(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136962
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】微多孔膜および微多孔膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/26 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C08J9/26 102
C08J9/26 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048281
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】三川 展久
(72)【発明者】
【氏名】柳本 泰
(72)【発明者】
【氏名】清澤 邦臣
(72)【発明者】
【氏名】鶴来 交
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA18
4F074AB00
4F074AB05
4F074AD01
4F074AG02
4F074AH04
4F074CB34
4F074CB43
4F074CC02X
4F074CC04Z
4F074CC28Y
4F074CC29Y
4F074DA49
(57)【要約】
【課題】延伸性および成形性に優れる微多孔膜、および該微多孔膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】エチレン系重合体粒子(A)から得られる微多孔膜であって、前記エチレン系重合体粒子(A)が下記要件(i)および(ii)を満たす微多孔膜:(i)窒素ガス吸着法にて測定された吸脱着等温線からBET法により求められる比表面積が、2.00m2/gより大きく、30.0m2/g以下である;(ii)デカリン溶媒中、135℃で測定される極限粘度[η]が5~50dl/gである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系重合体粒子(A)から得られる微多孔膜であって、前記エチレン系重合体粒子(A)が下記要件(i)および(ii)を満たす微多孔膜:
(i)窒素ガス吸着法にて測定された吸脱着等温線からBET法により求められる比表面積が、2.00m2/gより大きく、30.0m2/g以下である;
(ii)デカリン溶媒中、135℃で測定される極限粘度[η]が5~50dl/gである。
【請求項2】
前記エチレン系重合体粒子(A)が下記要件(iii)を満たす、請求項1に記載の微多孔膜:
(iii)かさ密度が0.01~0.20g/mLである。
【請求項3】
セパレータである、請求項1に記載の微多孔膜。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の微多孔膜の製造方法であって、
(a)前記エチレン系重合体粒子(A)と溶媒とを含む混練物を調製する工程、
(b)前記混練物を、前記エチレン系重合体粒子(A)の溶媒に対する溶解温度より高い温度条件下で成形し、シート状成形体を得る工程、
(c)前記シート状成形体をさらに延伸する工程、
(d)前記シート状成形体から前記溶媒を除去する工程、ならびに
(e)前記工程(c)および(d)を経て得られた成形体を熱固定する工程
を含む、微多孔膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微多孔膜および微多孔膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子量が極めて高いエチレン系重合体、所謂超高分子量エチレン系重合体は、汎用のエチレン系重合体に比して耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、強度に優れており、エンジニアリングプラスチックとして優れた特徴を有している。このため、各種成形方法により、ライニング材、食品工業のライン部品、機械部品、人工関節、スポーツ用品、微多孔膜等の用途への適用が試みられている。
【0003】
中でも、微多孔膜は、リチウム二次バッテリー、ニッケル-水素バッテリー、ニッケル-カドミウムバッテリー、ポリマーバッテリー等に用いるバッテリーセパレータをはじめ、電解コンデンサー用セパレータ、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料、医療用材料等に幅広く使用されている。
【0004】
一方で、超高分子量エチレン系重合体は、その分子量の高さ故に溶融時の流動性が悪いため、一般的な樹脂の成形法である溶融成形を行うことが困難といわれている。このため、超高分子量エチレン系重合体を成形する方法として、超高分子量エチレン系重合体を溶剤に溶解させて成形する方法や、超高分子量エチレン系重合体粒子を融点以下の温度で圧着させた後に延伸させる固相延伸成形法などが開発されている。
例えば、特許文献1には、延伸成形性に優れた超高分子量エチレン系重合体粒子の製造方法が記載されている。また、特許文献2には、流動性に優れたポリエチレンパウダーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5689473号公報
【特許文献2】特開2019-038931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や2は、超高分子量エチレン系重合体を開示しているが、これら超高分子量エチレン系重合体は、前述の通り、成形加工性に課題を有するものである。このため、膜、特に微多孔膜を製造した場合、成形性や延伸性に劣り、例え延伸を施すことが可能であっても、低延伸倍率の膜の製造にとどまったり、得られる膜に成形不良(例えば、穴開きや引き裂き)が生じたりするなど、その生産性および性能は充分なものではないと推測される。
【0007】
本発明は以上のことに鑑みてなされたものであり、延伸性および成形性に優れる微多孔膜および該微多孔膜の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、特定の比表面積および極限粘度を有するエチレン系重合体粒子によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例は、以下の通りである。
【0009】
[1]
エチレン系重合体粒子(A)から得られる微多孔膜であって、前記エチレン系重合体粒子(A)が下記要件(i)および(ii)を満たす微多孔膜:
(i)窒素ガス吸着法にて測定された吸脱着等温線からBET法により求められる比表面積が、2.00m2/gより大きく、30.0m2/g以下である;
(ii)デカリン溶媒中、135℃で測定される極限粘度[η]が5~50dl/gである。
【0010】
[2]
前記エチレン系重合体粒子(A)が下記要件(iii)を満たす、[1]に記載の微多孔膜:
(iii)かさ密度が0.01~0.20g/mLである。
【0011】
[3]
セパレータである、[1]または[2]に記載の微多孔膜。
【0012】
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載の微多孔膜の製造方法であって、
(a)前記エチレン系重合体粒子(A)と溶媒とを含む混練物を調製する工程、
(b)前記混練物を、前記エチレン系重合体粒子(A)の溶媒に対する溶解温度より高い温度条件下で成形し、シート状成形体を得る工程、
(c)前記シート状成形体をさらに延伸する工程、
(d)前記シート状成形体から前記溶媒を除去する工程、ならびに
(e)前記工程(c)および(d)を経て得られた成形体を熱固定する工程
を含む、微多孔膜の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、延伸性および成形性に優れる微多孔膜を提供することができ、延伸成形時に穴開き等の成形不良が生じない微多孔膜を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について具体的に説明する。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、例えば「M~N」の場合、特に断りがなければ「M以上、N以下」を意味する。
本明細書において「(共)重合体」なる語は、単独重合体および共重合体の両方を包括する概念として用いられる。
本明細書において、ある(共)重合体を構成するオレフィンをMとしたときに、「Mから導かれる構成単位」なる表現を用いることがあるが、これは「Mに対応する構成単位」、すなわち、Mの二重結合を構成するπ結合が開くことにより形成される、一対の結合手を有する構成単位のことをいう。
【0015】
≪微多孔膜≫
本発明に係る微多孔膜(以下「本微多孔膜」ともいう。)は、下記要件(i)および(ii)を満たすエチレン系重合体粒子(A)(以下「粒子(A)」ともいう。)を含む。
(i)窒素ガス吸着法にて測定された吸脱着等温線からBET法により求められる比表面積が、2.00m2/gより大きく、30.0m2/g以下である。
(ii)デカリン溶媒中、135℃で測定される極限粘度[η]が5~50dl/gである。
【0016】
<エチレン系重合体粒子(A)>
粒子(A)は、前記要件(i)および(ii)を満たすエチレン系重合体粒子であれば特に制限されない。粒子(A)は、超高分子量のエチレン系重合体粒子であることが好ましい。本微多孔膜に用いる粒子(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
なお、以下の粒子(A)の物性は、本微多孔膜の原料として用いる粒子(A)が、以下の物性を有していればよい。
【0017】
本微多孔膜中の粒子(A)の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95~100質量%であり、最も好ましくは100質量%である。
粒子(A)の含有量が前記範囲にあると、延伸性に優れる微多孔膜を容易に製造することができる。
【0018】
粒子(A)を構成するエチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、エチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。これらの中でも、前記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体が好ましい。
【0019】
前記他のモノマーとしては、例えば、炭素数3~30、好ましくは3~20の直鎖状または分岐状のα-オレフィン、炭素数3~30、好ましくは3~20の環状オレフィン、極性モノマー、α,β-不飽和カルボン酸エステル、ビニルエステル、不飽和グリシジルエステル、ビニルシクロヘキサン、ジエン、ポリエン、芳香族ビニル化合物が挙げられる。これらの中でも、炭素数3~20の直鎖状または分岐状のα-オレフィンが好ましく、炭素数3~10の直鎖状または分岐状のα-オレフィンがより好ましく、炭素数3~8の直鎖状または分岐状のα-オレフィンがさらに好ましい。
【0020】
前記α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。
【0021】
前記環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンが挙げられる。
【0022】
前記極性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物などのα,β-不飽和カルボン酸;これらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのα,β-不飽和カルボン酸金属塩が挙げられる。
【0023】
前記α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチルが挙げられる。
【0024】
前記ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニルが挙げられる。
【0025】
前記不飽和グリシジルエステルとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸モノグリシジルエステルが挙げられる。
【0026】
前記ジエンおよびポリエンとしては、炭素数4~30、好ましくは4~20の2個以上の二重結合を有する環状または鎖状の化合物が挙げられ、具体例としては、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエンが挙げられる。
【0027】
前記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレンなどのモノまたはポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o-クロロスチレン、p-クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルスチレンが挙げられる。
【0028】
前記エチレンと他のモノマーとの共重合体におけるエチレンに由来する繰返し単位の含有量は、エチレンおよび他のモノマーから導かれる繰り返し単位の全繰り返し単位100mol%に対し、好ましくは95mol%以上、より好ましくは98mol%以上、さらに好ましくは99.5mol%以上である。
エチレンおよび他のモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、例えば、核磁気共鳴(NMR)スペクトル、赤外吸収スペクトルなどの公知の測定方法により測定が可能である。
【0029】
前記エチレン系重合体を構成するエチレン系重合体は、それぞれ、少なくとも1種以上のバイオマス由来モノマー(エチレン、炭素原子数3~20のα-オレフィン)を含んでいてもよい。重合体を構成する同じ種類のモノマーがバイオマス由来モノマーのみでもよいし、化石燃料由来モノマーのみであってもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。バイオマス由来モノマーとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーで、炭素として14C同位体を1×10-12程度の割合で含有し、ASTM D6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(単位:pMC)が100pMC程度である。バイオマス由来モノマー(エチレン、α-オレフィン等の他のモノマー)は、例えば、従来から知られている方法により得られる。
【0030】
これらエチレン系重合体が、バイオマス由来モノマーに由来する構成単位を含むことは、環境負荷低減(主に温室効果ガス削減)の観点から好ましい。重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、原料のモノマーがバイオマス由来モノマーを含む(共)重合体であっても、14C同位体を1×10-12~10-14程度の割合で含む以外の分子構造は、化石燃料由来モノマーからなる(共)重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0031】
粒子(A)の融点(Tm)は、好ましくは120~160℃、より好ましくは130~150℃、さらに好ましくは135~145℃である。融点(Tm)が前記範囲にあると、成形時に樹脂の流動性が保たれ、容易に成形が可能となる。融点(Tm)が前記範囲を下回ると、成形時に樹脂が流れ出てしまい成形困難となる場合があり、また、得られる微多孔膜の成形性(特に、延伸性)が低下し、融点(Tm)が前記範囲を上回ると、分子の流動性が著しく悪くなり、成形性に劣る傾向にある。
【0032】
粒子(A)の窒素ガス吸着法で測定された吸脱着等温線からBET法により求められる比表面積は、2.00m2/gより大きく、30.0m2/g以下であり、好ましくは2.50~28.0m2/g、より好ましくは3.00~26.0m2/g、さらに好ましくは3.00~20.0m2/g、特に好ましくは3.00~18.0m2/gである。比表面積が前記範囲にあると、延伸性に優れる微多孔膜を容易に製造することができる。
前記比表面積は、窒素ガス吸着法にて測定された吸脱着等温線からBET法により求められる比表面積の全てを合計した全比表面積を意味し、具体的には下記実施例に記載の測定方法により求められる。
【0033】
例えば、後述の粒子(A)の製造方法によれば、比表面積が前記範囲にあるエチレン系重合体粒子を得ることができる。特に、金属ハロゲン化物とアルコールとの混合物に有機アルミニウム化合物等を接触させて懸濁液を得て、さらに遷移金属化合物を接触させることで得られるエチレン重合用触媒含有液を用いて、エチレンを重合することで、比表面積が前記範囲にあるエチレン系重合体粒子を容易に得ることができる。
【0034】
粒子(A)のレーザー回折散乱法により求められるメジアン径(D50)は、好ましくは20~700μm、より好ましくは30~680μm、さらに好ましくは40~660μm、特に好ましくは220~660μmである。D50が前記範囲にある粒子(A)は、ハンドリング性(流動性)に優れるため、均一性(混合状態の均一性や成形体の寸法や表面状態の均一性)に優れる微多孔膜を容易に得ることができる傾向にある。
【0035】
D50が前記範囲にある粒子(A)を得るには、重合工程において、D50が前記範囲にある粒子が得られるように重合条件を調整してもよいし、前記範囲よりも大きいD50を有する粒子(A)を解砕等することで、D50が前記範囲にある粒子(A)を得てもよい。この場合、D50を前記範囲内とするのは、下記工程[β]でも、該工程[β]の後で行ってもよい。
【0036】
粒子(A)の135℃のデカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は5~50dl/gであり、好ましくは10~50dl/g、より好ましくは15~45dl/g、さらに好ましくは10~40dl/g、特に好ましくは15~35dl/g、さらに好ましくは20~30dl/gである。極限粘度[η]が前記範囲にあると、延伸性に優れる微多孔膜を容易に製造することができる。極限粘度[η]が前記範囲を上回る場合、充分に延伸できず成形性が低下する場合がある。一方、極限粘度[η]が前記範囲を下回る場合、粒子を構成する分子量の小さいポリマー鎖における、末端に由来する構造欠陥により、充分な強度を発現しない場合がある。
【0037】
粒子(A)のかさ密度は、好ましくは0.01~0.20g/mL、より好ましくは0.02~0.20g/mL、さらに好ましくは0.03~0.20g/mL、さらにより好ましくは0.03~0.18g/mL、特に好ましくは0.03~0.16g/mL、最も好ましくは0.04~0.15g/mLである。かさ密度が前記範囲にある粒子(A)は、延伸性に優れる微多孔膜を容易に製造することができる。
前記かさ密度は、具体的には下記実施例に記載の測定方法により求められる。
【0038】
粒子(A)100質量%中の粗粒の含有量は、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、特に好ましくは3質量%以下、最も好ましくは1.5質量%以下である。
粒子(A)中に粗粒が多く含まれると、粒子(A)を重合後の移送時に十分な流動性が得られず、バルブ、ポンプ、ストレーナー等で閉塞が発生する場合がある。このような不具合を抑制することができる等の点から、粗粒の含有量が前記範囲にあることが好ましい。
【0039】
粗粒の含有量が前記範囲にあると、粒子(A)の製造や加工プロセスにおける粒子(A)の移送性に優れるため、均一な粒子を容易に得ることができ、延伸性に優れる微多孔膜を容易に製造することができる。
なお、前記粗粒とは、粒子径1mm以上の粒子のことをいい、1mm×1mmの網目ふるいを用い、振とう時間:10分、振幅:0.5mm、インターバル:15秒でふるった時に、該ふるいを通過しない粒子のことをいう。
【0040】
後述する粒子(A)の製造方法の通り、粒子(A)の製造時に、マグネシウムのハロゲン化物(好ましくはMgCl2)を用いることで、比表面積が前記範囲にあるエチレン系重合体粒子を容易に製造することができる傾向にある。製造時に用いたマグネシウムハロゲン化物の一部は、通常、粒子(A)中に残存し、粒子(A)中のMg含量は、製造時のマグネシウムハロゲン化物の濃度に対応する。
粒子(A)中のMg含量は、好ましくは10~2,000ppm、より好ましくは20~1,500ppm、さらに好ましくは30~1,000ppmである。
【0041】
粒子(A)は、該粒子(A)のアセトン抽出物が、下記式(f)で表される構造(以下「構造(f)」ともいう。)を有する化合物(F)を含むことが好ましい。
粒子(A)のアセトン抽出物が化合物(F)を含むと、粒子(A)は均一な粒子となりやすく、流動性に優れるバインダーを容易に得ることができる。
粒子(A)のアセトン抽出物に化合物(F)が含まれる場合、該化合物(F)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
粒子(A)のアセトン抽出物に化合物(F)が含まれるか否かは、NMRスペクトルなどの公知の分析手法によって同定が可能であり、具体的には下記実施例に記載の方法により確認することができる。
【0042】
粒子(A)のアセトン抽出物とは、粒子(A)とアセトンとを接触させた後に、粒子(A)からアセトン中に溶出される成分である。一般に、アセトン中に溶出される成分は、粒子(A)の構成成分のうち、下記粒子(A)の製造方法で使用される触媒や添加剤等であり、また、重合後に使用され得る添加剤等の成分も前記アセトン抽出物に含まれ得る。
前記化合物(F)は、具体的には、粒子(A)の重合段階で添加される、また、重合後に添加され得る添加剤の一つである、帯電防止剤(に由来する化合物)である。
【0043】
【化1】
[式(f)中、Rは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を示す。]
【0044】
前記Rにおける炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基などの直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0045】
前記Rは、水素原子またはメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
Rがこのような原子または基である化合物(F)を粒子(A)の製造の際に用いると、重合活性と粗粒発生抑制効果に優れる。
【0046】
前記化合物(F)としては、前記式(f)における酸素原子に水素原子が結合した化合物であることが好ましく、下記式[F1]で表される構造、下記式[F2]で表される構造および下記式[F3]で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を、分子内に一つまたは二つ以上有する化合物であることがより好ましい。
【0047】
【0048】
前記式[F1]~[F3]中のRは、前記式(f)におけるRと同義である。
前記式[F2]において、R''は、水素原子または炭素数1~12のアルキル基であり、nおよびmは、0または1であり、pは、1または2であり、mおよびpの合計は2である。
mは0であり、pは2である化合物(F)を粒子(A)の製造の際に用いると、重合活性と粗粒発生抑制効果に優れるため好ましい。
【0049】
前記一般式[F1]で表される骨格を有する化合物としては、ポリオキシアルキレン系化合物を挙げることができ、例えば、ポリオキシアルキレングリコール、エチレンジアミンベースのポリオキシアルキレンポリオール等が挙げられる。
前記一般式[F2]で表される骨格を有する化合物については、特許第5796797号公報に記載の脂肪族ジエタノールアミドを好ましく例示することができる。
前記一般式[F3]で表される骨格を有する化合物についても、特許第5796797号公報に記載の第3級アミン化合物を好ましく例示することができる。
【0050】
前記化合物(F)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは500~30,000、より好ましくは1,000~25,500、さらに好ましくは1,500~20,000,特に好ましくは1,500~10,000である。Mwが前記範囲にある化合物(F)を粒子(A)の製造の際に用いると、流動性に優れ、粗粒の含有量が低い粒子(A)を容易に得ることができ、均一であり、延伸性に優れる微多孔膜を容易に製造することができる。一方、Mwが前記範囲より小さい化合物(F)を粒子(A)の製造の際に用いると、得られた粒子(A)を用いて成形体を製造する際に、化合物(F)がブリードアウトして品質不良が生じる恐れがある。一方、Mwが前記範囲より大きい化合物(F)を粒子(A)の製造の際に用いると、得られた粒子(A)を用いて得られた成形体に、該化合物(F)が異物として組み込まれる恐れがある。
【0051】
化合物(F)の具体例として、例えば、例えば、(株)ADEKA製の「アデカプルロニック(登録商標)」シリーズが挙げられる。これらの中でも、入手容易性、粗粒発生抑制能力などの観点から、「アデカプルロニック(登録商標)L-71(Mw:3,760)」、「アデカプルロニック(登録商標)L-72(Mw:4,700)」、「アデカプルロニック(登録商標)L-31(Mw:1,700)」、「アデカプルロニック(登録商標)P-85(Mw:7,430)」、「アデカプルロニック(登録商標)F-68(Mw:15,100)」、「アデカプルロニック(登録商標)F―88(Mw:19,300)」、「アデカプルロニック(登録商標)17-R2(Mw:3,310)」等のポリオキシアルキレングリコール;「アデカプルロニック(登録商標)TR-701(Mw:5,060)」、「アデカプルロニック(登録商標)TR-702(Mw:5,390)」、「アデカプルロニック(登録商標)TR-913R(Mw:4,560)」等のエチレンジアミンベースポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。前記以外の化合物(F)の具体例として、花王(株)製「エマルゲン108(Mw:769)」、「エマルゲン109P(Mw:970)」;川研ファインケミカル(株)製「アミゼット(登録商標)5C(Mw:647)」、「アセチレノール(登録商標)E13T(Mw:444)」が挙げられる。
【0052】
粒子(A)中の化合物(F)の含有量は、好ましくは6~1,000ppm、より好ましくは8~600ppm、さらに好ましくは10~400ppmである。化合物(F)の含有量が前記範囲にある粒子(A)は、流動性に優れ、粗粒の含有量が低い粒子となりやすく、延伸性に優れる微多孔膜を容易に製造することができる。
【0053】
前記化合物(F)は、通常、粒子(A)の重合段階で添加される、また、重合後に添加され得る添加剤の一つである、帯電防止剤に由来する化合物である。このため、粒子(A)中の前記化合物(F)の含有量は、粒子(A)を製造する際の化合物(F)の添加量で調節することが可能である。
前記粒子(A)中の化合物(F)の含有量は、液体クロマトグラフィー質量(LC-MS)分析等から算出できる。
【0054】
<エチレン系重合体粒子の製造方法>
前記エチレン系重合体粒子の製造方法としては特に制限されないが、下記工程[α]および[β]を含む方法が好ましい。
【0055】
工程[α]:金属ハロゲン化物とアルコールとを炭化水素溶媒中で接触させる工程(1)、ならびに、前記工程(1)で得られた成分と有機アルミニウム化合物および/または有機アルミニウムオキシ化合物とを接触させる工程(2)を含む、懸濁液を得る工程<i>、
前記工程<i>で得られた懸濁液と、下記一般式[II]で表される遷移金属化合物(B)とを接触させる工程<ii>、ならびに
前記化合物(F)を添加する工程<iii>
を含み、前記工程<iii>を、前記工程<i>と前記工程<ii>の間、および/または、前記工程<ii>の後に実施してオレフィン重合用触媒含有液を製造する工程
【0056】
工程[β]:前記エチレン重合用触媒含有液の存在下、エチレンを単独重合させることにより、または、エチレンと炭素原子数3~20の直鎖状もしくは分岐状のα-オレフィンとを共重合させることによりエチレン系重合体粒子を製造する工程
【0057】
【0058】
式[II]中、Mはチタン、ジルコニウム、またはハフニウムを示し、
mは1~4の整数を示し、
R1~R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、
R6は、水素原子、1級または2級炭素のみからなる炭素数1~4の炭化水素基、炭素数4以上の脂肪族炭化水素基、アリール基置換アルキル基、単環性または二環性の脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基およびハロゲン原子から選ばれ、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0059】
(金属ハロゲン化物)
前記工程[α]で用いられる金属ハロゲン化物としては、前記比表面積を有するエチレン系重合体粒子を得るために、好ましくはマグネシウムのハロゲン化物を使用する。マグネシウムのハロゲン化物として好ましくは、MgI2、MgCl2であり、より好ましくはMgCl2である。MgCl2から前記工程<i>で懸濁液を得ることで、比表面積の非常に高いエチレン系重合体粒子を生成することができる傾向にある。
【0060】
さらに、用いる金属ハロゲン化物(特にマグネシウムのハロゲン化物)の前記エチレン重合用触媒含有液中の濃度が、エチレン系重合体粒子の比表面積に影響し、前記濃度が高いと比表面積が高くなる傾向にある。前記金属ハロゲン化物(特にマグネシウムのハロゲン化物)の前記エチレン重合用触媒含有液中の濃度は、0.10~5.0mmol/Lであることが好ましく、0.20~3.0mmol/Lであることがより好ましく、0.30~2.0mmol/Lであることがさらに好ましい。
【0061】
前述した通り、製造時に用いたマグネシウムハロゲン化物の一部は、通常、エチレン系重合体粒子中に含められ、そのマグネシウム含有量は、製造時のマグネシウムハロゲン化物の濃度に対応する。本発明におけるエチレン系重合体粒子は、前記効果を奏する点から、マグネシウムを10~2,000ppm含むことが好ましく、20~1,000ppm含むことがより好ましく、30~500ppm含むことがさらに好ましい。
【0062】
(アルコール)
前記工程[α]で用いられるアルコールとしては、炭素原子数1~25のアルコールが挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、オレイルアルコール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ヘキシルドデカノール、2-オクチルデカノール、2-オクチルドデカノール、イソヘキサデカノール、イソエイコサノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素原子数1~25のアルコール類;トリクロロメタノール、トリクロロエタノール、トリクロロヘキサノールなどの炭素原子数1~25のハロゲン含有アルコール類;フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、クミルフェノール、ナフトールなどのアルキル基を有してもよい炭素原子数6~25のフェノール類等が挙げられる。
前記アルコールは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0063】
なお、炭素数が13~25のアルコールなどの、炭素数が相対的に多いアルコールがエチレン系重合用触媒含有液中に存在する場合には、エチレンの重合反応をマイルドに進行させることが期待でき、その結果、重合時の発熱の偏在が抑制されることも期待できる。重合時の発熱の偏在の抑制は、生成した重合体鎖が絡み合い構造を取ることの抑制に繋がり、結果として、得られる成形体(微多孔膜)の性能向上につながると考えられる。
【0064】
用いるアルコールの量は、金属ハロゲン化物が溶解する量であれば特に制限されないが、金属ハロゲン化物のアルコール錯体を容易に形成することができる等の点から、金属ハロゲン化物1モル当たり、好ましくは0.1~50モル、より好ましくは0.5~30モル、さらに好ましくは1~20モル、特に好ましくは2~15モルである。
【0065】
(炭化水素溶媒)
前記炭化水素溶媒としては特に制限されないが、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、溶解性および反応温度の等の点から、デカン、ドデカン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンが好ましい。
前記炭化水素溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0066】
用いる炭化水素溶媒の量は、金属ハロゲン化物が溶解する量であれば特に制限されないが、金属ハロゲン化物のアルコール錯体を容易に形成することができる等の点から、金属ハロゲン化物1モル当たり、好ましくは0.1~100モル、より好ましくは0.2~50モル、さらに好ましくは0.3~40モル、特に好ましくは0.5~30モルである。
【0067】
(有機アルミニウム化合物)
前記有機アルミニウム化合物としては、下記式(Al-1)で表される化合物を用いることができる。
Ra
nAlX3-n ・・・(Al-1)
(式(Al-1)中、Raは炭素原子数1~12の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子または水素原子であり、nは1~3である。)
【0068】
前記炭素数1~12の炭化水素基は、例えば、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルキル基または炭素数6~12のアリール基であり、具体例としては、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基(iso-Bu)、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、イソプレニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基が挙げられる。
【0069】
前記式(Al-1)で表される有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;トリイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド;メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドが挙げられる。
【0070】
また、前記有機アルミニウム化合物として、下記式(Al-2)で表される化合物を用いることもできる。
【0071】
Ra
nAlY3-n ・・・(Al-2)
[式(Al-2)中、Raは前記式(Al-1)と同様の基であり、
Yは-ORb、-OSiRc
3、-OAlRd
2、-NRe
2、-SiRf
3または-N(Rg)AlRh
2で表される基であり、
nは1~2の整数である。]
【0072】
前記Rb、Rc、RdおよびRhとしては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基が挙げられる。
前記Reとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基、トリメチルシリル基が挙げられる。
前記RfおよびRgとしては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0073】
前記式(Al-2)で表される有機アルミニウム化合物としては、具体的には、以下のような化合物が用いられる。
【0074】
(i)Ra
nAl(ORb)3-nで表される化合物
該化合物としては、例えば、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウム-2-エチルヘキソキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられる。
【0075】
(ii)Ra
nAl(OSiRc
3)3-nで表される化合物
該化合物としては、例えば、Et2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2Al(OSiMe3)、(iso-Bu)2Al(OSiEt3)が挙げられる。
【0076】
(iii)Ra
nAl(OAlRd
2)3-nで表される化合物
該化合物としては、例えば、Et2AlOAlEt2、(iso-Bu)2AlOAl(iso-Bu)2が挙げられる。
【0077】
(iv)Ra
nAl(NRe
2)3-nで表される化合物
該化合物としては、例えば、Me2AlNEt2、Et2AlNHMe、Me2AlNHEt、Et2AlN(SiMe3)2、(iso-Bu)2AlN(SiMe3)2が挙げられる。
【0078】
(v)Ra
nAl(SiRf
3)3-nで表される化合物
該化合物としては、例えば、(iso-Bu)2AlSiMe3が挙げられる。
【0079】
(vi)Ra
nAl〔N(Rg)AlRh
2〕3-nで表される化合物
該化合物としては、例えば、Et2AlN(Me)AlEt2、(iso-Bu)2AlN(Et)Al(iso-Bu)2が挙げられる。
【0080】
また、前記有機アルミニウム化合物として、第I族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物である、下記式(Al-3)で表される化合物を用いることもできる。
【0081】
M1AlRj
4 ・・・(Al-3)
[式(Al-3)中、M1はLi、NaまたはK等の第I族金属原子であり、Rjは炭素数1~15の炭化水素基である。]
【0082】
前記式(Al-3)で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、LiAl(C2H5)4、LiAl(C7H15)4が挙げられる。
【0083】
前述した有機アルミニウム化合物のうち、前記式(Al-1)で表される化合物が好ましく、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが特に好ましい。
【0084】
(有機アルミニウムオキシ化合物)
前記有機アルミニウムオキシ化合物としては特に制限されず、従来公知のアルミノキサン(特開平2-78687号公報に例示されているベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物や、特開2021-147437号公報に例示されているボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を含む)を用いることができる。
【0085】
有機アルミニウムオキシ化合物としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサンが挙げられ、具体例としては、特開2021-147437号公報に記載の有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
前記有機アルミニウムオキシ化合物は、1種用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0086】
用いる有機アルミニウム化合物および有機アルミニウムオキシ化合物の量は、金属ハロゲン化物1モル当たり、好ましくは0.1~50モル、より好ましくは0.2~30モル、さらに好ましくは0.5~20モル、特に好ましくは1.0~10モルである。
【0087】
<その他の成分>
本微多孔膜は、粒子(A)以外のその他の成分を含んでいてもよい。
該その他の成分としては特に制限されず、従来公知の成分が挙げられるが、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤等それ自体公知の各種安定剤や、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、フィラー、鉱物油系軟化剤、石油樹脂、ワックス等が挙げられる。
前記その他の成分はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0088】
本微多孔膜中の前記その他の成分の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、より好ましくは0~5質量%であり、本微多孔膜は前記その他の成分を含まないことが特に好ましい(本微多孔膜中の前記その他の成分の含有量は特に好ましくは0質量%である)。
【0089】
<本微多孔膜の物性>
本微多孔膜の厚みは、好ましくは5~50μmであり、より好ましくは10~40μmであり、さらに好ましくは15~30μmである。微多孔膜の厚みは、良好な膜強度を得る観点から、5μm以上であることが好ましく、良好な電池性能を得るという観点から50μm以下であることが好ましい。
【0090】
≪本微多孔膜の製造方法≫
本微多孔膜は、下記工程(a)~(e)を含む方法で製造されることが好ましい。該方法により得られた微多孔膜は、延伸性に優れる。
(a)粒子(A)と溶媒とを含む混練物を調製する工程
(b)前記混練物を、粒子(A)の溶媒に対する溶解温度より高い温度条件下で成形し、シート状成形体を得る工程
(c)前記シート状成形体をさらに延伸する工程
(d)前記シート状成形体から前記溶媒を除去する工程
(e)前記工程(c)および(d)を経て得られた成形体を熱固定する工程
【0091】
<工程(a)>
工程(a)は、粒子(A)と溶媒とを含む混練物を調製する工程であり、粒子(A)と溶媒とを溶融混練して混練物を調製することが好ましい。
溶媒としては、液状、または、固体状で高温時に液状になるもので、かつ、後述の洗浄溶媒で抽出可能なものであれば、公知のものを使用できる。例えば、室温で液状の溶媒を用いた場合、比較的高倍率の延伸が可能となる傾向にある。このような液状の溶媒としては、特に限定されないが、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルを用いることができる。
【0092】
安定なシート状成形体を得るためには、流動パラフィンのような不揮発性の液状の溶媒を用いることが好ましい。また、固体状で高温時に液状になる溶媒を用いることも好ましい。加熱溶融混練状態においてはポリオレフィン樹脂組成物と混和状態になるが、室温では固体状の可塑剤を液状の可塑剤に混合してもよい。このような可塑剤としては、例えば、常温で固体であるパラフィンワックス、ステアリルアルコールおよびセリルアルコールなどの高級脂肪族アルコールが挙げられる。
【0093】
溶媒の使用量としては、粒子(A)および溶媒からなる混練物の50~95質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましい。該溶媒量は、適度で均質な孔径の微多孔膜を得る観点から、前記下限値以上であることが好ましく、粒子(A)と溶媒との均一な混練物を得る観点から、前記上限値以下であることが好ましい。
【0094】
前記混練物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
前記溶融混練の方法は特に限定されないが、公知の方法により、混練りして調製すればよく、例えば、粒子(A)と溶媒をバンバリーミキサー、ニーダー等の混練機や二軸押出機を用いてバッチ式で混練りして混練物を得ることができる。溶融混練の温度は、通常、160~300℃であり、好ましくは180~280℃である。
【0095】
<工程(b)>
工程(b)は、前記混練物を、粒子(A)の溶媒に対する溶解温度より高い温度条件下で成形し、シート状成形体を得る工程である。
溶融混練した前記混練物を、熱プレスでシート状成形体にしてもよく、Tダイ等を取り付けた押出機等を用いてシート状成形体にしてもよく、一旦冷却してペレット化した後に再度押出機を介してダイから押し出すことでシート状成形体にしてもよい。また、二軸押出機や連続式混練機で混練りを行い、混練機の先端につけたダイでシート状成形体にしてもよい。
【0096】
熱プレス時の温度、または押し出し時の温度は、粒子(A)の溶媒に対する溶解温度より高い温度であることが好ましく、通常、140~280℃である。
ダイとしては、通常、シート用ダイを用いるが、二重円筒状の中空状ダイ、インフレーションダイ等も用いることができる。
【0097】
シート状に成形するに際しては、前記方法で得られるシート状成形体をさらに急冷してもよい。この時、過冷却度(ΔT)が20℃以上になる条件で急冷することがより好ましい。急冷操作を行うことにより、粒子(A)の相が溶媒によってミクロ相分離された相分離構造を固定化することができ、皮膜強度をより高めることができる。
【0098】
得られるシート状成形体の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1~30mm、より好ましくは0.2~20mmである。なお、シート状成形体としては、ゲル状のものが好ましい。
【0099】
<工程(c)>
工程(c)は、前記シート状成形体をさらに延伸する工程である。該工程は後述する工程(d)の前に実施してもよく、後に実施してもよく、工程(c)・(d)の順を経て得られた成形体に対してさらに実施してもよい。すなわち、前記シート状成形体を延伸した後に前記溶媒を除去してもよく、前記シート状成形体から前記溶媒を除去した後に延伸してもよく、前記シート状成形体を延伸した後に前記溶媒を除去しさらに延伸してもよい。
【0100】
前記延伸は、シート状成形体を加熱後、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法又はこれらの方法の組合せによって所定の倍率で行う。延伸は、一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。また二軸延伸の場合は、同時二軸延伸、逐次延伸又は多段延伸(例えば、同時二軸延伸および逐次延伸の組合せ)のいずれでもよいが、特に同時二軸延伸が好ましい。延伸により、得られる微多孔膜の機械的強度が向上する傾向にある。
【0101】
延伸倍率は、シートの厚みによって異なるが、一軸延伸を行う場合は2倍以上とすることが好ましく、3~30倍とすることがより好ましい。二軸延伸では、いずれの方向でも少なくとも3倍以上とし、面倍率で9倍以上とするのが好ましく、面倍率で25倍以上とするのがより好ましい。面倍率で9倍以上とすることにより、突刺強度等が向上する。延伸温度は、通常100~140℃、好ましくは110~120℃の範囲で行う。
【0102】
<工程(d)>
工程(d)は、前記シート状成形体から前記溶媒を除去する工程である。該工程は前述の通り、工程(c)の前に実施してもよく、後に実施してもよい。また、工程(d)・(c)の順を経て得られた成形体に対して、残存溶媒除去のためにさらに実施してもよい。
溶媒の除去(洗浄)には洗浄溶媒を用いる。粒子(A)の相は、工程(a)で用いた溶媒とミクロ相分離しているので、該溶媒を抽出して除去すると多孔質の膜が得られる。前記洗浄溶媒は、公知の洗浄溶媒を使用することができ、例えば、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素;三フッ化エタン等のフッ化炭化水素;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;メチルエチルケトン等の易揮発性溶媒が挙げられる。
【0103】
溶媒の除去(洗浄)方法は、延伸後の膜又はシートを洗浄溶媒に浸漬する方法、延伸後の膜又はシートに洗浄溶媒をシャワーする方法、又はこれらの組合せによる方法等により行うことができる。洗浄溶媒による洗浄は、残存溶媒がその添加量に対して1質量部未満になるまで行うことが好ましい。
【0104】
<工程(e)>
工程(e)は、前記工程(c)および(d)を経て得られた微多孔質構造を有する成形体を熱固定する工程である。該熱固定は、延伸時に作用した応力残留による微多孔膜の延伸方向への収縮を防ぐことを目的とする。
【0105】
熱固定の温度は、好ましくは80℃以上160℃未満である。
熱固定の方法としては、公知の方法を用いればよく、具体的には、連続熱風炉へ通すことで、熱固定後の微多孔膜の長さが10~50%減少する程度に熱収縮させる方法(この方法を「緩和」ともいう。)や延伸方向の寸法が変化しないように固定する方法が挙げられる。
【0106】
また、熱固定の前に、前記工程(c)および(d)を経て得られた成形体を、加熱乾燥法又は風乾法等により乾燥することも好ましい。乾燥温度は、粒子(A)の結晶分散温度以下の温度であることが好ましく、特に結晶分散温度より5℃以上低い温度であることが好ましい。
【0107】
該乾燥処理により、本発明の目的を損なわない範囲で、成形体が乾燥されれば、特に制限はないが、乾燥後の成形体100質量部に対して、微多孔膜中に残存する洗浄溶媒の含有量を5質量部以下にすることが好ましく、3質量部以下にすることがより好ましい。乾燥が不十分で膜中に洗浄溶媒が多量に残存していると、後の熱固定で空孔率が低下し、透過性が悪化する場合がある。
【0108】
<セパレータ>
本微多孔膜は、その優れた延伸性などの特徴から、フィルム、微多孔膜、また、セパレータの原料として有用であり、特に、リチウム二次バッテリー、ニッケル-水素バッテリー、ニッケル-カドミウムバッテリー、ポリマーバッテリー等のバッテリーセパレータ用として有用である。本微多孔膜から得られるバッテリーセパレータは、膜の乾燥工程でポリマーが融解し難いことから、本発明の要件を満たさないエチレン系重合体粒子からなる微多膜より得られるバッテリーセパレータよりも高透過性で熱収縮率に優れ、非常に高い安全性を有すると考えられる。そのため、本微多孔膜から得られるバッテリーセパレータは、安全性の点で非常に有用であるため、リチウムバッテリー用セパレータとして特に好適である。
【0109】
セパレータとして用いる場合、1種または2種以上の粒子(A)で構成された単層または多層構造の多孔性樹脂フィルムとすることが好ましい。
セパレータの厚みは、例えば、5~30μmである。
【実施例0110】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0111】
<比表面積>
高精度ガス吸着装置(マイクロトラック・ベル(株)製、LA-950)を用いて、窒素ガス吸着法にて、エチレン系重合体粒子の吸脱着等温線を測定した。
解析法としてBET法により、吸脱着等温線からエチレン系重合体粒子の比表面積を求めた。
なお、吸脱着等温線を測定する前に、前処理装置(マイクロトラック・ベル(株)製、BELPREP VAC-II)を用いて脱気処理を行った。
【0112】
<極限粘度[η]>
エチレン系重合体粒子の極限粘度[η]は、該粒子をデカリンに溶解させ、全自動粘度測定装置((株)離合社製、VMR-053UPC)を用いて、温度135℃のデカリン中で測定した。
【0113】
<かさ密度>
エチレン系重合体粒子のかさ密度は、規格形カサ比重測定器(筒井理化学器械(株)製、JIS K 6720 塩化ビニール樹脂用)を用いて測定した。
具体的には、予め質量を測定した付属の100mLSUS容器をセットし、規格形カサ比重測定器(筒井理化学器械(株)製、JIS K-6720 塩化ビニール樹脂用)のロートからエチレン系重合体粒子を充填した。SUS容器上の余分なエチレン系重合体粒子をヘラで落として正確に100mLに調整して再度質量を測定し、かさ密度を算出した。
【0114】
<融点>
示差走査熱量測定器(TA Instruments社製 Discovery DSC2500)を用いて、窒素雰囲気下試料(約5mg)を(1)10℃/分で30℃から200℃まで昇温して10分間保持し、(2)10℃/分で30℃まで冷却して30℃で1分間保持した後、(3)10℃/分で200℃まで昇温させた。前記(1)の昇温過程における結晶溶融ピークのピーク頂点の温度を融点とした。
【0115】
[合成例1]成分(i)の調製
充分に窒素置換した撹拌機付きの1Lガラス容器に、無水塩化マグネシウム66.1g(0.694mol)、脱水デカン246gおよび2-エチルヘキサノール271g(2.08mol)を装入し、145℃で4時間反応を行い、Mg原子換算で1.0mol/Lの均一透明な成分(i')を得た。
前記成分(i')を脱水デカンで希釈し、Mg原子換算で0.25mol/Lの均一透明な成分(i)を得た。
【0116】
[合成例2]エチレン系重合体粒子(A-1)の製造
充分に窒素置換した撹拌機付き容量1.6m3の反応器に脱水デカン721kg、トリイソブチルアルミニウムをAl原子換算で2.7mol装入した。60℃に昇温後、前記成分(i)をMg原子換算で0.86mol装入して15分間撹拌した。その後40℃まで冷却し、反応器内圧が0.1MPaGになるまでエチレンガスを吹き込んだ。次いで下記遷移金属化合物(B-1)をTi原子換算で4.3mmolを装入し、次いでアデカプルロニック(登録商標)L-71((株)ADEKA製)を5.8g、水素を7.2NL装入した後、全圧が0.6MPaGとなるようにエチレンガスを供給しながら、50℃で119分間重合反応を行った。重合終了後、デカンでろ過洗浄し、ヘキサン洗浄後80℃で18時間減圧乾燥しすることで、エチレン系重合体粒子(A-1)を52.5kg得た。得られたエチレン系重合体粒子の極限粘度[η]は22dl/g、かさ密度は0.065g/mL、比表面積は3.3m2/g、融点は140.3℃であった。
【0117】
【化4】
[式(B-1)中、
tBuは、tert-ブチル基を示す。]
【0118】
[エチレン系重合体粒子(CA-1)]
エチレン系重合体粒子(CA-1)として、下記物性の重合体を用いた。
・極限粘度[η]:22dl/g
・比表面積:0.9m2/g
・かさ密度:0.42g/mL
・融点:135.7℃
【0119】
[実施例1]
製造例2で得られたエチレン系重合体粒子(A-1)と流動パラフィンとを、20/80の質量比で、200℃にてバッチ式混練機(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練した。得られた混練物を200℃の熱プレスで、厚さ0.5mmのシート状成形体を得た。得られたシート状成形体を、バッチ式二軸延伸機を用いて、延伸温度115℃にて、6×6倍に同時二軸延伸を行った。延伸後、ヘキサンを用いて流動パラフィンを抽出して除去し、室温で乾燥した。次いで、125℃で1分間、熱固定を行い、厚さ15μmの微多孔膜を得た。微多孔膜は、穴が開くことなく製膜できた。
【0120】
[比較例1]
エチレン系重合体粒子(A-1)の代わりに、エチレン系重合体粒子(CA-1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、微多孔膜を作製した。得られた微多孔膜には、穴開き(破れ)が生じた。