(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136957
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示システム、及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240927BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/37 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/373 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/02 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/377 20060101ALI20240927BHJP
G09G 5/22 20060101ALI20240927BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240927BHJP
G06F 3/0481 20220101ALI20240927BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20240927BHJP
G02B 27/02 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G09G5/36 200
G09G5/00 550C
G09G5/38 100
G09G5/37 110
G09G5/00 530D
G09G5/10 B
G09G5/373 200
G09G5/02 B
G09G5/377 100
G09G5/22 630M
G09G5/00 510Z
G01C21/36
G06F3/0481
G02B27/01
G02B27/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048272
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】林 武
(72)【発明者】
【氏名】高野 凌
【テーマコード(参考)】
2F129
2H199
3D344
5C182
5E555
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】 本発明は、車両が道路を曲がる場合に、車両の旋回方向とは逆の方向に移動するように見える画像(例えばPOI表示)に起因する、乗員の前方確認の遅延や視覚的な煩わしさ等を抑制することが可能な表示制御装置等を提供する。
【解決手段】 表示制御装置200は、情報取得部207と、POI表示生成部202と、少なくとも1つの表示部102、104と、車両1の走行中において、POI表示が、時間の経過と共に表示部の表示領域PS1内を横切るように移動する、という条件である横断条件を満たすか否かを判定する横断判定部204と、横断条件が満たされる場合に、表示部の表示領域内を横切るように移動するPOI表示の誘目性変更処理を実施させる表示制御部203と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された周囲の情報に関連する1つ、又は複数の画像の表示を制御する表示制御装置であって、
前記車両の位置を取得する車両位置情報取得部と、
地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記車両の周囲にある対象物に関する情報であるPOI情報を取得するPOI情報取得部と、
前記POI情報取得部から得られた情報を基に、前記対象物を表す画像であるPOI表示を生成するPOI表示生成部と、
前記POI表示を、前記対象物に重畳して見えるように表示させる、又は前記対象物の近傍に表示させることが可能な少なくとも1つの表示部と、
前記車両の走行中において、前記POI表示が、時間の経過と共に前記表示部の表示領域内を横切るように移動する、という条件である横断条件を満たすか否かを判定する横断判定部と、
前記横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合において、前記表示部の表示領域内を横切るように移動する前記POI表示の誘目性を抑制する処理である誘目性変更処理を実施させる表示制御部と、
を有する表示制御装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、
前記車両が曲がっている道路を走行することに伴い、前記曲がっている道路の沿線に位置する前記対象物、又は前記沿線の近傍に位置する対象物についての前記POI表示が、前記車両の旋回方向とは逆の向きに移動すると推定される場合に、前記横断条件を満たすと判定する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの表示部は、前記POI表示を表示領域上に表示すると共に、
前記表示領域を、乗員から見て、前記車両の幅方向である左右方向において複数に分割することで、隣接する左側領域と右側領域を含む分割領域が設定される場合において、
前記表示制御部は、
前記車両が曲がっている道路を走行することに伴い、前記曲がっている道路の沿線に位置する前記対象物、又は前記沿線の近傍に位置する対象物についての前記POI表示が、前記車両の旋回方向とは逆の向きに移動し、前記POI表示が前記左側領域から前記右側領域へと移動する、又は、前記右側領域から左側領域へと移動すると推定される場合に、前記横断条件を満たすと判定する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記曲がっている道路の沿線は、前記車両の乗員から見て、前記曲がっている道路の外側の沿線である、
請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、
前記誘目性変更処理を実施する場合において、
前記POI表示の輝度の低下、又は前記POI表示の非表示、
及び、
前記POI表示のサイズの縮小、
及び、
前記POI表示における少なくとも一色の色の変更、
及び、
前記POI表示が、下地部分である第1の部分と、前記下地部分の上に表示される文字、図形、記号の少なくとも1つを含む第2の部分とを有する場合に、前記第1の部分と第2の部分とのコントラストの低下、
及び、
前記POI表示の表示態様の変更、
の少なくとも1つを含む、前記POI表示についての視認性変更処理を実施する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの表示部は、前記POI表示を第1、第2の領域に選択的に表示することが可能であり、
かつ、前記車両の高さ方向を上下方向とするとき、前記第2の領域は、前記乗員から見て、前記第1の領域よりも上側、又は下側に位置すると共に、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも、前記車両の乗員による車両外の実景の視認に与える影響が小さい場合において、
前記表示制御部は、
前記誘目性変更処理を実施しない場合は、前記POI表示を前記第1の領域に表示し、
前記誘目性変更処理を実施する場合は、前記POI表示を前記第2の領域に表示する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、
前記誘目性変更処理を実施する場合において、
前記POI表示の輝度の低下、又は前記POI表示の非表示、
及び、
前記POI表示のサイズの縮小、
及び、
前記POI表示における少なくとも一色の色の変更、
及び、
前記POI表示が、下地部分である第1の部分と、前記下地部分の上に表示される文字、図形、記号の少なくとも1つを含む第2の部分とを有する場合に、前記第1の部分と第2の部分とのコントラストの低下、
及び、
前記POI表示の表示態様の変更、
及び、
前記POI表示の、前記車両の幅方向である左右方向における移動距離の制限、
の少なくとも1つを含む、前記POI表示についての視認性変更処理を実施する、
請求項6に記載の表示制御装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、
前記誘目性変更処理の度合いを、前記乗員が搭乗している前記車両が手動運転モードであるか、運転支援モードあるいは自動運転モードであるかに応じて異ならせる、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、
前記対象物が、目的地として設定されていない場合は、前記横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合には、前記誘目性変更処理を実施させ、
前記対象物が、目的地として設定されている場合は、前記横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合であっても、前記誘目性変更処理を実施させない、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、
前記対象物が、目的地として設定されていない場合は、前記横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合には、前記誘目性変更処理を実施させ、
前記対象物が、目的地として設定されている場合は、前記横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合は、目的地として設定されている前記対象物についてのPOI表示について、視認性を上昇させる変化を伴う表示制御を実施する、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項11】
前記車両に搭載されると共に、請求項1乃至10の何れか1項に記載の表示制御装置と、前記画像の表示光を被投影部材に投影することで前記画像を表示する表示部と、を有する、
又は、
前記車両に搭載されるとともに、請求項1乃至10の何れか1項に記載の表示制御装置と、前記乗員の頭部に装着するヘッドマウントディスプレイと、を有する、
表示システム。
【請求項12】
車両に搭載され、少なくとも1つの表示部を備える表示装置の、前記車両の周囲の情報に関する画像の表示を制御する表示制御方法であって、
前記車両の周囲にある対象物に関する情報であるPOI情報を取得するステップと、
前記POI情報に基づいて、前記対象物についての画像であるPOI表示を生成するステップと、
前記車両の走行中において、前記POI表示が、時間の経過と共に、そのPOI表示の表示領域内を、前記乗員から見て左右方向に横切るように移動する、という条件である横断条件を満たすか否かを判定するステップと、
前記横断条件を満たすと判定された場合に、前記POI表示の誘目性を抑制する処理である誘目性変更処理を実施させるステップと、
を含む表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される表示制御装置、表示システム、及び表示制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置等を用いて、ウインドシールド越しに沿線の建物の名前や飲食店の名前のような、車両の乗員にとって興味や関心を惹きそうな地点(Point Of Interest:POI)の関連情報を、POI表示として実景の対応する地点に重畳させて表示することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、例えば車両がカーブを曲がる際に、ナビゲーション用の矢印の虚像を非表示とし、運転者の前方の実景の視認性を改善することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6987208号公報
【特許文献2】特開2022-44136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、車両がカーブを走行しており、そのカーブの途中にPOI表示の対象となる建物や店舗等がある場合を想定する。
例えば、車両が左カーブを曲がるときに、上記の建物や店舗等が道路の外側の沿線、又は沿線の近傍に位置しているとすると、車両が左に曲がっている途中では、乗員(運転者等)の視界も左方向へと旋回し、この視界の左方向への旋回に伴い、上記の建物や店舗等は相対的に、左から右に、道路の外側の端に沿って移動する。
言い換えれば、車両の乗員(運転者等)には、上記の建物や店舗等は、車両の旋回方向とは反対方向に、道路の外側の端に沿って移動するように見える。
【0006】
POI表示が、上記の建物や店舗等に重畳(表示の一部の重畳を含む)されるように表示される、あるいは、上記の建物や店舗等の近傍に表示されるとすると、POI表示も、上記の建物や店舗等の相対的な移動に追従して移動する。言い換えると、乗員には、そのPOI表示は、乗員の視界を横切るように左右方向に沿って移動するように見える。
【0007】
乗員は、交通安全上、カーブを曲がり切った先の道路の状況や周囲の状況をいち早く確認しなければならない。但し、上記のように、HUD装置等による表示が、車両の旋回方向とは反対の方向に移動しているように見えると、その表示に誘目され、その結果として道路や周囲の状況の確認に遅延等が生じる場合があり得る。また、乗員が、視覚的な煩わしさを覚える場合もあり得る。
【0008】
上記の特許文献1、2には、この課題については何ら記載がなく、その対策についても言及されていない。
【0009】
本発明は、車両が道路を曲がる場合に、車両の旋回方向とは逆の方向に移動するように見える画像(例えばPOI表示)に起因する、乗員の前方確認の遅延や視覚的な煩わしさ等を抑制することが可能な表示制御装置等を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0012】
本発明の第1の態様において、表示制御装置は、車両に搭載された周囲の情報に関連する1つ、又は複数の画像の表示を制御する表示制御装置であって、前記車両の位置を取得する車両位置情報取得部と、地図情報を取得する地図情報取得部と、前記車両の周囲にある対象物に関する情報であるPOI情報を取得するPOI情報取得部と、前記POI情報取得部から得られた情報を基に、前記対象物を表す画像であるPOI表示を生成するPOI表示生成部と、前記POI表示を、前記対象物に重畳して見えるように表示させる、又は前記対象物の近傍に表示させることが可能な少なくとも1つの表示部と、前記車両の走行中において、前記POI表示が、時間の経過と共に前記表示部の表示領域内を横切るように移動する、という条件である横断条件を満たすか否かを判定する横断判定部と、前記横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合において、前記表示部の表示領域内を横切るように移動する前記POI表示の誘目性を抑制する処理である誘目性変更処理を実施させる表示制御部と、を有する。
【0013】
第1の態様によれば、例えば、車両がカーブを曲がる際に、車両の旋回方向とは逆の向きに移動するPOI表示によって、乗員の目が誘導されることを抑制することができる。
よって、乗員が道路や周囲の状況を確認することに関して支障がなくなり、また、乗員が、視覚的な煩わしさを覚えることも抑制され得る。
【0014】
第1の態様に従属する第2の態様において、前記表示制御部は、前記車両が曲がっている道路を走行することに伴い、前記曲がっている道路の沿線に位置する前記対象物、又は前記沿線の近傍に位置する対象物についての前記POI表示が、前記車両の旋回方向とは逆の向きに移動すると推定される場合に、前記横断条件を満たすと判定してもよい。
【0015】
第2の態様では、横断条件を満たすか否かの判定に際し、例えば、車両が曲がっている道路を走行すること、その曲がっている道路の沿線、又は沿線の近傍にPOI表示の対象物が存在すること、及び、車両の旋回に伴い、そのPOI表示が、車両の旋回方向とは逆の向きに(例えば、車両が左に旋回するときは左から右に)移動すること、を条件としてもよい。
これらの条件を満たすか否かは、車両がカーブに差し掛かる前に、例えば地図情報やPOI情報等に基づいて事前に推定することが可能である。
【0016】
この場合は、車両に搭乗している乗員(運転者等)の視界を、POI表示が横切って移動すると予測されることから、POI表示の誘目性を低下させることで、乗員の目が誘導されることを抑制することが可能である。
【0017】
第1の態様に従属する第3の態様において、前記少なくとも1つの表示部は、前記POI表示を表示領域上に表示すると共に、前記表示領域を、乗員から見て、前記車両の幅方向である左右方向において複数に分割することで、隣接する左側領域と右側領域を含む分割領域が設定される場合において、前記表示制御部は、前記車両が曲がっている道路を走行することに伴い、前記曲がっている道路の沿線に位置する前記対象物、又は前記沿線の近傍に位置する対象物についての前記POI表示が、前記車両の旋回方向とは逆の向きに移動し、前記POI表示が前記左側領域から前記右側領域へと移動する、又は、前記右側領域から左側領域へと移動すると推定される場合に、前記横断条件を満たすと判定してもよい。
【0018】
第3の態様では、横断条件を満たすか否かの判定に際し、例えば、車両が曲がっている道路を走行すること、その曲がっている道路の沿線、又は沿線の近傍にPOI表示の対象物が存在すること、車両の旋回に伴い、そのPOI表示が、車両の旋回方向とは逆の向きに(例えば、車両が左に旋回するときは左から右に)移動すること、に加えて、さらに、表示領域に設定される左右方向に隣接する左側領域、及び右側領域において、POI表示が左側領域から右側領域に移動すること、あるいは右側領域から左側領域に移動することを条件としてもよい。
【0019】
これにより、POI表示が表領域内を横断するか否かを、客観的な基準に基づいて、より正確に判定することができる。
【0020】
第2、又は第3の態様に従属する第4の態様において、前記曲がっている道路の沿線は、前記車両の乗員から見て、前記曲がっている道路の外側の沿線であってもよい。
【0021】
第4の態様では、横断条件を満たすか否かの判定に際して、POI表示の対象となる対象物が、乗員から見て、曲がっている道路の外側の沿線に位置することを条件としてもよい。
【0022】
道路の外側は、例えば道路の曲がりの程度を曲率半径で表す場合に、曲率半径が大きい側ということができる。道路の外側の沿線、あるいは沿線の近傍に位置する対象物は、車両の旋回に伴い、相対的に大回りで緩やかに移動するため、乗員の視界の範囲内にとどまる時間が長くなり、乗員の視界を横切るように移動する可能性が高い。
よって、曲がっている道路の外側の沿線、あるいは沿線の近傍の対象物に着目して横断条件の判定を行うことで、的確な判定を行える可能性が高まる。
但し、大きな蛇行が連続する道路等では、道路の内側の沿線に位置する対象物についてのPOI表示も、誘目性変更処理の対象となる場合が想定され得る。
【0023】
第1乃至第4の何れか1つの態様に従属する第5の態様において、前記表示制御部は、前記誘目性変更処理を実施する場合において、前記POI表示の輝度の低下、又は前記POI表示の非表示、及び、前記POI表示のサイズの縮小、及び、前記POI表示における少なくとも一色の色の変更、及び、前記POI表示が、下地部分である第1の部分と、前記下地部分の上に表示される文字、図形、記号の少なくとも1つを含む第2の部分とを有する場合に、前記第1の部分と第2の部分とのコントラストの低下、及び、前記POI表示の表示態様の変更、の少なくとも1つを含む、前記POI表示についての視認性変更処理を実施してもよい。
【0024】
第5の態様では、誘目性変更処理を実施する際に、POI表示の視認性を低下させる視認性変更処理(視認性低下処理)を実施する。
【0025】
視認性は、注意を向けて対象を探したときに発見されやすいのかどうかの度合いを示す。一方、誘目性は人の目を引き付ける度合いであり、具体的には、注意を向けてない対象の発見されやすさのことである。
カーブを曲がる際には、乗員(運転者等)は、カーブを曲がった先の道路状況や周囲環境等に注意を払うべきであり、POI表示には注意は向けられないのが通常である。但し、そのPOI表示の視認性が高い場合、そのPOI表示が車両の旋回方向とは逆の方向に相対的に移動すると、そのPOI表示の移動が乗員の目にとまり、乗員の視線が誘導される傾向が生じる。
したがって、POI表示の誘目の度合い(言い換えれば誘目性)を低下させるためには、POI表示自体の視認性を低下させて、POI表示が目立たないようにすることが有効である。
【0026】
そこで、本態様では、POI表示について、輝度の低下、又は非表示、サイズ(大きさ)の縮小、色の変更(例えば膨張色から収縮色への変更)、POI表示の構成要素間のコントラスト(明度差)の低下、表示態様の変更(例えば、人目を引きやすい特殊な外観形状から、ありふれた外観形状への変更)等の少なくとも1つを実施することで、視認性を低下させる。
これによって、POI表示の誘目性を効果的に低減することができる。
【0027】
1乃至第4の何れか1つの態様に従属する第6の態様において、前記少なくとも1つの表示部は、前記POI表示を第1、第2の領域に選択的に表示することが可能であり、かつ、前記車両の高さ方向を上下方向とするとき、前記第2の領域は、前記乗員から見て、前記第1の領域よりも上側、又は下側に位置すると共に、前記第2の領域は、前記第1の領域よりも、前記車両の乗員による車両外の実景の視認に与える影響が小さい場合において、前記表示制御部は、前記誘目性変更処理を実施しない場合は、前記POI表示を前記第1の領域に表示し、前記誘目性変更処理を実施する場合は、前記POI表示を前記第2の領域に表示してもよい。
【0028】
第6の態様では、表示領域として第1の領域と、第1の領域の位置よりも上側、又は下側に位置する(少なくとも一部が上側、又は下側に位置する場合を含む)と共に、第1の領域よりも実景の視認に与える影響が小さい第2の領域とを設け、誘目性変更処理を実施する場合は、第2の領域にPOI表示を表示する。
周囲の実景の視認に与える影響が小さい第2の領域を、POI表示の表示領域として使用することで、そのPOI表示は、周囲(前方等)に注意を向けている乗員の目を引く度合いが低減される。これによって、POI表示の誘目性を効果的に低減することができる。
【0029】
第6の態様に従属する第7の態様において、前記表示制御部は、前記誘目性変更処理を実施する場合において、前記POI表示の輝度の低下、又は前記POI表示の非表示、及び、前記POI表示のサイズの縮小、及び、前記POI表示における少なくとも一色の色の変更、及び、前記POI表示が、下地部分である第1の部分と、前記下地部分の上に表示される文字、図形、記号の少なくとも1つを含む第2の部分とを有する場合に、前記第1の部分と第2の部分とのコントラストの低下、及び、前記POI表示の表示態様の変更、及び、前記POI表示の、前記車両の幅方向である左右方向における移動距離の制限、の少なくとも1つを含む、前記POI表示についての視認性変更処理を実施してもよい。
【0030】
第7の態様では、先に説明した第6の態様の誘目性変更処理を実施する場合に、先に第5の態様で説明した視認性変更処理(視認性低下処理)と同様の処理も併せて実施する。但し、第7の態様では、視認性変更処理の具体例として、「POI表示の、車両の幅方向である左右方向における移動距離の制限」が追加されている。
【0031】
先に説明した第6の態様では、誘目性変更処理を実施する場合は、POI表示が実景としての対象物から離れて第2の領域に表示されることから、実際の対象物の位置による制限が緩和されて、POI表示の表示位置の自由度が増す。この点に着目し、POI表示の移動距離(移動幅)を規制し、短縮することで視認性(これは誘目性ということもできる)を低下させることができる。
第7の態様によれば、POI表示の誘目性を、さらに効果的に低減することができる。
【0032】
第1乃至第7の何れか1つの態様に従属する第8の態様において、前記表示制御部は、前記誘目性変更処理の度合いを、前記乗員が搭乗している前記車両が手動運転モードであるか、運転支援モードあるいは自動運転モードであるかに応じて異ならせてもよい。
【0033】
第8の態様では、運転モードに対応させて、誘目性変更の度合いを適宜、異ならせてもよい。例えば、手動運転モードでは乗員の運転の負担が重いため、POI表示の誘目性をより大きく低下させることが想定され得る。
一方、運転支援モードではその負担が軽減され、自動運転モードでは負担がさらに軽減されることに着目し、負担の軽減度合が大きいほど、誘目性変更の程度を小さくする、とった表示制御を実施してもよい。
これによって、運転モードに応じた、適切な誘目性変更制御(言い換えれば、視認性変更制御)を実施することができる。
【0034】
第1の態様に従属する第9の態様において、前記表示制御部は、前記対象物が、目的地として設定されていない場合は、前記横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合には、前記誘目性変更処理を実施させ、前記対象物が、目的地として設定されている場合は、前記横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合であっても、前記誘目性変更処理を実施させないようにしてもよい。
【0035】
第9の態様によれば、非目的地の対象物についてのPOI表示は誘目性が抑制(低下)され、よって乗員の目が誘導されることが抑制され、一方、目的地の対象物についてのPOI表示については、誘目性変更処理は実施されない。よって、目的地の対象物のPOI表示については、少なくとも通常の視認性は確保され、乗員は、目的地である対象物を明確に視認でき、よって、その対象物を見逃したり、あるいは、車両の操作が間に合わず、その対象物を通過したりすることが防止される。
【0036】
第1の態様に従属する第10の態様において、前記表示制御部は、前記対象物が、目的地として設定されていない場合は、前記横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合には、前記誘目性変更処理を実施させ、前記対象物が、目的地として設定されている場合は、前記横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合は、目的地として設定されている前記対象物についてのPOI表示について、視認性を上昇させる変化を伴う表示制御を実施してもよい。
【0037】
第10の態様によれば、非目的地の対象物のPOI表示については、誘目性を低下させて、乗員の目が誘導されることを抑制でき、一方、目的地の対象物のPOI表示については、視認性を上昇させる変化を伴う表示制御が実施され、これによって、乗員が目的地である対象物を明確に視認できるようになり、その対象物を見逃したり、あるいは、車両の操作が間に合わず、その対象物を通過したりすることが防止される。
【0038】
第11態様において、表示システムは、前記車両に搭載されると共に、第1乃至第10の何れか1つの態様の表示制御装置と、前記画像の表示光を被投影部材に投影することで前記画像を表示する表示部と、を有する、又は、前記車両に搭載されるとともに、第1乃至第10の何れか1つの態様の表示制御装置と、前記乗員の頭部に装着するヘッドマウントディスプレイと、を有する。
【0039】
第11の態様によれば、車両がカーブを曲がる際に、POI表示の視覚を横切るような移動によって乗員の目が誘導されることや、乗員が視覚的な煩わしさを覚えること等を、効果的に抑制することができる表示システムを実現することができる。
【0040】
第12の態様において、表示制御方法は、車両に搭載され、少なくとも1つの表示部を備える表示装置の、前記車両の周囲の情報に関する画像の表示を制御する表示制御方法であって、前記車両の周囲にある対象物に関する情報であるPOI情報を取得するステップと、前記POI情報に基づいて、前記対象物についての画像であるPOI表示を生成するステップと、前記車両の走行中において、前記POI表示が、時間の経過と共に、そのPOI表示の表示領域内を、前記乗員から見て左右方向に横切るように移動する、という条件である横断条件を満たすか否かを判定するステップと、前記横断条件を満たすと判定された場合に、前記POI表示の誘目性を抑制する処理である誘目性変更処理を実施させるステップと、を含む。
【0041】
第12の態様によれば、車両がカーブを曲がる際に、POI表示の視覚を横切るような移動によって乗員の目が誘導されることや、乗員が視覚的な煩わしさを覚えること等を、効果的に抑制することができる表示制御方法を実現することができる。
【0042】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、投影表示部(ここではHUD装置)と実像表示型の表示部(CIDやICD等)とを有する、POI情報の表示が可能な表示システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2(A)、(B)は、
図1に示される表示システムにおける、各表示部の配置例、ならびに構成例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、眼鏡型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、車両が左カーブを曲がるときに、道路の外側の沿線に位置する対象物についてのPOI表示が、車両の旋回方向とは反対方向に移動する例を平面視で示す図である。
【
図5】
図5は、車両が
図4の例のように左カーブを走行する際の、乗員から見た場合のPOI表示の移動の様子を示す図である。
【
図6】
図6は、誘目性変更処理(視認性変更処理)の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、投影表示部(ここではHUD装置)と実像表示型の表示部(CIDやICD等)とを有する、POI情報の表示が可能な表示システムの構成の他の例を示す図である。
【
図8】
図8は、誘目性変更処理(視認性変更処理)の他の例を示す図である。
【
図9】
図9は、誘目性変更処理(視認性変更処理)のさらに他の例を示す図である。
【
図10】
図10は、誘目性変更処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、目的地である対象物についてのPOI表示の表示制御の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、目的地である対象物についてのPOI表示の表示制御の他の例を示す図である。
【
図13】
図13は、目的地である対象物についてのPOI表示の表示制御のさらに他の例を示す図である。
【
図14】
図14は、目的地である対象物についてのPOI表示の表示制御のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0045】
(第1の実施形態)
図1を参照する。
図1は、投影表示装置(ここではHUD装置)と実像表示型の表示装置(CIDやICD等)とを有する、POI情報の表示が可能な表示システムの構成の一例を示す図である。
【0046】
なお、
図1において、車両(移動体)1の幅方向を左右方向(あるいは横方向:X方向)とし、左右方向に直交すると共に、地面又は地面に相当する面(ここでは路面40とする)に直交する線分に沿う方向を上下方向(あるいは高さ方向:Y方向)とし、左右方向及び上下方向の各々に直交する線分に沿う方向(車両1の前進及び後退の向きを示す方向)を前後方向(Z方向)とする。正のZ方向を前方、負のZ方向を後方とする。この点は、他の図面においても同様である。
【0047】
図1に示される、車両(自車両)1に備わる表示システム(車載表示システム)100は、ダッシュボード41に収納されているヘッドアップディスプレイ(HUD)装置102と、ウインドシールドディスプレイ(WSD)104と、センターインフォメーションディスプレイ(CID)120と、乗員5の正面に位置する計器クラスタディスプレイ(ICD)130と、を有する。HUD、WSD、CID、ICDは各々、独立した表示部を構成する。
【0048】
また、これらの表示部を構成要素として表示装置(表示システム)が構成される。この表示装置における車両1の周囲の情報に関する画像の表示が表示制御装置200によって制御される。
【0049】
なお、CID120とICD130は共に、ステアリングホイール4を操作して車両1を運転中の運転者(乗員)5の視界内にあり、運転者5は、目線(視線)を少し変更することで、CID120やICD130に表示されている表示コンテンツ(例えば、ナビゲーション用の地図等)を見ることができる。
【0050】
HUD装置102、WSD装置104は共に投影表示装置であり、車両1に備わる被投影部材としてのウインドシールド2に画像(あるいは画像の表示光)を投影し、運転者(乗員)5から所定距離(虚像表示距離)だけ離れた位置において設定される仮想的な面である虚像表示面(虚像表示領域:
図2の符号PS1を参照)上において、実景の対象物α、βの各々に重畳されるように、あるいはその近傍に、虚像であるPOI表示ARa、ARbの各々を表示することができる。なお、被投影部材は、スクリーン等であってもよい。
【0051】
また、HUD装置102は、基本的には凹面鏡等の光学系を介して被投影部材に画像を投影する。WSD装置104は、光学系を有さず、ディスプレイに表示された画像を直接的に被投影部材に投影する直接投影表示装置である。なお、広義には、WSDもHUDの一種とみることができる。
【0052】
また、HUD、WSDは共に、虚像を表示する虚像表示装置ということもできる。なお、各表示部の概念は広く解釈するものとする。例えば、車内において、例えばステアリングホイール等に表示光を照射して情報を提示する機能をもつ車内プロジェクタも投影表示装置に含めることができる。
【0053】
また、CID、ICDは共に、表示面(表示領域)に実像を表示する実像表示型の表示部(実像表示型の表示装置)であり、典型的には液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイが該当する。
【0054】
図1の例では、HUD装置102の表示面(表示領域)には、対象物に対する重畳表示が可能な表示領域である第1の領域DZ1が設定される。また、
図1の例では、WSD装置104の表示面(表示領域)に、例えば車速表示SP(ここでは「30km/h」という表示)のような車両情報を表示可能な領域DZsが設定される。領域DZsは、例えば、対象物への重畳が想定されない画像の表示領域として使用でき、この場合、領域DZsは非重畳表示領域と称することができる。
【0055】
表示制御装置200は、表示装置制御部201と、表示制御部203と、情報取得部207と、蓄積部(ストレージ)209と、を有する。
【0056】
表示装置制御部201は、CID制御部141と、ICD制御部143と、WSD制御部159と、HUD制御部160と、を有する。
【0057】
表示制御部203は、対象物についての画像であるPOI表示を生成するPOI表示生成部202と、車両1の走行中においてPOI表示が、表示面(表示領域)内を横切るように移動する(言い換えれば、例えば乗員5の視界を横切るように左右方向に移動する)か否かを判定する横断判定部204と、横断判定部204によって横断が生じると判定(推定)された場合に、POI表示の移動に伴う誘目性を低下させる誘目性変更処理(あるいは誘目性低下処理)を実施する誘目性変更処理部(あるいは誘目性低下処理部)205と、を有する。
図1の例では、誘目性変更処理部205は、POI表示自体の視認性を低下させる処理を実施する視認性変更処理部(あるいは視認性低下処理部)206と、を有する。
【0058】
また、情報取得部207は、各種の情報を取得し、取得した情報を、表示制御部203に提供する。
【0059】
情報取得部207は、ECU(電子制御ユニット)222から、自車両1の状態を示す各種の情報(例えば車速情報を含む)を取得することができ、また、アンテナANを備える通信部(GPS通信部や車車間通信部等を含むことができる)220から、例えば、自車両1の現在の位置情報や、周囲環境に関する最新の情報等を取得することができる。また、情報取得部207は、ナビゲーション装置231から、車両1の周囲の地図情報(POI情報を含む)等を取得することができる。
【0060】
また、蓄積部(ストレージ)209には、POI保存情報211と、行動履歴情報213等が保存(蓄積)されている。
【0061】
ナビゲーション装置231は、記憶部232と、表示データベース245と、を有する。記憶部232には、POI情報233と、自車位置情報243とが記憶されている。また、POI情報233には、対象物の位置情報と、この対象物に対応付けられている付帯情報とが含まれる。
【0062】
次に、
図2を参照する。
図2(A)、(B)は、
図1に示される表示システムにおける、各表示部の配置例、ならびに構成例を示す断面図である。
図2において、
図1と共通する部分には同じ符号を付している。
【0063】
図2(A)に示される表示システム(車載表示システム)100は、HUD装置102と、WSD(ウインドシールドディスプレイ)装置104とを有する。
【0064】
HUD装置102は、ダッシュボード41内に収容されている。HUD装置102は、筐体103と、画像の表示光を出射する光源部151と、光学系を構成する凹面鏡(曲面鏡)170を有する。凹面鏡170は、被投影部材としてのウインドシールド2に、画像(画像の表示光)を投影する。なお、被投影部材はスクリーン等であってもよい。
【0065】
HUD装置102の表示光の一部はウインドシールド2で反射されて運転者(乗員)5の目(視点)3に入射され、この結果として、虚像表示面(虚像表示領域)PS1上に虚像V1が表示される。先に説明した
図1では、この虚像表示面PS1上に、第1の領域DZ1が設定される。
【0066】
なお、凹面鏡170における曲率を均等にせず、例えば高い曲率の領域、中程度の曲率の領域、低い曲率の領域等を適宜、設定することで、虚像表示面を、傾斜面(例えば湾曲形状の傾斜面)とすることができ、奥行き感のある表示が可能となる。
【0067】
WSD装置104は、表示器152の表示面に表示される画像の表示光を、光学系を介さずに、直接的に被投影部材(ウインドシールド)2に投影する投影表示装置である。WSD装置104によって、虚像表示面(虚像表示領域)PS2上に、虚像V2が表示される。先に示した
図1では、この虚像表示面(虚像表示領域)PS2上に、車速表示SP等が表示される領域DZsが設定される。
【0068】
また、
図2(B)に示される表示システム(車載表示システム)100は、HUD装置102と、表示器装置(CID120及びICD130)と、を含む。
【0069】
表示器装置を構成するCID120やICD130は、例えば液晶パネルで構成され得る。これらはダッシュボード41の外側に設置される。液晶パネルの表示面SU上に実像J1が表示される。先に
図1に示した車速表示SPは、表示面SU上に表示してもよい。
【0070】
また、後述する
図7~
図9の例では、第2の領域DZ2が設定される。この第2の領域DZ2は、好ましい態様では
図2(A)の表示面PS1上に表示する。但し、第2の領域DZ2は、表示面SU上に表示することも可能である。
【0071】
次に、
図3を参照する。
図3は、眼鏡型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の構成の一例を示す図である。
【0072】
本実施形態では、先に説明したHUD装置102に代えて、あるいは、HUD装置102と共に、例えば
図3に示されるようなヘッドマウントディスプレイ(HMD)装置を使用してもよい。HMD装置は投射表示装置の一種である。
【0073】
図3のA-1に示されるように、眼鏡型のHMD装置300は、一対の眼鏡レンズ53a、53bと、各レンズを保持するレンズフレーム52a、52bと、レンズフレーム52a、52bの外縁部から後方に延びる一対のテンプル51a、51bと、を備える。
【0074】
図3のA-2に示されるように、一対の眼鏡レンズ53a、53bの目(視点)3(具体的には、眼球33a、33bの瞳孔80a、80b)に対向する面には、画像の表示光(レーザー光)を反射する、波長選択性をもつホログラムミラー70a、70bが設けられている。
【0075】
ホログラムミラー70a、70bは波長選択性を有しており、レーザー光の波長のみを反射する。その結果、乗員5は、車外の実景と、レーザー光によって描かれる画像の双方を同時に視認することが可能である。ホログラムミラー70a、70bで偏向された表示光は、人の目3の網膜に結像して画像を形成する。
【0076】
一対のテンプル51a、51bには、その内部に、上記の表示光(例えばレーザ光)を出射する光源部62a、62bと、表示光を走査する走査部63a、63bと、各部を制御するHMD用の制御部61a、61bが設けられている。
図3の構造は一例であり、この構造に限定されるものではない。
【0077】
次に、
図4を参照する。
図4は、車両が左カーブを曲がるときに、道路の外側の沿線に位置する対象物についてのPOI表示が、車両の旋回方向とは反対方向に移動する例を平面視で示す図である。
図4において、
図1と共通する部分には同じ符号を付している。
【0078】
図4のA-1において、車両1は、走行中の道路40における左カーブ(左に曲がる箇所)CRに差し掛かっている。図中、符号300は、車両1における乗員5の視界範囲を示す。POI表示の対象となる対象物γは、左カーブCRの外側の沿線領域(沿線の近傍を含む)CNに位置しており、車両1が左に曲がることに伴い、対象物γは、沿線領域CNに沿って、車両1の旋回方向とは反対側に(言い換えれば、左から右に)移動する。
【0079】
POI表示ARcは、その対象物γに重畳されるように表示(あるいは、その近傍に表示)されることから、対象物γの相対的な移動に追従して、POI表示ARcも、左右方向に沿って左から右へと移動する。図中、この移動を破線の矢印で示している。
【0080】
時間経過と共に、車両1は、時間経過と共に
図4のA-2、A-3、A-4の順に、左カーブCRを曲がりながら進行する。
図4のA-2では、POI表示ARcは視界範囲300の左側に位置しており、
図4のA-3では中央に位置しており、
図4のA-4では右側に位置している。このように、時間経過と共に、POI表示ARcは、乗員5の視界を左右に横切るように(言い換えれば横断するように)移動する。
【0081】
このPOI表示ARcの、左右方向における、車両1の旋回方向とは逆向きの移動に伴う誘目性によって、乗員5の目が車両1の旋回方向とは逆側に誘導される場合が想定され得る。この場合は、乗員5の、左カーブを曲がり切った先の道路や周囲の状況の確認が遅延する等の不都合が生じる可能性があるのは否めない。
【0082】
そこで、
図1に示した横断判定部204が、POI表示ARcが、時間の経過と共に表示部の表示領域内を横切るように移動するか否か、言い換えれば、横断条件を満たすか否かを判定し、満たすと判定される場合に、誘目性変更処理部205が、移動するPOI表示ARcにより生じる誘目性を低下させる誘目性変更処理を実施する。
【0083】
これによって、車両がカーブを曲がる際に、車両の旋回方向とは逆の向きに移動するPOI表示によって、乗員の目が誘導されることを抑制することができる。よって、乗員が道路や周囲の状況を確認することに関して支障がなくなり、また、乗員が、視覚的な煩わしさを覚えることも抑制され得る。誘目性変更処理の詳細については後述する。
【0084】
また、横断判定部204による横断条件を満たすか否かの判定に際し、例えば、車両1が曲がっている道路を走行すること、その曲がっている道路の沿線CN、又は沿線CNの近傍にPOI表示の対象物γが存在すること、及び、車両1の旋回に伴い、そのPOI表示が、車両1の旋回方向とは逆の向きに(例えば、車両が左に旋回するときは左から右に)移動すること、を条件としてもよい。
【0085】
言い換えれば、
図4のA-2~A-4に示されるように、POI表示ARcは、車両1に搭乗している乗員(運転者等)5の視界(視界範囲300内)を横切るように移動すると予測される場合に、横断条件を満たすと判定されてもよい。
【0086】
また、
図4の例では、POI表示が付される対象物が、道路の外側の沿線に位置している。道路の外側は、例えば道路の曲がりの程度を曲率半径で表す場合に、曲率半径が大きい側ということができる。道路の外側の沿線、あるいは沿線の近傍に位置する対象物は、車両の旋回に伴い、相対的に大回りで緩やかに移動するため、乗員の視界の範囲内にとどまる時間が長くなり、乗員の視界を横切るように移動する可能性が高い。
【0087】
よって、曲がっている道路の外側の沿線、あるいは沿線の近傍の対象物に着目して横断条件の判定を行うことで、的確な判定を行える可能性が高まる。このように、横断条件を満たすか否かの判定に際して、POI表示の対象となる対象物が、乗員から見て、曲がっている道路の外側の沿線に位置することを条件としてもよい。
【0088】
但し、対象物は、道路の外側の沿線に位置するものに限定されない。例えば、大きな蛇行が連続する道路等では、道路の内側の沿線に位置する対象物も、乗員の視界を横切るように移動する場合があり得る。このような場合は、道路の内側の沿線に位置する(あるいは、その近傍に位置する)対象物も、誘目性変更処理の対象となり得る。
【0089】
次に、
図5を参照する。
図5は、車両が
図4の例のように左カーブを走行する際の、乗員から見た場合のPOI表示の移動の様子を示す図である。
図5において、前掲の図と共通する部分には同じ符号を付している。
【0090】
図5のA-1に示されるように、車両1は、左カーブCRに差し掛かろうとしている。乗員5の前方の道路の外側(かつ乗員5から見て左側)に、POI表示が付される対象物γが位置する。
【0091】
また、
図5のA-1に示されるように、表示部としてのHUD装置102の表示面(表示領域)には、第1の領域DZ1が設定されている。この第1の領域DZ1は、乗員5から見て、車両1の幅方向である左右方向において複数の仮想的な領域(
図5の例では2つの領域であるが、3以上の領域であってもよい)に分割される。
図5の例では、第1の領域DZ1には、隣接する左側領域ZL、右側領域ZR(これらを分割領域と称することができる)が設定されている。
【0092】
この仮想的な左側領域(分割領域)ZLと、仮想的な右側領域(分割領域)ZRは、POI表示が、表示部の表示面(表示領域)を横切ることを客観的に判定できるようにするために設けられている。
【0093】
なお、
図5のA-1では、左側領域ZLと右側領域ZRは、等しい大きさの領域として設定されている。但し、これに限定されるものではなく、何れか一方を、何れか他方よりも大きく設定してもよい。また、各領域の外郭形状は、長方形や正方形に限定されるものではなく、他の形状(例えば台形、ひし形、三角形等)であってもよい。
【0094】
横断判定部204は、車両1が曲がっている道路を走行すること、その曲がっている道路の沿線CN、又は沿線CNの近傍にPOI表示の対象物γが存在すること、車両1の旋回に伴い、そのPOI表示が、車両1の旋回方向とは逆の向きに(例えば、車両が左に旋回するときは左から右)移動すること、に加えて、POI表示が、左側領域から右側領域へと移動する、又は右側領域から左側領域へと移動すると推定されることを、横断条件とすることができる。
【0095】
これにより、POI表示が表領域内を横断するか否かを、客観的な基準に基づいて、より正確に判定することができる。
【0096】
図5のA-2~A-4には、対象物γについてのPOI表示ARcの、時間経過に伴う位置の移動の一例が示されている。図示されるように、POI表示ARcは、乗員5から見て、時間経過と共に左から右へと移動する。言い換えれば、乗員5の視界(視界範囲内)を左から右に横切るように移動する。
【0097】
図5のA-2では、POI表示ARcは、左側領域ZLの左上の端部付近に位置する。
図5のA-3では、POI表示ARcは、右側領域ZRの左上の端部付近に位置する。言い換えれば、
図5のA-2では左側領域ZLに位置していたPOI表示ARcは、
図5のA-3では、右側領域ZRへと移動している。
【0098】
図5のA-4では、POI表示ARcは、右側領域ZRの右下の端部付近に位置している。このように、時間の経過と共に、POI表示ARcは、第1の表示領域DZ1内において、左右方向に沿って左から右へと移動する。この移動の際、POI表示ARcは、左側領域ZLから右側領域ZRへと移行されることから、横断条件を満たすと判定され得る。
【0099】
なお、上記の例では、POI表示ARcが、左側領域ZLから右側領域ZRに移動しているが、この逆でもよい。また、POI表示ARcが、左側領域ZLから右側領域ZRに移動した後、再び、左側領域ZLに移行する場合も横断条件を満たすと判定され得る。また、POI表示が例えば、当初は左側領域ZLの外に位置し、時間経過と共に左側領域ZL内に移行し、さらに、右側領域ZRに移行し、さらに右側領域ZRの外に出るように移動するという場合もあり得る。この場合も横断条件を満たすと判定され得る。
【0100】
なお、「横断」という用語については柔軟に判断されるものとし、POI表示の移動によって乗員の目が誘導され得るか否かという観点から広く解釈されるのが好ましい。
【0101】
次に、
図6を参照する。
図6は、誘目性変更処理(視認性変更処理)の一例を示す図である。
図6において、
図5と共通する部分には同じ符号を付している。
【0102】
図6のA-1~A-3では、対象物γ、及びPOI表示ARcの、時刻t1~t4の各々における位置が示されている。言い換えれば、対象物γ、及びPOI表示ARcの、時間経過に伴う位置の移動の様子が示されている。なお、時刻t1には、POI表示ARcは表示されていない。
【0103】
図6のA-1に示されるように、時刻t2~t4において、POI表示ARcは、第1の領域(第1の表示領域)DZ1を横切るように、左から右に移動する。このPOI表示ARcの移動によって生じる誘目性によって、乗員(運転者)の目が誘導される場合がある。よって、
図6のA-2、A-3では、POI表示ARcについて、視認性変更処理(視認性低下処理)を実施する。
【0104】
視認性変更処理(視認性低下処理)は、例えば、POI表示の輝度の低下(又はPOI表示の非表示)、及び、POI表示のサイズの縮小、及び、POI表示における少なくとも一色の色の変更、及び、POI表示が、下地部分である第1の部分と、下地部分の上に表示される文字、図形、記号の少なくとも1つを含む第2の部分とを有する場合に、第1の部分と第2の部分とのコントラストの低下、及び、POI表示の表示態様の変更、の少なくとも1つを含んでもよい。
【0105】
視認性は、注意を向けて対象を探したときに発見されやすいのかどうかの度合いを示す。一方、誘目性は人の目を引き付ける度合いであり、具体的には、注意を向けてない対象の発見されやすさのことである。
【0106】
車両がカーブを曲がる際には、乗員(運転者等)は、カーブを曲がった先の道路状況や周囲環境等に注意を払うべきであり、POI表示には注意は向けられないのが通常である。但し、そのPOI表示の視認性が高い場合、そのPOI表示が車両の旋回方向とは逆の方向に相対的に移動すると、そのPOI表示の移動が乗員の目にとまり、乗員の視線が誘導される傾向が生じる。したがって、POI表示の誘目の度合い(言い換えれば誘目性)を低下させるためには、POI表示自体の視認性を低下させて、POI表示が目立たないようにすることが有効である。
【0107】
そこで、
図6のA-2、A-3では、POI表示について、上記の例示のとおり、輝度の低下、又は非表示、サイズ(大きさ)の縮小、色の変更(例えば膨張色から収縮色への変更)、POI表示の構成要素間のコントラスト(明度差)の低下、表示態様の変更(例えば、人目を引きやすい特殊な外観形状から、ありふれた外観形状への変更)等の少なくとも1つを実施することで、視認性を低下させる。これによって、POI表示の誘目性を効果的に低減することができる。
【0108】
図6のA-2では、POI表示ARcの輝度を低下させて視認性を低下させ、これによって誘目性を低下させている。輝度の低下に代えて、上記の例示のうち、他の少なくとも1つの視認性変更処理(視認性低下処理)を実施してもよい。
【0109】
図6のA-3では、POI表示ARcは、一時的に非表示状態(POI表示の輝度が低いために乗員が視認できない状態を含む)とされている。これにより、POI表示の移動によって乗員の目が誘導されることがない。
【0110】
(第2の実施形態)
次に、
図7を参照する。
図7は、投影表示部(ここではHUD装置)と実像表示型の表示部(CIDやICD等)とを有する、POI情報の表示が可能な表示システムの構成の他の例を示す図である。
図7において、
図1と共通する部分には、同じ符号を付している。
【0111】
図7は、そのほとんどが
図1と共通する。共通する部分については説明を省略する。
【0112】
但し、
図7では、画像を表示する表示領域として、第2の領域DZ2が設けられており、また、誘目性変更処理部203において、表示領域変更処理部208が追加されており、この点で、
図1とは異なる。
【0113】
第2の領域DZ2は、例えば、HUD装置102の表示領域、又はWSD装置104の表示領域に設けることができる。ここでは、HUD装置102の表示領域(言い換えれば、
図2における表示面PS1)に設けられるものとする。
【0114】
図7の例では、表示部としてのHUD装置102は、POI表示を、第1、第2の領域DZ1、DZ2に選択的に表示することが可能であり、かつ車両1の高さ方向を上下方向とするとき、第2の領域DZ2は、乗員5から見て、第1の領域DZ1よりも上側、又は下側に位置すると共に、第2の領域DZ2は、第1の領域DZ1よりも、車両1の乗員5による車両外の実景の視認に与える影響が小さい。
【0115】
表示制御部203は、誘目性変更処理を実施しない場合は、POI表示を第1の領域DZ1に表示し、誘目性変更処理を実施する場合は、POI表示を第2の領域DZ2に表示する。このような表示領域の選択(切替)制御は、表示領域変更処理部208が行う。
【0116】
周囲の実景の視認に与える影響が小さい第2の領域DZ2を、POI表示の表示領域として使用することで、そのPOI表示は、周囲(前方等)に注意を向けている乗員の目を引く度合いが低減される。これによって、POI表示の誘目性を効果的に低減することができる。
【0117】
次に、
図8を参照する。
図8は、誘目性変更処理(視認性変更処理)の他の例を示す図である。
図8は、先に説明した
図6に対応する図である。
図8のA-1は、
図6のA-1と実質的に同じである。
【0118】
図8のA-2~A-5に、誘目性変更処理(誘目性低下処理)が実施される場合の、POI表示の表示例が示される。
【0119】
図8のA-2では、表示領域として第1の領域DZ1と、第1の領域DZ1の位置よりも下側に位置する(少なくとも一部が下側に位置する場合を含む)と共に、第1の領域DZ1よりも実景の視認に与える影響が小さい第2の領域DZ2とが設けられる。
【0120】
図8のA-2では、時刻t2~t4において、POI表示ARcは、第2の領域DZ2に表示される。周囲の実景の視認に与える影響が小さい第2の領域DZ2を、POI表示ARcの表示領域として使用することで、そのPOI表示ARcは、周囲(前方等)に注意を向けている乗員1の目を引く度合いが低減される。これによって、POI表示ARcの移動により生じる誘目性を効果的に低減することができる。
【0121】
図8のA-3では、
図8のA-2の表示処理を実施する際に、さらに、視認性変更処理(視認性低下処理)を実施する。この視認性変更処理の制御は、視認性変更処理部206が行う。
【0122】
表示領域の変更処理と視認性変更処理とを併用することにより、POI表示の誘目性を、さらに効果的に低減することができる。
【0123】
図8のA-2では、POI表示ARcの輝度を低下させて視認性を低下させ、これによって誘目性を低下させている。
【0124】
また、視認性変更処理(視認性低下処理)は、先に例示したように、例えば、POI表示の輝度の低下(又はPOI表示の非表示)、及び、POI表示のサイズの縮小、及び、POI表示における少なくとも一色の色の変更、及び、POI表示が、下地部分である第1の部分と、下地部分の上に表示される文字、図形、記号の少なくとも1つを含む第2の部分とを有する場合に、第1の部分と第2の部分とのコントラストの低下、及び、POI表示の表示態様の変更、の少なくとも1つを含んでもよいが、
図8の例では、さらに、POI表示の、車両の幅方向である左右方向における移動距離の制限が、具体的な処理例として追加される。
【0125】
図8のA-2に示されるような、表示領域の変更(切替)による誘目性変更処理を実施する場合は、POI表示が、実景としての対象物から離れて第2の領域DZ2に表示されることから、実際の対象物の位置による制限が緩和されて、POI表示の表示位置の自由度が増す。この点に着目し、POI表示の移動距離(移動幅)を規制し、短縮することで視認性(これは誘目性ということもできる)を低下させることができる。POI表示の移動距離(移動幅)を規制し、短縮する処理は、
図8のA-4に記載されている。
【0126】
また、
図8のA-5では、POI表示ARcは、一時的に非表示状態(POI表示の輝度が低いために乗員が視認できない状態を含む)とされている。これにより、POI表示の移動によって乗員の目が誘導されることがない。
【0127】
次に、
図9を参照する。
図9は、誘目性変更処理(視認性変更処理)のさらに他の例を示す図である。
図9のA-1~A-5は、
図8のA-1~A-5に対応する。
【0128】
図9のA-2では、表示領域として第1の領域DZ1と、第1の領域DZ1の位置よりも上側に位置する(少なくとも一部が上側に位置する場合を含む)と共に、第1の領域DZ1よりも実景の視認に与える影響が小さい第2の領域DZ2とが設けられる。
【0129】
図8のA-2では、時刻t2~t4において、POI表示ARcは、第2の領域DZ2に表示される。周囲の実景の視認に与える影響が小さい第2の領域DZ2を、POI表示ARcの表示領域として使用することで、そのPOI表示ARcは、周囲(前方等)に注意を向けている乗員1の目を引く度合いが低減される。これによって、POI表示ARcの移動により生じる誘目性を効果的に低減することができる。
【0130】
また、
図9のA-3~A-5では、表示領域の変更処理に加えて、視認性変更処理(視認性低下処理)を実施する。
図9のA-2~A-5の表示制御により得られる効果は、先に説明した
図8のA-2~A-5の表示制御により得られる効果と同じである。
【0131】
次に、
図10を参照する。
図10は、誘目性変更処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0132】
まず、ステップS1では、自車両がカーブに差し掛かっているかが判定される。Nのときは、その判定を継続し、Yのときは、ステップS2に移行する。
【0133】
ステップS2では、横断条件を満たすか否かが判定される。Nのときは、ステップS4に移行し、Yのときは、ステップS3に移行する。
【0134】
ステップS3では、誘目性変更処理を実施する。この誘目性変更処理は、視認性変更を伴う処理であってもよく、また、表示領域の変更と視認性変更を併用する処理であってもよい。
【0135】
ステップS4では、POI表示の表示処理が実施される。ステップS5では、カーブの走行が終了したか否かが判定される。NのときはステップS2に戻り、Yのときは、誘目性変更処理を終了する。
【0136】
(第3の実施形態)
本実施形態では、運転モードに対応させて、誘目性変更の度合いを異ならせる表示制御が実施される。例えば、手動運転モードでは乗員の運転の負担が重いため、POI表示の誘目性をより大きく低下させることが想定され得る。一方、運転支援モードではその負担が軽減され、自動運転モードでは負担がさらに軽減されることに着目し、負担の軽減度合が大きいほど、誘目性変更の程度を小さくする、とった表示制御を実施してもよい。これによって、運転モードに応じた、適切な誘目性変更制御(言い換えれば、視認性変更制御)を実施することができる。
【0137】
具体的には、車両が運転支援モード、あるいは自動運転モードである場合は、例えば、POI表示の輝度を上昇させてPOI表示を見やすくしたり、あるいは、第2の領域を第1の領域に近づけて配置し、乗員が目線をそれほど大きく動かさなくても第2の領域のPOI表示を視認できるようにしてPOI表示を見やすくしたりすることを例示することができる。これにより、車両が運転支援モード、あるいは自動運転モードである場合に、POI表示についての利便性を向上させることができる。
【0138】
(第4の実施形態)
本発明は、種々、変形や応用が可能である。本実施形態では、対象物が目的地として設定されているか否かに応じて、表示制御に差を設ける変形例(応用例)の一例について説明する。
先に説明した第1~第3の実施形態では、POI表示が付される対象物が、例えば乗員(ユーザ)の機器操作等によって、目的地(目的地点、あるいは到着地点)として設定されているか否かは考慮されていない。
【0139】
本実施形態では、表示制御部203は、対象物が、目的地として設定されていない場合は、横断判定部204が横断条件を満たすと判定した場合には、第1~第3の何れかの実施形態にて説明した誘目性変更処理を実施させるが、その一方、対象物が、目的地として設定されている場合は、横断判定部204が横断条件を満たすと判定した場合であっても、誘目性変更処理を実施させない。
【0140】
ここで、
図11を参照する。
図11は、目的地である対象物についてのPOI表示の表示制御の一例を示す図である。
図11では、対象物γが目的地に設定されており、時刻t1において車両1が目的地に接近し、時刻t4において目的地に到着する。
図11においては、POI表示ARcの輝度(あるいは大きさ)は、時間経過と共に変化しない。
図11は、先に説明した
図6のA-1(誘目性変更処理をしない例)と、実質的に同じである。
【0141】
図11の表示制御によれば、非目的地の対象物についてのPOI表示は誘目性が抑制(低下)され、よって乗員の目が誘導されることが抑制され、一方、目的地の対象物についてのPOI表示については、誘目性変更処理は実施されない。よって、目的地の対象物のPOI表示については、少なくとも通常の視認性は確保され、乗員は、目的地である対象物を明確に視認でき、よって、その対象物を見逃したり、あるいは、車両の操作が間に合わず、その対象物を通過したりすることが防止される。
【0142】
次に、
図12を参照する。
図12は、目的地である対象物についてのPOI表示の表示制御の一例を示す図である。
図12のA-1では、領域DZsに、「目的地に近づきました」というナビゲーション用の文字が表示されており、また、
図12のA-4では、領域DZsに、「到着しました」というナビゲーション用の文字が表示されている。なお、このナビゲーション用の文字の表示に代えて、音声による案内を実施してもよい。
【0143】
先に説明した
図8のA-2の例では、POI表示ARcは、第2の領域DZ2に表示されていたが、
図12では、POI表示ARcは、第1の領域DZ1に表示される。言い換えれば、表示領域変更処理による誘目性(視認性)変更は実施されない。よって、目的地の対象物のPOI表示については、少なくとも通常の視認性は確保され、乗員は、目的地である対象物を明確に視認でき、よって、その対象物を見逃したり、あるいは、車両の操作が間に合わず、その対象物を通過したりすることが防止される。
【0144】
次に、
図13を参照する。
図13は、目的地である対象物についてのPOI表示の表示制御のさらに他の例を示す図である。
図13の例では、表示制御部203は、対象物が、目的地として設定されていない場合は、横断判定部が前記横断条件を満たすと判定した場合には、第1~第3の何れかの実施形態の誘目性変更処理を実施させるが、一方、対象物が目的地として設定されている場合は、横断判定部204が横断条件を満たすと判定した場合は、目的地として設定されている対象物についてのPOI表示について、視認性を上昇させる変化を伴う表示制御(言い換えれば、視認性上昇を伴う誘目性変更制御)を実施してもよい。
【0145】
この表示制御により、非目的地の対象物のPOI表示については、誘目性を低下させて、乗員の目が誘導されることを抑制でき、一方、目的地の対象物のPOI表示については、視認性(誘目性)を上昇させる変化を伴う表示制御(視認性上昇を伴う誘目性変更制御)が実施され、これによって、乗員が目的地である対象物を明確に視認できるようになり、その対象物を見逃したり、あるいは、車両の操作が間に合わず、その対象物を通過したりすることが防止される。
【0146】
また、「視認性を上昇させる変化を伴う表示制御」としては、一例として、POI表示の輝度を一旦、低下させて視認性を抑制し、POI表示の移動による視覚的な煩わしさを低減した後、POI表示の輝度を上昇させて、車両が目的地に近づいた時点でPOI表示の明確な視認性を確保するような表示制御が考えられる。
また、他の例としては、例えば、POI表示の輝度を低下させることなく、通常の輝度を起点として輝度を上昇させ、車両が目的地に近づいた時点でPOI表示の、より明確な視認性を確保するような表示制御が考えられる。
なお、視認性の制御方法としては、先に例示した視認性の制御方法の少なくとも1つを用いることができる。例えば、POI表示のサイズを大きくすることで視認性を向上させてもよく、また、POI表示の輝度を上昇させ、併せてサイズを大きくして、視認性をさらに向上させてもよい。
【0147】
図13のA-1では、領域DZsに、「目的地に近づきました」というナビゲーション用の文字が表示されており、また、
図13のA-4では、領域DZsに、「到着しました」というナビゲーション用の文字が表示されている。なお、このナビゲーション用の文字の表示に代えて、音声による案内を実施してもよい。
図13の例では、先に説明した、POI表示の輝度を一旦、低下させて視認性を抑制し、POI表示の移動による視覚的な煩わしさを低減した後、POI表示の輝度を上昇させて、車両が目的地に近づいた時点でPOI表示の明確な視認性を確保するような表示制御が採用されている。
【0148】
図13のA-2では、POI表示ARcの輝度が、一旦、低下されている。そして、
図13のA-2、A-3、A-4の順に、POI表示ARcの輝度が上昇し、これにより、目的地に近づくにつれて、POI表示の見やすさが向上している。
【0149】
次に、
図14を参照する。
図14は、目的地である対象物についてのPOI表示の表示制御のさらに他の例を示す図である。
図14のA-1では、領域DZsに、「目的地に近づきました」というナビゲーション用の文字が表示されており、また、
図14のA-4では、領域DZsに、「到着しました」というナビゲーション用の文字が表示されている。なお、このナビゲーション用の文字の表示に代えて、音声による案内を実施してもよい。
図14の例では、先に説明した、POI表示の視認性(誘目性)を低下させることなく、通常のPOI表示の視認性を基準として視認性を上昇させ、車両が目的地に近づいた時点でPOI表示の明確な視認性を確保するような表示制御が採用されている。
【0150】
図14の例では、第1、第2の領域DZ1、DZ2が設定されるが、第2の領域DZ2は使用されない。
図14のA-2、A-3、A-4の順に、第1の領域DZ1に表示されているPOI表示ARcの輝度が上昇すると共にサイズが大きくなり、これにより、目的地に近づくにつれて、POI表示の見やすさが向上している。
【0151】
次に、
図15を参照する。
図15は、
図11及び
図12の表示制御を実施する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図15において、
図10と共通するステップには同じ符号を付している。
以下の説明では、
図10との差異点のみを説明する。
図15では、先に説明した
図10のステップS1~S5に加えて、ステップS2-1が追加されている。
ステップS2-1にて、対象物が非目的地であるか否かが判定される。Yのときは、
図10と同様に、ステップS3にて誘目性変更処理が実施される。Nのときは、ステップS3を迂回して、ステップS4に移行する。
【0152】
次に、
図16を参照する。
図16は、
図13及び
図14の表示制御を実施する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図16において、
図15と共通するステップには同じ符号を付している。
以下の説明では、
図15との差異点のみを説明する。
図16では、先に説明した
図15のステップS1~S5、S2-1に加えて、ステップS3-1が追加されている。
ステップS2-1にて、対象物が非目的地であるか否かが判定される。Yのときは、
図15と同様に、ステップS3にて誘目性変更処理が実施される。Nのときは、ステップS3-1に移行し、視認性上昇を伴う視認性(誘目性)変更制御が実施され、続いて、ステップS4に移行する。
【0153】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、例えば、車両が道路を曲がる場合に、車両の旋回方向とは逆の方向に移動するように見える画像(例えばPOI表示)に起因する、乗員の前方確認の遅延や視覚的な煩わしさ等を抑制することが可能な表示制御装置等を提供することができる。
また、本発明の他の実施形態によれば、POI表示が付される対象物が目的地として設定されている場合において、POI表示の見やすさを担保することができ、乗員による目的地としての対象物の見逃しや、不注意による通過等が防止される。
【0154】
本明細書において、車両という用語は、広義に、乗り物、あるいは、移動体としても解釈し得るものである。
また、ナビゲーションに関する用語(例えば標識等)についても、例えば、車両の運行に役立つ広義のナビゲーション情報という観点等も考慮し、広義に解釈するものとする。
【0155】
また、HUD装置や表示器装置等の表示部(表示装置)や表示システムには、シミュレータ(例えば、航空機のシミュレータ、ゲーム装置としてのシミュレータ等)として使用されるものも含まれるものとする。
【0156】
また、上述の実施形態では、投影表示装置として、主としてHUD装置を例に説明したが、これに限定されず、例えば、車内プロジェクタ等も使用可能である。
【0157】
また、上述の実施例では、表示器装置として、車両の中央部に設けられるセンターインフォメーションディスプレイ(CID)や、乗員の正面に位置する計器クラスタディスプレイ(ICD)を例にとって説明したが、これに限定されるものではなく、他の表示器装置を使用してもよい。言い換えれば、表示器装置の名称に拘泥することなく、実質的にCIDやICDと同様の機能を有するディスプレイは、すべて本発明において使用可能である。
【0158】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0159】
1・・・車両(自車両)、2・・・被投影部材(ウインドシールド等)、3・・・目(視点)、4・・・ステアリングホイール、5・・・乗員(運転者等)、41・・・ダッシュボード、51a、51b・・・テンプル、52a、52b・・・フレーム、53a、53b・・・眼鏡レンズ、61a、61b・・・HMD用の制御部、62a、62b・・・光源部、63a、63b・・・走査部、70a、70b・・・ホログラムミラー、100・・・表示システム(車両表示システム)、102・・・ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置、103・・・HUD装置の筐体、104・・・ウインドシールドディスプレイ(WSD)、120・・・センターインフォメーションディスプレイ(CID)、130・・・計器クラスタディスプレイ(ICD、メータディスプレイ)、141・・・CID制御部、143・・・ICD制御部、151・・・光源部、152・・・表示器(WSDの構成要素)、159・・・WSD制御部、160・・・HUD制御部、170・・・凹面鏡(曲面反射鏡、光学系)、200・・・表示制御装置、201・・・表示装置制御部、202・・・POI表示生成部、203・・・表示制御部、204・・・横断判定部、205・・・誘目性変更処理部、206・・・視認性変更処理部、207・・・情報取得部、208・・・表示領域変更処理部、209・・・蓄積部(ストレージ)、211・・・POI保存情報、213・・・行動履歴情報、220・・・通信部、222・・・ECU(電子制御ユニット)、231・・・ナビゲーション装置、232・・・記憶部、233・・・POI情報、239・・・位置情報、241・・・付帯情報、243・・・自車位置情報、245・・・表示データベース、AN・・・アンテナ、SP・・・車速表示、DZ1・・・第1の領域、DZ2・・・第2の領域、DZs・・・車速表示等の表示領域(非重畳表示領域)、ZL・・・左側領域、ZR・・・右側領域、ARa~ARc・・・POI表示(POIアイコン、POI画像)。