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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137024
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240927BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 A
H02J7/00 302C
B60R16/03 A
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048372
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】朝長 大貴
(72)【発明者】
【氏名】笹本 和孝
(72)【発明者】
【氏名】谷山 晃一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 義行
(72)【発明者】
【氏名】本橋 季之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 佑太
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB02
5G503BB05
5G503CA08
5G503CA11
5G503DA18
5G503FA16
5G503GA01
5G503GA12
5G503GA13
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA03
5H030AS08
5H030BB26
5H030FF41
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】バッテリを過充電から保護する。
【解決手段】車両用電源装置1は、バッテリ2と、車両電源3と、充放電経路4と、スイッチ部5と、制御装置9の監視部91と、を備える。スイッチ部5は、直列に接続されたFET51およびFET52と、アノードをバッテリ2側に配置して、FET51に並列に接続されたダイオード53と、ダイオード53と逆向きに配置され、FET52に並列に接続されたダイオード54と、を備える。監視部91は、バッテリ2を過充電から保護する際に、FET51をオフにし、かつFET52をオンにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のバッテリと、
第2のバッテリと、
前記第1のバッテリと前記第2のバッテリとを、互いに充放電可能に接続する充放電経路と、
前記充放電経路に設けられたスイッチ部と、
前記第1のバッテリの状態を監視して、前記スイッチ部を制御する監視部と、を備え、
前記スイッチ部は、
直列に接続された第1の半導体スイッチング素子および第2の半導体スイッチング素子と、
アノードを前記第1のバッテリ側に配置して、前記第1の半導体スイッチング素子に並列に接続された第1のダイオードと、
前記第1のダイオードと逆向きに配置され、前記第2の半導体スイッチング素子に並列に接続された第2のダイオードと、を備え、
前記監視部は、前記第1のバッテリを過充電から保護する際に、前記第1の半導体スイッチング素子をオフにし、かつ前記第2の半導体スイッチング素子をオンにする、車両用電源装置。
【請求項2】
前記監視部は、前記第1の半導体スイッチング素子をオフにし、かつ前記第2の半導体スイッチング素子をオンにした後、前記第1のバッテリの放電を検出した場合に、前記第1の半導体スイッチング素子および前記第2の半導体スイッチング素子をオンにする、請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記第1の半導体スイッチング素子の両端に接続された第1の電圧センサを備え、
前記監視部は、前記第1の電圧センサで測定される電位差に基づいて、前記第1のバッテリからの放電を検出する、請求項2記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記充放電経路に設けられたヒューズと、
前記ヒューズの両端に接続された第1の電圧センサと、を備え、
前記監視部は、前記第1の電圧センサで測定される電位差に基づいて、前記第1のバッテリからの放電を検出する、請求項2記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記第1のバッテリを構成する各セルの電圧を測定する第2の電圧センサを備え、
前記監視部は、前記第1の半導体スイッチング素子および前記第2の半導体スイッチング素子をオンにした状態で、前記各セルの電圧の総和を、前記第1のバッテリの電圧として算出し、
前記監視部は、前記各セルの電圧の総和が、前記第1のバッテリの上限電圧を示す閾値を超えた場合に、前記第1の半導体スイッチング素子をオフにし、かつ前記第2の半導体スイッチング素子をオンにする、請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記監視部は、前記第1のバッテリの単位セル当たりの上限電圧に前記第1のバッテリを構成するセルの総数を掛けた値を前記閾値として用いる、請求項5記載の車両用電源装置。
【請求項7】
前記第2のバッテリから印加される電圧を測定する第3の電圧センサを備え、
前記監視部は、前記第2のバッテリから印加される電圧と前記第1のバッテリの電圧との差分が、許容電圧値を超える場合に、
前記第1の半導体スイッチング素子をオフにし、かつ前記第2の半導体スイッチング素子をオンにする、請求項5または6記載の車両用電源装置。
【請求項8】
前記監視部は、前記第1のバッテリの単位セル当たりの上限電圧と、前記第2の電圧センサで測定される最大セル電圧との差分にセルの総数を掛けた値を、前記各セルの電圧の総和に足すことで前記閾値を算出する、請求項5記載の車両用電源装置。
【請求項9】
前記第1のバッテリの充電率を推定する推定部を備え、
前記監視部は、前記第1の半導体スイッチング素子をオフにし、かつ前記第2の半導体スイッチング素子をオンにしている間、前記推定部で推定される前記充電率が所定値より低くなった場合、前記第1の半導体スイッチング素子を間欠的にオンにして、前記第2のバッテリから前記第1のバッテリへの充電を行う、請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項10】
前記第1のバッテリの充電率を推定する推定部と、
前記第1のバッテリと前記第2のバッテリとを充放電可能に接続し、電圧調整装置が設けられたバイパス経路と、を備え、
前記監視部は、前記第1の半導体スイッチング素子をオフにし、かつ前記第2の半導体スイッチング素子をオンにしている間、前記推定部で推定される前記充電率が所定値より低くなった場合、前記バイパス経路を介して前記第2のバッテリから前記第1のバッテリへの充電を行う、請求項1記載の車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用電源装置は、車両負荷に電力を供給する二次電池であるバッテリを備えている(例えば、特許文献1参照)。車両用電源装置は、例えば、複数のバッテリを備えたものとすることができる。複数のバッテリは、例えば、車両電源として機能するメインのバッテリと、バックアップ用の電源として機能するバッテリとすることができる。これらのバッテリは充放電経路を介して接続され、互いに充放電可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6944553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両電源は、車両負荷の使用状況等によって、出力する電圧が通常の範囲よりも上がることがある。ここで、バックアップ用のバッテリは必要とされる電圧が比較的低いため、車両電源を構成するバッテリと比較して内部抵抗の小さいバッテリが用いられることがある。しかしながら、車両電源から通常よりも高い電圧がバックアップ用のバッテリに印加されると、バッテリの過充電を招く可能性がある。
【0005】
複数のバッテリが充放電可能に接続された車両用電源装置において、バッテリを過充電から保護することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様における車両用電源装置は、
第1のバッテリと、
第2のバッテリと、
前記第1のバッテリと前記第2のバッテリとを、互いに充放電可能に接続する充放電経路と、
前記充放電経路に設けられたスイッチ部と、
前記第1のバッテリの状態を監視して、前記スイッチ部を制御する監視部と、を備え、
前記スイッチ部は、
直列に接続された第1の半導体スイッチング素子および第2の半導体スイッチング素子と、
アノードを前記第1のバッテリ側に配置して、前記第1の半導体スイッチング素子に並列に接続された第1のダイオードと、
前記第1のダイオードと逆向きに配置され、前記第2の半導体スイッチング素子に並列に接続された第2のダイオードと、を備え、
前記監視部は、前記第1のバッテリを過充電から保護する際に、前記第1の半導体スイッチング素子をオフにし、かつ前記第2の半導体スイッチング素子をオンにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1のバッテリを過充電から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両用電源装置の電気的構成を示す図である。
図2】実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】FET51をオフにした状態を示す図である。
図4】バッテリからの放電を説明する図である。
図5】制御装置の監視部の処理を示すフローチャートである。
図6】変形例1に係る車両用電源装置の電気的構成を示す図である。
図7】変形例2に係る監視部の処理を示すフローチャートである。
図8】変形例3に係る車両用電源装置の電気的構成を示す図である。
図9】変形例4における閾値TH1の設定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る車両用電源装置を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る車両用電源装置1の電気的構成を示す図である。
図2は、実施形態に係る制御装置9の機能構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車両用電源装置1は、バッテリ2(第1のバッテリ)と、車両電源3(第2のバッテリ)と、充放電経路4と、制御装置9と、を有する。
バッテリ2は、充放電経路4を介して、車両電源3および車両負荷6に並列に接続されている。
バッテリ2および車両電源3は、充放電経路4を介して車両負荷6に電力を供給可能である。また、バッテリ2および車両電源3は、充放電経路4を介して互いに充放電が可能である。
車両用電源装置1において、例えば、車両電源3を、メインで車両負荷6に電力を供給する電源とし、バッテリ2を、車両電源3のバックアップ用の電源として用いることができる。そのため、バッテリ2は、車両電源3を構成するバッテリよりも、安価で内部抵抗の小さいものを用いても良い。
【0010】
車両負荷6は、車両に設けられ、電力の供給を必要とする様々な機器である。車両負荷6は、例えば、走行制御装置、DC/DCコンバータ、インバータ、ヘッドライト、ルームライト、ウィンカー、パワーウィンドウ、オーディオシステム、空調装置、カーナビゲーションシステム等を含む。
【0011】
車両電源3は、例えば、鉛蓄電池等の二次電池を含んで構成される。図示は省略するが、車両電源3はオルタネータ等の発電機に接続される。車両電源3は、車両の走行中に、オルタネータで発電された電力によって充電される。
【0012】
バッテリ2は、例えば、リチウムイオンバッテリ等の二次電池を用いて構成することができる。バッテリ2は、複数のセルが直列に接続されて構成された組電池である。図2では一例として、バッテリ2が4つのセルC1~C4から構成される例を示しているが、バッテリ2を構成するセルの数は限定されない。
図1に示すように、バッテリ2は、プラス端子側(図中上側)が充放電経路4に接続され、マイナス端子側(図中下側)がボディグランドに接続されている。図示は省略するが、バッテリ2は、組電池に加えて、リレー等の保護回路や、バッテリ2の充放電を管理するバッテリマネジメントシステム(Battery Management System、BMS)等を備えることができる。
【0013】
車両用電源装置1は、バッテリ2のセル電圧Vcを測定する電圧センサ72(第2の電圧センサ)を備えている。図2に示すように、電圧センサ72は、具体的には、バッテリ2を構成する各セルC1~C4のそれぞれのセル電圧Vcを測定可能な電圧センサ群から構成される。
【0014】
図1に示すように、充放電経路4にはスイッチ部5が設けられている。スイッチ部5は、バッテリ2の、車両負荷6および車両電源3に対する接続および遮断を切り替える。
スイッチ部5は、第1の半導体スイッチング素子であるFET(Field effect transistor)51と、第2の半導体スイッチング素子であるFET52を備える。FET51およびFET52は、充放電経路4上に、直列に接続されて配置されている。
スイッチ部5は、さらに、FET51に並列に接続されたダイオード53(第1のダイオード)と、FET52に並列に接続されたダイオード54(第2のダイオード)と、を備える。
図1では、FET51が車両電源3側、FET52がバッテリ2側に配置された構成を示しているが、FET51をバッテリ2側、FET52を車両電源3側に配置しても良い。
【0015】
ダイオード53およびダイオード54は、電流を一方向のみに流す部品である。FET51に接続されたダイオード53は、アノードがバッテリ2側に配置され、カソードが車両電源3側に配置されている。すなわち、ダイオード53は、バッテリ2側から車両電源3側への方向にのみ、電流が流れるように配置されている。
ダイオード54は、ダイオード53とは逆向きに配置されている。すなわち、ダイオード54は、カソードがバッテリ2側に配置され、アノードが車両電源3側に配置されている。すなわち、ダイオード54は、車両電源3側からバッテリ2側への方向にのみ、電流が流れるように配置されている。
【0016】
充放電経路4上の、スイッチ部5と車両電源3の間には、ヒューズ41が設けられている。ヒューズ41は、充放電経路4に過度な電流が流れた際に、充放電経路4を遮断する。
【0017】
充放電経路4には、FET51の両端側に端子が接続する電圧センサ71(第1の電圧センサ)が設けられている。電圧センサ71は、FET51の両端側の電位差PDを測定する。また、充放電経路4の車両負荷6側の端部には、ヒューズ41と車両負荷6との間に電圧センサ73(第3の電圧センサ)が設けられている。電圧センサ73は、車両電源3からバッテリ2に印加される電圧(以降、「車両電圧」という)を測定する。
【0018】
制御装置9は、例えば、バッテリ2および車両電源3の充放電を統括的に制御するECU(Electronic Control Unit)の機能の一部として構成することができる。
制御装置9は、図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置、記憶装置、タイマ、入出力ポート等を含んで構成される。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM等を含む。CPUが記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで、制御装置9の機能が実現される。また、記憶装置には、制御装置9の処理に必要なデータが記憶されると共に、制御装置9の処理結果が一時的に記憶される。
制御装置9は、電圧センサ71、72、73に接続しており、それぞれの測定値を取得することができる。制御装置9は、あるいは、車両に構築された車内LAN(Local Area Network)等を介して、バッテリ2のBMS(不図示)から、電圧センサ72の測定値を取得しても良い。
【0019】
図2に示すように、制御装置9は、バッテリ2の状態を監視してスイッチ部5を制御する機能構成として、監視部91と、推定部92と、を有する。
監視部91は、バッテリ2を過充電から保護するためのスイッチ部5の制御を行う。
車両の走行中に、車両負荷6の要求する電力が大きくなった場合等に、車両電源3が出力する電圧が通常の範囲よりも上がることがある。前記したように、バッテリ2をバックアップ用の電源として用いる場合、車両電源3よりも内部抵抗の小さいバッテリをバッテリ2として用いることがある。内部抵抗の小さいバッテリ2に、車両電源3から通常よりも電圧が印加されると、バッテリ2の過充電を招く可能性がある。
そこで、監視部91は、バッテリ2の状態を監視して、過充電となる可能性がある場合は、スイッチ部5を制御して、バッテリ2を車両電源3から遮断する。
【0020】
推定部92は、監視部91の処理に用いられるバッテリ2の充電率(State of Charge、以降「SOC」という)を推定する。
推定部92は、公知の方法を用いてバッテリ2のSOCを推定することができる。推定部92は、一例として、電圧センサ72が測定するバッテリ2のセル電圧Vcの時系列データを用いて、カルマンフィルタまたは電流積算法等の公知の手法により、SOCを推定することができる。推定部92は、車両の走行中に、SOCの推定を定期的に行う。なお、推定部92で推定されるSOCは、後記する変形例2の処理において使用される。そのため、制御装置9において変形例2の処理を実施しない場合には、推定部92は省略しても良い。
【0021】
監視部91は、通常は、スイッチ部5のFET51およびFET52をオンに制御する。これにより、バッテリ2は、充放電経路4を介して車両電源3および車両負荷6に接続される。
図1では、充放電経路4における電流の流れを点線で示している。車両の走行中には、オルタネータが発電を行うことによって車両電源3が充電される。車両電源3が放電を行うことによって、充放電経路4を介して車両負荷6に電力が供給され、バッテリ2が充電される。すなわち、充放電経路4には、車両電源3側からバッテリ2側への方向(以降「充電方向」という)に電流が流れている。
【0022】
監視部91は、このように充放電経路4において充電方向に電流が流れている際に、バッテリ2の過充電の可能性を判定した場合に、スイッチ部5を制御して車両電源3からの電流を遮断することで、バッテリ2を過充電から保護する。監視部91は、具体的には、スイッチ部5のFET51をオフにし、FET52はオンにする制御を行う。
図3は、FET51をオフにした状態を示す図である。
図3に示すように、FET51がオフされることで、FET51における電流の導通が遮断される。
ここで、FET51およびFET52には、ダイオード53およびダイオード54が並列に接続されている。FET51に並列に接続されたダイオード53は、前記したように、バッテリ2側から車両電源3側への方向のみ流れる。すなわち、ダイオード53は、バッテリ2から車両電源3への放電方向の電流は流れるが、充電方向の電流は流れないように配置されている。
すなわち、スイッチ部5のFET51をオフすると、充電方向の電流は、FET51と、FET51に並列に接続されたダイオード53のいずれにも流れない状態となる。これによって、車両電源3からバッテリ2への充電方向の電流が遮断され、バッテリ2が過充電から保護される。
【0023】
監視部91は、バッテリ2の過充電を防止するために、以下の2つの目的に沿った判定処理を行う。
・目的1:バッテリ2のセル電圧Vcが、バッテリ2の上限電圧Vuを超えないようにする。
・目的2:バッテリ2の許容電流を超える大電流が流れないようにする。
【0024】
図1に示すように、FET51およびFET52がオンの状態では、車両電圧がバッテリ2に印加され、バッテリ2のセル電圧Vcが上昇する。目的1に示すように、バッテリ2のセル電圧Vcがバッテリ2の上限電圧Vuを超えると、バッテリ2の過充電を招く可能性がある。
目的1に沿った判定処理として、監視部91は、バッテリ2の電圧V2をバッテリ2全体の上限電圧を示す閾値TH1と比較する。
監視部91は、車両電圧が閾値TH1を超えた場合、FET51をオンからオフに切り替える。前記したように、FET51およびFET52がオンの状態では、車両電圧がバッテリ2に印加されている。そのため、監視部91は、電圧センサ72から各セル電圧Vcを取得し、各セル電圧Vcの総和ΣVcであるバッテリ2の電圧V2を算出する。監視部91は、バッテリ2の電圧V2と閾値TH1と比較する。
【0025】
閾値TH1は、例えば、バッテリ2を構成する単位セル当たりの上限電圧Vuにセルの総数Nを乗じた値とすることができる。単位セル当たりの上限電圧Vuは、セルの仕様に応じて設定される値である。例えば、単位セル当たりの上限電圧が4.2Vであり、セルの総数が3の場合は、閾値TH1は4.2V×3=12.6Vとなる。閾値TH1はあらかじめ算出して、記憶装置に記憶させることができる。
【0026】
目的2に示すように、充放電経路4に許容電流を超える大電流が流れると、バッテリ2に過充電等の影響を招く可能性がある。大電流は、車両電圧とバッテリ2の電圧との差が急激に大きくなると流れる可能性がある。
充放電経路4を流れる電流は、以下の式(1)で算出することができる。
式(1):
(車両電圧-バッテリ2の電圧V2(=ΣVc))÷充放電経路4の抵抗R=充放電経路4を流れる電流I
【0027】
式(1)に示すように、充放電経路4を流れる電流の大きさは、車両電圧とバッテリ2の電圧V2との差分ΔV(車両電圧-バッテリ2の電圧V2)に応じたものとなる。この充放電経路4を流れる電流が、バッテリ2および充放電経路4の許容電流を超える場合に、監視部91はFET51をオフしてバッテリ2を大電流から保護する必要がある。
【0028】
監視部91は、目的2に沿った判定処理として、車両電圧とバッテリ2の電圧V2の差分ΔVを算出して、閾値TH2と比較する。閾値TH2は、バッテリ2および充放電経路4で許容される最大電流が流れる際の電圧値(許容電圧値)を示すものである。閾値TH2は、予め設定して記憶装置に記憶させる。
【0029】
監視部91は、電圧センサ73で測定された車両電圧を取得し、車両電圧から、バッテリ2の電圧V2(=ΣVc)を差し引くことで、差分ΔVを算出することができる。
【0030】
このように、監視部91は、車両電圧がバッテリ2の電圧よりも高く、充放電経路4に充電方向の電流が流れている状態で、バッテリ2を過充電から保護するためにFET51をオフにする制御を行う。
FET51をオフにした後に、例えば、車両電圧がバッテリ2の電圧よりも低くなることがある。一例として、オルタネータの不具合等により発電が行われないと、車両電源3の充電率が下がって車両電圧が低下することがある。このような場合には、バッテリ2が放電を行って、車両電源3を充電し、または車両負荷6に電力を供給することが望ましい。
【0031】
図4は、バッテリ2からの放電を説明する図である。
図4に示すように、スイッチ部5のFET51はオフされた状態であるが、FET51にはダイオード53が並列に接続されている。ダイオード53は、前記したようにアノードがバッテリ2側に配置されている。そのため、ダイオード53は充電方向の電流は遮断するが、放電方向の電流を流すことができる。
【0032】
すなわち、本実施形態の車両用電源装置1では、車両電圧がバッテリ2の電圧よりも低下して、バッテリ2から放電が行われると、充放電経路4では、FET52およびダイオード53を介して放電方向の電流が流れる。これによって、バッテリ2から車両電源3および車両負荷6に電力の供給を行うことができる。
ただし、ダイオード53を介した放電が継続されると、ダイオード53の発熱が大きくなる可能性がある。特に、ダイオードは順方向(放電方向)の発熱量が大きい傾向がある。ダイオード53の発熱を低減するために放熱機構を設けると、車両用電源装置1が大型化して車両の設置スペースが制約され、設置コストも増加する。
そこで、制御装置9は、バッテリ2の放電を検出した場合には、FET51をオフからオンに戻す制御を行う。FET51をオンすることによって、バッテリ2から放電された電流はFET51を導通するため、ダイオード53の発熱が低減され、放熱機構を不要とすることができる。
【0033】
監視部91は、FET51の両端に接続した電圧センサ71が測定する電位差PDから、バッテリ2の放電を検出する。
FET51がオフされた状態でバッテリ2から放電が行われた場合、ダイオード53に電流が流れる。すなわち、電圧センサ71は、FET51がオフされた状態では、ダイオード53の両端側の電位差PDを検出することになる。ダイオードに順方向に電流が流れている場合、10mA程度の小さな電流でも、0.6V程度の電位差PDを検出することができる。
監視部91は、電圧センサ71が測定する電位差PDを、閾値TH3と比較することで、バッテリ2の放電を検出する。閾値TH3はバッテリ2の放電を示す電位差であり、予め設定して記憶装置に記憶させることができる。制御装置9は、電圧センサ71で測定される電位差PDが閾値TH3を超えた場合に、FET51をオフからオンに切り替える制御を行う。
【0034】
なお、詳細な説明は省略するが、監視部91は、前記した、バッテリ2を過充電から保護する目的以外でも、FET51およびFET52のオンおよびオフを行っても良い。例えば、監視部91は、バッテリ2の不具合等が判定された場合には、FET51、FET52の双方をオフにして、バッテリ2を充放電経路4から遮断しても良い。
【0035】
本実施形態における車両用電源装置1の制御装置9の処理の流れを説明する。
図5は、制御装置9の監視部91の処理を示すフローチャートである。
監視部91は、初期状態として、FET51およびFET52をオンにする。
監視部91は、電圧センサ72からバッテリ2のセル電圧Vcを取得し、電圧センサ73から車両電圧を取得し、各セル電圧の総和ΣVcをバッテリ2の電圧V2として算出する(ステップS01)。監視部91は、バッテリ2の電圧V2を閾値TH1と比較する(ステップS02)。
監視部91は、バッテリ2の電圧V2が閾値TH1を超えている場合(ステップ02:Yes)、制御装置9はステップS05に進み、FET51をオフにする。
監視部91は、バッテリ2の電圧V2が閾値TH1以下の場合(ステップS02:No)、車両電圧とバッテリ2の電圧V2の差分ΔVを算出する(ステップS03)。
監視部91は、具体的には、電圧センサ73で取得された車両電圧を取得し、車両電圧から、ステップS01で算出したバッテリ2の電圧V2(ΣVc)差し引いて、差分ΔVを算出する。
監視部91は、算出した差分ΔVが閾値TH2を超えた場合(ステップS04:Yes)、ステップS05に進み、FET51をオフにする。
監視部91は、差分ΔVが閾値TH2以下の場合(ステップS04:No)、FET51はオンのままにして、処理を終了する。
【0036】
監視部91は、ステップS05において、FET51をオフにした後、電圧センサ71で測定される電位差PDを取得し、閾値TH3と比較する(ステップS06)。監視部91は、電位差PDが閾値TH3を超えた場合に(ステップS06:Yes)、バッテリ2からの放電を検出して、FET51をオンにする(ステップS07)。
なお、監視部91は、図5に示す処理を終了した後、再びステップS01から図5に示す処理を行う。すなわち、監視部91は、車両が走行している間、図5に示す処理を繰り返し行う。これによって、バッテリ2を過充電から保護することができる。
【0037】
以上の通り、本実施形態の車両用電源装置1は、以下の構成を有する。
(1)車両用電源装置1は、
バッテリ2(第1のバッテリ)と、
車両電源3(第2のバッテリ)と、
バッテリ2と車両電源3とを、互いに充放電可能に接続する充放電経路4と、
充放電経路4に設けられたスイッチ部5と、
バッテリ2の状態を監視して、スイッチ部5を制御する制御装置9の監視部91と、を備える。
スイッチ部5は、
直列に接続されたFET51(第1の半導体スイッチング素子)およびFET52(第2の半導体スイッチング素子)と、
アノードをバッテリ2側に配置して、FET51に並列に接続されたダイオード53(第1のダイオード)と、
ダイオード53と逆向きに配置され、FET52に並列に接続されたダイオード54(第2のダイオード)と、を備える。
監視部91は、バッテリ2を過充電から保護する際に、FET51をオフにし、かつFET52をオンにする。
【0038】
車両の走行中には、バッテリ2に充放電経路4を介して車両電源3から電力が供給され、バッテリ2が充電される。ここで、車両電源3の出力電圧が通常より大きくなると、バッテリ2のセル電圧Vcが上限電圧Vuを超え、バッテリ2が過充電となる可能性がある。また、バッテリ2と車両電源3の電圧差ΔVが大きくなった場合にも、充放電経路4に大電流が流れて、バッテリ2が過充電となる可能性がある。
本実施形態の車両用電源装置1は、充放電経路4にスイッチ部5を設けている。監視部91が、スイッチ部5のFET51をオフし、FET52はオンにすることで、車両電源3からバッテリ2への電力の流れが遮断されるため、バッテリ2を過充電から保護することができる。なお、FET51にはダイオード53が並列に接続されているが、ダイオード53は、バッテリ2をアノード側に配置しているため、充電方向の電流の流れは遮断される。
【0039】
一方、車両電源3のSOCが下がり、車両電源3の電圧がバッテリ2の電圧よりも低くなった場合、バッテリ2から放電を行い、車両電源3を充電するか、車両負荷6に電力を供給することが望ましい。ここで、スイッチ部5がFET51、FET52のみから構成されている場合、FET51をオフにすると充放電経路4は完全に遮断されるため、バッテリ2から放電を行うことができない。
本実施形態では、FET51にダイオード53が並列に接続されている。ダイオード53は、バッテリ2側にアノードが配置されており、バッテリ2から車両電源3への放電方向の電流が流れる。
すなわち、車両電源3の電圧が低下した場合、バッテリ2から放電された電流が、オン状態であるFET52と、FET51に並列に接続されたダイオード53を介して充放電経路4を流れる。これによって、バッテリ2は放電を行うことが可能となり、車両電源3を充電し、または車両負荷6に充電を行うことができる。
【0040】
(2)監視部91は、FET51をオフにし、かつFET52をオンにした後、バッテリ2の放電を検出した場合に、FET51およびFET52をオンにする。
【0041】
ダイオード53を介した放電を継続すると、ダイオード53の発熱が大きくなる。ダイオード53を放熱させるための放熱機構を設けると、車両用電源装置1が大型化し、設置コストが増大する。
本実施形態では、監視部91は、バッテリ2の放電を検出した場合に、FET51をオンにする。これによって、バッテリ2から放電された電流はFET51を導通することができるため、ダイオード53の発熱を低減することができる。これにより、ダイオード53の放熱機構が不要となるため、車両用電源装置1の小型化および設置コストの削減を図ることができる。
【0042】
(3)車両用電源装置1は、FET51の両端に接続された電圧センサ71(第1の電圧センサ)を備える。
監視部91は、電圧センサ71で測定される電位差PDに基づいて、バッテリ2からの放電を検出する。
【0043】
FET51がオフされた状態ではダイオード53に電流が流れるため、電圧センサ71は、ダイオード53の両端側の電位差PDを検出することになる。ダイオード53に順方向に電流が流れている場合、小さい電流でも電位差PDが検出されやすい。すなわち、監視部91は、バッテリ2から放電が開始された場合、すみやかに放電を検出してFET51をオンにすることができるため、ダイオード53の放熱を低減することができる。
【0044】
(5)車両用電源装置1は、バッテリ2を構成する各セルの電圧Vcを測定する電圧センサ72(第2の電圧センサ)を備える。
監視部91は、FET51およびFET52をオンにした状態で、電圧センサ72で測定される各セルの電圧の総和ΣVcを、バッテリ2の電圧V2として算出する。
監視部91は、算出した各セルの電圧の総和ΣVcが、バッテリ2の上限電圧を示す閾値TH1を超えた場合に、FET51をオフにし、かつFET52をオンにする。
【0045】
バッテリ2のセル電圧Vcが上限電圧Vuを超えると、バッテリ2が過充電となる可能性がある。本実施形態において、監視部91が、バッテリ2全体の上限電圧に基づいて設定した閾値TH1を用いて、FET51のオフする制御を行うことで、バッテリ2を過充電から適切に保護することができる。
【0046】
(6)監視部91は、バッテリ2の単位セル当たりの上限電圧Vuにバッテリ2を構成するセルの総数Nを掛けた値を閾値TH1として用いる。
【0047】
バッテリ2全体の上限電圧は、例えば、単位セル当たりの上限電圧Vuにセルの総数Nを掛けたものとすることができる。これによって、バッテリ2に印加される電圧がバッテリ2の上限電圧を超えた場合に、監視部91によってFET51がオフされるため、バッテリ2を過充電から保護することができる。また、閾値TH1はあらかじめ設定した値を用いることができるため、監視部91の演算負荷を低減することができる。
【0048】
(7)車両用電源装置1は、車両電圧(第2のバッテリから印加される電圧)を測定する電圧センサ73(第3の電圧センサ)を備える。
監視部91は、電圧センサ73から車両電圧の測定値を取得する。監視部91は、車両電圧とバッテリ2の電圧V2(ΣVc)との差分ΔVが閾値TH2(許容電圧値)を超える場合に、FET51をオフにし、かつFET52をオンにする。
【0049】
車両電圧とバッテリ2の電圧V2の差が大きくなると、充放電経路4に許容電流を超える大電流が流れ、バッテリ2が過充電となる可能性がある。そのため、監視部91は、車両電圧とバッテリ2の電圧の差分ΔVが、許容電圧値を示す閾値TH3を超える場合にFET51をオフにする。これによってバッテリ2を過充電から保護することができる。
【0050】
以下、前記した実施形態の変形例を説明する。なお、変形例においては、前記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
<変形例1>
図6は、変形例1に係る車両用電源装置1の電気的構成を示す図である。
前記した実施形態では、FET51の両端に電圧センサ71(第1の電圧センサ)を接続する例を説明したが、この態様に限定されない。
図6に示すように、変形例1では、充放電経路4に設けられたヒューズ41の両端に、電圧センサ71の端子を接続している。すなわち、電圧センサ71は、ヒューズ41の両端の電位差PDを測定する。
【0051】
変形例1において、監視部91は、ヒューズ41の両端に接続した電圧センサ71が測定する電位差PDから、バッテリ2の放電を検出する。
前記したように、FET51がオフされた状態では、バッテリ2から放電が行われた場合、ダイオード53を介して充放電経路4に電流が流れる。すなわち、充放電経路4に設けられたヒューズ41に電流が流れるため、監視部91は、ヒューズ41の両端に接続する電圧センサ71の測定値からバッテリの放電を検出することができる。監視部91は、電圧センサ71で測定された電位差PDが閾値TH3を超える場合に、バッテリ2の放電を検出して、FET51をオフからオンに切り替えることができる。
【0052】
以上のように、変形例1に係る車両用電源装置1は、例えば、以下の構成を備える。
(4)車両用電源装置1は、充放電経路4に設けられたヒューズ41と、
ヒューズ41の両端に接続された電圧センサ71(第1の電圧センサ)と、を備える。
監視部91は、電圧センサ71で測定される電位差PDに基づいて、バッテリ2からの放電を検出する。
【0053】
なお、電圧センサ71を設ける箇所は、実施形態や変形例1に示した例に限定されない。電圧センサ71は、電位差PDが検出しやすい箇所に設置することができる。例えば、図示は省略するが、電圧センサ71は充放電経路4に設けられているバスバーやシャント抵抗の両端に接続することができる。
さらに、実施形態や変形例1では、監視部91が、電圧センサ71で測定される電位差PDに基づいて、バッテリ2の放電を検出する例を説明したが、この態様に限定されない。監視部91は、例えば、充放電経路4に設けられた電流センサの測定値に基づいて、バッテリ2の放電を検出しても良い。電流センサは、例えば、充放電経路4の、スイッチ部5のFET51と車両電源3の間に接続することができる。監視部91は、電流センサによって放電方向に流れる電流が測定された場合、バッテリ2の放電を検出することができる。
【0054】
<変形例2>
前記したように、監視部91は、バッテリ2が過充電となる可能性がある場合に、FET51をオフにすることで、バッテリ2を保護する。
ここで、FET51をオフした状態が長時間継続すると、バッテリ2のSOCが低下して、バッテリ2の放電が必要となった際に、必要量の放電が行えない可能性がある。
図2に示すように、制御装置9は、車両の走行中に、SOCの推定を定期的に行う推定部92を備える。
変形例2では、監視部91は、FET51をオフにした後に、推定部92で推定されるバッテリ2のSOCが所定値PVaより低下した場合に、FET51を間欠的にオンすることで、バッテリ2の充電を行う。
所定値PVaは、バッテリ2が放電を行うために要求される充電率に基づいて設定することができる。所定値PVaは、予め設定して記憶装置に記憶させることができる。
FET51を間欠的にオンするとは、FET51を短時間オンにした後、所定時間オフにし、再びFET51を短時間オンにすることを意味する。FET51を短時間のみオンにすることで、バッテリ2の過充電を防止する。FET51がオンになった際には、充放電経路4に充電方向の電流が流れるため、バッテリ2が徐々に充電される。
監視部91は、バッテリ2が徐々に充電されて、SOCが所定値PVaを超えると、FET51を間欠的にオンする制御を終了する。所定値PVaは予め設定して記憶装置に記憶させることができる。所定値PVaは、例えば、所定値PVaよりも高い値とすることができる。
【0055】
図7は、変形例2に係る監視部91の処理を示すフローチャートである。
図7は、FET51をオフにした後に行われる監視部91の処理を示している。
すなわち、図7の処理は、図5のステップS05においてFET51がオフされた後に行われる処理である。図7の処理は、図5のステップS06~S07に示す、バッテリ2の放電を検出する処理と並行して行われる。
【0056】
監視部91は、推定部92が推定したバッテリ2のSOCを取得する(ステップS101)。
監視部91は、バッテリ2のSOCを所定値PVaと比較する(ステップS102)。
監視部91は、バッテリ2のSOCが所定値PVaより低下していれば(ステップS102:Yes)、FET51を間欠的にオンにする制御を行う(ステップS103)。FET51を短時間オンにしている間だけ、充放電経路4に充電方向の電流が流れ、バッテリ2が徐々に充電される。
監視部91は、バッテリ2のSOCが所定値PVaを超えると(ステップS104:Yes)、FET51を間欠的にオンにする制御を終了する(ステップS105)。
監視部91は、図7の処理は、FET51がオフされている間は繰り返し行う。また、監視部91は、並行する図5のステップS06~S07の処理において、バッテリ2からの放電を検出してFET51をオンにした場合、図7の処理を終了する。
【0057】
以上のように、変形例2に係る車両用電源装置1は、例えば、以下の構成を備える。
(9)車両用電源装置1の制御装置9は、バッテリ2のSOC(充電率)を推定する推定部92を備える。
監視部91は、FET51をオフにし、かつFET52をオンにしている間、推定部92で推定されるバッテリ2のSOCが所定値PVaより低くなった場合、FET51を間欠的にオンにして、車両電源3からバッテリ2への充電を行う。
【0058】
FET51をオフにした状態が長時間継続するとバッテリ2に充電が行われず、バッテリ2のSOCが下がって放電時に十分な電力を供給できない可能性がある。そこで、監視部91がバッテリ2のSOCが所定値PVa以下となった場合、FET51を間欠的にオンにする制御を行うことで、バッテリ2の過充電を防ぎつつ、バッテリ2の充電を行うことができる。
なお、制御装置9は、推定部92で推定されるSOCを、監視部91で行われる処理以外に用いても良い。
【0059】
<変形例3>
図8は、変形例3に係る車両用電源装置1の電気的構成を示す図である。
変形例3では、変形例2と同様に、FET51をオフにした後に、バッテリ2のSOCを推定し、バッテリ2のSOCが所定値PVaより低下した場合に、バッテリ2の充電を行う態様を説明する。
図8に示すように、変形例3に係る車両用電源装置1は、充放電経路4と別に設けられたバイパス経路8を備えている。
バイパス経路8は、バッテリ2と車両電源3とを充放電可能に接続するものであり、バイパス経路8上には、DC/DCコンバータ81(電圧調整装置)が設けられている。また、バイパス経路8上の、DC/DCコンバータ81と車両電源3との間には、リレー等のスイッチが設けられている。リレーをオンにすることで、バイパス経路8を介したバッテリ2と車両電源3の間の充放電が可能となる。リレーのオンおよびオフは、監視部91によって制御される。
【0060】
推定部92は、図7に示した変形例2と同様に、監視部91においてFET51をオフにする制御が行われた後、バッテリ2のSOCの推定を定期的に行う。
変形例3の監視部91は、推定部92で推定されるバッテリ2のSOCが所定値PVaより低下した場合、図7のステップS103の代わりに、バイパス経路8のリレーをオンにする処理を行う。車両電源3から放電された電流は、バイパス経路8上に設けられたDC/DCコンバータ81によって電圧が調整され、バッテリ2に供給される。これにより、バッテリ2の過放電を防止しつつ、バッテリ2を充電することができる。
監視部91は、バッテリ2がバイパス経路8を介して充電され、SOCが所定値PVbを超えた場合、リレーをオフにして、バッテリ2の充電を終了する。
【0061】
以上のように、変形例3に係る車両用電源装置1は、例えば、以下の構成を備える。
(10)車両用電源装置1は、バッテリ2のSOCを推定する制御装置9の推定部92と、
バッテリ2と車両電源3とを充放電可能に接続し、DC/DCコンバータ81(電圧調整装置)が設けられたバイパス経路8と、を備える。
監視部91は、FET51をオフにし、かつFET52をオンにしている間、バッテリ2のSOCが所定値PVa以下となった場合、バイパス経路8を介して車両電源3からバッテリ2への充電を行う。
【0062】
FET51をオフにした状態が長時間継続するとバッテリ2に充電が行われず、バッテリ2のSOCが下がって放電時に十分な電力を供給できない可能性がある。変形例3では、車両用電源装置1は、DC/DCコンバータ81が設けられたバイパス経路8を備える。これによって、監視部91がバッテリ2のSOCが所定値PVa以下となった場合、バイパス経路8を介して、バッテリ2の過充電を防ぎつつ、車両電源3からバッテリ2に充電を行うことができる。
なお、電圧調整装置はDC/DCコンバータに限定されない。例えば、バイパス経路8に電圧調整装置としてダイオードを設けてもよい。
【0063】
<変形例4>
前記した実施形態では、バッテリ2の電圧V2と比較する閾値TH1を、バッテリ2を構成する単位セル当たりの上限電圧Vuにセルの総数Nを乗じた値とする例を説明したが、この態様に限定されない。
変形例4では、監視部91が、閾値TH1を、電圧センサ72で測定されるセル電圧Vcを用いて逐次決定する例を説明する。
【0064】
図9は、変形例4における閾値TH1の設定を説明する図である。
図9は、電圧センサ72で測定されるセル電圧Vcの一例を示しているが、図9に示すように、セル電圧Vcにはばらつきがある。図9の例では、4つのセルC1~C4の中で、セルC4が最も高いセル電圧(最大セル電圧Vcmax)を示している。図9に示すように、最大セル電圧Vcmaxは、単位セル当たりの上限電圧Vuに最も近い値である。言い換えれば、この最大セル電圧Vcmaxが上限電圧Vuまで達する電圧(クロスハッチング部分)が車両電源3から印加されれば、バッテリ2が過充電になる可能性が高い。
そこで、変形例4において、監視部91は、最大セル電圧Vcmaxが上限電圧Vuに達するまでの電圧量を算出して、この電圧量に基づいて閾値TH1を設定する。
【0065】
監視部91は、具体的には、以下の式(2)を用いて、バッテリ2全体の上限電圧を示す閾値TH1を算出することができる。
式(2):
閾値TH1=各セル電圧の総和ΣVc+{(単位セル当たりの上限電圧Vu-最大セル電圧Vcmax)×セルの総数N}
すなわち、式(2)では、最大セル電圧Vcmaxが上限電圧Vuに達するまでの電圧量(単位セル当たりの上限電圧Vu-最大セル電圧Vcmax)から、組電池であるバッテリ2全体の上限電圧を算出している。
【0066】
監視部91は、図5のステップS02において、バッテリ2の電圧V2を閾値TH1と比較する前に、式(2)を用いて閾値TH1を算出することができる。
監視部91は、図5のステップS01において、電圧センサ72から取得した各セル電圧Vcから最大セル電圧Vcmaxを選択する。監視部91は、また、ステップS01でバッテリ2の電圧V2として算出した各セル電圧の総和ΣVcを式(2)の演算に用いることができる。
単位セル当たりの上限電圧Vuおよびセルの総数Nは、実施形態と同様に、予め設定して、記憶装置に記憶させることができる。
【0067】
以上のように、変形例4に係る車両用電源装置1は、以下の構成を有する。
(8)監視部91は、バッテリ2の単位セル当たりの上限電圧Vuと、電圧センサ72で測定される最大セル電圧Vcmaxとの差分にセルの総数Nを掛けた値を、各セルの電圧の総和ΣVcに足すことで閾値TH1を算出する。
【0068】
前記した実施形態のように、閾値TH1は、単位セル当たりの上限電圧Vu×セルの総数Nとして設定することができる。ただし、単位セル当たりの上限電圧Vuを高めに設定した場合、各セルの電圧Vcにばらつきがあると、閾値TH1を超える前に最もSOCが高いセルで過充電が発生する可能性がある。単位セル当たりの上限電圧Vuに余裕を持たせて低めに設定することで過充電の可能性を低減することができるが、この場合は、バッテリ2に充電可能な電荷が小さくなる。
変形例4では、電圧センサ72で測定される最大セル電圧Vcmaxに応じて閾値TH1がリアルタイムで設定される。最大セル電圧Vcmaxが高い場合には閾値TH1は低めに設定されるが、最大セル電圧Vcmaxが低い場合は閾値TH1は高めに設定され、バッテリ2に充電可能な電荷に余裕が生じる。
すなわち、変形例4の車両用電源装置1は、バッテリ2を過充電から保護しつつ、バッテリ2の状態に応じた充電を行うことができる。
【0069】
<その他の変形例>
変形例2および変形例3では、車両の走行中にバッテリ2のSOCが下がった場合に充電を行う例を説明したが、この態様に限定されない。
例えば、車両の停止中であれば、オルタネータの発電が行われないため、車両電圧が通常よりも大きくなってバッテリ2が過充電になる可能性は低い。監視部91は、FET51をオフにした後、バッテリ2のSOCが所定値PVaより低下した場合、車両が停止したタイミングでFET51をオンにして、バッテリ2が充電されるように制御することができる。なお、車両の停止は、車両を駐車させて走行を停止させた状態と、車両のブレーキ等により車両の走行を一時的に停止させている状態の両方を含むことができる。
【0070】
前記した変形例は、実施形態に適用するだけでなく、変形例同士を組み合わせても良い。
【0071】
なお、閾値を用いた判定処理の一例として、閾値の比較対象が「閾値を超える」または「閾値より低い」場合に判定を行う態様を説明している場合、この態様のみに限定されない。比較処理は、閾値の比較対象が「閾値以上」または「閾値以下」である場合に判定を行う態様も含むことができる。反対に、閾値の比較対象が「閾値以上」または「閾値以下」である場合に判定を行う態様を説明する場合、この態様のみに限定されず、比較処理は、閾値の比較対象が「閾値を超える」または「閾値より低い」場合に判定を行う態様も含むことができる。すなわち、閾値を用いた判定処理の態様は、前記した例に厳密に解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 車両用電源装置
2 バッテリ(第1のバッテリ)
3 車両電源(第2のバッテリ)
4 充放電経路
41 ヒューズ
5 スイッチ部
51 FET(第1の半導体スイッチング素子)
52 FET(第2の半導体スイッチング素子)
53 ダイオード(第1のダイオード)
54 ダイオード(第2のダイオード)
71 電圧センサ(第1の電圧センサ)
72 電圧センサ(第2の電圧センサ)
73 電圧センサ(第3の電圧センサ)
8 バイパス経路
81 DC/DCコンバータ(電圧調整装置)
9 制御装置
91 監視部
92 推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9