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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137033
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A41B11/00 D
A41B11/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048383
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】593065110
【氏名又は名称】イイダ靴下株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓二
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 裕介
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 洋二
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA02
3B018AB07
3B018AB08
3B018AC01
3B018AC03
3B018AC13
3B018AD02
(57)【要約】
【課題】浮き指を改善、矯正することのできる靴下を提供する。
【解決手段】靴下100は、足指を収容する五つの指袋1ないし5を備え、各指袋1ないし5が、足底側に、足背側の編組織よりもウェール方向の伸縮抵抗が大きい強伸縮部1aないし5aを備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足指を収容する五つの指袋を備える靴下であって、
各前記指袋が、足底側に、足背側の編組織よりもウェール方向の伸縮抵抗が大きい強伸縮部を備えることを
特徴とする靴下。
【請求項2】
請求項1に記載の靴下において、
前記強伸縮部が、着用者の第1趾における第1基節骨、並びに第2趾ないし第5趾における第2ないし第5中節骨及び第2ないし第5基節骨に対応する部分近傍に編成されることを
特徴とする靴下。
【請求項3】
請求項1に記載の靴下において、
足底側における着用者の中足骨頭に対応する部分近傍に、クッション性を有する前緩衝部を備えることを
特徴とする靴下。
【請求項4】
請求項1に記載の靴下において、
足底側における着用者の踵骨に対応する部分近傍に、クッション性を有する後緩衝部を備えることを
特徴とする靴下。
【請求項5】
請求項1に記載の靴下において、
足背側における着用者の基節骨及び中足骨頭に対応する部分近傍に、通気性を有する通気部を備えることを
特徴とする靴下。
【請求項6】
請求項5に記載の靴下において、
前記通気部が、着用者の第1基節骨、並びに第1中足骨頭及び第2中足骨頭に対応する部分近傍に、通気性及びクッション性を有する緩和部を備えることを
特徴とする靴下。
【請求項7】
請求項1に記載の靴下において、
足底側における着用者の土踏まず内側に対応する部分近傍に、着用者の土踏まず外側に対応する部分の編組織よりもウェール方向の伸縮抵抗が小さい内土踏まず部を備えることを
特徴とする靴下。
【請求項8】
請求項1に記載の靴下において、
第1趾を収容する前記指袋の強伸縮部が、足底内側に編成されることを
特徴とする靴下。
【請求項9】
請求項1に記載の靴下において、
第5趾を収容する前記指袋の強伸縮部が、足底外側に編成されることを
特徴とする靴下。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮き指を改善、矯正することのできる靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、起立時や歩行時において、足の指先が接地しない、あるいは接地していても十分に力を入れて踏ん張ることのできない浮き指の人が増えている。浮き指の状態では、重心が踵部側に偏ってしまうため、正常なバランスで姿勢を保持することが難しく、また、歩行時には、足指で地面を蹴って前進するための推進力が得られにくいため、運動能力の低下にもつながる。
【0003】
例えば、従来の靴下は、親指の下面に当接する親指下編組織が、踵や小趾球など親指以外の下面や下面以外の編組織よりも厚く形成される(特許文献1参照)。この従来の靴下は、親指下編組織を厚く形成したことで、歩行・走行等の際に体重が足の親指にかかりやすくし、足の親指を効果的に使ってバランスのとれた直立や歩行を可能とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6669357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている靴下は、親指下編組織を厚くすることで浮き指となっている第1趾(親指)と接地面との間の隙間を埋め、歩行等の際に、体重を足の親指にかかりやすくするものであり、浮き指そのものを改善、矯正するものではない。
【0006】
また、浮き指は、第2趾(人差し指)ないし第4趾(薬指)が浮いた状態では、前傾姿勢が困難になり、第5趾(小指)が浮いた状態では、体重を支持することができず、左右に体が振れやすくなってしまうが、上記特許文献1に開示の靴下は第1趾のみに焦点をあてており、その他の足指については何ら言及していない。
【0007】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、浮き指を改善、矯正することのできる靴下を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る靴下は、足指を収容する五つの指袋を備える靴下であって、各前記指袋が、足底側に、足背側の編組織よりもウェール方向の伸縮抵抗が大きい強伸縮部を備えるものである。
【0009】
このように本発明においては、足底側の強伸縮部が、足背側の編組織よりもウェール方向の伸縮抵抗が大きくなるように形成されていることから、第1指袋ないし第5指袋を上方に湾曲させてアーチ形状を形成できることとなり、着用者の第1趾ないし第5趾の指先を接地させて、バランスの取れた直立及び歩行を可能とするとともに、浮き指を改善、矯正することができる。
【0010】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、前記強伸縮部が、着用者の第1趾における第1基節骨、並びに第2趾ないし第5趾における第2ないし第5中節骨及び第2ないし第5基節骨に対応する部分近傍に編成されるものである。
【0011】
このように本発明においては、着用者の第1趾における第1基節骨、並びに第2趾ないし第5趾における第2ないし第5中節骨及び第2ないし第5基節骨に対応する部分近傍に強伸縮部が編成されることから、着用者の第1趾における第1中節骨、及び第2趾ないし第5趾における第2ないし第5末節骨を残して強伸縮部が編成されることとなり、第1指袋ないし第5指袋の足背側の編組織を足底側に引き込むことがなく、装着性を高めることができる。
【0012】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、足底側における着用者の中足骨頭に対応する部分近傍に、クッション性を有する前緩衝部を備えるものである。
【0013】
このように本発明においては、クッション性を有する前緩衝部が、足底側における着用者の中足骨頭に対応する部分近傍に編成されることから、直立時や歩行時に接地する母趾球や小趾球に掛かる衝撃や摩擦を前緩衝部で吸収して緩和できることとなり、着用者の足底に掛かる負担を軽減することができる。
【0014】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、足底側における着用者の踵骨に対応する部分近傍に、クッション性を有する後緩衝部を備えるものである。
【0015】
このように本発明においては、クッション性を有する後緩衝部15が、足底側における着用者の踵骨に対応する部分近傍に編成されることから、直立時や歩行時に接地する着用者の踵部に掛かる衝撃や摩擦を後緩衝部15で吸収して緩和できることとなり、着用者の足底に掛かる負担を軽減することができる。
【0016】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、足背側における着用者の基節骨及び中足骨頭に対応する部分近傍に、通気性を有する通気部を備えるものである。
【0017】
このように本発明においては、通気性を有する通気部が、足背側における着用者の基節骨及び中足骨頭に対応する部分近傍に編成されることから、特にムレやすい指股部分の汗を外部に放出することができることとなり、細菌の繁殖を抑えるとともに、発汗時の不快感を解消することができる。
【0018】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、前記通気部が、着用者の第1基節骨、並びに第1中足骨頭及び第2中足骨頭に対応する部分近傍に、通気性及びクッション性を有する緩衝部を備えるものである。
【0019】
このように本発明においては、通気性及びクッション性を有する緩衝部が、通気部の着用者の第1基節骨、並びに第1中足骨頭及び第2中足骨頭に対応する部分近傍に編成されることから、歩行時に特に動きの大きい第1趾の第1基節骨及び第1中足骨頭に対応する部分及びこれに隣接する第2趾の第2中足骨頭に対応する部分が履物内側と接触する際の衝撃を吸収し、緩和できることとなり、着用者の第1趾及び第2趾を保護することができる。
【0020】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、足底側における着用者の土踏まず内側に対応する部分近傍に、着用者の土踏まず外側に対応する部分の編組織よりもウェール方向の伸縮抵抗が小さい内土踏まず部を備えるものである。
【0021】
このように本発明においては、着用者の土踏まず外側に対応する部分の編組織よりもウェール方向の伸縮抵抗が小さい内土踏まず部が足底側における着用者の土踏まず内側に対応する部分近傍に編成されることから、土踏まず外側よりも土踏まず内側の編組織が伸びやすいこととなり、外側縦アーチよりもより湾曲している内側縦アーチに編組織が追従し、装着性を高めることができる。
【0022】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、第1趾を収容する前記指袋の強伸縮部が、足底内側に編成されるものである。
【0023】
このように本発明においては、足底内側に編成された第1趾を収容する第1指袋の強伸縮部を備えることから、第1指袋を上方に湾曲させてアーチ形状を形成しつつ、身体内側へ反らせることとなり、浮き指を改善、矯正するとともに、第1趾が身体外側に反った状態である外反母趾を改善、矯正することができる。
【0024】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、第5趾を収容する前記指袋の強伸縮部が、足底外側に編成されるものである。
【0025】
このように本発明においては、足底外側に編成された第5趾を収容する第5指袋の強伸縮部を備えることから、第5指袋を上方に湾曲させてアーチ形状を形成しつつ、身体内側へ反らせることとなり、浮き指を改善、矯正するとともに、第5趾が身体内側に反った状態である内反小趾を改善、矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態に係る靴下の概略構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は(a)に示す靴下の平面図、(d)は(a)に示す靴下の底面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る靴下の概略構成を示す図であり、(a)は背面図、(b)は右側面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る靴下を装着した際の動作説明図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る靴下の概略構成を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る靴下について、図1及び図2を用いて説明する。本実施形態の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
なお、以下では、左足に適用可能な靴下を例にとって説明する。
【0028】
本実施形態に係る靴下100は、主に、足首から下の部分である着用者の足部を覆う足被覆部10と、足被覆部10と連続し、着用者の下腿部を覆う下腿被覆部20と、下腿被覆部20と連続し、着用者の膝下で周回し靴下100を膝下に位置決めする口ゴム部30を備えて構成される。
【0029】
足被覆部10は、着用者の足指に対応する部分である足指成形部11と、着用者の足甲、土踏まず及び踵部に対応する部分である中間部12とを備える。
【0030】
足指成形部11は、五つの指袋を有し、具体的には、着用者の第1趾(親指)を挿入する第1指袋1と、着用者の第2趾(人差し指)を挿入する第2指袋2と、着用者の第3趾(中指)を挿入する第3指袋3と、着用者の第4趾(薬指)を挿入する第4指袋4と、着用者の第5趾(小指)を挿入する第5指袋5とから構成される。
【0031】
第1指袋1ないし第5指袋5は、その足底側に強伸縮部1aないし5aを備える。強伸縮部1aは、着用者の第1趾における第1基節骨に対応する部分近傍に編成され、強伸縮部2aないし5aは、着用者の中節骨及び基節骨に対応する部分近傍に編成されている。
強伸縮部1aないし5aは、ウェール方向(靴下100の長手方向)の伸縮抵抗が、第1指袋1ないし第5指袋5の足背側におけるウェール方向の伸縮抵抗よりも大きくなるように形成されている。
【0032】
本実施形態に係る靴下100では、強伸縮部1aないし5aは、足底側の着用者の基節骨及び中節骨に対応する部分近傍に編成されているが、これに限らず、足底側の着用者の足指に対応する部分全面(第1趾においては第1中節骨及び第2基節骨に対応する部分、第2趾ないし第5趾においては末節骨、中節骨及び基節骨に対応する部分)に編成されていてもよい。
【0033】
強伸縮部1aないし5aの強伸縮抵抗は、強伸縮部1aないし5aの編組織を第1指袋1ないし第5指袋5における足背側の強伸縮部1aないし5aに対向する部分の編組織よりもコース数の少ないものとすることで達成することができる。
また、強伸縮部1aないし5aの編組織を表糸が裏面にミスした編組織とすることでも達成することができる。この場合、強伸縮部1aないし5aは、例えば、1×1のニットミス目で、表ベッドを休止状態として裏ベッドで6目ごとにミスさせ、その後よこ方向に1目分シフトさせて、この6目ごとのミスを繰り返して編組織を形成する。
【0034】
また、強伸縮部1aないし5aの強伸縮抵抗は、上記したものを適宜組み合わせて達成してもよい。
例えば、第1指袋1の強伸縮部1aを第1指袋1の足背側の編組織よりもコース数の少ない編組織とし、第3指袋3ないし第5指袋5の強伸縮部3aないし5aを1×1のニットミスで編成された編組織とすることもできるし、第1指袋1ないし第5指袋5の強伸縮部1aないし5aを第1指袋1ないし第5指袋5の足背側の編組織よりもコース数の少ない編組織とするとともに、第1指袋1ないし第5指袋5の強伸縮部1aないし5aを1×1のニットミスで編成された編組織とすることもできる。
【0035】
また、第1指袋1ないし第5指袋5の先端部分(着用者の第1趾における中節骨、及び第2趾ないし第5趾における末節骨に対応する部分)には、先端部1bないし5bがそれぞれ編成されている。
先端部1bないし5bは、例えば、平編みにより編成される。
【0036】
第1指袋1ないし第5指袋5の足背側(強伸縮部1aないし5aに対向する部分)には、通気性を有する通気部7が編成されている。
通気部7は、足指成形部11における着用者の第1趾における第1基節骨、並びに第2趾ないし第5趾における中節骨及び基節骨に対応する部分から、中間部12における着用者の中足骨頭近傍に対応する部分まで編成され、少なくとも着用者の第1趾ないし第5趾の間である指股に対応する部分を含んで編成されている。
【0037】
以上のように、通気性を有する通気部7が、足背側における着用者の基節骨及び中足骨頭に対応する部分近傍に編成されることから、特にムレやすい指股部分の汗を外部に放出することができることとなり、細菌の繁殖を抑えるとともに、発汗時の不快感を解消することができる。
【0038】
また、通気部7の着用者の第1基節骨、並びに第1中足骨頭及び第2中足骨頭に対応する部分には、通気性に加え、クッション性を有する緩和部8が形成されている。
【0039】
以上のように、通気性及びクッション性を有する緩和部8が、通気部7の着用者の第1基節骨、並びに第1中足骨頭及び第2中足骨頭に対応する部分近傍に編成されることから、歩行時に特に動きの大きい第1趾の第1基節骨及び第1中足骨頭に対応する部分及びこれに隣接する第2趾の第2中足骨頭に対応する部分が履物内側と接触する際の衝撃を吸収し、緩和できることとなり、着用者の第1趾及び第2趾を保護することができる。
【0040】
通気部7は、例えば、緩和部8をメッシュ編みとクッション編みとの組み合わせにより編成し、通気部7の緩和部8を除く部分がメッシュ編みにより編成される。
【0041】
また、中間部12は、足底側に、着用者の中足骨頭に対応する部分近傍に編成される前緩衝部13と、着用者の土踏まずに対応する部分に編成される土踏まず部14と、着用者の踵骨に対応する部分近傍に編成される後緩衝部15とを備える。
【0042】
前緩衝部13は、クッション性を有し、着用者の中足骨頭に対応する部分、すなわち、歩行時に接地する第1趾の付け根から第5趾の付け根に対応する部分を含むようにして編成される。
【0043】
以上のように、クッション性を有する前緩衝部13が、足底側における着用者の中足骨頭に対応する部分近傍に編成されることから、直立時や歩行時に接地する母趾球や小趾球に掛かる衝撃や摩擦を前緩衝部13で吸収して緩和できることとなり、着用者の足底に掛かる負担を軽減することができる。
【0044】
土踏まず部14は、前緩衝部13と後緩衝部15との間に形成される。土踏まず部14には、中央内側部分に台形状に編成された内土踏まず部16を有し、内土踏まず部16のウェール方向における伸縮抵抗は、内土踏まず部16を除く土踏まず部14のウェール方向における伸縮抵抗よりも小さく編成されている。
【0045】
以上にように、着用者の土踏まず外側に対応する部分の編組織よりもウェール方向の伸縮抵抗が小さい内土踏まず部16が足底側における着用者の土踏まず内側に対応する部分近傍に編成されることから、土踏まず外側よりも土踏まず内側の編組織が伸びやすいこととなり、外側縦アーチよりもより湾曲している内側縦アーチに編組織が追従し、装着性を高めることができる。
【0046】
後緩衝部15は、クッション性を有し、歩行時に接地する着用者の踵骨に対応する部分近傍に編成されている。
【0047】
以上のように、クッション性を有する後緩衝部15が、足底側における着用者の踵骨に対応する部分近傍に編成されることから、直立時や歩行時に接地する着用者の踵部に掛かる衝撃や摩擦を後緩衝部15で吸収して緩和できることとなり、着用者の足底に掛かる負担を軽減することができる。
【0048】
前緩衝部13は、例えば、1×1のニットミス目で、裏ベッドを休止状態として表ベッドで4目ごとにミスさせ、次に、表ベッドを休止状態として裏ベッドで8目ごとにミスするように編成する。この編成をよこ方向に1目分シフトさせて繰り返すことで編組織を形成する。
また、後緩衝部15は、例えば、1×1のニットミス目で、裏ベッドを休止状態として表ベッド4目ごとにミスさせ、次に、表ベッドで2目ごとにミスするように編成する。この編成をよこ方向に1目分シフトさせて繰り返すことで編組織を形成する。
【0049】
下腿被覆部20は、着用者の下腿部に対応する部分に形成され、例えば、平編みにより編成される。
【0050】
口ゴム部30は、着用者の膝下に対応する部分に全周に亘って編成される。口ゴム部30は、コース方向の伸縮抵抗がウェール方向の伸縮抵抗よりも大きくなるように編成され、口ゴム部30を着用者の膝下に位置決めして、靴下100のアンカーとして機能する。
口ゴム部30は、例えば、たて方向に表目のウェールと裏目のウェールとが交互に並ぶ編目で、ゴム糸を編み込むのと編み込まないのをウェール毎に交互に繰り返す1×1ゴム編みにより編成される。
【0051】
靴下100は、従来公知の横編機により編成することができる。
横編機は、前後の各針床においてそれぞれ1本おきの針を用いて靴下100を編成し、前針床の奇数番目の針を主として靴下100の足背側の編地を編成するために用い、後針床の偶数番目の針を主として靴下100の足底側の編地を編成するために用いる。
【0052】
横編機は、前針床で足背側の編地を編成する際に、前針床において編目が係止されている針と対向する後針床の針は空針とするとともに、後針床で足底側の編地を編成する際に、後針床において編目が係止されている針と対向する前針床の針は空針とする。
【0053】
このように、横編機は、空針を設けることにより、足背側及び足底側の編地の編目を、それぞれ対向する針床の空針に目移しすることができるとともに、リンクス、ガーター又はリブなどの表目と裏目が混在した組織柄を編成することや、前後の編目を編幅方向に移動させて互いに接合することができる。
【0054】
本実施形態に係る靴下100は、第2指袋2の先端から編み始め、第2指袋2が第1指袋1の先端の位置まで編成されると第1指袋1の先端を編み始め、第1指袋1及び第2指袋2が第3指袋3の先端の位置まで編成されると第3指袋3の先端を編み始め、第1指袋1ないし第3指袋3が第4指袋4の先端の位置まで編成されると第4指袋4の先端を編み始め、第1指袋1ないし第4指袋4が第5指袋5の先端の位置まで編成されると第5指袋5の先端を編み始めて、第1指袋1ないし第5指袋5が並列に順次編成される。
【0055】
続けて、足被覆部10の中間部12、下腿被覆部20及び口ゴム部30が順次編成されて、全体として無縫製で筒状に編成される。
【0056】
次に、本実施形態に係る靴下100の機能について図3を用いて説明する。
【0057】
まず、歩行時の体重移動について説明すると、歩行者は、踵部から接地する。この踵部にかかる負荷(体重)は、踏込み動作により、外側縦アーチを伝って第5趾の付け根へ移動し、更に屈曲時に横アーチを伝って第1趾の付け根へと移動する。最後に、第1趾の付け根へと移動した負荷は、蹴出し時に、第1趾の指先から抜けていくこととなる。
このように、踵部、足指付け根及び指先での3点歩行により、足裏にかかる体重を分散させ、また、指先での蹴り出しにより、バランスのとれた歩行を可能となる。
【0058】
このような歩行動作において、浮き指の症状がある場合、図3(a)に示すように、踵接地点A及び付け根接地点Bのみが接地した2点歩行となり、歩行時に足指で踏ん張ることができず、また、付け根接地点Bにおいて地面から過剰な衝撃を受けるため、歩行者の足指付け根への負担が大きくなってしまう。
【0059】
これに対し、本実施形態に係る靴下100を着用した場合には、図3(b)に示すように、第1指袋1ないし第5指袋5に編成された強伸縮部1aないし5aの強伸縮抵抗により、第1指袋1ないし第5指袋5を上方に湾曲したアーチ形状とするため、踵接地点A及び付け根接地点Bに加えて、着用者の第1趾ないし第5趾の指先を指先接地点Cに接地させた3点歩行を可能とする。
【0060】
このように本実施形態に係る靴下100は、足底側の強伸縮部1aないし5aが、足背側の編組織よりもウェール方向の伸縮抵抗が大きくなるように形成されていることから、第1指袋1ないし第5指袋5を上方に湾曲させてアーチ形状を形成できることとなり、着用者の第1趾ないし第5趾の指先を接地させて、バランスの取れた直立及び歩行を可能とするとともに、浮き指を改善、矯正することができる。
【0061】
また、着用者の第1趾における第1基節骨、並びに第2趾ないし第5趾における第2ないし第5中節骨及び第2ないし第5基節骨に対応する部分近傍に強伸縮部1aないし5aが編成されることから、着用者の第1趾における第1中節骨、及び第2趾ないし第5趾における第2ないし第5末節骨を残して強伸縮部1aないし5aが編成されることとなり、第1指袋1ないし第5指袋5の足背側の編組織を足底側に引き込むことがなく、装着性を高めることができる。
【0062】
(本発明の第2の実施形態)
上記第1の実施形態に係る靴下においては、着用者の第1趾の第1基節骨に対応する部分及び第5趾の第5中節骨及び第5基節骨に対応する部分の足底側全面に強伸縮部を編成する構成としたが、これに限らず、図4に示すように、着用者の第1趾の第1基節骨に対応する部分及び第5趾の第5中節骨及び第5基節骨に対応する部分の足底側の一部に強伸縮部を編成する構成とすることもできる。
なお、上記第1の実施形態と重複する記載については、その説明を省略する。
【0063】
本実施形態に係る靴下200は、足指成形部11における第1指袋1ないし第5指袋5の足底側に、強伸縮部1c、2aないし4a及び5cを備える。
【0064】
第1指袋1の強伸縮部1cは、着用者の第1基節骨に対応する部分近傍の足底内側(身体の中心側)に形成され、ウェール方向の伸縮抵抗が、第1指袋1の足背側におけるウェール方向の伸縮抵抗よりも大きくなるように形成される。ここで、着用者の第1基節骨に対応する部分近傍の足底外側は、例えば、先端部1bと同様に編成することができる。
【0065】
第5指袋5の強伸縮部5cは、着用者の第5中節骨及び第5基節骨に対応する部分近傍の足底外側(身体の中心とは反対側)に形成され、ウェール方向の伸縮抵抗が、第5指袋5の足背側における編組織のウェール方向における伸縮抵抗よりも大きくなるように形成される。ここで、着用者の第5中節骨及び第5基節骨に対応する部分近傍の足底外内側は、例えば、先端部5bと同様に編成することができる。
【0066】
第1指袋1の強伸縮部1c及び第5指袋5の強伸縮部5cの強伸縮抵抗は、その編組織を第1指袋1及び第5指袋5の足背側の編組織よりもコース数の少ないものとすることで達成することもできるし、表糸が裏面に数ウェールおきにフロートしたものとすることでも達成することができる。また、これらを組み合わせて用いることもできる。
例えば、強伸縮部1c、2aないし4a及び5cは、第1指袋1の強伸縮部1cを第1指袋1の足背側の編組織よりもコース数の少ない編組織とし、第2指袋2ないし第5指袋5の強伸縮部2aないし4a及び5cを1×1のニットミスで編成された編組織とすることもできるし、第1指袋1ないし第5指袋5の強伸縮部1c、2aないし4a及び5cを第1指袋1ないし第5指袋5の足背側の編組織よりもコース数の少ない編組織とするとともに、第1指袋1ないし第5指袋5の強伸縮部1c、2aないし4a及び5cを1×1のニットミスで編成された編組織とすることもできる。
【0067】
なお、本実施形態に係る靴下200は、強伸縮部1c、5cを同時に備える必要はなく、第1指袋1ないし第5指袋5の強伸縮部として、第1指袋1の強伸縮部を強伸縮部1c、第2指袋2ないし第5指袋5の強伸縮部を強伸縮部2aないし5aとすることもできるし、第1指袋1ないし第4指袋4の強伸縮部として強伸縮部1aないし4a、第5指袋5の強伸縮部として強伸縮部5cを編成することもできる。また、強伸縮部1c、5cは、他趾の強伸縮部と併用することなく、単独で編成することもできる。
【0068】
また、強伸縮部1c及び5cは、足底側の着用者の基節骨及び中節骨に対応する部分近傍に編成されているが、これに限らず、足底側の着用者の足指に対応する部分全面(第1趾においては第1中節骨及び第2基節骨に対応する部分の内側、第5趾においては第5末節骨、第5中節骨及び第5基節骨に対応する部分の外側)に編成されていてもよい。
【0069】
このように本実施形態に係る靴下200は、足底内側に編成された第1趾を収容する第1指袋1の強伸縮部1cを備えることから、第1指袋1を上方に湾曲させてアーチ形状を形成しつつ、身体内側へ反らせることとなり、浮き指を改善、矯正するとともに、第1趾が身体外側に反った状態である外反母趾を改善、矯正することができる。
【0070】
また、足底外側に編成された第5趾を収容する第5指袋5の強伸縮部5cを備えることから、第5指袋5を上方に湾曲させてアーチ形状を形成しつつ、身体内側へ反らせることとなり、浮き指を改善、矯正するとともに、第5趾が身体内側に反った状態である内反小趾を改善、矯正することができる。
【符号の説明】
【0071】
1~5 第1指袋~第5指袋
1a~5a、1c、5c 強伸縮部
1b~5b 先端部
7 通気部
8 緩和部
10 足被覆部
11 足指成形部
12 中間部
13 前緩衝部
14 土踏まず部
15 後緩衝部
16 内土踏まず部
20 下腿被覆部
30 口ゴム部
100、200 靴下
A 踵接地点
B 付け根接地点
C 指先接地点

図1
図2
図3
図4