(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137017
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】信号伝送装置
(51)【国際特許分類】
H04L 25/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H04L25/02 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048356
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 雄二
【テーマコード(参考)】
5K029
【Fターム(参考)】
5K029AA11
5K029CC01
5K029DD04
5K029JJ03
(57)【要約】
【課題】絶縁通信において送信強度又は受信感度の適正化を図る。
【解決手段】信号伝送装置は互いに絶縁された第1回路(10)及び第2回路(20)を備える。第1回路は第1トランスミッタ(TX1)及び第2レシーバ(RX2)を備え、第2回路は第2トランスミッタ(TX2)及び第1レシーバ(RX1)を備える。校正モードにおいて、第1トランスミッタから矩形波を持つテスト信号を第2回路に送信するテスト送信処理と、第1レシーバによるテスト信号の受信結果に応じて第2トランスミッタから矩形波を持つ返信信号を第1回路に送信するテスト返信処理とを実行する。テスト送信処理及びテスト返信処理を通じて、第1回路にて第1トランスミッタの適正送信強度を設定する又は第2回路にて第1レシーバの適正受信感度を設定する。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに絶縁された第1回路及び第2回路を備えた信号伝送装置であって、前記第1回路は第1トランスミッタ及び第2レシーバを備え、前記第2回路は第2トランスミッタ及び第1レシーバを備え、
前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバは、前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバ間に設けられた第1絶縁素子を介して前記第1回路から前記第2回路に対し信号伝送を行うよう構成され、
前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバは、前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバ間に設けられた第2絶縁素子を介して前記第2回路から前記第1回路に対し信号伝送を行うよう構成され、
前記第1回路及び前記第2回路は、通常モード又は校正モードにて動作し、
前記校正モードにおいて、前記第1トランスミッタから矩形波を持つテスト信号を前記第2回路に送信するテスト送信処理と、前記第1レシーバによる前記テスト信号の受信結果に応じて前記第2トランスミッタから矩形波を持つ返信信号を前記第1回路に送信するテスト返信処理とを実行し、前記テスト送信処理及び前記テスト返信処理を通じて前記第1回路にて前記第1トランスミッタの適正送信強度を設定し、
前記校正モード後の前記通常モードにおいて、前記第1トランスミッタは前記第1トランスミッタへの入力デジタル信号を前記適正送信強度にて前記第2回路に送信し、前記第1レシーバは前記入力デジタル信号を受信する
、信号伝送装置。
【請求項2】
前記第1回路は、前記第1トランスミッタの送信強度を制御するよう構成された送信強度制御回路を有する第1校正回路を備え、
前記第2回路は、第2校正回路を備え、
前記校正モードにおいて、前記第1校正回路は、前記送信強度制御回路を用いて前記第1トランスミッタの送信強度を複数の候補強度間で切り替えながら前記候補強度ごとに前記テスト送信処理を実行し、前記第2校正回路は、前記候補強度ごとに前記テスト信号の前記第1レシーバによる受信可否に応じて前記テスト返信処理の実行制御を行い、前記第1校正回路は、前記第2レシーバによる前記返信信号の受信状態に基づき前記適正送信強度を設定する
、請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記校正モードにおいて、前記テスト信号が前記第1レシーバにて受信されたとき、前記テスト信号に対応する波形を有する受信矩形波信号が前記第1レシーバから出力され、前記第2校正回路は、前記候補強度ごとに前記第1レシーバからの前記受信矩形波信号の出力有無に基づき前記テスト返信処理の実行有無を制御する
、請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
前記複数の候補強度は第1~第m候補強度を含み、第iテスト設定状態にて前記第1トランスミッタの送信強度は第i候補強度であり、mは2以上の整数を表し、iはm以下の自然数を表し、
前記第iテスト設定状態にて前記テスト送信処理が実行されたときにおいて、前記第1レシーバから前記受信矩形波信号が出力されたならば、前記第2校正回路は前記テスト返信処理にて前記受信矩形波信号又は所定矩形波信号を前記返信信号として前記第2トランスミッタから前記第1回路に送信させ、前記第1レシーバから前記受信矩形波信号が出力されなかったならば、前記第2校正回路は前記テスト返信処理を非実行とし、
前記第1校正回路は、第1~第mテスト設定状態の内、2以上のテスト設定状態における前記第2レシーバでの前記返信信号の受信有無に基づき、前記適正送信強度を設定する
、請求項3に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
前記第1校正回路は、前記複数の候補強度の内、前記第1レシーバにて前記テスト信号を受信可能な最小の候補強度を前記適正送信強度に設定する
、請求項2~4の何れかに記載の信号伝送装置。
【請求項6】
前記校正モードにおいて、前記テスト送信処理及び前記テスト返信処理を通じて前記第1回路にて前記第1トランスミッタの前記適正送信強度を設定し且つ前記第2回路にて前記第1レシーバの適正受信感度を設定し、
前記校正モード後の前記通常モードにおいて、前記第1トランスミッタは前記適正送信強度にて前記入力デジタル信号を前記第2回路に送信し、前記第1レシーバは前記適正受信感度にて前記入力デジタル信号を受信する
、請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
前記第1回路は、前記第1トランスミッタの送信強度を制御するよう構成された送信強度制御回路を有する第1校正回路を備え、
前記第2回路は、前記第1レシーバの受信感度を制御するよう構成された受信感度制御回路を有する第2校正回路を備え、
前記校正モードにおいて前記第1校正回路及び前記第2校正回路により第1校正処理及び第2校正処理が実行され、
前記第1校正処理において、前記第2校正回路は前記受信感度制御回路を用いて前記第1レシーバの受信感度を所定受信感度に固定し、
前記第1校正処理において、前記第1校正回路は、前記送信強度制御回路を用いて前記第1トランスミッタの送信強度を複数の候補強度間で切り替えながら前記候補強度ごとに前記テスト送信処理を実行し、前記第2校正回路は、前記候補強度ごとに前記テスト信号の前記第1レシーバによる受信可否に応じて前記テスト返信処理の実行制御を行い、前記第1校正回路は、前記第2レシーバによる前記返信信号の受信状態に基づき暫定送信強度を特定し、
前記第2校正処理において、前記第1校正回路は前記送信強度制御回路を用いて前記第1トランスミッタの送信強度を所定送信強度に固定し、
前記第2校正処理において、前記第1校正回路は、前記1トランスミッタを用いて前記テスト送信処理を実行し、前記第2校正回路は、前記受信感度制御回路を用いて前記第1レシーバの受信感度を複数の候補感度間で切り替えながら前記候補感度ごとに前記テスト信号の前記第1レシーバによる受信可否を判定し、判定結果に応じて前記テスト返信処理の実行制御を行い且つ暫定受信感度を特定し、
前記第1校正処理の後、前記第1校正回路は、前記暫定送信強度及び前記所定送信強度の内、高い方を前記適正送信強度に設定し、
前記第2校正処理の後、前記第2校正回路は、前記暫定受信感度及び前記所定受信感度の内、高い方を前記適正受信感度に設定する
、請求項6に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
前記第1校正処理において、前記第1校正回路は、前記複数の候補強度の内、前記第1レシーバにて前記テスト信号を受信可能な最小の候補強度を前記暫定送信強度として特定し、
前記第2校正処理において、前記第2校正回路は、前記複数の候補感度の内、前記第1レシーバにて前記テスト信号を受信可能な最小の候補感度を前記暫定受信感度として特定する
、請求項7に記載の信号伝送装置。
【請求項9】
互いに絶縁された第1回路及び第2回路を備えた信号伝送装置であって、前記第1回路は第1トランスミッタ及び第2レシーバを備え、前記第2回路は第2トランスミッタ及び第1レシーバを備え、
前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバは、前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバ間に設けられた第1絶縁素子を介して前記第1回路から前記第2回路に対し信号伝送を行うよう構成され、
前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバは、前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバ間に設けられた第2絶縁素子を介して前記第2回路から前記第1回路に対し信号伝送を行うよう構成され、
前記第1回路及び前記第2回路は、通常モード又は校正モードにて動作し、
前記校正モードにおいて、前記第1トランスミッタから矩形波を持つテスト信号を前記第2回路に送信するテスト送信処理と、前記第1レシーバによる前記テスト信号の受信結果に応じて前記第2トランスミッタから矩形波を持つ返信信号を前記第1回路に送信するテスト返信処理とを実行し、前記テスト送信処理及び前記テスト返信処理を通じて前記第2回路にて前記第1レシーバの適正受信感度を設定し、
前記校正モード後の前記通常モードにおいて、前記第1トランスミッタは前記第1トランスミッタへの入力デジタル信号を前記第2回路に送信し、前記第1レシーバは前記適正受信感度にて前記入力デジタル信号を受信する
、信号伝送装置。
【請求項10】
前記第1回路は、第1校正回路を備え、
前記第2回路は、前記第1レシーバの受信感度を制御するよう構成された受信感度制御回路を有する第2校正回路を備え、
前記校正モードにおいて、前記第1校正回路は、前記第1トランスミッタを用いて前記テスト送信処理を実行し、前記第2校正回路は、前記受信感度制御回路を用いて前記第1レシーバの受信感度を複数の候補感度間で切り替えながら前記候補感度ごとに前記テスト信号の前記第1レシーバによる受信可否を判定し、判定結果に応じて前記テスト返信処理の実行制御を行い且つ前記適正受信感度を設定する
、請求項9に記載の信号伝送装置。
【請求項11】
前記校正モードにおいて、前記テスト信号が前記第1レシーバにて受信されたとき、前記テスト信号に対応する波形を有する受信矩形波信号が前記第1レシーバから出力され、前記第2校正回路は、前記候補感度ごとに前記第1レシーバからの前記受信矩形波信号の出力有無に基づき前記テスト信号の前記第1レシーバによる受信可否を判定する
、請求項10に記載の信号伝送装置。
【請求項12】
前記複数の候補感度は第1~第n候補感度を含み、第iテスト設定状態にて前記第1レシーバの受信感度は第i候補感度であり、nは2以上の整数を表し、iはn以下の自然数を表し、
前記第iテスト設定状態にて前記テスト送信処理が実行されたときにおいて、前記第1レシーバから前記受信矩形波信号が出力されたならば、前記第2校正回路は前記テスト返信処理にて前記受信矩形波信号又は所定矩形波信号を前記返信信号として前記第2トランスミッタから前記第1回路に送信させ、前記第1レシーバから前記受信矩形波信号が出力されなかったならば、前記第2校正回路は前記テスト返信処理を非実行とし、
前記第2校正回路は、第1~第nテスト設定状態の内、2以上のテスト設定状態における前記第1レシーバでの前記テスト信号の受信可否に基づき、前記適正受信感度を設定する
、請求項11に記載の信号伝送装置。
【請求項13】
前記第2校正回路は、前記複数の候補感度の内、前記第1レシーバにて前記テスト信号を受信可能な最小の候補感度を前記適正受信感度に設定する
、請求項10~12の何れかに記載の信号伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁素子を用いて第1回路及び第2回路間で絶縁通信を行う構成が実用化されている。この際、トランスミッタ及びレシーバを用いて送信側から受信側に伝送する。トランスミッタにより絶縁素子が駆動されることで信号が送信される。例えば絶縁素子としてパルストランスが用いられる場合、送信側でのデジタル信号にレベル変化が生じるたびにパルストランスを駆動する(パルストランスに電流を供給する)方法がある。絶縁素子としてコンデンサが用いられる場合も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁通信においてトランスミッタの送信強度又はレシーバの受信感度の適正化は重要である。
【0005】
本開示は、トランスミッタの送信強度又はレシーバの受信感度の適正化に寄与する信号伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る信号伝送装置は、互いに絶縁された第1回路及び第2回路を備えた信号伝送装置であって、前記第1回路は第1トランスミッタ及び第2レシーバを備え、前記第2回路は第2トランスミッタ及び第1レシーバを備え、前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバは、前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバ間に設けられた第1絶縁素子を介して前記第1回路から前記第2回路に対し信号伝送を行うよう構成され、前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバは、前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバ間に設けられた第2絶縁素子を介して前記第2回路から前記第1回路に対し信号伝送を行うよう構成され、前記第1回路及び前記第2回路は、通常モード又は校正モードにて動作し、前記校正モードにおいて、前記第1トランスミッタから矩形波を持つテスト信号を前記第2回路に送信するテスト送信処理と、前記第1レシーバによる前記テスト信号の受信結果に応じて前記第2トランスミッタから矩形波を持つ返信信号を前記第1回路に送信するテスト返信処理とを実行し、前記テスト送信処理及び前記テスト返信処理を通じて前記第1回路にて前記第1トランスミッタの適正送信強度を設定し、前記校正モード後の前記通常モードにおいて、前記第1トランスミッタは前記第1トランスミッタへの入力デジタル信号を前記適正送信強度にて前記第2回路に送信し、前記第1レシーバは前記入力デジタル信号を受信する。
【0007】
本開示の他の一側面に係る信号伝送装置は、互いに絶縁された第1回路及び第2回路を備えた信号伝送装置であって、前記第1回路は第1トランスミッタ及び第2レシーバを備え、前記第2回路は第2トランスミッタ及び第1レシーバを備え、前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバは、前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバ間に設けられた第1絶縁素子を介して前記第1回路から前記第2回路に対し信号伝送を行うよう構成され、前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバは、前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバ間に設けられた第2絶縁素子を介して前記第2回路から前記第1回路に対し信号伝送を行うよう構成され、前記第1回路及び前記第2回路は、通常モード又は校正モードにて動作し、前記校正モードにおいて、前記第1トランスミッタから矩形波を持つテスト信号を前記第2回路に送信するテスト送信処理と、前記第1レシーバによる前記テスト信号の受信結果に応じて前記第2トランスミッタから矩形波を持つ返信信号を前記第1回路に送信するテスト返信処理とを実行し、前記テスト送信処理及び前記テスト返信処理を通じて前記第2回路にて前記第1レシーバの適正受信感度を設定し、前記校正モード後の前記通常モードにおいて、前記第1トランスミッタは前記第1トランスミッタへの入力デジタル信号を前記第2回路に送信し、前記第1レシーバは前記適正受信感度にて前記入力デジタル信号を受信する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、トランスミッタの送信強度又はレシーバの受信感度の適正化に寄与する信号伝送装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る信号伝送装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係り、通常モード状態における信号伝送装置の概略構成図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係り、通常モード状態における信号伝送装置内の複数の信号の波形図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係り、通常モード状態における信号伝送装置内の複数の信号の波形図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係り、校正モード状態における信号伝送装置の概略構成図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係り、信号伝送装置の一部構成図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係り、信号伝送装置内のトランスミッタ及びレシーバの動作に関わるタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係り、信号伝送装置内の他のトランスミッタ及び他のレシーバの動作に関わるタイミングチャートである。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、信号伝送装置の一部構成図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、送信強度校正動作のフローチャートである。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に属する第1実施例に係り、トランスミッタの送信強度と幾つかの信号との関係の例を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、信号伝送装置の一部構成図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、受信感度校正動作のフローチャートである。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に属する第2実施例に係り、レシーバの受信感度と幾つかの信号との関係の例を示す図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態に属する第3実施例に係り、信号伝送装置の一部構成図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態に属する第3実施例に係り、トランスミッタの送信強度及びレシーバの受信感度を校正する動作のフローチャートである。
【
図17】
図17は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、信号伝送装置の構成図である。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態に属する第5実施例に係り、信号伝送装置内の幾つかの信号の波形図である。
【
図19】
図19は、本開示の実施形態に属する第6実施例に係り、信号伝送装置の構成図である。
【
図20】
図20は、本開示の実施形態に属する第8実施例に係り、半導体装置の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“SEL_IN1”によって参照される入力セレクタは(
図1参照)、入力セレクタSEL_IN1と表記されることもあるし、セレクタSEL_IN1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0011】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。レベルとは電位のレベルを指す。任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをライズエッジと称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをライズエッジタイミングと称する。任意の注目した信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをフォールエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをフォールエッジタイミングと称する。
【0012】
回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0013】
図1に本実施形態に係る信号伝送装置1の概略構成を示す。信号伝送装置1は半導体集積回路を有する半導体装置であって良い。信号伝送装置1は回路10及び20と絶縁素子31及び32とを備える。回路10及び20は電気的に互いに絶縁される。本明細書において、絶縁とは直流の信号及び電力の伝達が遮断されていることを意味する。回路10及び20の内、任意の一方が一次側回路として機能し、他方が二次側回路として機能する。以下では、説明の具体化のため、回路10が一次側回路であって且つ回路20が二次側回路であると考える。
【0014】
一次側回路10は、トランスミッタTX1、レシーバRX2、校正回路CB1、モード設定回路MS1、入力セレクタSEL_IN1及び出力セレクタSEL_OUT2を備える。二次側回路20は、トランスミッタTX2、レシーバRX1、校正回路CB2、モード設定回路MS2、入力セレクタSEL_IN2及び出力セレクタSEL_OUT1を備える。
【0015】
一次側回路10におけるグランドは“GND1”にて参照され、二次側回路20におけるグランドは“GND2”にて参照される。一次側回路10における任意の電圧又は信号は、グランドGND1を基準とする電圧又は信号であって、グランドGND1から見た電位を有する。二次側回路20における任意の電圧又は信号は、グランドGND2を基準とする電圧又は信号であって、グランドGND2から見た電位を有する。回路10及び20の夫々において、グランドは0V(ゼロボルト)の基準電位を有する基準導電部を指す又は基準電位そのものを指す。但し、グランドGND1とグランドGND2は互いに絶縁されているため、互いに異なる電位を有し得る。基準導電部は金属等の導体にて形成される。一次側回路10内の各回路は電源電圧VDD1に基づいて駆動する。電源電圧VDD1はグランドGND1よりも高い電位を有する正の直流電圧である。二次側回路20内の各回路は電源電圧VDD2に基づいて駆動する。電源電圧VDD2はグランドGND2よりも高い電位を有する正の直流電圧である。
【0016】
入力セレクタSEL_IN1は入力ノードND1b及びND1cと出力ノードND1aを備え、モード設定回路MS1の制御の下、入力ノードND1b及びND1cの何れか一方を出力ノードND1aに接続する。出力セレクタSEL_OUT2は入力ノードND2dと出力ノードND2e及びND2fを備え、モード設定回路MS1の制御の下、入力ノードND2dを出力ノードND2e及びND2fの何れか一方に接続する。ノードND1bは一次側回路10に内蔵又は外部接続された回路(
図1では不図示)に接続される。ノードND1aはトランスミッタTX1に接続される。ノードND2eは一次側回路10に内蔵又は外部接続された回路(
図1では不図示)に接続される。ノードND2dはレシーバRX2に接続される。ノードND1c及びND2fは校正回路CB1に接続される。
【0017】
入力セレクタSEL_IN2は入力ノードND2b及びND2cと出力ノードND2aを備え、モード設定回路MS2の制御の下、入力ノードND2b及びND2cの何れか一方を出力ノードND2aに接続する。出力セレクタSEL_OUT1は入力ノードND1dと出力ノードND1e及びND1fを備え、モード設定回路MS2の制御の下、入力ノードND1dを出力ノードND1e及びND1fの何れか一方に接続する。ノードND2bは二次側回路20に内蔵又は外部接続された回路(
図1では不図示)に接続される。ノードND2aはトランスミッタTX2に接続される。ノードND1eは二次側回路20に内蔵又は外部接続された回路(
図1では不図示)に接続される。ノードND1dはレシーバRX1に接続される。ノードND2c及びND1fは校正回路CB2に接続される。
【0018】
出力ノードND1aにおける信号を記号“IN1”にて参照する。信号IN1はトランスミッタTX1への入力信号であり、以下、入力信号IN1又は信号IN1と称される。レシーバRX1の出力信号を記号“OUT1”にて参照する。レシーバRX1の出力信号OUT1は入力ノードND1dに加わる。出力ノードND2aにおける信号を記号“IN2”にて参照する。信号IN2はトランスミッタTX2への入力信号であり、以下、入力信号IN2又は信号IN2と称される。レシーバRX2の出力信号を記号“OUT2”にて参照する。レシーバRX2の出力信号OUT2は入力ノードND2dに加わる。
【0019】
モード設定回路MS1及びMS2は一次側回路10及び二次側回路20の動作モードを通常モード又は校正モードに設定する。詳細には、モード設定回路MS1により一次側回路10の動作モードが通常モード又は校正モードに設定され、モード設定回路MS2により二次側回路20の動作モードが通常モード又は校正モードに設定される。モード設定回路MS1及びMS2を包含する単一のモード設定回路が信号伝送装置1に設けられる、と解しても良い。
【0020】
モード設定に関わる微小な時間ずれを無視すれば、モード設定回路MS1により一次側回路10の動作モードが通常モードに設定されるとき、モード設定回路MS2により二次側回路20の動作モードも通常モードに設定され、モード設定回路MS1により一次側回路10の動作モードが校正モードに設定されるとき、モード設定回路MS2により二次側回路20の動作モードも校正モードに設定される。尚、モード設定回路MS1により設定及び制御される動作モードは、一次側回路10内の回路の内、モード設定回路MS1以外の回路の動作モードであると解して良い。同様に、モード設定回路MS2により設定及び制御される動作モードは、二次側回路20内の回路の内、モード設定回路MS2以外の回路の動作モードであると解して良い。各モード設定回路による動作モードの設定方法については後述される。
【0021】
以下、一次側回路10及び二次側回路20の動作モードが通常モードに設定されている状態を通常モード状態と称し、一次側回路10及び二次側回路20の動作モードが校正モードに設定されている状態を校正モード状態と称する。
【0022】
図2に通常モード状態における各セレクタの状態を示す。通常モード状態において、モード設定回路MS1は、入力ノードND1bが出力ノードND1aに接続され且つ入力ノードND2dが出力ノードND2eに接続されるよう、セレクタSEL_IN1及びSEL_OUT2を制御する。通常モード状態において、モード設定回路MS2は、入力ノードND2bが出力ノードND2aに接続され且つ入力ノードND1dが出力ノードND1eに接続されるよう、セレクタSEL_IN2及びSEL_OUT1を制御する。
【0023】
通常モード状態では、一次側回路10に内蔵又は外部接続される回路(
図2では不図示)から出力される信号Sn1が、ノードND1b及びND1aを通じ、入力信号IN1としてトランスミッタTX1に供給される。通常モード状態において、トランスミッタTX1及びレシーバRX1により絶縁通信形式にて信号Sn1が一次側回路10から二次側回路20に伝送される。トランスミッタTX1は信号Sn1を絶縁素子31を用いて二次側回路20に送信する。レシーバRX1はトランスミッタTX1から信号Sn1を受信する。通常モード状態において、レシーバRX1は信号Sn1の受信結果を示す信号OUT1を生成し、レシーバRX1の出力信号OUT1を、ノードND1d及びND1eを通じ、二次側回路20に内蔵又は外部接続される回路(
図2では不図示)に対し供給する。
【0024】
通常モード状態では、二次側回路20に内蔵又は外部接続される回路(
図2では不図示)から出力される信号Sn2が、ノードND2b及びND2aを通じ、入力信号IN2としてトランスミッタTX2に供給される。通常モード状態において、トランスミッタTX2及びレシーバRX2により絶縁通信形式にて信号Sn2が二次側回路20から一次側回路10に伝送される。トランスミッタTX2は信号Sn2を絶縁素子32を用いて一次側回路10に送信する。レシーバRX2はトランスミッタTX2から信号Sn2を受信する。通常モード状態において、レシーバRX2は信号Sn2の受信結果を示す信号OUT2を生成し、レシーバRX2の出力信号OUT2を、ノードND2d及びND2eを通じ、一次側回路10に内蔵又は外部接続される回路(
図2では不図示)に対し供給する。
【0025】
信号Sn1及びSn2は夫々にシリアルのデジタル信号である。従って、信号Sn1及びSn2は夫々にハイレベル又はローレベルの電位を持つ。入力信号IN1及びIN2並びに出力信号OUT1及びOUT2も夫々にシリアルのデジタル信号であり、ハイレベル又はローレベルの電位を有する。任意の信号においてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。信号Sn1、IN1及びOUT2におけるローレベルはグランドGND1の電位を有し、信号Sn1、IN1及びOUT2におけるハイレベルは電源電圧VDD1の電位を有する(但しグランドGND1より高いが電源電圧VDD1より低い電位を有していても良い)。信号Sn2、IN2及びOUT1におけるローレベルはグランドGND2の電位を有し、信号Sn2、IN2及びOUT1におけるハイレベルは電源電圧VDD2の電位を有する(但しグランドGND2より高いが電源電圧VDD2より低い電位を有していても良い)。
【0026】
図3に通常モード状態における信号Sn1、IN1及びOUT1の波形を示す。通常モード状態において、信号Sn1はトランスミッタTX1への入力信号IN1として機能する。更に、通常モード状態において、入力信号IN1の波形と出力信号OUT1の波形は実質的に同じであり、送受信に関わる伝達遅延等を無視すれば、入力信号IN1と出力信号OUT1とは互いに等価である。即ち、通常モード状態において、入力信号IN1がハイレベルであれば出力信号OUT1もハイレベルとなり、入力信号IN1がローレベルであれば出力信号OUT1もローレベルとなる。但し、変形として信号IN1の論理と信号OUT1の論理とが逆になるように信号伝送装置1を形成しても良い。
【0027】
図4に通常モード状態における信号Sn2、IN2及びOUT2の波形を示す。通常モード状態において、信号Sn2はトランスミッタTX2への入力信号IN2として機能する。更に、通常モード状態において、入力信号IN2の波形と出力信号OUT2の波形は実質的に同じであり、送受信に関わる伝達遅延等を無視すれば、入力信号IN2と出力信号OUT2とは互いに等価である。即ち、通常モード状態において、入力信号IN2がハイレベルであれば出力信号OUT2もハイレベルとなり、入力信号IN2がローレベルであれば出力信号OUT2もローレベルとなる。但し、変形として信号IN2の論理と信号OUT2の論理とが逆になるように信号伝送装置1を形成しても良い。
【0028】
図5に校正モード状態における各セレクタの状態を示す。校正モード状態において、モード設定回路MS1は、入力ノードND1cが出力ノードND1aに接続され且つ入力ノードND2dが出力ノードND2fに接続されるよう、入力セレクタSEL_IN1及び出力セレクタSEL_OUT2を制御する。校正モード状態において、モード設定回路MS2は、入力ノードND2cが出力ノードND2aに接続され且つ入力ノードND1dが出力ノードND1fに接続されるよう、入力セレクタSEL_IN2及び出力セレクタSEL_OUT1を制御する。
【0029】
校正モード状態において、一次側回路10の動作モードが校正モードであることを示す情報がモード設定回路MS1から校正回路CB1に伝達される。モード設定回路MS1は校正回路CB1の一部であると解しても良い。校正モード状態において、校正回路CB1は入力ノードND1cに対して信号Sc1を出力し、故に信号Sc1がトランスミッタTX1への入力信号IN1となる。また校正モード状態において、レシーバRX2の出力信号OUT2がノードND2d及びND2fを通じて校正回路CB1に入力される。更に校正モード状態において、校正回路CB1はトランスミッタTX1及びレシーバRX2の内、少なくとも一方の動作を制御することができるが、これについては後に詳説される。
【0030】
校正モード状態において、二次側回路20の動作モードが校正モードであることを示す情報がモード設定回路MS2から校正回路CB2に伝達される。モード設定回路MS2は校正回路CB2の一部であると解しても良い。校正モード状態において、校正回路CB2は入力ノードND2cに対して信号Sc2を出力し、故に信号Sc2がトランスミッタTX2への入力信号IN2となる。また校正モード状態において、レシーバRX1の出力信号OUT1がノードND1d及びND1fを通じて校正回路CB2に入力される。更に校正モード状態において、校正回路CB2はトランスミッタTX2及びレシーバRX1の内、少なくとも一方の動作を制御することができるが、これについては後に詳説される。
【0031】
絶縁素子31は、一次側回路10及び二次側回路20間の絶縁を確保したまま入力信号IN1を一次側回路10から二次側回路20に伝送するための素子である。絶縁素子31は送信側コイル及び受信側コイルを有するパルストランスであって良い。この場合、絶縁素子31における送信側コイルはトランスミッタTX1に接続され且つ絶縁素子31における受信側コイルはレシーバRX1に接続される。この際、1以上のパルストランスにて絶縁素子31を形成することができる。或いは1以上のコンデンサにて絶縁素子31を形成しても良い。
【0032】
絶縁素子32は、二次側回路20及び一次側回路10間の絶縁を確保したまま入力信号IN2を二次側回路20から一次側回路10に伝送するための素子である。絶縁素子32は送信側コイル及び受信側コイルを有するパルストランスであって良い。この場合、絶縁素子32における送信側コイルはトランスミッタTX2に接続され且つ絶縁素子32における受信側コイルはレシーバRX2に接続される。この際、1以上のパルストランスにて絶縁素子32を形成することができる。或いは1以上のコンデンサにて絶縁素子32を形成しても良い。
【0033】
以下では、
図6に示す如く、絶縁素子31が2つのパルストランス31_R及び31_Fにて構成されると共に絶縁素子32が2つのパルストランス32_R及び32_Fにて構成されるものとする。
図6は信号伝送装置1の一部構成図である。パルストランス31_Rは送信側コイル31_Rt及び受信側コイル31_Rrを備える。パルストランス31_Fは送信側コイル31_Ft及び受信側コイル31_Frを備える。パルストランス32_Rは送信側コイル32_Rt及び受信側コイル32_Rrを備える。パルストランス32_Fは送信側コイル32_Ft及び受信側コイル32_Frを備える。各パルストランスにおいて送信側コイルと受信側コイルは互いに磁気結合される。
【0034】
図7も参照しつつトランスミッタTX1及びレシーバRX1の構成及び動作を説明する。
図7はトランスミッタTX1及びレシーバRX1の動作に関わるタイミングチャートである。トランスミッタTX1はエッジ検出回路ED1並びにドライバRdrv1及びFdrv1を備える。レシーバRX1は検出回路Rdet1及びFdet1並びにコンパレータCMP1を有する。
【0035】
エッジ検出回路ED1に対して入力信号IN1が入力される。エッジ検出回路ED1は、入力信号IN1におけるライズエッジ及びフォールエッジを個別に検出し、ライズエッジの検出結果を示す信号ED_R1とフォールエッジの検出結果を示す信号ED_F1とを生成する。
【0036】
信号ED_R1には入力信号IN1のライズエッジタイミングを示す情報が含まれており、エッジ検出回路ED1は当該情報を示すライズ検出パルスPLS
R1を信号ED_R1中に含める(
図7参照)。具体的には、エッジ検出回路ED1は信号ED_R1のレベルを原則としてローレベルに設定し、入力信号IN1のライズエッジの検出を契機に所定の微小時間だけ信号ED_R1のレベルをハイレベルに設定する。ハイレベルの信号ED_R1がライズ検出パルスPLS
R1に相当する。
【0037】
ドライバRdrv1に対しエッジ検出回路ED1からの信号ED_R1が入力される。ドライバRdrv1は、信号ED_R1におけるライズ検出パルスPLSR1に応答してパルストランス31_Rをパルス駆動する。ドライバRdrv1は、エッジ検出回路ED1からライズ検出パルスPLSR1を受けるごとに、ライズ検出パルスPLSR1を受けたタイミングにてパルストランス31_Rをパルス駆動する。送信側コイル31_Rtの第1端及び第2端はドライバRdrv1に接続される。送信側コイル31_Rtの第2端はグランドGND1に接続される。パルストランス31_Rのパルス駆動とは、送信側コイル31_Rtの第1端から第2端に向けてパルス状の駆動電流を供給することを指す。
【0038】
パルストランス31_Rのパルス駆動により送信側コイル31_Rtにパルス状の駆動電流が供給されると、当該駆動電流に応じた信号SR1が受信側コイル31_Rrに誘起される。受信側コイル31_Rrの第1端及び第2端は検出回路Rdet1に接続される。受信側コイル31_Rrの第2端はグランドGND2に接続される。信号SR1は受信側コイル31_Rrの第1端及び第2端間に発生する信号である。信号SR1は受信側コイル31_Rrの第1端及び第2端間に発生した電圧の大きさを持つ。信号SR1は受信側コイル31_Rrの第2端の電位から見た受信側コイル31_Rrの第1端の電位を持つ、と考えても良い。検出回路Rdet1は信号SR1の大きさに比例した電圧値を持つ電圧VP1を生成する。信号SR1の大きさ(絶対値)が増大するにつれて、電圧VP1が高くなる。電圧VP1は例えば信号SR1の絶対値の平滑化信号であって良い。
【0039】
信号ED_F1には入力信号IN1のフォールエッジタイミングを示す情報が含まれており、エッジ検出回路ED1は当該情報を示すフォール検出パルスPLS
F1を信号ED_F1中に含める(
図7参照)。具体的には、エッジ検出回路ED1は信号ED_F1のレベルを原則としてローレベルに設定し、入力信号IN1のフォールエッジの検出を契機に所定の微小時間だけ信号ED_F1のレベルをハイレベルに設定する。ハイレベルの信号ED_F1がフォール検出パルスPLS
F1に相当する。
【0040】
ドライバFdrv1に対しエッジ検出回路ED1からの信号ED_F1が入力される。ドライバFdrv1は、信号ED_F1におけるフォール検出パルスPLSF1に応答してパルストランス31_Fをパルス駆動する。ドライバFdrv1は、エッジ検出回路ED1からフォール検出パルスPLSF1を受けるごとに、フォール検出パルスPLSF1を受けたタイミングにてパルストランス31_Fをパルス駆動する。送信側コイル31_Ftの第1端及び第2端はドライバFdrv1に接続される。送信側コイル31_Ftの第2端はグランドGND1に接続される。パルストランス31_Fのパルス駆動とは、送信側コイル31_Ftの第1端から第2端に向けてパルス状の駆動電流を供給することを指す。
【0041】
パルストランス31_Fのパルス駆動により送信側コイル31_Ftにパルス状の駆動電流が供給されると、当該駆動電流に応じた信号SF1が受信側コイル31_Frに誘起される。受信側コイル31_Frの第1端及び第2端は検出回路Fdet1に接続される。受信側コイル31_Frの第2端はグランドGND2に接続される。信号SF1は受信側コイル31_Frの第1端及び第2端間に発生する信号である。信号SF1は受信側コイル31_Frの第1端及び第2端間に発生した電圧の大きさを持つ。信号SF1は受信側コイル31_Frの第2端の電位から見た受信側コイル31_Frの第1端の電位を持つ、と考えても良い。検出回路Fdet1は信号SF1の大きさに比例した電圧値を持つ電圧VM1を生成する。信号SF1の大きさ(絶対値)が増大するにつれて、電圧VM1が高くなる。電圧VM1は例えば信号SF1の絶対値の平滑化信号であって良い。
【0042】
コンパレータCMP1の非反転入力端子、反転入力端子に対し、夫々、検出回路Rdet1からの電圧VP1、検出回路Fdet1からの電圧VM1が入力される。コンパレータCMP1は電圧VP1及びVM1の比較結果に応じた信号を出力信号OUT1として出力する。
【0043】
コンパレータCMP1での比較においてオフセットが付与される。具体的には、信号OUT1がローレベルを有する状態において、コンパレータCMP1は第1不等式“VP1>VM1+VOFFSET1”の成否を判断する。コンパレータCMP1は、信号OUT1がローレベルを有する状態において、第1不等式が不成立ならば信号OUT1をローレベルに維持し、第1不等式が成立すると信号OUT1にライズエッジを発生させる。信号OUT1がハイレベルを有する状態において、コンパレータCMP1は第2不等式“VM1>VP1+VOFFSET1”の成否を判断する。コンパレータCMP1は、信号OUT1がハイレベルを有する状態において、第2不等式が不成立ならば信号OUT1をハイレベルに維持し、第2不等式が成立すると信号OUT1にフォールエッジを発生させる。電圧VOFFSET1はコンパレータCMP1のオフセット電圧に相当し、正の電圧値を有する。尚、信号OUT1の初期レベルはローレベルである(但し、ハイレベルであっても良い)。
【0044】
上述の構成により、
図7に示す如く、入力信号IN1にライズエッジが生じるたびに出力信号OUT1にもライズエッジが生じ、入力信号IN1にフォールエッジが生じるたびに出力信号OUT1にもフォールエッジが生じる。入力信号IN1のライズエッジタイミングと出力信号OUT1のライズエッジタイミングは実質的に同じとなり、入力信号IN1のフォールエッジタイミングと出力信号OUT1のフォールエッジタイミングは実質的に同じとなる。詳細には、トランスミッタTX1及びレシーバRX1の応答特性に応じた遅延時間だけ、出力信号OUT1のライズ、フォールエッジタイミングが入力信号IN1のライズ、フォールエッジタイミングより遅れるが、ここでは当該遅延時間が微小であるとして無視する。
【0045】
図8も参照しつつトランスミッタTX2及びレシーバRX2の構成及び動作を説明する。
図8はトランスミッタTX2及びレシーバRX2の動作に関わるタイミングチャートである。トランスミッタTX2及びレシーバRX2の構成及び動作はトランスミッタTX1及びレシーバRX1のそれらと同様である。即ち、トランスミッタTX2はエッジ検出回路ED2並びにドライバRdrv2及びFdrv2を備える。レシーバRX2は検出回路Rdet2及びFdet2並びにコンパレータCMP2を有する。
【0046】
エッジ検出回路ED2に対して入力信号IN2が入力される。エッジ検出回路ED2は、入力信号IN2におけるライズエッジ及びフォールエッジを個別に検出し、ライズエッジの検出結果を示す信号ED_R2とフォールエッジの検出結果を示す信号ED_F2とを生成する。
【0047】
信号ED_R2には入力信号IN2のライズエッジタイミングを示す情報が含まれており、エッジ検出回路ED2は当該情報を示すライズ検出パルスPLS
R2を信号ED_R2中に含める(
図8参照)。具体的には、エッジ検出回路ED2は信号ED_R2のレベルを原則としてローレベルに設定し、入力信号IN2のライズエッジの検出を契機に所定の微小時間だけ信号ED_R2のレベルをハイレベルに設定する。ハイレベルの信号ED_R2がライズ検出パルスPLS
R2に相当する。
【0048】
ドライバRdrv2に対しエッジ検出回路ED2からの信号ED_R2が入力される。ドライバRdrv2は、信号ED_R2におけるライズ検出パルスPLSR2に応答してパルストランス32_Rをパルス駆動する。ドライバRdrv2は、エッジ検出回路ED2からライズ検出パルスPLSR2を受けるごとに、ライズ検出パルスPLSR2を受けたタイミングにてパルストランス32_Rをパルス駆動する。送信側コイル32_Rtの第1端及び第2端はドライバRdrv2に接続される。送信側コイル32_Rtの第2端はグランドGND2に接続される。パルストランス32_Rのパルス駆動とは、送信側コイル32_Rtの第1端から第2端に向けてパルス状の駆動電流を供給することを指す。
【0049】
パルストランス32_Rのパルス駆動により送信側コイル32_Rtにパルス状の駆動電流が供給されると、当該駆動電流に応じた信号SR2が受信側コイル32_Rrに誘起される。受信側コイル32_Rrの第1端及び第2端は検出回路Rdet2に接続される。受信側コイル32_Rrの第2端はグランドGND1に接続される。信号SR2は受信側コイル32_Rrの第1端及び第2端間に発生する信号である。信号SR2は受信側コイル32_Rrの第1端及び第2端間に発生した電圧の大きさを持つ。信号SR2は受信側コイル32_Rrの第2端の電位から見た受信側コイル32_Rrの第1端の電位を持つ、と考えても良い。検出回路Rdet2は信号SR2の大きさに比例した電圧値を持つ電圧VP2を生成する。信号SR2の大きさ(絶対値)が増大するにつれて、電圧VP2が高くなる。電圧VP2は例えば信号SR2の絶対値の平滑化信号であって良い。
【0050】
信号ED_F2には入力信号IN2のフォールエッジタイミングを示す情報が含まれており、エッジ検出回路ED2は当該情報を示すフォール検出パルスPLS
F2を信号ED_F2中に含める(
図8参照)。具体的には、エッジ検出回路ED2は信号ED_F2のレベルを原則としてローレベルに設定し、入力信号IN2のフォールエッジの検出を契機に所定の微小時間だけ信号ED_F2のレベルをハイレベルに設定する。ハイレベルの信号ED_F2がフォール検出パルスPLS
F2に相当する。
【0051】
ドライバFdrv2に対しエッジ検出回路ED2からの信号ED_F2が入力される。ドライバFdrv2は、信号ED_F2におけるフォール検出パルスPLSF2に応答してパルストランス32_Fをパルス駆動する。ドライバFdrv2は、エッジ検出回路ED2からフォール検出パルスPLSF2を受けるごとに、フォール検出パルスPLSF2を受けたタイミングにてパルストランス32_Fをパルス駆動する。送信側コイル32_Ftの第1端及び第2端はドライバFdrv2に接続される。送信側コイル32_Ftの第2端はグランドGND2に接続される。パルストランス32_Fのパルス駆動とは、送信側コイル32_Ftの第1端から第2端に向けてパルス状の駆動電流を供給することを指す。
【0052】
パルストランス32_Fのパルス駆動により送信側コイル32_Ftにパルス状の駆動電流が供給されると、当該駆動電流に応じた信号SF2が受信側コイル32_Frに誘起される。受信側コイル32_Frの第1端及び第2端は検出回路Fdet2に接続される。受信側コイル32_Frの第2端はグランドGND1に接続される。信号SF2は受信側コイル32_Frの第1端及び第2端間に発生する信号である。信号SF2は受信側コイル32_Frの第1端及び第2端間に発生した電圧の大きさを持つ。信号SF2は受信側コイル32_Frの第2端の電位から見た受信側コイル32_Frの第1端の電位を持つ、と考えても良い。検出回路Fdet2は信号SF2の大きさに比例した電圧値を持つ電圧VM2を生成する。信号SF2の大きさ(絶対値)が増大するにつれて、電圧VM2が高くなる。電圧VM2は例えば信号SF2の絶対値の平滑化信号であって良い。
【0053】
コンパレータCMP2の非反転入力端子、反転入力端子に対し、夫々、検出回路Rdet2からの電圧VP2、検出回路Fdet2からの電圧VM2が入力される。コンパレータCMP2は電圧VP2及びVM2の比較結果に応じた信号を出力信号OUT2として出力する。
【0054】
コンパレータCMP2での比較においてオフセットが付与される。具体的には、信号OUT2がローレベルを有する状態において、コンパレータCMP2は第3不等式“VP2>VM2+VOFFSET2”の成否を判断する。コンパレータCMP2は、信号OUT2がローレベルを有する状態において、第3不等式が不成立ならば信号OUT2をローレベルに維持し、第3不等式が成立すると信号OUT2にライズエッジを発生させる。信号OUT2がハイレベルを有する状態において、コンパレータCMP2は第4不等式“VM2>VP2+VOFFSET2”の成否を判断する。コンパレータCMP2は、信号OUT2がハイレベルを有する状態において、第4不等式が不成立ならば信号OUT2をハイレベルに維持し、第4不等式が成立すると信号OUT2にフォールエッジを発生させる。電圧VOFFSET2はコンパレータCMP2のオフセット電圧に相当し、正の電圧値を有する。尚、信号OUT2の初期レベルはローレベルである(但し、ハイレベルであっても良い)。
【0055】
上述の構成により、
図8に示す如く、入力信号IN2にライズエッジが生じるたびに出力信号OUT2にもライズエッジが生じ、入力信号IN2にフォールエッジが生じるたびに出力信号OUT2にもフォールエッジが生じる。入力信号IN2のライズエッジタイミングと出力信号OUT2のライズエッジタイミングは実質的に同じとなり、入力信号IN2のフォールエッジタイミングと出力信号OUT2のフォールエッジタイミングは実質的に同じとなる。詳細には、トランスミッタTX2及びレシーバRX2の応答特性に応じた遅延時間だけ、出力信号OUT2のライズ、フォールエッジタイミングが入力信号IN2のライズ、フォールエッジタイミングより遅れるが、ここでは当該遅延時間が微小であるとして無視する。
【0056】
尚、
図7では、トランスミッタTX1の送信強度及びレシーバRX1の受信感度が適正である又は十分に高いことが想定されている。仮に、それらが過小である場合には、入力信号IN1のレベル変化に応答したレベル変化が出力信号OUT1に現れない。レシーバRX1の受信感度はオフセット電圧V
OFFSET1によって定まる。オフセット電圧V
OFFSET1が低いほどレシーバRX1の受信感度は高くなる。同様に、
図8では、トランスミッタTX2の送信強度及びレシーバRX2の受信感度が適正である又は十分に高いことが想定されている。仮に、それらが過小である場合には、入力信号IN2のレベル変化に応答したレベル変化が出力信号OUT2に現れない。レシーバRX2の受信感度はオフセット電圧V
OFFSET2によって定まる。オフセット電圧V
OFFSET2が低いほどレシーバRX2の受信感度は高くなる。
【0057】
信号伝送装置1の製品ごとのばらつきを考慮し、余裕を持って必要な信号の送受信が可能となるよう、送信強度及び受信感度を大きめに設計しておく方法も検討される。但し、過大な送信強度は信号伝送装置1の消費電力及び発生ノイズ量を過度に増大させる。また受信感度を高めすぎるとノイズ耐性(コモンモードノイズに対する耐性)が弱くなる。本実施形態に係る信号伝送装置1では送信強度及び受信感度を適正化に寄与する校正動作が可能とされる。
【0058】
以下、複数の実施例の中で、信号伝送装置1に関わる幾つかの具体的な構成例、動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0059】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。第1実施例ではトランスミッタTX1の送信強度の校正方法を説明する。校正モード状態において、校正回路CB1及びCB2はトランスミッタTX1における適正な送信強度を探索する送信強度校正動作OP_Aを行う。送信強度校正動作OP_Aにて探索される適正な送信強度を適正送信強度OPTTX1と称する。尚、送信強度校正動作OP_Aは、校正回路CB1及びCB2と、トランスミッタTX1及びTX2並びにレシーバRX1及びRX2との協働により実現される。後述の他の校正動作も同様である。
【0060】
図9に、信号伝送装置1の内、送信強度校正動作OP_Aの動作に関与する構成を示す。校正回路CB1には送信強度制御回路11、テスト信号生成回路12及び受信判定回路13が設けられる。校正回路CB2には受信判定回路21及び信号監視回路22が設けられる。
【0061】
トランスミッタTX1の送信強度が変更可能となるようにトランスミッタTX1が構成されており、トランスミッタTX1の送信強度が送信強度制御回路11により調整、制御及び設定される。
【0062】
パルストランス31_Rをパルス駆動することで一次側回路10から二次側回路20に送信される(換言すればトランスミッタTX1からレシーバRX1に送信される)信号をライズエッジ信号と称する。ライズエッジ信号は入力信号IN1にてライズエッジが発生したことを示す。パルストランス31_Fをパルス駆動することで一次側回路10から二次側回路20に送信される(換言すればトランスミッタTX1からレシーバRX1に送信される)信号をフォールエッジ信号と称する。フォールエッジ信号は入力信号IN1にてフォールエッジが発生したことを示す。トランスミッタTX1の送信強度はドライバRdrv1の送信強度とドライバFdrv1の送信強度を含む。ドライバRdrv1の送信強度とはドライバRdrv1によるライズエッジ信号の送信強度であり、ドライバFdrv1の送信強度とはドライバFdrv1によるフォールエッジ信号の送信強度である。
【0063】
ドライバRdrv1はパルストランス31_Rのパルス駆動において、送信側コイル31_Rtにパルス状の駆動電流を供給する。この際、ドライバRdrv1は送信側コイル31_Rtに流れる電流の値を0から急峻に駆動電流の値にまで高める。ドライバRdrv1による駆動電流の値を、駆動電流値I_Rdrv1と称する。パルストランス31_Rのパルス駆動により受信側コイル31_Rrで発生する誘起電圧の大きさは、駆動電流値I_Rdrv1に概略比例する。即ち、ドライバRdrv1の送信強度(即ちライズエッジ信号の送信強度)は、駆動電流値I_Rdrv1の増大につれて増大し、駆動電流値I_Rdrv1の減少につれて減少する。
【0064】
ドライバFdrv1はパルストランス31_Fのパルス駆動において、送信側コイル31_Ftにパルス状の駆動電流を供給する。この際、ドライバFdrv1は送信側コイル31_Ftに流れる電流の値を0から急峻に駆動電流の値にまで高める。ドライバFdrv1による駆動電流の値を、駆動電流値I_Fdrv1と称する。パルストランス31_Fのパルス駆動により受信側コイル31_Frで発生する誘起電圧の大きさは、駆動電流値I_Fdrv1に概略比例する。即ち、ドライバFdrv1の送信強度(即ちフォールエッジ信号の送信強度)は、駆動電流値I_Fdrv1の増大につれて増大し、駆動電流値I_Fdrv1の減少につれて減少する。
【0065】
駆動電流値I_Rdrv1及びI_Fdrv1が変更可能となるようにドライバRdrv1及びFdrv1が構成される。送信強度制御回路11により駆動電流値I_Rdrv1及びI_Fdrv1が制御されることを通じてトランスミッタTX1の送信強度が制御される。
【0066】
送信強度制御回路11では、トランスミッタTX1の送信強度の候補として第1~第m候補強度が予め規定される。mは2以上の任意の整数を表す。任意の整数iに関して、第(i+1)候補強度は第i候補強度よりも高い。故に、トランスミッタTX1の送信強度が第(i+1)候補強度に設定されるときの駆動電流値I_Rdrv1及びI_Fdrv1は、トランスミッタTX1の送信強度が第i候補強度に設定されるときの駆動電流値I_Rdrv1及びI_Fdrv1よりも大きい。尚、駆動電流値I_Rdrv1及びI_Fdrv1を互いに異ならせることも可能であるが、ここでは駆動電流値I_Rdrv1及びI_Fdrv1が互い同じであるとする。
【0067】
例えば、送信強度制御回路11はDAC(デジタルアナログ変換器)を有し、DACの出力アナログ電圧値に応じて駆動電流値I_Rdrv1及びI_Fdrv1が制御される構成が採用される。この場合、送信強度制御回路11はDACへの入力デジタル値をm種類に変化させることで、トランスミッタTX1の送信強度をm種類に変化させることができる。
【0068】
テスト信号生成回路12はテスト信号を生成し、信号Sc1として出力する。このため、校正モード状態ではテスト信号が入力信号IN1としてトランスミッタTX1に供給される。テスト信号はハイレベル及びローレベルの信号レベルを交互に持つ矩形波信号である。故に、テスト信号をテスト矩形波信号と称することもできる。テスト信号を送信するための処理をテスト送信処理と称する。1回分のテスト送信処理では一定時間分のテスト信号が送信される。テスト信号は周期性を有する矩形波信号であって良く、上記一定時間はテスト信号の周期の整数倍である。ここでは、上記一定時間はテスト信号の1周期分の長さであるとする。そうすると、1回分のテスト送信処理において、入力信号IN1はライズエッジ及びフォールエッジの夫々を1つだけ有する矩形波信号となる。1回分のテスト送信処理において、テスト信号生成回路12は、入力信号IN1にライズエッジを発生させた後、フォールエッジを発生させるものとする(後述の他の実施例においても同様)。
【0069】
テスト信号が入力信号IN1としてトランスミッタTX1に供給されると、テスト信号のライズエッジを契機にライズエッジ信号がトランスミッタTX1からレシーバRX1に送信され、テスト信号のフォールエッジを契機にフォールエッジ信号がトランスミッタTX1からレシーバRX1に送信される。これらのライズエッジ信号及びフォールエッジ信号がレシーバRX1にて正しく受信された場合には信号OUT1に矩形波が現れるが、そうでない場合には信号OUT1に矩形波が現われない。仮にトランスミッタTX1の送信強度が低すぎると、レシーバRX1でのテスト信号の受信が不可となる。
【0070】
校正モード状態において、受信判定回路21は信号OUT1に基づきレシーバRX1によるテスト信号の受信可否を判定する。レシーバRX1にてテスト信号が受信された場合、受信判定回路21は返信信号を入力セレクタSEL_IN2を通じ入力信号IN2としてトランスミッタTX2に供給する。返信信号はハイレベル及びローレベルの信号レベルを交互に持つ矩形波信号である。故に、返信信号を返信矩形波信号と称することもできる。出力信号OUT1そのものを返信信号として用いても良いし、他の所定の矩形波信号を返信信号に設定しても良い。
【0071】
信号監視回路22は検出回路Rdet1及びFdet1に接続され、検出回路Rdet1及びFdet1から電圧VP1及びVM1を受ける。校正モード状態において、信号監視回路22は電圧VP1及びVM1に基づきテスト信号がトランスミッタTX1から送信されたかを監視し、その監視の結果を示す監視結果信号SMN1を受信判定回路21に出力する。監視結果信号SMN1は原則としてローレベルを有する。上述のテスト送信処理が行われたとき、電圧VP1が0Vより高まったのちに電圧VM1が0Vより高まる。このため、信号監視回路22は電圧VP1及びVM1を所定の正の監視判定電圧VMNTHと比較し、“VP1>VMNTH”の成立後、所定時間内に“VM1>VMNTH”が成立した場合に限り、監視結果信号SMN1を微小時間だけハイレベルとする。
【0072】
ハイレベルの監視結果信号SMN1を受けたタイミングを含む期間であって且つ一定時間分の判定期間において、テスト信号の波形に対応するレベル変化が信号OUT1に現れたとき、受信判定回路21はレシーバRX1にてテスト信号が受信できたと判定し、テスト信号の波形に対応するレベル変化が信号OUT1に現われなかったとき、受信判定回路21はレシーバRX1にてテスト信号が受信できなかったと判定する。
【0073】
上記の返信信号が入力信号IN2としてトランスミッタTX2に供給されると、トランスミッタTX2からレシーバRX2へと返信信号が伝送される。返信信号を表す信号OUT2が出力セレクタSEL_OUT2を通じて校正回路CB1に供給される。受信判定回路13は返信信号を表す信号OUT2を受けたとき、テスト信号がレシーバRX1にて受信されたと判定する。受信判定回路13は、テスト信号が送信された後、所定のタイムアウト時間が経過しても返信信号を表す信号OUT2がレシーバRX2から出力されないとき、テスト信号がレシーバRX1にて受信されなかったと判定する。尚、トランスミッタTX2の送信強度及びレシーバRX2の受信感度は、返信信号の送受信が確実に可能な程度に高いものとする。
【0074】
送信強度校正動作OP_Aにおいて、トランスミッタTX1の送信強度は第1~第m候補強度の中で切り替え設定される。そして、校正回路CB1は、レシーバRX1にてテスト信号を受信可能な最小の候補強度を探索することで適正送信強度OPTTX1を特定する。
【0075】
図10に送信強度校正動作OP_Aのフローチャートを示す。送信強度校正動作OP_Aは、一次側回路10が行う一次側動作OP_A1と二次側回路20が行う二次側動作OP_A2とで構成される。一次側動作OP_A1はステップS111~S118の処理を有し、二次側動作OP_A2はステップS161~S165の処理を有する。
【0076】
一次側回路10の動作モードが校正モードに設定されると、まずステップS111において、校正回路CB1は自身が管理する変数iにmの値を代入する。続くステップS112において、送信強度制御回路11はトランスミッタTX1の送信強度に第i候補強度を設定する。トランスミッタTX1の送信強度が第i候補強度に設定された状態を第iテスト設定状態と称する。上述の説明から明らかなように、
図10の動作において“i=m”であるとき、トランスミッタTX1の送信強度は最大となる。続くステップS113において校正回路CB1によりテスト送信処理が実行される。
【0077】
テスト送信処理では、テスト信号生成回路12がテスト信号を入力信号IN1としてトランスミッタTX1に供給し、これによってテスト信号をトランスミッタTX1から二次側回路20に送信する。上述したように、ここでは1回分のテスト送信処理において、入力信号IN1はライズエッジ及びフォールエッジの夫々を1つだけ有する矩形波信号であるとする。
【0078】
一方、二次側回路20の動作モードが校正モードに設定されると、まずステップS161において校正回路CB2によりレシーバRX1の受信感度が所定の標準感度にて固定される。レシーバRX1の受信感度が所定の標準感度にて固定されるとは、コンパレータCMP1のオフセット電圧VOFFSET1が所定の標準電圧VSTDに固定されることを意味する。第1実施例では、校正モード状態及び通常モード状態の何れにおいても、“VOFFSET1=VSTD”にて固定される。このため、二次側動作OP_A2においてステップS161の処理は省略されても良い。ステップS161の後、ステップS162に進む。ステップS162において受信判定回路21は、監視結果信号SMN1にライズエッジが発生するのを待機し、監視結果信号SMN1にライズエッジが発生するとステップS163に進む。一次側回路10においてステップS113のテスト送信処理が1回行われる度にステップS162からステップS163への移行が発生する。
【0079】
ステップS163において受信判定回路21はテスト信号の受信判定処理を行う。ステップS163の受信判定処理では、テスト信号が二次側回路20にて(即ちレシーバRX1にて)受信されたかを判定する。当該判定の結果がステップS163に続くステップS164にて確認される。テスト信号が二次側回路20にて(即ちレシーバRX1にて)受信された場合に限り、受信矩形波信号が信号OUT1としてレシーバRX1から出力される。受信矩形波信号はテスト信号に対応する波形を有し、実質的にテスト信号と同じ波形を持つ。故に受信矩形波信号は1つのライズエッジと、それに続く1つのフォールエッジを有する。テスト信号が二次側回路20にて(即ちレシーバRX1にて)受信されるとは受信矩形波信号が信号OUT1としてレシーバRX1から出力されることを意味し、信号SR1及びSF1が幾らかの振幅を有していても受信矩形波信号が信号OUT1としてレシーバRX1から出力されないならばテスト信号が二次側回路20にて(即ちレシーバRX1にて)受信されない、と解される。
【0080】
ステップS163及びS164において受信判定回路21は、受信矩形波信号が信号OUT1としてレシーバRX1から出力されるかを監視し、ハイレベルの監視結果信号SMN1を受けたタイミングを含む期間であって且つ一定時間分の判定期間において受信矩形波信号が信号OUT1としてレシーバRX1から出力された場合に限り、テスト信号が受信されたと判定して(ステップS164のY)、ステップS165への移行を発生させる。上記判定期間においてレシーバRX1からの受信矩形波信号の出力が確認されなった場合(例えば信号OUT1がハイレベル又はローレベルで保持されていた場合)、受信判定回路21によりテスト信号が受信されなかったと判定され(ステップS164のN)、二次側動作OP_A2を終える。二次側回路20において二次側動作OP_A2が終了すると、モード設定回路MS2は二次側回路20の動作モードを校正モードから通常モードに切り替える。
【0081】
ステップS165において受信判定回路21はテスト返信処理を実行する。テスト返信処理において、受信判定回路21は返信信号を入力セレクタSEL_IN2を通じ入力信号IN2としてトランスミッタTX2に供給する。上述したように、返信信号はハイレベル及びローレベルの信号レベルを交互に持つ矩形波信号(返信矩形波信号)である。出力信号OUT1そのものを返信信号として用いても良いし、他の所定の矩形波信号を返信信号に設定しても良い。ステップS165でのテスト返信処理の後、二次側動作OP_A2においてステップS162への遷移が発生する。
【0082】
他方、一次側回路10における受信判定回路13は、ステップS113にてテスト送信処理を行った後、ステップS114にて返信信号がレシーバRX2にて受信されたかを判定する(具体的には返信信号が信号OUT2としてレシーバRX2から出力されたかを判定する)。返信信号がレシーバRX2にて受信されたかの判定は、テスト信号がレシーバRX1にて受信されたかの判定と等価であると考えて良い。ステップS113にてテスト送信処理を行った後、所定のタイムアウト時間内に返信信号に相当する信号OUT2がレシーバRX2から出力された場合には返信信号がレシーバRX2にて受信されたと判定されて(ステップS114のY)ステップS115に進み、所定のタイムアウト時間内に返信信号に相当する信号OUT2がレシーバRX2から出力されなかった場合には(ステップS114のN)返信信号がレシーバRX2にて受信されなかったと判定されてステップS116に進む。
【0083】
ステップS115において校正回路CB1により変数iから1が減算され、その後、ステップS112に戻る。ステップS116において校正回路CB1により“i=m”の成否が判定され、“i=m”の不成立時にはステップS117に進む一方で、“i=m”の成立時にはステップS118に進む。
【0084】
ステップS117において送信強度制御回路11は、現在の送信強度よりも1段階上の送信強度である第(i+1)候補強度を適正送信強度OPTTX1に設定する。ステップS118において校正回路CB1は所定のエラー処理を実行する。“i=m”である状態でテスト信号の受信が不能であるとき、何らかの異常発生が疑われるからであり、エラー処理では例えば所定のエラー信号を信号伝送装置1の外部に出力する。ステップS117又はS118の処理を経て一次側動作OP_A1を終える。一次側回路10において一次側動作OP_A1が終了すると、モード設定回路MS1は一次側回路10の動作モードを校正モードから通常モードに切り替える。
【0085】
送信強度校正動作OP_Aにおいて一次側動作OP_A1及び二次側動作OP_A2は実質同時に開始される。その後、トランスミッタTX1の送信強度を段階的に低下させながら、テスト送信処理とテスト返信処理の組が二次側回路20にてテスト信号を受信できなくなるまで繰り返される。そして、二次側回路20にてテスト信号を受信できなくなるとステップS164の否定を経て二次側動作OP_A2が終了し、それに連動して略同時にステップS114の否定を経て一次側動作OP_A1が終了する。このため、一次側回路10及び二次側回路20の動作モードは略同時に校正モードから通常モードに遷移する。
【0086】
図11に、送信強度校正動作OP_Aにおける、トランスミッタTX1の送信強度と幾つかの信号との関係の例を示す。上述したように、1回分のテスト送信処理においてライズエッジ及びフォールエッジの夫々を1つだけ有する矩形波信号がテスト信号及び入力信号IN1としてトランスミッタTX1に入力される。また、
図11では信号OUT1そのものが返信信号として用いられることを想定している。
図11の例では、トランスミッタTX1の送信強度が第(m-3)候補強度以上であれば、テスト信号がレシーバRX1にて受信され、結果、信号OUT1、IN2及びOUT2にテスト信号に対応するレベル変化が生じる。
図11の例において、トランスミッタTX1の送信強度が第(m-4)候補強度にまで低下するとテスト信号がレシーバRX1にて受信されず、結果、信号OUT1、IN2及びOUT2にテスト信号に対応するレベル変化が生じない。故に
図11の例では、“i=m-4”の段階でステップS114からステップS116を経由してステップS117に進むため、第(m-3)候補強度が適正送信強度OPT
TX1に設定される。
【0087】
送信強度校正動作OP_Aの実行後の通常モード状態において、送信強度制御回路11はトランスミッタTX1の送信強度に適正送信強度OPT
TX1を設定する。従って、送信強度校正動作OP_Aの実行後の通常モード状態において、トランスミッタTX1は入力信号IN1としての信号Sn1(デジタル信号)を適正送信強度OPT
TX1にて二次側回路20に送信し、レシーバRX1は当該信号Sn1を受信することで出力信号OUT1を生成する(
図3参照)。これにより、必要な送受信が確保された上で信号伝送装置1の消費電力及び発生ノイズ量を極力低減することができる。
【0088】
送信強度校正動作OP_Aは異なるタイミングにて複数回実行されても良い。この場合、適正送信強度OPTTX1は送信強度校正動作OP_Aが実行される度に最新のものに更新される。
【0089】
上述の如く、校正回路CB1はトランスミッタTX1の送信強度を複数の候補強度間で切り替えながら候補強度ごとにテスト送信処理(S113)を実行する。校正回路CB2は、候補強度ごとに、テスト信号のレシーバRX1による受信可否に応じてテスト返信処理の実行制御を行う(S163~S165)。そして、校正回路CB1はレシーバRX2による返信信号の受信状態に基づき適正送信強度OPTTX1を設定する。
【0090】
より具体的には、第iテスト設定状態にてテスト送信処理が実行されたときにおいて(S112、S113)、レシーバRX1から信号OUT1として受信矩形波信号が出力されたならば校正回路CB2は返信信号をトランスミッタTX2から一次側回路10に送信するテスト返信処理を行い、レシーバRX1から信号OUT1として受信矩形波信号が出力されなかったならば校正回路CB2はテスト返信処理を非実行とする(S163~S165)。校正回路CB1は、第1~第nテスト設定状態の内、2以上のテスト設定状態におけるレシーバRX2での返信信号の受信有無に基づき適正送信強度OPT
TX1を設定する。
図10の動作例において、2回以上のテスト送信処理を経てからのみステップS117への移行が発生して適正送信強度OPT
TX1の設定が可能となる。
【0091】
上述の説明から明らかなように、校正回路CB1は、第1~第m候補強度の内、レシーバRX1にてテスト信号を受信できる最小の候補強度を探索し、探索された最小の候補強度を適正送信強度OPTTX1に設定する。
【0092】
変形として、ステップS117において、マージンをとり、第(i+1)候補強度よりも高い候補強度、例えば第(i+2)候補強度又は第(i+3)候補強度を、適正送信強度OPTTX1に設定しても良い。但し、適正送信強度OPTTX1の上限は第m候補強度とされる。
【0093】
図10の動作例ではトランスミッタTX1の送信強度を第m候補強度から順次低下させてゆきながらテスト信号を受信できる最小の候補強度を探索しているが、トランスミッタTX1の送信強度を第1候補強度から順次増加させてゆきながら上記最小の候補強度を探索しても良い。
【0094】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第2実施例ではレシーバRX1の受信感度の校正方法を説明する。校正モード状態において、校正回路CB1及びCB2はレシーバRX1における適正な受信感度を探索する受信感度校正動作OP_Bを行う。受信感度校正動作OP_Bにて探索される適正な受信感度を適正受信感度OPTRX1と称する。
【0095】
図12に、信号伝送装置1の内、受信感度校正動作OP_Bの動作に関与する構成を示す。校正回路CB1にはテスト信号生成回路12及び受信判定回路13が設けられる。第2実施例において、校正回路CB1に対する送信強度制御回路11(
図9)の設置の有無は任意である。校正回路CB2には受信判定回路21、信号監視回路22及び受信感度制御回路23が設けられる。
【0096】
レシーバRX1の受信感度が変更可能となるようにレシーバRX1が構成されており、レシーバRX1の受信感度が受信感度制御回路23により調整、制御及び設定される。上述したように、レシーバRX1の受信感度はオフセット電圧VOFFSET1により定まる。オフセット電圧VOFFSET1が小さいほどレシーバRX1の受信感度は高まり、オフセット電圧VOFFSET1が大きいほどレシーバRX1の受信感度は低下する。受信感度制御回路23によりオフセット電圧VOFFSET1が可変設定される。
【0097】
受信感度制御回路23では、レシーバRX1の受信感度の候補として第1~第n候補感度が予め規定される。nは2以上の任意の整数を表す。任意の整数iに関して、第(i+1)候補感度は第i候補感度よりも高い。故に、レシーバRX1の受信感度が第(i+1)候補感度に設定されるときのオフセット電圧VOFFSET1は、レシーバRX1の受信感度が第i候補感度に設定されるときのオフセット電圧VOFFSET1よりも小さい。
【0098】
例えば、受信感度制御回路23はDAC(デジタルアナログ変換器)を有し、DACの出力アナログ電圧値に応じてオフセット電圧VOFFSET1が制御される構成が採用される。この場合、受信感度制御回路23はDACへの入力デジタル値をn種類に変化させることで、レシーバRX1の受信感度をn種類に変化させることができる。
【0099】
受信感度制御回路23の動作を除き、信号伝送装置1の各構成要素の動作及び機能は第1実施例で述べた通りである。
【0100】
受信感度校正動作OP_Bにおいて、レシーバRX1の受信感度は第1~第n候補感度の中で切り替え設定される。そして、校正回路CB2は、レシーバRX1にてテスト信号を受信可能な最小の候補感度を探索することで適正受信感度OPTRX1を特定する。
【0101】
図13に受信感度校正動作OP_Bのフローチャートを示す。受信感度校正動作OP_Bは、一次側回路10が行う一次側動作OP_B1と二次側回路20が行う二次側動作OP_B2とで構成される。一次側動作OP_B1はステップS211~S213の処理を有し、二次側動作OP_B2はステップS261~S270の処理を有する。
【0102】
一次側回路10の動作モードが校正モードに設定されると、まずステップS211において、校正回路CB1によりトランスミッタTX1の送信強度が所定の標準強度にて固定される。トランスミッタTX1の送信強度が所定の標準強度にて固定されるとは、パルストランス31_Rをパルス駆動する際の駆動電流値I_Rdrv1及びパルストランス31_Fをパルス駆動する際の駆動電流値I_Fdrv1を、所定の標準電流値に固定することを意味する。第2実施例では、校正モード状態及び通常モード状態の何れにおいても、トランスミッタTX1の送信強度が所定の標準強度にて固定される。このため、一次側動作OP_B1においてステップS211の処理は省略されても良い。ステップS211の後、ステップS212に進む。
【0103】
ステップS212において校正回路CB1によりテスト送信処理が実行される。ステップS212におけるテスト送信処理は、
図10のステップS113におけるテスト送信処理と同じである。
【0104】
一方、二次側回路20の動作モードが校正モードに設定されると、まずステップS261において校正回路CB2は自身が管理する変数iにnの値を代入する。続くステップS262において、受信感度制御回路23はレシーバRX1の受信感度に第i候補感度を設定する。レシーバRX1の受信感度が第i候補感度に設定されるときのオフセット電圧VOFFSET1は電圧VC[i]である。つまり、受信感度制御回路23はオフセット電圧VOFFSET1に電圧VC[i]を設定することでレシーバRX1の受信感度に第i候補感度を設定する。電圧VC[1]~VC[n]の内、電圧VC[1]が最大であり、電圧VC[n]が最小である。“i=n”であるとき、レシーバRX1の受信感度は最大となる。第1実施例と異なり、第2実施例に係る第iテスト設定状態はレシーバRX1の受信感度が第i候補感度に設定された状態を指す。ステップS262の後、ステップS263に進む。
【0105】
ステップS263において受信判定回路21は、監視結果信号SMN1にライズエッジが発生するのを待機し、監視結果信号SMN1にライズエッジが発生するとステップS264に進む。一次側回路10においてステップS212のテスト送信処理が1回行われる度にステップS263からステップS264への移行が発生する。
【0106】
ステップS264において受信判定回路21はテスト信号の受信判定処理を行う。ステップS264の受信判定処理では、テスト信号が二次側回路20にて(即ちレシーバRX1にて)受信されたかを判定する。当該判定の結果がステップS264に続くステップS265にて確認される。テスト信号が二次側回路20にて(即ちレシーバRX1にて)受信された場合に限り、受信矩形波信号が信号OUT1としてレシーバRX1から出力される。受信矩形波信号はテスト信号に対応する波形を有し、実質的にテスト信号と同じ波形を持つ。故に受信矩形波信号は1つのライズエッジと、それに続く1つのフォールエッジを有する。テスト信号が二次側回路20にて(即ちレシーバRX1にて)受信されるとは受信矩形波信号が信号OUT1としてレシーバRX1から出力されることを意味し、信号SR1及びSF1が幾らかの振幅を有していても受信矩形波信号が信号OUT1としてレシーバRX1から出力されないならばテスト信号が二次側回路20にて(即ちレシーバRX1にて)受信されない、と解される。
【0107】
ステップS264及びS265において受信判定回路21は、受信矩形波信号が信号OUT1としてレシーバRX1から出力されるかを監視し、ハイレベルの監視結果信号SMN1を受けたタイミングを含む期間であって且つ一定時間分の判定期間において受信矩形波信号が信号OUT1としてレシーバRX1から出力された場合に限り、テスト信号が受信されたと判定して(ステップS265のY)、ステップS266への移行を発生させる。上記判定期間においてレシーバRX1からの受信矩形波信号の出力が確認されなった場合(例えば信号OUT1がハイレベル又はローレベルで保持されていた場合)、受信判定回路21によりテスト信号が受信されなかったと判定され(ステップS265のN)、ステップS268へ進む。
【0108】
ステップS266において受信判定回路21はテスト返信処理を実行する。テスト返信処理において、受信判定回路21は返信信号を入力セレクタSEL_IN2を通じ入力信号IN2としてトランスミッタTX2に供給する。上述したように、返信信号はハイレベル及びローレベルの信号レベルを交互に持つ矩形波信号(返信矩形波信号)である。出力信号OUT1そのものを返信信号として用いても良いし、他の所定の矩形波信号を返信信号に設定しても良い。ステップS266に続くステップS267において校正回路CB2により変数iから1が減算され、その後、ステップS262に戻る。
【0109】
ステップS268において校正回路CB2により“i=n”の成否が判定され、“i=n”の不成立時にはステップS269に進む一方で、“i=n”の成立時にはステップS270に進む。
【0110】
ステップS269において受信感度制御回路23は、現在の受信感度よりも1段階上の受信感度である第(i+1)候補感度を適正受信感度OPTRX1に設定する。ステップS270において校正回路CB2は所定のエラー処理を実行する。“i=n”である状態でテスト信号の受信が不能であるとき、何らかの異常発生が疑われるからであり、エラー処理では例えば所定のエラー信号を信号伝送装置1の外部に出力する。ステップS269又はS270の処理を経て二次側動作OP_B2を終える。二次側回路20において二次側動作OP_B2が終了すると、モード設定回路MS2は二次側回路20の動作モードを校正モードから通常モードに切り替える。
【0111】
他方、一次側回路10における受信判定回路13は、ステップS212にてテスト送信処理を行った後、ステップS213にて返信信号がレシーバRX2にて受信されたかを判定する(具体的には返信信号が信号OUT2としてレシーバRX2から出力されたかを判定する)。返信信号がレシーバRX2にて受信されたかの判定は、テスト信号がレシーバRX1にて受信されたかの判定と等価であると考えて良い。ステップS212にてテスト送信処理を行った後、所定のタイムアウト時間内に返信信号に相当する信号OUT2がレシーバRX2から出力された場合には(ステップS213のY)返信信号がレシーバRX2にて受信されたと判定され、この場合にはステップS212に戻ってテスト送信処理が再度実行される。所定のタイムアウト時間内に返信信号に相当する信号OUT2がレシーバRX2から出力されなかった場合には(ステップS213のN)返信信号がレシーバRX2にて受信されなかったと判定され、一次側動作OP_B1を終える。一次側回路10において一次側動作OP_B1が終了すると、モード設定回路MS1は一次側回路10の動作モードを校正モードから通常モードに切り替える。
【0112】
受信感度校正動作OP_Bにおいて一次側動作OP_B1及び二次側動作OP_B2は実質同時に開始される。その後、レシーバRX1の受信感度を段階的に低下させながら、テスト送信処理とテスト返信処理の組が二次側回路20にてテスト信号を受信できなくなるまで繰り返される。そして、二次側回路20にてテスト信号を受信できなくなるとステップS265の否定を経て二次側動作OP_B2が終了し、それに連動して略同時にステップS213の否定を経て一次側動作OP_B1が終了する。このため、一次側回路10及び二次側回路20の動作モードは略同時に校正モードから通常モードに遷移する。
【0113】
図14に、受信感度校正動作OP_Bにおける、レシーバRX1の受信感度と幾つかの信号との関係の例を示す。上述したように、1回分のテスト送信処理においてライズエッジ及びフォールエッジの夫々を1つだけ有する矩形波信号がテスト信号及び入力信号IN1としてトランスミッタTX1に入力される。また、
図14では信号OUT1そのものが返信信号として用いられることを想定している。
図14の例では、レシーバRX1の受信感度が第(n-3)候補感度以上であれば、テスト信号がレシーバRX1にて受信され、結果、信号OUT1、IN2及びOUT2にテスト信号に対応するレベル変化が生じる。
図14の例において、レシーバRX1の受信感度が第(n-4)候補感度にまで低下するとテスト信号がレシーバRX1にて受信されず、結果、信号OUT1、IN2及びOUT2にテスト信号に対応するレベル変化が生じない。故に
図14の例では、“i=n-4”の段階でステップS265からステップS268を経由してステップS269に進むため、第(n-3)候補感度が適正受信感度OPT
RX1に設定される。
【0114】
受信感度校正動作OP_Bの実行後の通常モード状態において、受信感度制御回路23はレシーバRX1の受信感度に適正受信感度OPT
RX1を設定する。従って、受信感度校正動作OP_Bの実行後の通常モード状態において、トランスミッタTX1は入力信号IN1としての信号Sn1(デジタル信号)を二次側回路20に送信し、レシーバRX1は当該信号Sn1を適正受信感度OPT
RX1にて受信することで出力信号OUT1を生成する(
図3参照)。受信感度を高めすぎるとノイズ耐性が弱くなる。逆に受信感度を低くしすぎると必要な信号受信が不能となる。本実施例の方法を用いることで、ノイズ耐性も考慮した適正な感度で信号を受信することが可能である。
【0115】
受信感度校正動作OP_Bは異なるタイミングにて複数回実行されても良い。この場合、適正受信感度OPTRX1は受信感度校正動作OP_Bが実行される度に最新のものに更新される。
【0116】
上述の如く、校正回路CB2はレシーバRX1の受信感度を複数の候補感度間で切り替えながら候補感度ごとにテスト信号のレシーバRX1による受信可否を判定する(S264)。その判定結果に応じて、校正回路CB2はテスト返信処理の実行制御を行い(S265~S266)且つ適正受信感度OPTRX1を設定する(S269)。
【0117】
より具体的には、第iテスト設定状態にてテスト送信処理が実行されたときにおいて(S212)、レシーバRX1から信号OUT1として受信矩形波信号が出力されたならば校正回路CB2は返信信号をトランスミッタTX2から一次側回路10に送信するテスト返信処理を行い、レシーバRX1から信号OUT1として受信矩形波信号が出力されなかったならば校正回路CB2はテスト返信処理を非実行とする(S265~S267)。校正回路CB2は、第1~第nテスト設定状態の内、2以上のテスト設定状態におけるレシーバRX1でのテスト信号の受信可否に基づき適正受信感度OPT
RX1を設定する。
図13の動作例において、2回以上の受信判定処理を経てからのみステップS269への移行が発生して適正受信感度OPT
RX1の設定が可能となる。
【0118】
上述の説明から明らかなように、校正回路CB2は、第1~第n候補感度の内、レシーバRX1にてテスト信号を受信できる最小の候補感度を探索し、探索された最小の候補感度を適正受信感度OPTRX1に設定する。
【0119】
変形として、ステップS269において、マージンをとり、第(i+1)候補感度よりも高い候補感度、例えば第(i+2)候補感度又は第(i+3)候補感度を、適正受信感度OPTRX1に設定しても良い。但し、適正受信感度OPTRX1の上限は第n候補感度とされる。
【0120】
図13の動作例ではレシーバRX1の受信感度を第n候補感度から順次低下させてゆきながらテスト信号を受信できる最小の候補感度を探索しているが、レシーバRX1の受信感度を第1候補感度から順次増加させてゆきながら上記最小の候補感度を探索しても良い。
【0121】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。第3実施例ではトランスミッタTX1の送信強度及びレシーバRX1の受信感度の双方を校正する方法を説明する。
【0122】
図15に、信号伝送装置1の内、トランスミッタTX1の送信強度及びレシーバRX1の受信感度の校正動作に関与する構成を示す。第3実施例に係る校正回路CB1は送信強度制御回路11、テスト信号生成回路12及び受信判定回路13を備え、それら回路11~13の動作及び機能は、以下に示す事項を除き、第1又は第2実施例に示した通りである。第3実施例に係る校正回路CB2は受信判定回路21、信号監視回路22及び受信感度制御回路23を備え、それら回路21~23の動作及び機能は、以下に示す事項を除き、第1又は第2実施例に示した通りである。第3実施例では、トランスミッタTX1の送信強度が変更可能となるようにトランスミッタTX1が構成され、且つ、レシーバRX1の受信感度が変更可能となるようにレシーバRX1が構成される。
【0123】
図16に第3実施例に係る校正動作のフローチャートを示す。信号伝送装置1の状態が校正モード状態となると、まずステップS311にて送信強度校正動作OP_Aが実行される。ステップS311の送信強度校正動作OP_Aは第1実施例に示したものと同様である。但し、ステップS311の送信強度校正動作OP_Aでは、
図10のステップS117に至ったときの第(i+1)候補強度が適正送信強度OPT
TX1ではなく暫定送信強度として特定される。暫定送信強度は暫定的に決定された適正送信強度OPT
TX1に相当する。ここでは
図10のエラー処理(ステップS118)が行われる状況は無視する。ステップS311において、校正回路CB1は、第1~第m候補強度の内、テスト信号を受信できる最小の候補強度を探索し、探索された最小の候補強度を暫定送信強度として特定することになる。
【0124】
また、ステップS311の送信強度校正動作OP_Aは、レシーバRX1の受信感度が所定の設計最小感度にて固定された状態で実行される。ステップS311の送信強度校正動作OP_Aでは、上述の標準感度(
図10のステップS161参照)として設計最小感度が用いられると考えれば良い。トランスミッタTX1及びレシーバRX1間において適正な信号の送受信を安定的に実現するために必要な最小の受信感度が、信号伝送装置1の設計段階で定められる。設計段階で定められた最小の受信感度が設計最小感度である。設計最小感度は第1候補感度よりも高く且つ第n候補感度よりも低い。設計最小感度は第2~第(n-1)候補感度の何れかと一致していても良い。例えばnが4の倍数であって且つ5以上の整数であれば、設計最小感度は第(n/4)候補感度であって良い。
【0125】
ステップS311の後、ステップS312に進む。ステップS312にて受信感度校正動作OP_Bが実行される。詳細には、ステップS311にて一次側動作OP_A1(
図10参照)が終了した後、モード設定回路MS1により一次側回路10の動作モードが校正モードで維持された上で一次側回路10にて一次側動作OP_B1(
図13参照)が開始され、且つ、モード設定回路MS2により二次側回路20の動作モードが校正モードで維持された上で二次側回路20にて二次側動作OP_B2(
図13参照)が開始される。これら一次側動作OP_B1及び二次側動作OP_B2にてステップS312の受信感度校正動作OP_Bが構成される。
【0126】
ステップS312の受信感度校正動作OP_Bは第2実施例に示したものと同様である。但し、ステップS312の受信感度校正動作OP_Bでは、
図13のステップS269に至ったときの第(i+1)候補感度が適正受信感度OPT
RX1ではなく暫定受信感度として特定される。暫定受信感度は暫定的に決定された適正受信感度OPT
RX1に相当する。ここでは
図13のエラー処理(ステップS270)が行われる状況は無視する。ステップS312において、校正回路CB2は、第1~第n候補感度の内、テスト信号を受信できる最小の候補感度を探索し、探索された最小の候補感度を暫定受信感度として特定することになる。
【0127】
また、ステップS312の受信感度校正動作OP_BはトランスミッタTX1の送信強度が所定の設計最小強度にて固定された状態で実行される。ステップS312の受信感度校正動作OP_Bでは、上述の標準強度(
図13のステップS211参照)として設計最小強度が用いられると考えれば良い。トランスミッタTX1及びレシーバRX1間において適正な信号の送受信を安定的に実現するために必要な最小の送信強度が、信号伝送装置1の設計段階で定められる。設計段階で定められた最小の送信強度が設計最小強度である。設計最小強度は第1候補強度よりも高く且つ第m候補強度よりも低い。設計最小強度は第2~第(m-1)候補強度の何れかと一致していても良い。例えばmが4の倍数であって且つ5以上の整数であれば、設計最小強度は第(m/4)候補強度であって良い。
【0128】
ステップS312の後、ステップS313に進んでステップS313及びS314の処理が実行される。第3実施例では、ステップS312にて一次側動作OP_B1及び二次側動作OP_B2(
図13参照)が終了しても、モード設定回路MS1及びMS2により一次側回路10及び二次側回路20の動作モードが校正モードで維持される。
【0129】
ステップS313において、送信強度制御回路11は、ステップS311で特定された暫定送信強度を設計最小強度と比較し、暫定送信強度及び設計最小強度の内、高い方を適正送信強度OPTTX1に設定する。これにより、設計上、想定されない送信強度でトランスミッタTX1が動作することが回避され、安定的な信号伝送が担保される。また第1実施例に示した作用効果も得られる。尚、暫定送信強度及び設計最小強度が互いに一致する場合には、暫定送信強度又は設計最小強度が適正送信強度OPTTX1に設定される。
【0130】
ステップS314において、受信感度制御回路23は、ステップS312で特定された暫定受信感度を設計最小感度と比較し、暫定受信感度及び設計最小感度の内、高い方を適正受信感度OPTRX1に設定する。これにより、設計上、想定されない受信感度でレシーバRX1が動作することが回避され、安定的な信号伝送が担保される。また第2実施例に示した作用効果も得られる。尚、暫定受信感度及び設計最小感度が互いに一致する場合には、暫定受信感度又は設計最小感度が適正受信感度OPTRX1に設定される。
【0131】
ステップS313及びS314の処理の完了を以って
図16の校正動作が終了する。
図16の校正動作の終了後、信号伝送装置1の状態が校正モード状態から通常モード状態に切り替わる。モード設定回路MS1は、ステップ312の受信感度校正動作OP_B中の一次側動作OP_B1が終了した後、ステップS313の処理が完了するのを待ってから一次側回路10の動作モードを校正モードから通常モードに切り替えれば良い。モード設定回路MS2は、ステップ312の受信感度校正動作OP_B中の二次側動作OP_B2が終了した後、ステップS314の処理が完了するのを待ってから二次側回路20の動作モードを校正モードから通常モードに切り替えれば良い。尚、ここではステップS311の動作の後にステップS312の動作が実行されることを例示したが、それらの実行順序は逆とされても良い。
【0132】
図16の校正動作の実行後の通常モード状態において、トランスミッタTX1は入力信号IN1としての信号Sn1(デジタル信号)を適正送信強度OPT
TX1にて二次側回路20に送信し、レシーバRX1は当該信号Sn1を適正受信感度OPT
RX1にて受信することで出力信号OUT1を生成する(
図3参照)。これにより、必要な送受信が確保された上で信号伝送装置1の消費電力及び発生ノイズ量を極力低減することができると共に、ノイズ耐性も良好となる。
【0133】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。第1~第3実施例に示した各校正動作をトランスミッタTX2及びレシーバRX2に適用することもできる。
【0134】
即ち、第1実施例に示した送信強度校正動作OP_Aを、トランスミッタTX1の送信強度の校正だけでなく、トランスミッタTX2の送信強度の校正に利用しても良い。送信強度校正動作OP_AをトランスミッタTX2の送信強度の校正に利用する場合、第1実施例の送信強度校正動作OP_Aにおいて、トランスミッタTX1及びレシーバRX1の役割とトランスミッタTX2及びレシーバRX2の役割を入れ替えれば足る。当該入れ替えを伴う送信強度校正動作OP_Aにより決定される適正送信強度OPT
TX1(
図10のS117参照)、トランスミッタTX2の適正送信強度OPT
TX2となる。
【0135】
同様に、第2実施例に示した受信感度校正動作OP_Bを、レシーバRX1の受信感度の校正だけでなく、レシーバRX2の受信感度の校正に利用しても良い。受信感度校正動作OP_BをレシーバRX2の受信感度の校正に利用する場合、第2実施例の受信感度校正動作OP_Bにおいて、トランスミッタTX1及びレシーバRX1の役割とトランスミッタTX2及びレシーバRX2の役割を入れ替えれば足る。当該入れ替えを伴う受信感度校正動作OP_Bより決定される適正受信感度OPT
RX1(
図13のS269参照)は、レシーバRX2の適正受信感度OPT
RX2となる。
【0136】
同様に、第3実施例に示した
図16の校正動作を、トランスミッタTX1の送信強度及びレシーバRX1の受信感度の校正だけでなく、トランスミッタTX2の送信強度及びレシーバRX2の受信感度の校正に利用しても良い。
図16の校正動作をトランスミッタTX2の送信強度及びレシーバRX2の受信感度の校正に利用する場合、
図16の送信強度校正動作OP_A及び受信感度校正動作OP_Bの夫々において、トランスミッタTX1及びレシーバRX1の役割とトランスミッタTX2及びレシーバRX2の役割を入れ替えれば足る。当該入れ替えを伴う
図16の校正動作にて決定される適正送信強度OPT
TX1(
図16のS313参照)は、トランスミッタTX2の適正送信強度OPT
TX2となり、且つ、当該入れ替えを伴う
図16の校正動作にて決定される適正受信感度OPT
RX1(
図16のS314参照)は、レシーバRX2の適正受信感度OPT
RX2となる。
【0137】
<<第5実施例>>
第5実施例を説明する。
図17に第5実施例に係る信号伝送装置1の構成を示す。
図17では、一次側回路10及び二次側回路20の動作モードが通常モードに設定される状況が想定されている。
【0138】
図17の一次側回路10には
図1の一次側回路10を基準に同期出力回路16が追加される。但し、同期出力回路16は一次側回路10の構成要素に含まれないと解しても良い。この場合、同期出力回路16は一次側回路10の外部に設けられた回路であって且つ一次側回路10に接続された回路であると解される。
【0139】
図17の二次側回路20には
図1の二次側回路20を基準にクロックジェネレータCG及び信号処理回路26が追加される。尚、クロックジェネレータCGは二次側回路20の構成要素に含まれないと解しても良い。この場合、クロックジェネレータCGは二次側回路20の外部に設けられた回路であって且つ二次側回路20に接続された回路(外部クロック回路)であると解される。信号処理回路26は二次側回路20の構成要素に含まれないと解しても良い。この場合、信号処理回路26は二次側回路20の外部に設けられた回路であって且つ二次側回路20に接続された回路であると解される。
【0140】
クロックジェネレータCGは、所定の周波数を有するクロック信号CLK2を生成及び出力する。クロック信号CLK2はハイレベル及びローレベルの信号レベルを交互に持つ矩形波信号である。通常モード状態においてクロックジェネレータCGから出力されるクロック信号CLK2は信号Sn2として且つ入力信号IN2としてトランスミッタTX2に入力される。通常モード状態においてクロックジェネレータCGから出力されるクロック信号CLK2が一次側回路10に伝送され、伝送されたクロック信号CLK2が出力信号OUT2としてレシーバRX2から出力される。通常モード状態において出力信号OUT2は出力セレクタSEL_OUT2を通じクロック信号CLK1として同期出力回路16に供給される。トランスミッタTX2及びレシーバRX2間の伝達遅延等を無視すれば、クロック信号CLK1の波形はクロック信号CLK2の波形と同じである。
【0141】
同期出力回路16はクロック信号CLK1に同期して信号Sn1を出力する。信号Sn1はシリアルのデジタル信号である。
図18に信号伝送装置1における複数の信号の関係を示す。クロック信号CLK1において隣接する2つのライズエッジタイミング間の期間を単位期間と称する。1つの単位期間の長さはクロック信号CLK1の1周期の長さに等しい。信号Sn1は時系列上に並ぶ複数ビット分のデータを表す。信号Sn1は1単位期間において1ビット分のデータを有する。同期出力回路16はクロック信号CLK1における第j番目のライズエッジを契機に、信号Sn1にて表されるデータを第(j-1)番目のビットのデータから第j番目のビットのデータに切り替える。jは任意の自然数を表す。
【0142】
通常モード状態において同期出力回路16から出力される信号Sn1は入力信号IN1としてトランスミッタTX1に入力される。結果、信号Sn1は二次側回路20に伝送され、伝送された信号Sn1が出力信号OUT1としてレシーバRX1から出力される。通常モード状態において出力信号OUT1は出力セレクタSEL_OUT1を通じ信号Sn1’として信号処理回路26に供給される。トランスミッタTX1及びレシーバRX1間の伝達遅延等を無視すれば、信号Sn1’の波形は信号Sn1の波形と同じである(
図18参照)。
【0143】
信号Sn1’はクロック信号CLK2に同期した信号である。信号処理回路26はクロック信号CLK2を用いて信号Sn1’が持つデータ(従って信号Sn1が持つデータ)を認識できる。即ち、信号処理回路26は信号Sn1’持つデータをクロック信号CLK2に同期して読み取ることができる。信号処理回路26は、クロック信号CLK2に基づき信号Sn1’に対して所定の信号処理を行う。
【0144】
<<第6実施例>>
第6実施例を説明する。
図17の信号伝送装置1において同期出力回路16は、例えば
図19に示す如くAD変換回路16aであっても良い。AD変換回路16aは、サンプリングタイミングにおける入力アナログ信号をAD変換(アナログ/デジタル変換)することでAD変換の結果を表す信号Sn1を生成し、信号Sn1をクロック信号CLK1に同期して出力する。入力アナログ信号は一次側回路10とは異なる任意の回路からAD変換回路16aに供給される、又は、一次側回路10内で生成される。サンプリングタイミングは図示されない制御回路により指定される。
【0145】
AD変換回路16aにおけるAD変換の形式は任意である。AD変換回路16aはデルタシグマ型のAD変換回路であっても良く、この場合、信号Sn1’に対しクロック信号CLK2に同期してデジタルのフィルタリング処理を行うデジタルフィルタを信号処理回路26に設けておくことができる。
【0146】
同期出力回路16がAD変換回路16aである場合、絶縁素子の駆動に伴うノイズはAD変換の精度に影響を与えうる。しかしながら、本実施形態では、送信強度の適正化に伴って過度なノイズ発生が抑制されるので、AD変換の精度向上が見込める。
【0147】
パルストランス31_R(
図6参照)がパルス駆動されるときに送信側コイル31_Rtの第1端に生じる電圧、及び、パルストランス31_Fがパルス駆動されるときに送信側コイル31_Ftの第1端に生じる電圧を、便宜上、第1評価電圧、第2評価電圧と称する。
図19の信号伝送装置1において、トランスミッタTX1に対して送信強度校正動作OP_Aが実行される際、第1評価電圧を示す第1評価アナログ信号及び第2評価電圧を示す第1評価アナログ信号をAD変換回路16aに入力し、AD変換回路16aにて第1及び第2評価アナログ信号をAD変換することで、第1及び第2評価電圧のデジタル値を導出するようしても良い。校正回路CB1は、送信強度校正動作OP_Aの各テスト送信処理において、第1及び第2評価電圧のデジタル値に基づき期待通りの電流にてパルストランス31_R及び31_Fがパルス駆動されているかを判断することができ、当該判断結果も参照して適正送信強度OPT
TX1を設定することもできる。トランスミッタTX2に対して送信強度校正動作OP_Aが実行される場合も同様である。
【0148】
この他、同期出力回路16はクロック信号CLK1に同期して信号Sn1を出力する回路であれば任意である。信号伝送装置1はクロック信号CLK1及びCLK2に同期して任意の信号Sn1の送受信を行う絶縁通信装置(デジタルアイソレータ)であっても良い。
【0149】
<<第7実施例>>
第7実施例を説明する。第7実施例では動作モードの設定方法について説明する。モード設定回路MS1は原則として一次側回路10の動作モードを通常モードに設定し、モード設定回路MS2は原則として二次側回路20の動作モードを通常モードに設定する。即ち、モード設定回路MS1及びMS2は原則として信号伝送装置1の状態を通常モード状態に設定する。
【0150】
所定の校正トリガ条件の成立を契機に、モード設定回路MS1は一次側回路10の動作モードを校正モードに設定し且つモード設定回路MS2は二次側回路20の動作モードを校正モードに設定する。即ち、所定の校正トリガ条件の成立を契機に、モード設定回路MS1及びMS2は信号伝送装置1の状態を校正モード状態に設定する。校正トリガ条件の成否を判定する条件判定回路(不図示)を信号伝送装置1に設けておいて良い。
【0151】
校正モード状態において送信強度校正動作OP_Aのみが行われる場合にあっては、送信強度校正動作OP_Aにて適正送信強度(OPTTX1及びOPTTX2の内、少なくとも一方)が設定されると、モード設定回路MS1及びMS2により信号伝送装置1の状態が校正モード状態から通常モード状態に切り替えられる。
校正モード状態において受信感度校正動作OP_Bのみが行われる場合にあっては、受信感度校正動作OP_Bにて適正受信感度(OPTRX1及びOPTRX2の内、少なくとも一方)が設定されると、モード設定回路MS1及びMS2により信号伝送装置1の状態が校正モード状態から通常モード状態に切り替えられる。
校正モード状態において送信強度校正動作OP_A及び受信感度校正動作OP_Bが行われる場合にあっては、送信強度校正動作OP_Aにて適正送信強度(OPTTX1及びOPTTX2の内、少なくとも一方)が設定され且つ受信感度校正動作OP_Bにて適正受信感度(OPTRX1及びOPTRX2の内、少なくとも一方)が設定されると、モード設定回路MS1及びMS2により信号伝送装置1の状態が校正モード状態から通常モード状態に切り替えられる。
【0152】
例えば、校正トリガ条件は信号伝送装置1が起動するたびに成立する。即ち、信号伝送装置1に対する電源電圧VDD1及びVDD2の供給が遮断された状態から、信号伝送装置1に対して電源電圧VDD1及びVDD2の供給された状態に遷移にすることで信号伝送装置1が起動したときに、校正トリガ条件が成立して良い。この場合、信号伝送装置1の起動直後に信号伝送装置1は校正モードで動作することになる。
【0153】
また例えば、通常モード状態において信号Sn1及びSn2が、一定時間、所定レベル(ローレベル又はハイレベル)にて固定されたとき、校正トリガ条件が成立しても良い。この際、上記の条件判定回路は、信号Sn1及びSn2に基づき校正トリガ条件の成否を判断すれば良い。
図17又は
図19の構成に係るクロックジェネレータCGが二次側回路20の外部に設けられた外部クロック回路である場合において、クロックジェネレータCGが停止状態にあるとき、信号Sn2はローレベル又はハイレベルにて固定され、それに連動して同期出力回路16又はAD変換回路16aの出力信号Sn1はローレベル又はハイレベルにて固定される。そのような状態が一定時間継続したとき、校正トリガ条件が成立したと判定して良い。
【0154】
また例えば、信号伝送装置1の起動後、所定時間が経過するたびに校正トリガ条件が成立しても良い。この際、上記の条件判定回路はタイマを用いて構成トリガ条件の成否を判断すれば良い。例えば1秒に1回だけAD変換が必要なアプリケーションに
図19の信号伝送装置1が用いられる場合、AD変換とAD変換の結果を示す信号Sn1の伝送とが完了するたびに、校正トリガ条件が成立する。
【0155】
この他、校正トリガ条件は信号伝送装置1に対して予め定められた条件であれば任意である。信号伝送装置1の起動後、複数の時刻の夫々にて校正トリガ条件が成立するようにしておけば、信号伝送装置1の送受信に関わる状態を温度変化等に抗して常に最適に保つことができる。
【0156】
<<第8実施例>>
第8実施例を説明する。第8実施例では上述の各種の構成又は動作に対する応用技術又は変形技術等を説明する。
【0157】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0158】
図20に半導体装置100の外観斜視図を示す。信号伝送装置1は半導体装置100に組み込まれた装置であって良い。半導体装置100は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップと、半導体チップを収容する筐体(パッケージ)と、筐体から半導体装置100の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップを樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで半導体装置100が形成される。尚、
図20に示される半導体装置100の外部端子の数及び半導体装置100の筐体の種類は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。
【0159】
半導体装置100に第1~第3半導体チップが設けられて良い。この場合、第1半導体チップ内の半導体集積回路に一次側回路10を含め、且つ、第2半導体チップ内の半導体集積回路に二次側回路20を含める。絶縁素子31及び32は第3半導体チップに形成される(但し、第1及び第2半導体チップに分散して配置されて良い)。
【0160】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0161】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0162】
本開示の一側面に係る信号伝送装置(第1実施例;
図1、
図9~
図11参照)は、互いに絶縁された第1回路(10)及び第2回路(20)を備えた信号伝送装置(1)であって、前記第1回路は第1トランスミッタ(TX1)及び第2レシーバ(RX2)を備え、前記第2回路は第2トランスミッタ(TX2)及び第1レシーバ(RX1)を備え、前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバは、前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバ間に設けられた第1絶縁素子(31)を介して前記第1回路から前記第2回路に対し信号伝送を行うよう構成され、前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバは、前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバ間に設けられた第2絶縁素子(32)を介して前記第2回路から前記第1回路に対し信号伝送を行うよう構成され、前記第1回路及び前記第2回路は、通常モード又は校正モードにて動作し、前記校正モードにおいて、前記第1トランスミッタから矩形波を持つテスト信号を前記第2回路に送信するテスト送信処理と、前記第1レシーバによる前記テスト信号の受信結果に応じて前記第2トランスミッタから矩形波を持つ返信信号を前記第1回路に送信するテスト返信処理とを実行し、前記テスト送信処理及び前記テスト返信処理を通じて前記第1回路にて前記第1トランスミッタの適正送信強度(OPT
TX1)を設定し、前記校正モード後の前記通常モードにおいて、前記第1トランスミッタは前記第1トランスミッタへの入力デジタル信号を前記適正送信強度にて前記第2回路に送信し、前記第1レシーバは前記入力デジタル信号を受信する構成(第1の構成)である。
【0163】
これにより、第1トランスミッタの送信強度の適正化が図られる。送信強度の適正化により消費電力の低減及び発生ノイズ量の低減が期待される。
【0164】
上記第1の構成に係る信号伝送装置において、前記第1回路は、前記第1トランスミッタの送信強度を制御するよう構成された送信強度制御回路(11)を有する第1校正回路(CB1)を備え、前記第2回路は、第2校正回路(CB2)を備え、前記校正モードにおいて、前記第1校正回路は、前記送信強度制御回路を用いて前記第1トランスミッタの送信強度を複数の候補強度間で切り替えながら前記候補強度ごとに前記テスト送信処理を実行し、前記第2校正回路は、前記候補強度ごとに前記テスト信号の前記第1レシーバによる受信可否に応じて前記テスト返信処理の実行制御を行い、前記第1校正回路は、前記第2レシーバによる前記返信信号の受信状態に基づき前記適正送信強度を設定する構成(第2の構成)であっても良い。
【0165】
上記第2の構成に係る信号伝送装置において、前記校正モードにおいて、前記テスト信号が前記第1レシーバにて受信されたとき、前記テスト信号に対応する波形を有する受信矩形波信号(OUT1)が前記第1レシーバから出力され、前記第2校正回路は、前記候補強度ごとに前記第1レシーバからの前記受信矩形波信号の出力有無に基づき前記テスト返信処理の実行有無を制御する構成(第3の構成)であっても良い。
【0166】
上記第3の構成に係る信号伝送装置において、前記複数の候補強度は第1~第m候補強度を含み、第iテスト設定状態にて前記第1トランスミッタの送信強度は第i候補強度であり、mは2以上の整数を表し、iはm以下の自然数を表し、前記第iテスト設定状態にて前記テスト送信処理が実行されたときにおいて、前記第1レシーバから前記受信矩形波信号が出力されたならば、前記第2校正回路は前記テスト返信処理にて前記受信矩形波信号又は所定矩形波信号を前記返信信号として前記第2トランスミッタから前記第1回路に送信させ、前記第1レシーバから前記受信矩形波信号が出力されなかったならば、前記第2校正回路は前記テスト返信処理を非実行とし、前記第1校正回路は、第1~第mテスト設定状態の内、2以上のテスト設定状態における前記第2レシーバでの前記返信信号の受信有無に基づき、前記適正送信強度を設定する構成(第4の構成)であっても良い。
【0167】
上記第2~第4の構成の何れかに係る信号伝送装置において、前記第1校正回路は、前記複数の候補強度の内、前記第1レシーバにて前記テスト信号を受信可能な最小の候補強度を前記適正送信強度に設定する構成(第5の構成)であっても良い。
【0168】
上記第1の構成に係る信号伝送装置において(第3実施例;
図1、
図15及び
図16参照)、前記校正モードにおいて、前記テスト送信処理及び前記テスト返信処理を通じて前記第1回路にて前記第1トランスミッタの前記適正送信強度を設定し且つ前記第2回路にて前記第1レシーバの適正受信感度(OPT
RX1)を設定し、前記校正モード後の前記通常モードにおいて、前記第1トランスミッタは前記適正送信強度にて前記入力デジタル信号を前記第2回路に送信し、前記第1レシーバは前記適正受信感度にて前記入力デジタル信号を受信する構成(第6の構成)であっても良い。
【0169】
これにより、第1トランスミッタの送信強度の適正化に加えて、第1レシーバの受信感度の適正化も図られる。送信強度及び受信感度の適正化により、消費電力の低減及び発生ノイズ量の低減が期待され、且つ、適正なノイズ耐性を有した安定的な通信が可能となる。
【0170】
上記第6の構成に係る信号伝送装置において、前記第1回路は、前記第1トランスミッタの送信強度を制御するよう構成された送信強度制御回路(11)を有する第1校正回路(CB1)を備え、前記第2回路は、前記第1レシーバの受信感度を制御するよう構成された受信感度制御回路(23)を有する第2校正回路(CB2)を備え、前記校正モードにおいて前記第1校正回路及び前記第2校正回路により第1校正処理(OP_A)及び第2校正処理(OP_B)が実行され、前記第1校正処理において、前記第2校正回路は前記受信感度制御回路を用いて前記第1レシーバの受信感度を所定受信感度に固定し、前記第1校正処理において、前記第1校正回路は、前記送信強度制御回路を用いて前記第1トランスミッタの送信強度を複数の候補強度間で切り替えながら前記候補強度ごとに前記テスト送信処理を実行し、前記第2校正回路は、前記候補強度ごとに前記テスト信号の前記第1レシーバによる受信可否に応じて前記テスト返信処理の実行制御を行い、前記第1校正回路は、前記第2レシーバによる前記返信信号の受信状態に基づき暫定送信強度を特定し(S311)、前記第2校正処理において、前記第1校正回路は前記送信強度制御回路を用いて前記第1トランスミッタの送信強度を所定送信強度に固定し、前記第2校正処理において、前記第1校正回路は、前記1トランスミッタを用いて前記テスト送信処理を実行し、前記第2校正回路は、前記受信感度制御回路を用いて前記第1レシーバの受信感度を複数の候補感度間で切り替えながら前記候補感度ごとに前記テスト信号の前記第1レシーバによる受信可否を判定し、判定結果に応じて前記テスト返信処理の実行制御を行い且つ暫定受信感度を特定し(S312)、前記第1校正処理の後、前記第1校正回路は、前記暫定送信強度及び前記所定送信強度の内、高い方を前記適正送信強度に設定し、前記第2校正処理の後、前記第2校正回路は、前記暫定受信感度及び前記所定受信感度の内、高い方を前記適正受信感度に設定する構成(第7の構成)であっても良い。
【0171】
上記第7の構成に係る信号伝送装置において、前記第1校正処理において、前記第1校正回路は、前記複数の候補強度の内、前記第1レシーバにて前記テスト信号を受信可能な最小の候補強度を前記暫定送信強度として特定し、前記第2校正処理において、前記第2校正回路は、前記複数の候補感度の内、前記第1レシーバにて前記テスト信号を受信可能な最小の候補感度を前記暫定受信感度として特定する構成(第8の構成)であっても良い。
【0172】
本開示の他の一側面に係る信号伝送装置(第2実施例;
図1、
図12~
図14参照)は、互いに絶縁された第1回路(10)及び第2回路(20)を備えた信号伝送装置(1)であって、前記第1回路は第1トランスミッタ(TX1)及び第2レシーバ(RX2)を備え、前記第2回路は第2トランスミッタ(TX2)及び第1レシーバ(RX1)を備え、前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバは、前記第1トランスミッタ及び前記第1レシーバ間に設けられた第1絶縁素子(31)を介して前記第1回路から前記第2回路に対し信号伝送を行うよう構成され、前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバは、前記第2トランスミッタ及び前記第2レシーバ間に設けられた第2絶縁素子(32)を介して前記第2回路から前記第1回路に対し信号伝送を行うよう構成され、前記第1回路及び前記第2回路は、通常モード又は校正モードにて動作し、前記校正モードにおいて、前記第1トランスミッタから矩形波を持つテスト信号を前記第2回路に送信するテスト送信処理と、前記第1レシーバによる前記テスト信号の受信結果に応じて前記第2トランスミッタから矩形波を持つ返信信号を前記第1回路に送信するテスト返信処理とを実行し、前記テスト送信処理及び前記テスト返信処理を通じて前記第2回路にて前記第1レシーバの適正受信感度(OPT
RX1)を設定し、前記校正モード後の前記通常モードにおいて、前記第1トランスミッタは前記第1トランスミッタへの入力デジタル信号を前記第2回路に送信し、前記第1レシーバは前記適正受信感度にて前記入力デジタル信号を受信する構成(第9の構成)である。
【0173】
これにより、第1レシーバの受信感度の適正化が図られる。受信感度の適正化により、適正なノイズ耐性を有した安定的な通信が可能となる。
【0174】
上記第9の構成に係る信号伝送装置において、前記第1回路は、第1校正回路(CB1)を備え、前記第2回路は、前記第1レシーバの受信感度を制御するよう構成された受信感度制御回路(23)を有する第2校正回路(CB2)を備え、前記校正モードにおいて、前記第1校正回路は、前記第1トランスミッタを用いて前記テスト送信処理を実行し、前記第2校正回路は、前記受信感度制御回路を用いて前記第1レシーバの受信感度を複数の候補感度間で切り替えながら前記候補感度ごとに前記テスト信号の前記第1レシーバによる受信可否を判定し、判定結果に応じて前記テスト返信処理の実行制御を行い且つ前記適正受信感度を設定する構成(第10の構成)であっても良い。
【0175】
上記第10の構成に係る信号伝送装置において、前記校正モードにおいて、前記テスト信号が前記第1レシーバにて受信されたとき、前記テスト信号に対応する波形を有する受信矩形波信号(OUT1)が前記第1レシーバから出力され、前記第2校正回路は、前記候補感度ごとに前記第1レシーバからの前記受信矩形波信号の出力有無に基づき前記テスト信号の前記第1レシーバによる受信可否を判定する構成(第11の構成)であっても良い。
【0176】
上記第11の構成に係る信号伝送装置において、前記複数の候補感度は第1~第n候補感度を含み、第iテスト設定状態にて前記第1レシーバの受信感度は第i候補感度であり、nは2以上の整数を表し、iはn以下の自然数を表し、前記第iテスト設定状態にて前記テスト送信処理が実行されたときにおいて、前記第1レシーバから前記受信矩形波信号が出力されたならば、前記第2校正回路は前記テスト返信処理にて前記受信矩形波信号又は所定矩形波信号を前記返信信号として前記第2トランスミッタから前記第1回路に送信させ、前記第1レシーバから前記受信矩形波信号が出力されなかったならば、前記第2校正回路は前記テスト返信処理を非実行とし、前記第2校正回路は、第1~第nテスト設定状態の内、2以上のテスト設定状態における前記第1レシーバでの前記テスト信号の受信可否に基づき、前記適正受信感度を設定する構成(第12の構成)であっても良い。
【0177】
上記第10~第12の構成の何れかに係る信号伝送装置において、前記第2校正回路は、前記複数の候補感度の内、前記第1レシーバにて前記テスト信号を受信可能な最小の候補感度を前記適正受信感度に設定する構成(第13の構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0178】
1 信号伝送装置
10 一次側回路
11 送信強度制御回路
12 テスト信号生成回路
13 受信判定回路
16 同期出力回路
20 二次側回路
21 受信判定回路
22 信号監視回路
23 受信感度制御回路
26 信号処理回路
31、32 絶縁素子
31_R、31_F、32_R、32_F パルストランス
31_Rt、31_Ft、32_Rt、32_Ft 送信側コイル
31_Rr、31_Fr、32_Rr、32_Fr 受信側コイル
100 半導体装置
TX1、TX2 トランスミッタ
ED1、ED2 エッジ検出回路
Rdrv1、Fdrv1、Rdrv2、Fdrv2 ドライバ
RX1、RX2 レシーバ
Rdet1、Fdet1、Rdet2、Fdet2 検出回路
CMP1、CMP2 コンパレータ
CB1、CB2 校正回路
MS1、MS2 モード設定回路
SEL_IN1、SEL_IN1 入力セレクタ
SEL_OUT1、SEL_OUT1 出力セレクタ
ND1b、ND1c、ND1d、ND2b、ND2c、ND2d 入力ノード
ND1a、ND1e、ND1f、ND2a、ND2e、ND2f 出力ノード
IN1、IN2 入力信号
OUT1、OUT2 出力信号
Sn1、Sn2、Sc1、Sc2 信号
CLK1、CLK2 クロック信号
VDD1、VDD2 電源電圧
GND1、GND2 グランド
CG クロックジェネレータ
SMN1 監視結果信号
ED_R1、ED_F1、ED_R2、ED_F2 信号
SR1、SF1、SR2、SF2 信号
VP1、VM1、VP2、VM2 電圧