(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137041
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】投写型表示装置およびプリズム交換方法
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240927BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240927BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20240927BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 D
G02B7/00 F
H04N5/64 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048394
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】300016765
【氏名又は名称】シャープNECディスプレイソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100129115
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(74)【代理人】
【識別番号】100131473
【弁理士】
【氏名又は名称】覚田 功二
(72)【発明者】
【氏名】北野 泰弘
【テーマコード(参考)】
2H043
2K203
【Fターム(参考)】
2H043AE07
2H043AE23
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FB04
2K203GB23
2K203GB29
2K203GB30
2K203HA13
2K203HB28
2K203KA77
2K203KA78
2K203MA38
(57)【要約】
【課題】液晶パネルを傷付けることなく容易にかつ効率よく交換することができる。
【解決手段】画像光形成装置4は、液晶パネル21を装着し、プリズムベース22を一体に設けたプリズム20と、プリズムベース22を上側から着脱可能に固定させる取付台座32を有するレンズマウント30と、を備え、取付台座32は、ピン321と、ボス322と、を有し、プリズムベース22には、ピン321に係合するピン係合穴221と、ボス322と同軸に設けられるガイド穴222と、を有し、プリズムベース22は、ガイド穴222の第1中心軸O1をボス322の第2中心軸O2に一致させた状態で上下方向X3に移動可能に設けられる投写型表示装置を提供する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置と、
前記光源装置から出力された光に基づいて画像光を作る画像光形成装置と、
前記画像光形成装置から出力された画像光を拡大して表示面に投写する投写装置と、を備え、
前記画像光形成装置は、
液晶パネルを装着し、固定ベースを一体に設けたプリズムと、
前記固定ベースを上側から着脱可能に固定させる取付台座を有するレンズマウントと、を備え、
前記取付台座は、位置決め係合部と、ガイド係合部と、を有し、
前記固定ベースには、前記位置決め係合部に係合する被位置決め係合部と、前記ガイド係合部と同軸に設けられるガイド穴と、を有し、
前記固定ベースは、前記ガイド穴の第1中心軸を前記ガイド係合部の第2中心軸に一致させた状態で上下方向に移動可能に設けられる投写型表示装置。
【請求項2】
前記ガイド係合部および前記ガイド穴は、それぞれ2つずつ設ける請求項1に記載の投写型表示装置。
【請求項3】
前記固定ベースは、取付ねじによって前記取付台座に固定され、
前記取付台座は、前記投写装置の投写レンズと前記固定ベースとの間に配置され、
前記取付台座に取り付けられる取付ねじのねじ先端は、前記取付台座の下面に位置する請求項1に記載の投写型表示装置。
【請求項4】
前記位置決め係合部は、上方に突出するピンであり、
前記ガイド係合部は、前記ピンより高く上方に突出するボスであり。
前記固定ベースの厚さは、前記ボスの高さ以下の寸法である請求項1に記載の投写型表示装置。
【請求項5】
前記レンズマウントは、前記取付台座に固定される前記プリズムを気密に覆う防塵カバーを備える請求項1に記載の投写型表示装置。
【請求項6】
前記防塵カバーは、カバー外周部の全周にわたって弾性部材を介して前記レンズマウントに取り付けられる請求項5に記載の投写型表示装置。
【請求項7】
前記レンズマウントは、マウント本体と、前記マウント本体の前記プリズムを向く背面に設けられる前記取付台座と、を有し、
前記背面と前記取付台座とによって形成される角部に三角リブが設けられ、
前記弾性部材は、前記三角リブに接する請求項6に記載の投写型表示装置。
【請求項8】
前記防塵カバーの前記背面を向く面は、逆テーパを形成する請求項7に記載の投写型表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の投写型表示装置の前記プリズムを交換するプリズム交換方法であって、
前記取付台座の前記ガイド係合部に、第2中心軸と同軸にガイドシャフトを立設する工程と、
前記ガイドシャフトに、前記ガイドシャフトと同径の内径を有する前記固定ベースの前記ガイド穴を嵌合させる工程と、
前記ガイドシャフトに沿って前記固定ベースを上下方向に摺動させる工程と、
を有するプリズム交換方法。
【請求項10】
前記ガイドシャフトの長さは、前記プリズムにおける前記固定ベースより下方部分の高さ寸法より長い請求項9に記載のプリズム交換方法。
【請求項11】
前記ガイドシャフトの上端に締込み操作部を有し、
前記締込み操作部を操作することで前記ガイドシャフトの下端を前記ガイド係合部に締め込んで係合する請求項9に記載のプリズム交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、投写型表示装置およびプリズム交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタにおける光源の寿命は、レーザが採用されるようになってから、飛躍的に長くなっている。一方で、液晶パネルの寿命につては、プロジェクタの高輝度化が進むにあたって非常に厳しくなっており、光源より先に液晶パネルが故障してしまうことが多くなっている。このため、液晶パネルを交換できるような構造になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、液晶パネルを備えたプリズムからなる光学部品をレンズマウントに吊り下げるように固定し、プリズム側の取付部材をレンズマウントの上部側の取付部に着脱自在に設けることで、交換作業時に使用するドライバーをレンズマウント内部に差し込むことなくプリズムの交換作業を行える投写型表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液晶パネルを備えたプリズムはレンズマウントの内部に潜り込んだ位置にあり、さらに液晶パネルの周囲には光学部品が密集している。そのため、プリズムの取付部がレンズマウントの上部に設けられていても、プリズムの交換作業においてプリズムをレンズマウントの外部と内部との間で安全に挿入したり、抜き取ることが困難であり、極めて慎重な作業となり作業効率が低下するという問題があった。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、液晶パネルを傷付けることなく容易にかつ効率よく交換することができる投写型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に係る投写型表示装置は、光源装置と、前記光源装置から出力された光に基づいて画像光を作る画像光形成装置と、前記画像光形成装置から出力された画像光を拡大して表示面に投写する投写装置と、を備え、前記画像光形成装置は、液晶パネルを装着し、固定ベースを一体に設けたプリズムと、前記固定ベースを上側から着脱可能に固定させる取付台座を有するレンズマウントと、を備え、前記取付台座は、位置決め係合部と、ガイド係合部と、を有し、前記固定ベースには、前記位置決め係合部に係合する被位置決め係合部と、前記ガイド係合部と同軸に設けられるガイド穴と、を有し、前記固定ベースは、前記ガイド穴の第1中心軸を前記ガイド係合部の第2中心軸に一致させた状態で上下方向に移動可能に設けられる。
【0008】
本発明の他の態様に係るプリズム交換方法は、態様1から態様8のいずれか一つの投写型表示装置の前記プリズムを交換するプリズム交換方法であって、前記取付台座の前記ガイド係合部に、第2中心軸と同軸にガイドシャフトを立設する工程と、前記ガイドシャフトに、前記ガイドシャフトと同径の内径を有する前記固定ベースの前記ガイド穴を嵌合させる工程と、前記ガイドシャフトに沿って前記固定ベースを上下方向に摺動させる工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液晶パネルを傷付けることなく容易にかつ効率よく交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るプロジェクタの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1のプロジェクタにおいて、画像光形成装置を斜め後方から見た斜視図である。
【
図3】
図2において、画像光形成装置を示す斜視図であって、防塵カバーを取り外した状態の図である。
【
図4】
図3において、プリズムを示す斜視図である。
【
図5】レンズマウントを上方から見た平面図である。
【
図6】
図2において、画像光形成装置を示す平面図である。
【
図7】レンズマウントを上方から見た平面図であって、防塵カバーを取り外した状態の図である。
【
図8】プリズムベースをガイドシャフトに案内させた後の状態を示す斜視図である。
【
図9】プリズムベースをガイドシャフトに案内させる前の状態を示す斜視図である。
【
図10】
図8において、プリズムベースと取付台座との固定状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1~
図12を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るプロジェクタ1(投写型表示装置)は、画像光(映像)をスクリーンなどの表示面に投写する装置である。プロジェクタ1は、光源装置3と、画像光形成装置4と、投写装置5と、筐体6と、を備える。
【0012】
画像光形成装置4は、後述する光源装置3から出力された光に基づいて画像光を作る。画像光形成装置4は、DMD(Digital Micromirror Device)や液晶パネル21(
図2参照)などの光変調素子及び、光変調素子を制御する電子部品などを有する。投写装置5は、画像光形成装置4から出力された画像光を拡大してスクリーン等の表示面に投写する。
【0013】
筐体6は、光源装置3、画像光形成装置4、投写装置5を収容する。筐体6は、光源装置3、画像光形成装置4及び投写装置5が載置される底板部61と、光源装置3、画像光形成装置4及び投写装置5を上方から覆う上部カバー62と、を有する。光源装置3は、光源装置3の光源部を冷却する冷却構造(図示省略)を構成している。
【0014】
図2~
図6に示すように、画像光形成装置4は、光源装置3から出射された光束を、光学的に処理して画像情報に対応した光学像を形成し、その光学像が投写装置5の投写レンズ5Aから外部に投写する。画像光形成装置4は、液晶パネル21を装着し、プリズムベース22(固定ベース)を一体に設けたプリズム20と、プリズムベース22を上側から着脱可能に固定させる取付台座32を有するレンズマウント30と、を備えている。
【0015】
ここで、プロジェクタ1を水平に設置した状態において、全体が略板状に形成されたレンズマウント30の一方の板面(前面30a)から直交する方向を前後方向X1と定義する。そして、前面30aから前方に
図1に示す投写装置5の投写レンズ5Aが突出する方向を前側とし、前後方向Xで前側と反対側でレンズマウント30においてプリズム20側を後側とし、後方から見て上下方向X3に直交する方向を左右方向X2と定義する。
【0016】
レンズマウント30は、マウント本体31と、マウント本体31のプリズム20を向く背面31aに設けられる取付台座32と、を有する。レンズマウント30の内側には、投写レンズ5Aを収容し、前後方向Xに沿う開口部30cを有する。
【0017】
マウント本体31の背面31aには、取付台座32を下方から支持するマウント枠33を備える。マウント枠33は、マウント本体31の上端31dから下方に下がった位置に設けられる。マウント枠33の上面33aの周方向中央に取付台座32が固定されている。取付台座32の上面32aも、マウント本体31の上端31dから下方に下がった位置に設けられる。マウント本体31の前面30aは、投写レンズ5Aを含む投写装置5を支持する支持部34を備える。
【0018】
図5に示すように、取付台座32の上面32aは、プリズムベース22の上面22a及び下面22bと平行である。取付台座32の上面32aには、ピン321(位置決め係合部)と、ボス322(ガイド係合部)と、固定ねじボス323と、を有する。取付台座32の上面32aにおいて、左右方向X2の中央部に左右に間隔あけて一対のボス322が設けられ、一対のボス322の左右両側のそれぞれの位置にピン321が設けられ、各ピン321のそれぞれの前方位置と一対のボス322間の位置に固定ねじボス323が配置されている。
【0019】
図7~
図10に示すように、ピン321は、円形断面であり、上方に突出し、後述するプリズムベース22のピン係合穴221に係合される。ピン321は、プリズムベース22を取付台座32に対して水平方向の位置を位置決めするため手段である。
【0020】
図11に示すように、3つの固定ねじボス323は、取付台座32を厚さ方向に貫通した貫通孔323aに雌ねじを形成し、後述するプリズムベース22の取付ねじ223が締め込みによって螺合される。貫通孔323aは、開口部30cに開口している。固定ねじボス323の雌ねじを形成する貫通孔323aは、取付台座32を貫通しない孔であってもよい。また、取付台座32の厚みは、貫通孔323aが貫通している場合でも、取付ねじ223の先端223aが開口部30cに突出しない厚みに設定されている。
【0021】
図5及び
図10に示すように、ボス322は、円形断面であり、ピン321より高く上方に突出する。ボス322の上面322aは、ピン321の有効係合部321b(プリズムベース22のピン係合穴221に係合する部分)の上端321aより高い。ボス322の第2中心軸O2は、プリズムベース22が取付台座32に取り付けられた状態で、後述するボス222の第1中心軸O1に一致する。
【0022】
ボス322の上端321aの中心には、雌ねじ軸孔322bを有する。ボス322には、プリズム20の交換時に使用されるガイドシャフト50が着脱可能である。このガイドシャフト50は、プリズム交換時のみに使用する治具であり、交換後には取り外される。すなわちガイドシャフト50は、取付台座32のボス322の第2中心軸O2に対してシャフト軸O3を精度よく一致させて取り付けられ、プリズムベース22をガイドシャフト50に沿って移動させることで、プリズム20をレンズマウント30に対して正規の位置に位置決めして取り付けるための位置決め治具である。
【0023】
ガイドシャフト50は、ボス322に装着された状態において、シャフト軸O3がボス322の第2中心軸O2に一致する。このとき、ガイドシャフト50のシャフト軸O3は、
図8及び
図9に示すように、取付台座32の上面32aに対して直交する方向(上下方向X3)となる。ガイドシャフト50の外径は、後述するプリズムベース22のガイド穴222の内径と一致し、ボス322の外径より大きい。
【0024】
ガイドシャフト50の下端50bには、
図10に示すように、ボス322の雌ねじ軸孔322bに螺合する雄ねじ軸51を有する。
図8に示すように、ガイドシャフト50の上端50aには、すり割り加工されたスリット状の操作溝52(締込み操作部)を有する。操作溝52には、適宜な操作治具(図示省略)を掛止される。ガイドシャフト50を取付台座32に取り付けるとき、操作溝52に掛止させた操作治具を回転操作することでガイドシャフト50を回させ、雄ねじ軸51をボス322の雌ねじ軸孔322bに締め込んで係合する。
【0025】
マウント本体31の背面31aとマウント枠33の上面33aとによって形成される角部には、三角リブ35が設けられている。三角リブ35には、後述する防塵カバー40の取付部が接触する。
【0026】
レンズマウント30の後方には、プリズム20の上部の高さに水平に延在する基板36が設けられている。基板36は、開口部36aを有する。液晶パネル21を備えたプリズム20の上部は、開口部36aから上方に突出した状態で、プリズムベース22が取付台座32上に固定されている。基板36の開口部36aの大きさは、液晶パネル21のフレキの長さによって決められる。プリズム20は、基板36の開口部36a内を上下方向に通過させることが可能である。
【0027】
図3及び
図9に示すように、プリズム20は、3枚の液晶パネル21(赤、緑、青の色光毎にそれぞれ液晶パネル21R,21G,21Bと示す)の画像形成領域をほぼ均一に照明するための光学系である。プリズム20は、3枚の液晶パネル21R,21G,21Bから出射された色光毎に変調された画像を合成してカラー画像を形成するものである。液晶パネル21R,21G,21Bは、保持枠23に収納され、枠状の液晶パネル取付枠24に固定されている。液晶パネル取付枠24は、プリズムベース22に対して吊り下げられる状態で一体的に設けられている。
【0028】
プリズムベース22の後端部22cには、液晶パネル取付枠24が一体的に接続されている。プリズムベース22は、液晶パネル取付枠24の上端から前方に張り出している。プリズムベース22は、下面22bをレンズマウント30の取付台座32の上面32aに載置させた状態で固定され、これにより液晶パネル21が所定位置に設置される。つまり、液晶パネル21を交換する際は、プリズムベース22を交換することになる。
【0029】
図7~
図9に示すように、プリズムベース22は、ピン321に係合するピン係合穴221(被位置決め係合部)と、ボス322と同軸に設けられるガイド穴222と、固定ねじボス323に螺合する取付ねじ223と、を有する。プリズムベース22の上面22aにおいて、左右方向X2の中央部に左右に間隔あけて一対のガイド穴222が設けられ、一対のガイド穴222の左右両側のそれぞれの位置にピン係合穴221が設けられ、各ピン係合穴221のそれぞれの前方位置と一対のガイド穴222間の位置に取付ねじ223が配置されている。
【0030】
プリズムベース22は、ピン係合穴221がピン321に係合した状態で取付ねじ223によって取付台座32に固定される。ピン係合穴221は、円形断面であり、プリズムベース22を貫通する。ピン係合穴221の内径は、ピン321の有効係合部321bの外径と一致する。取付ねじ223は、脱落防止ねじが採用される。このように脱落防止ねじとすることで、プリズムベース22の着脱の際にねじを取り外すことなく、効率よく締結作業を行え、しかもねじが基板36の開口部26aの内側等に落としてしまうことを防止できる。したがって、プリズムベース22が取付台座32に取り付けられた状態では、プリズム20の3枚の液晶パネル21R,21G,21Bが取付台座32の下面側に吊り下げられた状態に配置され、レンズマウント30の所定の位置に収容される。プリズム20がレンズマウント30に取り付けられた状態では、プリズムベース22が基板36の上側に露出しているので、取付台座32に対してプリズムベース22を着脱することが可能である。
【0031】
上述したように取付台座32は、投写装置5の投写レンズ5Aとプリズムベース22との間に配置される。取付台座32の固定ねじボス323に取り付けられる取付ねじ223のねじ先端223aは、取付台座32の下面32bに位置する。つまり、取付ねじ223は、開口部30c内に突出しない長さに設定される。
【0032】
ガイド穴222は、円形断面である。ガイド穴222の内径は、ボス322の外径より大きく、上述したボス322に装着されるガイドシャフト50の外径と一致している。ガイド穴222の第1中心軸O1は、プリズムベース22が取付台座32に取り付けられた状態で、ボス322の第2中心軸O2に一致する。
【0033】
プリズムベース22は、プリズム20の交換時において、ガイド穴222の第1中心軸O1をボス322の第2中心軸O2に一致させた状態で上下方向X3に移動可能である。すなわち、プリズムベース22は、プリズム20の交換時にボス322に装着されて上下方向X3に延びるガイドシャフト50に沿って上下方向X3に移動可能である。
【0034】
そのため、ガイドシャフト50の長さは、プリズム20におけるプリズムベース22より下方部分の高さ寸法より長くなるように設定されている。これにより、プリズムベース22が取付台座32に固定される高さからプリズム20全体が基板36より上方に位置する状態まで、プリズムベース22をガイドシャフト50に案内させて振れずに移動させることができる。
【0035】
図10に示すように、プリズムベース22の厚みt1は、取付台座32の上面32aからのボス322の突出高さt2より小さく、かつピン321の突出高さt3より大きい厚みに設定されている。これにより、ピン321にピン係合穴221が嵌って取付台座32の上面32aにプリズムベース22が載った状態で、ボス322がガイド穴222に係合する。
【0036】
図6、
図11及び
図12に示すように、レンズマウント30は、取付台座32に固定されるプリズム20を気密に覆う防塵カバー40を備える。防塵カバー40は、液晶パネル21が収容される基板36からレンズマウント30に跨って取り付けられている。防塵カバー40は、複数箇所で上方から脱落防止ねじ42によって基板36およびレンズマウント30に固定される。そのため、防塵カバー40を取り外す際にも、ねじを下方に落下させることを防止できる。
【0037】
防塵カバー40は、外周部41(41A、41B)が基板36とレンズマウント30のマウント本体31の背面31aの二面に取り付けられる。防塵カバー40は、側面視して略L型に形成されている。すなわち、防塵カバー40は、基板36に固定される第1外周部41Aと、マウント本体31の背面31aに固定される第2外周部41Bと、第1外周部41Aと第2外周部41Bとの角部に面取り形状に形成される面取り部41Cと、を有する。
【0038】
第2外周部41Bは、上端から下方に向けて漸次、後方に傾斜する逆テーパが形成されている。第2外周部41Bのテーパ角度は、マウント本体31の背面31aの傾斜角度と一致する。面取り部41Cは、レンズマウント30に設けられる三角リブ35と同じ傾斜角で設けられ、三角リブ35に接触する。
【0039】
防塵カバー40のカバー外周部41には、外周全周にわたって弾性部材43が設けられる。防塵カバー40は、弾性部材43を介在して取り付けられる。弾性部材43の面取り部41Cに位置する部分43aは、三角リブ35に接する。
【0040】
次に、上述したプロジェクタ1において、液晶パネル21を備えたプリズム20を交換するプリズム交換方法について、図面に基づいて説明する。ここでは、レンズマウント30にプリズム20を取り付ける手順について説明する。
【0041】
先ず、
図8~
図10に示すように、取付台座32の一対のボス322のそれぞれに対して、第2中心軸O2と同軸にガイドシャフト50を立設する。具体的には、ガイドシャフト50の上端50aの操作溝52に不図示の操作治具を掛止させてガイドシャフト50を回転させ、ボス322の雌ねじ軸孔322bにガイドシャフト50の雄ねじ軸51を締め込む。これによりガイドシャフト50は、シャフト軸O3がボス322の第2中心軸O2に一致した状態で取り付けられる。
【0042】
次に、ガイドシャフト50に、ガイドシャフト50と同径の内径を有するプリズムベース22のガイド穴222を嵌合させる。そして、ガイドシャフト50に沿ってプリズムベース22を下方に摺動させる。このとき、ガイド穴222がガイドシャフト50の外径と同径であるので、嵌合させたときにガイド穴222の第1中心軸O1はボス322の第2中心軸O2及びシャフト軸O3と同軸になる。そのため、プリズムベース22をガイドシャフト50に沿って下方に摺動させることで、プリズムベース22を第2中心軸O2に沿って上下方向X3に振れることなく精度よく移動させることができる。
【0043】
図10に示すように、プリズムベース22をガイドシャフト50の下部まで移動させる。そして、さらにプリズムベース22を下方に移動させることで、ガイド穴222がガイドシャフト50から抜け出す。このとき、プリズムベース22が取付台座32の上面32aに落とし込まれ、ガイド穴222がボス322に係合し、同時に取付台座32のピン321にピン係合穴221が係合する。ガイドシャフト50に沿って移動するプリズムベース22は、ピン係合穴221とピン321とが同軸となる位置になっている。そのため、プリズムベース22の落とし込みにより、ピン係合穴221とピン321とが確実に係合する。ピン321とピン係合穴221との係合によって、プリズムベース22の水平方向の位置が決まる。このとき、ガイド穴222は、ボス322の外径よりも大径であるので、ボス322に対して緩く嵌合した状態である。これにより、取付台座32の上面32aの所定位置にプリズムベース22を配置させることができ、プリズムベース22に液晶パネル取付枠24を介して一体に設けられる3枚の液晶パネル21がレンズマウント30の所定位置に配置される。
【0044】
ピン係合穴221をピン321に係合させた後、プリズムベース22の取付ねじ223を固定ねじボス323に締め付けて固定する。これにより液晶パネル21を備えたプリズム20をレンズマウント30に固定することができる。
【0045】
その後、ガイドシャフト50を取付台座32から取り外し、プリズム20の交換作業が完了となる。なお、ガイドシャフト50の取外しは、プリズムベース22の取付ねじ223を固定ねじボス323に締め付けて固定する前であってもよい。
【0046】
本実施形態のプロジェクタ1では、光源装置3と、光源装置3から出力された光に基づいて画像光を作る画像光形成装置4と、画像光形成装置4から出力された画像光を拡大して表示面に投写する投写装置5と、を備える。画像光形成装置4は、液晶パネル21を装着し、プリズムベース22を一体に設けたプリズム20と、プリズムベース22を上側から着脱可能に固定させる取付台座32を有するレンズマウント30と、を備える。取付台座32は、ピン321と、ボス322と、を有する。プリズムベース22には、ピン321に係合するピン係合穴221と、ボス322と同軸に設けられるガイド穴222と、を有する。プリズムベース22は、ガイド穴222の第1中心軸O1をボス322の第2中心軸O2に一致させた状態で上下方向X3に移動可能に設けられる。
【0047】
本実施形態のプロジェクタ1では、液晶パネル21を交換する際には、液晶パネル21を一体に設けたプリズム20のプリズムベース22をレンズマウント30の取付台座32に対して着脱する。そして、プリズムベース22を取付台座32に対して近接離反する動作が生じるが、プリズムベース22は、ガイド穴222の第1中心軸O1をボス322の第2中心軸O2に一致させた状態で上下方向X3に移動できるので、取付台座32の所定位置に対するプリズムベース22の位置決めを容易に行うことができる。さらにプリズム20の移動時に、周囲の光学部品やレンズマウント30に液晶パネル21が接触して傷付けることを防止してプリズム20の交換を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態のプロジェクタ1では、ボス322およびガイド穴222がそれぞれ2つずつ設けられているので、交換時におけるプリズムベース22の上下方向X3を中心とした回転がなくなり、プリズムベース22における取付台座32に対する水平方向の位置の位置決め精度を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態のプロジェクタ1では、プリズムベース22は、取付ねじ223によって取付台座32に固定される。取付台座32は、投写装置5の投写レンズ5Aとプリズムベース22との間に配置される。取付台座32に取り付けられる取付ねじ223のねじ先端223aは、取付台座32の下面32bに位置する。この場合、取付ねじ223が取付台座32の下面32bから開口部30cの内側に突出せず、開口部30cの内側の部品に取付ねじ223が干渉しない小さな厚みで取付台座32を設けることができる。すなわち、取付台座32を剛性と上記の取付ねじ223の長さを考慮した小さい厚みで取付台座32を設けることで、プリズムベース22の高さを低く抑えることができる。例えば、プリズムベース22を覆う防塵カバー40の高さも抑えられ、製品全体の外形をコンパクト化することができる。
【0050】
また、本実施形態のプロジェクタ1では、ピン321は、上方に突出する。ボス322は、ピン321より高く上方に突出する。プリズムベース22の厚さは、ボス322の高さ以下の寸法である。この場合には、プリズムベース22を第1中心軸O1に沿って下方に振れることなく精度よく移動させ、プリズムベース22が取付台座32の上面32aに落とし込まれたとき、取付台座32のピン321にピン係合穴221が係合する。第1中心軸O1に沿って移動するプリズムベース22は、ピン係合穴221とピン321とが同軸となる位置になっている。そのため、プリズムベース22の落とし込みにより、ピン係合穴221とピン321とが確実に係合し、プリズムベース22の水平方向の位置を位置決めできる。
【0051】
また、本実施形態のプロジェクタ1では、レンズマウント30は、取付台座32に固定されるプリズム20を気密に覆う防塵カバー40を備えるので、防塵カバーによってプリズム20を防塵できる。
【0052】
また、本実施形態のプロジェクタ1では、防塵カバー40の外周全周にわたって弾性部材43が設けられる。弾性部材43を介在して防塵カバー40が取り付けられているので、防塵カバー40による気密性を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態のプロジェクタ1では、レンズマウント30は、マウント本体31と、マウント本体31のプリズム20を向く背面31aに設けられる取付台座32と、を有する。背面31aと取付台座32とによって形成される角部に三角リブ35が設けられる。弾性部材43は、三角リブ35に接する。これにより、防塵カバー40の角部が取り付けられる背面31aと取付台座32とによって形成される角部が面取り形状の三角リブ35を設け、弾性部材43を三角リブ35に接するように配置することで、弾性部材43を均一な厚みで設けることができる。そのため、弾性部材43を直角に曲げて貼り付けた場合のように、弾性部材43の角部の厚みが薄くなり、防塵性能に悪影響を及ぼすような不具合を抑制できる。
【0054】
また、本実施形態のプロジェクタ1では、防塵カバー40のマウント本体31の背面31aを向く面は、逆テーパを形成し、例えばマウント本体31の背面31aの勾配と同一の角度にできる。これにより、防塵カバー40を、上方から弾性部材43を潰しながらスムーズに所定の取り付け位置に配置して取り付けることができる。
【0055】
また、本実施形態のプリズム交換方法では、取付台座32のボス322に、第2中心軸O2と同軸にガイドシャフト50を立設する工程と、ガイドシャフト50に、ガイドシャフト50と同径の内径を有するプリズムベース22のガイド穴222を嵌合させる工程と、ガイドシャフト50に沿ってプリズムベース22を上下方向に摺動させる工程と、を有する。この場合には、ガイドシャフト50のシャフト軸O3が第2中心軸O2と同軸になるように取付台座32のボス322に取り付けることで、プリズムベース22を第1中心軸O1に沿って下方に振れることなく精度よく移動させることができる。そして、プリズムベース22を取付台座32の上面32aに落とし込み、固定することができる。
【0056】
また、本実施形態のプリズム交換方法では、ガイドシャフト50の長さは、プリズム20におけるプリズムベース22より下方部分の高さ寸法より長い。これにより、プリズムベース22が取付台座32に固定される高さからプリズム20全体が基板36より上方に位置する状態まで、プリズムベース22をガイドシャフト50に案内させて振れずに移動させることができる。そのため、プリズム20を交換する際の移動時において、周囲の光学部品に干渉することを防止できる。
【0057】
また、本実施形態のプリズム交換方法では、ガイドシャフト50の上端50aに操作溝52を有する。操作溝52を操作することでガイドシャフト50の下端50bをボス322に締め込んで係合する。この場合には、ガイドシャフト50の上端50aの操作溝52に不図示の操作治具を掛止させてガイドシャフト50を回転させ、ボス322の雌ねじ軸孔322bにガイドシャフト50の雄ねじ軸51を締め込むことで、ガイドシャフト50をボス322に取り付けることができる。ガイドシャフト50の着脱が上端50aを操作するだけでよく、ガイドシャフト50の取付台座32の操作が不要となる。そのため、液晶パネル21に操作治具が干渉しないように慎重に作業を行う必要がなく、作業効率を向上できる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0059】
本発明においては、取付台座32のボス322(ガイド係合部)およびプリズムベース22のガイド穴222は、それぞれ2つずつ設けた構成としているが、このような数量であることに制限されることはない。
【0060】
取付台座32に設けられる位置決め係合部として、本実施形態では上方に突出するピン321としているが、ピンであることに限定されることはない。また、ボス322とピン321の高さや、プリズムベース22の厚さとの寸法の関係も上記の実施形態に限定されることはない。
【0061】
防塵カバー40の形状、大きさ、取り付け位置、弾性部材43の構成については、適宜変更可能である。
【0062】
さらに、本実施形態では、プリズム20を交換する際に、取付台座32のボス322に第2中心軸O2と同軸にシャフト軸O3を設けたガイドシャフト50を立設するようにしているが、ガイドシャフト50を使用することに限定されることはない。要は、プリズム20の交換時において、プリズムベース22がガイド穴222の第1中心軸O1をボス322の第2中心軸O2に一致させた状態で上下方向に移動可能に設けられていればよいのである。
【0063】
また、ガイドシャフト50の断面形状が円形であることに限定されるともなく、ガイドシャフト50の長さや締込み操作部の構成についても適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 プロジェクタ(投写型表示装置)
3 光源装置
4 画像光形成装置
5 投写装置
20 プリズム
21、21R、21G、21B 液晶パネル
22 プリズムベース(固定ベース)
22a 上面
221 ピン係合穴(被位置決め係合部)
222 ガイド穴
223 取付ねじ
223a ねじ先端
30 レンズマウント
30c 開口部
31 マウント本体
31a 背面
32 取付台座
32a 上面
321 ピン(位置決め係合部)
322 ボス(ガイド係合部)
322b 雌ねじ軸孔
323 固定ねじボス
33 マウント枠
35 三角リブ
36 基板
36a 開口部
40 防塵カバー
43 弾性部材
50 ガイドシャフト
50a 上端
51 雄ねじ軸
52 操作溝(締込み操作部)
O1 第1中心軸
O2 第2中心軸
O3 シャフト軸