IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-ヒートポンプモジュール 図1
  • 特開-ヒートポンプモジュール 図2
  • 特開-ヒートポンプモジュール 図3
  • 特開-ヒートポンプモジュール 図4
  • 特開-ヒートポンプモジュール 図5
  • 特開-ヒートポンプモジュール 図6
  • 特開-ヒートポンプモジュール 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137035
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ヒートポンプモジュール
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/40 20210101AFI20240927BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   F25B 31/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F25B41/40 B
F25B1/00 399Y
F25B1/00 D
F25B31/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048386
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 智之
(72)【発明者】
【氏名】土方 康種
(72)【発明者】
【氏名】東山 匡志
(72)【発明者】
【氏名】茶木田 浩
(57)【要約】
【課題】ヒートポンプサイクルにおける作動効率の低下を抑制すると共に、組付性の低下を抑制したヒートポンプモジュールを提供する。
【解決手段】ヒートポンプモジュール1は、圧縮機21と、熱媒体冷媒熱交換器22等の高圧側冷媒機器と、第1チラー27等の低圧側冷媒機器と、流路形成部材10と、を有している。流路形成部材10は、平板状に形成されており、圧縮機、高圧側冷媒機器及び低圧側冷媒機器が固定される。流路形成部材10は、流路形成部材の平坦面を鉛直方向から見た場合に、圧縮機重心Gを通る基準線KLを基準として、吐出側領域Roと、吸入側領域Riを有している。高圧側冷媒機器は、流路形成部材10における吐出側領域Roの側に位置し、低圧側冷媒機器は、流路形成部材10における吸入側領域Riの側に位置している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(21)と、
前記圧縮機から吐出された高圧冷媒が流通する高圧側冷媒機器(22、23、25、26)と、
前記圧縮機に吸入される低圧冷媒が流通する低圧側冷媒機器(27、28)と、
前記圧縮機、前記高圧側冷媒機器及び前記低圧側冷媒機器が固定されるとともに、前記高圧冷媒が流通する高圧側流路(11)と、前記低圧冷媒が流通する低圧側流路(12)と、を有する平板状の流路形成部材(10)と、を有するヒートポンプモジュールであって、
前記流路形成部材は、前記流路形成部材の平坦面を鉛直方向から見た場合に、
前記圧縮機の重心(G)を通る基準線(KL)よりも前記圧縮機の吐出口が配置される側に位置する吐出側領域(Ro)と、前記基準線よりも前記圧縮機の吸入口が配置される側に位置する吸入側領域(Ri)を有し、
前記高圧側冷媒機器は、前記流路形成部材における前記吐出側領域の側に位置し、
前記低圧側冷媒機器は、前記流路形成部材における前記吸入側領域の側に位置しているヒートポンプモジュール。
【請求項2】
前記圧縮機(21)は、前記流路形成部材における前記吐出側領域の側に位置し、冷媒を圧縮して吐出する為の圧縮機構部(21B)と、前記流路形成部材における前記吸入側領域の側に位置し、前記圧縮機構部を作動させる為の駆動力を発生させる駆動部(21C)と、を有し、
前記高圧側冷媒機器(22、23、25、26)及び前記低圧側冷媒機器(27、28)は、前記圧縮機構部及び前記高圧側冷媒機器の総重量と、前記駆動部及び前記低圧側冷媒機器の総重量が等しくなるように、前記流路形成部材(10)に対して固定されている請求項1に記載のヒートポンプモジュール。
【請求項3】
前記高圧側冷媒機器には、熱媒体と前記高圧冷媒とを熱交換させる熱媒体冷媒熱交換器(22)が含まれており、
前記低圧側冷媒機器には、熱媒体の有する熱を前記低圧冷媒に吸熱させるチラー(27、28)が含まれている請求項1又は2に記載のヒートポンプモジュール。
【請求項4】
前記流路形成部材(10)の平坦面を前記鉛直方向から見た場合に、
前記流路形成部材の前記吐出側領域(Ro)には、前記熱媒体冷媒熱交換器に対して流出入する熱媒体が流れる高温側熱媒体流路(13)と、前記高圧側流路(11)が形成され、
前記流路形成部材の前記吸入側領域(Ri)には、前記チラーに対して流出入する熱媒体が流れる低温側熱媒体流路(14)と、前記低圧側流路(12)が形成されている請求項3に記載のヒートポンプモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒートポンプサイクル装置の構成機器の少なくとも一部を一体化させたヒートポンプモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプサイクル装置の構成機器の少なくとも一部を一体化させたヒートポンプモジュールに関する技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載された技術では、熱交換器、膨張弁、アキュムレータ等の構成機器を流路形成部材に対して一体化させてモジュールを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-047000号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ヒートポンプサイクル装置の更なる小型化や生産性の向上のためには、より多くの構成機器の一体化が望まれる。しかし、多くの構成機器の一体化すると、高圧冷媒の影響を受けた高温側の構成機器と、低圧冷媒の影響を受けた低温側の構成機器が近接配置されるので、熱害によってサイクルの作動効率が低下してしまうおそれがある。
【0005】
更に、多くの構成機器を一体化すると、モジュール自体の重量増加が懸念され、モジュールを車両等に取り付ける際の組付性が低下してしまう。特に、各構成機器の配置によっては、モジュールの重量バランスに偏りが生じて、組付性に影響を及ぼすことが懸念される。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、ヒートポンプサイクルにおける作動効率の低下を抑制すると共に、組付性の低下を抑制したヒートポンプモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るヒートポンプモジュールは、圧縮機(21)と、高圧側冷媒機器(22、23、25、26)と、低圧側冷媒機器(27、28)と、流路形成部材(10)と、を有している。圧縮機は冷媒を圧縮して吐出する。高圧側冷媒機器は、圧縮機から吐出された高圧冷媒が流通する。低圧側冷媒機器は、圧縮機に吸入される低圧冷媒が流通する。流路形成部材は、平板状に形成されており、圧縮機、高圧側冷媒機器及び低圧側冷媒機器が固定される。流路形成部材は、高圧冷媒が流通する高圧側流路(11)と、低圧冷媒が流通する低圧側流路(12)と、を有している。
【0008】
そして、流路形成部材は、流路形成部材の平坦面を鉛直方向から見た場合に、吐出側領域(Ro)と、吸入側領域(Ri)を有している。吐出側領域は、流路形成部材の平坦面を鉛直方向から見た場合に、圧縮機の重心(G)を通る基準線(KL)よりも圧縮機の吐出口が配置される側に位置する。吸入側領域は、流路形成部材の平坦面を鉛直方向から見た場合に、基準線よりも圧縮機の吸入口が配置される側に位置する。更に、高圧側冷媒機器は、流路形成部材における吐出側領域の側に位置し、低圧側冷媒機器は、流路形成部材における吸入側領域の側に位置している。
【0009】
ヒートポンプモジュールでは、高圧冷媒が流れる流路形成部材の吐出側領域に高圧側冷媒機器が配置され、低圧冷媒が流れる流路形成部材の吸入側領域に低圧側冷媒機器が配置される。従って、ヒートポンプモジュールによれば、吐出側領域と高圧側冷媒機器に係る温度帯と、吸入側領域と低圧側冷媒機器に係る温度帯を区分して配置することができる。従って、ヒートポンプモジュール1は、高圧側冷媒機器と低圧側冷媒機器が混在して配置される場合よりも熱の影響を抑制できる。これにより、ヒートポンプモジュールは、熱の影響によるヒートポンプサイクルの作動効率の低下を抑制して、ヒートポンプサイクルの作動効率を維持することができる。
【0010】
又、圧縮機の重心を通る基準線の基準とした一方側の吐出側領域に高圧側冷媒機器が配置され、基準線を基準とした他方側の吸入側領域に低圧側冷媒機器が配置される為、ヒートポンプモジュールとしての重心が、圧縮機の重心から大きく偏ることを抑制できる。ヒートポンプモジュールの重心を圧縮機の重心に近い位置に保つことができるので、ヒートポンプモジュールの組付性の低下を抑制することができる。
【0011】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係るヒートポンプモジュールの外観斜視図である。
図2】ヒートポンプモジュールを含むヒートポンプシステムの構成図である。
図3】ヒートポンプシステムにおける室内空調ユニットの構成図である。
図4】ヒートポンプシステムの制御系を示すブロック図である。
図5】一実施形態に係るヒートポンプモジュールの正面図である。
図6】一実施形態に係るヒートポンプモジュールの上面図である。
図7】一実施形態に係るヒートポンプモジュールの流路形成部材における流路構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示における一実施形態について、図1図7を参照して説明する。本実施形態においては、本開示に係るヒートポンプモジュール1を、電気自動車に搭載されたヒートポンプシステム100に適用している。電気自動車は、走行用の駆動力を電動モータから得る車両である。ヒートポンプシステム100は、ヒートポンプサイクル20と複数の熱媒体回路を有しており、空調対象空間である車室内の空調を行うとともに、車載機器の温度調整を行う。従って、ヒートポンプシステム100は、車載機器冷却機能付きの空調装置、或いは、空調機能付きの車載機器冷却装置と呼ぶことができる。
【0014】
より具体的には、ヒートポンプシステム100は、車載機器として、バッテリの冷却を行う。バッテリは、電気によって作動する複数の車載機器へ供給される電力を蓄える二次電池である。バッテリは、積層配置された複数の電池セルを、電気的に直列或いは並列に接続することによって形成された組電池である。本実施形態の電池セルは、リチウムイオン電池である。
【0015】
バッテリは、作動時(即ち、充放電時)に発熱する。バッテリは、低温になると出力が低下しやすく、高温になると劣化が進行しやすいという特性を有している。この為、バッテリの温度は、適切な温度範囲内(本実施形態では、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されている必要がある。そこで、本実施形態のヒートポンプシステム100では、バッテリの温度が上昇した際に、バッテリの冷却を行う。
【0016】
そこで、ヒートポンプシステム100では、ヒートポンプサイクル20によって生成された冷熱によってバッテリを冷却することができるようになっている。本実施形態のヒートポンプシステム100における冷却対象物は、空気およびバッテリである。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るヒートポンプモジュール1は、平板状に形成された流路形成部材10に対して、ヒートポンプサイクル20を構成する構成機器を複数組み付けて一体化したものである。流路形成部材10には、冷媒流路および熱媒体流路が形成されている。
【0018】
本実施形態において、流路形成部材10に組み付けられているヒートポンプサイクル20の構成機器としては、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、レシーバ23、第1膨張弁25、第2膨張弁26、第1チラー27、第2チラー28を挙げることができる。流路形成部材10に対して圧縮機21を含むヒートポンプサイクル20の構成機器を組み付けることで、ヒートポンプシステム100の構成の一部をモジュール化することができる。
【0019】
ここで、ヒートポンプモジュール1における流路形成部材10に対する各構成機器の配置や流路形成部材10内部に形成された各流路の配置については、後に図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
尚、以下の説明で前後左右上下の方向を用いて説明するときは、ヒートポンプモジュール1の長手方向(即ち、流路形成部材10の長手方向)が左右に伸びる状態を基準として、図1にて矢印で示す状態をもって定義する。各図に適宜示す矢印についても同様の定義を用いている。
【0021】
次に、本実施形態に係るヒートポンプモジュール1を含むヒートポンプシステム100の概略構成について、図面を参照して説明する。尚、図2では、ヒートポンプシステム100のうち、本実施形態のヒートポンプモジュール1によって構成されている部分を破線で囲んで図示している。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係るヒートポンプシステム100は、ヒートポンプサイクル20、高温側熱媒体回路30、第1低温側熱媒体回路40、第2低温側熱媒体回路50を有して構成されている。更に、ヒートポンプシステム100は、ヒートポンプサイクル20で生じた温熱や冷熱によって温度調整された空調風を供給する為の室内空調ユニット60や、ヒートポンプシステム100の各構成を制御する為の制御装置70を有している。
【0023】
先ず、ヒートポンプシステム100におけるヒートポンプサイクル20の構成について説明する。ヒートポンプサイクル20は、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22、レシーバ23、第1膨張弁25、第2膨張弁26、第1チラー27、第2チラー28を備える蒸気圧縮式冷凍機である。
【0024】
本実施形態のヒートポンプサイクル20では、冷媒としてフロン系冷媒を用いており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機21を潤滑するための冷凍機油が混入されている。冷凍機油の一部は、冷媒とともにサイクルを循環している。
【0025】
圧縮機21は、電力によって駆動される電動圧縮機であり、ヒートポンプサイクル20を循環する冷媒を吸入して圧縮して吐出する。圧縮機21は、ヒートポンプサイクル20における気相冷媒を圧縮する圧縮機構部21Bと、圧縮機構部21Bを作動させる為の駆動部21Cとを、略円柱状に形成されたハウジング21Aの内部に収容している。図1に示すように、本実施形態に係る圧縮機21は、ヒートポンプモジュール1の一部を構成しており、平板状の流路形成部材10の下面に対して取り付けられている。
【0026】
圧縮機21の吐出口側は、流路形成部材10に冷媒流路として形成された高圧側流路11及び第1接続部15Aを介して、熱媒体冷媒熱交換器22の冷媒入口側に接続されている。熱媒体冷媒熱交換器22は、圧縮機21から吐出された高圧冷媒を流通させる冷媒通路22Aと、高温側熱媒体回路30を循環する高温側熱媒体を流通させる熱媒体通路22Bと、を有している。
【0027】
熱媒体冷媒熱交換器22は、冷媒通路22Aを流通する高圧冷媒と、熱媒体通路22Bを流通する高温側熱媒体とを熱交換させて凝縮させる凝縮器である。即ち、熱媒体冷媒熱交換器22は、圧縮機21から吐出された高圧冷媒の有する熱を、高温側熱媒体回路30を循環する高温側熱媒体に放熱させ、高温側熱媒体を加熱する。本実施形態に係る熱媒体冷媒熱交換器22は、ヒートポンプモジュール1の一部を構成しており、流路形成部材10の上面に対して取り付けられている。
【0028】
熱媒体冷媒熱交換器22の冷媒出口側には、流路形成部材10に形成された高圧側流路11及び第2接続部15Bを介して、レシーバ23が接続されている。レシーバ23は、熱媒体冷媒熱交換器22の冷媒通路22Aから流出した冷媒の気液を分離して液相冷媒を下流側に流出させると共に、サイクルの余剰冷媒を貯える気液分離部である。本実施形態に係るレシーバ23は、ヒートポンプモジュール1の一部を構成しており、流路形成部材10の下面に取り付けられている。
【0029】
レシーバ23における流出口には、冷媒分岐部24Aが接続されている。冷媒分岐部24Aでは、3つの流入出口の内の1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としている。つまり、冷媒分岐部24Aは、レシーバ23から流出した液相冷媒の流れを分岐する分岐部である。
【0030】
冷媒分岐部24Aの一方の冷媒流出口には、流路形成部材10の高圧側流路11を介して、第1膨張弁25の冷媒入口側が接続されている。そして、冷媒分岐部24Aの他方の冷媒流出口には、流路形成部材10の高圧側流路11を介して、第2膨張弁26の冷媒入口側が接続されている。
【0031】
第1膨張弁25は、冷媒分岐部24Aの一方の流出口から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧部である。第1膨張弁25は、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。弁体は、冷媒の流路の開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。
【0032】
第1膨張弁25は、冷媒の流路を全閉する全閉機能付きの可変絞り機構で構成されている。本実施形態に係る第1膨張弁25は、ヒートポンプモジュール1の一部を構成し、流路形成部材10の上面に対して取り付けられている。第1膨張弁25の作動は、図4に示す制御装置70から出力される制御信号によって制御される。
【0033】
第1膨張弁25の冷媒流出口には、流路形成部材10の低圧側流路12及び第3接続部15Cを介して、第1チラー27の冷媒入口側が接続されている。第1チラー27は、第1膨張弁25にて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路27Aと、第1低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体を流通させる熱媒体通路27Bとを有している。第1チラー27は、冷媒通路27Aを流通する低圧冷媒と、熱媒体通路27Bを流通する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器である。
【0034】
第1チラー27における冷媒通路27Aの流出口側には、流路形成部材10の低圧側流路12及び第4接続部15Dを介して、冷媒合流部24Bが接続されている。冷媒合流部24Bでは、3つの流入出口の内の2つを冷媒流入口とし、残りの1つを冷媒流出口としている。つまり、冷媒合流部24Bは、冷媒分岐部24Aで分岐した冷媒の流れを合流させる合流部である。
【0035】
図2に示すように、冷媒分岐部24Aにおける他方の冷媒出口には、第2膨張弁26が接続されている。第2膨張弁26は、レシーバ23の他方の流出口から流出した液相冷媒を減圧膨張させる減圧部である。第2膨張弁26は、第1膨張弁25と同様に、冷媒の流路の開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。
【0036】
又、第2膨張弁26は、冷媒の流路を全閉する全閉機能付きの可変絞り機構で構成されている。本実施形態に係る第2膨張弁26は、ヒートポンプモジュール1の一部を構成している。第2膨張弁26は、流路形成部材10の上面に対して取り付けられており、ヒートポンプモジュール1において第1膨張弁25に隣接するように配置されている。第2膨張弁26は、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0037】
第2膨張弁26の冷媒流出口には、流路形成部材10の低圧側流路12及び第5接続部15Eを介して、第2チラー28の冷媒入口側が接続されている。第2チラー28は、第2膨張弁26にて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路28Aと、第2低温側熱媒体回路50を循環する低温側熱媒体を流通させる熱媒体通路28Bとを有している。第2チラー28は、冷媒通路28Aを流通する低圧冷媒と、熱媒体通路28Bを流通する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器である。
【0038】
第2チラー28における冷媒通路28Aの出口側には、流路形成部材10の低圧側流路12及び第6接続部15Fを介して、冷媒合流部24Bが接続されている。従って、冷媒合流部24Bは、第1チラー27から流出した冷媒の流れと、第2チラー28から流出した冷媒の流れを合流させる。そして、冷媒合流部24Bの流出口には、流路形成部材10の低圧側流路12を介して、圧縮機21の吸入口側が接続されている。
【0039】
尚、本実施形態のヒートポンプサイクル20では、圧縮機21によって、冷媒が圧縮されて昇圧し、第1膨張弁25又は第2膨張弁26で減圧された後に、圧縮機21に吸入される。この為、圧縮機21の吐出口から第1膨張弁25又は第2膨張弁26の流入口までの冷媒流路を、高圧側流路と呼ぶことができる。又、第1膨張弁25又は第2膨張弁26の流出口から圧縮機21の吸入口までの冷媒流路を、低圧側流路と呼ぶことができる。
【0040】
次に、ヒートポンプシステム100の高温側熱媒体回路30について説明する。高温側熱媒体回路30は、高温側熱媒体を循環させる回路である。高温側熱媒体回路30では、高温側熱媒体として、エチレングリコール水溶液を採用している。高温側熱媒体回路30には、熱媒体冷媒熱交換器22の熱媒体通路22B、高温側ポンプ31、ヒータコア32が配置されている。
【0041】
尚、高温側熱媒体は、熱媒体冷媒熱交換器22で加熱した熱を伝達可能な流体であればよく、種々の態様を採用することができる。例えば、高温側熱媒体として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体を採用することができる。
【0042】
高温側ポンプ31は、高温側熱媒体を吸入して圧送する高温側熱媒体回路30における熱媒体圧送部である。高温側ポンプ31の吐出口側は、流路形成部材10の高温側熱媒体流路13及び第7接続部15Gを介して、熱媒体冷媒熱交換器22における熱媒体通路22Bの入口側に接続されている。従って、高温側ポンプ31は、高温側熱媒体を熱媒体冷媒熱交換器22の熱媒体通路22Bの入口側へ圧送する。高温側ポンプ31は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動水ポンプである。
【0043】
熱媒体冷媒熱交換器22における熱媒体通路22Bの出口側には、流路形成部材10の高温側熱媒体流路13及び第8接続部15Hを介して、ヒータコア32の熱媒体入口側が接続されている。ヒータコア32は、後述するように、室内空調ユニット60のケーシング61内に配置されており、熱媒体冷媒熱交換器22にて加熱された高温側熱媒体と送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換部である。ヒータコア32では、高温側熱媒体の有する熱を送風空気に放熱させて、送風空気を加熱する。ヒータコア32の熱媒体出口には、高温側ポンプ31の吸入口側が接続されている。
【0044】
従って、本実施形態に係るヒートポンプシステム100では、熱媒体冷媒熱交換器22及び高温側熱媒体回路30の各構成機器によって、圧縮機21から吐出された高圧冷媒を熱源として送風空気を加熱し、空調風を加熱することができる。
【0045】
続いて、ヒートポンプシステム100を構成する第1低温側熱媒体回路40について説明する。第1低温側熱媒体回路40は、低温側熱媒体を循環させる回路である。第1低温側熱媒体回路40では、低温側熱媒体として、高温側熱媒体と同種の流体が採用されている。第1低温側熱媒体回路40には、第1チラー27の熱媒体通路27B、第1低温側ポンプ41、バッテリ用熱交換部42が配置されている。
【0046】
第1低温側ポンプ41は、第1低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体を吸入して圧送する熱媒体圧送部である。第1低温側ポンプ41の吐出口側は、流路形成部材10の低温側熱媒体流路14及び第9接続部15Iを介して、第1チラー27における熱媒体通路27Bの入口側に接続されている。従って、第1低温側ポンプ41は、低温側熱媒体を第1チラー27における熱媒体通路27Bの入口側へ圧送する。第1低温側ポンプ41は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動水ポンプである。
【0047】
第1チラー27における熱媒体通路27Bの出口側には、流路形成部材10の低温側熱媒体流路14及び第10接続部15Jを介して、バッテリ用熱交換部42における熱媒体入口側が接続されている。バッテリ用熱交換部42は、バッテリを構成する複数の電池セルと低温側熱媒体とを熱交換させる熱交換部である。バッテリ用熱交換部42は、複数の電池セルを収容するバッテリケース内に低温側熱媒体が流通する流路を形成して構成されている。更に、バッテリ用熱交換部42の熱媒体出口には、第1低温側ポンプ41の吸入口側が接続されている。
【0048】
従って、本実施形態に係るヒートポンプシステム100では、第1チラー27及び第1低温側熱媒体回路40の各構成機器によって、バッテリの温度を調整する温度調整機能を実現することができる。
【0049】
次に、ヒートポンプシステム100を構成する第2低温側熱媒体回路50について説明する。第2低温側熱媒体回路50は、低温側熱媒体を循環させる回路である。第2低温側熱媒体回路50では、低温側熱媒体として、高温側熱媒体と同種の流体を採用することができる。第2低温側熱媒体回路50には、第2チラー28の熱媒体通路28B、第2低温側ポンプ51、クーラコア52が配置されている。
【0050】
第2低温側ポンプ51は、第2低温側熱媒体回路50を循環する低温側熱媒体を吸入して圧送する熱媒体圧送部である。第2低温側ポンプ51の吐出口側は、流路形成部材10の低温側熱媒体流路14及び第11接続部15Kを介して、第2チラー28における熱媒体通路28Bの入口側に接続されている。従って、第2低温側ポンプ51は、低温側熱媒体を第2チラー28における熱媒体通路28Bの入口側へ圧送する。第2低温側ポンプ51は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、圧送能力)が制御される電動水ポンプである。
【0051】
第2チラー28における熱媒体通路28Bの出口側には、流路形成部材10の低温側熱媒体流路14及び第12接続部15Lを介して、クーラコア52における熱媒体入口側が接続されている。クーラコア52は、第2低温側熱媒体回路50を循環する低温側熱媒体と、空調対象空間である車室内に供給される送風空気とを熱交換させ、送風空気を冷却する冷却用熱交換部である。クーラコア52は、後述する室内空調ユニット60の内部に配置されており、車室内に送風される送風空気から低温側熱媒体に吸熱させる。従って、クーラコア52は、送風空気を冷却対象とする冷却部の一例に相当する。クーラコア52の熱媒体出口側には、第2低温側ポンプ51の吸入口側が接続されている。
【0052】
従って、本実施形態に係るヒートポンプシステム100では、第2チラー28及び第2低温側熱媒体回路50の各構成機器によって、第2膨張弁26で減圧された低圧冷媒を冷熱源として送風空気を冷却することができる。
【0053】
次に、ヒートポンプシステム100の室内空調ユニット60について、図3を参照して説明する。室内空調ユニット60は、電気自動車における車室内の空調のために適切な温度に調整された送風空気を、車室内の適切な箇所へ吹き出すために、複数の構成機器を一体化したユニットである。室内空調ユニット60は、電気自動車の車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
【0054】
室内空調ユニット60は、送風空気の空気通路を形成するケーシング61内に、室内送風機62、クーラコア52、ヒータコア32等を収容することによって形成されている。ケーシング61は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0055】
ケーシング61における送風空気流れの最上流側には、内外気切替装置63が配置されている。内外気切替装置63は、ケーシング61内へ内気(即ち、車室内空気)と外気(即ち、車室外空気)とを切替導入する。内外気切替装置63は、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0056】
内外気切替装置63における送風空気流れの下流側には、室内送風機62が配置されている。室内送風機62は、内外気切替装置63を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。室内送風機62は、制御装置70から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
【0057】
室内送風機62の送風空気流れ下流側には、クーラコア52及びヒータコア32が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、クーラコア52は、ヒータコア32よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。ケーシング61内には、クーラコア52通過後の送風空気を、ヒータコア32を迂回させて流す冷風バイパス通路65が形成されている。
【0058】
ケーシング61内のクーラコア52の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア32および冷風バイパス通路65の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア64が配置されている。エアミックスドア64は、クーラコア52通過後の送風空気のうち、ヒータコア32側を通過させる送風空気の風量と冷風バイパス通路65を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整する。エアミックスドア64の駆動部は、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0059】
ヒータコア32及び冷風バイパス通路65の送風空気流れ下流側には、混合空間が配置されている。混合空間は、ヒータコア32にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路65を通過して加熱されていない送風空気とを混合させる空間である。従って、室内空調ユニット60では、エアミックスドア64の開度調整によって、混合空間にて混合された送風空気(即ち、空調風)の温度を調整することができる。
【0060】
ケーシング61の送風空気流れ最下流部には、空調風を車室内の様々な箇所へ向けて吹き出すための複数の開口穴が形成されている。複数の開口穴には、それぞれの開口穴を開閉する吹出モードドアが配置されている。吹出モードドアの駆動部は、制御装置70から出力される制御信号によって、その作動が制御される。従って、室内空調ユニット60では、吹出モードドアが開閉する開口穴を切り替えることによって、車室内の適切な箇所へ適切な温度に調整された空調風を吹き出すことができる。
【0061】
このように構成されたヒートポンプシステム100によれば、ヒートポンプサイクル20、高温側熱媒体回路30、第1低温側熱媒体回路40、第2低温側熱媒体回路50の作動を制御することで、車室内の空調と車載機器の温度調整を適切に行うことができる。
【0062】
次に、ヒートポンプシステム100の電気制御部の概要について、図4を用いて説明する。制御装置70は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置70は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。制御装置70は制御部の一例に相当する。
【0063】
各種制御対象機器には、圧縮機21、第1膨張弁25、第2膨張弁26、高温側ポンプ31、第1低温側ポンプ41、第2低温側ポンプ51、室内送風機62、内外気切替装置63、エアミックスドア64等が含まれている。この内、圧縮機21、第1膨張弁25、第2膨張弁26は、ヒートポンプモジュール1の構成機器である為、制御装置70からの制御指令は、ヒートポンプモジュール1に伝達される。
【0064】
そして、制御装置70の入力側には、図4に示すように、各種の制御用センサが接続されている。制御用センサとしては、内気温センサ72A、外気温センサ72B、日射センサ72C、空調風温度センサ72Dが接続されている。又、制御用センサとして、第1冷媒温度センサ73A、第2冷媒温度センサ73B、第3冷媒温度センサ73C、第1熱媒体温度センサ74A、第2熱媒体温度センサ74B、第3熱媒体温度センサ74Cが接続されている。
【0065】
そして、内気温センサ72Aは、車室内の温度である内気温Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ72Bは、車室外の温度である外気温Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ72Cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。空調風温度センサ72Dは、混合空間から車室内へ吹き出される吹出空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
【0066】
第1冷媒温度センサ73Aは、圧縮機21から吐出された高圧冷媒の温度を検出する冷媒温度検出部である。第1冷媒温度センサ73Aは、例えば、熱媒体冷媒熱交換器22の冷媒通路22Aにおける入口側に配置されている。
【0067】
第2冷媒温度センサ73Bは、第1チラー27から流出した低圧冷媒の温度を検出する冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ73Bは、例えば、第1チラー27の冷媒通路27Aにおける出口側に配置されている。
【0068】
第3冷媒温度センサ73Cは、第2チラー28から流出した低圧冷媒の温度を検出する冷媒温度検出部である。第3冷媒温度センサ73Cは、例えば、第2チラー28の冷媒通路28Aにおける出口側に配置されている。
【0069】
そして、第1冷媒温度センサ73A~第3冷媒温度センサ73Cは、ヒートポンプモジュール1に組み付けられており、各センサによる検出結果がヒートポンプモジュール1から制御装置70に対して出力される。
【0070】
尚、制御用センサの内、ヒートポンプモジュール1に組み付けられるセンサは、第1冷媒温度センサ73A~第3冷媒温度センサ73Cに限定されるものではない。ヒートポンプモジュール1に組み付けられる制御用センサとして、ヒートポンプサイクル20を循環する冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサを配置しても良い。この場合、ヒートポンプモジュール1に対して複数の冷媒圧力センサを組み付ける構成を採用しても良い。
【0071】
第1熱媒体温度センサ74Aは、高温側熱媒体回路30を循環する高温側熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出部である。第1熱媒体温度センサ74Aは、例えば、熱媒体冷媒熱交換器22における熱媒体通路22Bの出口側に配置されている。
【0072】
第2熱媒体温度センサ74Bは、第1低温側熱媒体回路40を循環する低温側熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出部である。第2熱媒体温度センサ74Bは、例えば、第1チラー27における熱媒体通路27Bの出口側に配置されている。
【0073】
第3熱媒体温度センサ74Cは、第2低温側熱媒体回路50を循環する低温側熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出部である。第3熱媒体温度センサ74Cは、例えば、第2チラー28における熱媒体通路28Bの出口側に配置されている。
【0074】
尚、ヒートポンプモジュール1の流路形成部材10には、高温側熱媒体回路30、第1低温側熱媒体回路40、第2低温側熱媒体回路50を構成する熱媒体流路の一部が形成されている。従って、第1熱媒体温度センサ74A~第3熱媒体温度センサ74Cを、ヒートポンプモジュール1を構成する制御用センサに採用して、ヒートポンプモジュール1として一体化した構成にすることもできる。
【0075】
そして、制御装置70の入力側には、電気自動車における車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル71が接続されている。制御装置70には、この操作パネル71に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0076】
操作パネル71に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、オートスイッチ、エアコンスイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ等がある。オートスイッチは、ヒートポンプサイクル20の自動制御運転を設定あるいは解除する操作スイッチである。
【0077】
エアコンスイッチは、クーラコア52で送風空気の冷却を行うことを要求する操作スイッチである。風量設定スイッチは、室内送風機62の風量をマニュアル設定する際に操作される操作スイッチである。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する操作スイッチである。
【0078】
そして、本実施形態の制御装置70は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものである。従って、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(即ち、ハードウェア及びソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
【0079】
例えば、制御装置70のうち、ヒートポンプサイクル20における圧縮機21の冷媒吐出能力(例えば、回転数)を制御する構成は、圧縮機制御部に相当する。又、制御装置70のうち、ヒートポンプサイクル20の第1膨張弁25、第2膨張弁26における減圧量(即ち、絞り開度)を制御する構成は、減圧制御部に相当する。
【0080】
続いて、本実施形態に係るヒートポンプモジュール1の具体的構成について、図5図7を参照して説明する。上述したように、ヒートポンプモジュール1は、圧縮機21の上方に平板状の流路形成部材10を取り付けると共に、流路形成部材10に対して、ヒートポンプサイクル20における複数の構成機器を取り付けて構成される。
【0081】
先ず、ヒートポンプモジュール1を構成する圧縮機21の構成について説明する。図5に示すように、圧縮機21は、ハウジング21A、圧縮機構部21B、駆動部21C、吐出口部21D、吐出用流路21E、吸入口部21F、吸入用流路21Gを有している。
【0082】
圧縮機21は、略円柱状に形成されたハウジング21Aの内部に、ヒートポンプサイクル20における気相冷媒を圧縮する圧縮機構部21Bと、圧縮機構部21Bを作動させる為の駆動部21Cとを収容している。
【0083】
圧縮機構部21Bとしては、例えば、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を採用することができる。圧縮機構部21Bの具体的な機構としては、冷媒を吸入して圧縮して吐出することが可能な機構であれば、種々の圧縮機構を採用することができる。
【0084】
駆動部21Cは、例えば、電動モータにより構成されており、圧縮機構部21Bを作動させる為の駆動力を発生させる。駆動部21Cは、略円柱状のハウジング21Aの長手方向において、圧縮機構部21Bと並んで配置されている。図5に示すように、圧縮機構部21Bは、圧縮機21のハウジング21Aにおける左側部分に配置されており、駆動部21Cは、圧縮機構部21Bの右側に隣接するように配置されている。
【0085】
そして、圧縮機21には、吐出口部21D、吐出用流路21E、吸入口部21F、吸入用流路21Gが形成されている。吐出口部21Dは、圧縮機構部21Bで圧縮された高圧冷媒が吐出される吐出口及び吐出口から吐出される冷媒に関する吐出チャンバーを有して構成される。吐出口部21Dは、例えば、ハウジング21Aの内部において、圧縮機構部21Bの左側に配置されている。
【0086】
吐出用流路21Eは、吐出口部21Dを介して吐出された高圧冷媒を圧縮機21の外部へ導く冷媒流路であり、ハウジング21Aに形成されている。吐出用流路21Eの端部は、流路形成部材10に形成された高圧側流路11に接続されている。従って、吐出用流路21Eは、流路形成部材10の高圧側流路11及び第1接続部15Aを介して、熱媒体冷媒熱交換器22の冷媒通路22Aにおける入口側に接続されている。
【0087】
吸入口部21Fは、圧縮機構部21Bにおける圧縮の対象である低圧冷媒が吸入される吸入口と、吸入口へ導かれる低圧冷媒に関する吸入チャンバーを有して構成される。吸入口部21Fは、例えば、ハウジング21Aの内部において、駆動部21Cの右側に配置されている。
【0088】
吸入用流路21Gは、流路形成部材10の低圧側流路12を流通した低圧冷媒を、圧縮機21内部の吸入口部21Fへ導く冷媒流路であり、ハウジング21Aに形成されている。吸入用流路21Gの端部は、流路形成部材10の低圧側流路12、第4接続部15D及び第6接続部15Fを介して、第1チラー27の冷媒通路27Aにおける出口側、第2チラー28の冷媒通路28Aにおける出口側に接続されている。
【0089】
図5図6に示すように、ヒートポンプモジュール1の各構成機器は、圧縮機21の重心(以下、圧縮機重心G)の位置を基準として、ヒートポンプモジュール1の重心が大きく偏らないように配置されている。
【0090】
そして、ヒートポンプモジュール1の各構成機器が取り付けられる流路形成部材10には、吐出側領域Roと、吸入側領域Riが定められている。流路形成部材10における吐出側領域Roと吸入側領域Riは、ヒートポンプモジュール1を構成する圧縮機21と流路形成部材10との相対的な位置関係によって定められる。
【0091】
具体的には、流路形成部材10における吐出側領域Roと吸入側領域Riは、流路形成部材10の上面を構成する平坦面の側から見た場合に、圧縮機重心Gに基づいて定められる基準線KLを介して左右方向に隣接するように配置される。
【0092】
基準線KLは、ヒートポンプモジュール1における流路形成部材10の平坦面に対して鉛直方向から見た場合に、圧縮機21の重心位置である圧縮機重心Gを通るように定められる。本実施形態における基準線KLは、圧縮機重心Gを通って前後方向に伸びる直線状に定められている。
【0093】
尚、基準線KLにより区分される吐出側領域Ro、吸入側領域Riは、流路形成部材10の平坦面と同一平面に関わらず、上下方向にも広がりを有する。従って、ヒートポンプモジュール1は、圧縮機重心Gを通る基準線KLを含み、且つ、上下方向に伸びる基準面によって、吐出側領域Ro、吸入側領域Riに区分される。
【0094】
流路形成部材10の吐出側領域Roは、流路形成部材10における基準線KLに対して一方側(図中、左側)に位置する。後述するように、流路形成部材10の吐出側領域Roには、ヒートポンプサイクル20における高圧冷媒が流通する高圧側流路11が配置されている。高圧側流路11は、圧縮機21の吐出口部21D側に接続されている為、流路形成部材10の吐出側領域Roは、流路形成部材10において、圧縮機21の吐出口部21D側に位置する部分ということができ、冷媒の圧縮及び高圧冷媒の流通に伴って高温を示す。
【0095】
そして、流路形成部材10の吸入側領域Riは、流路形成部材10における基準線KLに対して他方側(図中、右側)に位置する。流路形成部材10の吸入側領域Riには、ヒートポンプサイクル20における低圧冷媒が流通する低圧側流路12が配置されている。低圧側流路12は、圧縮機21の吸入口部21F側に接続されている為、流路形成部材10の吸入側領域Riは、流路形成部材10において、圧縮機21の吸入口側に位置する部分ということができ、低圧冷媒の流通に伴って吐出側領域Roよりも低温を示す。
【0096】
図5図6に示すように、ヒートポンプモジュール1における流路形成部材10の吐出側領域Ro側には、構成機器として、熱媒体冷媒熱交換器22、レシーバ23、第1膨張弁25、第2膨張弁26が取り付けられている。熱媒体冷媒熱交換器22、レシーバ23、第1膨張弁25、第2膨張弁26は、ヒートポンプサイクル20の構成機器の内、ヒートポンプサイクル20における高圧冷媒が流入する構成機器である。従って、熱媒体冷媒熱交換器22、レシーバ23、第1膨張弁25、第2膨張弁26は、高圧側冷媒機器の一例に相当する。
【0097】
熱媒体冷媒熱交換器22は、上述したように、ヒートポンプサイクル20における凝縮器として機能する熱交換器である。図5図6に示すように、熱媒体冷媒熱交換器22は、流路形成部材10の上面において、最も左側となる位置に取り付けられており、吐出側領域Ro内に配置されている。
【0098】
そして、熱媒体冷媒熱交換器22は、冷媒通路22A、熱媒体通路22Bを有している。熱媒体冷媒熱交換器22の冷媒通路22Aは、流路形成部材10の第1接続部15A及び第2接続部15Bをそれぞれ介して、流路形成部材10に形成された高圧側流路11に接続されている。
【0099】
熱媒体冷媒熱交換器22の熱媒体通路22Bにおける入口側は、流路形成部材10に形成された高温側熱媒体流路13及び第7接続部15Gを介して、高温側ポンプ31の吐出口側に接続されている。又、熱媒体冷媒熱交換器22の熱媒体通路22Bにおける出口側は、流路形成部材10に形成された高温側熱媒体流路13及び第8接続部15Hを介して、ヒータコア32の熱媒体入口側に接続されている。
【0100】
レシーバ23は、熱媒体冷媒熱交換器22から流出した冷媒の気液を分離して液相冷媒を下流側に流出させると共に、サイクルの余剰冷媒を貯える気液分離部である。図5図6に示すように、レシーバ23は、流路形成部材10の下面において、最も左側となる位置(即ち、圧縮機21の左側)に取り付けられており、吐出側領域Ro内に配置されている。
【0101】
第1膨張弁25は、冷媒分岐部24Aの一方の冷媒流出口から流出した高圧冷媒を減圧する減圧部である。第1膨張弁25は高圧冷媒が流入する為、本実施形態における高圧側冷媒機器の一例に相当する。第1膨張弁25は、流路形成部材10の上面において、熱媒体冷媒熱交換器22の右隣りに配置されており、前後方向における後側よりに位置している。
【0102】
図6に示すように、第1膨張弁25は、流路形成部材10における吐出側領域Ro内において基準線KLに近い位置に配置されている。第1膨張弁25の流入口側は、流路形成部材10に形成された高圧側流路11を介して、レシーバ23における流出口側に接続されている。又、第1膨張弁25の流出口側は、流路形成部材10の低圧側流路12及び第3接続部15Cを介して、第1チラー27の冷媒通路27Aにおける入口側に接続されている。
【0103】
第2膨張弁26は、冷媒分岐部24Aの他方の冷媒流出口から流出した高圧冷媒を減圧する減圧部である。第2膨張弁26は高圧冷媒が流入する為、本実施形態における高圧側冷媒機器の一例に相当する。第2膨張弁26は、流路形成部材10の上面において、熱媒体冷媒熱交換器22の右隣りに配置されており、第1膨張弁25の前方に隣接している。
【0104】
図6に示すように、第2膨張弁26は、流路形成部材10における吐出側領域Ro内において、基準線KLに近い位置で第1膨張弁25と前後に並んで配置されている。第2膨張弁26の流入口側は、流路形成部材10に形成された高圧側流路11を介して、レシーバ23における流出口側に接続されている。又、第2膨張弁26の流出口側は、流路形成部材10の低圧側流路12及び第5接続部15Eを介して、第2チラー28の冷媒通路28Aにおける入口側に接続されている。
【0105】
一方、ヒートポンプモジュール1における流路形成部材10の吸入側領域Ri側には、構成機器として、第1チラー27、第2チラー28が取り付けられている。第1チラー27、第2チラー28は、ヒートポンプサイクル20の構成機器の内、ヒートポンプサイクル20における低圧冷媒が流通する構成機器である。従って、第1チラー27、第2チラー28は、低圧側冷媒機器の一例に相当する。
【0106】
第1チラー27は、上述したように、ヒートポンプサイクル20における蒸発器として機能する熱交換器である。図5図6に示すように、第1チラー27は、流路形成部材10の上面において、最も右側となる位置に取り付けられており、吸入側領域Ri内に配置されている。
【0107】
そして、第1チラー27は、冷媒通路27A、熱媒体通路27Bを有している。第1チラー27の冷媒通路27Aにおける入口側は、流路形成部材10の第3接続部15Cを介して、流路形成部材10に形成された低圧側流路12に接続されている。そして、第1チラー27の冷媒通路27Aにおける出口側は、流路形成部材10に形成された低圧側流路12及び第4接続部15Dを介して、圧縮機21の吸入口部21F側に接続されている。
【0108】
又、第1チラー27の熱媒体通路27Bにおける入口側は、流路形成部材10に形成された低温側熱媒体流路14及び第9接続部15Iを介して、第1低温側ポンプ41の吐出口側に接続されている。そして、第1チラー27の熱媒体通路27Bにおける出口側は、流路形成部材10に形成された低温側熱媒体流路14及び第10接続部15Jを介して、バッテリ用熱交換部42における熱媒体入口側に接続されている。
【0109】
第2チラー28は、第1チラー27と同様に、ヒートポンプサイクル20における蒸発器として機能する熱交換器である。図5図6に示すように、第2チラー28は、流路形成部材10の上面において、第1チラー27の左側に隣接するように取り付けられ、吸入側領域Ri内に配置されている。
【0110】
そして、第2チラー28は、冷媒通路28A、熱媒体通路28Bを有している。第2チラー28の冷媒通路28Aにおける入口側は、流路形成部材10の第5接続部15Eを介して、流路形成部材10に形成された低圧側流路12に接続されている。そして、第2チラー28の冷媒通路28Aにおける出口側は、流路形成部材10に形成された低圧側流路12及び第6接続部15Fを介して、圧縮機21の吸入口部21F側に接続されている。
【0111】
又、第2チラー28の熱媒体通路28Bにおける入口側は、流路形成部材10に形成された低温側熱媒体流路14及び第11接続部15Kを介して、第2低温側ポンプ51の吐出口側に接続されている。そして、第2チラー28の熱媒体通路28Bにおける出口側は、流路形成部材10に形成された低温側熱媒体流路14及び第12接続部15Lを介して、クーラコア52における熱媒体入口側に接続されている。
【0112】
そして、図5に示すように、吐出側領域Ro側に圧縮機21の圧縮機構部21Bが位置し、吸入側領域Ri側に圧縮機21の駆動部21Cが位置するように、圧縮機21と流路形成部材10の相対的な位置関係が定められている。
【0113】
具体的に、高圧側冷媒機器と低圧側冷媒機器の配置は、吐出側領域Ro側に取り付けられた圧縮機構部21B及び高圧側冷媒機器の総重量と、吸入側領域Ri側に取り付けられた駆動部21C及び低圧側冷媒機器の総重量が等しくなるように定められている。
【0114】
以下、吐出側領域Ro側に取り付けられた圧縮機構部21B及び高圧側冷媒機器の総重量を、吐出側総重量といい、吸入側領域Ri側に取り付けられた駆動部21C及び低圧側冷媒機器の総重量を、吸入側総重量という。
【0115】
本実施形態に係るヒートポンプモジュール1では、吐出側総重量は、圧縮機21の圧縮機構部21Bの重量と、熱媒体冷媒熱交換器22、レシーバ23、第1膨張弁25、第2膨張弁26の重量を合算することにより求められる。そして、吸入側総重量は、圧縮機21の駆動部21Cの重量と、第1チラー27、第2チラー28の重量を合算することにより求められる。
【0116】
ヒートポンプモジュール1においては、上述のように、吐出側総重量と吸入側総重量が等しくなるように、吐出側領域Roに対して高圧側冷媒機器が配置され、吸入側領域Riに対して低圧側冷媒機器が配置されている。このようなヒートポンプモジュール1の構成機器の配置とすることで、吐出側領域Ro側と吸入側領域Ri領域側の重量バランスを取ることができる。
【0117】
即ち、ヒートポンプモジュール1としての重心が圧縮機21の重心位置(即ち、圧縮機重心G)から吐出側及び吸入側の何れか一方に大きく偏移させることなく、ヒートポンプモジュール1を構成することができる。この為、ヒートポンプモジュール1は、他の装置(本実施形態では電気自動車)に対する取付性の低下を抑制することができる。
【0118】
尚、上述したように、高圧側冷媒機器と低圧側冷媒機器の配置は、吐出側総重量と吸入側総重量が等しくなるように定められるが、吐出側総重量と吸入側総重量が全く同じ値を示す態様に限定されるものではない。例えば、所定値以下であれば、吐出側総重量と吸入側総重量の間に差が生じていても良い。この場合の所定値は、ヒートポンプモジュール1としての総重量に対する割合(例えば、3%)を用いて定めることができる。
【0119】
そして、本実施形態に係るヒートポンプモジュール1においては、流路形成部材10の吐出側領域Ro側に、熱媒体冷媒熱交換器22、レシーバ23、第1膨張弁25、第2膨張弁26といった高圧側冷媒機器が配置されている。これらの高圧側冷媒機器は、何れも、高温を示す高圧冷媒が流入する構成機器である為、各高圧側冷媒機器に係る温度帯も比較的高い状態となる。
【0120】
この為、流路形成部材10の吐出側領域Ro側に、ヒートポンプサイクル20における高圧側冷媒機器を集約して配置することで、高圧側冷媒機器の温度帯を近づけることができる。これにより、ヒートポンプモジュール1によれば、流路形成部材10の吐出側領域Roに高圧側冷媒機器を集約することで、高圧側冷媒機器の間における熱害を抑制することができる。
【0121】
又、ヒートポンプモジュール1では、流路形成部材10の吸入側領域Ri側に、第1チラー27、第2チラー28といった低圧側冷媒機器が配置されている。これらの低圧側冷媒機器は、低温を示す低圧冷媒が流通する構成機器である為、各構成機器の温度帯も比較的低い状態となる。
【0122】
この為、流路形成部材10の吸入側領域Ri側に、ヒートポンプサイクル20における低圧側冷媒機器を集約して配置することで、低圧側冷媒機器の温度帯を近づけることができる。これにより、ヒートポンプモジュール1によれば、流路形成部材10の吸入側領域Ri側に低圧側冷媒機器を集約して配置することで、低圧側冷媒機器の間における熱害を抑制することができる。
【0123】
更に、流路形成部材10の上面において、高圧側冷媒機器である熱媒体冷媒熱交換器22と、低圧側冷媒機器である第1チラー27及び第2チラー28の間には、第1膨張弁25及び第2膨張弁26が配置されている。
【0124】
第1膨張弁25及び第2膨張弁26は、何れも冷媒分岐部24Aから流出した高圧冷媒が流入する機器であると同時に、減圧された低圧冷媒を流出する機器である。従って、第1膨張弁及び第2膨張弁26は、高圧側冷媒機器の内で、熱媒体冷媒熱交換器22やレシーバ23よりも、低圧側冷媒機器に近い温度帯を示すと考えられる。
【0125】
図5に示すように、熱媒体冷媒熱交換器22と、第1チラー27及び第2チラー28の間に、第1膨張弁25及び第2膨張弁26が配置することで、熱媒体冷媒熱交換器22と、第1チラー27及び第2チラー28の間で生じる熱害を抑制することができる。
【0126】
続いて、ヒートポンプモジュール1における流路形成部材10の具体的構成について、図7を参照して説明する。上述したように、流路形成部材10は、平板状に形成されており、ヒートポンプサイクル20における冷媒流路と、高温側熱媒体回路30、第1低温側熱媒体回路40、第2低温側熱媒体回路50における熱媒体流路の一部を有している。
【0127】
図7に示すように、流路形成部材10の吐出側領域Roには、高圧側流路11と高温側熱媒体流路13が形成されている。具体的には、流路形成部材10の吐出側領域Roには、高圧側流路11として、第1接続部15Aから伸びる高圧側流路11、第2接続部15Bから伸びる高圧側流路11が形成されている。又、流路形成部材10の吐出側領域Roには、高温側熱媒体流路13として、第7接続部15Gから伸びる高温側熱媒体流路13、第8接続部15Hから伸びる高温側熱媒体流路13が形成されている。
【0128】
尚、本実施形態に係るヒートポンプサイクル20では、熱媒体冷媒熱交換器22において、冷媒通路22Aを流れる高圧冷媒の有する熱が、熱媒体通路22Bを流れる高温側熱媒体に対して放熱される。従って、高圧冷媒が示す温度は、高温側熱媒体が示す温度よりも高い状態にある。
【0129】
第1接続部15Aから伸びる高圧側流路11は、流路形成部材10の吐出側領域Roに形成されており、流路形成部材10の左端における前側に配置されている。第7接続部15Gから伸びる高温側熱媒体流路13は、流路形成部材10の吐出側領域Roに形成されており、流路形成部材10の左端端部に沿って後方側から前方に向かって伸びる直線状に配置されている。
【0130】
又、流路形成部材10の吐出側領域Roにおいて、第1接続部15Aから伸びる高圧側流路11の右側には、第8接続部15Hから伸びる高温側熱媒体流路13が形成されている。第8接続部15Hから伸びる高温側熱媒体流路13は、第1接続部15Aから伸びる高圧側流路11及び第7接続部15Gから伸びる高温側熱媒体流路13の右側において、前方から後方に向かって伸びている。
【0131】
そして、流路形成部材10の吐出側領域Roにおいて、第2接続部15Bは、第7接続部15Gの右側であって、第8接続部15Hから伸びる高温側熱媒体流路13の後方に形成されている。第2接続部15Bから伸びる高圧側流路11は、第8接続部15Hに係る高温側熱媒体流路13の後方にて基準線KLに向かって伸び、第8接続部15Hに係る高温側熱媒体流路13と基準線KLの間を前方に向かって伸びるように形成されている。
【0132】
このように、流路形成部材10における吐出側領域Roには、ヒートポンプモジュール1における高圧側流路11及び高温側熱媒体流路13の一部が集約して配置されている。本実施形態に係るヒートポンプモジュール1では、流路形成部材10の吐出側領域Roに形成された高圧側流路11及び高温側熱媒体流路13の一部は、同じ温度帯に属すると考えられる為、吐出側領域Roに形成された流体流路の間に生じる熱害を抑制できる。
【0133】
図7に示すように、流路形成部材10の吸入側領域Riには、低圧側流路12と低温側熱媒体流路14が形成されている。具体的には、流路形成部材10の吸入側領域Riには、低圧側流路12として、第3接続部15Cから伸びる低圧側流路12、第4接続部15Dから伸びる低圧側流路12が形成されている。更に、吸入側領域Riには、第5接続部15Eから伸びる低圧側流路12、第6接続部15Fから伸びる低圧側流路12が形成されている。
【0134】
又、流路形成部材10の吸入側領域Riには、低温側熱媒体流路14として、第9接続部15Iから伸びる低温側熱媒体流路14、第10接続部15Jから伸びる低温側熱媒体流路14が形成されている。更に、吸入側領域Riには、第11接続部15Kから伸びる低温側熱媒体流路14、第12接続部15Lから伸びる低温側熱媒体流路14が形成されている。
【0135】
第5接続部15Eは、流路形成部材10の吸入側領域Riにおいて、基準線KL側(即ち、左側)の前方部分に形成されている。第5接続部15Eから伸びる低圧側流路12は、第5接続部15Eから右方向に伸びるように形成されている。
【0136】
第11接続部15Kは、流路形成部材10の吸入側領域Riにおいて、基準線KL側(即ち、左側)の後方部分に形成されている、第11接続部15Kから伸びる低温側熱媒体流路14は、後方から前方に向かって伸びた後、右方向に伸びるように形成されている。従って、第11接続部15Kから伸びる低温側熱媒体流路14の一部は、第5接続部15Eから伸びる低圧側流路12と隣接している。
【0137】
第12接続部15Lは、流路形成部材10における吸入側領域Riの前方側において、第5接続部15Eの右側部分に形成されている。第12接続部15Lから伸びる低温側熱媒体流路14は、第12接続部15Lから右側に伸びるように形成されており、右側に伸びる流路の中間部分にクランク状に曲がった部分を有している。第12接続部15Lから伸びる低温側熱媒体流路14は、第11接続部15Kから伸びる低温側熱媒体流路14における右側に伸びる部分の前方部分に位置しており、第11接続部15Kから伸びる低温側熱媒体流路14の一部と隣接している。
【0138】
第6接続部15Fは、流路形成部材10の吸入側領域Riにおいて、第11接続部15Kの右側で、且つ、第12接続部15Lの後方となる位置に形成されている。第6接続部15Fから伸びる低圧側流路12は、第6接続部15Fから前方に向かうにつれて右側に位置するように伸びている。第6接続部15Fから伸びる低圧側流路12の一部は、第11接続部15Kから伸びる低温側熱媒体流路14の後方側において隣接している。
【0139】
第3接続部15Cは、流路形成部材10における吸入側領域Riの前方側において、第12接続部15Lの右側部分に形成されている。第3接続部15Cから伸びる低圧側流路12は、第12接続部15Lから伸びる低温側熱媒体流路14の前方にて隣接しており、右側方向に伸びている。
【0140】
第9接続部15Iは、流路形成部材10の吸入側領域Riにおいて、第12接続部15Lの右側で、且つ、第3接続部15Cの後方となる位置に形成されている。第9接続部15Iから伸びる低温側熱媒体流路14は、第9接続部15Iから前方に伸びた後、右側に向かって伸びるように形成されている。
【0141】
第9接続部15Iから伸びる低温側熱媒体流路14の一部は、第6接続部15Fから伸びる低圧側流路12の一部と左右方向に隣接している。又、第9接続部15Iから伸びる低温側熱媒体の一部は、第11接続部15Kから伸びる低温側熱媒体流路14の一部に沿って右側に伸びており、第11接続部15Kから伸びる低温側熱媒体流路14の後方で隣接している。
【0142】
第10接続部15Jは、流路形成部材10における吸入側領域Riの前方側において、第3接続部15Cの右側部分に形成されている。第10接続部15Jから伸びる低温側熱媒体流路14は、第3接続部15Cから伸びる低圧側流路12の右側に隣接している。更に、第10接続部15Jから伸びる低温側熱媒体流路14は、第12接続部15Lから伸びる低温側熱媒体流路14の前方において隣接している。
【0143】
第4接続部15Dは、流路形成部材10の吸入側領域Riにおいて、第9接続部15Iの右側で、且つ、第10接続部15Jの後方となる位置に形成されている。即ち、第4接続部15Dは、流路形成部材10の吸入側領域Riにおける右側後方の角部分に形成されている。第4接続部15Dから伸びる低圧側流路12は、第4接続部15Dから右方向に伸びた後、前方側に伸び、その後、左側に向かって伸びるように形成されている。第4接続部15Dから伸びる低圧側流路12は、第9接続部15Iから伸びる低温側熱媒体流路14の右後方に位置している為、第9接続部15Iから伸びる低温側熱媒体流路14の一部に隣接している。
【0144】
図7に示すように、流路形成部材10における吸入側領域Riには、ヒートポンプモジュール1における低圧側流路12及び低温側熱媒体流路14の一部が集約して配置されている。ヒートポンプモジュール1では、流路形成部材10の吸入側領域Riに形成された低圧側流路12及び低温側熱媒体流路14の一部は、同じ温度帯に属すると考えられる為、吸入側領域Riに形成された流体流路の間に生じる熱害を抑制できる。
【0145】
以上説明したように、本実施形態に係るヒートポンプモジュール1は、図1等に示すように、圧縮機21と、熱媒体冷媒熱交換器22等の高圧側冷媒機器と、第1チラー27棟の低圧側冷媒機器と、流路形成部材10と、を有している。流路形成部材10は、平板状に形成されており、圧縮機21、熱媒体冷媒熱交換器22等の高圧側冷媒機器及び第1チラー27等の低圧側冷媒機器が固定される。流路形成部材10は、高圧冷媒が流通する高圧側流路11と、低圧冷媒が流通する低圧側流路12と、を有している。
【0146】
そして、流路形成部材10は、流路形成部材の平坦面を鉛直方向から見た場合に、圧縮機重心Gを通る基準線KLを境界として、吐出側領域Roと、吸入側領域Riを有している。図6図7に示すように、熱媒体冷媒熱交換器22等の高圧側冷媒機器は、流路形成部材10における吐出側領域Roの側に位置し、第1チラー27等の低圧側冷媒機器は、流路形成部材10における吸入側領域Riの側に位置している。
【0147】
この結果、本実施形態に係るヒートポンプモジュール1では、高圧冷媒が流れる流路形成部材10の吐出側領域Roに熱媒体冷媒熱交換器22等の高圧側冷媒機器が配置され、低圧冷媒が流れる吸入側領域Riに第1チラー27等の低圧側冷媒機器が配置される。従って、ヒートポンプモジュール1によれば、吐出側領域Roと高圧側冷媒機器に係る温度帯と、吸入側領域Riと低圧側冷媒機器に係る温度帯を区分して配置することができる。これにより、ヒートポンプモジュール1は、高圧側冷媒機器と低圧側冷媒機器が混在して配置される場合よりも熱の影響を抑制できる。即ち、ヒートポンプモジュール1は、熱の影響によるヒートポンプサイクル20の作動効率の低下を抑制して、ヒートポンプサイクル20の作動効率を維持することができる。
【0148】
又、図5図6に示すように、圧縮機重心Gを通る基準線KLの基準とした一方側の吐出側領域Roに熱媒体冷媒熱交換器22等の高圧側冷媒機器が配置され、他方側の吸入側領域Riに第1チラー27等の低圧側冷媒機器が配置されている。この為、ヒートポンプモジュール1によれば、ヒートポンプモジュール1としての重心が、圧縮機重心Gの位置から大きく偏ることを抑制できる。ヒートポンプモジュール1の重心を圧縮機重心Gに近い位置に保つことができるので、ヒートポンプモジュール1の組付性の低下を抑制することができる。
【0149】
図5に示すように、ヒートポンプモジュール1では、流路形成部材10の吐出側領域Roの側に圧縮機21の圧縮機構部21Bが位置し、吸入側領域Riの側に圧縮機構部21Bが位置するように、流路形成部材10に対して圧縮機21が固定される。そして、高圧側冷媒機器及び低圧側冷媒機器は、圧縮機構部21B及び高圧側冷媒機器の総重量と、駆動部21C及び低圧側冷媒機器の総重量が等しくなるように、流路形成部材10に対して固定される。
【0150】
本実施形態に係るヒートポンプモジュール1によれば、このような配置で流路形成部材10に対して圧縮機構部21B、高圧側冷媒機器及び低圧側冷媒機器を固定することで、圧縮機重心Gの位置から大きく偏移させることなく、モジュール化を実現できる。ヒートポンプモジュール1の重心位置を、圧縮機21の圧縮機重心Gと同様の位置に維持することができるので、ヒートポンプモジュール1の取付性の低下を抑制することができる。
【0151】
図1等に示すように、ヒートポンプモジュール1に取り付けられる高圧側冷媒機器には、熱媒体冷媒熱交換器22が含まれており、ヒートポンプモジュール1の低圧側冷媒機器には、第1チラー27及び第2チラー28が含まれている。
【0152】
即ち、ヒートポンプモジュール1によれば、ヒートポンプシステム100におけるヒートポンプサイクル20をモジュール化した構成内で実現することができ、ヒートポンプサイクル20及びヒートポンプシステム100の省スペース化に貢献することができる。
【0153】
図7に示すように、流路形成部材10の吐出側領域Roには、高圧側流路11及び高温側熱媒体流路13が配置されており、流路形成部材10の吸入側領域Riには、低圧側流路12及び低温側熱媒体流路14が配置されている。
【0154】
従って、ヒートポンプモジュール1によれば、高圧側流路11及び低圧側流路12からなる冷媒流路に加えて、高温側熱媒体流路13及び低温側熱媒体流路14の一部を流路形成部材10に一体化することができる。これにより、ヒートポンプモジュール1は、ヒートポンプシステム100の省スペース化を図ることができる。
【0155】
又、流路形成部材10の吐出側領域Ro側に高圧側流路11及び高温側熱媒体流路13の一部が配置され、吸入側領域Ri側に低圧側流路12及び低温側熱媒体流路14の一部が配置されている。即ち、吐出側領域Ro側に配置された流体流路の温度帯、吸入側領域Ri側に配置された流体流路の温度帯をできるだけ近づけることができるので、ヒートポンプモジュール1は、冷媒流路と熱媒体流路の間における熱害の影響を抑えることができる。
【0156】
(他の実施形態)
本開示は上述の実施形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0157】
(a)上述した実施形態に係るヒートポンプモジュール1は、ヒートポンプサイクル20、高温側熱媒体回路30、第1低温側熱媒体回路40、第2低温側熱媒体回路50を有するヒートポンプシステム100に適用されていたが、この態様に限定されない。例えば、ヒートポンプシステム100におけるヒートポンプサイクル20の回路構成を、上述した実施形態の構成から変更することも可能である。この場合、変更後のヒートポンプサイクル20の構成に応じて、流路形成部材10における流路構成、流路形成部材10に取り付けられる高圧側冷媒機器及び低圧側冷媒機器の種類及び配置を変更することができる。
【0158】
(b)又、ヒートポンプモジュール1が適用されるヒートポンプシステム100における高温側熱媒体回路30、第1低温側熱媒体回路40、第2低温側熱媒体回路50の構成についても、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、高温側熱媒体回路30、第1低温側熱媒体回路40、第2低温側熱媒体回路50を、それぞれ独立して熱媒体が循環する構成としていたが、この態様に限定されるものではない。即ち、高温側熱媒体回路30、第1低温側熱媒体回路40、第2低温側熱媒体回路50の内、少なくとも2つの熱媒体回路について熱媒体の流出入が可能なように接続した構成としても良い。
【0159】
(c)又、高温側熱媒体回路30、第1低温側熱媒体回路40、第2低温側熱媒体回路50に配置される構成機器は、上述した実施形態の態様に限定されるものではない。各熱媒体回路の回路構成に応じて、熱媒体回路の構成機器を追加することも可能であるし、変更することも可能である。例えば、高温側熱媒体回路30において、ヒータコア32に加えて高温側放熱器及び流量調整弁を追加し、高温側熱媒体回路30の熱媒体の熱の内、ヒータコア32での暖房で余剰となった熱を、高温側放熱器にて放熱させても良い。
【0160】
(d)上述した実施形態においては、ヒートポンプモジュールにおける高圧側構成機器として、熱媒体冷媒熱交換器22、レシーバ23、第1膨張弁25、第2膨張弁26を挙げていたが、この態様に限定されるものではない。高圧側構成機器はヒートポンプサイクル20における高圧冷媒が流入する機器であればよく、換言すると、ヒートポンプサイクル20において、圧縮機21の吐出口部21Dから減圧部(例えば、第1膨張弁25等)の流入口までの間に配置される機器であればよい。この条件を満たす構成機器であれば、種々の構成機器をヒートポンプモジュール1の高圧側構成機器に採用することができる。
【0161】
(e)そして、上述した実施形態においては、ヒートポンプモジュール1における低圧側構成機器として、第1チラー27及び第2チラー28を挙げていたが、この態様に限定されるものではない。ヒートポンプサイクル20における低圧冷媒が流入する機器であればよく、換言すると、ヒートポンプサイクル20において、減圧部(例えば、第1膨張弁25等)の流出口から圧縮機21の吸入口部21Fまでの間に配置される機器であればよい。この条件を満たす構成機器であれば、種々の構成機器をヒートポンプモジュール1の低圧側構成機器に採用することができる。
【0162】
(f)上述した実施形態では、図1等に示すように、上方から下方に向かって、熱媒体冷媒熱交換器22、第1チラー27等の構成機器、流路形成部材10、圧縮機21の順に配置した構成であったが、この配置に限定されるものではない。例えば、上方から下方に向かって、圧縮機21、流路形成部材10、各構成機器の順に配置した構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0163】
1 ヒートポンプモジュール
10 流路形成部材
11 高圧側流路
12 低圧側流路
21 圧縮機
22 熱媒体冷媒熱交換器
27 第1チラー
KL 基準線
Ro 吐出側領域
Ri 吸入側領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7