(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136948
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
H02K 35/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H02K35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048260
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】永井 弘人
(72)【発明者】
【氏名】吉武 裕
(72)【発明者】
【氏名】山田 遼太
(72)【発明者】
【氏名】藤本 亮汰
(57)【要約】
【課題】人体の下半身に装着されて使用される発電装置であって、歩行による運動を効率よく発電に活用できるようにする。
【解決手段】曲線状若しくは円環状の筒状体と、この筒状体の環状周面に巻き付けられたコイル部と、筒状体の内部に挿入された移動自在な磁石とで構成された発電部を有し、
筒状体のうち曲線状をなす筒状体はサイクロイド曲線か、その主要部がサイクロイド曲線でその両端部がサイクロイド曲線よりも曲率が大きくなされており、発電部の揺動運動に伴う磁石の筒状体内部での移動に応じた鎖交磁束に基づく誘導起電力が上記発電部で発生するようにした。脚部である太ももの外側や足首に発電部を装着すれば、歩行時の往復動を効率よく発電部に伝達できるので発電効率を高めることが可能になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲線状若しくは円環状の筒状体と、この筒状体の環状周面に巻き付けられたコイル部と、上記筒状体の内部に挿入された移動自在な磁石とで構成された発電部を有し、
上記筒状体のうち曲線状をなす筒状体はサイクロイド曲線か、その主要部がサイクロイド曲線でその両端部がサイクロイド曲線よりも曲率が大きくなされており、
上記発電部の揺動運動に伴う上記磁石の上記筒状体内部での移動に応じた鎖交磁束に基づく誘導起電力が上記発電部で発生するようにした
ことを特徴とする発電装置。
【請求項2】
上記発電部は、歩行運動に伴って揺動する下半身に装着され、上記揺動運動は歩行時の揺動運動である
ことを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
上記発電部の筒状体のうち曲線状の筒状体を下半身に装着したとき、上記筒状体の長手方向が歩行方向と並行であって、筒状体の中心軸がなす平面が鉛直平面と所定の角度だけ傾けた状態となるように下半身に固定される
ことを特徴とする請求項2記載の発電装置。
【請求項4】
上記コイル部は、複数のコイル素子で構成され、これらコイル素子で得られた誘導起電力を並列接続して二次電池の充電電圧として使用する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行しながら発電できる発電装置であって、携帯端末装置などに内蔵された二次電池の充電用などとして利用できる発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活として必須アイテムの一つに世界中で普及している携帯電話(スマートフォン)などの携帯端末がある。携帯電話は内蔵された二次電池を利用して情報などの閲覧や通信が可能であるが、使用するにつれ二次電池の容量が少なくなるため適宜充電操作(充電作業)が必要になる。
【0003】
充電操作は充電機器を利用するのが一般的であるが、最近ではモバイルバッテリーを携帯して必要なタイミングに充電を行う場合もある。充電機器は交流電源が必要になるので、使用者の移動中にはモバイルバッテリー以外は充電することができない。使用者の移動中に充電できれば、充電タイミングを気にすることなく外出中に充電作業が自動的に実行できるので、自宅での充電作業から解放され、利便性が向上する。
【0004】
このような観点から、外出しながらでも携帯端末への充電を行い得る装置が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3など)。
特許文献1は、携帯端末装置自身で効率よく充電できるようにした発明であって、発電機能を内蔵した補助部材を携帯端末に取り付け、携帯者の動きに伴って補助部材を揺動させ、その揺動によって発電するようにしたものである。
特許文献2や特許文献3は、振動によって発電する振動発電機の発明であり、この振動発電機を人体に装着することで発電した電力を端末装置の電力として利用したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-16788号公報
【特許文献2】特開2013-135566号公報
【特許文献3】米国特許第7498682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に係る発明は、補助部材自身の振り子運動による揺動で発電するものであるが、歩行周期と補助部材の振り子周期が一致せず、振り子の周期を歩行周期に合わせ、効率よく発電するためには、補助部材自身の振り子の長さを長くしなければならない。そのため補助部材のコンパクト化が難しく、しかも歩行でも速度が速いジョギングなどに追従させることもなかなか難しくなるなどの問題がある。
【0007】
特許文献2や特許文献3に係る発明は、縦型の振動発電機であるため、利用者の身体に装着すると身体の動きのうち縦方向の動きしか振動発電機としては利用できない。歩行の主な動きは水平運動であるので、身体の動きのうち部分的な動きしか振動発電に寄与しないので、発電効率が悪いという問題がある。
【0008】
そこで、この発明は上述した課題を解決したものであって、歩行による運動を効率よく発電に活用できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載したこの発明による発電装置は、曲線状若しくは円環状の筒状体と、この筒状体の環状周面に巻き付けられたコイル部と、上記筒状体の内部に挿入された移動自在な磁石とで構成された発電部を有し、上記筒状体のうち曲線状をなす筒状体はサイクロイド曲線か、その主要部がサイクロイド曲線でその両端部がサイクロイド曲線よりも曲率が大きくなされており、上記発電部の揺動運動に伴う上記磁石の上記筒状体内部での移動に応じた鎖交磁束に基づく誘導起電力が上記発電部で発生するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載のこの発明による発電部は、歩行運動に伴って揺動する下半身に装着され、上記揺動運動は歩行時の揺動運動であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載のこの発明による発電部の筒状体のうち曲線状の筒状体を下半身に装着したとき、上記筒状体の長手方向が歩行方向と並行であって、筒状体の中心軸がなす平面が鉛直平面と所定の角度だけ傾けた状態となるように下半身に固定されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載のこの発明に係る発電装置に使用されるコイル部は、複数のコイル素子で構成され、これらコイル素子で得られた誘導起電力を並列接続して二次電池の充電電圧として使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、発電部を、サイクロイド曲線あるいはサイクロイド曲線よりも端部ほどさらに曲率が大きくなる曲線状若しくは円環状をなす筒状体と、この筒状体の環状周面に巻き付けられたコイル部と、筒状体の内部に挿入された往復動自在な磁石とで構成し、発電部を下半身例えば太ももに装着できるようにしたため、人の歩行振幅によらず磁石の揺動周期を一定にすることができ、端部の曲率を大きくする効果で歩行周期に依らず共振も維持できるので、安定した鎖交磁束を得ることができ、安定した充電電力を確保できる。サイクロイド曲線を採用することで、発電部の小型化も実現できる。筒状体として円環を使用する場合においても、歩行周期によらず磁石は安定した回転周期が得られるため、サイクロイド状の筒状体を使用した場合と同様な効果を期待できる。
コイル素子を複数使用すると共に、それぞれからの電流を全波整流して得られる電圧を並列接続して充電電圧とすれば、小型の発電部であっても端末装置などに内蔵された二次電池用の充電電力として十分活用できるなどの特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明に係る発電装置を太ももへの装着用として使用するときの一例を示す要部の構成図である。
【
図4】発電部に接続される整流関連回路の一例を示す簡易回路図である。
【
図5】この発明に係る発電装置を、左脚の太もも外側に装着したときの要部の一例を示す簡易図である。
【
図6】この発明に係る発電装置を、左脚を真横から見たときの装着例を示す側面図である。
【
図7】筒状体としてサイクロイド状の曲線状筒状体を使用した発電装置における普通歩行時に得られる誘起電圧であって、コイル素子1個のときに得られる波形図の一例である。
【
図8】
図7と同様な波形図であって、ジョギング時に得られる誘起電圧の一例を示す波形図である。
【
図9】筒状体として円環を使用した発電装置の要部の断面図である。
【
図10】円環を使用したときの半円環同士の連結部の一例を示す要部の断面図である。
【
図11】筒状体として円環を使用した発電装置における普通歩行時に得られるコイル素子での誘起電圧の一例を示す波形図である。
【
図12】
図11と同様な波形図であって、ジョギング時に得られる誘起電圧の一例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明は歩行しながら発電できる発電装置であり、携帯端末装置などに内蔵された二次電池の充電用などとして利用できる発電装置である。携帯電話の場合、この発電装置と共に携帯電話を歩行者のポケットなどに入れ、発電装置と携帯電話をUSBケーブルなどの充電ケーブルで結び、歩行中に発電装置からの充電電圧で携帯電話の二次電池を充電することになる。
【0016】
[第1の実施の形態]
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
この発電装置10は
図5および
図6に示すように、歩行者の下半身特に太もも70に装着して使用されるが、歩行の妨げにならないように、太もも70のうちでも膝に近い外もも72に装着される(
図6参照)。発電装置10を構成する発電部20は伸縮自在で所定の幅と長さを有する保持バンド(結束バンド)80に設けられた袋状の収納部(ポケット)82内に収納固定されている。
なお、
図5および
図6には下半身が裸のままズボンをはかない状態の図として示してあるが、装着例としてはこの他にステテコなどの下着の上から装着したり、ズボンなどを履いたりした状態で装着することが考えられる。
図5および
図6の例は何れも下半身に直接装着した場合である。これは装着時の位置を分かり易く説明するためである。
【0017】
図1にこの発明に係る発電装置10の要部構成を示す。同図において、発電装置10は発電部20と、発電部20から得られるパルス状の電圧(誘導起電力)を二次電池に適した充電電圧に変換するための整流関連回路30とで構成され、整流関連回路30には充電コードを接続するためのコネクタ(例えば、USBコネクタ)38が設けられている。
【0018】
発電部20は、曲線状の筒状体40を有する。曲線状の筒状体40はサイクロイド曲線と同じ曲率を持つ筒状体を使用できるのはもちろんであるが、以下に示す実施例は
図2に示すように筒状体40の主要部(
図2におけるθ=πである中央部を中心とした左右同程度の幅)はサイクロイド曲線と同じ曲率であるが、それぞれの端部側はサイクロイド曲線よりもさらに曲率が大きくなるような曲線状をなす筒状体(変形サイクロイド曲線状の筒状体)40として構成される。
図2において、鎖線図示がサイクロイド曲線の中心線Lsを示し、端部側に部分的に示す破線図示Lxはサイクロイド曲線よりも曲率の大きな曲線を示す。端部を破線で示したのがサイクロイド曲線による端部曲線で、これより内側に変形サイクロイド曲線の端部(実線図示)が位置する。
【0019】
発電部20はさらにこの筒状体40の外周面に巻き付けられたコイル部50と、
図3に示すように筒状体40の内部に往復動自在に配置された磁石60とで構成される。
コイル部50は所定の巻数に選定された複数のコイル素子52で構成される。
図1には4個のコイル素子52A~52Dでコイル部50を構成した例である。磁石60は球状若しくは円柱状の永久磁石を使用することができ、本例では球状磁石を使用した場合である。
【0020】
上述したサイクロイド曲線は、a>0、0≦θ≦2πなるa、θに対し、媒介変数表示
x=a(θ-sinθ)
y=a(1-cosθ)
で表される曲線である。筒状体40の大きさを決める値aは、諸種の実験により人体に適するように、しかも人体の太もも70の周径も男女によって、あるいは体型によって相違してくるので、これらを勘案して決める。サイクロイド曲線上の各点はθの値と対応しているが、筒状体40としてサイクロイド曲線上のどの部分を使用するについては、筒状体40の長さをどの程度にするかなど総合的に判断して、上式のθ=πを中心とした
0≦θ≦2πを満たすθの範囲を決めることになる。
【0021】
このように使用する筒状体40の形体が選定される。加えて、筒状体40の半径や長さは内部に収容される磁石60やコイル素子52の巻き数や使用個数によっても相違するので、最終的にどの程度の誘起起電力を目標とするかによって諸種のパラメータが選定されることになる。
【0022】
磁石60は筒状体40の内部ではフリーであるから、歩行者の動きに応じて磁石60は筒状体40内を往復動する。このとき、歩行の周期T秒(個人にって異なるがおおよそ1秒である)と磁石60の往復運動の固有周期が一致するように、次式を満たすように筒状体40を設計、装着する。
ここに、aは前述の筒状体40の大きさを決める値、gは重力加速度、Θは筒状体40が鉛直平面となす角度である。このサイクロイド曲線の特性により、通常の振り子運動と異なり、歩行の周期が同じで歩幅が大きくなっても共振を維持できる。しかも、上述のΘの導入で、筒状体40の小型化が可能になる。
【0023】
筒状体内部の磁石60の運動は、使用する筒状体40のなす曲線形状によって相違する。サイクロイド曲線のうち端部のみその曲率が変更された変形サイクロイド曲線の筒状体40を使用する場合、磁石60はこの変形サイクロイド曲線の軌道に沿うように往復動をする。この発明では、磁石60の運動(振動)がその振幅によらず、その周期が一定となるこのサイクロイドの特性を利用したものであるから、この特性により、通常の振り子運動と異なり、歩行の周期が同じで歩幅が大きくなっても共振を維持できるという特徴がある。
【0024】
さらに、歩行の場合、一般に、速歩、ジョギングと歩行速度が変わると、磁石60に与えられる外力の振幅は大きくなるものの、振動周期が短くなり、共振を維持できなくなる。このとき、筒状体40として、上述したようにサイクロイドよりも端部の曲率が大きな軌道を有する変形サイクロイド曲線のものを採用した場合には、振幅が大きくなると固有周期が短くなるので、外力の振幅増加、かつ短周期化に対応して歩行速度に依らず共振を維持することができるという効果が得られる。
【0025】
図3は発電部20の内部を示す要部断面図である。磁石60は筒状体40の内部に収容された後は、図示はしていないが、筒状体40の左右端部は閉塞され、使用中に磁石が外部に離脱しないようにしている。磁石60の直径は筒状体40の内径とほぼ同一径となされているが、歩行に伴う振動によって磁石60の往復動が妨げられないように両者の大きさが選定されている。
【0026】
ここで、数値の一例を示す。筒状体40の内径は16mm、外径は20mm程度であり、長さ(周長)は20cm、筒状体40の端部間の長さは15cm程度である。筒状体40に挿入される球状磁石60の直径は15mm程度である。発電装置10自体の小型化を指向する場合には、球状磁石60として10~12mm程度が好適であるので、それに合わせて筒状体40のサイズが決定されることになる。円柱状の磁石60を使用するときの円柱の長さは10~15mm程度が好適である。
【0027】
図4は整流関連回路30の一例を示す。コイル部50を構成するこの例では4個のコイル素子52A~52Dを磁石60の磁束が鎖交することによってコイル素子52A~52Dのそれぞれからは離散的に誘起電流が順次得られるが、これら誘起電流はそれぞれ全波整流回路32(32A~32D)に導かれてパルス状の誘起電流が全波整流される。
【0028】
誘起電流に関連した誘起電圧波形を
図7と
図8に示す。
図7は通常歩行時に得られる誘起電圧波形である。通常歩行時の片方の足の歩行周期は約1秒であり、1秒間隔でパルス状の誘起電圧が発生する。
図8は、ジョギング時に得られる誘導電圧波形であり、歩行時の周期は1秒以下である。
図7及び
図8に示す電圧波形はコイル素子52を使用したときに得られた実験時の電圧波形である。
【0029】
全波整流された誘起電圧は、
図4に示すように後段の平滑回路34で平滑され、さらに必要に応じて設けられた昇圧回路36で所定電圧まで昇圧されて最終的な充電電圧となされる。最終的な充電電圧を何ボルトにするかはコネクタ38に接続される携帯端末などによって相違する。
【0030】
発電部20は
図1に示すよう帯状の保持バンド80上に装着固定される。保持バンド80は所定の幅と長さを有する。成人の男女の場合で平均的な体型の場合、太ももの周径は52~55cm程度であるので、この周径をカバーできる程度の幅と長さに選定され、しかも伸縮性に富んだ材質のバンドが使用される。保持バンド80の両端には面ファスナー84が設けられ、この面ファスナー84でその両端を連結するようにしている。
【0031】
保持バンド80の上面所定位置には発電部20を収納固定するための収納部82が設けられている。収納部82は袋状である。歩行時の脚の運動(揺動運動)が発電部20の磁石60に効率よくその振幅運動として伝達されるように発電部20の太ももに対する装着位置が選定される。しかも発電部20は歩行の妨げにならないようにする必要があるので、この例では太もも70のうちでも膝に近い外もも72側に発電部20が位置するように装着される。そのため、保持バンド80を装着したときには常に外もも72に発電部20が位置するように収納部82に収納固定されることになる(
図5および
図6参照)。
【0032】
さらに、発電部20の装着時には、
図6に示すように発電部20はその筒状体40の長手方向が歩行方向と並行であって、筒状体40の内径側が上半身側を向くように、かつ筒状体40の中心線(筒の中心線Ls)がなす平面が鉛直平面と前述の角度Θだけ傾いた状態で装着される。そのため、
図6のように保持バンド80を外もも72に装着したときには、そのような向きとなるように予め位置決めされた状態で発電部20が収納部82に収納固定されている。筒状体40をこのような状態で装着することで磁石60の往復動(往復運動)において、筒状体40を小型化、すなわち、前述の値aを小さくしても、歩行による外力と共振させることができる。
【0033】
[第2の実施の形態]
図9にこの発明に係る発電装置10の第2の実施の形態を示す。この発電装置10を構成する発電部20に使用される筒状体はサイクロイドとは異なり円環状をなす筒状体(円環状筒状体)90である。円環状であるため、一歩歩けば磁石60は円環状筒状体90内を1周ないし4周程度まで、回転運動する。
【0034】
円環状筒状体90は半円状をなす一対の半円状環体90A、90Bが使用され、一対の半円状環体90A、90Bの外周面には所定の間隔を隔てて複数個のコイル素子52が巻き付けられたコイル部50が設けられている。コイル素子52の巻数や使用する個数は目的に応じた適宜な値を選ぶことができる。
【0035】
一対の半円状環体90A(90B)の連結例を
図10に示す。この例では嵌合式の連結部92として構成され、一方例えば左側の上方環体端部(内径部)92Aの外面側に、他方の環体端部(外径部)92Bを嵌合することによって一体化した円環状筒状体90が得られる。左側の下方環体端部(内径部)92Aは情報環体端部の構成とは逆転している。
【0036】
円環状筒状体90を装着する下半身としては足首や手首が想定されるが、膝上でも構わない。そのため装着部位に合わせた大きさの円環状筒状体90を用意する必要がある。装着例は割愛するが、装着時には半円状環体90A、90Bのまま装着部位、例えば足首74の両側から装着し(
図5矢印図示)、その後、半円状環体90A,90B同士を連結することになる。足首74への装着に当たっては、歩行時足首との摩擦を考慮して柔軟な弾性部材を円環状筒状体90の内径側に巻き付けておけば、歩行によって皮膚が傷ついたりすることがなない。
【0037】
図11と
図12は
図9の円環状筒状体90を使用したときに得られる電圧波形図である。この波形図は、円環状筒状体90のうち、一部の外周面にのみ1個のコイル素子52を巻き付けたときに得られる波形図であるので、
図9の実施例の構成とは相違する。
【0038】
図11は普通歩行時のときに得られるパルス状の誘起電圧波形であり、
図12はジョギング時に得られる誘起電圧波形である。
図6あるいは
図8と比較すれば明らかなように、コイル素子のみを使用したときでも、大きなレベルの電圧が1秒程度の間に4回得られていることが判る。これは歩行の一歩でも磁石は高速で数周回転するからである。
上述した実施例では、いずれも充電対象を携帯電話などの携帯端末に適用した例であるが、モバイルバッテリー用の充電装置としても適用できることは容易に理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明によれば、歩行による運動を効率よく発電に活用できるので、歩行運動するだけで携帯端末を充電することでき、自宅などでの煩わしい充電作業から解放される実益を有する。
【符号の説明】
【0040】
10・・・発電装置
20・・・発電部
40・・・筒状体
50・・・コイル部
52・・・コイル素子
60・・・磁石
30・・・整流関連回路
32・・・全波整流回路
34・・・平滑回路
36・・・昇圧回路
38・・・コネクタ