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特開2024-137036フッ素含有環状オレフィン共重合体、フッ素含有環状オレフィン樹脂組成物、成形体、光学部品、フッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法およびレンズ成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137036
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】フッ素含有環状オレフィン共重合体、フッ素含有環状オレフィン樹脂組成物、成形体、光学部品、フッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法およびレンズ成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/06 20060101AFI20240927BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08G61/06
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048388
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】緒方 陽一
(72)【発明者】
【氏名】川島 啓介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 謙一
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032CA34
4J032CA36
4J032CA45
4J032CB03
4J032CC03
4J032CD04
4J032CE03
4J032CG02
4J032CG07
(57)【要約】
【課題】加熱成形時のフッ化水素発生量が低減したフッ素含有環状オレフィン共重合体を提供する。
【解決手段】フッ素含有環状オレフィン共重合体であって、フッ素含有環状オレフィン共重合体中の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量が、フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたとき、10.0質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有環状オレフィン共重合体であって、
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体中の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量が、前記フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたとき、10.0質量%以下である、フッ素含有環状オレフィン共重合体。
【請求項2】
下記<フッ化水素発生量>に従って、イオンクロマトグラフにより測定されるフッ化水素発生量が60ppm未満である、請求項1に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
<フッ化水素発生量>
(1)前記フッ素含有環状オレフィン共重合体0.1gを白金ボートに採取し、窒素ガスを0.2L/分の条件で通気しながら250℃に加熱した加熱炉内の石英管内に挿入する。
(2)加熱炉内にて前記フッ素含有環状オレフィン共重合体を250℃で30分加熱し、その間に発生したフッ化水素をインピンジャー中の超純水5mLに溶解させる。
(3)前記超純水中に溶解した前記フッ化水素は、水素イオン(H)とフッ素イオン(F)とに電離しているため、前記フッ素イオンの発生量を、イオンクロマトグラフを用いて測定する。
(4)下記式(1)により、前記フッ化水素発生量を算出する。
フッ化水素発生量(ppm)=(フッ素イオン発生量(mg))÷(共重合体の全質量(kg))×(20/19)・・・(1)
ここで、前記19はフッ素の原子量を表し、前記20はフッ化水素の分子量を表す。
【請求項3】
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、50,000以上100,000以下である、請求項1または2に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
【請求項4】
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、2.8以下である、請求項1~3のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
【請求項5】
下記一般式(A)で表される化合物(X)由来の構成単位(x)と、
下記一般式(B)で表される化合物(Y)由来の構成単位(y)とを含む、請求項1~4のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
【化1】
(前記式(A)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【化2】
(前記式(B)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【請求項6】
前記一般式(A)において、R~Rのうち少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基であり、
前記一般式(B)において、R~Rのうち少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基である、請求項5に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
【請求項7】
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体中の、前記構成単位(x)と、前記構成単位(y)とのモル比(x/y)が0.25以上4.0以下である、請求項5または6に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
【請求項8】
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたときに、前記フッ素含有環状オレフィン共重合体中の前記構成単位(x)および前記構成単位(y)の合計含有量が、50質量%以上100質量%以下である、請求項5~7のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体を含むフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体または請求項9のフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物を含む、成形体。
【請求項11】
光学レンズである、請求項10に記載の成形体。
【請求項12】
2枚以上の光学レンズを有する光学部品であって、
前記光学部品における最外層の光学レンズが、請求項11に記載の成形体である、光学部品。
【請求項13】
フッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法であって、
Hildebrand溶解度パラメーターδ(SP値)が、20MPa1/2以上38MPa1/2以下である溶媒を用いて前記フッ素含有環状オレフィン共重合体を析出させる工程を含む、フッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項14】
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、50,000以上100,000以下である、請求項13に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項15】
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、2.8以下である、請求項13または14に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項16】
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体が、下記一般式(A)で表される化合物(X)由来の構成単位(x)と、下記一般式(B)で表される化合物(Y)由来の構成単位(y)とを含む、請求項13~15のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法。
【化3】
(前記式(A)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【化4】
(前記式(B)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【請求項17】
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分が、前記フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたとき、10.0質量%以下である、請求項13~16のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項18】
請求項1~8のフッ素含有環状オレフィン共重合体または請求項9のフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物をレンズに成形する工程を含む、レンズ成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有環状オレフィン共重合体、フッ素含有環状オレフィン樹脂組成物、成形体、光学部品、フッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法およびレンズ成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種光学部品(レンズ)には、より鮮明な画質を実現し小型化するために高アッベ数なレンズ材料が求められている。アッべ数を向上させるため、樹脂にフッ素原子を導入させた設計が用いられる場合がある。高アッべ数に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載されたものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、D線波長光に対する屈折率が1.48以下であり、かつ、少なくとも一般式(1)で表される繰り返し構造単位を有するフッ素含有環状オレフィンポリマーを含む光学部品材料が記載されている。当該フッ素含有環状オレフィンポリマーは、フッ素原子を含まない有機溶媒に可溶であり、表面極性が高く、水接触角が小さいことから、反射防止膜として好適に使用することができ、またアッべ数が60以上であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-177046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、加熱成形時のフッ化水素発生量が低減したフッ素含有環状オレフィン共重合体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、フッ素含有環状オレフィン共重合体中の重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量を所定値以下とすることにより、加熱成形時のフッ化水素発生量が低減することを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下に示すフッ素含有環状オレフィン共重合体、フッ素含有環状オレフィン樹脂組成物、成形体、光学部品、フッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法およびレンズ成形体の製造方法が提供される。
【0007】
[1]
フッ素含有環状オレフィン共重合体であって、
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体中の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量が、前記フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたとき、10.0質量%以下である、フッ素含有環状オレフィン共重合体。
[2]
下記<フッ化水素発生量>に従って、イオンクロマトグラフにより測定されるフッ化水素発生量が60ppm未満である、[1]に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
<フッ化水素発生量>
(1)前記フッ素含有環状オレフィン共重合体0.1gを白金ボートに採取し、窒素ガスを0.2L/分の条件で通気しながら250℃に加熱した加熱炉内の石英管内に挿入する。
(2)加熱炉内にて前記フッ素含有環状オレフィン共重合体を250℃で30分加熱し、その間に発生したフッ化水素をインピンジャー中の超純水5mLに溶解させる。
(3)前記超純水中に溶解した前記フッ化水素は、水素イオン(H)とフッ素イオン(F)とに電離しているため、前記フッ素イオンの発生量を、イオンクロマトグラフを用いて測定する。
(4)下記式(1)により、前記フッ化水素発生量を算出する。
フッ化水素発生量(ppm)=(フッ素イオン発生量(mg))÷(共重合体の全質量(kg))×(20/19)・・・(1)
ここで、前記19はフッ素の原子量を表し、前記20はフッ化水素の分子量を表す。
[3]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、50,000以上100,000以下である、[1]または[2]に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
[4]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、2.8以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
[5]
下記一般式(A)で表される化合物(X)由来の構成単位(x)と、
下記一般式(B)で表される化合物(Y)由来の構成単位(y)とを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
【化1】
(前記式(A)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【化2】
(前記式(B)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
[6]
前記一般式(A)において、R~Rのうち少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基であり、
前記一般式(B)において、R~Rのうち少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基である、[5]に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
[7]
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体中の、前記構成単位(x)と、前記構成単位(y)とのモル比(x/y)が0.25以上4.0以下である、[5]または[6]に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
[8]
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたときに、前記フッ素含有環状オレフィン共重合体中の前記構成単位(x)および前記構成単位(y)の合計含有量が、50質量%以上100質量%以下である、[5]~[7]のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体を含むフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物。
[10]
[1]~[8]のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体または[9]のフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物を含む、成形体。
[11]
光学レンズである、[10]に記載の成形体。
[12]
2枚以上の光学レンズを有する光学部品であって、
前記光学部品における最外層の光学レンズが、[11]に記載の成形体である、光学部品。
[13]
フッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法であって、
Hildebrand溶解度パラメーターδ(SP値)が、20MPa1/2以上38MPa1/2以下である溶媒を用いて前記フッ素含有環状オレフィン共重合体を析出させる工程を含む、フッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法。
[14]
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、50,000以上100,000以下である、[13]に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法。
[15]
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が、2.8以下である、[13]または[14]に記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法。
[16]
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体が、下記一般式(A)で表される化合物(X)由来の構成単位(x)と、下記一般式(B)で表される化合物(Y)由来の構成単位(y)とを含む、[13]~[15]のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法。
【化3】
(前記式(A)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【化4】
(前記式(B)中、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
[17]
前記フッ素含有環状オレフィン共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分が、前記フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたとき、10.0質量%以下である、[13]~[16]のいずれかに記載のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法。
[18]
[1]~[8]のフッ素含有環状オレフィン共重合体または[9]のフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物をレンズに成形する工程を含む、レンズ成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱成形時のフッ化水素発生量が低減したフッ素含有環状オレフィン共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0010】
<フッ素含有環状オレフィン共重合体>
本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体は、フッ素含有環状オレフィン共重合体中の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量が、フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたときに、10.0質量%以下である。
フッ素含有環状オレフィン共重合体中の、重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量は、加熱成形時のフッ化水素の発生量をより低減する観点から、好ましくは9.8質量%以下、より好ましくは9.6質量%以下、さらに好ましくは9.0質量%以下、さらに好ましくは8.0質量%以下、さらに好ましくは7.0質量%以下、さらに好ましくは6.5質量%以下である。
重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量の下限に制限はないが、例えば0質量%以上であり、1.0質量%以上であってもよく、2.0質量%以上であってもよく、3.0質量%以上であってもよく、4.0質量%以上であってもよい。加熱成形時のフッ化水素の発生量をより低減する観点から、フッ素含有環状オレフィン共重合体中の、重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量は、好ましくは0質量%以上10.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上9.8質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上9.6質量%以下であり、さらに好ましくは3.0質量%以上8.0質量%以下である。
【0011】
本実施形態において、フッ素含有環状オレフィン共重合体中の、重量平均分子量(Mw))が10,000以下である成分の含有量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される、ポリスチレン換算によるものである。測定方法は実施例に記載の方法を用いることができる。具体的には以下のように測定される。
フッ素含有環状オレフィン共重合体について、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、THFに溶解したポリマーの重量平均分子量(Mw)を、ポリスチレンスタンダードのうち、重量平均分子量(Mw)=1.32×10、2.78×10、1.07×10、2.20×10、6.60×10、1.56×10、4.60×10の7つの試料によって分子量を較正して測定する。得られた重量平均分子量(Mw)の結果を用いて、重量平均分子量(Mw)が10,000以下であるものの合計量を、測定に用いたフッ素含有環状オレフィン共重合体の重量で除することにより、重量平均分子量(Mw))が10,000以下である成分の含有量を算出できる。
GPCの測定条件は、例えば、以下の条件を採用できる。
検出器:日本分光製830-RIおよび875-UV
カラム:Shodex k-806M,804,803,802.5(株式会社レゾナック・ホールディングス製)
溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
濃度:7.5mg/mL
注入量:100μL
ポリスチレンスタンダード:株式会社レゾナック・ホールディングス製、製品名:Shodex STANDARD SM-105
【0012】
自動車に積載する撮像機器の光学部品(レンズ)やスマートフォンのカメラにおける光学部品(レンズ)には、より鮮明な画質を実現し小型化するために高アッベ数なレンズ材料が求められている。高アッベレンズ材料は色収差が小さいため、組み合わせレンズの最外層に用いて色ずれを低減させることができる。
近年の撮像機器やスマートフォンカメラの光学レンズには非晶性ポリマーを用いた樹脂レンズが使用されている。高アッベ数な樹脂レンズの設計としてフッ素原子を導入するポリマー設計がなされているが、フッ素原子を導入すると耐熱性が低下し、カメラレンズへの成型加工時には、加熱を伴う造粒や射出成型等の工程においてフッ化水素(HF)が発生する場合がある。フッ化水素は、人体への健康被害および成型機への腐食を引き起こすため、フッ化水素の発生を抑えることが課題となっている。
【0013】
本発明者らの検討によれば、フッ素含有環状オレフィン共重合体中の重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量を所定値以下とすることにより、加熱成形時のフッ化水素発生量が低減することを見出した。
この理由は明らかではないが、重量平均分子量(Mw)が10,000以下のような低分子量成分の含有量が少ないと、加熱中のフッ素含有環状オレフィン共重合体の有するフルオロカーボン置換基(-CF、-CFまたは-CF)の脱離が相対的に生じにくくなるため、加熱成形時のフッ化水素の発生量が低減すると考えられる。また、二種以上の化合物が重合している共重合体の場合は、重合が不均一になりやすいため、重量平均分子量(Mw)が10,000以下である低分子量成分の含有量が高くなりやすいが、この場合も重量平均分子量(Mw)が10,000以下である低分子量成分の含有量を所定値以下とすることで、加熱成形時のフッ化水素の発生量を低減できる。
【0014】
特定の条件でフッ素含有環状オレフィン共重合体を加熱したときのフッ化水素発生量は、好ましくは60ppm未満、より好ましくは55ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは45ppm以下、さらに好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは35ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは25ppm以下である。フッ素含有環状オレフィン共重合体を加熱した時のフッ化水素発生量の下限に制限はないが、例えば0ppm以上であり、1ppm以上であってもよく、5ppm以上であってもよく、10ppm以上であってもよい。
なお、フッ素含有環状オレフィン共重合体を加熱したときのフッ化水素発生量の単位(ppm)は、フッ素含有環状オレフィン共重合体1kgあたりのフッ素発生量(mg)、すなわち、mg/kgを表す。
【0015】
フッ素含有環状オレフィン共重合体を加熱したときのフッ化水素発生量は、イオンクロマトグラフにより、以下のとおり測定されるものである。
(1)フッ素含有環状オレフィン共重合体0.1gを白金ボートに採取し、窒素ガスを0.2L/分の条件で通気しながら250℃に加熱した加熱炉内の石英管内に挿入する。
(2)加熱炉内にてフッ素含有環状オレフィン共重合体を250℃で30分加熱し、その間に発生したフッ化水素をインピンジャー中の超純水5mLに溶解させる。
(3)超純水中に溶解したフッ化水素は、水素イオン(H)とフッ素イオン(F)とに電離しているため、フッ素イオン発生量を、イオンクロマトグラフを用いて測定する。
(4)下記式(1)により、フッ化水素発生量を算出する。
フッ化水素発生量(ppm)=(フッ素イオン発生量(mg))÷(共重合体の全質量(kg))×(20/19)・・・(1)
ここで、上記19はフッ素の原子量を表し、上記20はフッ化水素の分子量を表し、フッ素イオン発生量は標準物質(フッ素化合物)を用いて作成した検量線を用いて換算する。
【0016】
本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体は、耐熱性をより良好とする観点から、下記一般式(A)で表される化合物(X)由来の構成単位(x)と、下記一般式(B)で表される化合物(Y)由来の構成単位(y)とを含むことが好ましい。
【0017】
【化5】
【0018】
式(A)中、好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0019】
式(A)中、より好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~2のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはトリフルオロメチル基であり、さらに好ましくはR~Rのうちいずれか一つがトリフルオロメチル基であり、残りの3つがフッ素であり、さらに好ましくは、Rがトリフルオロメチル基であり、R~Rがフッ素である。
これにより、光学レンズ等のアッべ数等の光学特性と耐熱性の性能バランスをより向上させることができる。
化合物(X)は、光学レンズ等のアッべ数等の光学特性と耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは、5,6-ジフルオロ-5-フルオロ-6-(トリフルオロメチル)ビシクロ(2.2.1)ヘプト-2-エン(以下、「NBF」ともいう)を含む。
【0020】
【化6】
【0021】
式(B)中、好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つは、フッ素、フッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基、フッ素を含有する炭素数1~10のアルコキシ基、又はフッ素を含有する炭素数2~10のアルコキシアルキル基であり、R~Rがフッ素を含有しない基である場合、R~Rは、水素、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、又は炭素数2~10のアルコキシアルキル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0022】
式(B)中、より好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~10のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはフッ素を含有する炭素数1~4のアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素または炭素数1~2のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは、R~Rのうち、少なくとも1つがフッ素またはトリフルオロメチル基であり、さらに好ましくはR~Rのうちいずれか一つがトリフルオロメチル基であり、残りの3つがフッ素であり、さらに好ましくは、Rがトリフルオロメチル基であり、R~Rがフッ素である。
これにより、光学レンズ等のアッべ数等の光学特性と耐熱性の性能バランスをより向上させることができる。
化合物(Y)は、光学レンズ等のアッべ数等の光学特性と耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、8,8,9-トリフルオロ-9-トリフルオロメチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(以下、「TDF」ともいう)を含む。
【0023】
フッ素含有環状オレフィン共重合体において、化合物(X)由来の構成単位(x)と、化合物(Y)由来の構成単位(y)とのモル比(x/y)は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.50以上、さらに好ましくは0.60以上であり、そして好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下である。フッ素含有環状オレフィン共重合体における化合物(X)由来の構成単位(x)と、化合物(Y)由来の構成単位(y)とのモル比(x/y)は、好ましくは0.25以上4.0以下であり、より好ましくは0.40以上3.5以下であり、さらに好ましくは0.50以上3.0以下であり、さらに好ましくは0.60以上2.0以下である。
これにより、高アッベ数、耐熱性および傷つきにくさの性能バランスをより向上させることができる。
なお、フッ素含有環状オレフィン共重合体の化合物(X)由来の構成単位(x)と、化合物(Y)由来の構成単位(y)とのモル比(x/y)は、19F-NMRによって測定できる。
【0024】
フッ素含有環状オレフィン共重合体中の、化合物(X)由来の構成単位(x)および化合物(Y)由来の構成単位(y)の合計含有量は、アッベ数等の光学特性および耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたときに、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、そして例えば100質量%以下である。
【0025】
フッ素含有環状オレフィン共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、化合物(X)および化合物(Y)以外のその他の化合物由来の構成単位を含んでいてもよい。
フッ素含有環状オレフィン共重合体がその他の化合物由来の構成単位を含む場合、その他の化合物由来の構成単位の含有量は、フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたときに、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、そして例えば0質量%以上であり、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。
【0026】
フッ素含有環状オレフィン共重合体のフッ素含有量は、フッ素含有環状オレフィン共重合体全体を100質量%としたとき、アッべ数をより向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、また、得られるレンズの強度を向上させ、傷つきやすさを低減するとともに、ガラス転移温度を高くし、成形性を良好とする観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
フッ素含有環状オレフィン共重合体のフッ素含有量は、19F-NMRにより測定することができる。
【0027】
フッ素含有環状オレフィン共重合体の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、ポリマーとしての物性をより発現させる観点から、好ましくは50,000以上、より好ましくは55,000以上、さらに好ましくは60,000以上であり、また、薄膜形成時や射出成形時の流動性をより維持する観点から、好ましくは100,000以下、より好ましくは90,000以下、さらに好ましくは80,000以下、さらに好ましくは70,000以下である。ポリマーとしての物性をより発現させ、また薄膜形成時や射出成形時の流動性をより維持する観点から、フッ素含有環状オレフィン共重合体の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは50,000以上100,000以下であり、より好ましくは55,000以上90,000以下であり、さらに好ましくは60,000以上80,000以下である。
【0028】
また、フッ素含有環状オレフィン共重合体の、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、例えば1.0以上であり、均一な厚みの薄膜形成性や良好な射出成形性を得る観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.1以上であり、また加熱成形時のフッ化水素の発生量をより低減する観点から、好ましくは2.8以下であり、より好ましくは2.7以下、さらに好ましくは2.6以下、さらに好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.4以下である。均一な厚みの薄膜形成性や良好な射出成形性を得る観点から、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上2.8以下であり、より好ましくは1.5以上2.7以下であり、さらに好ましくは2.0以上2.6以下であり、さらに好ましくは2.1以上2.5以下である。
【0029】
本実施形態のフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物は、本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体を含む。
フッ素含有環状オレフィン樹脂組成物がフッ素含有環状オレフィン共重合体を含む場合、フッ素含有環状オレフィン樹脂組成物中のフッ素含有環状オレフィン共重合体の含有量は、加熱成形時のフッ化水素の発生量をより低減する観点から、フッ素含有環状オレフィン樹脂組成物全体を100質量%とした時、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上であり、そして好ましくは100質量%以下である。
【0030】
また、本実施形態のフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、フッ素含有環状オレフィン共重合体以外のその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、フッ素含有環状オレフィン共重合体以外のその他の樹脂や公知の添加剤が挙げられる。
その他の樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、非晶ポリアリレート、脂環式炭化水素樹脂などの非晶性透明樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂等が挙げられる。
添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、二次抗酸化剤、滑剤、離型剤、防曇剤、耐候安定剤、耐光安定剤、金属不活性化剤等が挙げられる。
【0031】
<成形体>
本実施形態の成形体は、本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体または本実施形態のフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物を含む成形体であり、例えば、本実施形態のフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物を硬化させながら、所定の形状に成形することにより得ることができる。
本実施形態の成形体は、本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体またはフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物を含むため、加熱成形時のフッ化水素の発生量を低減することができるため、光学材料に好適に用いることができる。
本実施形態の成形体を成形する時の加熱温度としては、例えば100℃以上300℃以下であり、加熱成形時のフッ化水素発生量の低減と成形性との性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは250℃以上であり、そして好ましくは280℃以下である。
また、本実施形態の成形体は、光学レンズであってもよい。
【0032】
<光学部品>
本実施形態の光学部品は、例えば、2枚以上の光学レンズを有し、最外層の光学レンズが、本実施形態の成形体である。
光学部品における最外層の光学レンズが本実施形態の成形体であるため、加熱成形時のフッ化水素の発生量を低減することができるため、光学材料に好適に用いることができ、ひいては、人体への健康被害および成型機への腐食等の影響を抑えることができる。
なお本実施形態において、最外層とは、例えば撮像レンズにおいて、観察する人間側とは反対側、すなわち、対象物側の最外層を表す。
そして最外層の光学レンズは、内側に別のレンズを有する。
【0033】
光学部品における光学レンズの枚数は、好ましくは3枚以上、より好ましくは4枚以上であり、また、好ましくは9枚以下、より好ましくは8枚以下である。
また、本実施形態の光学部品において、最外層の光学レンズの内側に設けられるレンズとしては、高屈折率のレンズ、光吸収の少ないレンズ、光反射の少ないレンズ等が挙げられる。好ましくは、高屈折率のレンズおよび光吸収の少ないレンズからなる群から選択される1種以上を含む。
高屈折率のレンズの、ASTM D542に準拠して測定される、d線波長光に対する屈折率ndは、好ましくは1.50以上、より好ましくは1.52以上、さらに好ましくは1.54以上であり、そして好ましくは1.70以下、より好ましくは1.68以下、さらに好ましくは1.65以下である。
【0034】
本実施形態に係る光学部品は、加熱成形時のフッ化水素の発生量を低減することができるため、光学部品として好適に用いることができる。光学部品とは光学系機器等に使用される部品であり、具体的には、カメラ、ビデオカメラ、プロジェクションテレビ、プロジェクタレンズ、レーザープリンター、マイクロレンズアレイ、センサー用レンズ、ピックアップレンズ、プリズム、fθレンズ、撮像レンズ、導光板等の撮像および投影用光学レンズ;光ファイバー、光ファイバー用コネクター、光導波路等の情報伝送部品等の光学部品材料に好適に用いることができる。
また、本実施形態に係る光学部品は車載カメラレンズや携帯機器(携帯電話、スマートフォン、タブレット等)用のカメラレンズ等の光学部品により好適に用いることができる。車載カメラレンズや携帯機器用カメラレンズとしては、例えば、ビューカメラレンズ、センシングカメラレンズ、ヘッドアップディスプレイの光収束用レンズ、ヘッドアップディスプレイの光拡散用レンズ等が挙げられる。
【0035】
<レンズの成形法>
本実施形態のレンズの成形法は、本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体または本実施形態のフッ素含有環状オレフィン樹脂組成物をレンズに成形する工程を含む。
【0036】
<フッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法>
本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法は、Hildebrand溶解度パラメーターδ(SP値)(以下、単に「SP値」とも呼ぶ)が、好ましくは20MPa1/2以上38MPa1/2以下である溶媒を用いてフッ素含有環状オレフィン共重合体を析出させる工程を含む。
溶媒のHildebrand溶解度パラメーターδ(SP値)は、好ましくは20MPa1/2以上、より好ましくは23MPa1/2以上、さらに好ましくは25MPa1/2以上、さらに好ましくは26MPa1/2以上であり、そして好ましくは38MPa1/2以下、より好ましくは35MPa1/2以下、さらに好ましくは33MPa1/2以下、さらに好ましくは30MPa1/2以下である。
溶媒のSP値が上記下限値以上であることにより、フッ素含有環状オレフィン共重合体成分をすべて溶解させることなく、重量平均分子量が10,000以下の低分子量成分において、溶媒に溶解し得る成分の分子量の上限を上昇させることができ、フッ素含有環状オレフィン共重合体においてフッ化水素の発生源と考えられる化合物(X)由来の構成単位を高含有量で含む低分子量成分を低減させることができる。
溶媒のSP値が上記上限値以下であることにより、重量平均分子量が10,000以下の低分子量成分中の分子量の低い成分をより溶解させることができる。
【0037】
フッ素含有環状オレフィン共重合体の重合溶液を、この共重合体に対する貧溶媒に滴下すると、共重合体成分のみが析出し、共重合体を単離することができる。この時、重合溶液に含まれていた低分子量成分が除去される。
本発明者らの検討によると、上記低分子量成分には、NBFが多く含まれていることが分かっている。上記低分子量成分を相対的に多く除去すると、加熱時のフッ化水素の発生量が低減することから、フッ素含有環状オレフィン共重合体の加熱時のフッ化水素の発生源は、NBFを多く含む低分子量成分であると考えられる。そこで、上記析出時の溶媒を、少しだけ良溶媒に近づけることで、析出時に除去できる低分子量成分の分子量の上限を上昇させ、加熱時のフッ化水素の発生量を抑えられると考えられる。
【0038】
Hildebrand溶解度パラメーターδ(SP値)は、Hildebrandによって導入された正則溶液論により定義された値であり、ある物質が他のある物質にどのくらい溶けるのかという溶解性を表す指標である。一般に、二つの成分のSP値が近い程、両成分は互いに溶解し易いと言える。
Hildebrand溶解度パラメーターδ(SP値)は、以下の式(2)で表されるものである。
【0039】
【数1】
【0040】
ここで、ΔHは溶媒のモル蒸発熱(Jmol?1)、Vは溶媒のモル体積(mmol-1)、Rは気体定数(8.314JK?1mol?1)、Tは温度(K)を表す。
本実施形態において溶媒のSP値は、Burke,John著. 1984. "Solubility Parameters: Theory and Application." Book and Paper Group Annual 3: 13-58頁のTable.1に示される数値を用いるものとする。
【0041】
本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法に用いられる溶媒としては、以下のものが挙げられる。
アセトン(SP値:19.7MPa1/2)、1‐プロパノール(SP値:24.9MPa1/2)、エタノール(SP値:26.2MPa1/2)、1‐ブタノール(SP値:28.7MPa1/2)、メタノール(SP値:29.7MPa1/2)、水(SP値:48.0MPa1/2)。
また、混合溶媒を用いる場合、そのSP値は、加成則で計算することができる。本実施形態においては、上記で挙げられた溶媒を適当な混合比で混合し、SP値を調整することができる。
また、フッ素含有環状オレフィン共重合体の析出後により溶媒を留去しやするする観点から、溶媒の沸点は、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。
【0042】
フッ素含有環状オレフィン共重合体のSP値は、好ましくは10.0MPa1/2以上、より好ましくは12.0MPa1/2以上であり、そして好ましくは18.0MPa1/2以下、より好ましくは16.0MPa1/2以下である。
なお、フッ素含有環状オレフィン共重合体のSP値は、Hoftzyer and Krevelenの方法(Hansen溶解度パラメーターδ)により、推算できる。具体的には実施例の項に記載する。
【0043】
本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法においては、SP値が上記範囲である溶媒を用いてフッ素含有環状オレフィン共重合体を析出させる工程においては、例えば、本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体を、本発明の効果を損なわないようなその他の溶媒に溶解した上、溶媒を入れた容器に滴下して行うことができる。また、溶媒中にフッ素含有環状オレフィン共重合体を滴下し、攪拌しながら行うこともできる。攪拌については、例えば1000rpm以上5000rpm以下の条件で行うことができる。
フッ素含有環状オレフィン共重合体を溶解させるその他の溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)、トルエン等が挙げられ、フッ素含有環状オレフィン共重合体を5質量%以上20質量%以下の濃度となるように溶解して用いることができる。
溶媒とフッ素含有環状オレフィン共重合体を混合し、必要に応じて攪拌を行う時間は、共重合体が析出するまでとし、例えば5分以上15分以下である。
また、SP値が上記範囲である溶媒を用いてフッ素含有環状オレフィン共重合体を析出させる工程の後に、フッ素含有環状オレフィン共重合体を単離して、真空加熱により乾燥する工程をさらに行ってもよい。単離方法に制限はないが、たとえば吸引濾過により行うことができる。また真空加熱条件としては、例えば、0Torr以上100Torr以下、70℃以上90℃以下、5時間以上15時間以下で行うことができる。
【0044】
本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法におけるフッ素含有環状オレフィン共重合体のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)の好ましい数値範囲は、上述したフッ素含有環状オレフィン共重合体と同じである。
また、本実施形態のフッ素含有環状オレフィン共重合体の製造方法におけるフッ素含有環状オレフィン共重合体は、好ましくは、上記一般式(A)で表される化合物(X)由来の構成単位(x)と、上記一般式(B)で表される化合物(Y)由来の構成単位(y)とを含み、化合物(X)由来の構成単位(x)と、化合物(Y)由来の構成単位(y)とのモル比(x/y)の好ましい数値範囲は、上述したフッ素含有環状オレフィン共重合体と同じである。
これらの構成についての好ましい態様は、フッ素含有環状オレフィン共重合体の項で上述した通りであるため、省略する。
【0045】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例0046】
以下、本実施形態を、実施例等を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0047】
<フッ素含有環状オレフィン共重合体の合成>
実施例、比較例の各例に用いたフッ素含有環状オレフィン共重合体1を、以下の通り合成した。
窒素雰囲気下、磁気攪拌装置を備えた5Lのオートクレーブ内で、化合物(X)として、5,6-ジフルオロ-5-フルオロ-6-(トリフルオロメチル)ビシクロ(2.2.1)ヘプト-2-エン(NBF)495g(2.3mol)、化合物(Y)として、8,8,9-トリフルオロ-9-トリフルオロメチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(TDF)970g(3.4mol)、および1-ヘキセン44.0g(0.52mol)をテトラヒドロフラン(以下、THFと記す)1.5kgに溶解し攪拌を行った。これに開環メタセシス重合触媒としてMo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OBuを630mg(1.15mmol)加え、70℃で48時間反応させた。その後、n-ブチルアルデヒド248mg(3.4mmol)を加えて冷却して、開環メタセシス重合ポリマー溶液3.0kgを得た。H-NMRによって得られたポリマーの重合率は100%、GPCによるMwは66,000、Mw/Mnは2.8であった。得られた重合ポリマー溶液に3.0kgのTHFを追加して希釈し、この重合ポリマー溶液にパラジウムアルミナを加えて重合ポリマーのオレフィン部を160℃で水素添加反応を行い、フッ素含有環状オレフィン共重合体1のTHF溶液を得た。H-NMRによって得られたポリマーの水素添加率は100%であった。得られた共重合体のTHF溶液からパラジウムアルミナを0.1μmフィルターろ過により除去した。
得られたフッ素含有環状オレフィン共重合体1を19F-NMRで解析した結果、構造単位(x)と構造単位(y)のモル比x/y=38.9/61.1、フッ素含有量は44.1質量%であった。
【0048】
[フッ素含有環状オレフィン共重合体1の構造単位(x)と構造単位(y)のモル比およびフッ素含有量(質量%)]
フッ素含有環状オレフィン共重合体1の構造単位(x)と構造単位(y)のモル比x/yおよびフッ素原子の含有量を、下記の通り19F-NMRにより測定した。
日本電子製ECA500型核磁気共鳴装置を用いて、470MHz-19F-NMRスペクトルを測定し、δ=0.00ppmのCFClを基準シグナルとして、フッ素含有環状オレフィン共重合体1の、δ=-150~-200ppmの-CF、δ=-100~-150ppmの-CF、または、δ=-60~-100ppmの-CFに由来するフッ素の積分値を用いて、構造単位(x)と構造単位(y)のモル比[A]と[B]を算出した。また、下記式(4)からフッ素含有量(質量%)を算出した。
・測定溶媒:重水素化テトラヒドロフラン
・試料濃度:約5%
・測定温度:室温(20℃)
・積算回数:256回
・基準ピーク:装置による自動設定でCFClを0.00ppmに設定
式(4):フッ素原子の含有率(質量%)={(F(A)n×19×[A])/(F(A)w×[A]+F(B)w×[B])+(F(B)n×19×[B])/(F(A)w×[A]+F(B)w×[B])}×100・・・(4)
ここで、式(4)中、F(A)nは一般式(A)で表わされる構造単位中のフッ素原子の数、F(B)nは一般式(B)で表わされる構造単位中のフッ素原子の数、F(A)wは一般式(A)で表わされる構造単位の式量、F(B)wは一般式(B)で表わされる構造単位の式量、を表す。
【0049】
(実施例1)
1Lのホモジナイザーにメタノール600gを入れ、そこに上記で得られた溶液濃度10質量%のフッ素含有環状オレフィン共重合体1のTHF溶液60gをパスツールピペットを用いて滴下し、室温(20℃)にて、回転数:3,000rpmにて攪拌しながら、フッ素含有環状オレフィン共重合体1を析出した。吸引濾過により析出したフッ素含有環状オレフィン共重合体1を単離した後、真空オーブンを用いて80℃、10時間乾燥させた。
【0050】
(実施例2)
メタノールをアセトン/メタノール=30/70(質量比)混合溶媒に変えた以外は、実施例1と同様に行った。
【0051】
(比較例1)
メタノールを水/メタノール=50/50(質量比)混合溶媒に変えた以外は、実施例1と同様に行った。
【0052】
[溶媒のHildebrand溶解度パラメーターδ(SP値)]
各例で用いた溶媒のHildebrand溶解度パラメーターδ(SP値)は、Burke,John著.1984."Solubility Parameters:Theory and Application." Book and Paper Group Annual 3:13-58頁のTable.1の数値を用いた。混合溶媒である場合には、各溶媒のSP値に質量比を乗じて得られた数値を足すことにより、SP値を算出した。一例として、アセトン/メタノール=30/70(質量比)の場合は、19.7×30/100+29.7×70/100=26.7である。
【0053】
[フッ素含有環状オレフィン共重合体1の溶解度パラメーターδ(SP値)]
実施例および比較例に用いたフッ素含有環状オレフィン共重合体1の溶解度パラメーターδ(SP値)については、Hoftzyer and Krevelenの方法(式3.1、式3.2、式3.3)によりHansen溶解度パラメーター(δd:分散項、δp:極性項、δh:水素結合項)をそれぞれ推算し、さらに式(3.4)を用いてHildebrand溶解度パラメーターδに換算した。
δd=ΣEdi/Vm・・・(3.1)
δp=(ΣEpi1/2/Vm・・・(3.2)
δh=(ΣEhi/Vm)1/2・・・(3.3)
δ=δd+δp+δh・・・(3.4)
ここで、式(3.1)中のEdは各置換基の分散項に関する凝集エネルギー、式(3.2)中のEpは各置換基の極性項に関する凝集エネルギー、式(3.3)中のEhは各置換基の水素結合項に関する凝集エネルギー、そして上記(3.1)~(3.3)式中のVmは分子体積である。δd、δpおよびδhは、置換基や基本骨格により固有の値を有する。
NBFおよびTDF6各モノマーのSP値については、それぞれのメチレン基、ジフルオロメチレン基、3級炭素、4級炭素およびフッ素基についてのδd値、δp値およびδh値を算出し、式(3.4)からδ値すなわちSP値を算出した。結果を下記に示す。
NBFのSP値:14.8(MPa)1/2
TDFのSP値:13.7(MPa)1/2
上記NBFおよびTDF各モノマーのSP値および、フッ素含有環状オレフィン共重合体1中のNBFおよびTDFのモル比(40/60)を用いて、下記の通り、フッ素含有環状オレフィン共重合体1のSP値を求めた。
フッ素含有環状オレフィン共重合体1のSP値=14.8(MPa)1/2×0.4+13.7(MPa)1/2×0.6=14.1(MPa)1/2
【0054】
[重量平均分子量(Mw)、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)および重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量]
各例で得られた析出後のフッ素含有環状オレフィン共重合体1について、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、THFに溶解したポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)が10,000以下である成分の含有量を以下の条件で、ポリスチレンスタンダード(株式会社レゾナック・ホールディングス製、製品名:Shodex STANDARD SM-105)のうち、重量平均分子量(Mw)=1.32×10、2.78×10、1.07×10、2.20×10、6.60×10、1.56×10、4.60×10の7つの試料によって分子量を較正して測定した。得られた重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)より、(Mw/Mn)を算出した。また得られた重量平均分子量(Mw)の結果を用いて、重量平均分子量(Mw)が10,000以下であるものの合計量を、測定に用いたフッ素含有環状オレフィン共重合体の質量で除することにより、重量平均分子量(Mw))が10,000以下である成分の含有量(質量%)を算出した。
結果を表1に示す。
検出器:日本分光製830-RIおよび875-UV
カラム:Shodex k-806M,804,803,802.5(株式会社レゾナック・ホールディングス製)
溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
濃度:7.5mg/mL
注入量:100μL
【0055】
[フッ化水素発生量]
各例で得られた析出後のフッ素含有環状オレフィン共重合体1試料0.1gを白金ボートに採取し、加熱発生ガス捕集装置(横型加熱炉)を用いて、窒素ガスを0.2L/分の流量で通気しながら250℃に加熱した石英管内に挿入した。加熱炉内にて試料を250℃、30分加熱し、その間に発生したフッ化水素をインピンジャー中の吸収液(超純水)5mLに捕集し、溶解させた。吸収液中に溶解したフッ化水素は水素イオン(H)とフッ素イオン(F)に電離しているため、フッ素イオン量を、イオンクロマトグラフを用いて下記条件にて測定した。
【0056】
イオンクロマトグラフの測定条件を下記に示す。
(測定条件)
・測定装置:イオンクロマトグラフICS-5000(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)
・検出器:電気伝導度検出器
上記で得られた吸収液をメスフラスコに移液し、超純水を加えて分析用サンプル溶液を調製した。それをメンブレンフィルターに通して不溶物を除去し、測定に供した。上記装置を用いて吸収液中のフッ素イオンの含有量を算出した。フッ素イオン発生量は標準物質(フッ素化合物)を用いて作成した検量線を用いて換算した値を用いた。
【0057】
得られたフッ素イオン量から、以下式(1)により、フッ化水素発生量(ppm)を算出した。
フッ化水素発生量(ppm)=(フッ素イオン発生量(mg))÷(共重合体の全質量(kg))×(20/19)・・・(1)
ここで、上記19はフッ素の原子量を表し、上記20はフッ化水素の分子量を表す。
【0058】
【表1】