(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136988
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】反応装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/20 20060101AFI20240927BHJP
F27B 17/00 20060101ALI20240927BHJP
F27B 9/24 20060101ALI20240927BHJP
F27B 9/40 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B01J19/20
F27B17/00 D
F27B9/24 Z
F27B9/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048316
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】植田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 諭
(72)【発明者】
【氏名】古木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】平松 靖也
【テーマコード(参考)】
4G075
4K050
【Fターム(参考)】
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA22
4G075AA63
4G075AA65
4G075BA10
4G075BB05
4G075CA02
4G075CA03
4G075CA54
4G075EA02
4G075EA06
4G075EB01
4G075ED03
4G075FA11
4G075FB02
4G075FB03
4G075FB04
4K050AA02
4K050BA05
4K050BA11
4K050CD06
4K050CG01
4K050EA05
(57)【要約】
【課題】反応容器が熱膨張もしくは熱収縮により変形しても、これに起因して正常に動作できなくなるのを防止することができる反応装置を提供する。
【解決手段】反応装置10Aにおいて、供給部と送出部との間の中間部A3を含む筒状の反応容器100と、前記中間部の温度を制御する温度制御部と、供給部と、前記送出部と、前記処理物を前記供給部側から前記中間部を通過して前記送出部側に搬送する搬送機構と、前記反応容器の一端側を固定した状態で支持する第1支持部103と、前記反応容器の他端側を当該反応容器の軸方向に移動可能な状態で支持する第2支持部104と、を備え、前記温度制御部は、前記反応容器の特定箇所(E)の実際の変位速度が前記反応容器の前記特定箇所の望ましい変位速度に追従するように前記中間部の昇温速度又は降温速度を制御する。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給部と送出部との間の中間部を含む筒状の反応容器と、
前記中間部の温度を制御する温度制御部と、
前記反応容器に処理物を供給する前記供給部と、前記反応容器から生成物を送出する前記送出部と、
前記処理物を前記反応容器の前記供給部側から前記中間部を通過して前記反応容器の前記送出部側に搬送する搬送機構と、
前記反応容器の一端側を固定した状態で支持する第1支持部と、
前記反応容器の他端側を当該反応容器の軸方向に移動可能な状態で支持する第2支持部と、を備え、
前記温度制御部は、前記反応容器の特定箇所の実際の変位速度が前記反応容器の前記特定箇所の望ましい変位速度に追従するように前記中間部の昇温速度又は降温速度を制御する反応装置。
【請求項2】
前記特定箇所の前記望ましい変位速度を記憶する変位速度記憶部と、
前記反応容器の前記特定箇所の実際の位置を測定する位置測定装置と、
前記位置測定装置により測定された前記特定箇所の前記実際の位置に基づいて、前記特定箇所の前記実際の変位速度を計算する変位速度計算部と、をさらに備える請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記温度制御部は、前記特定箇所の前記実際の変位速度と前記特定箇所の前記望ましい変位速度との乖離が正の乖離の場合、前記中間部の昇温速度又は降温速度を上げるように制御し、一方、前記特定箇所の前記実際の変位速度と前記特定箇所の前記望ましい変位速度との乖離が負の乖離の場合、前記中間部の昇温速度又は降温速度を下げるように制御する請求項1に記載の反応装置。
【請求項4】
前記温度制御部が実行した温度制御パターンを記憶する温度制御パターン記憶部をさらに備え、
前記温度制御部は、前記温度制御パターンに基づいて、前記中間部の昇温速度又は降温速度を制御する請求項2に記載の反応装置。
【請求項5】
前記特定箇所の変位速度ができる限り速くなるように前記温度制御パターンを補正する温度制御パターン補正部をさらに備える請求項4に記載の反応装置。
【請求項6】
前記温度制御パターン補正部は、機械学習の結果に基づき、前記温度制御パターンを補正する請求項5に記載の反応装置。
【請求項7】
前記反応装置が正常に動作できなくなる状況を回避する緊急時処理を実行する緊急時動作制御部をさらに備え、
前記温度制御部が前記中間部の昇温速度を制御しており、かつ、所定条件を満たす場合、前記緊急時動作制御部は、前記緊急時処理を実行する請求項1に記載の反応装置。
【請求項8】
前記所定条件を満たす場合は、前記反応容器の前記特定箇所の位置の時間変化が負に転じた場合である請求項7に記載の反応装置。
【請求項9】
前記所定条件を満たす場合は、前記望ましい変位速度と前記実際の変位速度との乖離が閾値を超えた場合である請求項7に記載の反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体状の処理物に対して所定の雰囲気を与えることにより所望の製品を製造するための反応装置が存在する。例えば一般には、ロータリーキルンと称される反応装置は、中心軸周りに回転する中空の反応容器を加熱し、この反応容器に材料を転動させながら通過させることにより所望の製品を製造する。また例えばローラーハースキルンと称される反応装置は、トンネル型の反応容器に処理物やワークを通過させることにより所望の製品を製造する。またその他にも種々の反応装置が開発されている。
【0003】
例えば特許文献1は、以下の反応装置について開示している。反応装置は、圧力反応容器となるスクリュフィーダ本体と、スクリュフィーダ本体内に触媒を導入する触媒供給部と、スクリュフィーダ本体内に低級炭化水素を導入する低級炭化水素供給部と、を有する。またこの反応装置は、生成したナノ炭素を搬送するスクリュと、スクリュによって搬送される触媒とナノ炭素を送出する固体送出部と、生成した水素をフィーダ本体外に送出する気体送出部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような反応装置においては、反応容器の温度を変化させると、反応容器や搬送機構等が熱膨張もしくは熱収縮により変形し、反応装置の正常な動作を妨げるという課題がある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態に係る反応装置は、供給部と送出部との間の中間部を含む筒状の反応容器と、前記中間部の温度を制御する温度制御部と、前記反応容器に処理物を供給する前記供給部と、前記反応容器から生成物を送出する前記送出部と、前記処理物を前記反応容器の前記供給部側から前記中間部を通過して前記反応容器の前記送出部側に搬送する搬送機構と、前記反応容器の一端側を固定した状態で支持する第1支持部と、前記反応容器の他端側を当該反応容器の軸方向に移動可能な状態で支持する第2支持部と、を備え、前記温度制御部は、前記反応容器の特定箇所の実際の変位速度が前記反応容器の前記特定箇所の望ましい変位速度に追従するように、前記中間部の温度が目標温度に到達するまで前記中間部の昇温速度又は降温速度を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、反応容器や搬送機構等が熱膨張もしくは熱収縮により変形しても、これに起因して正常に動作できなくなるのを防止することができる反応装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる反応装置の側面図である。
【
図2】実施の形態1にかかる反応装置のブロック図である。
【
図3】反応装置が実行する処理のフローチャートである。
【
図4】実施の形態2にかかる反応装置の側面図である。
【
図5】(a)反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能な状態で支持する具体例1を表す図、(b)反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能な状態で支持する具体例2を表す図、(c)反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能な状態で支持する具体例3を表す図である。
【
図6】反応容器100を回転可能に支持する構成例である。
【
図7】
図5(a)中の矢印AR2方向から見た矢視図である。
【
図8】反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に加え、回転軸AX
V(鉛直軸)を中心に回転可能な状態で支持する具体例4の概略図である。
【
図10】反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に加え、回転軸AX
V(鉛直軸)を中心に回転可能かつ短軸方向(
図10中矢印AR6参照)に移動可能な状態で支持する具体例5の概略図である。
【
図11】(a)反応容器100が捻れている状態を表す図、(b)反応容器100が傾いている状態を表す図、(c)反応容器100の捻れが抑制されている状態を表す図、(d)反応容器100の傾きが抑制されている状態を表す図である。
【
図13】加熱部H1~H4と温度制御部202との電気的な接続関係を表すブロック図である。
【
図15】第1の課題(反応容器100を降温制御(冷却制御)する際の課題)について説明するための図である。
【
図16】(a)段階的な降温の一例、(b)段階的な昇温の一例である。
【
図17】参考例2の反応装置10において反応容器100の温度をある降温速度で目標温度まで降温制御(冷却制御)する場合の、降温の温度変化C1と反応容器100の実際の温度変化C2との関係を表すグラフである。
【
図18】参考例2の反応装置10において段階的な降温を行う降温処理のフローチャート例である。
【
図19】実施形態1の反応装置10Aの概略構成図である。
【
図20】実施形態1にかかる反応装置10Aのブロック図である。
【
図21】反応容器100を降温制御(冷却制御)する場合の、点Eの望ましい変位速度C3と点Eの実際の変位速度C4との関係を表すグラフである。
【
図22】反応装置10Aの動作例1のフローチャートである。
【
図23】降温速度制御処理のフローチャートである。
【
図24】反応装置10Aの動作例2のフローチャートである。
【
図25】反応容器100を昇温制御(加熱制御)する場合の、点Eの望ましい変位速度V1と点Eの実際の変位速度V2との関係を表すグラフである。
【
図26】昇温速度制御処理のフローチャートである。
【
図27】実施形態2にかかる反応装置10Bのブロック図である。
【
図31】実施形態3にかかる反応装置10Cのブロック図である。
【
図32】記憶部207に記憶されている温度制御テーブルの一例である。
【
図33】反応装置10Cの動作例1のフローチャートである。
【
図34】反応装置10Cの動作例2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
<参考例1>
図1を参照しながら、参考例1にかかる反応装置の主な構成について説明する。
図1は、参考例1にかかる反応装置10の側面図である。図に示す反応装置10は理解容易のために一部を切り取った状態で示している。
【0012】
反応装置10は、例えば粉粒体状の処理物に所定の物理的な刺激等の条件を与えることにより生成物を製造するための装置である。この反応装置10は、筒状の反応容器100(反応炉)、この反応容器100に処理物R10を供給する供給部(供給口101)、この反応容器100から生成物を送出する送出部(送出口102)、この反応容器100に供給された処理物R10を反応容器100の供給部から反応容器100の送出部へ搬送する搬送機構120(例えばスクリュ)、この搬送される処理物に接する流体を反応容器100内に供給する流体供給部(第1流体入口131、第1流体出口132、第1バルブ134等)、反応容器100の温度を反応容器100の長軸AX100方向の互いに異なる領域ごとに制御する温度制御部(温度制御領域110等)を備える。
【0013】
なお、物理的な刺激とは、処理物を生成物に変化させる過程に用いる手段であれば特に限定されない。物理的な刺激とは、例えば加熱や冷却のような温度変化である。物理的な刺激とは、例えば攪拌、混合、混練、粉砕のような応力伝達である。物理的な刺激とは、例えば電子やラジカルの授受を伴う反応である。
【0014】
反応装置10において、反応容器100に供給された処理物R10は、搬送機構120により反応容器100の送出口側へ搬送されながら加熱され、この搬送される処理物R10に接する所定の流体が反応容器100内に供給されることにより、処理物R10(処理物)が所定の温度で連続的に処理される。処理物とは、固体であってもよいし、流体であってもよいし、両方が混在したものであってもよい。なお、処理物を搬送しながら攪拌等するため、反応容器100自体が回転可能であってもよいし、反応容器100内に回転可能な構造を有する搬送機構120を設けてもよい。
【0015】
処理物や生成物の種類や状態は特に制限されないが、リチウムを成分の一つに含む金属酸化物や金属硫化物のような無機物であってもよいし、炭化水素や食品のような有機物であってもよい。処理物は粉粒体のような固体であってもよいし、液体や気体のような流体であってもよい。
【0016】
処理物は、生成物への変化の過程において、中間物を経てもよい。中間物の形態や状態は特に制限されない。中間物とは、例えば2以上の反応を段階的に行う場合の各反応における生成物であってもよい。その場合、中間物とは、例えば水和した化合物を加熱することにより生成する無水化合物である。あるいは、中間物とは、多糖類が加水分解して生成する単糖類であってもよい。中間物とは、処理物の少なくとも一部が粒成長もしくは焼結した焼成体であってもよい。中間物とは、処理物の少なくとも一部が液化もしくは気化した状態であってもよい。中間物とは、見かけ上は変化しないが処理物の温度や硬さ等が変化した状態あってもよい。中間物とは、上記以外の形態や状態であってもよい。
【0017】
生成物の種類や状態は特に制限されず、生成物は粉粒体のような固体であってもよいし、液体や気体のような流体であってもよい。生成物は触媒や搬送補助部材などの処理物以外の部材を含む混合体であってもよい。生成物は主生成物と副生成物のように、2以上の化合物を含む混合体であってもよい。
【0018】
処理物や生成物の形状や大きさは特に制限されないが、処理物や生成物が粉粒体の場合の粒子径は、好ましくは50mm以下であり、さらに好ましくは0.005~20mmである。さらに、処理物や生成物の形状が塊状の場合、対角長さの比率(アスペクト比)は、好ましくは1~10であり、さらに好ましくは1.3~1.8である。
【0019】
反応装置10は主な構成として、反応容器100、温度制御領域110、搬送機構120、第1流体制御領域130および第2流体制御領域140を有する。
【0020】
反応容器100は、例えば筒状であって、処理物を受け入れる供給口101と生成物を送出する送出口102を有する。供給口101が本開示の供給部の一例である。なお、反応容器100の形状や構成は特に限定されない。例えば、反応容器100の断面の形状は、円形や楕円形でもよいし、四角形等の多角形でもよいし、それら以外の形状であってもよい。例えば、反応容器100は1つの部材で構成されていてもよいし、2以上の部材が連結されていてもよい。2以上の部材が連結されている場合、例えば部材が連結される箇所にはボルトのような締結手段が用いられ得る。
【0021】
反応容器100は、供給口101と送出口102との間に中間部A3を有している。供給口101、送出口102、および中間部A3の数や配置は特に限定されない。例えば、中間部A3の両端には、それぞれ2以上の供給口101および送出口102を備えていてもよい。
【0022】
供給口101は反応容器100の中間に位置し、供給口101の両端にそれぞれ中間部A3および送出口102を備えていてもよい。この場合、処理物R10は反応容器100の中間に供給され、生成物R11は反応容器100の一端側および他端側からそれぞれ送出され得る。さらに、この場合、例えば搬送機構120としてスクリュを用い、スクリュに施された螺旋状の凸部の向き(螺旋の向き)を例えば供給口101を境に逆向きとすることで、供給口101を境として処理物R10を反応容器100の一端側および他端側にそれぞれ分岐させて搬送してもよい。あるいは、送出口102が反応容器100の中間に位置し、送出口102の両端にそれぞれ中間部A3および供給口101を備えた場合は、例えば搬送機構120としてスクリュを用い、スクリュに施された螺旋状の凸部の向き(螺旋の向き)を例えば送出口102を境に逆向きとし、送出口102を境として生成物R11を反応容器100の一端側および他端側から集合させるように搬送してもよい。このように、処理物R10や生成物R11等の搬送方向を分岐もしくは集合させるように搬送する手段は、例えば複数の反応装置10を並列して連結する場合において望ましい。
【0023】
反応容器100は、炉内において生成物を製造する際に生じる温度変化や、炉内に供給される物質(処理物等)や生成する物質(生成物等)との接触を許容可能な材質により形成される。反応容器100や搬送機構120は、例えば、合金、セラミックス、カーボン、およびそれらを2以上含む複合材により形成され得る。合金は、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、鉄、銅、アルミニウム、ケイ素、ホウ素、炭素などの合金元素のうち少なくとも一つを成分に含む金属部材である。セラミックスは、アルミナやジルコニアなどの酸化物、炭化ケイ素や炭化チタンなどの炭化物、窒化ケイ素や窒化チタンなどの窒化物、ホウ化クロムなどのホウ化物のようなセラミックス部材の他に、非晶質構造を少なくとも一部に有するガラス材も含まれ得る。また、カーボンは、結晶質グラファイトや繊維強化グラファイトなどの炭素部材である。
【0024】
図1に示す反応装置10は、水平方向に横臥しており、
図1の左上端部に供給口101を有し、右下端部に送出口102を有する。
図1に示す反応容器100は、供給口101から処理物R10を受け入れる。反応装置10は、反応容器100の内部に設けられた搬送機構120により、反応容器100が受け入れた処理物R10を反応容器100の供給口101(A1)から中間部A3を通過して反応容器100の送出口102(A2)に搬送する。反応装置10は、反応容器100の中間部A3に処理物R10を通過させることにより処理物R10から生成物R11を製造する。そして反応容器100は、製造した生成物R11を送出口102から送出する。
【0025】
温度制御領域110は、温度制御装置、すなわち加熱装置または冷却装置を含み、供給口101と送出口102の間の中間部A3における所定の位置の反応容器の温度を制御する。温度制御領域110等が本開示の温度制御部の一例である。
図1に示す温度制御領域110は、反応容器100の中間部A3において筒状の反応容器100の周囲を囲むように加熱装置を有している。加熱装置は例えばシースヒータ、コイルヒータまたはセラミックヒータなどの温度制御可能な任意のヒータを含む。加熱装置は例えば常温から摂氏1000度程度の範囲の加熱を行う。温度制御領域110は、反応容器100の中間部A3において筒状の反応容器100の周囲を複数の加熱装置により分割して囲む構成を有していても良い。これにより、例えば反応容器100の周囲において上下左右の各部に個別に異なる温度を設定できる。また、中間部A3の温度を反応容器100の短軸方向の互いに異なる領域ごとに制御することができる。また温度制御領域110は、反応容器100の中間部A3の領域ごとに、後述する搬送機構120の軸AX
120方向に沿って、異なる温度を設定できる。例えば温度制御領域110は後述する第1流体制御領域130や第2流体制御領域140において処理物R10に与える温度変化を制御し得る。
【0026】
また温度制御領域110は、加熱装置または冷却装置を制御するための制御装置を含みうる。例えば温度制御領域110は、反応容器100の所定の位置に温度を監視するための温度計を有していてもよい。また反応容器100は、例えば加熱装置が電流を流すことにより加熱する原理を有する場合には、電流値を監視することにより温度制御を行ってもよい。
【0027】
なお、温度制御領域110は、例えば水やオイルを循環させることにより加熱または冷却を行う構成を有していてもよい。また温度制御領域110は例えばペルチェ素子などを用いて冷却を行う構成を有していてもよい。上述の構成により、温度制御領域110は、反応容器100において搬送機構120の軸AX120方向に沿って種々の温度分布を設定できる。
【0028】
以上のように、温度制御領域110は、反応容器100(例えば中間部A3)の温度を反応容器100の長軸AX100方向の互いに異なる領域ごとに制御することができる。
【0029】
搬送機構120は、例えば反応容器100の一端側A1から他端側A2に亘り延伸することにより、供給口101から供給された処理物R10を送出口102に向かって搬送する。本開示の搬送機構120は、原料や生成物等を搬送可能とするものであれば、その形状や搬送方法は限られない。搬送機構120は反応容器100の一端側から他端側にわたって延伸するように、反応容器100の内部に備えられたスクリュであってもよい。搬送機構120は反応容器100の一端側から他端側にわたって延伸するように反応容器100の内部に備えられたドラムであってもよい。搬送機構120は反応容器100の一端側から他端側にわたって延伸するように反応容器100の内部に備えられたベルトコンベヤであってもよい。搬送機構120は反応容器100の内部に備えられた送風装置であってもよい。搬送機構120は反応容器100の内部に備えられた振動発生装置であってもよい。搬送機構120は、上記以外であってもよい。
【0030】
搬送機構120の大きさは特に制限されず、例えば、反応容器100の全長に比べて短くてもよい。搬送機構120を形成する素材は特に制限されないが、搬送機構120は、反応容器100と同様に、生成物を製造する際に生じる温度変化や、容器内に供給される物質(処理物等)や生成する物質(生成物等)との接触を許容可能な素材により形成されることが望ましい。搬送機構は、例えば、合金、セラミックス、カーボン、およびそれらを2以上含む複合材により形成され得る。
【0031】
図1に示す搬送機構120は、一例としてスクリュを示したものであって、反応容器100の長軸方向に延伸する主軸の周囲に螺旋状の凸部121が形成されている。この凸部121が処理物R10と接触しながら回転することにより、搬送機構120は処理物R10を供給口側から送出口側へ搬送する。
【0032】
なお、
図1に示す凸部121の形状は一例であって、凸部121の形状はこれに限られない。凸部121は、反応容器100の領域ごとに異なる形状を有していてもよい。より具体的には、例えば凸部121は螺旋のピッチが変化してもよい。また凸部121の螺旋形状は、1条ではなく、2条であってもよい。また凸部121は螺旋形状ではない部分を有していてもよい。また、凸部121はスクリュの長軸方向に対して凸部の頂点が90度の角度を呈する向きに設けられていてもよい。さらに、凸部121はスクリュの長軸方向に対して0度の角度を成す向きに延伸していてもよい。これにより反応装置10は、反応容器100の内部に存在する物体の移動する速さや移動する際の挙動などを領域ごとに設定できる。より具体的には、例えば反応装置10は、反応容器100における物体を搬送、攪拌、混合、滞留、混練または粉砕する。
【0033】
搬送機構120は、反応容器100の両端部(一端側A1、他端側A2)においてそれぞれ軸支されている。また
図1に例示する搬送機構120はスクリュであり、一端側B1において駆動装置150に接続(連結)している。駆動装置150は本開示における搬送機構120の駆動装置の一例である。駆動装置150は、反応装置10の一端側に設けられたモータ151と、モータ151と反応容器100の一端側A1との間に設けられた減速機152と、を含む。この減速機152は、モータ151の回転軸に連結された入力軸と、搬送機構120の一端側B1に連結された出力軸と、を含み、モータ151の回転軸の回転を減速して搬送機構120に伝達することにより搬送機構120を回転させる。なお、駆動装置150は、搬送機構120の回転数を変速可能に設定されたものであってもよい。この場合、駆動装置150は、回転数が変動可能なモータであってもよいし、回転数が一定のモータと、減速比が変更可能な減速機とを組み合わせたものであってもよい。
【0034】
第1流体制御領域130は、中間部A3における所定の領域において反応容器100に第1流体を通過させるための第1流体入口131および第1流体出口132を含む。第1流体制御領域130は反応容器100において、供給口101と第2流体制御領域140との間に設けられている。第1流体入口131は第1流体供給管133に接続し、第1流体供給管133から供給される第1流体を反応容器100に供給する。なお、第1流体供給管133は第1流体の流量を調整するための第1バルブ134を含む。また、第1流体供給管133は第1バルブ134を開閉することにより、第1流体を反応容器100に間欠的に時間制御しながら供給してもよい。第1流体排出管135に接続された第1流体出口132は、第1流体制御領域130の流体を反応容器100の外へ排出するための孔である。第1流体排出管135は反応容器100から排出される流体の流量もしくは流速を調整するためのバルブや排出機構を備えていてもよい。排出機構は、例えばポンプやベンチュリ効果を利用したエジェクタ等の吸引機構である。なお、第1流体入口131および第1流体出口132は、それぞれ複数設けられてもよい。第1流体制御領域130において、第1流体入口131および第1流体出口132が設けられる場所は特に限定されず、反応容器100の上部や下部、あるいは側方に設けられてもよい。また、第1流体入口131を反応容器100の下部に設け第1流体出口132を反応容器100の上部に設けることで、反応容器内に所定の方向に気流を発生させてもよい。このようにすることで、処理物に第1流体が接触しやすくなり、処理物の反応を好適に行うことができる。また、第1流体供給管133の内径よりも、第1流体入口131の内径を小さくすることで、反応容器100に第1流体が供給される際に、第1流体の気化を伴うようしてもよい。このようにすることで、処理物の周囲の雰囲気を気化熱によって温度調整することができ、処理物の反応を好適に制御できる。
【0035】
上述の構成により、反応装置10は、第1流体制御領域130において処理物R10と第1流体とを接触させることで、処理物R10を中間物とする。また反応装置10は、処理物R10と接触後の流体を第1流体制御領域130の外へ排出する。また反応装置10は、搬送機構120が回転しながら処理物R10ないし中間物を搬送し、さらに第1流体を接触させることにより、第1流体による反応を促進できる。なお、第1流体は、流動性を有するものであれば、その形態や組成は限定されない。第1流体は、気体であってもよいし、液体であってもよい。第1流体は、固体が液体に分散した分散液であってもよい。また、反応装置10に第1流体を供給することで、反応容器100や搬送機構120の温度を部分的に制御することができる。このため、反応装置10は、処理物R10の温度を効率よく制御することができ、処理物R10を効率よく中間物にすることができる。なお、反応容器100に第1流体を供給する前に、第1流体の温度や圧力を調整する機構を設けてもよい。
【0036】
第2流体制御領域140は、中間部A3における第1流体制御領域130とは異なる領域において第2流体を通過させるための第2流体入口141および第2流体出口142を含む。すなわち第2流体制御領域140は、第1流体制御領域130とは異なる領域において、第1流体制御領域130と同等の構成を有し得る。
【0037】
第2流体制御領域140は反応容器100において、第1流体制御領域130と送出口102との間に設けられている。第2流体入口141は第2流体供給管143に接続し、第2流体供給管143から供給される第2流体を反応容器100に供給する。なお、第2流体供給管143は第2流体の流量を調整するための第2バルブ144を含む。また、第2流体供給管143は第2バルブ144を開閉することにより、第2流体を反応容器100に供給する時間タイミングが間欠的なインターバルとなるように制御しながら供給してもよい。第2流体排出管145に接続された第2流体出口142は、第2流体制御領域140の流体を反応容器100の外へ排出するための孔である。第2流体排出管145は反応容器100から排出される流体の流量もしくは流速を調整するためのバルブや排出機構を備えていてもよい。排出機構は、例えばポンプやエジェクタ等の吸引機構である。なお、第1流体入口131、第1流体出口132、第1バルブ134は本開示の流体供給部の一例である。
【0038】
上述の構成により、反応装置10は、第2流体制御領域140において第1流体制御領域130を通過した後の中間物と第2流体とを接触させて生成物R11を生成する。また反応装置10は、中間物と接触後の流体を第2流体制御領域140の外へ排出する。なお、第2流体は、流動性を有するものであれば、その形態や組成は限定されない。第2流体は、気体であってもよいし、液体であってもよい。第2流体は、固体が液体に分散した分散液であってもよい。また、反応装置10に第2流体を供給することで、反応容器100や搬送機構120の温度を部分的に制御することができる。このため、反応装置10は、中間物の温度を効率よく制御することができ、中間物を効率よく生成物R11にすることができる。
【0039】
以上、反応装置10の構成について説明したが、参考例1にかかる反応装置10は、上述の構成に限られない。例えば、搬送機構120は1以上であれば、2以上であってもよい。すなわち、反応装置10は、平行に配置された複数の搬送機構120を有してもよい。
【0040】
反応容器100の搬送機構120の軸と直交する平面における断面形状はルーローの定幅図形で定義される組合せを持つものであってもよい。この場合、搬送機構120はスクリュであることが望ましく、スクリュの凸部121の断面形状が、ルーローの定副図形に対応した複数の円弧を組み合わせた形状を有する。例えば反応容器100の内部の断面形状が円形の場合には、スクリュの断面形状は、3つの円弧で構成されたルーロー定幅図形を有してもよい。
【0041】
反応容器100は水平方向に平行に横臥するものに限らず、水平面に対して所定の角度を有し、反応容器100は斜面を有するものであってもよい。反応装置10は、中間部A3において第1流体制御領域130と第2流体制御領域140とを有しているが、さらに別の流体を通過させるための構成を有していてもよい。すなわち反応装置10は、3以上の流体制御領域を有していてもよい。あるいは、反応装置10は、中間部A3において第1流体制御領域130のみを有していてもよい。なお、上述の反応装置10は、後述する制御装置により制御されている。
【0042】
次に、
図2を参照して、反応装置10の機能について説明する。
図2は、参考例1にかかる反応装置10のブロック図である。反応装置10は
図1において示した構成に加えて、制御装置200、温度制御装置210、第1流体制御装置230、第2流体制御装置240および情報入出力装置250(情報入出力部250)を有している。
【0043】
制御装置200は、CPU(Central Processing Unit)やMCU(Micro Controller Unit)等の演算装置を含む回路基板である。制御装置200は、温度制御装置210、第1流体制御装置230、第2流体制御装置240および情報入出力部250のそれぞれと通信可能に接続し、これの構成をそれぞれ制御する。制御装置200は回路基板に実装されたハードウェアおよびソフトウェアによりその機能を実現する。
【0044】
制御装置200は主な機能構成として、全体制御部201、温度制御部202、搬送制御部203、第1流体制御部204、第2流体制御部205、IF制御部206および記憶部207を有している。制御装置200が有するこれらの機能構成は、一体となったものであってもよいし、ディスクリートであってもよい。また制御装置200が有するこれらの機能構成は、別個の複数の装置が連動することにより実現されてもよい。
【0045】
全体制御部201は、制御装置200が有する各機能構成に接続し、これらの機能の全体の動作を制御する。例えば全体制御部201は、温度制御部202から供給される温度の状態に応じて搬送制御部203に動作の指示を出す、といった動作を行い得る。
【0046】
温度制御部202は、温度制御装置210に接続し、温度制御領域110における反応容器100の温度を制御する。温度制御部202は、加熱装置および冷却装置のうち少なくともいずれか一方を有している。また温度制御部202は、温度を制御するための1以上の温度計を有し得る。
【0047】
搬送制御部203は、駆動装置150に接続し、駆動装置150の動作を制御する。搬送制御部203は例えば駆動装置150が有するモータ(モータ151)を駆動するためのモータ駆動回路を有し得る。また搬送制御部203は、モータ(モータ151)の回転数を監視するための回転センサを有し得る。
【0048】
第1流体制御部204は、第1流体制御領域130における第1流体の流れを制御する。より具体的には、第1流体制御部204は第1流体制御装置230に接続し、第1流体制御装置230の動作を制御する。第1流体制御装置230は第1流体を圧送するための第1バルブ134を含む。第2流体制御部205は、第2流体制御領域140における第2流体の流れを制御する。より具体的には、第2流体制御部205は第2流体制御装置240に接続し、第2流体制御装置240の動作を制御する。第2流体制御装置240は第2流体を圧送するための第2バルブ144を含む。
【0049】
IF制御部206(IF=Interface)は、情報入出力部250に接続し、情報入出力部250を介してユーザとの情報交換を行うためのインタフェースである。すなわちIF制御部206は、情報入出力部250を介してユーザからの操作を受け付け、受け付けた操作にかかる情報を、制御装置200の各構成に適宜供給する。またIF制御部206は、情報入出力部250が有する表示部の状態を制御する。
【0050】
記憶部207は、フラッシュメモリやSSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを含む記憶装置である。記憶部207は反応装置10が本開示における機能を実現するためのプログラムを格納している。また記憶部207は揮発性メモリを含み、制御装置200が動作する際に所定の情報を一時的に格納する。情報入出力部250は、例えばユーザからの操作を受け付けるためのボタン、スイッチまたはタッチパネル等を有する。また情報入出力部250は、ユーザに情報を提示するためのディスプレイ装置等を含む。
【0051】
以上、反応装置10の機能ブロックについて説明した。反応装置10は上述の構成により、受け入れた処理物R10を搬送機構120により搬送し、反応容器100の温度を制御し、第1流体制御領域130および第2流体制御領域140における雰囲気を制御する。
【0052】
次に、
図3を参照して、反応装置10が実行する生成物R11の製造方法(生成物製造方法)について説明する。
図3は、反応装置10が実行する処理のフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、例えば反応装置10に対して処理物R10の供給を開始することにより開始する。
【0053】
まず、反応装置10は、供給口101から所定の処理物R10を受け付ける(ステップS11)。
【0054】
次に、反応装置10の制御装置200は、温度制御部202を介して、反応容器100の温度制御領域110の加熱装置または冷却装置を駆動することにより温度を制御する(ステップS12)。
【0055】
次に、反応装置10の制御装置200は、搬送制御部203を介して駆動装置150を駆動する。これにより駆動装置150は搬送機構120を駆動させる。そして搬送機構120は、受け入れた処理物R10を送出口102に向かって搬送する(ステップS13)。
【0056】
次に、反応装置10の制御装置200は、第1流体制御部204を介して、第1流体制御領域130(第1雰囲気制御領域)に通過させる第1流体の流れを制御する(ステップS14)。
【0057】
次に、反応装置10の制御装置200は、第2流体制御部205を介して、第2流体制御領域140(第2雰囲気制御領域)に通過させる第2流体の流れを制御する(ステップS15)。
【0058】
次に、反応装置10は、第2流体制御領域140を通過した生成物R11を送出口102から送出する(ステップS16)。
【0059】
以上、反応装置10が実行する反応方法(生成物製造方法)について説明した。上述の方法は、反応装置10が処理物R10から生成物R11を製造し、製造した生成物R11を排出するまでの流れに沿って示されている。しかし、反応装置10は、例えばステップS12における温度制御を、ステップS11の前から実行していてもよい。また例えば反応装置10は、ステップS14とステップS15とを同時に開始してもよい。
【0060】
以上、参考例1について説明した。なお、上述の反応装置10において、反応装置10は2つの流体制御領域(第1流体制御領域130および第2流体制御領域140)を有しているが、反応装置10は1つもしくは3つ以上の流体制御領域を有してもよい。また反応装置10は、搬送機構120の軸AX120方向(長軸方向)に沿って複数の温度制御領域110を有していてもよい。上述の反応装置10は、供給口101から受け入れた処理物R10に対して、中間部A3において複数の流体を別個に接触させる。また反応装置10は、中間部A3において、搬送機構120の軸AX120方向(長軸方向)に沿って、反応容器100の温度制御を行う。さらに反応装置10は、反応容器100の内部の物体を搬送し、物理的な刺激を与えることができる。反応装置10は上述の雰囲気制御、温度制御および物理制御を、同時に、且つ、精度よく行うことができる。よって、参考例1によれば、所望の製品を効率よく製造する反応装置等を提供することができる。
【0061】
<参考例2>
次に、参考例2として、
図4を参照しながら、反応容器100を支持する構成例、搬送機構120を支持する構成例について説明する。この構成例は、上記参考例2に適用することができる。
図4は、参考例2にかかる反応装置の側面図である。
図4は、
図1に対して第1支持部103、第2支持部104を追加したものに相当する。それ以外は、
図1と同様の構成である。以下、参考例1との相違点を中心に説明する。
【0062】
<反応容器100を支持する構成例>
図4に示すように、反応装置10は、反応容器100を支持する構成として、第1支持部103、第2支持部104を備えている。
図4の反応容器100は、一端側A1と他端側A2との間の中間部A3を含む筒状の反応容器(炉)であって、床面170に設置された第1支持部103及び第2支持部104により支持されている。なお、床面170とは、反応装置10が設置される建屋の床面としてもよいし、例えば架台の上面のように反応装置10を構成する構造の一部の面としてもよい。
【0063】
第1支持部103は、反応容器100の一端側A1の下方の床面170に配置されており、当該反応容器100の一端側A1を下方から支持する。具体的には、第1支持部103は、反応容器100の一端側A1を、反応容器100の長軸AX100方向に移動不能な状態で支持する。これは、例えば、第1支持部103に支持された反応容器100の一端側A1を、ボルトや溶接等の直接的な固定手段により第1支持部103に固定することにより実現される。あるいは、直接的な固定手段に限らず、例えば、第1支持部103に支持された反応容器100の一端側A1に対して、架台等に別途固定された板材や線材等の部材を接触させ、間接的に固定することで実現してもよい。
【0064】
一方、第2支持部104は、反応容器100の他端側A2の下方の床面170に配置されており、当該反応容器100の他端側A2を下方から支持する。具体的には、第2支持部104は、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX100方向に移動可能な状態で支持する。これは、例えば、後述する具体例1~3により実現される。
【0065】
反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX100方向に移動可能な状態で支持する技術的意義は次のとおりである。
【0066】
すなわち、上記参考例1で説明したように温度制御装置210等により反応容器100の温度を制御すると(例えば、常温から900度程度に加熱すると)、反応容器100がその長軸AX100方向に熱膨張する(例えば、長軸AX100方向に10~20mm程度熱膨張する)。その際、仮に、反応容器100の他端側A2がその長軸AX100方向に移動不能であると、反応容器100が長軸AX100方向に熱膨張することにより駆動装置150に力が作用し、当該駆動装置150が破損する恐れがある。例えば、駆動装置150(例えば、減速機)を構成するギヤ(1又は複数)の回転軸が変形し、当該駆動装置150(例えば、減速機)が正常に動作できなくなる恐れがある。あるいは、搬送機構120が大きく変形し、正常に搬送できなくなる恐れがある。
【0067】
そこで、反応容器100が長軸AX100方向に熱膨張することにより駆動装置150に力が作用し、当該駆動装置150が破損するの等を防止するため、第2支持部104により、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX100方向に移動可能な状態で支持する。
【0068】
次に、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX100方向に移動可能な状態で支持する具体例について説明する。
【0069】
<具体例1>
図5(a)は、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能な状態で支持する具体例1を表す図である。
図5(a)は、
図4中の矢印AR1方向から見た矢視図である。
【0070】
図5(a)に示すように、具体例1は、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能とするため、反応容器100の他端側A2にフランジ部109を設け、フランジ部109の下部に凹部109aを形成し、第2支持部104の上部に凹部109aに挿入される凸部104aを設け、凹部109aに凸部104aが挿入された状態で反応容器100の他端側A2を支持した例である。凹部109a及び凸部104aは、反応容器100の長軸AX
100方向に延びている。フランジ部109の下面109bと第2支持部104の上面104bとの間には、隙間G1が形成されている。凹部109aと凸部104aの間に潤滑油等を供給してもよい。なお、逆に、フランジ部109の下部に凸部104aを設け、第2支持部104の上部に凸部104aが挿入される凹部109aを形成してもよい。
【0071】
<具体例2>
図5(b)は、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能な状態で支持する具体例2を表す図である。
図5(b)は、
図4中の矢印AR1方向から見た矢視図である。
【0072】
図5(b)に示すように、具体例2は、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能とするため、反応容器100の他端側A2にフランジ部109を設け、第2支持部104の上面104bに摩擦低減部材111を設け、フランジ部109の下面109bが摩擦低減部材111に接した状態で反応容器100の他端側A2を支持した例である。摩擦低減部材111は反応容器100を滑らかに移動させる部材であれば形態、形状、素材は特に限定されない。摩擦低減部材111は例えばローラやベルト等の回転部を有する部材であっても良い。摩擦低減部材111は例えば焼き入れ熱処理が可能な工具鋼材や窒化熱処理が可能な窒化鋼材、少なくとも一部にセラミック粒子を含有する粉末冶金材、またはコーティングが表面に施された鋼材のように、摩擦低減部材111が反応容器100を支持する面のビッカース硬さ(HV)が450以上もしくはロックウェル硬さ(HRC)が45以上の高硬度材から成る部材であっても良い。摩擦低減部材111は例えばタイヤモンドライクカーボン(DLC)、炭化チタン(TiC)、炭窒化チタン(TiBN)、ホウ化チタン(TiB
2)、炭化バナジウム(VC)、アルミナ(Al
2O
3)やジルコニア(ZrO
2)等がCVD、PVD、溶射等の成膜手段により表面にコーティングされた部材であっても良い。摩擦低減部材111はクロムめっきやニッケルめっき(Ni-PやNi-Co-W)が電気めっきや無電解めっきにより表面にコーティングされた部材であっても良い。摩擦低減部材111は二硫化モリブデンのように固体潤滑性を有する化合物がスプレー等の塗布手段により表面にコーティングされた部材であっても良い。すなわち、摩擦低減部材111が反応容器100を支持する面(支持面)の化学組成には、B、C、N、Al、P、Ti、V、Cr、Co、Ni、Mo、Wの元素(化学元素)のうち少なくとも1つが含まれていることが好ましい。
【0073】
<具体例3>
図5(c)は、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能な状態で支持する具体例3を表す図である。
図5(c)は、
図4中の矢印AR1方向から見た矢視図である。
【0074】
図5(c)に示すように、具体例3は、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能とするため、反応容器100の他端側A2に左右両側に突出する(反応容器100の長軸に交差(例えば直交)する向きに突出する)突出部109c、109dを有するフランジ部109を設け、第2支持部104の上面104bに起立部104c、104dを設け、突出部109c、109dを起立部104c、104dに載せた状態で反応容器100の他端側A2を支持した例である。フランジ部109の下面109bと第2支持部104の上面104bとの間には隙間G2が形成され、かつ、フランジ部109の左右両側と起立部104c、104dとの間には隙間G3、G4が形成されている。突出部109c、109dと起立部104c、104dの間に潤滑油等を供給してもよい。
【0075】
上記具体例1~3のように、反応容器100の他端側A2を反応容器100の長軸AX100方向に移動可能な状態で支持することにより、反応容器100がその長軸AX100方向に熱膨張(又は熱収縮)することに起因して駆動装置150に力が作用し、当該駆動装置150が破損等するのを防止することができる。
【0076】
<搬送機構120を支持する構成例>
図4に示すように、反応装置10は、搬送機構120としてのスクリュを支持する構成として、軸受け106、107を備えている。
【0077】
軸受け106は、反応容器100の一端側A1に設けられており、搬送機構120の一端側B1を回転可能な状態で支持する。軸受け106は、例えば、ベアリング、ブッシュである。搬送機構120の一端側B1は、減速機152の出力軸に連結(固定)されている。すなわち、搬送機構120の一端側B1は、回転可能、かつ、搬送機構120の軸AX120方向に移動不能な状態で支持されている。
【0078】
一方、軸受け107は、反応容器100の他端側A2に設けられており、搬送機構120の他端側B2を回転可能、かつ、搬送機構120の軸AX
120方向に移動可能な状態で支持する。軸受け107が本開示の第3支持部、第6支持部の一例である。軸受け107は、例えば、ベアリング、ブッシュである。なお、搬送機構120の他端側B2を、搬送機構120の軸AX
120方向に移動可能とするため、搬送機構120の他端側B2の所定範囲(
図4中、符号L1が示す範囲参照)には、螺旋状の凸部121が設けられていない。また、搬送機構120の他端側B2の端部と反応容器100の他端側A2に設けられた蓋部108との間には、搬送機構120の軸AX
120方向(
図4中右側)に移動する搬送機構120の他端側B2が進入するスペース(
図4中、符号L2が示す範囲参照)が設けられている。
【0079】
以上のように支持された搬送機構120の軸AX120と反応容器100の長軸AX100は一致(略一致)している。
【0080】
搬送機構120の他端側B2を、搬送機構120の軸AX120方向に移動可能な状態で支持する技術的意義は次のとおりである。
【0081】
すなわち、上記参考例1で説明したように温度制御装置210等により反応容器100の温度を制御すると(例えば、常温から摂氏900度程度に加熱すると)、反応容器100がその長軸AX100方向に熱膨張する(例えば、長軸AX100方向に10~20mm程度熱膨張する)。これと共に、搬送機構120もその軸AX120方向に熱膨張する(例えば、軸AX120方向に10~20mm程度熱膨張する)。その際、仮に、搬送機構120の他端側B2がその軸AX120方向に移動不能であると、搬送機構120が軸AX120方向に熱膨張することにより搬送機構120が変形し、この変形した搬送機構120の螺旋状の凸部121等が反応容器100の内壁に接触し、搬送機構120が正常に回転できなくなる等の恐れがある。
【0082】
また、搬送機構120の一端側B1を搬送機構120の軸AX120方向に移動可能な状態とし、搬送機構120の他端側B2を搬送機構120の軸AX120方向に移動不能な状態とした場合、反応容器100の熱膨張や熱収縮に伴って搬送機構120の他端側B2が移動するため、スクリュの凸部および凹部の位置の制御が困難となり、処理物を正常に反応できなくなる等の恐れがある。
【0083】
そこで、搬送機構120が軸AX120方向に熱膨張することにより搬送機構120が変形するのを防止するため、軸受け107により、搬送機構120の他端側B2を、回転可能、かつ、搬送機構120の軸AX120方向に移動可能な状態で支持する。
【0084】
以上のように、搬送機構120の他端側B2を回転可能、かつ、搬送機構120の軸AX120方向に移動可能な状態で支持することにより、搬送機構120がその軸AX120方向に熱膨張することに起因して搬送機構120が変形するのを防止することができる。
【0085】
以上説明したように、参考例2によれば、反応容器100がその長軸AX100方向に熱膨張しても、これに起因して正常に動作できなくなるのを防止することができる反応装置10を提供することができる。
【0086】
次に、変形例について説明する。
【0087】
上記参考例2では、回転不能に支持された反応容器100を用いた例について説明したが、これに限らない。例えば、回転可能に支持された反応容器100を用いてもよい。
【0088】
図6は、反応容器100を回転可能に支持する構成例である。
【0089】
図6に示すように、本変形例の反応装置10は、反応容器100を回転可能に支持する構成として、軸受け112、113を備えている。
【0090】
軸受け112は、反応容器100の一端側A1と第1支持部103の間に設けられており、反応容器100の一端側A1を回転可能、かつ、反応容器100の長軸AX
100方向に移動不能な状態で支持する。軸受け112は、例えば、ベアリング、ブッシュである。反応容器100の一端側A1には、フランジ部114が設けられている。このフランジ部114が軸受け112に接触することにより、反応容器100の一端側A1が反応容器100の長軸AX
100方向(
図6中右側)に移動するのが防止される。フランジ部114および軸受け112は複数設けてもよい。例えば、1つのフランジ部114に対して2つの軸受け112を用い、フランジ部114を軸受け112で挟むようにすることで反応容器100の一端側A1が反応容器100の長軸AX
100方向に移動するのがより好適に防止される。なお、軸受け112は、反応容器100の一端側A1が挿入される輪状のベアリング又はブッシュであってもよいし、輪状のベアリング又はブッシュの一部を切り欠いた円弧状のベアリング又はブッシュであってもよい。なお、軸受け112に代えて、潤滑性のある材料により構成される部材により、反応容器100の一端側A1を回転可能、かつ、反応容器100の長軸AX
100方向に移動不能な状態で支持してもよい。軸受け112及びフランジ部114が本開示の第4支持部の一例である。
【0091】
一方、軸受け113は、反応容器100の他端側A2と第2支持部104の間に設けられており、反応容器100の他端側A2を回転可能、かつ、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能な状態で支持する。軸受け113は、例えば、ベアリング、ブッシュである。なお、軸受け113は、反応容器100の他端側A2が挿入される輪状のベアリング又はブッシュであってもよいし、輪状のベアリング又はブッシュの一部を切り欠いた円弧状のベアリング又はブッシュであってもよい。なお、軸受け113に代えて、潤滑性のある材料により構成される部材により、反応容器100の他端側A2を回転可能、かつ、反応容器100の長軸AX
100方向に移動可能な状態で支持してもよい。軸受け113が本開示の第5支持部の一例である。本変形例の回転可能に支持された反応容器100は、一端側A1において駆動装置150(スクリュ駆動装置)と同様の反応容器駆動装置116(
図6中省略)に接続(連結)している。
【0092】
本変形例のように、反応容器100を回転可能に支持する構成を用いる場合、回転可能に支持された搬送機構120(
図4参照)を用いてもよいし、回転可能に支持された搬送機構120に代えて、回転不能に支持された搬送機構120(図示せず)を用いてもよい。また、搬送機構120を省略してもよい。
【0093】
また、上記参考例2では、第1支持部として、反応容器100の一端側A1を下方から支持する第1支持部103を用いた例について説明したが、これに限らない。すなわち、第1支持部は、反応容器100の一端側A1をその長軸AX100方向に移動不能な状態で支持する支持部であればどのような構成であってもよい。例えば、図示しないが、第1支持部として、反応容器100の一端側A1を上方から吊り下げる形態で支持する第1支持部を用いてもよいし、反応容器100の一端側A1を側方から支持する第1支持部を用いてもよい。
【0094】
また、上記参考例2では、第2支持部104として、反応容器100の他端側A2を下方から支持する支持部を用いた例について説明したが、これに限らない。すなわち、第2支持部は、反応容器100の他端側A2をその長軸AX100方向に移動可能な状態で支持する支持部であればどのような構成であってもよい。例えば、図示しないが、第2支持部として、反応容器100の他端側A2を上方から吊り下げる形態で支持する第2支持部を用いてもよいし、反応容器100の他端側A2を側方から支持する第2支持部を用いてもよい。
【0095】
上記参考例では、
図5(a)、
図7に示すように、第2支持部104が、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向にのみ移動可能な状態で支持する例について説明したが、これに限らない。
図7は、
図5(a)中の矢印AR2方向から見た矢視図である。例えば、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に加え、回転軸AX
V(鉛直軸)を中心に回転可能な状態で支持してもよい。
【0096】
次に、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX100方向に加え、回転軸AXV(鉛直軸)を中心に回転可能な状態で支持する具体例4について説明する。
【0097】
<具体例4>
図8は、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に加え、回転軸AX
V(鉛直軸)を中心に回転可能な状態で支持する具体例4の概略図である。
【0098】
図8に示すように、凸部104aは、ベアリング等を介して回転軸AX
V(鉛直軸)を中心に回転可能に第2支持部104(上面104b)に支持された台座104e上に設けられている。なお、回転軸AX
Vは、
図8中、紙面に直交する方向に延びている。これにより、反応容器100の他端側A2は、反応容器100の長軸AX
100方向に加え、回転軸AX
V(鉛直軸)を中心に回転可能な状態で支持されている。
【0099】
このように、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX100方向に加え、回転軸AXV(鉛直軸)を中心に回転可能な状態で支持することの利点は次のとおりである。
【0100】
すなわち、反応の状態(物理的な刺激の状態)によっては、
図7中、反応容器100の長軸AX
100に対して左右で温度差が生じることがある(又はあえて温度差を生じさせることがある)。この場合、反応容器100の長軸AX
100に対して左右で伸びる量が異なるという現象が起こる。
【0101】
例えば、
図7において、反応容器100の長軸AX
100に対して右側の温度が高く、左側の温度が低い場合、反応容器100の長軸AX
100に対して右側が多く伸び、左側が短く伸びる。
図7中の矢印AR3、AR4の長さはこのことを表している。
【0102】
上記のように反応容器100の長軸AX
100に対して左右で伸びる量が異なると、反応容器100の他端側A2に水平方向の応力(
図7中矢印AR5参照)が発生する場合がある。
【0103】
この応力が発生した場合、第2支持部104(凸部104a)とフランジ部109(凹部109a)との間に発生する摩擦により、反応容器100(他端側A2)の長軸AX100方向の移動が妨げられるおそれがある。
【0104】
そこで、
図8に示す構成を採用することにより、種々の物理的な刺激の状況に好適に対応することが可能となる。
【0105】
なお、反応容器100の左右で敢えて温度差を生じさせる状態は、特に、二軸型の反応容器100A(
図9参照)に適用すると、処理物の反応速度の制御等に有効である。
図9は、二軸型の反応容器100Aの例である。
【0106】
次に、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に加え、短軸方向(
図10中矢印AR6参照)に移動可能な状態で支持する具体例5について説明する。
【0107】
<具体例5>
図10は、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に加え、短軸方向(
図10中矢印AR6参照)に移動可能な状態で支持する具体例5の概略図である。
【0108】
図10に示すように、凸部104aは、ベアリング等を介して回転軸AX
V(鉛直軸)を中心に回転可能に第2支持部104(上面104b)に支持された台座104e上に設けられている。この台座104eはさらに短軸方向(
図10中矢印AR6参照)に移動可能なようにガイドレール104f(第2支持部104(上面104b)に支持されている)に設けられている。なお、回転軸AX
Vは、
図10中、紙面に直交する方向に延びている。これにより、反応容器100の他端側A2は、反応容器100の長軸AX
100方向に加え、回転軸AX
V(鉛直軸)を中心に回転可能かつ短軸方向(
図10中矢印AR6参照)に移動可能な状態で支持されている。
【0109】
このように、反応容器100の他端側A2を、反応容器100の長軸AX
100方向に加え、回転軸AX
V(鉛直軸)を中心に回転可能かつ短軸方向(
図10中矢印AR6参照)に移動可能な状態で支持することの利点は次のとおりである。
【0110】
上記応力(
図7中矢印AR5参照)が発生した場合、第2支持部104(凸部104a)とフランジ部109(凹部109a)との間に発生する摩擦により、反応容器100(他端側A2)の長軸AX
100方向の移動が妨げられるおそれがある。
【0111】
そして、上記変形がさらに大きくなると(上記応力がさらに大きくなると)、反応容器100の他端側A2が傾き(
図11(b)参照)、反応容器100が捻れる(
図11(a)参照)おそれがある。
図11(a)は反応容器100が捻れている状態を表す図、
図11(b)は反応容器100が傾いている状態を表す図である。なお、このような捻れや傾きは他端側A2や中間部A3で起こりやすい。
【0112】
そこで、
図10に示す構成を採用することにより、反応容器100の捻れを抑制することが可能となる(
図11(c)、
図11(d)参照)。
図11(c)は反応容器100の捻れが抑制されている状態を表す図、
図11(d)は反応容器100の傾きが抑制されている状態を表す図である。
【0113】
また、上記参考例1、2では、温度制御部(温度制御領域110等)が反応容器100の温度を反応容器100の長軸AX100方向の互いに異なる領域ごとに制御する例について説明したが、これに限らない。すなわち、温度制御部(温度制御領域110等)が温度制御する領域は複数に限らず、1つであってもよい。
【0114】
また、上記参考例1、2では、流体供給部(第1流体入口131、第1流体出口132、第1バルブ134等)を用いた例について説明したが、これに限らない。すなわち、流体供給部(第1流体入口131、第1流体出口132、第1バルブ134等)の一部又は全部を省略してもよい。
【0115】
また、上記参考例1、2では、反応容器100の一端側A1に設けられ、搬送機構120(例えばスクリュ)の一端側B1が連結された駆動装置150を用いた例について説明したが、これに限らない。搬送機構120を駆動させる装置として別の駆動装置を用いてもよい。
【0116】
<実施形態>
<温度制御領域110の具体例>
まず、以下に説明する実施形態1~3の反応装置10A、10B、10Cに共通する温度制御領域110の具体例について説明する。
【0117】
【0118】
図12に示すように、温度制御領域110は、反応容器100の長軸AX
100方向に、合計3つのゾーンD1~D3に分割されている。なお、3つのゾーンに限らず、1、2又は4以上のゾーンに分割されていてもよい。
【0119】
ゾーンD1は、反応容器100を囲むように反応容器100の長軸AX100周り(周方向)に上下左右の合計4つのゾーンD11~D14に分割されている。なお、4つのゾーンに限らず、1~3又は5以上のゾーンに分割されていてもよい。ゾーンD2、D3も同様である。
【0120】
そして、この4つのゾーンD11~D14には、第1加熱部H1、第2加熱部H2、第3加熱部H3、第4加熱部H4が配置されている。このように、加熱部H1~H4は、反応容器100を囲むように反応容器100の長軸AX100周りに配置されている。
【0121】
加熱部H1~H4としては、温度制御性を考慮して、電熱線を含むヒータ(電気ヒータ)を用いるのが望ましい。
【0122】
図13は、加熱部H1~H4と温度制御部202との電気的な接続関係を表すブロック図である。
図13に示すように、各ヒータは、温度制御部202に電気的に接続されている。なお、加熱部H1~H4は、ヒータに限らず、他の加熱手段であってよい。
【0123】
図示しないが、4つのゾーンD11~D14には、温度計測部が配置されている。温度計測部としては、例えば、熱電対を用いるのが望ましい。各温度計測部は、温度制御部202に電気的に接続されている。なお、温度計測部は、熱電対に限らず、他の温度計測部(温度センサ)であってよい。
【0124】
温度制御部202は、各ヒータ(電熱線)に通電する電流を個別に制御(例えば、PID制御)することにより、各ゾーンに対応する反応容器100(中間部A3)の複数箇所(12箇所)それぞれの温度を個別に制御する。その際、温度制御部202は、各温度計測部により計測された温度を参照する。例えば、温度制御部202は、ゾーンD11の第1加熱部H1であるヒータを制御することによりゾーンD11に対応する反応容器100の箇所の温度を制御する場合、当該ゾーンD11に配置された温度計測部により計測された温度を参照する。他の加熱部H2~H4である他のヒータを制御する場合も同様である。
【0125】
なお、温度計測部が計測する位置(対象)は、当該温度計測部が配置されたゾーンに配置されたヒータであってもよいし、当該温度計測部が配置されたゾーンに対応する反応容器100の箇所であってもよいし、当該温度計測部が配置されたゾーンに配置されたヒータと反応容器100との間の空間であってもよいし、その他の位置(対象)であってもよい。
【0126】
以上のように、以下に説明する実施形態1~3の反応装置10A、10B、10Cにおいては、温度制御領域110は3×4の合計12のゾーンに分割されており、各ゾーンに対応する反応容器100(中間部A3)の複数箇所(12箇所)それぞれの温度を個別に制御することができる。これにより、反応装置10A、10B、10Cは、原料の反応をより好適に行うことができる。
【0127】
<反応容器100の変形>
次に、反応容器100の変形について説明する。
【0128】
【0129】
反応容器100の温度を制御(昇温制御又は降温制御)すると、反応容器100が長軸AX
100方向に膨張又は収縮する。その際、
図4に示すように、反応容器100は、一端側A1が第1支持部103により移動不能な状態で支持(固定支持)され、かつ他端側A2が第2支持部104により移動可能な状態で支持(可動支持)されている。そのため、反応容器100の温度を制御(昇温制御又は降温制御)すると、
図14に示すように、反応容器100の他端側A2が一端側A1に対して長軸AX
100方向に変位する(
図14中の矢印参照)。
【0130】
<第1の課題(反応容器100を降温制御(冷却制御)する際の課題)>
次に、第1の課題(反応容器100を降温制御(冷却制御)する際の課題)について説明する。
【0131】
図15は、第1の課題(反応容器100を降温制御(冷却制御)する際の課題)について説明するための図である。
【0132】
反応容器100を降温制御(冷却制御)すると、搬送機構120より先に反応容器100が冷却される。そのため、搬送機構120より先に反応容器100が長軸AX
100方向(
図15中矢印AR7参照)に収縮し、反応容器100の他端側A2が一端側A1(
図15中左側)に向かって長軸AX
100方向(
図15中矢印AR7参照)に変位する。これにより、反応容器100の他端側A2に設けられた蓋部160と搬送機構120(他端側B2)との間の干渉スペースS1(
図15参照)が徐々に狭くなる。そして、最終的に、搬送機構120(他端側B2)が蓋部160に接触する。その結果、反応装置10A~10Cの正常な動作が妨げられる(反応装置10A~10Cが故障する)場合があるという課題(第1の課題)がある。
【0133】
<望ましい温度条件>
上記第1の課題を考慮すると、反応容器100の上部A、下部C、左部D、右部B(
図12参照)間の温度差ができる限り小さくなるように、温度制御部202は、各ヒータ(電熱線)を個別に制御することが望ましい。
【0134】
具体的には、反応容器100の上部A、下部C、左部D、右部B間の温度差は、±20℃以内が望ましく、±10℃以内がさらに望ましい。
【0135】
次に、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の温度を現在温度(例えば、1000℃)から目標温度(例えば、500℃)まで冷却する工程について説明する。
【0136】
この工程において、温度制御部202は、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の温度が現在温度(例えば、1000℃)から目標温度(例えば、500℃)になるように、各ヒータ(電熱線)を個別に制御する。
【0137】
その際、反応容器100の上部A、下部C、左部D、右部B間の温度差を抑制するため、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の降温速度(冷却速度)はできる限り遅い方が望ましい。具体的には、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の降温速度は、10℃/min以下が望ましく、5℃/min以下より望ましく、2℃/min以下がさらに望ましい。この望ましい降温速度は、例えば、経験、実験、所定計算により見出すことができる。反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の降温速度としてこの望ましい降温速度を採用することにより、上記第1の課題を解決することができる。
【0138】
<第2の課題(反応容器100を降温制御(冷却制御)する際の課題)>
図4に示す参考例2の反応装置10において反応容器100を降温制御(冷却制御)する際、通常、段階的な降温が実施される。参考例2の反応装置10において反応容器100を昇温制御(加熱制御)する際も同様である。
【0139】
図16(a)は段階的な降温の一例である。
図16(b)は段階的な昇温の一例である。
図17は、参考例2の反応装置10において反応容器100の温度をある降温速度で目標温度まで降温制御(冷却制御)する場合の、降温の温度変化C1と反応容器100の実際の温度変化C2との関係を表すグラフである。
【0140】
図4に示す参考例2の反応装置10において段階的な降温を実施する理由は、次のとおりである。
【0141】
すなわち、
図17に示すように、反応容器100の温度をある降温速度で目標温度まで降温制御(冷却制御)する場合、最終的に目標温度に到達する前(例えば、
図17中時間T1参照)に、降温の温度変化C1(時間軸)に追従できない変位量ΔX´(反応容器100の長軸AX
100方向の変位量)が発生する。そのため、段階的な降温制御を実施し、反応容器100の長軸AX
100方向の変位量がΔXになるまで待機する待機時間T
W(
図17参照)を設定する必要がある。
【0142】
図17中符号ΔXは、反応容器100の温度が目標温度(
図17の場合、中間温度)に到達した場合(温度差がΔTの場合)の反応容器100の長軸AX
100方向の変位量を表す。
図17中符号ΔX´は、目標温度に到達する前の時間T1における、降温の温度変化C1(時間軸)に追従できない変位量(反応容器100の長軸AX
100方向の変位量)を表す。
図17中符号X2は
図19中の位置X2に対応し、符号X3は
図19中の位置X3に対応する。
【0143】
しかしながら、上記待機時間T
Wは主に経験に基づき人手で設定される時間であるため、「余分な待機時間T
EX」(
図17参照)が発生する。そのため、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の温度が目標温度に到達するまでの時間(降温時間)が長くなる(例えば、数日を要する)という課題(第2の課題)がある。
【0144】
次に、上記第2の課題について、
図18を参照しながらさらに説明する。
【0145】
図18は、参考例2の反応装置10において段階的な降温を行う降温処理のフローチャート例である。
【0146】
まず、現在温度T1(例えば、1000℃)、目標温度T2(例えば、500℃)、降温速度Vt(例えば、10℃/分)、中間温度Tm(例えば、750℃)を設定する(ステップS20~S22)。これは、例えば、オペレータが手動で設定する。
【0147】
次に、降温速度Vtで降温する(ステップS23)。これは、反応容器100の温度が現在温度T1から中間温度Tmになるように温度制御部202が各ヒータを制御することで実現される。
【0148】
次に、反応容器100の温度が中間温度Tm(例えば、750℃)に到達した場合(ステップS24:YES)、予め設定した待機時間Tw(
図17参照)待機する(ステップS25:NO)。待機時間Twの間、中間温度Tmが維持される。
【0149】
次に、予め設定した待機時間Twが経過した場合(ステップS25:YES)、降温速度Vtで降温する(ステップS26)。これは、反応容器100の温度が目標温度T2になるように温度制御部202が各ヒータを制御することで実現される。
【0150】
そして、反応容器100の温度が目標温度T2に到達した場合(ステップS27:YES)、降温処理(ステップS20~S27)が終了する。
【0151】
以上のように、上記参考例2の反応装置10において段階的な降温を行った場合、ステップS25において「余分な待機時間T
EX」(
図17参照)が発生する。そのため、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の冷却時間が長くなる(例えば、冷却に数日を要する)という課題(第2の課題)がある。
【0152】
<実施形態1>
次に、実施形態1として、上記第2の課題を解決するための構成例1について説明する。以下、実施形態1の反応装置を反応装置10Aと記載する。
【0153】
図19は、実施形態1の反応装置10Aの概略構成図である。
図20は、実施形態1にかかる反応装置10Aのブロック図である。
【0154】
図19、
図20に示すように、実施形態1の反応装置10Aは、参考例2の反応装置10に位置測定装置260、第1変位速度計算部208、第2変位速度計算部209を追加したものに相当する。以下、上記参考例2の反応装置10と同様の構成については同じ符号を付し適宜説明を省略する。
【0155】
位置測定装置260は、上記のように変位(
図14参照)する反応容器100の特定箇所の実際の位置を測定する。この特定箇所は、例えば、反応容器100の他端側A2の、
図19中符号Eが示す点(以下、点Eと記載する)である。なお、この特定箇所は、点E以外であってもよい。以下、この特定箇所が反応容器100の点Eである例について説明する。
図19中、位置X1~位置X3は位置測定装置260が測定する点Eの位置の一例である。位置X1は、反応容器100の温度が室温の場合の点Eの位置を表す。位置X2は、反応容器100の温度が500℃の場合の点Eの位置を表す。位置X3は、反応容器100の温度が1000℃の場合の点Eの位置を表す。
【0156】
位置測定装置260は、例えば、レーザ変位計である。レーザ変位計は、反応装置10Aが設置された床面170に配置されている。レーザ変位計は、床面位置X0(
図19参照)を基準として、上記のように変位する点Eの位置を測定する。
図19中符号Rayはレーザ変位計が照射するレーザ光を表す。なお、位置測定装置260は、レーザ変位計に限らず、歪みゲージであってもよいし、レーザ変位計と歪みゲージとを併用してもよい。
【0157】
第1変位速度計算部208は、反応容器100(中間部A3)の温度を望ましい降温速度(又は昇温速度)で現在温度T1から目標温度T2まで制御した場合の、反応容器100の点Eの変位速度(望ましい変位速度V1)を計算する。その際、第1変位速度計算部208は、例えば、望ましい降温速度(又は昇温速度)、反応容器100を構成する各部材の熱膨張率等の材料物性等を考慮して計算する。この望ましい変位速度V1(計算値)は、例えば、
図21中の直線C3で表すことができる。
図21は、反応容器100を降温制御(冷却制御)する場合の、点Eの望ましい変位速度C3と点Eの実際の変位速度C4との関係を表すグラフである。第1変位速度計算部208は、例えば、制御装置200が所定プログラムを実行することにより実現される。なお、第1変位速度計算部208は、所定プログラムに限らず、ハードウェアにより実現してもよい。また、第1変位速度計算部208が行う計算は、人手で行ってもよい。
【0158】
第2変位速度計算部209は、位置測定装置260により測定された点E(特定箇所)の実際の位置(互いに異なる時間に測定された複数の位置)に基づいて、点Eの実際の変位速度V2を計算する。この点Eの実際の変位速度V2(実測値)は、例えば、
図21中の曲線C4で表すことができる。第2変位速度計算部209は、例えば、制御装置200が所定プログラムを実行することにより実現される。なお、第2変位速度計算部209は、所定プログラムに限らず、ハードウェアにより実現してもよい。
【0159】
温度制御部202は、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従するように(一致するように)反応容器100(中間部A3)の降温速度(又は昇温速度)を制御する降温速度制御処理(又は昇温速度制御処理)を実行する。この降温速度制御処理(及び昇温速度制御処理)については後述する。温度制御部202は、例えば、制御装置200が所定プログラムを実行することにより実現される。なお、温度制御部202は、所定プログラムに限らず、ハードウェアにより実現してもよい。
【0160】
<反応装置10Aの動作例1>
次に、
図22を参照しながら反応装置10Aの動作例1について説明する。
【0161】
図22は、反応装置10Aの動作例1のフローチャートである。
【0162】
以下、反応装置10Aの動作例1として、反応容器100の温度を、現在温度1000℃→目標温度500℃に降温制御(冷却制御)する場合の動作例について説明する。
【0163】
まず、現在温度T1(1000℃)、目標温度T2(500℃)、望ましい降温速度Vt(例えば、1℃/分)を設定する(ステップS30~S31)。これは、例えば、オペレータが手動で設定する。
【0164】
次に、望ましい変位速度V1を計算する(ステップS32)。これは、例えば、第1変位速度計算部208により実現される。具体的には、第1変位速度計算部208は、反応容器100(中間部A3)の温度を望ましい降温速度Vtで現在温度T1から目標温度T2まで制御した場合の、反応容器100の点Eの変位速度(望ましい変位速度V1)を計算する。その際、第1変位速度計算部208は、例えば、望ましい降温速度Vt、反応容器100を構成する各部材の熱膨張率等の材料物性等を考慮して計算する。この望ましい変位速度V1(計算値)は、例えば、
図21中の直線C3で表すことができる。
【0165】
次に、点Eの位置を測定し、実際の変位速度V2(実測値)を計算する(ステップS33)。これは、第2変位速度計算部209により実現される。具体的には、第2変位速度計算部209は、位置測定装置260により測定された点E(特定箇所)の実際の位置(互いに異なる時間に測定された複数の位置)に基づいて、点Eの実際の変位速度V2を計算する。この点Eの実際の変位速度V2(実測値)は、例えば、
図21中の曲線C4で表すことができる。
【0166】
次に、降温速度制御処理を実行する(ステップS34)。この降温速度制御処理は、ステップS33で計算された点Eの実際の変位速度V2が、ステップS32で計算された点Eの望ましい変位速度V1に追従するように(一致するように)反応容器100(中間部A3)の降温速度を制御する処理で、温度制御部202により実現される。
【0167】
この降温速度制御処理(ステップS34)について
図23を参照しながら具体的に説明する。
図23は、降温速度制御処理のフローチャートである。
【0168】
図23に示すように、まず、実際の変位速度V2と望ましい変位速度V1とが乖離している(例えば、実際の変位速度V2と望ましい変位速度V1との差が閾値を超えている)か否かを判定する(ステップS341)。これは、例えば、温度制御部202が、ステップS33で計算された点Eの実際の変位速度V2とステップS32で計算された点Eの望ましい変位速度V1とを比較することにより判定する。
【0169】
その結果、実際の変位速度V2と望ましい変位速度V1とが乖離しており(ステップS341:YES)、その乖離が正の乖離(
図21中矢印AR8参照)の場合(ステップS342:YES)、これは点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1より遅いことを意味するため、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の降温速度を上げる(ステップS343)。例えば、温度制御部202は、降温速度を1℃/minから2℃/minに上げる。具体的には、温度制御部202は、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従するように(一致するように)、各ヒータを制御する。これにより、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従する(
図21参照)。
【0170】
一方、実際の変位速度V2と望ましい変位速度V1とが乖離しており(ステップS341:YES)、その乖離が負の乖離(
図21中矢印AR9参照)の場合(ステップS342:NO)、これは点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1より速いことを意味するため、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の降温速度を下げる(ステップS344)。例えば、温度制御部202は、降温速度を2℃/minから1℃/minに下げる。具体的には、温度制御部202は、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従するように(一致するように)、各ヒータを制御する。これにより、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従する(
図21参照)。
【0171】
なお、実際の変位速度V2と望ましい変位速度V1とが乖離していない場合(ステップS341:NO)、上記ステップS341以降の処理は実行されない。
【0172】
上記ステップS33、S34の処理は、反応容器100の温度がステップS30で設定された目標温度T2に到達するまで繰り返し実行される(ステップS35:NO)。
【0173】
そして、反応容器100の温度が目標温度T2に到達した場合(ステップS35:YES)、反応装置10Aの動作例1を終了する。
【0174】
以上のように、反応装置10Aの動作例1によれば、反応容器100の温度が目標温度T2に到達するまでの間、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従する(
図21参照)。これにより、上記第2の課題が解決される。
【0175】
<反応装置10Aの動作例2>
次に、
図24を参照しながら反応装置10Aの動作例2について説明する。反応装置10Aの動作例1が反応容器100の降温制御(冷却制御)の例であったのに対して、反応装置10Aの動作例2は、反応容器100の昇温制御(加熱制御)の例である。
【0176】
図24は、反応装置10Aの動作例2のフローチャートである。
【0177】
以下、反応装置10Aの動作例2として、反応容器100の温度を、現在温度500℃→目標温度1000℃に昇温制御(加熱制御)する場合の動作例について説明する。
【0178】
まず、現在温度T1(500℃)、目標温度T2(1000℃)、望ましい昇温速度Vt(例えば、1℃/分)、を設定する(ステップS40~S41)。これは、例えば、オペレータが手動で設定する。
【0179】
次に、望ましい変位速度を計算する(ステップS42)。これは、例えば、第1変位速度計算部208により実現される。具体的には、第1変位速度計算部208は、反応容器100(中間部A3)の温度を望ましい降温速度Vtで現在温度T1から目標温度T2まで制御した場合の、反応容器100の点Eの変位速度(望ましい変位速度V1)を計算する。その際、第1変位速度計算部208は、例えば、望ましい昇温速度Vt、反応容器100を構成する各部材の熱膨張率等の材料物性等を考慮して計算する。この望ましい変位速度V1(計算値)は、例えば、
図25中の直線C5で表すことができる。
図25は、反応容器100を昇温制御(加熱制御)する場合の、点Eの望ましい変位速度V1と点Eの実際の変位速度V2との関係を表すグラフである。
【0180】
次に、点Eの位置を測定し、実際の変位速度V2(実測値)を計算する(ステップS43)。これは、第2変位速度計算部209により実現される。具体的には、第2変位速度計算部209は、位置測定装置260により測定された点E(特定箇所)の実際の位置(互いに異なる時間に測定された複数の位置)に基づいて、点Eの実際の変位速度V2を計算する。この点Eの実際の変位速度V2(実測値)は、例えば、
図25中の曲線C6で表すことができる。
【0181】
次に、昇温速度制御処理を実行する(ステップS44)。この昇温速度制御処理は、ステップS43で計算された点Eの実際の変位速度V2が、ステップS42で計算された点Eの望ましい変位速度V1に追従するように(一致するように)反応容器100(中間部A3)の昇温速度を制御する処理で、温度制御部202により実現される。
【0182】
この昇温速度制御処理(ステップS44)について
図26を参照しながら具体的に説明する。
図26は、昇温速度制御処理のフローチャートである。
【0183】
図26に示すように、まず、実際の変位速度V2と望ましい変位速度V1とが乖離している(例えば、実際の変位速度V2と望ましい変位速度V1との差が閾値を超えている)か否かを判定する(ステップS441)。これは、例えば、温度制御部202が、ステップS43で計算された点Eの実際の変位速度V2とステップS42で計算された点Eの望ましい変位速度V1とを比較することにより判定する。
【0184】
その結果、実際の変位速度V2と望ましい変位速度V1とが乖離しており(ステップS441:YES)、その乖離が正の乖離(
図25中矢印AR10参照)の場合(ステップS442:YES)、これは点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1より遅いことを意味するため、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の昇温速度を上げる(ステップS443)。例えば、温度制御部202は、昇温速度を1℃/minから2℃/minに上げる。具体的には、温度制御部202は、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従するように(一致するように)、各ヒータを制御する。これにより、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従する(
図25参照)。
【0185】
一方、実際の変位速度V2と望ましい変位速度V1とが乖離しており(ステップS441:YES)、その乖離が負の乖離(
図25中矢印AR11参照)の場合(ステップS442:NO)、これは点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1より速いことを意味するため、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の昇温速度を下げる(ステップS444)。例えば、温度制御部202は、昇温速度を2℃/minから1℃/minに下げる。具体的には、温度制御部202は、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従するように(一致するように)、各ヒータを制御する。これにより、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従する(
図25参照)。
【0186】
なお、実際の変位速度V2と望ましい変位速度V1とが乖離していない場合(ステップS441:NO)、上記ステップS441以降の処理は実行されない。
【0187】
上記ステップS43、S44の処理は、反応容器100の温度がステップS40で設定された目標温度T2に到達するまで繰り返し実行される(ステップS45:NO)。
【0188】
そして、反応容器100の温度が目標温度に到達した場合(ステップS45:YES)、反応装置10Aの動作例2を終了する。
【0189】
以上のように、反応装置10Aの動作例2によれば、反応容器100の温度が目標温度T2に到達するまでの間、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従する(
図25参照)。
【0190】
<第3の課題(反応容器100を昇温制御(加熱制御)する際の課題)>
図26に示すように、反応容器100を昇温制御(加熱制御)する際、反応容器100(上部A、下部C、左部D、右部B)の昇温速度を上げた(ステップS443)にもかかわらず、点Eが変位しない場合、すなわち、点Eの実際の変位速度V2(実測値)が点Eの望ましい変位速度V1(計算値)に追従しない場合が想定される。
【0191】
この場合、例えば、反応容器100と搬送機構120とが接触することにより、可動支持部である第2支持部104の動作異常が発生している可能性が考えられる(第3の課題)。
図25中ハッチング領域は反応容器100と搬送機構120とが接触する可能性がある危険領域を表す。
【0192】
<実施形態2>
次に、実施形態2として、上記第3の課題を解決するための構成例1について説明する。以下、実施形態2の反応装置を反応装置10Bと記載する。
【0193】
図27は、実施形態2にかかる反応装置10Bのブロック図である。
【0194】
図27に示すように、実施形態2の反応装置10Bは、実施形態1の反応装置10Aに緊急時動作制御部290を追加したものに相当する。以下、上記実施形態1の反応装置10Aと同様の構成については同じ符号を付し適宜説明を省略する。
【0195】
緊急時動作制御部290は、反応装置10Bが正常に動作できなくなる状況を回避する緊急時処理(緊急時動作)を実行する。この緊急時処理は、例えば、反応容器100の昇温速度を下げるように各ヒータを制御する処理、反応容器100の昇温を停止(非常停止)する処理、その他の処理であってよい。
【0196】
反応容器100の昇温を停止(非常停止)する処理は、反応装置10Bに設けられた非常停止ボタン(図示せず)が押下された場合に実行される加熱停止処理と同様の処理(例えば、温度制御部202への通電の停止)であってよい。
【0197】
また、緊急時処理は、例えば、反応装置10Bの異常が発生した旨を報知する処理であってよい。この報知する処理は、例えば、反応装置10Bの異常が発生した旨を表示装置(例えば、ディスプレイ)に表示する処理、又は反応装置10Bの異常が発生した旨の音声を音声出力装置(例えば、スピーカ)から出力する処理であってよい。
【0198】
<緊急時処理例1>
次に、緊急時処理例1について
図28を参照しながら具体的に説明する。
【0199】
図28は、緊急時処理例1のフローチャートである。緊急時処理例1は、ステップS443(
図26参照)において実行される。
【0200】
まず、点Eの位置を測定する(ステップS4431)。これは、位置測定装置260により実現される。
【0201】
次に、ステップS4431で測定された点Eの位置の時間変化dx/dtが負に転じたか否かを判定し(ステップS4432)、点Eの位置の時間変化dx/dtが負に転じた場合(ステップS4432:YES)、これは反応容器100の加熱に伴い点Eの位置が長軸AX100方向に正しく変位していることを表すため、緊急時処理(緊急時動作)を実行することなく、ステップS4431に移行し、以後、それ以降の処理を繰り返し実行する。
【0202】
一方、点Eの位置の時間変化dx/dtが負に転じない場合(ステップS4432:NO)、これは点Eの位置が長軸AX100方向に正しく変位していないこと、すなわち、可動支持部である第2支持部104が動作異常を起こしている可能性(例えば、反応容器100と搬送機構120とが接触している可能性)を表すため、緊急時処理(緊急時動作)を実行する(ステップS4433)。これは、緊急時動作制御部290により実現される。この緊急時処理は、例えば、反応容器100の昇温速度を下げるように各ヒータを制御する処理、反応容器100の昇温を停止(非常停止)する処理、その他の処理であってよい。これにより、上記課題3が解決される。
【0203】
<緊急時処理例2>
次に緊急時処理例2について説明する。
【0204】
緊急時処理例1と緊急時処理例2との相違点は、緊急時処理例1では、昇温速度を上げた後の点Eの位置の時間変化を緊急時処理(緊急時動作)に移行するための判断基準としていたのに対し、緊急時処理例2では、「理想的な膨張」との乖離の程度を緊急時処理(緊急時動作)に移行するための判断基準としている点である。
【0205】
すなわち、可動支持部である第2支持部104が正常であっても、昇温速度を上げてすぐに点Eの位置の時間変化が起きない可能性がある。
【0206】
そこで、緊急時処理例2においては、望ましい変位速度V2と実際の変位速度V1との乖離が許容される閾値を予め設定し、望ましい変位速度V2と実際の変位速度V1との乖離がその閾値を超えた場合、非常時動作に移行する。
【0207】
次に緊急時処理例2について
図29を参照しながら具体的に説明する。
【0208】
図29は、緊急時処理例2のフローチャートである。緊急時処理例2は、ステップS443(
図26参照)において実行される。
【0209】
まず、点Eの位置を測定し、実際の変位速度V2を計算する(ステップS4434)。これは、第2変位速度計算部209により実現される。具体的には、第2変位速度計算部209は、位置測定装置260により測定された点E(特定箇所)の実際の位置(互いに異なる時間に測定された複数の位置)に基づいて、点Eの実際の変位速度V2を計算する。
【0210】
次に、望ましい変位速度V1と実際の変位速度V2との乖離が閾値を超えていない場合(ステップS4435:NO)、これは昇温速度を上げたことに伴い点Eの位置が長軸AX100方向に正しく変位していることを表すため、緊急時処理(緊急時動作)を実行することなく、ステップS4434に移行し、以後、それ以降の処理を繰り返し実行する。
【0211】
一方、望ましい変位速度V1と実際の変位速度V2との乖離が閾値を超えた場合(ステップS4435:YES)、これは昇温速度を上げたにも関わらず、点Eの位置が長軸AX100方向に正しく変位していないこと、すなわち、可動支持部である第2支持部104が動作異常を起こしている可能性(例えば、反応容器100と搬送機構120とが接触している可能性)を表すため、緊急時処理(緊急時動作)を実行する(ステップS4436)。これは、緊急時動作制御部290により実現される。この緊急時処理は、例えば、反応容器100の昇温速度を下げるように各ヒータを制御する処理、反応容器100の昇温を停止(非常停止)する処理、その他の処理であってよい。これにより、上記課題3が解決される。
【0212】
<緊急時処理例3>
次に緊急時処理例3について説明する。
【0213】
緊急時処理例3は、上記緊急時処理例2(
図29参照)に対してステップS4437を追加したものに相当する。
【0214】
緊急時処理例1と緊急時処理例3との相違点は、緊急時処理例1では、昇温速度を上げた後の点Eの位置の時間変化を緊急時処理に移行するための判断基準としていたのに対し、緊急時動作例3では、「定常時とは異なる挙動」を緊急時処理に移行するための判断基準としている点である。
【0215】
実際の生産運転では、毎回同じパターンで昇温や降温が行われる。そこで、緊急時処理例3においては、「定常時とは異なる挙動」との乖離が許容される閾値を予め設定し、その閾値を超えた場合、非常時動作に移行する。
【0216】
次に緊急時処理例3について
図30を参照しながら具体的に説明する。
【0217】
図30は、緊急時動作例3のフローチャートである。緊急時動作例3は、ステップS443(
図26参照)において実行される。
【0218】
まず、点Eの位置を測定し、実際の変位速度V2を計算する(ステップS4434)。これは、第2変位速度計算部209により実現される。具体的には、第2変位速度計算部209は、位置測定装置260により測定された点E(特定箇所)の実際の位置(互いに異なる時間に測定された複数の位置)に基づいて、点Eの実際の変位速度V2を計算する。
【0219】
次に、望ましい変位速度V1と実際の変位速度V2との乖離が閾値を超えていない場合(ステップS4435:NO)、かつ、望ましい変位速度V1と実際の変位速度V2との乖離が定常時の閾値を超えていない場合(ステップS4437:NO)、これは昇温速度を上げたことに伴い点Eの位置が長軸AX100方向に正しく変位していることを表すため、緊急時処理(緊急時動作)を実行することなく、ステップS4434に移行し、以後、それ以降の処理を繰り返し実行する。
【0220】
一方、望ましい変位速度V1と実際の変位速度V2との乖離が閾値を超えた場合(ステップS4435:YES)、又は、望ましい変位速度V1と実際の変位速度V2との乖離が定常時の閾値を超えた場合(ステップS4437:YES)、これは昇温速度を上げたにも関わらず、点Eの位置が長軸AX100方向に正しく変位していないこと、すなわち、可動支持部である第2支持部104が動作異常を起こしている可能性(例えば、反応容器100と搬送機構120とが接触している可能性)を表すため、緊急時処理(緊急時動作)を実行する(ステップS4436)。これは、緊急時動作制御部290により実現される。この緊急時処理は、例えば、反応容器100の昇温速度を下げるように各ヒータを制御する処理、反応容器100の昇温を停止(非常停止)する処理、その他の処理であってよい。これにより、上記課題3が解決される。
【0221】
<実施形態3>
次に、実施形態3として、上記第2の課題を解決するための構成例2について説明する。以下、実施形態3の反応装置を反応装置10Cと記載する。
【0222】
図31は、実施形態3にかかる反応装置10Cのブロック図である。
【0223】
図31に示すように、実施形態3の反応装置10Cは、実施形態1の反応装置10Aに温度制御パターン補正部291を追加したものに相当する。以下、上記実施形態1の反応装置10Aと同様の構成については同じ符号を付し適宜説明を省略する。
【0224】
実施形態3の反応装置10Cにおいては、
図32に示すように、記憶部207に温度制御テーブルが記憶されている。
図32は、記憶部207に記憶されている温度制御テーブルの一例である。記憶部207が本開示の温度制御パターン記憶部、変位速度記憶部の一例である。
【0225】
図32に示すように、温度制御テーブルは、項目として、現在温度DT1、目標温度DT2、望ましい降温速度DT3、望ましい変位速度DT4及び温度制御パターンDT5を含む。
【0226】
現在温度DT1には、反応容器100の現在温度が記憶される。目標温度DT2には、反応容器100の目標温度が記憶される。望ましい降温速度(又は昇温速度)DT3には、上記<望ましい温度条件>を考慮して設定される降温速度(又は昇温速度)が記憶される。望ましい変位速度DT4には、第1変位速度計算部208により計算された変位速度(望ましい変位速度V1)が記憶される。温度制御パターンDT5には、反応容器100(中間部A3)の温度が現在温度DT1から目標温度DT2に到達するまで温度制御部202が実際に制御した各ヒータの制御パターン、例えば、各ヒータに通電した、時間ごとの電流値の情報が記憶される。
【0227】
温度制御パターン補正部291は、反応容器100の点E(特定箇所)の変位速度(V1又はV2)ができる限り速くなるように温度制御パターンDT5を補正する。例えば、反応容器100(中間部A3)の温度が現在温度DT1から目標温度DT2に到達するまで温度制御部202が実際に制御した各ヒータの制御パターン(複数回分)を記憶部207等に記憶しておく。そして、温度制御パターン補正部291は、その記憶された温度制御パターン(複数回分)のうち変位速度(V1又はV2)が最も速くなる温度制御パターンを記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶(上書き)する。
【0228】
または、温度制御パターン補正部291は、機械学習の結果に基づき、反応容器100の点E(特定箇所)の変位速度(V1又はV2)ができる限り速くなるように温度制御パターンDT5を補正してもよい。例えば、学習エンジン(例えば、scikit-learn)により学習モデルを生成し、この学習モデルにより、変位速度(VE又はDT4)ができる限り速くなる温度制御パターンを予測(推定)し、この予測した温度制御パターンを記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶(上書き)してもよい。温度制御パターン補正部291は、例えば、制御装置200が所定プログラムを実行することにより実現される。なお、温度制御パターン補正部291は、所定プログラムに限らず、ハードウェアにより実現してもよい。
【0229】
なお、温度制御パターン補正部291が行う補正は、経験に基づき人手で行ってもよい。例えば、反応容器100の点E(特定箇所)の変位速度(V1又はV2)ができる限り速くなるように、経験に基づき、温度制御パターンを補正し、この補正後の温度制御パターンを記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶(上書き)してもよい。
【0230】
<反応装置10Cの動作例1>
次に、
図33を参照しながら反応装置10Cの動作例1について説明する。
【0231】
図33は、反応装置10Cの動作例1のフローチャートである。
【0232】
反応装置10Cの動作例1は、上記反応装置10Aの動作例1(
図22参照)に対してステップS31A、S32A、S32B、S36~S39を追加したものに相当する。
【0233】
以下、反応装置10Cの動作例1として、反応容器100の温度を、現在温度1000℃→目標温度500℃に降温制御(冷却制御)する場合の動作例について説明する。
【0234】
まず、現在温度T1(1000℃)、目標温度T2(500℃)、望ましい降温速度Vt(例えば、1℃/分)を設定する(ステップS30~S31)。これは、例えば、オペレータが手動で設定する。
【0235】
次に、記憶済みの設定値が無い場合(ステップS31A:NO)、すなわち、現在温度T1、目標温度T2に対応する温度制御パターンが記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶されていない場合、望ましい変位速度V1を計算する(ステップS32)。これは、例えば、第1変位速度計算部208により実現される。具体的には、第1変位速度計算部208は、反応容器100(中間部A3)の温度を望ましい降温速度Vtで現在温度T1から目標温度T2まで制御した場合の、反応容器100の点Eの変位速度(望ましい変位速度V1)を計算する。その際、第1変位速度計算部208は、例えば、望ましい降温速度Vt、反応容器100を構成する各部材の熱膨張率等の材料物性等を考慮して計算する。この望ましい変位速度V1(計算値)は、例えば、
図21中の直線C3で表すことができる。
【0236】
次に、ステップS32で計算した望ましい変位速度V1を記憶する(ステップS32A)。具体的には、ステップS32で計算した望ましい変位速度V1は、現在温度DT1、目標温度DT2、望ましい降温速度DT3に対応づけて記憶部207(望ましい変位速度DT4)に記憶される。なお、現在温度DT1、目標温度DT2、望ましい降温速度DT3には、ステップS30で設定された現在温度T1、目標温度T2、ステップS31で設定された望ましい降温速度Vtが記憶される。
【0237】
次に、点Eの位置を測定し、実際の変位速度V2(実測値)を計算する(ステップS33)。これは、第2変位速度計算部209により実現される。具体的には、第2変位速度計算部209は、位置測定装置260により測定された点E(特定箇所)の実際の位置(互いに異なる時間に測定された複数の位置)に基づいて、点Eの実際の変位速度V2を計算する。この点Eの実際の変位速度V2(実測値)は、例えば、
図21中の曲線C4で表すことができる。
【0238】
次に、降温速度制御処理を実行する(ステップS34)。この降温速度制御処理は、ステップS33で計算された点Eの実際の変位速度V2が、ステップS32で計算された点Eの望ましい変位速度V1に追従するように(一致するように)反応容器100(中間部A3)の降温速度を制御する処理で、温度制御部202により実現される。この降温速度制御処理については、上記反応装置10Aの動作例1(
図23参照)で既に説明したので省略する。
【0239】
上記ステップS33、S34の処理は、反応容器100の温度がステップS30で設定された目標温度T2に到達するまで繰り返し実行される(ステップS35:NO)。
【0240】
次に、反応容器100の温度が目標温度T2に到達し(ステップS35:YES)、かつ、温度制御パターンが記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶済みでない場合(ステップS36:NO)、温度制御パターンを記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶する(ステップS37)。ここで記憶される温度制御パターンは、ステップS34において、反応容器100(中間部A3)の温度が現在温度T1から目標温度T2に到達するまで温度制御部202が実際に制御した各ヒータの制御パターン、例えば、各ヒータに通電した、時間ごとの電流値の情報である。この温度制御パターンは、現在温度DT1、目標温度DT2、望ましい降温速度DT3に対応づけて記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶される。
【0241】
次に、温度制御が適切に行われたか否かを判定する(ステップS38)。これは、例えば、制御装置200が所定プログラムを実行することにより実現される。
【0242】
その結果、温度制御が適切に行われたと判定された場合(ステップS38:YES)、反応装置10Cの動作例1を終了する。
【0243】
一方、温度制御が適切に行われなかった場合(ステップS38:NO)、ヒータ制御条件(ステップS37で記憶した温度制御パターン)を補正し、上書きし(ステップS39)、反応装置10Cの動作例1を終了する。この補正は、温度制御パターン補正部291により実現される。具体的には、温度制御パターン補正部291は、反応容器100の点E(特定箇所)の変位速度(V1又はV2)ができる限り速くなるように温度制御パターンDT5を補正する。例えば、反応容器100(中間部A3)の温度が現在温度DT1から目標温度DT2に到達するまで温度制御部202が実際に制御した各ヒータの制御パターン(複数回分)を記憶部207等に記憶しておく。そして、温度制御パターン補正部291は、その記憶された温度制御パターン(複数回分)のうち変位速度(V1又はV2)が最も速くなる温度制御パターンを記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶(上書き)する。なお、ステップS38、S39の処理は、経験に基づき人手で行ってもよい。
【0244】
以上のように、反応装置10Cの動作例1によれば、反応容器100の温度が目標温度T2に到達するまでの間、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従する(
図21参照)。これにより、上記第2の課題が解決される。
【0245】
また、反応装置10Cの動作例1によれば、ステップS37において温度制御パターンを記憶することにより次の利点がある。
【0246】
すなわち、ステップS37において温度制御パターンを記憶することにより、次回、ステップS30で前回と同一の現在温度T1、前回と同一の目標温度T2、ステップS31で前回と同一の望ましい降温速度Vtを設定した場合、ステップS31Aにおいて記憶済みの設定値あり(ステップS31A:YES)、すなわち、ステップS30で設定された現在温度T1、目標温度T2及びステップS31で設定された望ましい降温速度Vtに対応する望ましい変位速度及び温度制御パターンが記憶部207(望ましい変位速度DT4、温度制御パターンDT5)に記憶されていると判定され、その望ましい変位速度及び温度制御パターンが記憶部207(望ましい変位速度DT4、温度制御パターンDT5)から読み出され(ステップS32B)、以降の処理で用いられる。そのため、ステップS32、S32Aの処理を省略できるという利点がある。
また、ステップS37~S39の処理を行うことにより、次の利点がある。すなわち、過去の経験に基づく望ましい変位速度及び温度制御パターンが記憶部207から読み出されたとしても、現在実行中パターンにおける実際の変位速度が過去のそれと全く同じになるとは限らない。このため、過去の経験に基づく望ましい変位速度及び温度制御パターンを実行した場合に、過去の変位速度と現在の変位速度の両方を記憶部207に記憶する(ステップS37)。そして、両者に差異がある場合には、作業者がその差異が許容可能であるかどうかを判定し、その差異が許容できない場合には作業者が制御条件(ヒータ制御条件)を適切に補正し、その結果を記憶部207にさらに記憶(上書き)する(ステップS39)。これにより、記憶部207は機械学習のための新たなデータを取得し、過去のデータと比較することで、温度制御パターンに対しての法則性を見出す計算に役立てることができるという利点がある。
【0247】
<反応装置10Cの動作例2>
次に、
図34を参照しながら反応装置10Cの動作例2について説明する。反応装置10Cの動作例1が反応容器100の降温制御(冷却制御)の例であったのに対して、反応装置10Cの動作例2は、反応容器100の昇温制御(加熱制御)の例である。
【0248】
図34は、反応装置10Cの動作例2のフローチャートである。
【0249】
以下、反応装置10Cの動作例2として、反応容器100の温度を、現在温度500℃→目標温度1000℃に昇温制御(加熱制御)する場合の動作例について説明する。
【0250】
まず、現在温度T1(500℃)、目標温度T2(1000℃)、望ましい降温速度Vt(例えば、1℃/分)を設定する(ステップS40~S41)。これは、例えば、オペレータが手動で設定する。
【0251】
次に、記憶済みの設定値が無い場合(ステップS41A:NO)、すなわち、現在温度T1、目標温度T2に対応する温度制御パターンが記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶されていない場合、望ましい変位速度V1を計算する(ステップS42)。これは、例えば、第1変位速度計算部208により実現される。具体的には、第1変位速度計算部208は、反応容器100(中間部A3)の温度を望ましい降温速度Vtで現在温度T1から目標温度T2まで制御した場合の、反応容器100の点Eの変位速度(望ましい変位速度V1)を計算する。その際、第1変位速度計算部208は、例えば、望ましい降温速度Vt、反応容器100を構成する各部材の熱膨張率等の材料物性等を考慮して計算する。この望ましい変位速度V1(計算値)は、例えば、
図25中の直線C5で表すことができる。
【0252】
次に、ステップS42で計算した望ましい変位速度V1を記憶する(ステップS42A)。具体的には、ステップS42で計算した望ましい変位速度V1は、現在温度DT1、目標温度DT2、望ましい降温速度DT3に対応づけて記憶部207(望ましい変位速度DT4)に記憶される。なお、現在温度DT1、目標温度DT2、望ましい降温速度DT3には、ステップS40で設定された現在温度T1、目標温度T2、ステップS31で設定された望ましい降温速度Vtが記憶される。
【0253】
次に、点Eの位置を測定し、実際の変位速度V2(実測値)を計算する(ステップS43)。これは、第2変位速度計算部209により実現される。具体的には、第2変位速度計算部209は、位置測定装置260により測定された点E(特定箇所)の実際の位置(互いに異なる時間に測定された複数の位置)に基づいて、点Eの実際の変位速度V2を計算する。この点Eの実際の変位速度V2(実測値)は、例えば、
図25中の曲線C6で表すことができる。
【0254】
次に、昇温速度制御処理を実行する(ステップS44)。この昇温速度制御処理は、ステップS43で計算された点Eの実際の変位速度V2が、ステップS42で計算された点Eの望ましい変位速度V1に追従するように(一致するように)反応容器100(中間部A3)の昇温速度を制御する処理で、温度制御部202により実現される。この昇温速度制御処理については、上記反応装置10Aの動作例2(
図26参照)で既に説明したので省略する。
【0255】
上記ステップS43、S44の処理は、反応容器100の温度がステップS40で設定された目標温度T2に到達するまで繰り返し実行される(ステップS45:NO)。
【0256】
次に、反応容器100の温度が目標温度T2に到達し(ステップS45:YES)、かつ、温度制御パターンが記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶済みでない場合(ステップS46:NO)、温度制御パターンを記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶する(ステップS47)。ここで記憶される温度制御パターンは、ステップS44において、反応容器100(中間部A3)の温度が現在温度T1から目標温度T2に到達するまで温度制御部202が実際に制御した各ヒータの制御パターン、例えば、各ヒータに通電した、時間ごとの電流値の情報である。この温度制御パターンは、現在温度DT1、目標温度DT2、望ましい降温速度DT3に対応づけて記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶される。
【0257】
次に、温度制御が適切に行われたか否かを判定する(ステップS48)。これは、例えば、制御装置200が所定プログラムを実行することにより実現される。
【0258】
その結果、温度制御が適切に行われたと判定された場合(ステップS48:YES)、反応装置10Cの動作例2を終了する。
【0259】
一方、温度制御が適切に行われなかった場合(ステップS48:NO)、ヒータ制御条件(ステップS47で記憶した温度制御パターン)を補正し、上書きし(ステップS49)、反応装置10Cの動作例2を終了する。この補正は、温度制御パターン補正部291により実現される。具体的には、温度制御パターン補正部291は、反応容器100の点E(特定箇所)の変位速度(V1又はV2)ができる限り速くなるように温度制御パターンDT5を補正する。例えば、反応容器100(中間部A3)の温度が現在温度DT1から目標温度DT2に到達するまで温度制御部202が実際に制御した各ヒータの制御パターン(複数回分)を記憶部207等に記憶しておく。そして、温度制御パターン補正部291は、その記憶された温度制御パターン(複数回分)のうち変位速度(V1又はV2)が最も速くなる温度制御パターンを記憶部207(温度制御パターンDT5)に記憶(上書き)する。なお、ステップS48、S49の処理は、経験に基づき人手で行ってもよい。
【0260】
以上のように、反応装置10Cの動作例2によれば、反応容器100の温度が目標温度T2に到達するまでの間、点Eの実際の変位速度V2が点Eの望ましい変位速度V1に追従する(
図25参照)。
【0261】
また、反応装置10Cの動作例2によれば、ステップS37において温度制御パターンを記憶することにより次の利点がある。
【0262】
すなわち、ステップS47において温度制御パターンを記憶することにより、次回、ステップS40で前回と同一の現在温度T1、前回と同一の目標温度T2、ステップS41で前回と同一の望ましい昇温速度Vtを設定した場合、ステップS41Aにおいて記憶済みの設定値あり(ステップS41A:YES)、すなわち、ステップS40で設定された現在温度T1、目標温度T2及びステップS31で設定された望ましい昇温速度Vtに対応する望ましい変位速度、温度制御パターンが記憶部207(望ましい変位速度DT4、温度制御パターンDT5)に記憶されていると判定され、その望ましい変位速度及び温度制御パターンが記憶部207(望ましい変位速度DT4、温度制御パターンDT5)から読み出され(ステップS42B)、以降の処理で用いられる。そのため、ステップS42、S42Aの処理を省略できるという利点がある。
【0263】
また、ステップS47~S49の処理を行うことにより、次の利点がある。すなわち、過去の経験に基づく望ましい変位速度及び温度制御パターンが記憶部207から読み出されたとしても、現在実行中パターンにおける実際の変位速度が過去のそれと全く同じになるとは限らない。このため、過去の経験に基づく望ましい変位速度及び温度制御パターンを実行した場合に、過去の変位速度と現在の変位速度の両方を記憶部207に記憶する(ステップS47)。そして、両者に差異がある場合には、作業者がその差異が許容可能であるかどうかを判定し、その差異が許容できない場合には作業者が制御条件(ヒータ制御条件)を適切に補正し、その結果を記憶部207にさらに記憶(上書き)する(ステップS49)。これにより、記憶部207は機械学習のための新たなデータを取得し、過去のデータと比較することで、温度制御パターンに対しての法則性を見出す計算に役立てることができるという利点がある。
【0264】
なお、反応装置10Cの動作例2においても、上記<緊急時処理例1>~<緊急時処理例3>を適用することができる。これにより、反応装置10Cの動作例2においても、上記課題3が解決される。
【0265】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0266】
10、10A、10B、10C…反応装置
100…反応容器
101…供給口
102…送出口
103…第1支持部
104…第2支持部
104a…凸部
104b…上面
104c、104d…起立部
106、107…軸受け
108…蓋部
109…フランジ部
109a…凹部
109b…下面
109c、109d…突出部
110…温度制御領域
111…摩擦低減部材
112、113…軸受け
114…フランジ部
116…反応容器駆動装置
120…スクリュ
121…凸部
130…第1流体制御領域
131…第1流体入口
132…第1流体出口
133…第1流体供給管
134…第1バルブ
140…第2流体制御領域
141…第2流体入口
142…第2流体出口
143…第2流体供給管
144…第2バルブ
150…駆動装置
151…モータ
152…減速機
170…床面
200…制御装置
201…全体制御部
202…温度制御部
203…スクリュ回転制御部
204…第1流体制御部
205…第2流体制御部
206…IF制御部
207…記憶部
210…温度制御装置
230…第1流体制御装置
240…第2流体制御装置
250…情報入出力部
A1…一端側
A2…他端側
A3…中間部
B1…一端側
B2…他端側
E…特定箇所
G1~G4…隙間
R10…処理物
R11…生成物