(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136961
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】サイドガイド装置、熱間圧延設備、及び、サイドガイドの冷却方法
(51)【国際特許分類】
B21B 39/14 20060101AFI20240927BHJP
B21C 47/34 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B21B39/14 D
B21C47/34 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048280
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 哲志
(72)【発明者】
【氏名】松田 省三
(72)【発明者】
【氏名】池宗 省三
【テーマコード(参考)】
4E026
【Fターム(参考)】
4E026AA03
4E026CB02
4E026GA03
(57)【要約】
【課題】サイドガイドの冷却不良発生時の異常検知を容易に行うことができるサイドガイド装置、熱間圧延設備、及び、サイドガイドの冷却方法を提供すること。
【解決手段】本発明のサイドガイド装置は、搬送されて熱間圧延される被圧延材の幅方向の両側に配置される一対のサイドガイドを備え、サイドガイドは、中空内部を有するサイドガイド本体部と、中空内部に冷却液を供給するための供給管と、中空内部から冷却液を排出するための下部排出管と、中空内部から冷却液を排出するための第一上部排出口を有する第一上部排出管と、を備えており、通常時には、供給管からサイドガイドの中空内部に供給された冷却液が、下部排出管及び第一上部排出口から排出されるように、下部排出管から排出される冷却液の排出量を調整しており、通常時よりも供給管から供給される冷却液の供給量が少ない第一異常発生時には、第一上部排出口からは冷却液が排出されないように構成した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されて熱間圧延される被圧延材の幅方向の両側に配置される一対のサイドガイドを備えたサイドガイド装置であって、
前記サイドガイドは、
中空内部を有するサイドガイド本体部と、
前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部に接続され、前記中空内部に冷却液を供給するための供給管と、
前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の下面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための下部排出管と、
前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の上面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための第一上部排出口を有する第一上部排出管と、
を備えており、
通常時には、前記供給管から前記中空内部に供給された前記冷却液が、前記下部排出管及び前記第一上部排出口から排出されるように、前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を調整しており、
前記通常時よりも前記供給管から供給される前記冷却液の供給量が少ない第一異常発生時には、前記第一上部排出口からは前記冷却液が排出されない、
ように構成したことを特徴とするサイドガイド装置。
【請求項2】
前記サイドガイドは、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の上面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための第二上部排出口を有する第二上部排出管を備え、
前記第二上部排出口は前記第一上部排出口よりも上方に配置されており、
通常時には、前記供給管から前記中空内部に供給された前記冷却液が、前記第二上部排出口からは排出されないように、前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を調整しており、
前記通常時よりも前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量が少ない第二異常発生時には、前記第二上部排出口から前記冷却液が排出される、
ように構成したことを特徴とする請求項1に記載のサイドガイド装置。
【請求項3】
前記下部排出管に設けられ、当該下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を調整する調整バルブを有することを特徴とする請求項1または2に記載のサイドガイド装置。
【請求項4】
前記サイドガイド本体部の前記被圧延材と対向する面に設けられたライナーを有し、
前記第一上部排出口は、前記ライナーに向けて前記冷却液が排出されるように配置されることを特徴とする請求項1に記載のサイドガイド装置。
【請求項5】
前記サイドガイド本体部の前記被圧延材と対向する面に設けられたライナーを有し、
前記第一上部排出口と前記第二上部排出口との少なくとも一方は、前記ライナーに向けて前記冷却液が排出されるように配置されることを特徴とする請求項2に記載のサイドガイド装置。
【請求項6】
加熱炉で加熱された被圧延材を圧延する圧延機と、
前記加熱炉から前記圧延機への前記被圧延材の搬送方向で前記圧延機の上流側と下流側との少なくとも一方に設けられた、請求項1、2、4または5に記載のサイドガイド装置と、
を備えることを特徴とする熱間圧延設備。
【請求項7】
加熱炉から圧延機に搬送されて圧延される被圧延材の幅方向の両側に配置される一対のサイドガイドの冷却方法であって、
前記サイドガイドは、
中空内部を有するサイドガイド本体部と、
前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部に接続され、前記中空内部に冷却液を供給するための供給管と、
前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の下面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための下部排出管と、
前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の上面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための第一上部排出口を有する第一上部排出管と、
を備えており、
通常時には、前記供給管から前記中空内部に供給された前記冷却液が、前記下部排出管及び前記第一上部排出口から排出されるように、前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を調整し、
前記通常時よりも前記供給管から供給される前記冷却液の供給量が少ない第一異常発生時には、前記第一上部排出口からは前記冷却液が排出されないことを特徴とするサイドガイドの冷却方法。
【請求項8】
前記サイドガイドは、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の上面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための第二上部排出口を有する第二上部排出管を備え、
前記第二上部排出口は前記第一上部排出口よりも上方に配置されており、
通常時には、前記供給管から前記中空内部に供給された前記冷却液が、前記第二上部排出口からは排出されないように、前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を調整し、
前記通常時よりも前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量が少ない第二異常発生時には、前記第二上部排出口から前記冷却液が排出される、
ように構成したことを特徴とする請求項7に記載のサイドガイドの冷却方法。
【請求項9】
前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を、
前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の下面に接続された下部排出管に設けられた調整バルブによって調整することを特徴とする請求項7または8に記載のサイドガイドの冷却方法。
【請求項10】
前記サイドガイド本体部の前記被圧延材と対向する面に設けられたライナーに向けて、前記第一上部排出口から前記冷却液を排出することを特徴とする請求項7に記載のサイドガイドの冷却方法。
【請求項11】
前記サイドガイド本体部の前記被圧延材と対向する面に設けられたライナーに向けて、前記第一上部排出口と前記第二上部排出口との少なくとも一方から前記冷却液を排出することを特徴とする請求項8に記載のサイドガイドの冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドガイド装置、熱間圧延設備、及び、サイドガイドの冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧延機の上流側と下流側とのそれぞれに一対のサイドガイドを配置し、加熱炉から圧延機に搬送されて圧延される被圧延材である形鋼の側面を一対のサイドガイドによって保持して、被圧延材の幅方向の位置の案内を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイドガイドには、軽量であること以外に、強度及び剛性も要求されれる。そのため、サイドガイドは、中空の箱型断面構造をとる場合が多い。また、サイドガイドは、形鋼を挟み込んだ状態で形鋼の位置決めを行うため、サイドガイドと形鋼との接触時間が長い。形鋼は、例えば、1000[℃]以上の高温状態であるため形鋼からサイドガイドに熱が伝わる。そのため、通常、サイドガイドは中空内部に冷却水を供給して内部からサイドガイドの冷却が行われる。冷却水は、ホースや配管などによってサイドガイドの上部から供給され、サイドガイドの底部に接続された排水用の配管から排出される。しかしながら、サイドガイドの中空内部への冷却水の供給異常や、サイドガイドの中空内部からの冷却水の排出異常が生じると、サイドガイドの冷却不良が発生してしまう。このように、サイドガイドの冷却不良が発生すると、例えば、サイドガイドの本体部の一面に取り付けられたライナーと当該本体部との間で焼き付きが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、サイドガイドの冷却不良発生時の異常検知を容易に行うことができるサイドガイド装置、熱間圧延設備、及び、サイドガイドの冷却方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、
[1]本発明に係るサイドガイド装置は、搬送されて熱間圧延される被圧延材の幅方向の両側に配置される一対のサイドガイドを備えたサイドガイド装置であって、前記サイドガイドは、中空内部を有するサイドガイド本体部と、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部に接続され、前記中空内部に冷却液を供給するための供給管と、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の下面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための下部排出管と、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の上面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための第一上部排出口を有する第一上部排出管と、を備えており、通常時には、前記供給管から前記中空内部に供給された前記冷却液が、前記下部排出管及び前記第一上部排出口から排出されるように、前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を調整しており、前記通常時よりも前記供給管から供給される前記冷却液の供給量が少ない第一異常発生時には、前記第一上部排出口からは前記冷却液が排出されない、ように構成したことを特徴とするものである。
【0007】
[2]本発明に係るサイドガイド装置は、上記[1]の発明において、前記サイドガイドは、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の上面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための第二上部排出口を有する第二上部排出管を備え、前記第二上部排出口は前記第一上部排出口よりも上方に配置されており、通常時には、前記供給管から前記中空内部に供給された前記冷却液が、前記第二上部排出口からは排出されないように、前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を調整しており、前記通常時よりも前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量が少ない第二異常発生時には、前記第二上部排出口から前記冷却液が排出される、ように構成したことを特徴とするものである。
【0008】
[3]本発明に係るサイドガイド装置は、上記[1]または[2]の発明において、前記下部排出管に設けられ、当該下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を調整する調整バルブを有することを特徴とするものである。
【0009】
[4]本発明に係るサイドガイド装置は、上記[1]の発明において、前記サイドガイド本体部の前記被圧延材と対向する面に設けられたライナーを有し、前記第一上部排出口は、前記ライナーに向けて前記冷却液が排出されるように配置されることを特徴とするものである。
【0010】
[5]本発明に係るサイドガイド装置は、上記[2]の発明において、前記サイドガイド本体部の前記被圧延材と対向する面に設けられたライナーを有し、前記第一上部排出口と前記第二上部排出口との少なくとも一方は、前記ライナーに向けて前記冷却液が排出されるように配置されることを特徴とするものである。
【0011】
[6]本発明に係る熱間圧延設備は、加熱炉で加熱された被圧延材を圧延する圧延機と、
前記加熱炉から前記圧延機への前記被圧延材の搬送方向で前記圧延機の上流側と下流側との少なくとも一方に設けられた、上記[1]乃至[5]のいずれか1つの発明のサイドガイド装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0012】
[7]本発明に係るサイドガイドの冷却方法は、加熱炉から圧延機に搬送されて圧延される被圧延材の幅方向の両側に配置される一対のサイドガイドの冷却方法であって、前記サイドガイドは、中空内部を有するサイドガイド本体部と、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部に接続され、前記中空内部に冷却液を供給するための供給管と、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の下面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための下部排出管と、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の上面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための第一上部排出口を有する第一上部排出管と、を備えており、通常時には、前記供給管から前記中空内部に供給された前記冷却液が、前記下部排出管及び前記第一上部排出口から排出されるように、前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を調整し、前記通常時よりも前記供給管から供給される前記冷却液の供給量が少ない第一異常発生時には、前記第一上部排出口からは前記冷却液が排出されないことを特徴とするものである。
【0013】
[8]本発明に係るサイドガイドの冷却方法は、上記[7]の発明において、前記サイドガイドは、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の上面に接続され、前記中空内部から前記冷却液を排出するための第二上部排出口を有する第二上部排出管を備え、前記第二上部排出口は前記第一上部排出口よりも上方に配置されており、通常時には、前記供給管から前記中空内部に供給された前記冷却液が、前記第二上部排出口からは排出されないように、前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を調整し、前記通常時よりも前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量が少ない第二異常発生時には、前記第二上部排出口から前記冷却液が排出される、ように構成したことを特徴とするものである。
【0014】
[9]本発明に係るサイドガイドの冷却方法は、上記[7]または[8]の発明において、前記下部排出管から排出される前記冷却液の排出量を、前記中空内部と連通するように前記サイドガイド本体部の下面に接続された下部排出管に設けられた調整バルブによって調整することを特徴とするものである。
【0015】
[10]本発明に係るサイドガイドの冷却方法は、上記[7]の発明において、前記サイドガイド本体部の前記被圧延材と対向する面に設けられたライナーに向けて、前記第一上部排出口から前記冷却液を排出することを特徴とするものである。
【0016】
[11]本発明に係るサイドガイドの冷却方法は、上記[8]の発明において、前記サイドガイド本体部の前記被圧延材と対向する面に設けられたライナーに向けて、前記第一上部排出口と前記第二上部排出口との少なくとも一方から前記冷却液を排出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るサイドガイド装置、熱間圧延設備、及び、サイドガイドの冷却方法は、サイドガイドの冷却不良発生時の異常検知を容易に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施形態に係る形鋼圧延ラインの概略構成を部分的に示した図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る熱間圧延設備の設備構成を部分的に示した図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るサイドガイドの断面を示した図である。
【
図4】
図4は、比較例のサイドガイドの断面図である。
【
図5】
図5は、比較例のサイドガイドでの冷却の問題点を示した図である。
【
図6】
図6は、第二異常発生時におけるサイドガイドの断面を示した図である。
【
図7】
図7は、詰まり除去時におけるサイドガイドの断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係るサイドガイド装置、熱間圧延設備、及び、サイドガイドの冷却方法の実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0020】
図1は、実施形態に係る形鋼圧延ライン100の概略構成を部分的に示した図である。
【0021】
実施形態に係る形鋼圧延ライン100は、形鋼の製造設備であり、搬送テーブル6の上流側から下流側に向けて順に、加熱炉1、粗圧延機3、図示しない中間圧延機、図示しない仕上げ圧延機、及び、図示しないホットソーなどを備えている。加熱炉1で所定温度(例えば、1200[℃]~1300[℃])に加熱されたスラブ等の被圧延材2は、複数の孔型を用いて、粗圧延機3、中間圧延機、仕上げ圧延機の順に熱間で孔型圧延される。なお、被圧延材2は、例えば、形鋼を製造する場合に圧延される鋼材を意味する。
【0022】
搬送テーブル6は、搬送方向に沿って配列した複数の搬送ローラが設けられており、複数の搬送ローラによって被圧延材2を下側から支持して、被圧延材2を長手方向に向けて搬送可能となっている。
【0023】
粗圧延機3は、加熱炉1で加熱された被圧延材2を、目標とする断面形状に近づけるように孔型圧延によって造形する。粗圧延機3には、カリバーとも呼ばれる1または複数の孔型をロール軸方向に沿って刻設した上ロール及び下ロールが配設されており、被圧延材2を当該孔型で複数回圧延する。
【0024】
また、形鋼圧延ライン100には、加熱炉1から粗圧延機3への被圧延材2の搬送方向で粗圧延機3の入口側(搬送方向上流側)と出口側(搬送方向下流側)とのそれぞれに、一対の入口側サイドガイド4A及び一対の出口側サイドガイド4Bが配置されている。一対の入口側サイドガイド4Aは、搬送テーブル6上に載置されて搬送される被圧延材2の幅方向の両側に配置され、被圧延材2を挟んで対向配置されている。一対の出口側サイドガイド4Bは、搬送テーブル6上に載置されて搬送される被圧延材2の幅方向の両側に配置され、被圧延材2を挟んで対向配置されている。一対の入口側サイドガイド4A及び一対の出口側サイドガイド4Bは、被圧延材2の搬送方向と直交する幅方向で位置を変更可能に設けられている。なお、以下の説明においては、特に説明が無い限り、「幅方向」とは被圧延材2の搬送方向と直交する幅方向のことを指す。
【0025】
一対の入口側サイドガイド4A及び一対の出口側サイドガイド4Bの幅方向の位置は、搬送テーブル6で搬送される被圧延材2の種類やサイズに応じて変更し、被圧延材2の幅方向位置を孔型の一つに合うように入口側サイドガイド4A及び一対の出口側サイドガイド4Bで案内して圧延する。なお、以下の説明において、一対の入口側サイドガイド4Aと一対の出口側サイドガイド4Bとを特に区別しないときには、単にサイドガイド4とも記す。
【0026】
図2は、実施形態に係る熱間圧延設備120の設備構成を部分的に示した図である。
【0027】
実施形態に係る形鋼圧延ライン100においては、少なくとも、一対の入口側サイドガイド4Aと入口側位置調整機構5Aとを備えて、入口側サイドガイド装置110Aが構成されている。また、実施形態に係る形鋼圧延ライン100においては、少なくとも、一対の出口側サイドガイド4Bと出口側位置調整機構5Bとを備えて、出口側サイドガイド装置110Bが構成されている。
【0028】
入口側位置調整機構5A及び出口側位置調整機構5Bは、一対の入口側サイドガイド4A及び一対の出口側サイドガイド4Bの前記幅方向の位置をそれぞれ調整する。入口側位置調整機構5A及び出口側位置調整機構5Bは、駆動モータ51A,51B、減速機構52A,52B、複数のピニオンギア53A,53B、及び、複数のラックギア54A,54Bなどを備えている。駆動モータ51A,51Bの回転軸には減速機構52A,52Bが連結されている。減速機構52A,52Bの出力軸には、複数のピニオンギア53A,53Bが連結されている。複数のピニオンギア53A,53Bは、それぞれ複数のラックギア54A,54Bと噛み合っている。複数のラックギア54A,54Bには、一対の入口側サイドガイド4A及び一対の出口側サイドガイド4Bがそれぞれ固定されている。駆動モータ51A,51Bは、図示しないモータ制御装置に接続されている。このモータ制御装置は、図示しない操作装置からの信号によって駆動モータ51A,51Bの駆動を制御して、複数のラックギア54A,54Bを前記幅方向に移動させる。一対の入口側サイドガイド4A及び一対の出口側サイドガイド4Bは、複数のラックギア54A,54Bの移動に伴って前記幅方向に移動して、前記幅方向の位置が調整される。
【0029】
実施形態に係る形鋼圧延ライン100においては、少なくとも、粗圧延機3と入口側サイドガイド装置110A及び出口側サイドガイド装置110Bとによって、加熱炉1で加熱された被圧延材2を圧延するための熱間圧延設備120が構成されている。入口側サイドガイド装置110A及び出口側サイドガイド装置110Bにおいて、一対の入口側サイドガイド4A及び一対の出口側サイドガイド4Bは、中空の箱型断面構造であって、複数の隔壁によって区切られた複数の中空内部40A,40Bが形成されている。また、一対の入口側サイドガイド4A及び一対の出口側サイドガイド4Bには、複数の中空内部40A,40Bに対応させて、供給管42A,42B、第一上部排出管45A,45B、第二上部排出管46A,46B、及び、後述する下部排出管が設けられている。なお、第一上部排出管45A,45B、第二上部排出管46A,46B、及び、下部排出管から排出された冷却水は、例えば、搬送テーブル6の下方に設けられた不図示の排水溝に集められて不図示の排水設備に流れていく。
【0030】
図3は、実施形態に係るサイドガイド4の断面を示した図である。なお、
図3は、
図2のA-A断面を示した図である。
【0031】
サイドガイド4は、サイドガイド本体部41とライナー47とを有する。サイドガイド本体部41は、上側壁部41aと下側壁部41bと内側壁部41cと外側壁部41dとによって囲って中空内部40を形成するように、中空の箱型断面構造で構成されている。上側壁部41aは、サイドガイド本体部41の高さ方向で上側の壁部を形成する。下側壁部41bは、サイドガイド本体部41の高さ方向で下側の壁部である。内側壁部41cは、サイドガイド本体部41の前記幅方向で被圧延材2に対向する内側の壁部を形成する。外側壁部41dは、サイドガイド本体部41の前記幅方向で被圧延材2に対向しない外側の壁部を形成する。サイドガイド本体部41は、中空の箱型断面構造とすることによって、軽量化を図りつつ、強度及び剛性を高めている。サイドガイド本体部41の内側壁部41cにおける被圧延材2と対向する面には、被圧延材2と摺動するライナー47がボルトなどの締結部材によって締結されて取り付けられている。
【0032】
上側壁部41aの上面には、サイドガイド本体部41の中空内部40に冷却液である冷却水を供給するための供給管42が中空内部40と連通するように接続されている。なお、本実施形態においては、供給管42をサイドガイド本体部41の上側壁部41aに接続しているが、サイドガイド本体部41に対する供給管42の接続位置は上側壁部41aに限定されない。下側壁部41bの下面には、サイドガイド本体部41の中空内部40から冷却水を排出するための下部排出管43が中空内部40と連通するように接続されている。また、下部排出管43には、下部排出管43から排出される冷却水の排出量を調整するための調整バルブ44が設けられている。調整バルブ44は、開度を変化させることによって下部排出管43からの冷却水の排出量を調整することができる。
【0033】
また、上側壁部41aの上面には、サイドガイド本体部41の中空内部40から冷却水を排出するための複数の上部排出配管である第一上部排出管45と第二上部排出管46とが接続されている。第一上部排出管45及び第二上部排出管46は、上側壁部41aよりも上方に高さ方向で互いに位置が異なる第一上部排出口451及び第二上部排出口461を有している。第二上部排出管46が有する第二上部排出口461は、第一上部排出管45が有する第一上部排出口451よりも上方に配置されている。また、第一上部排出口451と第二上部排出口461とは、ライナー47に向かって冷却水が排出されるように配置されている。ライナー47は、第一上部排出口451と第二上部排出口461とから排出された冷却水によって冷却される。なお、ライナー47に向かって冷却水が排出されるように配置するのは、第一上部排出口451と第二上部排出口461との両方に限定されない。すなわち、第一上部排出口451と第二上部排出口461との少なくとも一方を、ライナー47に向かって冷却水が排出されるように配置すればよい。この際、少なくとも第一上部排出口451をライナー47に向かって冷却水が排出されるように配置するのが好ましい。また、本実施形態においては、第一上部排出口451と第二上部排出口461とを、異なる上部排出管である第一上部排出管45と第二上部排出管46とに別々で設けているが、これに限定されるものではない。例えば、第一上部排出口451と第二上部排出口461とは、単一の上部排出管に第二上部排出口461が第一上部排出口451よりも上方に配置されるように設けても良い。
【0034】
サイドガイド本体部41の中空内部40は、供給管42から供給された冷却水で満たされている。サイドガイド4は、中空内部40に供給された冷却水によってサイドガイド本体部41の内側から冷却される。
【0035】
下部排出管43から排出される冷却水の排出量は、供給管42から中空内部40に供給される冷却水の供給量よりも少なく、且つ、第一上部排出口451からは冷却水が排出されて第二上部排出口461からは冷却水が排出されないように、調整バルブ44によって調整されている。すなわち、実施形態に係るサイドガイド4においては、通常時、供給管42から中空内部40に供給された冷却水が、下部排出管43と第一上部排出口451とから排出されて第二上部排出口461からは排出されない。なお、通常時に、供給管42から中空内部40に供給された冷却水が、下部排出管43と第一上部排出口451とから排出されて第二上部排出口461からは排出されない関係を満たすように、下部排出管43から冷却水を排出できれば調整バルブ44を設けなくても良い。例えば、供給管42から中空内部40に供給された冷却水が、下部排出管43と第一上部排出口451とから排出されて第二上部排出口461からは排出されない関係を満たすように、下部排出管43の内径を設定して下部排出管43からの冷却水の排出量を調整すればよい。
【0036】
実施形態に係るサイドガイド4においては、通常時よりも供給管42から供給される冷却水の供給量が少ない第一異常発生時(供給異常発生時)には、第二上部排出口461だけではなく、第一上部排出口451からも冷却水が排出されないように構成されている。これにより、実施形態に係るサイドガイド4においては、第一上部排出口451から冷却水が排出されないことを作業者が視認することによって、供給管42から中空内部40への冷却水の供給異常が発生していることを容易に判断することができる。
【0037】
図4は、比較例のサイドガイド400の断面図である。
【0038】
図4に示すように、比較例のサイドガイド400は、サイドガイド本体部401とライナー407とを有する。サイドガイド本体部401は、上側壁部401aと下側壁部401bと内側壁部401cと外側壁部401dとによって囲って中空内部440を形成するように、中空の箱型断面構造で構成されている。比較例のサイドガイド400では、中空内部440において、ライナー407が取り付けられた内側壁部401cの内面に向けて、上側壁部401aに接続された供給管402から冷却水を噴射してサイドガイド400を冷却する。供給管402から内側壁部401cの内面に吹き付けられた後の冷却水は、中空内部440の下部に溜まり、下側壁部401bに接続された下部排出管403から排出される。
【0039】
図5は、比較例のサイドガイド400での冷却の問題点を示した図である。
【0040】
比較例のサイドガイド400においては、供給管402内の詰まりや、供給管402よりも上流側でのトラブルなどによって給水不良が発生すると、サイドガイド本体部401の冷却不足が生じる(
図5中の(1))。また、サイドガイド400の使用期間が長期となり、スケールやゴミなどの異物7が、中空内部440の下部に堆積したり下部排出管403に詰まったりすることによって、下部排出管403からの冷却水の排出異常が生じる(
図5中の(2))。冷却水の排出異常が生じると、サイドガイド本体部401から熱を奪った高温の冷却水が中空内部440に溜まり易くなるため、サイドガイド本体部401の冷却不足が生じる。冷却不足によるサイドガイド本体部401の温度上昇によって、中空内部440が高温環境となり、中空内部440の下部に溜まった冷却水と接する下側壁部401bに腐食や減肉が発生し易くなる(
図5中の(3))。また、サイドガイド本体部401の内側壁部401cとライナー407との間で焼き付きが発生し易くなる(
図5中の(4))。
【0041】
内側壁部401cとライナー407との間での焼き付きについては、次のような原因もある。例えば、サイドガイド本体部401の冷却が不足すると、ライナー407を内側壁部401cに取り付けているボルトの伸び変形が発生し易くなる。ボルトの伸び変形が発生すると、サイドガイド400によって被圧延材2をガイドする際に、ライナー407と内側壁部401cとにズレが発生し易くなり、内側壁部401cとライナー407との間に焼き付きが発生し易くなる。
【0042】
また、内側壁部401cとライナー407との間に焼き付きが発生することによって、ライナー407の交換周期が短くなったり、内側壁部401cのライナー取り付け面の損耗が大きくなったりするといった問題が生じる。
【0043】
図6は、第二異常発生時におけるサイドガイド4の断面を示した図である。
【0044】
実施形態に係るサイドガイド4においては、中空内部40の下部にスケールなどの異物7が堆積した際、下部排出管43や調整バルブ44が異物7によって詰り、排出異常となる。その結果、第一上部排出口451からだけではなく、第二上部排出口461からも冷却水の排出が行われるようになる。すなわち、通常時よりも下部排出管43から排出される冷却水の排出量が少ない第二異常発生時(排出異常発生時)には、少なくとも、第一上部排出口451及び第二上部排出口461から冷却液が排出される。これにより、実施形態に係るサイドガイド4においては、第二上部排出口461から冷却水が排出されていることを作業者が視認することによって、下部排出管43や調整バルブ44で冷却水の排出異常が発生していることを容易に判断することができる。また、作業者は、日々の点検時または稼働中に中空内部40のスケールなどの異物7の蓄積状況を容易に判断することができる。
【0045】
図7は、詰まり除去時におけるサイドガイド4の断面を示した図である。
【0046】
実施形態に係るサイドガイド4においては、第二上部排出口461からの冷却水の排出が確認された際、例えば、下部排出管43に設けられた調整バルブ44を全開にし、且つ、通常時よりも高圧で冷却水を供給管42から中空内部40に供給する。なお、通常時における冷却水の水圧(元圧)としては、例えば、3気圧であり、詰まり除去時(第一異常発生時)には3気圧よりも高い水圧(元圧)にする。これにより、高圧の冷却水によるブローによって下部排出管43や調整バルブ44に詰まっているスケールなど異物7を吹き飛ばして除去することが可能となる。
【0047】
以上のように、実施形態に係るサイドガイド装置、熱間圧延設備、及び、サイドガイドの冷却方法においては、サイドガイドでの冷却水の供給異常及び排出異常を容易に確認することができる。これにより、実施形態に係るサイドガイド装置、熱間圧延設備、及び、サイドガイドの冷却方法は、サイドガイドの冷却不良発生時の異常検知を容易に行うことができる。なお、本実施形態においては、形鋼の粗圧延機に使用されるサイドガイドを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、熱間の金属材を圧延する圧延機に使用されるサイドガイドであれば、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 加熱炉
2 被圧延材
3 粗圧延機
4,400 サイドガイド
4A 入口側サイドガイド
4B 出口側サイドガイド
5A 入口側位置調整機構
5B 出口側位置調整機構
6 搬送テーブル
7 異物
40,440 中空内部
41,401 サイドガイド本体部
41a,401a 上側壁部
41b,401b 下側壁部
41c,401c 内側壁部
41d,401d 外側壁部
42,402 供給管
43,403 下部排出管
44 調整バルブ
45 第一上部排出管
46 第二上部排出管
47,407 ライナー
100 形鋼圧延ライン
110A 入口側サイドガイド装置
110B 出口側サイドガイド装置
120 熱間圧延設備
451 第一上部排出口
461 第二上部排出口