(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137028
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】セキュリティラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 3/03 20060101AFI20240927BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G09F3/03 E
G09F3/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048378
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000142034
【氏名又は名称】株式会社共和
(74)【代理人】
【識別番号】100147647
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優
(72)【発明者】
【氏名】大舘 駿
(57)【要約】
【課題】 セロハンからなる基材を使用した場合でも、被着体からラベル部材が引き剥がされる際に剥離層が基材から確実に剥離し、不正な引き剥がしを確実に検知することが可能なセキュリティラベルの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のセキュリティラベルの製造方法は、セロハンからなるシート状の基材5の一方の面に、被着体Hからの引き剥がしを検知するための引き剥がし検知層6が印刷されることにより、ラベル部材2が作製されるラベル部材作製工程S1と、セパレータ4の一方の面に粘着剤が塗布されることにより、粘着剤層3が形成される粘着剤層形成工程S2と、粘着剤層3が所定の乾燥温度で乾燥される粘着剤層乾燥工程S3と、引き剥がし検知層6と粘着剤層3とが貼り合わされることにより、ラベル部材2とセパレータ4とが一体化される貼り合わせ工程S4と、を含んでいる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル部材とセパレータとが粘着剤層を介して一体化されてなるセキュリティラベルの製造方法であって、
セロハンからなるシート状の基材の一方の面に、被着体からの引き剥がしを検知するための引き剥がし検知層が印刷されることにより、前記ラベル部材が作製される第一工程と、
前記セパレータの一方の面に粘着剤が塗布されることにより、前記粘着剤層が形成される第二工程と、
前記粘着剤層が所定の乾燥温度で乾燥される第三工程と、
前記引き剥がし検知層と前記粘着剤層とが貼り合わされることにより、前記ラベル部材と前記セパレータとが一体化される第四工程と、
を含むことを特徴とするセキュリティラベルの製造方法。
【請求項2】
前記第一工程が、
前記引き剥がし検知層を構成する剥離層が、前記基材の一方の面の一部に印刷される第五工程と、
前記引き剥がし検知層を構成するインク層が、前記基材の一方の面の残部に印刷される第六工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のセキュリティラベルの製造方法。
【請求項3】
前記インク層が、前記剥離層を覆って、前記基材の一方の面の残部に印刷されることを特徴とする請求項2に記載のセキュリティラベルの製造方法。
【請求項4】
前記第三工程における乾燥温度が、50℃以上であって130℃以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のセキュリティラベルの製造方法。
【請求項5】
前記第三工程における乾燥温度が、130℃を超えることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のセキュリティラベルの製造方法。
【請求項6】
前記粘着剤層は、その坪量が18.3g/m2以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のセキュリティラベルの製造方法。
【請求項7】
前記粘着剤層は、その坪量が8.7g/m2以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のセキュリティラベルの製造方法。
【請求項8】
前記剥離層を組成するインクは、ザーンカップNo.3で測定される粘度が、15秒以上であって19秒以下であり、前記インク層を組成するインクは、ザーンカップNo.4で測定される粘度が、34秒以上であって36秒以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載のセキュリティラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部の封止等のために被着体に貼付されて不正な引き剥がしを検知可能なセキュリティラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
箱や容器等の被着体の開口部を封止する手段として、或いは被着体の属性情報を表示する手段として、粘着可能なラベルを被着体に貼付する方法が広く用いられている。しかし、通常のラベルでは、内容物の窃取や属性情報の偽装といった不正な目的を持つ者によって被着体から一旦引き剥がされた後に貼り直された時に、その外観から不正が行われたことを検知することが難しい。そこで、引き剥がされた痕跡を被着体に残すことによって不正を検知することが可能な、いわゆるセキュリティラベルが従来提唱されている。そして、このセキュリティラベルを構成するシート状の基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂で形成するのが一般的であるが、天然由来のセロハンで形成することも知られている(例えば、特許文献1の明細書段落番号[0013]を参照)。
【0003】
このセキュリティラベルは、ラベル部材とセパレータ(剥離紙)とが貼り合わされることにより製造される。詳細には、まず基材の裏面に、引き剥がしを検知するための引き剥がし検知層が印刷される。次に、この引き剥がし検知層を覆って粘着剤が塗布されて乾燥されることにより、粘着剤層が形成される。これにより、ラベル部材が作製される。次に、このラベル部材の粘着剤層にセパレータが貼り合わされることにより、ラベル部材とセパレータとが一体化される。これにより、セキュリティラベルが完成する。
【0004】
このセキュリティラベルの使用時には、ラベル部材が、粘着剤層と共にセパレータから剥離されて、被着体に貼り付けられる。そうすると、不正な目的を持つ者により被着体からラベル部材が引き剥がされると、引き剥がし検知層を構成する剥離層は、基材から剥離して被着体の表面に残存する。ユーザは、この剥離層を視認することにより、ラベル部材が不正に引き剥がされたことを検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のセキュリティラベルの製造方法では、セロハンからなる基材を使用した場合、製造されたセキュリティラベルは、引き剥がし検知層を構成する剥離層の基材からの剥離が不十分になる場合がある。この場合、被着体の表面に残存すべき剥離層が基材に伴って被着体から離隔することにより、不正な引き剥がしを確実に検知することができないという問題が生じる。
【0007】
そこで本発明は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、セロハンからなる基材を使用した場合でも、被着体からラベル部材が引き剥がされる際に剥離層が基材から確実に剥離し、不正な引き剥がしを確実に検知することが可能なセキュリティラベルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様に係るセキュリティラベルの製造方法は、ラベル部材とセパレータとが粘着剤層を介して一体化されてなるセキュリティラベルの製造方法であって、セロハンからなるシート状の基材の一方の面に、被着体からの引き剥がしを検知するための引き剥がし検知層が印刷されることにより、前記ラベル部材が作製される第一工程と、前記セパレータの一方の面に粘着剤が塗布されることにより、前記粘着剤層が形成される第二工程と、前記粘着剤層が所定の乾燥温度で乾燥される第三工程と、前記引き剥がし検知層と前記粘着剤層とが貼り合わされることにより、前記ラベル部材と前記セパレータとが一体化される第四工程と、を含んでいる。
【0009】
なお、本発明の一の態様に係るセキュリティラベルの製造方法においては、前記第一工程が、前記引き剥がし検知層を構成する剥離層が、前記基材の一方の面の一部に印刷される第五工程と、前記引き剥がし検知層を構成するインク層が、前記基材の一方の面の残部に印刷される第六工程と、を含んでもよい。
【0010】
また、本発明の一の態様に係るセキュリティラベルの製造方法においては、前記インク層が、前記剥離層を覆って、前記基材の一方の面の残部に印刷されてもよい。
【0011】
また、本発明の一の態様に係るセキュリティラベルの製造方法においては、前記第三工程における乾燥温度が、50℃以上であって130℃以下であってもよい。
【0012】
また、本発明の一の態様に係るセキュリティラベルの製造方法においては、前記第三工程における乾燥温度が、130℃を超えてもよい。
【0013】
また、本発明の一の態様に係るセキュリティラベルの製造方法においては、前記粘着剤層は、その坪量(1平方メートル当たりの重量)が18.3g/m2以下であってもよい。
【0014】
また、本発明の一の態様に係るセキュリティラベルの製造方法においては、前記粘着剤層は、その坪量が8.7g/m2以下であってもよい。
【0015】
また、本発明の一の態様に係るセキュリティラベルの製造方法においては、前記剥離層を組成するインクは、ザーンカップNo.3で測定される粘度が、15秒以上であって19秒以下であり、前記インク層を組成するインクは、ザーンカップNo.4で測定される粘度が、34秒以上であって36秒以下であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一の態様に係るセキュリティラベルの製造方法によれば、セロハンからなる基材を使用した場合でも、被着体からラベル部材が引き剥がされる際に剥離層が基材から確実に剥離するので、不正な引き剥がしを確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るセキュリティラベルの製造方法により製造されるセキュリティラベル1の構成を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るセキュリティラベルの製造方法に使用される印刷ライン10を模式的に示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るセキュリティラベルの製造方法に使用される貼り合わせライン20を模式的に示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るセキュリティラベルの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】ラベル部材作製工程S1の詳細な流れを示すフローチャートである。
【
図6】粘着剤層3の坪量と引き剥がし検知層6の文字抜け具合いの関係について確認した実験結果を示す表である。
【
図7】乾燥機28の乾燥温度と引き剥がし検知層6の文字抜け具合いの関係について確認した実験結果を示す表である。
【
図8】セキュリティラベル1の使用手順を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係るセキュリティラベルの製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(セキュリティラベルの構成)
まず、本発明の実施形態に係るセキュリティラベルの製造方法により製造されるセキュリティラベルの構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るセキュリティラベル1の構成を示す概略断面図である。セキュリティラベル1は、
図1に示すように、ラベル部材2と、粘着剤層3と、セパレータ4と、を備えている。なお、説明の便宜上、
図1ではセキュリティラベル1の各部を実物とは異なる縮尺で図示している。
【0020】
ラベル部材2は、
図1に示すように、基材5と、引き剥がし検知層6と、情報表示層7と、を有している。このうち、基材5は、セロハンからなるシート状の部材である。本発明に係るセロハンとは、セロファンとも呼ばれ、パルプを主原料とする透明なフィルムとして公知のものである。すなわちこのセロハンは、木材を粉砕してなるパルプを化学的に処理することでビスコースという溶液を作製し、このビスコースを薄く成型して凝固させることにより製造される。
【0021】
引き剥がし検知層6は、ラベル部材2が被着体H(
図8を参照)から引き剥がされたことを検知する役割を果たす。この引き剥がし検知層6は、
図1に示すように、剥離層8と、インク層9とを有している。このうち、剥離層8は、ラベル部材2の引き剥がし時に、基材5から剥離して被着体Hの表面に残存する。この剥離層8は、基材5の裏面に、いわゆる乗せ文字を形成するようにして印刷されている。すなわち、剥離層8は、基材5の裏面の一部に積層するように印刷され、平面視で文字(例えば「開封済」という文字)を形成している。なお、剥離層8は、平面視で図形や記号等を形成してもよい。
【0022】
一方、インク層9は、ラベル部材2の引き剥がし時に、その大部分が基材5に伴って被着体H(
図8を参照)から離隔する。このインク層9は、剥離層8を覆って、基材5の裏面の残部に積層するように印刷されている。ここで、インク層9と剥離層8との間の密着力(両者を引き剥がすために必要なエネルギー)は、剥離層8と基材5との間の密着力より大きく設定されている。また、このインク層9は、図に詳細は示さないが、剥離層8と同じ色彩を有している。なお、インク層9は、剥離層8を覆うことなく、剥離層8の隙間を埋めるようにして、基材5の裏面の残部に印刷されてもよい。また、インク層9は、剥離層8と異なる色彩を有してもよい。
【0023】
情報表示層7は、被着体Hの属性や内容物に関する情報を表示する役割を果たす。この情報表示層7は、基材5の表面に、いわゆる乗せ文字を形成するようにして印刷されている。すなわち、情報表示層7は、基材5の表面に部分的に積層するように印刷され、この印刷部自体が平面視で文字等(例えば、企業名や企業のロゴマーク)を形成している。また、この情報表示層7は、図に詳細は示さないが、基材5とは異なる色彩を有している。なお、情報表示層7は基材5の裏面に印刷されてもよく、或いは情報表示層7を設けなくてもよい。
【0024】
粘着剤層3は、セキュリティラベル1の未使用時にはセパレータ4をラベル部材2に付着させる役割を果たすと共に、使用時にはラベル部材2を被着体Hに付着させる役割を果たす。この粘着剤層3は、いわゆるアクリル系粘着剤で組成され、
図1に示すように、ラベル部材2とセパレータ4との間に略一定の厚みで設けられている。ここで、粘着剤層3とインク層9との間の密着力は、剥離層8と基材5との間の密着力より大きく設定されている。また、粘着剤層3は、セパレータ4との間の密着力が、引き剥がし検知層6との間の密着力より小さい特性を有している。そして、粘着剤層3とセパレータ4との間の密着力は、基材5と引き剥がし検知層6の間の密着力より小さく設定されている。また、この粘着剤層3は、被着体Hとの間の密着力が、引き剥がし検知層6との間の密着力より小さい特性を有している。そして、粘着剤層3と被着体Hとの間の密着力は、基材5と剥離層8との間の密着力より大きく、且つ、基材5とインク層9との間の密着力より小さく設定されている。なお、粘着剤層3を、アクリル系粘着剤に代えて、従来公知の粘着剤であるウレタン樹脂系や、シリコン系や、天然ゴム系や、合成ゴム系等の粘着剤で組成することも可能である。
【0025】
セパレータ4は、粘着剤層3が外部に露呈することでその粘着力が低下するのを防止する役割を果たす。このセパレータ4は、図に詳細は示さないが、いわゆるラミネート紙であって、紙の片側面をシリコン系やアクリル系,PVA系等の離型剤を用いて剥離処理することにより形成されている。なお、紙に代えて、織物、プラスチックフィルム等を剥離処理することにより、セパレータ4を形成することも可能である。このように形成されるセパレータ4は、その剥離処理された面を粘着剤層3に貼り合わせて設けられている。
【0026】
(印刷ライン)
次に、本発明の実施形態に係るセキュリティラベル1の製造方法に使用される印刷ラインについて説明する。
図2は、印刷ライン10を模式的に示す模式図である。印刷ライン10は、第一搬送路11と、第一巻き出し装置12と、第一巻き取り装置13と、引き剥がし検知層印刷機14と、情報表示層印刷機15と、を有している。第一搬送路11は、基材5が搬送される経路である(
図2に搬送方向を矢印で示す)。第一巻き出し装置12は、基材5を巻回された状態で保持すると共に、この基材5を第一搬送路11へ送り出す役割を果たす。この第一巻き出し装置12は、周囲に基材5を巻回可能に構成され、第一搬送路11の最上流部に設けられている。一方、第一巻き取り装置13は、印刷工程が完了した基材5を巻き取ることにより、第一搬送路11から基材5を回収する役割を果たす。この第一巻き取り装置13は、第一巻き出し装置12と同様の構成を有し、第一搬送路11の最下流部に設けられている。
【0027】
引き剥がし検知層印刷機14は、基材5の裏面に、引き剥がし検知層6の剥離層8とインク層9を印刷する役割を果たす。この引き剥がし検知層印刷機14は、
図2に示すように、第一搬送路11における第一巻き出し装置12より下流側の位置に設けられている。なお、図に詳細は示さないが、剥離層8を印刷する印刷機とインク層9を印刷する印刷機を別々に設けてもよい。一方、情報表示層印刷機15は、基材5の表面に、情報表示層7を印刷する役割を果たす。この情報表示層印刷機15は、第一搬送路11における引き剥がし検知層印刷機14より下流側の位置に設けられている。なお、情報表示層印刷機15は、第一搬送路11における引き剥がし検知層印刷機14より上流側の位置に設けられてもよい。また、情報表示層印刷機15を設けることなく、引き剥がし検知層印刷機14に情報表示層7を印刷する機能を持たせてもよい。
【0028】
(貼り合わせライン)
次に、本発明の実施形態に係るセキュリティラベル1の製造方法に使用される貼り合わせラインについて説明する。
図3は、貼り合わせライン20を模式的に示す模式図である。貼り合わせライン20は、第二搬送路21と、第三搬送路22と、第四搬送路23と、第二巻き出し装置24と、第三巻き出し装置25と、第二巻き取り装置26と、コーティング装置27と、乾燥機28と、貼り合わせ装置29と、を有している。
【0029】
第二搬送路21は、セパレータ4が搬送される経路である。第三搬送路22は、ラベル部材2が搬送される経路である。第四搬送路23は、完成品であるセキュリティラベル1が搬送される経路である。ここで、各経路の搬送方向は、それぞれ
図3に矢印で示されている。そして、第二搬送路21の最下流部、第三搬送路22の最下流部、及び第四搬送路23の最上流部が、
図3に示す合流部30において互いに合流している。なお、各経路上には、被搬送物を下流側へ送る搬送ローラ等が適宜設けられている。
【0030】
第二巻き出し装置24は、セパレータ4を巻回された状態で保持すると共に、このセパレータ4を第二搬送路21へ送り出す役割を果たす。この第二巻き出し装置24は、
図3に示すように、周囲にセパレータ4を巻回可能に構成され、第二搬送路21の最上流部に設けられている。また、第三巻き出し装置25は、前述の印刷ライン10を経たラベル部材2を巻回された状態で保持すると共に、このラベル部材2を第三搬送路22へ送り出す役割を果たす。この第三巻き出し装置25は、周囲にラベル部材2を巻回可能に構成され、第三搬送路22の最上流部に設けられている。一方、第二巻き取り装置26は、貼り合わせ工程が完了したセキュリティラベル1を巻き取ることにより、第四搬送路23からセキュリティラベル1を回収する役割を果たす。この第二巻き取り装置26は、周囲にセキュリティラベル1を巻回可能に構成され、第四搬送路23の最下流部に設けられている。
【0031】
コーティング装置27は、セパレータ4の表面にアクリル系粘着剤を塗布することにより、粘着剤層3を形成する役割を果たす。このコーティング装置27は、第二搬送路21における第二巻き出し装置24より下流側の位置に設けられている。乾燥機28は、セパレータ4を加熱することにより、その表面に形成された粘着剤層3を一定程度だけ乾燥させる役割を果たす。この乾燥機28は、第二搬送路21におけるコーティング装置27より下流側の位置に設けられている。貼り合わせ装置29は、セパレータ4とラベル部材2とを貼り合わせることで一体化する役割を果たす。この貼り合わせ装置29は、一対の貼り合わせ用ローラ31を備えて構成され、合流部30を挟んで一対の貼り合わせ用ローラ31が相対向するように設けられている。
【0032】
(セキュリティラベルの製造方法及びその作用効果)
次に、本発明の実施形態に係るセキュリティラベルの製造方法について説明する。
図4は、セキュリティラベルの製造方法の流れを示すフローチャートである。セキュリティラベルの製造方法は、ラベル部材作製工程S1(本発明に係る「第一工程」に相当)と、粘着剤層形成工程S2(本発明に係る「第二工程」に相当)と、粘着剤層乾燥工程S3(本発明に係る「第三工程」に相当)と、貼り合わせ工程S4(本発明に係る「第四工程」に相当)と、を含んでいる。なお、セキュリティラベルの製造方法は、これら工程以外の別の工程を含んでいてもよい。
【0033】
ラベル部材作製工程S1は、前述の印刷ライン10により、基材5からラベル部材2を作製する工程である。
図5は、ラベル部材作製工程S1(
図4を参照)の詳細な流れを示すフローチャートである。ラベル部材作製工程S1は、剥離層印刷工程S5(本発明に係る「第五工程」に相当)と、インク層印刷工程S6(本発明に係る「第六工程」に相当)と、情報表示層印刷工程S7と、を含んでいる。なお、ラベル部材作製工程S1は、これら以外の別の工程を含んでいてもよい。
【0034】
剥離層印刷工程S5は、基材5の裏面に、前述の剥離層8(
図1を参照)を印刷する工程である。すなわち、この剥離層印刷工程S5では、まず、
図2に示す第一巻き出し装置12により、その周囲に保持された基材5が、第一搬送路11へ送り出される。ここで、この基材5は、厚みが35~38μm程度のセロハンである。そして、第一搬送路11に設けられた引き剥がし検知層印刷機14により、所定のインクで組成される剥離層8が、所定の乗せ文字を形成するようにして、基材5の裏面に積層するように印刷される。ここで、剥離層8を組成するインクとしては、ザーンカップNo.3を用いて室温で測定される粘度が、15秒以上であって19秒以下であるインクが用いられる。なお、基材5の厚みや剥離層8を組成するインクは、本実施形態に限定されず任意に変更が可能である。
【0035】
インク層印刷工程S6は、剥離層8が印刷された基材5の裏面に、前述のインク層9(
図1を参照)を重ねて印刷する工程である。すなわち、このインク層印刷工程S6では、
図2に示す引き剥がし検知層印刷機14により、所定のインクで組成されるインク層9が、剥離層8の乗せ文字を覆いつつ、剥離層8の裏面に積層するように印刷される。ここで、インク層9を組成するインクとしては、ザーンカップNo.4を用いて室温で測定される粘度が、34秒以上であって36秒以下であるインクを用いられる。なお、インク層9は、剥離層8を覆うことなく、乗せ文字の隙間を埋めるようにして、基材5の裏面に印刷されてもよい。なお、インク層9を組成するインクは、本実施形態に限定されず任意に変更が可能である。
【0036】
情報表示層印刷工程S7は、基材5の表面に、前述の情報表示層7(
図1を参照)を印刷する工程である。すなわち、この情報表示層印刷工程S7では、
図2に示す情報表示層印刷機15により、所定のインクで組成される情報表示層7が、引き剥がし検知層印刷機14を通過した基材5の表面に、所定の乗せ文字を形成するようにして印刷される。そして、情報表示層印刷機15を通過した基材5は、第一巻き取り装置13により、巻き取られることによって第一搬送路11から回収される。
【0037】
粘着剤層形成工程S2は、セパレータ4の表面に、前述の粘着剤層3(
図1を参照)を形成する工程である。すなわち、この粘着剤層形成工程S2では、まず、
図3に示す第二巻き出し装置24により、その周囲に保持されたセパレータ4が、第二搬送路21へ送り出される。そして、第二搬送路21に設けられたコーティング装置27により、アクリル系粘着剤で組成される粘着剤層3が、セパレータ4の表面に形成される。この粘着剤層3は、18.3g/m
2以下の坪量、より好ましくは8.7g/m
2以下の坪量を有している。なお、粘着剤層3の坪量は、本実施形態に限定されず任意に変更が可能である。
【0038】
粘着剤層乾燥工程S3は、前述の粘着剤層3を一定程度乾燥させる工程である。すなわち、この粘着剤層乾燥工程S3では、
図3に示すコーティング装置27を通過したセパレータ4が、第二搬送路21を下流側へ搬送され、乾燥機28によりその表面を加熱される。これにより、セパレータ4の表面に形成されて粘度の低い状態にある粘着剤層3は、加熱されることで一定程度乾燥し、その粘度が一定程度上昇する。ここで、乾燥機28の乾燥温度は、50℃以上の温度に、より好ましくは130℃を超える温度に設定される。
【0039】
貼り合わせ工程S4は、ラベル部材2とセパレータ4とを貼り合わせることで一体化する工程である。すなわち、この貼り合わせ工程S4では、まず、前述のラベル部材作製工程S1で作製され、
図3に示す第三巻き出し装置25の周囲に保持されたラベル部材2が、第三巻き出し装置25により第三搬送路22へ送り出される。一方、前述の乾燥機28を通過したセパレータ4は、第二搬送路21を更に下流側へ搬送される。そして、ラベル部材2とセパレータ4がそれぞれ合流部30に到達すると、貼り合わせ装置29を構成する一対の貼り合わせ用ローラ31の間を通過する際に、ラベル部材2を構成する引き剥がし検知層6(
図1を参照)と、セパレータ4の表面に形成された粘着剤層3とが、互いに貼り合わされる。これにより、ラベル部材2とセパレータ4とが一体化されることにより、セキュリティラベル1が作製される。作製されたセキュリティラベル1は、貼り合わせ装置29により、第四搬送路23へ送り出される。このセキュリティラベル1は、第二巻き取り装置26に巻き取られることにより、第四搬送路23から回収される。以上により、セキュリティラベル1の製造が終了する。
【0040】
以上説明したように、本発明の実施形態に係るセキュリティラベルの製造方法によれば、基材5としてセロハンを用い、このセロハンは再生可能資源であるパルプを主原料としているため、脱プラスチックの観点からSDGs(Sustainnable Developement Goals)に貢献することができる。
【0041】
また、本実施形態では、粘着剤層3を介してラベル部材2とセパレータ4とを一体化する方法として、セパレータ4の表面に粘着剤層3を形成し、この粘着剤層3とラベル部材2の引き剥がし検知層6とを互いに貼り合わせる、いわゆる転写方式を採用している。この方法によれば、粘着剤層乾燥工程S3において乾燥機28を通過するのはセパレータ4であって、従来例に係るセキュリティラベルの製造方法のようにラベル部材2が乾燥機28を通過することがない。従って、ラベル部材2を構成する基材5や引き剥がし検知層6は、乾燥機28による加熱を受けて変性や変形が生じることが未然に防止される。その結果、基材5としてセロハンを使用した場合でも、被着体Hからラベル部材2が引き剥がされる際に、引き剥がし検知層6の剥離層8が、基材5から確実に剥離して被着体Hの表面に残存する。従って、ユーザは、この剥離層8を視認することにより、ラベル部材2の不正な引き剥がしを確実に検知することができる。
【0042】
また、本実施形態では、粘着剤層3を、18.3g/m
2以下の坪量に、より好ましくは8.7g/m
2以下の坪量に設定している。これは、引き剥がし検知層6の文字抜け具合い、すなわち剥離層8が基材5から剥離する具合いは、粘着剤層3の坪量が少ないほど良好になる特性があるためである。
図6は、粘着剤層3の坪量と引き剥がし検知層6の文字抜け具合いの関係について確認した実験結果を示す表である。実験に際しては、セロハンからなる基材5を用い、乾燥機28の乾燥温度を130℃に設定した上で、粘着剤層3の坪量を種々変化させることにより、セキュリティラベル1の実験用サンプルを作製した。そして、これら実験用サンプルを、被着体Hとしてのステンレス板にそれぞれ貼り付け、10分経過後に、ステンレス板からそれぞれ引き剥がした。この際、引き剥がし角度(引き剥がし方向とステンレス板の延びる方向とが成す角度)は180°とし、引き剥がし速度は300mm/分とした。
図6の表に示した各画像は、ステンレス板から引き剥がした基材5を裏面側から撮影した画像である。これによれば、引き剥がし検知層6の文字抜け具合いは、粘着剤層3の坪量が18.3g/m
2以下である場合に、セキュリティラベル1として使用可能な程度に良好となり、特に8.7g/m
2以下である場合に一層良好となることが確認された。以上より、粘着剤層3の坪量を18.3g/m
2以下に設定すれば、セキュリティラベル1の不正な引き剥がしを相当な確実性で検知できるという利点がある。また、粘着剤層3の坪量を8.7g/m
2以下に設定すれば、セキュリティラベル1の不正な引き剥がしを確実に検知できると共に、アクリル系粘着剤の使用量が減ることで製造コストの削減を図ることができるという利点がある。
【0043】
また、本実施形態では、粘着剤層乾燥工程S3における乾燥機28の乾燥温度は、50℃以上の温度に、より好ましくは130℃を超える温度に設定されている。これは、引き剥がし検知層6の文字抜け具合いは、乾燥機28の乾燥温度が高いほど良好になる特性があるためである。
図7は、乾燥機28の乾燥温度と引き剥がし検知層6の文字抜け具合いの関係について確認した実験結果を示す表である。実験に際しては、セロハンからなる基材5を用い、粘着剤層3の坪量を18.3g/m
2に設定した上で、乾燥機28の乾燥温度を種々変化させることにより、セキュリティラベル1の実験用サンプルを作製した。そして、これら実験用サンプルを、被着体Hとしてのステンレス板にそれぞれ貼り付け、10分経過後に、ステンレス板からそれぞれ引き剥がした。この際、引き剥がし角度は180°とし、引き剥がし速度は300mm/分とした。
図7の表に示した各画像は、ステンレス板から引き剥がした基材5を裏面側から撮影した画像である。これによれば、引き剥がし検知層6の文字抜け具合いは、乾燥温度が50℃以上である場合に、セキュリティラベル1として使用可能な程度に良好となり、特に130℃を超える場合に一層良好となることが確認された。
【0044】
以上より、130℃を超える温度に乾燥温度を設定すれば、セキュリティラベル1の不正な引き剥がしを確実に検知できるという利点がある。一方、乾燥温度を50℃以上であって130℃以下の低い温度に設定すれば、セキュリティラベル1の不正な引き剥がしを相当な確実性で検知できると共に、セパレータ4に変性や変形が生じることの低減、電気代節減による製造コストの削減、二酸化炭素排出量の削減等を図ることができるという利点がある。
【0045】
また、本実施形態では、引き剥がし検知層6の剥離層8を組成するインクとして、ザーンカップNo.3を用いて室温で測定される粘度が15秒以上であって19秒以下であるインクが、インク層9を組成するインクとして、ザーンカップNo.4を用いて室温で測定される粘度が34秒以上であって36秒以下であるインクが、それぞれ用いられている。これは、引き剥がし検知層6の文字抜け具合いは、粘着剤層3の坪量と乾燥機28の乾燥温度を上述のようにそれぞれ設定した上で、更に当該インクを用いた時に、一層良好になる特性があるためである。
【0046】
(セキュリティラベルの使用手順及びその作用効果)
次に、セキュリティラベル1の使用手順及びその作用効果について説明する。
図8は、セキュリティラベル1の使用手順を説明するための説明図である。なお、説明の便宜上、
図8ではセキュリティラベル1の各部を、実物とは異なる縮尺で図示している。
【0047】
セキュリティラベル1を使用するユーザは、まず、
図8(a)に示すように、セキュリティラベル1からセパレータ4を剥離させる。この時、前述のように、セパレータ4とラベル部材2との間に介在する粘着剤層3は、セパレータ4との間の密着力が、引き剥がし検知層6との間の密着力より小さい特性を有している。従って、セパレータ4を剥離させる際に、粘着剤層3は、セパレータ4に伴ってラベル部材2から剥離せず、引き剥がし検知層6に粘着した状態でラベル部材2と一体化する。更に、前述のように、粘着剤層3とセパレータ4との間の密着力は、基材5と引き剥がし検知層6との間の密着力より、小さく設定されている。従って、セパレータ4を剥離させる際に、引き剥がし検知層6が基材5から分離することもない。そして、ラベル部材2と一体化した粘着剤層3は、ラベル部材2と逆側の面、すなわちセパレータ4と粘着していた面が、外部に露呈した状態となる。
【0048】
次に、ユーザは、
図8(b)に示すように、箱や容器等の被着体Hに、ラベル部材2を貼り付ける。すなわち、ユーザは、ラベル部材2と一体化した粘着剤層3を、その外部に露呈した面を被着体Hに粘着させることにより、ラベル部材2を被着体Hに貼り付ける。これにより、ラベル部材2の貼り付けが完了する。この時、情報表示層7が表示する情報はユーザから視認可能である一方、引き剥がし検知層6の剥離層8が形成する乗せ文字は、ユーザから視認できない状態となっている。
【0049】
その後、ラベル部材2は、不正な目的を持つ者によって被着体Hから引き剥がされる場合がある。ここで、前述のように、粘着剤層3は、被着体Hとの間の密着力が、引き剥がし検知層6との間の密着力より小さい特性を有している。更に、前述のように、粘着剤層3と被着体Hとの間の密着力は、基材5と剥離層8との間の密着力より大きく、且つ、基材5とインク層9との間の密着力より小さく設定されている。従って、このような不正な引き剥がしがされた場合、ラベル部材2は、
図8(c)に示すように、剥離層8が存在しない箇所では、粘着剤層3が被着体Hから分離することにより、インク層9と粘着剤層3とが、基材5に伴って被着体Hから離隔する。一方、ラベル部材2の剥離層8が存在する箇所では、剥離層8が基材5から剥離することにより、剥離層8とインク層9と粘着剤層3とが、被着体Hの表面に残存する。
【0050】
そうすると、剥離層8が、基材5から剥離して外部に露呈することにより、平面視で乗せ文字に対応する文字(例えば「開封済」という文字)を表示する。また、不正な目的を持つ者が、一旦引き剥がしたラベル部材2を、元の状態に戻すことは極めて困難である。従って、ユーザは、剥離層8が表示する文字を視認することにより、セキュリティラベル1が被着体Hから不正に引き剥がされたことを確実に検知することができる。
【0051】
(変形例)
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。例えば、本発明の実施形態としては、以下に示すような変形例が考えられる。
【0052】
本実施形態では、
図4に示すように、ラベル部材作製工程S1が、粘着剤層形成工程S2の前に実行されている。しかし、ラベル部材作製工程S1は、粘着剤層形成工程S2と粘着剤層乾燥工程S3の間、または粘着剤層乾燥工程S3と貼り合わせ工程S4の間に実行されてもよい。
【0053】
本実施形態では、
図5に示すように、情報表示層印刷工程S7が、インク層印刷工程S6の実行後に実行されている。しかし、情報表示層印刷工程S7は、剥離層印刷工程S5の実行前に、または剥離層印刷工程S5とインク層印刷工程S6の間に実行されてもよい。また、情報表示層印刷工程S7は、その実行を省略されてもよい。また、本実施形態では、剥離層印刷工程S5が、インク層印刷工程S6の前に実行されている。しかし、インク層9が剥離層8を覆うことなく設けられる場合には、剥離層印刷工程S5は、インク層印刷工程S6の後に実行されてもよい。
【0054】
本実施形態では、
図1に示すように、引き剥がし検知層6の剥離層8が、基材5の裏面に部分的に印刷されることにより、所定の乗せ文字を形成する一方、インク層9が、剥離層8を覆うようにして、基材5の裏面に印刷されている。しかし、剥離層8が、部分的に空隙を形成するように基材5の裏面に印刷されることにより、所定の抜き文字を形成する一方、インク層9が、剥離層8の空隙を埋めるようにして、基材5の裏面に印刷されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るセキュリティラベルの製造方法によって作製されるセキュリティラベル1は、不正な目的を持つ者による引き剥がしを検知するために使用されるだけでなく、一般ユーザによる誤った引き剥がしを検知するために使用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 セキュリティラベル
2 ラベル部材
3 粘着剤層
4 セパレータ
5 基材
6 引き剥がし検知層
8 剥離層
9 インク層
H 被着体
S1 ラベル部材作製工程(第一工程)
S2 粘着剤層形成工程(第二工程)
S3 粘着剤層乾燥工程(第三工程)
S4 貼り合わせ工程(第四工程)
S5 剥離層印刷工程(第五工程)
S6 インク層印刷工程(第六工程)
S7 情報表示層印刷工程(第七工程)