(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136947
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示システム、及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240927BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/14 20060101ALI20240927BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240927BHJP
G06F 3/0481 20220101ALI20240927BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240927BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G09G5/38
G09G5/36 200
G09G5/00 510B
G09G5/00 510Z
G09G5/14 A
G09G5/00 550C
G01C21/36
G06F3/0481
G02B27/02 Z
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048259
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】林 武
【テーマコード(参考)】
2F129
2H199
3D344
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5E555
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】 HUD装置等により表示されるPOI表示の数が増えた場合でも、複数のPOI表示によって乗員が享受する利便性と、乗員による実景の視認性とを両立させる。
【解決手段】 表示制御装置200は、情報取得部207と、POI表示生成部204と、第1の表示領域DZ1に表示される予定の複数のPOI表示の全部を、第1の表示領域よりも、車両1の乗員5による車両外の実景の視認に与える影響が小さい領域である第2の表示領域DZ2に移行させる表示移行制御、又は、第1の表示領域DZ1に表示される予定の複数のPOI表示の一部を、第2の表示領域DZ2に表示することで、複数のPOI表示を、第1、第2の各表示領域DZ1、DZ2に分散させて表示する表示分散制御を実施可能な表示制御部203と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、少なくとも1つの表示部を備える表示装置の、前記車両の周囲の情報に関する画像の表示を制御する表示制御装置であって、
前記車両の周辺の対象物についての地図情報と前記地図情報に関連する情報である付帯情報の組であるPOI情報を取得する情報取得部と、
前記POI情報に基づいて、前記対象物についての画像であるPOI表示を生成するPOI表示生成部と、
第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示の全部を、前記第1の表示領域よりも、前記車両の乗員による車両外の実景の視認に与える影響が小さい領域である第2の表示領域に移行させる表示移行制御、
又は、
第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示の一部を、前記第1の表示領域よりも、前記車両の乗員による車両外の実景の視認に与える影響が小さい領域である第2の表示領域に表示することで、前記複数のPOI表示を、前記第1、第2の各表示領域に分散させて表示する表示分散制御、
を実施可能な表示制御部と、
を有する表示制御装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、
前記第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示を、POI表示の個数、及びPOI表示1個当たりの面積の少なくとも一方を用いて数値化して得られる数値が、表示限界の上限を示す第1の閾値を超えているか否か、あるいは、前記第1の閾値を超えると予想されるか否かを判定し、
超えている、あるいは、超えると予想される場合に、前記表示移行制御、又は、前記表示分散制御を実施する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記第1の表示領域は、
前記車両に設けられる、光学系を介して前記画像の表示光を被投影部に投影することで前記乗員の前方に前記画像を虚像として表示させる間接投影型、あるいは光学系を介さずに前記画像の表示光を前記被投影部材に投影することで、前記乗員の前方に前記画像を虚像として表示させる直接投影型の投影表示部における表示領域である、
又は、
前記車両の乗員の頭部に装着する、投影表示部としてのヘッドマウントディスプレイ装置における表示領域である、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記第2の表示領域は、
前記投影表示部の表示面に設けられる、
又は、
実像を表示する他の表示部の表示面に設けられる、
請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、
前記表示移行制御、又は、前記表示分散制御を実施する際、
前記第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示の前記数値が、前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えているか否か、あるいは、前記第2の閾値を超えると予想されるか否かを判定し、
超えている、あるいは、超えると予想される場合に、前記表示移行制御、又は、前記表示分散制御は実施せず、すべてのPOI表示を非表示とする、
請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、
前記表示分散制御を実施する際、
前記第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示に優先順位を付与し、
優先順位が下位のPOI表示を前記第2の表示領域に表示させる、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、
前記表示移行制御、又は前記表示分散制御を実施した後、前記第2の表示領域に表示されているPOI表示の全部を前記第1の表示領域に戻す表示復帰制御を実施する場合において、
前記第2の表示領域に表示されている複数のPOI表示の数値が、前記第1の閾値よりも小さい第3の閾値を超えていないか否かを判定し、超えていないと判定される場合に、前記表示復帰制御を実施する、
請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、
前記車両が、手動運転モードであるか、運転支援モードであるか、あるいは、自動運転モードであるかに応じて、前記第1の閾値を異ならせる、
請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、
前記表示移行制御、又は前記表示分散制御に際して、
前記第2の表示領域に表示されるPOI表示の表示態様を、前記第1の表示領域に表示されているPOI表示の表示態様とは異なる表示態様とする、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記投影表示装置における、前記POI表示の虚像を表示する虚像表示面は、
前記乗員から近い端部よりも遠い端部の方が、前記車両が走行している路面からの距離が大きくなるように傾斜している、直線状の、あるいは湾曲形状の傾斜面である、
又は、
前記乗員から近い端部よりも遠い端部の方が、前記車両が走行している路面からの距離が大きくなるように傾斜している、直線状の、あるいは湾曲形状の傾斜面と、前記傾斜面における前記乗員から見た遠方側の端部が、前記路面に対して立設されている、あるいは前記乗員には立設されているように知覚される立面と、を有する、
請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、
前記第2の表示領域にPOI表示を表示させる場合に、
前記第2の表示領域には、そのPOI表示と、前記車両の走行予定経路を示す経路画像とを含むと共に、これらを斜めに見おろした俯瞰画像を表示させる、
請求項10に記載の表示制御装置。
【請求項12】
前記車両に搭載される、請求項1乃至11の何れか1項に記載の表示制御装置と、
前記車両に搭載され、前記POI表示を表示する、少なくとも1つの表示部を備える表示装置と、
を有する表示システム。
【請求項13】
車両に搭載され、少なくとも1つの表示部を備える表示装置の、前記車両の周囲の情報に関する画像の表示を制御する表示制御方法であって、
前記車両の周辺の対象物についての地図情報と前記地図情報に関連する情報である付帯情報の組であるPOI情報を取得する第1のステップと、
前記POI情報に基づいて、前記対象物についての画像であるPOI表示を生成する第2のステップと、
第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示を、POI表示の個数、及びPOI表示1個当たりの面積の少なくとも一方を用いて数値化して得られる数値が、表示限界の上限を示す第1の閾値を超えているか否か、あるいは、前記第1の閾値を超えると予想されるか否か、を判定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて、超えてえている、あるいは、超えると予想される場合に、前記第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示の全部、又は一部を、第2の表示領域に遷移させる第4のステップと、
を含む、表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される表示制御装置、表示システム、及び表示制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置等を用いて、ウインドシールド越しに沿線の建物の名前や飲食店の名前のような、車両の乗員にとって興味や関心を惹きそうな地点(Point Of Interest:POI)の関連情報を、POI表示として実景の対応する地点に重畳させて表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HUD装置等により表示されるPOI表示の数が増えると、車両に搭乗している乗員による車両の周囲(例えば前方)の実景の視認性が低下するのは否めない。
【0005】
上記の特許文献1には、この課題については言及されておらず、その対策についての記載もない。
【0006】
本発明の目的の1つは、例えばHUD装置等により表示されるPOI表示の数が増えた場合でも、複数のPOI表示によって乗員が享受する利便性と、乗員による実景の視認性とを両立させることである。
【0007】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0009】
本発明の第1の態様において、表示制御装置は、車両に搭載され、少なくとも1つの表示部を備える表示装置の、前記車両の周囲の情報に関する画像の表示を制御する表示制御装置であって、前記車両の周辺の対象物についての地図情報と前記地図情報に関連する情報である付帯情報の組であるPOI情報を取得する情報取得部と、前記POI情報に基づいて、前記対象物についての画像であるPOI表示を生成するPOI表示生成部と、第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示の全部を、前記第1の表示領域よりも、前記車両の乗員による車両外の実景の視認に与える影響が小さい領域である第2の表示領域に移行させる表示移行制御、又は、第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示の一部を、前記第1の表示領域よりも、前記車両の乗員による車両外の実景の視認に与える影響が小さい領域である第2の表示領域に表示することで、前記複数のPOI表示を、前記第1、第2の各表示領域に分散させて表示する表示分散制御、を実施可能な表示制御部と、を有する。
【0010】
第1の態様によれば、複数のPOI表示を所定の方法で数値化して得られた数値が所定の閾値を超えた場合に、表示移行制御を実施することで、乗員の実景の視認に与える影響度が大きい第1の表示領域にはPOI表示が表示されなくなり、乗員の実景の視認性が確保される。
また、表示分散制御を実施することで、第1の表示領域におけるPOI表示を減らすことができると共に、第1、第2の表示領域に表示されるPOI表示間の隙間を広げることができ、よって乗員の実景の視認性が改善される。
【0011】
第1の態様に従属する第2の態様では、前記表示制御部は、前記第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示を、POI表示の個数、及びPOI表示1個当たりの面積の少なくとも一方を用いて数値化して得られる数値が、表示限界の上限を示す第1の閾値を超えているか否か、あるいは、前記第1の閾値を超えると予想されるか否かを判定し、超えている、あるいは、超えると予想される場合に、前記表示移行制御、又は、前記表示分散制御を実施する。
【0012】
第2の態様によれば、「第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示を、POI表示の個数、及びPOI表示1個当たりの面積の少なくとも一方を用いて数値化すること」によって、POIの表示状況(表示状態)を客観的に検出することができる。
また、数値化によって得られた数値と所定の適切な閾値との比較によって、迅速かつ的確に必要な表示処理を実施することが可能となる。
また、上記の数値化は、例えば、POI表示の個数、及びPOI表示1個当たりの面積の少なくとも一方を変数(パラメータ)として含む関数により数値を算出することで実現可能である。但し、この方法に限定されるものではない。
なお、POI表示1個当たりの面積としては、例えば、各POI表示の実際の面積をそのまま使用してもよく、また、POI表示1個当たりの標準的な面積を決定し、その標準的な面積を使用してもよい。
また、「表示移行制御における第1の閾値」と「表示分散制御における第1の閾値」は同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。例えば各制御毎に、上記の「第1の閾値」の値を異ならせることで、POIの表示状況に応じて、表示移行制御を実施するか、表示分散制御を実施するかを、適宜、選択することも可能である。
【0013】
第1又は第2の態様に従属する第3の態様において、前記第1の表示領域は、前記車両に設けられる、光学系を介して前記画像の表示光を被投影部に投影することで前記乗員の前方に前記画像を虚像として表示させる間接投影型、あるいは光学系を介さずに前記画像の表示光を前記被投影部材に投影することで、前記乗員の前方に前記画像を虚像として表示させる直接投影型の投影表示部における表示領域である、又は、前記車両の乗員の頭部に装着する、投影表示部としてのヘッドマウントディスプレイ装置における表示領域であってもよい。
【0014】
第3の態様によれば、例えば、HUD装置、あるいは、画像の表示光を、光学系を介さずに直接的に被投影部材(ウインドシールド等)に投影するWSD(ウインドシールドディスプレイ)装置、もしくは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)装置等の多様な投影表示部を用いて、POI表示を、例えば対象物に重畳させて表示することができる。
【0015】
第3の態様に従属する第4の態様において、前記第2の表示領域は、前記投影表示部の表示面に設けられる、又は、実像を表示する他の表示部の表示面に設けられてもよい。
【0016】
第4の態様によれば、第2の表示領域を、実像を表示する表示部の表示面に設けることができ、表示システムの構築が容易化され、また、乗員に提供されるPOI情報の情報量を増やすこともできる。
実像を表示する表示部としては、CID(中央情報ディスプレイ)やICD(計器クラスタディスプレイ)のような、情報提示に適した表示部を例示することができる。
【0017】
第2乃至第4の何れか1つの態様に従属する第5の態様において、前記表示制御部は、前記表示移行制御、又は、前記表示分散制御を実施する際、前記第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示の前記数値が、前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えているか否か、あるいは、前記第2の閾値を超えると予想されるか否かを判定し、超えている、あるいは、超えると予想される場合に、前記表示移行制御、又は、前記表示分散制御は実施せず、すべてのPOI表示を非表示としてもよい。
【0018】
第5の態様によれば、POI表示が多すぎる場合は、POI表示を非表示とすることにより、良好な実景の視認性を確保することができる。
【0019】
第1乃至第5の何れか1つの態様に従属する第6の態様において、前記表示制御部は、前記表示分散制御を実施する際、前記第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示に優先順位を付与し、優先順位が下位のPOI表示を前記第2の表示領域に表示させてもよい。
【0020】
第6の態様によれば、表示分散制御を実施する場合に、第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示のうち、優先順位が上位のものを第1の表示領域に表示し、優先順位が下位のものを第2の表示領域に表示することができる。
第1の表示領域は、第2の表示領域に比べて、乗員にとってより見やすい表示、言い換えれば、より少ない目線の移動によって視認可能な表示を提供できるという利点がある。よって、この第1の表示領域に、優先順位の高いPOI表示のみを表示することで、乗員の利便性が向上する。
優先順位の付与方法は特に問わないが、例えば、乗員の過去の行動履歴に基づいて、乗員の興味や関心が高いPOIを推定して優先順位を付与する方法を例示することができる。
また、POI表示に対応する店舗に関する口コミの評価等を参照し、評価の高いものに、より高い優先順位を付与する方法を例示することができる。
【0021】
第1乃至第6の何れか1つの態様に従属する第7の態様において、前記表示制御部は、前記表示移行制御、又は前記表示分散制御を実施した後、前記第2の表示領域に表示されているPOI表示の全部を前記第1の表示領域に戻す表示復帰制御を実施する場合において、前記第2の表示領域に表示されている複数のPOI表示の数値が、前記第1の閾値よりも小さい第3の閾値を超えていないか否かを判定し、超えていないと判定される場合に、前記表示復帰制御を実施してもよい。
【0022】
第7の態様では、表示復帰制御に際してヒステリシス制御を実施する。
例えば、第2の表示領域に表示されている複数のPOI表示が、第1の閾値よりも小さい第3の閾値を下回る状態であるとき、言い換えれば、POI表示の数が十分に減少し、よって実景の視認性を確保できると判定され得る状況である場合に表示復帰制御を実施する。
これにより、第1の表示領域に戻されたPOI表示が、同一の閾値を用いた判定結果に基づいて、その直後に第2の表示領域に遷移され、さらに、同じ閾値を用いた判定によって、その直後に再び第1の表示領域に戻される、といった好ましくない事態(言い換えれば、表示の振動)が生じることを、確実に抑制することができる。
【0023】
第2乃至第7の何れか1つの態様に従属する第8の態様において、前記表示制御部は、前記車両が、手動運転モードであるか、運転支援モードであるか、あるいは、自動運転モードであるかに応じて、前記第1の閾値を異ならせてもよい。
【0024】
第8の態様では、手動運転モードでは乗員の運転の負担が重く、運転支援モードではその負担が軽減され、自動運転モードでは負担がさらに軽減される点に着目する。例えば、運転の負担が軽減されるにつれて、POI表示を増加させ、乗員に提供するPOIの情報量を増やすことで、乗員の利便性をさらに向上させることができる。
【0025】
第1乃至第8の何れか1つの態様に従属する第9の態様において、前記表示制御部は、前記表示移行制御、又は前記表示分散制御に際して、前記第2の表示領域に表示されるPOI表示の表示態様を、前記第1の表示領域に表示されているPOI表示の表示態様とは異なる表示態様としてもよい。
【0026】
第9の態様では、第2の表示領域に表示されるPOI表示の表示態様を、第1の表示領域に表示される表示態様とは異ならせることで、例えば、乗員が感じる煩わしさや、違和感を軽減することができる。
具体的には、例えば、第2の表示領域に表示されるPOI表示の輝度を低下させて視認性を低下させる処理を実施する場合、あるいは、アイコンの形状や模様等を変化させて、よりシンプルな構成のアイコンとすることで、乗員の視覚に与える影響を軽減する場合等が想定され得る。
【0027】
第3の態様に従属する第10の態様において、前記投影表示装置における、前記POI表示の虚像を表示する虚像表示面は、前記乗員から近い端部よりも遠い端部の方が、前記車両が走行している路面からの距離が大きくなるように傾斜している、直線状の、あるいは湾曲形状の傾斜面であってもよく、又は、前記乗員から近い端部よりも遠い端部の方が、前記車両が走行している路面からの距離が大きくなるように傾斜している、直線状の、あるいは湾曲形状の傾斜面と、前記傾斜面における前記乗員から見た遠方側の端部が、前記路面に対して立設されている、あるいは前記乗員には立設されているように知覚される立面と、を有してもよい。
【0028】
第10の態様では、第1の表示領域における表示面(虚像表示面等)を、例えば車両の前方方向に沿って傾斜する傾斜面を有する形状とし、奥行き感のあるPOI画像の表示を実現してもよい。これにより、臨場感のあるPOI画像の表示が可能となる。
【0029】
第10の態様に従属する第11の態様において、前記表示制御部は、前記第2の表示領域にPOI表示を表示させる場合に、前記第2の表示領域には、そのPOI表示と、前記車両の走行予定経路を示す経路画像とを含むと共に、これらを斜めに見おろした俯瞰画像を表示させてもよい。
【0030】
第11の態様では、第1の表示領域において、第10の態様で示した傾斜した表示面を用いた奥行き感のある表示を実施している場合は、第2の表示領域においても、奥行き感のある表示を実施し、第1、第2の各表示領域におけるPOI表示の、乗員に対する見え方を共通化することで、違和感を軽減する。
具体的には、POI表示と車両の走行予定経路を示す経路画像とを含むと共に、これらを斜めに見おろした俯瞰画像を、第2の表示領域に表示させてもよい。
【0031】
第12の態様において、表示システムは、前記車両に搭載され、第1乃至第11の何れか1つの態様の表示制御装置と、前記車両に搭載され、前記POI表示を表示する、少なくとも1つの表示部を備える表示装置と、を有する。
【0032】
第12の態様によれば、HUD装置、WSD装置、HMD装置等の投影表示部(投影表示型の表示部)を用いて、あるいは、それらの投影表示部と、CIDやICD等の、表示面に実像を表示する表示部(表示パネル等の実像表示型の表示部)とを組み合わせて用いて、利便性の高い表示システムを実現することができる。
【0033】
第13の態様において、表示制御方法は、車両に搭載され、少なくとも1つの表示部を備える表示装置の、前記車両の周囲の情報に関する画像の表示を制御する表示制御方法であって、前記車両の周辺の対象物についての地図情報と前記地図情報に関連する情報である付帯情報の組であるPOI情報を取得する第1のステップと、前記POI情報に基づいて、前記対象物についての画像であるPOI表示を生成する第2のステップと、第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示を、POI表示の個数、及びPOI表示1個当たりの面積の少なくとも一方を用いて数値化して得られる数値が、表示限界の上限を示す第1の閾値を超えているか否か、あるいは、前記第1の閾値を超えると予想されるか否か、を判定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて、超えてえている、あるいは、超えると予想される場合に、前記第1の表示領域に表示される予定の複数のPOI表示の全部、又は一部を、第2の表示領域に遷移させる第4のステップと、を含む。
【0034】
第13の態様によれば、乗員の視覚に与える影響が大きい第1の表示領域を、POI表示が非表示である状態とする、あるいは、表示されるPOI表示の数が低減された状態とすることによって、POI表示の数が増えた場合でも、複数のPOI表示によって乗員が享受する利便性と、乗員による実景の視認性とを両立させることが可能となる。
【0035】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、投影表示部(ここではHUD装置)と実像表示型の表示部(CIDやICD等)とを有する、POI情報の表示と保存が可能な表示システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2(A)、(B)は、
図1に示される表示システムにおける、各表示部の配置例、ならびに構成例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、眼鏡型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の表示領域におけるPOI表示の数値が、表示限界の上限値を示す第1の閾値を超えない場合の表示例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の表示領域におけるPOI表示の数値が、表示限界の上限値を示す閾値を超えた場合の表示の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の表示領域におけるPOI表示の数値が、表示限界の上限値を示す閾値を超えた場合の表示の他の例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の表示領域におけるPOI表示の数値が、表示限界の上限値を示す閾値を超えた場合の表示の、さらに他の例を示す図である。
【
図8】
図8(A)~(C)は、HUD装置における、傾斜面を有する虚像表示面の例を示す図であり、
図8(D)は、第1の表示領域における奥行き感のある表示例を示す図であり、
図8(E)は、第2の表示領域における奥行き感のある表示例を示す図である。
【
図9】
図9は、表示復帰制御におけるヒステリシス制御を示す図である。
【
図10】
図10(A)、(B)、(C)は各々、表示移行制御、表示分散制御、及び表示復帰制御の際のヒステリシス制御における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0038】
(第1の実施形態)
図1を参照する。
図1は、投影表示装置(ここではHUD装置)と実像表示型の表示装置(CIDやICD等)とを有する、POI情報の保存と表示が可能な表示システムの構成の一例を示す図である。
【0039】
なお、
図1において、車両(移動体)1の幅方向を左右方向(あるいは横方向:X方向)とし、左右方向に直交すると共に、地面又は地面に相当する面(ここでは路面6とする)に直交する線分に沿う方向を上下方向(あるいは高さ方向:Y方向)とし、左右方向及び上下方向の各々に直交する線分に沿う方向(車両1の前進及び後退の向きを示す方向)を前後方向(Z方向)とする。正のZ方向を前方、負のZ方向を後方とする。この点は、他の図面においても同様である。
【0040】
図1に示される、車両(自車両)1に備わる表示システム(車載表示システム)100は、ダッシュボード41に収納されているヘッドアップディスプレイ(HUD)装置102と、ウインドシールドディスプレイ(WSD)104と、センターインフォメーションディスプレイ(CID)120と、乗員5の正面に位置する計器クラスタディスプレイ(ICD)130と、を有する。HUD、WSD、CID、ICDは各々、独立した表示部を構成する。
【0041】
また、これらの表示部を構成要素として表示装置が構成される。この表示装置における車両1の周囲の情報に関する画像の表示が表示制御装置200によって制御される。
【0042】
なお、CID120とICD130は共に、ステアリングホイール4を操作して車両1を運転中の運転者(乗員)5の視界内にあり、運転者5は、目線(視線)を少し変更することで、CID120やICD130に表示されている表示コンテンツ(例えば、ナビゲーション用の地図等)を見ることができる。
【0043】
HUD装置102、WSD装置104は共に投影表示装置であり、車両1に備わる被投影部材としてのウインドシールド2に画像(あるいは画像の表示光)を投影し、運転者(乗員)5から所定距離(虚像表示距離)だけ離れた位置において設定される仮想的な面である虚像表示面(
図2の符号PS1、
図7の符号PS2、PS3を参照)上において、実景の対象物α、βの各々に重畳されるように、虚像であるPOI表示ARa、ARbの各々を表示することができる。なお、被投影部材は、スクリーン等であってもよい。
【0044】
また、HUD装置102は、基本的には凹面鏡等の光学系を介して被投影部材に画像を投影する。WSD装置104は、光学系を有さず、ディスプレイに表示された画像を直接的に被投影部材に投影する直接投影表示装置である。なお、広義には、WSDもHUDの一種とみることができる。
【0045】
また、HUD、WSDは共に、虚像を表示する虚像表示装置ということもできる。なお、各表示部の概念は広く解釈するものとする。例えば、車内において、例えばステアリングホイール等に表示光を照射して情報を提示する機能をもつ車内プロジェクタも投影表示装置に含めることができる。
【0046】
また、CID、ICDは共に、表示面に実像を表示する実像表示型の表示部(実像表示型の表示部)であり、典型的には液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイが該当する。
【0047】
図1の例では、HUD装置102の表示面は、車両1の乗員5による車両外の実景の視認に与える影響が大きい第1の表示領域DZ1と、第1の表示領域DZ1と比較して、乗員5による車両外の実景の視認に与える影響が小さい領域である第2の表示領域DZ2に区別されている。
【0048】
また、WSD装置104の表示面には、第3の表示領域DZ3が設定されており、この第3の表示領域DZ3には、車速表示SP(ここでは「30km/h」という表示)が表示されている。
【0049】
表示制御装置200は、表示装置制御部201と、表示制御部203と、情報取得部207と、蓄積部(ストレージ)209と、を有する。
【0050】
表示装置制御部201は、CID制御部141と、ICD制御部143と、WSD制御部159と、HUD制御部160と、を有する。
【0051】
表示制御部203は、対象物についての画像であるPOI表示を生成するPOI表示生成部204と、所定の条件が満足される場合、第1の表示領域DZ1に表示される予定の複数のPOI表示の全部又は一部を第2の表示領域DZ2に遷移させる表示領域の変更制御部205と、複数のPOI表示の中から一部を選択して遷移させる場合における優先順位を取得する優先順位取得部206と、を有する。複数のPOI表示を遷移させる制御には、表示移行制御と、表示分散制御が含まれる。各制御の詳細については後述する。
【0052】
また、情報取得部207は、各種の情報を取得し、取得した情報を、表示制御部203に提供する。
【0053】
情報取得部207は、ECU(電子制御ユニット)222から、自車両1の状態を示す各種の情報(例えば車速情報を含む)を取得することができ、また、アンテナANを備える通信部(GPS通信部や車車間通信部等を含むことができる)220から、例えば、自車両1の現在の位置情報や、周囲環境に関する最新の情報等を取得することができる。また、情報取得部207は、ナビゲーション装置231から、車両1の周囲の地図情報(POI情報を含む)等を取得することができる。
【0054】
また、蓄積部(ストレージ)209は、POI保存情報211と、行動履歴情報213等が保存(蓄積)されている。
【0055】
ナビゲーション装置231は、記憶部232と、表示データベース245と、を有する。記憶部232には、POI情報233と、自車位置情報243とが記憶されている。また、POI情報233には、対象物の位置情報と、この対象物に対応付けられている付帯情報とが含まれる。
【0056】
また、
図1の表示システム100には、視線検出部229が設けられており、この視線検出部229は、注視判定部230を含む。
【0057】
例えば、HUD装置102によって複数のPOI表示が表示されているとき、注視判定部230によって注視判定がなされると、表示制御部203は、注視されたと判定されたPOI表示の情報を、蓄積部209に、POI保存情報211として自動的に保存することができる。なお、POI表示の保存は、乗員(ユーザ)5の機器操作等に基づいて実施されてもよい。
【0058】
言い換えれば、
図1における表示制御部203は、表示したPOI表示を、蓄積部(ストレージ)209に、後に参照可能に保存させる機能を有している。この機能を用いると、例えば、車両1の走行中に、道路の沿線に存在する複数の対象物についてのPOI情報を漏れなく表示すると共に、そのPOI表示を漏れなく保存することで、後に、じっくりと参照することが可能となる。よって、乗員(ユーザ)5の利便性がさらに向上する。
【0059】
次に、
図2を参照する。
図2(A)、(B)は、
図1に示される表示システムにおける、各表示部の配置例、ならびに構成例を示す断面図である。
図2において、
図1と共通する部分には同じ符号を付している。
【0060】
図2(A)に示される表示システム(車載表示システム)100は、HUD装置102と、WSD(ウインドシールドディスプレイ)装置104とを有する。
【0061】
HUD装置102は、ダッシュボード41内に収容されている。HUD装置102は、筐体103と、画像の表示光を出射する光源部151と、光学系を構成する凹面鏡(曲面鏡)170を有する。凹面鏡170は、被投影部材としてのウインドシールド2に、画像(画像の表示光)を投影する。なお、被投影部材はスクリーン等であってもよい。
【0062】
HUD装置102の表示光の一部はウインドシールド2で反射されて運転者(乗員)5の目(視点)3に入射され、この結果として、虚像表示面PS1上に虚像V1が表示される。先に説明した
図1では、この虚像表示面PS1上に、第1、第2の表示領域DZ1、DZ2が設定される。
【0063】
また、凹面鏡170における曲率を均等にせず、例えば高い曲率の領域、中程度の曲率の領域、低い曲率の領域等を適宜、設定することで、虚像表示面を、傾斜面(例えば湾曲形状の傾斜面)とすることができ、奥行き感のある表示が可能となる。この点については、
図8を用いて後述する。
【0064】
WSD装置104は、表示器152の表示面に表示される画像の表示光を、光学系を介さずに、直接的に被投影部材(ウインドシールド)2に投影する投影表示装置である。WSD装置104によって、虚像表示面PS2上に、虚像V2が表示される。
【0065】
また、
図2(B)に示される表示システム(車載表示システム)100は、HUD装置102と、表示器装置(CID120及びICD130)と、を含む。
【0066】
表示器装置を構成するCID120やICD130は、例えば液晶パネルで構成され得る。これらはダッシュボード41の外側に設置される。液晶パネルの表示面SU上に実像J1が表示される。
【0067】
次に、
図3を参照する。
図3は、眼鏡型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の構成の一例を示す図である。
【0068】
本実施形態では、先に説明したHUD装置102に代えて、あるいは、HUD装置102と共に、例えば
図3に示されるようなヘッドマウントディスプレイ(HMD)装置を使用してもよい。HMD装置は投射表示装置の一種である。
【0069】
図3のA-1に示されるように、眼鏡型のHMD装置300は、一対の眼鏡レンズ53a、53bと、各レンズを保持するレンズフレーム52a、52bと、レンズフレーム52a、52bの外縁部から後方に延びる一対のテンプル51a、51bと、を備える。
【0070】
図3のA-2に示されるように、一対の眼鏡レンズ53a、53bの目(視点)3(具体的には、眼球33a、33bの瞳孔80a、80b)に対向する面には、画像の表示光(レーザー光)を反射する、波長選択性をもつホログラムミラー70a、70bが設けられている。
【0071】
ホログラムミラー70a、70bは波長選択性を有しており、レーザー光の波長のみを反射する。その結果、乗員5は、車外の実景と、レーザー光によって描かれる画像の双方を同時に視認することが可能である。ホログラムミラー70a、70bで偏向された表示光は、人の目3の網膜に結像して画像を形成する。
【0072】
一対のテンプル51a、51bには、その内部に、上記の表示光(例えばレーザ光)を出射する光源部62a、62bと、表示光を走査する走査部63a、63bと、各部を制御するHMD用の制御部61a、61bが設けられている。
図3の構造は一例であり、この構造に限定されるものではない。
【0073】
次に、
図4を参照する。
図4は、第1の表示領域におけるPOI表示の数値が、表示限界の上限値を示す第1の閾値を超えない場合の表示例を示す図である。
図4において、
図1と共通する部分には同じ符号を付している。
【0074】
図4の例では、第1の表示領域におけるPOI表示の数値が、表示限界の上限値を示す第1の閾値を超えておらず、よって、第1の表示領域DZ1に9個のPOI表示Q1~Q9が表示されている。
【0075】
なお、第1の表示領域DZ1におけるPOI表示(POI表示の表示状況)を数値として表す方法(数値化の方法)、及び、適切な閾値の設定方法等の具体例については、第4の実施形態にて説明する。
【0076】
次に、
図5を参照する。
図5は、第1の表示領域におけるPOI表示の数値が、表示限界の上限値を示す閾値を超えた場合の表示の一例を示す図である。
図5において、前掲の図面と共通する箇所には同じ符号を付している。
【0077】
図5のA-1では、第1の表示領域DZ1において表示される予定のPOI表示の個数は11個である。言い換えれば、先に
図4に示した9個のPOI表示Q1~Q9に、2個のPOI表示Q10、Q11が追加されている。
【0078】
なお、
図5のA-1では、説明の便宜上、11個のPOI表示Q1~Q11が、実際に第1の表示領域DZ1に表示されているかのように描かれているが、実際はこのような表示はなされず(言い換えれば、
図5のA-1の表示態様は仮想的な表示態様であり)、実際の表示態様は、
図5のA-2に示される表示態様となる。この点は、
図6、
図7においても同様である。
【0079】
図5の例では、第1の表示領域に表示される予定のPOI表示の数値が、表示限界の上限値を示す第1の閾値を超え、よって、表示移行制御が実施される。
【0080】
図5のA-2では、表示移行制御が実施されており、この結果として、11個のPOI表示Q1~Q11はすべて、第2の表示領域DZ2に移行されている。
【0081】
このように、
図5のA-2の表示例によれば、複数のPOI表示(言い換えれば、POI表示の表示状態)を所定の方法で数値化して得られた数値が所定の閾値を超えた場合に、表示移行制御を実施することで、乗員5の実景の視認に与える影響度が大きい第1の表示領域DZ1にはPOI表示Q1~Q11が表示されず、よって、乗員5の実景の視認性が確保される。
【0082】
なお、
図5のA-2では、表示移行制御に代えて、表示分散制御を実施してもよい。表示分散制御については、
図7を用いて後述する。
【0083】
また、「第1の表示領域DZ1に表示される予定の複数のPOI表示Q1~Q11を、POI表示の個数、及びPOI表示1個当たりの面積の少なくとも一方を用いて数値化すること(具体例は第4の実施形態で説明する)」によって、POIの表示状態(表示状況)を客観的に検出することができる。
【0084】
また、数値化によって得られた数値と所定の適切な閾値との比較によって、迅速かつ的確に必要な表示処理を実施することが可能となる。
【0085】
また、上記の数値化は、例えば、POI表示の個数、及びPOI表示1個当たりの面積の少なくとも一方を変数(パラメータ)として含む関数により数値を算出することで実現可能である。但し、この方法に限定されるものではない。
【0086】
なお、POI表示1個当たりの面積としては、例えば、各POI表示の実際の面積をそのまま使用してもよく、また、POI表示1個当たりの標準的な面積を決定し、その標準的な面積を使用してもよい。
【0087】
また、「表示移行制御における第1の閾値」と「表示分散制御における第1の閾値」は同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。例えば各制御毎に、上記の「第1の閾値」の値を異ならせることで、POIの表示状況に応じて、表示移行制御を実施するか、表示分散制御を実施するかを、適宜、選択することが可能である。
【0088】
また、表示制御部203は、車両が、手動運転モードであるか、運転支援モードであるか、あるいは、自動運転モードであるかに応じて、前記第1の閾値を異ならせてもよい。
【0089】
ここでは、手動運転モードでは乗員の運転の負担が重く、運転支援モードではその負担が軽減され、自動運転モードでは負担がさらに軽減される点に着目する。例えば、運転の負担が軽減されるにつれて、POI表示を増加させ、乗員に提供するPOIの情報量を増やすことで、乗員の利便性をさらに向上させてもよい。
【0090】
また、表示制御部203は、表示移行制御(表示分散制御も同様)に際して、第2の表示領域DZ2に表示されるPOI表示の表示態様を、第1の表示領域DZ1に表示されているPOI表示の表示態様とは異なる表示態様としてもよい。第2の表示領域に表示されるPOI表示の表示態様を、第1の表示領域に表示される表示態様とは異ならせることで、例えば、乗員が感じる煩わしさや、違和感を軽減することができる。
【0091】
具体的には、例えば、第2の表示領域DZ2に表示されるPOI表示の輝度を低下させて視認性を低下させる処理を実施する場合、あるいは、アイコンの形状や模様等を変化させて、よりシンプルな構成のアイコンとすることで、乗員の視覚に与える影響を軽減する場合等が想定され得る。
【0092】
次に、
図6を参照する。
図6は、第1の表示領域におけるPOI表示の数値が、表示限界の上限値を示す閾値を超えた場合の表示の他の例を示す図である。
図5において、前掲の図面と共通する箇所には同じ符号を付している。
【0093】
図6のA-1は、
図5のA-1と同じである。
図6のA-2では、すべてのPOI表示が非表示状態、言い換えれば、消去された状態となっている。
この
図6のA-2の例では、第1の閾値と、第2の閾値とを使用する。また、第2の閾値は、第1の閾値よりも大きく設定されている。
【0094】
図6のA-1では、11個のPOI表示Q1~Q11が、第1の表示領域DZ1に表示されることが予定されている。ここでは、この複数のPOI表示の表示状態を数値化した場合、その数値は、第1の閾値を超えており、かつ第2の閾値も超えているものとする。
図6の例においては、この状況は、POI表示の数が多く、乗員5の前方の実景の視認に悪影響を及ぼす可能性が高いと判定されるものとする。
【0095】
したがって、
図6のA-2では、表示移行制御(又は表示分散制御(
図7参照))は実施せず、すべてのPOI表示を非表示とする。
【0096】
言い換えれば、表示制御部203は、表示移行制御(又は表示分散制御)を実施する際、第1の表示領域DZ1に表示される予定の複数のPOI表示Q1~Q11の数値が、第1の閾値よりも大きい第2の閾値を超えているか否か、あるいは、第2の閾値を超えると予想されるか否かを判定し、超えている、あるいは、超えると予想される場合に、表示移行制御(又は表示分散制御)は実施せず、すべてのPOI表示を非表示としてもよい。
POI表示が多すぎる場合は、POI表示を非表示とすることにより、良好な実景の視認性を確保することができる。
【0097】
また、
図6のA-3では、第1の閾値を用いた判定結果に応じて、表示移行制御が実施される。但し、
図6のA-3では、第1の表示領域DZ1に表示される予定の複数のPOI表示Q1~Q11は、CID(中央情報ディスプレイ)120の表示画面に表示されている。言い換えれば、第2の表示領域DZ2が、実像を表示する表示部であるCIDの表示画面上に設けられる。
【0098】
第2の表示領域DZ2を、実像を表示する表示部の表示面に設けることで、表示システムの構築が容易化され、また、乗員に提供されるPOI情報の情報量を増やすこともできる。実像を表示する表示部としては、CID120やICD(計器クラスタディスプレイ)130のような、情報提示に適した表示部を使用することができる。
【0099】
次に、
図7を参照する。
図7は、第1の表示領域におけるPOI表示の数値が、表示限界の上限値を示す閾値を超えた場合の表示の、さらに他の例を示す図である。
図7において、前掲の図面と共通の部分には同じ符号を付している。
【0100】
図7の例では、表示分散制御が実施される。
図7のA-1は、先に示した
図5のA-1と同じである。
【0101】
図7のA-2では、第1の表示領域DZ1に表示される予定の複数のPOI表示Q1~Q11の一部(ここでは、Q3、Q6、Q9、Q10、Q11とする)が、第1の表示領域DZ1よりも、車両1の乗員5による車両外の実景の視認に与える影響が小さい領域である第2の表示領域DZ2に表示されている。言い換えれば、複数のPOI表示Q1~Q11が、第1、第2の各表示領域DZ1、DZ2に分散されて表示されている。
【0102】
表示分散制御が実施されることで、第1の表示領域DZ1におけるPOI表示の数を減らすことができると共に、第1、第2の表示領域DZ1、DZ2に表示されるPOI表示間の隙間を広げることができ、よって乗員の実景の視認性が改善される。
【0103】
また、表示分散制御を実施する際、第1の表示領域DZ1に表示される予定の複数のPOI表示Q1~Q11に優先順位を付与し、優先順位が下位のPOI表示(Q3、Q6、Q9、Q10、Q11)を第2の表示領域DZ2に表示させてもよい。
【0104】
優先順位を付与することで、第1の表示領域DZ1に表示される予定の複数のPOI表示Q1~Q11のうち、優先順位が上位のもの(Q3、Q6、Q9、Q10、Q11)を第1の表示領域DZ1に表示し、優先順位が下位のものを第2の表示領域DZ2に表示することができる。
【0105】
第1の表示領域DZ1は、第2の表示領域DZ2に比べて、乗員5にとってより見やすい表示、言い換えれば、より少ない目線の移動によって視認可能な表示を提供できるという利点がある。よって、この第1の表示領域に、優先順位の高いPOI表示のみを表示することで、乗員の利便性が向上する。
【0106】
優先順位の付与方法は特に問わないが、例えば、乗員の過去の行動履歴に基づいて、乗員の興味や関心が高いPOIを推定して優先順位を付与する方法を使用してもよい。また、POI表示に対応する店舗に関する口コミの評価等を参照し、評価の高いものに、より高い優先順位を付与する方法を使用してもよい。
【0107】
(第2の実施形態)
次に、
図8を参照する。
図8(A)~(C)は、HUD装置における、傾斜面を有する虚像表示面の例を示す図であり、
図8(D)は、第1の表示領域における奥行き感のある表示例を示す図であり、
図8(E)は、第2の表示領域における奥行き感のある表示例を示す図である。
【0108】
図8の例では、表示部としてHUD装置102が使用される。HUD装置102の光学系を構成する凹面鏡170の反射面を非球面とし、反射面の曲率(曲率半径)を部分的に異ならせることで、
図8(A)に示すように、虚像表示面PS3を傾斜面とすることができる。虚像表示面PS3は、道路(路面)40に対して傾斜角θ1で傾斜している。
【0109】
図8(A)において、L1、L2、L3は、乗員5の視点3を基準とした虚像表示距離を示し、L2は例えば20mに設定される。また、VP1は消失点(乗員(人)5の視線が地平線(水平線)と交わる地点)を示す。また、VP2は、消失点VP1に対応する、虚像表示面PS3上の点(虚像表示面PS3上の消失点)を示す。G1、G2は、虚像表示面PS3上に表示される虚像(ここでは、
図8(D)に示されるようなPOI表示)である。
【0110】
ここで、人の目が、奥行き感を知覚できる限界の距離が20m程度といわれており、よって、乗員5が奥行きを知覚できるのは、虚像G1である。
【0111】
よって、人の目3を基準として20mよりも遠方に表示されている虚像G2については、
図8(B)に示すように、あたかも奥行きがない立面(好ましくは、路面40に対して略垂直な立面)の虚像表示面PS4に表示されているかのように知覚される。この「立面であるかのように知覚される虚像表示面」は、「疑似立面」と称される場合がある。
図8(B)では、疑似立面PS4に表示されている虚像を、虚像G2’として示している。
【0112】
従って、
図8(B)の例では、
図8(B)の虚像表示面PS3上には、奥行き感のある虚像G1を表示でき、一方、より遠方に表示される虚像G2’は、見やすい立像として表示できる。
【0113】
また、
図8(C)に示すように、虚像表示面を湾曲させることもできる。例えば、凹面鏡170の反射面を非球面とし、反射面の曲率(曲率半径)を、例えば「高曲率の部分」、「中曲率の部分」、「低曲率の部分」に分け、湾曲の度合いを適宜、調整するといった構成を採用することで、湾曲形状の虚像表示面PS5を実現することができる。また、虚像表示面PS5の遠方側の端部は、略立面PS6となっている。
【0114】
このように、投影表示装置(ここではHUD装置102)における、POI表示の虚像を表示する虚像表示面は、
図7(B)、(C)に示すように、乗員5から近い端部よりも遠い端部の方が、車両1が走行している路面40からの距離が大きくなるように傾斜している、直線状の、あるいは湾曲形状の傾斜面PS3、PS5であってもよい。
【0115】
あるいは、虚像表示面は、
図7(B)、
図7(C)に示すように、乗員5から近い端部よりも遠い端部の方が、車両1が走行している路面40からの距離が大きくなるように傾斜している、直線状の、あるいは湾曲形状の傾斜面PS3、PS5と、傾斜面における乗員5から見た遠方側の端部が、路面40に対して立設されている、あるいは乗員5には立設されているように知覚される立面PS4、PS6と、を有してもよい。
【0116】
このような傾斜面の虚像表示面に、第1の表示領域DS1を設定して、複数のPOI表示を道路40に沿って配置すると、例えば、
図8(D)のように、奥行き感があり、かつ臨場感のある虚像の表示(POI画像の表示)が可能となる。
【0117】
なお、
図8(D)において、信号機の柱71は実像であり、その柱に重畳されて表示されている「通学路」という表示63は、虚像G2’としての表示である。
【0118】
このように、第1の表示領域DZ1における表示面(虚像表示面等)を、例えば車両1の前方方向に沿って傾斜する傾斜面を有する形状とすることで、奥行き感のあるPOI画像の表示が実現され、また、臨場感のあるPOI画像の表示が実現される。
【0119】
但し、第1の表示領域DZ1において、
図8(D)のような奥行感のあるPOI画像の表示を行っている状態において、POI情報を表示する対象物が増加したことによってPOI表示の数値が閾値を超え、例えば表示移行制御が実施され、急に
図5のA-2で示したようなアイコンの一覧表示に切り替わると、乗員5にとっては視覚的な変動が大きく、違和感や唐突感を抱く場合があり得る。
【0120】
よって、この場合は、第2の表示領域DZ2においても、奥行き感のあるPOI画像の表示を実施するのが好ましい。この表示例が、
図8(E)に示されている。
【0121】
図8(E)において、第2の表示領域DZ2に表示される画像は、「複数のPOI表示と、車両1の走行予定経路(道路40を含む道路情報)を示す経路画像とを含むと共に、これらを斜めに見おろした俯瞰画像91」である。これによって、表示移行制御(表示分散制御も同様)の前後で、POI表示の見え方の整合がとれ、視覚的な変動が抑制される。よって、乗員5の違和感や唐突感が軽減され得る。
【0122】
このように、表示移行制御(表示分散制御も同様)が実施される場合、表示制御部203は、第2の表示領域DZ2に複数のPOI表示を表示させる際、第2の表示領域DZ2には、そのPOI表示(ここでは、先に
図5のA-2で示したPOI表示Q1~Q11とする)と、車両1の走行予定経路(道路40を含む道路情報)を示す経路画像とを含むと共に、これらを斜めに見おろした俯瞰画像91を表示させてもよい。
【0123】
言い換えれば、第1の表示領域DZ1において、傾斜した表示面を用いた奥行き感のある表示を実施している場合は、第2の表示領域DZ2においても、奥行き感のある表示を実施し、第1、第2の各表示領域におけるPOI表示の、乗員に対する見え方を共通化することで、違和感や唐突感を軽減することが可能である。
【0124】
(第3の実施形態)
次に、
図9を参照する。
図9は、表示復帰制御におけるヒステリシス制御を示す図である。なお、表示復帰制御は、表示移行制御、又は表示分散制御が実施された後、所定の条件が満足される期間において実施され得る。以下、表示移行制御が行われた後の表示復帰制御について説明する。
【0125】
図9の左側に表示移行制御の内容が示され、
図9の右側に表示復帰制御の内容が示されている。
【0126】
表示移行制御では、第1の表示領域DZ1に表示される予定のPOIアイコン群K1が、第2の表示領域DZ2に移行される。第2の表示領域DZ2に表示されるアイコン群にはK2の符号が付されている。
この表示移行制御において使用される閾値(第1の閾値)の値は、M(Mは正の整数)に設定されている。
【0127】
表示復帰制御では、第2の表示領域DZ2に表示されていたPOIアイコン群K3が、第1の表示領域DZ1に戻される。この戻しの結果として、第1の表示領域DZ1に表示されるアイコン群にはK4の符号が付されている。
この表示移行制御において使用される閾値(第3の閾値)の値をN(Nは、N<Mを満たす正の整数)に設定されている。
【0128】
各制御に用いる閾値の値に差を設けて、M>Nとすることで、ヒステリシス制御が実施される。
【0129】
言い換えれば、表示制御部203は、表示移行制御(又は表示分散制御)を実施した後、第2の表示領域DZ2に表示されているPOI表示の全部を第1の表示領域DZ1に戻す表示復帰制御を実施する場合には、第2の表示領域DZ2に表示されている複数のPOI表示(POIアイコン群K3)の数値が、表示移行制御に用いられた閾値(第1の閾値)Mよりも小さい第3の閾値Nを超えていないか否かを判定し、超えていないと判定される場合に、表示復帰制御を実施する。
【0130】
例えば、第2の表示領域DZ2に表示されている複数のPOI表示(POIアイコン群K3)が、第1の閾値Mよりも小さい第3の閾値Nを下回る状態であるとき、言い換えれば、POI表示の数が十分に減少し、よって実景の視認性を確保できると判定され得る状況である場合に表示復帰制御を実施する。
【0131】
これにより、第1の表示領域DZ1に戻されたPOI表示が、同一の閾値を用いた判定結果に基づいて、その直後に第2の表示領域DZ2に遷移され、さらに、同じ閾値を用いた判定によって、その直後に再び第1の表示領域に戻される、といった好ましくない事態(言い換えれば、表示の振動)が生じることを、確実に抑制することができる。
【0132】
次に、
図10を参照する。
図10(A)、(B)、(C)は各々、表示移行制御、表示分散制御、及び表示復帰制御の際のヒステリシス制御における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0133】
図10(A)の表示移行制御処理において、ステップS1が実施される。ステップS1においては、第1の表示領域における複数のPOI表示が、所定の閾値を超えた場合は、全部のPOI表示を、第2の表示領域に移行させる処理が実施される。
但し、POI表示が多すぎる場合は、表示移行制御は中止し、POI表示を非表示とする処理が実施される。
ここで、第2の表示領域は、第1の表示領域よりも、乗員による車両外の実景の視認に与える影響が小さい領域であり、虚像表示面、実像表示面の何れに設けられてもよい。
【0134】
図10(B)の表示分散制御処理では、ステップS2が実施される。ステップS2では、第1の表示領域における複数のPOI表示が、所定の閾値を超えた場合は、例えば、乗員の行動履歴等に基づいてPOI表示に優先順位を付与し、優先度の高い一部のPOI表示を第2の表示領域に移行させることで、複数のPOI表示を、第1、第2の領域に分散させる処理が実施される。
【0135】
図10(C)の表示復帰制御の際のヒステリシス制御処理では、表示移行制御又は表示分散制御の後、表示を元に戻す表示復帰制御を実施する場合において、表示移行制御、又は表示分散制御にて使用した閾値をM(Mは正の整数)とするとき、表示復帰制御にて使用する閾値をN(Nは、N<Mを満足する正の整数)とすることで、ヒステリシス制御を実施する。
【0136】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、複数のPOI表示(複数のPOI表示の表示状態)の数値化の方法及び、適切な閾値の設定例等について説明する。
【0137】
(POI表示の表示状態の数値化の必要性)
例えば、都市部や商業施設が多く建ち並ぶ地点を走行する場合、POIの個数は多くなる傾向にある。その場合、表示システム(表示装置)に表示するPOI表示も増える。POI表示が増えすぎると、乗員(運転者等)による前方等の実景の視認の妨げになる場合もある。これを抑制するためには、POI表示の個数を制限することが考えられる。例えば、表示できるPOI表示の個数の限界を5個までなどと設定しておけば、乗員の実景の視認性の低下は問題とならない。
【0138】
但し、このような制御を行うと、表示されないPOI表示が多くなる分、乗員に提供される情報量が低下するという課題が生じる。
乗員(ユーザ)が、自車両が走行している経路の周囲の情報を漏れなく取得したいと望む場合も想定され得る。よって、表示できるPOI表示の数を一律に制限してしまう方法は、表示システムの利便性を低下させる一因となる。
【0139】
一方、例えば、新しいPOI表示が登場するたびに、他のPOI表示を非表示にするなどの処理を行えば、表示の切り替えが頻発してしまい、乗員に煩わしさを与える可能性があり、また、十分な視認時間を確保させることができない可能性が生じる。
【0140】
また、他のPOI表示を非表示にする処理は、どのような優先度(優先順位)に従って、何を非表示にするかを逐一計算し、実行する必要があり、表示システムの処理負担が増大し、また高速な表示処理を困難にする一因ともなり得る。
【0141】
このような考察に基づいて、本発明者は、仮にPOI表示が多数、出現したとしても、その数を低減せずに表示することを原則とし、一方、POI表示に関する表示状態を、例えば客観的な数値で表現し、その数値と所定の閾値とを比較し、その比較結果に基づいて、実施するべき表示処理の内容を迅速に決定できる表示システムが必要である、との結論に達した。
【0142】
(数値化の方法について)
第1の表示領域ZD1に表示されているPOI表示の表示状態は、主にPOI表示の個数とその1個当たりの表示面積によって特徴づけられる。よって、POI表示の個数、及び、1個当たりの表示面積の少なくとも一方を変数(パラメータ)として、例えば適切な関を用いることで、POI表示の表示状態(表示状況)を数値化し、客観的な判断基準としての数値を得ることができる。
【0143】
ここで、複数のPOI表示の全部が第1の表示領域DZ1に表示されると仮定し、その場合のPOI表示の個数をα個、POI表示1個あたりの表示面積をS
0とする。このとき、第1の表示領域DZ1でのPOI表示の表示状態は、適切な関数fにより、以下のように表すことができる。
【数1】
ここで、λは適当なパラメータであり、例えば車速などがあげられる。必要ならば、このパラメータの個数は増えてもよい。
【0144】
ここで、0以上の整数α、βと、適当なλをパラメータとする関数C(λ)(>0)を用いると、以下の式を得ることができる。
【数2】
【0145】
ここで、λを車速(速度)とし、Cを単調増加関数とすれば、速度にも応じた表示状態を評価することができる。
例えば、C=1、α=1、β=0とおけば、表示状態は、第1の表示領域DZ1に表示されているPOIの個数により表され、C=1、α=1、β=1とおけば、表示状態は、表示状態は、第1の表示領域DZ1に表示されているPOIの表示面積の合計(総表示面積)に表される。
【0146】
(表示移動制御を実施するか否かの判定について)
次に、上記の関数により算出される数値と、表示限界の上限値(正の整数の定数である第1の閾値)との関係が、例えば、下記の関係を満たすか否かを判定する。下記の関係が満たされた場合は、表示移行制御が実施される。
【数3】
【0147】
このほかにも、必要な要件に応じて、関数の形を適切な初等関数(多項式関数、指数関数、対数関数、三角関数、及びそれらの合成や線形結合、定義域で異なる関数を設定する等)で表してもよい。
上記の判定は、例えば、自車両が例えば所定の距離(例えば20m)進むごとに実行してもよい。
【0148】
(優先順位に基づく表示分散変更制御について)
優先順位の設定にあたっては、例えば、乗員の好み、及び表示対象についての口コミ等によると評価の高さの少なくとも一方を利用して順位付けを行うとよい。
【0149】
優先順位付けのための処理としては、以下のようなものが考えられる。
【0150】
例えば、乗員が、特定のジャンルのPOIを過去に検索した回数の割合をxとし、これから表示しようとしていたPOI情報の評価の点数をyとする。そして、適当な関数gを用いて、乗員の過去の行動履歴を、例えば以下のように表す。
【数4】
ここで、σは適当なパラメータであるが、このパラメータは複数であってもよい。
【0151】
最も簡単な順位付け規則は、0以上の適当な数α、β、σをパラメータとして含む適当な関数C(σ)(>0)を使用して、以下のように表すことができる。
【数5】
【0152】
上記の関数を用いると、特定のジャンルのPOIについての検索回数が多いほど、POIに対する評価が高いほど順位が高くなる。
このほかにも、必要な要件に応じて、関数の形を適切な初等関数(多項式関数、指数関数、対数関数、三角関数、及びそれらの合成や線形結合、定義域で異なる関数を設定する等)で表してもよい。
【0153】
このように、本発明によれば、HUD装置等により表示されるPOI表示の数が増えた場合でも、複数のPOI表示によって乗員が享受する利便性と、乗員による実景の視認性とを両立させることができる。
【0154】
本明細書において、車両という用語は、広義に、乗り物、あるいは、移動体としても解釈し得るものである。
【0155】
また、ナビゲーションに関する用語(例えば標識等)についても、例えば、車両の運行に役立つ広義のナビゲーション情報という観点等も考慮し、広義に解釈するものとする。
【0156】
また、HUD装置や表示器装置等の表示部(表示装置)や表示システムには、シミュレータ(例えば、航空機のシミュレータ、ゲーム装置としてのシミュレータ等)として使用されるものも含まれるものとする。
【0157】
また、上述の実施形態では、投影表示装置として、主としてHUD装置を例に説明したが、これに限定されず、例えば、車内プロジェクタ等も使用可能である。
【0158】
また、上述の実施例では、表示器装置として、車両の中央部に設けられるセンターインフォメーションディスプレイ(CID)や、乗員の正面に位置する計器クラスタディスプレイ(ICD)を例にとって説明したが、これに限定されるものではなく、他の表示器装置を使用してもよい。言い換えれば、表示器装置の名称に拘泥することなく、実質的にCIDやICDと同様の機能を有するディスプレイは、すべて本発明において使用可能である。
【0159】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0160】
1・・・車両(自車両)、2・・・被投影部材(ウインドシールド等)、3・・・目(視点)、4・・・ステアリングホイール、5・・・乗員(運転者等)、41・・・ダッシュボード、51a、51b・・・テンプル、52a、52b・・・フレーム、53a、53b・・・眼鏡レンズ、61a、61b・・・HMD用の制御部、62a、62b・・・光源部、63a、63b・・・走査部、70a、70b・・・ホログラムミラー、100・・・表示システム(車両表示システム)、102・・・ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置、103・・・HUD装置の筐体、104・・・ウインドシールドディスプレイ(WSD)、120・・・センターインフォメーションディスプレイ(CID)、130・・・計器クラスタディスプレイ(ICD、メータディスプレイ)、141・・・CID制御部、143・・・ICD制御部、151・・・光源部、152・・・表示器(WSDの構成要素)、159・・・WSD制御部、160・・・HUD制御部、170・・・凹面鏡(曲面反射鏡、光学系)、200・・・表示制御装置、201・・・表示装置制御部、203・・・表示制御部、204・・・POI表示生成部、205・・・表示領域の変更制御部、206・・・優先順位取得部、207・・・情報取得部、209・・・蓄積部(ストレージ)、211・・・POI保存情報、213・・・行動履歴情報、220・・・通信部、222・・・ECU(電子制御ユニット)、229・・・視線検出部、230・・・注視判定部、231・・・ナビゲーション装置、232・・・記憶部、233・・・POI情報、239・・・位置情報、241・・・付帯情報、243・・・自車位置情報、245・・・表示データベース、AN・・・アンテナ、SP・・・車速表示、DZ1・・・第1の表示領域、DZ2・・・第2の表示領域、DZ3・・・第3の表示領域、Q1~Q11・・・POI表示(POIアイコン、POI画像)。