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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136903
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】導電性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20240927BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240927BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20240927BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L65/00
B32B7/025
H01B1/12 F
C08G61/12
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048207
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】西澤 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】伏木 將人
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J032
【Fターム(参考)】
4F100AG00B
4F100AK01A
4F100AK42B
4F100AK80A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA06A
4F100DE01A
4F100JB13A
4F100JG01A
4F100JG03
4F100JG04
4F100JG04A
4F100JJ03
4F100JN30
4F100YY00A
4J002AA022
4J002BB002
4J002BG022
4J002CE001
4J002CK022
4J002EF106
4J002EJ016
4J002FD076
4J002GH01
4J002GH02
4J032BA04
4J032BB01
4J032BC03
4J032BD02
4J032CA04
4J032CB01
4J032CC01
4J032CG01
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れた導電層を形成できる導電性組成物を提供する。
【解決手段】ポリチオフェン系導電性高分子および酸化防止剤を含み、前記ポリチオフェン系導電性高分子の、動的光散乱法によって測定した累積粒径がD50=200~800nmかつD90=250~1000nmである、導電性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリチオフェン系導電性高分子および酸化防止剤を含み、
前記ポリチオフェン系導電性高分子の、動的光散乱法によって測定した累積粒径がD50=200~800nmかつD90=250~1000nmである、
導電性組成物。
【請求項2】
さらにバインダーを含む、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
バインダーが、熱硬化性樹脂である、請求項2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
ポリチオフェン系導電性高分子の固形分100重量部に対し、酸化防止剤の配合量が0.1~500重量部である、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項5】
ポリチオフェン系導電性高分子の配合量が、固形分全体に対し0.1~20重量%である、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項6】
基材上に膜厚100~350nmで製膜したときの表面抵抗率が1×10~1×1010である、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項7】
基材、および前記基材上に形成された、ポリチオフェン系導電性高分子を含む導電層を含む導電積層体であって、
膜厚50~4000nmで製膜されたときに、導電層の表面抵抗率が1×10~1×1010であり、
導電層が下記(A)~(C)のいずれか1以上を充足する、導電積層体。
(A)(温度85℃、かつ相対湿度85%の条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦500
(B)(温度105℃の条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦500
(C)(波長405nm、かつ照度250W/mの光線を照射する条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦1000
【請求項8】
帯電防止フィルムである、請求項7に記載の導電積層体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物に関する。詳しくは、耐久性に優れた導電層を形成可能な導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等で使用される光学フィルムや光学フィルタには、光学特性に加えて、帯電防止性が要求される場合がある。例えば、液晶表示装置では、液晶セルの上に偏光板を配置して、光源から照射され液晶層を透過した光のうち特定方向の偏光成分の光のみを表示光として射出している。ここで、液晶セル内での電解の乱れにより液晶配向が不安定化すると、表示画像の乱れにつながる。電解の乱れを防ぐために、偏光板には、偏光特性に加えて帯電防止性が求められる。また、電子製品を静電気やほこりから保護するために、帯電防止フィルムが用いられる。これらの帯電防止性を有するフィルムとして、基材上に導電性高分子を含む塗膜が形成された導電積層体が用いられている。
【0003】
近年の自動車の電動化にともない、帯電防止性フィルムが車載用の液晶表示装置や電子機器の部材として適用される等、その用途は広がっている。これらには、従来要求されてきたよりも、より過酷な環境下(例えば、高温環境下)における高い耐久性が求められる。酸化防止剤を配合することにより、空気に暴露されても経時的な抵抗変化を抑制できることが知られている(特許文献1)。しかし、車載用途における耐久性ではさらなる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-196022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐久性に優れた導電層を形成できる導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の粒径を有するポリチオフェン系導電性高分子、および酸化防止剤を含む導電性組成物を用いたときに、耐久性に優れた導電層を形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリチオフェン系導電性高分子および酸化防止剤を含み、前記ポリチオフェン系導電性高分子の、動的光散乱法によって測定した累積粒径がD50=200~800nmかつD90=250~1000nmである、導電性組成物に関する。
【0008】
さらにバインダーを含むことが好ましい。
【0009】
バインダーが、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0010】
ポリチオフェン系導電性高分子の固形分100重量部に対し、酸化防止剤の配合量が0.1~500重量部であることが好ましい。
【0011】
ポリチオフェン系導電性高分子の配合量が、固形分全体に対し0.1~20重量%であることが好ましい。
【0012】
基材上に膜厚100~350nmで製膜したときの表面抵抗率が1×10~1×1010であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、基材、および前記基材上に形成された、ポリチオフェン系導電性高分子を含む導電層を含む導電積層体であって、膜厚50~4000nmで製膜されたときに、導電層の表面抵抗率が1×10~1×1010であり、導電層が下記(A)~(C)のいずれか1以上を充足する、導電積層体に関する。
(A)(温度85℃、かつ相対湿度85%の条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦500
(B)(温度105℃の条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦500
(C)(波長 405nm、かつ照度250W/mの光線を照射する条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦1000
【0014】
前記導電積層体は、帯電防止フィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電性組成物は、耐久性に優れた導電層を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<導電性組成物>>
本発明の導電性組成物は、ポリチオフェン系導電性高分子および酸化防止剤を含み、前記ポリチオフェン系導電性高分子の、動的光散乱法によって測定した累積粒径がD50=200~800nmかつD90=250~1000nmであることを特徴とする。
【0017】
<ポリチオフェン系導電性高分子>
ポリチオフェン系導電性高分子は、分子内に、導電性に優れるチオフェン環を少なくとも1つ含む導電性高分子である。ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリ(3,4-二置換チオフェン)が好ましく、ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。ポリ(3,4-ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4-アルキレンジオキシチオフェン)としては、以下の式(I):
【0018】
【化1】
【0019】
で示される反復構造単位からなる陽イオン形態のポリチオフェンが好ましい。ここで、R及びRは相互に独立して水素原子又はC1-4のアルキル基を表すか、又は、R及びRが結合している場合にはC1-4のアルキレン基を表す。C1-4のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。また、R及びRが結合している場合、C1-4のアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1-メチル-1,2-エチレン基、1-エチル-1,2-エチレン基、1-メチル-1,3-プロピレン基、2-メチル-1,3-プロピレン基等が挙げられる。これらの中では、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基が好ましく、1,2-エチレン基がより好ましい。C1-4のアルキル基、及び、C1-4のアルキレン基は、その水素の一部が置換されていてもよい。C1-4のアルキレン基を有するポリチオフェンとしては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
【0020】
ポリチオフェン系導電性高分子は、ドーパントとの複合体であってもよい。ドーパントとしては、導電性、化学的安定性、および、低温かつ短時間で導電層を形成でき生産性に優れる点で、ポリ陰イオンを用いることが好ましい。ポリ陰イオンは、ポリチオフェン環とイオン対をなすことにより複合体を形成し、ポリチオフェン環を水中に安定に分散させることができる。ポリ陰イオンとしては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等)等が挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類、スルホン酸ポリマー類はまた、ビニルカルボン酸類及びビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えば、アクリレート類、スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。これらの中では、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0021】
ポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が1000~2000000であることが好ましく、2000~500000であることがより好ましい。分子量がこの範囲内であるときには、ポリチオフェン系導電性高分子の水に対する分散安定性を向上できる傾向がある。なお、重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。
【0022】
ポリチオフェン系導電性高分子は、動的光散乱法によって測定した累積粒径がD50=200~800nmかつD90=250~1000nmである。累積粒径のD50は、累積体積50%における粒径であり、D90は、累積体積90%における粒径である。D50が200nm以上、かつD90が250nm以上であるときには、導電性組成物により形成される導電層が、優れた耐久性を示す傾向がある。D50が800nm以下、かつD90が1000nm以下であるときには、ポリチオフェン系導電性高分子の沈殿を防止でき、また、導電性組成物により形成される導電層に均質性をもたせることができる。D50は200~800nmであるが、250~750nmが好ましく、300~700nmがより好ましい。D90は250~1000nmであるが、300~950nmが好ましく、350~900nmがより好ましい。また、D90とD50の比率(D90/D50)は1.43以下であることが好ましく、1.42以下であることがより好ましい。上記範囲内であると、優れた耐久性を示す傾向がある。D90/D50の下限は特に限定されないが、一般的には1以上である。
【0023】
ポリチオフェン系導電性高分子の導電率は、0.0001~2000S/cmが好ましく、0.001~1000S/cmがより好ましく、0.001~500S/cmがさらに好ましい。上記範囲内では、導電性組成物により形成される導電層が、優れた導電性を示す傾向がある。
【0024】
導電性組成物中の、ポリチオフェン系導電性高分子の含有量は、全固形分中0.1~20重量%が好ましく、1~20重量%がより好ましく、5~20重量%がさらに好ましい。上記範囲内では十分な導電性を発揮でき、液晶表示装置等で使用可能な光学特性を有する。
【0025】
<酸化防止剤>
導電性組成物に酸化防止剤を配合することにより、導電層の耐熱性、耐湿熱性、紫外線に対する耐性を向上させることができる。酸化防止剤は、水溶性酸化防止剤、脂溶性酸化防止剤のいずれであってもよいが、導電性組成物および導電層において均一に分散させるために、水溶性酸化防止剤が好ましい。水溶性酸化防止剤としては、還元性の水溶性酸化防止剤、非還元性の水溶性酸化防止剤が挙げられる。
【0026】
還元性の水溶性酸化防止剤としては、例えば、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸カリウム、D(-)-イソアスコルビン酸(エリソルビン酸)、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム等の2個の水酸基で置換されたラクトン環を有する化合物;マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロース、アラビノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類又は二糖類(但し、スクロースを除く);カテキン、ルチン、ミリセチン、クエルセチン、ケンフェロール、サンメリン(登録商標)Y-AF等のフラボノイド;タンニン酸、没食子酸、没食子酸プロピル、クルクミン、ロスマリン酸、クロロゲン酸、ヒドロキノン、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸等のフェノール性水酸基を2個以上有する化合物;システイン、グルタチオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等のチオール基を有する化合物等が挙げられる。
【0027】
非還元性の水溶性酸化防止剤としては、例えば、フェニルイミダゾールスルホン酸、フェニルトリアゾールスルホン酸、2-ヒドロキシピリミジン、サリチル酸フェニル、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸ナトリウム等の、酸化劣化の原因となる紫外線を吸収する化合物が挙げられる。
【0028】
以上で挙げた水溶性酸化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。以上で挙げた水溶性酸化防止剤の中でも、還元性の水溶性酸化防止剤が好ましく、2個の水酸基で置換されたラクトン環を有する化合物、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物、水酸基を有する糖類化合物、がより好ましく、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、タンニン酸、没食子酸、イソアスコルビン酸、クルクミン、ヒドロキノン、4,6ジ-tert-ブチルレソルシノール、フルクトースがさらに好ましい。
【0029】
導電性組成物中の酸化防止剤の含有量は、固形分全体の0.5~25重量%が好ましく、1~20重量%がより好ましく、2~18重量%がさらに好ましい。また、ポリチオフェン系導電性高分子の固形分100重量部に対し、酸化防止剤の含有量は、10~500重量部が好ましく、20~400重量部がより好ましく、50~300重量部がさらに好ましい。これらの範囲内では、導電層の耐久性を向上しつつ、導電層に優れた導電性、光学特性を付与できる。また、導電層のべとつきを抑制できる。
【0030】
導電性組成物は、ポリチオフェン系導電性高分子、酸化防止剤、および必要に応じて後述の任意成分を、任意の順序で混合することにより得られる。導電性組成物のpHは、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸、ギ酸、安息香酸などの有機酸、NaOH、KOHなどのアルカリ剤の添加により調整できる。
【0031】
導電性組成物は、基材上に膜厚100~350nmで製膜したときの表面抵抗率が1×10~1×1010であることが好ましく、1×10~1×10であることがより好ましく、1×10~1×10であることがさらに好ましい。表面抵抗率は、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0032】
<任意成分>
導電性組成物は、ポリチオフェン系導電性高分子および酸化防止剤に加えて、バインダー、溶媒、レベリング剤、分散剤、架橋剤、触媒等を含有していてもよい。
【0033】
バインダーとしては、特に限定されず、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、シリコーン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド樹脂の他、反応性官能基を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。これらのバインダーはポリチオフェン系導電性高分子との相溶性が高く、また、これらのバインダーを含む導電性組成物からなる導電層は、基材に対する親和性が良好である。さらに、導電性組成物に含まれるバインダーは、水分散性樹脂であってもよいし、基材に塗布後に硬化する硬化性の樹脂であってもよい。バインダーが水分散性樹脂である場合、水分散性樹脂は、樹脂に親水性の官能基が付与された結果分散化されたものであってもよいし、乳化剤により強制的に分散化されたものであってもよい。これらのバインダーは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
アクリル系樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられる。これらのアクリル樹脂は、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、燐酸基などの酸基を有する重合性単量体を構成モノマーとして含む重合体であってもよく、例えば、酸基を有する重合性単量体の単独又は共重合体、酸基を有する重合性単量体と共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体を主たる構成モノマー(例えば、50モル%以上)として含んでいれば共重合性単量体と重合していてもよく、この場合、(メタ)アクリル系単量体及び共重合性単量体のうち、少なくとも一方が酸基を有していればよい。(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、酸基を有する(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド等]又はその共重合体、酸基を有していてもよい(メタ)アクリル系単量体と、酸基を有する他の重合性単量体[他の重合性カルボン酸、重合性多価カルボン酸又は無水物、ビニル芳香族スルホン酸等]及び/又は共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル単量体等]との共重合体、酸基を有する他の重合体単量体と(メタ)アクリル系共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等]との共重合体、ロジン変性ウレタンアクリレート、特殊変性アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートエマルジョン等が挙げられる。
【0036】
これらの(メタ)アクリル系樹脂の中では、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル重合体(アクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体等)、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル-スチレン共重合体(アクリル酸-メタクリル酸メチル-スチレン共重合体等)等が好ましい。
【0037】
ポリウレタン系樹脂としては、イソシアネート基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物を共重合させて得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エステル・エーテル系ポリウレタン、エーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン、アクリル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0038】
ポリエステル系樹脂としては、2以上のカルボキシル基を分子内に有する化合物と、2以上のヒドロキシル基を有する化合物とを重縮合して得られた高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
【0039】
ポリオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0040】
スチレン系樹脂は、スチレンを主成分とする樹脂であれば特に限定されず、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等が挙げられる。
【0041】
酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの重合により得られる樹脂であれば特に限定されず、例えばポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0042】
塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルの重合により得られる樹脂であれば特に限定されず、例えばポリ塩化ビニル、エチレン塩化ビニル共重合体、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0043】
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニル等が挙げられる。
【0044】
シリコーン系樹脂としては、例えば、下記式(I)により表されるアルコキシシランのモノマー同士が縮合したアルコキシシランであって、シロキサン結合(Si-O-Si)を1分子内に1個以上有するオリゴマーが挙げられる。
SiR (I)
(式中、Rは、水素、水酸基、炭素数1~4のアルコキシ基、置換基を有しても良い炭素数1~12のアルキル基、置換基を有しても良い炭素数6~20のアリール基である。但し、4つのRのうち少なくとも1個は炭素数1~4のアルコキシ基、又は水酸基である。)
【0045】
式(I)において、Rのアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。Rのアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。Rのアリール基としてはフェニル基、トリル基、ベンジル基が挙げられる。
【0046】
式(I)により表される単量体の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。これらの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0047】
シリコーン系樹脂の構造は特に限定されず、直鎖状であっても良く、分岐状でも良い。また、シリコーン系樹脂は、式(I)により表される1種の単量体の縮合物であっても良いし、2種以上の単量体の縮合物であっても良い。
【0048】
シリコーン系樹脂の具体例として、メチルシリケートオリゴマー、エチルシリケートオリゴマーなどが挙げられる。
【0049】
シリコーン系樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、200~10000が好ましく、400~5000がより好ましい。
【0050】
エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、ベンゼン環を多数有した多官能型であるテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン型又はトリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、ビフェニル型、トリフェノールメタン型、ナフタレン型、オルソノボラック型、ジシクロペンタジエン型、アミノフェノール型、脂環式等のエポキシ樹脂、シリコーンエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0051】
反応性官能基を有する熱可塑性樹脂の反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、燐酸基、グリシジル基等が挙げられる。
【0052】
バインダーは、特に限定されないが、以上に挙げた中でも熱硬化性樹脂が好ましく、シリコーン系樹脂、反応性官能基を有する熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0053】
導電性組成物の全固形分におけるバインダーの固形分の割合は、55~99.9重量%が好ましく、60~99重量%がより好ましく、65~95重量%がさらに好ましい。また、バインダーの固形分の含有量は、ポリチオフェン系導電性高分子の固形分100重量部に対して200~9900重量部が好ましく、300~4900重量部がより好ましい。この範囲内では、導電層に十分な強度と導電性を持たせることができる。
【0054】
溶媒としては、水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン(o-、m-、あるいはp-キシレン)、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン類、アセトニトリル、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン等のアミド化合物;1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のヒドロキシル基含有化合物;イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、オルト酢酸メチル、オルトギ酸エチル等のカルボニル基含有化合物;ジメチルスルホキシド等のスルホ基を有する化合物等が挙げられる。
【0055】
これらの中では水、アルコール類、エチレングリコール類、スルホ基を有する化合物が好ましく、水、エタノール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドがより好ましく、水と、エタノール、エチレングリコール、またはジメチルスルホキシドとの混合溶媒がさらに好ましい。混合溶媒中、水の配合量は20重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、75重量%以上がさらに好ましく、95重量%以上100%未満が特に好ましい。溶媒は、導電性組成物を用いて形成される導電層中には残留しないことが好ましい。
【0056】
溶媒の配合量により導電性組成物の固形分率を調節できる。導電性組成物の固形分率は特に限定されないが、0.1~50重量%が好ましく、0.5~30重量%がより好ましく、1~20重量%がさらに好ましい。固形分率が上記範囲内であると、十分な導電性を発揮でき、導電層の製造時の塗工性や、導電性組成物の保存安定性が良好となる傾向がある。なお、本明細書においては、導電性組成物の全ての成分を完全に溶解させるもの(即ち、「溶媒」)と、不溶成分を分散させるもの(即ち、「分散媒」)とを特に区別せずに、いずれも「溶媒」と記載する。
【0057】
導電性組成物にレベリング剤を添加すると、基材に対する親和性を高めることができ、導電性層を形成する際にハジキやムラが生じることを抑制できる。レベリング剤としては、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、ポリエーテル系レベリング剤、ポリエステル系レベリング剤、アクリル系レベリング剤が挙げられる。
【0058】
シリコーン系レベリング剤としては、ポリシロキサン;アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の反応性基を導入した反応性ポリシロキサン;アルキル基、エステル基、アラルキル基、フェニル基、ポリエーテル基等の非反応性を導入した非反応性ポリシロキサンが挙げられる。
【0059】
フッ素系レベリング剤としては、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロブタンスルホン酸、含フッ素基・親水性基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキル基・リン酸基含有リン酸エステル等が挙げられる。
【0060】
ポリエーテル系レベリング剤としては、セルロースエーテル;プルラン;ポリエチレングリコール:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン等のシリコーン変性ポリエーテル;ポリグリセリン;ポリエーテルポリオール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ラウリルアルコールアルコキシレート等のアルキルエーテル誘導体、アルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。
【0061】
ポリエステル系レベリング剤としては、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0062】
アクリル系レベリング剤としては、シリコーンとアクリルからなるアクリル系共重合物等が挙げられる。
【0063】
レベリング剤の含有量は、特に限定されないが、導電性組成物の全固形分中0.1~20重量部が好ましく、1~10重量部がより好ましい。導電性組成物の含有量が上記範囲内であると、基材塗布性や配合成分の分散安定性、導電層とした際の膜強度が良好となる。
【0064】
架橋剤としては、例えば、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系、イソシアネート系、アクリレート系等の架橋剤が挙げられる。導電性組成物が架橋剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、導電性組成物の固形分中、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0065】
導電性組成物が熱硬化性のバインダー、または架橋剤を含有する場合、触媒を添加してもよい。触媒としては、特に限定されず、例えば、光重合開始剤や熱重合開始剤、酸触媒等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
酸触媒は、無機酸でも有機酸でもよい。無機酸としては、特に限定されないが、ギ酸、酢酸、シュウ酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等が挙げられる。有機酸としては、特に限定されないが、熱硬化性や安定性を考慮すると分子量20000以下であることが好ましく、具体的には、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、しょうのうスルホン酸などの脂肪族スルホン酸、および、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの芳香族スルホン酸が挙げられる。これらの中でも芳香族スルホン酸が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸がより好ましい。酸触媒の含有量は特に限定されないが、導電性組成物の固形分中、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0067】
<<導電積層体>>
本発明の導電積層体は、基材、および前記基材上に形成された、ポリチオフェン系導電性高分子を含む導電層を含む導電積層体であって、膜厚50~4000nmで製膜されたときに、導電層の表面抵抗率が1×10~1×1010であり、下記(A)~(C)のいずれか1以上を充足することを特徴とする。
(A)(温度85℃、かつ相対湿度85%の条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦500
(B)(温度105℃の条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦500
(C)(波長405nm、かつ照度250W/mの光線を照射する条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦1000
【0068】
基材の材質としては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、銅やアルミに代表される金属等が挙げられる。
【0069】
基材の形状は特に限定されないが、フィルム状であることが好ましい。基材の厚みは、10~10000μmであることが好ましく、25~5000μmであることがより好ましい。また、基材の全光線透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0070】
ポリチオフェン系導電性高分子を含む導電層の厚みは50~4000nmが好ましく、75~2000nmがより好ましく、100~1000nmがさらに好ましく、100~350nmがさらにより好ましい。導電層の厚みは、導電層の形成に用いる導電性組成物の固形分と、基材への塗布量から算出される。導電積層体において、導電層の単位面積中のポリチオフェン系導電性高分子の量は、0.1~500mg/mが好ましく、1~200mg/mがより好ましい。
【0071】
導電層は、基材上に膜厚50~4000nmで製膜したときの表面抵抗率が1×10~1×1010であり、1×10~1×10であることが好ましく、1×10~1×10であることがより好ましい。表面抵抗率は、実施例に記載の方法により測定される値である。
【0072】
導電層および基材を含む導電積層体の全光線透過率は、導電層の膜厚が50~4000nmである場合、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上が特に好ましい。全光線透過率の上限は100%である。導電層および基材を含む導電積層体のヘイズ値は、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。ヘイズ値は小さいほど好ましいため、その下限は特に限定されないが、例えば0.01%である。全光線透過率、ヘイズ値は、実施例に記載の方法により評価できる。
【0073】
導電積層体の製造方法は特に限定されないが、例えば、基材上に導電性組成物の塗膜を形成する工程、および前記塗膜を乾燥させる工程を含む方法により製造できる。導電性組成物の組成は特に限定されないが、前述した、ポリチオフェン系導電性高分子および酸化防止剤を含み、前記ポリチオフェン系導電性高分子の動的光散乱法によって測定した累積粒径がD50=200~800nmかつD90=250~1000nmである導電性組成物を用いることが好ましい。
【0074】
塗膜の形成は、導電性組成物を基材上に塗布することにより行われる。塗布方法としては、例えば、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、スリットコート法、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、タンポ印刷法等が挙げられる。
【0075】
基材上に、前記導電性組成物の塗膜を形成する前に、あらかじめ基材の表面に表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理、火炎処理等が挙げられる。また、導電性組成物は、基材表面に直接塗布してもよいし、プライマー層等の別の層をあらかじめ基材上に設けた後で、当該層の上に塗布してもよい。
【0076】
基材上に形成された塗膜を乾燥させることにより、塗膜に含まれる揮発成分が除去され、導電層が得られる。乾燥方法としては加熱乾燥が好ましく、例えば送風オーブン、赤外線オーブン、真空オーブン等を用いた方法が挙げられる。加熱乾燥時の温度条件は、60~200℃が好ましく、80~180℃がより好ましい。加熱処理の処理時間は、特に限定されないが、0.1~20分間が好ましく、1~5分間がより好ましい。
【0077】
本発明の導電積層体は、導電層の耐久性に優れる。耐久性としては、耐湿熱性、耐熱性、耐候性が挙げられる。
【0078】
(A)耐湿熱性
導電層は、下記式で示される耐湿熱試験後の表面抵抗率の変化率が500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましく、100以下であることがさらにより好ましく、50以下であることが特に好ましい。耐湿熱性は、実施例に記載の方法により評価できる。
(温度85℃、かつ相対湿度85%の条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)
【0079】
(B)耐熱性
導電層は、下記式で示される耐熱試験後の表面抵抗率の変化率が500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましく、100以下であることがさらにより好ましく、50以下であることが特に好ましい。耐熱性は、実施例に記載の方法により評価できる。
(温度105℃の条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)
【0080】
(C)耐候性
導電層は、下記式で示される耐候性試験後の表面抵抗率の変化率が1000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。耐候性は、実施例に記載の方法により評価できる。
(波長405nm、かつ照度250W/mの光線を照射する条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)
【0081】
積層体は、導電性に優れるため、帯電防止フィルム、偏光板、表面保護フィルム、透明導電性フィルム、導電性ハードコート、導電性粘着剤などの用途に好適に用いることができ、液晶表示装置等の帯電防止フィルムとして用いることが好ましい。
【実施例0082】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0083】
(1)使用材料
(1-1)ポリチオフェン系導電性高分子
・PEDOT/PSS1(製造例1で作製)
・PEDOT/PSS2(製造例2で作製)
・PEDOT/PSS3(製造例3で作製)
・PEDOT/PSS4(製造例4で作製)
・PEDOT/PSS5(製造例5で作製)
・PEDOT/PSS6(製造例6で作製)
・PEDOT/PSS7(製造例7で作製)
・PEDOT/PSS8(製造例8で作製)
【0084】
(1-2)バインダー
・メチルシリケートオリゴマー(SiO含有量52%)(三菱ケミカル製、MS-51)
・ポリエステル樹脂(東亜合成株式会社製、アロンメルトPES-2405A30)
・アクリル樹脂(日本カーバイド社製、ニカゾールRX-66E)
・ポリウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製、スーパーフレックス130)
・オレフィン樹脂脂(TOYOBO製、ハードレンEW-5303)
・テトラエトキシシラン(東京化成工業株式会社製)
【0085】
(1-3)酸化防止剤
・タンニン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・アスコルビン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・没食子酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・イソアスコルビン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
【0086】
(1-4)レベリング剤
・ポリエーテル系界面活性剤(クラリアント社製、品名:Emulsogen LCN070)
【0087】
(1-5)触媒
・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成株式会社製)
【0088】
(1-6)溶媒
・エチレングリコール(東京化成株式会社製)
・ジメチルスルホキシド(東京化成株式会社製)
・エタノール(東京化成株式会社製)
【0089】
(1-7)基材
PETフィルム(東レ製、ルミラーT-60)
ガラス(CORNING社製、イーグルXG)
【0090】
(2)ポリチオフェン系導電性高分子の製造
(2-1)製造例1
ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PSS:分子量500000)の20質量%水溶液66.89gと硫酸鉄0.05gを500gの純水に加えた。さらに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.42gと過硫酸ナトリウム6.30gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を大気雰囲気下にて25℃で14時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに2時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、PEDOT/PSS1(固形分1.2重量%)を得た。
【0091】
(2-2)製造例2
ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PSS:分子量500000)の20質量%水溶液66.89gと硫酸鉄0.05gを500gの純水に加えた。さらに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.42gと過硫酸ナトリウム17.18gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を大気雰囲気下にて25℃で14時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに2時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、PEDOT/PSS2(固形分1.2重量%)を得た。
【0092】
(2-3)製造例3
ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PSS:分子量500000)の20質量%水溶液66.89gと硫酸鉄0.05gを500gの純水に加えた。さらに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.42gと過硫酸ナトリウム22.9gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を大気雰囲気下にて25℃で14時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに2時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、PEDOT/PSS3(固形分1.2重量%)を得た。
【0093】
(2-4)製造例4
ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PSS:分子量200000)の20質量%水溶液66.89gと硫酸鉄0.05gを500gの純水に加えた。さらに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.42gと過硫酸ナトリウム6.30gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を大気雰囲気下にて35℃で14時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに2時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、PEDOT/PSS4(固形分1.2重量%)を得た。
【0094】
(2-5)製造例5
ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PSS:分子量500000)の20質量%水溶液66.89gと硫酸鉄0.05gを500gの純水に加えた。さらに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.42gと過硫酸ナトリウム17.18gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を大気雰囲気下にて35℃で14時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに2時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、PEDOT/PSS5(固形分1.2重量%)を得た。
【0095】
(2-6)製造例6
ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PSS:分子量500000)の20質量%水溶液66.89gと硫酸鉄0.05gを500gの純水に加えた。さらに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.42gと過硫酸ナトリウム22.9gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を大気雰囲気下にて15℃で14時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに2時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、PEDOT/PSS6(固形分1.2重量%)を得た。
【0096】
(2-7)製造例7
ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PSS:分子量200000)の20質量%水溶液66.89gと硫酸鉄0.05gを500gの純水に加えた。さらに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.42gと過硫酸ナトリウム6.30gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を大気雰囲気下にて15℃で14時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに2時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、PEDOT/PSS7(固形分1.2重量%)を得た。
【0097】
(2-8)製造例8
ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PSS:分子量200000)の20質量%水溶液66.89gと硫酸鉄0.05gを500gの純水に加えた。さらに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.42gと過硫酸ナトリウム6.30gを加え、これに純水を足すことで全質量が1200gとなるように混合溶液を調製し、温度調節可能な反応容器に投入した。混合溶液を大気雰囲気下にて15℃で14時間酸化重合反応を行った。反応溶液を反応容器から取り出し、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を加え、さらに2時間撹拌した。得られたイオン交換処理液をガラス濾過器で濾過し、次いで高圧ホモジナイザーで60MPa、30回の均質化処理を行うことにより、PEDOT/PSS8(固形分1.2重量%)を得た。
【0098】
ポリチオフェン系導電性高分子の累積粒径D50およびD90は、製造例1~8のポリチオフェン系導電性高分子の分散体の希釈物をMalvern社製Zetasizer Nano ZSで測定して求めた。その結果を表1に示す。
【0099】
(3)導電性組成物、および導電積層体の製造(実施例1~19、比較例1~2)
表1に記載した各成分を混合して導電性組成物を作製した。溶媒以外の配合量は有姿の重量比を示し、溶媒は導電性組成物全体に対する重量%を示す。導電性組成物を、表1記載の基材の片面にバーコート法で塗布し、送風乾燥機を用いて120℃で5分乾燥させることにより、基材フィルム上に導電層を形成した。導電層の厚みは、バーコータの番手を適宜選択することにより、100~350nmとなるように調整した。
【0100】
(4)導電層の評価
(4-1)表面抵抗率
導電積層体上の導電層の表面抵抗率を、抵抗率計(三菱化学株式会社製、ハイレスターUP(MCP-HT450型))のUAプローブおよび(三菱化学株式会社製、ロレスターGP(MCP-T600型))のESPプローブを用いて測定した。導電層の表面にプローブを押し当て、印加電圧10Vにて10秒間保った際の表面抵抗率(SR、単位Ω/□)を求めた。
【0101】
(4-2)耐湿熱性試験
導電積層体を、温度85℃かつ相対湿度85%の条件で1000時間保持した。
導電層の形成直後の表面抵抗率と、試験後の表面抵抗率から、耐湿熱性試験前後の表面抵抗率の変化率を求めた。
(表面抵抗率の変化率)=(試験後の表面抵抗率)/(導電層の形成直後の表面抵抗率)
【0102】
(4-3)耐熱性試験
導電積層体を、温度105℃の条件で1000時間保持した。耐湿熱性試験と同じ計算法により、耐熱性試験前後の表面抵抗率の変化率を求めた。
【0103】
(4-4)耐候性試験
導電積層体を、波長405nm、照度250W/mの光線を照射する条件で1000時間保持した。耐湿熱性試験と同じ計算法により、耐候性試験前後の表面抵抗率の変化率を求めた。
【0104】
(4-5)全光線透過率(Tt)/ヘイズ(Haze)値
導電層および基材を含む導電積層体の全光線透過率、ヘイズ値を、JIS K 7150に従い、スガ試験機(株)製ヘイズコンピュータHGM-2Bを用いて測定した。
【0105】
導電層の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0106】
比較例1~2では、ポリチオフェン系導電性高分子の累積粒径が小さいため、耐湿熱性試験、耐熱性試験、耐候性試験後に、導電層の導電性が損なわれ、表面抵抗率が大きく上昇した。実施例1~19では、各試験後も導電層の導電性が維持されていた。
【0107】
本開示(1)はポリチオフェン系導電性高分子および酸化防止剤を含み、前記ポリチオフェン系導電性高分子の、動的光散乱法によって測定した累積粒径がD50=200~800nmかつD90=250~1000nmである、導電性組成物である。
【0108】
本開示(2)はさらにバインダーを含む、本開示(1)に記載の導電性組成物である。
【0109】
本開示(3)はバインダーが、熱硬化性樹脂である、本開示(1)または(2)に記載の導電性組成物である。
【0110】
本開示(4)はポリチオフェン系導電性高分子の固形分100重量部に対し、酸化防止剤の配合量が0.1~500重量部である、本開示(1)~(3)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0111】
本開示(5)はポリチオフェン系導電性高分子の配合量が、固形分全体に対し0.1~20重量%である、本開示(1)~(4)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0112】
本開示(6)は基材上に膜厚100~350nmで製膜したときの表面抵抗率が1×10~1×1010である、本開示(1)~(5)のいずれかに記載の導電性組成物である。
【0113】
本開示(7)は基材、および前記基材上に形成された、ポリチオフェン系導電性高分子を含む導電層を含む導電積層体であって、膜厚50~4000nmで製膜されたときに、導電層の表面抵抗率が1×10~1×1010であり、導電層が下記(A)~(C)のいずれか1以上を充足する、導電積層体である。
(A)(温度85℃、かつ相対湿度85%の条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦500
(B)(温度105℃の条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦500
(C)(波長405nm、かつ照度250W/mの光線を照射する条件下に1000時間暴露した後の表面抵抗率)/(製膜直後の表面抵抗率)≦1000
【0114】
本開示(8)は、帯電防止フィルムである本開示(7)に記載の導電積層体である。