(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013690
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】荷取支援装置、搬送装置、荷取支援方法及び荷取支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240125BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240125BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20240125BHJP
G06V 10/82 20220101ALI20240125BHJP
【FI】
B66F9/24 L
G06T7/00 350B
G06T7/70 Z
G06V10/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115976
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美徳
【テーマコード(参考)】
3F333
5L096
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333FA27
3F333FD14
3F333FE05
3F333FE09
5L096AA02
5L096AA06
5L096AA09
5L096BA04
5L096CA02
5L096FA59
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA51
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】学習モデルを用いて好適に荷取作業を支援する。
【解決手段】フォークリフト1は、パレット30の3D-CADデータ261を予め記憶する記憶部26と、制御部27とを備えている。制御部27は、3D-CADデータ261上でパレット30の位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させて生成した複数の合成画像CDに、当該合成画像CDにおけるパレット30の側面31のエッジ情報を付与し、複数の教師データTDを生成し、複数の教師データTDを機械学習させて学習モデル261を作成し、撮影部24によりパレット30の撮像画像Mを取得し、撮像画像Mを前記学習モデルに入力して撮影部24に対するパレット30の相対姿勢を求める。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットの三次元形状データを予め記憶する記憶手段と、
前記三次元形状データ上で前記パレットの位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させて生成した複数の合成画像に、当該合成画像における前記パレットの側面のエッジ情報を付与し、複数の教師データを生成するアノテーション手段と、
前記複数の教師データを機械学習させて学習モデルを作成する学習手段と、
パレットの撮像画像を取得する撮像手段と、
前記撮像画像を前記学習モデルに入力し、前記撮像手段に対する前記パレットの相対姿勢を求める演算手段と、
を備える荷取支援装置。
【請求項2】
前記アノテーション手段は、前記三次元形状データ上で位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させた前記パレットの画像に、荷取作業が行われる作業現場の写真を背景画像として組み合わせて、前記複数の合成画像を生成する、
請求項1に記載の荷取支援装置。
【請求項3】
前記アノテーション手段は、前記三次元形状データ上で、前記パレットの位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させるとともに、前記パレットの表面の画像特性を変化させて、前記複数の合成画像を生成する、
請求項1に記載の荷取支援装置。
【請求項4】
前記アノテーション手段は、前記エッジ情報として、前記パレットの画像のうち前記側面の上側及び下側の縁部を抽出し、
前記演算手段は、前記側面の前記縁部に基づいて、前記撮像手段と前記側面とが正対しているか否かを判定する、
請求項1に記載の荷取支援装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記パレットの画像のうち前記撮像手段の左右方向に対応する方向に沿った直線と、前記縁部とのなす角度が所定の閾値よりも小さい場合に、前記撮像手段と前記側面とが正対していると判定する、
請求項4に記載の荷取支援装置。
【請求項6】
前記撮像手段と前記側面とが正対していないと前記演算手段が判定した場合に当該判定結果を運転者に報知する報知手段を備える、
請求項4に記載の荷取支援装置。
【請求項7】
前記パレットの撮像画像における深度情報を取得する取得手段を備え、
前記演算手段は、前記深度情報に基づいて、前記パレットの相対姿勢を求める、
請求項1に記載の荷取支援装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の荷取支援装置と、
前記パレットを保持する保持部と、を備える、
搬送装置。
【請求項9】
パレットの三次元形状データを予め記憶する記憶手段を備える荷取支援装置の制御手段が、
前記三次元形状データ上で前記パレットの位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させて生成した複数の合成画像に、当該合成画像における前記パレットの側面のエッジ情報を付与し、複数の教師データを生成するアノテーション工程と、
前記複数の教師データを機械学習させて学習モデルを作成する学習工程と、
撮像手段によりパレットの撮像画像を取得する撮像工程と、
前記撮像画像を前記学習モデルに入力し、前記撮像手段に対する前記パレットの相対姿勢を求める演算工程と、
を実行する、
荷取支援方法。
【請求項10】
コンピュータを、
三次元形状データ上でパレットの位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させて生成した複数の合成画像に、当該合成画像における前記パレットの側面のエッジ情報を付与し、複数の教師データを生成するアノテーション手段、
前記複数の教師データを機械学習させて学習モデルを作成する学習手段、
パレットの撮像画像を取得する撮像手段、
前記撮像画像を前記学習モデルに入力し、前記撮像手段に対する前記パレットの相対姿勢を求める演算手段、
として機能させる、
荷取支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷取支援装置、搬送装置、荷取支援方法及び荷取支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフトでの荷役作業では、運転者(作業者)が目視によりパレットの孔部(フォークポケット)を確認し、この孔部へのフォークの挿入可否を判断していた。そのため、特にパレットがフォークリフトから目視しづらい位置に置かれている場合などには、予測を頼りにフォークを挿入しなければならなかった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載の技術では、パレットの画像を教師データとして機械学習させた学習モデルを用い、孔部へのフォークの挿入可否を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、十分な数量のパレット写真を準備しなければ、良好な精度が得られる学習モデルを構築することができない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、学習モデルを用いて好適に荷取作業を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る荷取支援装置は、
パレットの三次元形状データを予め記憶する記憶手段と、
前記三次元形状データ上で前記パレットの位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させて生成した複数の合成画像に、当該合成画像における前記パレットの側面のエッジ情報を付与し、複数の教師データを生成するアノテーション手段と、
前記複数の教師データを機械学習させて学習モデルを作成する学習手段と、
パレットの撮像画像を取得する撮像手段と、
前記撮像画像を前記学習モデルに入力し、前記撮像手段に対する前記パレットの相対姿勢を求める演算手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、学習モデルを用いて好適に荷取作業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るフォークリフトの外観を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るフォークリフトの概略の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係るモデル作成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係るモデル作成処理を説明するための図である。
【
図5】実施形態に係る荷取支援処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態に係る荷取支援処理を説明するための図である。
【
図7】実施形態に係る荷取支援処理を説明するための図である。
【
図8】実施形態に係る荷取支援処理を説明するための図である。
【
図9】実施形態の変形例に係るフォークリフト及びモデル作成装置の概略の制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[フォークリフトの構成]
図1は、本実施形態に係るフォークリフト1の外観を示す斜視図である。
本実施形態に係るフォークリフト1は、本発明に係る搬送装置の一例であり、車体11、フォーク12、昇降体(リフト)13、マスト14、車輪15を備える。マスト14は車体11の前方に設けられ、図示しない駆動源によって駆動されて車体11の前後に傾斜する。昇降体13は、図示しない駆動源によって駆動され、マスト14に沿って昇降する。昇降体13には、荷物やパレット30などを保持する保持部としての一対のフォーク12が取り付けられている。
パレット30は、
図4(a)に示すように、フォークリフト1の荷役(荷取)対象となる荷物が載置される台状のものである。パレット30は、短矩形板状に形成され、一対のフォーク12が挿入される2つの孔部(フォークポケット)32を各側面31に有する。各孔部32は、パレット30の四辺に沿って延在し、その前後又は左右の両側に位置する柱状部33により画成される。
【0011】
図2は、フォークリフト1の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、フォークリフト1は、上記構成に加え、駆動部21、操作部22、表示部23、撮影部24、記憶部26、制御部27を備える。本発明に係る荷取支援装置は、少なくとも撮影部24、記憶部26、制御部27を含んで構成される。
【0012】
駆動部21は、フォークリフト1の各種駆動源である走行モータ、操舵モータ及び荷役モータ(いずれも図示省略)を含む。走行モータは、車輪15のうちの駆動輪を駆動する。操舵モータは、車輪15のうちの操舵輪を回転(操舵動作)させる。荷役モータは、昇降体13の昇降とマスト14の傾倒との各動作を行わせる駆動源である。
操作部22は、オペレータ(運転者)が各種操作を行う操作手段である。操作部22は、例えばハンドルやペダル、レバー、各種ボタン等を含み、これらの操作内容に応じた操作信号を制御部27に出力する。
【0013】
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、制御部27から入力される表示信号に基づいて各種情報を表示する。なお、表示部23は、操作部22の一部を兼ねるタッチパネルであってもよいし、音声表示(出力)が可能なスピーカを含んでもよい。
撮影部24は、所定の解像度を有するカメラであり、例えば昇降体13又はマスト14に前方向きに取り付けられ、フォークリフト1の前方を撮影する。
【0014】
記憶部26は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等を備えて構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部27の作業領域としても機能する。
本実施形態の記憶部26には、学習モデル261と、三次元CAD(3D-CAD)データ262と、背景画像263とが予め記憶されている。
学習モデル261は、パレット30の撮像画像からその姿勢を判定するものであり、後述のモデル作成処理(
図3参照)において機械学習により構築されて記憶部26に格納される。学習モデル261は、深層学習されたニューラルネットワークを有するAI(Artificial Intelligence:人工知能)であってもよい。
3D-CADデータ262は、パレット30の三次元形状情報(設計情報)である。種
類の異なる複数のパレット30に関する複数の3D-CADデータ262が記憶部26に記憶されていてもよい。
背景画像263は、後述のモデル作成処理においてパレット30の背景として使用する画像である。本実施形態では、背景画像263として、後述の荷取作業を行う作業現場(またはそれに似た場所)の少なくとも1つの写真データが格納されている。
さらに、本実施形態の記憶部26には、後述のモデル作成処理を実行するためのモデル作成プログラム264と、後述の荷取支援処理(
図5参照)を実行するための荷取支援プログラム265とが予め記憶されている。
【0015】
制御部27は、例えばCPU(Central Processing Unit)等を備えて構成され、フォークリフト1各部の動作を制御する。具体的に、制御部27は、操作部22の操作内容に基づいて駆動部21を動作させたり、記憶部26に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0016】
[モデル作成処理]
続いて、学習モデル261を作成するモデル作成処理について説明する。
図3は、モデル作成処理の手順を示すフローチャートであり、
図4は、モデル作成処理を説明するための図であって、3D-CADデータ262、背景画像263及び合成画像CDの一例を示す図である。
モデル作成処理では、後述する荷取作業において、使用するパレット30の姿勢を判定するための学習モデル261を作成する。このモデル作成処理は、制御部27が、オペレータの操作に基づいて記憶部26からモデル作成プログラム264を読み出して展開することで実行される。
【0017】
図3に示すように、モデル作成処理が実行されると、まず制御部27は、オペレータの操作に基づいて、パレット30の3D-CADデータ262とその背景画像263を選択する(ステップS1;
図4(a)、(b))。
本実施形態では、背景画像263として、後述の荷取作業を行う作業現場(またはそれに似た場所)の写真が選択される。なお、背景画像263は複数選択されてもよいし、選択されなくても(背景無しでも)よい。
【0018】
次に、制御部27は、ステップS1で選択された3D-CADデータ262と背景画像263を組み合わせて、複数の合成画像CDを生成する(ステップS2;
図4(c))。
具体的に、制御部27は、3D-CADデータ262上でパレット30の位置(背景に対する位置)及び姿勢の少なくとも一方を変化させつつ、背景画像263と組み合わせて、複数の合成画像CDを生成する。背景画像263の向きや画像特性(明るさ等)を変化させてもよい。
このとき、バーチャル空間上で、パレット30の色やテクスチャ、パレット30への照明(パレット30の陰影)などの画像特性についてパラメータを振って、合成画像CDをさらに増やしてもよい。テクスチャとは、例えばパレット30の質感、印字、汚れ等の表面性状である。
【0019】
次に、制御部27は、ステップS2で生成した複数の合成画像CDに、当該合成画像CDにおけるパレット30の側面31のエッジ情報を付与し、学習モデル261を作成するための学習用データセット(複数の教師データTD)を生成する(ステップS3)。
ここでは、制御部27は、各合成画像CD(二次元画像)におけるパレット30の1つの側面31を含む矩形領域Ga(
図6(b)参照)と、側面31の上側及び下側のエッジLa、Lbに関する情報(エッジ情報)とを、当該合成画像CDに付与する(アノテーション)。エッジLaは、側面31のうち上端の直線状の縁部であり、エッジLbは下端の直線状の縁部である。矩形領域GaとエッジLa、Lbの位置は、ステップS2の結果から求められる。具体的には、ステップS2で合成画像CDを生成するときにバーチャル3D空間上の位置姿勢パラメータを指定するが、この際にその位置姿勢パラメータから画像上のどの位置にパレット30の側面31が位置するかが求められる。
なお、エッジ情報は、エッジLa、Lbの少なくとも一方の情報を含めばよい。また、合成画像CDに複数の側面31が含まれる場合には、例えば、最もフォークリフト1の正対位置に近い(すなわち最も面積の大きい)状態の側面31が抽出される(少なくとも矩形領域Gaに含まれる)こととすればよい。
【0020】
次に、制御部27は、ステップS3で生成した複数の教師データTDを、例えばニューラルネットワークを有するAIに機械学習させて、学習モデル261を作成する(ステップS4)。
こうして、学習モデル261が構築され、記憶部26に格納される。
【0021】
[荷取支援処理]
続いて、フォークリフト1がパレット30にフォーク12を挿入する際の荷取動作を支援する荷取支援処理について説明する。
この荷取動作では、パレット30の画像に基づいてパレット30の姿勢が求められ、その結果に基づいて、パレット30の孔部32へのフォーク12の挿入が好適にアシストされる。
図5は、荷取支援処理の手順を示すフローチャートであり、
図6~
図8は、荷取支援処理を説明するための図である。
荷取支援処理は、学習モデル261を利用して、パレット30の画像からパレット30の相対姿勢を予測(判定)する処理である。この荷取支援処理は、制御部27が、オペレータの操作に基づいて記憶部26から荷取支援プログラム265を読み出して展開することで実行される。ここでは、フォークリフト1がパレット30の前方まで走行してきた状態であるものとする。
【0022】
図5に示すように、荷取支援処理が実行されると、まず制御部27は、撮影部24によりパレット30の画像を取得する(ステップT1)。
このステップでは、制御部27は、オペレータの操作に基づいて、撮影部24を動作させて前方のパレット30の画像を取得し、記憶部26に記憶させる。これにより、例えば
図6(a)に示すようなパレット30の撮像画像Mが得られる。
なお、撮影タイミングはオペレータの操作に基づくものでなくともよく、例えば所定の撮影タイミングで定期的にフォークリフト1前方を撮影し、その画像からパレット30を検出することとしてもよい。
【0023】
次に、制御部27は、ステップT1で取得したパレット30の撮像画像Mを学習モデル261に入力し、撮影部24に対するパレット30の相対姿勢を求める(ステップT2)。
具体的に、制御部27は、例えば
図6(b)に示すように、撮像画像Mのうち、パレット30の側面31を全て含む矩形領域Gaと、当該側面31の上下のエッジLa、Lbとを抽出する。なお、矩形領域Gaは、撮像画像Mの一部であって、パレット30の側面31の一面全てを含む矩形範囲であればよく、例えばパレット30全体を含む矩形範囲であってもよい。
【0024】
次に、制御部27は、ステップT2で抽出された矩形領域Ga及びエッジLa、Lbに基づいて、撮影部24(すなわちフォークリフト1)とパレット30(の側面31)とが正対しているか否かを判定する(ステップT3)。
具体的に、制御部27は、矩形領域Gaの横線XとエッジLaとの相対角度θaと、矩形領域Gaの横線XとエッジLbとの相対角度θbとのうち、少なくとも一方を算出する
。矩形領域Gaの横線Xは、パレット30の画像のうち、撮影部24(フォークリフト1)の左右方向に対応する方向に沿った直線である。相対角度θa、θbは、
図6(b)、(c)に示すように、撮影部24とパレット30とが正対するに連れて小さくなる(
図6(c)では相対角度θa、θbの図示を省略)。そこで、制御部27は、相対角度θa、θbが所定の閾値よりも小さい場合に、撮影部24とパレット30が正対していると判定する。この判定条件は、相対角度θa、θbのいずれもが閾値よりも小さい場合としてもよいし、相対角度θa、θbの少なくともいずれか一方が閾値よりも小さい場合としてもよい。
また、相対角度θa、θbに基づく手法に代えて、上下のエッジLa、Lbによって画成される側面31部分の左右対称の度合いに基づいて、パレット30との正対判定を行ってもよい。つまり、側面31部分の左右対称の度合いが所定以上の場合に、撮影部24とパレット30が正対していると判定してもよい。より詳しくは、例えば、矩形領域GaとエッジLa、Lbとの交点のY座標(画像の縦方向座標)が、左右で一致、もしくは左右の差が閾値以下の場合に、正対していると判定してもよい。あるいは、矩形領域GaのX方向(画像の横方向)の中心線から左右2つのエッジEまでのX方向の距離が互いに等しい、もしくは当該距離の差が閾値以下の場合に、正対していると判定してもよい。
【0025】
なお、撮影部24による画像情報と併せて、その深度情報(奥行き情報)を取得した場合、さらに高精度にパレット30の相対姿勢を算出できる。深度情報を得る構成は特に限定されず、例えば、撮影部24とは別に(又は一体的に)TOF(Time Of Flight)センサ等を設けてもよいし、撮影部24として三次元の点群データを含む画像が得られるRGB-Dカメラ(デプスカメラ)等を用いてもよい。もしくは、パレット30のサイズが既知であるため、撮影部24の内部パラメータから、画像上のスケール(とアスペクト比)に基づいて距離を求めてもよい。
具体的に、撮像画像の深度情報を有する場合には、例えば
図7(a)に示すように、上下のエッジLa、Lbの間にある側面31の領域(面が無い孔部32を除く)から、少なくとも2つの点Pを任意に抽出し、各点Pの深度を含む三次元座標を取得する。そして、この少なくとも2つの点Pの三次元座標から、パレット30の相対姿勢として、パレット30の上面に垂直なヨー軸Y回りの回転量を算出できる。この場合、3つ以上の点Pを抽出して側面31の向きを求めてもよい。
あるいは、
図7(b)に示すように、上下のエッジLa、Lbに間にある側面31の領域(面が無い孔部32を除く)から、部分領域ARを少なくとも1箇所抽出し、この部分領域ARの法線方向NDを求める。そして、法線方向NDから、パレット30の相対姿勢として、パレット30の上面に垂直なヨー軸Y回りの回転量を算出してもよい。
あるいは、
図8に示すように、柱状部33と孔部32との境界である上下に沿ったエッジEを抽出する。そして、側面31における左右方向のエッジLa、Lbと、上下方向のエッジEとの交点の三次元座標から、パレット30の相対姿勢を求めてもよい。
【0026】
ステップT3において、撮影部24とパレット30とが正対していると判定した場合(ステップT3;Yes)、制御部27は、後述のステップT5へ処理を移行する。
なお、この場合には、撮影部24(すなわちフォークリフト1)がパレット30に正対していることをオペレータに報知(例えば表示部23に「OK」と表示する等)してもよい。
【0027】
一方、ステップT3において、撮影部24とパレット30とが正対していないと判定した場合(ステップT3;No)、制御部27は、撮影部24(すなわちフォークリフト1)がパレット30に正対していないことをオペレータに報知する(ステップT4)。
この場合の報知態様は特に限定されず、表示部23に警告表示(例えば「パレットに正対していません!」等)を表示させてもよいし、図示しないスピーカに警告音を出力させたりしてもよい。
さらにこの場合、パレット30に正対していない状態での荷取作業を防ぐため、フォークリフト1の前進動作を停止させる(規制する)等してもよい。
【0028】
次に、制御部27は、荷取支援処理を終了させるか否かを判定し(ステップT5)、終了させないと判定した場合には(ステップT5;No)、上述のステップT1へ処理を移行する。
そして、例えば荷取作業の終了等により、荷取支援処理を終了させると判定した場合には(ステップT5;Yes)、制御部27は、荷取支援処理を終了させる。
【0029】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、3D-CADデータ262上でパレット30の位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させて生成した複数の合成画像CDに、当該合成画像CDにおけるパレット30の側面31のエッジ情報を付与することで複数の教師データTDが生成され、この複数の教師データTDを機械学習させることで学習モデル261が作成される。そして、学習モデル261にパレット30の撮像画像Mが入力されて、撮影部24(フォークリフト1)に対するパレット30の相対姿勢が求められる。
したがって、学習モデルの作成にあたり相当数のパレット写真を準備していた従来と異なり、3D-CADデータ262さえあれば容易に複数の教師データTDを生成することができ、簡便に学習モデル261を作成することができる。したがって、学習モデルを用いて好適に荷取作業を支援することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、合成画像CDの生成では、3D-CADデータ262上で位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させたパレット30の画像に、荷取作業が行われる作業現場の写真が、背景画像263として組み合わされる。
これにより、学習モデル261による撮像画像Mに対する予測精度(判定精度)を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、3D-CADデータ262上で、パレット30の位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させるとともに、パレット30の表面の画像特性を変化させて、複数の合成画像CDが生成される。
これにより、さらに容易に多数の教師データTDを生成することができ、さらに簡便に学習モデル261を作成することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、フォークリフト1とパレット30の側面31とが正対していないと判定された場合に、当該判定結果が運転者に報知される。
これにより、運転者に状況を速やかに報知できる。
【0033】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、荷取支援処理としてフォークリフト1とパレット30との正対判定を行うこととしたが、これらが正対していると判定された場合に、孔部32へのフォーク12の挿入可否判定を行うこととしてもよい。
具体的には、例えば、現状のフォーク12とパレット30との相対的な位置・姿勢が表示部23に図示される。そして、フォーク12の挿入予測線(延長線)がパレット30を適正に貫通しているか否かにより挿入可否が示される。すなわち、孔部32へのフォーク12の「挿入可否」とは、フォークリフト1を前進させることで、フォーク12がパレット30の孔部32内に挿入されるか否かをいう。この「挿入可否」の判定は、フォーク12の向きと孔部32の向き(つまりパレット30の姿勢)とが所定範囲内にあるか否かの判定を含んでもよいし、単にフォーク12の先端が孔部32(の開口部)内に入るかだけの判定でもよい。フォーク12の挿入予測線は、フォーク12を駆動する荷役モータのエンコーダ(又は所定のセンサ)からフォーク12の高さ及びチルト角度(位置及び姿勢)を取得し、フォーク12の延在方向を計算すればよい。
なお、算出結果の出力はここに例示したものに限定されない。例えば、フォーク12がパレット30の孔部32に好適に挿入されない(フォーク12の挿入予測線が孔部32から外れる)算出結果であった場合に、フォーク12の挿入予測線を孔部32内に収めるためのフォークリフト1の向きやフォーク12の高さ及び角度の各調整量を算出し、これを表示部23に表示して調整を促してもよい。さらに、この調整の少なくとも一部が自動で行われるように駆動部21を制御してもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、モデル作成処理において、パレット30の合成画像CDに対し、ラベルとして側面31のエッジ情報が付与されることとしたが、加えてパレット30の種類の情報を付与してもよい。これにより、荷取支援処理において撮像画像Mのパレット30の種類も特定することができるため、パレット30の種類と荷物との対応が判明していれば荷物の特定も可能になる。
【0035】
また、上記実施形態では、学習モデル261の作成にパレット30の3D-CADデータ262を使用することとした。しかし、学習モデル261の作成に必要なデータは、孔部32の位置を含む外形形状が分かる三次元の形状データであればよく、必ずしも3D-CADのデータでなくともよい。
【0036】
また、上記実施形態では、学習モデル261がフォークリフト1により作成されることとしたが、
図9に示すように、学習モデル261の作成はフォークリフト1とは別体のモデル作成装置4によって行われてもよい。この場合、モデル作成装置4は、例えば操作部42、表示部43、記憶部46及び制御部47を備えるコンピュータであり、上記モデル作成処理を実行して学習モデル261を作成する。作成された学習モデル261は通信手段や記録媒体等を介してフォークリフト1の記憶部26に格納される。
また、モデル作成処理を実行するモデル作成プログラム264と、荷取支援処理を実行する荷取支援プログラム265とは、これらの処理の実行態様に応じて、各処理を実行する構成要素に個別に格納されていてもよいし、一体的に構成されていてもよいし、互いに連携するように構成されていてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、荷取支援処理の全てがフォークリフト1上で実行されることとしたが、荷取支援処理の少なくとも一部が外部設備(例えば荷役作業場の管理室)で実行されることとしてもよい。例えば、外部設備とフォークリフト1に通信手段を設け、撮影した画像をフォークリフト1から外部設備の演算装置に送信して、この演算装置で算出した結果をフォークリフト1に送信することとしてもよい。
【0038】
また、本発明に係る搬送装置は、荷役台(パレット)を保持して搬送するものであればフォークリフトに限定されず、例えば荷を無人(自動)で搬送する無人搬送車(例えばAGV:Automated Guided Vehicle)などであってもよい。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 フォークリフト(搬送装置)
12 フォーク(保持部)
23 表示部
24 撮影部(撮像手段)
26 記憶部(記憶手段)
27 制御部(アノテーション手段、学習手段、演算手段、報知手段、取得手段)
30 パレット
31 側面
32 孔部
33 柱状部
261 学習モデル
262 3D-CADデータ(三次元形状データ)
263 背景画像
264 モデル作成プログラム
265 荷取支援プログラム
AR 部分領域
CD 合成画像
E エッジ
Ga 矩形領域
La エッジ(縁部)
Lb エッジ(縁部)
M 撮像画像
ND 法線方向
P 点
TD 教師データ
X 横線(直線)
Y ヨー軸
θa 相対角度
θb 相対角度