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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136905
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】光照射医療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20240927BHJP
   A61N 5/06 20060101ALI20240927BHJP
   A61B 18/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61N5/067
A61N5/06 Z
A61B18/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048209
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 弘規
(72)【発明者】
【氏名】清水 一朗
【テーマコード(参考)】
4C026
4C082
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026FF34
4C026FF37
4C026FF46
4C082PG11
4C082PG13
4C082RA02
4C082RE17
4C082RE35
4C082RE37
4C082RE38
(57)【要約】
【課題】耐破損性および操作性に優れる光照射医療装置を提供する。
【解決手段】長手軸方向xに遠位端と近位端を有し、かつ長手軸方向xに延在している内腔11を有するシャフト10と、シャフト10の内腔11に配置されている光ファイバー部材20と、シャフト10の内腔11であって光ファイバー部材20よりも遠位側に配置されており、線材42がらせん状に巻回されている第1コイル部材40と、を有し、第1コイル部材40は近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有しており、光ファイバー部材20の遠位端部と第1コイル部材40の近位端部は当接しているが、固定されていない光照射医療装置1に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に遠位端と近位端を有し、かつ前記長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、
前記シャフトの前記内腔に配置されている光ファイバー部材と、
前記シャフトの前記内腔であって前記光ファイバー部材よりも遠位側に配置されており、線材がらせん状に巻回されている第1コイル部材と、を有し、
前記第1コイル部材は近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有しており、
前記光ファイバー部材の遠位端部と前記第1コイル部材の近位端部は当接しているが、固定されていない光照射医療装置。
【請求項2】
前記第1コイル部材は前記線材の線径以下のピッチを有している請求項1に記載の光照射医療装置。
【請求項3】
前記第1コイル部材は、近位側に向かって外径が大きくなっている区間を有しており、近位側に向かって外径が大きくなっている区間における遠位側からn巻き目の外径が遠位側からn+1巻き目の内径よりも短い請求項1または2に記載の光照射医療装置。
ただし、nは1以上の整数である。
【請求項4】
前記第1コイル部材は、遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有しており、遠位側に向かって外径が大きくなっている区間における遠位側からn巻き目の内径が遠位側からn+1巻き目の外径よりも長い請求項1または2に記載の光照射医療装置。
ただし、nは1以上の整数である。
【請求項5】
前記シャフトの前記内腔に配置されており、前記第1コイル部材を覆っている筒部材を有している請求項1または2に記載の光照射医療装置。
【請求項6】
前記筒部材は線材がらせん状に巻回されている第2コイル部材である請求項5に記載の光照射医療装置。
【請求項7】
前記第1コイル部材のピッチの平均は、前記第2コイル部材のピッチの平均よりも小さい請求項6に記載の光照射医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管や消化管等の体内管腔において、がん細胞等の組織に光を照射するための光照射医療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線力学的療法(Photodynamic Therapy:PDT)では、光増感剤を静脈注射や腹腔内投与で体内に投与し、がん細胞等の対象組織に光増感剤を集積させ、特定の波長の光を照射することにより光増感剤を励起させる。励起された光増感剤が基底状態に戻るときにエネルギー転換が生じ、活性酸素種を発生させる。活性酸素種が対象組織を攻撃することにより、対象組織を除去することができる。レーザー光を用いたアブレーションでは、対象組織にレーザー光を照射し、焼灼することが行われる。このような光照射を行うための装置が提案されている。
【0003】
特許文献1には、長尺状の外形を有する本体部と、本体部の先端側に設けられたコイル体と、コイル体の内側に設けられ、外部に向けて光を照射する光照射部と、を備える光照射デバイスが開示されている。また、コイル体の内側に、内側コイル体とコアシャフトが設けられ、コアシャフトの一部と内側コイル体の一部とが接合部を介して接合されている態様が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-90503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている光照射デバイスにおいては、内側コイルのピッチが密である。このため、内側コイルは遠位側方向から近位側方向に向かう力を加えた際には縮むことができない。また、接合部によって固定されているものであるから、遠位側方向から近位側方向に向かう力を加えた際には内側コイルは伸びることができない。このように、内側コイルのピッチが密であることにより柔軟性に欠けることで、特許文献1に開示されている光照射デバイスは、光ファイバーにかかる負荷が大きくなりやすく、破損しやすいものであった。また、コイルの外径が長手方向において一定であることから加えられた力がコイルの軸方向以外の方向に逃げやすかったため、操作性も欠けるものであった。そこで、本発明は、耐破損性や操作性に優れる光照射医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得た本発明の光照射医療装置の一実施態様は下記の通りである。
[1] 長手軸方向に遠位端と近位端を有し、かつ前記長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、
前記シャフトの前記内腔に配置されている光ファイバー部材と、
前記シャフトの前記内腔であって前記光ファイバー部材よりも遠位側に配置されており、線材がらせん状に巻回されている第1コイル部材と、を有し、
前記第1コイル部材は近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有しており、
前記光ファイバー部材の遠位端部と前記第1コイル部材の近位端部は当接しているが、固定されていない光照射医療装置。
【0007】
シャフトに対して遠位側方向から近位側方向に向かう力、即ちシャフトに対して押し込む力が加わった場合には、下記のような効果を有する。自然状態において、第1コイル部材のピッチが線材の線径よりも大きい場合には、第1コイル部材のピッチが収縮することによってクッション機能を果たすことができる。このため、光ファイバー部材の破損を抑制しやすくすることができる。その一方で、自然状態において、第1コイル部材のピッチが線材の線径以下である場合には、近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間のうち、比較的外径の小さい部分の少なくとも一部が比較的内径の大きい部分の内腔に収納されることで縮むことができるため、クッション機能を果たすことができる。このため、光ファイバー部材の破損を抑制しやすくすることができる。また、シャフトに対して近位側方向から遠位側方向に向かう力、即ちシャフトに対してシャフトが伸びる方向に力が加わった場合には、光ファイバー部材の遠位端部と第1コイル部材の近位端部が固定されていないことにより、第1コイル部材と光ファイバー部材とが離れることができるため、光ファイバー部材の破損を抑制しやすくすることができる。さらに、近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有していることにより、光ファイバー部材から伝えられた力が第1コイル部材の軸方向以外の方向に逃げにくくなるため、第1コイル部材が縮む際の軸ズレが生じにくくなる。これにより、遠位端部へのトルク伝達性が向上するため、操作性を向上させることができる。
【0008】
本発明の光照射医療装置は、以下の[2]~[7]であることが好ましい。
[2] 前記第1コイル部材は前記線材の線径以下のピッチを有している[1]に記載の光照射医療装置。
[3] 前記第1コイル部材は、近位側に向かって外径が大きくなっている区間を有しており、近位側に向かって外径が大きくなっている区間における遠位側からn巻き目の外径が遠位側からn+1巻き目の内径よりも短い[1]または[2]に記載の光照射医療装置。
ただし、nは1以上の整数である。
[4] 前記第1コイル部材は、遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有しており、遠位側に向かって外径が大きくなっている区間における遠位側からn巻き目の内径が遠位側からn+1巻き目の外径よりも長い[1]~[3]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
ただし、nは1以上の整数である。
[5] 前記シャフトの前記内腔に配置されており、前記第1コイル部材を覆っている筒部材を有している[1]~[4]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
[6] 前記筒部材は線材がらせん状に巻回されている第2コイル部材である[5]に記載の光照射医療装置。
[7] 前記第1コイル部材のピッチの平均は、前記第2コイル部材のピッチの平均よりも小さい[6]に記載の光照射医療装置。
【発明の効果】
【0009】
シャフトに対して遠位側方向から近位側方向に向かう力、即ちシャフトに対して押し込む力が加わった場合には、下記のような効果を有する。自然状態において、第1コイル部材のピッチが線材の線径よりも大きい場合には、第1コイル部材のピッチが収縮することによってクッション機能を果たすことができる。このため、光ファイバー部材の破損を抑制しやすくすることができる。その一方で、自然状態において、第1コイル部材のピッチが線材の線径以下である場合には、近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間のうち、比較的外径の小さい部分の少なくとも一部が比較的内径の大きい部分の内腔に収納されることで縮むことができるため、クッション機能を果たすことができる。このため、光ファイバー部材の破損を抑制しやすくすることができる。また、シャフトに対して近位側方向から遠位側方向に向かう力、即ちシャフトに対してシャフトが伸びる方向に力が加わった場合には、光ファイバー部材の遠位端部と第1コイル部材の近位端部が固定されていないことにより、第1コイル部材と光ファイバー部材とが離れることができるため、光ファイバー部材の破損を抑制しやすくすることができる。さらに、近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有していることにより、光ファイバー部材から伝えられた力が第1コイル部材の軸方向以外の方向に逃げにくくなるため、第1コイル部材が縮む際の軸ズレが生じにくくなる。これにより、遠位端部へのトルク伝達性が向上するため、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る光照射医療装置の断面図(一部側面図)である。
図2図1に示した光照射医療装置のII-II線における切断部端面図である。
図3図1に示した第1コイル部材の切断部端面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図5図4に示した第1コイル部材の切断部端面図である。
図6図4に示した光照射医療装置に外力を加えたときの状態を示す断面図(一部側面図)である。
図7図6に示した第1コイル部材の切断部端面図である。
図8図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図9図8に示した筒部材の切断部端面図である。
図10図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図11図10に示した第2コイル部材の切断部端面図である。
図12】光ファイバー部材の一実施態様を示す断面図(一部側面図)である。
図13図12に示した光ファイバー部材の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図14図12に示した光ファイバー部材の他の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図15図12に示した光ファイバー部材の他の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定されることはなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。各図において、便宜上、ハッチングや符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図を参照するものとする。また、図面における種々部品の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
本発明の光照射医療装置の一実施態様は、長手軸方向に遠位端と近位端を有し、かつ長手軸方向に延在している内腔を有するシャフトと、シャフトの内腔に配置されている光ファイバー部材と、シャフトの内腔であって光ファイバー部材よりも遠位側に配置されており、線材がらせん状に巻回されている第1コイル部材と、を有し、第1コイル部材は近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有しており、光ファイバー部材の遠位端部と第1コイル部材の近位端部は当接しているが、固定されていない点に要旨を有する。
【0013】
光照射医療装置は、PDTや光アブレーションにおいて血管や消化管等の体内管腔で、がん細胞等の対象組織である処置部に対して特定の波長の光を照射するために用いられる。光照射医療装置は、単独で処置部まで送達されるものであってもよく、送達用のカテーテルや内視鏡と共に用いられてもよい。内視鏡を用いた治療では、内視鏡の鉗子チャンネルを通じて光照射医療装置が体内に配置され、処置部まで送達される。
【0014】
図1図15を参照しながら、光照射医療装置の基本構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光照射医療装置の断面図(一部側面図)である。図2は、図1に示した光照射医療装置のII-II線における切断部端面図である。図3は、図1に示した第1コイル部材の切断部端面図である。図4は、本発明の一実施形態に係る光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。図4では、装置1は自然状態にある。図5は、図4に示した第1コイル部材の切断部端面図である。図6は、図4に示した光照射医療装置に外力を加えたときの状態を示す断面図(一部側面図)である。図6は、特に、第1コイル部材が収縮している状態を示している。図7は、図6に示した第1コイル部材の切断部端面図である。図8は、図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。図9は、図8に示した筒部材の切断部端面図である。図10は、図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。図11は、図10に示した第2コイル部材の切断部端面図である。図12は、光ファイバー部材の一実施態様を示す断面図(一部側面図)である。図13は、図12に示した光ファイバー部材の変形例を示す断面図(一部側面図)である。図14は、図12に示した光ファイバー部材の他の変形例を示す断面図(一部側面図)である。図15は、図12に示した光ファイバー部材の他の変形例を示す断面図(一部側面図)である。光照射医療装置1は、シャフト10と光ファイバー部材20と第1コイル部材40を有している。以下では光照射医療装置を単に装置と称することがある。光ファイバー部材20と第1コイル部材40の位置関係を理解しやすくするために、図12図15ではシャフト10を省略している。
【0015】
本明細書において、装置1の遠位側とは、シャフト10の長手軸方向xの遠位端側であって処置対象側を指す。装置1の近位側とは、シャフト10の長手軸方向xの近位端側であって使用者の手元側を指す。各部材をシャフト10の長手軸方向xにおいて二等分割したときの近位側を近位部、遠位側を遠位部と称することがある。装置1の径方向において、内方はシャフト10の長手軸方向xに延びる中心軸cに向かう方向を指し、外方は内方とは反対の放射方向を指す。
【0016】
図1に示すように、装置1は、長手軸方向xに遠位端と近位端を有し、かつ長手軸方向xに延在している内腔11を有するシャフト10を有している。
【0017】
図1に示すように、装置1は、シャフト10の内腔11に配置されている光ファイバー部材20を有している。
【0018】
図1に示すように、装置1は、シャフト10の内腔11であって光ファイバー部材20よりも遠位側に配置されており、線材42がらせん状に巻回されている第1コイル部材40を有している。
【0019】
本明細書において、第1コイル部材40が有しているピッチをピッチP1と称する。ピッチP1とは、図1に示すように第1コイル部材40を構成する隣り合う線材42の中心軸から中心軸までの間隔であって、最も長い長さを有する部分を指す。
【0020】
第1コイル部材40は近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有している。図1に示すように、第1コイル部材40は遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有していてもよい。図8に示すように、第1コイル部材40は近位側に向かって外径が大きくなっている区間を有していてもよい。
【0021】
光ファイバー部材20の遠位端部と第1コイル部材40の近位端部は、当接しているが、固定されていない。自然状態において、光ファイバー部材20の遠位端部と第1コイル部材40の近位端部が、当接している。自然状態とは、装置1に対して外力が加わっていない状態のことを指す。
【0022】
シャフト10に対して遠位側方向から近位側方向に向かう力、即ちシャフト10に対して押し込む力が加わった場合には、下記のような効果を有する。図1に示すように、自然状態において、第1コイル部材40のピッチP1が線材42の線径よりも大きい場合には、第1コイル部材40のピッチP1が収縮することによってクッション機能を果たすことができる。このため、光ファイバー部材20の破損を抑制しやすくすることができる。その一方で、図4図5に示すように、自然状態において、第1コイル部材40のピッチP1が線材42の線径以下である場合には、近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間のうち、比較的外径の小さい部分の少なくとも一部が比較的内径の大きい部分の内腔に収納されることで図6図7に示すように縮むことができる。このようにして、クッション機能を果たすことができるため、光ファイバー部材20の破損を抑制しやすくすることができる。また、シャフト10に対して近位側方向から遠位側方向に向かう力、即ちシャフト10に対してシャフト10が伸びる方向に力が加わった場合には、光ファイバー部材20の遠位端部と第1コイル部材40の近位端部が固定されていないことにより、第1コイル部材40と光ファイバー部材20とが離れることができるため、光ファイバー部材20の破損を抑制しやすくすることができる。さらに、近位側または遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有していることにより、光ファイバー部材20から伝えられた力が第1コイル部材40の軸方向以外の方向に逃げにくくなるため、第1コイル部材40が縮む際の軸ズレが生じにくくなる。これにより、遠位端部へのトルク伝達性が向上するため、操作性を向上させることができる。
【0023】
シャフト10は長手軸方向xと径方向と周方向pを有している。シャフト10は、長手軸方向xに遠位端と近位端を有し、かつ長手軸方向xに延在している内腔11を有する。シャフト10は、内腔11を1つのみ有していてもよく、複数有していてもよい。シャフト10はその内腔11に光ファイバー部材20および第1コイル部材40を配置するために筒形状を有している。シャフト10は、内腔11を1つのみ有する筒形状を有していることが好ましい。シャフト10は体内に挿入されるため、好ましくは可撓性を有している。シャフト10は内表面12と外表面13を有している。
【0024】
シャフト10は、一または複数の線材を所定のパターンで配置することで形成された中空体;上記中空体の内側表面または外側表面の少なくともいずれか一方に樹脂をコーティングしたもの;樹脂チューブ;またはこれらを組み合わせたもの、例えばこれらを長手軸方向に接続したものが挙げられる。線材が所定のパターンで配置された中空体としては、線材が単に交差される、または編み込まれることによって網目構造を有する筒状体や、線材が巻回されたコイルが示される。線材は、一または複数の単線であってもよく、一または複数の撚線であってもよい。樹脂チューブは、例えば押出成形によって製造することができる。シャフト10が樹脂チューブである場合、シャフト10は単層または複数層から構成することができる。シャフト10は長手軸方向xまたは周方向pの一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0025】
シャフト10は、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂や、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケルチタン合金等の金属から構成することができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。シャフト10のうち少なくとも後述する光拡散部21と重なる部分は、光透過性を有する樹脂から構成されていることが好ましい。シャフト10のうち少なくとも光拡散部21と重なる部分は、透明樹脂から構成されていてもよい。
【0026】
図1に示すようにシャフト10の遠位端には先端チップ15が取り付けられていてもよい。シャフト10の遠位端部による生体組織の損傷を回避することができる。先端チップ15の形状としては、例えば円柱形状、長円柱形状、半球形状、長円球形状、角錐台形状、円錐台形状、長円錐台形状、角丸錐台形状、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0027】
図1では、シャフト10の近位部にハンドル70が接続されている。使用者がハンドル70を把持することで、装置1の操作が行いやすくなる。ハンドル70は、例えば長手軸方向xに延在している。ハンドル70は、一または複数の部材から構成することができる。図1では、ハンドル70は長手軸方向xに延在している中空部を有している。ハンドル70は例えば筒形状を有していてもよい。図1ではハンドル70の中空部にシャフト10と光ファイバー部材20が挿通されている。
【0028】
ハンドル70の構成材料は特に限定されないが、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
【0029】
光ファイバー部材20は、対象組織まで光信号を送信する伝送路である光ファイバーを備える部材である。光ファイバー部材20は外表面23を有している。図1に示すように光ファイバー部材20は、シャフト10の内腔11に配置されている。図1では光ファイバー部材20の近位端部はハンドル70から近位側に向かって延出している。光ファイバー部材20の近位端部は半導体レーザー等の光源に接続される。
【0030】
光ファイバー部材20は、その遠位部の所定区間に長手軸方向xに延在しておりシャフト10の径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部21を有していることが好ましい。光拡散部21は径方向の外方に向かって発光することができる発光エリアとして機能する。光拡散部21は、シャフト10の長手軸方向xおよび周方向pに延在するように配されている。光拡散部21は外表面24を有している。光拡散部21の外表面24は、光ファイバー部材20の外表面23のうちの一部である。光拡散部21の外表面24はシャフト10の内表面12側に面している。
【0031】
内視鏡を通じて、装置1を体腔内の対象組織がある位置まで挿入する。このとき、対象組織がシャフト10の外表面13よりも径方向の外方に位置するように配される。光拡散部21から射出された光は、シャフト10を透過することで装置1の周りにある対象組織に光が到達する。
【0032】
上述のように、光拡散部21からは、少なくともシャフト10の径方向の外方に向かって光が射出されることが好ましい。光拡散部21からは、シャフト10の周方向pの全体に亘り、シャフト10の径方向の外方に向かって光が射出されることがより好ましい。光拡散部21からは、さらにシャフト10の遠位方向、すなわち前方に向かって光が射出されてもよい。
【0033】
光拡散部21は、光ファイバー部材20のうちの光ファイバーとは別個の拡散部材(例えば拡散板やプリズム)から構成させている部分ではなく、光ファイバーの一部を構成する部分である。光ファイバーはコアとクラッドを有している。クラッドはコアの外周に配されて、コアの径方向の外方の一部を覆っている。光拡散部21は、(i)コアのみ配されている態様、(ii)コアおよびクラッドが配されている態様、または(iii)一部にコアのみが配されており、他部にコアおよびクラッドが配されている態様、のいずれかから構成されていることが好ましい。クラッドの径方向の外方には保護用の被覆材が配されていてもよいが、光拡散部21の径方向の外方にはコアおよびクラッド以外の部材は配されていなくてもよい。
【0034】
コアおよびクラッドを構成する材料は特に限定されず、プラスチック、石英ガラス、フッ化物ガラス等のガラスを用いることができる。
【0035】
シャフト10のうち少なくとも光拡散部21と重なる部分では、シャフト10を構成する樹脂に酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機系粒子、架橋アクリル系粒子、架橋スチレン系粒子等の有機系粒子の光拡散性の材料を添加することができる。光拡散部21から射出される光がシャフト10によって一層拡散されやすくなる。
【0036】
光拡散部21は、光ファイバーの最も遠位側に配されていることが好ましい。光拡散部21は、光ファイバー部材20の最も遠位側に配されていてもよい。これにより光拡散部21の形成が行いやすくなり、光ファイバーの遠位端部での柔軟性も高めることができる。
【0037】
長手軸方向xにおいて光拡散部21の長さは光ファイバー部材20の全長の50分の1以上、45分の1以上、30分の1以上の長さに設定されてもよい。このような長さに設定することで一度の照射で対象組織全体を照射しやすくなる。また、長手軸方向xにおいて光拡散部21の長さは光ファイバー部材20の全長の20分の1以下、25分の1以下、30分の1以下の長さに設定されてもよい。このような長さに設定することで対象外の組織への照射を防ぐことができる。
【0038】
光拡散部21は、シャフト10の周方向pの一部のみに配されていてもよいが、図2に示すように、光拡散部21は、シャフト10の周方向pの全体に配されていることが好ましい。周方向pの広範囲を一度に照射することができるため、手技の効率化が図られる。
【0039】
長手軸方向xにおいて第1コイル部材40の全体が、シャフト10の内腔11に配置されていることが好ましい。
【0040】
線材42はその長手軸方向に先端と基端を有している。線材42は先端から基端まで単一の線状部材から構成されていてもよく、線材42はその長手軸方向において互いに連結された複数の線状部材から構成されてもよい。
【0041】
線材42の長手軸方向に垂直な断面の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらの組み合わせであってもよい。長円形状には楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれるものとする。本明細書の他の説明においても同様である。
【0042】
第1コイル部材40を構成する線材42の線径(太さ)や、線材42の巻き数は特に限定されない。例えば、使用するシャフト10の内径などに応じて適宜設定すればよい。第1コイル部材40の軸方向の長さは第1コイル部材40の最大外径より大きくても小さくてもよい。
【0043】
第1コイル部材40のピッチP1は、第1コイル部材40の軸方向の一部または全体において一定であってもよい。第1コイル部材40のピッチP1は、第1コイル部材40の軸方向の一部または全体において異なっていてもよい。
【0044】
図4図5に示すように、自然状態において、第1コイル部材40は線材42の線径以下のピッチを有していることが好ましい。第1コイル部材40が有する複数のピッチP1の一部のみが線材42の線径以下であってもよい。第1コイル部材40が有する複数のピッチP1全てが線材42の線径以下であってもよい。上記構成とすることにより、光ファイバー部材20に伝えられた力が第1コイル部材40の軸方向以外の方向に逃げにくくなる。このため、第1コイル部材40が縮む際の軸ズレが生じにくくなる。これにより、遠位端部へのトルク伝達性が向上するため、操作性を向上させることができる。
【0045】
自然状態において、第1コイル部材40が線材42の線径以下のピッチを有している場合、第1コイル部材40は線材42の線径の0.1倍以上のピッチを有していてもよく、0.3倍以上のピッチを有していてもよく、0.5倍以上のピッチを有していてもよい。また、第1コイル部材40は線材42の線径の1.0倍以下のピッチを有していてもよく、0.8倍以下のピッチを有していてもよい。第1コイル部材40が上記のようなピッチを有していることによって、光ファイバー部材20に伝えられた力が第1コイル部材40の軸方向以外の方向に逃げにくくなる。このため、第1コイル部材40が縮む際の軸ズレが生じにくくなる。これにより、遠位端部へのトルク伝達性が向上するため、操作性を向上させることができる。
【0046】
図8に示すように、第1コイル部材40は近位側に向かって外径が大きくなっている区間のみを有していてもよい。図1に示すように、第1コイル部材40は遠位側に向かって外径が大きくなっている区間のみを有していてもよい。図示しないが、第1コイル部材40は、近位側に向かって外径が大きくなっている区間と、遠位側に向かって外径が大きくなっている区間の、両方を有していてもよい。
【0047】
近位側に向かって外径が大きくなっている区間や遠位側に向かって外径が大きくなっている区間は、第1コイル部材40において1つのみ設けられていてもよいし、2つ以上設けられていてもよい。即ち、当該区間が長手軸方向xに2つ以上並んでいてもよい。
【0048】
自然状態において、第1コイル部材40が線材42の線径以下のピッチを有している場合、第1コイル部材40の外径は長手軸方向xの位置によって異なっていることが好ましい。第1コイル部材40の内径についても、長手軸方向xの位置によって異なっていることが好ましい。例えば、nが1以上の整数である場合に、第1コイル部材40は、近位側に向かって外径が大きくなっている区間を有しており、近位側に向かって外径が大きくなっている区間における遠位側からn巻き目の外径が遠位側からn+1巻き目の内径よりも短いことが好ましい。これにより、第1コイル部材40のうち、遠位側からn巻き目の部分が遠位側からn+1巻き目の部分の内腔に収納されやすくなる。また、nが1以上の整数である場合に、第1コイル部材40は、遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有しており、遠位側に向かって外径が大きくなっている区間における遠位側からn巻き目の内径が遠位側からn+1巻き目の外径よりも長いことが好ましい。これにより、第1コイル部材40のうち、遠位側からn巻き目の部分の内腔に遠位側からn+1巻き目の部分が収納されやすくなる。
【0049】
なお、図1に示すように、自然状態において、第1コイル部材40は線材42の線径よりも長いピッチを有していても構わない。第1コイル部材40が有する複数のピッチP1の一部のみが線材42の線径よりも長くてもよいし、ピッチP1全てが線材42の線径よりも長くてもよい。このようなピッチを有していることによって、シャフト10に対して遠位側方向から近位側方向に向かう力、即ちシャフト10に対して押し込む力が加わった場合に、第1コイル部材40のピッチP1が収縮することによってクッション機能を果たしやすくなるため、光ファイバー部材20の破損を抑制しやすくすることができる。また、第1コイル部材40が上記のようなピッチP1を有していることで、装置1の遠位端部に柔軟性を持たせることができ、操作性を向上させやすくすることができる。
【0050】
自然状態において、第1コイル部材40が線材42の線径よりも長いピッチを有している場合、第1コイル部材40は線材42の線径の1.5倍以上のピッチを有していてもよく、1.6倍以上のピッチを有していてもよく、1.7倍以上のピッチを有していてもよい。また、第1コイル部材40は線材42の線径の3.0倍以下のピッチを有していてもよく、2.5倍以下のピッチを有していてもよい。なお、第1コイル部材40に存在する全てのピッチP1が上記の範囲内であってもよいし、一部のピッチP1が上記の範囲内であってもよい。上記のようなピッチを有していることによって、シャフト10に対して遠位側方向から近位側方向に向かう力、即ちシャフト10に対して押し込む力が加わった場合に、第1コイル部材40のピッチP1が収縮することによってクッション機能を果たしやすくなるため、光ファイバー部材20の破損を抑制しやすくすることができる。また、第1コイル部材40が上記のようなピッチを有していることで、装置1の遠位端部に柔軟性を持たせることができ、操作性を向上させやすくすることができる。
【0051】
自然状態において、第1コイル部材40が線材42の線径よりも長いピッチを有している場合、シャフト10の長手軸方向xにおいて第1コイル部材40の外径は一定であってもよく、長手軸方向xの位置によって第1コイル部材40の外径が異なっていてもよい。例えば、長手軸方向xにおいて第1コイル部材40を遠位部と近位部に二等分割したときに、第1コイル部材40の遠位部の平均外径が、第1コイル部材40の近位部の平均外径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0052】
自然状態において、第1コイル部材40が線材42の線径よりも長いピッチを有している場合、シャフト10の長手軸方向xにおいて第1コイル部材40の内径は一定であってもよく、長手軸方向xの位置によって第1コイル部材40の内径が異なっていてもよい。例えば、長手軸方向xにおいて第1コイル部材40を遠位部と近位部に二等分割したときに、第1コイル部材40の遠位部の平均内径が、第1コイル部材40の近位部の平均内径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0053】
第1コイル部材40の近位端部の内径は、光ファイバー部材20の遠位端部の外径よりも小さいことが好ましい。言い換えると、第1コイル部材40の近位端部の内径は、第1コイル部材40の内腔に光ファイバー部材20が入らない大きさであることが好ましい。これにより、シャフト10に対して遠位側方向から近位側方向に向かう力、即ちシャフト10に対して押し込む力が加わった場合に、第1コイル部材40が収縮しやすくすることができるため、第1コイル部材40がクッション機能を果たしやすくなる。このため、光ファイバー部材20の破損を抑制しやすくすることができる。
【0054】
第1コイル部材40は、シャフト10よりも反射率が高い材料から構成されていることが好ましい。図8に示すように、第1コイル部材40が、近位側に向かって外径が大きくなっている区間を有している場合には、第1コイル部材40の内表面43で反射光が拡散されやすくなる。図1に示すように、第1コイル部材40が、遠位側に向かって外径が大きくなっている区間を有している場合には、第1コイル部材40の外表面44で反射光が拡散されやすくなる。ここで、反射率は光拡散部21から射出される光の反射率を指し、単位は%である。反射率は、オーシャンフォトニクス社製 反射率測定システム OP-RF-VIS-GT50を用いて測定することができる。
【0055】
第1コイル部材40は金属から構成されていることが好ましく、例えば、金、銀、白金、パラジウム、タングステン、タンタル、イリジウムおよびそれらの合金等の放射線不透過性金属でもよく、ステンレス鋼、Ni-Ti合金等の超弾性合金でもよい。
【0056】
第1コイル部材40の一部が樹脂から構成されていてもよい。第1コイル部材40が、コイル部材本体と、コイル部材本体の内表面に配されている反射層とを有していてもよい。コイル部材本体の材料によらず、反射層によって光拡散部21からの光を反射させることができる。例えば樹脂線材が巻回されたコイル体または樹脂チューブがコイル部材本体であってもよい。反射層は、コイル部材本体の内表面に反射材料を含むコート剤が塗布されることで配されてもよく、蒸着、スパッタリング、電気メッキ、化学メッキ等の方法で反射材料をコイル部材本体の内表面に付着させることにより配されてもよい。なお、反射層は金属薄膜であってもよい。反射材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、二酸化チタン、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウムまたはこれらの組み合わせが挙げられる。第1コイル部材40が反射層を有する場合、コイル部材本体にはシャフト10の構成材料として挙げた材料の少なくともいずれか1つを用いることができる。
【0057】
第1コイル部材40はシャフト10よりも弾性率が低い素材から構成されていることが好ましい。これにより、第1コイル部材40がクッション機能を果たしやすくなるため、光ファイバー部材20の破損を抑制しやすくすることができる。
【0058】
第1コイル部材40は単層巻きコイルから構成されていてもよいし、多層巻きコイルから構成されていてもよい。第1コイル部材40の一部または全部を多層巻きコイルから構成することにより、第1コイル部材40がクッション機能を果たしやすくなるため、光ファイバー部材20の破損を抑制しやすくすることができる。
【0059】
図3に示すように、第1コイル部材40の遠位端部は、第1コイル部材40を遠位側から見た時の面積が第1コイル部材40の遠位端部の内腔よりも大きい蓋部450を有していてもよい。蓋部450は、例えば、第1コイル部材40の遠位端401側を加熱して変形させることによって形成することができる。これにより、図3のような遠位端401側が閉じられた第1コイル部材40を得ることができる。また、1つの内腔を有する筒状コイルと、筒状コイルとは別の金属部材を準備し、金属部材を加熱して筒状コイルの遠位側の開口を塞ぐように溶着することで蓋部450を形成することもできる。このようにして、遠位端401側が閉じられた第1コイル部材40を得ることもできる。
【0060】
図8に示すように、装置1は、シャフト10の内腔11に配置されており、第1コイル部材40を覆っている筒部材50を有していてもよい。筒部材50は、シャフト10の長手軸方向xに延在するように形成されることが好ましい。図8では、筒部材50の軸方向と、シャフト10の長手軸方向xが同じ方向である態様を示している。シャフト10の長手軸方向xにおいて、第1コイル部材40全体が筒部材50によって覆われていてもよいし、第1コイル部材40の一部のみが筒部材50によって覆われていてもよい。これにより、先端部の剛性を高めることができるため、操作性を向上させやすくすることができる。
【0061】
筒部材50は、1つの内腔を有していることが好ましい。筒部材50の形状は特に限定されないが、円筒形状、楕円筒形状、または多角筒形状であってもよい。筒部材50の軸方向の長さは筒部材50の最大外径より大きくても小さくてもよい。
【0062】
図8に示すように、筒部材50の近位端502は光拡散部21の遠位端よりも近位側に位置していてもよい。また、筒部材50は光拡散部21の遠位部の一部を覆っていることが好ましい。本明細書では、光拡散部21のうち、筒部材50に覆われておらずシャフト10側に露出している部分を露出部22と称する。光拡散部21の一部が筒部材50に覆われていることにより、先端部の剛性を高めることができる。このため、操作性を向上させやすくすることができる。また、光拡散部21のうち筒部材50に覆われている部分では光拡散部21からシャフト10の径方向外方に射出される光が、図8図9に示す筒部材50の内表面53で反射する。このため、反射光が光拡散部21のうち筒部材50で覆われていない部分である露出部22から様々な方向に拡散されやすくなる。その結果、シャフト10の周方向pにおいて露出部22の発光強度分布が均一化されやすくなる。これにより、腫瘍等の対象組織への照射回数や対象組織に対する露出部22の位置調整の回数を減らすことができるため、手技の効率化が図られる。なお、筒部材50が光拡散部21を覆う場合は、光拡散部21の一部のみを覆うのであり、光拡散部21の全部を覆わないことが好ましい。これにより、光拡散部21に露出部22が形成される。なお、筒部材50は光拡散部21の遠位部の一部を覆っていなくてもよい。シャフト10の径方向において、露出部22とシャフト10の間には別の部材が存在しないことが好ましいが、露出部22から射出される光を遮らない部材であれば配されていてもよい。
【0063】
図9に示すように、筒部材50の遠位端部は、筒部材50を遠位側から見た時の面積が筒部材50の遠位端部の内腔よりも大きい蓋部550を有していてもよい。このように、筒部材50の遠位端501側が閉じられており、近位端502側が開口した形状となっていることにより、光拡散部21から射出される光は筒部材50の内表面53と内側端面56で反射されることが可能となる。内表面53は曲面部のみから構成されていてもよく、平面部のみから構成されていてもよく、曲面部と平面部の組み合わせから構成されていてもよい。内表面53で反射された光を多方向に拡散しやすくするためには、内表面53は曲面部を有していることが好ましい。また、内側端面56は平面部のみから構成されていてもよく、曲面部のみから構成されていてもよく、曲面部と平面部の組み合わせから構成されていてもよい。
【0064】
第1コイル部材40の遠位端部と筒部材50の遠位端部とが固定されていてもよい。第1コイル部材40は筒部材50に直接固定されていてもよく、別の部材を介して間接的に固定されていてもよい。第1コイル部材40と筒部材50の固定方法は特に限定されないが、例えば、溶着、溶接、かしめ等の圧着、接着剤による接着、係合、連結、結着、結紮等の物理的な固定等の方法、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。なお、第1コイル部材40の遠位端部と筒部材50の遠位端部とが固定されていなくてもよい。
【0065】
図8に示すように、筒部材50の外表面54がシャフト10の内表面12と接していてもよい。この構成により、シャフト10に対する筒部材50や第1コイル部材40、光ファイバー部材20の位置がずれにくくなる。このため、露出部22の位置が固定されやすくなるため、照射位置を安定させることができる。なお、筒部材50の外表面54がシャフト10の内表面12と接していなくても構わない。
【0066】
光拡散部21の外表面24とシャフト10の内表面12とが離れて配置されていてもよい。露出部22において、光拡散部21の外表面24が、シャフト10の内表面12と離れて配されていることがより好ましい。また、長手軸方向xの全体にわたって、光拡散部21の外表面24が、シャフト10の内表面12と離れて配されていることがさらに好ましい。このようにシャフト10の内腔11に光拡散部21を配することで、光拡散部21が存在する位置での装置1の柔軟性を維持することができ、操作性を向上させやすくすることができる。
【0067】
図10に示すように、シャフト10の内腔11に配置されており、第1コイル部材40を覆っている筒部材は、線材62がらせん状に巻回されている第2コイル部材60であってもよい。第2コイル部材60を構成する素材については第1コイル部材40の説明を参照することができる。
【0068】
図11に示すように、第2コイル部材60が有しているピッチをピッチP2と称する。ピッチP2とは、図11に示すように第2コイル部材60を構成する隣り合う線材62の中心軸から中心軸までの間隔であって、最も長い長さを有する部分を指す。
【0069】
第2コイル部材60は線材62の線径以上のピッチを有していることが好ましく、1.1倍以上のピッチP2を有していてもよく、1.2倍以上のピッチP2を有していてもよい。また、第2コイル部材60は線材62の線径の3.0倍以下のピッチを有していてもよく、2.5倍以下のピッチを有していてもよい。なお、第2コイル部材60に存在する全てのピッチP2が上記の範囲内であってもよいし、一部のピッチP2が上記の範囲内であってもよい。第2コイル部材60が上記のようなピッチを有していることによって、装置1の遠位端部に柔軟性とほどよい剛性を持たせることができ、操作性を向上させやすくすることができる。
【0070】
図10図11に示すように、第2コイル部材60は線材62の線径と同じピッチを有していてもよい。このようなコイルは、一般に密着巻きコイルと称される。密着巻きコイルでは、隣り合う2つの線材62の間に隙間がなく、第2コイル部材60から光が漏れにくいため好ましい。また、第2コイル部材60をマーカーとして使用する場合にも好ましい。
【0071】
線材62の線径が、その長手軸方向で変化している場合(例えば、所定の線径を有する太径部と、太径部よりも線径が細い細径部がある場合)には、第2コイル部材60は線材62の線径よりも小さいピッチを有していてもよい。
【0072】
シャフト10の長手軸方向xにおいて第2コイル部材60の外径は一定であってもよく、長手軸方向xの位置によって第2コイル部材60の外径が異なっていてもよい。例えば、長手軸方向xにおいて第2コイル部材60を遠位部と近位部に二等分割したときに、第2コイル部材60の遠位部の平均外径が、第2コイル部材60の近位部の平均外径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0073】
第1コイル部材40のピッチP1の平均は、第2コイル部材60のピッチP2の平均よりも小さいことが好ましい。第1コイル部材40のピッチP1の一部が第2コイル部材60のピッチP2よりも小さくてもよいが、第1コイル部材40のピッチP1の全てが第2コイル部材60のピッチP2よりも小さいことが好ましい。これにより、光ファイバー部材20から伝えられた力が第1コイル部材40の軸方向以外の方向に逃げにくくなる。このため、第1コイル部材40が縮む際の軸ズレが生じにくくなり、遠位端部へのトルク伝達性が向上するため、操作性を向上させることができる。
【0074】
第1コイル部材40のピッチP1の平均は、第2コイル部材60のピッチP2の平均よりも大きくてもよい。第1コイル部材40のピッチP1の一部のみが第2コイル部材60のピッチP2よりも大きくてもよいが、第1コイル部材40のピッチP1の全てが第2コイル部材60のピッチP2よりも大きいことが好ましい。これにより、装置1の径方向の内方に柔軟性を持たせやすくすることができるため、操作性を向上させやすくすることができる。
【0075】
第1コイル部材40の線材42の線径は、第2コイル部材60の線材62の線径よりも小さくてもよい。これにより、装置1の径方向の内方に柔軟性を持たせやすくすることができるため、操作性を向上させやすくすることができる。
【0076】
長手軸方向xに垂直な方向であって、第1コイル部材40の長手軸方向における長さの中点を通る線材42の断面積は、第2コイル部材60の長手軸方向における長さの中点を通る線材62の断面積よりも小さくてもよい。これにより、装置1の径方向の内方に柔軟性を持たせやすくすることができるため、操作性を向上させやすくすることができる。
【0077】
第1コイル部材40の巻き方向と第2コイル部材60の巻き方向とが同じ方向であることが好ましい。これにより、第1コイル部材40と第2コイル部材60との間の滑りがよくなるため、第1コイル部材40と第2コイル部材60がシャフト10の形状変化に追従しやすくなり、装置1の操作性を向上させやすくすることができる。なお、図示しないが、第1コイル部材40の巻き方向と第2コイル部材60の巻き方向とが異なる方向であっても構わない。
【0078】
図11に示すように、第2コイル部材60の遠位端部は、第2コイル部材60を遠位側から見た時の面積が第2コイル部材60の遠位端部の内腔よりも大きい蓋部650を有していることが好ましい。第2コイル部材60の蓋部650は、第1コイル部材40の蓋部450と同様の方法によって形成することができる。このように、第2コイル部材60の遠位端601側が閉じられており、近位端602側が開口した形状となっていることにより、光拡散部21から射出される光は第2コイル部材60の内表面63と内側端面66で反射されることが可能となる。
【0079】
図10に示すように、第2コイル部材60の近位端602は光拡散部21の遠位端よりも近位側に位置していてもよい。また、第2コイル部材60は光拡散部21の遠位部の一部を覆っていることが好ましい。本明細書では、光拡散部21のうち、第2コイル部材60に覆われておらずシャフト10側に露出している部分を露出部22と称する。第2コイル部材60の存在により、先端部の剛性を高めることができるため、操作性を向上させやすくすることができる。また、光拡散部21のうち第2コイル部材60に覆われている部分では光拡散部21から射出される光が第2コイル部材60の内表面63で反射するため、反射光が光拡散部21のうち第2コイル部材60で覆われていない部分である露出部22から様々な方向に拡散されやすくなる。その結果、シャフト10の周方向pにおいて露出部22の発光強度分布が均一化されやすくなる。これにより、腫瘍等の対象組織への照射回数や対象組織に対する露出部22の位置調整の回数を減らすことができるため、手技の効率化が図られる。なお、第2コイル部材60が光拡散部21を覆う場合は、光拡散部21の一部のみを覆うのであり、光拡散部21の全部を覆わないことが好ましい。これにより、光拡散部21に露出部22が形成される。なお、第2コイル部材60は光拡散部21の遠位部の一部を覆っていなくてもよい。シャフト10の径方向において、露出部22とシャフト10の間には別の部材が存在しないことが好ましいが、露出部22から射出される光を遮らない部材であれば配されていてもよい。
【0080】
次に、図12図15を参照しながら光ファイバー部材20の構成例を説明する。図12図15では、光ファイバー部材20は、長手軸方向xに延在しているコア25を有し、光ファイバー部材20は、コア25の外周に配されている第1クラッド26を有している第1区間31を有している。第1区間31では、コア25と第1クラッド26の境界で光が全反射しやすくなるため、第1区間31では、光がコア25内に閉じ込められながら光ファイバー部材20の遠位側に伝搬される。
【0081】
第1区間31では、1つの第1クラッド26の中に1つのコア25が配されていることが好ましい。第1区間31では、光ファイバーをシングルコア光ファイバーと言い換えることができる。
【0082】
光ファイバー部材20のプロファイルの増加を防ぐために、第1区間31では第1クラッド26が光ファイバー部材20の径方向の最も外側に位置していてもよい。すなわち、第1区間31には被覆材などの他の部材が配されなくてもよい。
【0083】
図示していないが、光ファイバー部材20の第1区間31には、第1クラッド26の外周に被覆材が配されていてもよい。第1区間31の外側を保護することが可能となり、第1区間31において外への光漏れや射出を抑制することもできる。被覆材は、第1クラッド26の外表面上に配される被覆層であってもよく、第1クラッド26を内包するシースであってもよい。被覆材は、紫外線硬化樹脂等の樹脂から構成することができる。
【0084】
図12では、光ファイバー部材20が、光拡散部21に、コア25の外周に配されており第1クラッド26よりも外表面の表面粗さが大きい第2クラッド27を有している第2区間32を有している。第2区間32は第1区間31よりも遠位側に位置している。第1区間31よりも第2区間32でクラッドの表面粗さを大きくすることで、光の一部はコア25内に閉じ込められながら光ファイバー部材20の遠位側に伝搬され、残りの光は第2クラッド27から外に漏れて径方向の外方に射出される。なお、第1区間31では光が径方向の外方に射出されないか、または第2区間32よりも光の漏れ量が小さいことが好ましい。
【0085】
第1区間31と同様に、第2区間32では、1つの第2クラッド27の中に1つのコア25が配されていることが好ましい。第1区間31と第2区間32は一の光ファイバーから構成されていてもよい。第1区間31の第1クラッド26と第2区間32の第2クラッド27は一体成形されていてもよい。光ファイバーは、第1区間31用の光ファイバーと第2区間32用の光ファイバーが長手軸方向xに接合されていてもよい。第1区間31の第1クラッド26と第2区間32の第2クラッド27は別々に形成された後で接合されてもよい。
【0086】
第2区間32では、第2クラッド27が光ファイバー部材20の径方向の最も外側に位置していることが好ましい。すなわち、第2区間32では、コア25と第2クラッド27以外の部材(例えば被覆材)が配されていないことが好ましい。この構成により、第2区間32からシャフト10の径方向の外方に向かって光を射出することができる。
【0087】
第2区間32の第2クラッド27の外表面の表面粗さは、第1区間31の第1クラッド26の外表面の表面粗さよりも大きい。ここで、表面粗さは、光ファイバー部材20の外表面の長手軸方向における粗さ曲線の基準長さ間での算術平均粗さRaである。基準長さは、使用するレーザー顕微鏡の拡大率に応じて設定すればよいが、例えば200μmである。上記算術平均粗さRaは、JIS B 0601(2001)に規定される算術平均粗さRaに相当し、JIS B 0633(2001)に準じて測定される。測定には、JIS B 0651(2001)に規定される測定機(例えば、キーエンス社製レーザー顕微鏡 VK-X3000)を用いる。
【0088】
第2区間32の第2クラッド27の外表面の表面粗さの平均値が、第1区間31の第1クラッド26の外表面の表面粗さの平均値よりも大きいことが好ましい。第1区間31ではコア25内に光が閉じ込められやすくなり、第2区間32では第2クラッド27から光が径方向の外方に射出されやすくなる。その結果、長手軸方向xにおいて光拡散部21の発光強度分布が均一化されやすくなる。表面粗さの平均値とは、測定対象となる区間(例えば第1区間31)において、長手軸方向xに並ぶように設定された10点以上の測定点の表面粗さ値の平均値である。
【0089】
図12に示すように長手軸方向xにおいて第2区間32を遠位部323と近位部324に二等分割したときに、近位部324における第2クラッド27の外表面の表面粗さの平均値が、遠位部323における第2クラッド27の外表面の表面粗さの平均値よりも小さいことが好ましい。この構成により、近位部324では遠位部323よりもコア25内に光を閉じ込める効果を高めつつ、遠位部323では第2クラッド27から径方向の外方に向かって光が射出されやすくなるため、長手軸方向xにおいて第2区間32の発光強度分布が均一化されやすくなる。
【0090】
長手軸方向xにおいて第1区間31よりも第2区間32の方が短いことが好ましい。光拡散部21を形成しやすくなり、光ファイバー部材20の遠位端部での柔軟性も高めることができる。長手軸方向xにおいて第2区間32の長さは、第1区間31の長さの20分の1以下、25分の1以下、30分の1以下の長さに設定することができる。また、長手軸方向xにおいて第2区間32の長さは、第1区間31の長さの50分の1以上、45分の1以上、あるいは30分の1以上の長さに設定されてもよい。
【0091】
図12から理解できるように第2区間32の第2クラッド27の平均厚みは、第1区間31の第1クラッド26の平均厚みよりも小さいことが好ましい。このようにクラッドの厚みを調整することで、第1区間31ではコア25内に光が閉じ込められやすくなり、第2区間32では第2クラッド27から光が径方向の外方に射出されやすくなる。ここで、クラッドの厚みは、キーエンス社製レーザー顕微鏡 VK-X3000を用いて測定することができる。
【0092】
図13図14に示すように、光ファイバー部材20が第1区間31を有している場合、光ファイバー部材20は、光拡散部21に、クラッドが存在せず第1区間31よりも遠位側に位置している第3区間33を有していてもよい。第3区間33ではクラッドが存在しないことにより、コア25からの光がシャフト10の径方向の外方に射出される。
【0093】
第3区間33では、コア25の周方向の少なくとも一部でクラッドが存在していないことが好ましく、コア25の周方向の全体でクラッドが存在していないことがより好ましい。
【0094】
光ファイバー部材20単体で見たときに、光ファイバー部材20の第3区間33において、径方向の最も外側に位置しているのはコア25であることが好ましい。但し、図13図14に示すように、第3区間33の少なくとも一部が第2コイル部材60により覆われていてもよい。すなわち、第3区間33では、クラッドだけでなく、コア25と第2コイル部材60以外のあらゆる部材(例えば被覆材)が配されていなくてもよい。
【0095】
長手軸方向xにおいて、第3区間33のコア25の外径は一定の値であってもよく、長手軸方向xの位置によってコア25の外径が異なる値であってもよい。
【0096】
図13図14に示すように、長手軸方向xにおいて、第3区間33の遠位端は、コア25の遠位端と同じ位置にあることが好ましい。第3区間33を形成しやすくなり、光ファイバー部材20の遠位端部での柔軟性も高めることができる。
【0097】
第3区間33のコア25の外表面の表面粗さは、第1区間31の第1クラッド26の外表面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。第1区間31ではコア25内に光が閉じ込められやすくなり、第3区間33ではコア25から光が径方向の外方に射出されやすくなる。
【0098】
光拡散部21には第2区間32と第3区間33の少なくともいずれか一方が配されていることが好ましく、第2区間32と第3区間33の両方が配されていてもよい。図13に示すように、光拡散部21には、その近位側から遠位側に向かって順に第2区間32、第3区間33が配されていることが好ましい。この構成により、長手軸方向xにおいて光拡散部21の発光強度分布が均一化されやすくなる。この効果を高めるためには、長手軸方向xにおいて第1区間31と第2区間32と第3区間33は隣接していることが好ましく、より詳細には、第1区間31と第2区間32が隣接しており、第2区間32と第3区間33が隣接していることが好ましい。
【0099】
光ファイバー部材20が第2区間32と第3区間33を有している場合、図13に示すように長手軸方向xにおいて第2区間32よりも第3区間33の方が短いことが好ましい。この構成により、長手軸方向xにおける露出部22の全体の発光強度分布を均一化させやすくなる。なお、長手軸方向xにおいて第3区間33よりも第2区間32の方が短い態様も許容される。
【0100】
長手軸方向xにおいて第3区間33の長さは、第2区間32および第3区間33の合計長さの20%以下の大きさであることが好ましく、18%以下の大きさであることがより好ましく、15%以下の大きさであることがさらに好ましい。また、長手軸方向xにおいて第3区間33の長さは、第2区間32および第3区間33の合計長さの5%以上、8%以上、あるいは10%以上の大きさであってもよい。この構成により、長手軸方向xにおける露出部22の発光強度分布を均一化させやすくなる。
【0101】
第2区間32の第2クラッド27の外表面の表面粗さの平均値は、第3区間33のコア25の外表面の表面粗さの平均値よりも小さいことが好ましい。この構成により、第2区間32と第3区間33のそれぞれで、長手軸方向xにおける発光強度分布を均一化させやすくなる。
【0102】
図12に示すように、光ファイバー部材20は、光拡散部21に第2区間32のみを有していてもよい。すなわち、光ファイバー部材20は、光拡散部21に第3区間33を有していなくてもよい。第2区間32のみを有する構成であっても、長手軸方向xにおける露出部22の発光強度分布を均一化させることができる。コア25が露出していないため、手技中の装置1の曲げに伴う光ファイバー部材20の損傷を防ぐ効果も有する。
【0103】
光ファイバー部材20が、光拡散部21に第2区間32のみを有している場合、長手軸方向xにおいて、第2区間32の遠位端がコア25の遠位端と同じ位置にあることが好ましい。
【0104】
図14に示すように、光ファイバー部材20は、光拡散部21に第3区間33のみを有していてもよい。すなわち、光ファイバー部材20は、光拡散部21に第2区間32を有していなくてもよい。第3区間33のみを有する構成であっても、長手軸方向xにおける露出部22の発光強度分布を均一化させることができる。
【0105】
第2区間32および第3区間33は、エッチングや研磨によりクラッドを剥離させることで形成することができる。第2区間32や第3区間33の表面粗さを調整するために、第2クラッド27の外表面や第3区間33のコア25の外表面に凹凸が形成されていてもよい。凹凸は、機械的または化学的に第2クラッド27または第3区間33のコア25の表面を荒らすことで形成可能である。表面を荒らす方法としては、エッチング加工、ブラスト加工、けがき針、ワイヤブラシ、またはサンドペーパーを用いる方法が挙げられる。
【0106】
光拡散部21からは治療用の第1光線が射出されればよい。第1光線は、体内組織を照射し、PDTやPITといった光治療に適した波長のレーザー光であることが好ましい。第1光線のほか、標的化用の第2光線が射出されてもよい。第2光線は、第1光線の射出前に治療部位を把握するために射出される光線であり、第1光線よりも放射エネルギーが低いことが好ましい。
【0107】
図15に示すように、光ファイバー部材20は、その遠位端面に反射材200を有していることが好ましい。反射材200とは、例えば反射面が近位側を向くように配されたミラーである。この構成により、第2コイル部材60の内表面だけでなく反射材200によっても光を反射することができるため、反射光が様々な方向に拡散されやすくなる。
【0108】
反射材200の表面は、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、二酸化チタン、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、またはフッ化マグネシウムから構成されていることが好ましい。
【0109】
反射材200の形状は特に限定されないが、例えば、板状、円柱状、多角柱状等の形状にすることができる。
【符号の説明】
【0110】
1:光照射医療装置
10:シャフト
11:内腔
12:内表面
13:外表面
15:先端チップ
20:光ファイバー部材
21:光拡散部
22:露出部
23:光ファイバー部材の外表面
24:光拡散部の外表面
25:コア
26:第1クラッド
27:第2クラッド
200:反射材
31:第1区間
32:第2区間
323:遠位部
324:近位部
33:第3区間
40:第1コイル部材
401:第1コイル部材の遠位端
402:第1コイル部材の近位端
42:線材
43:内表面
44:外表面
45:外側端面
46:内側端面
450:蓋部
50:筒部材
501:筒部材の遠位端
502:筒部材の近位端
53:内表面
54:外表面
55:外側端面
56:内側端面
550:蓋部
60:第2コイル部材
601:第2コイル部材の遠位端
602:第2コイル部材の近位端
62:線材
63:内表面
64:外表面
65:外側端面
66:内側端面
650:蓋部
70:ハンドル
x:長手軸方向
p:周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15