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特開2024-136966閾値決定装置、閾値決定プログラムおよび閾値決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136966
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】閾値決定装置、閾値決定プログラムおよび閾値決定方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/136 20170101AFI20240927BHJP
   G06T 7/174 20170101ALI20240927BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240927BHJP
【FI】
G06T7/136
G06T7/174
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048286
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】591102095
【氏名又は名称】三菱電機ソフトウエア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 健志
(72)【発明者】
【氏名】島田 拓弥
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC20
5L050CC20
5L096AA06
5L096BA08
5L096BA18
5L096CA01
5L096DA02
5L096EA43
5L096FA31
5L096GA08
5L096GA17
5L096GA30
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】二値化画像を生成するための適切な閾値を決定する閾値決定装置を提供する。
【解決手段】閾値決定装置10は、災害発生前の第1画像と災害発生後の第2画像との差分画像について、候補閾値Tiごとに、差分画像Gdの各画素の画素値pまたは画素値pから計算された統計量sと候補閾値Tiとを比較し、候補閾値Tiごとに、候補閾値Tiを満たす画素値pまたは統計量sからなる有効領域と、候補閾値Tiを満たさない画素値pまたは統計量sからなる無効領域とを持つ二値化画像Giを生成し、土地利用分類データと災害発生予測データとを参照して、二値化画像Giごとに、有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す差分正答率ER1と無効領域を無効とすることが適正かどうかを示す非差分正答率NR1を計算し、差分正答率ER1と非差分正答率NR1に基づいて、複数の候補閾値Tiの中から確定閾値Tdを決定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得するデータ取得部と、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像について、複数の候補閾値の候補閾値ごとに、前記差分画像の各画素の画素値と前記候補閾値とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす画素値からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素値からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成する二値化画像生成部と、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算する適正度計算部と、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する閾値決定部と、
を備える閾値決定装置。
【請求項2】
前記適正度計算部は、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記無効領域を無効とすることが適正かどうかを示す無効適正度を計算し、
前記閾値決定部は、
前記有効適正度と前記無効適正度とに基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する請求項1に記載の閾値決定装置。
【請求項3】
前記閾値決定部は、
前記候補閾値の持つ前記無効適正度が前記確定閾値を決定するための無効適正度閾値を満たす場合に、前記候補閾値を確定閾値として決定する請求項2に記載の閾値決定装置。
【請求項4】
前記閾値決定部は、
前記候補閾値の持つ前記有効適正度が前記確定閾値を決定するための有効適正度閾値を満たす場合に、前記候補閾値を確定閾値として決定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の閾値決定装置。
【請求項5】
前記土地利用分類データは、
土地被覆図を含み、
前記災害発生予測データは、
ハザードマップを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の閾値決定装置。
【請求項6】
前記閾値決定部は、
補間法と、二分探索法とのいずれかを用いて確定閾値を決定する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の閾値決定装置。
【請求項7】
コンピュータに、
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得するデータ取得処理と、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像について、複数の候補閾値の候補閾値ごとに、前記差分画像の各画素の画素値と前記候補閾値とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす画素値からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素値からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成する二値化画像生成処理と、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算する適正度計算処理と、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する閾値決定処理と、
を実行させる閾値決定プログラム。
【請求項8】
前記適正度計算処理は、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記無効領域を無効とすることが適正かどうかを示す無効適正度を計算し、
前記閾値決定処理は、
前記有効適正度と前記無効適正度とに基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する請求項7に記載の閾値決定プログラム。
【請求項9】
前記閾値決定処理は、
前記候補閾値の持つ前記無効適正度が前記確定閾値を決定するための無効適正度閾値を満たす場合に、前記候補閾値を確定閾値として決定する請求項8に記載の閾値決定プログラム。
【請求項10】
前記閾値決定処理は、
前記候補閾値の持つ前記有効適正度が前記確定閾値を決定するための有効適正度閾値を満たす場合に、前記候補閾値を確定閾値として決定する請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の閾値決定プログラム。
【請求項11】
前記土地利用分類データは、
土地被覆図を含み、
前記災害発生予測データは、
ハザードマップを含む請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の閾値決定プログラム。
【請求項12】
前記閾値決定処理は、
補間法と、二分探索法とのいずれかを用いて確定閾値を決定する請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の閾値決定プログラム。
【請求項13】
コンピュータが、
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得し、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像について、複数の候補閾値の候補閾値ごとに、前記差分画像の各画素の画素値と前記候補閾値とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす画素値からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素値からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成し、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算し、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する、
閾値決定方法。
【請求項14】
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得するデータ取得部と、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像のなかの複数の領域の領域ごとに前記領域に含まれる複数の画素の各画素の信号強度に基づく統計量を計算し、複数の候補閾値の候補閾値ごとに前記候補閾値と前記統計量とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす統計量からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素統計量からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成する二値化画像生成部と、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算する適正度計算部と、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する閾値決定部と、
を備える閾値決定装置。
【請求項15】
コンピュータに、
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得するデータ取得処理と、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像のなかの複数の領域の領域ごとに前記領域に含まれる複数の画素の各画素の信号強度に基づく統計量を計算し、複数の候補閾値の候補閾値ごとに前記候補閾値と前記統計量とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす統計量からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素統計量からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成する二値化画像生成処理と、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算する適正度計算処理と、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する閾値決定処理と、
を実行させる閾値決定プログラム。
【請求項16】
コンピュータが、
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得し、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像のなかの複数の領域の領域ごとに前記領域に含まれる複数の画素の各画素の信号強度に基づく統計量を計算し、複数の候補閾値の候補閾値ごとに前記候補閾値と前記統計量とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす統計量からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素統計量からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成し、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算し、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する、
閾値決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、差分画像から二値化画像を生成する際に使用する閾値を決定する閾値決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では差分画像を二値化する技術がある(例えば特許文献1、段落[0057])。一般的に、第1画像と第2画像を比較して差分のある領域を可視化する際には、以下のような方法で二値化画像が生成される。まず、第1画像と第2画像との差分画像が生成される。例えば第1画像は災害発生前の画像、第2画像は同じ領域の災害発生後の画像である。差分画像は災害発生前後の差分を示す。そして、差分画像の各画素値と、予め決められている閾値とを比較し、閾値以上の画素値は有効とされ、閾値未満の画素値は無効とされる。画素値有効の画素の集まり領域を差分領域(有効領域)と表記し、画素値無効の画素の集まり領域を非差分領域(無効領域)と表記すれば、差分領域と非差分領域の二値化画像を得る。有効画素を黒で、無効画素を白で表示すれば、二値化画像が白黒画像として得られる。
【0003】
差分を可視化するために二値化画像を得ようとする際には、上記のように画素値と閾値との比較が行われるが、適切な閾値を設定しなければ、差分領域と非差分領域を適切に区分けできない。すなわち適切な二値化画像を得ることができない。
しかし、適切な閾値は、差分画像生成のもとになる第1画像と第2画像の観測方向、観測角度、観測時の天候および日照角度のような観測条件、あるいは差分計算手法によって変わる。
このため、従来では適切な閾値に対応する二値化画像を得るため、人が閾値を変更しながら、目視により適切な二値化画像を得ていた。すなわち、従来では、差分領域(有効領域)と非差分領域(無効領域)を適切に自動分割することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7150126号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、二値化画像を生成するための適切な閾値を決定する閾値決定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る閾値決定装置は、
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得するデータ取得部と、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像について、複数の候補閾値の候補閾値ごとに、前記差分画像の各画素の画素値と前記候補閾値とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす画素値からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素値からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成する二値化画像生成部と、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算する適正度計算部と、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する閾値決定部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る閾値決定装置は、適正度計算部と閾値決定部を備えたので、二値化画像を生成するための適切な閾値を、自動で決定することができる。よって、差分画像から適切な二値化画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の図で、閾値決定装置10のブロック構成を示す図。
図2】実施の形態1の図で、閾値決定装置10の動作概要を示す図。
図3】実施の形態1の図で、二値化画像の例を示す図。
図4】実施の形態1の図で、浸水災害における差分領域を示す図。
図5】実施の形態1の図で、閾値決定装置10の動作を示すフローチャート。
図6】実施の形態1の図で、タイプ1の方式での二値化画像の生成を示す図。
図7】実施の形態1の図で、タイプ2の方式での二値化画像の生成を示す図。
図8】実施の形態1の図で、土地被覆図及び浸水ハザードマップを示す図。
図9】実施の形態1の図で、差分正答率を求める条件を示す図。
図10】実施の形態1の図で、非差分正答率を求める条件を示す図。
図11】実施の形態1の図で、差分正答率の計算結果および非差分正答率の計算結果のグラフを示す図。
図12】実施の形態1の図で、閾値決定部14による確定閾値Tdの決定のための補間方法を説明する図。
図13】実施の形態1の図で、閾値決定部14による確定閾値Tdの決定のための二分探索法を説明する図。
図14】実施の形態1の図で、二分探索法を用いた際の閾値決定装置10の動作を示すフローチャート。
図15】実施の形態1の図で、閾値決定装置10のハードウェア構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態の説明及び図面において、同じ要素及び対応する要素には同じ符号を付している。同じ符号が付された要素の説明は、適宜に省略又は簡略化する。以下の実施の形態では、「部」を、「回路」、「工程」、「手順」、「処理」又は「サーキットリー」に適宜読み替えてもよい。
【0010】
実施の形態1.
図1から図15を参照して、実施の形態1の閾値決定装置10を説明する。
【0011】
***構成の説明***
図1は、閾値決定装置10のブロック構成を示す。閾値決定装置10は、複数の候補閾値を設定する候補設定部11、候補閾値ごとに二値化画像を生成する二値化画像生成部12、二値化画像について有効領域と無効領域の正答率を計算する正答率計算部13、複数の候補閾値から確定閾値を決定する閾値決定部14および記憶部であるデータ記憶部15を備えている。候補設定部11等の機能は、動作の説明で後述する。正答率計算部13は、適正度計算部であり、データ取得部である。
【0012】
図2は、閾値決定装置10の動作の概要を示す図である。図2を参照して、閾値決定装置10の動作の概要を説明する。正答率計算部13は、土地利用分類データと、災害発生予測データとを取得する。土地利用分類データは、地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である。災害発生予測データは、土地利用分類データの示す地域における災害の発生予測を示す地図情報である。土地利用分類データは、例えば後述の土地被覆図20である。災害発生予測データは後述の正答率判定補助データであり、後述のように、例えば浸水ハザードマップ30である。後述の図8に、土地被覆図20および浸水ハザードマップ30を示している。
【0013】
二値化画像生成部12は、土地利用分類データに含まれる対象地域の災害の発生前の第1画像と、対象地域の災害の発生後の第2画像との差分画像Gdについて、複数の候補閾値の候補閾値Ti(i=1,2,3,4,5,6)ごとに、差分画像Gdの各画素kの画素値p(後述のタイプ1)、あるいは画素値pから計算された統計量s(後述のタイプ2)と候補閾値Tiとを比較する。二値化画像生成部12は、比較結果から、候補閾値Tiごとに、有効領域と無効領域とからなる二値化画像Giを生成する。
有効領域とは、候補閾値Tiを満たす画素値pあるいは統計量sからなる領域であって土地利用の状態の種類が推定されている領域である。無効領域とは、候補閾Tiを満たさない画素値pあるいは統計量sからなる領域である。以下では、有効領域を差分領域ともいい、無効領域を非差分領域ともいう。
【0014】
正答率計算部13は、土地利用分類データと災害発生予測データとを参照することにより、二値化画像Giごとに、有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算する。ここで有効適正度は後述の差分正答率ERiに該当する。閾値決定部14は、有効適正度に基づいて、複数の候補閾値Tiの中から確定閾値Tdを決定する。
【0015】
正答率計算部13は、土地利用分類データと災害発生予測データとを参照することにより、二値化画像Giごとに、無効領域を無効とすることが適正かどうかを示す無効適正度を計算する。ここで無効適正度は後述の非差分正答率NRiである。閾値決定部14は、有効適正度と無効適正度とに基づいて、複数の候補閾値Tiの中から確定閾値Tdを決定する。
【0016】
閾値決定部14は、候補閾値Tiの持つ有効適正度ERiが確定閾値Tdを決定するための有効適正度閾値を満たす場合に、候補閾値Tiを確定閾値Tdとして決定する。閾値決定部14は、候補閾値Tiの持つ無効適正度NRiが確定閾値Tdを決定するための無効適正度閾値を満たす場合に、候補閾値Tiを確定閾値Tdとして決定する。有効適正度閾値および無効適正度閾値は、図11で後述する正答率閾値に該当する。
【0017】
図3は、図2で述べた二値化画像の生成方法で生成した二値化画像を示す。図3では差分領域を1(黒)、非差分領域を0(白)で表した二値化画像を示している。
【0018】
図4は、浸水災害における差分領域を示す図である。図4では、閾値ごとの二値化画像を示している。浸水域である差分領域を黒で示している。閾値によって有効値が変化する。実際の浸水状況と手動で照らし合わせた結果では、閾値T=2.0が最適な値であった。閾値決定装置10は、この最適閾値を自動的に決定することを目的とする。
【0019】
***動作の説明***
図5は、閾値決定装置10の動作を示すフローチャートである。図5を参照して、閾値決定装置10を説明する。
【0020】
<ステップS11>
ステップS11において、候補設定部11は、最終的に最適な確定閾値Tdとして決定するべき複数の候補閾値を設定する。候補閾値Ti(i=1,2,3,・・・)とする。候補閾値Tiの設定では、初期値と、予め設定されている関数Fとに従って、候補閾値Tiが生成される。例えば、初期値を3、終値を0.5、刻み幅を0.5、関数FをF=-0.5×(i-1)+初期値(i=1,2,3,4,5,6)とした場合は、候補閾値Ti(i=1,2,3,4,5,6)は以下のとおりである。候補閾値T1=3.0、T2=2.5、T3=2.0、T4=1.5、T5=1.0、T6=0.5である。初期値、終値、刻み幅、関数Fは、候補設定部11がデータ記憶部15から取得する。
【0021】
ステップS11で候補閾値Tiが設定された後、ステップS12からステップS15の処理が、候補閾値Tiの数だけループする。ここでは、例えば、候補閾値Ti(i=1,2,3,4,5,6)の場合を考える。
【0022】
<ステップS12>
最初のループのステップS12では候補閾値TiはT1である。二値化画像生成部12は、候補閾値T1について、以下の方法で二値化画像G1を生成する。
(1)二値化画像生成部12は、第1画像と第2画像とから第1画像と第2画像の差分画像Gdを生成する。第1画像は水害発生前の画像であり、第2画像は同じ領域の水害発生後の画像とする。差分画像は水害発生前後の差分を示す。なお、二値化画像生成部12は、データ記憶部16に格納されている差分画像Gdを使用してもよい。
(2)二値化画像生成部12は、以下のタイプ1またはタイプ2の方式で、差分画像Gdから二値化画像を生成する。
(タイプ1)二値化画像生成部12は、差分画像Gdの画素値p(k=1,2,3,・・・)と候補閾値T1とを比較し、候補閾値T1以上の画素値pを有効値(1)とし、候補閾値T1未満の画素値pを無効値(0)として、二値化画像G1を生成する。
(タイプ2)二値化画像生成部12は、差分画像Gdの画素値p(k=1,2,3,・・・)から計算された統計量s(m=1,2,3,・・・)と候補閾値T1とを比較し、候補閾値T1以上の統計量sを有効値(1)とし、候補閾値T1未満の統計量sを無効値(0)として、二値化画像G1を生成する。
【0023】
図6は、タイプ1によって二値化画像G1を生成する場合を示す。図6において、二値化画像生成部12は、画素値p(k=1,2,3,・・・)と候補閾値T1とを比較する。
二値化画像生成部12は、p≧T1の画素値を有効値とし、p<T1の画素値を無効値として、二値化画像を生成する。
【0024】
図7は、タイプ2によって二値化画像G1を生成する場合を示す。図7において、二値化画像生成部12は、s(m=1,2,3,・・・)と候補閾値T1とを比較する。二値化画像生成部12は、s≧T1の統計量を有効値とし、s<T1の統計量を無効値として、二値化画像を生成する。図7を説明する。二値化画像生成部12は、差分画像のなかでウィンドウWを決められた方向にずらしながら、ずらした位置mごとに、統計量sを計算する。位置mにおけるウィンドウWをWm(m=1,2,3,・・・)と表記する。二値化画像生成部12は、ウィンドウWmについてウィンドウWmに含まれる画素の信号強度の確率分布を計算し、ウィンドウWmの確率分布から統計量sを計算する。二値化画像生成部12は、s(m=1,2,3,・・・)と候補閾値T1とを比較して、s≧T1の統計量sを有効値とし、s<T1の統計量sを無効値として、二値化画像を生成する。
なお、図2に示したように、二値化画像Giは候補閾値Tiに対応する。1回目のループでは候補閾値T1なので、二値化画像Giは二値化画像G1ある。
【0025】
タイプ1及びタイプ2において、二値化画像生成部12は、候補閾値T1以上の画素値p及び統計量sに、有効値1を付与する。候補閾値T1未満の画素値p及び統計量sに、無効値0を付与する。有効値の集まりの領域が差分領域であり、無効値の集まりの領域が非差分領域である。
二値化画像生成部12は、差分画像Gdから、上記のタイプ1あるいはタイプ2の方法により、差分領域と非差分領域との存在する二値化画像G1を生成する。有効画素を黒、無効画素を白で表示すれば、二値化画像G1が白黒画像として得られる。
以下の説明では、タイプ1の場合を想定して説明する。タイプ2の場合は、下記の説明においてタイプ1の画素値pを統計量sに読み替えればよい。
【0026】
<ステップS13>
ステップS13において、正答率計算部13は、二値化画像G1について、差分領域の正答率を計算する。「差分領域の正答率」の定義および正答率計算部13による差分領域の正答率計算の処理詳細は後述する。
【0027】
<ステップS14>
ステップS14において、正答率計算部13は、二値化画像G1について、非差分領域の正答率を計算する。「非差分領域の正答率」の定義および非差分領域の正答率計算部13による非差分領域の正答率計算の処理詳細は、後述する。
【0028】
<ステップS15>
ステップS15において、正答率計算部13は、候補閾値Tiが最終閾値かを判定する。すなわち分正答率計算部13は、候補閾値Ti=T6かを判定する。ここでは候補閾値Ti=T1であるので、処理はステップS12に戻る。
【0029】
<ステップS12(2回目のループ)>
ステップS12(2回目のループ)において、二値化画像生成部12は、差分画像Gdの各画素値pと候補閾値T2との比較から、1回目のループと同様に、二値化画像G2を生成する。
【0030】
<ステップS13およびステップS14(2回目のループ)>
ステップS13(2回目のループ)で、正答率計算部13は二値化画像G2について差分領域の正答率を計算する。ステップS14(2回目のループ)で、正答率計算部13は二値化画像G2について非差分領域の正答率を計算する。
【0031】
<ステップS15>
ステップS15において、正答率計算部13は、候補閾値Ti=T6かを判定する。候補閾値T2であるので、処理はステップS12に戻る。ステップS12では、二値化画像生成部12は候補閾値T3について二値化画像G3を生成する。以下のこのループが候補閾値T6まで繰り返される。
【0032】
このループにより、図2に示したように、候補閾値T1からT6について、以下の組が生成される。候補閾値Tiに対応する差分正答率,非差分正答率を、それぞれERi,NRiと表記すると、以下の6組である。6組のもとになる差分画像は差分画像Gdである。
候補閾値Ti(i=1,2,3,4,5,6)について、正答率計算部13は、
[候補閾値Ti,二値化画像Gi,差分正答率ERi,非差分正答率NRi]
を生成する。
具体的に書くと、生成される組は、
[T1,G1,ER1,NR1]
[T2,G2,ER2,NR2]
[T3,G3,ER3,NR3]
[T4,G4,ER4,NR4]
[T5,G5,ER5,NR5]
[T6,G6,ER6,NR6]
である。
【0033】
<ステップS13の詳細(候補閾値T1)>
第1回目のループを例に、ステップS13における差分率ER1の計算方法を説明する。第1回目のループでは[T1,G1,ER1,NR1]である。第1回目のループのステップS13では、ER1およびNR1が未知である。ステップS13で差分正答率ER1が計算され、ステップS14で非差分正答率NR1が計算される。ステップS13における差分領域正答率ER1の計算方法を以下に示す。
【0034】
<差分正答率ER1の計算>
差分正答率ER1の計算では、正答率計算部13は、二値化画像Giと、土地利用分類データと、正答判定補助データとを用いて、差分正答率ER1を計算する。土地利用分類データの具体例は、土地被覆図である。正答判定補助データの具体例は、浸水ハザードマップである。
図8は、土地被覆図20および浸水ハザードマップ30を示す。浸水ハザードマップ30は、模式的に示している。
【0035】
<差分領域の正答率計算>
差分領域は、差分画像Gdの生成時において、土地利用の状態の種類が推定されている。閾値決定部14は差分正答率ER1の計算時には、差分領域について、推定された「土地利用の状態の種類」を知っている。以下に、差分正答率ER1の計算方法を説明する。正答率計算部13は、例えば後述する図9の計算条件を参照して、差分正答率ER1を計算する。図9の計算条件は、候補設定部11がデータ記憶部15から取得する。二値化画像G1における差分正答率ER1の計算手順は以下のとおりである。
二値化画像G1の差分領域をA1と表記し、非差分領域をA0と表記する。土地被覆図20において都市部をZ(都市)、郊外をZ(郊外)のように表記する。浸水ハザードマップにおいて浸水領域をH(浸水)、非浸水領域をH(非浸水)のように表記する。
【0036】
差分正答率ER1=差分正答数÷分母
とする。
(1.差分正答率ER1の分母)
分母については、「土地被覆図20のZ(都市)、かつ、H(浸水)」の面積とする。すなわち、式で表現すれば、ER1の分母={Z(都市)}∩{H(浸水)}の面積となる。なお、二値化画像G1、土地被覆図20および浸水ハザードマップ30の空間分解能を整合させる処理が実施された場合は、面積に代えて画素数を用いてもよい。
(2.差分正答率ER1の分子)
分子は差分正答数である。差分正答数は、分母の示す面積に、A1を重畳した重複範囲である。よって、分子=A1∩分母=A1∩{Z(都市)}∩{{H(浸水)}
となる。
【0037】
<非差分領域の正答率計算>
非差分正答率NR1=非差分正答数÷分母
とする。
(1.非差分正答率NR1の分母)
分母については、「土地被覆図20がZ(郊外)」の面積と、「土地被覆図がZ(都市)、かつ、浸水ハザードマップがH(非浸水)」の面積との和となる。式で表現すれば、分母=[{Z(郊外)}∪{Z(都市)かつH(非浸水)}]の面積となる。
(2.非差分正答率NR1の分子)
分子は非差分正答数である。非差分正答数は、分母の示す面積に、A0の面積を重畳した重複範囲である。つまり、分子は、式で記載すれば
分子=A0∩分母=A0∩[{Z(郊外)}∪{Z(都市)∩H(非浸水)}]
となる。
なお、二値化画像G1、土地被覆図20および浸水ハザードマップ30の空間分解能を整合させる処理が実施された場合は、差分正答率ER1および非差分正答率NR1の計算は、面積に代えて画素数を用いてもよい。
【0038】
以下に、正答率計算部13による、差分正答率ER1および非差分正答率NR1の計算方法を説明する。
Z(都市)は、土地被覆図20における分類が都市の地域である。
Z(郊外)は、土地被覆図20における分類が郊外の地域を示す。
H(浸水)は、浸水ハザードマップ30おける浸水地域を示す。
H(非浸水)は、浸水ハザードマップ30おける非浸水地域を示す。
浸水ハザードマップ30における浸水地域は、例えば0.5mを超える地域である。
浸水ハザードマップ30における非浸水地域は、例えば0.5m以下の地域である。
差分正答率ER1の計算のための条件は、例えば後述の図9の条件で正答率計算部13に提供され、
非差分正答率NR1の計算のための条件は、例えば後述の図10の条件で正答率計算部13に提供される。
正答率計算部13は、例えば図9および図10の条件から、Z(都市)、Z(郊外)、H(浸水)、H(浸水)の地域を、土地被覆図20および浸水ハザードマップ30から抽出できる。図9および図10の計算条件は、候補設定部11がデータ記憶部15から取得する。
【0039】
<正答率計算部13への入力>
A:二値化画像G1(市街地の浸水領域の二値化画像)
A1=1=二値化画像G1の差分領域
A2=0=二値化画像G1の非差分領域
B:土地被覆図20および浸水ハザードマップ30の条件
B1=都市で浸水={Z(都市)∩H(浸水)}
B2=都市で非浸水={Z(都市)∩H(非浸水)}
B3=郊外={Z(郊外)}
【0040】
<出力>
<差分正答率ER1について>
分母={都市で非浸水}={Z(都市)∩H(非浸水)}=B1
である。
分子は、分母とA1の重複の地域(面積)となる。よって、
分子=A1∩B1
である。差分正答率ER1は、
ER1={A1∩B1}/B1 (式1)
となる。
<非差分正答率NR1>
分母={都市で非浸水}∪{郊外}={Z(都市)∩H(非浸水)}∪{Z(郊外)}
=B2∪B3
である。
ここで分母に{郊外}も採用するのは、二値化画像G1が市街地の浸水領域画像であり、非差分領域(無効領域)は都市部で非浸水の他に、都市部以外も含むためである。例えば、後述の図10では画素値=2(都市部)を除外し、画素値=1,3-12の指定によってZ(郊外)を定義している。
分子は分母とA0の重複の地域(面積)となるので、
分子=A0∩{B2∪B3}
となる。
よって、非差分正答率NR1は、
NR1=A0∩{B2∪B3}/{B2∪B3} (式2)
となる。
【0041】
式1および式2を、Z、H、A1、A0で書き直すと、以下の式11、式21となる。ER1={A1∩B1}/B1=[A1∩{Z(都市)∩H(浸水)}]/{Z(都市)∩H(浸水)}
(式11)
NR1=A0∩{B2∪B3}
=[A0∩{{Z(都市)∩H(非浸水)}∪{Z(郊外)}}]/{{Z(都市)∩H(非浸水)}∪{Z(郊外)}} (式21)
【0042】
式11、式21より、差分正答率ER1および非差分正答率NR1は、Z、H、A1、A0から計算でき、その計算条件は図9および図10で、正答率計算部13に与えられる。
図9は、二値化画像G1が市街地の浸水領域画像の場合に、式11の分母及び分子を求める条件の例を示している。差分正答数が分子である。図9では土地被覆図の画素値=2はZ(都市)に対応する。
浸水ハザードマップにおいて画素値>0.5はH(浸水)に対応する。二値化画像において画素値=1はA1に対応する。
【0043】
<非差分正答率の計算処理>
図10は、二値化画像G1が市街地の浸水領域画像の場合に、式21の非差分正答率NR1の分母および分子を求める条件の例を示している。非差分正答数が分子である。土地被覆図において画素値=1,3-12は、Z(郊外)に対応する。浸水ハザードマップにおいて画素値≦0.5は、H(非浸水)に対応する。二値化画像において画素値=0は、A0に対応する。
【0044】
<閾値の決定処理>
図11は、複数の閾値Tiを用いて作成した二値化画像Giに対して、差分正答率ERiの計算処理および非差分正答率NR1の計算処理の実施結果のグラフである。点線は、非差分領域の正答率を示す。
実線は、差分領域の正答率を示す。横軸は、候補閾値Ti(i=1,2,3,4,5,6)を示している。縦軸は正答率(0~1)を示している。
【0045】
<ステップS17:閾値決定処理>
閾値決定部14による閾値決定処理を説明する。閾値決定部14は、予め設定されている差分領域の正答率閾値および予め設定されている非差分領域の正答率閾値を基に、最終的な確定閾値Tdを決定する。正答率閾値は範囲でも良い。図11において、差分領域の正答率閾値は0.1以上、非差分領域の正答率閾値は0.9以上とする。この場合は、確定閾値Td=1.5と決定できる。差分領域の正答率閾値と、非差分領域の正答率閾値とは個別に設定してもよいし、併用しても良い。
(1)なお、正答率閾値をまたぐ複数の閾値Tを用いて補間することで、最適な確定閾値Tdを決定してもよい。
(2)また、二分探索を応用して区間を絞りながら最適な確定閾値Tdを決定しても良い。この方法は(1)の補間方式に比べて、少ない繰り返し処理で最適な確定閾値Tdを得られる効果がある。
【0046】
図12は、上記(1)の補間方法を説明する図である。閾値決定部14は、以下の(a)(b)のような補間処理により、確定閾値Tdを決定する。
(a)正答率計算部13は、閾値T1~閾値T6の正答率を全て計算する。
(b)閾値決定部14は、正答率閾値を跨ぐ候補閾値T4と候補閾値T5の正答率を用いて線形補間を行い、最適な確定閾値Tdを決定する。
【0047】
図13は、上記(2)の二分探索法を説明する図である。閾値決定部14は、以下の(a)(b)(c)のような処理により、最適な確定閾値Tdを決定する。
(a)正答率計算部13は、閾値T1、閾値T2の正答率を計算し、各々の正答率を用いて線形補間を行い、最適な閾値候補1を計算する。
(b)閾値決定部14は、最適な閾値T候補1を中心とした新たな探索区間(閾値T3、閾値T4)の正答率を計算し、処理(a)同様に最適な閾値候補2を計算する。
(c)閾値決定部14は、最適な閾値T候補2と最適な閾値候補1の差分が予め決定した繰り返し終了差分よりも小さい場合は、最適な閾値候補2を最適な閾値Tとする。それ以外の場合は処理(b)と同様に次の区間で探索する。
【0048】
図14は、二分探索法を用いた際の閾値決定装置10の動作のフローチャートである。図14では図5のフローチャートに対してステップS21およびステップS22が追加されている。
ステップS21では、閾値Tの探索区間が設定される。ステップS22では、探索区間の正答率と正答率閾値から新たな閾値探索区間が設定される。ステップS21は候補設定部11が実行し、ステップS22は閾値決定部14が実行する。
【0049】
(ハードウェアの補足)
図15は、閾値決定装置10のハードウェア構成を示す。閾値決定装置10はコンピュータである。閾値決定装置10は、プロセッサ210を備える。閾値決定装置10は、ハードウェアとして、プロセッサ210、主記憶装置220、補助記憶装置230、通信インタフェース240を備えている。プロセッサ210は、信号線250を介して、他のハードウェアと接続され、他のハードウェアを制御する。
【0050】
閾値決定装置10は、候補設定部11、二値化画像生成部12、正答率計算部13および閾値決定部14を備えている。これらの機能は、閾値決定プログラム231により実現される。
【0051】
プロセッサ210は、閾値決定プログラム231を実行する装置である。プロセッサ210が閾値決定プログラム231を実行することで、候補設定部11、二値化画像生成部12、正答率計算部13および閾値決定部14の機能が実現される。プロセッサ210は、演算処理を行うIC(Integrated Circuit)である。
【0052】
主記憶装置220の具体例は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。主記憶装置220は、プロセッサ210の演算結果を保持する。
【0053】
補助記憶装置230は、データを不揮発的に保管する記憶装置である。補助記憶装置230の具体例は、HDD(Hard Disk Drive)である。補助記憶装置230は、可搬記録媒体であってもよい。補助記憶装置230は、閾値決定プログラム231および各種データ232を記憶している。各種データ232は、閾値設定のデータ、土地被覆図、浸水ハザードマップ、差分画像のようなデータである。データ記憶部15は補助記憶装置230によって実現される。
【0054】
通信インタフェース240は、プロセッサ210が他の装置と通信するための通信ポートである。
【0055】
プロセッサ210は補助記憶装置230から閾値決定プログラム231を主記憶装置220にロードする。プロセッサ210は、ロードされた閾値決定プログラム231を主記憶装置220から読み込んで実行する。
【0056】
閾値決定プログラム231は、候補設定部11、二値化画像生成部12、正答率計算部13および閾値決定部14の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えた各処理、各手順あるいは各工程を、コンピュータに実行させるプログラムである。
【0057】
また、閾値決定方法は、コンピュータである閾値決定装置10が閾値決定プログラム231を実行することにより行われる方法である。閾値決定プログラム231は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されて提供されてもよいし、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0058】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得するデータ取得部と、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像について、複数の候補閾値の候補閾値ごとに、前記差分画像の各画素の画素値と前記候補閾値とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす画素値からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素値からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成する二値化画像生成部と、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算する適正度計算部と、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する閾値決定部と、
を備える閾値決定装置。
(付記2)
前記適正度計算部は、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記無効領域を無効とすることが適正かどうかを示す無効適正度を計算し、
前記閾値決定部は、
前記有効適正度と前記無効適正度とに基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する付記1に記載の閾値決定装置。
(付記3)
前記閾値決定部は、
前記候補閾値の持つ前記無効適正度が前記確定閾値を決定するための無効適正度閾値を満たす場合に、前記候補閾値を確定閾値として決定する付記2に記載の閾値決定装置。
(付記4)
前記閾値決定部は、
前記候補閾値の持つ前記有効適正度が前記確定閾値を決定するための有効適正度閾値を満たす場合に、前記候補閾値を確定閾値として決定する付記1から付記3のいずれか1項に記載の閾値決定装置。
(付記5)
前記土地利用分類データは、
土地被覆図を含み、
前記災害発生予測データは、
ハザードマップを含む付記1から付記4のいずれか1項に記載の閾値決定装置。
(付記6)
前記閾値決定部は、
補間法と、二分探索法とのいずれかを用いて確定閾値を決定する付記1から付記5のいずれか1項に記載の閾値決定装置。
(付記7)
コンピュータに、
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得するデータ取得処理と、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像について、複数の候補閾値の候補閾値ごとに、前記差分画像の各画素の画素値と前記候補閾値とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす画素値からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素値からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成する二値化画像生成処理と、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算する適正度計算処理と、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する閾値決定処理と、
を実行させる閾値決定プログラム。
(付記8)
前記適正度計算処理は、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記無効領域を無効とすることが適正かどうかを示す無効適正度を計算し、
前記閾値決定処理は、
前記有効適正度と前記無効適正度とに基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する付記7に記載の閾値決定プログラム。
(付記9)
前記閾値決定処理は、
前記候補閾値の持つ前記無効適正度が前記確定閾値を決定するための無効適正度閾値を満たす場合に、前記候補閾値を確定閾値として決定する付記8に記載の閾値決定プログラム。
(付記10)
前記閾値決定処理は、
前記候補閾値の持つ前記有効適正度が前記確定閾値を決定するための有効適正度閾値を満たす場合に、前記候補閾値を確定閾値として決定する付記7から付記9のいずれか1項に記載の閾値決定プログラム。
(付記11)
前記土地利用分類データは、
土地被覆図を含み、
前記災害発生予測データは、
ハザードマップを含む付記7から付記10のいずれか1項に記載の閾値決定プログラム。
(付記12)
前記閾値決定処理は、
補間法と、二分探索法とのいずれかを用いて確定閾値を決定する付記7から付記11のいずれか1項に記載の閾値決定プログラム。
(付記13)
コンピュータが、
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得し、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像について、複数の候補閾値の候補閾値ごとに、前記差分画像の各画素の画素値と前記候補閾値とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす画素値からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素値からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成し、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算し、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する、
閾値決定方法。
(付記14)
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得するデータ取得部と、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像のなかの複数の領域の領域ごとに前記領域に含まれる複数の画素の各画素の信号強度に基づく統計量を計算し、複数の候補閾値の候補閾値ごとに前記候補閾値と前記統計量とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす統計量からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素統計量からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成する二値化画像生成部と、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算する適正度計算部と、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する閾値決定部と、
を備える閾値決定装置。
(付記15)
コンピュータに、
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得するデータ取得処理と、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像のなかの複数の領域の領域ごとに前記領域に含まれる複数の画素の各画素の信号強度に基づく統計量を計算し、複数の候補閾値の候補閾値ごとに前記候補閾値と前記統計量とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす統計量からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素統計量からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成する二値化画像生成処理と、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算する適正度計算処理と、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する閾値決定処理と、
を実行させる閾値決定プログラム。
(付記16)
コンピュータが、
地域における土地利用の状態が複数の種類に分類された地図情報である土地利用分類データと、前記土地利用分類データの示す前記地域における災害の発生予測を示す地図情報である災害発生予測データとを取得し、
前記土地利用分類データに含まれる対象地域の前記災害の発生前の第1画像と、前記対象地域の前記災害の発生後の第2画像との差分画像のなかの複数の領域の領域ごとに前記領域に含まれる複数の画素の各画素の信号強度に基づく統計量を計算し、複数の候補閾値の候補閾値ごとに前記候補閾値と前記統計量とを比較し、比較結果から、前記候補閾値ごとに、前記候補閾値を満たす統計量からなる有効領域と、前記候補閾値を満たさない画素統計量からなる無効領域とを持つ二値化画像を生成し、
前記土地利用分類データと前記災害発生予測データとを参照することにより、前記二値化画像ごとに、前記有効領域を有効とすることが適正かどうかを示す有効適正度を計算し、
前記有効適正度に基づいて、前記複数の候補閾値の中から確定閾値を決定する、
閾値決定方法。
【0059】
以上、本開示の実施の形態について説明した。これらの実施の形態のうち、いくつかを組み合わせて実施してもよい。また、いずれか1つ又はいくつかを部分的に実施してもよい。なお、本開示は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 閾値決定装置、11 候補設定部、12 二値化画像生成部、13 正答率計算部、14 閾値決定部、15 データ記憶部、20 土地被覆図、30 浸水ハザードマップ、210 プロセッサ、220 主記憶装置、230 補助記憶装置、231 閾値決定プログラム、232 各種データ、240 通信インタフェース、250 信号線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15