)に対応付けて対応表TBL1を作成する(ステップS136)。
【0271】
その後、受信手段42は、干渉源Sが電波を送信しているか否かが不明であるときの受信信号yintf_new(t)を検出し(ステップS137)、その検出した受信信号yintf_new(t)を演算手段43へ出力する。
【0272】
演算手段43は、受信信号yintf_new(t)を受信手段42から受けると、その受けた受信信号yintf_new(t)に基づいてMUSICスペクトラムPnew FP_intf(θ,φ)を算出する(ステップS138)。
【0273】
その後、演算手段43は、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)とMUSICスペクトラムPnew FP_intf(θ,φ)とのN個の相関係数ρnL FP_intf{PnL FP_intf(θ,φ),Pnew FP_intf(θ,φ)}(n=1~N)を算出する(ステップS139)。
【0274】
そうすると、推定手段44は、N個の相関係数ρnL FP_intf{PnL FP_intf(θ,φ),Pnew FP_intf(θ,φ)}(n=1~N)のうちの最大の相関係数ρmax FP_intf{Pmax FP_intf(θmax,φmax),Pnew FP_intf(θ,φ)}を検出する(ステップS140)。
【0275】
そして、推定手段44は、対応表TBL1を参照して、最大の相関係数ρmax FP_intf{Pmax FP_intf(θmax,φmax),Pnew FP_intf(θ,φ)}が得られるときのMUSICスペクトラムPmax FP_intf(θmax,φmax)に対応付けられた干渉源の位置を、MUSICスペクトラムPnew FP_intf(θ,φ)が得られるときの干渉源の位置として検出することによって干渉源の位置を推定する(ステップS141)。
【0276】
また、推定手段44は、最大の相関係数ρmax FP_intf{Pmax FP_intf(θmax,φmax),Pnew FP_intf(θ,φ)}が得られるときのMUSICスペクトラムPmax FP_intf(θmax,φmax)の(θmax,φmax)を干渉の到来方向と推定する(ステップS142)。
【0277】
その後、基地局4の動作は、図13のステップS14へ移行する。
【0278】
図17は、図13に示すステップS14の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【0279】
図17を参照して、図13のステップS13の後、受信手段42は、ビームを放射してキャリアセンスを行い、受信信号強度RSSIの時系列データRSSI(t)を取得する(ステップS14-1)。
【0280】
処理手段45は、受信手段42から時系列データRSSI(t)を受けると、時系列データRSSI(t)に基づいて、上述した方法によって、ビジー状態Bとアイドル状態Iとの時系列データB/I(t)を生成する(ステップS14-2)。そして、処理手段45は、時系列データB/I(t)を予測手段46へ出力する。
【0281】
予測手段46の生成ユニット461は、上述した方法によって、時系列データB/I(t)に基づいて予測処理用データData_Pと目標データData_Tとを生成する(ステップS14-3)。
【0282】
そして、生成ユニット461は、予測処理用データData_Pを確率的ニューラルネットワーク(PNN)462へ出力し、目標データData_Tを予測ユニット463へ出力する。
【0283】
その後、確率的ニューラルネットワーク(PNN)462は、予測処理用データData_Pを入力として確率的ニューラルネットワーク(PNN)による機械学習を行い、G個のクラスに対応するG個の放射基底関数データg~gを生成する(ステップS14-4)。そして、確率的ニューラルネットワーク(PNN)462は、G個の放射基底関数データg~gを予測ユニット463へ出力する。
【0284】
予測ユニット463は、G個の放射基底関数データg~gから最大の放射基底関数データgmaxを検出する(ステップS14-5)。
【0285】
そうすると、予測ユニット463は、最大の放射基底関数データgmaxが得られるクラスに対応する目標データData_Tの行を将来の時点t_nowにおける予測パターンとすることによって時系列データB/I(t)_Fを予測する(ステップS14-6)。
【0286】
その後、基地局4の動作は、図13のステップS15へ移行する。
【0287】
なお、複数の干渉源がある場合、複数の干渉源の各々について、図17に示すフローチャートに従って時系列データB/I(t)_Fが予測される。
【0288】
なお、MUSICスペクトラムPMU(θ)を用いて干渉の有無の推定方法1を実行する場合、図13に示すフローチャート(図14から図17に示すフローチャートを含む)において、仰角θのみの関数であるMUSICスペクトラムPMU(θ)(式(21)参照)を用いればよい。
【0289】
MUSICスペクトラムPMU(θ)を用いた場合、干渉の到来方向は、仰角θによって表わされることになるが、干渉源の位置も推定されるので、その推定された干渉源の位置と基地局4の位置とに基づいて方位角φを算出すれば、仰角θおよび方位角φの関数であるMUSICスペクトラムPMU(θ,φ)を用いたときの干渉の到来方向と実質的に同じ干渉の到来方向を推定できる。
【0290】
その結果、図17のステップS14-1においては、MUSICスペクトラムPMU(θ)を用いた場合でも、MUSICスペクトラムPMU(θ,φ)を用いたときの時系列データRSSI(t)と実質的に同じ品質の受信信号強度RSSIの時系列データを取得できる。
【0291】
基地局4の動作は、ソフトウェアによって実現されてもよい。この場合、基地局4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を備える。そして、ROMは、図13に示すフローチャート(図14から図17に示すフローチャートを含む)の各ステップからなるプログラムProg_Aを記憶する。
【0292】
CPUは、ROMからプログラムProg_Aを読み出し、その読み出したプログラムProg_Aを実行して、干渉の有無を推定するとともに、干渉が有ると推定したとき、干渉の到来方向および干渉源の位置を推定する。RAMは、MUSICスペクトラムおよび相関係数等を一時的に記憶する。
【0293】
また、プログラムProg_Aは、CD,DVD等の記録媒体に記録されて流通してもよい。プログラムProg_Aを記録した記録媒体がコンピュータに装着されると、コンピュータは、記録媒体からプログラムProg_Aを読み出して実行して、干渉の有無を推定するとともに、干渉が有ると推定したとき、干渉の到来方向および干渉源の位置を推定する。
【0294】
従って、プログラムProg_Aを記録した記録媒体は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0295】
上記においては、通信システム10は、室内に配置されると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、通信システム10は、屋外に配置されてもよい。
【0296】
また、この発明の実施の形態においては、通信システム10は、RIS3に代えてIRS(Intelligent Reflecting Surface)を備えていてもよい。
【0297】
更に、上記においては、MUSICスペクトラムは、(θ,φ)の関数として表わされること(式(20)参照)、または(θ)の関数として表わされること(式(21)参照)を説明したが、この発明の実施の形態においては、MUSICスペクトラムは、θおよびφのうちのいずれか一方の関数として表わされてもよい。この場合、上述した方法と類似の方法によってMUSICスペクトラムが算出される。
【0298】
この発明の実施の形態においては、アンテナ41(41-1~41-K)、受信手段42、演算手段43、推定手段44、処理手段45、予測手段46および制御手段47は、「干渉推定装置」を構成する。
【0299】
また、この発明の実施の形態においては、キャリアセンスを行う受信手段42は、「キャリアセンス手段」を構成する。
【0300】
更に、この発明の実施の形態においては、時系列データRSSI(t)は、「第1の時系列データ」を構成し、時系列データB/I(t)は、「第2の時系列データ」を構成し、時系列データB/I(t)_Fは、「第3の時系列データ」を構成する。
【0301】
更に、この発明の実施の形態においては、式(20)に示すMUSICスペクトラムPMU(θ,φ)、または式(21)に示すMUSICスペクトラムPMU(θ)は、「第1のMUSICスペクトラム」を構成する。
【0302】
更に、この発明の実施の形態においては、MUSICスペクトラムPnew MU_FP(θ,φ)は、「第2のMUSICスペクトラム」を構成する。
【0303】
更に、この発明の実施の形態においては、N個のMUSICスペクトラムP FP_intf(θ,φ)~PNL FP_intf(θ,φ)は、「N個の第3のMUSICスペクトラム」を構成する。
【0304】
更に、この発明の実施の形態においては、MUSICスペクトラムPnew FP_intf(θ,φ)は、「第4のMUSICスペクトラム」を構成する。
【0305】
更に、この発明の実施の形態においては、推定手段44が図15に示すフローチャートのステップS118~ステップS122を実行することは、「干渉の有無が不明であるときの第2のMUSICスペクトラムと干渉が無いときのN個の第1のMUSICスペクトラムとの関連性の強さに応じて、干渉の有無を推定することに相当する。」
推定手段44は、図15に示すフローチャートのステップS119においてn=Nであると判定するまで、ステップS118の“NO”→ステップS119の“NO”→ステップS120を繰り返し実行し、ステップS119においてn=Nであると判定すると、ステップS121において“干渉有り”と推定し、ステップS119においてn=Nであると判定するまでに、ステップS118において相関係数ρnS,new MU_FPが最小の相関係数ρmin MU_FP以上でない(即ち、相関係数ρnS,new MU_FPが最小の相関係数ρmin MU_FPよりも小さい)と、少なくとも1回、判定されたとき、テップS122において“干渉無し”と推定するので、干渉の有無が不明であるときの第2のMUSICスペクトラムと干渉が無いときのN個の第1のMUSICスペクトラムとの関連性が強いとき(即ち、相関係数ρnS,new MU_FPが最小の相関係数ρmin MU_FP以上であるとき)、“干渉無し”と推定し、干渉の有無が不明であるときの第2のMUSICスペクトラムと干渉が無いときのN個の第1のMUSICスペクトラムとの関連性が弱いとき(即ち、相関係数ρnS,new MU_FPが最小の相関係数ρmin MU_FPよりも小さいとき)、“干渉有り”と推定するからである。
【0306】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0307】
この発明は、干渉推定装置およびコンピュータに実行させるためのプログラムに適用される。
【符号の説明】
【0308】
1,2 端末装置、3 再構成可能インテリジェントサーフェス(RIS)、4 基地局、10 通信システム、41 アンテナ、42 受信手段、43 演算手段、44 推定手段、45 処理手段、46 予測手段、47 制御手段、48 送信手段、20 部屋、21~24 壁面、461 生成ユニット、462 確率的ニューラルネットワーク(PNN)、463 予測ユニット。
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