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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137019
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】磁気ディスク装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/596 20060101AFI20240927BHJP
   G11B 5/09 20060101ALI20240927BHJP
   G11B 21/10 20060101ALI20240927BHJP
   G11B 21/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G11B5/596
G11B5/09 321Z
G11B21/10 W
G11B21/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048363
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田上 尚基
(57)【要約】
【課題】位置決め精度が高い磁気ディスク装置および方法を提供すること。
【解決手段】磁気ディスクにはサーボセクタが設けられており、サーボセクタにはプリアンブルおよびバーストパターンが記録されている。プリアンブルの記録周波数はバーストパターンの記録周波数の偶数倍と異なる。コントローラは、磁気ヘッドがサーボセクタを通過する間に、バーストパターンの復調期間を判断し、復調期間にバーストパターンを復調することによって、バーストパターンの復調信号の第1位相と磁気ヘッドの第1位置情報とを取得する。コントローラは、第1位相に基づいて第1位置情報を補正し、補正後の第1位置情報である第2位置情報に基づいて磁気ヘッドの位置決め制御を実行する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれはプリアンブルとバーストパターンとを含んだサーボデータが記録された少なくとも2つ以上の第1サーボセクタが円周方向に間隔を空けて配置され、前記プリアンブルの記録周波数は第1周波数のK分の1(ただしKは正の整数)であり、前記バーストパターンの記録周波数は前記第1周波数のL分の1(ただしLは正の整数)であり、前記プリアンブルの記録周波数は前記バーストパターンの記録周波数の偶数倍と異なる、磁気ディスクと、
前記磁気ディスクに対して前記円周方向に沿ったライト/リード方向にデータのライト/リードを実行する磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドが前記少なくとも2つ以上の第1サーボセクタのうちの一つを通過する間に、前記バーストパターンの復調期間を判断し、
前記復調期間において前記バーストパターンを前記第1周波数でサンプリングし、
サンプリングによって得られたバースト波形を復調することによって、前記サンプリングによって得られたバースト波形の第1位相と、前記磁気ヘッドの第1位置情報とを取得し、
前記第1位相に基づいて前記第1位置情報を補正し、
補正後の前記第1位置情報である第2位置情報に基づいて前記磁気ヘッドの位置決め制御を実行する、
コントローラと、
を備える磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記バーストパターンの記録周波数は前記プリアンブルの記録周波数の2/3倍である、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第1位相に基づいて前記復調期間のタイミングずれの有無を判断し、
前記タイミングずれが有る場合、前記第1位置情報と異なる前記第2位置情報を取得し、
前記タイミングずれが無い場合、前記第1位置情報を前記第2位置情報として取得する、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記タイミングずれが有る場合、
前記第1位置情報の符号が正であるとき前記第1位置情報からサーボトラックピッチに相当する量を減算することによって前記第2位置情報を取得し、
前記第1位置情報の符号が負であるとき前記第1位置情報にサーボトラックピッチに相当する量を加算することによって前記第2位置情報を取得する、
請求項3に記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記バーストパターンは、NバーストとQバーストとを含み、
前記コントローラは、前記Nバーストと前記Qバーストを前記第1周波数でサンプリングすることで、前記Nバーストのサンプリングによって得られる前記バースト波形であるNバーストサンプリング波形と前記Qバーストのサンプリングによって得られる前記バースト波形であるQバーストサンプリング波形を取得し、前記Nバーストサンプリング波形と前記Qバーストサンプリング波形を復調することで、前記Nバーストサンプリング波形の第1振幅と第2位相、前記Qバーストサンプリング波形の第2振幅と第3位相を取得し、
前記第2位相と、前記第3位相と、に対して前記第1振幅を2乗して得られる値と前記第2振幅を2乗して得られる値との比率に基づく重み付け加算によって前記第1位相を取得する、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記第1サーボセクタのそれぞれには、前記ライト/リード方向における前記バーストパターンの前方にサーボマークが記録され、
前記第1サーボセクタは少なくとも3つ以上あり、前記第1サーボセクタは、少なくとも2つ以上の第2サーボセクタと、それぞれは前記少なくとも2つ以上の第2サーボセクタのうちの2つの第2サーボセクタの間に配置された少なくとも1つ以上の第3サーボセクタと、を含み、
前記コントローラは、前記少なくとも2つ以上の第2サーボセクタのうちの一の第2サーボセクタにおいて前記サーボマークを検出したタイミングに基づいて、前記ライト/リード方向における前記少なくとも2つ以上の第2サーボセクタのうちの前記一の第2サーボセクタの後方に配置された前記第3サーボセクタにおける前記バーストパターンの復調期間を判断する、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記磁気ディスクは、前記ライト/リード方向において、ユーザデータがライトされ得るデータ領域が、前記複数の第3サーボセクタそれぞれの前記バーストパターンが記録された領域の直後に配置されている、
請求項6に記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
それぞれはプリアンブルとバーストパターンとを含んだサーボデータが記録された少なくとも2つ以上の第1サーボセクタが円周方向に間隔を空けて配置され、前記プリアンブルの記録周波数は第1周波数のK分の1(ただしKは正の整数)であり、前記バーストパターンの記録周波数は前記第1周波数のL分の1(ただしLは正の整数)であり、前記プリアンブルの記録周波数は前記バーストパターンの記録周波数の偶数倍と異なる、磁気ディスクと、磁気ヘッドと、を備える磁気ディスク装置を制御する方法であって、前記方法は、
前記磁気ヘッドが前記少なくとも2つ以上の第1サーボセクタのうちの一つを通過する間に、前記バーストパターンの復調期間を判断することと、
前記復調期間において前記バーストパターンを前記第1周波数でサンプリングすることと、
サンプリングによって得られたバースト波形を復調することによって、前記サンプリングによって得られたバースト波形の第1位相と、前記磁気ヘッドの第1位置情報とを取得することと、
前記復調信号の前記第1位相に基づいて前記第1位置情報を補正することと、
補正後の前記第1位置情報である第2位置情報に基づいて前記磁気ヘッドの位置決め制御を実行することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、磁気ディスク装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置が備える磁気ディスクにはサーボセクタが円周方向に間隔を空けて配置される。各サーボセクタにはサーボマークおよびバーストパターンを含むサーボデータが記録される。サーボマークは、サーボデータの復調タイミングを決めるための基準とされるデータである。バーストパターンは、トラックセンタからの磁気ヘッドの位置のオフセット量を検出するためのデータである。
【0003】
近年は、通常のサーボセクタ(以降、ノーマルサーボセクタと表記する)よりも復調されるデータの量が少ないショートサーボセクタを有する磁気ディスク装置が検討されている。そのような磁気ディスク装置は、ショートサーボセクタにおいては、サーボマークの復調を行わずにバーストパターンの復調を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-144965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの実施形態は、位置決め精度が高い磁気ディスク装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態によれば、磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、磁気ヘッドと、コントローラと、を備える。磁気ディスクには、それぞれはプリアンブルとバーストパターンとを含んだサーボデータが記録された少なくとも2つ以上の第1サーボセクタが円周方向に間隔を空けて配置される。プリアンブルの記録周波数は第1周波数のK分の1(ただしKは正の整数)であり、バーストパターンの記録周波数の第1周波数のL分の1(ただしLは正の整数)である。プリアンブルの記録周波数はバーストパターンの記録周波数の偶数倍と異なる。磁気ヘッドは、磁気ディスクに対して円周方向に沿ったライト/リード方向にデータのライト/リードを実行する。コントローラは、磁気ヘッドが少なくとも2つ以上の第1サーボセクタのうちの一つを通過する間に、バーストパターンの復調期間を判断し、復調期間においてバーストパターンを第1周波数でサンプリングする。コントローラは、サンプリングによって得られたバースト波形を復調することによって、サンプリングによって得られたバースト波形の第1位相と、磁気ヘッドの第1位置情報とを取得する。コントローラは、第1位相に基づいて第1位置情報を補正し、補正後の第1位置情報である第2位置情報に基づいて磁気ヘッドの位置決め制御を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態の磁気ディスク装置の構成の一例を示す模式的な図である。
図2図2は、第1の実施形態の磁気ディスクの構成の一例を示す模式的な図である。
図3図3は、第1の実施形態のリードヘッドおよびライトヘッドの間の位置関係の一例を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態のノーマルサーボセクタの構成の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態のショートサーボセクタの構成の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態のショートサーボセクタにライトされたNバーストおよびQバーストの構成の一例を示す模式的な図である。
図7図7は、第1の実施形態のNバーストおよびQバーストのそれぞれがバースト復調ウィンドウにおいてRWCによって復調された時に得られる、オフセット量に対する振幅と位相とを示す図である。
図8図8は、第1の実施形態のバーストパターンを使用した場合における、Nバーストの位相とタイミングずれ量との関係の一例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態の磁気ディスク装置において得られるNバーストの位相とタイミングずれ量との関係の一例を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態の折り返し動作を説明するための図である。
図11図11は、第1の実施形態のショートサーボセクタにおける復調位置の計算方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図12図12は、第2の実施形態の磁気ディスク装置で実行される初期位相補正動作に関連した動作の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、第2の実施形態のコントローラが取得した初期位相補正値の分布の一例を示す図である。
図14図14は、第2の実施形態の復調位置補正動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる磁気ディスク装置および方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の磁気ディスク装置1の構成の一例を示す模式的な図である。
【0010】
磁気ディスク装置1は、ホスト2に接続される。磁気ディスク装置1は、ホスト2から、ライトコマンドやリードコマンドなどを受信することができる。
【0011】
磁気ディスク装置1は、表面に磁性層が形成された磁気ディスク11を備える。磁気ディスク装置1は、アクセスコマンドに応じて磁気ディスク11にデータをライトしたり磁気ディスク11からデータをリードしたりする。
【0012】
データのライトおよびリードは、磁気ヘッド22を介して行われる。具体的には、磁気ディスク装置1は、磁気ディスク11のほかに、スピンドルモータ12、ランプ(ramp)13、アクチュエータアーム15、ボイスコイルモータ(VCM)16、モータドライバIC(Integrated Circuit)21、磁気ヘッド22、ハードディスクコントローラ(HDC)23、ヘッドIC24、リードライトチャネル(RWC)25、プロセッサ26、RAM27、FROM(Flash Read Only Memory)28、バッファメモリ29、およびカウンタ31を備える。
【0013】
磁気ディスク11は、同軸に取り付けられたスピンドルモータ12により、所定の回転速度で回転される。スピンドルモータ12は、モータドライバIC21により駆動される。
【0014】
プロセッサ26はモータドライバIC21を介して、スピンドルモータ12の回転およびVCM16の回転を制御する。
【0015】
磁気ヘッド22は、それに備わるライトヘッド22wおよびリードヘッド22rにより、磁気ディスク11に対してデータのライトおよびデータのリードを行う。また、磁気ヘッド22は、アクチュエータアーム15の先端に取り付けられている。磁気ヘッド22は、モータドライバIC21によって駆動されるVCM16により、磁気ディスク11の半径方向に移動される。なお、磁気ヘッド22に備わるライトヘッド22wおよびリードヘッド22rのいずれか一方、またはその両方は、それぞれ単一の磁気ヘッド22に対して複数設けられても良い。
【0016】
磁気ディスク11の回転が停止しているときなどは、磁気ヘッド22は、ランプ13上に移動される。ランプ13は、磁気ヘッド22を、磁気ディスク11から離間した位置で保持するように構成されている。
【0017】
ヘッドIC24は、リード動作時に、磁気ヘッド22が磁気ディスク11からリードした信号を増幅して出力し、RWC25に供給する。また、ヘッドIC24は、ライト動作時に、RWC25から供給されたライト対象のデータに対応した信号を増幅して、磁気ヘッド22に供給する。
【0018】
HDC23は、I/F バスを介してホスト2との間で行われるデータの送受信の制御、バッファメモリ29の制御、および読み出されたデータの誤り訂正処理などを行う。
【0019】
バッファメモリ29は、ホスト2との間で送受信されるデータのバッファとして用いられる。例えば、バッファメモリ29は、ライト対象のデータ、または磁気ディスク11からリードされたデータ、を一時記憶するために用いられる。
【0020】
バッファメモリ29は、例えば、高速な動作が可能な揮発性メモリによって構成される。バッファメモリ29を構成するメモリの種類は、特定の種類に限定されない。バッファメモリ29は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、またはこれらの組み合わせによって構成され得る。なお、バッファメモリ29は、任意の不揮発性メモリによって構成されてもよい。
【0021】
RWC25は、HDC23から供給されるライト対象のデータを変調してヘッドIC24に供給する。また、RWC25は、磁気ディスク11からリードされヘッドIC24から供給された信号を復調してデジタルデータとしてHDC23へ出力する。
【0022】
プロセッサ26は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ26には、RAM27、FROM(Flash Read Only Memory)28、バッファメモリ29、およびカウンタ31が接続されている。
【0023】
FROM28は、不揮発性メモリの一種である。FROM28には、ファームウェア(プログラムデータ)および各種の動作パラメータなどが格納される。なお、ファームウェアは、磁気ディスク11に格納されてもよい。
【0024】
RAM27は、例えばDRAM、SRAM、またはこれらの組み合わせによって構成される。RAM27は、プロセッサ26によって動作用のメモリとして使用される。RAM27は、ファームウェアがロードされる領域、および各種の管理データが一時記憶される領域として使用される。
【0025】
プロセッサ26は、FROM28または磁気ディスク11に格納されているファームウェアに従って、この磁気ディスク装置1の全体的な制御を行う。例えば、プロセッサ26は、ファームウェアをFROM28または磁気ディスク11からRAM27にロードし、ロードされたファームウェアに従って、モータドライバIC21、ヘッドIC24、RWC25、HDC23などの制御を実行する。
【0026】
カウンタ31は、時間に従ってカウント値が増加するタイマ回路である。プロセッサ26は、各種動作のタイミングを判断するためにカウンタ31を使用する。カウンタ31の種類は特定の種類に限定されない。一例では、カウンタ31はVCO(Voltage-controlled oscillator)カウンタであってもよい。
【0027】
なお、HDC23、RWC25、プロセッサ26、およびカウンタ31を含む構成は、コントローラ30と見なすこともできる。コントローラ30は、これらのほかに、他の要素(例えばRAM27、FROM28、またはバッファメモリ29など)を含んでいてもよい。カウンタ31は、コントローラ30の外部に設けられていてもよい。
【0028】
また、ファームウェアプログラムは磁気ディスク11に格納されていてもよい。また、プロセッサ26の機能の一部または全部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0029】
図2は、第1の実施形態の磁気ディスク11の構成の一例を示す模式的な図である。なお、本図には、磁気ディスク11の回転方向の一例が示されている。磁気ヘッド22は、磁気ディスク11の回転によって磁気ディスク11に対して相対移動する。したがって、ライト/リード方向、即ち円周方向に沿った磁気ヘッド22によってデータがライトまたはリードされる方向は、磁気ディスク11の回転方向の逆向きである。
【0030】
磁気ディスク11には、製造工程において、例えばサーボライタによって、またはセルフサーボライト(SSW)によって、磁気ヘッド22の位置決めに使用されるサーボデータがライトされる。図2によれば、サーボデータがライトされたサーボ領域の配置の一例として半径方向に放射状にかつ円周方向に所定の間隔を空けて配置された複数のサーボ領域SVが描画されている。円周方向に連続する2つのサーボ領域SVの間は、データがライトされるデータ領域DAとして使用される。複数のサーボ領域SVは、少なくとも2つ以上書かれている。
【0031】
複数のサーボ領域SVは、複数のノーマルサーボ領域NSVと、複数のショートサーボ領域SSVとを含む。図2に示された例によれば、ノーマルサーボ領域NSVとショートサーボ領域SSVとが円周方向に交互に配置される。つまり、円周方向に連続して配置された2つのノーマルサーボ領域NSVの間、換言すると隣り合う2つのノーマルサーボ領域NSVの間、に、少なとくとも1つ以上のショートサーボ領域SSVが配置される。
【0032】
磁気ディスク11の半径方向には、同心円の複数のサーボトラック41が設けられる。サーボ領域SVにライトされたサーボデータは、磁気ヘッド22の位置決め制御に使用される。
【0033】
より詳しくは、磁気ディスク11の複数のサーボトラック41が設けられた領域の上には、同心円の複数のデータトラックが設けられる。複数のサーボトラック41が複数のデータトラックとして使用されてもよいし、複数のサーボトラック41と異なる複数のデータトラックが設けられていてもよい。各データトラック上のデータ領域DAによって区分される領域には、円周方向に連続する複数のデータトラックが設けられる。各データトラックにはデータがライトされ得る。なお、各データトラックにライトされ得るデータは、ホスト2から受信したユーザデータ、ユーザデータに付随するメタデータ(例えば誤り訂正符号)、システムデータ、などを含む。磁気ディスク装置1は、複数のサーボトラック41と複数のデータトラックとの位置関係の設定を予め保持しており、サーボ領域SVに記録されたサーボデータに基づいて、磁気ヘッド22を目標のデータトラックに位置決めする、位置決め制御を行う。位置決め制御は、磁気ヘッド22を目標のデータトラックに向けて半径方向に移動させる動作であるシーク動作や、磁気ヘッド22を目標のデータトラック上に維持するトラッキング動作などを含む。
【0034】
以降、サーボトラック41上においてノーマルサーボ領域NSVによって区分される領域を、ノーマルサーボセクタNSVと表記する。サーボトラック41上においてショートサーボ領域SSVによって区分される領域を、ショートサーボセクタSSVと表記する。また、ノーマルサーボセクタNSVおよびショートサーボセクタSSVを、サーボセクタSVと総称する。
【0035】
また、ライト/リード方向に沿って第1のデータと第2のデータとがライトされており、かつ第1のデータは第2のデータよりも先にリードされる領域にライトされている場合、第2のデータがライトされた領域からみた第1のデータの領域に向かう向きを、第2のデータがライトされた領域の「前」または「前方」と表記する場合がある。反対に、第1のデータがライトされた領域からみた第2のデータの領域に向かう向きを、第1のデータがライトされた領域の「後」または「後方」と表記する場合がある。第1の領域に着目しているときに「直前の第2の領域」または「直前に配置された第2の領域」と表記した場合、「直前の第2の領域」および「直前に配置された第2の領域」は、第1の領域を磁気ヘッド22が通過する前に最後に磁気ヘッド22が通過する第2の領域を指すこととする。第1の領域に着目しているときに「直後の第2の領域」または「直後に配置された第2の領域」と表記した場合、「直後の第2の領域」および「直後に配置された第2の領域」は、第1の領域を磁気ヘッド22が通過した後に最初に磁気ヘッド22が通過する第2の領域を指すこととする。
【0036】
また、円周方向において、或る領域の前側の端部を、その領域の「先頭」と表記する場合がある。また、円周方向において、或る領域の後ろ側の端部を、その領域の「末尾」と表記する場合がある。
【0037】
図3は、第1の実施形態のリードヘッド22rおよびライトヘッド22wの間の位置関係の一例を説明するための図である。本図に示される例によれば、リードヘッド22rおよびライトヘッド22wは、アクチュエータアーム15が延びる方向に配列されている。そして、リードヘッド22rは、ライトヘッド22wよりもアクチュエータアーム15の回転軸に近い側に配置されている。そして、磁気ヘッド22が或るデータトラック上に位置決めされている状態においては、ライトヘッド22wは、リードヘッド22rに遅れて磁気ディスク11に対して相対移動する。
【0038】
つまり、磁気ディスク11の円周方向において、リードヘッド22rとライトヘッド22wとの間にギャップが存在し、かつ、ライトヘッド22wは、磁気ディスク11に対しにリードヘッド22rにギャップ分だけ遅れるように相対移動する。リードヘッド22rとライトヘッド22wとの間の円周方向のギャップの長さは、リードライトギャップ長と表記される。
【0039】
なお、リードライトギャップ長は、磁気ヘッド22のスキュー角に応じて変動する。そして、磁気ヘッド22のスキュー角は、磁気ヘッド22の半径位置に応じて変動する。つまり、リードライトギャップ長は、半径位置に応じて変動する。
【0040】
データをデータ領域DAにライトするライト動作においては、リードヘッド22rによるサーボ領域SVからのサーボデータのリードと、ライトヘッド22wによるデータ領域DAに対するデータのライトと、が時間的に排他的に実行される。しかしながら、ライトヘッド22wはリードライトギャップ長だけリードヘッド22rよりも遅れて磁気ディスク11の円周方向に移動するため、データのライトが不可能な領域が円周方向におけるサーボセクタSVの直前に生じる場合がある。このようなデータのライトが不可能な領域は、本明細書において、ライト不可領域(unwritable area)と表記される。
【0041】
磁気ディスク11内のライト不可領域の合計容量を出来るだけ少なくするために、コントローラ30は、ライト動作の際には、ショートサーボセクタSSVのうちの前部分(front part)に記録されたサーボデータのリードは行なわない。
【0042】
即ち、ライト動作においては、ショートサーボセクタSSVのうちのサーボデータのリードが実行される区間の長さは、ノーマルサーボセクタNSVのうちのサーボデータのリードが実行される区間の長さに比べて短くなるようにショートサーボセクタSSVおよびノーマルサーボセクタNSVが構成される。そして、ライト動作においては、ショートサーボセクタSSVの前部分はリードされないように、ショートサーボセクタSSVおよびノーマルサーボセクタNSVが構成される。
【0043】
コントローラ30は、ライト動作においてリードヘッド22rがショートサーボセクタSSV上に至っても、リードヘッド22rがショートサーボセクタSSVのうちの後ろ部分(rear part)に到達するまでデータのライトを行うことが可能であるので、ショートサーボセクタSSVの直前に存在するライト不可領域の長さを抑制できる。その結果、磁気ディスク11内のライト不可領域の合計容量を抑制できる。
【0044】
なお、ショートサーボセクタSSVの前部分に記録されたサーボデータは、シーク動作またはリード動作においてはリードされてもよい。リード動作は、データ領域DAからデータをリードする動作である。
【0045】
図4は、第1の実施形態のノーマルサーボセクタNSVの構成の一例を示す図である。本図には、ノーマルサーボセクタNSVの構成と、リードヘッド22rがノーマルサーボセクタNSV上に位置する時間を表す時間軸と、が図示されている。
【0046】
ノーマルサーボセクタNSVには、プリアンブルが記録されたプリアンブル領域PA、サーボマークが記録されたサーボマーク領域SM、グレイコードが記録されたグレイコード領域GC、PADが記録されたパッド領域PAD、Nバーストが記録されたバースト領域NB、Qバーストが記録されたバースト領域QB、およびポストコードが記録されたポストコード領域PCが、この順番でライト/リード方向に配置されている。
【0047】
プリアンブルは、円周方向に周期的に変化する単一の周期のパターンデータである。プリアンブルは、リードヘッド22rによりリードしたサーボ波形をサーボクロックに基づいてRWC25にサンプリングデータとして取り込む時において、サンプリングデータの振幅、位相および周波数の調整に使用される。
【0048】
なお、サーボクロックはRWC25が生成する。サーボクロックの周波数は第1周波数の一例である。
【0049】
サーボマークは、サーボデータの復調タイミングを決定するためのパターンデータである。コントローラ30は、サーボマークの検出タイミング(具体的には図4のタイミングt1)とカウンタ31のカウント値とに基づき、以降の各種サーボデータの復調タイミングを判断する。
【0050】
グレイコードは、磁気ディスク11に設けられた各サーボトラック41を識別するためのシリンダアドレスと、サーボトラック41上の各サーボセクタSVを識別するためのセクタアドレスとを含む。
【0051】
PADは、グレイコード領域GCとバースト領域NBとの境界を示す。
【0052】
NバーストおよびQバーストは、グレイコードに含まれるトラック番号が示すサーボトラック41のトラックセンタからの位置ずれ量を検出するために使用されるパターンデータである。グレイコードに含まれるシリンダアドレスは半径位置の情報のうちの整数値に相当する情報である。半径位置の情報のうちの小数点以下の情報はNバーストおよびQバーストを復調することによって得られる。つまり、NバーストおよびQバーストを復調することによって得られる。以降、グレイコード、Nバースト、およびQバーストを復調することによって得られる磁気ヘッド22の現在位置は、復調位置、と表記される。
【0053】
図4には、さらに、サーボゲートの波形の一例およびバーストゲートの波形の一例が図示されている。なお、本図に図示されるサーボゲートの波形およびバーストゲートの波形は、ライト動作の際の波形を示している。
【0054】
サーボゲートは、プロセッサ26がRWC25に送信する信号であって、サーボデータの復調が許可されている期間を表す信号である。図4に示される例では、サーボゲートが“H”レベルであることは、サーボデータの復調が許可されていることを表し、サーボゲートが“L”レベルであることは、サーボデータの復調が許可されていないことを表す。RWC25は、サーボゲートが“H”レベルである期間にサーボデータの復調を実行する。
【0055】
バーストゲートは、RWC25の内部信号である。バーストゲートは、バーストパターン(即ちNバーストNBおよびQバーストQB)の復調が実行される期間を表す信号である。図4に示される例では、バーストゲートが“L”レベルから“H”レベルに立ち上がるタイミングは、バーストパターンの復調を開始するタイミングを表し、バーストゲートが“H”レベルから“L”レベルに立ち下がるタイミングは、バーストパターンの復調を終了するタイミングを表す。つまり、バーストゲートが“H”に維持された期間は、バーストパターンの復調期間を表す。
【0056】
以降、サーボゲートまたはバーストゲートなどの信号を“L”レベルから“H”レベルに遷移させることを、ゲートを開ける、と表記する。サーボゲートまたはバーストゲートなどの信号を“H”レベルから“L”レベルに遷移させることを、ゲートを閉じる、と表記する。
【0057】
プロセッサ26は、リードヘッド22rがプリアンブル領域PAに至る予め設定されたタイミング(例えばタイミングt0)に、サーボゲートを開ける。そして、RWC25は、サーボマークを検出したタイミングを基準としたタイミングで、グレイコード領域GCにライトされたグレイコードの復調、バースト領域NBにライトされたNバーストの復調、バースト領域QBにライトされたQバーストの復調、ポストコード領域PCにライトされたポストコードの復調、を実行する。
【0058】
例えば、RWC25は、リードヘッド22rがバースト領域NBを通過する例えばタイミングt2からタイミングt3までの期間と、リードヘッド22rがバースト領域QBを通過する例えばタイミングt4からタイミングt5までの期間と、をサーボマークが検出されたタイミングからのカウンタ31のカウント値の変化量に基づいて判断する。そして、RWC25は、タイミングt2からタイミングt3までの期間と、タイミングt4からタイミングt5までの期間と、にバーストゲートを開けた状態に維持し、それぞれの期間にサーボデータの復調を行う。RWC25は、バーストゲートが開いた状態になっているタイミングt2からタイミングt3までの期間にリードされたサーボデータをNバースト復調データとして取得する。また、RWC25は、次にバーストゲートが開いた状態となっているタイミングt4からタイミングt5までの期間にリードされたサーボデータをQバースト復調データとして取得する。このように、RWC25は、サーボマークが検出されたタイミングに基づいてバーストパターンの復調期間を判断する。なお、タイミングt2からタイミングt3までの期間と、タイミングt4からタイミングt5までの期間は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0059】
プロセッサ26は、リードヘッド22rがポストコード領域PCの末尾に至る予め設定されたタイミングに(例えばタイミングt6)、サーボゲートを閉じる。これによって、ノーマルサーボセクタNSVにライトされたサーボデータの復調が終了される。
【0060】
図5は、第1の実施形態のショートサーボセクタSSVの構成の一例を示す図である。本図には、ショートサーボセクタSSVの構成と、リードヘッド22rがショートサーボセクタSSV上に位置する時間を表す時間軸と、が図示されている。また、サーボゲートの波形の一例と、バーストゲートの波形の一例とが図示されている。本図に図示されるサーボゲートの波形およびバーストゲートの波形は、ライト動作の際の波形を示している。
【0061】
ショートサーボセクタSSVには、プリアンブルが記録されたプリアンブル領域PA、サーボマークが記録されたサーボマーク領域SM、グレイコードが記録されたグレイコード領域GC、PADが記録されたパッド領域PAD、Nバーストが記録されたバースト領域NB、およびQバーストが記録されたバースト領域QBが、この順番でライト/リード方向に配置されている。バースト領域QBの直後からデータ領域DAが設けられている。つまり、図5に示される例では、ショートサーボセクタSSVは、図4に例示されたノーマルサーボセクタNSVからポストコード領域PCを省略した構成を有する。
【0062】
ショートサーボセクタSSVが備える各領域の円周方向における長さは、ノーマルサーボセクタNSVが備える同名の領域の長さと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
ライト動作において、リードヘッド22rがショートサーボセクタSSVを通過する際には、プロセッサ26は、例えば、リードヘッド22rがバースト領域NBの先頭に至る直前の予め設定されたタイミング(例えばタイミングt10)にサーボゲートを開け、リードヘッド22rがバースト領域QBの末尾に至る予め設定されたタイミング(例えばタイミングt15)に、サーボゲートを閉じる。よって、このサーボゲートの波形により、磁気ヘッド22がショートサーボセクタSSVのうちの前部分、つまり図5に示される例ではプリアンブル領域PA、サーボマーク領域SM、およびグレイコード領域GC、を通過する期間にはサーボデータのリードは実施されない。よって、コントローラ30は、ショートサーボセクタSSVの直前のデータ領域DAに対し、ショートサーボセクタSSVの先頭の近くまでデータをライトすることが可能である。
【0064】
サーボゲートが開いているタイミングt10からタイミングt15までの期間においては、RWC25は、バーストゲートを操作して、バーストゲートが開いている期間にバーストデータの復調を行う。具体的には、RWC25は、例えば、リードヘッド22rがバースト領域NBを通過する例えばタイミングt11からタイミングt12までの期間と、リードヘッド22rがバースト領域QBを通過する例えばタイミングt13からタイミングt14までの期間と、を、直前のノーマルサーボセクタNSVにおいてサーボマークが検出されたタイミングからのカウンタ31のカウント値の変化量に基づいて判断する。そして、RWC25は、タイミングt11からタイミングt12までの期間と、タイミングt13からタイミングt14までの期間と、にバーストゲートを開けた状態に維持し、それぞれの期間にサーボデータの復調を行う。RWC25は、タイミングt11からタイミングt12までの期間にリードされたサーボデータをNバースト復調データとして取得し、タイミングt13からタイミングt14までの期間にリードされたサーボデータをQバースト復調データとして取得する。このように、RWC25は、ショートサーボセクタSSVにおいては、直前のノーマルサーボセクタNSVにおいてサーボマークが検出されたタイミングに基づいてバーストパターンの復調期間を判断する。なお、タイミングt11からタイミングt12までの期間と、タイミングt13からタイミングt14までの期間は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
図6は、第1の実施形態のショートサーボセクタSSVにライトされたNバーストおよびQバーストの構成の一例を示す模式的な図である。横軸は、或るサーボトラックのトラックセンタからのオフセット量を示す。縦軸は、バースト領域NBの先頭を原点とした円周位置を示す。黒色のパターンは、極性が互いに異なる2つの値のうちの一(+極性の磁化)を示し、白色のパターンは、当該2つの値のうちの他(-極性の磁化)を示す。
【0066】
図6の説明以降では、周方向のサーボ波形の長さ、または時間を表す単位としてdibitを用いる。プリアンブルの記録周波数がサーボクロックの周波数の4分の1倍と等しくなるように、プリアンブルの記録周波数およびサーボクロックの周波数が決められている。よって、1クロックのサーボクロックで磁気ヘッド22が円周方向に移動する距離、または時間をSFGclkと表記することとすると、プリアンブルの周期は、4×SFGclkに相当する。1dibitは、4×SFGclkを表す。よって、1dibitは、プリアンブルの1周期に相当する。図6の縦軸は、バースト領域NBの先頭を基準とした円周位置をdibitの単位で示す。
【0067】
また、半径方向の長さを、サーボトラック単位、換言するとサーボトラックピッチを1と見なした空間的長さの単位、で表すことがある。サーボトラックピッチを1と見なした空間的長さの単位を、Svtrk、と表記する。図6の横軸は、Svtrkの単位でオフセット量を示す。
【0068】
図6に示される例では、バースト領域NBおよびバースト領域QBのそれぞれは、円周方向に16dibitの長さを有する。そして、NバーストおよびQバーストのそれぞれは、円周方向に0.75dibit毎に極性が反転する構成を有する。つまり、NバーストおよびQバーストのそれぞれは、円周方向に1.5dibitの周期の変化パターンを有する。
【0069】
半径方向に関しては、NバーストおよびQバーストのそれぞれは、1Svtrk毎に極性が反転する。つまり、NバーストおよびQバーストのそれぞれは、半径方向に2Svtrkの周期の変化パターンを有する。Nバーストは、トラックセンタから0.5Svtrkだけオフセットした位置において最大振幅が得られるように、記録されている。また、Qバーストは、トラックセンタにおいて最大振幅が得られるように、記録されている。
【0070】
NバーストおよびQバーストがこのような構成を有するため、NバーストおよびQバーストの円周方向の周期は、プリアンブルの周期の1.5倍となる。よって、NバーストおよびQバーストの円周方向の記録周波数は、サーボクロックの周波数の6分の1倍となる。また、NバーストおよびQバーストの円周方向の記録周波数は、プリアンブルの記録周波数の3分の2倍となる。
【0071】
なお、前述したように、NバーストおよびQバーストの円周方向の周期、つまりバースト周期は、1.5dibitである。つまり、各バーストパターンについて位相の概念を導入すると、円周方向においては、1.5dibitが360degと対応する。以降、360degは1.5dibitに対応することとして、位相についてもdibitで表記することがある。また、円周方向における位相だけでなく、半径方向における位相の変化についても、半径方向に1Svtrkオフセットしたときのバーストパターンの極性が反転するときの位相変化180degは、0.75dibitに対応することとして、dibitで表記することがある。
【0072】
図6は、あくまでも一例を表す模式図である。ライトヘッド22wの性能に依存して、黒色で示したパターンと白色で示したパターンとの境界はあいまいに記録され得る。また、バースト領域NBおよびバースト領域QBの円周方向の長さは、上記説明した長さに限定されない。バースト領域NBの円周方向の長さとバースト領域QBの円周方向の長さとは互いに相違していてもよい。
【0073】
前述されたように、RWC25は、バーストゲートが開いている期間にバーストパターン(つまりNバーストおよびQバーストのそれぞれ)の復調を行う。バーストゲートが開いている期間、つまりバーストパターンの復調期間を、バースト復調ウィンドウと表記する。復調の動作では、RWC25は、バースト復調ウィンドウにおいて、バーストパターンをサーボクロックに基づくサンプリング間隔、つまりサーボクロックの周波数、で取り込む。それによって得られたサーボサンプリング波形に対し、RWC25は、例えば離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform : DFT)の処理を行い、バーストパターンの復調信号の位相および振幅を取得する。RWC25は、NバーストおよびQバーストのそれぞれから位相および振幅を取得して、取得した位相および振幅に基づいて復調位置を取得する。
【0074】
なお、以降では、位相は、バーストパターンをバースト復調ウィンドウにおいてサンプリングすることによって得られた波形(換言するとバースト波形)の位相をいうこととする。振幅は、バースト波形の振幅をいうこととする。
【0075】
図7は、第1の実施形態のNバーストおよびQバーストのそれぞれがバースト復調ウィンドウにおいてRWC25によって復調された時に得られる、オフセット量に対する振幅と位相とを示す図である。位相は、dibitで表記されている。また、オフセット量は、一例として、トラック番号としてNが与えられたサーボトラックであるサーボトラック#Nのトラックセンタからのオフセット量が示されている。つまり、サーボトラック#Nから1Svtrkだけオフセットした位置は、サーボトラック#N+1のトラックセンタに相当し、サーボトラック#Nから2Svtrkだけオフセットした位置は、サーボトラック#N+2のトラックセンタに相当する。
【0076】
図7に示されるように、Nバーストの振幅Nampは、各サーボトラックのトラックセンタからおよそ0.5Svtrkだけずれたところにおいてピークをとり、各サーボトラックのトラックセンタにおいて極小をとるプロファイルを有する。Qバーストの振幅Qampは、各サーボトラックのトラックセンタにおいてピークをとり、各サーボトラックのトラックセンタからおよそ0.5Svtrkだけずれたところにおいて極小をとるプロファイルを有する。
【0077】
Nバーストの位相Nphsは、1Svtrk毎に0.75dibit、つまり180degだけ位相が変化する。Qバーストの位相Qphsは、1Svtrk毎に0.75dibit、つまり180degだけ位相が変化する。Qバーストの位相Qphsは、Nバーストの位相Nphsから半径方向に0.5Svtrkだけずれたプロファイルを有する。
【0078】
ここで、第1の実施形態と比較される1つ目の技術について説明する。第1の実施形態と比較される1つ目の技術を、第1比較例と表記する。第1比較例によれば、バースト周期、つまりバーストパターンの円周方向の周期、は2dibitとなるようにバーストパターンが構成される。第1比較例では、半径方向に1Svtrkずれたとき、バーストパターンの極性は反転し、位相は180deg、すなわち1dibit変化する。
【0079】
前述されたように、ノーマルサーボセクタNSVでは、そのノーマルサーボセクタNSV内のサーボマーク領域SMに記録されたサーボマークの検出タイミングに基づいてそのノーマルサーボセクタNSVにおけるバースト復調ウィンドウが生成される。これに対し、ショートサーボセクタSSVにおいては、バースト復調ウィンドウは、直前のノーマルサーボセクタNSVにおいてサーボマークが検出されたタイミングを基準として生成される。ショートサーボセクタSSVでは、サーボマークの検出タイミングから磁気ヘッドがバースト領域NB,QBに至るまでの時間がノーマルサーボセクタNSVの場合に比べて著しく長い。よって、ショートサーボセクタSSVでは、サーボマークの検出タイミングから磁気ヘッドがバースト領域NB,QBに至るまでの間の磁気ディスクの回転変動などに起因して、バーストゲートの開閉のタイミング、つまりバースト復調ウィンドウが、意図したタイミングからずれやすい。バーストゲートの開閉のタイミングが意図したタイミングからずれると、バーストパターンの復調結果が変動し、バーストパターンの復調結果に基づき計算した復調位置が間違っていることがある。間違った復調位置を位置決め制御に使用すると、位置決め制御の精度が劣化する。
【0080】
第1比較例によれば、磁気ヘッドの位置が半径方向に1Svtrkずれた場合と、バーストゲートの開閉のタイミングが1dibitの長さに相当する分だけずれた場合を比較すると、リードされるサーボ波形が同じに見えてしまうので、そのサーボ波形から計算できる復調位置が、バーストゲートの開閉のタイミングのずれに起因した間違った復調位置なのか、磁気ヘッドの半径方向における位置が本当にずれているのかの判断が困難である。この困難性により、位置決め制御の精度の劣化が起こり得る。
【0081】
これに対し、第1の実施形態によれば、バースト周期、つまりバーストパターンの円周方向の周期、は1.5dibitとなるようにバーストパターンが構成される。換言すると、バーストパターンの記録周波数はプリアンブルの記録周波数は2/3倍なるようにバーストパターンが構成される。これによって、磁気ヘッド22の半径方向の位置ずれと、バーストゲートの開閉のタイミングのずれに起因する間違った復調位置ずれと、を区別することが可能である。つまり、位置決め制御の精度の劣化が抑制される。
【0082】
以降では、バースト復調ウィンドウのずれを、タイミングずれ、と表記する。
【0083】
図8は、第1の実施形態のバーストパターンを使用した場合における、Nバーストの位相とタイミングずれ量との関係の一例を示す図である。本図には、サーボトラック#NにおけるNバーストの位相Nphsの変化と、サーボトラック#N+1におけるNバーストの位相の変化と、が描画されている。
【0084】
図8に示されるように、タイミングずれ量の増加に応じて位相Nphsが増加する。タイミングずれ量の増加量が1dibitであるとき、位相Nphsの増加量は1dibitである。タイミングずれ量の増加に応じて位相Nphsが0.75dibitに到達すると、位相Nphsは-0.75dibitまで折り返されて、-0.75dibitからタイミングずれ量の増加に応じた増加を再開する。
【0085】
また、バーストパターンは、半径方向に1Svtrk毎に180deg、つまり0.75dibit、位相が変化する。よって、トラック番号が偶数の全てのサーボトラックにおいては、タイミングずれ量に対し、位相Nphsは同一の変化を示す。また、トラック番号が奇数の全てのサーボトラックにおいては、タイミングずれ量に対し、位相Nphsは同一の変化を示す。また、トラック番号が奇数のサーボトラックにおいては、トラック番号が偶数のサーボトラックにおけるタイミングずれ量に対する位相Nphsの変化から、0.75dibitだけずれて変化する。よって、図8に例示されるように、サーボトラック#N+1における位相Nphsは、サーボトラック#Nにおける位相Nphsのタイミングずれ量に対する変化から、0.75dibitだけずれて変化する。
【0086】
第1の実施形態では、バースト復調ウィンドウは、タイミングずれが無い状態から1dibit刻みでおよそ離散的なずれしか生じないように、磁気ディスク装置1の各構成要素が設計されている。つまり、タイミングずれ量は、dibitの表記で整数値か、整数値の近傍の値となるよう、磁気ディスク装置1が構成されている。そのような構成を有する磁気ディスク装置1において得られるNバーストの位相Nphsとタイミングずれ量との関係の一例を図9に示す。
【0087】
ポイントP1~P5は、図8に示されたサーボトラック#NにおけるNバーストの位相Nphsの変化のグラフから、タイミングずれ量が整数値となる各部分で切り出したものである。ポイントP11~P15は、図8に示されたサーボトラック#N+1におけるNバーストの位相Nphsの変化のグラフから、タイミングずれ量が整数値となる各部分で切り出したものである。第1の実施形態の磁気ディスク装置1においては、ポイントP1~P5、P11~P15の何れかのポイントにおける位相Nphsが観測され得る。
【0088】
図9において、タイミングずれ量が-1,0,または1である場合に着目すると、ポイントP1,P2,P4,P11,P12,またはP14における位相が観測される。そして、ポイントP1,P2,P4,P11,P12,およびP14は、それぞれ異なる位相を表している。
【0089】
つまり、第1の実施形態によれば、第1比較例と異なり、観測される位相を用いて、バースト復調ウィンドウのずれが発生しているか、磁気ヘッド22の半径方向のずれが発生しているのかを区別することが可能となっていることがわかる。
【0090】
より詳しくは、位相Nphsに関し、0dibitから0.25dibitまでの範囲を領域AR1、0.25dibitから0.5dibitまでの範囲を領域AR2、0.5dibitから0.75dibitまでの範囲を領域AR3、-0.75dibitから-0.5dibitまでの範囲を領域AR1’、-0.5dibitから-0.25dibitまでの範囲を領域AR2’、-0.25dibitから0dibitまでの範囲を領域AR3’と表記した場合、観測された位相がどの領域に含まれているかを判断することによって、タイミングずれが発生しているのかと磁気ヘッド22の半径方向のずれが発生しているのかを特定することが可能である。
【0091】
なお、バースト周期は1.5dibitであるため、タイミングずれ量が整数値となる各部分に着目した場合、タイミングずれ量の差分が3dibitとなる2つのポイントでは、同一の位相Nphsが観測される。例えば、タイミングずれ量が-2dibitである場合と、タイミングずれ量が1dibitである場合と、で位相Nphsは同一値となる。また、タイミングずれ量が-1dibitである場合と、タイミングずれ量が+2dibitである場合と、で位相Nphsは同一値となる。よって、タイミングずれ量が-2,-1,0,1,または2である場合に限定すると、位相Nphsが領域AR2および領域AR2’の何れかに含まれるか否かに基づき、少なくともタイミングずれの有無を判断することが可能である。
【0092】
ここでは一例として、コントローラ30は、観測された位相が領域AR1’~AR3’に含まれる場合、換言すると観測された位相の符号が負である場合、には、観測された位相に0.75dibitを加算する折り返し動作を実行する。
【0093】
図10は、第1の実施形態の折り返し動作を説明するための図である。
【0094】
例えば、領域AR2’に含まれるポイントP11は、折り返し動作によって、ポイントP1が含まれる領域AR2に移動される。領域AR3’に含まれるポイントP2は、折り返し動作によって、ポイントP12が含まれる領域AR3に移動される。領域AR1’に含まれるポイントP4は、折り返し動作によって、ポイントP14が含まれる領域AR1に移動される。
【0095】
よって、タイミングずれ量が-2,-1,0,1,または2である場合に限定すると、バースト復調ウィンドウがずれていないケースでは、磁気ヘッド22がいずれのサーボトラック上にあるかに関わらず、領域AR2に位相Nphsが観測される。バースト復調ウィンドウがずれているケースでは、磁気ヘッド22がいずれのサーボトラック上にあるかに関わらず、領域AR1または領域AR3に位相Nphsが観測される。
【0096】
コントローラ30は、折り返し動作後の位相Nphsが領域AR2に含まれているか否かに基づいて、バースト復調ウィンドウがずれているか否かを判断する。
【0097】
なお、コントローラ30は、必ずしも折り返し動作を行わなくてもよい。コントローラ30は、折り返し動作を行わずに、位相Nphsが領域AR2および領域AR2’の何れかに含まれるか否かに基づいてバースト復調ウィンドウがずれているか否かを判断してもよい。
【0098】
なお、ここでは位相Nphsに基づいてバースト復調ウィンドウがずれているか否かを判断する例が説明された。バースト復調ウィンドウがずれているか否かを判断には、位相Nphsに替えて、位相Qphsを用いることも可能である。第1の実施形態の説明では、位相Nphsに基づいてバースト復調ウィンドウがずれているか否かを判断することとする。
【0099】
コントローラ30は、バーストパターンの復調によって復調位置を計算した後、上記した方法によってバースト復調ウィンドウがずれているか否かを判断する。そして、バースト復調ウィンドウがずれているか否かに基づき、復調位置の補正を行う。この復調位置の補正の動作を、復調位置補正動作、と表記する。
【0100】
図11は、第1の実施形態のショートサーボセクタSSVにおける復調位置の計算方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0101】
磁気ヘッド22がショートサーボセクタSSVのバースト領域NB,QBを通過するに応じて、コントローラ30は、それぞれのバースト領域からリードされたNバーストおよびQバーストに対して離散フーリエ変換を実行する(S101)。前述されたように、コントローラ30は、NバーストおよびQバーストのそれぞれに対応するバースト復調ウィンドウにおいてリードされたバーストデータをサンプリングして、サンプリングによって得られた各波形に対して離散フーリエ変換を実行する。
【0102】
コントローラ30は、ステップS101の処理の結果、振幅Namp,Qamp、および位相Nphs,Qphsを取得する。コントローラ30は、取得したこれらの情報に基づき、復調位置dposを計算する(S102)。
【0103】
なお、復調位置dposは、直前のノーマルサーボセクタNSVにおいて復調したグレイコードに含まれるトラック番号が示すサーボトラック41のトラックセンタを基準としたオフセット量の計算値を表す。離散フーリエ変換の結果に基づく復調位置dposの計算方法の説明は省略する。
【0104】
続いて、コントローラ30は、復調位置dposに対し、復調位置補正動作を実行する。
【0105】
復調位置補正動作では、コントローラ30は、離散フーリエ変換によって得られたNバーストの位相Nphsに対し、図10を用いて説明された折り返し動作を実行する(S103)。つまり、位相Nphsの符号が負である場合、コントローラ30は、位相Nphsに0.75dibitを加算する。位相Nphsの符号が正である場合、コントローラ30は、位相Nphsに0.75dibitを加算することをしない。
【0106】
コントローラ30は、折り返し動作が実行された位相Nphsが領域AR2に含まれるか否かを判断する(S104)。
【0107】
具体的には、コントローラ30は、位相Nphsと、領域AR1と領域AR2との境界に対応する第1のしきい値、および領域AR2と領域AR3との境界に対応する第2のしきい値と、を比較することで、位相Nphsが領域AR2に含まれているか否かを判断する。図9および図10に示された例では、第1のしきい値は0.25dibitであり、第2のしきい値は0.5dibitである。なお、第1のしきい値および第2のしきい値の例はこれに限定されない。位相Nphsが第1のしきい値より大きく、かつ位相Nphsが第2のしきい値より小さい場合、コントローラ30は、位相Nphsは領域AR2に含まれると判断する。位相Nphsが第1のしきい値より小さいか、または位相Nphsが第2のしきい値より大きい場合、コントローラ30は、位相Nphsは領域AR2に含まれていないと判断する。位相Nphsが第1のしきい値と等しかったり、または位相Nphsが第2のしきい値と等しかったりする場合、コントローラ30は、位相Nphsは領域AR2に含まれていると判断してもよいし、位相Nphsは領域AR2に含まれていないと判断してもよい。
【0108】
位相Nphsが領域AR2に含まれる場合(S104:Yes)、タイミングずれは無いと推定される。よって、コントローラ30は、復調位置の計算を終了する。つまり、コントローラ30は、ステップS102の処理によって得られた復調位置dposをそのまま位置決め制御に使用する。
【0109】
位相Nphsが領域AR2に含まれない場合(S104:No)、タイミングずれがあると推定される。そのような場合、コントローラ30は、復調位置dposの符号に基づいて復調位置dposの補正を行う。
【0110】
より詳しくは、コントローラ30は、復調位置dposが0以上であるか否かを判断する(S105)。復調位置dposが0以上である場合(S105:Yes)、コントローラ30は、復調位置dposに対し、1Svtrkだけ減算する補正を行う(S106)。復調位置dposが0未満である場合(S105:No)、コントローラ30は、復調位置dposに対し、1Svtrkだけ加算する補正を行う(S107)。
【0111】
なお、復調位置dposが0と等しい場合の処理は上記に述べた例に限定されない。復調位置dposが0と等しい場合、コントローラ30は、ステップS107の処理を実行してもよい。
【0112】
ステップS106またはステップS107の処理の後、コントローラ30は、復調位置の計算を終了する。つまり、コントローラ30は、ステップS106またはステップS107の処理によって補正された復調位置dposを位置決め制御に使用する。
【0113】
このように、第1の実施形態によれば、磁気ディスク11のショートサーボセクタSSVには、プリアンブルの記録周波数の2/3倍の記録周波数でバーストパターンが記録されている。コントローラ30は、磁気ヘッド22がショートサーボセクタSSVを通過する間に、バースト復調ウィンドウを判断し、バースト復調ウィンドウにおいてバーストパターンをサーボクロックの周波数でサンプリングする。そして、コントローラ30は、サンプリングによって得られたサンプリング波形データに対して復調、つまり例えば離散フーリエ変換の処理を実行することによって、位相(例えば位相Nphsまたは位相Qphs)と復調位置dposとを取得する。コントローラ30は、位相(例えば位相Nphsまたは位相Qphs)に基づいて復調位置dposを補正し、補正後の復調位置dposに基づいて磁気ヘッド22の位置決め制御を実行する。
【0114】
この構成により、磁気ヘッド22の実際に生じている半径方向の位置ずれと、バーストゲートの開閉のタイミングのずれによって生じる間違った復調位置のずれと、を区別することが可能となる。よって、第1比較例に比べ、位置決め制御の精度が向上する。
【0115】
なお、上記の例では、プリアンブルの記録周波数の3分の2倍の記録周波数でバーストパターンが記録されている。より詳しくは、プリアンブルの記録周波数は、サーボクロックの周波数の4分の1倍とされ、バーストパターンの記録周波数はサーボクロックの周波数の6分の1倍とされ、これによって、バーストパターンの記録周波数はプリアンブルの記録周波数の3分の2倍になっている。バーストパターンの記録周波数とプリアンブルの記録周波数との関係はこれらの例に限定されない。
【0116】
プリアンブルの記録周波数はサーボクロックの周波数のK分の1(ただしKは正の整数)であり、バーストパターンの記録周波数はサーボクロックの周波数のL分の1(ただしLは正の整数)であり、プリアンブルの記録周波数はバーストパターンの記録周波数の偶数倍と異なる、という条件が満たされる限り、バーストパターンの記録周波数とプリアンブルの記録周波数との関係は任意に決定され得る。
【0117】
また、第1の実施形態においては、コントローラ30は、バーストパターンのサンプリング波形の位相、例えば位相Nphsまたは位相Qphsに基づいてバースト復調ウィンドウのタイミングずれの有無を判断する。バースト復調ウィンドウのタイミングずれが有る場合、コントローラ30は、復調位置dposを補正して使用する。バースト復調ウィンドウのタイミングずれが無い場合、コントローラ30は、復調位置dposをそのまま用いる。
【0118】
具体的には、コントローラ30は、バースト復調ウィンドウのタイミングずれが有る場合、復調位置dposに対して次に説明する補正を行う。即ち、復調位置dposの符号が正であるとき、復調位置dposに対し、復調位置dposから1Svtrkだけ減算する補正を行う。復調位置dposの符号が負であるとき、復調位置dposに対し、復調位置dposに1Svtrkを加算する補正を行う。
【0119】
なお、第1の実施形態では、復調位置補正動作は、ショートサーボセクタSSVにおいて実行されることとした。復調位置補正動作は、ノーマルサーボセクタNSVにおいても実行されるよう、磁気ディスク装置1が構成されてもよい。即ち、ノーマルサーボセクタNSVにおいても、NバーストおよびQバーストは図6に例示された構成を有し、コントローラ30は、ノーマルサーボセクタNSVにおいて、図11に例示された動作を実行してもよい。
【0120】
また、第1の実施形態では、図5に例示されたように、ショートサーボセクタSSVのバースト領域(具体的にはバースト領域QB)の直後に、データ領域DAが設けられる。
【0121】
ここで、第1の実施形態と比較される2つ目の技術について説明する。第1の実施形態と比較される2つ目の技術を、第2比較例と表記する。第2比較例によれば、ショートサーボセクタSSVにおけるバースト復調ウィンドウのタイミングずれの判断に用いられる補助パターンデータがバースト領域QBの後方に設けられる。コントローラは、NバーストおよびQバーストに加えて補助パターンデータを復調することによって、バースト復調ウィンドウのタイミングずれの有無を判断する。
【0122】
しかしながら、第2比較例によれば、補助パターンデータが記録される領域の分だけ、データ領域DAとして使用可能な領域が減る。つまり、フォーマット効率が低下する。
【0123】
第1の実施形態では、バースト領域(具体的にはバースト領域QB)の直後に補助パターンデータ用の領域が省略されているので、第2比較例に比べてフォーマット効率が高い。
【0124】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、復調位置補正動作において、Nバーストの位相NphsまたはQバーストの位相Qphsが、タイミングずれの有無の判断に使用された。タイミングずれの有無に判断される位相はこれらに限定されない。第2の実施形態では、タイミングずれの有無に判断される位相のバリエーションの一例について説明する。
【0125】
磁気ディスク11の半径方向において、バーストパターンの極性が変化する境界付近をリードヘッド22rが通過するとき、離散フーリエ変換によって得られる復調信号の振幅が著しく小さくなり、これによって復調位置の精度が劣化する場合がある。バーストパターンの極性が変化する境界付近をリードヘッド22rが通過することによる復調位置の精度の劣化を抑制するための技術として、初期位相補正動作が知られている。
【0126】
初期位相補正動作によれば、復調信号の振幅ができるだけ大きくなるように、離散フーリエ変換によって得られる位相が補正される。より具体的には、バーストパターンをサンプリングした波形の位相が0degからずれている場合、サンプリングした波形の位相が0degまたは90degになるよう補正し、補正後にcos関数、またはsin関数を使用し計算されるデータに基づいて復調位置が計算される。位相の補正量、つまり初期位相補正値は、Nバーストの位相NphsおよびQバーストの位相Qphsに対する重み付け加算によって取得される。重み付け加算で使用される重みは、Nバーストの振幅Nampを2乗して得られる値と、Qバーストの振幅Qampを2乗して得られる値と、の比率Rに応じて決定される。
【0127】
第2の実施形態では、初期位相補正動作で使用される初期位相補正値が、タイミングずれの有無の判断に使用される。以降、第1の実施形態と異なる事項について説明し、第1の実施形態と同じ事項については説明を省略するか簡略的に説明する。
【0128】
図12は、第2の実施形態の磁気ディスク装置1で実行される初期位相補正動作に関連した動作の一例を示すフローチャートである。本図に示す一連の動作は、図11に示されるステップS102の処理において実行され得る。
【0129】
コントローラ30は、まず、Nバーストの振幅NampおよびQバーストの振幅Qampを用いて比率Rを計算する(S201)。具体的には、コントローラ30は、下記の式(1)を用いて比率Rを計算する。
R=Namp/(Namp+Qamp) ・・・(1)
【0130】
続いて、コントローラ30は、Nバーストの位相Nphsに乗算される重みNwtおよびQバーストの位相Qphsに乗算される重みQwtを、下記の式(2),(3)に基づいて計算する(S202)。
Nwt=Wtable(R) ・・・(2)
Qwt=1-Nwt ・・・(3)
【0131】
なお、Wtableは、重みNwtと比率Rとの関係を規定する予め用意されたテーブルである。テーブルWtableは、例えば、磁気ディスク装置毎、磁気ヘッド毎、及び半径位置毎に最適化されている。
【0132】
コントローラ30は、下記に示す手順により、位相Nphs、Qphsを、互いの位相差が90deg以内となるよう補正する(S203)。Nphs2、Qphs2は、互いの位相差が90deg以内となるよう補正された計算結果となる。
【0133】
Nphs2=Nphs,Qphs2=Qphs
if Nphs2>=90deg Nphs2 phs2-180deg
elseif Nphs2<-90deg Nphs2=Nphs2+180deg
if Qphs2>=90deg Qphs2=Qphs2-180deg
elseif Qphs2<-90deg Qphs2=Qphs2+180deg
if abs(Nphs2-Qphs2)>90deg
if abs(Qphs2-RefPhs)<abs(Nphs2-RefPhs)
if (Nphs2-Qphs2)<0
Nphs2=Nphs2+180deg
else
Nphs2=Nphs2+180deg
else
if abs(Qphs2-RefPhs)<abs(Nphs2-RefPhs)
if (Nphs2-Qphs2)<0
Nphs2=Nphs2+180deg
else
Nphs2=Nphs2+180deg
【0134】
なお、RefPhsは初期位相補正値の期待値である。
【0135】
ステップS202、S203の処理の後、コントローラ30は、下記の式(4)に基づき、初期位相補正値RTphsを計算する(S204)。
RTphs=Nwt*Nphs2+Qwt*Qphs2 ・・・(4)
【0136】
そして、コントローラ30は、下記の式(5),(6),(7)に基づいて初期位相補正動作を行うことによって、初期位相補正動作後NバーストデータNbstおよび初期位相補正動作後QバーストデータQbstを取得する(S205)。式(5)は、式(6)、(7)に示すsin関数による計算を実施する場合に行う、初期位相補正値の換算処理である。以下、RTphs2も初期位相補正値と呼ぶことがある。
RTphs2=90deg-RTphs ・・・(5)
Nbst=Namp*sin(2*pi/360*(Nphs+RTphs2))
・・・(6)
Qbst=Qamp*sin(2*pi/360*(Qphs+RTphs2))
・・・(7)
【0137】
コントローラ30は、初期位相補正動作によって得られた初期位相補正動作後Nbst,Qbst計算結果に基づき、復調位置dposを計算する。
【0138】
ステップS204の処理によって得られた初期位相補正値RTphsは、バースト復調ウィンドウのずれ量に対し、位相Nphs,Qphsと類似した挙動を示す。ただし、式(4)で計算される初期位相補正値RTphs及び式(5)にて計算されるRTphs2については、0degから180degの範囲の値となるよう計算されるため、折り返し動作は不要とされる。以下、式(4)で計算される初期位相補正値RTphsをタイミングずれの有無を判断する位相として説明する。
【0139】
図13は、第2の実施形態のコントローラ30が取得した初期位相補正値RTphsの分布の一例を示す図である。本図において、横軸は所定のトラックにおける各サーボセクタを示し、縦軸はdibitで表記した位相を示す。横軸の左端は、例えば、1周の開始サーボセクタであり、横軸の右端は、例えば、1周の最後のサーボセクタである。
【0140】
図13からは、初期位相補正動作の過程で取得される初期位相補正値RTphsは、第1のしきい値(例えば0.25dibit)の付近および第2のしきい値(例えば0.75dibit)の付近のいずれにおいても疎に分布していることが読み取れる。これは、以下に説明する理由による。
【0141】
磁気ディスク装置1は、タイミングずれが1dibit刻みで離散的に発生するように構成されている。よって、折り返し動作後の位相Nphs,Qphsは、本来的には、タイミングずれ量に応じて離散的な値をとるはずである。しかしながら、バーストパターンの極性が変化する境界付近をリードヘッド22rが通過するとき、振幅が小さくなり、これに応じて位相Nphs,Qphsの誤差が大きくなる。よって、折り返し動作後の実際の位相Nphs,Qphsは、広くばらつく。このことから、実際の位相Nphs,Qphsとしきい値(第1のしきい値および第2のしきい値)との比較に基づいて実際の位相Nphs,Qphsが特定の領域AR(例えば領域AR)に含まれるか否かを判断しようとした場合、判断結果には誤差が含まれ得る。
【0142】
初期位相補正動作の過程で取得される初期位相補正値RTphsにおいては、バーストパターンの極性が変化する境界付近をリードヘッド22rが通過するときの位相の誤差が抑制される。誤差が抑制できるのは、式(4)に示す計算式で、振幅が小さいバーストの重みが0に近くなり、ばらつきの大きい位相を使用しないためである。よって、初期位相補正値RTphsの分布は、位相Nphs,Qphsの分布に比べて、より離散化される。したがって、領域AR間の境界に対応した第1のしきい値および第2のしきい値の近辺では初期位相補正値RTphsの分布は疎になる。このことから、初期位相補正値RTphsとしきい値(第1のしきい値および第2のしきい値)との比較に基づいて初期位相補正値RTphsが特定の領域AR(例えば領域AR)に含まれるか否かを判断するようにすることで、判断結果に含まれ得る誤差を抑制することができる。つまり、復調位置補正動作において初期位相補正値RTphsを使用することによって、タイミングずれの有無の判断の精度が向上し、間違った復調位置計算結果を正しく補正できるようになるため、位置決め精度がさらに向上する。
【0143】
図14は、第2の実施形態の復調位置補正動作の一例を示すフローチャートである。
【0144】
コントローラ30は、初期位相補正値RTphsが領域AR2に含まれるか否かを判断する(S301)。
【0145】
具体的には、コントローラ30は、初期位相補正値RTphsと、領域AR1と領域AR2との境界に対応する第1のしきい値、および領域AR2と領域AR3との境界に対応する第2のしきい値と、を比較することで、初期位相補正値RTphsが領域AR2に含まれているか否かを判断する。図13に示された例では、第1のしきい値は0.25dibitであり、第2のしきい値は0.5dibitである。なお、第1のしきい値および第2のしきい値の例はこれに限定されない。初期位相補正値RTphsが第1のしきい値より大きく、かつ初期位相補正値RTphsが第2のしきい値より小さい場合、コントローラ30は、初期位相補正値RTphsは領域AR2に含まれると判断する。初期位相補正値RTphsが第1のしきい値より小さいか、または初期位相補正値RTphsが第2のしきい値より大きい場合、コントローラ30は、初期位相補正値RTphsは領域AR2に含まれていないと判断する。初期位相補正値RTphsが第1のしきい値と等しかったり、または初期位相補正値RTphsが第2のしきい値と等しかったりする場合、コントローラ30は、初期位相補正値RTphsは領域AR2に含まれていると判断してもよいし、初期位相補正値RTphsは領域AR2に含まれていないと判断してもよい。
【0146】
初期位相補正値RTphsが領域AR2に含まれる場合(S301:Yes)、タイミングずれは無いと推定される。よって、コントローラ30は、復調位置の計算を終了する。つまり、コントローラ30は、初期位相補正動作が適用されたステップS102の処理によって得られた復調位置dposをそのまま位置決め制御に使用する。
【0147】
初期位相補正値RTphsが領域AR2に含まれない場合(S301:No)、タイミングずれがあると推定される。そのような場合、コントローラ30は、復調位置dposの符号に基づいて復調位置dposの補正を行う。
【0148】
より詳しくは、コントローラ30は、復調位置dposが0以上であるか否かを判断する(S302)。復調位置dposが0以上である場合(S302:Yes)、コントローラ30は、復調位置dposに対し、1Svtrkだけ減算する補正を行う(S303)。復調位置dposが0未満である場合(S302:No)、コントローラ30は、復調位置dposに対し、1Svtrkだけ加算する補正を行う(S304)。
【0149】
なお、復調位置dposが0と等しい場合の処理は上記に述べた例に限定されない。復調位置dposが0と等しい場合、コントローラ30は、ステップS302の処理を実行してもよい。
【0150】
ステップS303またはステップS304の処理の後、コントローラ30は、復調位置の計算を終了する。つまり、コントローラ30は、ステップS303またはステップS304の処理によって補正された復調位置dposを位置決め制御に使用する。
【0151】
このように、コントローラ30は、Nバーストの位相Nphsと、Qバーストの位相Qphsと、に対してNバーストの振幅Nampを2乗して得られる値とQバーストの振幅Qampを2乗して得られる値との比率Rに基づく重み付け加算によって計算できる初期位相補正値RTphsを用いタイミングずれを判断し、タイミングがずれていた場合は復調位置dposを補正する。
【0152】
よって、タイミングずれに起因した間違った復調計算結果を正しく補正できるため、位置決め精度がさらに向上する。
【0153】
なお、第1の実施形態または第2の実施形態の技術は、磁気ディスク11に配置された全てのサーボトラック41において適用されることとした。第1の実施形態または第2の実施形態の技術は、磁気ディスク11に配置された全てのサーボトラック41のうちの一部のサーボトラック41において適用されてもよい。例えば、磁気ディスク11の記録面は複数の半径方向に複数の半径領域に分割され、第1の実施形態または第2の実施形態の技術は、少なくとも1つの半径領域において適用されてもよい。また、分割方向は半径方向に限定されない。つまり、第1の実施形態または第2の実施形態の技術は、磁気ディスク11の記録面のうちの少なくとも一部の領域で適用され、他の領域では適用されなくてもよい。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0155】
1 磁気ディスク装置、2 ホスト、11 磁気ディスク、12 スピンドルモータ、13 ランプ、15 アクチュエータアーム、16 VCM、21 モータドライバIC、22 磁気ヘッド、22r リードヘッド、22w ライトヘッド、23 HDC、24 ヘッドIC、25 RWC、26 プロセッサ、27 RAM、28 FROM、29 バッファメモリ、30 コントローラ、31 カウンタ、41 サーボトラック。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14