(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137030
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】物体検知装置
(51)【国際特許分類】
G01V 8/14 20060101AFI20240927BHJP
G01V 8/22 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01V8/14 C
G01V8/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048380
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】512026422
【氏名又は名称】セコム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】沼山 和樹
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB16
2G105CC04
2G105EE01
2G105HH01
2G105KK06
(57)【要約】
【課題】監視範囲への物体の侵入が人体か否かを検知し、直近に飛来する昆虫による誤報を低減する。
【解決手段】監視範囲に侵入する物体を検知する物体検知装置1は、物体検知装置1から所定距離離れた監視範囲内の物体から放出される遠赤外線を検出する焦電型赤外線センサ6と、遠赤外線を透過する材料で形成される静電容量測定用電極10aが焦電型赤外線センサ6の検出領域と重なるように物体検知装置1に設けられ、監視範囲内の物体の接近に伴う静電容量を検出する静電容量センサ10と、焦電型赤外線センサ6の検出信号d1が閾値以上のときに、静電容量センサ10にて検出した静電容量が変化したか否かに基づいて物体が人体か否かを判定し、焦電型赤外線センサ6の検出信号が閾値以上のときに、静電容量センサ10にて検出した静電容量に変化あれば物体が人体でないと推定して人体検知信号を送出しない制御部7と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視範囲に侵入する物体を検知する物体検知装置において、
前記物体検知装置から所定距離離れた前記監視範囲内の物体から放出される遠赤外線を検出する焦電型赤外線センサと、
前記遠赤外線を透過する材料で形成される静電容量測定用電極が前記焦電型赤外線センサの検出領域と重なるように前記物体検知装置に設けられ、相互容量測定方式または自己容量測定方式により前記監視範囲内の物体の接近に伴う静電容量を検出する静電容量センサと、
前記焦電型赤外線センサの検出信号が閾値以上のときに、前記静電容量センサにて検出した静電容量が変化したか否かに基づいて前記物体が人体か否かを判定する制御部と、
を備えたことを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記焦電型赤外線センサの検出信号が閾値以上のときに、前記静電容量センサにて検出した静電容量に変化がなければ人体検知信号を送出し、前記静電容量センサにて検出した静電容量に変化あれば前記物体が人体でないと推定して前記人体検知信号を送出しないことを特徴とする請求項1に記載の物体検知装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記静電容量センサにて検出した現在の静電容量と現在までに検出した静電容量の平均値との差分の絶対値が閾値以上となる回数をカウントし、カウントした回数が設定値を超えたときに機器異常信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の物体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視範囲への物体の侵入を検知する物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視範囲への物体の侵入を検知する物体検知装置としては、例えば下記特許文献1に開示される人体検知器が知られている。特許文献1の人体検知器は、PIR(Passive Infrared Ray)センサを2つ使用し、それぞれを人体検知領域、画策検知領域に割り当てるものである。その特徴は、画策検知領域が人体検知領域とほぼ重ならないようになっている点である。
【0003】
さらに説明すると、
図10に示すように、特許文献1の人体検知器21は、人体検知領域Aに人体等が侵入すると、侵入検知用赤外線センサ22が赤外線を検出して制御部が人体検知信号を出力する。そして、人体検知器21に対して画策が行われない場合には、画策検知領域Bに侵入した人体を検知した画策検知用赤外線センサ23から検知信号が出力された後、所定期間内に人体検知領域Aに侵入した人体を検知した侵入検知用赤外線センサ22から検知信号が出力されるが、制御部は画策検知信号を出力しない。これに対し、人体検知器21に対して画策が行われると、画策検知領域Bに侵入した人体を検知した画策検知用赤外線センサ23から検知信号が出力された後、所定期間内に侵入検知用赤外線センサ22から検知信号が出力されず、制御部は所定期間経過時に画策検知信号を出力し、画策が行われた旨を外部報知する。
【0004】
すなわち、上述した特許文献1に開示される人体検知器21は、異なる2つのセンサ(人体検知用赤外線センサ22、画策検知用赤外線センサ23)を用いて人体検知領域Aと画策検知領域B(通常の侵入者を検知しない領域)を形成するものであり、画策を行った侵入者が画策検知用赤外線センサ23に異常接近して画策検知領域Bへ侵入すると、この異常接近がトリガとなって計時が開始され、侵入者の異常接近から一定時間内に人体検知領域Aへの侵入が消失した場合に画策が行われたと判定し、画策検知信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示される従来の人体検知器21では、人体検知領域Aへの物体の侵入が人体か否かを検知するにあたって、人体検知領域Aまたは画策検知領域Bにおいて昆虫が飛来して人体検知器21の本体に向かってきた場合、昆虫が放出する遠赤外線を検出し、侵入者が異常接近したと誤検知することがあった。しかも、特許文献1に開示される従来の人体検知器21では、スプレーや小型ドローンなどを使用し、センサから離れた場所から画策が行われた場合は侵入者の異常接近の検知ができないため、画策による異常を検知できない可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、監視範囲への物体の侵入が人体か否かを検知する物体検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る物体検知装置は、監視範囲に侵入する物体を検知する物体検知装置において、
前記物体検知装置から所定距離離れた前記監視範囲内の物体から放出される遠赤外線を検出する焦電型赤外線センサと、
前記遠赤外線を透過する材料で形成される静電容量測定用電極が前記焦電型赤外線センサの検出領域と重なるように前記物体検知装置に設けられ、相互容量測定方式または自己容量測定方式により前記監視範囲内の物体の接近に伴う静電容量を検出する静電容量センサと、
前記焦電型赤外線センサの検出信号が閾値以上のときに、前記静電容量センサにて検出した静電容量が変化したか否かに基づいて前記物体が人体か否かを判定する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る物体検知装置は、前記制御部が、前記焦電型赤外線センサの検出信号が閾値以上のときに、前記静電容量センサにて検出した静電容量に変化がなければ人体検知信号を送出し、前記静電容量センサにて検出した静電容量に変化あれば前記物体が人体でないと推定して前記人体検知信号を送出しないことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る物体検知装置は、前記制御部が、前記静電容量センサにて検出した現在の静電容量と現在までに検出した静電容量の平均値との差分の絶対値が閾値以上となる回数をカウントし、カウントした回数が設定値を超えたときに機器異常信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、焦電型赤外線センサを使用した物体検知装置に静電容量センサを組み合わせることで、監視範囲への物体の侵入が人体か否かを検知し、直近に飛来する昆虫による誤報を低減することができる。また、物体検知装置に対して画策が行われたか否かの検出も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る物体検知装置の概略構成を示す側断面図である。
【
図2】本発明に係る物体検知装置の機能ブロック図である。
【
図3】本発明に係る物体検知装置による人体検知処理のフローチャートである。
【
図4】本発明に係る物体検知装置による静電容量測定処理のフローチャートである。
【
図5】本発明に係る物体検知装置において、人体が監視範囲に侵入した場合の焦電素子出力波形と静電容量波形の一例を示す図である。
【
図6】本発明に係る物体検知装置において、昆虫が直近飛来した場合の焦電素子出力波形と静電容量波形の一例を示す図である。
【
図7】本発明に係る物体検知装置において、昆虫の直近飛来中に人体が監視範囲に侵入した場合の焦電素子出力波形と静電容量波形の一例を示す図である。
【
図8】本発明に係る物体検知装置において、昆虫が相次いで飛来した場合の焦電素子出力波形と静電容量波形の一例を示す図である。
【
図9】本発明に係る物体検知装置において、画策を受けた場合の焦電素子出力波形と静電容量波形の一例を示す図である。
【
図10】従来の物体検知装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
[本発明の概要について]
本発明は、焦電型赤外線センサを使用した物体検知装置に対して、直近に飛来する昆虫による誤報の低減やセンサから離れた場所からの画策による異常を検知する手段を提供するものである。焦電型赤外線センサは、人体から放射される遠赤外線の変化を検出し、人体を検知するが、背景との温度差が大きい昆虫等が直近に飛来した場合でも、焦電型赤外線センサへの遠赤外線の入射量が変化するため、人体であると誤検知するおそれがある。また、スプレーや小型ドローンなどを使用し、センサから離れた場所から画策が行われた場合には、侵入者の異常接近の検知ができない場合がある。
【0015】
そこで、本発明では、物体検知装置直近の物体のみを検知する静電容量センサを装置に付加することにより、物体(遠赤外線の放射源)が物体検知装置の直近に存在するか否かを判定する。物体が物体検知装置の直近であると判定した場合は昆虫である可能性が高いとみなし、人体検知信号を送出しないようにすることで誤報を排除する。また、センサから離れた場所からスプレー塗布や布で覆うなどの画策が行われた場合には、その画策を静電容量センサにて検出する。
【0016】
[物体検知装置の構成について]
図1は本発明に係る物体検知装置の概略構成を示す側断面図、
図2は物体検知装置の機能ブロック図である。
【0017】
図1および
図2に示すように、本実施の形態の物体検知装置1は、例えば監視範囲の天井や壁面にベース2が固定され、ベース2にカバー3が着脱可能に取り付けられて筐体4を構成している。そして、物体検知装置1の筐体4内には、光学系としてのミラー5、焦電型赤外線センサ6および制御部7が配線接続された基板8、コネクタ9を介して基板8に静電容量測定用電極10aが配線接続された静電容量センサ10が内蔵されている。
【0018】
焦電型赤外線センサ6は、物体検知装置1の筐体4から所定距離離れた監視範囲E1内を移動する物体から放出される遠赤外線を検出するもので、焦電素子6a、増幅部6b、A/D変換部6cを備えて構成される。
【0019】
焦電素子6aは、物体検知装置1の筐体4から所定距離離れた監視範囲E1内を移動する物体から放出される遠赤外線を検出し、検出した遠赤外線の変化量に応じた検出信号を増幅部6bに出力する。
【0020】
増幅部6bは、焦電素子6aからの検出信号を所定の増幅率で増幅してA/D変換部6cに出力する。
【0021】
A/D変換部6cは、増幅部6bにて増幅されたアナログ値による検出信号を所定のサンプリング周期でA/D変換し、デジタル値による検出信号d1として制御部7に出力する。
【0022】
なお、焦電型赤外線センサ6は、監視範囲E1内を移動する物体から放出される遠赤外線を検出できる構成であればよく、従来より周知の方式であるツインミラー方式、デュアルツイン方式、又はそれらの組み合わせの何れでも採用できる。また、
図1の例では、説明の便宜上、監視範囲E1を1つの検出空間として、焦電型赤外線センサ6からミラー5を介して建物内の床面などの監視平面上(略水平面を含む)に投影されるように仮想的に設定しているが、これに限定されるものではない。例えば1枚のミラー5のミラー面を複数に分割し、監視平面上に投影される監視範囲E1をミラー5の分割数に合わせて複数の検出空間に分割することができ、監視範囲E1における検出空間の数、大きさ、分布を任意に設定することができる。
【0023】
静電容量センサ10は、相互容量測定方式または自己容量測定方式により監視範囲E1内の物体の接近に伴う静電容量を検出するもので、静電容量測定用電極10a、静電容量測定部10bを備えて構成される。
【0024】
静電容量測定用電極10aは、遠赤外線を透過する材料で形成され、
図1の太線で示すカバー3の外面上の静電容量測定領域E2が少なくとも
図1の点線で示す監視範囲E1からカバー3の外面上に投影される焦電型赤外線センサ6の検出領域E1を包含して重なるように物体検知装置1のカバー3の内面に配置される。
【0025】
静電容量測定用電極10aは、筐体4内の基板8にコネクタ9を介して配線接続される。静電容量センサ10は、静電容量測定用電極10aと対地間、あるいは静電容量測定用電極10aの送信電極と受信電極間に形成される静電容量の測定が可能である。
【0026】
なお、静電容量測定用電極10aは、カバー3への貼付の他、導電塗料の塗布などが挙げられるが、この限りではない。例えば光学系を構成する金属めっきのミラー5を静電容量測定用電極10aとして兼用することもできる。
【0027】
静電容量測定部10aは、相互容量測定方式を採用した場合、静電容量測定用電極10aの送信電極と受信電極間に形成される静電容量を測定し、測定した静電容量のデジタル値による検出信号d2を制御部7に出力する。また、静電容量測定部10aは、自己容量測定方式を採用した場合、静電容量測定用電極10aと対地間に形成される静電容量を測定し、測定した静電容量のデジタル値による検出信号d2を制御部7に出力する。
【0028】
制御部7は、焦電型赤外線センサ6の検出信号d1と静電容量センサ10の検出信号d2を入力として後述する
図3の人体検知処理と
図4の静電容量測定処理を実行し、監視範囲E1内の物体の有無(人体の有無、昆虫の有無、画策の有無)を判別し、判別結果に応じて人体検知信号、機器異常信号の出力を制御するもので、記憶部7a、静電容量平均値計算部7b、判定部7c、出力部7dを備えて概略構成される。
【0029】
記憶部7aは、後述する
図3の人体検知処理と
図4の静電容量測定処理に必要な各種情報を記憶する。具体的には、焦電型赤外線センサ6の検出信号d1に基づく遠赤外線量と比較して監視範囲H1で熱源の移動があるか否かを判定するための閾値V
th、現在の静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量Cと静電容量平均値計算部11bにて計算した静電容量平均値C
avg との差の絶対値|C-C
avg |=ΔCと比較するための閾値C
th、ΔCが閾値C
th以上の回数Gと比較するための設定値G
th(回数閾値:例えば100,000回)、人体検知処理や静電容量測定処理の処理結果などを記憶する。
【0030】
静電容量平均値計算部7bは、静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量平均値Cavg を計算する。この静電容量平均値Cavg は、例えば現在から所定時間遡った所定期間における静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量Cの平均値(直近の平均値)、物体検知装置1を起動してから現在までの静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量Cの平均値を採用することができる。
【0031】
判定部7cは、後述する
図3の人体検知処理において、焦電型赤外線センサ6の検出信号d1に基づく遠赤外線量と閾値V
thを比較し、焦電型赤外線センサ6の検出信号d1に基づく遠赤外線量が閾値V
th以上のときに、監視範囲H1で熱源の移動があったと判定する。
【0032】
また、判定部7cは、監視範囲H1で熱源の移動があったと判定し、静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量Cに変化があれば、そのときの熱源の移動は焦電型赤外線センサ6直近と判定し、そのときの熱源が人体ではないと推定する。
【0033】
さらに、判定部7cは、後述する
図4の静電容量測定処理において、現在の静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量Cと静電容量平均値計算部7bにて計算した静電容量平均値C
avg との差の絶対値|C-C
avg |=ΔCと閾値C
thとを比較し、ΔCが閾値C
th以上か否かの判定、閾値C
th以上のΔCの回数Gが設定値G
th以上か否かを判定する。
【0034】
出力部7dは、判定部7cの判定結果に応じた信号を出力する。具体的には、判定部7cにて監視範囲H1で熱源の移動があったと判定し、静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量Cに変化がなければ、そのときの熱源の移動は人体であると判断して人体検知信号を送出する。
【0035】
また、出力部7dは、判定部7cにて閾値Cth以上のΔCの回数Gが設定値Gth以上と判定したときに、物体検知装置1に対して画策が行われた旨を示す機器異常(画策)信号を送出する。
【0036】
次に、上記のように構成される物体検知装置1の動作として、制御部7が実行する人体検知処理と静電容量測定処理の動作について
図3~
図9を参照しながら説明する。なお、
図3では「焦電型赤外線センサ」を「赤外線センサ」と省略して表記している。
【0037】
図3の人体検知処理のステップ1(以下、「ST1」のように略記する)において、物体検知装置1が作動状態に入ると、制御部7は焦電型赤外線センサ6の検出信号d1を取得して入力状態を監視する。以下、物体検知装置1の動作について、人体が監視範囲E1に侵入した場合、昆虫が直近飛来した場合、昆虫の直近飛来中に人体が監視範囲E1に侵入した場合、昆虫が相次いで飛来した場合、画策を受けた場合にそれぞれ場合分けして説明する。
【0038】
[人体が監視範囲E1に侵入した場合]
人体が監視範囲E1に侵入した場合の焦電型赤外線センサ6の検出信号d1に基づく焦電素子出力波形と静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量波形の一例を
図5に示す。
【0039】
まず、制御部7は焦電型赤外線センサ6からの検出信号d1を取得する(ST1)。このとき、人体が監視範囲E1に侵入すると、焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aに入射する遠赤外線量が変化し、その変化が制御部7にて取得される。
【0040】
次に、
図4の静電容量測定処理に移行する(ST2)。
図4の静電容量測定処理では、静電容量センサ10の静電容量Cを測定する(ST10)。そして、測定した静電容量Cとこれまでの静電容量平均値C
avg との差分の絶対値|C-C
avg |=ΔCを制御部7の静電容量平均値計算部7bが計算し、ΔCが閾値C
th以上か否かを判定する(ST11)。
図5の例では、虫の飛来が無いため、静電容量Cはこれまでの平均値C
avg と差が無いため、ΔCが閾値C
thを超過せず(ST11-NO)、静電容量平均値C
avg を計算し(ST17)、制御部7の画策検知用カウンターGを0にリセットし(ST18)、「静電容量変化なし」を出力する(ST19)。
【0041】
そして、人体が監視範囲E1に侵入しているため、焦電型赤外線センサ6の検出信号d1に基づく遠赤外線量が閾値Vth以上と判定され(ST3-YES)、監視範囲E1で熱源の移動があったことを認識する(ST4)。このとき、静電容量検知処理のST19で「静電容量変化なし」を出力しているので、ST5の静電容量の変化ありか否かの判定はNOとなり、出力部7dから人体検知信号を送出する(ST8)。その後、ST9のWait(待ち時間:例えば10ミリ秒)が経過すると、ST1に戻る。
【0042】
[昆虫が直近飛来した場合]
焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aの直近(静電容量測定領域E2の直近)に昆虫が飛来した場合の焦電型赤外線センサ6の検出信号d1に基づく焦電素子出力波形と静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量波形を一例を
図6に示す。
【0043】
まず、制御部7は焦電型赤外線センサ6からの検出信号d1を取得する(ST1)。このとき、昆虫が焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aの直近(静電容量測定領域E2の直近)に飛来すると、焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aに入射する遠赤外線量が変化し、その変化が制御部7にて取得される。
【0044】
次に、
図4の静電容量測定処理に移行する(ST2)。
図4の静電容量測定処理では、静電容量センサ10の静電容量Cを測定する(ST10)。そして、測定した静電容量Cとこれまでの静電容量平均値C
avg との差分の絶対値|C-C
avg |=ΔCを制御部7の静電容量平均値計算部7bが計算し、ΔCが閾値C
th以上か否かを判定する(ST11)。
図6の例では、昆虫が焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aの直近(静電容量測定領域E2の直近)に飛来しているので、静電容量Cはこれまでの平均値C
avg から差が生じ、ΔCが閾値C
thを超過し(ST11-YES)、制御部7の画策検知用カウンターGをインクリメントする(ST12)。このときは、昆虫が飛来して間もないため、ST13の画策検知用カウンターGが設定値G
th以上か否かの判定がNOとなり、「静電容量変化あり」を出力する(ST16)。
【0045】
そして、焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aに入射する遠赤外線量が変化し、この遠赤外線量の変化が閾値Vth以上と判定すると(ST3-YES)、監視範囲E1で熱源の移動があったことを認識する(ST4)。このとき、静電容量検知処理のST16で「静電容量変化あり」を出力しているので、ST5の静電容量の変化ありか否かの判定がYESとなり、熱源の移動はセンサ直近であったと認識し(ST6)、熱源が人体ではないと推定し(ST7)、出力部7dから人体検知信号を送出しない(誤報の排除)。その後、ST9のWait(待ち時間)が経過すると、ST1に戻る。
【0046】
[昆虫の直近飛来中に人体が監視範囲E1に侵入した場合]
焦電型赤外線センサ6の直近(静電容量測定領域E2の直近)において昆虫が飛来している間に人体が監視範囲E1に侵入した場合の焦電型赤外線センサ6の検出信号d1に基づく焦電素子出力波形と静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量波形の一例を
図7に示す。この場合、静電容量測定領域E2を形成するカバー3部分が昆虫で覆われていないことが前提である。
【0047】
まず、制御部7は焦電型赤外線センサ6からの検出信号d1を取得する(ST1)。このとき、
図7のAにおいて、昆虫が焦電型赤外線センサの直近(静電容量測定領域E2の直近)に飛来すると、焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aに入射する遠赤外線量が変化し焦電素子6aの出力は変化するが、同じタイミングで静電容量センサ10の静電容量Cも変化する。このため、出力部7dから人体検知信号を送出しない。これは前述した[昆虫が直近飛来した場合]と同様である。その後、
図7のBにおいて、人体が監視範囲H1に侵入すると焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aに入射する遠赤外線量が変化し焦電素子6aの出力波形が変化するのに対し、静電容量の変化がないため、出力部7dから人体検知信号を送出する。これは前述した[人体が監視範囲E1に侵入した場合]と同様である。この際、静電容量センサ10の静電容量Cに変化はないので、出力部7dから人体検知信号を送出して発報となり、失報には至らない。そして、
図7のCにおいて、虫が飛び去った場合も焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aに入射する遠赤外線量が変化し焦電素子6aの出力は変化するが、同じタイミングで静電容量センサ10の静電容量Cも変化する。このため、出力部7dから人体検知信号を送出しない。これは前述した[昆虫が直近飛来した場合]と同様である。
【0048】
[昆虫が相次いで飛来した場合]
焦電型赤外線センサ6の直近(静電容量測定領域E2の直近)に昆虫が相次いで飛来した場合の焦電型赤外線センサ6の検出信号d1に基づく焦電素子出力波形と静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量波形の一例を
図8に示す。
【0049】
まず、制御部7は焦電型赤外線センサ6からの検出信号d1を取得する(ST1)。このとき、焦電型赤外線センサ6の直近(静電容量測定領域E2の直近)において昆虫が相次いで飛来すると、焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aの出力が振れて変化する。同時に静電容量センサ10の静電容量Cも増加する。これは前述した[昆虫が直近飛来した場合]と同様である。そして、焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aは赤外線入射量の変化を出力するので、昆虫の飛来後、出力は0となる。一方、静電容量センサ10の静電容量Cは、昆虫の飛来に対応して、飛来のタイミングで増加する。そして、静電容量Cは昆虫の飛来の度にこれまでの平均値C
avg から差が生じ、ΔCが閾値C
thを超過する。よって、
図4の静電容量測定処理のST11のΔCは閾値C
th以上か否かの判定がYESとなり、制御部7の画策検知用カウンターGをインクリメントする(ST12)。このときは、昆虫が飛来して間もないため、ST13の画策検知用カウンターGは設定値G
th以上か否かの判定がNOとなり、「静電容量変化あり」を出力する(ST16)。
【0050】
よって、ST5の静電容量の変化ありか否かの判定がYESとなり、熱源の移動はセンサ直近であったと認識し(ST6)、熱源は人体ではないと推定し(ST7)、出力部7dから人体検知信号を送出しない(誤報の排除)。その後、ST9のWait(待ち時間)が経過すると、ST1に戻る。そして、
図8の例では、昆虫が飛来している間、ST3の焦電型赤外線センサ6の遠赤外線量が閾値V
th以上でYESなので、監視範囲E1で熱源の移動ありと判定し(ST4)、さらに静電容量の変化ありと判定し(ST5-YES)、出力部7dから人体検知信号を送出しない。
【0051】
[画策を受けた場合]
画策を受けた場合の焦電型赤外線センサ6の検出信号d1に基づく焦電素子出力波形と静電容量センサ10の検出信号d2に基づく静電容量波形の一例を
図9に示す。
【0052】
例えばセンサ(焦電型赤外線センサ6、静電容量センサ10)から離れた場所から物体検知装置1のカバー3にスプレーを噴射されるような画策を受けた場合、静電容量センサ10の静電容量Cは変化する。スプレーには有機溶媒等が含まれており、それがカバー3に付着することで静電容量センサ10にて測定される静電容量Cが変化する。この静電容量Cの変化はST2の静電容量測定処理の静電容量Cの測定(ST10)で捉え、制御部7の画策検知用カウンターGをインクリメントし、ST16で「静電容量変化あり」を出力する。
【0053】
この際、焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aの検出信号d1は問わない。具体的に、カバー3への画策前に人体検知していればST3の焦電型赤外線センサ6の遠赤外線量の変化が閾値V
th以上か否かの判定がYESになる可能性があり、また、画策によりカバー3がマスキングされれば、焦電型赤外線センサ6の焦電素子6aから出力変化は無いため、ST3の焦電型赤外線センサ6の遠赤外線量の変化が閾値V
th以上か否かの判定はNOとなる。いずれにしても、ST9のWait(待ち時間:例えば10ミリ秒)の後に
図4の静電容量測定処理に戻り、これが何回も繰り返され、制御部7の画策検知用カウンターGを逐次インクリメントする。
【0054】
そして、制御部7の画策検知用カウンターGが設定値G
th以上になると(ST13-YES)、静電容量Cが変化したまま物体がカバー3に張り付いているとみなし、出力部7dから機器異常(画策)信号を送出する(ST14)。その後、対処員が機器の状態を確認し、適切な処置を施した後、
図3の人体検知処理へ戻る(ST15)。
【0055】
以上、説明したように、本実施の形態では、物体検知装置1において、赤外線を透過するカバー3内に焦電型赤外線センサ6および光学系(ミラー5)を組み込んだ一般的な構成に加え、監視範囲E1と重なるように物体検知装置1に静電容量測定領域E2を設定した静電容量測定用電極10aを含む静電容量センサ10を新たに備え、静電容量測定領域E2の静電容量Cを測定する。
【0056】
これにより、定常状態では静電容量Cは一定であるが、昆虫が静電容量測定領域E2に近づいたり、画策用のマスク材が静電容量測定領域E2に付着すると静電容量Cが変化し、この静電容量Cの変化を静電容量センサ10にて検出することができる。その際、静電容量Cの変化と焦電型赤外線センサ6の赤外線量の変化が同時に発生した場合は虫が飛来したとみなし、人体検知信号を送出しないようにする。また、静電容量Cが変化した後、元の値まで戻らない状態が継続した場合は、画策が行われたとみなす。画策された状態を静電容量Cの変化として直接的に検出することにより、人体の異常接近の有無に関わらず、物体検知装置1に対する画策が行われたことを検知することができる。
【0057】
このように、焦電型赤外線センサ6を使用した物体検知装置1に静電容量センサ10を組み合わせることで、監視範囲内の物体が人体か否かを検知し、直近に飛来する昆虫による誤報を低減することができる。また、物体検知装置1に対して画策が行われたか否かの検出も可能となり、セキュリティシステムの信頼性向上につながる。しかも、追加となる部材は静電容量測定用電極10aを含む静電容量センサ10や静電容量測定回路用の部品のみであり、従来技術と比較してコスト面でも有利である。
【0058】
以上、本発明に係る物体検知装置の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
1 物体検知装置
2 ベース
3 カバー
4 筐体
5 ミラー
6 焦電型赤外線センサ
6a 焦電素子
6b 増幅部
6c A/D変換部
7 制御部
7a 記憶部
7b 静電容量平均値計算部
7c 判定部
7d 出力部
8 基板
9 コネクタ
10 静電容量センサ
10a 静電容量測定用電極
10b 静電容量測定部
21 人体検知器
22 侵入検知用赤外線センサ
23 画策検知用赤外線センサ
H1 監視範囲
E1 焦電型赤外線センサの検出領域
E2 静電容量測定領域
d1 焦電型赤外線センサの検出信号
d2 静電容量センサの検出信号