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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137025
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】光学部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/04 20060101AFI20240927BHJP
   C08G 61/06 20060101ALI20240927BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G02B1/04
C08G61/06
G02B3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048373
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】川島 啓介
(72)【発明者】
【氏名】緒方 陽一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙一
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032CA34
4J032CA36
4J032CA45
4J032CB03
4J032CC03
4J032CD04
4J032CE03
4J032CG02
4J032CG07
(57)【要約】
【課題】高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスが向上した光学部品を提供する。
【解決手段】2枚以上の光学レンズを有する光学部品であって、光学部品における最外層の光学レンズが、環状構造を3環以上4環以下有するモノマー(X)由来の構成単位(x)と、環状構造を6環以上7環以下有するモノマー(Y)由来の構成単位(y)と、を含む共重合体(Z)を含み、共重合体(Z)中の、19F-NMRにより測定されるフッ素原子の含有量が、共重合体(Z)の全体を100質量%としたときに、20質量%以上70質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上の光学レンズを有する光学部品であって、
前記光学部品における最外層の光学レンズが、環状構造を3環以上4環以下有するモノマー(X)由来の構成単位(x)と、環状構造を6環以上7環以下有するモノマー(Y)由来の構成単位(y)と、を含む共重合体(Z)を含み、
前記共重合体(Z)中の、19F-NMRにより測定されるフッ素原子の含有量が、前記共重合体(Z)の全体を100質量%としたときに、20質量%以上70質量%以下である、光学部品。
【請求項2】
前記モノマー(X)は下記一般式(A)で表される化合物を含み、
前記モノマー(Y)は下記一般式(B)で表される化合物を含む、請求項1に記載の光学部品。
【化1】
(前記式(A)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【化2】
(前記式(B)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記一般式(A)において、R~Rのうち少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基であり、
前記一般式(B)において、R~Rのうち少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基である、請求項2に記載の光学部品。
【請求項4】
前記モノマー(X)における環状構造の数/全炭素原子数が0.20以上0.45以下であり、
前記モノマー(Y)における環状構造の数/全炭素原子数が0.30以上0.50以下である、請求項1~3のいずれかに記載の光学部品。
【請求項5】
前記共重合体(Z)において、前記モノマー(X)由来の構成単位(x)と、前記モノマー(Y)由来の構成単位(y)とのモル比(x/y)が0.25以上4.0以下である、請求項1~4のいずれかに記載の光学部品。
【請求項6】
前記共重合体(Z)全体を100質量%としたときに、前記共重合体(Z)中の前記構成単位(x)および前記構成単位(y)の合計含有量が、50質量%以上100質量%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の光学部品。
【請求項7】
2枚以上の光学レンズを有する光学部品であって、
前記光学部品における最外層の光学レンズが、
下記一般式(A)で表される化合物由来の構成単位と、
下記一般式(B)で表される化合物由来の構成単位と、を含む、共重合体(Z)を含む、光学部品。
【化3】

(前記式(A)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【化4】
(前記式(B)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【請求項8】
前記共重合体(Z)において、前記一般式(A)で表される化合物由来の構成単位(x')と、前記一般式(B)で表される化合物由来の構成単位(y')のモル比(x'/y')が0.25以上4.0以下である、請求項7に記載の光学部品。
【請求項9】
前記共重合体(Z)全体を100質量%としたときに、前記共重合体(Z)中の前記一般式(A)で表される化合物由来の構成単位(x')と、前記一般式(B)で表される化合物由来の構成単位(y')の合計含有量が、50質量%以上100質量%以下である、請求項7または8に記載の光学部品。
【請求項10】
前記共重合体(Z)の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、500以上1,000,000以下である、請求項1~9のいずれかに記載の光学部品。
【請求項11】
前記共重合体(Z)の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.0以上5.0以下である、請求項1~10のいずれかに記載の光学部品。
【請求項12】
前記最外層の光学レンズの、ASTM D542に準拠して測定されるアッベ数νdが60以上120以下である、請求項1~11のいずれかに記載の光学部品。
【請求項13】
前記共重合体(Z)のガラス転移温度が120℃以上である、請求項1~12のいずれかに記載の光学部品。
【請求項14】
前記最外層の光学レンズの、ASTM D542に準拠して測定されるd線波長光に対する屈折率ndが、1.30以上1.48以下である、請求項1~13のいずれかに記載の光学部品。
【請求項15】
前記最外層の光学レンズの、ISO 15184で規定される鉛筆硬度がB以上2H以下である、請求項1~14のいずれかに記載の光学部品。
【請求項16】
前記最外層の光学レンズの厚みが、0.5mm以上15mm以下である、請求項1~15のいずれかに記載の光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種光学部品(レンズ)では、より鮮明な画質を実現し小型化するために高アッベ数なレンズ材料が求められている。高アッベレンズ材料は色収差が小さいため、組み合わせレンズの最外層に用いて色ずれを低減させることができる。
高アッべ数に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載されたものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、D線波長光に対する屈折率が1.48以下であり、かつ、少なくとも一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーを含む光学部品材料が記載されている。当該フッ素含有環状オレフィンポリマーは、フッ素原子を含まない有機溶媒に可溶であり、表面極性が高く、水接触角が小さいことから、反射防止膜として好適に使用することができ、またアッべ数が60以上であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-177046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスが向上した光学部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、光学部品の最外層のレンズが、環状構造の異なる2種類のモノマー由来の構成単位を含む共重合体を含み、共重合体中のフッ素原子の含有量を所定の範囲とすることで、アッべ数が向上しつつ、耐熱性および傷つきにくさが改善した光学部品を得られることを見出し、本発明を完成させた。
また、本発明者らは、光学部品における最外層の光学レンズが、一般式(A)で表される化合物由来の構成単位と、一般式(B)で表される化合物由来の構成単位と、を含む共重合体(Z)を含むことで、アッべ数が向上しつつ、耐熱性および傷つきにくさが改善した光学部品を得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下に示す光学部品が提供される。
【0007】
[1] 2枚以上の光学レンズを有する光学部品であって、
前記光学部品における最外層の光学レンズが、環状構造を3環以上4環以下有するモノマー(X)由来の構成単位(x)と、環状構造を6環以上7環以下有するモノマー(Y)由来の構成単位(y)と、を含む共重合体(Z)を含み、
前記共重合体(Z)中の、19F-NMRにより測定されるフッ素原子の含有量が、前記共重合体(Z)の全体を100質量%としたときに、20質量%以上70質量%以下である、光学部品。
[2] 前記モノマー(X)は下記一般式(A)で表される化合物を含み、
前記モノマー(Y)は下記一般式(B)で表される化合物を含む、[1]に記載の光学部品。
【化1】
(前記式(A)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【化2】
(前記式(B)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
[3] 前記一般式(A)において、R~Rのうち少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基であり、
前記一般式(B)において、R~Rのうち少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基である、[2]に記載の光学部品。
[4] 前記モノマー(X)における環状構造の数/全炭素原子数が0.20以上0.45以下であり、
前記モノマー(Y)における環状構造の数/全炭素原子数が0.30以上0.50以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の光学部品。
[5] 前記共重合体(Z)において、前記モノマー(X)由来の構成単位(x)と、前記モノマー(Y)由来の構成単位(y)とのモル比(x/y)が0.25以上4.0以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の光学部品。
[6] 前記共重合体(Z)全体を100質量%としたときに、前記共重合体(Z)中の前記構成単位(x)および前記構成単位(y)の合計含有量が、50質量%以上100質量%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の光学部品。
[7] 2枚以上の光学レンズを有する光学部品であって、
前記光学部品における最外層の光学レンズが、
下記一般式(A)で表される化合物由来の構成単位と、
下記一般式(B)で表される化合物由来の構成単位と、を含む、共重合体(Z)を含む、光学部品。
【化3】

(前記式(A)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【化4】
(前記式(B)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
[8] 前記共重合体(Z)において、前記一般式(A)で表される化合物由来の構成単位(x')と、前記一般式(B)で表される化合物由来の構成単位(y')のモル比(x'/y')が0.25以上4.0以下である、[7]に記載の光学部品。
[9] 前記共重合体(Z)全体を100質量%としたときに、前記共重合体(Z)中の前記一般式(A)で表される化合物由来の構成単位(x')と、前記一般式(B)で表される化合物由来の構成単位(y')の合計含有量が、50質量%以上100質量%以下である、[7]または[8]に記載の光学部品。
[10] 前記共重合体(Z)の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、500以上1,000,000以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の光学部品。
[11] 前記共重合体(Z)の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、1.0以上5.0以下である、[1]~[10]のいずれかに記載の光学部品。
[12] 前記最外層の光学レンズの、ASTM D542に準拠して測定されるアッベ数νdが60以上120以下である、[1]~[11]のいずれかに記載の光学部品。
[13] 前記共重合体(Z)のガラス転移温度が120℃以上である、[1]~[12]のいずれかに記載の光学部品。
[14] 前記最外層の光学レンズの、ASTM D542に準拠して測定されるd線波長光に対する屈折率ndが、1.30以上1.48以下である、[1]~[13]のいずれかに記載の光学部品。
[15] 前記最外層の光学レンズの、ISO 15184で規定される鉛筆硬度がB以上2H以下である、[1]~[14]のいずれかに記載の光学部品。
[16] 前記最外層の光学レンズの厚みが、0.5mm以上15mm以下である、[1]~[15]のいずれかに記載の光学部品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスが向上した光学部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0010】
1.光学部品
本実施形態の光学部品は、2枚以上の光学レンズを有し、最外層の光学レンズが、環状構造を3環以上4環以下有するモノマー(X)由来の構成単位(x)と、環状構造を6環以上7環以下有するモノマー(Y)由来の構成単位(y)と、を含む共重合体(Z)を含み、共重合体(Z)中の、19F-NMRにより測定されるフッ素原子の含有量が、共重合体(Z)の全体を100質量%としたときに、20質量%以上70質量%以下である。
あるいは、本実施形態の光学部品は、2枚以上の光学レンズを有し、最外層の光学レンズが、一般式(A)で表される化合物由来の構成単位と、一般式(B)で表される化合物由来の構成単位と、を含む共重合体(Z)を含む。
【0011】
例えば、自動車に積載する撮像機器の光学部品(レンズ)やスマートフォンのカメラにおける光学部品(レンズ)では、より鮮明な画質を実現し小型化するために高アッベ数なレンズ材料が求められている。高アッベレンズ材料は色収差が小さいため、組み合わせレンズの最外層に用いて色ずれを低減させることができる。高アッベレンズ材料はアッベ数が大きいことに加え、最外層で使用されるため高温環境にも耐えられる耐熱性や傷つきにくい性質も要求されることがある。
近年の撮像機器やスマートフォンカメラの光学レンズには、例えば、非晶性ポリマーを用いた樹脂レンズが使用されている。非晶性ポリマーを用いた樹脂レンズにおいては、アッべ数を向上させるため、フッ素原子を導入させた設計が考えられる。
しかしながら、本発明者の検討によれば、フッ素原子を導入すると、樹脂の耐熱性が低くなり、また樹脂が柔らかくなるためレンズが傷つき易くなる場合があることが明らかとなった。
【0012】
本発明者らの検討によれば、光学部品の最外層のレンズが、環状構造の異なる2種類のモノマー由来の構成単位を含む共重合体を含み、共重合体中のフッ素原子の含有量を所定の範囲とすることで、アッべ数が向上しつつ、耐熱性および傷つきにくさが改善した光学部品を得られることがわかった。
この理由は明らかではないが、共重合体が、2種類の環状構造の異なるモノマー由来の構成単位を含むことで、耐熱性を向上することができる。そして環状構造を有するモノマーがフッ素を有し、共重合体中のフッ素含有量が適正な範囲内であることにより、高アッべ数と、耐熱性およびレンズの傷つきにくさというトレードオフの関係を改善できると考えられる。
【0013】
また、本発明者らの検討によれば、光学部品の最外層のレンズが、一般式(A)で表される化合物由来の構成単位および一般式(B)で表される化合物由来の構成単位を含む共重合体(Z)を含むことにより、アッべ数が向上しつつ、耐熱性および傷つきにくさが改善した光学部品を得られることがわかった。
この理由は明らかではないが、一般式(A)で表される化合物は、フッ素含有率が高いためアッべ数を向上でき、一般式(B)で表される化合物は、環の数が多く、剛直な構造を有するため、熱を加えられた時の共重合体の鎖の動きが制限され、耐熱性および傷つきにくさが向上すると考えられる。したがって、共重合体が、一般式(A)で表される化合物由来の構成単位および一般式(B)で表される化合物由来の構成単位を含むことにより、高アッべ数と、耐熱性およびレンズの傷つきにくさというトレードオフの関係を改善できると考えられる。
【0014】
モノマー(X)は、耐熱性を向上させる観点から、環状構造を3環以上4環以下有し、好ましくは環状構造を3環有する。
モノマー(Y)は、耐熱性を向上させる観点から、環状構造を6環以上7環以下有し、好ましくは環状構造を6環有する。
なお、環状構造の数は、化合物中に含まれる環状構造の数のうち、架橋部を経由せずかつ縮環部を経由する最大員環数の環状構造と、架橋部を経由する最小員環数の環状構造の合計数とする。例えば、5,6-ジフルオロ-5-フルオロ-6-(トリフルオロメチル)ビシクロ(2.2.1)ヘプト-2-エンは環状構造を3環有し、8,8,9-トリフルオロ-9-トリフルオロメチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンは環状構造を6環有する。
【0015】
本実施形態における共重合体(Z)は、環状構造およびフッ素含有率の異なるモノマー(X)およびモノマー(Y)を含むことにより、共重合体(Z)の含まれる最外層のレンズの高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上できる。この理由は定かではないが、フッ素含有率が高いモノマー(X)を含むことでアッベ数を向上しつつ、環状構造の数が多く剛直な構造を有するモノマー(Y)を含むことで耐熱性および傷つきにくさを向上できる。
【0016】
モノマー(X)は、耐熱性をより良好とし、共重合体(Z)中のフッ素含有量を適正な範囲とし、アッべ数を向上させる観点から、好ましくは下記一般式(A)で表される化合物を含む。
【0017】
【化1】
【0018】
式(A)中、好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0019】
式(A)中、より好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはトリフルオロメチル基であり、さらに好ましくはR~Rのうちいずれか一つがトリフルオロメチル基であり、残りの3つがフッ素であり、さらに好ましくは、Rがトリフルオロメチル基であり、R~Rがフッ素である。
これにより、共重合体(Z)中のフッ素含有量を適正な範囲とすることができ、ひいては、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上させることができる。
【0020】
モノマー(Y)は、共重合体(Z)中の耐熱性および傷つきにくさを向上させる観点から、好ましくは下記一般式(B)で表される化合物を含む。
【0021】
【化2】
【0022】
式(B)中、好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0023】
式(B)中、より好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはトリフルオロメチル基であり、さらに好ましくはR~Rのうちいずれか一つがトリフルオロメチル基であり、残りの3つがフッ素であり、さらに好ましくは、Rがトリフルオロメチル基であり、R~Rがフッ素である。
これにより、共重合体(Z)中のフッ素含有量を適正な範囲とすることができ、ひいては、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上させることができる。
【0024】
モノマー(X)の全炭素原子数に対する環状構造の数の比(環状構造の数/全炭素原子数)は、ポリマーの嵩高さを向上させることにより、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.30以上であり、そしてモノマーの入手の容易性の観点から、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下である。
モノマー(Y)の全炭素原子数に対する環状構造の数の比(環状構造の数/全炭素原子数)は、ポリマーの嵩高さを向上させることにより、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.35以上、好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.45以上であり、そしてモノマーの入手の容易性の観点から、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.48以下である。
【0025】
共重合体(Z)において、モノマー(X)由来の構成単位(x)と、モノマー(Y)由来の構成単位(y)とのモル比(x/y)は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.50以上、さらに好ましくは0.60以上であり、そして好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下である。共重合体(Z)において、モノマー(X)由来の構成単位(x)と、モノマー(Y)由来の構成単位(y)とのモル比(x/y)は、好ましくは0.25以上4.0以下、より好ましくは0.40以上3.5以下、さらに好ましくは0.50以上3.0以下、さらに好ましくは0.50以上2.5以下である。
これにより、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上させることができる。
なお、モノマー(X)由来の構成単位(x)と、モノマー(Y)由来の構成単位(y)とのモル比(x/y)は、19F-NMRにより測定されるものである。
【0026】
共重合体(Z)の19F-NMRにより測定されるフッ素含有量は、共重合体(Z)全体を100質量%としたとき、アッべ数を向上させる観点から、20質量%以上、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、また、得られるレンズの強度を向上させ、傷つきやすさを低減するとともに、ガラス転移温度を高くし、成形性を良好とする観点から、70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
共重合体(Z)のフッ素含有量は、19F-NMRにより測定されたモノマー(X)とモノマー(Y)のモル分率[A]と[B]を用いて測定されるものである。
【0027】
共重合体(Z)中の、モノマー(X)由来の構成単位(x)およびモノマー(Y)由来の構成単位(y)の合計含有量は、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上させる観点から、共重合体(Z)全体を100質量%としたときに、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、そして例えば100質量%以下である。
【0028】
共重合体(Z)は、本発明の効果を損なわない範囲で、モノマー(X)およびモノマー(Y)以外のその他の化合物由来の構成単位を含んでいてもよい。
共重合体(Z)がその他の化合物由来の構成単位を含む場合、その他の化合物由来の構成単位の含有量は、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上させる観点から、共重合体(Z)全体を100質量%としたときに、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、そして例えば0質量%以上であり、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。
【0029】
本実施形態の光学部品における最外層の光学レンズにおける共重合体(Z)は、共重合体(Z)中のフッ素含有量を適正な範囲とし、アッべ数を向上させる観点から、下記一般式(A)で表される化合物由来の構成単位を含む。
【0030】
【化3】
【0031】
式(A)中、好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0032】
式(A)中、より好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはトリフルオロメチル基であり、さらに好ましくはR~Rのうちいずれか一つがトリフルオロメチル基であり、残りの3つがフッ素であり、さらに好ましくは、Rがトリフルオロメチル基であり、R~Rがフッ素である。
これにより、共重合体(Z)中のフッ素含有量を適正な範囲とすることができ、ひいては、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上させることができる。
【0033】
本実施形態の光学部品における最外層の光学レンズにおける共重合体(Z)は、共重合体(Z)中の耐熱性および傷つきにくさを向上させる観点から、下記一般式(B)で表される化合物由来の構成単位を含む。
【0034】
【化4】
【0035】
式(B)中、好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0036】
式(B)中、より好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはトリフルオロメチル基であり、さらに好ましくはR~Rのうちいずれか一つがトリフルオロメチル基であり、残りの3つがフッ素であり、さらに好ましくは、Rがトリフルオロメチル基であり、R~Rがフッ素である。
これにより、共重合体(Z)中のフッ素含有量を適正な範囲とすることができ、ひいては、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上させることができる。
【0037】
共重合体(Z)において、一般式(A)で表される化合物由来の構成単位(x')と、一般式(B)で表される化合物由来の構成単位(y')とのモル比(x'/y')は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.50以上、さらに好ましくは0.60以上であり、そして好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下である。共重合体(Z)において、一般式(A)で表される化合物由来の構成単位(x')と、一般式(B)で表される化合物由来の構成単位(y')のモル比(x'/y')は、好ましくは0.25以上4.0以下、より好ましくは0.40以上3.5以下、さらに好ましくは0.50以上3.0以下、さらに好ましくは0.50以上2.5以下である。
これにより、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上させることができる。
なお、一般式(A)で表される化合物由来の構成単位(x')と、一般式(B)で表される化合物由来の構成単位(y')とのモル比(x'/y')は、19F-NMRにより測定されるものである。
【0038】
共重合体(Z)中の、一般式(A)で表される化合物由来の構成単位(x')と、一般式(B)で表される化合物由来の構成単位(y')の合計含有量は、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上させる観点から、共重合体(Z)全体を100質量%としたときに、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、そして例えば100質量%以下である。
【0039】
共重合体(Z)の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、ポリマーとしての物性をより発現させて、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスを向上させる観点から、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、さらに好ましくは10,000以上、さらに好ましくは50,000以上、さらに好ましくは80,000以上、さらに好ましくは100,000以上であり、また、薄膜形成時や射出成形時の流動性をより維持する観点から、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは300,000以下、さらに好ましくは150,000以下である。
【0040】
また、共重合体(Z)の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、例えば1.0以上であり、均一な厚みの薄膜形成性や良好な射出成形性を得る観点から、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であり、また例えば5.0以下であり、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下である。
【0041】
最外層の光学レンズにおける、ASTM D542に準拠して測定されるアッべ数νdは、得られる光学部品の色収差をより低減する観点から、好ましくは60以上、より好ましくは63以上、さらに好ましくは65以上、さらに好ましくは68以上、さらに好ましくは70以上であり、また、屈折率をより向上させる観点から、好ましくは120以下、より好ましくは110以下、さらに好ましくは100以下、さらに好ましくは85以下である。最外層の光学レンズにおける、ASTM D542に準拠して測定されるアッべ数νdは、得られる光学部品の色収差をより低減する観点から、好ましくは60以上120以下、より好ましくは63以上110以下、さらに好ましくは65以上100以下、さらに好ましくは70以上85以下である。最外層の光学レンズにおけるアッベ数が60以上であれば、例えば、高屈折レンズと組み合わせて使用した場合に、必要とする色収差の補正効果を得ることができる。
【0042】
アッベ数νdは、ASTM D542に準拠して、下記の数式(2)により表される数値で、可視光領域における屈折率変化の程度を示している。
アッベ数(νd)=(nd-1)/(nf-nc)・・・(2)
ここで、数式(2)中、ndはd線屈折率(波長587.6nm)、nfはF線屈折率(波長486.1nm)、ncはC線屈折率(波長656.3nm)を表わす。
従って、高アッベ数の物質は、可視光領域において屈折率変化が小さく直進性の高い性質であることを表している。
【0043】
共重合体(Z)のガラス転移温度は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上、さらに好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、さらに好ましくは140℃以上であり、また成形性をより良好とする観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは165℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。共重合体(Z)のガラス転移温度は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは120℃以上170℃以下、より好ましくは125℃以上170℃以下、さらに好ましくは130℃以上165℃以下、さらに好ましくは135℃以上165℃以下、さらに好ましくは140℃以上160℃以下である。
【0044】
このようなアッべ数、ガラス転移温度、屈折率および傷つきにくさの性能バランスが向上した光学レンズを得るには、例えば、後述するように、モノマー(X)およびモノマー(Y)の重合前に、モノマー(X)溶液およびモノマー(Y)溶液の精製条件を調整し、副生成物であるフッ素非含有環状ジオレフィン化合物の含有量を低減することが重要である。モノマー(X)溶液およびモノマー(Y)溶液に含まれるフッ素非含有環状ジオレフィン化合物の含有量を低減させることで、モノマー(X)およびモノマー(Y)を重合するときや、水添するときに、ゲル化を抑制しながら行うことができるため、得られる共重合体(Z)の重合ムラや組成ムラ等を抑えることができ、その結果、アッべ数、ガラス転移温度、屈折率および傷つきにくさの性能バランスが向上したレンズを得ることができる。
【0045】
本実施形態の光学部品は、2枚以上の光学レンズを有する光学部品である。光学レンズの枚数は、好ましくは3枚以上、より好ましくは4枚以上であり、また、好ましくは9枚以下、より好ましくは8枚以下である。
光学部品における最外層の光学レンズは、本実施形態の共重合体(Z)を含む。本実施形態の共重合体(Z)は、光学レンズとしたときに、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスに優れるため、光学部品に好適に用いることができる。
なお本実施形態において、最外層とは、例えば撮像レンズにおいて、観察する人間側とは反対側、すなわち、対象物側の最外層を表す。
そして最外層の光学レンズは、内側に別のレンズを有する。
【0046】
最外層の光学レンズにおける、ASTM D542に準拠して測定される、d線波長光に対する屈折率ndが、好ましくは1.30以上、より好ましくは1.35以上であり、そして好ましくは1.48以下、より好ましくは1.45以下である。d線波長光に対する屈折率ndが上記範囲内であることにより、この屈折率範囲において、光が優れた直進性を示す。
【0047】
最外層の光学レンズにおける、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される可視光領域の光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上であり、そして好ましくは100%以下である。可視光領域の光線透過率が80%以上においては、反射防止膜としてCRTや液晶ディスプレイ表面に設定しても、映像がぼけて見えることがなく好ましい。
【0048】
最外層の光学レンズの、ISO 15184で規定される鉛筆硬度は、レンズの傷つきやすさをより低減する観点から、好ましくはB以上、より好ましくはHB以上であり、また好ましくは2H以下、より好ましくはH以下である。
【0049】
最外層の光学レンズの厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上、さらに好ましくは1mm以上、さらに好ましくは3mm以上であり、そして好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、さらに好ましくは8mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。最外層の光学レンズの厚みは、好ましくは0.5mm以上15mm以下であり、より好ましくは0.8mm以上10mm以下、さらに好ましくは1mm以上8mm以下、さらに好ましくは3mm以上5mm以下である。
【0050】
本実施形態の最外層の光学レンズ中の共重合体(Z)の含有量は、本実施形態の最外層の光学レンズ全体を100質量%としたとき、高アッベ数、耐熱性、傷つきにくさ、透明性および屈折率等の光学特性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上であり、そして好ましくは100質量%以下である。
【0051】
また、本実施形態の最外層の光学レンズは、本発明の効果を損なわない範囲で、共重合体(Z)以外のその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、共重合体(Z)以外のその他の樹脂や公知の添加剤が挙げられる。
その他の樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、非晶ポリアリレート、脂環式炭化水素樹脂などの非晶性透明樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂等が挙げられる。
添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、二次抗酸化剤、滑剤、離型剤、防曇剤、耐候安定剤、耐光安定剤、金属不活性化剤等が挙げられる。
【0052】
また、本実施形態の光学部品において、最外層の光学レンズの内側に設けられるレンズとしては、好ましくは高屈折率のレンズ、凹レンズ、凸レンズ、非球面レンズおよび片面が凹で片面が凸のレンズからなる群から選択される1種以上を含む。
高屈折率のレンズの、ASTM D542に準拠して測定される、d線波長光に対する屈折率ndは、好ましくは1.50以上、より好ましくは1.52以上、さらに好ましくは1.54以上であり、そして好ましくは1.70以下、より好ましくは1.68以下、さらに好ましくは1.65以下である。
【0053】
本実施形態に係る光学部品は、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスに優れている。そのため、像を高精度かつ鮮明に識別する必要がある光学系において、光学部品として好適に用いることができる。さらに、高アッべ数であるため、光学部品をより小型化することも可能である。光学部品とは光学系機器等に使用される部品であり、具体的には、車載カメラレンズや携帯機器(携帯電話、スマートフォン、タブレット等)用のカメラレンズ等の光学部品により好適に用いることができる。車載カメラレンズや携帯機器用カメラレンズとしては、例えば、ビューカメラレンズ、センシングカメラレンズ、ヘッドアップディスプレイの光収束用レンズ、ヘッドアップディスプレイの光拡散用レンズ等が挙げられる。
【0054】
2.共重合体(Z)の製造方法
共重合体(Z)の製造方法は、具体的には、フッ素含有オレフィン及び環状ポリエンを用いてモノマー(X)およびモノマー(Y)をそれぞれ合成する合成工程と、モノマー(X)およびモノマー(Y)を重合して共重合体(Z)を得る重合工程と、を含む。また、アッべ数、ガラス転移温度、屈折率および傷つきにくさの性能バランスが向上した光学レンズを得る観点からは、モノマー(X)およびモノマー(Y)をそれぞれ精製し、フッ素非含有環状ジオレフィン化合物の含有量を低減する精製工程を、重合工程の前に行うことが好ましい。また、必要に応じて、得られた共重合体(Z)に水素添加を行う水添工程を行ってもよい。
【0055】
モノマー(X)およびモノマー(Y)の合成工程は、適宜公知の方法により行うことができるが、例えば、フッ素含有オレフィン(例えば、ヘキサフルオロプロペン)と環状ポリエン(例えば、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、フラン等)とを、Diels-Alder反応させることにより、モノマー(X)溶液およびモノマー(Y)溶液を得ることができる。
精製工程においては、合成工程にて得られたモノマー(X)溶液またはモノマー(Y)溶液に、酸触媒と、水及びアルキルアルコールからなる群から選択される少なくとも一種の水酸基含有化合物とを、加えて反応させ、得られた反応溶液から、モノマー(X)またはモノマー(Y)を分離させる。より詳細には、酸触媒を用いることで、得られたモノマー(X)溶液またはモノマー(Y)溶液に含まれるフッ素非含有環状ジオレフィン化合物と、水酸基含有化合物とが反応し、フッ素非含有環状ジオレフィン化合物(例えば、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン等)に水酸基含有化合物が付加してフッ素非含有水和化合物あるいはフッ素非含有エーテル化合物が生成する。次いで、蒸留により、モノマー(X)またはモノマー(Y)とフッ素非含有水和化合物およびフッ素非含有エーテル化合物からなる群から選択される少なくとも一種を分離する。フッ素非含有水和化合物あるいはフッ素非含有エーテル化合物と、モノマー(X)またはモノマー(Y)との沸点差が、フッ素非含有環状ジオレフィン化合物とモノマー(X)またはモノマー(Y)との沸点差よりも大きくなるため、蒸留により、純度の向上したモノマー(X)またはモノマー(Y)を得ることができる。
【0056】
酸触媒としてはブレンステッド酸であれば特に限定されず、無機酸、有機酸及び固体酸からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。
有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。
固体酸としては、例えば、スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、反応後に、使用した酸を水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液で中和、抽出する工程を行わずに、ろ過により酸触媒を分離できる観点から、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。さらに反応基質との接触面積を大きくできる観点から、表面積の大きいマクロポーラス構造を有する強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。
【0057】
アルキルアルコールとしては、フッ素非含有環状ジオレフィン化合物と水酸基含有化合物との反応性をより向上させる観点から、好ましくは1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノール及び1-デカノールからなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくは1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール及び1-ヘキサノールからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0058】
重合工程においては、精製後のモノマー(X)およびモノマー(Y)を、適宜公知の重合触媒の存在下で重合して得ることができる。重合触媒としては、例えば開環メタセシス重合触媒を用いることができる。重合温度、重合圧力、重合時間等は適宜調整される。
水添工程においては、重合工程にて得られた共重合体(Z)の主鎖の部分のオレフィン部を触媒により水素添加する。水添触媒としては、公知の均一系金属錯体触媒または不均一系の金属担持触媒を用いることができる。
上記のような精製工程を経ることにより、重合工程や水添工程において、ゲル化を抑制し、重合ムラや組成ムラ等の抑制された均一な硬化物を得ることのできる共重合体(Z)を得られる。
【0059】
また、一般式(A)で表される化合物由来の構成単位と、一般式(B)で表される化合物由来の構成単位とを含む共重合体(Z)の製造方法は、上述した、モノマー(X)由来の構成単位(x)とモノマー(Y)由来の構成単位(y)と、を含む共重合体(Z)の製造方法に準ずる。
【0060】
3.光学レンズの成形方法
本実施形態における共重合体(Z)から光学レンズを成形する方法は特に限定されず、例えば、射出成形、プレス成形、圧縮成形、射出圧縮成形、押出成形等が挙げられる。また、本実施形態の光学レンズを溶融成形する場合の成型温度は、330℃以下であることが好ましい。330℃以下であれば、5分間加熱したときの質量減少量は0.1%未満となり、質量減少に伴うフッ化水素等の腐食性の高いフッ素含有ガスの発生量が少ない。
【0061】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0062】
以下、本実施形態を、実施例等を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0063】
<共重合体(Z)の合成>
(実施例1)
窒素雰囲気下、磁気攪拌装置を備えた25Lのオートクレーブ内に、ジシクロペンタジエン(東京化成工業社製、以下、「DCp」ともいう)5.8kgおよびヘキサフルオロプロペン(高千穂化学工業社製)16.6kgを入れ、160℃で24時間加熱攪拌し、次いで、180℃で15時間加熱攪拌した。冷却後、未反応のヘキサフルオロプロペン3.9kgを回収し、反応液17.9kgを取り出した。
次いで、得られた反応液を蒸留することにより、5,6-ジフルオロ-5-フルオロ-6-(トリフルオロメチル)ビシクロ(2.2.1)ヘプト-2-エン(以下、「NBF」ともいう)とDCpを含む組成物を15.5kg取得し、蒸留装置内の残留液より8,8,9-トリフルオロ-9-トリフルオロメチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(以下。「TDF」ともいう)とNBFとDCpとトリシクロペンタジエン(以下、「TCPD」ともいう)とを含む組成物(X1)を2.2kg取得した。
【0064】
次いで、攪拌機、及びコンデンサーを付した1000mLのガラス製反応器に、組成物(X1)を250g、水酸基含有化合物である1-プロパノールを170g、固体酸触媒である陽イオン交換樹脂(AMBERLYST 15JS-HG・DRY、オルガノ社製)を25g入れ、窒素雰囲気下、110℃で12時間加熱攪拌し、組成物(X1)中のDCp及びTCPDのエーテル化反応を行った。次いで、得られた反応液を室温まで冷却後、固体酸触媒を減圧濾過で除去することにより、蒸留精製前のNBFおよびTDFを含む組成物を得た。蒸留精製前のNBFおよびTDFを含む組成物を入れた丸底フラスコにスニーダー分留管、リービッヒ冷却管を取り付け、減圧蒸留により、NBFとTDFを分留取得した。
【0065】
窒素雰囲気下、磁気攪拌装置を備えた5Lのオートクレーブ内で、上記で得られたNBF495g(2.3mol)、上記で得られたTDF970g(3.4mol)、および1-ヘキセン32.2g(0.38mol)をテトラヒドロフラン(以下、THFと記す)1.5kgに溶解し攪拌を行った。これに開環メタセシス重合触媒としてMo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OBuを630mg(1.15mmol)加え、70℃で48時間反応させた。その後、n-ブチルアルデヒド248mg(3.4mmol)を加えて冷却して、開環メタセシス重合ポリマー溶液3.0kgを得た。H-NMRによって得られたポリマーの重合率は100%であった。得られた重合ポリマー溶液に3.0kgのTHFを追加して希釈し、この重合ポリマー溶液にパラジウムアルミナを加えて重合ポリマーのオレフィン部を160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィンポリマーのTHF溶液を得た。H-NMRによって得られたポリマーの水素添加率は100%であった。得られたポリマー溶液からパラジウムアルミナを0.1μmフィルターろ過により除去した。得られたポリマー溶液から水/メタノール=50/50(wt/wt)を用いてフッ素含有環状オレフィンポリマーを析出させ、ろ過し、80℃で減圧乾燥することにより白色粉末固体(共重合体Z1)を得た。
【0066】
(実施例2)
NBFを779g(3.6mol)、TDFを678g(2.4mol)、および1-ヘキセンを33.7g(0.40mol)、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OBuを660mg(1.20mmol)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で、共重合体Z2の白色粉末固体を得た。H-NMRによって得られたポリマーの重合率は100%であった。H-NMRによって得られたポリマーの水素添加率は100%であった。
【0067】
<ホモポリマー(W)の合成>
(比較例1)
NBFを1450g(6.7mol)、1-ヘキセンを4.1g(0.048mol)、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OBuを740mg(1.35mmol)に変更し、TDFは用いず、メタノールにより析出したこと以外は実施例1と同様の方法で、ホモポリマーW1の白色粉末固体を得た。H-NMRによって得られたポリマーの重合率は100%であった。H-NMRによって得られたポリマーの水素添加率は100%であった。
【0068】
(比較例2)
TDFを1460g(5.2mol)、1-ヘキセンを101.8g(1.21mol)、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OBuを570mg(1.04mmol)に変更し、NBFは用いず、メタノールにより析出したこと以外は実施例1と同様の方法で、ホモポリマーW2の白色粉末固体を得た。H-NMRによって得られたポリマーの重合率は100%であった。H-NMRによって得られたポリマーの水素添加率は100%であった。
【0069】
各例において得られた共重合体(Z)およびホモポリマー(W)の物性値は、以下の方法により測定を行った。
【0070】
[ポリマーの重合率]
各例においてモノマーの重合後、水素添加前のポリマーを、それぞれ重水素化テトラヒドロフランに溶解し、400MHz-H-NMRスペクトルを用いてδ=6.0~6.5ppmのモノマーの二重結合炭素に結合する水素とδ=5.0~6.0ppmのポリマーの主鎖の二重結合炭素に結合する水素に由来するシグナルの積分値よりポリマーの重合率を算出した。
【0071】
[水素添加率]
各例において得られた共重合体(Z)およびホモポリマー(W)をそれぞれ重水素化テトラヒドロフランに溶解し、400MHz-H-NMRスペクトルを用いてδ=5.0~6.0ppmの重合ポリマーの主鎖の二重結合炭素に結合する水素とδ=0.7~3.0ppmの水素化ポリマーに由来する水素のシグナルの積分値より水素添加率を算出した。
【0072】
[構成単位(x)と構成単位(y)のモル比およびフッ素含有量(質量%)]
各例において得られた共重合体(Z)およびホモポリマー(W)中のフッ素原子の含有量、および共重合体(Z)中の構成単位(x)と構成単位(y)のモル比を、以下の通り19F-NMRにより測定した。
日本電子製ECA500型核磁気共鳴装置を用いて、470MHz-19F-NMRスペクトルを測定し、δ=0.00ppmのCFClを基準シグナルとして、共重合体ZおよびホモポリマーWのそれぞれの、δ=-150~-200ppmの-CF、δ=-100~-150ppmの-CF、または、δ=-60~-100ppmの-CFに由来するフッ素の積分値を用いて、構成単位(x)と構成単位(y)のモル比(x/y)を算出した。また、式(1)からフッ素含有量(質量%)を算出した。
・測定溶媒:重水素化テトラヒドロフラン
・試料濃度:約5%
・測定温度:室温
・積算回数:256回
・基準ピーク:装置による自動設定でCFClを0.00ppmに設定
式(1):フッ素原子の含有率(質量%)={(F(A)n×19×[A])/(F(A)w×[A]+F(B)w×[B])+(F(B)n×19×[B])/(F(A)w×[A]+F(B)w×[B])}×100・・・(1)
ここで、式(1)中、F(A)nは一般式(A)で表される化合物由来の構成単位中のフッ素原子の数を表し、F(B)nは一般式(B)で表される化合物由来の構成単位中のフッ素原子の数を表し、F(A)wは一般式(A)で表される化合物由来の構成単位の式量を表し、F(B)wは一般式(B)で表される化合物由来の構成単位の式量を表す。また、式(1)中、[A]および[B]は、一般式(A)で表される化合物由来の構成単位の-CF、-CF、および-CFに由来するフッ素の積分値と、一般式(B)で表される化合物由来の構成単位の-CF、-CF、および-CFに由来するフッ素の積分値から算出した、一般式(A)および(B)で表される化合物由来の構成単位のそれぞれのモル分率を表し、19はフッ素の分子量を表す。
本実施例・比較例では、構成単位(x)は一般式(A)で表される化合物(すなわちモノマー(X))由来の構成単位であり、構成単位(y)は一般式(B)で表される化合物(すなわちモノマー(Y))由来の構成単位である。
【0073】
[重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)]
各例において得られた共重合体(Z)およびホモポリマー(W)について、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、テトラヒドロフラン(THF)に溶解したポリマーの重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を以下の条件で、ポリスチレンスタンダード(株式会社レゾナック・ホールディングス製、製品名:Shodex STANDARD SM-105)によって分子量を較正して測定した。
検出器:日本分光製830-RIおよび875-UV
カラム:Shodex k-806M,804,803,802.5
流量:1.0ml/分
【0074】
[ガラス転移温度Tg]
各例において得られた共重合体(Z)およびホモポリマー(W)について、TAインスツルメント社製RSA-IIIを用いて粘弾性測定を実施した。引張モードにて窒素下、1Hz、昇温速度:3℃/minの条件で20℃から200℃程度にまで昇温した際の貯蔵弾性率E'と損失弾性率E''である損失正接(tanδ=E''/E')のピークトップ温度をガラス転移温度(Tg)として評価した。
【0075】
<共重合体(Z)およびホモポリマー(W)の熱プレス片作製方法>
各例で得られた共重合体(Z)およびホモポリマー(W)を、予備溶融として、真空オーブンを用いて真空下で(Tg+110℃)、30分間の条件で溶融させた。予備溶融完了後、シート状になったポリマー片を取り出して金型(1mm厚または3mm厚)に充填し、大気下で、(Tg+120℃)、10MPa、1分間の条件で加熱してプレス片を作製した。
【0076】
得られた各例の熱プレス片を用いて、以下の物性を測定した。屈折率ndおよびアッベ数νdの測定には3mm厚のプレス片、光線透過率と鉛筆硬度の測定には1mm厚のプレス片を使用した。
【0077】
[屈折率ndおよびアッベ数νd]
ASTM D542に準拠して、各例で得られた熱プレス片の屈折率およびアッベ数νdを求めた。株式会社島津製作所製KPR-3000を用いて屈折率を測定した。厚さ3mmの熱プレス片を使用し、Vブロック法にて25℃におけるd線、C線、F線の屈折率を測定し、アッベ数νdを下記の式(2)により算出した。
アッベ数(νd)=(nd-1)/(nf-nc)・・・(2)
ここで式(2)中の、ndはd線屈折率(波長587.6nm)、nfはF線屈折率(波長486.1nm)、ncはC線屈折率(波長656.3nm)を表わす。
【0078】
[光線透過率]
各例で得られた熱プレス片を用いて、分光色彩・ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、COH7700)を用いて、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される可視光領域の光線透過率を測定した。
【0079】
[鉛筆硬度]
各例で得られた熱プレス片を用いて、ISO 15184で規定される鉛筆硬度を測定した。
【0080】
【表1】