(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136951
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240927BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240927BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240927BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/36 C
H01M10/058
H01M4/134
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048265
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】栗城 和貴
(72)【発明者】
【氏名】吉富 修平
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM12
5H029AM16
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029BJ13
5H029HJ04
5H029HJ12
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA19
5H050FA02
5H050FA04
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】新規な二次電池を提供すること。充電時に負極においてリチウムがデンドライト状に析出することを抑制できる二次電池を提供すること。
【解決手段】負極及びセパレータを有する二次電池において、負極は、負極活物質と、負極活物質の少なくとも一部を覆う被覆層と、を有し、被覆層は、セパレータと接する領域を有し、被覆層は、チタンを有する材料を有する、二次電池である。チタンを有する材料として例えば、金属チタンを用いることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極及びセパレータを有する二次電池において、
前記負極は、負極活物質と、前記負極活物質の少なくとも一部を覆う被覆層と、を有し、
前記被覆層は、前記セパレータと接する領域を有する、二次電池。
【請求項2】
負極及びセパレータを有する二次電池において、
前記負極は、負極活物質と、前記負極活物質の少なくとも一部を覆う被覆層と、を有し、
前記被覆層は、前記セパレータと接する領域を有し、
前記被覆層は、チタンを有する材料を有する、二次電池。
【請求項3】
負極及びセパレータを有する二次電池において、
前記負極は、負極活物質と、前記負極活物質の少なくとも一部を覆う被覆層と、を有し、
前記被覆層は、前記セパレータと接する領域を有し、
前記被覆層は、金属チタンを有する、二次電池。
【請求項4】
負極及びセパレータを有する二次電池において、
前記負極は、負極活物質と、前記負極活物質の少なくとも一部を覆う被覆層と、を有し、
前記被覆層は、前記セパレータと接する領域を有し、
前記被覆層は、酸化チタンを有する、二次電池。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の二次電池において、
前記負極活物質は、金属リチウムを有する、二次電池。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の二次電池において、
前記負極活物質は、シリコンを有する、二次電池。
【請求項7】
負極を有する二次電池において、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上の負極活物質層と、前記負極活物質層上の被覆層と、を有し、
前記負極活物質層は、金属リチウムを有し、
前記被覆層は、金属チタンを有する、二次電池。
【請求項8】
負極を有する二次電池において、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上の負極活物質層と、前記負極活物質層上の被覆層と、を有し、
前記負極活物質層は、シリコンを有し、
前記被覆層は、金属チタンを有する、二次電池。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の二次電池において、
前記被覆層の厚さは、1nm以上50nm以下である、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、二次電池及びその作製方法に関する。
【0002】
本発明の一態様は、物、方法、又は、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置、電子機器、車両またはそれらの製造方法に関する。
【0003】
なお、本明細書中において電子機器とは、蓄電装置を有する装置全般を指し、蓄電装置を有する電気光学装置、蓄電装置を有する情報端末装置などは全て電子機器である。
【0004】
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものであり、例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電装置(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【背景技術】
【0005】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、又は、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、繰り返し充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0006】
リチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解質を少なくとも有する。リチウムイオン二次電池の充電においては、正極からリチウムイオンが脱離し、負極にリチウムイオンが挿入される。また、リチウムイオン二次電池の放電においては、負極からリチウムイオンが脱離し、正極にリチウムイオンが挿入される。正極および負極は、それぞれ活物質(正極活物質、負極活物質)を有している。活物質とは、キャリアであるイオン(リチウムイオン)の挿入・脱離に関わる物質である。
【0007】
負極活物質としては、酸化還元電位が低いこと、単位体積・単位重量あたりの比容量が高いことから、金属リチウム、黒鉛、シリコン等が好ましい特性を有している。しかし、負極活物質として金属リチウムを用いる場合は、充電時に金属リチウム上にリチウムがデンドライト状(ウィスカー状)に析出する場合があり、このデンドライト状の析出は、セパレータを貫通し、正極と短絡し、リチウムイオン二次電池が発火する原因となる場合がある。なお、デンドライト状に析出したリチウムも、金属リチウムである。また、黒鉛、シリコン等を負極活物質として場合においても、低温での充電、過大な充電電流での充電などをおこなったときに、負極活物質上にリチウムがデンドライト状に析出することがある。デンドライト状に析出したリチウムの引き起こす問題は、二次電池内部での短絡だけでなく、放電時にデンドライト状に析出したリチウムの根本(負極集電体に近い領域)において、当該リチウムが分離し負極から離れることも挙げられる(デッドリチウム化とも呼ぶ)。この場合、二次電池の正極と負極でやりとり可能なリチウムを損なうため、放電容量が低下する。
【0008】
そのため、リチウムがデンドライト状に析出することを抑制するための研究が行われている(特許文献1)。
【0009】
二次電池の研究としては、カーボンナノチューブ(CNT)を二次電池に利用する研究なども行われている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2015/145288号
【特許文献2】特開2020-35956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一態様は、充電時に負極においてリチウムがデンドライト状に析出することを抑制すること課題の一つとする。また、良好なサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することを課題の一つとする。また、単位質量または単位体積あたりの容量の大きな二次電池を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、新規な負極、新規な二次電池、新規な蓄電装置、新規な負極の製造方法、新規な二次電池の製造方法、または、新規な蓄電装置の製造方法を提供することを課題の一つとする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、負極及びセパレータを有する二次電池において、負極は、負極活物質と、負極活物質の少なくとも一部を覆う被覆層と、を有し、被覆層は、セパレータと接する領域を有する、二次電池である。
【0014】
または、本発明の一態様は、負極及びセパレータを有する二次電池において、負極は、負極活物質と、負極活物質の少なくとも一部を覆う被覆層と、を有し、被覆層は、セパレータと接する領域を有し、被覆層は、チタンを有する材料を有する、二次電池である。
【0015】
または、本発明の一態様は、負極及びセパレータを有する二次電池において、負極は、負極活物質と、負極活物質の少なくとも一部を覆う被覆層と、を有し、被覆層は、セパレータと接する領域を有し、被覆層は、金属チタンを有する、二次電池である。
【0016】
または、本発明の一態様は、負極及びセパレータを有する二次電池において、負極は、負極活物質と、負極活物質の少なくとも一部を覆う被覆層と、を有し、被覆層は、セパレータと接する領域を有し、被覆層は、酸化チタンを有する、二次電池である。
【0017】
また、上記のいずれか一の二次電池において、負極活物質は、金属リチウムを有することが好ましい。
【0018】
または、上記のいずれか一の二次電池において、負極活物質は、シリコンを有することが好ましい。
【0019】
または、本発明の一態様は、負極を有する二次電池において、負極は、負極集電体と、負極集電体上の負極活物質層と、負極活物質層上の被覆層と、を有し、負極活物質層は、金属リチウムを有し、被覆層は、金属チタンを有する、二次電池である。
【0020】
本発明の一態様は、負極を有する二次電池において、負極は、負極集電体と、負極集電体上の負極活物質層と、負極活物質層上の被覆層と、を有し、負極活物質層は、シリコンを有し、被覆層は、金属チタンを有する、二次電池である。
【0021】
また、上記のいずれか一の二次電池において、被覆層の厚さは、1nm以上50nm以下である、二次電池である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様により、充電時に負極においてリチウムがデンドライト状に析出することを抑制することができる。また、良好なサイクル特性を有するリチウムイオン二次電池を提供することができる。また、単位質量及び体積あたりの容量の大きな二次電池を提供することができる。または、本発明の一態様は、新規な負極、新規な二次電池、新規な蓄電装置、新規な負極の製造方法、新規な二次電池の製造方法、または、新規な蓄電装置の製造方法を提供することができる。
【0023】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1(A)及び
図1(B)は、二次電池の断面模式図である。
【
図2】
図2(A)乃至
図2(D)は、負極の断面模式図である。
【
図3】
図3(A)乃至
図3(C)は、負極及びセパレータの断面模式図である。
【
図4】
図4(A)及び
図4(B)は、負極の断面模式図である。
【
図5】
図5(A)は、正極の断面模式図であり、
図5(B)及び
図5(C)は、二次電池の断面模式図である。
【
図7】
図7(A)乃至
図7(C)は二次電池の作製方法を説明する図である。
【
図8】
図8(A)乃至
図8(H)は電子機器の一例を説明する図である。
【
図9】
図9(A)乃至
図9(D)は電子機器の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
なお、本明細書で説明する各図において、正極、負極、活物質層、セパレータ、外装体などの各構成要素の大きさ及び厚さ等は、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさに限定されない。
【0027】
また、本明細書等において、第1、第2、第3などとして付される序数詞は、便宜上用いるものであって工程の順番、上下の位置関係などを示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0028】
また、本明細書等で説明する本発明の一態様の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0029】
また、この発明を実施するための形態に記載の内容は、適宜組み合わせて用いることができる。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、
図1乃至
図7を用いて、本発明の一態様の二次電池の構成例について説明する。
【0031】
<二次電池>
図1(A)は、本発明の一態様の二次電池10の断面の一部を説明する模式図である。
図1(B)は、
図1(A)において破線で囲まれた領域Aの構成例を説明する拡大図である。また、
図5(B)及び
図5(C)は、
図1(A)において破線で囲まれた領域Bの構成例を説明する拡大図である。
【0032】
図1(A)に示すように、二次電池10は、正極20、負極30、セパレータ40及び外装体50を有する。二次電池10において、正極20、負極30及びセパレータ40は、外装体50に覆われた二次電池10の内部に位置する。また、正極20と、負極30とは、セパレータ40を介して重なる領域を有する。なお、図示しないが二次電池10は、外装体50に覆われた二次電池10の内部に電解質を有する。
【0033】
<負極>
図1(B)を用いて、本発明の一態様の負極30について説明する。
図1(B)において、負極30は、被覆層33と、負極活物質34と、を有する。また、セパレータ40は、空隙を有し、当該空隙において電解質を有する。また、電解質はリチウムイオンを有する。
【0034】
負極活物質34は、その表面に被覆層33を有し、被覆層33は、セパレータ40と接する領域を有する。
【0035】
[被覆層]
被覆層33は、電解質に含まれるリチウムイオンを透過する機能を有し、二次電池10の充電において、
図1(B)における矢印D1のように、セパレータ40の空隙に含まれる電解質から、リチウムイオンが被覆層33を透過して、負極活物質34に移動する。また、二次電池10の放電において、
図1(B)における矢印D2のように、負極活物質34から、被覆層33を透過して、セパレータ40の空隙に含まれる電解質へと、リチウムイオンが移動する。
【0036】
[充電]
このように、二次電池10の充電において、負極活物質34は、被覆層33を介してリチウムの挿入を行うことができる。このような構成においては、被覆層33を介して移動することで、当該リチウムの流れを分散させることができると考えられる。その結果、負極活物質34の表面において、局所的にリチウムが析出することを抑制することができる。また、負極において局所的にリチウムが析出することは、リチウムがデンドライト状に析出する原因と考えられている。つまり、本発明の一態様の二次電池10は、負極活物質34の表面に被覆層33を有することで、リチウムがデンドライト状に析出することを抑制することが可能となる。
【0037】
また、前述のとおり、電解質はリチウムイオンを有する。電解質中のリチウムイオンは、電解質中に含まれる溶媒分子によって溶媒和された状態であると言われている。ここで、当該リチウムイオンは、それぞれ単独で存在している場合と、複数がまとまって存在している場合と、が考えられる。ここで、リチウムイオンが、複数がまとまって存在していることを、リチウムクラスターと呼ぶ。
【0038】
当該リチウムクラスターが存在している場合、負極において局所的にリチウムが析出するときに、リチウムがデンドライト状に析出することを助長する可能性がある。ここで、本発明の一態様のように、負極活物質34の表面に被覆層33を有する場合は、負極活物質34は、被覆層33を介してリチウムイオンの挿入又は脱離を行うことができる。このとき、リチウムクラスターの状態では、被覆層33を透過することができないため、リチウムクラスターは被覆層33を透過する際に分散され、それぞれ単独で、負極活物質34へと移動すると考えられる。つまり、本発明の一態様の二次電池10は、負極活物質34の表面に被覆層33を有することで、電解質中にリチウムクラスターが存在した場合においても、リチウムがデンドライト状に析出することを抑制することが可能と考えられる。
【0039】
[放電]
また、二次電池10の放電において、負極活物質34は、被覆層33を介してリチウムの脱離を行うことができる。このような構成においては、被覆層33を介して移動することで、当該リチウムの流れを分散させることができると考えられる。
【0040】
ここで、シリコン、錫などの、リチウムと合金を形成する負極活物質は、充放電における体積変化が大きいことが知られている。そのため、放電時に負極活物質からリチウムが脱離する際に、負極活物質の表面側からリチウムが脱離するため、負極活物質は表面側から体積が縮小し、負極活物質がひび割れてしまう可能性がある。
【0041】
一方、本発明の一態様の二次電池10において、負極活物質34から脱離するリチウムは、電解質へと直接脱離するのではなく、被覆層33を通って電解質へと脱離する。そのため、被覆層33を有することによって、負極活物質34からのリチウムの脱離が分散される可能性がある。また、被覆層33が、負極活物質34の形状を維持する機能を有する可能性もある。つまり、本発明の一態様の二次電池10は、負極活物質34の表面に被覆層33を有することで、当該負極活物質34のひび割れを抑制できる可能性がある。
【0042】
以上に示したように、本発明の一態様の二次電池10において、負極活物質34は被覆層33を有する。被覆層33は、負極活物質34の全ての表面に設けられることが好ましいが、必ずしも負極活物質34の表面の全てに設ける必要はなく、負極活物質34の少なくとも一部を覆うとよい。例えば、被覆層33は、負極活物質34の表面の50%以上に設けられることが好ましく、60%以上に設けられることがより好ましく、70%以上に設けられることがより好ましく、80%以上に設けられることがより好ましく、90%以上に設けられることがより好ましく、95%以上に設けられることがより好ましい。よって、被覆層33は、負極活物質34の表面の全体を覆うように設けてもよいし、負極活物質34の表面に島状に設けてもよい。また、負極活物質34の表面と電解質45が接する領域を有していてもよい。
【0043】
被覆層33として、導体(導電性材料ともいう)又は半導体性材料を用いることができる。被覆層33として例えば、チタンを有する材料を用いることができる。チタンを有する材料とは、チタン及びチタン化合物のことをいう。チタン化合物として例えば、酸化チタンが挙げられる。なお、金属であるチタンのことを明示的に金属チタンと呼ぶ場合がある。例えば、金属チタンにおいて、リチウムは金属チタンの結晶粒界を通ることができる。
【0044】
金属チタンの有無は、例えばXPS(X線高電子分光)によって分析することができ、金属チタンを有する場合は454eV付近にエネルギーピークを確認することができる。
【0045】
または、被覆層33として例えば、ルテニウムを有する材料を用いることができる。ルテニウムを有する材料とは、ルテニウム及びルテニウム化合物のことをいう。ルテニウム化合物として例えば、酸化ルテニウムが挙げられる。
【0046】
被覆層33の厚さは、1nm以上10μm以下とすることができ、1nm以上1μm以下であることが好ましく、1nm以上100nm以下であることがより好ましく、1nm以上50nm以下であることがより好ましく、1nm以上40nm以下であることがより好ましく、1nm以上30nm以下であることがより好ましく、1nm以上20nm以下であることがより好ましく、1nm以上10nm以下であることがより好ましく、1nm以上5nm以下であることがより好ましく、1nm以上2nm以下であることがより好ましい。被覆層33の厚さを上記の範囲にすることにより、負極活物質34からリチウムを好適に挿入及び脱離させることができる。
【0047】
図2(A)乃至
図3(C)を用いて、本発明の一態様の、被覆層33を有する負極30の構成例について説明する。
【0048】
[負極の構成例1]
負極30の構成例として、
図2(A)に負極30Aの断面模式図を示す。
【0049】
負極30Aは、負極活物質層32と、被覆層33と、を有する。負極30Aにおいて、負極活物質層32上に被覆層33を有する。二次電池10において、負極30Aが有する被覆層33は、セパレータ40側に位置する。
【0050】
負極活物質層32は、膜状(シート状、層状、箔状などともいう)の負極活物質34または粒子状の負極活物質34を有する。負極30Aの構成において、負極活物質層32が膜状の負極活物質34である場合、負極活物質層32は負極活物質34と同一であり、負極活物質層32のことを負極活物質34と呼ぶことができる。また、負極30Aの構成において、負極活物質層32が粒子状の負極活物質34を有する場合、負極活物質層32は複数の粒子状の負極活物質34を有し、合材層、塗布電極層などと呼ぶことができる。
【0051】
被覆層33は、前述のチタンを有する材料などを用いることができ、特に、金属チタンを用いることが好ましい。また、負極活物質34として、例えば金属リチウム、炭素材料、合金系材料などを用いることができる。負極活物質34として用いることのできる、金属リチウム、炭素材料、合金系材料の詳細は、後述の[負極活物質]に示す。
【0052】
負極30Aの構成例として、負極活物質34として例えば、膜状の金属リチウムを用い、被覆層33として例えば、金属チタンを用いることができる。なお、この場合の金属リチウムは、負極活物質層32と呼ぶこともできる。
【0053】
ここで例えば、負極活物質34として、金属リチウム箔を用いて、当該金属リチウム箔上に、被覆層33として金属チタンを成膜により形成することができる。金属チタンの成膜には、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、EB(Electron Beam)蒸着法、ALD(Atomic Layer Deposition)法(熱ALD、プラズマALD)などの成膜方法を用いることができる。
【0054】
金属チタンをスパッタリング法で成膜する場合は、成膜された膜中に柱状結晶が形成される成膜条件を用いることが好ましい。
【0055】
または例えば、金属チタンとして、金属チタン箔を用いて、当該金属チタン箔上に金属リチウムを成膜により形成することができる。金属リチウムの成膜には、真空蒸着法、EB蒸着法などの成膜方法を用いることができる。
【0056】
または、負極30Aの別の構成例として、負極活物質34として例えば、金属リチウムを用い、被覆層33として例えば、酸化チタンを用いることができる。
【0057】
ここで例えば、金属リチウムとして、金属リチウム箔を用いて、当該金属リチウム箔上に酸化チタンを成膜により形成することができる。酸化チタンの成膜には、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、EB蒸着法、ALD法などの成膜方法を用いることができる。
【0058】
負極30Aの構成例は、上記の例に限られず、負極活物質34として後述の[負極活物質]に示す負極活物質材料から選択される一以上の材料を用い、上述の被覆層33に用いることができる材料から選択される一以上の材料を用いることができる。
【0059】
[負極の構成例2]
負極30の構成例として、
図2(B)に負極30Bの断面模式図を示す。
【0060】
負極30Bは、負極集電体31と、負極活物質層32と、被覆層33と、を有する。負極30Bにおいて、負極集電体31上に負極活物質層32を有し、負極活物質層32上に被覆層33を有する。二次電池10において、負極30Bが有する被覆層33は、セパレータ40側に位置する。
【0061】
負極30Aにおける説明と同様に、負極活物質層32は、膜状の負極活物質34または粒子状の負極活物質34を有する。
【0062】
負極活物質34として用いることのできる材料、及び被覆層33として用いることのできる材料は、負極30Aで説明した材料を用いることができる。また、負極集電体31として、チタン箔、銅箔、ステンレス箔など、後述の[負極集電体]に記載の材料を用いることができる。
【0063】
負極30Bの構成例として、負極集電体31として例えば、銅箔を用い、負極活物質34として例えば、膜状の金属リチウムを用い、被覆層33として例えば、金属チタンを用いることができる。なお、この場合の金属リチウムは、負極活物質層32と呼ぶこともできる。
【0064】
ここで例えば、銅箔上に金属リチウムを成膜により形成し、当該金属リチウム上に、金属チタンを成膜により形成することで作製することができる。金属リチウムの成膜方法及び金属チタンの成膜方法は、負極30Aで説明した成膜方法を用いることができる。
【0065】
または、負極30Bの別の構成例として、負極集電体31として例えば、銅箔を用い、負極活物質34として例えば、膜状のシリコンを用い、被覆層33として例えば、金属チタンを用いることができる。なお、この場合のシリコンは、負極活物質層32と呼ぶこともできる。
【0066】
ここで例えば、銅箔上にシリコンを成膜により形成し、当該シリコン上に、金属チタンを成膜により形成することができる。シリコンの成膜には、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、EB蒸着法などの成膜方法を用いることができる。金属チタンの成膜方法は、負極30Aで説明した成膜方法を用いることができる。
【0067】
負極30Bの構成例は、上記の例に限られず、負極集電体31として後述の[負極集電体]に記載の材料から選択される一を用い、負極活物質34として後述の[負極活物質]に示す負極活物質材料から選択される一以上の材料を用い、上述の被覆層33に用いることができる材料から選択される一以上の材料を用い、これらを適宜組み合わせて用いることができる。
【0068】
[負極の構成例3]
負極30の構成例として、
図2(C)に負極30Cの断面模式図を示す。
【0069】
負極30Cは、負極集電体31上の下地層37と、下地層37上の負極活物質層32と、負極活物質層32上の被覆層33と、を有する。二次電池10において、負極30Cが有する被覆層33は、セパレータ40側に位置する。
【0070】
負極30Aにおける説明と同様に、負極活物質層32は、膜状の負極活物質34または粒子状の負極活物質34を有する。
【0071】
負極活物質34として用いることのできる材料、及び被覆層33として用いることのできる材料は、負極30Aで説明した材料を用いることができる。また、負極集電体31として用いることのできる材料は、負極30Bで説明した材料を用いることができる。
【0072】
負極30Cの構成例として例えば、負極集電体31としてチタン箔を用い、下地層37として金属チタンを用い、負極活物質34として膜状の金属リチウムを用い、被覆層33として金属チタンを用いることができる。なお、この場合の金属リチウムは、負極活物質層32と呼ぶこともできる。
【0073】
ここで例えば、チタン箔上に金属リチウムを成膜により形成し、当該金属リチウム上に、金属チタンを成膜により形成することができる。金属リチウム及び金属チタンの成膜には、負極30Aで説明した成膜方法を用いることができる。
【0074】
上記の例のように、膜状の金属リチウムの成膜を行う際に、下地層37として成膜された金属チタンを有する場合、当該金属リチウムの平坦性が良好になることが期待できる。
【0075】
負極30Cの構成例は、上記の例に限られず、負極集電体31として後述の[負極集電体]に記載の材料から選択される一を用い、負極活物質34として後述の[負極活物質]に示す負極活物質材料から選択される一以上の材料を用い、上述の被覆層33に用いることができる材料から選択される一以上の材料を用いることができる。
【0076】
[負極の構成例4]
負極30の構成例として、
図2(D)に負極30Dの断面模式図を示す。
【0077】
負極30Dは、負極集電体31上の触媒層38と、触媒層38上の負極活物質層32と、負極活物質層32上の被覆層33と、を有する。二次電池10において、負極30Dが有する被覆層33は、セパレータ40側に位置する。
【0078】
負極30Dが有する負極活物質層32は、膜状の負極活物質34を有し、当該負極活物質34はCNT(Carbon nanotube)、黒鉛などの炭素材料を有する。
【0079】
触媒層38は、CVD法を用いてCNTを形成する際に、CNTの形成を促す材料を有する層のことをいう。触媒層38としては、塩化鉄(FeCl2)を用いることができる。被覆層33として用いることのできる材料は、負極30Aで説明した材料を用いることができる。また、負極集電体31として用いることのできる材料は、負極30Bで説明した材料を用いることができる。
【0080】
負極30Cの構成例として例えば、負極集電体31としてチタン箔を用い、触媒層38として粉末状の塩化鉄(FeCl2)を用い、負極活物質34として膜状のCNTを用い、被覆層33として金属チタンを用いることができる。なお、この場合のCNTは、負極活物質層32と呼ぶこともできる。
【0081】
ここで例えば、チタン箔上に粉末状の塩化鉄(FeCl2)を分散して設け、その後、CNTをCVD法により形成し、当該CNT上に金属チタンを成膜により形成することができる。金属チタンの成膜には、負極30Aで説明した成膜方法を用いることができる。CNTの成膜は、例えばCVD装置を用いて、500Pa以上2000Pa以下、800度以上900度以下の環境下で、アセチレンガスを用いて行うことができる。
【0082】
上記の例のように、CNTの成膜を行う際に、負極集電体31上に触媒層38を設けることで、CNTを良好に形成することが可能となる。また、上記の条件を用いてCNTを形成することで、CNTの成長方向を負極集電体31の上面に対して略垂直に揃えることができる。なお略垂直とは、具体的には、表面とのなす角が80°以上100°以下の角度をいう。
【0083】
負極30Dの構成例は、上記の例に限られず、負極集電体31として後述の[負極集電体]に記載の材料から選択される一を用い、上述の被覆層33に用いることができる材料から選択される一以上の材料を用いることができる。
【0084】
[負極の構成例5]
負極30の構成例として、
図3(A)に負極30E及びセパレータ40の断面模式図を示す。
【0085】
負極30Eは、負極集電体31と、負極活物質層32と、を有する。二次電池10において、負極30Eが有する負極活物質層32は、セパレータ40側に位置する。
【0086】
図2(A)乃至
図2(D)で説明した負極30A乃至負極30Dにおいて、被覆層33が、セパレータ40と接する位置に設けられる例を示したが、被覆層33の設けられる位置は、上記の例に限られない。例えば、負極活物質層32が粒子状の負極活物質34を有する場合は、当該粒子状の負極活物質34の表面に被覆層33を設けることが好ましい。
【0087】
負極活物質層32が有する負極活物質34の表面に被覆層33を設ける例を、
図3(B)及び
図3(C)に示す。
図3(B)及び
図3(C)は、それぞれ
図3(A)において破線で囲まれた領域Cの構成例を説明する拡大図である。
【0088】
図3(B)は、負極30の作製工程において被覆層33を設ける例を示す図である。
【0089】
図3(A)及び
図3(B)に示す構成例において、負極30Eは負極集電体31上の負極活物質層32を有し、負極活物質層32は、負極活物質34と、被覆層33と、導電材36と、を有する。負極活物質層32の空隙には、電解質45を有していてもよい。
【0090】
図3(B)に示す構成例は、負極活物質34を有するスラリー(負極活物質34と、導電材36と、分散媒とを混合した溶液)を、負極集電体31上に塗布し、乾燥させた後、被覆層33を設けることで作製することができる。なお、図示しないが、負極活物質層32同士、及び負極活物質34と負極集電体31とを固定するためにバインダを有していてもよい。
【0091】
当該構成例における被覆層33の成膜方法として、CVD法、スパッタリング法、蒸着法を用いると、負極活物質層32の内側の表面から遠い部分の負極活物質34に、被覆層33を形成することが難しい。そのため、当該構成例では、ALD法、チタンアルコキシドなどの液体を用いるゾルゲル法によって、被覆層33を形成することが好ましい。ALD法、ゾルゲル法などによって被覆層33を形成することで、負極活物質層32が有する負極活物質34の粒子の、全体の表面に被覆層33を設けることが可能となる。
【0092】
なお、被覆層33が金属チタンなどの導体である場合は、負極活物質層32に、導電材36などの導電性を補助する材料(導電助剤ともいう)を有さなくてもよい。一方で、被覆層33が酸化チタンなどの、導体よりも導電性の低い半導体である場合は、負極活物質層32は、導電材36を有することが好ましい。負極活物質層32が有することができる導電材36としては、後述の[導電材]に記載の材料から選択される一以上の材料を用いることができる。
【0093】
被覆層33が酸化チタンなどの、導体よりも導電性の低い半導体である場合は、当該被覆層33を還元処理することで、被覆層33の導電性を高めるとよい。例えば、被覆層33として酸化チタンを用いた場合は、還元剤として水素、水素化ホウ素ナトリウム、などを用いて、酸化チタンを還元することができる。その結果、被覆層の導電率を向上させることができる。
【0094】
次に、
図3(B)とは異なる負極30Eの構成例を、
図3(C)で説明する。
図3(C)は、負極活物質34の作製工程において被覆層33を設ける例を示す図である。
【0095】
図3(A)及び
図3(C)に示す構成例において、負極30Eは負極集電体31上の負極活物質層32を有し、負極活物質層32は、負極活物質34と、被覆層33と、バインダ35と、導電材36と、を有する。負極活物質層32の空隙には、電解質45を有していてもよい。
【0096】
図3(C)に示す構成例は、負極活物質34に対して被覆層33を設ける処理を行い、その後、当該負極活物質34を有するスラリー(負極活物質34と分散媒とバインダ35と導電材36とを混合した溶液)を、負極集電体31上に塗布し、乾燥させることで作製することができる。
【0097】
負極活物質34に対して被覆層33を設ける処理としては、ALD法、チタンアルコキシドなどの液体を用いるゾルゲル法、バレルスパッタ法(粒子状の粉末を撹拌しながら成膜するスパッタ法の一種)などを用いることができる。
【0098】
上記の負極の構成例1乃至負極の構成例5の説明で用いた、
図2(A)乃至
図3(C)に記載の被覆層33は、膜状の負極活物質34の表面、又は粒子状の負極活物質34の表面を隙間なく均一に覆うように図示しているが、被覆層33は、
図4(A)に示すようにクラックCR、空洞CA、被覆層33が設けられていない隙間GAなどを有していてもよい。例えば、
図4(A)に示す隙間GAにおいては、負極活物質34と電解質とが接する場合がある。
【0099】
また、上記の負極の構成例1乃至負極の構成例5の説明で用いた、
図2(A)乃至
図3(C)に記載の被覆層33は、膜状の負極活物質34の表面、又は粒子状の負極活物質34の表面と、被覆層33との境界を明瞭に図示しているが、
図4(B)に示すように、負極活物質34と被覆層33との間に、界面層39を有していてもよい。界面層39は、負極活物質34が有する元素と、被覆層33が有する元素と、の少なくとも一部が混合した領域であってもよい。
【0100】
なお、上記の負極の構成例2乃至負極の構成例5の説明で用いた、
図2(E)乃至
図3(C)に記載の負極30(負極30B乃至負極30E)は、負極集電体31の片方の面に負極活物質層32及び被覆層33を有する例を示したが、本発明の一態様の負極はこのような片面負極に限られず、
図4(C)に示すような両面負極(負極30F)であってもよい。
図4(C)に示す負極30Fは、両面負極の構成例であり、
図2(B)で示した負極30Bを両面負極にした場合を示している。負極30Fは、負極集電体31の一方の面上及び他方の面上にそれぞれ負極活物質層32を有し、それぞれの負極活物質層32上に被覆層33を有する。
図2(B)及び
図4(C)で示した例のように、負極30C乃至負極30Eについても、両面負極の構成としてもよい。
【0101】
[セパレータに被覆層を設ける例]
上記の負極の構成例1乃至負極の構成例5において、被覆層33を負極30に設ける例を説明している。本発明の一態様として、被覆層33を有するセパレータ40と、被覆層33を有さない負極と、を有する二次電池10としてもよい。この場合、セパレータ40は、セパレータ40の少なくとも一方の面に被覆層33を有し、当該被覆層33を有する面が、上記の被覆層を有さない負極側に向くように設けるとよい。被覆層33に用いることのできる材料、被覆層33の形成方法などは、上記のいずれかの方法を用いるとよい。
【0102】
[バインダ]
バインダとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、及びウレタンゴム内のいずれか一以上のゴム材料を用いることが好ましい。上記のゴム材料を分散媒に分散し、用いることができる。分散媒として例えば、水、N-メチルピロリドン(NMP)、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれか一種又は二種以上を用いることができる。
【0103】
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることもできる。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体、または澱粉などを用いることができる。
【0104】
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いてもよい。
【0105】
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
【0106】
例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。例えばゴム材料等は接着力及び弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難しい場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合することが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料としては、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体、または澱粉を用いることができる。
【0107】
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩またはアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラリーを作製する際に活物質または他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書等においては、電極のバインダとして使用するセルロース及びセルロース誘導体としては、それらの塩も含むものとする。
【0108】
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、活物質及びバインダとして組み合わせる他の材料、例えばスチレンブタジエンゴムを水溶液中に安定して分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすいことが期待される。また、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、水酸基またはカルボキシル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するために高分子同士が相互作用し、活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
【0109】
活物質表面を覆う、または表面に接するバインダが膜を形成する場合には、不動態膜としての役割を果たして電解液の分解を抑える効果も期待される。ここで、「不動態膜」とは、電子の伝導性のない膜、または電子伝導性の極めて低い膜であり、例えば活物質の表面に不動態膜が形成された場合には、電池反応電位において、電解液の分解を抑制することができる。また、不動態膜は、電子の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導できるとさらに望ましい。
【0110】
[負極活物質]
負極活物質として、例えば金属リチウム、炭素材料、合金系材料などを用いることができる。
【0111】
負極活物質として、金属リチウムを用いる場合は、箔上の金属リチウムを用いることができる。また、集電体などの基材上に、金属リチウムを蒸着して用いてもよい。
【0112】
炭素材料として、例えば黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、炭素繊維(カーボンナノチューブ)、グラフェン、カーボンブラック等を用いることができる。
【0113】
黒鉛としては、人造黒鉛または天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては、例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
【0114】
黒鉛は、リチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)に金属リチウムと同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.5V以下 vs.Li/Li+)。これにより、黒鉛を用いたリチウムイオン電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価である、金属リチウムに比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0115】
難黒鉛化性炭素は、例えばフェノール樹脂などの合成樹脂、植物由来の有機物を焼成することで得られる。本発明の一態様のリチウムイオン電池の負極活物質が有する難黒鉛化性炭素は、X線回折(XRD)によって測定される(002)面の面間隔が0.34nm以上0.50nm以下であることが好ましく、0.35nm以上0.42nm以下であることがより好ましい。
【0116】
また、負極活物質は、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、負極活物質に用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素、及び該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合がある。
【0117】
本明細書等において、「SiO」は例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOxと表すこともできる。ここでxは1または1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下がより好ましい。また、シリコンと酸素とが均一な組成で存在する化合物だけでなく、シリコンと二酸化シリコンとの混合物もSiOと呼ぶことがある。
【0118】
なお、上記に示した負極活物質の中から一種類の負極活物質を用いることができるが、複数種類を組み合わせて用いることもできる。例えば、炭素材料とシリコンとの組み合わせ、炭素材料とSiOとの組み合わせ、とすることができる。
【0119】
[負極集電体]
負極に用いる集電体としては、ステンレス、金、白金、銅、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料をもちいることができる。また負極集電体に用いる材料は、負極の電位でLiと合金を形成しないことが好ましい。集電体は、箔状、板状、シート状、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。なお、前述のように、リチウム箔上にTiを有する層を負極として用いる場合は、リチウム箔が負極集電体の機能を兼ねることができるため、負極集電体を設けなくてもよい。または、被覆層33が、負極集電体としての機能を有する場合においても、負極集電体を設けなくてもよい。
【0120】
[導電材]
導電材は、導電付与剤、導電助剤とも呼ばれ、炭素材料が用いられる。複数の活物質の間に導電材を付着させることで複数の活物質同士が電気的に接続され、導電性が高まる。なお、「付着」とは、活物質と導電材が物理的に密着していることのみを指しているのではなく、共有結合が生じる場合、ファンデルワールス力により結合する場合、活物質の表面の一部を導電材が覆う場合、活物質の表面凹凸に導電材がはまりこむ場合、互いに接していなくとも電気的に接続される場合などを含む概念とする。
【0121】
正極活物質層、負極活物質層、等の活物質層は、導電材を有することが好ましい。
【0122】
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、およびファーネスブラックなどのカーボンブラック、人造黒鉛、および天然黒鉛などの黒鉛、カーボンナノファイバー、およびカーボンナノチューブなどの炭素繊維、ならびにグラフェン化合物、のいずれか一種又は二種以上を用いることができる。
【0123】
炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。
【0124】
本明細書等においてグラフェン化合物とは、グラフェン、多層グラフェン、マルチグラフェン、酸化グラフェン、多層酸化グラフェン、マルチ酸化グラフェン、還元された酸化グラフェン、還元された多層酸化グラフェン、還元されたマルチ酸化グラフェン、グラフェン量子ドット等を含む。グラフェン化合物とは、炭素を有し、平板状、シート状等の形状を有し、炭素6員環で形成された二次元的構造を有するものをいう。該炭素6員環で形成された二次元的構造は炭素シートといってもよい。グラフェン化合物は官能基を有してもよい。またグラフェン化合物は屈曲した形状を有することが好ましい。またグラフェン化合物は丸まってカーボンナノファイバーのようになっていてもよい。
【0125】
また活物質層は導電材として銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末または金属繊維、導電性セラミックス材料等を有してもよい。
【0126】
活物質層の総量に対する導電材の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
【0127】
活物質と点接触するカーボンブラック等の粒状の導電材と異なり、グラフェン化合物は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、通常の導電材よりも少量で粒状の活物質とグラフェン化合物との電気伝導性を向上させることができる。よって、活物質の活物質層における比率を増加させることができる。これにより、電池の放電容量を増加させることができる。
【0128】
カーボンブラック、黒鉛、等の粒子状の炭素含有化合物または、カーボンナノチューブ等の繊維状の炭素含有化合物は微小な空間に入りやすい。微小な空間とは例えば、複数の活物質の間の領域等を指す。微小な空間に入りやすい炭素含有化合物と、複数の粒子にわたって導電性を付与できるグラフェンなどのシート状の炭素含有化合物と、を組み合わせて使用することにより、電極の密度を高め、優れた導電パスを形成することができる。本発明の一態様の作製方法で得られる電池は、高容量密度を有し、かつ安定性を備えることができ、車載用の電池として有効である。
【0129】
<正極>
正極は、正極活物質層及び正極集電体を有する。正極活物質層は正極活物質を有し、さらに導電材及びバインダの少なくとも一を有していてもよい。なお、導電材、及びバインダは、<負極>で説明したものを用いることができる。
【0130】
正極は、集電体上にスラリーを塗布して乾燥させることによって形成することができる。なお、乾燥後にプレスを加えてもよい。正極は、集電体上に活物質層を形成したものである。
【0131】
スラリーとは、集電体上に活物質層を形成するために用いる材料液であり、活物質とバインダと溶媒を含有し、好ましくはさらに導電材を混合させたものを指している。なお、スラリーは、電極用スラリーまたは活物質スラリーと呼ばれることもあり、正極活物質層を形成する場合には正極用スラリーと呼ばれることもある。
【0132】
図5(A)に示すように、正極20は、正極集電体21上に正極活物質層22を有する。
【0133】
正極20は、負極30で説明した被覆層33のように被覆層を有していてもよく、この場合、正極活物質24は被覆層23を有する。被覆層23として用いることのできる材料は、<負極>で説明したものを用いることができる。
【0134】
正極活物質24の表面に被覆層23を設ける例を、
図5(B)及び
図5(C)に示す。
図5(B)及び
図5(C)は、それぞれ
図1(A)において破線で囲まれた領域Bの構成例を説明する拡大図である。
【0135】
図5(B)は、正極20の作製工程において被覆層23を設ける例を示す図である。
【0136】
図5(A)及び
図5(B)に示す構成例において、正極20は正極集電体21上の正極活物質層22を有し、正極活物質層22は、正極活物質24と、被覆層23と、を有する。正極活物質層22の空隙には、電解質45を有していてもよい。
【0137】
図5(B)に示す構成例は、正極活物質24を有するスラリー(正極活物質24と分散媒を混合した溶液)を、正極集電体21上に塗布し、乾燥させた後、被覆層23を設けることで作製することができる。なお、図示しないが、正極活物質層22同士、及び正極活物質24と正極集電体21とを固定するためにバインダを有していてもよい。
【0138】
当該構成例における被覆層23の成膜方法として、CVD法、スパッタリング法、蒸着法を用いると、正極活物質層22の内側の表面から遠い部分の正極活物質24に、被覆層23を形成することが難しい。そのため、当該構成例では、ALD法、チタンアルコキシドなどの液体を用いるゾルゲル法によって、被覆層23を形成することが好ましい。ALD法、ゾルゲル法などによって被覆層23を形成することで、正極活物質層22が有する正極活物質24の粒子の、全体の表面に被覆層23を設けることが可能となる。
【0139】
なお、被覆層23が金属チタンなどの導体である場合は、
図5(B)に示すように、正極活物質層22に、導電材などの導電性を補助する材料を有さなくてもよい。一方で、被覆層23が酸化チタンなどの、導体よりも導電性の低い半導体である場合は、正極活物質層22は、導電材を有することが好ましい。
【0140】
被覆層23が酸化チタンなどの、導体よりも導電性の低い半導体である場合は、当該被覆層23を還元処理することで、被覆層23の導電性を高めるとよい。例えば、被覆層23として酸化チタンを用いた場合は、還元剤として水素、水素化ホウ素ナトリウム、などを用いて、酸化チタンを還元することができる。その結果、被覆層の導電率を向上させることができる。
【0141】
次に、
図5(B)とは異なる正極20の構成例を、
図5(C)で説明する。
図5(C)は、正極活物質24の作製工程において被覆層23を設ける例を示す図である。
【0142】
図5(A)及び
図5(C)に示す構成例において、正極20は正極集電体21上の正極活物質層22を有し、正極活物質層22は、正極活物質24と、被覆層23と、バインダ25と、導電材26と、を有する。正極活物質層22の空隙には、電解質45を有していてもよい。正極活物質層22が有することができる導電材26としては、前述の[導電材]に記載の材料から選択される一以上の材料を用いることができる。
【0143】
図5(C)に示す構成例は、正極活物質24に対して被覆層23を設ける処理を行い、その後、当該正極活物質24を有するスラリー(正極活物質24と分散媒とバインダ25と導電材26とを混合した溶液)を、正極集電体21上に塗布し、乾燥させることで作製することができる。
【0144】
正極活物質24に対して被覆層23を設ける処理としては、ALD法、チタンアルコキシドなどの液体を用いるゾルゲル法、バレルスパッタ法などを用いることができる。
【0145】
[正極活物質]
正極活物質として、層状岩塩型構造の複合酸化物、オリビン型構造の複合酸化物、およびスピネル型構造の複合酸化物の何れか一以上を用いることができる。
【0146】
層状岩塩型構造の複合酸化物として、コバルト酸リチウム、ニッケル-コバルト-マンガン酸リチウム、ニッケル-コバルト-アルミニウム酸リチウム、およびニッケル-マンガン-アルミニウム酸リチウムのうちのいずれか一または複数を用いることができる。なお、組成式としてLiM1O2(M1はニッケル、コバルト、マンガン、アルミニウムから選ばれる一以上)と示すことができるが、組成式の係数は整数に限られない。
【0147】
コバルト酸リチウムとして例えば、マグネシウム及びフッ素が添加されたコバルト酸リチウムを用いることができる。または、マグネシウム、フッ素、アルミニウム及びニッケルが添加されたコバルト酸リチウムを用いることができる。または、マグネシウム、フッ素、アルミニウム、ニッケル及びチタンが添加されたコバルト酸リチウムを用いることができる。
【0148】
ニッケル-コバルト-マンガン酸リチウムとして例えば、ニッケル:コバルト:マンガン=1:1:1、ニッケル:コバルト:マンガン=6:2:2、ニッケル:コバルト:マンガン=8:1:1、およびニッケル:コバルト:マンガン=9:0.5:0.5等の比率のニッケル-コバルト-マンガン酸リチウムを用いることができる。また、上記のニッケル-コバルト-マンガン酸リチウムとして例えば、アルミニウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、ガリウムの何れか一又は複数が添加されたニッケル-コバルト-マンガン酸リチウムを用いることが好ましい。
【0149】
オリビン型構造の複合酸化物として、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸コバルトリチウム、およびリン酸鉄マンガンリチウムのうちのいずれか一または複数を用いることができる。なお、組成式としてLiM2PO4(M2は、鉄、マンガン、コバルトから選ばれる一以上)と示すことができるが、組成式の係数は整数に限られない。
【0150】
または、LiMn2O4等のスピネル型構造の複合酸化物として用いることができる。
【0151】
[正極集電体]
正極集電体としては、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料をもちいることができる。また正極集電体に用いる材料は、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。集電体は、箔状、板状、シート状、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
【0152】
<電解質>
電解質の一つの形態として、溶媒と、溶媒に溶解した電解質と、を有する電解液を用いることができる。電解液は、溶媒とリチウム塩を有する。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等のうちの1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0153】
電解液として、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを含む場合、エチレンカーボネート、及びジエチルカーボネートの全含有量を100vol%としたとき、エチレンカーボネート、及びジエチルカーボネートの体積比が、x:100-x(ただし、20≦x≦40である。)であるものを用いることができる。より具体的には、ECと、DECと、を、EC:DEC=30:70(体積比)で含んだ混合有機溶媒を用いることができる。
【0154】
また電解液として、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、を含む場合、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジメチルカーボネートの全含有量を100vol%としたとき、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジメチルカーボネートの体積比が、x:y:100-x-y(ただし、5≦x≦35であり、0<y<65である。)であるものを用いることができる。より具体的には、ECと、EMCと、DMCと、を、EC:EMC:DMC=30:35:35(体積比)で含んだ混合有機溶媒を用いることができる。
【0155】
またさらに電解液として、フッ化環状カーボネート(フッ素化環状カーボネートと記すこともある)、又はフッ化鎖状カーボネート(フッ素化鎖状カーボネートと記すこともある)を含んだ混合有機溶媒を用いることができる。さらに上記混合有機溶媒は、フッ化環状カーボネート、及びフッ化鎖状カーボネートをともに含むと好ましい。フッ化環状カーボネート及びフッ化鎖状カーボネートは共に、電子求引性を示す置換基を有しており、リチウムイオンの溶媒和エネルギーが低くなり好ましい。そのためフッ化環状カーボネート及びフッ化鎖状カーボネートは共に電解液に好適であり、これらの混合有機溶媒は好適である。
【0156】
フッ化環状カーボネートとして、例えば、フルオロエチレンカーボネート(炭酸フルオロエチレン、FEC、F1EC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC、F2EC)、トリフルオロエチレンカーボネート(F3EC)、又はテトラフルオロエチレンカーボネート(F4EC)等を用いることができる。なお、DFECには、シス-4,5、トランス-4,5等の異性体がある。いずれのフッ化環状カーボネートも電子求引性を示す置換基を有するため、リチウムイオンの溶媒和エネルギーが低いと考えられる。FECにおいて電子求引性の置換基はF基である。
【0157】
フッ化鎖状カーボネートとして、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルがある。3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルの略称は、「MTFP」である。MTFPにおいて、電子求引性の置換基はCF3基である。
【0158】
FECは、環状カーボネートの一つであり、高い比誘電率を有するため、有機溶媒に用いると、リチウム塩の解離を促進させる効果を有する。さらにFECは電子求引性を示す置換基を有するため、リチウムイオンとクーロン力等によって結びつきやすい。具体的には、FECはリチウムイオンの溶媒和エネルギーが、電子求引性を示す置換基を有さないエチレンカーボネート(EC)よりも小さいため、リチウムイオンと溶媒和を生成しやすいといえる。さらにFECは最高被占有軌道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbital)準位が深いと考えられ、HOMO準位が深いと酸化されにくく耐酸化性が向上する。一方で、FECは粘度が高いことが懸念される。そこで、FECのみではなく、MTFPを更に含んだ混合有機溶媒を電解液に用いるとよい。MTFPは、鎖状カーボネートの一つであり、電解液の粘度を下げる、又は低温下(代表的には0℃)でも室温下(代表的には25℃)の粘度を維持する効果を有することも可能である。さらにMTFPは、電子求引性を示す置換基を有さないプロピオン酸メチル(略称は「MP」である)よりも溶媒和エネルギーが小さいため、電解液に用いた際にリチウムイオンとの溶媒和を生成することがあってもよい。
【0159】
このような物性を有するFEC、及びMTFPを含む混合有機溶媒の全含有量を100vol%として、体積比がx:100-x(ただし、5≦x≦30、好ましくは10≦x≦20である。)となるように混合して用いるとよい。つまり混合有機溶媒において、MTFPがFECよりも多くなるように混合するとよい。本発明の一態様の負極は、負極活物質表面に被覆層を有しており、被覆層に金属チタンを用いる場合は、上記のFECまたはMTFPを含む電解液中でフッ素イオンが発生した場合においても、金属チタン表面に不動態被膜を形成することができる。そのため、本発明の一態様の負極は、FEC、及びMTFPを含む混合有機溶媒を有する電解液と好適に組み合わせることができる。
【0160】
また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つ又は複数用いることで、二次電池の内部短絡又は過充電等によって内部温度が上昇しても、二次電池の破裂及び/又は発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、又はパーフルオロアルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
【0161】
[リチウム塩]
上記溶媒に溶解させるリチウム塩(電解質とも呼ぶ)としては、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。リチウム塩は溶媒に対して0.5mol/L以上3.0mol/L以下とするとよい。フッ化物であるLiPF6、LiBF4などを用いるとリチウムイオン二次電池の安全性が向上する。
【0162】
上述した電解液は、粒状のごみ又は電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比が1wt%以下、好ましくは0.1wt%以下、より好ましくは0.01wt%以下である。
【0163】
[添加剤]
電解液は添加剤を有してもよい。添加剤により、高電圧及び/又は高温で二次電池を動作させるときに、正極表面又は負極表面で生じうる電解質の反応分解を抑制することができる。添加剤として例えばビニレンカーボネート(VC)、プロパンスルトン(PS)、TerT-ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)を用いるとよい。LiBOBは良好な被膜を形成しやすく、特に好ましい。VC又はFECは二次電池のエージング時または使用初期の充電時に負極に良好な被膜を形成しサイクル特性を向上させることができ好ましい。
【0164】
添加剤として、ジニトリル化合物のいずれか一種または二種以上を用いることができる。ジニトリル化合物の具体例として、たとえばスクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル(ADN)、又はエチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル(EGBE)が挙げられる。
【0165】
さらにフルオロベンゼンを上記有機溶媒に添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば電解液全体に対して0.1wt%以上5wt%以下とすればよい。PS又はEGBEは充放電時に正極に良好な被膜を形成しサイクル特性を向上させることができ好ましい。FBは正極及び負極への有機溶媒のぬれ性が向上するため好ましい。ジニトリル化合物は、ニトリル基が正極及び負極に配向して、有機溶媒の酸化分解を阻害するため高電圧耐性を向上させることができ好ましい。さらにジニトリル化合物は、負極に銅を有する集電体を用いた場合、過放電の際に銅の溶解を防ぐことができ好ましい。高電圧での二次電池の使用を踏まえると、ニトリル化合物を添加することが好ましい。
【0166】
[ゲル電解質]
ゲル電解質として、ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲルを用いてもよい。ポリマーゲル電解質を用いることで、半固体電解質層を提供することができ、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化及び軽量化が可能である。
【0167】
ゲル化されるポリマーとして、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等を用いることができる。
【0168】
ポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキシド構造を有するポリマー、PVDF、及びポリアクリロニトリル等、及びそれらを含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体であるPVDF-HFPを用いることができる。また、形成されるポリマーは、多孔質形状を有してもよい。
【0169】
[固体電解質]
電解液の代わりに、硫化物系又は酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質等を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータ及び/又はスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
【0170】
<セパレータ>
また二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータはエンベロープ状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
【0171】
セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミックス系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合したもの等をコートすることができる。セラミックス系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
【0172】
セラミックス系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充電の際のセパレータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料をコートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の安全性を向上させることができる。
【0173】
例えばポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよい。
【0174】
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性を保つことができるため、二次電池の体積あたりの放電容量を大きくすることができる。
【0175】
<外装体>
電池が有する外装体としては、例えばアルミニウム、ステンレス、チタンなどの金属材料または樹脂材料を用いることができる。また、フィルム状の外装体を用いることもできる。フィルムとしては、例えばアルミニウム、ステンレス、チタン、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜又は金属箔の一方の面に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜を有し、他方の面に、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を有する三層構造のフィルムを用いることができる。このような多層構造のフィルムをラミネートフィルムと呼ぶことができる。このときラミネートフィルムが有する金属層の材料名を用いて、アルミ(アルミニウム)ラミネートフィルム、ステンレスラミネートフィルム、チタンラミネートフィルム、銅ラミネートフィルム、ニッケルラミネートフィルム等と呼ぶことがある。
【0176】
<ラミネート型二次電池とその作製方法>
ラミネート型の二次電池500の外観図の一例を
図6及び
図7に示す。
図6及び
図7は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リード電極510及び負極リード電極511を有する。ラミネート型の二次電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて二次電池も曲げることもできる。該ラミネート型二次電池の作製方法の一例について、
図7(A)乃至
図7(C)を用いて説明する。
【0177】
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。
図7(B)に積層された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5組、正極を4組使用する例を示す。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
図1(A)においては、負極、正極およびセパレータが、それぞれ1枚の電池構成を示しているが、
図7(B)に示すように、複数枚の負極、正極およびセパレータを用いることができる。
【0178】
次に外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
【0179】
次に、
図7(C)に示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時、後に電解液を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
【0180】
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液(図示しない。)を外装体509の内側へ導入する。電解液の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池500を作製することができる。
【0181】
正極503に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、放電容量が高くサイクル特性に優れた二次電池500とすることができる。
【0182】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0183】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について
図8(A)乃至
図10(C)を用いて説明する。
【0184】
先の実施の形態で説明した正極活物質を有する二次電池を電子機器に実装する例を、
図8(A)乃至
図8(G)に示す。二次電池を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0185】
また、フレキシブルな形状を備える二次電池を、家屋、ビル等の内壁または外壁、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0186】
図8(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、二次電池7407を有している。上記の二次電池7407に本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯電話機を提供できる。
【0187】
図8(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている二次電池7407も湾曲される。また、その時、曲げられた二次電池7407の状態を
図8(C)に示す。二次電池7407は薄型の蓄電池である。二次電池7407は曲げられた状態で固定されている。なお、二次電池7407は集電体と電気的に接続されたリード電極を有している。
【0188】
図8(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び二次電池7104を備える。また、
図8(E)に曲げられた二次電池7104の状態を示す。二次電池7104は曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して二次電池7104の一部または全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径の値で表したものを曲率半径と呼び、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または二次電池7104の主表面の一部または全部が変化する。二次電池7104の主表面における曲率半径が40mm以上150mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。上記の二次電池7104に本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯表示装置を提供できる。
【0189】
図8(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7205、入出力端子7206などを備える。
【0190】
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0191】
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指またはスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0192】
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
【0193】
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0194】
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクタを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0195】
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の二次電池を有している。本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯情報端末を提供できる。例えば、
図8(E)に示した二次電池7104を、筐体7201の内部に湾曲した状態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
【0196】
携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサ、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
【0197】
図8(G)は、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部7304を有し、本発明の一態様の二次電池を有している。また、表示装置7300は、表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させることもできる。
【0198】
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示状況を変更することができる。
【0199】
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクタを介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0200】
表示装置7300が有する二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な表示装置を提供できる。
【0201】
また、先の実施の形態で示したサイクル特性のよい二次電池を電子機器に実装する例を
図8(H)乃至
図10(C)を用いて説明する。
【0202】
日用電子機器に二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な製品を提供できる。例えば、日用電子機器として、電動歯ブラシ、電気シェーバー、電動美容機器などが挙げられ、それらの製品の二次電池としては、使用者の持ちやすさを考え、形状をスティック状とし、小型、軽量、且つ、放電容量の大きな二次電池が望まれている。
【0203】
図8(H)はタバコ収容喫煙装置(電子タバコ)とも呼ばれる装置の斜視図である。
図8(H)において電子タバコ7500は、加熱素子を含むアトマイザ7501と、アトマイザに電力を供給する二次電池7504と、液体供給ボトルおよびセンサなどを含むカートリッジ7502で構成されている。安全性を高めるため、二次電池7504の過充電および/または過放電を防ぐ保護回路を二次電池7504に電気的に接続してもよい。
図8(H)に示した二次電池7504は、充電機器と接続できるように外部端子を有している。二次電池7504は持った場合に先端部分となるため、トータルの長さが短く、且つ、重量が軽いことが望ましい。本発明の一態様の二次電池は放電容量が高く、良好なサイクル特性を有するため、長期間に渡って長時間の使用ができる小型であり、且つ、軽量の電子タバコ7500を提供できる。
【0204】
図9(A)は、ウェアラブルデバイスの例を示している。ウェアラブルデバイスは、電源として二次電池を用いる。また、使用者が生活または屋外で使用する場合において、防沫性能、耐水性能または防塵性能を高めるため、接続するコネクタ部分が露出している有線による充電だけでなく、無線充電も行えるウェアラブルデバイスが望まれている。
【0205】
例えば、
図9(A)に示すような眼鏡型デバイス4000に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。眼鏡型デバイス4000は、フレーム4000aと、表示部4000bを有する。湾曲を有するフレーム4000aのテンプル部に二次電池を搭載することで、軽量であり、且つ、重量バランスがよく継続使用時間の長い眼鏡型デバイス4000とすることができる。本発明の一態様である二次電池を備えることで、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0206】
また、ヘッドセット型デバイス4001に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。ヘッドセット型デバイス4001は、少なくともマイク部4001aと、フレキシブルパイプ4001bと、イヤフォン部4001cを有する。フレキシブルパイプ4001b内および/またはイヤフォン部4001c内に二次電池を設けることができる。本発明の一態様である二次電池を備えることで、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0207】
また、身体に直接取り付け可能なデバイス4002に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。デバイス4002の薄型の筐体4002aの中に、二次電池4002bを設けることができる。本発明の一態様である二次電池を備えることで、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0208】
また、衣服に取り付け可能なデバイス4003に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。デバイス4003の薄型の筐体4003aの中に、二次電池4003bを設けることができる。本発明の一態様である二次電池を備えることで、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0209】
また、ベルト型デバイス4006に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。ベルト型デバイス4006は、ベルト部4006aおよびワイヤレス給電受電部4006bを有し、ベルト部4006aの内部に、二次電池を搭載することができる。本発明の一態様である二次電池を備えることで、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0210】
また、腕時計型デバイス4005に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。腕時計型デバイス4005は表示部4005aおよびベルト部4005bを有し、表示部4005aまたはベルト部4005bに、二次電池を設けることができる。本発明の一態様である二次電池を備えることで、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0211】
表示部4005aには、時刻だけでなく、メールおよび電話の着信等、様々な情報を表示することができる。
【0212】
また、腕時計型デバイス4005は、腕に直接巻きつけるタイプのウェアラブルデバイスであるため、使用者の脈拍、血圧等を測定するセンサを搭載してもよい。使用者の運動量および健康に関するデータを蓄積し、健康を管理することができる。
【0213】
図9(B)に腕から取り外した腕時計型デバイス4005の斜視図を示す。
【0214】
また、側面図を
図9(C)に示す。
図9(C)には、内部に二次電池913を内蔵している様子を示している。二次電池913は実施の形態2に示した二次電池である。二次電池913は表示部4005aと重なる位置に設けられており、小型、且つ、軽量である。
【0215】
図9(D)はワイヤレスイヤホンの例を示している。ここでは一対の本体4100aおよび本体4100bを有するワイヤレスイヤホンを図示するが、必ずしも一対でなくてもよい。
【0216】
本体4100aおよび4100bは、ドライバユニット4101、アンテナ4102、二次電池4103を有する。表示部4104を有していてもよい。また無線用IC等の回路が載った基板、充電用端子等を有することが好ましい。またマイクを有していてもよい。
【0217】
ケース4110は、二次電池4111を有する。また無線用IC、充電制御IC等の回路が載った基板、充電用端子を有することが好ましい。また表示部、ボタン等を有していてもよい。
【0218】
本体4100aおよび4100bは、スマートフォン等の他の電子機器と無線で通信することができる。これにより他の電子機器から送られた音データ等を本体4100aおよび4100bで再生することができる。また本体4100aおよび4100bがマイクを有すれば、マイクで取得した音を他の電子機器に送り、該電子機器により処理をした後の音データを再び本体4100aおよび4100bに送って再生することができる。これにより、たとえば翻訳機として用いることもできる。
【0219】
またケース4110が有する二次電池4111から、本体4100aが有する二次電池4103に充電を行うことができる。二次電池4111および二次電池4103としては先の実施の形態のコイン型二次電池、円筒形二次電池等を用いることができる。
【0220】
図10(A)は、掃除ロボットの一例を示している。掃除ロボット6300は、筐体6301上面に配置された表示部6302、側面に配置された複数のカメラ6303、ブラシ6304、操作ボタン6305、二次電池6306、各種センサなどを有する。図示されていないが、掃除ロボット6300には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット6300は自走し、ゴミ6310を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
【0221】
例えば、掃除ロボット6300は、カメラ6303が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ6304に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ6304の回転を止めることができる。掃除ロボット6300は、その内部に本発明の一態様に係る二次電池6306と、半導体装置または電子部品を備える。本発明の一態様に係る二次電池6306を掃除ロボット6300に用いることで、掃除ロボット6300を稼働時間が長く信頼性の高い電子機器とすることができる。
【0222】
図10(B)は、ロボットの一例を示している。
図10(B)に示すロボット6400は、二次電池6409、照度センサ6401、マイクロフォン6402、上部カメラ6403、スピーカ6404、表示部6405、下部カメラ6406および障害物センサ6407、移動機構6408、演算装置等を備える。
【0223】
マイクロフォン6402は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ6404は、音声を発する機能を有する。ロボット6400は、マイクロフォン6402およびスピーカ6404を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0224】
表示部6405は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット6400は、使用者の望みの情報を表示部6405に表示することが可能である。表示部6405は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、表示部6405は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット6400の定位置に設置することで、充電およびデータの受け渡しを可能とする。
【0225】
上部カメラ6403および下部カメラ6406は、ロボット6400の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ6407は、移動機構6408を用いてロボット6400が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット6400は、上部カメラ6403、下部カメラ6406および障害物センサ6407を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。
【0226】
ロボット6400は、その内部に本発明の一態様に係る二次電池6409と、半導体装置または電子部品を備える。本発明の一態様に係る二次電池をロボット6400に用いることで、ロボット6400を稼働時間が長く信頼性の高い電子機器とすることができる。
【0227】
図10(C)は、飛行体の一例を示している。
図10(C)に示す飛行体6500は、プロペラ6501、カメラ6502、および二次電池6503などを有し、自律して飛行する機能を有する。
【0228】
例えば、カメラ6502で撮影した画像データは、電子部品6504に記憶される。電子部品6504は、画像データを解析し、移動する際の障害物の有無などを察知することができる。また、電子部品6504によって二次電池6503の蓄電容量の変化から、バッテリ残量を推定することができる。飛行体6500は、その内部に本発明の一態様に係る二次電池6503を備える。本発明の一態様に係る二次電池を飛行体6500に用いることで、飛行体6500を稼働時間が長く信頼性の高い電子機器とすることができる。
【0229】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0230】
(実施の形態3)
本実施の形態では、車両に本発明の一態様の正極活物質を有する二次電池を搭載する例を示す。
【0231】
二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
【0232】
図11において、本発明の一態様である二次電池を用いた車両を例示する。
図11(A)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8400は二次電池を有する。たとえば車内の床部分に二次電池のモジュールを並べて使用することができる。二次電池は電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401およびルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
【0233】
また、二次電池は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、二次電池は、自動車8400が有するナビゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
【0234】
図11(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池にプラグイン方式および/または非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。
図11(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法およびコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)またはコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0235】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路および/または外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時および/または走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式および/または磁界共鳴方式を用いることができる。
【0236】
また、
図11(C)は、本発明の一態様の二次電池を用いた二輪車の一例である。
図11(C)に示すスクータ8600は、二次電池8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。
【0237】
また、
図11(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池8602を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。二次電池8602は、取り外し可能となっており、充電時には二次電池8602を屋内に持って運び、充電し、走行する前に収納すればよい。
【0238】
本発明の一態様によれば、二次電池のサイクル特性が良好となり、二次電池の放電容量を大きくすることができる。よって、二次電池自体を小型軽量化することができる。二次電池自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した二次電池を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、例えば電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避できれば、省エネルギー、および二酸化炭素の排出の削減に寄与することができる。また、サイクル特性が良好であれば二次電池を長期に渡って使用できるため、コバルトをはじめとする希少金属の使用量を減らすことができる。
【0239】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0240】
10 二次電池
20 正極
21 正極集電体
22 正極活物質層
23 被覆層
24 正極活物質
25 バインダ
26 導電材
30 負極
31 負極集電体
32 負極活物質層
33 被覆層
34 負極活物質
35 バインダ
36 導電材
37 下地層
38 触媒層
39 界面層
40 セパレータ
45 電解質
50 外装体