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特開2024-13695磁気センサ、回転角検知装置、及び回転角検知装置を用いたブレーキシステム
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  • 特開-磁気センサ、回転角検知装置、及び回転角検知装置を用いたブレーキシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013695
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】磁気センサ、回転角検知装置、及び回転角検知装置を用いたブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116003
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】蔡 永福
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA12
2F077AA46
2F077CC02
2F077NN04
2F077NN17
2F077NN24
2F077PP14
2F077QQ03
2F077VV02
2F077VV31
(57)【要約】
【課題】磁石の回転角を検知する磁気センサにおいて、角度測定誤差を低減し取付構造を簡略化する。
【解決手段】磁気センサ1は、中心軸Cの周りを回転する磁石2が発生する磁場を検知する磁場検知素子7と、第1の面P1と第1の面の裏面である第2の面P2とを有し、第2の面P2は第1の面に対して傾斜した第1の傾斜面PK1を含む基板10と、を有している。磁場検知素子7は第1の傾斜面に沿って設けられている。磁石2は中心軸Cから間隔をあけて設けられ、中心軸の周方向に沿って極性が交互に入れ替わっている。第1の面は中心軸Cと実質的に平行であり、第1の傾斜面は第1の面に対して平均角度θをなして傾斜している。中心軸Cと直交する面内において、磁場検知素子の設置位置での磁場強度は磁石2の回転に伴い変化し、面内における磁場強度の最小値に対する最大値の比をMFRとしたときに、(1/Ks)×0.8≦MFR≦(1/Ks)×1.2(但し、Ks=sinθ)である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の周りを回転する磁石が発生する磁場を検知する第1の磁場検知素子と、
第1の面と前記第1の面の裏面である第2の面とを有し、前記第2の面が前記第1の面に対して傾斜した第1の傾斜面を含む基板と、を有し、
前記第1の磁場検知素子は前記第1の傾斜面に沿って設けられ、
前記磁石は前記中心軸から間隔をあけて設けられ、前記中心軸の周方向に沿って極性が交互に入れ替わり、
前記第1の面は前記中心軸と実質的に平行であり、
前記第1の傾斜面は前記第1の面に対して平均角度θをなして傾斜し、
前記中心軸と直交する面内において、前記第1の磁場検知素子の設置位置での磁場強度は前記磁石の回転に伴い変化し、前記面内における前記磁場強度の最小値に対する最大値の比をMFRとしたときに、
(1/Ks)×0.8≦MFR≦(1/Ks)×1.2(但し、Ks=sinθ)を満足する、磁気センサ。
【請求項2】
前記第1の面と前記中心軸は平行であり、または前記第1の面を含む平面と前記中心軸とがなす鋭角が5度以下である、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
中心軸の周りを回転する磁石が発生する磁場を検知する第1の磁場検知素子と、
第1の面と前記第1の面の裏面である第2の面とを有し、前記第2の面が前記第1の面に対して傾斜した第1の傾斜面を含み、前記第1の傾斜面に沿って前記第1の磁場検知素子が設けられた基板と、を有し、
前記磁石は前記中心軸から間隔をあけて設けられ、前記中心軸の周方向に沿って極性が交互に入れ替わり、
前記第1の面を含む平面は前記中心軸と実質的に直交しており、
前記第1の傾斜面は前記第1の面に対して平均角度θをなして傾斜し、
前記中心軸と直交する面内において、前記第1の磁場検知素子の設置位置での磁場強度は前記磁石の回転に伴い変化し、前記面内における前記磁場強度の最小値に対する最大値の比をMFRとしたときに、
(1/Ks)×0.8≦MFR≦(1/Ks)×1.2(但し、Ks=cosθ)を満足する、磁気センサ。
【請求項4】
前記第1の面を含む前記平面と前記中心軸とがなす角度は85度以上95度以下である、請求項3に記載の磁気センサ。
【請求項5】
(1/Ks)×0.9≦MFR≦(1/Ks)×1.1を満足する、請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項6】
(1/Ks)×0.95≦MFR≦(1/Ks)×1.05を満足する、請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記第1の磁場検知素子は第1及び第2の磁気抵抗効果素子を有し、各磁気抵抗効果素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、磁場に応じて前記磁化方向が変化する磁化自由層と、を有し、
前記第1の傾斜面は4つの辺と、互いに対向する前記辺の中点同士を結ぶ直線状の中心線を有し、前記第1の磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化方向は前記中心線と実質的に平行であり、前記第2の磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化方向は前記中心線と実質的に直交する、請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記第1の磁場検知素子と電気的に接続された電気配線部材と、前記基板を備えたセンサパッケージと、を有し、前記センサパッケージは、前記第1の面が前記電気配線部材と略平行となる向きで、前記電気配線部材に支持されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記磁場検知素子は前記第1の傾斜面に沿って湾曲している、請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記第1の磁場検知素子は、前記第1の面と第1の角度をなす第1の端部と、前記第1の面と第2の角度をなす第2の端部と、を有し、
前記第2の角度は前記第1の角度より小さく、
前記第1の端部における前記第1の磁場検知素子の曲率は、前記第2の端部における前記第1の磁場検知素子の曲率よりも小さい、請求項9に記載の磁気センサ。
【請求項11】
前記磁石が発生する磁場を検知する第2の磁場検知素子を有し、
前記第2の面は、前記第1の傾斜面と逆方向に傾斜した第2の傾斜面を有し、
前記第2の磁場検知素子は前記第2の傾斜面に沿って設けられ、
前記第1の磁場検知素子と前記第2の磁場検知素子は電源端とグランド端との間で直列に接続されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか1項に記載に磁気センサと、
前記磁石と、を有する回転角検知装置。
【請求項13】
請求項12に記載の回転角検知装置と、
前記中心軸の周りを回転する回転シャフトを備え、電動ブースターとして作動するモータと、を有し、
前記磁石が前記回転シャフトの側面に取り付けられた、ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサ、回転角検知装置、及び回転角検知装置を用いたブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
中心軸の周りを回転する磁石の回転角を検知する磁気センサが知られている。磁石が発生する磁場の強さと向き(磁場ベクトル)は、磁石の回転に伴い、磁気センサの設置位置の周りでリサージュを描く。特許文献1には、このリサージュが概ね円形となるように配置された磁気センサが開示されている。このように配置された磁気センサでは、角度測定誤差が抑制される。特許文献1に開示された磁気センサは、磁石の中心軸に対して斜めに設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4900838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された磁気センサは磁石の中心軸に対して斜めに配置されているため、取付構造が複雑になりやすい。一般に、磁気センサは磁石の中心軸と実質的に平行か、または中心軸と実質的に直交する向きで取り付けることが好ましい。しかし、そのように取り付けられた磁気センサは、磁場のリサージュが真円からずれてしまい角度測定誤差を抑制することが難しい。
【0005】
本発明は、回転する磁石の回転角を検知可能で、角度測定誤差が低減され、取付構造が簡略化された磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の磁気センサは、中心軸の周りを回転する磁石が発生する磁場を検知する第1の磁場検知素子と、第1の面と第1の面の裏面である第2の面とを有し、第2の面は第1の面に対して傾斜した第1の傾斜面を含む基板と、を有する。第1の磁場検知素子は第1の傾斜面に沿って設けられている。磁石は中心軸から間隔をあけて設けられ、中心軸の周方向に沿って極性が交互に入れ替わる。第1の面は中心軸と実質的に平行であり、第1の傾斜面は第1の面に対して平均角度θをなして傾斜している。中心軸と直交する面内において、第1の磁場検知素子の設置位置での磁場強度は磁石の回転に伴い変化し、面内における磁場強度の最小値に対する最大値の比をMFRとしたときに、(1/Ks)×0.8≦MFR≦(1/Ks)×1.2(但し、Ks=sinθ)を満足する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転する磁石の回転角を検知可能で、角度測定誤差が低減され、取付構造が簡略化された磁気センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るブレーキシステムの概略構成図である。
図2】磁気センサと磁石とモータの概略配置を示す図である。
図3】磁気センサの概略配置を示している。
図4】本発明の第1の実施形態における磁気センサと磁石と回転シャフトの概略配置図である。
図5】磁場検知素子と基板の斜視図である。
図6】MR素子の層構成を示す模式図である。
図7】本発明の第1の実施形態と比較例における外部磁場のリサージュである。
図8】Max(HSY)/Max(HSX)と角度測定誤差との関係を説明する図である。
図9】本発明の第2の実施形態における磁気センサと磁石と回転シャフトの概略配置図である。
図10】本発明の第3の実施形態における磁場検出素子の概略配置図である。
図11】本発明の第4の実施形態における磁気センサと磁石と回転シャフトの概略配置図である。
図12図11に示す磁場検出素子の電気接続を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態について説明する。図1は、本発明の磁気センサが適用されるブレーキシステム101の一例を概略的に示している。ブレーキシステム101はブレーキペダル102と、接続部材103を介してブレーキペダル102に接続されたマスターシリンダ104と、マスターシリンダ104に接続された油圧制御回路105と、油圧制御回路105に接続されたキャリパー106と、を有している。マスターシリンダ104にはリザーバタンク107が接続されている。
【0010】
モータ108はギアトレイン109を介してマスターシリンダ104に接続されている。ブレーキペダル102の変位量はストロークセンサ110で検知され、制御ユニット111に送られる。モータ108の回転数は磁気センサ1(回転角センサ)によって検知され、制御ユニット111に送られる。制御ユニット111はブレーキペダル102の変位量に応じてモータ108の回転を制御する。ブレーキペダル102から入力された制動力はモータ108で増幅され、油圧制御回路105に伝達される。従って、モータ108は電動ブースターとして作動する。油圧制御回路105はブレーキペダル102の踏み込み量に応じてブレーキオイルをキャリパー106に供給する。キャリパー106はブレーキディスク112を制動する。
【0011】
図2は、磁気センサ1と磁石2とモータ108の概略配置を示している。モータ108は、ロータ113とステータ114とを有している。ロータ113とステータ114は、モータケーシング115に収容されている。ロータ113は、中心軸Cの周りを回転する回転シャフト3を備えている。回転シャフト3の先端部の側面に、回転シャフト3と同心でリング状の磁石2が取り付けられている。磁石2は中心軸Cから間隔をあけて設けられている。磁石2の極性は中心軸Cの周方向に沿って交互に入れ替わっている。すなわち、N極とS極が中心軸Cの周方向に沿って交互に配置されている。N極とS極の数は限定されず、少なくとも一対のN極とS極があればよく、本実施形態では4対のN極とS極が設けられている。磁石2はロータ113とともに回転し、磁石2の発生する磁場は回転シャフト3とともに回転する。
【0012】
磁石2の近傍に、磁石2の回転角、従って回転シャフト3及びモータ108の回転角を検知する磁気センサ1が配置されている。磁気センサ1と磁石2は、モータケーシング115に固定されたセンサハウジング4に収容されている。磁気センサ1と磁石2はモータ108の回転角検知装置5を構成する。磁気センサ1は、センサパッケージ11と、センサパッケージ11が取り付けれられた電気配線部材8と、を有している。電気配線部材8は例えばプリント基板からなる。
【0013】
図3は、磁気センサ1の概略配置を示している。センサパッケージ11は基体6と、基体6を支持する支持部12と、基体6に設けられた電気接続パッド13と、電気接続パッド13に接続されたリード線14と、リード線14に接続された電気接続部15と、を有している。基体6と支持部12と電気接続パッド13とリード線14は樹脂16で封止され、電気接続部15の一部も樹脂16で封止されている。樹脂16はセンサパッケージ11の外面を形成する。センサパッケージ11は概ね直方体の形状を有している。電気接続部15の、樹脂16の外側にある部分は電気配線部材8に接続されている。センサパッケージ11は、電気接続部15によって電気配線部材8に取り付けられている。センサパッケージ11の電気配線部材8との対向面P3は電気配線部材8から離れている。
【0014】
図4は、磁気センサ1の基体6と磁石2と回転シャフト3の概略配置を示している。図示の便宜上、これらの部品は実際のサイズと異なっている可能性があることに留意されたい。図4(a)は斜視図であり、図4(b)はY方向からみた側面図である。図5は磁場検知素子7と基板8の斜視図を示している。基体6は概ね直方体の形状を有している。基体6には磁場検知素子7が内蔵されている。磁場検知素子7は電気配線部材8に電気的に接続されている。磁場検知素子7は中心軸Cの周りを回転する磁石2が発生する磁場を検知する。
【0015】
ここで、本実施形態で用いる2つの座標系について説明する。一つは磁場検知素子7のSX-SY-SZ直交座標系である。SX軸、SY軸、SZ軸は互いに直交している。SX軸、SY軸は磁場検知素子7の磁場検知軸に対応する。SX軸は第1の傾斜面PK1の中心線15(図5参照)と直交し、SY軸は第1の傾斜面PK1の中心線15と平行である。SZ軸は磁場検知素子7を構成する各層(例えば、後述する磁化固定層24及び磁化自由層26)と直交しており、従って磁場検知素子7の2つの磁場検知軸と直交している。
【0016】
もう一つの座標系は回転シャフト3及び基体6のX-Y-Z直交座標系である。X軸、Y軸、Z軸は互いに直交している。X軸は回転シャフト3の中心軸Cと平行であり、Y軸,Z軸は回転シャフト3と直交している。Y軸はSY軸と一致している。Z軸は基体6の厚さ方向と平行であり、基体6の取付け面(第1の面P1)と直交している。基体6の厚さとは、基体6の対向面間の寸法のうち、最小の寸法を意味する。磁石2によって発生する外部磁場はY-Z面内で回転し、外部磁界は実質的にY-Z面と平行な成分だけを有するため、X軸方向の磁場成分は実質的に0とみなすことができる。
【0017】
基体6は磁場検知素子7を支持する基板10を有している。基板10はシリコン等で形成された第1の部分10Aと、レジストで形成され後述する第1の傾斜面PK1を備えた第2の部分10Bと、を有している。第1の部分1はZ方向にほぼ一定の厚さを有している。第2の部分10Bは第1の部分10Aの上に積層される。基板10の全体をシリコン基板のエッチング等によって作成することもできる。
【0018】
基板10は平坦な第1の面P1と、第1の面P1の裏面である第2の面P2と、を有している。第1の面P1は基体6の外面の一部(直方体の一つの面)であり、第2の面P2は基体6の内部の面である。第2の面P2と磁場検知素子7は絶縁層9で覆われている。センサパッケージ11は対向面P3が電気配線部材8と対向する向きで、電気配線部材8に支持されている。電気配線部材8と、センサパッケージ11の対向面P3と、基板10の第1の面P1は、中心軸CないしX-Y面と実質的に平行である。実質的に平行とは、第1の面P1と中心軸Cが平行であるか、または第1の面P1を含む面と中心軸Cとがなす鋭角が5度以下であることをいう。
【0019】
第2の面P2は、第1の面P1と平行な第1及び第2の基準面PS1,PS2と、第1の面P1に対して傾斜した第1の傾斜面PK1と、を有している。第1の傾斜面PK1は第1及び第2の基準面PS1,PS2に対しても傾斜している。第1及び第2の基準面PS1,PS2と第1の傾斜面PK1は平坦である。第1の傾斜面PK1はSX-SY面と平行である。第1の傾斜面PK1は第1の基準面PS1と第2の基準面PS2との間にあって、第1の基準面PS1及び第2の基準面PS2と接続されている。
【0020】
第1の傾斜面PK1は4つの直線状の辺11~14を有している。辺11,12は互いに対向し互いに平行であり、辺13,14は互いに対向し互いに平行である。辺11,12はそれぞれ、第1の基準面PS1と第2の基準面PS2とを接続する。辺13は第1の傾斜面PK1と第1の基準面PS1との接続部であり、辺14は第1の傾斜面PK1と第2の基準面PS2との接続部である。第1の傾斜面PK1はY方向に同一の形状を有し、Y方向の任意の点において同じ傾斜角を有する。第1の傾斜面PK1は第1の面P1に対して平均角度θをなして傾斜している。平均角度θは、辺13と辺14とを含む平面と、第1の面P1とがなす鋭角である。本実施形態では、辺13と辺14とを結ぶ平面は第1の傾斜面PK1と一致する。第1の傾斜面PK1は、辺11,12の中点同士を結ぶ直線状の中心線15を有している。中心線15はY軸及びSY軸と平行である。
【0021】
図5に示すように、磁場検知素子7は第1及び第2の磁気抵抗効果素子(以下、第1及び第2のMR素子21A,21Bという)を有している。MR素子の数は限定されず、磁場検知素子7は複数のMR素子を備えることができる。
【0022】
図6は第1のMR素子21Aの層構成を示す模式図である。第2のMR素子21Bは第1のMR素子21Aと同じ層構成を有しているので、説明を省略する。第1のMR素子21Aは、磁化方向が固定された磁化固定層24と、磁場に応じて磁化方向が変化する磁化自由層26と、磁化固定層24と磁化自由層26との間に配置されたスペーサ層25と、を有している。第1のMR素子21Aは、スペーサ層25がトンネルバリア層であるTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子、スペーサ層25が非磁性導電層であるGMR(巨大磁気抵抗効果)素子のいずれでもよい。磁化固定層24とスペーサ層25と磁化自由層26は、センス電流を供給する下部電極22と上部電極28との間に挟まれている。第1のMR素子21Aは、磁化固定層24と下部電極22との間に位置する下地層23と、磁化自由層26と上部電極28との間に位置するキャップ層27と、をさらに有している。
【0023】
磁化自由層26の磁化方向は外部磁場の角度によって変動する。磁化自由層26の形状(後述するSX-SY面内の形状)は円または楕円とすることができる。楕円の場合は、楕円の長軸と短軸がそれぞれ、中心線15と略平行及び略垂直(または略垂直及び略平行)になることが好ましい。楕円の場合は、長軸と短軸の比率によって、後述する変換係数Ksを微調整することができる。第1及び第2のMR素子21A,21Bの抵抗値は、磁化自由層26の磁化方向が磁化固定層24の磁化方向に対してなす角度に応じて変化する。この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。第1及び第2のMR素子21A,21Bはこの原理に基づき、外部磁場の方向を検知することができる。
【0024】
図5には磁化固定層24の磁化方向を太線で示している。第1のMR素子21Aと第2のMR素子21Bの磁化固定層24の磁化方向は互いに異なる方向を向き、好ましくは互いに直交している。各磁化固定層24の磁化方向は第1の傾斜面PK1の中心線15と実質的に平行であり、または中心線15と実質的に直交している。具体的には、第1のMR素子21Aの磁化固定層24の磁化方向は中心線15(SY軸及びY軸)と実質的に平行であり、第2のMR素子21Bの磁化固定層24の磁化方向は中心線15と実質的に直交する(SX軸と平行である)。外部磁場によって、第1のMR素子21Aと第2のMR素子21Bの磁化自由層26の磁化方向は同じになる。第1のMR素子21Aと第2のMR素子21Bの磁化固定層24の磁化方向は互いに直交するので、第1のMR素子21Aと第2のMR素子21Bの出力は90度の位相差を生じる。例えば、第1のMR素子21Aの出力がSin波となる場合、第2のMR素子21Bの出力は同じ位相のCos波となる。Sin波とCos波の出力からAtanを計算することで、外部磁場の方向を求めることができる。
【0025】
第1のMR素子21Aと第2のMR素子21Bは近接して配置されているため、印加される磁場の強度と向きはほぼ同じとみなせる。これより、磁場検知素子7は互いに異なる方向を向いた、好ましくは互いに直交する2つの磁場検知軸を有する。磁場検知素子7はSX軸及びSY軸を向いた磁場検知軸を有しているので、SZ方向の磁化成分は検出することができない。換言すれば、磁場検知素子7はSX軸とSY軸を含む磁場検知面を有している。
【0026】
ここで、磁場検知素子7の設置位置におけるX,Y,Z方向の磁場強度をHX,HY,HZ、SX,SY,SZ方向の磁場強度をHSX,HSY,HSZとすると、HSX,HSY,HSZはそれぞれ、以下のように表すことができる。なお、θは上述した平均角度θ、すなわち、第1の傾斜面PK1と第1の面P1(または第1及び第2の基準面PS1,PS2)のなす鋭角である。
HSX= HX cosθ+HZsinθ (式1)
HSZ= HX sinθ+HZcosθ (式2)
HSY= Hy (式3)
【0027】
磁場検知素子7の設置位置での磁場強度は磁石2の回転とともに変化する。また、磁場検知素子7の設置位置での磁場ベクトル(磁場強度と磁場の向きを示すベクトル)も、磁石2の回転とともに変化する。このベクトルの始端を固定した場合、ベクトルの終端は磁石2の回転に伴い回転しリサージュを描く。リサージュにおける磁場強度の最小値(リサージュの最小径)に対する最大値(リサージュの最大径)の比をMFRとする。磁場強度が一定である場合(MFR=1)、リサージュは真円となり、磁場強度が変化する場合(MFR>1)、リサージュは楕円となる。
【0028】
磁石2の回転によって発生する磁場はX-Y-Z座標系の方が把握しやすいが、磁場検知素子7に印加される磁場はSX-SY-SZ座標系の方が把握しやすい。そこで、以下の説明では、2つの座標系を参照する。図7(a)は比較例の外部磁場のY-Z面におけるリサージュを示している。リサージュは真円であるので(MFR=1)、Y-Z面において、磁場検知素子7の設置位置における磁場強度は一定である。図7(b)は比較例の外部磁場のSX-SY面におけるリサージュを示している。上述の通り、HX=0であるので、上記変換式(1),(3)より
HSX= HZ sinθ (式4)
HSY= Hy (式5)
となる。従って、SX-SY面におけるリサージュ、すなわち磁場検知素子7が検知する磁場のリサージュは楕円形となる。
【0029】
磁石2の回転角Qは
Q=atan(HSX/HSY)=atan(sinθ×(HZ/HY))=atan(Ks×(HZ/HY)) (式6)
で求められる。Ksは、Y-Z面におけるZ軸方向の磁場強度をSX-SY面におけるSX軸方向の磁場強度に変換するための変換係数で、sinθに等しい。
【0030】
ここで、Max(HSY)/Max(HSX)と角度測定誤差との関係を計算によって求めた。図8(a)には磁場検知素子7とリング状の磁石2の平面図を、図8(b)には図8(a)の側面図を示す。磁石2によって発生する回転磁場は磁場のシミュレーションによって求めた。磁場検知素子7のMR素子の位置(磁石2の中心線からの径方向距離ΔR、及び磁石2の端面からの軸方向距離G)におけるMax(HSY)/Max(HSX)は、磁場のシミュレーション結果に基づき求められる。また、磁場のシミュレーション結果に基づき計算された角度Qと、磁石2の実際の回転角との差分を求めることで、当該位置での角度測定誤差が求められる。この様にして、多くの位置でMax(HY)/Max(HX)と角度測定誤差とを求め、それらの関係をプロットした。なお、Max(HSY)とMax(HSX)とMFRの関係は、
MFR = Max(Max(HSY)/Max(HSX), Max(HSX)/Max(HSY))
である。
【0031】
図8(c)に計算結果を示す。Max(HSY)/Max(HSX)が1に近い場合、角度測定誤差が小さく、Max(HSY)/Max(HSX)と1との差が大きくなると角度測定誤差が大きくなる。換言すれば、磁場検知素子7の磁場検知面(SX-SY面)においてリサージュが真円に近いほど、磁気センサ1の角度測定誤差が減少し、真円からずれるほど磁気センサ1の角度測定誤差が増加する。比較例は、Y-Z面において真円である外部磁場のリサージュが、Ksの影響によって磁場検知面(SX-SY面)では楕円となり、磁気センサ1の角度測定誤差が増加することを示している。
【0032】
図7(c)は本実施形態の外部磁場(Y-Z面)のリサージュを示している。図7(d)は本実施形態の外部磁場(SX-SY面)のリサージュを示している。MFR>1であるので、Y-Z面のリサージュは楕円となる。しかし、Ks=sinθであるので、SX-SY面のリサージュは真円になる。このように、本実施形態では、Ksの寄与によって磁気センサ1の角度測定誤差が減少する。また、本実施形態の磁気センサ1は、変換係数Ksを特別の回路を必要とせず内蔵しているといえる。
【0033】
また、図7(c)から分かる通り、Max(HSY)/Max(HSX)が1となる位置(径方向距離ΔRと軸方向距離Gの組み合わせ)は限定されている。言い換えれば、ほとんどの場合で、Max(HSY)/Max(HSX)は1となっていない。本実施形態ではθを調整することでMax(HSY)/Max(HSX)=1とすることが容易である。つまり、径方向距離ΔRと軸方向距離Gに加えてθをパラメータとして利用することができるので、Max(HSY)/Max(HSX)=1を満足する径方向距離ΔRと軸方向距離Gの組み合わせが増加する。従って、磁気センサ1(センサパッケージ11)の配置可能位置が増加し、配置自由度が高まる。
【0034】
以上より、理想的にはY-Z面でのMFRが(1/Ks)に等しいことが好ましい。しかし、近似的にこの関係が成り立てば磁気センサ1の角度測定誤差を低減することが可能である。従って、本実施形態では、(1/Ks)×0.8≦MFR≦(1/Ks)×1.2、好ましくは(1/Ks)×0.9≦MFR≦(1/Ks)×1.1、より好ましくは(1/Ks)×0.95≦MFR≦(1/Ks)×1.05が成り立つ。ここで、Ks=sinθである。この関係は、例えば磁場検知素子7の位置を適切に選択することによって満足することができる。
【0035】
このように、本実施形態では(1/Ks)がMFRに近くなるように第1の傾斜面PK1を第1の面P1に対して傾けているので、磁気センサ1の角度測定誤差が減少する。一方、第1の面P1は回転シャフト3の中心軸Cと実質的に平行であるので取付性が向上する。例えば、図2に示すように、磁気センサ1はセンサハウジング4の壁面のうち、中心軸Cと平行な壁面に取り付けることができる。磁気センサ1を中心軸Cに対し傾斜して取り付ける場合、センサハウジング4の取付け面を傾斜させる必要があり、取付構造が複雑化する。また、本実施形態では磁気センサ1をセンサハウジング4に効率的に収容することができるため、センサハウジング4、ひいてはブレーキシステム101の大型化やコストアップを抑制することが容易である。
【0036】
(第2の実施形態)
図9は本発明の第2の実施形態を示す図3と同様の図である。本実施形態のX-Y-Z座標系では、Z軸が回転シャフト3の中心軸Cと平行であり、X軸,Y軸が回転シャフト3と直交している。つまり、第1の実施形態と比べ、X軸とZ軸が入れ替わっている。また、第1の面P1を含む平面(X-Y面)と中心軸Cが実質的に直交しており、Z軸方向の磁場成分は実質的に0とみなすことができる。第2の実施形態はこれらの点を除き、第1の実施形態と同様である。実質的に直交とは、第1の面P1を含む平面と中心軸Cとがなす角度が85度以上95度以下であることをいう。
【0037】
HSX,HSY,HSZ,HSX,HSY,HSZ,θは第1の実施形態と同様に定義する。HSX,HSY,HSZはそれぞれ、以下のように表すことができる。
HSX= HX cosθ+HZsinθ (式7)
HSZ= -HX sinθ+HZcosθ (式8)
HSY= Hy (式9)
HZ=0であるので、上記変換式(7),(9)より
HSX= HX cosθ (式10)
HSY= Hy (式11)
となる。従って、SX-SY面におけるリサージュ、すなわち磁場検知素子7が検知する磁場のリサージュは真円となる。
【0038】
磁石2の回転角Qは
Q=atan(HSX/HSY)=atan(cosθ×(HX/HY))=atan(Ks×(HX/HY)) (式12)
で求められる。Ksは、X-Y面におけるX軸方向の磁場強度をSX-SY面におけるSX軸方向の磁場強度に変換するための変換係数で、cosθに等しい。本実施形態では、(1/Ks)×0.8≦MFR≦(1/Ks)×1.2、好ましくは(1/Ks)×0.9≦MFR≦(1/Ks)×1.1、より好ましくは(1/Ks)×0.95≦MFR≦(1/Ks)×1.05が成り立つ。ここで、Ks=cosθである。この関係は、例えば磁場検知素子7の位置を適切に選択することによって満足することができる。
【0039】
本実施形態では例えば、磁気センサ1を図2の符号A1で示すモータケーシング115上、符号A2で示すセンサハウジング4の上面に配置することができ、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0040】
(第3の実施形態)
図10(a)は、本発明の第3の実施形態の磁場検知素子7の側面図である。磁場検知素子7のMR素子41は第1の傾斜面PK1に沿って湾曲している。第1の傾斜面PK1は第1の面P1から離れる方向に凸状に突き出している。MR素子41の層構成はMR素子21A,21Bと同様である。MR素子41のそれぞれの層も第1の傾斜面PK1に沿って湾曲している。磁場検知素子7は、第1の面P1と第1の角度θ1をなす第1の端部42と、第1の面P1と第2の角度θ2をなす第2の端部43と、を有している。第2の角度θ2は第1の角度θ1より小さい
【0041】
一般に、MR素子の各層の層厚(湾曲面に垂直な方向の寸法)は、傾斜面の角度が大きくなるに従って小さくなる。また、層厚の変化量は傾斜面の角度及び曲率が大きいほど大きくなる。一方、MR素子は通常、フォトレジストによって所定の形状に成形する。このため、フォトレジストレジストの位置ずれや寸法変化が生じた場合、傾斜面の角度や曲率の大きな領域では、MR素子の各層の層厚が変化しやすい。特に磁化自由層26の層厚が設計上の値から大きく変動すると、MR素子の所望の特性が得られない可能性がある。
【0042】
本実施形態では、第1の端部42におけるMR素子41(磁場検知素子7)の曲率k1が、第2の端部43におけるMR素子41(磁場検知素子7)の曲率k2よりも小さい。すなわち、磁化自由層26の層厚の変化量が相対的に大きくなる位置において、第1の傾斜面PK1の曲率k1を相対的に小さくしている。これにより、第1の傾斜面PK1の曲率が一定である場合、あるいは曲率k1が曲率k2よりも大きい場合と比べて、第1の端部42の近傍における磁化自由層26の層厚のばらつきを抑制することができる。
【0043】
図10(b)は第3の実施形態の変形例のMR素子41の側面図である。本変形例では、第1の傾斜面PK1は第1の面P1に近づく方向に凹状に引き込んでいる。この点を除き、変形例は第3の実施形態と同様である。
【0044】
(第4の実施形態)
図11は、本発明の第4の実施形態の磁場検知素子7の概略図であり、磁気センサ1の基体6と磁石2と回転シャフト3の側面図を示している。図12は第4の実施形態の磁気センサ1の電気接続を示す図である。磁場検知素子7は第1及び第2の磁場検知素子7A,7Bを含んでいる。基板10の第2の面P2は、互いに逆方向に傾斜した第1の傾斜面PK1と第2の傾斜面PK2とを有している。第1の傾斜面PK1は第1の面P1に対し角度θ1をなし、第2の傾斜面PK2は第1の面P1に対し角度θ2をなしている。第1の磁場検知素子7Aは第1の傾斜面PK1に沿って設けられ、第2の磁場検知素子7Bは第2の傾斜面PK2に沿って設けられている。第1の磁場検知素子7AのKs(以下、Ks1という)はsinθ1であり、第2の磁場検知素子7BのKs(以下、Ks2という)はsinθ2である。従って、SX軸方向の磁場強度は、第1及び第2の磁場検知素子7A,7Bにおいてそれぞれ、Z軸方向の磁場強度のKs1倍、Ks2倍に低減される。
【0045】
第1の磁場検知素子7Aの磁化固定層24の磁化方向と第2の磁場検知素子7Bの磁化固定層24の磁化方向は、Z軸に関し同じ向きの成分(図11において上向きの成分)を含んでいる。第1の磁場検知素子7Aと第2の磁場検知素子7Bは電源端Vとグランド端GNDとの間で直列に接続され、信号取出し部Eは第1及び第2の磁場検知素子7A,7Bと電源端Vの間に位置している。これより、Z方向の磁場Hzは第1の磁場検知素子7AではHz×Ks1として検出され、第2の磁場検知素子7BではHz×Ks2として検出され、磁場検知素子7全体としてはHz×(Ks1+Ks2)=Hz×(sinθ1+sinθ2)として検出される。
【0046】
磁気センサ1の取付け誤差などにより、基板10の第1の面P1が中心軸Cに対して傾いて取り付けられる場合がある。例えば、図11において基板10が全体的に反時計回りにΔθ回転した場合、Ks1=sin(θ1+Δθ)、Ks2=sin(θ2-Δθ)となる。しかし、Ks1は増加し、Ks2は減少するので、(Ks1+Ks2)の変化は抑制される。従って、本実施形態では磁気センサ1の取付け誤差が生じても磁気センサ1の角度測定誤差への影響を抑えることができる。角度θ1と角度θ2は等しいことが好ましい。しかし、上述の説明から分かる通り、角度θ1と角度θ2が異なっていても上記の効果が得られるので、θ1=θ2である必要はない。
【0047】
以上本発明を実施形態によって説明したが、本発明の上述の実施形態に限定されない。例えば、第1の実施形態において、第1の傾斜面PK1の中心線15はY方向に延びているが、Y方向から傾いていてもよい。この場合でもHSX,HSYを求めることができるので、磁石の回転角を検知することができる。ただし、第1の傾斜面PK1の中心線15がX方向に延びていると、HSX=0になるため、式(6)よりQ=0となり回転角を検知できない。同様に、第2の実施形態においても、第1の傾斜面PK1の中心線15はY方向から傾いていてもよい。ただし、第1の傾斜面PK1の中心線15がX方向に延びている場合は除外される。
【0048】
また、本発明の適用例としてブレーキシステムを説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は多極磁石と角度センサが使用されるシステムに適用できる。本発明は例えば、スマートウォッチなどの電子時計の竜頭などにも適用することができる。
【0049】
(付記)本明細書は以下の開示を含む。
[構成1]
中心軸の周りを回転する磁石が発生する磁場を検知する第1の磁場検知素子と、
第1の面と前記第1の面の裏面である第2の面とを有し、前記第2の面が前記第1の面に対して傾斜した第1の傾斜面を含む基板と、を有し、
前記第1の磁場検知素子は前記第1の傾斜面に沿って設けられ、
前記磁石は前記中心軸から間隔をあけて設けられ、前記中心軸の周方向に沿って極性が交互に入れ替わり、
前記第1の面は前記中心軸と実質的に平行であり、
前記第1の傾斜面は前記第1の面に対して平均角度θをなして傾斜し、
前記中心軸と直交する面内において、前記第1の磁場検知素子の設置位置での磁場強度は前記磁石の回転に伴い変化し、前記面内における前記磁場強度の最小値に対する最大値の比をMFRとしたときに、
(1/Ks)×0.8≦MFR≦(1/Ks)×1.2(但し、Ks=sinθ)を満足する、磁気センサ。
[構成2]
前記第1の面と前記中心軸は平行であり、または前記第1の面を含む平面と前記中心軸とがなす鋭角が5度以下である、構成1に記載の磁気センサ。
[構成3]
中心軸の周りを回転する磁石が発生する磁場を検知する第1の磁場検知素子と、
第1の面と前記第1の面の裏面である第2の面とを有し、前記第2の面が前記第1の面に対して傾斜した第1の傾斜面を含み、前記第1の傾斜面に沿って前記第1の磁場検知素子が設けられた基板と、を有し、
前記磁石は前記中心軸から間隔をあけて設けられ、前記中心軸の周方向に沿って極性が交互に入れ替わり、
前記第1の面を含む平面は前記中心軸と実質的に直交しており、
前記第1の傾斜面は前記第1の面に対して平均角度θをなして傾斜し、
前記中心軸と直交する面内において、前記第1の磁場検知素子の設置位置での磁場強度は前記磁石の回転に伴い変化し、前記面内における前記磁場強度の最小値に対する最大値の比をMFRとしたときに、
(1/Ks)×0.8≦MFR≦(1/Ks)×1.2(但し、Ks=cosθ)を満足する、磁気センサ。
[構成4]
前記第1の面を含む前記平面と前記中心軸とがなす角度は85度以上95度以下である、構成3に記載の磁気センサ。
[構成5]
(1/Ks)×0.9≦MFR≦(1/Ks)×1.1を満足する、構成1から4のいずれか1項に記載の磁気センサ。
[構成6]
(1/Ks)×0.95≦MFR≦(1/Ks)×1.05を満足する、構成1から4のいずれか1項に記載の磁気センサ。
[構成7]
前記第1の磁場検知素子は第1及び第2の磁気抵抗効果素子を有し、各磁気抵抗効果素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、磁場に応じて前記磁化方向が変化する磁化自由層と、を有し、
前記第1の傾斜面は4つの辺と、互いに対向する前記辺の中点同士を結ぶ直線状の中心線を有し、前記第1の磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化方向は前記中心線と実質的に平行であり、前記第2の磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化方向は前記中心線と実質的に直交する、構成1から6のいずれか1項に記載の磁気センサ。
[構成8]
前記第1の磁場検知素子と電気的に接続された電気配線部材を有し、前記基板は前記第1の面で前記電気配線部材に支持されている、構成1から7のいずれか1項に記載の磁気センサ。
[構成9]
前記磁場検知素子は前記第1の傾斜面に沿って湾曲している、構成1から8のいずれか1項に記載の磁気センサ。
[構成10]
前記第1の磁場検知素子は、前記第1の面と第1の角度をなす第1の端部と、前記第1の面と第2の角度をなす第2の端部と、を有し、
前記第2の角度は前記第1の角度より小さく、
前記第1の端部における前記第1の磁場検知素子の曲率は、前記第2の端部における前記第1の磁場検知素子の曲率よりも小さい、構成9に記載の磁気センサ。
[構成11]
前記磁石が発生する磁場を検知する第2の磁場検知素子を有し、
前記第2の面は、前記第1の傾斜面と逆方向に傾斜した第2の傾斜面を有し、
前記第2の磁場検知素子は前記第2の傾斜面に沿って設けられ、
前記第1の磁場検知素子と前記第2の磁場検知素子は電源端とグランド端との間で直列に接続されている、構成1から10のいずれか1項に記載の磁気センサ。
[構成12]
構成1から11のいずれか1項に記載に磁気センサと、
前記磁石と、を有する回転角検知装置。
[構成13]
構成12に記載の回転角検知装置と、
前記中心軸の周りを回転する回転シャフトを備え、電動ブースターとして作動するモータと、を有し、
前記磁石が前記回転シャフトの側面に取り付けられた、ブレーキシステム。
【符号の説明】
【0050】
1 磁気センサ
2 磁石
3 回転シャフト
5 回転角検知装置
7,7A,7B 磁場検知素子
8 電気配線部材
10 基板
15 中心線
21A 第1の磁気抵抗効果素子(MR素子)
21B 第2の磁気抵抗効果素子(MR素子)
41 磁気抵抗効果素子(MR素子)
24 磁化固定層
26 磁化自由層
42 第1の端部
43 第2の端部
101 ブレーキシステム
108 モータ
C 中心軸
P1 第1の面
P2 第2の面
PK1 第1の傾斜面
PK2 第2の傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12