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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137039
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】磁気記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/16 20060101AFI20240927BHJP
   H10B 61/00 20230101ALI20240927BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
G11C11/16 230
H10B61/00
H10N50/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048391
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 邦晃
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋介
(72)【発明者】
【氏名】松下 直輝
(72)【発明者】
【氏名】岩山 昌由
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA17
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD09
4M119DD17
4M119DD37
4M119DD42
4M119EE22
4M119EE27
5F092AA15
5F092AB07
5F092AC12
5F092AD23
5F092AD25
5F092BB36
5F092BC04
5F092BC06
5F092DA03
5F092EA06
(57)【要約】
【課題】メモリセルの読み出し性能を改善させる。
【解決手段】実施形態の磁気記憶装置は、第1及び第2配線と、メモリセルと、トランジスタと、センスアンプと、制御回路とを含む。メモリセルMCは、第1及び第2配線間に直列に接続された磁気抵抗効果素子VRを含む。トランジスタ60は、第2配線と接地ノードとの間に接続される。センスアンプSA2は、第1及び第2配線の電圧差に基づいてメモリセルに記憶されたデータを判定する。読み出し動作において、制御回路は、第1配線を第1電圧に充電する。制御回路は、第1配線を充電した後に、トランジスタのゲート端に第2電圧を印加することによって、一端及び他端間で流れる電流が第1電流に制限されたトランジスタを介して第1配線を放電する。制御回路は、トランジスタを介して放電された第1配線の電圧に基づいて、メモリセルに記憶されたデータをセンスアンプSA2に判定させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線と、
第2配線と、
前記第1配線と前記第2配線との間に直列に接続された磁気抵抗効果素子及びセレクタ素子を含むメモリセルと、
前記第2配線と接地ノードとの間に接続されたトランジスタと、
前記第1配線と前記第2配線との電圧差を増幅するように構成された第1センスアンプと、
前記第1センスアンプの出力電圧と参照電圧との比較結果に基づいて、前記メモリセルに記憶されたデータを判定するように構成された第2センスアンプと、
読み出し動作を実行するように構成された制御回路と、を備え、
前記読み出し動作において、前記制御回路は、
前記第1配線を第1電圧に充電し、
前記第1配線を充電した後に、前記トランジスタのゲート端に第2電圧を印加することによって一端及び他端間で流れる電流が第1電流に制限された前記トランジスタを介して前記第1配線を放電し、
前記トランジスタを介して放電された前記第1配線及び前記第2配線の電圧差を前記第1センスアンプに増幅させ、前記メモリセルに記憶されたデータを前記第2センスアンプに判定させる、
磁気記憶装置。
【請求項2】
前記第2電圧は、第1論理レベルの電圧と、前記第1論理レベルの逆論理レベルである第2論理レベルの電圧との間の電圧である、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項3】
前記読み出し動作における前記第1配線の放電が開始した後の第1時刻において、前記メモリセルに含まれた前記磁気抵抗効果素子が平行状態である場合の前記第1配線及び前記第2配線の電圧差は第1判定電圧であり、前記メモリセルに含まれた前記磁気抵抗効果素子が反平行状態である場合の前記第1配線及び前記第2配線の電圧差は、前記第1判定電圧よりも高い第2判定電圧であり、
前記第1判定電圧と前記第2判定電圧との差は、前記メモリセルに前記第1電流よりも小さい第2電流が流れている場合と、前記メモリセルに前記第1電流よりも大きい第3電流が流れている場合とのそれぞれよりも、前記メモリセルに前記第1電流が流れている場合の方が大きい、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項4】
前記差は、前記メモリセルに前記第1電流が流れている場合に最も大きい、
請求項3に記載の磁気記憶装置。
【請求項5】
前記磁気抵抗効果素子は、第4電流以上の電流が流れた場合に平行状態と反平行状態との間で遷移するように構成され、
前記第1電流は、前記第4電流よりも小さい、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項6】
前記第4電流は、40~80uAである、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項7】
前記磁気抵抗効果素子は、第5電流以上の電流が流れた場合にトンネルバリア破壊が発生し、
前記第1電流は、前記第5電流よりも小さい、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項8】
前記第5電流は、250~315uAである、
請求項7に記載の磁気記憶装置。
【請求項9】
前記読み出し動作において、前記制御回路は、前記第1配線が充電された後の前記第2センスアンプが前記メモリセルに記憶されたデータを判定する第1期間において、前記トランジスタのゲート端に前記第2電圧を印加し、前記第1配線が充電された後の前記第1期間を除く期間において、前記トランジスタのゲート端に前記第2電圧よりも高い第3電圧を印加する、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項10】
前記トランジスタと並列に接続されたスイッチ回路をさらに備え、
前記読み出し動作において、前記制御回路は、前記第2センスアンプがデータを判定する期間において前記スイッチ回路をオフ状態に制御し、前記第2センスアンプがデータを判定する以外の期間において前記スイッチ回路をオン状態に制御する、
請求項1に記載の磁気記憶装置。
【請求項11】
第1配線と、
第2配線と、
前記第1配線と前記第2配線との間に直列に接続された磁気抵抗効果素子及びセレクタ素子を含むメモリセルと、
前記第1配線と前記第2配線との間に前記メモリセルと共に直列に接続されたトランジスタと、
前記第1配線と前記第2配線との電圧差に基づいて前記メモリセルに記憶されたデータを判定するセンスアンプと、
読み出し動作を実行するように構成された制御回路と、を備え、
前記読み出し動作において、前記制御回路は、
前記第1配線を第1電圧に充電し、
前記第1配線を充電した後に、前記トランジスタのゲート端に第2電圧を印加することによって一端及び他端間で流れる電流が第1電流に制限された前記トランジスタを介して前記第1配線を放電し、
前記トランジスタを介して放電された前記第1配線及び前記第2配線の電圧差に基づいて、前記メモリセルに記憶されたデータを前記センスアンプに判定させる、
磁気記憶装置。
【請求項12】
前記第1配線の延伸方向に対応する第1方向と、前記第2配線の延伸方向に対応する第2方向とのそれぞれと交差する第3方向に延伸して設けられた複数の半導体層と、
前記第1方向と前記第2方向とのそれぞれと平行な平面形状を有し、前記複数の半導体層と交差した部分を有する導電体層と、
前記複数の半導体層のそれぞれと前記導電体層との間にそれぞれ設けられた複数の絶縁体層とをさらに備え、
前記複数の半導体層のうち一つの半導体層は、前記トランジスタのチャネルとして使用され、前記導電体層は、前記トランジスタのゲート電極として使用される、
請求項11に記載の磁気記憶装置。
【請求項13】
前記メモリセル及び前記トランジスタは、上面視において前記第1配線と前記第2配線とが交差した部分において、前記第3方向に並んで配置される、
請求項12に記載の磁気記憶装置。
【請求項14】
前記第2電圧は、第1論理レベルの電圧と、前記第1論理レベルの逆論理レベルである第2論理レベルの電圧との間の電圧である、
請求項11に記載の磁気記憶装置。
【請求項15】
前記読み出し動作における前記第1配線の放電が開始した後の第1時刻において、前記メモリセルに含まれた前記磁気抵抗効果素子が平行状態である場合の前記第1配線及び前記第2配線の電圧差は第1判定電圧であり、前記メモリセルに含まれた前記磁気抵抗効果素子が反平行状態である場合の前記第1配線及び前記第2配線の電圧差は、前記第1判定電圧よりも高い第2判定電圧であり、
前記第1判定電圧と前記第2判定電圧との差は、前記メモリセルに前記第1電流よりも小さい第2電流が流れている場合と、前記メモリセルに前記第1電流よりも大きい第3電流が流れている場合とのそれぞれよりも、前記メモリセルに前記第1電流が流れている場合の方が大きい、
請求項11に記載の磁気記憶装置。
【請求項16】
前記差は、前記メモリセルに前記第1電流が流れている場合に最も大きい、
請求項15に記載の磁気記憶装置。
【請求項17】
前記磁気抵抗効果素子は、第4電流以上の電流が流れた場合に平行状態と反平行状態との間で遷移するように構成され、
前記第1電流は、前記第4電流よりも小さい、
請求項11に記載の磁気記憶装置。
【請求項18】
前記第4電流は、40~80uAである、
請求項17に記載の磁気記憶装置。
【請求項19】
前記磁気抵抗効果素子は、第5電流以上の電流が流れた場合にトンネルバリア破壊が発生し、
前記第1電流は、前記第5電流よりも小さい、
請求項11に記載の磁気記憶装置。
【請求項20】
前記第5電流は、250~315uAである、
請求項19に記載の磁気記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗効果素子を記憶素子として用いた記憶装置(MRAM:Magnetoresistive Random Access Memory)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-47950号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C. Park et al., "Low RA Magnetic Tunnel Junction Arrays in Conjunction with Low Switching Current and High Breakdown Voltage for STT-MRAM at 10 nm and Beyond," 2018 IEEE Symposium on VLSI Technology, 2018, pp. 185-186
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メモリセルの読み出し性能を改善させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の磁気記憶装置は、第1配線と、第2配線と、メモリセルと、トランジスタと、第1及び第2センスアンプと、制御回路とを含む。メモリセルは、第1配線と第2配線との間に直列に接続された磁気抵抗効果素子及びセレクタ素子を含む。トランジスタは、第2配線と接地ノードとの間に接続される。第1センスアンプは、第1配線と第2配線との電圧差を増幅するように構成される。第2センスアンプは、第1センスアンプの出力電圧と参照電圧との比較結果に基づいて、メモリセルに記憶されたデータを判定するように構成される。制御回路は、読み出し動作を実行するように構成される。読み出し動作において、制御回路は、第1配線を第1電圧に充電する。制御回路は、第1配線を充電した後に、トランジスタのゲート端に第2電圧を印加することによって、一端及び他端間で流れる電流が第1電流に制限されたトランジスタを介して第1配線を放電する。制御回路は、トランジスタを介して放電された第1配線及び第2配線の電圧差を第1センスアンプに増幅させ、メモリセルに記憶されたデータを第2センスアンプに判定させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る磁気記憶装置を備えるメモリシステムの全体構成の一例を示すブロック図。
図2】第1実施形態に係る磁気記憶装置が備えるメモリセルアレイの回路構成の一例を示す回路図。
図3】第1実施形態に係る磁気記憶装置が備えるメモリセルアレイの構造の一例を示す斜視図。
図4】第1実施形態に係る磁気記憶装置が備えるメモリセルアレイに含まれたメモリセルの断面構造の一例を示す断面図。
図5】第1実施形態に係る磁気記憶装置が備える読み出し回路の回路構成の一例を示す回路図。
図6】第1実施形態に係る磁気記憶装置における電流制限トランジスタの静特性の一例を示すグラフ。
図7】第1実施形態に係る磁気記憶装置の読み出し動作のプリチャージ期間における動作状態の一例を示す模式図。
図8】第1実施形態に係る磁気記憶装置の読み出し動作の放電期間における動作状態の一例を示す模式図。
図9】第1実施形態に係る磁気記憶装置の読み出し動作におけるビット線及びワード線の電圧差の変化の一例を示すタイムチャート。
図10】平行状態のメモリセルの両端の電圧と反平行状態のメモリセルの両端の電圧との差と読み出し電流との関係性の一例を示すグラフ。
図11】第1実施形態に係る磁気記憶装置の読み出し動作における平行状態のメモリセルの両端の電圧と反平行状態のメモリセルの両端の電圧との差と読み出し電流との関係性の一例を示すグラフ。
図12】第2実施形態に係る磁気記憶装置の読み出し動作における電流制限トランジスタの制御方法の一例を示すタイムチャート。
図13】第2実施形態に係る磁気記憶装置の読み出し動作におけるビット線及びワード線WLの電圧差の変化の一例を示すタイムチャート。
図14】第3実施形態に係る磁気記憶装置が備える読み出し回路の回路構成の一例を示す回路図。
図15】第3実施形態に係る磁気記憶装置の読み出し動作の非センス期間における動作状態の一例を示す模式図。
図16】第3実施形態に係る磁気記憶装置の読み出し動作のセンス期間における動作状態の一例を示す模式図。
図17】第4実施形態に係る磁気記憶装置が備える読み出し回路の回路構成の一例を示す回路図。
図18】第4実施形態に係る磁気記憶装置が備えるメモリセルアレイの断面構造の一例を示す断面図。
図19】第4実施形態に係る磁気記憶装置の読み出し動作の放電期間における動作状態の一例を示す模式図。
図20】第4実施形態に係る磁気記憶装置の読み出し動作におけるビット線及びワード線WLの電圧差の変化の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、各実施形態について図面を参照して説明する。以下で参照される図面は、模式的又は概念的なものである。各図面の寸法及び比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一の符号が付されている。参照符号を構成する文字の後の数字等は、同じ文字を含んだ参照符号によって参照され、且つ同様の構成を有する要素同士を区別するために使用される。同じ文字を含んだ参照符号で示される要素を相互に区別する必要がない場合、これらの要素は文字のみを含んだ参照符号により参照される。
【0009】
なお、本明細書において“接続”とは、電気的に接続されている事を示し、間に別の素子を介することを除外しない。オン状態になったトランジスタやスイッチ回路は、一端及び他端間で導通状態になる。トランジスタやスイッチ回路のオフ状態は、リーク電流のような微少な電流が流れることを除外しない。“H”レベルは、ゲート端に当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオン状態になり、ゲート端に当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオフ状態になる電圧レベルである。“L”レベルは、ゲート端に当該電圧が印加されたN型のトランジスタがオフ状態になり、ゲート端に当該電圧が印加されたP型のトランジスタがオン状態になる電圧レベルである。
【0010】
<1>第1実施形態
以下に、第1実施形態に係る磁気記憶装置1について説明する。
【0011】
<1-1>構成
<1-1-1>メモリシステムMSの全体構成
図1は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1を備えるメモリシステムMSの全体構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、メモリシステムMSは、磁気記憶装置1及びメモリコントローラ2を含む。磁気記憶装置1は、メモリコントローラ2の制御に基づいて動作する。メモリコントローラ2は、外部のホスト機器からの要求(命令)に応答して、読み出し動作、書き込み動作などを磁気記憶装置1に命令し得る。
【0012】
磁気記憶装置1は、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)の一種である。MRAMは、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子をメモリセルに使用した記憶装置であり、抵抗変化型メモリの一種である。MTJ素子は、磁気トンネル接合による磁気抵抗効果(Magnetoresistance effect)を利用する。MTJ素子は、磁気抵抗効果素子(Magnetoresistance effect element)とも呼ばれる。磁気記憶装置1は、例えば、メモリセルアレイ11、入出力回路12、制御回路13、ロウ選択回路14、カラム選択回路15、書き込み回路16、及び読み出し回路17を含む。
【0013】
メモリセルアレイ11は、複数のメモリセルMC、複数のワード線WL、及び複数のビット線BLを含む。図1には、複数のメモリセルMC、複数のワード線、及び複数のビット線のうち、1組のメモリセルMC、ワード線WL、及びビット線BLが示されている。メモリセルMCは、データを不揮発に記憶し得る。メモリセルMCは、1本のワード線WLと、1本のビット線BLとの間に接続され、行(row)、及び列(column)の組に対応付けられる。ワード線WLには、ロウアドレスが割り当てられる。ビット線BLには、カラムアドレスが割り当てられる。1つ又は複数のメモリセルMCが、1つの行の選択、及び1つ又は複数の列の選択により特定され得る。
【0014】
入出力回路12は、メモリコントローラ2に接続され、磁気記憶装置1とメモリコントローラ2との間の通信を司る。入出力回路12は、メモリコントローラ2から受け取った制御信号CNT及びコマンドCMDを、制御回路13に転送する。入出力回路12は、メモリコントローラ2から受け取ったアドレス信号ADDに含まれたロウアドレス及びカラムアドレスを、ロウ選択回路14及びカラム選択回路15にそれぞれ転送する。入出力回路12は、メモリコントローラ2から受け取ったデータDAT(書き込みデータ)を、書き込み回路16に転送する。入出力回路12は、読み出し回路17から受け取ったデータDAT(読み出しデータ)を、メモリコントローラ2に転送する。
【0015】
制御回路13は、磁気記憶装置1の全体の動作を制御する。制御回路13は、例えば、制御信号CNTにより指示される制御とコマンドCMDとに基づいて、読み出し動作や書き込み動作などを実行する。制御回路13は、書き込み動作において、データの書き込みに使用される電圧を書き込み回路16に供給する。制御回路13は、読み出し動作において、データの読み出しに使用される電圧を読み出し回路17に供給する。
【0016】
ロウ選択回路14は、複数のワード線WLに接続される。そして、ロウ選択回路14は、ロウアドレスにより特定された1つのワード線WLを選択する。選択されたワード線WLは、例えば、図示が省略されたドライバ回路と電気的に接続される。
【0017】
カラム選択回路15は、複数のビット線BLに接続される。そして、カラム選択回路15は、カラムアドレスにより特定された1つ又は複数のビット線BLを選択する。選択されたビット線BLは、例えば、図示が省略されたドライバ回路と電気的に接続される。
【0018】
書き込み回路16は、制御回路13の制御と、入出力回路12から受け取ったデータDAT(書き込みデータ)とに基づいて、データの書き込みに使用される電圧をカラム選択回路15に供給する。書き込みデータに基づいた電流がメモリセルMCを介して流れると、メモリセルMCに所望のデータが書き込まれる。
【0019】
読み出し回路17は、複数のセンスアンプを含む。読み出し回路17は、制御回路13の制御に基づいて、データの読み出しに使用される電圧をカラム選択回路15に供給する。そして、各センスアンプが、選択されたビット線BLの電圧又は電流に基づいて、メモリセルMCに記憶されているデータを判定する。それから、読み出し回路17は、判定結果に対応するデータDAT(読み出しデータ)を、入出力回路12に転送する。
【0020】
<1-1-2>メモリセルアレイ11の回路構成
図2は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1が備えるメモリセルアレイ11の回路構成の一例を示す回路図である。図2は、複数のワード線WLのうち2つのワード線WL0及びWL1と、複数のビット線BLのうち2つのビット線BL0及びBL1とを抽出して示している。図2に示すように、メモリセルアレイ11内で、複数のビット線BLと複数のワード線WLとは、交差している。そして、ビット線BLとワード線WLとの交差部分に、メモリセルMCが配置される。つまり、複数のメモリセルMCは、マトリクス状に配置される。具体的には、1つのメモリセルMCが、WL0及びBL0間と、WL0及びBL1間と、WL1及びBL0間と、WL1及びBL1間とのそれぞれに接続される。
【0021】
各メモリセルMCは、可変抵抗素子VR及びセレクタ素子SEを含む。可変抵抗素子VR及びセレクタ素子SEは、関連付けられたビット線BL及びワード線WL間に直列に接続される。例えば、可変抵抗素子VRの一端が、関連付けられたビット線BLに接続される。可変抵抗素子VRの他端が、セレクタ素子SEの一端に接続される。セレクタ素子SEの他端が、関連付けられたワード線WLに接続される。ビット線BL及びワード線WLの間における可変抵抗素子VRとセレクタ素子SEとの接続関係は、逆であってもよい。
【0022】
以下の説明では、可変抵抗素子VRとして磁気抵抗効果素子VRを例に説明する。磁気抵抗効果素子VRの抵抗状態は、磁気抵抗効果素子VRを介して流れる電流に応じて変化し得る。そして、磁気抵抗効果素子VRは、抵抗状態(抵抗値)に基づいて、データを不揮発に記憶する。例えば、高抵抗状態の磁気抵抗効果素子VRを含むメモリセルMCは、“1”データを記憶する。低抵抗状態の磁気抵抗効果素子VRを含むメモリセルMCは、“0”データを記憶する。磁気抵抗効果素子VRの抵抗値に関連付けられたデータの割り当ては、その他の設定であってもよい。
【0023】
セレクタ素子SEは、磁気抵抗効果素子VRへの電流の供給を制御する。具体的には、セレクタ素子SEは、メモリセルMCにセレクタ素子SEの閾値電圧未満の電圧が印加された場合にオフ状態になり、メモリセルMCにセレクタ素子SEの閾値電圧以上の電圧が印加された場合にオン状態になる。オフ状態のセレクタ素子SEは、抵抗値の大きい絶縁体として機能する。オフ状態のセレクタ素子SEは、磁気抵抗効果素子VRに電流が流れることを抑制する。オン状態のセレクタ素子SEは、抵抗値の小さい導電体として機能する。オン状態のセレクタ素子SEに直列に接続された磁気抵抗効果素子VRには、電流が流れる。セレクタ素子SEとしては、例えば、双方向ダイオードが使用される。セレクタ素子SEとしては、トランジスタなどその他の素子が使用されてもよい。
【0024】
<1-1-3>メモリセルアレイ11の構造
以下に、第1実施形態におけるメモリセルアレイ11の構造の一例について説明する。以下の説明では、XYZ直交座標系が使用される。X方向は、ワード線WLの延伸方向に対応する。Y方向は、ビット線BLの延伸方向に対応する。Z方向は、X方向及びY方向のそれぞれと交差する方向であり、磁気記憶装置1が有する基板の表面に対する鉛直方向に対応する。“下”との記述及びその派生語並びに関連語は、Z軸上のより小さい座標の位置を示している。“上”との記述及びその派生語並びに関連語は、Z軸上のより大きい座標の位置を示している。斜視図には、ハッチングが適宜付加されている。斜視図に付加されたハッチングは、ハッチングが付加された構成要素の素材や特性とは関連していない。斜視図及び断面図では、層間絶縁膜などの構成の図示が適宜省略されている。
【0025】
図3は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1が備えるメモリセルアレイ11の構造の一例を示す斜視図である。図3に示すように、メモリセルアレイ11は、複数の導電体層20と複数の導電体層21とを含む。
【0026】
複数の導電体層20のそれぞれは、X方向に延伸した部分を有し、互いに離れている。複数の導電体層20のX方向に延伸した部分は、Y方向に並んでいる。各導電体層20は、ワード線WLとして使用される。複数の導電体層21は、複数の導電体層20が設けられた配線層の上方に設けられる。複数の導電体層21のそれぞれは、Y方向に延伸した部分を有し、互いに離れている。複数の導電体層21のY方向に延伸した部分は、X方向に並んでいる。各導電体層21は、ビット線BLとして使用される。
【0027】
図3の上面視において複数の導電体層20と複数の導電体層21とが交差した部分のそれぞれに、1つのメモリセルMCが配置される。各メモリセルMCは、Z方向に延伸した柱状に設けられる。本例では、メモリセルMCの底面が導電体層20に接し、メモリセルMC上面が導電体層21に接している。具体的には、本例では、導電体層20上に、セレクタ素子SEが設けられている。セレクタ素子SE上に、磁気抵抗効果素子VRが設けられている。磁気抵抗効果素子VR上に、導電体層21が設けられている。
【0028】
なお、磁気抵抗効果素子VRがセレクタ素子SEの上方に設けられる場合について例示したが、これに限定されない。メモリセルアレイ11の回路構成に依っては、磁気抵抗効果素子VRがセレクタ素子SEの下方に設けられてもよい。また、メモリセルMCと導電体層20との間に、他の素子や導電体層が挿入されても良い。同様に、メモリセルMCと導電体層21との間に、他の素子や導電体層が挿入されても良い。導電体層20及び21のそれぞれは、“配線”と呼ばれてもよい。
【0029】
図4は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1が備えるメモリセルアレイ11に含まれたメモリセルMCの断面構造の一例を示す断面図である。図4に示すように、メモリセルMCは、例えば、下方から順に、下部電極30、セレクタ材料層31、上部電極32、強磁性層40、非磁性層41、及び強磁性層42が積層された構造を有する。下部電極30、セレクタ材料層31、及び上部電極32の組が、セレクタ素子SEに対応する。強磁性層40、非磁性層41、及び強磁性層42の組が、磁気抵抗効果素子VRに対応する。
【0030】
強磁性層40及び42のそれぞれは、強磁性体で構成され、膜面に対して垂直な磁化方向を有する。磁気記憶装置1では、例えば、強磁性層40の磁化方向が固定され、強磁性層42の磁化方向が可変とされる。この場合、強磁性層40がMTJ素子の参照層(Reference layer)として機能し、強磁性層42がMTJ素子の記憶層(storage layer)として機能する。非磁性層41は、MgO等の絶縁体で構成され、トンネルバリア層(Tunnel barrier layer)として機能する。強磁性層40及び42は、非磁性層41と共に、磁気トンネル接合を形成する。このような磁気抵抗効果素子VRは、TMR(tunneling magnetoresistive)効果を利用した垂直磁化型のMTJ素子として機能する。
【0031】
磁気抵抗効果素子VRは、強磁性層40及び42のそれぞれの磁化方向の相対関係に応じて、低抵抗状態と高抵抗状態とのいずれかを取り得る。そして、磁気抵抗効果素子VRは、強磁性層42(記憶層)の磁化方向に応じてデータを記憶する。例えば、参照層と記憶層の磁化方向が反平行状態(AP状態)である磁気抵抗効果素子VRは、高抵抗状態(“1”データ)となる。一方で、参照層と記憶層の磁化方向が平行状態(P状態)である磁気抵抗効果素子VRは、低抵抗状態(“0”データ)となる。
【0032】
本例において、磁気抵抗効果素子VRは、強磁性層40から強磁性層42に向かう方向に書き込み電流が流された場合にAP状態となり、強磁性層42から強磁性層40に向かう方向に書き込み電流が流された場合にP状態となる。このように磁気抵抗効果素子VRに対して書き込み電流を流すことによって記憶層及び参照層にスピントルクが注入され、記憶層の磁化方向が制御される書き込み方法は、スピン注入書き込み方式と呼ばれる。磁気抵抗効果素子VRは、強磁性層42の磁化方向を反転させ得る大きさの電流が磁気抵抗効果素子VRに流された場合に、強磁性層40の磁化方向が変化しないように構成される。
【0033】
なお、本明細書において、「磁化方向が可変」とは、書き込み電流によって磁化方向が変わることを示している。「磁化方向が固定」とは、書き込み電流によって磁化方向が変わらないことを示している。磁気抵抗効果素子VRにおいて、記憶層と参照層との配置が入れ替えられてもよい。また、磁気抵抗効果素子VRは、その他の層を備えていてもよい。例えば、磁気抵抗効果素子VRは、参照層の漏れ磁場の影響を抑制するシフトキャンセル層や、SAF(Synthetic Anti-Ferromagnetic)構造などを備えていてもよい。以下では、AP状態の磁気抵抗効果素子VRを含むメモリセルMCのことを、AP状態のメモリセルMCと呼び、P状態の磁気抵抗効果素子VRを含むメモリセルMCのことを、P状態のメモリセルMCと呼ぶ。
【0034】
<1-1-4>読み出し回路17の回路構成
図5は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1が備える読み出し回路17の回路構成の一例を示す回路図である。図5は、第1実施形態のメモリセルアレイ11に含まれた1対のビット線BL及びワード線WLと、1対のビット線BL及びワード線WLの間に接続された1つのメモリセルMCとを併せて示している。図5に示すように、読み出し回路17は、センスアンプSA1及びSA2、電流制限トランジスタ60、並びにシンクトランジスタ61を含む。
【0035】
センスアンプSA1は、1対のビット線BL及びワード線WLに接続される。センスアンプSA1は、接続されたビット線BL及びワード線WLの電圧との電圧差を増幅する差動増幅器である。センスアンプSA1のゲインは、1以上であればよく、可能な範囲で大きい方が好ましい。センスアンプSA2は、センスアンプSA1の出力電圧と参照電圧VREFとを比較し、比較結果に基づいてメモリセルMCに記憶されたデータを判定するように構成される。参照電圧VREFは、“0”データと“1”データとの閾値として使用される電圧である。例えば、センスアンプSA2は、センスアンプSA1の出力電圧がVREF以上である場合に“1”データに対応する電圧を出力し、センスアンプSA2の出力電圧がVREF未満である場合、に“0”データに対応する電圧を出力する。なお、センスアンプSA1に接続される1対のビット線BL及びワード線WLの組み合わせは、ロウ選択回路14及びカラム選択回路15によって変更され得る。また、センスアンプSA1及びSA2の組は、ビット線BL毎に設けられてもよいし、ワード線WL毎に設けられてもよい。
【0036】
電流制限トランジスタ60とシンクトランジスタ61とのそれぞれは、例えば、N型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。電流制限トランジスタ60のドレイン端は、ワード線WLに接続される。電流制限トランジスタ60のソース端は、シンクトランジスタ61のドレイン端に接続される。シンクトランジスタ61のソース端は、接地ノードに接続される。接地ノードには、例えば、接地電圧VSSが印加される。接地電圧VSSは、例えば、0Vである。
【0037】
電流制限トランジスタ60のゲート端には、制御信号CSが入力される。シンクトランジスタ61のゲート端には、制御信号SINKが入力される。制御信号CS及びSINKのそれぞれは、制御回路13によって生成される。制御信号CSは、“H”レベルと“L”レベルとの間の電圧に設定され得る。読み出し動作において、制御回路13は、制御信号CSにより電流制限トランジスタ60が定電流動作するように制御することができる。
【0038】
なお、第1実施形態において、電流制限トランジスタ60は、ワード線WL毎に設けられる。シンクトランジスタ61は、ワード線WL毎に設けられてもよいし、複数のワード線WL間で共有されてもよい。電流制限トランジスタ60とシンクトランジスタ61とが統合されてもよい。この場合、電流制限トランジスタ60の機能とシンクトランジスタ61の機能とが、1つのトランジスタによって実現される。
【0039】
図6は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1における電流制限トランジスタ60の静特性の一例を示すグラフである。横軸は、電流制限トランジスタ60のドレイン-ソース間電圧Vdsを示している。縦軸は、電流制限トランジスタ60のドレイン電流Idsを示している。図6に示すように、電流制限トランジスタ60のゲート端にVLIMITが印加された場合、電流制限トランジスタ60は、定電流動作する。
【0040】
VLIMITは、“H”レベルと“L”レベルとの間の電圧である。VLIMITは、電流制限トランジスタ60のゲート端に印加され且つVdsがピンチオフ電圧Vpを超えた場合に、電流制限トランジスタ60の出力電流がIrd_maxに制限されるように設定される。言い換えると、電流制限トランジスタ60は、ゲート端にVLIMITが印加され且つ飽和領域で動作する場合に、一定の電流Ird_maxを流す定電流源として機能し得る。Ird_maxの詳細については後述する。
【0041】
なお、電流制限トランジスタ60は、ゲート端にVPASSが印加された場合に、線形領域で動作する。VPASSは、VLIMITよりも高い電圧であり、例えば、“H”レベルの電圧に相当する。本明細書において、ゲート端にVPASSが印加された電流制限トランジスタ60は、低抵抗な配線とみなすことができる。
【0042】
<1-2>動作
以下に、第1実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作について説明する。読み出し動作では、まず、ビット線BLとワード線WLとのそれぞれがプリチャージされる。以下では、読み出し動作において、プリチャージが実行される期間のことを、“プリチャージ期間”と呼ぶ。
【0043】
図7は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作のプリチャージ期間における動作状態の一例を示す模式図である。図7に示すように、制御回路13は、プリチャージ期間において、制御信号CS及びSINKのそれぞれを“L”レベルにする。すると、ワード線WLと接地ノードとの間の電流経路が遮断される。また、制御回路13は、プリチャージ期間において、ビット線BLにプリチャージ電圧VPCHを印加し、ワード線WLに、VPCHよりも低いプリチャージ電圧VPCLを印加する。このとき、制御回路13は、ビット線BL及びワード線WLのそれぞれに、対応付けられたプリチャージ電圧を供給するドライバ回路を接続する。プリチャージ電圧VPCLは、例えば、セレクタ素子SEの閾値電圧の半分の電圧である。
【0044】
ビット線BL及びワード線WLのプリチャージが完了すると、制御回路13は、ビット線BL及びワード線WLのそれぞれに対する電圧の印加を停止する。言い換えると、制御回路13は、プリチャージに使用されたドライバ回路と、ビット線BL及びワード線WLとの間の電流経路を遮断する。すると、ビット線BLがフローティング状態となる。それから、制御回路13は、読み出し対象のメモリセルMC(すなわち、選択されたメモリセルMC)を介したビット線BLの放電を開始する。以下では、読み出し動作において、プリチャージされたビット線BLを選択されたメモリセルMCを介して放電する期間のことを、“放電期間”と呼ぶ。
【0045】
図8は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作の放電期間における動作状態の一例を示す模式図である。図8に示すように、制御回路13は、放電期間において、制御回路13は、制御信号CSの電圧をVLIMITに設定する、すなわち、電流制限トランジスタ60のゲート端にVLIMITを印加する。また、制御回路13は、制御信号SINKを“H”レベルにして、シンクトランジスタ61をオン状態にする。その結果、ビット線BL及びワード線WL間のメモリセルMCを介した電流経路と、ワード線WL及び接地ノード間の電流経路とのそれぞれが形成される。以下では、メモリセルMCを介してビット線BLからワード線WLへ流れる電流のことを、Icellと呼ぶ。放電期間において、電流制限トランジスタ60は、定電流動作し、電流制限トランジスタ60を流れる電流をIrd_maxに制限する。電流制限トランジスタ60が定電流動作している場合、Icellは、Ird_maxと等しくなる。
【0046】
その後、ビット線BLの放電に伴いビット線BL及びワード線WLの電圧差が小さくなると、選択されたメモリセルMCのセレクタ素子SEがオフ状態になり、ビット線BLの電圧が固定される。セレクタ素子SEがオフ状態になった際のビット線BLの電圧の高さは、メモリセルMCに記憶されたデータの種別(すなわち、磁気抵抗効果素子VRの抵抗状態)に応じて異なる。以下では、セレクタ素子SEがオフ状態になった際の、磁気抵抗効果素子VRが高抵抗状態である場合のビット線BLの電圧の高さのことを、“VholdH”と呼ぶ。セレクタ素子SEがオフ状態になった際の、磁気抵抗効果素子VRが低抵抗状態である場合のビット線BLの電圧の高さのことを、“VholdL”と呼ぶ。VholdHは、VholdLよりも高い電圧である。センスアンプSA1及びSA2は、放電期間を経て生じた電圧差を利用して、メモリセルMCに記憶されたデータが“0”及び“1”データのいずれであるのかを判定する。以下では、読み出し動作において、メモリセルMCに記憶されたデータの判定に使用される期間のことを、“センス期間”と呼ぶ。
【0047】
図9は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作におけるビット線BL及びワード線WLの電圧差の変化の一例を示すタイムチャートである。縦軸は、ビット線BLとワード線WLとの電圧差V(BLtoWL)を示している。実線は、AP状態のメモリセルMCを読み出し対象とした場合のV(BLtoWL)の変化を示している。破線は、P状態のメモリセルMCを読み出し対象とした場合のV(BLtoWL)の変化を示している。以下に、図9を参照して、読み出し動作におけるV(BLtoWL)の変化について、AP状態のメモリセルMCを読み出し対象とした場合と、P状態のメモリセルMCを読み出し対象とした場合との間で比較しつつ説明する。
【0048】
時刻t0において、制御回路13は、ビット線BL及びワード線WLのそれぞれをプリチャージする。これにより、ビット線BLの電圧は、プリチャージ電圧VPCHまで上昇し、ワード線WLの電圧は、プリチャージ電圧VPCLまで上昇する。すなわち、V(BLtoWL)は、VPCH-VPCLとなる。プリチャージが完了した後、V(BLtoWL)は、VPCH-VPCLに維持される。
【0049】
時刻t1において、制御回路13は、ビット線BLの放電を開始する。すなわち、制御回路13は、ビット線BL及びワード線WLのプリチャージを停止し、制御信号CSの電圧をVLIMITに設定し、制御信号SINKを“H”レベルにする。すると、ワード線WLに充電された電荷が接地ノードへ放電される。ワード線WLの電圧が下降し、メモリセルMCの両端の電圧差(すなわち、V(BLtoWL))が大きくなる。V(BLtoWL)がセレクタ素子SEの閾値電圧を超えると、メモリセルMCのセレクタ素子SEがオン状態になる。これにより、ビット線BLの電荷がメモリセルMCを介してワード線WLへ放電され、ワード線WLの電荷が電流制限トランジスタ60を介して接地ノードへ放電される。
【0050】
時刻t2において、V(BLtoWL)は、電流制限トランジスタ60の定電流動作が始まったことに応じて一定となる。このときのV(BLtoWL)は、P状態の磁気抵抗効果素子VRとAP状態の磁気抵抗効果素子VRとの抵抗差(ΔR_MTJ)に応じて変化する。そして、磁気抵抗効果素子VRがP状態である場合のV(BLtoWL)と、磁気抵抗効果素子VRがAP状態である場合のV(BLtoWL)との電圧差ΔVは、Ird_max*ΔR_MTJとなる。時刻t3に達すると、ビット線BLにプリチャージされた電荷が減少して電流制限トランジスタ60は定電流動作を維持できなくなり、それに応じてV(BLtoWL)が減少する。最後に時刻t4において、セレクタ素子SEはオフ状態になる(図9の“SEオフ”)。このとき、磁気抵抗効果素子VRがP状態である場合、V(BLtoWL)=VholdLとなる。一方で、磁気抵抗効果素子VRがAP状態である場合、V(BLtoWL)=VholdHとなる。
【0051】
第1実施形態の読み出し動作では、時刻t2から時刻t3までの期間が、読み出し動作のセンス期間に対応する。すなわち、第1実施形態において、センスアンプSA1及びSA2は、時刻t2と時刻t3との間の期間内の所定の時刻において、メモリセルMCに記憶されたデータを判定する。その後、制御回路13は、読み出し動作を完了する。なお、制御回路13は、センスアンプSA1及びSA2によるデータの判定が完了し次第、読み出し動作の完了処理を開始してもよい。第1実施形態に係る磁気記憶装置1では、センスアンプSA1及びSA2が、時刻t2から時刻t3までの期間において、データを判定することがより好ましい。
【0052】
<1-3>第1実施形態の効果
以上で説明された第1実施形態に係る磁気記憶装置1に依れば、読み出し性能を改善させることができる。以下に、第1実施形態の効果の詳細について説明する。
【0053】
磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)は、高速且つ低電圧で動作可能な不揮発性メモリとして知られている。MTJ素子(磁気抵抗効果素子VR)とセレクタ素子SEとが積層された1S1M型セル構造のメモリセルMCは、高集積化と三次元積層化とによって、大容量を実現できる。1S1M型セル構造のメモリセルMCにおいて、MTJ素子に記憶された情報(データ)を読み出す方法としては、メモリセルMCの両端をプリチャージした後に放電し、放電中又は放電後の残留電圧を読み出す方法が知られている。この場合、センスアンプSAは、P状態のメモリセルMCの両端の電圧とAP状態のメモリセルMCの両端の電圧との電圧差(ΔV)に基づいて、メモリセルMCに記憶されたデータを判定する。このため、MRAMでは、ΔVをできるだけ大きくすることによって、安定したデータの読み出しが可能となる。
【0054】
図10は、平行状態のメモリセルMCの両端の電圧と反平行状態のメモリセルMCの両端の電圧との差ΔVと読み出し電流Icellとの関係性の一例を示すグラフである。縦軸は、ΔVを示している。横軸は、Icellを示している。図10に示すように、ΔVは、ある読み出し電流において最大値をとり、それ以外の電流値においては低下する傾向を有する。具体的には、ΔVは、ΔR*Icellにより算出され得る。ΔRは、P状態のメモリセルMCとAP状態のメモリセルMCとの抵抗差に対応する。Icellが小さすぎる場合には、Icellが低下した分だけΔVが低下する(Icell減衰)。Icellが減衰してIholdまで下がると、セレクタ素子SEがオフ状態へ遷移する。一方で、Icellが大きすぎる場合には、磁気抵抗比(MR比)のバイアス依存性により、ΔRが低下し、ΔVが低下する(ΔR減衰)。
【0055】
言い換えると、読み出し動作におけるビット線BL及びワード線WLの放電が開始した後のある時刻において、メモリセルMCに含まれた磁気抵抗効果素子VRが平行状態である場合のビット線BL及びワード線WLの電圧差は第1判定電圧である。また、メモリセルMCに含まれた磁気抵抗効果素子が反平行状態である場合のビット線BL及びワード線WLの電圧差は、第1判定電圧よりも高い第2判定電圧である。そして、第1判定電圧と第2判定電圧との電圧差(すなわちΔV)は、メモリセルMCにIrd_maxよりも小さい電流が流れている場合と、メモリセルMCにIrd_maxよりも大きい電流が流れている場合とのそれぞれよりも、メモリセルMCにIrd_maxが流れている場合の方が大きい。
【0056】
また、Icellが大きすぎる場合、読み出し中の誤書き込み(リードディスターブ)や、MTJ素子のトンネルバリア破壊(ブレイクダウン)が発生するおそれがある。図10では、リードディスターブが発生する読み出し電流の値が“Idisturb”により示されている。また、ブレイクダウンが発生する読み出し電流の値が“Ibd”により示されている。
【0057】
このように、ΔVは、Icellの大きさに応じて変化する。つまり、ΔVを最大化するためには、Icellが最適化されることが好ましい。一方で、メモリセルMCに接続された配線の抵抗は、メモリセルMCのアドレス、すなわちメモリセルアレイ11内のメモリセルMCの位置によって異なる。そして、Icellの値は、配線の抵抗に応じて変動し得るため、全てのアドレスのメモリセルMCで一定に保つことは困難である。
【0058】
そこで、第1実施形態に係る磁気記憶装置1は、メモリセルMC間の読み出し電流Icellの変動を、電流制限トランジスタ60の定電流動作によって抑制する。具体的には、読み出し回路17が、ワード線WLと接地ノードとの間に接続された電流制限トランジスタ60を有している。電流制限トランジスタ60は、センスアンプSA1に接続されたビット線BL及びワード線WLの外側に存在する。センスアンプSA1は、ビット線BLとワード線WLとの間の電圧差に応じてメモリセルMCの両端の電圧を検出するように設けられる。つまり、第1実施形態のセンスアンプSA1は、電流制限トランジスタ60に印加される電圧を除いた、1S1M型セル構造のメモリセルMCの電圧を検出するように構成される。そして、電流制限トランジスタ60のゲート端に、トランジスタの飽和電流がIrd_maxとなるようなゲート電圧(VLIMIT)が印加される。
【0059】
図11は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1における平行状態のメモリセルMCの両端の電圧と反平行状態のメモリセルMCの両端の電圧との差ΔVと読み出し電流Icellとの関係性の一例を示すグラフである。図11に示すように、第1実施形態に係る磁気記憶装置1では、Icell=Ird_maxであるときにΔVが最大値となる。Ird_maxは、リードディスターブを起こすIdisturbやブレイクダウンを起こすIbdよりも小さく、且つIholdよりも大きい。
【0060】
読み出し動作において、ビット線BL及びワード線WLのそれぞれがプリチャージされ、ワード線WLが接地ノードに接続され、電流制限トランジスタ60にVLIMITが印加されると、ワード線WLに充電された電荷が接地ノードへ放電される。このとき、動作点(1)により示されたΔVとなる。そして、ビット線BLに充電された電荷も、メモリセルMCを経由して接地ノードへ放電される。このとき接地ノードへ放電される電流は、電流制限トランジスタ60によって制限されるため、IcellがIrd_maxに制限される。すると、動作点(2)により示されたΔVとなる。Ird_maxは、IdisturbやIbdよりも小さく設定されているため、放電中のリードディスターブやブレイクダウンは防止される。その後、ビット線BLに充電された電荷が減り、電流制限トランジスタ60の出力電流がIrd_maxを維持できなくなると、IcellがIholdまで下がる。すると、セレクタ素子SEがオフ状態へ遷移する。このとき、動作点(3)により示されたΔVとなる。第1実施形態では、メモリセルMCに記憶されたデータをセンスアンプSA1及びSA2により読み出す場合に、動作点(2)又は動作点(3)で電圧をセンスする。なお、第1実施形態では、動作点(2)でセンスした方が、読み出し電流がIrd_maxとなり、ΔVが最大となるためより好ましい。
【0061】
以上のように、第1実施形態に係る磁気記憶装置1は、電流制限トランジスタ60を用いて読み出し動作時のIcellを制限することによって、過剰なIcellをメモリセルMCに供給することを抑制できる。従って、第1実施形態に係る磁気記憶装置1は、リードディスターブやブレイクダウンの発生を抑制することができる。また、第1実施形態に係る磁気記憶装置1は、センス時における読み出し電流を、電流制限トランジスタ60によってIrd_maxに制限することによって、ΔVを最大化することができる。この場合、第1実施形態に係る磁気記憶装置1は、読み出しマージンを拡大することができ、データの判定精度を向上(読み出しエラーを低減)させることができる。このように、第1実施形態に係る磁気記憶装置1は、読み出し性能を改善させることができる。
【0062】
<2>第2実施形態
第2実施形態に係る磁気記憶装置1は、読み出し動作において電流制限トランジスタ60に印加する電圧を、読み出し動作の進行に応じて切り替える。以下に、第2実施形態に係る磁気記憶装置1について、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0063】
<2-1>構成
第2実施形態に係る磁気記憶装置1の構成は、第1実施形態と同様である。
【0064】
<2-2>動作
図12は、第2実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作における電流制限トランジスタ60の制御方法の一例を示すタイムチャートである。縦軸は、制御信号CSの電圧値VCSを示している。図12に示された時刻t0~時刻t4は、後で参照される図13に示された時刻t0~時刻t4にそれぞれ対応する。
【0065】
図12に示すように、制御回路13は、時刻t0~時刻t1間において、制御信号CSの電圧値VCSをVPASSに設定する。制御回路13は、時刻t1及び時刻t3間において、制御信号CSの電圧値VCSをVLIMITに設定する。制御回路13は、時刻t3及び時刻t4間において、制御信号CSの電圧値VCSをVPASSに設定する。時刻t2から時刻t3までの期間は、第2実施形態におけるセンス期間に対応する。
【0066】
すなわち、第2実施形態の読み出し動作において、制御回路13は、センス期間において電流制限トランジスタ60のゲート端にVLIMITを印加し、読み出し電流IcellをIrd_maxに制限する。また、制御回路13は、プリチャージ期間後のセンス期間以外の期間において電流制限トランジスタ60のゲート端にVPASSを印加し、読み出し電流IcellをIrd_maxよりも増加させる。以下では、プリチャージ期間後のセンス期間以外の期間のことを、“非センス期間”と呼ぶ。
【0067】
図13は、第2実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作におけるビット線BL及びワード線WLの電圧差の変化の一例を示すタイムチャートである。縦軸は、ビット線BLとワード線WLとの電圧差V(BLtoWL)を示している。以下に、図13を参照して、第2実施形態の読み出し動作におけるV(BLtoWL)の変化について、AP状態のメモリセルMCを読み出し対象とした場合と、P状態のメモリセルMCを読み出し対象とした場合との間で比較しつつ説明する。
【0068】
時刻t0において、制御回路13は、ビット線BL及びワード線WLのそれぞれをプリチャージする。これにより、ビット線BLの電圧は、プリチャージ電圧VPCHまで上昇し、ワード線WLの電圧は、プリチャージ電圧VPCLまで上昇する。すなわち、V(BLtoWL)は、VPCH-VPCLとなる。プリチャージが完了した後、V(BLtoWL)は、VPCH-VPCLに維持される。
【0069】
時刻t1において、制御回路13は、ビット線BLの放電を開始する。すなわち、制御回路13は、ビット線BL及びワード線WLのプリチャージを停止し、制御信号SINKを“H”レベルにする。また、時刻t1において、制御回路13は、電流制限トランジスタ60のゲート電圧を、VLIMITに設定する。このとき、ワード線WLに充電された電荷の接地ノードへの放電速度は、第1実施形態と同様である。そして、ワード線WLの電圧が下降し、メモリセルMCの両端の電圧差(すなわち、V(BLtoWL))が大きくなる。V(BLtoWL)がセレクタ素子SEの閾値電圧を超えると、メモリセルMCのセレクタ素子SEがオン状態になる。これにより、ビット線BLの電荷がメモリセルMCを介してワード線WLへ放電され、ワード線WLの電荷が電流制限トランジスタ60を介して接地ノードへ放電される。
【0070】
時刻t2において、電流制限トランジスタ60のゲート電圧は、VLIMITに維持され、電流制限トランジスタ60は、定電流動作を開始する。すると、V(BLtoWL)は、電流制限トランジスタ60の定電流動作が始まったことに応じて一定となる。このときのV(BLtoWL)は、P状態の磁気抵抗効果素子VRとAP状態の磁気抵抗効果素子VRとの抵抗差(ΔR_MTJ)に応じて変化する。そして、磁気抵抗効果素子VRがP状態である場合のV(BLtoWL)と、磁気抵抗効果素子VRがAP状態である場合のV(BLtoWL)との電圧差ΔVは、Ird_max*ΔR_MTJとなる。第2実施形態の読み出し動作において、センスアンプSA1及びSA2は、時刻t2から時刻t3までの期間(センス期間)内の所定の時刻において、メモリセルMCに記憶されたデータを判定する。
【0071】
時刻t3において、制御回路13は、電流制限トランジスタ60のゲート電圧をVLIMITからVPASSに変更して、電流制限トランジスタ60の定電流動作を終了する。つまり、電流制限トランジスタ60が導通状態となる。すると、ワード線WLの電荷が、導通状態の電流制限トランジスタ60を介して接地ノードへ放電される。このとき、メモリセルMCを流れる電流量がIrd_maxより一時的に増えるため、V(BLtoWL)が一時的に大きくなる。それから、ビット線BLの電荷が、オン状態のセレクタ素子SEを含むメモリセルMCを介してワード線WLへ放電され、ワード線WLの電荷が電流制限トランジスタ60を介して接地ノードへ放電される。その結果、V(BLtoWL)が減少する。
【0072】
その後、ビット線BLにプリチャージされた電荷が減少すると、時刻t4において、セレクタ素子SEはオフ状態になる(図13の“SEオフ”)。このとき、磁気抵抗効果素子VRがP状態である場合、V(BLtoWL)=VholdLとなる。一方で、磁気抵抗効果素子VRがAP状態である場合、V(BLtoWL)=VholdHとなる。その後、制御回路13は、読み出し動作を完了する。なお、制御回路13は、センスアンプSA1及びSA2によるデータの判定が完了し次第、読み出し動作の完了処理を開始してもよい。
【0073】
<2-3>第2実施形態の効果
以上のように、第2実施形態に係る磁気記憶装置1では、メモリセルMCに印加された電圧を判定する期間(センス期間)のみ電流制限トランジスタ60を定電流動作させ、それ以外の期間(非センス期間)では電流制限トランジスタ60による電流制限を無効化する。具体的には、制御回路13が、センス期間において電流制限トランジスタ60にVLIMITを印加し、非センス期間において電流制限トランジスタ60にVPASSを印加する。VPASSが印加された電流制限トランジスタ60は、抵抗が極めて小さくなり、導通状態となる。これにより、非センス期間におけるビット線BL及びワード線WLの放電速度が、センス期間におけるビット線BL及びワード線WLの放電速度よりも早くなる。
【0074】
その結果、第2実施形態に係る磁気記憶装置1は、第1実施形態と同様に、リードディスターブやブレイクダウンの発生を抑制し、且つデータの判定制度を向上させることができ、さらに、読み出し動作に要するサイクル時間を短縮することができる。このように、第2実施形態に係る磁気記憶装置1は、読み出し性能を向上させることができる。
【0075】
<3>第3実施形態
第3実施形態に係る磁気記憶装置1は、第2実施形態と同様の動作を、第2実施形態と異なる読み出し回路17の構成により実現する。以下に、第3実施形態に係る磁気記憶装置1について、第1及び第2実施形態と異なる点を主に説明する。
【0076】
<3-1>構成
第3実施形態に係る磁気記憶装置1は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1において、読み出し回路17が、読み出し回路17Aに置き換えられた構成を有する。
【0077】
図14は、第3実施形態に係る磁気記憶装置1が備える読み出し回路17Aの回路構成の一例を示す回路図である。図14は、第3実施形態のメモリセルアレイ11に含まれた1対のビット線BL及びワード線WLと、1対のビット線BL及びワード線WLの間に接続された1つのメモリセルMCとを併せて示している。図14に示すように、読み出し回路17Aは、第1実施形態の読み出し回路17に対して、スイッチ回路62が追加された構成を有する。
【0078】
スイッチ回路62は、ワード線WLと、電流制限トランジスタ60のソースとの間に接続される。スイッチ回路62は、制御回路13によって、オン状態又はオフ状態に制御される。スイッチ回路62のオン状態は、ワード線WLと電流制限トランジスタ60のソースとの間のスイッチ回路62を介した電流経路を形成する低抵抗な状態(導通状態)である。スイッチ回路62のオフ状態は、ワード線WLと電流制限トランジスタ60のソースとの間のスイッチ回路62を介した電流経路が遮断された状態(非導通状態)である。スイッチ回路62は、例えば、MOSFETである。スイッチ回路62は、ワード線WL毎に設けられてもよいし、複数のワード線WL間で共有されてもよい。また、ワード線WLと接地ノードとの間において、スイッチ回路62は、シンクトランジスタ61を介することなく接続されてもよい。
【0079】
第3実施形態に係る磁気記憶装置1のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0080】
<3-2>動作
第3実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作におけるビット線BLの電圧の変化を示すタイムチャートは、図13に示された第2実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作のタイムチャートと同様である。以下に、図13を適宜参照して、第3実施形態の読み出し動作と第2実施形態の読み出し動作との間で異なる点を主に説明する。
【0081】
第3実施形態の読み出し動作の時刻t0において、制御回路13は、電流制限トランジスタ60、シンクトランジスタ61、及びスイッチ回路62のそれぞれをオフ状態に制御する。これにより、ワード線WL及び接地ノード間の電流経路が遮断され、プリチャージ期間においてビット線BL及びワード線WLのそれぞれが所定の電圧にプリチャージされる。その結果、V(BLtoWL)が、VPCH-VPCLとなる。
【0082】
図15は、第3実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作の非センス期間における動作状態の一例を示す模式図である。第3実施形態の読み出し動作の時刻t1において、制御回路13は、図15に示すように、制御信号SINKを“H”レベルに設定し、スイッチ回路62をオン状態に制御する。これにより、ワード線WLと接地ノードとの間に、スイッチ回路62を介した電流経路が形成される。その結果、Icellが、スイッチ回路62を介した放電によって、Ird_maxよりも大きくなる。なお、図15では、制御信号CSの電圧が“L”レベルである場合が例示されている。これに限定されず、時刻t1において、制御信号CSの電圧がVLIMITに設定されていてもよい。すなわち、時刻t1において、並列に接続された電流制限トランジスタ60とスイッチ回路62とを介して、ビット線BL及びワード線WLが放電されてもよい。
【0083】
図16は、第3実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作のセンス期間における動作状態の一例を示す模式図である。第3実施形態の読み出し動作の時刻t2と時刻t3との間の期間において、制御回路13は、図16に示すように、制御信号CSの電圧をVLIMITに設定し、スイッチ回路62をオフ状態に制御する。これにより、ワード線WLと接地ノードとの間の電流経路が、電流制限トランジスタ60を介した経路に限定される。その結果、センス期間において、ワード線WLから接地ノードへ流れる電流が、電流制限トランジスタ60によってIrd_maxに制限される。このときのV(BLtoWL)は、第2実施形態と同様に、P状態の磁気抵抗効果素子VRとAP状態の磁気抵抗効果素子VRとの抵抗差(ΔR_MTJ)に応じて変化する。具体的には、磁気抵抗効果素子VRがP状態である場合のV(BLtoWL)と、磁気抵抗効果素子VRがAP状態である場合のV(BLtoWL)との電圧差ΔVは、Ird_max*ΔR_MTJとなる。第3実施形態の読み出し動作において、センスアンプSA1及びSA2は、第2実施形態と同様に、時刻t2から時刻t3までの期間(センス期間)内の所定の時刻において、メモリセルMCに記憶されたデータを判定する。
【0084】
時刻t3において、制御回路13は、スイッチ回路62をオン状態に制御して、電流制限トランジスタ60による定電流動作を終了する。具体的には、ワード線WL及び接地ノードとの間が、スイッチ回路62を介して導通状態になる。そして、ワード線WLの電荷が、オン状態のスイッチ素子62を介して接地ノードへ放電される。このとき、メモリセルMCを流れる電流量がIrd_maxより一時的に増えるため、V(BLtoWL)が一時的に大きくなる。それから、ビット線BLの電荷が、オン状態のセレクタ素子SEを含むメモリセルMCを介してワード線WLへ放電され、ワード線WLの電荷がオン状態のスイッチ素子62を介して接地ノードへ放電される。その結果、V(BLtoWL)が減少する。
【0085】
その後、ビット線BLにプリチャージされた電荷が減少すると、時刻t4において、セレクタSEはオフ状態になる(図13の“SEオフ”)。このとき、磁気抵抗効果素子VRがP状態である場合、V(BLtoWL)=VholdLとなる。一方で、磁気抵抗効果素子VRがAP状態である場合、V(BLtoWL)=VholdHとなる。その後、制御回路13は、読み出し動作を完了する。なお、制御回路13は、センスアンプSA1及びSA2によるデータの判定が完了し次第、読み出し動作の完了処理を開始してもよい。
【0086】
<3-3>第3実施形態の効果
以上のように、第3実施形態に係る磁気記憶装置1は、第2実施形態に対して、電流制限トランジスタ60と並列に接続されたスイッチ回路62が追加された構成を有している。そして、第3実施形態に係る磁気記憶装置1は、メモリセルMCに印加された電圧を判定する期間(センス期間)のみスイッチ回路62をオフ状態にし、且つ電流制限トランジスタ60を定電流動作させ、それ以外の期間(非センス期間)ではスイッチ回路62をオン状態にして、ワード線WLと接地ノードとの間の電流経路を形成させる。
【0087】
その結果、第3実施形態に係る磁気記憶装置1は、第3実施形態と同様に、センス期間におけるIcellを電流制限トランジスタ60による制限に基づくIrd_maxに設定することができ、非センス期間におけるIcellをIrd_maxよりも多くすることができる。従って、第3実施形態に係る磁気記憶装置1は、第1実施形態と同様に、リードディスターブやブレイクダウンの発生を抑制し、且つデータの判定制度を向上させることができ、さらに、第2実施形態と同様に、読み出し動作に要するサイクル時間を短縮することができる。このように、第3実施形態に係る磁気記憶装置1は、読み出し性能を向上させることができる。
【0088】
<4>第4実施形態
第4実施形態に係る磁気記憶装置1は、メモリセルMC毎に電流制限トランジスタ60が設けられた構成により、読み出し性能を改善する。以下に、第4実施形態に係る磁気記憶装置1について、第1~第3実施形態と異なる点を主に説明する。
【0089】
<4-1>構成
第4実施形態に係る磁気記憶装置1は、第1実施形態に係る磁気記憶装置1において、読み出し回路17が、読み出し回路17Bに置き換えられた構成を有する。
【0090】
<4-1-1>読み出し回路17Bの構成
図17は、第4実施形態に係る磁気記憶装置1が備える読み出し回路17Bの回路構成の一例を示す回路図である。図17は、第4実施形態のメモリセルアレイ11に含まれた1対のビット線BL及びワード線WLと、1対のビット線BL及びワード線WLの間に接続された1つのメモリセルMCとを併せて示している。図17に示すように、読み出し回路17Bは、第1実施形態の読み出し回路17に対して、センスアンプSA1が省略され、電流制限トランジスタ60の配置が異なる構成を有する。以下では、第4実施形態の電流制限トランジスタ60のことを、電流制限トランジスタ60Aと呼ぶ。
【0091】
読み出し回路17Bにおいて、センスアンプSA2は、ビット線BLに接続される。そして、センスアンプSA2は、ビット線BLの出力電圧と、参照電圧VREFとの差を増幅する。それから、センスアンプSA2は、増幅した電圧に基づいて、選択されたメモリセルMCに記憶されたデータを判定する。例えば、読み出し回路17BのセンスアンプSA2は、ビット線BLの電圧がVREF以上である場合に“1”データに対応する電圧を出力し、ビット線BLの電圧がVREF未満である場合、に“0”データに対応する電圧を出力する。
【0092】
電流制限トランジスタ60Aは、メモリセルMC毎に設けられる。すなわち、電流制限トランジスタ60Aは、関連付けられたビット線BL及びワード線WLの間に、メモリセルMCと共に直列に接続される。具体的には、第4実施形態において、メモリセルMCの一端(例えば、磁気抵抗効果素子VR)は、ビット線BLに接続される。メモリセルMCの他端(例えば、セレクタ素子SE)は、電流制限トランジスタ60Aのドレイン端に接続される。電流制限トランジスタ60Aのソース端は、ワード線WLに接続される。電流制限トランジスタ60Aのゲート端には、制御信号CSが入力される。第4実施形態のシンクトランジスタ61は、ワード線WLと接地ノードとの間に接続される。
【0093】
<4-1-2>メモリセルアレイの構造
図18は、第4実施形態に係る磁気記憶装置1が備えるメモリセルアレイ11の断面構造の一例を示す断面図である。図18は、Y方向に並んだ3つのメモリセルMCに対応付けられたビット線BL、3つのワード線WL、及び3つの電流制限トランジスタ60Aに関する構造を示している。以下では、1対の導電体層20(ワード線WL)及び導電体層21(ビット線BL)に注目して、電流制限トランジスタ60Aに関する構造について説明する。図18に示すように、第4実施形態に係る磁気記憶装置1は、例えば、絶縁体層70、導電体層71、絶縁体層72、絶縁膜73、下部電極74、半導体層75、及び上部電極76を含む。
【0094】
絶縁体層70、導電体層71、及び絶縁体層72は、この順番に積層されている。絶縁体層70、導電体層71、及び絶縁体層72の組は、例えば、XY平面に沿って広がった平板状に設けられ、複数の導電体層20と複数の導電体層21との間の層に位置する。本例では、絶縁体層70の底面の高さが、複数の導電体層20(ワード線WL)の上面の高さと揃っている。また、絶縁体層72の上面の高さが、メモリセルMC(セレクタ素子SE)の底面の高さと揃っている。絶縁体層70及び72のそれぞれは、“スペーサ絶縁膜”と呼ばれてもよい。
【0095】
絶縁膜73、下部電極74、半導体層75、及び上部電極76の組は、絶縁体層70、導電体層71、及び絶縁体層72の組をZ方向に沿って貫通して設けられたホール内に設けられる。すなわち、絶縁膜73、下部電極74、半導体層75、及び上部電極76の組は、Z方向に沿って延伸した柱状に設けられる。絶縁膜73は、Z方向に沿って延伸した円筒形状に設けられる。なお、絶縁膜73の平面形状は、筒状であればよく、円形状に限定されない。下部電極74は、対応付けられた導電体層20上に設けられる。半導体層75は、下部電極74上に設けられる。上部電極76は、半導体層75上に設けられる。上部電極76の上面は、例えば、メモリセルMCの底面(セレクタ素子SEの底面)に接している。下部電極74、半導体層75、及び上部電極76のそれぞれの側面は、絶縁膜73に囲まれている。絶縁膜73は、“スペーサ絶縁膜”と呼ばれてもよい。
【0096】
以上で説明された絶縁膜73、下部電極74、半導体層75、及び上部電極76の組に対応する構造は、メモリセルMC毎に設けられる。また、導電体層71は、電流制限トランジスタ60Aのゲート電極に対応する。絶縁膜73は、電流制限トランジスタ60Aのゲート絶縁膜に対応する。半導体層75は、電流制限トランジスタ60Aのチャネルに対応する。制御回路13は、導電体層71に制御信号CSに対応する電圧を印加することによって、メモリセルMC及び導電体層20間で半導体層75を介した電流(電流制限トランジスタ60Aを介した電流)を流すことができる。
【0097】
第3実施形態に係る磁気記憶装置1のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0098】
<4-2>動作
以下に、第4実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作について説明する。
【0099】
第4実施形態の読み出し動作は、第1実施形態と同様に、プリチャージ期間、放電期間、及びセレクタ素子SEのオフ状態遷移による放電停止期間とを含む。具体的には、まず、第1実施形態と同様に、ビット線BLとワード線WLとのそれぞれがプリチャージされる。ビット線BL及びワード線WLのプリチャージが完了すると、制御回路13は、ビット線BLをフローティング状態にして、読み出し対象のメモリセルMCを介したビット線BLの放電とワード線WLの放電とを開始する。
【0100】
図19は、第4実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作の放電期間における動作状態の一例を示す模式図である。図19に示すように、制御回路13は、放電期間において、第1実施形態と同様に、制御信号CSの電圧をVLIMITに設定し、制御信号SINKを“H”レベルにする。すると、ビット線BL及びワード線WL間のメモリセルMC及び電流制限トランジスタ60Aを介した電流経路と、ワード線WL及び接地ノード間の電流経路とのそれぞれが形成される。放電期間において、電流制限トランジスタ60Aは、定電流動作し、電流制限トランジスタ60Aを流れる電流をIrd_maxに制限する。その後、ビット線BL及びワード線WLの放電に伴いビット線BL及びワード線WLの電圧差が小さくなると、メモリセルMCのセレクタ素子SEがオフ状態になる。第4実施形態の読み出し動作では、セレクタ素子SEがオフ状態になった後に、データが判定される。
【0101】
図20は、第4実施形態に係る磁気記憶装置1の読み出し動作におけるビット線BL及びワード線WLの電圧差の変化の一例を示すタイムチャートである。縦軸は、ビット線BLとワード線WLとの電圧差V(BLtoWL)を示している。以下に、図20を参照して、第4実施形態の読み出し動作におけるV(BLtoWL)の変化について、AP状態のメモリセルMCを読み出し対象とした場合と、P状態のメモリセルMCを読み出し対象とした場合との間で比較しつつ説明する。
【0102】
時刻t0において、制御回路13は、第1実施形態と同様に、ワード線WL及びビット線BLのそれぞれをプリチャージする。すると、V(BLtoWL)が、VPCH-VPLになる。時刻t1において、制御回路13は、ビット線BL及びワード線WLのプリチャージを停止し、制御信号CSの電圧をVLIMITに設定し、制御信号SINKを“H”レベルにする。すると、V(BLtoWL)が、電流制限トランジスタ60Aにより制限された電流に応じて下降する。第4実施形態では、メモリセルMCと電流制限トランジスタ60Aとの直列電圧が検知されるため、ビット線BLの放電途中において、メモリセルMCがAP状態である場合のV(BLtoWL)と、メモリセルMCがP状態である場合のV(BLtoWL)との間で電圧差が発生しない。
【0103】
ビット線BLの放電に伴いV(BLtoWL)が所定の電圧まで下降すると、セレクタ素子SEがオフ状態になる(SEオフ)。すると、メモリセルMCがAP状態である場合のV(BLtoWL)と、メモリセルMCがP状態である場合のV(BLtoWL)との間で電圧差が発生する。電圧差が一定になった際のAP状態のメモリセルMCに対応するビット線BLの電圧値は、VholdHである。電圧差が一定になった際のP状態のメモリセルMCに対応するビット線BLの電圧値は、VholdLである。
【0104】
そして、第4実施形態では、セレクタ素子SEがオフ状態になった後に、センス動作を実行する。具体的には、電圧差が発生した後に、センス期間を示す時刻t2及び時刻t3が設定されている。時刻t2及び時刻t3の間の期間(センス期間)において、センスアンプSA2は、所定の時刻においてメモリセルMCのデータを判定する。その後、制御回路13は、読み出し動作を完了する。なお、制御回路13は、センスアンプSA2によるデータの判定が完了し次第、読み出し動作の完了処理を開始してもよい。
【0105】
<4-3>第4実施形態の効果
以上のように、第4実施形態に係る磁気記憶装置1は、1S1M型セル構造の直下に電流制限トランジスタ60Aが配置された構成を有している。回路図上では、ワード線WLと1S1M型セル構造のメモリセルMCとの間に電流制限トランジスタ60Aが挿入されたような構成となる。読み出し動作において、電流制限トランジスタ60Aのゲート電位は、全てのメモリセルMCで共通でよい。このため、電流制限トランジスタ60Aのゲート電極は、ライン状でなく、板状に形成することが可能である。すなわち、電流制限トランジスタ60Aを形成する工程において、ライン状に加工する工程が不要となる。従って、第4実施形態に係る磁気記憶装置1の構造は、セレクタ素子SEを利用しない1T1M型のMRAMと比べて、高密度化が容易である。
【0106】
また、第4実施形態に係る磁気記憶装置1は、電流制限トランジスタ60Aのゲート端に印加されたVLIMITによって、1S1M型セル構造のメモリセルMCに流れる電流がIrd_maxに制限される。すなわち、第4実施形態に係る磁気記憶装置1では、Ird_maxがIdisturb及びIbdよりも低く設定されることによって、読み出し動作中のリードディスターブやブレイクダウンが抑制され得る。従って、第4実施形態に係る磁気記憶装置1は、読み出し性能を向上させることができる。
【0107】
<5>その他
上記実施形態において、ビット線BLとワード線WLとは、対称関係を有する。すなわち、上記実施形態において、ビット線BLがワード線WLに読み替えられ、ワード線WLがビット線BLに読み替えられてもよい。また、上記実施形態では、電流制限トランジスタ60がソース接地のMOSFETである場合について例示したが、これに限定されない。電流制限トランジスタ60としては、接合電界効果トランジスタ(JFET)や、エミッタ接地のバイポーラ接合トランジスタ(BJT)が使用されてもよい。電流制限トランジスタ60としてバイポーラ接合トランジスタが使用される場合、ゲート電圧がベース電流に読み替えられ、ゲート端がベース端に読み替えられ、ドレイン端がコレクタ端に読み替えられ、ソース端がエミッタ端に読み替えられる。電流制限トランジスタ60とシンクトランジスタ61とのそれぞれは、単に“トランジスタ”と呼ばれてもよい。
【0108】
上記実施形態において、Idisturbは、書き込み電流に相当する。書き込み電流が磁気抵抗効果素子VRに流れると、書き込み電流が流れる方向に基づいて、磁気抵抗効果素子VRが平行状態又は反平行状態に遷移する。Idisturbは、例えば、40~80uAである。このIdisturbの数値は、MTJ素子の素子抵抗RAが5Ωumである場合の書き込み電流の値に基づいている。Ibdは、例えば、250~315uAである。このIbdの数値は、RA=5Ωumであり、MTJ素子の抵抗値Rが4~5kΩであり、ブレイクダウン電圧Vbd=1.26Vである場合に、Ωの法則(Ibd=Vbd/R)に基づいて算出された値に基づいている。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
1…磁気記憶装置、2…メモリコントローラ、11…メモリセルアレイ、12…入出力回路、13…制御回路、14…ロウ選択回路、15…カラム選択回路、16…書き込み回路、17,17A,17B…読み出し回路、20,21…導電体層、30…下部電極、31…セレクタ材料層、32…上部電極、40,42…強磁性層、41…非磁性層、60,60A…電流制限トランジスタ、61…シンクトランジスタ、62…スイッチ回路、70,72…絶縁体層、71…導電体層、73…絶縁膜、74…下部電極、75…半導体層、76…上部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20