(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136983
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両の故障診断装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20240927BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240927BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20240927BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240927BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240927BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20240927BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240927BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240927BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240927BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20240927BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20240927BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60W20/50
B60K6/48 ZHV
B60W20/13
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60L50/16
B60L3/00 N
F02D29/02 311F
F02D29/02 311G
F02D29/06 D
F01N3/18 C
F01N11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048310
(22)【出願日】2023-03-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)販売日:令和4年5月23日から現在まで (2)販売した場所:欧州(欧州においてマツダ車を取り扱う販売店)
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】板井 満生
(72)【発明者】
【氏名】渥美 伸二
(72)【発明者】
【氏名】大久保 浩志
(72)【発明者】
【氏名】沖田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】西尾 貴史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 舜哉
【テーマコード(参考)】
3D202
3G091
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB09
3D202BB16
3D202BB19
3D202CC33
3D202CC36
3D202CC48
3D202CC59
3G091AA02
3G091AA14
3G091AA17
3G091AA24
3G091AA28
3G091AB03
3G091BA31
3G091DB11
3G091EA01
3G091EA05
3G091EA07
3G091EA16
3G091EA18
3G091EA28
3G091EA30
3G091EA34
3G091FA05
3G091HA36
3G091HA37
3G091HA38
3G093AA07
3G093BA27
3G093DB21
3G093DB28
3G093EA00
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BD17
5H125CA09
5H125EE27
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】乗員に与える違和感を小さく抑えつつ排気部品の故障診断機会を確保できる車両の故障診断装置を提供する。
【解決手段】バッテリの残容量を検出する残容量検出部と、所定のモータモード実施条件が成立するとエンジンを停止してモータを駆動させる走行制御部と、エンジンの駆動中、且つ、所定の診断可能条件の成立中に、排気部品が故障しているか否かを判定する故障診断部とを設ける。故障診断部に、エンジンの駆動中且つ診断可能条件の成立中にモータモード実施条件が成立すると、当該モータモード実施条件が成立してから所定の継続期間が経過するまでの間、エンジンの駆動を継続させる駆動継続制御を実施させ、残容量検出部により検出されたバッテリの残容量が大きいときの方が小さいときよりも継続期間を短い期間に設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としてのモータと、燃焼室が形成されたエンジン本体およびこれに接続された排気通路を有するエンジンと、前記モータに給電するバッテリとを備えた車両の故障診断装置において、
前記バッテリの残容量を検出する残容量検出部と、
所定のモータモード実施条件が成立すると前記エンジンを停止して前記モータを駆動させる走行制御部と、
前記エンジンの駆動中、且つ、所定の診断可能条件の成立中に、前記排気通路に設けられた排気部品が故障しているか否かを判定する故障診断部とを備え、
前記故障診断部は、
前記エンジンの駆動中且つ前記診断可能条件の成立中に前記モータモード実施条件が成立すると、当該モータモード実施条件が成立してから所定の継続期間が経過するまでの間、前記エンジンの駆動を継続させる駆動継続制御を実施し、
前記残容量検出部により検出された前記バッテリの残容量が大きいときの方が小さいときよりも前記継続期間を短い期間に設定する、ことを特徴とする車両の故障診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の故障診断装置において、
複数の前記排気部品を備え、
前記診断可能条件は、前記各排気部品についてそれぞれ個別に設定されており、
前記故障診断部は、前記エンジンの駆動中且つ全ての前記診断可能条件の成立中に前記モータモード実施条件が成立した場合に、前記駆動継続制御を実施する、ことを特徴とする車両の故障診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の故障診断装置において、
前記排気部品は、前記排気通路に設けられて排気を浄化する浄化装置と、前記浄化装置の上流側に設けられて排気ガスの性状を検出する上流側センサと、前記浄化装置の下流側に設けられて排気ガスの性状を検出する下流側センサとを備える、ことを特徴とする車両の故障診断装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の故障診断装置において、
前記故障診断部は、前記駆動継続制御の実施中に前記排気部品が故障しているか否かの判定が完了すると、前記駆動継続制御を停止して、前記エンジンを停止するとともに前記モータを駆動させる、ことを特徴とする車両の故障診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンには各種の部品が設けられており、エンジンが搭載された車両等では、これらの部品が故障しているか否かの判定つまり故障診断が行われる。エンジンとモータとを備えたハイブリッド車両においても故障診断は求められる。しかし、ハイブリッド車両では、エンジンが停止される機会が多い。そのため、ハイブリッド車両では、排気通路に設けられた部品であって排気通路内を排気ガスが流通しているときにのみ故障診断が可能な部品の故障診断の実施機会が少なくなるという問題がある。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1には、排気通路に設けられたセンサの故障診断を行う車両であって、上記センサの故障診断を行い得る条件が成立すると、故障診断が完了するまでエンジンの停止が禁止される車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の上記構成では、故障診断が完了するまでエンジンの停止が禁止されるため、車両の乗員が違和感を覚えるおそれがある。具体的に、モータとエンジンとが駆動源として搭載されたハイブリッド車両として、バッテリの残容量が大きいときは主としてエンジンを停止してモータを駆動させる車両が知られている。そのため、このような車両において特許文献1の上記構成を採用すると、バッテリの残容量が大きいにも関わらずエンジンが停止されないことで乗員が違和感を覚えるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、乗員に与える違和感を小さく抑えつつ排気部品の故障診断機会を確保できる車両の故障診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両の故障診断装置は、駆動源としてのモータと、燃焼室が形成されたエンジン本体およびこれに接続された排気通路を有するエンジンと、前記モータに給電するバッテリとを備えた車両の故障診断装置において、前記バッテリの残容量を検出する残容量検出部と、所定のモータモード実施条件が成立すると前記エンジンを停止して前記モータを駆動させる走行制御部と、前記エンジンの駆動中、且つ、所定の診断可能条件の成立中に、前記排気通路に設けられた排気部品が故障しているか否かを判定する故障診断部とを備え、前記故障診断部は、前記エンジンの駆動中且つ前記診断可能条件の成立中に前記モータモード実施条件が成立すると、当該モータモード実施条件が成立してから所定の継続期間が経過するまでの間、前記エンジンの駆動を継続させる駆動継続制御を実施し、前記残容量検出部により検出された前記バッテリの残容量が大きいときの方が小さいときよりも前記継続期間を短い期間に設定する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の故障診断装置によれば、エンジンを停止してモータを駆動させる条件であるモータモード実施条件が成立した場合であっても排気部品の故障診断が可能なときには、強制的にエンジンの駆動が継続される。そのため、排気部品の故障診断機会を多くできる。しかも、この装置では、バッテリの残容量が大きいときは、モータモード実施条件の成立後にエンジンの駆動が強制的に継続される時間が短くなる。つまり、バッテリの残容量が大きいことに伴って乗員がエンジンが停止されてモータが駆動されると予想する可能性が高いときには、エンジン停止およびモータ駆動開始までの時間が短くされる。また、バッテリの残容量が小さいことで、エンジンが停止されないことに乗員が違和感を覚えにくいときには、比較的長い期間にわたってエンジンの駆動が継続される。そのため、乗員に与える違和感を小さく抑えつつ、排気部品の故障診断機会を多くできる。
【0009】
上記構成において、好ましくは、複数の前記排気部品を備え、前記診断可能条件は、前記各排気部品についてそれぞれ個別に設定されており、前記故障診断部は、前記エンジンの駆動中且つ全ての前記診断可能条件の成立中に前記モータモード実施条件が成立した場合に、前記駆動継続制御を実施する(請求項2)。
【0010】
この構成では、複数の排気部品の故障診断が可能な場合に駆動継続制御が実施される。そのため、複数の排気部品の故障診断機会を確保しつつ、モータモード実施条件の成立下でエンジンが強制的に駆動される機会を少なく抑えることができる。
【0011】
上記構成において、前記排気部品としては、前記排気通路に設けられて排気を浄化する浄化装置と、前記浄化装置の上流側に設けられて排気ガスの性状を検出する上流側センサと、前記浄化装置の下流側に設けられて排気ガスの性状を検出する下流側センサとが挙げられる(請求項3)。
【0012】
上記構成において、好ましくは、前記故障診断部は、前記駆動継続制御の実施中に前記排気部品が故障しているか否かの判定が完了すると、前記駆動継続制御を停止して、前記エンジンを停止するとともに前記モータを駆動させる(請求項4)。
【0013】
この構成によれば、故障診断のためにエンジンの駆動を継続させる必要がなくなると、モータモード実施条件の成立に合わせてエンジンが停止されてモータが駆動される。そのため、故障診断の機会を確保しつつモータモード実施条件の成立下でエンジンが強制的に駆動される時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両の故障診断装置によれば、乗員に与える違和感を小さく抑えつつ排気部品の故障診断機会を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る故障診断装置が適用された車両の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図3】走行モードの切り替え手順を示すフローチャートである。
【
図4】故障診断の手順を示すフローチャートである。
【
図5】エンジン駆動継続要求の決定手順を示すフローチャートである。
【
図6】バッテリのSOCと判定時間との関係を示す図である。
【
図7】エンジン駆動継続要求が出されるときの各パラメータの時間変化を概略的に示したタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の一形態について説明する。
【0017】
(全体構成)
図1は本発明に係る故障診断装置が適用された車両の概略的な構成を示すブロック図である。この車両はハイブリッド車両である。以下では、この車両をHV車両1という。HV車両1は、走行用の駆動源としてのエンジン2およびモータ4と、変速機6と、第1クラッチ15と、第2クラッチ16と、車輪10と、インバータ12と、バッテリ14と、コントローラ100とを備える。
【0018】
エンジン2は、燃料と空気の混合気を燃焼させることにより駆動力を発生する内燃機関である。本実施形態では、エンジン2は、ガソリンを主成分とする燃料を用いるガソリンエンジンである。エンジン2は、気筒が形成されたエンジン本体30と、エンジン本体30に導入される吸気(空気)が内側を流通する吸気通路40と、エンジン本体30から導出される排気ガスが内側を流通する排気通路50とを備える。エンジン本体30は、4サイクルエンジンである。
【0019】
エンジン本体30は、内部に気筒33が形成されたシリンダブロック31と、シリンダブロック31の上面に取り付けられたシリンダヘッド32とを有する。例えば、エンジン本体30は、一列に並ぶ6つの気筒を有する直列6気筒エンジンである。
【0020】
各気筒33には、上下方向に往復動可能にピストン34がそれぞれ嵌装されている。ピストン34の冠面と気筒33の内周面との間には燃焼室35が区画されている。ピストン34はクランクシャフト36と連結されており、燃焼室35で生じた燃焼エネルギーを受けてピストン34が往復動することでクランクシャフト36が回転する。
【0021】
エンジン本体30には、燃焼室35に燃料を噴射するインジェクタ37が設けられている。なお、
図1には、インジェクタ37として燃焼室35内にその側方から燃料を噴射するサイド噴射式のインジェクタが用いられる場合を示しているが、インジェクタ37はサイド噴射式に限られない。エンジン本体30には、燃焼室35に形成された燃料と空気の混合気に点火を行う点火プラグ38が設けられている。
【0022】
シリンダブロック31には、クランクシャフト36の回転角ひいてはエンジン回転数を検出するためのクランク角センサSN1が設けられている。シリンダヘッド32には、エンジン本体30を冷却するエンジン冷却水の温度であるエンジン水温を検出する水温センサSN2が設けられている。具体的に、エンジン本体30には、内側をエンジン冷却水が流通するウォータージャケット(不図示)が形成されており、水温センサSN2はウォータージャケットを流通するエンジン冷却水の温度を検出する。
【0023】
吸気通路40は、各燃焼室35と連通する状態でエンジン本体30に接続されている。吸気通路40には、吸気通路40を開閉して吸気通路40を流れる吸気(空気)の流量を調整するスロットル弁41が設けられている。吸気通路40には、吸気通路40を流通する吸気の流量を検出するエアフローセンサSN3が設けられている。
図1の例では、エアフローセンサSN3は、スロットル弁41の上流側に配置されている。
【0024】
排気通路50は、各燃焼室35と連通する状態でエンジン本体30に接続されている。排気通路50には、各燃焼室35から排出された既燃ガスである排気ガスを浄化するための浄化装置52が設けられている。本実施形態では、浄化装置52は、触媒を有しており触媒の作用によって排気ガスを浄化する。浄化装置52は、例えば、三元触媒を有する。
【0025】
排気通路50には、浄化装置52の温度つまり浄化装置52に内蔵されている触媒の温度を検出するための触媒温度センサSN4が設けられている。排気通路50のうちの浄化装置52よりも上流側の部分には、当該部分を通過する排気ガスの酸素濃度を検出するフロントO2センサSN5が設けられている。排気通路50のうちの浄化装置52よりも下流側の部分には、当該部分を通過する排気ガスの酸素濃度を検出するリアO2センサSN6が設けられている。本実施形態では、フロントO2センサSN5が、本発明の「上流側センサ」に相当し、フロントO2センサSN5により検出される排気ガスの酸素濃度が、「上流側センサ」が検出する排気ガスの性状に相当する。また、本実施形態では、リアO2センサSN6が、本発明の「下流側センサ」に相当し、リアO2センサSN6により検出される排気ガスの酸素濃度が、「下流側センサ」が検出する排気ガスの性状に相当する。また、本実施形態では、フロントO2センサSN5はいわゆるLAFSであって酸素濃度そのものを検出し、リアO2センサSN6は排気ガス中の酸素の有無を検出する。
【0026】
モータ4は、例えば三相交流同期型モータジェネレータである。エンジン2とモータ4とは、第1クラッチ15を介して接続されている。第1クラッチ15は、エンジン2のクランクシャフト36とモータ4の回転軸(ロータ軸、不図示)とを断続する。具体的に、第1クラッチ15は、エンジン2とモータ4との状態を、これらの間でトルクが伝達される接続状態と、トルクが伝達されない遮断状態との間で切り替える。詳細には、第1クラッチ15が接続されると、エンジン2とモータ4との状態がこれらの間でトルクが伝達される接続状態となり、第1クラッチ15が切断(開放)されると、エンジン2とモータ4との状態がこれらの間でトルクが伝達されない遮断状態となる。
【0027】
変速機6は、入力された回転を変速して出力する。例えば、変速機6としては、前進6速、後退1速の変速機が用いられる。変速機6の出力軸は、デファレンシャルギヤ8等を介して車輪10に接続されており、変速機6に入力された回転力は車輪10に伝達される。
【0028】
変速機6の入力軸は、第2クラッチ16を介してモータ4に接続されている。具体的に、変速機6の入力軸とモータ4の回転軸とが第2クラッチ16を介して接続されている。第2クラッチ16は、モータ4の回転軸と変速機6の入力軸とを断続する。具体的に、第2クラッチ16は、モータ4の回転軸と変速機6の入力軸との状態を、これらの間でトルクが伝達される接続状態と、トルクが伝達されない遮断状態との間で切り替える。
【0029】
上記のように、モータ4の回転軸とエンジン2のクランクシャフト36とは第1クラッチ15を介して接続されており、モータ4の回転軸を介してクランクシャフト36と変速機6の入力軸との間でのトルク伝達は可能となっている。これに伴い、HV車両1は、モータ4の駆動力のみによる走行するモータモードと、モータ4とエンジン2の双方の駆動力により走行する併用モードと、エンジン2の駆動力のみにより走行するエンジンモードの3つのモードでの走行が可能である。具体的に、第1クラッチ15が切断される一方第2クラッチ16が接続された状態では、モータ4の駆動力のみが車輪10に伝達される。一方、第1クラッチ15と第2クラッチ16の双方が接続された状態で、且つ、モータ4が駆動力を発生しない場合(モータ4への電力供給が遮断される場合)には、エンジン2の駆動力のみが変速機6等を介して車輪10に付与される。また、第1クラッチ15と第2クラッチ16の双方が接続された状態で、且つ、モータ4が駆動力を発生している場合は、エンジン2およびモータ4の出力が変速機6等を介して車輪10に付与される。また、本実施形態のHV車両1は減速回生が可能な車両であり、モータ4は、HV車両1の減速時に車輪10から伝達される回転力によって発電するようになっている。なお、このとき、車輪10には、モータ4が発電する電力に応じた制動力が作用する。
【0030】
バッテリ14は、充放電可能な二次電池である。例えば、バッテリ14として、リチウムイオンバッテリやニッケル水素バッテリが用いられる。モータ4とバッテリ14とはインバータ12を介して電気的に接続されている。インバータ12は、三相交流電力と直流電力とを相互に変換する。モータ4には、インバータ12を介してバッテリ14から電力が供給され、当該電力を受けてモータ4は回転して駆動力を生成する。また、モータ4が発電した電力はインバータ12を介してバッテリ14に供給されてバッテリ14に蓄電される。
【0031】
バッテリ14には、当該バッテリ14に対する入出力電流を検出するバッテリセンサSN7が取り付けられている。後述するように、バッテリセンサSN7により検出された電流値は、バッテリSOCを検出するために利用される。バッテリSOCは、バッテリ14のフル充電時の充電量に対する現在の充電量の割合、つまり、バッテリ14の残容量である。言い換えると、バッテリセンサSN7は、バッテリSOC(バッテリ14の残容量)を検出するためのセンサであり、本発明の「残容量検出部」に相当する。
【0032】
(制御系統)
HV車両1の制御構成を、
図2のブロック図に基づいて説明する。HV車両1は、コントローラ100によって統括的に制御される。コントローラ100は、CPU、ROM、RAM等から構成される。
【0033】
コントローラ100には、上記のセンサSN1~SN7を含むHV車両1に搭載された各種センサからの検出信号が逐次入力される。HV車両1には、アクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度を検出するアクセル開度センサSN8が設けられており、アクセル開度センサSN8からの検出信号もコントローラ100に入力される。コントローラ100は、各センサSN1~SN8等から入力された情報に基づいて種々の判定や演算等を実施する。例えば、コントローラ100は、バッテリセンサSN7の検出値に基づいてバッテリ14の単位時間当たりの充電量および放電量を算出して、これらを積算することでバッテリSOCを算出する。また、コントローラ100は、アクセル開度センサSN8の検出値に基づいてHV車両1に対して要求されている出力を算出する。そして、コントローラ100は、演算の結果等に基づいて、モータ4(インバータ12)、エンジン2(スロットル弁41、インジェクタ37、点火プラグ38)、第1クラッチ15、第2クラッチ16等のHV車両1の各部にそれぞれ制御用の信号を出力して、これらを制御する。
【0034】
コントローラ100は、所定のプログラムが実施されることで、機能的に、走行制御部110と、故障診断部120とを具備するように動作する。また、故障診断部120は、機能的に、診断実行部121と継続要求決定部122とを具備するように動作する。
【0035】
(走行制御部)
走行制御部110は、HV車両1の走行モードを決定してこれを切り替えるための制御を実施する。
図3は、走行モードの切り替え手順を示すフローチャートである。
【0036】
走行制御部110は、まず、センサSN1~SN8等により検出された各種の情報を読み込む(ステップS1)。
【0037】
次に、走行制御部110は、走行モードをモータモードに切り替える、あるいは、走行モードをモータモードに維持する条件であるモータモード実施条件が成立しているか否かを判定する(ステップS2)。モータモード実施条件は予め設定されている。例えば、モータモード実施条件は、バッテリSOCが予め設定されたモード判定値以上であり、且つ、車両HV1の急加速時ではないという条件を含み、走行制御部110は、バッテリSOCおよびアクセル開度センサSN8により検出されたアクセル開度等に基づいて上記判定を行う。
【0038】
ステップS2の判定がNOであってモータモード実施条件が非成立の場合、走行制御部110は、走行モードを併用モードに切り替える、あるいは、走行モードを併用モードに維持する条件である併用モード実施条件が成立しているか否かを判定する(ステップS6)。併用モード実施条件は予め設定されている。例えば、併用モード実施条件は、バッテリSOCが上記のモード判定値以上であるという条件を含み、走行制御部110は、バッテリSOC等に基づいて上記判定を行う。
【0039】
ステップS6の判定がYESであって、併用モード実施条件が成立している場合、走行制御部110は、HV車両1の走行モードが併用モードとなるように各部を制御する(ステップS7)。具体的に、走行制御部110は、モータ4およびエンジン2の双方を駆動させるとともに第1クラッチ15を接続する。なお、モータ4およびエンジン2の双方が既に駆動している場合はこれを維持する。また、第1クラッチ15が既に接続されている場合はこれを維持する。走行制御部110は、ステップS7の後は処理を終了する(ステップS1に戻る)。
【0040】
一方、ステップS6の判定がNOであって併用モード実施条件が非成立の場合、走行制御部110は、HV車両1の走行モードがエンジンモードとなるように各部を制御する(ステップS8)。具体的に、走行制御部110は、モータ4を停止させて、エンジン2を駆動させるとともに第1クラッチ15を接続する。なお、モータ4が既に停止している場合はこれを維持し、エンジン2が既に駆動している場合はこれを維持する。また、第1クラッチ15が既に接続されている場合はこれを維持する。走行制御部110は、ステップS8の後は処理を終了する(ステップS1に戻る)。
【0041】
ステップS2に戻り、ステップS2の判定がYESであってモータモード実施条件が成立している場合、走行制御部110は、次に、エンジン駆動継続要求がないか否かを判定する(ステップS3)。エンジン駆動継続要求の詳細については後述するが、当該要求は継続要求決定部122から出力されるようになっており、ステップS3では、継続要求決定部122からエンジン駆動継続要求が出力されているかいないかを判定する。
【0042】
ステップS3の判定がYESであってエンジン駆動継続要求がない場合(継続要求決定部122からエンジン継続要求が出力されていない場合)、走行制御部110は、HV車両1の走行モードがモータモードとなるように各部を制御する(ステップS4)。具体的に、走行制御部110は、モータ4を駆動する一方、エンジン2を停止させるとともに第1クラッチ15を切断する。なお、モータ4が既に駆動している場合はこれを維持し、エンジン2が既に停止している場合はこれを維持する。また、第1クラッチ15が既に切断されている場合はこれを維持する。走行制御部110は、ステップS4の後は処理を終了する(ステップS1に戻る)。
【0043】
一方、ステップS3の判定がNOであってエンジン駆動継続要求がある場合(継続要求決定部122からエンジン継続要求が出力されている場合)、走行制御部110はエンジン2の駆動を継続するとともに第1クラッチ15の接続を継続して(ステップS5)、処理を終了する(ステップS1に戻る)。つまり、後述するように、エンジン駆動継続要求が出力されるのは走行モードが併用モードあるいはエンジンモードのときである。これより、エンジン駆動継続要求がある場合、走行制御部110はモータモード実施条件が成立しても、走行モードをモータモードに切り替えることなく現在の走行モード(併用モードあるいはエンジンモード)を継続してエンジン2の駆動を継続するとともに第1クラッチ15の接続を継続する。
【0044】
(診断実行部)
診断実行部121は、排気通路50に設けられた部品である排気部品が故障しているか否かの判定つまり故障診断を行う。本実施形態では、診断実行部121は、フロントO2センサSN5、リアO2センサSN6、浄化装置52について故障診断を行う。
【0045】
診断実行部121は、上記3つの排気部品(フロントO2センサSN5、リアO2センサSN6、浄化装置52)についてそれぞれ個別に故障診断を実行する。ただし、その診断の手順の全体的な流れは同じである。これより、まず、
図4のフローチャートを用いて、診断実行部121により実施される故障診断の全体の流れを説明する。
【0046】
診断実行部121は、まず、エンジン2が駆動中であるか否か、つまり、HV車両1の走行モードがエンジンモードまたは併用モードであるか否かの判定を行う(ステップS11)。ステップS11の判定がNOであってエンジン2が停止している場合、診断実行部121は故障診断を行うことなく処理を終了する(ステップS11に戻る)。一方、ステップS11の判定がYESであってエンジン2が駆動中の場合、診断実行部121は、センサSN1~SN8等により検出された各種の情報を読み込む(ステップS12)。次に、診断実行部121は、診断可能条件が成立しているか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13の判定がNOであって診断可能条件が非成立の場合、診断実行部121は故障診断を実行することなく処理を終了する(ステップS11に戻る)。一方、ステップS13の判定がYESであって診断可能条件が成立している場合、診断実行部121は、さらに診断実施条件が成立しているか否かを判定する(ステップS14)。
【0047】
ステップS14の判定がNOであって診断実施条件が成立していない場合、診断実行部121は故障診断を実行することなく処理を終了する(ステップS11に戻る)。一方、ステップS14の判定がYESであって診断実施条件が成立している場合、診断実行部121は、判定用パラメータを算出する(ステップS15)。次に、診断実行部121は、判定用パラメータの算出が終了したか否かを判定する(ステップS16)。ステップS16の判定がNOであって判定用パラメータの算出が終了していないときは、診断実行部121は、ステップS14に戻る。つまり、診断実行部121は、診断実施条件が成立している限りにおいて、判定用パラメータの算出が終了するのを待つ。一方、ステップS16の判定がYESであって判定用パラメータの算出が終了したときは、診断実行部121は、判定用パラメータに基づいて排気部品が故障しているか否かの判定を行う(ステップS17)。ステップS17の判定がNOであって排気部品が故障していないと判定した場合、診断実行部121はそのまま処理を終了する(ステップS11に戻る)。一方、ステップS17の判定がYESであって排気部品が故障していると判定した場合、診断実行部121は故障を記憶する(ステップS18)。なお、診断実行部121によって排気部品が故障していると判定された場合には、その旨をHV車両1の乗員に報知するようにしてもよい。
【0048】
本実施形態では、上記の診断実施条件は、3つの排気部品(フロントO2センサSN5、リアO2センサSN6、浄化装置52)のいずれについても同じ条件に設定されている。具体的に、診断実施条件は、フューエルカットがなされた、すなわち、HV車両1の減速等に伴ってインジェクタ37から燃焼室35への燃料噴射が停止されたという条件に設定されている。これより、3つの排気部品のいずれの故障診断においても、上記のステップS14ではフューエルカット時であるか否かという判定が行われる。
【0049】
一方、上記の診断可能条件は、3つの排気部品(フロントO2センサSN5、リアO2センサSN6、浄化装置52)についてそれぞれ異なる条件に設定されている。具体的に、フロントO2センサSN5の診断可能条件は、水温センサSN2により検出されたエンジン水温が所定の水温以上であるという条件を含む。リアO2センサSN6の診断可能条件は、リアO2センサSN6の出力電圧が所定の電圧以上であるという条件を含む。浄化装置52の診断可能条件は、触媒温度センサSN4により検出された触媒温度が所定の温度以上であるという条件を含む。以下では、適宜、フロントO2センサSN5の診断可能条件をフロントO2診断可能条件といい、リアO2センサSN6の診断可能条件をリアO2診断可能条件といい、浄化装置52の診断可能条件を触媒診断可能条件という。
【0050】
また、上記の判定用パラメータおよびステップS17で実施する判定用パラメータに基づく具体的な判定内容は、排気部品(フロントO2センサSN5、リアO2センサSN6、浄化装置52)に応じてそれぞれ個別の内容に設定されている。
【0051】
具体的に、フロントO2センサSN5が故障(劣化)すると、排気ガスの酸素濃度の変化に対するフロントO2センサSN5の出力電圧の変化速度が小さくなることが分かっており、これを利用してフロントO2センサSN5の故障を判定することができる。これに対応して、フロントO2センサSN5については、フューエルカットの開始時とフューエルカットの終了時(インジェクタ37からの燃料噴射が復帰した時)のそれぞれにおけるフロントO2センサSN5の出力電圧の変化率の最大値が、判定用パラメータに設定されている。そして、診断実行部121は、フューエルカット開始時と終了時の上記出力電圧の変化率の各最大値を算出して、これらの少なくとも一方が所定の値よりも小さければ、フロントO2センサSN5が故障していると判定する。
【0052】
また、リアO2センサSN6が故障(劣化)すると、検出対象である排気ガスの酸素濃度が変化したときにリアO2センサSN6の出力電圧が所定の範囲になる時間が長くなることが分かっており、これを利用してリアO2センサSN6の故障を判定することができる。これに対応して、リアO2センサSN6については、フューエルカット開始時と終了時のそれぞれにおいてリアO2センサSN6の出力電圧が所定の範囲内にある時間が、判定用パラメータに設定されている。そして、診断実行部121は、フューエルカット開始時と終了時における上記の各時間を算出して、これらの少なくとも一方が所定の値よりも長ければ、リアO2センサSN6が故障していると判定する。
【0053】
また、浄化装置52が故障するとフューエルカット時に浄化装置52に貯蔵される酸素量が減り、これに伴って浄化装置52に貯蔵されている酸素と反応する燃料の量も減ることが分かっており、これを利用して浄化装置52の故障を判定することができる。これに対応して、浄化装置52については、フューエルカットが終了してから浄化装置52内の酸素がなくなるまでに浄化装置52に導入された燃料の量が、判定用パラメータに設定されている。そして、診断実行部121は、上記の燃料量を算出して、これが所定の量よりも小さければ、浄化装置52が故障していると判定する。具体的に、診断実行部121は、フューエルカットの終了後からリアO2センサSN6の出力電圧が所定の電圧を超えるまでの間、フロントO2センサSN5により検出された酸素濃度に基づいて浄化装置52に導入された燃料の量を推定し、この推定した燃料量が所定の値よりも小さければ、浄化装置52が故障していると判定する。
【0054】
(継続要求決定部)
継続要求決定部122は、
図3に示した上記のステップS3の判定に用いられるエンジン駆動継続要求を走行制御部110に対して出力するか否かを決定する。
図5は、エンジン駆動継続要求の決定手順を示すフローチャートである。
【0055】
継続要求決定部122は、まず、エンジン2が駆動中且つ第1クラッチ15が接続中であるか否か、つまり、HV車両1の走行モードがエンジンモードあるいは併用モードであるか否かの判定を行う(ステップS21)。ステップS21の判定がNOであって、走行モードがモータモードであることに伴ってエンジン2が停止中あるいは第1クラッチ15が切断中の場合、継続要求決定部122はエンジン駆動継続要求を出すことなく処理を終了する(ステップS21に戻る)。
【0056】
一方、ステップS21の判定がYESであってエンジン2が駆動中且つ第1クラッチ15が接続中である場合、継続要求決定部122は、モータモード実施条件が成立しているか否かを判定する(ステップS22)。ステップS22の判定がNOであってモータモード実施条件が非成立の場合、継続要求決定部122はエンジン駆動継続要求を出すことなく処理を終了する(ステップS21に戻る)。一方、ステップS22の判定がYESであってモータモード実施条件が成立している場合、継続要求決定部122は、センサSN1~SN8等により検出された各種の情報を読み込む(ステップS23)。
【0057】
ここで、ステップS22は、ステップS21の判定がYESであって走行モードがエンジンモードあるいは併用モードのときに実施される。これより、ステップS22では、走行モードがエンジンモードあるいは併用モードである状態でモータモード実施条件が成立したか否かが判定されることになる。そして、走行モードがエンジンモードあるいは併用モードである状態でモータモード実施条件が成立した場合に、ステップS23以降が実施されることになる。
【0058】
ステップS23の次は、継続要求決定部122は、全ての診断可能条件が成立しているか否かを判定する(ステップS24)。具体的に、継続要求決定部122は、上記のフロントO2診断可能条件、リアO2診断可能条件および触媒診断可能条件、の全てが成立しているか否かを判定する。
【0059】
ステップS24の判定がNOであって一つ以上の診断可能条件が非成立である場合、継続要求決定部122は、エンジン駆動継続要求を出力すことなく処理を終了する(ステップS21に戻る)。
【0060】
一方、ステップS24の判定がYESであって全ての診断可能条件が成立している場合、継続要求決定部122は、後述するステップS28の判定に用いる判定時間を設定する(ステップS25)。
【0061】
継続要求決定部122は、バッテリSOCに基づいて判定時間を設定する。具体的に、継続要求決定部122は、バッテリSOCが大きいときの方が小さいときよりも判定時間が短くなるようにこれを設定する。上記の判定時間は、本発明の「継続期間」に相当する。
【0062】
本実施形態では、バッテリSOCに対する判定時間が
図6に示すように予め設定されて、コントローラ100に記憶されている。
図6のグラフの横軸はバッテリSOC(%)であり、縦軸は判定時間である。本実施形態では、
図6に示すように、バッテリSOCが所定の第1SOC(X1)以下のときは、バッテリSOCに関わらず判定時間は所定の第1時間T1に設定される。また、バッテリSOCが第1SOC(X1)よりも大きい第2SOC(X2)以上のときは、バッテリSOCに関わらず判定時間は、第1時間T1よりも短い第2時間T2に設定される。また、バッテリSOCが第1SOC(X1)よりも大きく且つ第2SOC(X2)よりも小さいときは、判定時間は、第1時間T1と第2時間T2との間でバッテリSOCが大きくなるほど判定時間が短くなるように設定される。
図6の例では、バッテリSOCに比例して判定時間は短くされる。つまり、バッテリSOCが第1SOC(X1)よりも大きく且つ第2SOC(X2)よりも小さいときは、判定時間は、第1時間T1からバッテリSOCの第1SOCに対する超過量に比例して、且つ、バッテリSOCが第2SOCのときの判定時間が第2時間T2になるように、短くされる。
【0063】
図5のフローチャートに戻り、ステップS25にて判定時間を設定した後は、継続要求決定部122は、エンジン駆動継続要求を出力する(ステップS26)。
【0064】
ここで、ステップS26はステップS22の判定がYESのときに実施されるステップであり、エンジン駆動継続要求はモータモード実施条件の成立時に出力される。これより、エンジン駆動継続要求が出力されたときは、
図3のフローチャートにおけるステップS2の判定はYESとなっている。従って、エンジン駆動継続要求が出力されると、走行制御部110は上記のステップS5を実施する。つまり、上記のように、エンジン駆動継続要求が出力されると、走行制御部110は、モータモード実施条件が成立したにも関わらず、走行モードをモータモードに切り替えることなくエンジン2の駆動を継続するとともに第1クラッチ15の切断を継続する。換言すると、継続要求決定部122は、走行制御部110に対して、現在の走行モード(併用モードあるいはエンジンモード)を継続させて、エンジン2の停止を禁止するとともに第1クラッチ15の切断を禁止する。
【0065】
ステップS26の後は、継続要求決定部122は、全ての診断可能条件が成立中であるか否かを判定する(ステップS27)。ステップS27の判定がNOであって一つ以上の診断可能条件が非成立になった場合は、継続要求決定部122は、エンジン駆動継続要求を取下げる(ステップS30)。エンジン駆動継続要求が取下げられると、走行制御部110による走行モードのモータモードへの切り替えが可能となる。従って、モータモード実施条件が成立していれば、走行制御部110は、モータ4を駆動し、エンジンEを停止するとともに第1クラッチ15を切断する。換言すると、継続要求決定部122は、モータモード実施条件が成立している限りにおいて、走行制御部110によって、モータ4を駆動させ、エンジン2を停止させるとともに第1クラッチ15を切断させる。
【0066】
ステップS27に戻り、ステップS27の判定がYESであって全ての診断可能条件が継続して成立している場合、継続要求決定部122は、エンジン駆動継続要求を出してからの経過時間が上記の判定時間以下であるか否かを判定する(ステップS28)。
【0067】
ステップS28の判定がNOであって駆動継続要求を出してからの経過時間が判定時間を超えている場合、継続要求決定部122は、ステップS30に進み、エンジン駆動継続要求を取下げる。その後、継続要求決定部122は処理を終了する(ステップS21に戻る)。
【0068】
一方、ステップS28の判定がYESであって駆動継続要求を出してからの経過時間が判定時間以下の場合、継続要求決定部122は、全ての故障診断が完了したか否かを判定する(ステップS29)。具体的に、継続要求決定部122は、全ての診断可能条件が成立し、且つ、その後にフロントO2センサSN5、リアO2センサSN6および浄化装置52についてそれぞれ故障しているか否かの判定が行われたかどうかを判定する。
【0069】
ステップS29の判定がNOであっていずれかの故障診断が未完了である場合、継続要求決定部122は、ステップS26に戻りエンジン駆動継続要求を継続して出すとともに、ステップS26以降のステップを実施する。
【0070】
一方、ステップS29の判定がYESであって全ての故障診断が完了した場合、継続要求決定部122はステップS30に進み、エンジン駆動継続要求を取下げる。その後、継続要求決定部122は処理を終了する(ステップS21に戻る)。
【0071】
上記のように、コントローラ100は、エンジン2が駆動中且つ全ての診断可能条件の成立中にモータモード実施条件が成立すると、モータモード実施条件が成立してから判定時間が経過するまでの間、エンジン2の駆動を継続させる制御である駆動継続制御を実施する。また、コントローラ100は、エンジン2の駆動を継続させる当該駆動継続制御の実施中に全ての故障診断が完了すると、上記の駆動継続制御を停止して、走行モードをモータモードに切り替えてエンジン2を停止するとともにモータ4を駆動させる。
【0072】
図7は、エンジン駆動継続要求が出力されるときの各パラメータの時間変化を概略的に示したタイムチャートである。
図7には、上から順に、モータモード実施条件の成否、エンジンの駆動状態と第1クラッチの状態、触媒温度、触媒診断可能条件の成否、エンジン水温、フロントO2診断可能条件の成否、リアO2センサSN6の電圧、リアO2診断可能条件、エンジン駆動継続要求の出力状態の、それぞれの時間変化を示している。
【0073】
図7の例では、時刻t1までエンジン2が駆動され且つ第1クラッチ15が接続されており、時刻t1にてモータモード実施条件が成立するのに伴ってエンジン2が停止されるとともに第1クラッチ15が切断される。その後、時刻t3にて、モータモード実施条件が非成立となる一方エンジンモード実施条件または併用モード実施条件が成立することに伴い、エンジン2の駆動および第1クラッチ15の接続が再開される。
【0074】
図7の例では、時刻t3よりも後の時刻t6にて触媒温度が所定の温度以上まで上昇する。これに伴い時刻t6以降、触媒診断可能条件が成立する。また、時刻t3よりも後で時刻t6よりも前の時刻t5にてエンジン水温が所定の水温以上まで上昇する。これに伴い時刻t5以降、フロントO2診断可能条件が成立する。また、リアO2センサSN6の電圧は、時刻t1よりも後の時刻t2で所定の電圧を下回るまで低下するものの、その後上昇に転じて、時刻t5よりも前の時刻t4にて所定の電圧以上まで上昇する。これより、時刻t2までの期間に加えて時刻t4以降もリアO2診断可能条件が成立する。従って、
図7の例では、時刻t6以降において、触媒診断可能条件、リアO2診断可能条件およびリアO2診断可能条件の全てが成立する。
【0075】
また、
図7の例では、全ての診断可能条件が成立しており、圧、エンジン2が駆動するとともに第1クラッチ15が接続されている状態で、時刻t7にて、モータモード実施条件が成立する。これにより、時刻t7にて、エンジン駆動継続要求が出力される。時刻t7にて、エンジン駆動継続要求が出力されると、モータモード実施条件が成立しているにも関わらず、時刻t7以降もエンジン2の駆動および第1クラッチ15の接続が維持される。
【0076】
図7のエンジンの駆動状態と第1クラッチの状態のグラフおよびエンジン駆動継続要求の出力状態のグラフにおいて、破線は、時刻t7の後、診断実施条件が成立しないことで(フューエルカットが実施されないことで)、故障診断が実施されなかった場合を例示している。この場合は、時刻t7からの経過時間が判定時間となる時刻t9までエンジン2の駆動および第1クラッチ15の接続が維持されて、時刻t9にて走行モードがモータモードに切り替えられる。これより、時刻t9にてエンジン2の駆動が停止されるとともに第1クラッチ15が切断される。
【0077】
一方、
図7のエンジンの駆動状態と第1クラッチの状態のグラフおよびエンジン駆動継続要求の出力状態のグラフにおいて、実線は、時刻t7の後、時刻t9よりも前に診断実施条件が成立する(フューエルカットが実施される)とともに故障診断が終了した場合を例示している。この場合は、時刻t9よりも前の時刻t8にて走行モードがモータモードに切り替えられてエンジン2の駆動が停止されるとともに第1クラッチ15が切断されることになる。
【0078】
(作用等)
以上説明したとおり、上記実施形態では、排気通路50に設けられた排気部品であるフロントO2センサSN5、リアO2センサSN6、浄化装置52の故障診断が可能となる診断可能条件がエンジン駆動中に成立すると、エンジン駆動継続要求が出力される。そして、エンジン駆動継続要求が出力されると、エンジン2を停止してモータ4を駆動させる条件であるモータモード実施条件が成立しても、エンジン2の駆動が強制的に継続されるようになっている。そのため、フロントO2センサSN5、リアO2センサSN6および浄化装置52の故障診断の実施機会を多くすることができる。
【0079】
しかも、上記実施形態では、エンジンの駆動が強制的に継続される時間である判定時間が、バッテリSOCが大きいときは小さいときよりも短くなるように設定される。そのため、バッテリSOCが大きいことを根拠として、車両の乗員が、エンジン2が停止してモータ4が駆動されると予想するときに、この予想に反してエンジン2の駆動が長時間にわたって継続されるのを防止できる。そして、バッテリSOCが小さいことでエンジン2が駆動されることについて乗員が違和感を覚えにくいときにはエンジン2の駆動がより長時間にわたって継続される。そのため、乗員に与える違和感を小さく抑えつつ、診断可能条件の成立下でのエンジン2の駆動時間を確保してフロントO2センサSN5、リアO2センサSN6および浄化装置52の故障診断の機会を多くできる。
【0080】
また、上記実施形態では、全ての診断可能条件(フロントO2診断可能条件、リアO2診断可能条件および触媒診断可能条件)が成立しているときに限り、エンジン駆動継続要求が出力されてエンジン2の駆動が強制的に継続される。そのため、フロントO2センサSN5、リアO2センサSN6および浄化装置52の故障診断の機会を確保しつつ、エンジン2の駆動が強制的に継続される機会、つまり、モータモード実施条件の成立下でエンジン2が駆動される機会を少なく抑えて乗員に与える違和感をより小さくすることができる。
【0081】
また、上記実施形態に係る装置では、フロントO2センサSN5、リアO2センサSN6および浄化装置52の故障診断が完了すると、エンジン駆動継続要求が取下げられて、エンジン2が停止されるとともにモータ4の駆動が開始される。そのため、故障診断の機会を確保しつつ、エンジン2の駆動を強制的に継続する時間が不要に長くなるのを回避して乗員に与える違和感をより一層小さくできる。
【0082】
(変形例)
上記実施形態では、故障診断が行われる排気部品が、フロントO2センサSN5、リアO2センサSN6および浄化装置52である場合を説明したが、排気部品の具体的な種類はこれらに限られない。また、これらの排気部品の一部のみの故障診断について、上記実施形態に係る制御が適用されてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、全ての診断可能条件(フロントO2診断可能条件、リアO2診断可能条件および触媒診断可能条件)が成立しているときにエンジン駆動継続要求が出力されてエンジンの駆動が継続される場合を説明したが、一つ、あるいは、二つ以上の診断可能条件の成立に伴ってエンジン駆動継続要求が出力されるように構成してもよい。
【0084】
また、走行モードを切り替えるための各条件の具体的な内容、診断可能条件および診断実施条件の具体的な内容、および、故障しているか否かの判定の具体的な内容は上記に限られない。
【符号の説明】
【0085】
2 エンジン
4 モータ
14 バッテリ
50 排気通路
52 浄化装置(排気部品)
100 コントローラ
110 走行制御部
120 故障診断部
SN5 フロントO2センサ(排気部品)
SN6 リアO2センサ(排気部品)
SN7 バッテリセンサ(残容量検出部)