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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136964
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置及び加速度計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/125 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01P15/125 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048284
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 洋
(57)【要約】
【課題】増幅した信号の飽和を抑制しつつ高精度な計測データを取得する。
【解決手段】入力信号(Sg)を増幅した増幅信号(Sa)を生成するアナログフロントエンド回路(1)と、増幅信号(Sa)をデジタル値の出力データに変換するように構成されたA/D変換回路(2)と、出力データ(Dt)に基づいて、増幅信号(Sa)が飽和しないようにアナログフロントエンド回路(1)を調整する構成の入力調整回路(3)と、を有し、A/D変換回路(2)のサンプリングレートは、アナログフロントエンド回路(1)に入力される入力信号の最大周波数よりも高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサから出力されるアナログの入力信号を受けてデジタルの出力データに変換する構成の半導体装置であって、
前記入力信号を増幅した増幅信号を出力するように構成されたアナログフロントエンド回路と、
前記増幅信号をデジタル値の出力データに変換するように構成されたA/D変換回路と、
前記出力データを取得し、前記出力データに基づいて前記増幅信号が前記アナログフロントエンド回路の処理可能な範囲内に収まるように前記アナログフロントエンド回路を調整する構成の入力調整回路と、を有し、
前記A/D変換回路のサンプリングレートは、前記アナログフロントエンド回路に入力される前記入力信号の最大周波数よりも高く構成されている半導体装置。
【請求項2】
前記アナログフロントエンド回路は、複数の増幅率から1の前記増幅率を選択可能な構成を有し、
前記入力調整回路は、前記アナログフロントエンド回路に複数の前記増幅率から適切な1の前記増幅率を選択させる構成を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記入力調整回路は、前記出力データが予め設定されている第1範囲を超えたときに前記アナログフロントエンド回路に現在の増幅率よりも低い増幅率に変更させる構成を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記入力調整回路は、現在の前記出力データと前記出力データの変化率に基づいて前記アナログフロントエンド回路の増幅率を変更させる構成を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記入力調整回路は、前記変化率から予測される出力データが予め決められた第1範囲を超えるときに前記アナログフロントエンド回路に現在の前記増幅率よりも低い前記増幅率に変更させる構成を有する請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記入力調整回路は、前記出力データが前記第1範囲及び前記第1範囲に収まる第2範囲を一定期間超えないとき、前記アナログフロントエンド回路に現在の前記増幅率よりも高い前記増幅率に変更させる構成を有する請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記アナログフロントエンド回路は、前記入力信号のオフセット補正を行う構成のオフセット補正ブロックを有し、
前記入力調整回路は、前記増幅信号が前記アナログフロントエンド回路のフルスケールに収まるように前記入力信号のオフセット量を決定し、
前記オフセット補正ブロックが前記オフセット量に基づいて前記入力信号のオフセット補正を実行する構成を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記出力データから予め決められたビット数の計測データを生成する処理回路を含む構成を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記出力データを前記オフセット量に基づいて予め決められたビット数の計測データを生成する処理回路を含む構成を有する請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
センサから出力されるアナログの入力信号を受けてデジタルの出力データに変換する構成の半導体装置であって、
前記入力信号を異なる増幅率で増幅した増幅信号を出力するように構成された複数の増幅回路を有するアナログフロントエンド回路と、
各前記増幅回路から出力された前記増幅信号をそれぞれデジタル値の出力データに変換するように構成されたA/D変換回路と、
各前記出力データに基づいて予め決められた形式の計測データを生成する構成の処理回路と、を有し、
前記処理回路は、入力される前記出力データに基づいて、各前記アナログフロントエンド回路のフルスケールに収まっている前記増幅信号から生成された1の前記出力データを選択し、選択された前記出力データから前記計測データを生成する構成の半導体装置。
【請求項11】
前記処理回路は、前記アナログフロントエンド回路のフルスケールに収まる前記増幅信号のうち、最も高い前記増幅率で増幅された前記増幅信号から生成された前記出力データを選択する請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の前記半導体装置と、
前記半導体装置に入力信号を出力する加速度センサと、を有する加速度計測装置。
【請求項13】
前記加速度センサは、MEMSセンサである請求項12に記載の加速度計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものであり、半導体装置を用いた加速度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造プロセスを用いて製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の技術を用いたMEMSセンサが製造されている(例えば、特許文献1参照)。MEMSセンサの出力信号は微小であり、MEMSセンサを用いる機器では出力信号を増幅している。また、MEMSセンサ以外のセンサの出力も増幅して用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-020325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センサからの入力信号を増幅した増幅信号をデジタル化する装置において、増幅した増幅信号の飽和を抑制しつつ、計測データの高精度化の要求が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本開示は、半導体装置であって、センサから出力されるアナログの入力信号を受けてデジタルの出力データに変換する構成である。半導体装置は、前記入力信号を増幅した増幅信号を出力するように構成されたアナログフロントエンド回路と、前記増幅信号をデジタル値の出力データに変換するように構成されたA/D変換回路と、前記出力データを取得し、前記出力データに基づいて前記増幅信号が前記アナログフロントエンド回路の処理可能な範囲内に収まるように前記アナログフロントエンド回路の増幅率を調整する構成の入力調整回路と、を有する。前記A/D変換回路のサンプリングレートは、前記アナログフロントエンド回路に入力される前記入力信号の周波数よりも高く構成されている。
【0006】
また、上記目的を達成するために本開示は、半導体装置であって、センサから出力されるアナログの入力信号を受けてデジタルの出力データに変換する構成である。半導体装置は、前記入力信号を異なる増幅率で増幅した増幅信号を出力するように構成された複数のアナログフロントエンド回路と、各前記アナログフロントエンド回路から出力された前記増幅信号をそれぞれデジタル値の出力データに変換するように構成されたA/D変換回路と、各前記出力データに基づいて予め決められた形式の計測データを生成する構成の処理回路と、を有する。前記処理回路は、入力される前記出力データに基づいて、各前記アナログフロントエンド回路のフルスケールに収まっている前記増幅信号から生成された1の前記出力データを選択し、選択された前記出力データから前記計測データを生成するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、入力信号を増幅した増幅信号の飽和を抑制するとともに高精度な計測データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態にかかる加速度計測装置の一形態の概略配置図である。
図2図2は、半導体装置の動作を示すフローチャートである。
図3図3は、MEMSセンサからの入力信号を示す図である。
図4図4は、アナログフロントエンド回路における増幅回路の増幅率の調整を行う手順を示すフローチャートである。
図5図5は、増幅率を小さくなるように調整したときの増幅信号及び出力データの変化を示す図である。
図6図6は、増幅率を大きくなるように調整したときの増幅信号及び出力データの変化を示す図である。
図7図7は、第1変形例のアナログフロントエンド回路における増幅回路の増幅率の調整を行う手順を示すフローチャートである。
図8図8は、第2変形例の半導体装置の増幅回路の増幅率の調整を行う手順を示すフローチャートである。
図9図9は、第2変形例の増幅率を調整するときの出力データを示す図である。
図10図10は、第3変形例の加速度計測装置の一実施形態の概略配置図である。
図11図11は、オフセット補正処理の手順を示すフローチャートである。
図12図12は、下方にオフセット補正処理が必要な状態の出力データ及びオフセット補正後の入力信号を示す図である。
図13図13は、第4変形例の加速度計測装置の一実施形態の概略配置図である。
図14図14は、処理回路が計測データを生成する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。
【0010】
<加速度計測装置A>
図1は、本開示の実施形態にかかる加速度計測装置Aの一形態の概略配置図である。図1に示す加速度計測装置Aは、半導体装置100と、MEMS(Micro Electro Mechanism System)センサ200と、を有する。
【0011】
加速度計測装置Aは、加速度が変化するときにMEMSセンサ200から入力信号Sgが出力され、半導体装置100の後述するアナログフロントエンド回路1に入力される。加速度計測装置Aでは、MEMSセンサ200からの入力信号Sgを増幅し、デジタルデータに変化した後、使用者が所望する形式のデータを出力する。
【0012】
<MEMSセンサ200>
ここで、MEMSセンサ200について、図面を参照して説明する。図1に示すように、MEMSセンサ200は、固定電極211、212と、可動電極220とを有する。固定電極211、212は、間隔をあけて対向して配置されている。例えば、MEMSセンサ200では、固定電極211に正の電圧が印加され、固定電極212に負の電圧が印加されている。そして、可動電極220は、固定電極211と固定電極212との間に配置されており、ばね等の弾性部材で固定電極211又は固定電極212の間を接近又は離間するように支持されている。固定電極211と可動電極220とは、コンデンサC1を構成する。また、固定電極212と可動電極220とは、コンデンサC1とは別のコンデンサC2を構成する。
【0013】
MEMSセンサ200が静止状態のとき、可動電極220は、固定電極211と固定電極212との中央に静止する。そして、MEMSセンサ200に加速度が作用すると、可動電極220は、固定電極211又は固定電極212に接近する。可動電極220が固定電極211に接近すると、固定電極211と可動電極220との距離が近づき、コンデンサC1の静電容量が大きくなる。逆に固定電極212に接近する場合も、同様に、コンデンサC2の静電容量が大きくなる。そして、コンデンサC1とコンデンサC2の容量の変化量は、加速度が大きいと大きく、小さいと小さい。MEMSセンサ200は、加速度が作用したときのコンデンサC1及びコンデンサC2の静電容量の変化量によって発生する電圧を、入力信号Sgとして半導体装置100に受け渡す。
【0014】
なお、MEMSセンサ200は、可動電極220の移動方向をZ方向とすると、+Z方向及び-Z方向に計測可能な最大の加速度(例えば、±64G)に合わせて構成されている(図3参照)。計測された加速度が小さい場合、コンデンサC1又はコンデンサC2の可動電極220の移動による静電容量の変化が微小である。つまり、計測された加速度が小さいと、入力信号Sgは微小電圧となり、その信号をデジタル化すると、変化の状態を確認できなくなる場合がある。そこで、加速度計測装置Aでは、入力信号Sgを半導体装置100で増幅し、デジタル化する構成を有している。
【0015】
なお、MEMSセンサ200は、入力信号Sgを半導体装置100に出力する。なお、本開示の加速度計測装置Aにおいて、MEMSセンサ200から出力される入力信号Sgの最大周波数は、約10kHz程度である。
【0016】
<半導体装置100>
次に半導体装置100の詳細について説明する。以下の説明において、半導体装置100は、MEMSセンサ200からの入力信号Sgに基づいて計測データDfを生成する構成を例に説明するが、別のセンサを用いる場合も、センサの構成及び最終データの形式が異なるだけで、実質的に同様の構成を有する。
【0017】
半導体装置100では、MEMSセンサ200からの出力を入力信号Sgとして受け付け、アナログフロントエンド回路1で増幅し、増幅した増幅信号SaをA/D変換回路2でデジタルデータに変換している。図1に示すように半導体装置100は、アナログフロントエンド回路1と、A/D変換回路2と、入力調整回路3と、処理回路4と、を有する。
【0018】
<アナログフロントエンド回路1>
アナログフロントエンド回路1は、増幅回路11を有する。アナログフロントエンド回路1は、複数の増幅率から選択された増幅率で入力信号Sgを増幅することができる構成である。アナログフロントエンド回路1では、入力調整回路3に接続されており、入力調整回路3からの指示を含む調整信号Sjに基づいて適切な増幅率が選択される。
【0019】
増幅回路11は、複数の増幅部111で段階的に信号を増幅する構成である。つまり、アナログフロントエンド回路1は、入力信号Sgを複数段で増幅して増幅信号Saを出力する。なお、アナログフロントエンド回路1の増幅回路11は、複数のオペアンプを用いて、入力信号Sgを複数段階で増幅している。また、アナログフロントエンド回路1は、オペアンプを用いて増幅を行う構成を例に説明しているが、これに限定されない。入力信号Sgを増幅して増幅信号Saを出力可能な構成を広く採用することができる。増幅信号Saは、電圧信号である。また、増幅回路11は、1つの増幅部111で構成されてもよい。
【0020】
増幅回路11は、一定の範囲の電圧を出力可能である。なお、以下の説明において、増幅回路11の出力可能な電圧の範囲を出力レンジと称する。増幅回路11において、増幅信号Saが増幅回路11の出力レンジの上限又は下限を超えたときには、出力レンジの上限又は下限の電圧が出力される。このような出力の状態を飽和と称する。増幅信号Saが飽和すると、飽和している間の出力の変化を取得できなくなる。そのため、半導体装置100は、増幅信号Saが飽和しないように増幅回路11の増幅率を決定する。増幅回路11の増幅率は、入力信号Sgに対する増幅信号Saの増幅率である。なお、増幅回路11は、入力調整回路3からの調整信号Sjに基づいて増幅率を変更する。
【0021】
アナログフロントエンド回路1は、不図示の記憶部を有し、増幅回路11の増幅率を決定する4つの増幅率G1~G4を記憶している。増幅率G1は、増幅回路11の出力レンジのフルスケールが、MEMSセンサ200で計測される加速度が±8Gとなるような増幅率である。増幅率G2は、増幅回路11の出力レンジのフルスケールが、MEMSセンサ200で計測される加速度が±16Gとなるような増幅率である。増幅率G3は、増幅回路11の出力レンジのフルスケールが、MEMSセンサ200で計測される加速度が±32Gとなるような増幅率である。さらに、増幅率G4は、増幅回路11の出力レンジのフルスケールが、MEMSセンサ200で計測される加速度が±64Gとなるような増幅率である。つまり、増幅率G4は、他の増幅率G1~G3に比べて小さく、換言すると、飽和しにくい増幅率である。
【0022】
例えば、MEMSセンサ200で計測する加速度が±6Gの範囲である場合、増幅回路11は増幅率G1で増幅しても増幅信号Saが飽和しない。一方、MEMSセンサ200が計測する加速度が±10Gの範囲である場合、増幅率G1で増幅すると増幅信号Saが飽和する虞がある。そこで、半導体装置100では、アナログフロントエンド回路1の増幅回路11は、増幅率G2を選択する。つまり、増幅率は、増幅信号Saがアナログフロントエンド回路1の出力レンジのフルスケールに収まるように増幅率を調整する。この調整手順の詳細は後述する。
【0023】
アナログフロントエンド回路1は、上述した増幅率G1~G4のいずれかを選択し、増幅回路11で入力信号Sgを増幅して増幅信号Saを生成する。なお、本開示において、アナログフロントエンド回路1は、4種の増幅率G1~G4を記憶する構成としているが、これに限定されず、さらに少なくてもよいし、多くてもよい。また、増幅率の基準となるMEMSセンサで計測される加速度は、上述に限定されるものではなく、これら以外の数値であってもよい。
【0024】
<A/D変換回路2>
A/D変換回路2は、A/D変換回路2は、アナログ信号をデジタルデータに変換する回路であり、アナログフロントエンド回路1からの増幅信号Saを受ける。本開示の半導体装置100では、増幅信号Saを所定のサンプリングレートでデジタル化した出力データDtを順次出力する。なお、出力データDtは、増幅信号Saを、規定のビット数(ここでは、Nビットとする)でデジタル化したデータである。
【0025】
<入力調整回路3>
入力調整回路3は、A/D変換回路2から出力された出力データDtを取得する。入力調整回路3は、出力データDtに基づいて、アナログフロントエンド回路1の増幅率を調整する構成を有する。さらに説明すると、入力調整回路3は、出力データDtに基づいて増幅信号Saが飽和しないように、増幅率を調整する調整信号Sjをアナログフロントエンド回路1に供給する。
【0026】
取得した増幅信号Saの値が増幅回路11の上限又は下限よりも十分に小さいとき、現在よりも大きい増幅率に変更する指示を含む調整信号Sjをアナログフロントエンド回路1に送る。逆に、現在の増幅信号Saが増幅回路11の上限又は下限に近いとき、現在よりも小さい増幅率に変更する指示を含む調整信号Sjをアナログフロントエンド回路1に送る。増幅率の調整手順の詳細は後述する。
【0027】
<処理回路4>
A/D変換回路2から出力された出力データDtは、処理回路4に送信される。処理回路4は、出力データDtから使用者が要求する形式の計測データDfを生成し、出力する構成を有する。例えば、本開示の加速度計測装置Aでは、出力データDtは、増幅信号Saの値をデジタル化したデータである。処理回路4は、この増幅信号Saのデジタル化値から、加速度を示す計測データDfに変換する。
【0028】
また、処理回路4は、計測データDfのビット数、サンプリングレート等を調整するように構成されてもよい。また、これら以外にも、出力データDtを使用者が必要とする形式のデータに処理可能である。さらには、使用者が出力データDtを直接処理する要求がある場合、処理回路4を省略して、A/D変換回路2からの出力データDtを直接出力してもよい。この場合、処理回路4は省略可能である。
【0029】
半導体装置100は、上述した構成を有する。
【0030】
<半導体装置100の動作>
加速度計測装置Aを例に半導体装置100の動作について図面を参照して説明する。図2は、半導体装置100の動作を示すフローチャートである。図3は、半導体装置100における入力信号Sgから計測データDfを生成する処理を示す図である。
【0031】
図3は、左から右に向かって半導体装置100における処理を示している。図3の最も左は、MEMSセンサ200で計測される加速度及び入力信号Sgを示す。左から2番目は、アナログフロントエンド回路1の出力レンジのフルスケール及び入力信号Sgを現在の増幅率で増幅した増幅信号Sを示す。右から2番目は、A/D変換回路2でデジタル化した出力データDt及びそのフルスケールを示す。最も右は、処理回路4から出力される計測データDf及びそのフルスケールを示す。
【0032】
図3に示すように、入力信号Sgを現在の増幅率で増幅した増幅信号Saがアナログフロントエンド回路1の出力レンジのフルスケールに収まる。アナログフロントエンド回路1は、増幅回路11の増幅率を調整可能である。
【0033】
MEMSセンサ200は、多少の誤差がある場合があるが、加速度0Gを中心に±64Gの加速度を計測可能な構成である。MEMSセンサ200で計測される加速度の絶対値が大きいほど、アナログフロントエンド回路1に入力される入力信号Sgの絶対値が大きくなる。絶対値が小さい信号をデジタル化すると、変化が表れにくい。そのため、半導体装置100では、アナログフロントエンド回路1で、アナログ信号である入力信号Sgを増幅した後、A/D変換回路2でデジタル化している。具体的には、以下に示すとおりである。
【0034】
図2に示すように、加速度計測装置Aにおいて、アナログフロントエンド回路1は、MEMSセンサ200からの入力信号Sgを受け付ける(ステップS101)。アナログフロントエンド回路1は、現在設定されている増幅率で入力信号Sgを増幅した増幅信号Saを生成する(ステップS102)。
【0035】
なお、アナログフロントエンド回路1の増幅率は、例えば、前回使用していた増幅率を引き継いでいる。また、計測開始時に、増幅率を新たに設定する場合、入力信号Sgが不明であるため、最も飽和しにくい増幅率G4を用いるようにしてもよい。さらには、これまでの計測した最大の加速度に基づいて決定するようにしてもよい。また、出力データDtに基づいて、調整された増幅率が使用される場合もある。増幅率の調整についての詳細は後述する。また、アナログフロントエンド回路1に入力する入力信号Sgの最大周波数は、MEMSセンサ200の構成に左右される。本開示の加速度計測装置Aにおいて、入力信号Sgの最大周波数は、約10kHzである。
【0036】
A/D変換回路2は、アナログフロントエンド回路1から出力された増幅信号Saを所定のサンプリングレートでデジタル化して出力データDtを出力する(ステップS103)。出力データDtは、Nビットのデータであり、0~2-1の数値で表されるデータである。なお、A/D変換回路2のサンプリングレートは、入力信号Sgの最大周波数よりも大きく、例えば、約100kHz~約150kHzである。
【0037】
A/D変換回路2から出力された出力データDtは入力調整回路3及び処理回路4に入力される。出力データDtは、Nビットで数値化されたデータであり、出力データDtが同じ数値であっても、増幅率G1~G4のいずれであるかによって、MEMSセンサ200の計測値は、異なる。そのため、処理回路4は、出力データDtと増幅率とに基づいて、計測データDfを生成する。すなわち、処理回路4は、現在の増幅回路11の増幅率の情報を有しており、処理回路4は、出力データDtと現在の増幅率とから、計測データDfを生成するとともに出力する(ステップS104)。
【0038】
なお、計測データDfは、例えば、MEMSセンサ200が計測可能な加速度である-64G~+64Gを16ビットで離散化したデータであり-215~215-1の数値で示される。つまり、処理回路4は、MEMSセンサ200からの入力信号Sgを増幅した増幅信号Saの電圧値をNビット化した出力データDtを、加速度を16ビットで示す計測データDfに変換する処理を行う。なお、処理回路4で処理された計測データDfは、16ビットに限定されず、使用者からの要求に合わせた、ビット数、サンプリングレートを変更する処理を実行して計測データDfを出力するようにしてもよい。また、これら以外で、使用者の要求に応じた処理が実行されるように構成されてもよい。
【0039】
次に、アナログフロントエンド回路1における増幅回路11の増幅率の調整について図面を参照して説明する。図4は、アナログフロントエンド回路1における増幅回路11の増幅率の調整を行う手順を示すフローチャートである。図5は、増幅率を小さくなるように調整したときの増幅信号Sa及び出力データDtの変化を示す図である。図6は、増幅率を大きくなるように調整したときの増幅信号Sa及び出力データDtの変化を示す図である。なお、図5は、増幅率をG2からG3に変更したときの増幅信号Sa及び出力データDtを示している。また、図6は、増幅率をG3からG2に変更したときの増幅信号Sa及び出力データDtを示している。
【0040】
図4に示すように、半導体装置100において、入力調整回路3は、出力データDtを取得する(ステップS201)。入力調整回路3は、出力データDtの範囲である第1範囲Bd1及び第2範囲Bd2を記憶している(図5、6参照)。入力調整回路3は、出力データDtが第1範囲Bd1に収まっているか否か判定する(ステップS202)。
【0041】
入力調整回路3は、出力データDtが第1範囲Bd1から外れているとき(ステップS202でNoのとき、図5参照)、入力調整回路3は、増幅信号Saが飽和する可能性が高いと判定する(ステップS203)。そして、入力調整回路3は、アナログフロントエンド回路1に対し、現在の増幅率よりも小さい増幅率に変更する指示を含む調整信号Sjを送る(ステップS204)。そして、調整信号Sjを受信したアナログフロントエンド回路1が、現在の増幅率よりも小さい増幅率に変更する(ステップS205)。そして、ステップS205の後、処理は、ステップS201に戻る。
【0042】
また、出力データDtが第1範囲Bd1内に収まっているとき(ステップS202でYesのとき)、入力調整回路3は、増幅信号Saが飽和する可能性が低いと判定する(ステップS206)。そして、入力調整回路3は、出力データDtが第2範囲Bd2に収まっているか否か判定する(ステップS207)。
【0043】
出力データDtが第2範囲Bd2から外れているとき(ステップS207でNoのとき)、入力調整回路3は、アナログフロントエンド回路1の現在の増幅率が適切であると判定する。入力調整回路3は、増幅率の変更を行わない指示を含む調整信号Sjを送る(ステップS208)。また、出力データDtが第2範囲Bd2内に収まっているとき(ステップS207でYesのとき、図6参照)、入力調整回路3は現在の増幅率では十分な増幅ができていないと判定する(ステップS209)。なお、出力データDtが第2範囲Bd2内に収まっているとの判定は、例えば、図6に示すように出力データDtの最大値が第2範囲Bd2に収まっているときを挙げることができるが、これに限定されない。
【0044】
そして、入力調整回路3は、現在の増幅率よりも大きい増幅率に変更する指示を含む調整信号Sjを送る(ステップS210)。そして、入力調整回路3から出力された調整信号Sjを受信したアナログフロントエンド回路1は、現在の増幅率よりも大きい増幅率に変更する(ステップS211)。そして、ステップS211の後、処理は、ステップS201に戻る。
【0045】
以上示したように、半導体装置100では、入力調整回路3が出力データDtに基づいて、アナログフロントエンド回路1の増幅率を調整するため、増幅信号Saの飽和を抑制しつつ、アナログフロントエンド回路1のフルスケールに近い増幅信号Saを生成できる。これにより、計測される加速度が小さいときのMEMSセンサ200の計測精度を高めるとともに、ノイズを改善することができる。
【0046】
上述したとおり、入力調整回路3は、A/D変換回路2から出力された出力データDtに基づいて、アナログフロントエンド回路1の増幅率を調整している。そのため、入力信号Sgのピーク辺りで、増幅率の調整が必要と判定されたときに、入力信号Sgの次のピークが現れる前に、アナログフロントエンド回路1の増幅率の調整を完了できることが好ましい。
【0047】
そのため、A/D変換回路2のサンプリングレートは、例えば、MEMSセンサ200からの入力信号Sgの最大周波数の約10倍~約15倍を挙げることができる。より具体的には、A/D変換回路2のサンプリングレートは、MEMSセンサ200からの入力信号Sgの最大周波数である約10kHzよりも大きい、約100kHz~150kHz程度であることが好ましい。しかしながら、A/D変換回路2のサンプリングレートは、これらの値に限定されず、上述した条件を満たす値を広く採用することができる。
【0048】
処理回路4は、入力調整回路3から調整信号Sjを受信している。処理回路4は、調整信号Sjに基づいて、アナログフロントエンド回路1の増幅回路11による増幅率を取得する。処理回路4は、増幅回路11の増幅率と、出力データDtに基づいて、デジタル処理を実行し、計測データDfを生成し出力する。具体的には、処理回路4は、現在の増幅回路11の増幅率を保持しており、調整信号Sjに基づいて、アナログフロントエンド回路1と同じ増幅率の調整を行う。本開示の半導体装置100では、処理回路4は、入力調整回路3からの調整信号Sjを受ける構成となっているが、これ限定されない。例えば、アナログフロントエンド回路1から現在の増幅率を取得するようにしてもよい。
【0049】
なお、第1範囲Bd1としては、アナログフロントエンド回路1の出力レンジのフルスケールよりも狭い範囲で設定されている。このように設定することで、第1範囲Bd1を超えた場合でも、増幅信号Saが飽和するまでに増幅率を変更することができる。これにより、増幅信号Saの飽和がすることを抑制することができる。また、第2範囲Bd2は、現在の増幅率よりも大きい増幅率で計測可能な加速度のときの増幅信号Saの取りうる範囲よりも小さい範囲である。例えば、現在の増幅率がG3である場合、増幅率G3で±16Gの加速度を計測したときの出力データDtの範囲よりも狭い範囲に設定される。第2範囲Bd2をこのように設定することで、増幅率を大きい値に変更しても、増幅信号Saが飽和することを抑制できる。
【0050】
<第1変形例>
図7は、第1変形例のアナログフロントエンド回路1における増幅回路11の増幅率の調整を行う手順を示すフローチャートである。第1変形例では、半導体装置100の構成は、図1に示す半導体装置100と同じであり、各部の詳細な説明は省略する。また、図7に示すフローチャートは、図4のフローチャートのステップS207でYesの後に続くステップS301を有する。本変形例では、ステップS301以外のステップは、図4に示すフローチャートであり、図示を省略する。
【0051】
図7に示すように、入力調整回路3は、ステップS207において、出力データDtが第2範囲Bd2に収まっていると判定されたとき(ステップS207でYesのとき)、一定の期間連続して出力データDtが第2範囲Bd2に収まっているか否か判定する(ステップS301)。
【0052】
出力データDtが一定の期間連続して第2範囲Bd2に収まっていない場合(ステップS301でNoの場合)、処理はステップS208に移行し、増幅率の調整処理を継続する。また、出力データDtが一定の期間連続して第2範囲Bd2に収まっている場合(ステップS301でYesの場合)、処理は、ステップS209に移行し、入力調整回路3は現在の増幅率では十分な増幅ができていないと判定する。その後の処理は、図1に示すフローチャートに示す通りの処理を実行する。
【0053】
このように構成することで、出力データDtが短期的に第2範囲Bd2に収まるような場合に、増幅率の変更しないようにする。例えば、短期的に入力信号Sgが小さい場合には、増幅率を変更しないようする。このようにすることで、増幅率の頻繁な変更を抑制し、処理が煩雑化することを抑制することができる。
【0054】
なお、出力データDtが連続して一定の期間、第1範囲Bd1から外れているときに、増幅率を調整するような処理を実行するようにしてもよい。しかしながら、出力データDtが第1範囲Bd1から外れたとき、増幅信号Saが飽和しやすくなっている。そのため、入力調整回路3は出力データDtが第1範囲Bd1から外れたことを検出したとき、速やかに、増幅率を下げる処理を実行する構成であることが好ましい。
【0055】
<第2変形例>
図8は、第2変形例の半導体装置100の増幅回路11の増幅率の調整を行う手順を示すフローチャートである。図9は、第2変形例の増幅率を調整するときの出力データDtを示す図である。第2変形例では、半導体装置100の構成は、図1に示す半導体装置100と同じであり、各部の詳細な説明は省略する。また、図8に示すフローチャートは、図4のフローチャートのステップS202に置き換えられるステップS302~S304を有する。本変形例では、ステップS302~S304以外のステップは、図4に示すフローチャートであり、図示を省略する。
【0056】
入力調整回路3は、出力データDtに基づいて増幅率を調整している。そして、入力調整回路3は、出力データDtが第1範囲Bd1から外れたときに小さい増幅率を選択するように調整を行う。出力データDtが第1範囲Bd1から外れる場合であっても、増幅信号Saがアナログフロントエンド回路1の出力レンジのフルスケールに収まり、増幅信号Saが飽和しない場合もある。このように増幅信号Saが飽和しない場合に、増幅率を低く抑えると、増幅信号Saのレンジが狭くなり、精度が低下する虞がある。
【0057】
そこで、入力調整回路3は、出力データDtを取得した後(ステップS201の後)、入力調整回路3は現在の出力データDtの変化率を算出する(ステップS302)。なお、出力データDtの変化率は、以前に取得した出力データに基づいて微分演算によって算出する方法を挙げることができるが、これに限定されない。
【0058】
入力調整回路3は、出力データDt及び変化率から次に取得されると予測される出力データである予測出力データDsを算出する(ステップS303)。そして、予測出力データDsが第1範囲Bd1に収まるか否か判定する(ステップS304)。
【0059】
予測出力データDsが第1範囲Bd1を超えるとき(ステップS304でNoのとき、図9参照)、入力調整回路3は、増幅信号Saが飽和する可能性があると判定する(ステップS203に移行する)。また、予測出力データDsが第1範囲Bd1に収まるとき(ステップS303でYesのとき)、入力調整回路3は、増幅信号Saが飽和する可能性が低いと判定する(ステップS206に移行する)。
【0060】
以上示したように、本変形例のように入力調整回路3の処理を実行することで、増幅信号Saの飽和を抑制しつつ、MEMSセンサ200で加速度を精度よく計測することができる。
【0061】
<第3変形例>
図10は、第3変形例の加速度計測装置Bの一実施形態の概略配置図である。図10に示す加速度計測装置Bが、アナログフロントエンド回路1bを含む半導体装置100bを有する構成である点で、図1に示す加速度計測装置Aと異なる。加速度計測装置Bの加速度計測装置Aと実質上同じ部分には同じ符号を付すとともに、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0062】
図10に示すように、半導体装置100bのアナログフロントエンド回路1bは、増幅回路11bと、オフセット補正ブロック12とを有する。アナログフロントエンド回路1bの増幅回路11bは増幅率が固定である点で、アナログフロントエンド回路1の増幅回路11と異なる。
【0063】
オフセット補正ブロック12は、増幅回路11よりも前段に配置されている。オフセット補正ブロック12は、入力信号Sgをオフセットする構成を有する。オフセット補正ブロック12は、入力調整回路3からの調整信号Skを受け取る。調整信号Skには、入力信号Sgをオフセットさせるための調整情報を含み、オフセット補正ブロック12は、調整情報に基づいて、入力信号Sgを増減するオフセット処理を実行する。
【0064】
ここで、入力信号Sgのオフセット補正処理について図面を参照して説明する。図11は、オフセット補正処理の手順を示すフローチャートである。図12は、オフセット補正処理が必要な状態の入力信号Sg、増幅信号Sa及び出力データDtのオフセット補正後の状態を示す図である。
【0065】
図11に示すように、入力調整回路3は、出力データDtが第1範囲Bd1の上限値Bd11よりも大きくなったか否か判定する(ステップS401)。入力調整回路3により出力データDtが第1範囲Bd1の上限値Bd11よりも大きいと判定されたとき(ステップS401でYesのとき、図12参照)、入力調整回路3は、入力信号Sgを予め決められた値だけ下方にオフセット修正する調整情報を含む調整信号Skをオフセット補正ブロック12に送信する(ステップS402)。オフセット補正ブロック12は、調整信号Skに基づいて、入力信号Sgを下方にオフセット補正する(ステップS403)。そして、処理は、ステップS401に移行し、オフセット処理を継続する。
【0066】
出力データDtが第1範囲Bd1の上限値Bd11以下のとき(ステップS401でNoのとき)、入力調整回路3により出力データDtが第1範囲Bd1の下限値Bd12よりも小さいか否か判定する(ステップS404)。入力調整回路3により出力データDtが第1範囲Bd1の下限値Bd12よりも小さいと判定したとき(ステップS404でYesのとき、図12参照)、入力調整回路3は、入力信号Sgを予め決められた値だけ上方にオフセット修正する調整情報を含む調整信号Skをオフセット補正ブロック12に送信する(ステップS405)。
【0067】
オフセット補正ブロック12は、調整信号Skに基づいて、入力信号Sgを上方にオフセット補正する(ステップS406)。そして、処理は、ステップS401に移行し、オフセット処理を継続する。また、出力データDtが第1範囲Bd1の下限値Bd12以上のとき(ステップS404でNoのとき)、入力調整回路3は、オフセット補正を行わない調整情報を含む調整信号Skをオフセット補正ブロック12に送信する(ステップS407)。そして、処理は、ステップS401に移行し、オフセット処理を継続する。
【0068】
図10に示すように入力調整回路3は、処理回路4に調整信号Skを供給している。これにより、処理回路4は、オフセット処理された出力データDtを入力信号Sgに対して実施したオフセット処理と逆のオフセット処理を実行するとともに、使用者が所望する形式の計測データDfを生成する。このように構成することで、増幅信号Saの飽和を抑制できるとともに、精度の高い計測データを使用者に提供することができる。
【0069】
なお、本実施形態において、オフセット補正ブロック12が入力信号Sgを補正する構成としているが、アナログフロントエンド回路1の増幅回路11が複数段の増幅部111を有する場合、少なくとも1つの増幅部111で増幅された信号をオフセット補正するように構成されてもよい。
【0070】
また、上述した各半導体装置100、100bでは、処理回路4を含み、処理回路4が出力データDtから計測データDfを出力する構成を有する。しかしながら、使用者が出力データDtをそのまま取得する構成を望む場合、処理回路4を省略した構成であってもよい。
【0071】
<第4変形例>
図13は、第4変形例の加速度計測装置Cの一実施形態の概略配置図である。図13に示す加速度計測装置Cが、アナログフロントエンド回路1c及びA/D変換回路2cを有する半導体装置100cを有するとともに入力調整回路3を備えない構成である点で、図1に示す加速度計測装置Aと異なる。加速度計測装置Cの加速度計測装置Aと実質上同じ部分には同じ符号を付すとともに、実質上同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0072】
図13に示すように、アナログフロントエンド回路1cは、第1増幅回路11c1と、第2増幅回路11c2とを有する。入力信号Sgは、第1増幅回路11c1及び第2増幅回路11c2の両方に入力される。第1増幅回路11c1は、増幅率G01で入力信号Sgを増幅した第1増幅信号Sa1を出力する。また、第2増幅回路11c2は、増幅率G02で入力信号Sgを増幅した第2増幅信号Sa2を出力する。なお、本変形例では、増幅率G02は、増幅率G01よりも大きい。
【0073】
図13に示すように、アナログフロントエンド回路1cにおいて、第1増幅回路11c1及び第2増幅回路11c2は、共通の第1段目の増幅部111を有してもよい。第1段目の増幅部111で電圧信号に変換するとともに増幅された信号が第1増幅回路11c1及び第2増幅回路11c2でそれぞれ異なる増幅率で増幅される構成となっている。
【0074】
A/D変換回路2cは、第1変換回路21及び第2変換回路22を有する。第1変換回路21は、第1増幅信号Sa1を受信し、第1増幅信号Sa1をデジタル化した第1出力データDt1を生成する。第1出力データDt1は、処理回路4cに供給される。また、第2変換回路22は、第2増幅信号Sa2を受信し、第2増幅信号Sa2をデジタル化した第2出力データDt2を生成する。第2出力データDt2は、処理回路4cに供給される。
【0075】
処理回路4cは、第1出力データDt1及び第2出力データDt2を受信し、第1出力データDt1又は第2出力データDt2のいずれか一方を用いて、計測データDfを生成する。
【0076】
ここで、処理回路4cにおける計測データDfを生成する手順について図面を参照して説明する。図14は、処理回路4cが計測データDfを生成する手順を示すフローチャートである。
【0077】
図14に示すように、入力信号Sgが入力されると、第1増幅回路11c1で入力信号Sgを第1増幅率G01で増幅した第1増幅信号Sa1を生成する(ステップS501)。同時に、第2増幅回路11c2で入力信号を第2増幅率G02で増幅した第2増幅信号Sa2を生成する(ステップS501)。
【0078】
そして、A/D変換回路2cの第1変換回路21が第1増幅信号Sa1をデジタル化した第1出力データDt1を生成して処理回路4cに供給する(ステップS502)。同時に、第2変換回路22が第2増幅信号Sa2をデジタル化した第2出力データDt2を生成して処理回路4cに供給する(ステップS502)。
【0079】
処理回路4cは、第2出力データDt2を参照し、第2出力データDt2が第1範囲Bd1に収まっているか否か判定する(ステップS503)。第2出力データDt2が第1範囲Bd1に収まっているとき(ステップS503でYesのとき)、処理回路4cは、第2増幅信号Sa2が飽和していないと判定し、第2出力データDt2に基づいて計測データDfを生成する(ステップS504)。また、第2出力データDt2が第1範囲Bd1から外れているとき(ステップS503でNoのとき)、処理回路4cは、第2増幅信号Sa2が飽和している可能性がある又は飽和しやすいと判定し、第1出力データDt1に基づいて計測データDfを生成する(ステップS505)。
【0080】
このように、異なる増幅率で入力信号Sgを増幅する複数の増幅回路及び各増幅回路で増幅した各増幅信号をデジタル化する複数の変換回路を有する構成とすることで、増幅率を変換するためのフィードバック処理が不要になる。そのため、処理を簡略化することが可能である。
【0081】
なお、本変形例では、2つの異なる増幅率で増幅を行う増幅回路を有する構成としているが、これに限定されない。3個以上の増幅率で増幅を行う増幅回路を有する構成であってもよい。例えば、上述した増幅率G1~G4のぞれぞれで入力信号を増幅する複数の増幅回路を備えていてもよい。
【0082】
上述した各構成では、半導体装置100、100b、100cと、MEMSセンサ200と、を用いた加速度計測装置を例に説明しているが、これに限定されない。加速度以外の物理量を計測して、入力信号を供給できるセンサを用いた、物理量計測装置にも採用可能である。なお、半導体装置単体で取引可能であることは言うまでもない。
【0083】
<その他>
上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0084】
以上説明した半導体装置(100、100b)は、センサ(200)から出力されるアナログの入力信号(Sg)を受けてデジタルの出力データ(Dt)に変換する構成を有する。半導体装置(100、100b)は、入力信号(Sg)を増幅した増幅信号(Sa)を出力するように構成されたアナログフロントエンド回路(1)と、増幅信号(Sa)をデジタル値の出力データ(Dt)に変換するように構成されたA/D変換回路(2)と、
出力データ(Dt)を取得し、出力データ(Dt)に基づいて増幅信号(Sa)がアナログフロントエンド回路(1)の処理可能な範囲内に収まるようにアナログフロントエンド回路(1)を調整する構成の入力調整回路(3)と、を有する。A/D変換回路(2)のサンプリングレートは、アナログフロントエンド回路(1)に入力される入力信号(Sg)の最大周波数よりも高い構成(第1の構成)である。
【0085】
上記第1の構成の半導体装置(100)において、アナログフロントエンド回路(1)は、複数の増幅率(G1~G4)から1の増幅率を選択可能な構成を有し、入力調整回路(3)は、アナログフロントエンド回路(1)に複数の増幅率(G1~G4)から適切な1の増幅率を選択させる構成(第2の構成)であってもよい。
【0086】
上記第1又は第2の構成の半導体装置(100)において、入力調整回路(3)は、出力データ(Dt)が予め設定されている第1範囲(Bd1)を超えたときにアナログフロントエンド回路(1)に現在の増幅率よりも低い増幅率に変更させる構成を有する構成(第3の構成)であってもよい。
【0087】
上記第1の構成から第3の構成のいずれかの半導体装置(100)において、入力調整回路(3)は、現在の出力データ(Dt)と出力データ(Dt)の変化率に基づいてアナログフロントエンド回路(1)の増幅率を変更させる構成(第4の構成)であってもよい。
【0088】
上記第4の構成の半導体装置(100)において、入力調整回路(3)は、変化率から予測される出力データ(Dt)が予め決められた第1範囲(Bd1)を超えるときにアナログフロントエンド回路(1)に現在の増幅率よりも低い増幅率に変更させる構成(第5の構成)である。
【0089】
上記第1の構成から第5の構成のいずれかの構成の半導体装置(100)において、入力調整回路(3)は、出力データ(Dt)が第1範囲(Bd1)及び第1範囲(Bd1)に収まる第2範囲(Bd2)を一定期間超えないとき、アナログフロントエンド回路(1)に現在の増幅率よりも高い増幅率に変更させる構成(第6の構成)である。
【0090】
上記第1の構成の半導体装置(100b)において、アナログフロントエンド回路(1b)は、入力信号(Sg)のオフセット補正を行う構成のオフセット補正ブロック(12)を有し、
入力調整回路(3)は、増幅信号(Sa)がアナログフロントエンド回路(1b)のフルスケールに収まるように入力信号(Sg)のオフセット量を決定し、
オフセット補正ブロック(12)がオフセット量に基づいて入力信号(Sg)のオフセット補正を実行する構成(第7の構成)である。
【0091】
上記第1の構成から第7の構成のいずれかの半導体装置(100、100b)において、出力データ(Dt)を増幅率に基づいて予め決められたビット数の計測データ(Df)を生成する処理回路(4)を含む構成(第8の構成)である。
【0092】
以上説明した半導体装置(100c)は、センサ(200)から出力されるアナログの入力信号(Sg)を受けてデジタルの出力データ(Dt)に変換する。半導体装置(200c)は、入力信号(Sg)を異なる増幅率(G01、G02)で増幅した増幅信号(Sa1、Sa2)を出力するように構成された複数の増幅回路(11c1、11c2)を有するアナログフロントエンド回路(1c)と、各増幅回路(11c1、11c2)から出力された増幅信号(Sa1、Sa2)をそれぞれデジタル値の出力データ(Dt1、Dt2)に変換するように構成されたA/D変換回路(2c)と、各出力データ(Dt1、Dt2)に基づいて予め決められた形式の計測データ(Df)を生成する構成の処理回路(4c)と、を有し、処理回路(4c)は、入力される出力データ(Dt1、Dt2)に基づいて、アナログフロントエンド回路(1c)のフルスケールに収まっている増幅信号(Sa1、Sa2)から生成された1の出力データ(Dt1、Dt2)を選択し、選択された出力データから計測データ(Df)を生成する構成構成(第9の構成)である。
【0093】
上記第9の構成の半導体装置(100c)において、処理回路(4c)は、アナログフロントエンド回路(1c)のフルスケールに収まる増幅信号(Sa1、Sa2)のうち、最も高い増幅率で増幅された増幅信号から生成された前記出力データを選択する構成(第10の構成)である。
【0094】
上記第1の構成から第10の構成のいずれかの構成の半導体装置(100、100b、100c)と、半導体装置(100、100b、100c)に入力信号(Sg)を出力する加速度センサ(200)と、を有する加速度計測装置(A、B)である構成(第11の構成)である。
【0095】
上記第11の構成の加速度計測装置(A、B)において、加速度センサは、MEMSセンサ(200)である構成(第12の構成)である。
【符号の説明】
【0096】
A、B、C 加速度計測装置
100、100b、100c 半導体装置
1、1b、1c アナログフロントエンド回路
11、11b 増幅回路
11c1 第1増幅回路
11c2 第2増幅回路
111 増幅部
12 オフセット補正ブロック
2、2c A/D変換回路
21 第1変換回路
22 第2変換回路
3 入力調整回路
4、4c 処理回路
200 MEMSセンサ
211、212 固定電極
220 可動電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14