(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136945
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】含フッ素化合物、フッ素ハロゲン化合物および造影剤
(51)【国際特許分類】
C07D 211/94 20060101AFI20240927BHJP
A61K 49/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C07D211/94 CSP
A61K49/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048256
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】矢内 直子
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085HH07
4C085KA30
4C085KB56
(57)【要約】
【課題】高感度の磁気共鳴画像が得られ、かつ水性媒体に分散させやすい含フッ素化合物の提供。
【解決手段】式(1)で表される含フッ素化合物(R
1、R
2、R
3、R
4は炭素数1~10のアルキル基。R
11は-CH
2-O-C(CF
3)
rH
3-r(rは1~3)または-CH
2-O-CH
2-C[CH
2-O-C(CF
3)
sH
3-s]
p(CH
3)
3-p(s、pは1~3)。R
12およびR
13は-CH
2-O(CH
2CH
2O)
nY(Yは-CH
3または-H。nは3~22)。Xは-(CH
2)
m-O-CH
2-(mは1~12)または-CH
2-)。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする含フッ素化合物。
【化1】
(一般式(1)において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立に、フッ素原子を含まない置換基で置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキル基である。R
11は、下記式(1-1)または下記式(1-2)で表される。R
12およびR
13は、それぞれ独立に、下記式(1-3)で表される。Xは、下記式(1-4)または-CH
2-である。)
-CH
2-O-C(CF
3)
rH
3-r ・・・(1-1)
(式(1-1)中、rは、1~3の整数である。)
-CH
2-O-CH
2-C[CH
2-O-C(CF
3)
sH
3-s]
p(CH
3)
3-p・・・(1-2)
(式(1-2)中、sおよびpは、それぞれ独立に、1~3の整数である。)
-CH
2-O(CH
2CH
2O)
nY ・・・(1-3)
(式(1-3)中、Yは、-CH
3または-Hである。nは、3~22の整数である。)
-(CH
2)
m-O-CH
2- ・・・(1-4)
(式(1-4)中、mは、1~12の整数である。式(1-4)中の-(CH
2)
m-が、ピぺリジン環の4位の炭素に結合された酸素原子に結合される。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のR11が前記式(1-1)で表され、R12とR13が同じである、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)中のR11が前記式(1-1)で表され、前記式(1-1)中のrが3である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)中のR11が前記式(1-2)で表され、R12とR13が同じであり、前記式(1-3)中のnが6以上の整数である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)中のR11が前記式(1-2)で表され、前記式(1-2)中のsおよびpが3である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項6】
前記式(1-3)中のYが、-CH3である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項7】
前記式(1)中のXが、-CH2-である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項8】
前記一般式(1)中のR1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基である、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項9】
フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤に用いられる、請求項1に記載の含フッ素化合物。
【請求項10】
フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤であり、
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の含フッ素化合物を含有する造影剤。
【請求項11】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする含フッ素ハロゲン化合物。
【化2】
(一般式(2)において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立に、フッ素原子を含まない置換基で置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキル基である。R
11は、下記式(1-1)または下記式(1-2)で表される。R
22およびR
23は、それぞれ独立に、下記式(2-3)で表されるハロゲン化アルキル基である。Xは、下記式(1-4)または-CH
2-である。)
-CH
2-O-C(CF
3)
rH
3-r ・・・(1-1)
(式(1-1)中、rは、1~3の整数である。)
-CH
2-O-CH
2-C[CH
2-O-C(CF
3)
sH
3-s]
p(CH
3)
3-p・・・(1-2)
(式(1-2)中、sおよびpは、それぞれ独立に、1~3の整数である。)
-(CH
2)-u ・・・(2-3)
(式(2-3)中、uは、ハロゲノ基である。)
-(CH
2)
m-O-CH
2- ・・・(1-4)
(式(1-4)中、mは、1~12の整数である。式(1-4)中の-(CH
2)
m-が、ピぺリジン環の4位の炭素に結合された酸素原子に結合される。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素化合物、フッ素ハロゲン化合物および含フッ素化合物を含有する造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴画像(以下「MRI」という場合がある。)診断は、X線診断、超音波(US)診断と並ぶ画像診断法の1つとして、基礎研究および臨床応用の両方において医療分野で広く用いられている。
【0003】
現在、医療用のMRIには、プロトン(1H)を検出核として用いる1H-MRIが用いられている。1H-MRIは、生体内に存在する水分子の磁気的環境をとらえて画像化したものである。生体内における病変組織と正常組織とでは、プロトンの磁気的環境に違いが生じる。これが、1H-MRIの違いとして現れ、診断情報となる。また、水分子は生体内のほぼ全域に存在する。このため、1H-MRIは、全身のイメージングに用いることができる。
【0004】
MRIで検出可能な核種には、1Hの他に、19F、23Na、31P、15N、13C等がある。これらの元素を検出核とするMRIでは、それぞれ1H-MRIとは異なった情報が得られる。
これらの中でも検出核として19Fを用いるMRIは、1H-MRI診断に続く次世代の診断法に利用することが期待されている。それは、フッ素が天然存在比100%の安価な元素であり、19Fの検出感度が1Hの83%と高く、19Fの磁気回転比がプロトンと近いことから従来の1H-MRI装置で撮像可能であるためである。
【0005】
また、MRIで検出可能な19Fは、生体内にほとんど存在しない。このため、フッ素原子を含有する化合物を造影剤として用いることにより、19Fをトレーサーとした19F-MRI診断が可能である。例えば、疾病に起因する内因的変化を認識して集積するフッ素化合物を造影剤として用いることで、19F-MRIから病変部の位置的情報が得られる。この方法は、これまでの画像診断法では検出できなかった形態的変化を生じない病変部の診断に有用である。
【0006】
19F-MRI診断では、ケミカルシフト、拡散、緩和時間等の情報を取り出すことにより、病変部の位置的情報だけでなく、更に多くの診断情報が得られる。また、一回の診断で19F-MRIと1H-MRIを同時に撮像し、各々の画像を重ね合わせることにより、解剖学的情報と機能的情報とが共存する有用な診断情報を得ることも可能である。
【0007】
フッ素を検出核とするMRI診断用の造影剤に用いられる含フッ素化合物として、例えば、特許文献1には、フッ素含有化合物に共有結合したニトロキシドを有する化合物が記載されている。
また、特許文献2には、MRI造影剤に用いることが可能な化合物として、3以上の分岐を有する分岐型ポリエチレングリコールを基礎骨格に用いた金属キレート複合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5362477号明細書
【特許文献2】特開2015-40242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フッ素を検出核とするMRI診断に用いられる従来の造影剤は、高感度のMRIが得られるものではなかった。高感度のMRIが得られる造影剤の材料として、フッ素原子数の多い含フッ素化合物を用いることが考えられる。三次元(3D)のMRIでは、ボクセル中(二次元(2D)のMRIでは、ピクセル中)のフッ素原子数が多いほど、得られる信号量が多くなり、高感度の画像が得られやすくなるためである。
【0010】
しかしながら、フッ素原子を多く含む含フッ素化合物は、水溶性が低く、水性媒体に分散させにくい。このため、MRI診断用の造影剤として、フッ素原子を多く含む含フッ素化合物を使用する場合には、界面活性剤を用いて含フッ素化合物をエマルジョンとし、生体内の水性媒体に分散できるようにする必要があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤の材料として用いることにより、短時間の測定で十分な感度の磁気共鳴画像が得られ、かつ水性媒体に分散させやすいものであって、短時間の測定でより感度の高い磁気共鳴画像が得られる、および/または水性媒体に対する分散性がより一層優れる含フッ素化合物を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、本発明の含フッ素化合物を合成する際に、中間体化合物として好適に使用できるフッ素ハロゲン化合物を提供することを目的とする。
また、本発明は、本発明の含フッ素化合物を含有し、水性媒体中での分散性が良好であり、高感度の画像が得られる、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1] 下記一般式(1)で表されることを特徴とする含フッ素化合物。
【0014】
【化1】
(一般式(1)において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立に、フッ素原子を含まない置換基で置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキル基である。R
11は、下記式(1-1)または下記式(1-2)で表される。R
12およびR
13は、それぞれ独立に、下記式(1-3)で表される。Xは、下記式(1-4)または-CH
2-である。)
【0015】
-CH2-O-C(CF3)rH3-r ・・・(1-1)
(式(1-1)中、rは、1~3の整数である。)
-CH2-O-CH2-C[CH2-O-C(CF3)sH3-s]p(CH3)3-p・・・(1-2)
(式(1-2)中、sおよびpは、それぞれ独立に、1~3の整数である。)
-CH2-O(CH2CH2O)nY ・・・(1-3)
(式(1-3)中、Yは、-CH3または-Hである。nは、3~22の整数である。)
-(CH2)m-O-CH2- ・・・(1-4)
(式(1-4)中、mは、1~12の整数である。式(1-4)中の-(CH2)m-が、ピぺリジン環の4位の炭素に結合された酸素原子に結合される。)
【0016】
[2] 前記一般式(1)中のR11が前記式(1-1)で表され、R12とR13が同じである、[1]に記載の含フッ素化合物。
[3] 前記一般式(1)中のR11が前記式(1-1)で表され、前記式(1-1)中のrが3である、[1]または[2]に記載の含フッ素化合物。
【0017】
[4] 前記一般式(1)中のR11が前記式(1-2)で表され、R12とR13が同じであり、前記式(1-3)中のnが6以上の整数である、[1]に記載の含フッ素化合物。
[5] 前記一般式(1)中のR11が前記式(1-2)で表され、前記式(1-2)中のsおよびpが3である、[1]または[4]に記載の含フッ素化合物。
【0018】
[6] 前記式(1-3)中のYが、-CH3である、[1]~[5]のいずれかに記載の含フッ素化合物。
[7] 前記式(1)中のXが、-CH2-である、[1]~[6]のいずれかに記載の含フッ素化合物。
[8] 前記一般式(1)中のR1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基である、[1]~[7]のいずれかに記載の含フッ素化合物。
【0019】
[9] フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤に用いられる、[1]~[8]のいずれかに記載の含フッ素化合物。
[10] フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤であり、
[1]~[9]のいずれかに記載の含フッ素化合物を含有する造影剤。
【0020】
[11] 下記一般式(2)で表されることを特徴とする含フッ素ハロゲン化合物。
【0021】
【化2】
(一般式(2)において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立に、フッ素原子を含まない置換基で置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキル基である。R
11は、下記式(1-1)または下記式(1-2)で表される。R
22およびR
23は、それぞれ独立に、下記式(2-3)で表されるハロゲン化アルキル基である。Xは、下記式(1-4)または-CH
2-である。)
【0022】
-CH2-O-C(CF3)rH3-r ・・・(1-1)
(式(1-1)中、rは、1~3の整数である。)
-CH2-O-CH2-C[CH2-O-C(CF3)sH3-s]p(CH3)3-p・・・(1-2)
(式(1-2)中、sおよびpは、それぞれ独立に、1~3の整数である。)
-(CH2)-u ・・・(2-3)
(式(2-3)中、uは、ハロゲノ基である。)
-(CH2)m-O-CH2- ・・・(1-4)
(式(1-4)中、mは、1~12の整数である。式(1-4)中の-(CH2)m-が、ピぺリジン環の4位の炭素に結合された酸素原子に結合される。)
【発明の効果】
【0023】
本発明の含フッ素化合物は、上記一般式(1)で表される化合物である。このため、本発明の含フッ素化合物は、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤の材料として用いることにより、短時間の測定で十分な感度の磁気共鳴画像が得られ、かつ水性媒体に分散させやすいものであって、短時間の測定でより感度の高い磁気共鳴画像が得られる、および/または水性媒体に対する分散性がより一層優れるものである。
【0024】
また、本発明の含フッ素ハロゲン化合物は、本発明の含フッ素化合物を合成する際に、中間体化合物として好適に使用できる。
本発明の造影剤は、本発明の含フッ素化合物を含有する。このため、本発明の造影剤は、水性媒体中での分散性が良好である。また、本発明の造影剤は、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤として用いることにより、高感度の磁気共鳴画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例3(化合物13)、実施例8(化合物18)、比較例1(化合物A1)の
19F-MRIの
19Fスピン-格子緩和時間(T1)強調画像である。
【
図2】実施例3(化合物13)、実施例8(化合物18)、比較例1(化合物A1)の
19F-MRIの
19Fスピン-格子緩和時間(T1)強調画像であり、
図1に示す画像上の実施例3、8および比較例1の位置を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の含フッ素化合物、フッ素ハロゲン化合物および含フッ素化合物を含有する造影剤について、詳細に説明する。
[含フッ素化合物]
本実施形態の含フッ素化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0027】
【化3】
(一般式(1)において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立に、フッ素原子を含まない置換基で置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキル基である。R
11は、下記式(1-1)または下記式(1-2)で表される。R
12およびR
13は、それぞれ独立に、下記式(1-3)で表される。Xは、下記式(1-4)または-CH
2-である。)
【0028】
-CH2-O-C(CF3)rH3-r ・・・(1-1)
(式(1-1)中、rは、1~3の整数である。)
-CH2-O-CH2-C[CH2-O-C(CF3)sH3-s]p(CH3)3-p・・・(1-2)
(式(1-2)中、sおよびpは、それぞれ独立に、1~3の整数である。)
-CH2-O(CH2CH2O)nY ・・・(1-3)
(式(1-3)中、Yは、-CH3または-Hである。nは、3~22の整数である。)
-(CH2)m-O-CH2- ・・・(1-4)
(式(1-4)中、mは、1~12の整数である。式(1-4)中の-(CH2)m-が、ピぺリジン環の4位の炭素に結合された酸素原子に結合される。)
【0029】
ここで、本実施形態の含フッ素化合物を含む造影剤を、フッ素を検出核とするMRI診断用の造影剤として用いた場合に、水性媒体中での分散性が良好であり、高感度の磁気共鳴画像(MRI)が得られる理由について説明する。
【0030】
高感度の19F-MRIを得るためには、造影剤に含まれる含フッ素化合物として、19Fスピン-格子緩和時間(T1)の短いものを用いることが好ましい。含フッ素化合物のT1が短いほど、繰り返し時間を短く設定できる。このため、単位時間あたりに得られる信号量が多くなり、高感度の画像が得られるからである。一方、含フッ素化合物の19Fスピン-スピン緩和時間(T2)が短すぎると、信号強度が低下する。
【0031】
含フッ素化合物の19Fスピン-格子緩和時間(T1)および19Fスピン-スピン緩和時間(T2)は、常磁性緩和促進(PRE)効果の影響を受ける。PRE効果とは、常磁性体の有する不対電子スピンによって、不対電子スピン近傍のMRI観測核のT1およびT2が短縮する現象である。
【0032】
PRE効果は、常磁性体と常磁性体に緩和されるMRI観測核(本実施形態では、フッ素原子)との距離の6乗に反比例する。したがって、本実施形態の式(1)で表される含フッ素化合物においては、常磁性体であるニトロキシドラジカルとフッ素原子との距離が近い程、T1およびT2が短くなる。式(1)で表される含フッ素化合物では、ピぺリジン環の4位の炭素に、1つ以上のトリフルオロメチル基(-CF3)を含む末端基(式(1)中のR11)が、式(1)においてXで表される連結基(式(1-4)または-CH2-)を介して、エーテル結合(-O-)されている。このため、ニトロキシドラジカルとフッ素原子との距離が適正であり、T1が十分に短く、かつT2を十分に確保できる。よって、式(1)で表される含フッ素化合物を、フッ素を検出核とするMRI診断用の造影剤として用いることにより、高感度の磁気共鳴画像が得られる。
【0033】
また、高感度の19F-MRIを得るためには、造影剤に含まれるフッ素化合物として、構造等価なフッ素原子の数が多いものを用いることが好ましい。本実施形態の式(1)で表される含フッ素化合物は、1つ以上のトリフルオロメチル基(-CF3)を含む末端基(式(1)中のR11)を有する。トリフルオロメチル基(-CF3)は、構造等価なフッ素原子を3個含む。したがって、式(1)で表される含フッ素化合物は、分子中に3個以上の構造等価なフッ素原子を有する。よって、式(1)で表される含フッ素化合物は、分子中に含まれる構造等価なフッ素原子の数が十分に多く、フッ素を検出核とするMRI診断用の造影剤として用いた場合に、強い信号強度が得られ、高感度の画像が得られる。
【0034】
一般に、フッ素原子を多く含む含フッ素化合物は、水溶性が低く、水性媒体に分散し難い。しかしながら、本実施形態の式(1)で表される含フッ素化合物は、R12およびR13の2つの末端基が式(1-3)で表される。式(1-3)は、-(CH2CH2O)n-で表される3~22個のエチレングリコール鎖を有する。このことにより、式(1)で表される含フッ素化合物は、3個以上の構造等価なフッ素原子を有するにも関わらず、水性媒体中に分散できる。
【0035】
また、式(1)で表される含フッ素化合物では、R12およびR13にエチレングリコール鎖が含まれているので、容易に合成でき、フッ素原子とニトロキシドラジカルとの距離を適正に保ちつつ、水性媒体中での分散性が良好なものとなる。これに対し、例えば、式(1)におけるR1、R2、R3、R4にエチレングリコール鎖が導入された化合物は、合成することが技術的に困難である。
【0036】
本明細書において「水性媒体に含フッ素化合物が分散しない」とは、水性媒体中に入れた含フッ素化合物が、水性媒体中で分離していることを意味する。「水性媒体に含フッ素化合物が分散している」とは、含フッ素化合物が水性媒体中に分離しないで存在している状態を意味する。含フッ素化合物が分散している水性媒体は、2mlのバイアルに入れて目視で観察したときに、透明であってもよいし、不透明であってもよい。「水性媒体に含フッ素化合物が溶解している」とは、「水性媒体に含フッ素化合物が分散している」状態であって、2mlのバイアルに入れて目視で観察したときに透明である状態を意味する。
【0037】
本実施形態の式(1)で表される含フッ素化合物において、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に、フッ素原子を含まない置換基で置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキル基であり、フッ素原子を含まない置換基で置換もしくは無置換の炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。R1、R2、R3、R4が置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキル基であるので、式(1)で表される含フッ素化合物の合成が容易である。また、R1、R2、R3、R4が置換もしくは無置換の炭素数2~10のアルキル基であると、適度に嵩高いものとなり、ニトロキシドラジカルへの還元剤の接近を妨げることができる。上記アルキル基の炭素数が5以下であると、式(1)で表される含フッ素化合物の合成がより一層容易となり、好ましい。また、式(1)で表される含フッ素化合物は、R1、R2、R3、R4がフッ素原子を含まないため、ニトロキシドラジカルとフッ素原子との距離が近すぎて、信号強度が不足することがない。
【0038】
式(1)で表される含フッ素化合物に含まれるR1、R2、R3、R4がフッ素原子を含まない置換基を有する場合、置換基としては、例えば、メチル基、エチル基を用いることができる。
本実施形態の式(1)で表される含フッ素化合物におけるR1、R2、R3、R4は、具体的には、それぞれ独立に、メチル基またはエチル基であることが好ましい。R1、R2、R3、R4がメチル基である場合、エチル基である場合と比較して、製造工程が少なくて済み、生産性に優れる含フッ化化合物となり、好ましい。
【0039】
式(1)で表される含フッ素化合物に含まれるR1、R2、R3、R4は、それぞれ異なるものであってもよいし、一部または全部が同じであってもよい。R1、R2、R3、R4が全て同じである場合、式(1)で表される含フッ素化合物の合成が容易となるため、好ましい。
【0040】
本実施形態の式(1)で表される含フッ素化合物において、R11は、式(1-1)または式(1-2)で表される。したがって、本実施形態の式(1)で表される含フッ素化合物は、1つ以上のトリフルオロメチル基(-CF3)を有し、分子中に3個以上の構造等価なフッ素原子を有する。このため、式(1)で表される含フッ素化合物は、19F-MRIピークを示すフッ素原子数が十分に多く、フッ素を検出核とするMRI診断用の造影剤として用いた場合に、強い信号強度が得られ、高感度の画像が得られる。
【0041】
本実施形態において、式(1-1)中のrは、1~3の整数である。式(1-1)中のトリフルオロメチル基(-CF3)の数が多いほど、構造等価なフッ素原子の数が多くなり、より一層、高感度の画像が得られやすいものとなる。このため、rは、2または3であることが好ましく、3であることが最も好ましい。また、rが3である場合、rが1または2である場合と比較して、製造工程が少なくて済み、生産性に優れる含フッ化化合物となり、好ましい。
【0042】
本実施形態において、式(1-2)中のsおよびpは、それぞれ独立に、1~3の整数である。式(1-2)中のトリフルオロメチル基(-CF3)の数が多いほど、構造等価なフッ素原子の数が多くなり、より一層、高感度の画像が得られやすいものとなる。このため、sおよびpは、それぞれ独立に、2または3であることが好ましく、sおよびpが両方とも3であることが最も好ましい。また、sおよびpが3である場合、sおよび/またはpが1または2である場合と比較して、製造工程が少なくて済み、生産性に優れる含フッ化化合物となり、好ましい。
【0043】
式(1)で表される含フッ素化合物において、R11が式(1-1)である場合、R11が式(1-2)である場合と比較して、製造工程が少なくて済み、生産性に優れる含フッ化化合物となり、好ましい。
【0044】
式(1)で表される含フッ素化合物に含まれるトリフルオロメチル基(-CF3)の数は、1つ以上であればよく、より一層、高感度の画像が得られやすいものとなるため、3個以上であることが好ましい。トリフルオロメチル基(-CF3)の数は、製造工程が少なくて済み、生産性に優れる含フッ化化合物となるため、R11が式(1-1)である場合には3個であることが好ましく、R11が式(1-2)である場合には9個であることが好ましい。
【0045】
式(1)で表される含フッ素化合物において、R12およびR13は、それぞれ独立に、下記式(1-3)で表される。式(1-3)中の(CH2CH2O)で表されるエチレングリコール鎖は、式(1)で表される含フッ素化合物の水溶性に寄与する。R12とR13は、同じであってもよいし、異なっていてもよく、製造工程が少なくて済み、生産性に優れる含フッ化化合物となるため、同じであることが好ましい。
【0046】
式(1-3)中のnは、3~22の整数である。すなわち、式(1)で表される含フッ素化合物は、R12およびR13の2つの末端基が両方とも、3個以上のエチレングリコール鎖を有する。このため、3個以上の構造等価なフッ素原子を有するにも関わらず、水性媒体中に分散できる。本実施形態では、R12とR13の有するエチレングリコール鎖(CH2CH2O)の数が合計で8個以上であることが好ましく、R12とR13が同じである場合、それぞれ式(1-3)中のnが4以上であることが好ましい。式(1)で表される含フッ素化合物が、9個以上の構造等価なフッ素原子を有するものであっても、水性媒体中に溶解できるためである。さらに、R12とR13の有するエチレングリコール鎖の数は、合計で12個以上であることが好ましく、R12とR13が同じである場合、それぞれ式(1-3)中のnが6以上であることが好ましい。式(1)で表される含フッ素化合物が、27個の構造等価なフッ素原子を有するものであっても、水性媒体中に溶解できるためである。
【0047】
また、式(1-3)中のnが、22以下の整数であるため、容易に効率よく製造でき、生産性に優れる。また、式(1-3)中のnが、22以下の整数である(R12とR13の有するエチレングリコール鎖(CH2CH2O)の数が合計で22個以下である)と、合成した含フッ素化合物の精製が容易であり、好ましい。
【0048】
これに対し、例えば、式(1-3)中のnが、3未満の整数である場合、水性媒体中に分散しない。このため、生体内の水性媒体に分散できず、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤の材料として使用し難いものとなる。
また、式(1-3)中のnが、22超の整数である場合、合成した含フッ素化合物の精製が困難であるため、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤の材料として使用し難いものとなる。
【0049】
式(1-3)中のYは、-CH3または-Hである。Yが、-CH3であると、Yが-Hである場合と比較して、製造工程が少なくて済み、生産性に優れる含フッ化化合物となり、好ましい。また、Yが-Hである場合、式(1-3)の最も末端側に配置された(CH2CH2O)で表されるエチレングリコール鎖の酸素原子と結合して水酸基(-OH)を形成する。このため、Yが-Hであると、より一層、水性媒体中に分散しやすい含フッ素化合物となり、好ましい。
【0050】
本実施形態の式(1)で表される含フッ素化合物において、Xは、式(1-4)または-CH2-であり、式(1-4)中のmは、1~12の整数である。このため、式(1)で表される含フッ素化合物は、ニトロキシドラジカルとフッ素原子との距離が適正であり、T1が十分に短く、かつT2を十分に確保できる。したがって、式(1)で表される含フッ素化合物を、フッ素を検出核とするMRI診断用の造影剤として用いることにより、高感度の画像が得られる。式(1-4)中のmは、ニトロキシドラジカルとフッ素原子との距離が遠くなりすぎることがなく、T1がより短いものとなるため、1~6の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましい。
【0051】
また、R11が式(1-2)であるときは、ニトロキシドラジカルとフッ素原子との距離が遠くなりすぎることがないように、Xは、-CH2-、または式(1-4)中のmが1~3の整数であることが好ましく、-CH2-、または式(1-4)中のmが1または2であることがより好ましい。特に、製造工程が少なくて済み、生産性に優れる含フッ化化合物となるため、R11が式(1-2)であるときのXは、-CH2-であることが好ましい。
【0052】
また、本実施形態の式(1)で表される含フッ素化合物において、Xが式(1-4)である場合、式(1-4)中の-(CH2)m-が、ピぺリジン環の4位の炭素に結合された酸素原子に結合されているので、容易に製造できる。
【0053】
式(1)で表される含フッ素化合物は、R1、R2、R3、R4が全てメチル基であり、R12とR13が同じであって式(1-3)中のYが-CH3であり、Xが-CH2-であり、R11が式(1-1)でrが3である、またはR11が式(1-2)でsおよびpが3あることが好ましい。このような含フッ素化合物は、3個または9個のトリフルオロメチル基を有し、ニトロキシドラジカルとフッ素原子との距離がより適正であって、十分な数の構造等価なフッ素原子を有するため、より一層、高感度の画像が得られやすい。しかも、このような含フッ素化合物は、容易に効率よく製造でき、生産性に優れる。
【0054】
式(1)で表される含フッ素化合物は、具体的には、下記式(11)~(26)で表されるいずれかの化合物であることが好ましい。式(11)~(26)で表される化合物は、いずれも水性媒体中での分散性が良好であり、しかも、フッ素を検出核とするMRI診断用の造影剤として用いた場合に、高感度の画像が得られる。
【0055】
式(11)~(17)で表される化合物は、いずれもR1、R2、R3、R4が全てメチル基であって、R11が式(1-1)でrが3であり、R12とR13が同じであって式(1-3)中のYが-CH3であり、Xが-CH2-である含フッ素化合物である。
式(18)~(20)で表される化合物は、いずれもR1、R2、R3、R4が全てメチル基であって、R11が式(1-2)でsおよびpが3あり、R12とR13が同じであって式(1-3)中のYが-CH3であり、Xが-CH2-である含フッ素化合物である。
【0056】
式(21)で表される化合物は、R1、R2、R3、R4が全てエチル基であって、R11が式(1-1)でrが3であり、R12とR13が同じであって式(1-3)中のYが-CH3であり、Xが-CH2-である含フッ素化合物である。
式(22)で表される化合物は、R1、R2、R3、R4が全てメチル基であって、R11が式(1-2)でsが3でpが2あり、R12とR13が同じであって式(1-3)中のYが-CH3であり、Xが-CH2-である含フッ素化合物である。
式(23)および式(24)で表される化合物は、R1、R2、R3、R4が全てメチル基であって、R11が式(1-1)でrが3であり、R12とR13が同じであって式(1-3)中のYが-CH3であり、Xが式(1-4)である含フッ素化合物である。
【0057】
式(25)で表される化合物は、R1、R2、R3、R4が全てメチル基であって、R11が式(1-1)でrが3であり、R12とR13が同じであって式(1-3)中のYが-Hであり、Xが-CH2-である含フッ素化合物である。
式(26)で表される化合物は、R1、R2、R3、R4が全てメチル基であって、R11が式(1-1)でrが3であり、R12およびR13が式(1-3)であってYが-CH3であり、R12とR13のn数が異なり、Xが-CH2-である含フッ素化合物である。
【0058】
【0059】
【0060】
[含フッ素化合物の製造方法]
次に、一般式(1)で表される本実施形態の含フッ素化合物の製造方法について、例を挙げて説明する。
本実施形態の含フッ素化合物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法を用いて製造できる。
本実施形態の含フッ素化合物は、例えば、本実施形態の含フッ素ハロゲン化合物を中間体化合物として用いる方法により製造できる。
【0061】
[含フッ素ハロゲン化合物]
本実施形態の含フッ素ハロゲン化合物は、下記一般式(2)で表される。
【0062】
【化6】
(一般式(2)において、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立に、フッ素原子を含まない置換基で置換もしくは無置換の炭素数1~10のアルキル基である。R
11は、下記式(1-1)または下記式(1-2)で表される。R
22およびR
23は、それぞれ独立に、下記式(2-3)で表されるハロゲン化アルキル基である。Xは、下記式(1-4)または-CH
2-である。)
【0063】
-CH2-O-C(CF3)rH3-r ・・・(1-1)
(式(1-1)中、rは、1~3の整数である。)
-CH2-O-CH2-C[CH2-O-C(CF3)sH3-s]p(CH3)3-p・・・(1-2)
(式(1-2)中、sおよびpは、それぞれ独立に、1~3の整数である。)
-(CH2)-u ・・・(2-3)
(式(2-3)中、uは、ハロゲノ基である。)
-(CH2)m-O-CH2- ・・・(1-4)
(式(1-4)中、mは、1~12の整数である。式(1-4)中の-(CH2)m-が、ピぺリジン環の4位の炭素に結合された酸素原子に結合される。)
【0064】
式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物において、R1、R2、R3、R4、R11、Xは、式(1)で表される含フッ素化合物中の、R1、R2、R3、R4、R11、Xと同じである。すなわち、式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物におけるR1、R2、R3、R4、R11、Xは、それぞれ目的の化合物である式(1)で表される含フッ素化合物中の、R1、R2、R3、R4、R11、Xに応じて決定される。
【0065】
式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物において、R22およびR23は、それぞれ独立に、式(2-3)で表されるハロゲン化アルキル基である。R22とR23は、同じであってもよいし、異なっていてもよく、製造が容易であるため同じであることが好ましい。
式(2-3)で表されるハロゲン化アルキル基中のuは、ハロゲノ基である。uは、-F、-Cl、-Br、-Iのいずれであってもよく、原材料の入手が容易であり、かつエチレングリコール鎖の導入反応における反応性の高い含フッ素ハロゲン化合物となるため、-Brであることが好ましい。
【0066】
式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物におけるR22およびR23は、それぞれ独立に、式(2-3)で表されるハロゲン化アルキル基である。このため、式(1)で表される含フッ素化合物として、R12およびR13が同じであるものを製造する場合には、例えば、以下に示す方法を用いることができる。式(2)におけるR22およびR23中のハロゲノ基と、式(1)におけるR12およびR13中のエチレングリコール鎖数nに対応するエチレングリコール鎖を有するエチレングリコールモノメチルエーテルの水酸基とを反応させることにより、R11が式(1-1)または式(1-2)であり、R12およびR13が式(1-3)であり、Xが式(1-4)または-CH2-である式(1)で表される含フッ素化合物が得られる。したがって、式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物は、式(1)で表される含フッ素化合物を合成する際に、中間体化合物として好適に使用できる。
【0067】
また、式(1)で表される含フッ素化合物として、R12とR13のn数が異なるものを製造する場合には、例えば、以下に示す方法を用いることができる。式(2)におけるR22中のハロゲノ基と、式(1)におけるR12中のエチレングリコール鎖数nに対応するエチレングリコール鎖を有するエチレングリコールモノメチルエーテルの水酸基とを反応させる。その後、式(2)におけるR23中のハロゲノ基と、式(1)におけるR13中のエチレングリコール鎖数nに対応するエチレングリコール鎖を有するエチレングリコールモノメチルエーテルの水酸基とを反応させる方法により製造できる。
【0068】
また、式(1)で表される含フッ素化合物として、R12および/またはR13が式(1-3)でYが-Hであるものを製造する場合には、例えば、以下に示す方法を用いることができる。式(1)におけるR12および/またはR13中のエチレングリコール鎖数nに対応するエチレングリコール鎖を有するエチレングリコールモノメチルエーテルの有する2つの水酸基のうち一方を、テトラヒドロピラニル基を用いて保護する。その後、式(2)におけるR22および/またはR23中のハロゲノ基と反応させ、テトラヒドロピラニル基の脱保護を行う方法により製造できる。
【0069】
次に、中間体化合物として式(2)で表される本実施形態の含フッ素ハロゲン化合物を合成し、これを用いて式(1)で表される本実施形態の含フッ素化合物を製造する方法について、例を挙げて説明する。
【0070】
(第1製造方法)
<一般式(1)におけるR11が式(1-1)であり、R12およびR13が同じであって式(1-3)でYが-CH3であり、Xが-CH2-である場合>
まず、ピぺリジン環の2位と6位に、それぞれ式(1)で表される含フッ素化合物におけるR1、R2、R3、R4が結合され、4位に水酸基が結合したニトロキシドラジカルを有する化合物を用意する。この化合物は、合成してもよいし、市販されているものを用いてもよい。合成する場合、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドンを原料として、公知の方法により合成する方法を用いることができる。
【0071】
また、式(1)で表される含フッ素化合物におけるR11に対応する基と、3つのハロゲン化アルキル基とを有するハロゲン化合物を用意する。具体的には、式(1-1)で表される基と、u-(CH2)-(式中のuは、ハロゲノ基である。)で表される3つのハロゲン化アルキル基とを有するハロゲン化合物を用意する。このハロゲン化合物は、公知の方法により製造できる。例えば、R11が式(1-1)でrが3である場合、1つのヒドロキシメチル基(-CH2OH)と、3つのハロゲン化アルキル基とを有する化合物と、ノナフルオロ-tert-ブタノールとを反応させる方法などにより製造できる。
【0072】
その後、上記ハロゲン化合物の有する3つのハロゲノ基のうちの1つと、上記のニトロキシドラジカルを有する化合物の水酸基とを反応させる。このことにより、上記のニトロキシドラジカルを有する化合物のピぺリジン環の4位の炭素に、R11に対応する末端基(式(1-1)で表される基)と2つのハロゲン化アルキル基とを有する基が、-CH2-を介してエーテル結合(-O-)した第1中間体化合物を生成させる。第1中間体化合物は、R11が式(1-1)であり、R22およびR23が同じであって式(2-3)で表されるハロゲン化アルキル基であり、Xが-CH2-である式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物である。
【0073】
続いて、第1中間体化合物の有する2つのハロゲン化アルキル基と、R12およびR13中のエチレングリコール鎖数nに対応するエチレングリコール鎖を有するエチレングリコールモノメチルエーテルの水酸基とを反応させる。
以上の方法により、R11が式(1-1)であり、R12およびR13が同じであって式(1-3)でYが-CH3であり、Xが-CH2-である一般式(1)で表される含フッ素化合物が得られる。
【0074】
(第2製造方法)
<一般式(1)におけるR11が式(1-1)であり、R12およびR13が同じであって式(1-3)でYが-CH3であり、Xが式(1-4)である場合>
第1製造方法と同様にして、ピぺリジン環の2位と6位に、それぞれ式(1)で表される含フッ素化合物におけるR1、R2、R3、R4が結合され、4位に水酸基が結合したニトロキシドラジカルを有する化合物を用意する。
【0075】
次に、式(1-4)中の-(CH2)m-に対応する基を含むテトラヒドロピラニルエーテルを用意する。具体的には、テトラヒドロピランの2位にu-(CH2)m-O-(式中のuは、ハロゲノ基である。mは、式(1-4)と同じである。)で表される基を有する化合物を用意する。この化合物は公知の方法により製造できる。
【0076】
次に、上記テトラヒドロピラニルエーテルのハロゲノ基と、上記のニトロキシドラジカルを有する化合物の水酸基とを反応させて、第1中間体化合物を得る。その後、第1中間体化合物から、公知の方法によりテトラヒドロピランを除去する。このことにより、ピぺリジン環の4位に結合した酸素原子に、-(CH2)m-OH(式中のmは、式(1-4)と同じである。)で表される基が結合した第2中間体化合物とする。テトラヒドロピラニル基を用いた水酸基の保護および脱保護は、公知の方法を用いて行うことができる。
【0077】
次に、第1製造方法と同様にして、式(1-1)で表される基と、u-(CH2)-(式中のuは、ハロゲノ基である。)で表される3つの基とを有するハロゲン化合物を用意する。そして、上記ハロゲン化合物の有する3つのハロゲノ基のうちの1つと、上記第2中間体化合物の水酸基とを反応させる。このことにより、上記のニトロキシドラジカルを有する化合物のピぺリジン環の4位の炭素に、R11に対応する末端基(式(1-1)で表される基)と2つのハロゲン化アルキル基とを有する基が、式(1-4)で表される連結基を介してエーテル結合(-O-)した第3中間体化合物を生成させる。第3中間体化合物は、R11が式(1-1)であり、R22およびR23が同じであって式(2-3)で表されるハロゲン化アルキル基であり、Xが式(1-4)である式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物である。
【0078】
続いて、第3中間体化合物の有するハロゲン化アルキル基と、R12およびR13中のエチレングリコール鎖数nに対応するエチレングリコール鎖を有するエチレングリコールモノメチルエーテルの水酸基とを反応させる。
以上の方法により、R11が式(1-1)であり、R12およびR13が同じであって式(1-3)でYが-CH3であり、Xが式(1-4)である一般式(1)で表される含フッ素化合物が得られる。
【0079】
(第3製造方法)
<一般式(1)におけるR11が式(1-2)であり、R12およびR13が同じであって式(1-3)でYが-CH3であり、Xが-CH2-である場合>
第1製造方法と同様にして、ピぺリジン環の2位と6位に、それぞれ式(1)で表される含フッ素化合物におけるR1、R2、R3、R4が結合され、4位に水酸基が結合したニトロキシドラジカルを有する化合物を用意する。
【0080】
また、メタンの4つの水素原子が全てハロゲン化メチル基に置換されたハロゲン化合物を用意する。このハロゲン化合物は、公知の方法により製造できる。そのハロゲン化合物と、ピぺリジン環の2位と6位に、それぞれ式(1)で表される含フッ素化合物におけるR1、R2、R3、R4が結合され、4位に水酸基が結合したニトロキシドラジカルを有する化合物とを反応させる。このことにより、3つのハロゲン化メチル基が炭素原子に結合した基が、メチレン基(-CH2-)を介して、上記ニトロキシドラジカルを有する化合物のピぺリジン環の4位にエーテル結合した第4中間体化合物を生成させる。
【0081】
また、式(1-2)における-C[CH2-O-C(CF3)sH3-s]p(CH3)3-p(式中のsおよびpは、式(1-2)と同じである。)で表される基と、水酸基とを有する第5中間体化合物を用意する。第5中間体化合物は、公知の方法により製造できる。
例えば、式(1-2)中のsおよびpが両方とも3である場合、ペンタエリトリチルの4つの水酸基のうち1つの水酸基を、ベンジル基を用いて保護し、ベンジル基で保護されていない水酸基とノナフルオロ-tert-ブタノールとを反応させる。その後、得られた化合物から、公知の方法によりベンジル基の脱保護を行う方法などにより製造できる。
【0082】
また、例えば、式(1-2)中のsが3でpが2である場合、トリメチロールエタンの3つの水酸基のうち1つの水酸基を、ベンジル基を用いて保護し、ベンジル基で保護されていない水酸基とノナフルオロ-tert-ブタノールとを反応させる。その後、得られた化合物から、公知の方法によりベンジル基の脱保護を行う方法などにより製造できる。
【0083】
その後、第4中間体化合物の有する3つのハロゲノ基のうちの1つと、第5中間体化合物の有する水酸基とを反応させる。このことにより、上記ニトロキシドラジカルを有する化合物のピぺリジン環の4位の炭素に、R11に対応する末端基(式(1-2)で表される基)と2つのハロゲン化アルキル基とを有する基が、-CH2-を介してエーテル結合(-O-)した第6中間体化合物を生成させる。第6中間体化合物は、R11が式(1-2)であり、R22およびR23が同じであって式(2-3)で表されるハロゲン化アルキル基であり、Xが-CH2-である式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物である。
【0084】
続いて、第6中間体化合物の有するハロゲン化アルキル基と、R12およびR13中のエチレングリコール鎖数nに対応するエチレングリコール鎖を有するエチレングリコールモノメチルエーテルの水酸基とを反応させる。
以上の方法により、R11が式(1-2)であり、R12およびR13が同じであって式(1-3)でYが-CH3であり、Xが-CH2-である一般式(1)で表される含フッ素化合物が得られる。
【0085】
R11が式(1-2)であって、R12およびR13が同じであって式(1-3)でYが-CH3であり、Xが式(1-4)である一般式(1)で表される含フッ素化合物を製造する場合には、第3製造方法において、第4中間体化合物の原料として、以下に示す化合物を用いればよい。
すなわち、ピぺリジン環の2位と6位に、それぞれ式(1)で表される含フッ素化合物におけるR1、R2、R3、R4が結合され、4位に水酸基が結合したニトロキシドラジカルを有する化合物に代えて、第2製造方法において製造した、上記のニトロキシドラジカルを有する化合物のピぺリジン環の4位に結合した酸素原子に、-(CH2)m-OH(式中のmは、式(1-4)と同じである。)で表される基が結合した第2中間体化合物を用いる。
【0086】
(第4製造方法)
<一般式(1)におけるR12およびR13が式(1-3)でYが-Hである場合>
R12およびR13中のエチレングリコール鎖数nに対応するエチレングリコール鎖を有するポリエチレングリコールを用意する。そのポリエチレングリコールの有する2つの水酸基のうち一方を、テトラヒドロピラニル基を用いて保護する。その後、テトラヒドロピラニル基で保護されていない水酸基と、第1製造方法における第1中間体化合物の有するハロゲノ基、第2製造方法における第3中間体化合物の有するハロゲノ基、第3製造方法における第6中間体化合物の有するハロゲノ基から選ばれるいずれかと反応させ、テトラヒドロピラニル基の脱保護を行う。
以上の方法により、R12およびR13が式(1-3)でYが-Hである一般式(1)で表される含フッ素化合物が得られる。
【0087】
(第5製造方法)
<一般式(1)におけるR11が式(1-1)であり、R12およびR13が式(1-3)であってYが-CH3であり、R12とR13のn数が異なり、Xが-CH2-である場合>
第1製造方法と同様にして、上記のニトロキシドラジカルを有する化合物のピぺリジン環の4位の炭素に、R11に対応する末端基(式(1-1)で表される基)と2つのハロゲン化アルキル基とを有する基が、-CH2-を介してエーテル結合(-O-)した第1製造方法における第1中間体化合物を生成させる。
【0088】
続いて、第1中間体化合物の有する2つのハロゲン化アルキル基のうちの1つと、R12中のエチレングリコール鎖数nに対応するエチレングリコール鎖を有するエチレングリコールモノメチルエーテルの水酸基とを反応させ、第7中間体化合物を生成させる。
続いて、第7中間体化合物の有する1つのハロゲン化アルキル基と、R13中のエチレングリコール鎖数nに対応するエチレングリコール鎖を有するエチレングリコールモノメチルエーテルの水酸基とを反応させる。
【0089】
以上の方法により、R11が式(1-1)であり、R12およびR13が式(1-3)であってYが-CH3であり、R12とR13のn数が異なり、Xが-CH2-である一般式(1)で表される含フッ素化合物が得られる。
【0090】
本実施形態の含フッ素化合物は、一般式(1)で表される化合物である。このため、本実施形態の含フッ素化合物は、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤の材料として用いることにより、短時間の測定で十分な感度の磁気共鳴画像が得られ、かつ水性媒体に分散させやすいものであって、短時間の測定でより感度の高い磁気共鳴画像が得られる、および/または水性媒体に対する分散性がより一層優れるものである。
【0091】
具体的には、本実施形態の含フッ素化合物は、後述する方法で測定した19Fスピン-格子緩和時間(T1)が350以下であり、かつ水に5mmol/Lの濃度で分散できるものであって、さらに上記19Fスピン-格子緩和時間(T1)が60以下である、および/または水に5mmol/Lの濃度で溶解できるものである。
上記19Fスピン-格子緩和時間(T1)が350以下である含フッ素化合物を、磁気共鳴画像診断用の造影剤の材料として用いた場合、短時間の測定で十分な信号量が得られる。このため、短時間の測定で十分に高い感度の磁気共鳴画像が得られる。また、水に5mmol/Lの濃度で分散できる含フッ素化合物は、界面活性剤を用いることなく生体内の水性媒体に十分な濃度で分散できる。
また、上記19Fスピン-格子緩和時間(T1)が60以下である含フッ素化合物を、磁気共鳴画像診断用の造影剤の材料として用いた場合、短時間の測定で、より高感度の磁気共鳴画像が得られる。また、水に5mmol/Lの濃度で溶解できる含フッ素化合物は、分散性に優れるため、磁気共鳴画像診断用の造影剤の材料として、より好ましく使用できる。したがって、本実施形態の含フッ素化合物は、高感度の磁気共鳴画像が得られる機能と、水性媒体に分散させやすい機能とを、よりバランスよく両立できる。
【0092】
「造影剤」
本実施形態の造影剤は、本実施形態の含フッ素化合物を含有する。本実施形態の造影剤は、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤である。
本実施形態の造影剤は、本実施形態の含フッ素化合物を、公知の製剤化技術を用いて、例えば、固形製剤、粉末製剤、液剤等の形態に製剤化する方法により、製造できる。本実施形態の含フッ素化合物は、水性媒体中での分散性が良好であるため、溶剤の形態である場合に、好適である。
本実施形態の造影剤は、本実施形態の含フッ素化合物の他に、必要に応じて、賦形剤、安定剤、界面活性剤、緩衝剤、電解質等の公知の製剤に使用される添加物を1種または2種以上含むものであってもよい。
【0093】
本実施形態の造影剤は、本発明の含フッ素化合物を含有するため、水性媒体中での分散性が良好である。また、本実施形態の造影剤は、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤として用いることにより、高感度の磁気共鳴画像が得られる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例0095】
「実施例1」
(化合物11の合成)
【0096】
【0097】
<式(1-1)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、ペンタエリスリトールトリブロミド12.506g(38.5mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh3)13.115g(50.0mmol)、モレキュラーシーブス(MS)4A5.000g、テトラヒドロフラン(THF)70mlを混合し、氷浴にて冷却した。ジイソプロピルアゾジカルボン酸エステル(DIAD)9.72ml(50.0mmol)を10分間かけて滴下し、35分間攪拌した。ノナフルオロ-tert-ブタノール6.94mL(50.0mmol)を一度に加え、45℃で25時間攪拌した。
【0098】
反応溶液を濾過後、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製し、式(1-1)で表される2-(3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロポキシ)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパンを得た(収量17.072g、収率82%)。
【0099】
<式(1-2)で表される化合物(式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム1.370g(31.4mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)10mlを加え、室温で10分間攪拌した。4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル4.651g(27.0mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlを10分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した2-(3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロポキシ)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン(1-1)17.072g(27.0mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液20mlを加え、60℃で64時間攪拌した。
【0100】
反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5~9:1)で精製し、式(1-2)で表される4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを得た(収量10.926g、収率64%)。
【0101】
<化合物(11)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド3mlを加え、室温で10分間攪拌した。トリエチレングリコールモノメチルエーテル0.788g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液2mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-2)1.268g(2.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液6mlを加え、60℃で20時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、目的の化合物(11)を得た(収量0.801g、収率50%)。
【0102】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=800(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(11)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(11)で示される化合物の純度は99.0%であった。
【0103】
「実施例2」
(化合物12の合成)
【0104】
【0105】
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。テトラエチレングリコールモノメチルエーテル1.000g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液5mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-2)1.268g(2.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液6mlを加え、60℃で20時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、目的の化合物(12)を得た(収量0.817g、収率46%)。
【0106】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=888(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(12)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(12)で示される化合物の純度は99.3%であった。
【0107】
「実施例3」
(化合物13の合成)
【0108】
【0109】
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル1.423g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液2mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-2)1.268g(2.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液6mlを加え、60℃で16時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0~95:5)で精製し、目的の化合物(13)を得た(収量0.969g、収率46%)。
【0110】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=1065(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(13)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(13)で示される化合物の純度は99.1%であった。
【0111】
「実施例4」
(化合物14の合成)
【0112】
【0113】
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。オクタエチレングリコールモノメチルエーテル1.845g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液7mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-2)1.268g(2.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液10mlを加え、60℃で35時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0~95:5)で精製し、目的の化合物(14)を得た(収量0.991g、収率40%)。
【0114】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=1239(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(14)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(14)で示される化合物の純度は99.5%であった。
【0115】
「実施例5」
(化合物15の合成)
【0116】
【0117】
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.083g(1.90mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ドデカエチレングリコールモノメチルエーテル1.000g(1.78mmol)のジメチルホルムアミド溶液5mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-2)0.507g(0.80mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液5mlを加え、60℃で35時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=4:1)で精製し、目的の化合物(15)を得た(収量0.561g、収率44%)。
【0118】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=1593(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(15)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(15)で示される化合物の純度は99.5%であった。
【0119】
「実施例6」
(化合物16の合成)
【0120】
【0121】
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ポリエチレングリコールモノメチルエーテル750(平均分子量750)(Me-PEG-750)3.600g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液10mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-2)1.268g(2.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液10mlを加え、60℃で40時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=3:1)で精製し、目的の化合物(16)を得た(収量1.522g、収率41%)。
【0122】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=1856(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(16)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(16)で示される化合物の純度は99.0%であった。
【0123】
「実施例7」
(化合物17の合成)
【0124】
【0125】
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ポリエチレングリコールモノメチルエーテル1000(平均分子量1000)(Me-PEG-1000)9.600g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-2)1.268g(2.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液10mlを加え、60℃で40時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=2:1)で精製し、目的の化合物(17)を得た(収量1.386g、収率28%)。
【0126】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=2474(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(17)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(17)で示される化合物の純度は99.0%であった。
【0127】
「実施例8」
(化合物18の合成)
【0128】
【0129】
<式(1-3)で表される化合物の合成>
ペンタエリトリチル12.324g(90.5mmol)とp-トルエンスルホン酸一水和物(pTsOH・H2O)0.172g(0.91mmol)とトルエン130mlを混合した。次いで、トリエチルオルトアセテート16.5ml(90.5mmol)を加え、130℃で67時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、トリエチルアミン2mlを加え、100℃で1時間攪拌した。反応溶液を熱ろ過し、減圧化で濃縮した。得られた固体をジエチルエーテルとヘキサンを用いて再沈殿させ、式(1-3)で表される(1-メチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-4-イル)メタノールを得た。(収量9.045g、収率62%)。
【0130】
<式(1-4)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム1.440g(33.0mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)10mlを加え、室温で10分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した(1-メチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-4-イル)メタノール(1-3)4.805g(30.0mmol)のジメチルホルムアミド溶液25mlを5分間かけて滴下し、室温で30分間攪拌した。氷浴下、ベンジルブロミド4.28ml(36.0mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液5mlを加え、室温で17時間攪拌した。
【0131】
反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1~5:1)で精製し、式(1-4)で表される4-((ベンジルオキシ)メチル)-1-メチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンを得た(収量5.976g、収率80%)。
【0132】
<式(1-5)で表される化合物の合成>
上記の反応により合成した4-((ベンジルオキシ)メチル)-1-メチル-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン(1-4)5.976g(23.9mmol)をメタノール100mlに溶解し、濃塩酸4mlを加えて、50℃で10時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlを加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮し、式(1-5)で表される2-((ベンジルオキシ)メチル)-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオールを得た(収量4.576g、収率86%)。
【0133】
<式(1-6)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、上記の反応により合成した2-((ベンジルオキシ)メチル)-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール(1-5)4.576g(18.3mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh3)20.170g(76.9mmol)、モレキュラーシーブス(MS)4A7.000g、テトラヒドロフラン(THF)100mlを混合し、氷浴にて冷却した。ジイソプロピルアゾジカルボン酸エステル(DIAD)15.0ml(76.9mmol)を10分間かけて滴下し、20分間攪拌した。ノナフルオロ-tert-ブタノール18.151g(76.9mmol)を一度に加え、45℃で72時間攪拌した。
【0134】
反応溶液を濾過後、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製し、式(1-6)で表される((3-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)-2,2-ビス(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)メチル)ベンゼンを得た(収量12.083g、収率75%)。
【0135】
<式(1-7)で表される化合物の合成>
上記の反応により合成した((3-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)-2,2-ビス(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)メチル)ベンゼン(1-6)12.083g(13.7mmol)をテトラヒドロフラン100mlに溶解した。パラジウム炭素触媒(Pd/C)(Pd5%、50%水湿潤品)1.000gを加え、反応容器を水素ガスで置換し、室温で20時間攪拌し、ベンジル基の脱保護を行った。その後、反応溶液をセライトで濾過して、減圧下で濃縮し、式(1-7)で表される3-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)-2,2-ビス(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロパン-1-オールを得た(収量10.285g、収率95%)。
【0136】
<式(1-8)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム1.440g(33.0mmol)にジメチルホルムアミド10mlを加え、室温で10分間攪拌した。4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル5.168g(30.0mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlを10分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。氷浴下、ペンタエリトリチルテトラブロミド11.632g(30.0mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液30mlを加え、60℃で20時間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5~9:1)で精製し、式(1-8)で表される4-(3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを得た(収量8.048g、収率56%)。
【0137】
<化合物(1-9)(式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.524g(12.0mmol)にジメチルホルムアミド10mlを加え、室温で10分間攪拌した。上記の反応により合成した3-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)-2,2-ビス(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロパン-1-オール(1-7)7.902g(10.0mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlを10分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-8)4.791g(10.0mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液30mlを加え、60℃で20時間攪拌した。
【0138】
反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5~5:1)で精製し、目的の化合物(1-9)を得た(収量5.348g、収率45%)。
【0139】
<化合物(18)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.109g(2.50mmol)にジメチルホルムアミド3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル0.711g(2.40mmol)のジメチルホルムアミド溶液5mlを5分間かけて滴下し、室温で30分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した化合物(1-9)1.188g(1.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液5mlを加え、60℃で65時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0~95:5)で精製し、目的の化合物(18)を得た(収量0.615g、収率38%)。
【0140】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=1617(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(18)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(18)で示される化合物の純度は99.1%であった。
【0141】
「実施例9」
(化合物19の合成)
【0142】
【0143】
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.109g(2.50mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ポリエチレングリコールモノメチルエーテル750(平均分子量750)(Me-PEG-750)1.800g(2.40mmol)のジメチルホルムアミド溶液10mlを5分間かけて滴下し、室温で30分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した化合物(1-9)1.188g(1.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液5mlを加え、60℃で65時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=3:1)で精製し、目的の化合物(19)を得た(収量0.743g、収率32%)。
【0144】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=2322(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(19)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(19)で示される化合物の純度は99.0%であった。
【0145】
「実施例10」
(化合物20の合成)
【0146】
【0147】
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.109g(2.50mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ポリエチレングリコールモノメチルエーテル1000(平均分子量1000)(Me-PEG-1000)2.400g(2.40mmol)のジメチルホルムアミド溶液10mlを5分間かけて滴下し、室温で30分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した化合物(1-9)1.188g(1.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液5mlを加え、60℃で65時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=2:1)で精製し、目的の化合物(20)を得た(収量0.818g、収率27%)。
【0148】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=3028(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(20)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(20)で示される化合物の純度は99.0%であった。
【0149】
「実施例11」
(化合物21の合成)
【0150】
【0151】
<式(1-10)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドン15.524g(100mmol)、パラホルムアルデヒド23.288g(150mmol)、トルエン100mlを混合し、90℃に加熱した。そこに、ギ酸5.70ml(150mmol)を30分間かけて滴下し、100℃で12時間加熱した。室温まで冷却し、水酸化ナトリウム2.000g(50mmol)を加えて、一時間攪拌した。その後、吸引濾過を行い、濾液を減圧下で濃縮した。得られた濃縮物を減圧蒸留(70-72℃/2mmHg)し、式(1-10)で表される1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリドンを得た(収量13.532g、収率80%)。
【0152】
<式(1-11)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、上記の反応により合成した1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリドン(1-10)12.373g(73.1mmol)、4-オキソチアン25.000g(215.2mmol)をジメチルスルホキシド(DMSO)100mlに溶解した。そこに、塩化アンモニウム23.001g(430.0mmol)、次いで40%ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TrironB)14mlを加え、50℃で10時間攪拌した。
【0153】
反応溶液に水を加え、5%塩酸でpH1に調製し、ジエチルエーテルで洗浄した。水層を10%炭酸カリウム水溶液でpH9に調製し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1~1:1)で精製した後、ヘキサン-酢酸エチルで再沈殿し、式(1-11)で表される7-アザ-3.11-ジチアジスピロ[5.1.5.3]ヘキサデカン-15-オンを得た(収量5.771g、収率29%)。
【0154】
<式(1-12)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、上記の反応により合成した7-アザ-3.11-ジチアジスピロ[5.1.5.3]ヘキサデカン-15-オン(1-11)5.500g(20.3mmol)にエタノール(EtOH)320mlを加えた。さらに、Raney-Ni(水懸濁液、Ni>92.5%、Al<6.5%)50.00gをエタノール60mlで洗い込みながら加え、65℃で72時間攪拌した。
【0155】
反応溶液をセライト濾過し、減圧下で濃縮した。濃縮液を飽和炭酸カリウム水溶液でpH12に調製した後、酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。減圧下で濃縮し、7%塩酸を加え、ジエチルエーテルで洗浄した。5M水酸化カリウム水溶液でpH12に調製した後、酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、式(1-12)で表される4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラエチルピペリジンを得た(収量2.599g、収率60%)。
【0156】
<式(1-13)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、上記の反応により合成した4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラエチルピペリジン(1-12)2.599g(12.2mmol)をジクロロメタン400mlに溶解し、氷浴にて冷却した。そこに、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)24.4mmolを含むジクロロメタン溶液80mlを45分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮し、得られた粗生成物をジエチルエーテルに溶解した。飽和炭酸ナトリウム水溶液、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、式(1-13)で表される4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラエチルピペリジン-1-オキシルを得た(収量1.811g、収率65%)。
【0157】
<式(1-14)で表される化合物(式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.786g(18.0mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)10mlを加え、室温で10分間攪拌した。上記の反応により合成した4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラエチルピペリジン-1-オキシル(1-13)3.425g(15.0mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlを10分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。そこに、氷浴下、上記の反応により合成した2-(3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロポキシ)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン(1-1)9.771g(18.0mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液40mlを加え、60℃で10時間攪拌した。
【0158】
反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した後、水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5~9:1)で精製し、目的の4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)-2-(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラエチルピペリジン-1-オキシル(1-14)を得た(収量4.970g、収率48%)。
【0159】
<化合物(21)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル1.423g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液5mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。そこに、氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)-2-(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラエチルピペリジン-1-オキシル(1-14)1.381g(2.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液6mlを加え、60℃で54時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0~95:5)で精製し、目的の化合物(21)を得た(収量0.942g、収率42%)。
【0160】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=1121(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(21)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(21)で示される化合物の純度は99.0%であった。
【0161】
「実施例12」
(化合物22の合成)
【0162】
【0163】
<式(1-15)で表される化合物の合成>
トリメチロールエタン10.874g(90.5mmol)とp-トルエンスルホン酸一水和物(pTsOH・H2O)0.172g(0.91mmol)とアセトン130mlを混合した。次いで、2,2-ジメトキシプロパン9.426g(90.5mmol)を加え、室温で15時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮し、式(1-15)で表される(2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノールを得た(収量13.049g、収率90%)。
【0164】
<式(1-16)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム1.440g(33.0mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)10mlを加え、室温で10分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した(2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メタノール(1-15)4.806g(30.0mmol)のジメチルホルムアミド溶液25mlを5分間かけて滴下し、室温で30分間攪拌した。氷浴下、ベンジルブロミド4.28ml(36.0mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液5mlを加え、室温で17時間攪拌した。
【0165】
反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1~5:1)で精製し、式(1-16)で表される5-((ベンジルオキシ)メチル)-2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサンを得た(収量6.008g、収率80%)。
【0166】
<式(1-17)で表される化合物の合成>
上記の反応により合成した5-((ベンジルオキシ)メチル)-2,2,5-トリメチル-1,3-ジオキサン(1-16)6.008g(24.0mmol)をメタノール100mlに溶解し、濃塩酸4mlを加えて、50℃で10時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlを加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮し、式(1-17)で表される2-((ベンジルオキシ)メチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオールを得た(収量4.340g、収率86%)。
【0167】
<式(1-18)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、上記の反応により合成した2-((ベンジルオキシ)メチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジオール(1-17)3.848g(18.3mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh3)13.639g(52.0mmol)、モレキュラーシーブス(MS)4A5.000g、テトラヒドロフラン(THF)100mlを混合し、氷浴にて冷却した。ジイソプロピルアゾジカルボン酸エステル(DIAD)11.2ml(52.0mmol)を10分間かけて滴下し、20分間攪拌した。ノナフルオロ-tert-ブタノール12.274g(52.0mmol)を一度に加え、45℃で72時間攪拌した。
【0168】
反応溶液を濾過した後、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製し、式(1-18)で表される((3-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)-2-(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)-2-メチルプロポキシ)メチル)ベンゼンを得た(収量8.871g、収率75%)。
【0169】
<式(1-19)で表される化合物の合成>
上記の反応により合成した((3-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)-2-(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)-2-メチルプロポキシ)メチル)ベンゼン(1-18)8.871g(13.7mmol)をテトラヒドロフラン100mlに溶解した。パラジウム炭素触媒(Pd/C)(Pd5%、50%水湿潤品)1.000gを加え、反応容器を水素ガスで置換し、室温で20時間攪拌し、ベンジル基の脱保護を行った。その後、反応溶液をセライトで濾過して、減圧下で濃縮し、式(1-19)で表される3-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)-2-(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)-2-メチルプロパン-1-オールを得た(収量7.239g、収率95%)。
【0170】
<式(1-20)で表される化合物(式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.524g(12.0mmol)にジメチルホルムアミド10mlを加え、室温で10分間攪拌した。上記の反応により合成した3-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)-2-(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)-2-メチルプロパン-1-オール(1-19)5.562g(10.0mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlを10分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-8)4.791g(10.0mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液30mlを加え、60℃で20時間攪拌した。
【0171】
反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した後、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5~5:1)で精製し、目的の化合物(1-20)を得た(収量4.295g、収率45%)。
【0172】
<化合物(22)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.109g(2.50mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ポリエチレングリコールモノメチルエーテル750(平均分子量750)(Me-PEG-750)1.800g(2.40mmol)のジメチルホルムアミド溶液10mlを5分間かけて滴下し、室温で30分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した化合物(1-20)0.954g(1.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液5mlを加え、60℃で65時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=3:1)で精製し、目的の化合物(22)を得た(収量0.658g、収率30%)。
【0173】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=2192(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(22)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(22)で示される化合物の純度は99.0%であった。
【0174】
「実施例13」
(化合物23の合成)
【0175】
【0176】
<式(1-21)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、3-ブロモ-1-プロパノール4.170g(30.0mmol)をジクロロメタン150mlに溶解し、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン3.30ml(36.0mmol)と、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)1.508g(6.00mmol)とをこの順で加え、室温で18時間攪拌した。
反応溶液を減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製し、式(1-21)で表される2-(3-ブロモプロポキシ)テトラヒドロ-2H-ピランを得た(収量5.555g、収率83%)。
【0177】
<式(1-22)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム(NaH)1.091g(25.0mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)10mlを加え、室温で10分間攪拌した。4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル3.445g(20.0mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlを10分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した2-(3-ブロモプロポキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン(1-21)5.555g(24.9mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液10mlを加え、室温で10時間攪拌した。
【0178】
反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した。その後、水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、式(1-22)で表される2,2,6,6-テトラメチル-4-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)プロポキシ)ピペリジン-1-オキシルを得た(収量5.089g、収率65%)。
【0179】
<式(1-23)で表される化合物の合成>
上記の反応により合成した2,2,6,6-テトラメチル-4-(2-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)プロポキシ)ピペリジン-1-オキシル(1-22)5.089g(16.2mmol)と、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)0.407g(1.62mmol)とをエタノール(EtOH)200mlに溶解し、78℃で3時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、式(1-23)で表される4-(3-ヒドロキシプロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを得た(収量3.358g、収率90%)。
【0180】
<式(1-24)で表される化合物(式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム(NaH)0.873g(20.0mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)10mlを加え、室温で10分間攪拌した。上記の反応により合成した4-(3-ヒドロキシプロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-23)3.358g(14.6mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlを10分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した2-(3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロポキシ)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン(1-1)9.771g(18.0mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液40mlを加え、60℃で10時間攪拌した。
【0181】
反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した後、水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5~9:1)で精製し、目的の化合物(1-24)を得た(収量4.851g、収率48%)。
【0182】
<化合物(23)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル1.423g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液5mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した化合物(1-24)1.385g(2.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液6mlを加え、60℃で50時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0~95:5)で精製し、目的の化合物(23)を得た(収量0.943g、収率42%)。
【0183】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=1123(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(23)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(23)で示される化合物の純度は99.2%であった。
【0184】
「実施例14」
(化合物24の合成)
【0185】
【0186】
<式(1-25)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、12-ブロモ-1-ドデカノール5.000g(18.9mmol)をジクロロメタン100mlに溶解し、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン2.019g(24.0mmol)と、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)1.005g(4.00mmol)とをこの順で加え、室温で18時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製し、式(1-25)で表される2-((12-ブロモドデシル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン(を得た(収量5.282g、収率80%)。
【0187】
<式(1-26)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム(NaH)0.659g(15.1mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)10mlを加え、室温で10分間攪拌した。4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル2.360g(13.7mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlを10分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した2-((12-ブロモドデシル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン(1-25)5.282g(15.1mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液10mlを加え、室温で10時間攪拌した。
【0188】
反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した後、水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、式(1-26)で表される2,2,6,6-テトラメチル-4-(2-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ドデシル)オキシ)ピペリジン-1-オキシルを得た(収量3.743g、収率62%)。
【0189】
<式(1-27)で表される化合物の合成>
上記の反応により合成した2,2,6,6-テトラメチル-4-(2-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)ドデシル)オキシ)ピペリジン-1-オキシル(1-26)3.743g(8.49mmol)と、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)0.214g(0.85mmol)とをエタノール(EtOH)200mlに溶解し、78℃で3時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、式(1-27)で表される4-(12-(ヒドロキシドデシル)オキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを得た(収量2.513g、収率83%)。
【0190】
<式(1-28)で表される化合物(式(2)で表される含フッ素ハロゲン化合物)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム(NaH)0.371g(8.50mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)5mlを加え、室温で10分間攪拌した。その後、上記の反応により合成した4-(12-(ヒドロキシドデシル)オキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-27)2.513g(7.05mmol)のジメチルホルムアミド溶液10mlを10分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。
【0191】
氷浴下、上記の反応により合成した2-(3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロポキシ)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン(1-1)4.614g(8.50mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液20mlを加え、50℃で10時間攪拌した。反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した後、水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5~9:1)で精製し、目的の化合物(1-28)を得た(収量2.539g、収率44%)。
【0192】
<化合物(24)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.109g(2.50mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ポリエチレングリコールモノメチルエーテル750(平均分子量750)(Me-PEG-750)1.800g(2.40mmol)のジメチルホルムアミド溶液10mlを5分間かけて滴下し、室温で30分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した化合物(1-28)0.819g(1.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液5mlを加え、50℃で65時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=3:1)で精製し、目的の化合物(24)を得た(収量1.021g、収率25%)。
【0193】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=2042(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(24)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(24)で示される化合物の純度は99.1%であった。
【0194】
「実施例15」
(化合物25の合成)
【0195】
【0196】
<式(1-29)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、ヘキサエチレングリコール5.647g(20.0mmol)をジクロロメタン100mlに溶解し、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン2.019g(24.0mmol)と、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)1.005g(4.00mmol)とをこの順で加え、室温で18時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製し、目的の化合物(1-29)を得た(収量4.397g、収率60%)。
【0197】
<式(1-30)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)3mlを加え、室温で10分間攪拌した。上記の反応により合成した化合物(1-29)1.758g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液10mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-2)1.268g(2.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液10mlを加え、60℃で40時間攪拌した。
【0198】
反応溶液を減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0~95:5)で精製し、目的の化合物(1-30)を得た(収量1.085g、収率45%)。
【0199】
<化合物(25)の合成>
上記の反応により合成した化合物(1-30)1.085g(0.90mmol)と、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)0.025g(0.10mmol)とをエタノール(EtOH)100mlに溶解し、78℃で10時間攪拌した。
反応溶液を減圧下で濃縮し、水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0~95:5)で精製し、目的の化合物(25)(収量0.700g、収率75%)。
【0200】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=1037(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(25)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(25)で示される化合物の純度は98.0%であった。
【0201】
「実施例16」
(化合物26の合成)
【0202】
【0203】
<式(1-31)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)5mlを加え、室温で10分間攪拌した。テトラエチレングリコールモノメチルエーテル1.000g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液5mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-2)3.171g(5.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液10mlを加え、60℃で20時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、目的の化合物(1-31)を得た(収量1.828g、収率50%)。
【0204】
<化合物(26)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.122g(2.80mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)5mlを加え、室温で10分間攪拌した。オクタエチレングリコールモノメチルエーテル1.000g(2.60mmol)のジメチルホルムアミド溶液5mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した化合物(1-31)1.828g(2.40mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液10mlを加え、60℃で20時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=100:0~95:5)で精製し、目的の化合物(26)を得た(収量0.946g、収率37%)。
【0205】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=1065(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(26)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(26)で示される化合物の純度は99.2%であった。
【0206】
「比較例1」
下記式(A1)で示される1,3-ビス(2,2,2-トリフルオロ-1,1-ビス(トリフルオロメチル(エトキシ)-2,2-ビス((2,2,2-トリフルオロ-1,1-ビス(トリフルオロメチル)エトキシ)メチル)プロパン(PERFECTA、Aldrich社製)を用意した。
【0207】
【0208】
「比較例2」
(化合物A2の合成)
【0209】
【0210】
<式(2-1)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、2,2-ビス(ブロモメチル)-1,3-プロパンジオール11.096g(42.4mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh3)27.777g(105.9mmol)、モレキュラーシーブス(MS)4A10.000g、テトラヒドロフラン(THF)150mlを混合し、氷浴にて冷却した。ジイソプロピルアゾジカルボン酸エステル(DIAD)20.6ml(105.9mmol)を10分間かけて滴下し、20分間攪拌した。ノナフルオロ-tert-ブタノール25.000g(105.9mmol)を一度に加え、45℃で72時間攪拌した。
【0211】
反応溶液を濾過した後、減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で精製し、式(2-1)で表される2-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)-2-(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパンを得た(収量25.052g、収率85%)。
【0212】
<式(2-2)で表される化合物の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム(NaH)0.786g(18.0mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)10mlを加え、室温で10分間攪拌した。4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル2.584g(15.0mmol)のジメチルホルムアミド溶液20mlを10分間かけて滴下し、室温で3時間攪拌した。
【0213】
氷浴下、上記の反応により合成した2-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)-2-(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン(2-1)12.595g(18.0mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液40mlを加え、60℃で10時間攪拌した。
【0214】
反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルで抽出した後、水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=95:5~9:1)で精製し、式(2-2)で表される4-(3-ブロモ-2,2-ビス(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを得た(収量7.730g、収率65%)。
【0215】
【0216】
<化合物(A2)の合成>
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム(NaH)0.078g(1.78mmol)にジメチルホルムアミド(DMF)2mlを加え、室温で10分間攪拌した。ドデカエチレングリコールモノメチルエーテル1.000g(1.78mmol)のジメチルホルムアミド溶液8mlを5分間かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2,2-ビス(((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(2-2)1.263g(1.60mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液10mlを加え、50℃で18時間攪拌した。
【0217】
反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層を減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=97:3)で精製し、目的の化合物(A2)を得た(収量1.060g、収率52%)。
【0218】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=1269(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(A2)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(A2)で示される化合物の純度は98.8%であった。
【0219】
「比較例3」
(化合物A3の合成)
【0220】
【0221】
アルゴン気流下、55%水素化ナトリウム0.218g(5.00mmol)にジメチルホルムアミド3mlを加え、室温で10分間攪拌した。ジエチレングリコールモノメチルエーテル0.577g(4.80mmol)のジメチルホルムアミド溶液2mlを5分かけて滴下し、室温で40分間攪拌した。
【0222】
氷浴下、上記の反応により合成した4-(3-ブロモ-2-(ブロモメチル)2-((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロパン-2-イル)オキシ)メチル)プロポキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(1-2)1.268g(2.00mmol)を含むジメチルホルムアミド溶液6mlを加え、60℃で20時間攪拌した。反応溶液を減圧下で濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製し、目的の化合物(A3)を得た(収量0.801g、収率56%)。
【0223】
得られた化合物の質量分析を行ったところ、m/z=712(M+)にピークが確認された。このことから、合成した化合物が、式(A3)で示される化合物であることが確認できた。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により確認した式(A3)で示される化合物の純度は99.0%であった。
【0224】
このようにして得られた実施例1~実施例15の化合物について、それぞれ一般式(1)で表される含フッ素化合物におけるR12およびR13中のエチレングリコール鎖(CH2CH2O)の数nを表1に示す。実施例16の化合物については、R12中のエチレングリコール鎖(CH2CH2O)の数nと、R13中のエチレングリコール鎖(CH2CH2O)の数nとを表1に示す。
また、実施例1~実施例16、比較例1~比較例3の化合物について、それぞれ以下に示す方法により、水溶性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0225】
(水溶性試験)
溶液中の化合物の濃度が5mmol/Lとなるように、2mlバイアル中に1mlの水と化合物とを入れた。そして、50℃~60℃の温度でボルテックスミキサー(商品名;VTX-3000L、LMS社製)を用いて1分間攪拌した。その後、30℃の温度で超音波洗浄機(商品名;MCD-10、アズワン社製)を用いて5分間混合した。ボルテックスミキサーによる攪拌および超音波洗浄機による混合は、それぞれ3~5回繰り返し行った。その後、バイアルを静置して、室温まで降温し、目視にて混合状態を確認し、以下の基準に基づいて評価した。その結果を表1の5mMの欄に記載する。
【0226】
<基準>
溶解;水に入れた化合物が溶液中に分離しないで存在し、溶液が透明である。
分散;水に入れた化合物が溶液中に分離しないで存在し、溶液が不透明である。
分散しない;水に入れた化合物が溶液中で分離している。
【0227】
また、実施例1~実施例16、比較例1~比較例3の化合物について、それぞれ以下に示す方法により、19Fスピン-格子緩和時間(T1)を測定した。その結果を表1に示す。
【0228】
(19Fスピン-格子緩和時間(T1)の測定)
化合物を5mMの濃度で重クロロホルムに溶解し、500MHzのNMR装置を用いて、反復回転法により、以下に示す条件で19F核の縦緩和時間(T1)を測定した。
(測定条件)
NMR装置:JNM-ECA500(JOEL社製)
測定温度:36℃
パルス幅:90°
パルス系列:double_pulse
relaxation_delay:10[s]
tau_interval:4,3,2,1,0.8,0.6,0.4,0.2,0.1[s],80,60,40,20,10,8,6,4,2[ms]
積算回数:128回
【0229】
【0230】
表1に示すように、一般式(1)で表される含フッ素化合物におけるR12およびR13中のエチレングリコール鎖(CH2CH2O)の数nが3である実施例1の化合物(11)は、水中に分散した。また、R12およびR13中のエチレングリコール鎖数nがいずれも4~22である実施例2~実施例16の化合物(12)~(26)は、水中に溶解した。
【0231】
これに対し、エチレングリコール鎖を有さない比較例1の化合物(A1)、および一般式(1)で表される含フッ素化合物におけるR12およびR13中のエチレングリコール鎖(CH2CH2O)の数nが2である比較例3の化合物(A3)は、水中に分散しなかった。
【0232】
また、一般式(1)に当てはめたときのR12とR13のうち一方のみエチレングリコール鎖を有する比較例2の化合物(A2)は、水中に均一に分散したものの、水中に溶解しなかった。これに対し、比較例2(化合物A2)とエチレングリコール鎖の合計数(12個)が同じである、実施例3(化合物13)、実施例8(化合物18)、実施例11(化合物21)、実施例13(化合物23)、実施例15(化合物25)、実施例16(化合物26)では、水中に溶解した。このことから、一般式(1)に当てはめたときのR12とR13のうち一方のみエチレングリコール鎖を有する化合物と比較して、R12とR13の両方がエチレングリコール鎖を有する化合物は、水性媒体に分散させやすいことが確認できた。
【0233】
また、表1に示すように、ニトロキシドラジカルを有する実施例1~実施例16の化合物(11)~(26)は、ニトロキシドラジカルを有さない比較例1の化合物(A1)と比較して、19Fスピン-格子緩和時間(T1)が非常に短いものであった。したがって、実施例1~実施例16の化合物は、比較例1の化合物と比較して、単位時間あたりの信号量を多くすることが可能であり、高感度の画像が得られる。
【0234】
[総合評価]
また、実施例1~実施例16、比較例1~比較例3の化合物について、上記の水溶性試験および19Fスピン-格子緩和時間(T1)の測定の結果から、以下の(基準1)~(基準3)に基づき総合評価を行った。
【0235】
(基準1)
水溶性試験の結果が「分散」または「溶解」であり、かつ19Fスピン-格子緩和時間(T1)が「350msec以下」である。
(基準2)
水溶性試験の結果が「溶解」である。
(基準3)
19Fスピン-格子緩和時間(T1)が「60msec以下」である。
【0236】
表1に示すように、実施例1~実施例16の化合物は、(基準1)を満たすものであって、さらに(基準2)および/または(基準3)を満たす。したがって、実施例1~実施例16の化合物は、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤の材料として用いることにより、短時間の測定で十分な感度の磁気共鳴画像が得られ、かつ水性媒体に分散させやすいものであって、さらに短時間の測定でより感度の高い磁気共鳴画像が得られる、および/または水性媒体に対する分散性がより一層優れるものである。よって、実施例1~実施例16の化合物は、フッ素を検出核とする磁気共鳴画像診断用の造影剤の材料として好適である。
【0237】
これに対し、比較例1の化合物(A1)および比較例3の化合物(A3)は、(基準1)を満たさない。また、比較例2の化合物(A2)は、表1に示すように、(基準1)を満たすものの(基準2)および(基準3)を満たさない。
【0238】
また、実施例3(化合物13)、実施例8(化合物18)および比較例1(化合物A1)の化合物について、それぞれ5mMのクロロホルム溶液を調整し、以下の撮像条件で19F-MRIのT1強調画像(ファントム画像)を得た。
(撮像条件)
装置:Burker社製MRI BioSpec117/11
パルスシークエンス:RAREVTR
繰り返し時間TR=300ms
エコー時間TE=6ms
位相エンコード数=64
エコートレイン数=1
フリップ角=180°
加算回数=16回
総撮像時間:5.1分
【0239】
図1は、実施例3(化合物13)、実施例8(化合物18)および比較例1(化合物A1)の
19F-MRIの
19Fスピン-格子緩和時間(T1)強調画像である。
図2は、実施例3(化合物13)、実施例8(化合物18)および比較例1(化合物A1)の
19F-MRIの
19Fスピン-格子緩和時間(T1)強調画像であり、
図1に示す画像上の実施例3、8および比較例1の位置を示した写真である。
【0240】
また、画像処理ソフト(ImageJ)を用いて、
図1に示す(T1)強調画像における実施例3、18および比較例1の位置のグレー値から、実施例3、8および比較例1のSNR(signal-to-noise ratio、信号雑音比)をそれぞれ算出した。その結果を表2に示す。
【0241】
【0242】
図1および
図2に示すように、実施例3(化合物13)および実施例8(化合物18)の画像は、比較例1(化合物A1)の画像と比較して、高輝度であった。
また、表2に示すように、実施例3(化合物13)および実施例8(化合物18)は、比較例1(化合物A1)と比較して、5分程度の短い撮像時間であっても大きいSNRが得られることが確認できた。
これらのことから、実施例3(化合物13)および実施例8(化合物18)を、フッ素を検出核とするMRI診断用の造影剤として用いることにより、十分に臨床応用可能である画像が得られることが示された。
【0243】
以上の実施例の結果から、本発明の含フッ素化合物は、高感度の磁気共鳴画像が得られ、かつ水性媒体に分散させやすいことが確認できた。