(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136906
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】光照射医療装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/067 20060101AFI20240927BHJP
A61N 5/06 20060101ALI20240927BHJP
A61B 18/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61N5/067
A61N5/06 Z
A61B18/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048210
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 弘規
(72)【発明者】
【氏名】清水 一朗
【テーマコード(参考)】
4C026
4C082
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026FF17
4C026FF34
4C026FF37
4C026FF39
4C082PG11
4C082PG13
4C082RA02
4C082RE17
4C082RE35
4C082RE37
4C082RE38
(57)【要約】
【課題】細径化しやすく、操作性に優れた光照射医療装置を提供する。
【解決手段】遠位側に向けて内腔が狭くなる減径部14を有している樹脂チューブ10と、樹脂チューブ10の内腔11に配置されており、遠位部の所定区間に樹脂チューブ10の長手軸方向xに延在しており樹脂チューブ10の径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部21を有する光ファイバー20と、樹脂チューブ10の内腔11に配置されており、光ファイバー20を周回するように線材42がらせん状に巻回されているコイル部材40と、を有し、コイル部材40の遠位端部と樹脂チューブ10の減径部14の内表面140とが当接するように、樹脂チューブ10の内腔11においてコイル部材40が樹脂チューブ10の長手軸方向xに移動する光照射医療装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位側に向けて内腔が狭くなる減径部を有している樹脂チューブと、
前記樹脂チューブの内腔に配置されており、遠位部の所定区間に前記樹脂チューブの長手軸方向に延在しており前記樹脂チューブの径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部を有する光ファイバーと、
前記樹脂チューブの内腔に配置されており、前記光ファイバーを周回するように線材がらせん状に巻回されているコイル部材と、を有し、
前記コイル部材の遠位端部と前記樹脂チューブの減径部の内表面とが当接するように、前記樹脂チューブの内腔において前記コイル部材が前記樹脂チューブの長手軸方向に移動する光照射医療装置。
【請求項2】
前記樹脂チューブの減径部の外径は、遠位側に向けて小さくなっている請求項1に記載の光照射医療装置。
【請求項3】
前記コイル部材は、その遠位端部に、遠位側に向けて外径が小さくなっている減径部を有している請求項1に記載の光照射医療装置。
【請求項4】
前記コイル部材の減径部と、前記樹脂チューブの減径部の内表面とが当接する請求項3に記載の光照射医療装置。
【請求項5】
前記コイル部材の減径部を構成している前記線材は、その全長にわたって前記樹脂チューブの減径部の内表面に当接する請求項3または4に記載の光照射医療装置。
【請求項6】
前記光拡散部が前記樹脂チューブの減径部の遠位端よりも遠位側に配置されている請求項1~4のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
【請求項7】
前記樹脂チューブの内腔には空隙が存在しており、該空隙に前記コイル部材が配置されている請求項1~4のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
【請求項8】
前記樹脂チューブの近位部に接続されているハンドルをさらに有し、
前記ハンドルは、前記樹脂チューブの内腔における前記コイル部材の前記樹脂チューブの長手軸方向における位置を調節するように構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管や消化管等の体内管腔において、がん細胞等の組織に光を照射するための光照射医療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線力学的療法(Photodynamic Therapy:PDT)では、光増感剤を静脈注射や腹腔内投与で体内に投与し、がん細胞等の対象組織に光増感剤を集積させ、特定の波長の光を照射することにより光増感剤を励起させる。励起された光増感剤が基底状態に戻るときにエネルギー転換が生じ、活性酸素種を発生させる。活性酸素種が対象組織を攻撃することにより、対象組織を除去することができる。レーザー光を用いたアブレーションでは、対象組織にレーザー光を照射し、焼灼することが行われる。このような光照射を行うための装置が提案されている。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、レーザー発振器からのレーザー光が導光される光ファイバーが内部に挿通され、当該光ファイバーの先端部から照射されるレーザー光を吸収する所定の液体が充填されるチューブを備え、チューブの内面に光ファイバーが発する熱に耐え得る高融点でかつ所定の剛性を有する材料からなる補強部材が設けられたカテーテルが開示されている。また、カテーテルの操作性を高めるため、補強部材はコイル状部材により構成されることができることが開示されており、光ファイバーの先端部が当たるストッパとして機能する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-152094号公報
【特許文献2】特開2005-152093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載されているような前方照射型の光照射装置は、腫瘍等の対象組織の全体を照射するためには、ある場所で光を射出した後に対象組織に対する発光部位の位置を少しずらして再び光を射出するという操作を複数回行う必要があった。また、腫瘍の発生場所や形状によっては照射が行いにくいこともあった。また、特許文献1および特許文献2に記載されているような補強部材が光ファイバーの遠位端よりも遠位側に備えられることによって、チューブ自体の細径化を十分に行うことが困難で、肺などの細い管に存在する病変を治療するような際には光ファイバーを患部の近くまで挿入することができなかった。また、チューブ等を細くしようとするとその内腔に入れておける部材の大きさや数に限界があるため、細径化しつつも操作性を上げることが困難であった。そこで本発明は、光ファイバーを患部により近づけることによって治療効率をあげることができ、操作性も向上させることができる光照射医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得た本発明の光照射医療装置の一実施態様は下記の通りである。
[1] 遠位側に向けて内腔が狭くなる減径部を有している樹脂チューブと、
前記樹脂チューブの内腔に配置されており、遠位部の所定区間に前記樹脂チューブの長手軸方向に延在しており前記樹脂チューブの径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部を有する光ファイバーと、
前記樹脂チューブの内腔に配置されており、前記光ファイバーを周回するように線材がらせん状に巻回されているコイル部材と、を有し、
前記コイル部材の遠位端部と前記樹脂チューブの減径部の内表面とが当接するように、前記樹脂チューブの内腔において前記コイル部材が前記樹脂チューブの長手軸方向に移動する光照射医療装置。
【0007】
光照射医療装置の樹脂チューブが減径部を有していることにより、樹脂チューブ自体を細径化しやすくすることができる。これにより、細い管にも挿入しやすく、光ファイバーを患部により近づけることができ、治療効率をあげることができる。また、樹脂チューブの長手軸方向におけるコイル部材の位置を調整することによって減径部付近の屈曲のしやすさを調整することができ、操作性を向上させることができる。
【0008】
本発明の光照射医療装置は、以下の[2]~[8]であることが好ましい。
[2] 前記樹脂チューブの減径部の外径は、遠位側に向けて小さくなっている[1]に記載の光照射医療装置。
[3] 前記コイル部材は、その遠位端部に、遠位側に向けて外径が小さくなっている減径部を有している[1]または[2]に記載の光照射医療装置。
[4] 前記コイル部材の減径部と、前記樹脂チューブの減径部の内表面とが当接する[3]に記載の光照射医療装置。
[5] 前記コイル部材の減径部を構成している前記線材は、その全長にわたって前記樹脂チューブの減径部の内表面に当接する[3]または[4]に記載の光照射医療装置。
[6] 前記光拡散部が前記樹脂チューブの減径部の遠位端よりも遠位側に配置されている[1]~[5]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
[7] 前記樹脂チューブの内腔には空隙が存在しており、該空隙に前記コイル部材が配置されている[1]~[6]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
[8] 前記樹脂チューブの近位部に接続されているハンドルをさらに有し、
前記ハンドルは、前記樹脂チューブの内腔における前記コイル部材の前記樹脂チューブの長手軸方向における位置を調節するように構成されている[1]~[7]のいずれか一項に記載の光照射医療装置。
【発明の効果】
【0009】
光照射医療装置の樹脂チューブが減径部を有していることにより、樹脂チューブ自体を細径化しやすくすることができる。これにより、細い管にも挿入しやすく、光ファイバーを患部により近づけることができ、治療効率をあげることができる。また、樹脂チューブの長手軸方向におけるコイル部材の位置を調整することによって減径部付近の屈曲のしやすさを調整することができ、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光照射医療装置の断面図(一部側面図)である。
【
図2】
図1に示した光照射医療装置のII-II線における切断部端面図である。
【
図3】
図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
【
図4】
図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
【
図5】
図1に示した光ファイバーの遠位側を拡大した断面図である。
【
図6】
図1に示した光ファイバーの変形例を示す断面図である。
【
図7】
図1に示した光ファイバーの他の変形例を示す断面図である。
【
図8】
図1に示した光ファイバーの他の変形例を示す断面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る光照射医療装置の遠位側を拡大した断面図(一部側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定されることはなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。各図において、便宜上、ハッチングや符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図を参照するものとする。また、図面における種々部品の寸法は、本発明の特徴を理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
本発明の光照射医療装置の一実施態様は、遠位側に向けて内腔が狭くなる減径部を有している樹脂チューブと、樹脂チューブの内腔に配置されており、遠位部の所定区間に樹脂チューブの長手軸方向に延在しており樹脂チューブの径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部を有する光ファイバーと、樹脂チューブの内腔に配置されており、光ファイバーを周回するように線材がらせん状に巻回されているコイル部材と、を有し、コイル部材の遠位端部と樹脂チューブの減径部の内表面とが当接するように、樹脂チューブの内腔においてコイル部材が樹脂チューブの長手軸方向に移動する点に要旨を有する。
【0013】
光照射医療装置は、PDTや光アブレーションにおいて血管や消化管等の体内管腔で、がん細胞等の対象組織である処置部に対して特定の波長の光を照射するために用いられる。光照射医療装置は、単独で処置部まで送達されるものであってもよく、送達用のカテーテルや内視鏡と共に用いられてもよい。内視鏡を用いた治療では、内視鏡の鉗子チャンネルを通じて光照射医療装置が体内に配置され、処置部まで送達される。
【0014】
図1~
図9を参照しながら、光照射医療装置の基本構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光照射医療装置の断面図(一部側面図)である。
図2は、
図1に示した光照射医療装置のII-II線における切断部端面図である。
図3、
図4は、
図1に示した光照射医療装置の変形例を示す断面図(一部側面図)である。
図5は、
図1に示した光ファイバーの遠位側を拡大した断面図である。
図6は、
図1に示した光ファイバーの変形例を示す断面図である。
図7は、
図1に示した光ファイバーの他の変形例を示す断面図である。
図8は、
図1に示した光ファイバーの他の変形例を示す断面図である。
図9は、本発明の他の実施形態に係る光照射医療装置の遠位側を拡大した断面図(一部側面図)である。光照射医療装置1は、樹脂チューブ10と光ファイバー20とコイル部材40を有している。以下では光照射医療装置を単に装置と称することがある。
【0015】
本明細書において、装置1の遠位側とは、樹脂チューブ10の長手軸方向xの遠位端側であって処置対象側を指す。装置1の近位側とは、樹脂チューブ10の長手軸方向xの近位端側であって使用者の手元側を指す。各部材を樹脂チューブ10の長手軸方向xにおいて二等分割したときの近位側を近位部、遠位側を遠位部と称することがある。装置1の径方向において、内方は樹脂チューブ10の長手軸方向xに延びる中心軸cに向かう方向を指し、外方は内方とは反対の放射方向を指す。
【0016】
図1に示すように、装置1は、樹脂チューブ10を有している。樹脂チューブ10は内腔11を有している。樹脂チューブ10は、遠位側に向けて内腔11が狭くなる減径部14を有している。
【0017】
図1に示すように、装置1は、樹脂チューブ10の内腔11に配置されている光ファイバー20を有している。光ファイバー20は、その遠位部の所定区間に樹脂チューブ10の長手軸方向xに延在しており、樹脂チューブ10の径方向の外方に向かって光を射出する光拡散部21を有している。
【0018】
図1に示すように、装置1は、樹脂チューブ10の内腔11に配置されており、光ファイバー20を周回するように線材42がらせん状に巻回されているコイル部材40を有する。
【0019】
コイル部材40は、樹脂チューブ10の内腔11において樹脂チューブ10の長手軸方向xに移動する。樹脂チューブ10の内腔11においてコイル部材40を遠位側に移動させたとき、
図1に示すように、コイル部材40の遠位端部と樹脂チューブ10の減径部14の内表面140とが当接する。
【0020】
装置1の樹脂チューブ10が減径部14を有していることにより、樹脂チューブ10自体を細径化しやすくすることができる。これにより、細い管にも挿入しやすく、光ファイバー20を患部により近づけることができ、治療効率をあげることができる。また、樹脂チューブ10の長手軸方向xにおけるコイル部材40の位置を調整することによって減径部14付近の屈曲のしやすさを調整することができ、操作性を向上させることができる。
【0021】
樹脂チューブ10は長手軸方向xと径方向と周方向pを有している。樹脂チューブ10は、長手軸方向xに遠位端と近位端を有し、かつ長手軸方向xに延在している内腔11を有することが好ましい。樹脂チューブ10は、内腔11を1つのみ有していてもよく、複数有していてもよい。樹脂チューブ10はその内腔11に光ファイバー20およびコイル部材40を配置するために筒形状を有している。樹脂チューブ10は、内腔11を1つのみ有する筒形状を有していることが好ましい。樹脂チューブ10は体内に挿入されるため、好ましくは可撓性を有している。樹脂チューブ10は内表面12と外表面13を有している。
【0022】
樹脂チューブ10は、例えば押出成形によって製造することができる。樹脂チューブ10は、単層であってもよいし、複数層から構成されていてもよい。樹脂チューブ10は長手軸方向xまたは周方向pの一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0023】
樹脂チューブ10は、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン)、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリエーテルポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA、ETFE)等の合成樹脂から構成することができる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂チューブ10のうち少なくとも後述する光拡散部21と重なる部分は、光透過性を有する樹脂から構成されていることが好ましい。樹脂チューブ10のうち少なくとも光拡散部21と重なる部分は、透明樹脂から構成されていてもよい。
【0024】
図1に示すように、樹脂チューブ10は、遠位側に向けて内腔11が狭くなる減径部14を有している。これにより、樹脂チューブ10自体を細径化しやすくすることができるため、細い管にも挿入しやすく、光ファイバー20を患部により近づけることができ、治療効率をあげることができる。
【0025】
樹脂チューブ10の減径部14の外径は遠位側に向けて小さくなっていることが好ましい。これにより、樹脂チューブ10を細径化しやすくすることができる。このため、細い管にも挿入しやすく、光ファイバー20を患部により近づけやすくすることができ、治療効率をあげやすくすることができる。
【0026】
減径部14は、樹脂チューブ10の遠位部であって、その遠位端よりも近位側に位置していることが好ましい。これにより、樹脂チューブ10の内腔11であって減径部14よりも遠位側に光ファイバー20を配しやすくすることができる。また、樹脂チューブ10の内腔11であって、減径部14の遠位端よりも近位側にコイル部材40を配置しやすくすることができる。
【0027】
図1に示すように樹脂チューブ10の遠位端には先端チップ18が取り付けられていてもよい。樹脂チューブ10の遠位端部による生体組織の損傷を回避することができる。先端チップ18の形状としては、例えば円柱形状、長円柱形状、半球形状、長円球形状、角錐台形状、円錐台形状、長円錐台形状、角丸錐台形状、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0028】
光ファイバー20は、対象組織まで光信号を送信する伝送路である。光ファイバー20は外表面23を有している。
図1に示すように光ファイバー20は、樹脂チューブ10の内腔11に配置されている。
図1では光ファイバー20の近位端部は後述するハンドル60から近位側に向かって延出している。光ファイバー20の近位端部は半導体レーザー等の光源に接続される。
【0029】
光拡散部21は径方向の外方に向かって発光することができる発光エリアとして機能する。光拡散部21は、樹脂チューブ10の長手軸方向xおよび周方向pに延在するように配されている。光拡散部21は外表面24を有している。光拡散部21の外表面24は、光ファイバー20の外表面23のうちの一部である。光拡散部21の外表面24は樹脂チューブ10の内表面12側に面している。
【0030】
内視鏡を通じて、装置1を体腔内の対象組織がある位置まで挿入する。このとき、対象組織が樹脂チューブ10の外表面13よりも径方向の外方に位置するように配される。光拡散部21から射出された光が樹脂チューブ10のうち少なくとも光拡散部21と重なる部分を透過することで、装置1の周りにある対象組織に光が到達する。
【0031】
上述のように、光拡散部21からは、少なくとも樹脂チューブ10の径方向の外方に向かって光が射出されることが好ましい。また、光拡散部21からは、樹脂チューブ10の周方向pの全体に亘り、樹脂チューブ10の径方向の外方に向かって光が射出されることが好ましい。光拡散部21からは、さらに樹脂チューブ10の遠位方向、すなわち前方に向かって光が射出されてもよい。
【0032】
光拡散部21は、光ファイバー20とは別個の拡散部材(例えば拡散板やプリズム)から構成させている部分ではなく、光ファイバー20の一部を構成する部分である。光ファイバー20はコアとクラッドを有している。クラッドはコアの外周に配されて、コアの径方向の外方の一部を覆っている。光拡散部21は、(i)コアのみ配されている態様、(ii)コアおよびクラッドが配されている態様、または(iii)一部にコアのみが配されており、他部にコアおよびクラッドが配されている態様、のいずれかから構成されていることが好ましい。クラッドの径方向の外方には保護用の被覆材が配されていてもよいが、光拡散部21ではコアおよびクラッド以外の部材は配されていなくてもよい。
【0033】
コアおよびクラッドを構成する材料は特に限定されず、プラスチック、石英ガラス、フッ化物ガラス等のガラスを用いることができる。
【0034】
樹脂チューブ10のうち少なくとも光拡散部21と重なる部分では、樹脂チューブ10を構成する樹脂に酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機系粒子、架橋アクリル系粒子、架橋スチレン系粒子等の有機系粒子の光拡散性の材料を添加することができる。光拡散部21から射出される光が樹脂チューブ10によって一層拡散されやすくなる。
【0035】
光拡散部21は、光ファイバー20の最も遠位側に配されていることが好ましい。これにより光拡散部21の形成が行いやすくなり、光ファイバー20の遠位端部での柔軟性も高めることができる。
【0036】
長手軸方向xにおいて光拡散部21の長さは光ファイバー20の全長の50分の1以上、45分の1以上、30分の1以上の長さに設定されてもよい。このような長さに設定することで一度の照射で対象組織全体を照射しやすくなる。また、長手軸方向xにおいて光拡散部21の長さは光ファイバー20の全長の20分の1以下、25分の1以下、30分の1以下の長さに設定されてもよい。このような長さに設定することで対象外の組織への照射を防ぐことができる。
【0037】
光拡散部21は、樹脂チューブ10の周方向pの一部のみに配されていてもよいが、
図2に示すように、光拡散部21は、樹脂チューブ10の周方向pの全体に配されていることが好ましい。周方向pの広範囲を一度に照射することができるため、手技の効率化が図られる。
【0038】
図1、
図2に示すように、樹脂チューブ10の内表面12と光拡散部21の外表面24が接していてもよい。これにより、長手軸方向xにおいて、樹脂チューブ10のうち光拡散部21が配置されている部分を細径化しやすくすることができるため、光拡散部21を患部により近づけることができる装置1にしやすくすることができる。これにより、細部まで光を照射しやすくすることができ、治療効率をあげることができる。また、樹脂チューブ10の内表面12と光拡散部21の外表面24が接していることにより、当該箇所では光拡散部21と樹脂チューブ10との間に隙間がなくなることによって光拡散部21が補強され、光拡散部21に強度を付与することができる。このため光拡散部21の耐破損性を向上させやすくすることができる。なお、樹脂チューブ10の内表面12と光拡散部21の外表面24が接していなくても構わない。
【0039】
図4に示すように、光拡散部21が樹脂チューブ10の減径部14の遠位端よりも遠位側に配置されていることが好ましい。光拡散部21の一部のみが樹脂チューブ10の減径部14の遠位端よりも遠位側に配置されていてもよいが、光拡散部21全体が樹脂チューブ10の減径部14の遠位端よりも遠位側に配置されていることがより好ましい。これにより、樹脂チューブ10のうち、その内腔11に光拡散部21が配置されている部分を細径化しやすくすることができる。このため、光拡散部21を患部により近づけることができる装置1にしやすくすることができる。
【0040】
図1に示すように、樹脂チューブ10は、減径部14よりも遠位側ではその外径および内径が一定の大きさであることが好ましい。ここで外径や内径が一定の大きさであるとは±5%以内の大きさの変動を含むものとする。特に、長手軸方向xにおいて内径が一定の大きさであることにより、減径部14よりも遠位側における樹脂チューブ10の内腔11に光ファイバー20を挿入しやすくなる。
【0041】
図3に示すように、樹脂チューブ10は、減径部14よりも遠位側に、遠位側に向けて外径が小さくなっている先端部16を有していてもよい。その場合、先端部16に光拡散部21が配されることが好ましい。これにより、樹脂チューブ10のうち、内腔11に光拡散部21が配置されている部分を細径化しやすくすることができる。このため、光拡散部21を患部により近づけることができる装置1となる。先端部16では、樹脂チューブ10の内径は一定の大きさであることが好ましいが、樹脂チューブ10の内径が遠位側に向けて小さくなっていてもよい。その場合、光拡散部21の外径も同様に遠位側に向けて小さくなっていることが好ましい。
【0042】
先端部16において外径が変化する割合は、減径部14において外径が変化する割合よりも小さいことが好ましい。先端部16において外径が変化する割合とは、先端部16における最大外径と最小外径との差を長手軸方向xにおける先端部16の長さで除した値である。減径部14において外径が変化する割合とは、減径部14における最大外径と最小外径との差を長手軸方向xにおける減径部14の長さで除した値である。先端部16において外径が変化する割合を比較的小さくすることにより、所定の内径を有している体腔に、先端部16をより長く挿入しやすくすることができる。
【0043】
図1に示すように、コイル部材40は、遠位端401と近位端402と内表面403と外表面404を有している。長手軸方向xにおいてコイル部材40の全体が、樹脂チューブ10の内腔11に配置されていてもよい。図示しないが、コイル部材40の一部が樹脂チューブ10の近位端から突出していても構わない。上記コイル部材40の存在により、樹脂チューブ10の内表面12のうち減径部14よりも近位側に位置している部分と光ファイバー20の外表面23が接していなくてもよい。
【0044】
樹脂チューブ10の内腔11においてコイル部材40を遠位側に移動させたとき、
図1に示すように、コイル部材40の遠位端401と減径部14の内表面140とが当接することがより好ましい。当該構成により、樹脂チューブ10の減径部14にほどよい剛性を付与することができるため、細径化しつつも操作性を向上させやすくすることができる。
【0045】
樹脂チューブ10の内腔11には空隙が存在しており、該空隙にコイル部材40が配置されていることが好ましい。樹脂チューブ10の内表面12と光ファイバー20の外表面23との間には空隙が存在しており、該空隙にコイル部材40が配置されていることも好ましい。これにより、樹脂チューブ10の長手軸方向xにおけるコイル部材40の移動を行いやすくなる。
【0046】
コイル部材40は、他の部材に埋入されていないことが好ましい。例えば、樹脂チューブ10や、それ以外に別途設けられた樹脂チューブなどに埋入されていないことが好ましい。
【0047】
線材42はその長手軸方向に先端と基端を有している。線材42は先端から基端まで単一の線状部材から構成されていてもよく、線材42はその長手軸方向において互いに連結された複数の線状部材から構成されてもよい。
【0048】
線材42の長手軸方向に垂直な断面の形状は、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらの組み合わせであってもよい。長円形状には楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれるものとする。本明細書の他の説明においても同様である。
【0049】
コイル部材40を構成する線材42の線径(太さ)や、線材42の巻き数は特に限定されない。例えば、使用する樹脂チューブ10の内径などに応じて適宜設定すればよい。コイル部材40の軸方向の長さはコイル部材40の最大外径より大きくても小さくてもよい。
【0050】
樹脂チューブ10の長手軸方向xにおいてコイル部材40の外径は一定であってもよく、長手軸方向xの位置によってコイル部材40の外径が異なっていてもよい。例えば、長手軸方向xにおいてコイル部材40を遠位部と近位部に二等分割したときに、コイル部材40の遠位部の平均外径が、コイル部材40の近位部の平均外径よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0051】
図1に示すように、コイル部材40は、その遠位端部に、遠位側に向けて外径が小さくなっている減径部44を有していることが好ましい。これにより、コイル部材40のうち減径部44が位置している部分の樹脂チューブ10の外径を小さくしやすくすることができる。
【0052】
図1に示すように、コイル部材40の減径部44と樹脂チューブ10の減径部14の内表面140とが当接することが好ましい。これにより、樹脂チューブ10の減径部14の内径を、コイル部材40の減径部44の外径に沿って小さくしやすくすることができるため、樹脂チューブ10の減径部14の外径も小さくしやすくすることができる。
【0053】
コイル部材40の減径部44を構成している線材42は、その全長にわたって樹脂チューブ10の減径部14の内表面140に当接することが好ましい。当該構成により、樹脂チューブ10の減径部14にほどよい剛性を付与することができるため、細径化しつつも操作性を向上させやすくすることができる。
【0054】
樹脂チューブ10の長手軸方向xにおいてコイル部材40の内径は一定であってもよく、長手軸方向xの位置によってコイル部材40の内径が異なっていてもよい。例えば、長手軸方向xにおいてコイル部材40を遠位部と近位部に二等分割したときに、コイル部材40の遠位部の平均内径が、コイル部材40の近位部の平均内径よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0055】
コイル部材40は、樹脂チューブ10よりも反射率が高い材料から構成されていることが好ましい。この構成により、コイル部材40の内表面403で反射光が拡散されやすくなる。ここで、反射率は光拡散部21から射出される光の反射率を指し、単位は%である。反射率は、オーシャンフォトニクス社製 反射率測定システム OP-RF-VIS-GT50を用いて測定することができる。
【0056】
コイル部材40は金属から構成されていることが好ましく、例えば、金、銀、白金、パラジウム、タングステン、タンタル、イリジウムおよびそれらの合金等の放射線不透過性金属でもよく、ステンレス鋼、Ni-Ti合金等の超弾性合金でもよい。
【0057】
コイル部材40の一部が樹脂から構成されていてもよい。コイル部材40が、コイル部材本体と、コイル部材本体の内表面に配されている反射層とを有していてもよい。コイル部材本体の材料によらず、反射層によって光拡散部21からの光を反射させることができる。例えば樹脂線材が巻回されたコイル体または樹脂チューブがコイル部材本体であってもよい。反射層は、コイル部材本体の内表面に反射材料を含むコート剤が塗布されることで配されてもよく、蒸着、スパッタリング、電気メッキ、化学メッキ等の方法で反射材料をコイル部材本体の内表面に付着させることにより配されてもよい。なお、反射層は金属薄膜であってもよい。反射材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、二酸化チタン、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウムまたはこれらの組み合わせが挙げられる。コイル部材40が反射層を有する場合、コイル部材本体には樹脂チューブ10の構成材料として挙げた材料の少なくともいずれか1つを用いることができる。
【0058】
本明細書において、コイル部材40が有しているピッチをピッチPと称する。ピッチPとは、
図1に示すようにコイル部材40を構成する隣り合う線材42の中心軸から中心軸までの間隔であって、最も長い長さを有する部分を指す。
【0059】
コイル部材40のピッチは特に限定されないが、コイル部材40は線材42の線径以上のピッチを有していることが好ましい。コイル部材40は、線材42の線径の1.1倍以上のピッチを有していてもよく、1.2倍以上のピッチを有していてもよい。また、コイル部材40は線材42の線径の3.0倍以下のピッチを有していてもよく、2.5倍以下のピッチを有していてもよい。コイル部材40のピッチPは軸方向において一定であってもよく、軸方向の位置によって異なっていてもよい。なお、コイル部材40に存在する全てのピッチPが上記の範囲内であってもよいし、一部のピッチPが上記の範囲内であってもよい。上記のようなピッチを有していることによって、柔軟性とほどよい剛性を持たせることができ、操作性を向上させやすくすることができる。
【0060】
コイル部材40は線材42の線径と同じピッチを有していてもよい。このようなコイルは、一般に密着巻きコイルと称される。密着巻きコイルでは、隣り合う2つの線材42の間に隙間がなく、コイル部材40から光が漏れにくいため好ましい。また、コイル部材40をマーカーとして使用する場合にも好ましい。
【0061】
線材42の線径が、その長手軸方向で変化している場合(例えば、所定の線径を有する太径部と、太径部よりも線径が細い細径部がある場合)には、コイル部材40は線材42の線径よりも小さいピッチを有していてもよい。
【0062】
コイル部材40は、単層巻きコイルであってもよく、多層巻きコイルであってもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。例えば
図1ではコイル部材40が単層巻きコイルである例を示している。
【0063】
図4に示すように、コイル部材40は、単層巻きされている第1コイル部40aと、第1コイル部40aよりも近位側に位置しており、多層巻きされている第2コイル部40bを有していていてもよい。多層巻きされている第2コイル部40bによりトルクが遠位側に伝わりやすくなり、装置1の操作性を高めることができる。なお、コイル部材40において、多層巻きされている第2コイル部40bは、単層巻きされている第1コイル部40aよりも遠位側に位置していてもよい。
【0064】
コイル部材40の線材42の一部が樹脂チューブ10の内表面12に接していてもよい。これにより、光ファイバー20の樹脂チューブ10の径方向における位置を安定させやすくすることができるため、操作性を向上させやすくすることができる。なお、コイル部材40の線材42は樹脂チューブ10の内表面12に接していなくても構わない。
【0065】
コイル部材40の遠位端部と減径部14の内表面140とは固定されていない。
【0066】
図1に示すように、光ファイバー20の光拡散部21がコイル部材40の遠位端401よりも遠位側に配置されていてもよい。光拡散部21の一部のみがコイル部材40の遠位端401よりも遠位側に配置されていてもよいが、光拡散部21の全体がコイル部材40の遠位端401よりも遠位側に配置されていることがより好ましい。これにより、樹脂チューブ10のうち、その内腔11に光拡散部21が配置されている部分を細径化しやすくすることができるため、光拡散部21を患部により近づけることができる装置1となる。これにより、治療効率をあげることができる。
【0067】
上記装置1が樹脂チューブ10の近位部に接続されているハンドル60をさらに有していてもよい。
図1では、樹脂チューブ10の近位部がハンドル60に接続されている。使用者がハンドル60を把持することで、装置1の操作が行いやすくなる。ハンドル60は、例えば長手軸方向xに延在している。ハンドル60は、一または複数の部材から構成することができる。
図1では、ハンドル60は長手軸方向xに延在している中空部61を有している。ハンドル60は例えば筒形状を有していてもよい。
図1では、中空部61に樹脂チューブ10と光ファイバー20とコイル部材40が挿通されている。
【0068】
ハンドル60は、樹脂チューブ10の内腔11におけるコイル部材40の樹脂チューブ10の長手軸方向xにおける位置を調節するように構成されていることが好ましい。例えば、ハンドル60は、コイル部材40を遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動させる機能を有する操作部65を有していてもよい。操作部65としては、例えば、アクチュエーターを用いることができる。より具体的には、
図1に示すように、操作部65は、樹脂チューブ10の内腔11において、コイル部材40の長手軸方向xにおける位置を調節可能なローラーであってもよい。
【0069】
ハンドル60の構成材料は特に限定されないが、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
【0070】
コイル部材40の近位部がハンドル60に接触していてもよいし、コイル部材40の近位端部がハンドル60に接触していてもよい。
【0071】
光ファイバー20の外表面23とコイル部材40の内表面403が固定されていてもよい。コイル部材40は光ファイバー20に直接固定されていてもよく、別の部材を介して間接的に固定されていてもよい。コイル部材40と光ファイバー20の固定方法は特に限定されないが、例えば、溶着、溶接、かしめ等の圧着、接着剤による接着、係合、連結、結着、結紮等の物理的な固定等の方法、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。この場合、コイル部材40と光ファイバー20は固定されている状態で遠位側から近位側および近位側から遠位側の少なくともいずれか一方に向かって移動可能であることが好ましい。なお、光ファイバー20の外表面23とコイル部材40の内表面403が固定されていなくてもよい。
【0072】
図5~
図8を参照しながら光ファイバー20の構成例を説明する。
図5~
図8では、光ファイバー20は、長手軸方向xに延在しているコア25を有し、光ファイバー20は、コア25の外周に配されている第1クラッド26を有している第1区間31を有している。第1区間31では、コア25と第1クラッド26の境界で光が全反射しやすくなるため、第1区間31では、光がコア25内に閉じ込められながら光ファイバー20の遠位側に伝搬される。
【0073】
第1区間31では、1つの第1クラッド26の中に1つのコア25が配されていることが好ましい。第1区間31では、光ファイバー20をシングルコア光ファイバーと言い換えることができる。
【0074】
光ファイバー20のプロファイルの増加を防ぐために、第1区間31では第1クラッド26が光ファイバー20の径方向の最も外側に位置していてもよい。すなわち、第1区間31には被覆材などの他の部材が配されなくてもよい。
【0075】
図示していないが、光ファイバー20の第1区間31には、第1クラッド26の外周に被覆材が配されていてもよい。第1区間31の外側を保護することが可能となり、第1区間31において外への光漏れや射出を抑制することもできる。被覆材は、第1クラッド26の外表面上に配される被覆層であってもよく、第1クラッド26を内包するシースであってもよい。被覆材は、紫外線硬化樹脂等の樹脂から構成することができる。
【0076】
図5では、光ファイバー20が、光拡散部21に、コア25の外周に配されており第1クラッド26よりも外表面の表面粗さが大きい第2クラッド27を有している第2区間32を有している態様を示している。第2区間32は第1区間31よりも遠位側に位置している。第1区間31よりも第2区間32でクラッドの表面粗さを大きくすることで、光の一部はコア25内に閉じ込められながら光ファイバー20の遠位側に伝搬され、残りの光は第2クラッド27から外に漏れて径方向の外方に射出される。なお、第1区間31では光が径方向の外方に射出されないか、または第2区間32よりも光の漏れ量が小さいことが好ましい。
【0077】
第1区間31と同様に、第2区間32では、1つの第2クラッド27の中に1つのコア25が配されていることが好ましい。第1区間31と第2区間32は一の光ファイバーから構成されていてもよい。第1区間31の第1クラッド26と第2区間32の第2クラッド27は一体成形されていてもよい。光ファイバー20は、第1区間31用の光ファイバーと第2区間32用の光ファイバーが長手軸方向xに接合されることによって形成されていてもよい。第1区間31の第1クラッド26と第2区間32の第2クラッド27は別々に形成された後で接合されてもよい。
【0078】
第2区間32では、第2クラッド27が光ファイバー20の径方向の最も外側に位置していることが好ましい。すなわち、第2区間32では、コア25と第2クラッド27以外の部材(例えば被覆材)が配されていないことが好ましい。この構成により、第2区間32から樹脂チューブ10の径方向の外方に向かって光を射出することができる。
【0079】
第2区間32の第2クラッド27の外表面の表面粗さは、第1区間31の第1クラッド26の外表面の表面粗さよりも大きい。ここで、表面粗さは、光ファイバー20の外表面の長手軸方向における粗さ曲線の基準長さ間での算術平均粗さRaである。基準長さは、使用するレーザー顕微鏡の拡大率に応じて設定すればよいが、例えば200μmである。上記算術平均粗さRaは、JIS B 0601(2001)に規定される算術平均粗さRaに相当し、JIS B 0633(2001)に準じて測定される。測定には、JIS B 0651(2001)に規定される測定機(例えば、キーエンス社製レーザー顕微鏡 VK-X3000)を用いる。
【0080】
第2区間32の第2クラッド27の外表面の表面粗さの平均値が、第1区間31の第1クラッド26の外表面の表面粗さの平均値よりも大きいことが好ましい。第1区間31ではコア25内に光が閉じ込められやすくなり、第2区間32では第2クラッド27から光が径方向の外方に射出されやすくなる。その結果、長手軸方向xにおいて光拡散部21の発光強度分布が均一化されやすくなる。表面粗さの平均値とは、測定対象となる区間(例えば第1区間31)において、長手軸方向xに並ぶように設定された10点以上の測定点の表面粗さ値の平均値である。
【0081】
図5に示すように長手軸方向xにおいて第2区間32を遠位部323と近位部324に二等分割したときに、近位部324における第2クラッド27の外表面の表面粗さの平均値が、遠位部323における第2クラッド27の外表面の表面粗さの平均値よりも小さいことが好ましい。この構成により、近位部324では遠位部323よりもコア25内に光を閉じ込める効果を高めつつ、遠位部323では第2クラッド27から径方向の外方に向かって光が射出されやすくなるため、長手軸方向xにおいて第2区間32の発光強度分布が均一化されやすくなる。
【0082】
長手軸方向xにおいて第1区間31よりも第2区間32の方が短いことが好ましい。光拡散部21を形成しやすくなり、光ファイバー20の遠位端部での柔軟性も高めることができる。長手軸方向xにおいて第2区間32の長さは、第1区間31の長さの20分の1以下、25分の1以下、30分の1以下の長さに設定することができる。また、長手軸方向xにおいて第2区間32の長さは、第1区間31の長さの50分の1以上、45分の1以上、あるいは30分の1以上の長さに設定されてもよい。
【0083】
図5から理解できるように第2区間32の第2クラッド27の平均厚みは、第1区間31の第1クラッド26の平均厚みよりも小さいことが好ましい。このようにクラッドの厚みを調整することで、第1区間31ではコア25内に光が閉じ込められやすくなり、第2区間32では第2クラッド27から光が径方向の外方に射出されやすくなる。ここで、クラッドの厚みは、キーエンス社製レーザー顕微鏡 VK-X3000を用いて測定することができる。
【0084】
図6、
図7に示すように、光ファイバー20が第1区間31を有している場合、光ファイバー20は、光拡散部21に、クラッドが存在せず第1区間31よりも遠位側に位置している第3区間33を有していてもよい。第3区間33ではクラッドが存在しないことにより、コア25からの光が樹脂チューブ10の径方向の外方に射出される。
【0085】
第3区間33では、コア25の周方向の少なくとも一部でクラッドが存在していないことが好ましく、コア25の周方向の全体でクラッドが存在していないことがより好ましい。
【0086】
光ファイバー20単体で見たときに、光ファイバー20の第3区間33において、径方向の最も外側に位置しているのがコア25であってもよい。すなわち、第3区間33では、クラッドだけでなく、コア25以外のあらゆる部材(例えば被覆材)が配されていなくてもよい。
【0087】
長手軸方向xにおいて、第3区間33のコア25の外径は一定の値であってもよく、長手軸方向xの位置によってコア25の外径が異なる値であってもよい。
【0088】
図6、
図7に示すように、長手軸方向xにおいて、第3区間33の遠位端は、コア25の遠位端と同じ位置にあることが好ましい。第3区間33を形成しやすくなり、光ファイバー20の遠位端部での柔軟性も高めることができる。
【0089】
第3区間33のコア25の外表面の表面粗さは、第1区間31の第1クラッド26の外表面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。第1区間31ではコア25内に光が閉じ込められやすくなり、第3区間33ではコア25から光が径方向の外方に射出されやすくなる。
【0090】
光拡散部21には第2区間32と第3区間33の少なくともいずれか一方が配されていることが好ましく、第2区間32と第3区間33の両方が配されていてもよい。
図6に示すように、光拡散部21には、その近位側から遠位側に向かって順に第2区間32、第3区間33が配されていることが好ましい。この構成により、長手軸方向xにおいて光拡散部21の発光強度分布が均一化されやすくなる。この効果を高めるためには、長手軸方向xにおいて第1区間31と第2区間32と第3区間33は隣接していることが好ましく、より詳細には、第1区間31と第2区間32が隣接しており、第2区間32と第3区間33が隣接していることが好ましい。
【0091】
光ファイバー20が第2区間32と第3区間33を有している場合、
図6に示すように長手軸方向xにおいて第2区間32よりも第3区間33の方が短いことが好ましい。この構成により、長手軸方向xにおける光拡散部21の全体の発光強度分布を均一化させやすくなる。なお、長手軸方向xにおいて第3区間33よりも第2区間32の方が短い態様も許容される。
【0092】
長手軸方向xにおいて第3区間33の長さは、第2区間32および第3区間33の合計長さの20%以下の大きさであることが好ましく、18%以下の大きさであることがより好ましく、15%以下の大きさであることがさらに好ましい。また、長手軸方向xにおいて第3区間33の長さは、第2区間32および第3区間33の合計長さの5%以上、8%以上、あるいは10%以上の大きさであってもよい。この構成により、長手軸方向xにおける光拡散部21の発光強度分布を均一化させやすくなる。
【0093】
第2区間32の第2クラッド27の外表面の表面粗さの平均値は、第3区間33のコア25の外表面の表面粗さの平均値よりも小さいことが好ましい。この構成により、第2区間32と第3区間33のそれぞれで、長手軸方向xにおける発光強度分布を均一化させやすくなる。
【0094】
図5に示すように、光ファイバー20は、光拡散部21に第2区間32のみを有していてもよい。すなわち、光ファイバー20は、光拡散部21に第3区間33を有していなくてもよい。第2区間32のみを有する構成であっても、長手軸方向xにおける光拡散部21の発光強度分布を均一化させることができる。コア25が露出していないため、手技中の装置1の曲げに伴う光ファイバー20の損傷を防ぐ効果も有する。
【0095】
光ファイバー20が、光拡散部21に第2区間32のみを有している場合、長手軸方向xにおいて、第2区間32の遠位端がコア25の遠位端と同じ位置にあることが好ましい。
【0096】
図7に示すように、光ファイバー20は、光拡散部21に第3区間33のみを有していてもよい。すなわち、光ファイバー20は、光拡散部21に第2区間32を有していなくてもよい。第3区間33のみを有する構成であっても、長手軸方向xにおける光拡散部21の発光強度分布を均一化させることができる。
【0097】
第2区間32および第3区間33は、エッチングや研磨によりクラッドを剥離させることで形成することができる。第2区間32や第3区間33の表面粗さを調整するために、第2クラッド27の外表面や第3区間33のコア25の外表面に凹凸が形成されていてもよい。凹凸は、機械的または化学的に第2クラッド27または第3区間33のコア25の表面を荒らすことで形成可能である。表面を荒らす方法としては、エッチング加工、ブラスト加工、けがき針、ワイヤブラシ、またはサンドペーパーを用いる方法が挙げられる。
【0098】
図8に示すように、光ファイバー20の遠位端面には反射材200が設けられていることが好ましい。反射材200とは、例えば反射面が近位側を向くように配されたミラーである。この構成により、反射光が樹脂チューブ10の径方向の外方に拡散されやすくなる。
【0099】
反射材200の表面は、アルミニウム、金、銀、銅、スズ、二酸化チタン、五酸化タンタル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、またはフッ化マグネシウムから構成されていることが好ましい。
【0100】
光拡散部21からは治療用の第1光線が射出されればよい。第1光線は、体内組織を照射し、PDTやPITといった光治療に適した波長のレーザー光であることが好ましい。第1光線のほか、標的化用の第2光線が射出されてもよい。第2光線は、第1光線の射出前に治療部位を把握するために射出される光線であり、第1光線よりも放射エネルギーが低いことが好ましい。
【0101】
光ファイバー20の遠位端部のコア25の外径が遠位端側に向かって小さくなっていてもよい。
図9に示すように、第3区間33において長手軸方向xの全体に亘ってコア25の外径が遠位端側に向かって小さくなっていてもよい。
【0102】
図9に示すように、装置1は、コア25の外表面に接しており、樹脂チューブ10の長手軸方向xに延在するように配置される遠位側コイル部材50をさらに有していてもよい。遠位側コイル部材50は、コイル部材40よりも遠位側に配置される。
図9に示すように、遠位側コイル部材50は第3区間33の外表面に接していてもよい。
【0103】
図9に示すように、遠位側コイル部材50は、第1区間31のクラッド26の厚みと同じもしくは第1区間31のクラッド26の厚み以下の外径を有する線材52によって構成されていることが好ましい。また、線材52は、コア25を周回するように配置されていることが好ましい。これにより、装置1の遠位端部を細径化しつつ、第3区間33から射出される光が遠位側コイル部材50の内表面で反射することができるようになるため、反射光が光ファイバー20のうち遠位側コイル部材50で覆われていない部分から様々な方向に拡散されやすくなる。遠位側コイル部材50を構成する材料については、コイル部材40の説明を参照することができる。
【符号の説明】
【0104】
1:光照射医療装置
10:樹脂チューブ
11:内腔
12:内表面
13:外表面
14:減径部
140:内表面
16:先端部
18:先端チップ
20:光ファイバー
21:光拡散部
23:光ファイバーの外表面
24:光拡散部の外表面
25:コア
26:第1クラッド
27:第2クラッド
31:第1区間
32:第2区間
323:遠位部
324:近位部
33:第3区間
40:コイル部材
401:遠位端
402:近位端
403:内表面
404:外表面
40a:第1コイル部
40b:第2コイル部
42:線材
44:減径部
50:遠位側コイル部材
52:線材
60:ハンドル
61:中空部
65:操作部
200:反射材
x:長手軸方向
p:周方向