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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136977
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】バルーン型アブレーションデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20240927BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20240927BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048304
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】飯島 俊之
(72)【発明者】
【氏名】安立 啓介
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK12
4C160KK36
4C160KK57
4C267AA06
4C267BB01
4C267BB09
4C267BB27
4C267BB42
4C267CC04
4C267DD10
4C267GG02
4C267GG04
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG22
4C267GG24
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】バルーン型アブレーションデバイスにおける電極の冷却性能の向上を図る。
【解決手段】バルーン型アブレーションデバイスは、長尺体2と、長尺体2の先端側に位置し、長尺体2の基端側から供給される液体Lによって拡張可能なバルーン4と、バルーン4の表面に位置する電極6と、を備える。長尺体2は、バルーン4内に供給される液体Lが流れる送液管14と、バルーン4内から排出された液体Lが流れる排液管16と、を有する。バルーン型アブレーションデバイスは、バルーン4が拡張した状態で、バルーン4内からの液体Lの排出量がバルーン4内への液体Lの流入量より多い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体と、
前記長尺体の前記先端側に位置し、前記長尺体の基端側から供給される液体によって拡張可能なバルーンと、
前記バルーンの表面に位置する電極と、を備え、
前記長尺体は、前記バルーン内に供給される液体が流れる送液管と、前記バルーン内から排出された前記液体が流れる排液管と、を有し、
前記バルーンが拡張した状態で、前記バルーン内からの前記液体の排出量が前記バルーン内への前記液体の流入量より多い、
バルーン型アブレーションデバイス。
【請求項2】
前記排液管の断面積は、前記送液管の断面積より大きい、
請求項1に記載のバルーン型アブレーションデバイス。
【請求項3】
前記長尺体は、管状のアウターシャフトと、前記アウターシャフトに収容されるとともに先端側が前記アウターシャフトから突出する管状のインナーシャフトと、を有し、
前記バルーンの先端側は前記インナーシャフトに固定され、前記バルーンの基端側は前記アウターシャフトに固定され、
前記送液管は前記インナーシャフト内に位置し、前記インナーシャフトは前記送液管と前記バルーン内とを連通する送液口を有し、
前記排液管は前記アウターシャフト内に位置し、前記アウターシャフトは前記排液管と前記バルーン内とを連通する排液口を有する、
請求項1または2に記載のバルーン型アブレーションデバイス。
【請求項4】
前記アウターシャフトの先端面は前記バルーン内に臨み、前記排液管の先端は前記先端面まで延び、
前記長尺体における前記先端面を含む位置において、前記排液管の断面積が前記送液管の断面積より大きい、
請求項3に記載のバルーン型アブレーションデバイス。
【請求項5】
前記送液口の開口面積は、前記送液管の断面積以上である、
請求項3に記載のバルーン型アブレーションデバイス。
【請求項6】
前記送液口は、前記インナーシャフトの側面に位置し、
バルーン型アブレーションデバイスは、前記インナーシャフト内に整流部材を備え、
前記整流部材は、前記長尺体の軸と直交する方向から見て少なくとも一部が前記送液口と重なり、また前記インナーシャフトの先端側に向かうにつれて前記送液口に近づくように傾斜する傾斜面を有する、
請求項3に記載のバルーン型アブレーションデバイス。
【請求項7】
前記長尺体は、先端が針状であり患部に対して経皮的に穿刺される、
請求項1または2に記載のバルーン型アブレーションデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルーン型アブレーションデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者体内の患部にアブレーション(焼灼)を施すアブレーション術が知られている。アブレーション術の一例では、患部に対して経皮的に穿刺される電極針を備えたアブレーションデバイスが用いられていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-49038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患部によっては球状且つ広範囲に焼灼したい場合がある。このような焼灼を実現する方法として、先端にバルーン電極を備えたバルーン型アブレーションデバイスを用いることが考えられる。バルーン電極を用いることで、焼灼範囲を球状に広げることができる。
【0005】
一方で、さらなる焼灼範囲の拡大が求められる場合がある。この要求に対しては、バルーン電極を用いるとともに焼灼時間を長くすることで対応することが考えられる。しかしながら、焼灼時間を長くするとバルーン上の電極が過度に熱せられ、電極の熱でバルーンが割れてしまうおそれがあった。
【0006】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、バルーン型アブレーションデバイスにおける電極冷却性能の向上を図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある態様は、バルーン型アブレーションデバイスである。このバルーン型アブレーションデバイスは、少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体と、長尺体の先端側に位置し、長尺体の基端側から供給される液体によって拡張可能なバルーンと、バルーンの表面に位置する電極と、を備える。長尺体は、バルーン内に供給される液体が流れる送液管と、バルーン内から排出された液体が流れる排液管と、を有する。バルーン型アブレーションデバイスは、バルーンが拡張した状態で、バルーン内からの液体の排出量がバルーン内への液体の流入量より多い。
【0008】
以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、バルーン型アブレーションデバイスにおける電極冷却性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るバルーン型アブレーションデバイスの平面図である。
図2】ハンドルの内部の斜視図である。
図3図3(A)は、長尺体の基端側の斜視図である。図3(B)は、長尺体の先端側の斜視図である。
図4】患部の焼灼具合の一例を示す模式図である。
図5】送液管および排液管の断面の斜視図である。
図6】インナーシャフトおよび整流部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、本開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、実施の形態に係るバルーン型アブレーションデバイス1の平面図である。図2は、ハンドル8の内部の斜視図である。なお、図1には、バルーン4が拡張した状態が示されている。バルーン型アブレーションデバイス1は、長尺体2と、バルーン4と、電極6と、ハンドル8とを備える。
【0013】
長尺体2は、一方向に長い形状を有する。本実施の形態における「長尺」とは、長手方向の第1長さと長手方向に垂直な短手方向の第2長さとの比(第1長さ/第2長さ)が一例として5以上であることをいう。第1長さは、長尺体2の全体を直線状に延ばしたときに、長尺体2の軸が延びる方向の長さである。バルーン4は、長尺体2の一端側に位置する。例えばバルーン4は、ポリオレフィンやポリアミドといった樹脂を含む、公知の可撓性材料で構成される。
【0014】
電極6は、バルーン4の表面に位置する。例えば電極6は、バルーン4の表面に積層された金属薄膜で構成される。一例として、電極6は単層の金属薄膜で構成される。この場合、電極6を構成する金属を含有する導電性インクをバルーン4の表面に塗布することで、電極6を形成することができる。ハンドル8は、長尺体2の他端側に位置する。
【0015】
以下では、バルーン型アブレーションデバイス1や長尺体2におけるバルーン4が位置する側を「先端側」といい、ハンドル8が位置する側を「基端側」という。長尺体2は、少なくとも先端側が体内に挿入される。これにより、バルーン4および電極6が体内に送り込まれる。ハンドル8は、体外に配置されて施術者によって把持される。
【0016】
本実施の形態のバルーン型アブレーションデバイス1は、一例としてアブレーションニードルである。長尺体2は、先端が針状であり、患部に対して経皮的に穿刺される。患部としては、肝癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、甲状腺癌等の腫瘍を有する部位が例示される。長尺体2は、例えばステンレス鋼、ニッケルチタン合金、チタン合金、白金等の金属材料で構成される。長尺体2におけるバルーン4より基端側の領域は、絶縁性チューブ(図示せず)で被覆され得る。絶縁性チューブは、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PI(ポリイミド)、フッ素系樹脂、ポリエーテルブロックアミド等の合成樹脂で構成される。
【0017】
長尺体2には電源装置(図示せず)が接続される。例えば、電源装置から延びる導線と長尺体2の基端側とがハンドル8内に挿入されて、ハンドル8内で互いに電気的に接続される。また、電極6は、長尺体2に電気的に接続される。例えば、電極6の先端側がバルーン4の先端を超えて長尺体2の表面まで延在することで電極6が長尺体2に電気的に接続される。一例として電極6の基端側は、複数に分岐して放射状に広がる。また、患者の体表には対極板(図示せず)が装着される。対極板には電源装置が接続される。
【0018】
長尺体2には液体供給装置(図示せず)が接続される。液体供給装置は、長尺体2に対する液体Lの給排を司る。液体Lとしては、滅菌した生理食塩水等が例示される。具体的には図2に示すように、外部送液管10の一端側と、外部排液管12の一端側とがハンドル8内に挿入される。また、長尺体2の基端側がハンドル8内に挿入される。ハンドル8内で、長尺体2に外部送液管10および外部排液管12が接続される。外部送液管10の他端側および外部排液管12の他端側は、液体供給装置に接続される。液体Lは、液体供給装置から外部送液管10を介して長尺体2に供給される。また、液体Lは、長尺体2から外部排液管12を介して液体供給装置に戻される。
【0019】
図3(A)は、長尺体2の基端側の斜視図である。図3(B)は、長尺体2の先端側の斜視図である。なお、図3(A)には、アウターシャフト18の一部が切り欠かれた状態が示されている。図3(B)には、バルーン4が拡張した状態が示されている。また、図3(B)では、電極6を一部分のみ図示している。長尺体2は、送液管14と、排液管16とを有する。送液管14および排液管16は、長尺体2の長手方向に延びる。送液管14の基端側は外部送液管10に接続され、送液管14の先端側はバルーン4内に接続される。排液管16の基端側は外部排液管12に接続され、排液管16の先端側はバルーン4内に接続される。外部送液管10から供給される液体Lは、送液管14内を流れてバルーン4内に供給される。バルーン4内の液体Lは、排液管16内を流れて外部排液管12に排出される。
【0020】
本実施の形態の長尺体2は、管状のアウターシャフト18と、管状のインナーシャフト20とを有する。各シャフトは、上述した金属材料で構成される。一例として、アウターシャフト18およびインナーシャフト20は、ともにシングルルーメン構造を有する。また、各シャフトは円管状であり、アウターシャフト18の管径はインナーシャフト20の管径より大きい。インナーシャフト20は、アウターシャフト18に収容される。また、インナーシャフト20の先端側は、アウターシャフト18から突出する。インナーシャフト20の先端は針状になっている。
【0021】
送液管14は、インナーシャフト20内に位置する。排液管16は、アウターシャフト18内に位置する。本実施の形態では、インナーシャフト20の内周面が送液管14を構成している。つまり、当該内周面によって、バルーン4に供給される液体Lの流路が区画されている。また、アウターシャフト18の内周面およびインナーシャフト20の外周面が排液管16を構成している。つまり、当該内周面および外周面によって、バルーン4から排出される液体Lの流路が区画されている。
【0022】
アウターシャフト18の内周面とインナーシャフト20の外周面との間には、複数の柱部22が配置される。複数の柱部22は、インナーシャフト20の軸周り方向に間隔をあけて配列される。本実施の形態では、4つの柱部22が互いに90°ずれて並んでいる。各柱部22は、各シャフトの径方向における一端がアウターシャフト18の内周面に接続され、他端がインナーシャフト20の外周面に接続される。これにより、アウターシャフト18およびインナーシャフト20が互いに固定される。つまり、排液管16の形状が安定的に維持される。
【0023】
好ましくは、各柱部22は長尺体2の長手方向において間欠的に設けられる。一例として、各柱部22は、アウターシャフト18の先端から連続する一部の領域と、アウターシャフト18の基端から連続する一部の領域とに配置される。柱部22を間欠的に設けることで、排液管16における流路抵抗の増大を抑制することができる。
【0024】
長尺体2におけるアウターシャフト18からインナーシャフト20が突出する領域において、バルーン4の先端側はインナーシャフト20に固定され、バルーン4の基端側はアウターシャフト18に固定される。例えばバルーン4は、インナーシャフト20の外径と略同径の筒状部を先端側に有し、この筒状部がインナーシャフト20の外周面を包み込む。この状態で、筒状部が接着等の公知の方法によりインナーシャフト20の外周面に固定される。また、例えばバルーン4は、アウターシャフト18の外径と略同径の筒状部を基端側に有し、この筒状部がアウターシャフト18の外周面を包み込む。この状態で、筒状部が接着等の公知の方法によりアウターシャフト18の外周面に固定される。
【0025】
インナーシャフト20は、送液管14とバルーン4内とを連通する送液口24を有する。例えば、インナーシャフト20の側面におけるバルーン4内に臨む領域に、インナーシャフト20の内外を貫通する複数の開口が設けられており、各開口が送液口24を構成する。本実施の形態では、4つの送液口24がインナーシャフト20の軸周り方向に互いに90°ずれて並んでいる。
【0026】
アウターシャフト18は、排液管16とバルーン4内とを連通する排液口26を有する。例えば、アウターシャフト18の先端面はバルーン4内に臨み、排液管16の先端はアウターシャフト18の先端面まで延びる。つまり、排液管16の先端はアウターシャフト18の先端面においてバルーン4内に開放される。そして、排液管16の開放端が排液口26を構成する。排液口26は、送液口24よりも基端側に位置する。アウターシャフト18とインナーシャフト20との間には、柱部22が介在している。このため、アウターシャフト18の先端面には、柱部22で分割された複数の排液口26がインナーシャフト20の軸周り方向に間隔をあけて並んでいる。
【0027】
送液管14内を基端側から先端側に向かって流れる液体Lは、送液口24からバルーン4内に流入する。これにより、バルーン4は拡張することができる。また、バルーン4内の液体Lは、排液口26から排液管16内に流入することでバルーン4内から排出される。バルーン4内への液体Lの供給が継続している間、バルーン4が拡張した状態が維持される。
【0028】
長尺体2の先端が患部に穿刺された後に、液体Lがバルーン4に供給されてバルーン4が拡張される。この状態で、電源装置から長尺体2および対極板に電力が供給されると、長尺体2および電極6と対極板との間に高周波電流が通電される。これにより、患部が焼灼される。なお、焼灼は高周波電流以外のエネルギーで実施されてもよい。バルーン4内への液体Lの供給は、少なくとも長尺体2および対極板に電力が供給されている間は維持される。また、バルーン4内の液体Lが電極6と熱交換することで、電極6を冷却することができる。したがって、液体Lはバルーン4の拡張液と電極6の冷却液とを兼ねる。バルーン4内への液体Lの供給が停止し、バルーン4内の液体Lが排液管16に排出されると、バルーン4は収縮する。
【0029】
図4は、患部100の焼灼具合の一例を示す模式図である。長尺体2を患部100に穿刺しバルーン4を拡張した後、長尺体2および対極板に電力を供給すると、まず長尺体2の長手方向に長い略楕円球状の熱凝固領域102が形成される。そして、焼灼時間の経過にともない、熱凝固領域102が広がっていく。熱凝固領域102は、特に長尺体2の短手方向に広がっていく。これにより、最終的に略球状の熱凝固領域102が得られる。
【0030】
焼灼時間を延長することで、より広い熱凝固領域102を形成することができる。一方で焼灼時間の延長は、電極6の過熱と、これに伴うバルーン4の破損とを招き得る。これに対し、本実施の形態に係るバルーン型アブレーションデバイス1では、バルーン4が拡張した状態で、バルーン4内からの液体Lの排出量がバルーン4内への液体Lの流入量より多い。これにより、バルーン4内での液体Lの滞留を抑制することができる。この結果、液体Lと電極6との熱交換が促進され、電極6をより効率良く冷却することができる。よって、バルーン型アブレーションデバイス1における電極冷却性能を向上させることができる。そして当該冷却性能の向上により、焼灼時間が長くなっても電極6の温度が過度に上昇してバルーン4が割れてしまうことを抑制することができる。よって、焼灼範囲の拡大に寄与することができる。また、患部の炭化も抑制することができる。
【0031】
図5は、送液管14および排液管16の断面の斜視図である。図5には、長尺体2の軸と直交する断面が示されている。本実施の形態では、排液管16の断面積16Aが送液管14の断面積14Aより大きい。より具体的には、長尺体2におけるアウターシャフト18の先端面を含む位置(図3(B)において矢印Pで示す位置)において、長尺体2の軸と直交する断面視で、排液管16の断面積16Aが送液管14の断面積14Aより大きい。排液管16が柱部22によって分割されている場合や排液管16が複数である場合、排液管16の断面積16Aは、柱部22で分割された個々の部分における断面積の合計、あるいは各管の断面積の合計である。また、送液管14が複数である場合、送液管14の断面積14Aは、各管の断面積の合計である。
【0032】
排液管16の断面積16Aを送液管14の断面積14Aより大きくすることで、バルーン4内への液体Lの流入量よりもバルーン4内からの液体Lの排出量を多くすることを簡単な構造で実現できる。排液管16の断面積16Aは、好ましくは送液管14の断面積14Aの1.1倍以上3.0倍以下である。なお、本実施の形態において送液管14および排液管16のそれぞれの断面形状は、先端側から基端側にかけて実質的に同じである。このため、長尺体2の長手方向のいずれの位置においても、送液管14の断面積14Aと排液管16の断面積16Aとの大小関係は実質的に維持されている。
【0033】
また、送液口24の開口面積は、好ましくは送液管14の断面積14A以上であり、より好ましくは送液管14の断面積14Aより大きい。これにより、送液管14内を流れる液体Lがバルーン4内に流入する際に、液体Lの流れが送液口24によって阻害されることを抑制することができる。インナーシャフト20に複数の送液口24が設けられる場合、送液口24の開口面積は、各口の開口面積の合計である。また、排液口26の開口面積は、好ましくは送液口24の開口面積より大きい。これにより、液体Lの排出量を流入量より大きくしやすくすることができる。
【0034】
また、本実施の形態のバルーン型アブレーションデバイス1は、インナーシャフト20内に整流部材28を備える。図6は、インナーシャフト20および整流部材28の断面図である。図6には、長尺体2の長手方向に平行な断面が示されている。整流部材28は、長尺体2の軸と直交する方向(短手方向)から見て少なくとも一部が送液口24と重なる。また、整流部材28は、インナーシャフト20の先端側に向かうにつれて送液口24に近づくように傾斜する傾斜面30を有する。好ましくは、長尺体2の短手方向から見て傾斜面30は送液口24と重なる。送液管14内を基端側から先端側に流れる液体Lは、傾斜面30に当たって進行方向が送液口24に向けられる。これにより、液体Lをより円滑に送液管14からバルーン4内に流入させることができる。
【0035】
本実施の形態の整流部材28は、先端側に円柱部32を有し、基端側に円錐部34を有する。円錐部34は、底面が円柱部32の端面に接し、頂点が基端側を向いている。一例として頂点は、インナーシャフト20の軸心上に位置する。円柱部32の外径はインナーシャフト20の内径と略同一であり、円柱部32は送液口24よりも先端側でインナーシャフト20の内周面に嵌合している。短手方向から見て円錐部34は送液口24と重なっており、円錐部34の側面が傾斜面30を構成している。なお、整流部材28は、円錐部34に代えて、送液口24の数に対応する角数の角錐部を有してもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態に係るバルーン型アブレーションデバイス1は、長尺体2の先端側に電極6付きのバルーン4を備える。また、バルーン4内からの液体Lの排出量がバルーン4内への液体Lの流入量より多くなるように構成されている。これにより、バルーン4内での液体Lの流れを円滑にして電極6を効率良く冷却することができる。この結果、焼灼時間の延長、ひいては焼灼範囲の拡大を図ることができる。また、長尺体2を太くすることで焼灼範囲の拡大を図る場合に比べて、長尺体2が患部100に穿刺し難くなることを抑制することができる。
【0037】
以上、本開示の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本開示を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本開示の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された本開示の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。各実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本開示の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0038】
実施の形態に係るバルーン型アブレーションデバイス1はアブレーションニードルであるが、特にこの構成に限定されない。例えば、バルーン型アブレーションデバイス1は、カテーテルであってもよい。この場合、アウターシャフト18およびインナーシャフト20は、ポリオレフィンやポリアミドといった樹脂等の公知の可撓性材料で構成される。また一例として、アウターシャフト18の先端側に導電性リングが設けられ、電極6は導電性リングに電気的に接続される。また、電源装置から延びる導線が長尺体2内に通されて導電性リングに電気的に接続される。
【0039】
また、送液管14、排液管16、送液口24および排液口26の形状、配置、数等は適宜設定することができる。バルーン4の形状や大きさも適宜設定することができる。
【0040】
実施の形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[第1項目]
少なくとも先端側が体内に挿入される長尺体(2)と、
長尺体(2)の先端側に位置し、長尺体(2)の基端側から供給される液体(L)によって拡張可能なバルーン(4)と、
バルーン(4)の表面に位置する電極(6)と、を備え、
長尺体(2)は、バルーン(4)内に供給される液体(L)が流れる送液管(14)と、バルーン(4)内から排出された液体(L)が流れる排液管(16)と、を有し、
バルーン(4)が拡張した状態で、バルーン(4)内からの液体(L)の排出量がバルーン(4)内への液体(L)の流入量より多い、
バルーン型アブレーションデバイス(1)。
[第2項目]
排液管(16)の断面積(16A)は、送液管(14)の断面積(14A)より大きい、
第1項目に記載のバルーン型アブレーションデバイス(1)。
[第3項目]
長尺体(2)は、管状のアウターシャフト(18)と、アウターシャフト(18)に収容されるとともに先端側がアウターシャフト(18)から突出する管状のインナーシャフト(20)と、を有し、
バルーン(4)の先端側はインナーシャフト(20)に固定され、バルーン(4)の基端側はアウターシャフト(18)に固定され、
送液管(14)はインナーシャフト(20)内に位置し、インナーシャフト(20)は送液管(14)とバルーン(4)内とを連通する送液口(24)を有し、
排液管(16)はアウターシャフト(18)内に位置し、アウターシャフト(18)は排液管(16)とバルーン(4)内とを連通する排液口(26)を有する、
第1項目または第2項目に記載のバルーン型アブレーションデバイス(1)。
[第4項目]
アウターシャフト(18)の先端面はバルーン(4)内に臨み、排液管(16)の先端はアウターシャフト(18)の先端面まで延び、
長尺体(2)におけるアウターシャフト(18)の先端面を含む位置(P)において、排液管(16)の断面積(16A)が送液管(14)の断面積(14A)より大きい、
第3項目に記載のバルーン型アブレーションデバイス(1)。
[第5項目]
送液口(24)の開口面積は、送液管(14)の断面積(14A)以上である、
第3項目または第4項目に記載のバルーン型アブレーションデバイス(1)。
[第6項目]
送液口(24)は、インナーシャフト(20)の側面に位置し、
バルーン型アブレーションデバイス(1)は、インナーシャフト(20)内に整流部材(28)を備え、
整流部材(28)は、長尺体(2)の軸と直交する方向から見て少なくとも一部が送液口(24)と重なり、またインナーシャフト(20)の先端側に向かうにつれて送液口(24)に近づくように傾斜する傾斜面(30)を有する、
第3項目乃至第5項目のいずれかに記載のバルーン型アブレーションデバイス(1)。
[第7項目]
長尺体(2)は、先端が針状であり患部(100)に対して経皮的に穿刺される、
第1項目乃至第6項目のいずれかに記載のバルーン型アブレーションデバイス(1)。
【実施例0041】
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例は本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0042】
(実施例1)
内径0.8mm、外径1.0mmで先端が針状である金属製のインナーシャフトを用意した。このインナーシャフトにおける送液管の断面積は、0.50mmである。また、インナーシャフトの側面における先端側領域には複数の送液口を設けた。送液口の総開口面積は、1.82mmである。また、内径1.55mm、外径1.75mmである金属製のアウターシャフトを用意した。このアウターシャフトにおける、インナーシャフト挿通後の排液管の断面積は、0.77mmである。また、アウターシャフトは、絶縁性チューブで被覆した。
【0043】
アウターシャフトにインナーシャフトを挿通し、インナーシャフトの先端側がアウターシャフトの外側に露出するように互いの位置を定めた。また、インナーシャフトが露出する領域に樹脂製のバルーンを取り付けた。バルーンは、インナーシャフトの長手方向に沿って延びる筒状の胴部と、胴部の先端側端部および基端側端部からシャフトの長手方向に延びるテーパー部とを有する。各テーパー部は、胴部から離れるにつれて直径が小さくなる形状を有する。胴部は、長手方向の長さが17mm、最大拡張径が4mmである。
【0044】
バルーンの全表面に、金属薄膜で構成される電極を設けた。電極は、インナーシャフトに電気的に接続した。インナーシャフトの先端から電極の基端側端部までの長さは30mmとした。以上の工程により、実施例1に係るアブレーションデバイスを得た。
【0045】
得られたアブレーションデバイスを用いて、以下の焼灼試験、および試験結果の評価を実施した。すなわち、対極板を張り付けたステンレスバット内に、豚から摘出した肝臓を設置した。そして、温度38℃、濃度0.18wt%の食塩水でステンレスバット内を満たした。次に、肝臓にアブレーションデバイスを穿刺し、バルーン全体を肝臓に埋めた。そして、バルーンに生理食塩水を供給して拡張した。この状態で、JLLオンコロジーRFAシステム(承認番号:30100BZX00094000)に記載されている出力モード(オートモード)に基づき、インナーシャフトおよび電極と、対極板との間に高周波電流を通電させ、肝臓を焼灼した。その後、肝臓を切断し、シャフトの長手方向および短手方向における熱凝固領域の寸法を測定した。
【0046】
(実施例2)
内径1.65mm、外径1.75mmのアウターシャフトを用い、排液管の断面積を0.96mmとした点を除き、実施例1と同様にアブレーションデバイスの作製、焼灼試験および試験結果の評価を実施した。
【0047】
(比較例1)
バルーンを有しないアブレーションニードルを用いた点を除き、実施例1と同様にアブレーションデバイスの作製、焼灼試験および試験結果の評価を実施した。アブレーションニードルは、電極針の外径が17G(ゲージ)であり、電極の長さが30mmである。
【0048】
比較例1のアブレーションデバイスで得られた熱凝固領域は、長手方向の寸法が32mmであり、短手方向の寸法が27mmであった。これに対し、実施例1のアブレーションデバイスで得られた熱凝固領域は、長手方向の寸法が40mmであり、短手方向の寸法が35mmであった。さらに、実施例2のアブレーションデバイスで得られた熱凝固領域は、長手方向の寸法が45mmであり、短手方向の寸法が40mmであった。以上より、排液管の断面積を送液管の断面積より大きくして液体の排出量を流入量より多くすることで、バルーン型アブレーションデバイスの電極冷却性能を高めて焼灼範囲を拡大できることが確認された。
【符号の説明】
【0049】
1 バルーン型アブレーションデバイス、 2 長尺体、 4 バルーン、 6 電極、 14 送液管、 16 排液管、 18 アウターシャフト、 20 インナーシャフト、 24 送液口、 26 排液口、 28 整流部材、 30 傾斜面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6