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特開2024-137022クリップ、液受けシートの吊り方法および被取付材の設置方法
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  • 特開-クリップ、液受けシートの吊り方法および被取付材の設置方法 図1
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  • 特開-クリップ、液受けシートの吊り方法および被取付材の設置方法 図4
  • 特開-クリップ、液受けシートの吊り方法および被取付材の設置方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137022
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】クリップ、液受けシートの吊り方法および被取付材の設置方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/24 20060101AFI20240927BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   E04G 21/28 20060101ALI20240927BHJP
   F16L 3/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16B2/24 B
F16B1/00 A
E04G21/28 B
F16L3/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048369
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】500510261
【氏名又は名称】JR東日本ビルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 隆之
【テーマコード(参考)】
3H023
3J022
【Fターム(参考)】
3H023AA05
3H023AC03
3J022DA11
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC12
3J022ED22
3J022FA01
3J022FB04
3J022FB08
3J022FB12
3J022HA02
3J022HB02
(57)【要約】
【課題】アクセスすることが難しい吊りボルトなどに対して容易に取り付け可能であって、シートなどを保持することが可能なクリップを提供する。
【解決手段】液受けシート100を吊りボルト200で支持するためのクリップ10が、一対の片20、30から構成される挟持部材15を備え、ばね40によって、連結部50の軸周りに開閉可能ように構成されている。そして、一方の片20には、マニピュレータ300の先端部300Rによって片30を掴むことが可能なように、反り部21が形成されている。また、反り部21には、液受けシート100に結ばれた紐150を繋げるための孔21Rが形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばねを設け、連結部を軸にして一対の片が開閉可能な挟持部材を備え、
一方の片には、マニピュレータが他方の片を掴むことができるように、前記他方の片から離れる方向へ延びる反り部と、被取付材と直接的または間接的に繋がるための係合部とが形成され、
前記ばねが、前記一対の片の前記反り部および前記係合部を形成した側を閉じるように力を作用させ、
前記挟持部材が、前記反り部と前記連結部との間で吊りボルトを挟むことが可能であることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記一対の片において、互いに向かい合う凸部が、前記反り部と前記連結部との間にそれぞれ形成され、
前記吊りボルトを、前記凸部と前記連結部との間で挟むことが可能であることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記凸部の位置が、前記一対の片の長手方向に沿って調整可能であることを特徴とする請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記反り部の一端が、前記他方の片と接していることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項5】
前記一対の片が、前記吊りボルトの雄ネジ部分と係合可能な縁部を有することを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項6】
前記係合部が、孔として構成されることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のクリップを用いて、液受けシートを吊りボルトに吊るす方法であって、
液受けシートを、クリップの係合部に直接的または間接的に繋げ、
マニピュレータの先端部で、前記クリップの他方の片を挟持し、
前記吊りボルトが前記一対の片の間を通過するように、前記マニピュレータを、マニピュレータ操作者から見て吊りボルト奥側から手前側へ向けて引き寄せ、
前記クリップを前記吊りボルトに取り付ける
ことを特徴とする液受けシートの吊り方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載のクリップを用いて、被取付材を棒状部材に設置する方法であって、
前記被取付材を、クリップの係合部に直接的または間接的に繋げ、
マニピュレータの先端部で、前記クリップの他方の片を挟持し、
前記棒状部材が前記一対の片の間を通過するように、前記マニピュレータを、マニピュレータ操作者から見て棒状部材奥側から手前側へ向けて引き寄せ、
前記クリップを前記棒状部材に取り付ける
ことを特徴とする被取付材の設置方法。
【請求項9】
棒状部材を挟むことが可能な弾性の挟持部材を備え、
マニピュレータが掴めるように、前記挟持部材の一端が拡がり、
被取付材と直接的または間接的に繋げるための係合部が、拡がりのある前記挟持部材の一端側に形成され、
拡がりのある前記挟持部材の一端側から棒状部材を滑らせて挟むことが可能であることを特徴とするクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りボルトなどに対して取り付け可能であって、取り付けた状態でシートなどを支持可能なクリップに関し、特に、マニピュレータを利用して吊りボルトなどに取り付け可能なクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや駅舎などでは、一部天井に雨漏りが生じた場合、簡易的な応急処置方法として、養生シートを天井の漏水部分に充てる。例えば、養生シートの中央部に通水口を設け、ホースや排水管を通水口と接続することにより、漏れた水をバケツや外部に排出する(特許文献1、2参照)。
【0003】
一方、ビルなどの天井裏に配置されている吊りボルトを利用して、漏水受け皿を設置することができる(特許文献3参照)。また、吊りボルトの配置箇所に合わせたサイズをもつ複数の帯状シートを用意し、互いにファスナーで接続することによって、液受けシートを吊りボルトに設置する(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6382469号公報
【特許文献2】実開平4-94045号公報
【特許文献3】特開昭52-25416号公報
【特許文献4】特開2021-92084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駅舎、ビルなどの天井裏は、配管や電力、通信用の電線が配設され、それらの関連機器が設置されている。そのため、作業空間として十分なスペースが確保されていない。一方、水漏れ箇所に合わせてシートを設置する場合、シート設置に利用すべき吊りボルトが、天井点検口から離れていると、取り付け作業を行うことが事実上難しい。脚立などが設置できない箇所、あるいは手の届かない箇所にシートなどを設置する場合においても、同様の問題が生じる。
【0006】
したがって、アクセスすることが難しい吊りボルトなどに対して容易に取り付け可能であって、シートなどを保持できる用具を提供することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、遠隔操作を行うマニピュレータを利用することによって吊りボルトなどに取り付け可能であって、シートなどを保持することが可能なクリップを提供することに、技術的動向が向けられている。
【0008】
本発明のクリップは、(養生シートを含む)液受けシートなどのシート、下地材を保持するハンガーなど、保持可能なもの(ここでは、被取付材という)を、吊りボルトに留め置くことが可能なクリップであり、マニピュレータを利用した遠隔操作によって、吊りボルトに取り付け可能なように構成されている。マニピュレータは、人間の手と同じような動きを行うことができればよく、少なくとも、掴む動作と、掴んだものを離す動作を遠隔操作で行えるマニピュレータで構成することが可能である。
【0009】
本発明のクリップは、ばねを設け、連結部を軸にして一対の片が開閉可能な挟持部材を備える。例えば、コイル状の捩じりばねを連結部に対して同軸的に配置させることが可能である。一対の片の幅、長さなどは、吊りボルトのサイズ(径の大きさ)などに基づいて定めることができる。ばねの弾性力に関しては、例えば、吊りボルトが挟持部材によって挟まれた状態で、挟持部材の長手方向に力を作用させたとき、クリップが摺動可能なように定めることが可能である。
【0010】
本発明において、挟持部材の一方の片には、マニピュレータが他方の片を掴むことができるように、他方の片から離れる方向へ延びる反り部が形成されている。また、被取付材と直接または間接的に繋がるための係合が形成されている。
【0011】
反り部は、マニピュレータの先端部(掴む部分および掴む部分から操作者側に延びる部分(例えば湾形状部))のサイズ、形状などに応じて、他方の片に対する拡がりの度合い、傾斜角度などその構成を定めることができる。係合部は、シートなどの被取付材の種類、繋げるための介在する素材などに従って、その構成を定めることができる。例えば、液受けシートを吊りボルトを用いて吊るす場合、紐などを通す孔を係合部として構成することが可能である。
【0012】
本発明では、ばねが、一対の片の反り部および係合部を形成した側を閉じるように、力を作用させる。そして、挟持部材が、反り部と連結部との間で吊りボルトを挟むことが可能である。これによって、クリップは吊りボルトに対して取り付けられた状態になる。
【0013】
一対の片に対し、互いに向かい合う凸部を、反り部と連結部との間にそれぞれ形成することが可能である。凸部の大きさ、形状などは様々であり、挟持部材に挟まれた状態でクリップが吊りボルトに対して摺動しながら凸部を乗り越えることができるように定めればよい。例えば、山型の凸部で構成することができる。また、ここでの「凸部」には、段差形状も含まれるものとする。挟持部材は、吊りボルトを、凸部と連結部との間で挟むように構成することができる。
【0014】
一対の片は、一部互いに接する、あるいは近接するように構成することが可能である。例えば、反り部の一端が、他方の片と接するように構成することができる。
【0015】
挟持部材は、ばねの弾性力によって吊りボルトに対する取り付け位置が定められるようにしてもよく、あるいは、吊りボルトのネジ山と係合するようにして、鉛直方向に沿って位置決めされるように構成してもよい。シートなどの被取付材の自重によってクリップ下方向に引っ張られ、その姿勢が変化して位置変動するのを抑えることを鑑み、一対の片に対し、吊りボルトの雄ネジ部分と係合可能な縁部を設けることができる。例えば、一対の片の長手方向に沿った両縁を、片に対して突出するエッジ状縁に形成することが可能である。あるいは、一方の縁だけエッジ状に形成することも可能である。
【0016】
上述した本発明のクリップを用いることにより、天井裏に配置された吊りボルトに対し、液受けシートを吊りボルトに吊るす方法を提供することができる。本発明の他の一態様である液受けシートの吊り方法は、液受けシートを、クリップの係合部に直接的または間接的に繋げ、マニピュレータの先端部で、クリップの他方の片を挟持し、吊りボルトが一対の片の間を通過するように、マニピュレータを、マニピュレータ操作者から見て吊りボルト奥側から手前側へ向けて引き寄せ、クリップを吊りボルトに取り付ける。ここでの液受けシートには、養生シートが含まれるものとする。例えば、液受けシートの隅などに設けられた複数の穴に紐を通し、各穴の位置から吊るのに適した場所にある吊りボルトに対してクリップを取り付けることにより、液受けシートを吊るすことができる。また、ここでの「奥側」とは、吊りボルトを間に挟んで厳密に相対する個所だけ表すのではなく、操作者側から見て吊りボルトを超えた側(吊りボルトを通る操作者に垂直な仮想面よりさらに離れた空間側)の範囲も含まれ、マニピュレータによるクリップ取り付け動作可能な範囲として定められる。
【0017】
さらに、上述した本発明のクリップを用いることにより、その他の被取付材を、吊りボルト以外の棒状部材に設置する方法を提供することができる。本発明の他の一態様である被取付部材の設置方法は、被取付材を、クリップの係合部に直接的または間接的に繋げ、マニピュレータの先端部で、クリップの他方の片を挟持し、棒状部材が一対の片の間を通過するように、マニピュレータを、マニピュレータ操作者から見て棒状部材奥側から手前側へ向けて引き寄せ、クリップを棒状部材に取り付ける。ここでの「奥側」の意味も、上述した通りである。
【0018】
本発明の他の一態様であるクリップは、棒状部材を挟むことが可能な弾性の挟持部材を備え、マニピュレータが掴めるように、挟持部材の一端が拡がり、被取付材と直接または間接的に繋げるための係合部が、拡がりのある挟持部材の一端側に形成され、拡がりのある挟持部材の一端側から棒状部材を取り付け位置まで摺動可能に挟むことが可能である。挟持部材は、例えば一対の片をばねによって開閉させる構造にすることが可能である。ばねとしては、捩じりばね、C型ばねなど、様々なばねを適用することが可能である。また、ばね以外の弾性部材、弾性素材によって挟持部材を開閉させることも可能である。あるいは、板状部材を折り曲げて挟持部材を構成し、吊りボルトなどの棒状部材を挟むように構成することも可能である。挟持部材の拡がりの形態、拡がりの度合いなどは、マニピュレータの先端部、すなわち被取付材を掴む部分の形状(例えば湾曲形状)、形態(例えば、湾曲部と直状部あるいは湾曲部のみ)などに応じて定めればよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アクセスすることが難しい吊りボルトなどに対して容易に取り付け可能であって、シートなどを保持することが可能なクリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態である液受けシートの一部を示した図である。
図2】本実施形態のクリップの概略的側面図である。
図3図II―IIに沿った概略的断面図である。
図4】本実施形態のクリップの一部を示した概略的平面図である。
図5】マニピュレータを利用してクリップを吊りボルトに取り付けるときの過程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本実施形態であるクリップ、および液受けシートを吊りボルトに設置する(吊り下げる)方法について説明する。
【0022】
液受けシート100は、雨漏れによる漏水などを天井裏で受け、天井に至らないように漏水などを抽出可能なシートとして構成されている。ここでは、ビル、駅舎などの建築物の天井裏スペースに、液受けシート100が設置されている。
【0023】
液受けシート100は、伸縮性のあるシートで構成され、例えば、軽量、防水性の優れたポリエステル製シート(例えば白防煙シート)から成る。なお、液受けシート100を、透明なビニールシートで構成してもよく、従来使用されている養生シートを利用することも可能である。
【0024】
液受けシート100の中央部付近には、排水口となる開口部を設けた金具130が取り付けられ、ホース120の先端が金具130に接続されている。液受けシート100に滴下した漏水は、排水金具130へ向けてシート表面を流れ落ち、ホース120に流れ込んで抽出される。
【0025】
液受けシート100の周縁には複数の孔が形成されている。ここでは、液受けシート100の四隅およびその中間の縁付近に、孔100Rがそれぞれ形成されている。各孔100Rには、液受けシート100を吊るすための紐150が通されている。なお、図1では、液受けシート100の一部分のみを図示し、また、1つの孔100Rのみ図示している。
【0026】
天井裏スペースには、下地材である野縁受け材(図示せず)が天井の裏面に並んで設置され、野縁(図示せず)が野縁受け上に交差する方向に沿って設置されている。上方の基礎部から吊り下げられ、垂下する吊りボルト200は、吊り下げハンガー(図示せず)を介して野縁と接続されている。吊りボルト200は、野縁の設置箇所に合わせて並び、野縁の延びる方向に沿って所定間隔を空けて規則的に配置されている。
【0027】
クリップ10は、液受けシート100を吊りボルト200に取り付け、支持する(吊るす)ための留め具であり、吊りボルト200を挟み込むことによって吊りボルト200に取り付けられた状態で、液受けシート100を保持することが可能である。
【0028】
液受けシート100は、四隅および中央縁部分に形成された穴100Rに比較的近い位置に垂下している複数の吊りボルト200に取り付けられ、吊り下げられている。各孔100Rに通した紐150と繋がるクリップ10が、それぞれ対応する吊りボルト200の所定の高さに取り付けられている。液受けシート100は、中央部が低位置となるように撓んだ状態で保持される。
【0029】
図2は、クリップの概略的側面図である。図3は、図2のII-IIに沿った概略的断面図である。図4は、クリップを上方から見たときの一部を示す概略的平面図である。図2~4を用いて、クリップ10の構成について説明する。
【0030】
図2に示すように、クリップ10は、一対の片20、30から構成される挟持部材15を備える。片(一方の片)20は、その途中から折れ曲がった板材によって構成され、片(他方の片)30は、直状の板材によって構成されている。クリップ10は、一対の端部20E2、30E2を下にして側面視したとき、K字状となる形態を有する。一対の片20、30の素材は任意であり、例えばステンレスなどの金属から成る。なお、複数の板材を繋ぎ合わせて片20、30をそれぞれ成形してもよい。
【0031】
挟持部材15は、ばね40を備える。図3に示すように、ばね40はコイル状の捩じりばねによって構成され、一対の片20、30の連結部50に配置されている。連結部50は、一対の片20、30の長手方向に沿った両縁に形成された舌片部22、32を面接触させた構造になっている。ばね40は、そのコイル軸が一対の片20、30の短手方向に沿うように、連結部50の舌片部22、32の間に配置されている。
【0032】
ばね40は、一対の片20、30の端部20E1、30E1(以下、一方の端部)が開く方向、すなわち、端部20E2、30E2(以下、他方の端部)側が閉じる方向へ、弾性力を作用させる。したがって、一対の片20、30の他方の端部20E2、30E2が互いに近づく方向に力が加えられると、復元力が働く。なお、捩じりばね以外の弾性部材によって、ばね40を構成することも可能である。
【0033】
挟持部材15は、連結部50の軸C周りに軸回転可能なように構成されている。例えば、軸C周囲に形成された孔50Rに図示しないピンを通し、一対の片20、30を連結部50で面接触させながら軸回転させることが可能である。あるいは、捩じりばねで構成されているばね40の両端をそれぞれ一対の片20、30の縁部分に当接させ、付勢させることにより、一対の片20、30を連結部50で面接触させながら軸回転させることが可能である。
【0034】
くの字状に折れ曲がっている片20は、挟持部材15が閉じた状態において、その途中で片30と接している。片30との接触部分CTから先は、片30から離れる方向へ延びる反り部21が形成されている。反り部21は、後述するマニピュレータの先端部が片30を掴むことができるように、片30との間に距離間隔を設けている。ここでは、反り部21は、片30に対し、一定の傾斜角度で延びている。
【0035】
片20の一方の端部20E1側には、孔21Rが形成されている(図4参照)。孔21Rは、紐150をクリップ10と繋げる、接続する係合部として構成されている。ここでは、図1に示した紐150の端部が二重リングRRに取り付けられ、二重リングRRが孔21Rに取り付けられている。なお、孔21Rに対して紐150を直接結びつけてもよい。
【0036】
一対の片20、30には、規制部材25、35が、それぞれ取り付けられている。ここでは、規制部材25が、ネジ26、ワッシャー27、ナット28によって構成されている。規制部材35も同様に、ネジ26、ワッシャー27、ナット28によって構成されている。ネジ26、36の頂部26T、36Tによって、片20、30の互いに向かい合う表面20S、30S上に、凸部が形成される。一対の片20、30が閉じた状態では、ネジ26、36の頂部26T、36Tが互いに接している。
【0037】
一対の片20、30には、長手方向に沿って長円状の孔20R、30Rが形成されている(図2、3参照)。規制部材25、35は、この孔20R、30Rを通じて片20、30にそれぞれ取り付けられている。規制部材25、35は、孔20R、30Rの長手方向に沿った開口エリアの範囲内で固定可能であり、規制部材25、35の長手方向に沿って取り付け位置が調整可能である。
【0038】
図3に示すように、一対の片20、30は、その縁部分20G、30Gがエッジ状に形成され、表面20S、30Sから垂直方向に延出している。ただし、図3では、一対の片20、30の厚みおよび連結部50の厚みを、誇張して描いている。
【0039】
作業者は、このようなピンチ機能を備えたクリップ10を利用して、天井裏に液受けシート100を設置することができる。具体的には、作業者は、紐150を通じて液受けシート100と繋がっているクリップ10を、遠隔操作によって、所定の吊りボルト200へ取り付ける作業を行う。以下、これについて説明する。
【0040】
図5は、マニピュレータを利用したクリップ10の吊りボルト200への取り付け過程を示した図である。
【0041】
マニピュレータ300は、ここでは、いわゆるマジックハンドと呼ばれる操作具によって構成されている。マニピュレータ300は、伸縮可能であって数メートルの長さにまで伸ばすことができる棒状部材(図示せず)の先端に把持部300Iを備えている。棒状部材の反対側端部には、作業者(操作者)が操作する操作部(図示せず)が設けられている。作業者の開閉操作に応じて、把持部300Iが開閉する。なお、マニピュレータ300の操作部に対する操作に応じて把持部300Iが開閉する機構は周知技術であり、ここでの説明は省略する。
【0042】
反り部21と片30との間に形成されるスペースRS(図2参照)の大きさ、すなわち反り部21の片30からの反り具合は、マニピュレータ300の先端部300Rを開き、片30の一方の端30E1付近を掴むことが可能な大きさに定められている。ここでは、反り部21の片30に対する傾斜角度が、先端部300Rの開閉を許容する角度に定められている。
【0043】
まず作業者(操作者)は、液受けシート100の孔100Rに紐150を取り付け、二重リングRRに紐150を結ぶ。そして、片20の反り部21に形成された孔21Rに対し、二重リングRRを取り付ける。ただし、図5では、二重リングRRおよび紐150を図示していない。
【0044】
次に作業者は、天井点検口などを通じて、クリップ10を繋げた液受けシート100を天井裏に運ぶ。クリップ10の片30の一方の端部30E1付近を、マニピュレータ300の先端部300Rで掴むと、マニピュレータ300の棒状部材を引き伸ばす。そして、対象となる吊りボルト200に向けてマニピュレータ300を差し出す。
【0045】
ここで、作業者は、作業者から見て吊りボルト200奥側から手前側に向けてマニピュレータ300を引き寄せる動作を行うことによって、クリップ10を吊りボルト200に取り付ける。一対の片20、30の一方の端部20E1、30E1側から吊りボルト200を滑らせながら挟み込むため、クリップ10を吊りボルト200よりも奥側まで移動させ、そこからマニピュレータ300を引き寄せる動作を行う。
【0046】
図2には、クリップ10が作業者から見て吊りボルト200よりも奥側の位置にあるときの吊りボルト200の位置を、符号F1で示している。マニピュレータ300を引き寄せる動作によって、挟持部材15が吊りボルト200と当接して開く。そして、反り部21の片30との接触部分CTを通り過ぎ、規制部材25を乗り越え、連結部50と当接する位置まで、マニピュレータ300を引き戻す動作を行う。図5には、吊りボルト200が規制部材25を乗り越える状態を示している。
【0047】
図2には、クリップ10の取り付けられた状態で、吊りボルト200を図示している。挟持部材15は、規制部材25、35と連結部50との間に収まった状態で吊りボルト200を挟み込む。ばね40の復元力により、クリップ10は吊りボルト200に対して強固に固定、位置決めされる。作業者が、対象となる吊りボルト200に対してすべてのクリップ10を所定位置(高さ)に取り付けることにより、液受けシート100の設置作業が終了する。
【0048】
一方、液受けシート100を取り外す、あるいは再設置する場合、作業者は、吊りボルト200に取り付けられたクリップ10の片30を、マニピュレータ300によって掴む。そして、マニピュレータ300を、吊りボルト奥側へ押し出す。これにより、挟持部材15が開き、クリップ10が吊りボルト200から取り外される。
【0049】
このように本実施形態によれば、液受けシート100を吊りボルト200で支持するためのクリップ10が、一対の片20、30から構成される挟持部材15を備え、ばね40によって、連結部50の軸周りに開閉可能なように構成されている。そして、マニピュレータ300の先端部300Rによって片30を掴むことが可能なように、一方の片20には、反り部21が形成されている。また、反り部21には、液受けシート100に結ばれた紐150を繋げる孔21Rが形成されている。
【0050】
ビルなどの建物の天井裏は、配電線、通信線などの配設、上下水用、空調用の配管の配設、あるいはそれら関連器具の設置などによってスペースに制限があり、作業空間が狭い。また、天井点検口から取付対象となる吊りボルト200の設置個所が離れている場合がある。しかしながら、マニピュレータ300を用いてクリップ10を吊りボルト200に取り付ける構成であるため、液受けシート100を天井裏に容易に設置することができる。
【0051】
特に、反り部21が片20に形成されていることにより、湾曲部などが通常形成されている先端部300Rを備えたマニピュレータ300を利用しても、片30を掴み、保持することが容易となり、また、片30の端部30E1付近より奥側(連結部50側)を掴むことによって、吊りボルト200への取り付け動作のときに安定してクリップ10を保持することができる。例えば、図2では、片30の端部30E1付近を、先端部300Rの片30と接する互いに平行な部分で掴む状態を示しているが、規制部材25、35付近の箇所を掴むことも可能である。反り部21による一対の片20、30の距離間隔の拡がりによって、先端部300Rに形成された(掴む部分から操作者側に延びる)湾曲部を許容するスペースが存在するからである。これによって、より安定してクリップ10を保持することが可能となる。
【0052】
マニピュレータ300の把持部300Iの先端部300Rの形状は、図5以外の形態も存在する。例えば、マニピュレータ300の把持部300Iの先端部300Rの形状(図5に示すような互いに平行な掴み部分がなく、湾曲部だけで構成される先端部をもつマニピュレータなどもある。反り部21の片30との接触部分CTの位置や傾斜角度など、片20に対する反り部21の形状、形成位置などに関しては、マニピュレータ300の先端部300Rの形状などに応じて定めればよい。
【0053】
また、マニピュレータ300を吊りボルト奥側から引き寄せる動作によって、クリップ10を吊りボルト200に取り付けるため、シート側への引張力に対して強く、液受けシート100の安定した固定点となる。すなわち、液受けシート100の自重によって、クリップ10の片20をシート側へ引っ張る力が作用するが、クリップ10の連結部50が吊りボルト200と当接し、凸部(規制部材25、35)と連結部50との間で挟持されることにより、安定して液受けシート100を支持することができる。
【0054】
一方、クリップ10を吊りボルト200から取り外す場合、マニピュレータ300を吊りボルト奥側へ押し出す動作を行うため、クリップ10を容易に取り外すことができる。オペレータ操作者側への引張力に対して抵抗が強く、マニピュレータ300を押し出す方向に対して抵抗が弱いため、クリップ10の吊りボルト200に対する取り付け位置の修正を、容易に行うことができる。
【0055】
本実施形態のクリップ10では、規制部材25、35によって、一対の片20、30の表面20S、30Sに凸部が形成されている。これは、吊りボルト100を挟んだ状態でクリップ10が吊りボルト200に対して相対的に移動するのを、凸部との当接で制限し、クリップ10が吊りボルト200を強固に挟み込む状態を安定して維持することができる。なお、一対の片20、30の表面20S、30Sに対し、クリップ10の取り外し可能な程度に段差を、凸部として設けることも可能であり、クリップ10の相対移動を制限するように構成してもよい。
【0056】
また、規制部材25、35の位置が、一対の片20、30の長手方向に沿って調整可能な構成となっているため、吊りボルト200のサイズ(径の大きさ)などに応じて、規制部材25、35の位置を定める、すなわち凸部の位置を定めることができる。
【0057】
一対の片20、30には、それぞれエッジ状の縁20G、30Gが長手方向に沿って形成されている。この縁20G、30Gは、吊りボルト200の表面に形成されたねじ部分(雄ネジ)と係合する。これは、クリップ10が吊りボルト200を挟んだ状態で上下方向(鉛直方向)にずれるのを抑止し、クリップ10を吊りボルト200に対してより強固に位置決めすることができる。なお、エッジ状の縁20G、30Gの形成に関しては、片20、30の長手方向に沿った両縁ではなく、いずれか一方の縁のみ形成してもよい。
【0058】
クリップ10の挟持部材15は、一対の片20、30で構成することに限定されず、板状部材を折り曲げ、弾性体として構成することも可能である。また、液受けシート100以外の部材、例えば、下地材吊り下げハンガーなどをクリップ10で保持するように構成してもよい。
【0059】
本実施形態では、天井裏の吊りボルト200に取り付け可能なクリップ10を構成しているが、天井表面側に養生シートを張るような場合でも、天井面に取り付けられた棒状部材あるいは棒状部材を天井面に取り付け、クリップ10によって養生シートを支持するようにしてもよい。あるいは、緊急用の落下防止ネットを設置する場合、脚立などが届かない位置にクリップを用いてネットを設置することが可能である。
【0060】
さらに、建築物以外の用途でクリップ10を利用することも可能である。例えば、アウトドアやキャンプなどにおいて、ビニール製のテント屋根、ハンモックなどをラックなどに吊るす場合にも、クリップ10を利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 クリップ
15 挟持部材
20 片
30 片
40 ばね
50 連結部
100 液受けシート
200 吊りボルト
300 マニピュレータ
図1
図2
図3
図4
図5