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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024136996
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】逆止弁
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/24 20060101AFI20240927BHJP
   F16K 15/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61M39/24 100
F16K15/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048325
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】河内 恵太
(72)【発明者】
【氏名】北詰 哲也
【テーマコード(参考)】
3H058
4C066
【Fターム(参考)】
3H058AA05
3H058BB02
3H058CA02
3H058CA23
3H058CB06
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066EE10
4C066FF04
4C066LL30
4C066QQ15
(57)【要約】
【課題】逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら開弁性を向上させる。
【解決手段】第1流路11が設けられた第1ハウジング10と、第2流路21が設けられた第2ハウジング20とが、第1ハウジング10と第2ハウジング20との間にキャビティ31が形成されるように接合されている。キャビティ31内に弁体50が配置されている。弁体50は、第2ハウジング20の固定部23に嵌入する突起51と、突起51から延びた弾性膜60とを備える。逆止弁1は、第1流路11から第2流路21への流れが許容されるように弾性膜60と第1ハウジング10との間に隙間35が形成される開状態と、第2流路21から第1流路11への流れが禁止されるように弾性膜60が第1ハウジング10に接触する閉状態とに変化する。弁体50の弾性膜60の厚さが周方向において変化している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路及び第2流路に連通するキャビティが形成されたハウジングと、前記キャビティ内に配置された弁体とを備えた逆止弁であって、
前記ハウジングは、前記第1流路が設けられた第1ハウジングと、前記第2流路が設けられた第2ハウジングとが、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に前記キャビティが形成されるように接合されて構成され、
前記弁体は、前記第2ハウジングの前記第2流路の開口端に設けられた固定部に嵌入する突起と、前記突起から半径方向外向きに延びた弾性曲げ変形が可能な弾性膜とを備え、
前記逆止弁は、
前記第1流路から前記第2流路への流体の流れが許容されるように前記弾性膜の第1面と前記第1ハウジングとの間に隙間が形成される開状態と、
前記第2流路から前記第1流路への流体の流れが禁止されるように前記弾性膜の前記第1面が前記第1ハウジングに環状に接触する閉状態と
に変化し、
前記弁体の前記弾性膜の厚さが周方向において変化していることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記弾性膜の厚さが周方向において変化するように、前記弾性膜に薄肉部または厚肉部が設けられている請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記薄肉部または前記厚肉部は、前記弾性膜の前記第2ハウジングに対向する第2面に設けられた凹部または凸部により構成されている請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記弾性膜に、前記薄肉部と、前記薄肉部より厚い基準厚さ部と、前記薄肉部と前記基準厚さ部との境界に沿った段差部とが設けられており、
前記段差部は、前記弾性膜の外周端上の2点を結び、
前記薄肉部は、前記段差部と、前記弾性膜の外周端とで囲まれた領域に設けられている請求項2に記載の逆止弁。
【請求項5】
前記弾性膜に、前記薄肉部と、前記薄肉部より厚い基準厚さ部と、前記薄肉部と前記基準厚さ部との境界に沿った段差部とが設けられており、
前記段差部は、閉曲線に沿っており、
前記薄肉部は、前記段差部で囲まれた領域に設けられている請求項2に記載の逆止弁。
【請求項6】
前記薄肉部は、溝により構成されている請求項2に記載の逆止弁。
【請求項7】
前記溝は、前記弾性膜の外周端上の2点を結ぶ請求項6に記載の逆止弁。
【請求項8】
前記溝は、半径方向に沿って延びている請求項6に記載の逆止弁。
【請求項9】
前記厚肉部は、リブにより構成されている請求項2に記載の逆止弁。
【請求項10】
前記リブは、前記弾性膜の外周端上の2点を結ぶ請求項9に記載の逆止弁。
【請求項11】
前記リブは、半径方向に沿って延びている請求項9に記載の逆止弁。
【請求項12】
初期状態において、前記弾性膜の前記第1面の外周領域が前記第1ハウジングに環状に接触し、
前記外周領域よりも内側での前記弾性膜の厚さが周方向において変化している請求項1に記載の逆止弁。
【請求項13】
初期状態において、前記弾性膜の前記第1面の外周領域が前記第1ハウジングに環状に接触し、
前記外周領域での前記弾性膜の厚さは周方向において一定である請求項1に記載の逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向への流体の流れを許容し、当該一方向とは反対方向への流体の流れを禁止する逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、一方向(順方向)への流体の流れ(順流)を許容し、当該一方向とは反対方向(逆方向)への流体の流れ(逆流)を禁止する逆止弁が用いられることがある。例えば、点滴などの輸液を行う場合、薬液を貯留した容器(例えば輸液バッグ)と患者の静脈に穿刺した留置針とをつなぐ流路上に、薬液の逆流を防止するために逆止弁が設けられることがある。
【0003】
特許文献1に、医療用に使用しうる逆止弁が記載されている。この逆止弁は、流入路が形成された第1筐体と、流出路が形成された第2筐体とが組み合わされた筐体を備える。筐体内の、流入路と流出路との間の中空部(キャビティ)に弁体が配置されている。弁体は、円板形状の弾性体からなる。弁体に対して流入路側の流体の圧力と弁体に対して流出路側の流体の圧力とがバランスした初期状態では、弁体の外周領域が第1筐体の内面に環状に接触している。流体が流入路から中空部に流入すると、流入路側の流体の圧力が上昇する。弁体は第2筐体に向かって弾性的に曲げ変形し、弁体の外周領域が第1筐体の内面から離間する。その結果、流体は、流入路から流出路に向かって順方向に流れることができる。一方、流体が流出路から中空部に流入すると、流出路側の流体の圧力が上昇し、弁体の外周領域が全周にわたって第1筐体の内面に密着する。その結果、流出路から流入路に向かって逆方向に流体が流れるのが禁止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-156406号公報
【特許文献2】特開2016-056902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
流体が逆止弁を順方向に流れるためには、弁体より流入路側での流体の圧力(上流側圧力)が、弁体を曲げ変形させるために必要な圧力(閾値)を超えるまで上昇する必要がある。例えばNICU(Neonatal Intensive Care Unit、新生児集中治療室)での輸液では、患者の体が小さいので、薬液はシリンジポンプなどを用いて低流速で投与される。シリンジポンプの下流側に逆止弁を設けた場合、シリンジポンプの運転開始後、上流側圧力が上記閾値を超えるまでに時間を要する。このため、シリンジポンプの運転を開始してから、薬液が逆止弁を通過して実際に患者に流入するまでのタイムラグが長くなる。また、上流側圧力が徐々に上昇して上記閾値を超えたとき、弁体が曲げ変形し、薬液は逆止弁を一気に流れる。このため、薬液はボーラス(bolus)投与となってしまい、シリンジポンプを用いたとしても薬液を一定の低流速で投与することが困難となる。このような薬液投与のタイムラグや薬液のボーラス投与は、投与される薬液によっては患者の循環動態に影響を及ぼしうるため、回避することが望まれる。
【0006】
一般に、上記のタイムラグやボーラス投与は、逆止弁の開弁性(弁体の開きやすさ)による影響を受ける。即ち、比較的低い上流側圧力で弁体が曲げ変形すれば、タイムラグやボーラス投与の問題は生じにくい。一般に、弁体の曲げ剛性を低下させれば、開弁性は向上する。
【0007】
ところが、逆止弁の開弁性を向上させるために弁体の曲げ剛性を低下させると、逆方向の流体の流れを禁止するという逆止弁の逆止性能が低下する。開弁性と逆止性能とはトレードオフの関係にあり、従来の逆止弁では、逆止性能を確保したまま開弁性を向上させることは困難であった。
【0008】
本発明の目的は、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら開弁性が向上した逆止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の逆止弁は、第1流路及び第2流路に連通するキャビティが形成されたハウジングと、前記キャビティ内に配置された弁体とを備える。前記ハウジングは、前記第1流路が設けられた第1ハウジングと、前記第2流路が設けられた第2ハウジングとが、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に前記キャビティが形成されるように接合されて構成されている。前記弁体は、前記第2ハウジングの前記第2流路の開口端に設けられた固定部に嵌入する突起と、前記突起から半径方向外向きに延びた弾性曲げ変形が可能な弾性膜とを備える。前記逆止弁は、前記第1流路から前記第2流路への流体の流れが許容されるように前記弾性膜の第1面と前記第1ハウジングとの間に隙間が形成される開状態と、前記第2流路から前記第1流路への流体の流れが禁止されるように前記弾性膜の前記第1面が前記第1ハウジングに環状に接触する閉状態とに変化する。前記弁体の前記弾性膜の厚さが周方向において変化している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の弁体の弾性膜の厚さは周方向において変化しているので、弾性膜は、比較的低い上流側圧力で局所的に弾性曲げ変形する。このため、本発明によれば、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら開弁性が向上した逆止弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、初期状態にある本発明の実施形態1にかかる逆止弁の断面図である。
図2A図2Aは、本発明の実施形態1にかかる逆止弁の、第1ハウジング側から見た分解斜視図である。
図2B図2Bは、本発明の実施形態1にかかる逆止弁の、第2ハウジング側から見た分解斜視図である。
図3図3Aは、本発明の実施形態1にかかる逆止弁に用いられる弁体の上面図である。図3Bは、当該弁体の下面図である。
図4図4は、初期状態にある比較例の逆止弁の断面図である。
図5図5は、開状態にある比較例の逆止弁の断面図である。
図6図6は、開状態にある本発明の実施形態1にかかる逆止弁の断面図である。
図7図7は、逆方向に液体が流入した本発明の実施形態1にかかる逆止弁の断面図である。
図8図8は、初期状態にある本発明の実施形態2にかかる逆止弁の断面図である。
図9図9Aは、本発明の実施形態2にかかる逆止弁に使用される弁体の第2ハウジング側から見た斜視図である。図9Bは、当該弁体の上面図である。図9Cは、当該弁体の下面図である。
図10図10は、初期状態にある本発明の実施形態3にかかる逆止弁の断面図である。
図11図11Aは、本発明の実施形態3にかかる逆止弁に使用される弁体の第2ハウジング側から見た斜視図である。図11Bは、当該弁体の上面図である。図11Cは、当該弁体の下面図である。
図12図12は、初期状態にある本発明の実施形態4にかかる逆止弁の断面図である。
図13図13Aは、本発明の実施形態4にかかる逆止弁に使用される弁体の第2ハウジング側から見た斜視図である。図13Bは、当該弁体の上面図である。図13Cは、当該弁体の下面図である。
図14図14は、初期状態にある本発明の実施形態5にかかる逆止弁の断面図である。
図15図15Aは、本発明の実施形態5にかかる逆止弁に使用される弁体の第2ハウジング側から見た斜視図である。図15Bは、当該弁体の上面図である。図15Cは、当該弁体の下面図である。
図16図16は、初期状態にある本発明の実施形態6にかかる逆止弁の断面図である。
図17図17Aは、本発明の実施形態6にかかる逆止弁に使用される弁体の第2ハウジング側から見た斜視図である。図17Bは、当該弁体の上面図である。図17Cは、当該弁体の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)本発明の逆止弁は、第1流路及び第2流路に連通するキャビティが形成されたハウジングと、前記キャビティ内に配置された弁体とを備える。前記ハウジングは、前記第1流路が設けられた第1ハウジングと、前記第2流路が設けられた第2ハウジングとが、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に前記キャビティが形成されるように接合されて構成されている。前記弁体は、前記第2ハウジングの前記第2流路の開口端に設けられた固定部に嵌入する突起と、前記突起から半径方向外向きに延びた弾性曲げ変形が可能な弾性膜とを備える。前記逆止弁は、前記第1流路から前記第2流路への流体の流れが許容されるように前記弾性膜の第1面と前記第1ハウジングとの間に隙間が形成される開状態と、前記第2流路から前記第1流路への流体の流れが禁止されるように前記弾性膜の前記第1面が前記第1ハウジングに環状に接触する閉状態とに変化する。前記弁体の前記弾性膜の厚さが周方向において変化している。
【0013】
本発明において、「弾性膜の厚さが周方向において変化する」とは、逆止弁(または弁体)の中心軸と同心の円であって、当該円に沿った弾性膜の厚さが変化する円が、少なくとも一つ存在することを意味する。
【0014】
(2)上記(1)項の逆止弁において、前記弾性膜の厚さが周方向において変化するように、前記弾性膜に薄肉部または厚肉部が設けられていてもよい。かかる態様によれば、簡単な構成で、弾性膜の厚さを周方向において変化させることができる。
【0015】
(3)上記(2)項の逆止弁において、前記薄肉部または前記厚肉部は、前記弾性膜の前記第2ハウジングに対向する第2面に設けられた凹部または凸部により構成されていてもよい。かかる態様では、凹部が設けられた領域が薄肉部となり、凸部が設けられた領域が厚肉部となる。これは、簡単な構成で、薄肉部または厚肉部を弾性膜に設けることを可能にする。凹部または凸部を第2面に設けることにより、弾性膜の第1ハウジングに対向する第1面に凹部及び凸部を設ける必要がない。これは、逆止弁の逆止性能を確保するのに有利である。
【0016】
(4)上記(2)項または上記(3)項の逆止弁において、前記弾性膜に、前記薄肉部と、前記薄肉部より厚い基準厚さ部と、前記薄肉部と前記基準厚さ部との境界に沿った段差部とが設けられていてもよい。前記段差部は、前記弾性膜の外周端上の2点を結んでいてもよい。前記薄肉部は、前記段差部と、前記弾性膜の外周端とで囲まれた領域に設けられていてもよい。かかる態様は、第1に、逆止弁の開弁性の向上に有利であり、第2に、厚さが周方向に変化する弾性膜の構成を簡単化するのに有利である。
【0017】
(5)上記(2)項または上記(3)項の逆止弁において、前記弾性膜に、前記薄肉部と、前記薄肉部より厚い基準厚さ部と、前記薄肉部と前記基準厚さ部との境界に沿った段差部とが設けられていてもよい。前記段差部は、閉曲線に沿っていてもよい。前記薄肉部は、前記段差部で囲まれた領域に設けられていてもよい。かかる態様は、逆止弁の逆止性能を確保するのに有利である。
【0018】
(6)上記(2)項または上記(3)項の逆止弁において、前記薄肉部は、溝により構成されていてもよい。かかる態様によれば、簡単な構成で、弾性膜に薄肉部を設けることが可能になる。
【0019】
(7)上記(6)項の逆止弁において、前記溝は、前記弾性膜の外周端上の2点を結んでいてもよい。かかる態様は、逆止弁の開弁性を向上させるのに有利である。
【0020】
(8)上記(6)項の逆止弁において、前記溝は、半径方向に沿って延びていてもよい。かかる態様によれば、簡単な構成で、弾性膜に薄肉部を設けることが可能になる。
【0021】
(9)上記(2)項または上記(3)項の逆止弁において、前記厚肉部は、リブにより構成されていてもよい。かかる態様によれば、簡単な構成で、弾性膜に厚肉部を設けることが可能になる。
【0022】
(10)上記(9)項の逆止弁において、前記リブは、前記弾性膜の外周端上の2点を結んでいてもよい。かかる態様は、逆止弁の逆止性能を確保するのに有利である。
【0023】
(11)上記(9)項の逆止弁において、前記リブは、半径方向に沿って延びていてもよい。かかる態様によれば、簡単な構成で、弾性膜に厚肉部を設けることが可能になる。
【0024】
(12)上記(1)項~上記(11)項のいずれか一項の逆止弁において、初期状態において、前記弾性膜の前記第1面の外周領域が前記第1ハウジングに環状に接触してもよい。前記外周領域よりも内側での前記弾性膜の厚さが周方向において変化していてもよい。かかる態様は、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら逆止弁の開弁性を向上させるのに有利である。
【0025】
(13)上記(1)項~上記(6)項、上記(8)項、上記(9)項、上記(11)項、及び上記(12)項のいずれか一項の逆止弁において、初期状態において、前記弾性膜の前記第1面の外周領域が前記第1ハウジングに環状に接触してもよい。前記外周領域での前記弾性膜の厚さは周方向において一定であってもよい。かかる態様は、逆止弁の逆止性能を向上させるのに有利でありうる。
【0026】
なお、本発明において、逆止弁の「初期状態」とは、弁体に対して第1流路側の流体の圧力と弁体に対して第2流路側の流体の圧力とがバランスしている(均衡している)状態を意味する。
【0027】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する図面は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の図面に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の図面に示された部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる逆止弁1の、中心軸1aを含む面での断面図である。逆止弁1は、内部にキャビティ31が形成されたハウジング30と、キャビティ31内に配置された弁体50とを備える。ハウジング30は、第1流路11が設けられた第1ハウジング10と、第2流路21が設けられた第2ハウジング20とが、第1ハウジング10と第2ハウジング20との間にキャビティ31が形成されるように接合されて構成される。キャビティ31は、第1流路11及び第2流路21のみを介して逆止弁1の外界と連通している。第1流路11、第2流路21、キャビティ31、及び弁体50は同軸に配置され、これらに共通する軸が逆止弁1の中心軸1aである。
【0029】
本発明では、中心軸1aに直交する直線に沿った方向を「半径方向」という。半径方向において、中心軸1aに近い側を半径方向の「内」側、中心軸1aから遠い側を半径方向の「外」側という。中心軸1aの周りを回転する方向を「周方向」という。中心軸1aに平行な方向を「上下方向」という。上下方向において、第1流路11の側を「上」側、第2流路21の側を「下」側という。中心軸1aに垂直な平面に平行な方向を「水平方向」という。但し、「上下方向」及び「水平方向」は、本発明を説明する便宜のためのものであって、逆止弁1の実際の使用時の向きを意味するものではない。
【0030】
詳細は後述するが、逆止弁1は、流体が第1流路11、キャビティ31、第2流路21をこの順に流れるのを許容し、これとは逆に、流体が第2流路21、キャビティ31、第1流路11をこの順に流れるのを禁止するように構成されている。本発明では、第1流路11から第2流路21に向かう流体の流れの向きを「順方向」といい、第2流路21から第1流路11に向かう流体の流れの向きを「逆方向」という。また、流体の流れの向きにかかわらず、弁体50に対して第1流路11側を「上流側」といい、第2流路21側を「下流側」ということがある。
【0031】
図2Aは、逆止弁1の、第1ハウジング10側から見た分解斜視図である。図2Bは、逆止弁1の、第2ハウジング20側から見た分解斜視図である。
【0032】
図1及び図2Bに示されているように、第1ハウジング10のキャビティ31を規定する内面15は、第1流路11のキャビティ31側の開口から延びた第1内面13と、第1内面13の外側で第1内面13に隣接する第2内面14とを含む。第1内面13は、半径方向外側に向かって第2ハウジング20に接近するように傾斜した凹曲面であって、制限されないが、例えば円錐台面(円錐台の側面)であってもよい。第2内面14は、本実施形態1では半径方向に平行な平坦面であり、第1内面13を取り囲むように周方向に環状に連続している。第2内面14の内周端(即ち、第1内面13と第2内面14との境界)は、中心軸1aと同心の円に沿っている。第2内面14の外側に、第2ハウジング20に接合される接合部(第1接合部)18が形成されている。接合部18は、制限されないが、周方向に連続する環状の凸条(突起)または凹条(溝)を含んでいてもよい。
【0033】
図1及び図2Aに示されているように、第2ハウジング20の、第2流路21のキャビティ31側の開口端は、弁体50を保持する固定部23を構成する。中心軸1aに沿って見たとき、固定部23は中心軸1aと同心の円に沿っている。第2ハウジング20のキャビティ31を規定する内面は、固定部23から半径方向外側に向かって第1ハウジング10から離れるように傾斜した凸曲面25を含む。凸曲面25は、制限されないが、例えば円錐台面(円錐台の側面)であってもよい。凸曲面25には、半径方向に沿った複数の溝24が形成されている。複数の溝24は、中心軸1aに対して等角度間隔に配置されている。溝24は、第2流路21に連通し、凸曲面25の外周端にまで延びており、固定部23及び凸曲面25を周方向に分断している。溝24は、逆止弁1を順方向に(即ち、第1流路11から第2流路21へ)流れる流体の流路となりうる。溝24の数は、本実施形態1では3本であるが、本発明はこれに限定されず、これより多くても、少なくてもよい。凸曲面25の外側に、第1ハウジング10に接合される接合部(第2接合部)28が形成されている。接合部28は、制限されないが、周方向に連続する環状の凹条(溝)または凸条(突起)を含む。
【0034】
第1ハウジング10及び第2ハウジング20は、外力によって実質的に変形しない程度の機械的強度(剛性)を有することが好ましい。具体的には、第1及び第2ハウジング10,20の材料は、ポリプロピレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂が好ましく、特にポリプロピレンが好ましい。第1及び第2ハウジング10,20のそれぞれは、上記樹脂を用いて射出成形法等により全体を一部品として一体的に製造することができる。第1ハウジング10と第2ハウジング20とは、同じ材料で構成されていてもよく、あるいは、異なる材料で構成されていてもよい。
【0035】
第1ハウジング10の接合部18と第2ハウジング20の接合部28とは、両者間に液密なシールが形成されるように接合される。例えば、接合部18の凸条が接合部28の凹条に嵌合され、及び/又は、接合部28の凸条が接合部18の凹条に嵌合される。接合部18と接合部28とを接合する方法は、制限はなく、第1及び第2ハウジング10,20の材料等を考慮して公知の方法を用いうる。例えば、溶着(例えばレーザー溶着、超音波溶着)、接着(例えば溶剤接着)、単なる嵌合(例えばテーパ嵌合)などを用いうる。
【0036】
キャビティ31内に弁体50が配置されている。弁体50は、平面視形状(中心軸1aに沿って見た形状)が略円形の、全体として薄い円盤形状を有している。弁体50の中央に、弁体50の厚さ方向(上下方向、即ち中心軸1a方向)に突出した第1突起51及び第2突起52が設けられている。第1突起51は、第2ハウジング20に向かって突出している(図2B参照)。第2突起52は、第1ハウジング10に向かって突出している(図2A参照)。第1及び第2突起51,52の形状は、制限されないが、先端に向かって径が小さくなる略円錐形状または略円錐台形状であってもよい。
【0037】
突起51,52(より正確には突起51,52の基部)から半径方向外向きに弾性膜60が延びている。弾性膜60は、周方向に連続している。図3Aは、第1ハウジング10側から見た弁体50の上面図である。図3Bは、第2ハウジング20側から見た弁体50の下面図である。弾性膜60は、第1ハウジング10を向いた第1面60a(図2A及び図3A参照)と、第2ハウジング20を向いた第2面60b(図2B及び図3B参照)とを有する。
【0038】
図2A及び図3Aに示されているように、弾性膜60の第1面60aは、水平方向に沿った平坦面である。一方、図2B及び図3Bに示されているように、弾性膜60の第2面60bには、凹部(窪み)63が形成されている。凹部63は、弾性膜60の薄肉部64を構成する。弾性膜60のうち薄肉部64以外の部分を基準厚さ部62という。弾性膜60の厚さ(中心軸1a方向の寸法)は、基準厚さ部62より、薄肉部64において薄い(図1参照)。凹部63の表面、及び、基準厚さ部62の表面は、いずれも水平方向に沿った平坦面である。薄肉部64と基準厚さ部62との厚さの違いに起因して、第2面60bに、薄肉部64と基準厚さ部62との境界に沿って段差部67(図2B及び図3B参照)が形成されている。図2B及び図3Bに示されているように、段差部67は、弾性膜60の円形の外周端上の2点を結んでいる。制限されないが、本例では段差部67は中心軸1aと交差しない一直線に沿っている。段差部67に対して一方の側(本例では中心軸1aから遠い側)に薄肉部64(凹部63)が配置され、段差部67に対して他方の側(本例では中心軸1aの側)に基準厚さ部62が配置されている。薄肉部64及び基準厚さ部62は、いずれも、弾性膜60の円弧状の外周端と段差部67とで囲まれた領域にわたって延びている。
【0039】
弁体50は、外力によって比較的容易に変形可能であり、且つ、外力を取り除くと直ちに変形前の状態(初期状態)に復帰するように、弾性(あるいは可撓性もしくは軟質)材料(いわゆるエラストマー)からなる。具体的には、弁体50の材料は、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム等のゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、あるいは、軟質ポリ塩化ビニルが好ましく、特にシリコーンゴムが好ましい。弁体50は、上記の材料を用いて、全体を一部品として一体的に製造することができる。
【0040】
図1に示されているように、弁体50は、第1突起51が、第2流路21の開口端である固定部23に嵌入されて、第2ハウジング20に載置されている。第1突起51の側面(例えば円錐面)が固定部23に嵌入することにより、弁体50は、第2ハウジング20に対して上下方向及び水平方向に位置合わせされる。弁体50が載置された第2ハウジング20に第1ハウジング10が接合される。弾性膜60の第1面60aが、第1ハウジング10の第2内面14に上下方向に接触する。固定部23及び第2内面14は協働して弁体50の傾きを修正する。
【0041】
弁体50は、キャビティ31を、第1ハウジング10(または第1流路11)側の第1キャビティ31aと第2ハウジング20(または第2流路21)側の第2キャビティ31bとに上下に2分割する。第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)と第2キャビティ31b内の流体の圧力(下流側圧力)とがバランスした状態を「初期状態」という。図1は、初期状態の逆止弁1を示している。初期状態では、弾性膜60は、第1ハウジング10の内面15(特に第2内面14)に接触するが、実質的に曲げ変形せず、水平方向(中心軸1aに垂直な面に平行な方向)に沿って延びる。
【0042】
図3Aに示すように、弾性膜60の第1面60aのうち多数のドットを付した領域は、初期状態(図1参照)において第1ハウジング10の内面15(第2内面14)が接触する外周領域61である。外周領域61は、弾性膜60の第1面60aの外周に沿って環状に連続している。二点鎖線で示した外周領域61の内周端61aは、第1ハウジング10の第2内面14の内周端(図1図2B参照)に対応し、中心軸1aと同心の円である。図3Bにも、第2面60b側から透視される外周領域61の内周端61aを二点鎖線で示している。段差部67は、円形の内周端61aと交差している。薄肉部64(凹部63)は、外周領域61より内側から、内周端61aを越えて、弾性膜60の外周端にまで延びている。
【0043】
初期状態の逆止弁1(図1参照)に、流体が第1流路11を通って順方向に流入すると、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が上昇する。第1キャビティ31a内の流体は、弁体50を、第2ハウジング20に向かって押圧する。弁体50の中央(第1突起51)は第2ハウジング20の固定部23で支持されている。このため、第1キャビティ31a内の流体は、図1のような半径方向に沿った断面において、弾性膜60の外周端が第2ハウジング20側へ変位するように、弾性膜60を弾性的に曲げ変形させる。
【0044】
本実施形態1では、弾性膜60に、薄肉部64(凹部63)が設けられている。薄肉部64は、周方向に連続していない。このため、弁体50の弾性膜60の厚さは周方向において変化している。換言すれば、弁体50の弾性膜60の厚さは、中心軸1aに対して対称(軸対称)ではない。弾性膜60の全体は、同一材料で構成されている。このため、弾性膜60の厚さの周方向の変化は、弾性膜60の曲げ剛性を周方向に変化させる。本発明では、弾性膜60の「曲げ剛性」とは、弾性膜60の厚さ方向に沿った断面(例えば図1の断面)内での弾性膜60の曲げ変形のしにくさを意味する。基準厚さ部62に比べて薄い薄肉部64は、基準厚さ部62に比べて曲げ剛性が低い。第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が上昇したとき、第1キャビティ31a内の流体は、弾性膜60の外周端が第2ハウジング20側へ変位するように、弾性膜60を弾性的に曲げ変形させる。弾性膜60の曲げ変形量は、基準厚さ部62より薄肉部64において、より大きい。このため、弾性膜60の外周端の第2ハウジング20側への変位量は、弁体50の中心(中心軸1a)に対して薄肉部64が配置された側において相対的に大きくなる。
【0045】
本実施形態1の逆止弁1の作用の理解を容易にするために、図4に示す比較例の逆止弁900を考える。逆止弁900が備える弁体950の弾性膜960には、本実施形態1の薄肉部64(凹部63)が形成されていない。このため、弾性膜960の厚さは周方向において変化していない(即ち、一定である)。より詳細には、弾性膜960の厚さは、中心軸1aと同心の任意の半径を有する円の周方向において一定である。換言すれば、弁体950の弾性膜960の厚さは、中心軸1aに対して対称(軸対称)である。このため、弾性膜960の曲げ剛性は、周方向において一定である。これを除いて、逆止弁900は実施形態1の逆止弁1と同じである。図4において、図1に示した部材(または要素)に対応する部材(または要素)には図1と同じ符号を付してある。
【0046】
図4に示した逆止弁900は、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)と第2キャビティ31b内の流体の圧力(下流側圧力)とがバランスした初期状態にある。初期状態の逆止弁900に、流体が第1流路11を通って順方向に流入すると、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が上昇する。第1キャビティ31a内の流体は、弾性膜960の外周端が第2ハウジング20側へ変位するように、弾性膜960を弾性的に曲げ変形させる。弾性膜960の曲げ剛性は、周方向において一定である。このため、上流側圧力がある閾値を超えると、図5に示すように、弾性膜960の外周領域61が、第1ハウジング10の第2内面14から、全周にわたってほぼ同時に離間する。弾性膜60の曲げ変形量は周方向において一定である。弾性膜960の外周領域61と第1ハウジング10の第2内面14との間に形成される隙間935の上下方向寸法は、周方向において一定である。かくして、逆止弁900は、「開状態」となる。流体は、第1キャビティ31aから隙間935を通って第2キャビティ31bに流入し、更に第2流路21を流れる。このようにして、流体は、第1流路11から第2流路21へ逆止弁900を流れることができる。図5において、矢印41及び矢印42は、それぞれ第1流路11及び第2流路21を順方向に流れる流体の向きを示している。
【0047】
外周領域61を第1ハウジング10の第2内面14から離間させるのに必要な上流側圧力(閾値)は、弾性膜960の曲げ剛性、即ち、弾性膜960の厚さに依存する。弾性膜960が厚いと、上記閾値が高くなり、上流側圧力が高くなるまで弾性膜960の外周領域61は第1ハウジング10の第2内面14から離間しない。このような逆止弁900は開弁性に劣る。開弁性に劣る逆止弁900に、第1流路11を通って順方向に流体が低流速で流入した場合、上述した従来の逆止弁と同様に以下の問題が生じる。第1に、初期状態の逆止弁900に第1流路11を通って流体が順方向に流入し始めたときから流体が第2流路21を通って逆止弁900から流出するまでのタイムラグが長くなる。第2に、弾性膜960が第1ハウジング10の第2内面14から離間したとき第1キャビティ31a内の高圧の流体が一気に流れる。このため、逆止弁900を輸液の流路上に設けた場合には流体がボーラス投与になってしまう。
【0048】
比較例の逆止弁900において、弾性膜960を薄くすれば、弾性膜960の曲げ剛性が低下するので、比較的低い上流側圧力で弾性膜960を第1ハウジング10の第2内面14から離間させることは可能である。これは、逆止弁900の開弁性を向上させ、タイムラグやボーラス投与の問題を解消しうる。しかしながら、流体が第2流路21を通って逆方向に逆止弁900に流入した場合、第2キャビティ31b内の流体の圧力(下流側圧力)によって曲げ剛性の低い弾性膜960が異常な変形をして、流体が第2キャビティ31bから第1キャビティ31aへ流れるのを許容してしまう可能性がある。これは、第2流路21から第1流路11への流体の流れを禁止するという逆止弁900の逆止性能の低下を招く。
【0049】
このため、比較例の逆止弁900は、逆止性能を確保したまま開弁性を向上させることは困難である。
【0050】
本実施形態1の逆止弁1の作用について説明する。
【0051】
初期状態の逆止弁1(図1参照)の第1流路11に流体が順方向41に低流速で流入した場合(図6参照)、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が徐々に上昇していく。第1キャビティ31a内の流体は、弁体50を第2ハウジング20に向かって押圧する。薄肉部64は、基準厚さ部62に比べて曲げ剛性が低い。このため、上流側圧力が上昇し始めて間もなく、薄肉部64が選択的に曲げ変形する。図6に示すように、弁体50の中心(または中心軸1a)に対して薄肉部64が配置された側(図6において右側)で、外周領域61が第1ハウジング10の第2内面14から離間して、弾性膜60と第1ハウジング10との間に隙間35が形成される。逆止弁1は、「開状態」となる。基準厚さ部62が配置された側(図6において左側)では、外周領域61は依然として第2内面14に接触している。流体は、第1キャビティ31aから当該隙間35を通って第2キャビティ31bに流入し、更に第2流路21を矢印42の向きに流れる。このようにして、流体は、第1流路11から第2流路21へ逆止弁1を流れることができる。
【0052】
本実施形態1では、薄肉部64の曲げ剛性が低いので、薄肉部64は、基準厚さ部62が曲げ変形しないような比較的低い上流側圧力でも曲げ変形する。逆止弁1を初期状態(図1参照)から開状態(図6参照)に変化させるために必要な上流側圧力が低い。逆止弁1は、比較例の逆止弁900に比べて開弁性が向上している。逆止弁1に順方向に流入する流体の流速が小さくても、上流側圧力が上昇し始めてすぐに、逆止弁1は開状態に変化する。このため、初期状態の逆止弁1に第1流路11を通って流体が順方向に流入し始めたときから流体が第2流路21を通って逆止弁1から流出するまでのタイムラグは短い。比較的低い上流側圧力で逆止弁1は初期状態から開状態に変化するから、上流側圧力は異常に上昇しない。このため、逆止弁1を輸液の流路上に設けた場合には流体がボーラス投与になることはない。
【0053】
なお、本実施形態1において、逆止弁1の第1流路11に流体が順方向に高流速で流入した場合には、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)は高くなる。このため、薄肉部64に加えて基準厚さ部62も曲げ変形する。例えば、上流側圧力が高くなるのにしたがって、最初に薄肉部64が配置された側で外周領域61が第1ハウジング10の第2内面14から離間し(図6参照)、続いて、薄肉部64の側で形成された小さな隙間35を起点として、外周領域61の残りの部分が第2内面14から順次離間する。このように、薄肉部64は、外周領域61が第2内面14から離間する際の起点を提供する。これは、逆止弁1の開弁性を向上するのに有利である。図示を省略するが、上流側圧力が高くなると、外周領域61が、全周にわたって第1ハウジング10の第2内面14から離間するとともに、外周領域61と第1ハウジング10の第2内面14との間の隙間が拡大する。弾性膜60の第2面60bが第2ハウジング20の凸曲面25に接触するほどに、弾性膜60が大きく曲げ変形するかも知れない。流体は、第1流路11から第2流路21へより大流量で逆止弁1を流れることができる。
【0054】
図7は、初期状態の逆止弁1に、何らかの理由で流体が第2流路21に逆方向45に流入した状態を示す。逆方向45の流体の流入によって第2キャビティ31b内の流体の圧力(下流側圧力)が上昇する。第2キャビティ31b内の流体は、弁体50を、第1ハウジング10に向かって押圧する。弾性膜60の第1面60aが第1ハウジング10の内面15に密着する。図7では、第1面60aの外周領域61が第1ハウジング10の第2内面14に接触しているが、これは一例に過ぎない。第2キャビティ31b内の流体の圧力が高くなると、第1突起51が固定部23から上方に離間し、且つ、弁体50が第1キャビティ31a側に突出するようにドーム状に変形するかも知れない。この場合、第1面60aが第1ハウジング10の第1内面13に接触してもよい。いずれにしても、弾性膜60の第1面60aは第1ハウジング10の内面15に環状に接触して、両者間に環状の液密なシールが形成される。逆止弁1は、弁体50が第2流路21と第1流路11との連通を遮断した「閉状態」となる。第2キャビティ31b内の流体は、弾性膜60と第1ハウジング10との間を通って第1キャビティ31aへ流れることはできない。このようにして、流体が第2流路21から第1流路11へ逆止弁1を流れるのが禁止される。
【0055】
上記の比較例の逆止弁900と同様に、本実施形態1でも、流体が第2流路21を通って逆方向45に逆止弁1に流入した場合、第2キャビティ31b内の流体の圧力(下流側圧力)によって、曲げ剛性が低い薄肉部64が異常な変形をする可能性はある。しかしながら、薄肉部64の面積や、配置、厚さなどを工夫することにより、下流側圧力による薄肉部64の異常な変形を抑え、これにより、逆方向の流体の流れを禁止するという逆止弁1の逆止性能を確保することは可能である。
【0056】
このため、本実施形態1の逆止弁1は、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら開弁性が向上している。
【0057】
以下に逆止弁1の使用方法を、逆止弁1を点滴などの輸液に用いる場合を例にして説明する。
【0058】
逆止弁1は、輸液を行う際に使用される輸液セットを構成してもよい。輸液セットの構成に制限はない。図示を省略するが、一例に係る輸液セットは、第1流路11を構成する第1管12(図1参照)に接続された柔軟な第1チューブと、第2流路21を構成する第2管22(図1参照)に接続された柔軟な第2チューブとを備える。第1チューブには、第1チューブ内の流路を開閉するクランプが設けられている。第2チューブの下流端には患者に穿刺される留置針が設けられている。
【0059】
クランプを閉じた状態で、第1チューブの上流端を、液体(例えば薬液)が貯留された容器(例えば輸液バッグ)に接続する。次いで、第1チューブに設けられたクランプを開いて、容器内の液体を輸液セット(即ち、第1チューブ、逆止弁1、第2チューブ、及び、留置針)に導入するプライミングを行う。その後、クランプを閉じ、逆止弁1への液体の流入を停止する。第1キャビティ31a内の液体の圧力(上流側圧力)と第2キャビティ31b内の液体の圧力(下流側圧力)とがバランスし、逆止弁1は初期状態(図1参照)にある。この初期状態では、上述したように、弁体50の外周領域61(図3A参照)が第1ハウジング10の第2内面14に環状に接触している。第1流路11と第2流路21との連通は、弁体50によって遮断されている。
【0060】
次いで、留置針を患者に穿刺する。そして、第1チューブに設けられたクランプを開き、輸液を開始する。図6に示されているように、液体が矢印41の向き(順方向)に第1流路11を通って第1キャビティ31aに流入する。第1キャビティ31a内の圧力(上流側圧力)が上昇する。第1キャビティ31a内の液体が弁体50を押圧する。弾性膜60の外周領域61が第1ハウジング10の第2内面14から離間し、逆止弁1は「開状態」となる。液体は、第1流路11から第2流路21へ逆止弁1を流れることができる。シリンジポンプを用いて液体を第1流路11に低流速で流入させてもよい。この場合、シリンジポンプの運転を開始してから、液体が逆止弁1を通過して実際に患者に流入するまでのタイムラグは短い。また、液体を、ボーラス投与になることなく、所望する低流速で患者に投与することができる。
【0061】
第1チューブに設けられたクランプを閉じる(またはシリンジポンプの運転を停止する)と、第1流路11へ流入する液体の流れが停止する。弾性膜60は弾性回復し、逆止弁1は初期状態に戻る。輸液は停止される。
【0062】
何らかの理由で液体が第2流路21に逆方向45に流入した場合(図7参照)、第2キャビティ31b内の液体の圧力(下流側圧力)が上昇する。上述したように、弾性膜60に薄肉部64が形成されているにもかかわらず、弾性膜60の第1面60aと第1ハウジング10の内面15との間に環状の液密なシールが形成される。逆止弁1は「閉状態」となる。液体が第2流路21から第1流路11へ逆止弁1を流れるのが禁止される。
【0063】
本実施形態1では、弁体50の弾性膜60に薄肉部64が設けられている。これは、簡単な構成で、弾性膜60の曲げ剛性を周方向に変化させるのに有利である。
【0064】
本実施形態1では、薄肉部64は、弾性膜60の第2面60bに設けられた凹部63により構成されている。これにより、弾性膜60の第1面60aを、凹凸がない平坦面で構成することができる。平坦な第1面60aは、第2キャビティ31b内の流体の圧力(下流側圧力)が上昇したときに(図7参照)、第1ハウジング10の内面15に環状に接触して内面15との間にシールを形成するのが容易である。これは、逆止弁1の逆止性能を確保するのに有利である。
【0065】
初期状態の逆止弁1(図1参照)に流体が順方向41に流入して第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が上昇したとき、上流側圧力は、弾性膜60の外周領域61(またはその内周端61a、図3A図3B参照)より内側の領域(以下「内側領域」という)に作用する。薄肉部64(凹部63)の一部は、弾性膜60のこの内側領域に形成されている。内側領域に、曲げ剛性が低い薄肉部64が形成されているので、比較的低い上流側圧力で薄肉部64を曲げ変形させることができる。したがって、内側領域に薄肉部64が形成されていること、即ち、内側領域において弾性膜60の厚さが周方向において変化していることは、逆止弁1の開弁性を向上させるのに有利である。
【0066】
薄肉部64は、内側領域から外周領域61の内周端61aを超えて弾性膜60の外周端にまで延びている。これは、逆止弁1の開弁性を更に向上させるのに有利である。
【0067】
本実施形態1では、薄肉部64と基準厚さ部62との境界に沿った段差部67は、弾性膜60の外周端上の2点を結ぶ。薄肉部64は、段差部67と、弾性膜62の外周端とで囲まれた領域に設けられている。このような薄肉部64は、以下の2点で有利である。第1に、薄肉部64は上流側圧力により容易に曲げ変形することができるので、逆止弁1の開弁性が向上する。第2に、厚さが周方向に変化する弾性膜60の構成を簡単化することができる。
【0068】
上記の例では、段差部67が、弾性膜60の外周端上の2点を結ぶ直線に沿っていたが、本発明はこれに限定されない。中心軸1aに沿って見たとき、段差部67は、弾性膜60の外周端上の2点を結ぶ任意の曲線、直線と曲線との組み合わせ、2以上の直線の組み合わせなど、任意の形状を有していてもよい。段差部67は、第1突起51(または中心軸1a)と交差していてもよい。例えば、薄肉部64が、第1突起51から半径方向に延びた2本の直線で囲まれた略扇形を有していてもよい。
【0069】
弾性膜60に設けられる薄肉部64(凹部63)の数は、1つに限定されず、2以上であってもよい。
【0070】
後述する実施形態2の弁体250のように、本実施形態1において、第2突起52を省略してもよい。この場合、弁体50の、凹部63とは反対側の面は単一の平坦面となる。弁体50の中央の突起の有無に基づいて、弁体50の上下面の判別が容易になる。これは、逆止弁1の製造において、誤って弁体50を上下を逆にして逆止弁1を組み立ててしまう可能性を低減するのに有利である。
【0071】
(実施の形態2)
図8は、初期状態にある本発明の実施形態2にかかる逆止弁2の断面図である。図9Aは、逆止弁2に使用される弁体250の第2ハウジング20側から見た斜視図である。図9Bは弁体250の上面図、図9Cは弁体250の下面図である。逆止弁2は、弁体250を除いて実施形態1の逆止弁1と同じである。以下に、実施形態1との相違点を中心に、本実施形態2の逆止弁2及び弁体250を説明する。
【0072】
弁体250の弾性膜60の第2面60bに、凹部(窪み)263が形成されている(図9A及び図9C参照)。中心軸1aに沿って見たとき、凹部263は、中心軸1aと同心の円に沿った略円弧形状(または略「C」字形状もしくは略まがたま形状)を有する。凹部263は、弾性膜60の薄肉部264を構成する。弾性膜60のうち薄肉部264以外の部分が基準厚さ部62である。弾性膜60の厚さ(中心軸1a方向の寸法)は、基準厚さ部62より、薄肉部264において薄い(図8参照)。凹部263の表面、及び、基準厚さ部62の表面は、いずれも水平方向に沿った平坦面である。薄肉部264と基準厚さ部62との厚さの違いに起因して、第2面60bに、薄肉部264と基準厚さ部62との境界に沿って段差部267(図9A及び図9C参照)が形成されている。
【0073】
実施形態1の薄肉部64と同様に、薄肉部264は、周方向に連続していない。このため、弁体250の弾性膜60の厚さは周方向に変化している。これは、弾性膜60の曲げ剛性を周方向に変化させる。薄肉部264は、基準厚さ部62に比べて曲げ剛性が低い。
【0074】
初期状態の本実施形態2の逆止弁2(図8参照)において、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が上昇し始めると、最初に、薄肉部264が選択的に曲げ変形する。弁体250の中心(または中心軸1a)に対して薄肉部264が配置された側(図8において右側)で、外周領域61が第1ハウジング10の第2内面14から離間する。上流側圧力が比較的低くても、逆止弁2は開状態に変化する。薄肉部264(凹部263)を備えた弁体250は、逆止弁2の開弁性を向上させることができる。
【0075】
上流側圧力が更に上昇すると、外周領域61が、全周にわたって第1ハウジング10の第2内面14から離間するとともに、外周領域61と第1ハウジング10の第2内面14との間の隙間が拡大する。
【0076】
薄肉部264(凹部263)を規定する段差部267は、閉曲線に沿っている。即ち、薄肉部264は、弾性膜60の外周端から離間している。弾性膜60の外周端の厚さは一定であり、且つ、厚い。これは、弾性膜60が薄肉部264を備えることによる逆止弁2の逆止性能の低下を抑えるのに有利である。更に、薄肉部264の面積や、配置、厚さなどを工夫することにより、逆止弁2の逆止性能の低下を抑えることが可能である。
【0077】
このため、本実施形態2の弁体250を備えた逆止弁2は、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら開弁性が向上している。
【0078】
薄肉部264は、外周領域61(または外周領域61の内周端61a)よりも内側の領域(内側領域)に配置されている(図9C参照)。初期状態において上流側圧力が作用する内側領域において、弾性膜60の厚さは周方向において変化している。これは、逆止弁2の開弁性を向上させるのに有利である。
【0079】
実施形態1の薄肉部64(図3B参照)と異なり、薄肉部264は、外周領域61にははみ出していない。このため、外周領域61の厚さは、薄肉部264より厚く、且つ、全周にわたって一定である。外周領域61の強度が、全周にわたって一定になり且つ向上する。これは、逆止弁2の逆止性能を向上させるのに有利である。
【0080】
弁体250は、実施形態1の弁体50が備えていた第2突起52(図1図2A参照)を備えない。弁体250の、凹部263とは反対側の面は単一の平坦面である(図8図9B参照)。弁体250の中央の突起の有無に基づいて、弁体250の上下面の判別が容易になる。これは、逆止弁2の製造において、誤って弁体250を上下を逆にして逆止弁2を組み立ててしまう可能性を低減するのに有利である。
【0081】
弁体250が、凹部263とは反対側の面に、実施形態1の弁体50が備えていた第2突起52(図1図2A参照)と同様の第2突起を備えていていてもよい。好ましくは、当該第2突起は、第1突起51と対称である。この場合、第2突起を第2ハウジング20の固定部23に嵌入させて逆止弁2を製造することができる。凹部263が形成された第2面60bは、第1ハウジング10に対向する。凹部263は外周領域61(または外周領域61の内周端61a)よりも内側に配置されているので(図9C参照)、第2面60bの外周領域61は、平坦面であり、第1ハウジング10の内面15に環状に接触することができる。逆止弁2の所望する逆止性能を確保することが可能である。弁体250が第1突起51に加えて第2突起を備えることは、逆止弁2の製造において、弁体250の上下面の判別を不要にする。これは、逆止弁2の製造を簡単化するのに有利である。
【0082】
薄肉部264(凹部263)は、閉曲線に沿った段差部267で囲まれていればよく、中心軸1aに沿って見た薄肉部264の形状は、上記の例に限定されず、任意である。段差部267が沿う閉曲線が、直線を含んでいてもよい。中心軸1aに沿って見た薄肉部264(凹部263)の形状は、例えば、楕円形、長方形、陸上競技のトラック形状、扇形等であってもよい。中心軸1aに沿って見た薄肉部264(凹部263)が、長軸と短軸とを有する場合、長軸が半径方向に直交していてもよく、あるいは、長軸が半径方向に沿っていてもよい。閉曲線が中心軸1a(または第1突起51)と交差していてもよく、あるいは、閉曲線が中心軸1a(または第1突起51)を取り囲んでいてもよい。
【0083】
弾性膜60に設けられる薄肉部264(凹部263)の数は、1つに限定されず、2以上であってもよい。
【0084】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。本実施形態2のうち実施形態1と共通する構成または要素については、実施形態1の説明が本実施形態2にも適用される。
【0085】
(実施の形態3)
図10は、初期状態にある本発明の実施形態3にかかる逆止弁3の断面図である。図11Aは、逆止弁3に使用される弁体350の第2ハウジング20側から見た斜視図である。図11Bは弁体350の上面図、図11Cは弁体350の下面図である。逆止弁3は、弁体350を除いて実施形態1の逆止弁1と同じである。以下に、実施形態1との相違点を中心に、本実施形態3の逆止弁3及び弁体350を説明する。
【0086】
弁体350の弾性膜60の第2面60bに、線状に延びた凹部である溝(凹条)363が形成されている(図11A図11C参照)。溝363は、弾性膜60の円形の外周端上の2点を結んでいる。制限されないが、本例では溝363は中心軸1a(または第1突起51)と交差しない一直線に沿っている。溝363は、弾性膜60の薄肉部364を構成する。弾性膜60のうち薄肉部364以外の部分が基準厚さ部62である。薄肉部364は、基準厚さ部62より薄い(図10参照)。
【0087】
実施形態1の薄肉部64と同様に、薄肉部364は、周方向に連続していない。このため、弁体350の弾性膜60の厚さは周方向に変化している。薄肉部364は、基準厚さ部62に比べて曲げ剛性が低い。このため、薄肉部364は、弾性膜60の厚さ方向に沿った断面のうち、特に薄肉部364(溝363)の長手方向に直交する断面(図10参照)において、弾性膜60の曲げ剛性を低下させる。
【0088】
初期状態の本実施形態3の逆止弁3(図10参照)において、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が上昇し始めると、最初に、薄肉部364が選択的に曲げ変形する。即ち、薄肉部364(溝363)に直交する半径方向に沿った断面(図10参照)において、弾性膜60のうち、薄肉部364に対して中心軸1aとは反対側(図10において右側)の部分が、第2ハウジング20側へ変位するように、薄肉部364が曲げ変形する。薄肉部364に対して中心軸1aとは反対側(図10において右側)で、外周領域61が第1ハウジング10の第2内面14から離間する。上流側圧力が比較的低くても、逆止弁3は開状態に変化する。薄肉部364(溝363)を備えた弁体350は、逆止弁3の開弁性を向上させることができる。
【0089】
上流側圧力が更に上昇すると、外周領域61が、全周にわたって第1ハウジング10の第2内面14から離間するとともに、外周領域61と第1ハウジング10の第2内面14との間の隙間が拡大する。
【0090】
薄肉部364は、弾性膜60の円形の外周端にまで達している。しかしながら、薄肉部364は、狭幅の溝363で構成されている。実施形態1の薄肉部64に比べて、薄肉部364は、逆止弁3の逆止性能を低下させにくい。むしろ、溝363の幅方向に対向する一対の側面は、溝363の長手方向に平行な半径方向に沿った断面での弾性膜60の曲げ剛性を向上させうる。更に、薄肉部364の幅や、配置、厚さなどを工夫することにより、弾性膜60が薄肉部364を備えることによる逆止弁3の逆止性能の低下を抑えることが可能である。
【0091】
このため、本実施形態3の弁体350を備えた逆止弁3は、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら開弁性が向上している。
【0092】
薄肉部364(溝363)の一部は、弾性膜60の外周領域61(または外周領域61の内周端61a)より内側の領域(内側領域)に形成されている。より詳細には、薄肉部364(溝363)は、当該内側領域を横切って延び、内側領域を分割している。初期状態において上流側圧力が作用する内側領域において、弾性膜60の厚さは周方向において変化している。これは、逆止弁3の開弁性を向上させるのに有利である。
【0093】
薄肉部364(溝363)は、弾性膜60の外周端上の2点を結んでいる。これは、逆止弁3の開弁性を向上させるのに有利である。但し、本発明はこれに限定されず、薄肉部364が弾性膜60の外周端にまで延びていなくてもよい。例えば、薄肉部364が、実施形態2の薄肉部264と同様に、外周領域61にはみ出さないように、外周領域61(または外周領域61の内周端61a)よりも内側に配置されていてもよい。この場合、外周領域61の厚さは、全周にわたって一定になる。このため、外周領域61の強度が、全周にわたって一定になる。これは、逆止弁3の逆止性能を向上させるのに有利である。
【0094】
上記の例では、薄肉部364(溝363)は直線に沿って延びていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、薄肉部364(溝363)が、任意の曲線(例えば円弧、正弦曲線)に沿っていてもよい。
【0095】
上記実施形態2の弁体250のように、本実施形態3において、第2突起52を省略してもよい。この場合、弁体350の、溝363とは反対側の面は単一の平坦面となる。弁体350の中央の突起の有無に基づいて、弁体350の上下面の判別が容易になる。これは、逆止弁3の製造において、誤って弁体350を上下を逆にして逆止弁3を組み立ててしまう可能性を低減するのに有利である。
【0096】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じである。本実施形態3のうち実施形態1と共通する構成または要素については、実施形態1の説明が本実施形態3にも適用される。
【0097】
(実施の形態4)
図12は、初期状態にある本発明の実施形態4にかかる逆止弁4の断面図である。図13Aは、逆止弁4に使用される弁体450の第2ハウジング20側から見た斜視図である。図13Bは弁体450の上面図、図13Cは弁体450の下面図である。逆止弁4は、弁体450を除いて実施形態1の逆止弁1と同じである。以下に、実施形態1との相違点を中心に、本実施形態4の逆止弁4及び弁体450を説明する。
【0098】
弁体450の弾性膜60の第2面60bに、線状に延びた凹部である2本の溝(凹条)463が形成されている(図13A及び図13C参照)。溝463は、第1突起51から半径方向に沿って延びている。制限されないが、本例では、溝463は、第1突起51と弾性膜60の円形の外周端とを結ぶ。中心軸1aに対して2本の溝463がなす角度は、制限されないが、本例では90°である。溝463は、弾性膜60の薄肉部464を構成する。弾性膜60のうち薄肉部464以外の部分が基準厚さ部62である。薄肉部464は、基準厚さ部62より薄い(図12参照)。2本の溝463は、弾性膜60(または基準厚さ部62)を、第1領域462a及び第2領域462bの2つの略扇形の領域に分割する。第1領域462aの中心角は第2領域462bの中心角より小さい。
【0099】
実施形態1の薄肉部64と同様に、薄肉部464は、周方向に連続していない。このため、弁体450の弾性膜60の厚さは周方向において変化している。薄肉部464は、基準厚さ部62に比べて曲げ剛性が低い。このため、薄肉部464は、弾性膜60の厚さ方向に沿った断面のうち、特に薄肉部464(溝463)の長手方向に直交する断面において、弾性膜60の曲げ剛性を低下させる。また、薄肉部464は、基準厚さ部62に比べて伸び変形しやすい。
【0100】
初期状態の本実施形態4の逆止弁4(図12参照)において、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が上昇し始めると、最初に、小さな中心角を有する第1領域462aが選択的に曲げ変形する。具体的には、第1領域462aを規定する弧の周方向の中央部分と第1突起51(または中心軸1a)とを結ぶ直線に沿った部分が第2ハウジング20側へ変位するように、第1領域462aが曲げ変形する。このとき、薄肉部464は、溝463に垂直な断面において曲げ変形するとともに、周方向に弾性的に伸び変形する。第1領域462aにおいて外周領域61が第1ハウジング10の第2内面14から離間する。上流側圧力が比較的低くても、逆止弁4は開状態に変化する。薄肉部464(溝463)を備えた弁体450は、逆止弁4の開弁性を向上させることができる。
【0101】
上流側圧力が更に上昇すると、外周領域61が、全周にわたって第1ハウジング10の第2内面14から離間するとともに、外周領域61と第1ハウジング10の第2内面14との間の隙間が拡大する。
【0102】
弾性膜60には、弾性膜60の円形の外周端にまで達する2本の薄肉部464が形成されている。しかしながら、薄肉部464は、狭幅の溝463で構成されている。実施形態1の薄肉部64に比べて、薄肉部464は、逆止弁4の逆止性能を低下させにくい。更に、薄肉部464の幅や、配置(例えば中心角)、厚さなどを工夫することにより、弾性膜60が薄肉部464を備えることによる逆止弁4の逆止性能の低下を抑えることが可能である。
【0103】
このため、本実施形態4の弁体450を備えた逆止弁4は、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら開弁性が向上している。
【0104】
上記の例では、中心軸1aに対して2本の薄肉部464(溝463)がなす角度(即ち、第1領域462aの中心角)は90°であったが、本発明はこれに限定されず、任意に変更しうる。弾性膜60に設けられる薄肉部464(溝463)の数は、2本に限定されず、3本以上であってもよい。3本以上の薄肉部464(溝463)によって、弾性膜60(または基準厚さ部62)が3以上の略扇形の領域に分割されていてもよい。弾性膜60に設けられた複数の略扇形の領域のうちの2以上が同じ中心角を有していてもよい。
【0105】
薄肉部464(溝463)の一部は、弾性膜60の外周領域61(または外周領域61の内周端61a)より内側の領域(内側領域)に形成されている。より詳細には、薄肉部464(溝463)は、当該内側領域を周方向に分割している。初期状態において上流側圧力が作用する内側領域において、弾性膜60の厚さは周方向において変化している。これは、逆止弁4の開弁性を向上させるのに有利である。
【0106】
薄肉部464(溝463)は、弾性膜60の外周端にまで延びている。これは、逆止弁4の開弁性を向上させるのに有利である。但し、本発明はこれに限定されず、薄肉部464が弾性膜60の外周端にまで延びていなくてもよい。例えば、薄肉部464が、実施形態2の薄肉部264と同様に、外周領域61にはみ出さないように、外周領域61(または外周領域61の内周端61a)よりも内側に配置されていてもよい。この場合、外周領域61の厚さは、全周にわたって一定になる。このため、外周領域61の強度が、全周にわたって一定になる。これは、逆止弁4の逆止性能を向上させるのに有利である。
【0107】
上記実施形態2の弁体250のように、本実施形態4において、第2突起52を省略してもよい。この場合、弁体450の、溝463とは反対側の面は単一の平坦面となる。弁体450の中央の突起の有無に基づいて、弁体450の上下面の判別が容易になる。これは、逆止弁4の製造において、誤って弁体450を上下を逆にして逆止弁4を組み立ててしまう可能性を低減するのに有利である。
【0108】
本実施形態4は、上記を除いて実施形態1と同じである。本実施形態4のうち実施形態1と共通する構成または要素については、実施形態1の説明が本実施形態4にも適用される。
【0109】
(実施の形態5)
図14は、初期状態にある本発明の実施形態5にかかる逆止弁5の断面図である。図15Aは、逆止弁5に使用される弁体550の第2ハウジング20側から見た斜視図である。図15Bは弁体550の上面図、図15Cは弁体550の下面図である。逆止弁5は、弁体550を除いて実施形態1の逆止弁1と同じである。以下に、実施形態1との相違点を中心に、本実施形態5の逆止弁5及び弁体550を説明する。
【0110】
弁体550の弾性膜60の第2面60bに、線状に延びた凸部であるリブ(凸条)565が形成されている(図15A及び図15C参照)。リブ565は、弾性膜60の円形の外周端上の2点を結んでいる。制限されないが、本例ではリブ565は中心軸1aと交差しない一直線に沿っている。リブ565は、弾性膜60の厚肉部566を構成する。弾性膜60のうち厚肉部566以外の部分が基準厚さ部62である。厚肉部566は、基準厚さ部62より厚い(図14参照)。
【0111】
実施形態3の薄肉部364(図11A図11C参照)と同様に、厚肉部566は、周方向に連続していない。このため、弁体550の弾性膜60の厚さは周方向において変化している。厚肉部566は、基準厚さ部62に比べて曲げ剛性が高い。より詳細には、厚肉部566は、弾性膜60の厚さ方向に沿った断面のうち、特に厚肉部566(リブ565)に沿った断面において、弾性膜60の曲げ剛性を増大させる。よって、弾性膜60の曲げ剛性は、厚肉部566(リブ565)の長手方向に平行な断面において高く、厚肉部566(リブ565)の長手方向に直交する断面(図14参照)において低い。
【0112】
初期状態の本実施形態5の逆止弁5(図14参照)において、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が上昇し始めると、最初に、基準厚さ部62が選択的に曲げ変形する。即ち、厚肉部566(リブ565)の長手方向に直交する断面(図14参照)において、弾性膜60のうち、厚肉部566からより遠い部分(図14において弾性膜60の左側端)が第2ハウジング20側へ変位するように、基準厚さ部62が曲げ変形する。厚肉部566からより遠い側(図14において弾性膜60の左側端)で、外周領域61が第1ハウジング10の第2内面14から離間する。基準厚さ部62を薄くすれば、上流側圧力が比較的低くても、逆止弁5は開状態に変化する。厚肉部566(リブ565)を備えた弁体550は、逆止弁5の開弁性を向上させることができる。
【0113】
上流側圧力が更に上昇すると、外周領域61が、全周にわたって第1ハウジング10の第2内面14から離間するとともに、外周領域61と第1ハウジング10の第2内面14との間の隙間が拡大する。
【0114】
本実施形態5では、基準厚さ部62を薄くすればするほど、逆止弁5の開弁性は向上する。但し、基準厚さ部62を薄くすると、第2キャビティ31b内の流体の圧力(下流側圧力)によって、基準厚さ部62が異常な変形をして、逆止弁5の逆止性能が低下する可能性がある。しかしながら、厚肉部566(リブ565)の幅や、厚さ、配置などを工夫することにより、基準厚さ部62を薄くすることによる逆止弁5の逆止性能の低下を抑えることが可能である。
【0115】
このため、本実施形態5の弁体550を備えた逆止弁5は、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら開弁性が向上している。
【0116】
厚肉部566(リブ565)の一部は、弾性膜60の外周領域61(または外周領域61の内周端61a)より内側の領域(内側領域)に形成されている。より詳細には、厚肉部566(リブ565)は、当該内側領域を横切って延びている。初期状態において上流側圧力が作用する内側領域において、弾性膜60の厚さは周方向において変化している。内側領域において基準厚さ部62を薄くして開弁性を向上させたことによる逆止性能の低下を、内側領域に形成された厚肉部566が抑えることができる。したがって、内側領域において弾性膜60の厚さが周方向において変化するように厚肉部566(リブ565)を設けることは、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら逆止弁5の開弁性を向上させるのに有利である。
【0117】
厚肉部566(リブ565)は、弾性膜60の外周端上の2点を結んでいる。これは、逆止弁5の逆止性能を確保するのに有利である。但し、本発明はこれに限定されず、厚肉部566が弾性膜60の外周端にまで延びていなくてもよい。例えば、厚肉部566が、実施形態2の薄肉部264と同様に、外周領域61にはみ出さないように、外周領域61(または外周領域61の内周端61a)よりも内側に配置されていてもよい。
【0118】
上記の例では、厚肉部566(リブ565)は直線に沿って延びていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、厚肉部566(リブ565)が、任意の曲線(例えば円弧、正弦曲線)に沿っていてもよい。
【0119】
上記実施形態2の弁体250のように、本実施形態5において、第2突起52を省略してもよい。この場合、弁体550の、リブ565とは反対側の面は単一の平坦面となる。弁体550の中央の突起の有無に基づいて、弁体550の上下面の判別が容易になる。これは、逆止弁5の製造において、誤って弁体550を上下を逆にして逆止弁5を組み立ててしまう可能性を低減するのに有利である。
【0120】
本実施形態5は、上記を除いて実施形態1と同じである。本実施形態5のうち実施形態1と共通する構成または要素については、実施形態1の説明が本実施形態5にも適用される。
【0121】
(実施の形態6)
図16は、初期状態にある本発明の実施形態6にかかる逆止弁6の断面図である。図17Aは、逆止弁6に使用される弁体650の第2ハウジング20側から見た斜視図である。図17Bは弁体650の上面図、図17Cは弁体650の下面図である。逆止弁6は、弁体650を除いて実施形態1の逆止弁1と同じである。以下に、実施形態1との相違点を中心に、本実施形態6の逆止弁6及び弁体650を説明する。
【0122】
弁体650の弾性膜60の第2面60bに、線状に延びた凸部である2本のリブ(凸条)665が形成されている(図17A及び図17C参照)。リブ665は、第1突起51から半径方向に沿って延びている。制限されないが、本例では、リブ665は、第1突起51と弾性膜60の円形の外周端とを結ぶ。中心軸1aに対して2本のリブ665がなす角度は、制限されないが、本例では90°である。リブ665は、弾性膜60の厚肉部666を構成する。弾性膜60のうち厚肉部666以外の部分が基準厚さ部62である。厚肉部666は、基準厚さ部62より厚い(図16参照)。2本のリブ665は、弾性膜60(または基準厚さ部62)を、第1領域662a及び第2領域662bの2つの略扇形の領域に分割する。第1領域662aの中心角は第2領域662bの中心角より小さい。
【0123】
実施形態4の薄肉部464(図13A図13C参照)と同様に、厚肉部666は、周方向に連続していない。このため、弁体650の弾性膜60の厚さは周方向において変化している。厚肉部666は、基準厚さ部62に比べて曲げ剛性が高い。より詳細には、厚肉部666は、弾性膜60の厚さ方向に沿った断面のうち、特に厚肉部666(リブ665)に沿った断面(図16参照)において、弾性膜60の曲げ剛性を増大させる。一方、弾性膜60の曲げ剛性は、厚肉部666(リブ665)の長手方向に直交する断面において低い。
【0124】
初期状態の本実施形態6の逆止弁(図16参照)において、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が上昇し始めると、最初に、大きな中心角を有する第2領域662bが選択的に曲げ変形する。具体的には、第2領域662bを規定する弧の周方向の中央部分が第2ハウジング20側へ変位するように、第2領域662bが曲げ変形する。第2領域662aにおいて外周領域61が第1ハウジング10の第2内面14から離間する。基準厚さ部62を薄くすれば、上流側圧力が比較的低くても、逆止弁6は開状態に変化する。厚肉部666(リブ665)を備えた弁体650は、逆止弁6の開弁性を向上させることができる。
【0125】
上流側圧力が更に上昇すると、外周領域61が、全周にわたって第1ハウジング10の第2内面14から離間するとともに、外周領域61と第1ハウジング10の第2内面14との間の隙間が拡大する。
【0126】
本実施形態6では、基準厚さ部62を薄くすればするほど、逆止弁6の開弁性は向上する。但し、基準厚さ部62を薄くすると、第2キャビティ31b内の流体の圧力(下流側圧力)によって、基準厚さ部62が異常な変形をして、逆止弁6の逆止性能が低下する可能性がある。しかしながら、厚肉部666(リブ665)の幅や、厚さ、配置などを工夫することにより、基準厚さ部62を薄くすることによる逆止弁6の逆止性能の低下を抑えることが可能である。
【0127】
このため、本実施形態6の弁体650を備えた逆止弁6は、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら開弁性が向上している。
【0128】
上記の例では、中心軸1aに対して2本の厚肉部666(リブ665)がなす角度(即ち、第1領域662aの中心角)は90°であったが、本発明はこれに限定されず、任意に変更しうる。弾性膜60に設けられる厚肉部666(リブ665)の数は、2本に限定されず、3本以上であってもよい。3本以上の厚肉部666(リブ665)によって、弾性膜60(または基準厚さ部62)が3以上の略扇形の領域に分割されていてもよい。弾性膜60に設けられた複数の略扇形の領域のうちの2以上が同じ中心角を有していてもよい。
【0129】
厚肉部666(リブ665)の一部は、弾性膜60の外周領域61(または外周領域61の内周端61a)より内側の領域(内側領域)に形成されている。より詳細には、厚肉部666(リブ665)は、当該内側領域を周方向に分割している。初期状態において上流側圧力が作用する内側領域において、弾性膜60の厚さは周方向において変化している。内側領域において基準厚さ部62を薄くして開弁性を向上させたことによる逆止性能の低下を、内側領域に形成された厚肉部666が抑えることができる。したがって、内側領域において弾性膜60の厚さが周方向において変化するように厚肉部666(リブ665)を設けることは、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら逆止弁6の開弁性を向上させるのに有利である。
【0130】
厚肉部666(リブ665)は、弾性膜60の外周端にまで延びている。これは、逆止弁の逆止性能を確保するのに有利である。但し、本発明はこれに限定されず、厚肉部666が弾性膜60の外周端にまで延びていなくてもよい。例えば、厚肉部666が、実施形態2の薄肉部264(図9A図9C参照)と同様に、外周領域61にはみ出さないように、外周領域61(または外周領域61の内周端61a)よりも内側の領域に配置されていてもよい。
【0131】
上記実施形態2の弁体250のように、本実施形態6において、第2突起52を省略してもよい。この場合、弁体650の、リブ665とは反対側の面は単一の平坦面となる。弁体650の中央の突起の有無に基づいて、弁体650の上下面の判別が容易になる。これは、逆止弁6の製造において、誤って弁体650を上下を逆にして逆止弁6を組み立ててしまう可能性を低減するのに有利である。
【0132】
本実施形態6は、上記を除いて実施形態1と同じである。本実施形態6のうち実施形態1と共通する構成または要素については、実施形態1の説明が本実施形態6にも適用される。
【0133】
上記の実施形態1~6は例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態1~6に限定されず、適宜変更することができる。
【0134】
例えば、実施形態1,2において、弾性膜60に、凹部(63,263)に代えて、凸部を形成してもよい。この場合、薄肉部(64,264)は、基準厚さ部62より厚い厚肉部に置き換えられる。厚肉部は、基準厚さ部62に比べて曲げ剛性が高い。基準厚さ部62を薄くすれば、逆止弁の開弁性を向上させることができる。初期状態の逆止弁において、第1キャビティ31a内の流体の圧力(上流側圧力)が上昇し始めると、最初に、基準厚さ部62が選択的に曲げ変形する。厚肉部は、基準厚さ部62を薄くして開弁性を向上させたことによる逆止性能の低下を抑えることができる。したがって、この場合も、上記の実施形態1,2と同様に、逆止性能を実用上問題のない程度に維持しながら開弁性が向上した逆止弁を提供することができる。
【0135】
上記の実施形態1~6では、弾性膜60に、基準厚さ部62と、基準厚さ部62より薄い薄肉部(64,264,364,464)及び基準厚さ部62より厚い厚肉部(565,665)のいずれか一方とが、設けられていた。本発明は、これに限定されず、弾性膜60に、基準厚さ部62、薄肉部、及び、厚肉部が設けられていてもよい。
【0136】
上記の実施形態1~6では、初期状態において弁体の弾性膜60が水平方向に沿って延びていたが、本発明はこれに限定されない。本発明の逆止弁は、例えば特許文献2に記載されているような、半径方向外側に向かって第2ハウジング20側に傾斜した弾性膜を備えた、いわゆるアンブレラ型の弁体を備えていてもよい。弁体の構成に応じて、キャビティ31を規定する内面(例えば、第1ハウジング10の内面15、第2ハウジング20の凸曲面25)の形状は適宜変更されうる。
【0137】
上記の実施形態1~6では、逆止弁を輸液回路に用いる場合を説明したが、本発明の逆止弁の用途はこれに限定されない。流体の逆流を防止する必要がある任意の流路に、本発明の逆止弁を適用することができる。逆止弁を流れる流体は、一般に液体である。液体の種類は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の逆止弁の利用分野は、制限はないが、医療分野、例えば輸液回路や血液透析回路などにおいて好ましく利用することができる。もちろん、医療以外の、例えば化学や食品等の逆止弁が必要とされる分野にも本発明の逆止弁を広範囲に利用することができる。
【符号の説明】
【0139】
1,2,3,4,5,6 逆止弁
10 第1ハウジング
11 第1流路
13 第1ハウジングの第1内面
14 第1ハウジングの第2内面
15 第1ハウジングの内面
20 第2ハウジング
21 第2流路
23 固定部
30 ハウジング
31 キャビティ
35 弾性膜と第1ハウジングとの間の隙間
50,250,350,450,550,650 弁体
51 突起(第1突起)
60 弾性膜
60a 弾性膜の第1面
60b 弾性膜の第2面
61 外周領域
62 基準厚さ部
63,263 凹部
363,463 溝(凹部)
64,264,364,464 薄肉部
67,267 段差部
565,665 リブ(凸部)
566,666 厚肉部
図1
図2A
図2B
図3
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