(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137045
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】二酸化炭素排出量算定システム及び二酸化炭素排出量算定方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240927BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048399
(22)【出願日】2023-03-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.プレスリリース配布日:令和4年3月29日、配布場所:国土交通記者会(千代田区霞が関2-1-3国土交通省5F) 2.ウェブサイト掲載日:令和4年3月29日、ウェブサイトのアドレス:https://www.kajima.co.jp/news/press/202203/29c1-j.htm 3.ウェブサイト掲載日:令和4年3月29日、ウェブサイトのアドレス:https://www.neweconomy.jp/posts/207673 4.プレスリリース配布日:令和4年8月9日、配布場所:国土交通記者会(千代田区霞が関2-1-3国土交通省5F) 5.ウェブサイト掲載日:令和4年8月9日、ウェブサイトのアドレス:https://www.kajima.co.jp/news/press/202208/9c1-j.htm 6.発行者:一般財団法人省エネルギーセンター、刊行物:省エネルギー,令和4年10月号,第45~48ページ、発行日:令和4年9月30日 7.発行者:株式会社オフィス・スペース、刊行物:土木施工,令和4年11月号,第76~79ページ、発行日:令和4年10月21日 8.集会名:土木学会環境システム委員会第77回環境システムシンポジウム、ウェブサイトの掲載日:令和5年1月26日、ウェブサイトのアドレス:https://committees.jsce.or.jp/envsys/system/files/5%20%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%92%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3CO2%E6%8E%92%E5%87%BA%E9%87%8F%E3%81%AE%E6%8A%8A%E6%8F%A1.pdf 9.集会名:土木学会環境システム委員会第77回環境システムシンポジウム(Web会議システム「Zoomウェビナー」を使用したライブ形式(リアルタイムでの発表)で実施)、開催日:令和5年1月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和仁
(72)【発明者】
【氏名】北田 健介
(72)【発明者】
【氏名】舩津 宏志
(72)【発明者】
【氏名】木原 大樹
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】コンクリートの製造及び流通において生じる二酸化炭素排出量の削減効果を適切に評価する。
【解決手段】二酸化炭素排出量算定システム100は、二酸化炭素の排出量の算定に用いられる算出用データが格納されたデータ格納部12aと、コンクリートのサプライチェーンに関わる各事業者によって操作される事業者端末11と、算出用データに基づいて二酸化炭素の排出削減量を演算する演算部12bと、を備え、演算部12bは、算出用データに基づいて、納入済みコンクリートに代えて標準的なコンクリートが納入された場合にその製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の基準排出量と、納入済みコンクリートの製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の実質排出量と、の差分を二酸化炭素の排出削減量として算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの製造及び流通において生じる二酸化炭素の排出量を算定する二酸化炭素排出量算定システムであって、
二酸化炭素の排出量の算定に用いられる算出用データが格納されたデータ格納部と、
コンクリートのサプライチェーンに関わる各事業者によって操作され、前記算出用データを入力可能な事業者端末と、
前記算出用データに基づいて二酸化炭素の排出削減量を演算する演算部と、を備え、
前記算出用データには、
標準的なコンクリートの配合に関する標準データと、
建設現場に納入された納入済みコンクリートの配合及び納入量に関する取引データと、
コンクリートの製造過程及び流通過程で生じる二酸化炭素の排出量を示す排出データと、が含まれ、
前記演算部は、前記標準データ、前記取引データ及び前記排出データに基づいて、前記納入済みコンクリートに代えて前記標準的なコンクリートが納入された場合にその製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の基準排出量と、前記納入済みコンクリートの製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の実質排出量と、の差分を二酸化炭素の排出削減量として算出する、
二酸化炭素排出量算定システム。
【請求項2】
前記取引データは、前記建設現場にコンクリートが納入された際に、前記事業者端末を介して入力され、
前記演算部は、前記取引データ毎に前記差分を算出する、
請求項1に記載の二酸化炭素排出量算定システム。
【請求項3】
前記演算部は、サプライチェーンに関わる各事業者が前記差分に対して貢献した度合をさらに算定する、
請求項1または2に記載の二酸化炭素排出量算定システム。
【請求項4】
コンクリートの製造及び流通において生じる二酸化炭素の排出量を算定する二酸化炭素排出量算定方法であって、
二酸化炭素の排出量の算定に用いられる算出用データとして、標準的なコンクリートの配合に関する標準データと、コンクリートの製造過程及び流通過程で生じる二酸化炭素の排出量を示す排出データと、が予め格納されたデータ格納部に、建設現場に納入された納入済みコンクリートの配合及び納入量に関する取引データを入力する入力工程と、
前記標準データ、前記取引データ及び前記排出データに基づいて、前記納入済みコンクリートに代えて前記標準的なコンクリートが納入された場合にその製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の基準排出量と、前記納入済みコンクリートの製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の実質排出量と、の差分を二酸化炭素の排出削減量として算出する演算工程と、を含む、
二酸化炭素排出量算定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリートの製造及び流通において生じる二酸化炭素の排出量を算定する二酸化炭素排出量算定システム及び二酸化炭素排出量算定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、打設現場への生コンクリートの納入を管理するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、二酸化炭素排出量の少ない建築資材を積極的に利用することが求められている。特に特許文献1に記載されるように打設現場へとタイムリーに納入される生コンクリートは、建築資材の中でもその製造及び流通の過程において二酸化炭素を排出する量が比較的多いことから、二酸化炭素の排出量を削減する効果が高いと見込まれている。しかしながら、生コンクリートを製造及び流通するサプライチェーン上のどの部分においてどの程度の二酸化炭素の削減効果があったのかを適切に評価可能なシステムが存在しないことから、サプライチェーンに関わる事業者の二酸化炭素削減に対する意識を十分に高めるには至っていない。
【0005】
本発明は、コンクリートの製造及び流通において生じる二酸化炭素排出量の削減効果を適切に評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリートの製造及び流通において生じる二酸化炭素の排出量を算定する二酸化炭素排出量算定システムであって、二酸化炭素の排出量の算定に用いられる算出用データが格納されたデータ格納部と、コンクリートのサプライチェーンに関わる各事業者によって操作され、算出用データを入力可能な事業者端末と、算出用データに基づいて二酸化炭素の排出削減量を演算する演算部と、を備え、算出用データには、標準的なコンクリートの配合に関する標準データと、建設現場に納入された納入済みコンクリートの配合及び納入量に関する取引データと、コンクリートの製造過程及び流通過程で生じる二酸化炭素の排出量を示す排出データと、が含まれ、演算部は、標準データ、取引データ及び排出データに基づいて、納入済みコンクリートに代えて標準的なコンクリートが納入された場合にその製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の基準排出量と、納入済みコンクリートの製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の実質排出量と、の差分を二酸化炭素の排出削減量として算出する。
【0007】
また、本発明は、コンクリートの製造及び流通において生じる二酸化炭素の排出量を算定する二酸化炭素排出量算定方法であって、二酸化炭素の排出量の算定に用いられる算出用データとして、標準的なコンクリートの配合に関する標準データと、コンクリートの製造過程及び流通過程で生じる二酸化炭素の排出量を示す排出データと、が予め格納されたデータ格納部に、建設現場に納入された納入済みコンクリートの配合及び納入量に関する取引データを入力する入力工程と、標準データ、取引データ及び排出データに基づいて、納入済みコンクリートに代えて標準的なコンクリートが納入された場合にその製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の基準排出量と、納入済みコンクリートの製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の実質排出量と、の差分を二酸化炭素の排出削減量として算出する演算工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンクリートの製造及び流通において生じる二酸化炭素排出量の削減効果を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る二酸化炭素排出量算定システムの全体構成を示す構成図である。
【
図2】二酸化炭素の排出削減量の算定の一例を示したグラフである。
【
図3】生コンクリートのサプライチェーンに関わる各事業者の二酸化炭素の排出削減量の算定について説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る二酸化炭素排出量算定システム及び二酸化炭素排出量算定方法について説明する。
【0011】
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る二酸化炭素排出量算定システム100について説明する。二酸化炭素排出量算定システム100は、生コンクリート(以下、「生コン」という。)の製造過程及び流通過程において生じる二酸化炭素の排出量を算定することによって、生コンのサプライチェーンに関わる各事業者の二酸化炭素排出量の削減に対する貢献度合を評価するためのシステムである。
【0012】
図1に示すように、二酸化炭素排出量算定システム100は、ネットワーク上の複数のノード11により構成されるプラットフォーム内で同じ情報を分散して管理するブロックチェーン10と、ブロックチェーン10上で扱われるデータを格納可能なデータ格納サーバ12と、ブロックチェーン10に接続可能な情報処理端末13A~13Fと、を備える。ブロックチェーン10、データ格納サーバ12及び情報処理端末13A~13Fは、インターネット等のネットワークを介してそれぞれ有線または無線で接続される。
【0013】
ブロックチェーン10は、いわゆる分散型台帳管理技術であり、具体的には、トランザクションデータやハッシュ値を含むデータを1つのブロックとし、新しい記録が追加されると新たなブロックを生成して直前のブロックに連結し、時系列に沿ってチェーン状に連結されたブロックデータを各ノード11間において共有することによって、ブロックに記録されたデータの信頼性を確保するものである。
【0014】
各ノード11は、二酸化炭素排出量算定システム100に参画する各事業者、例えば、生コンのサプライチェーンに関わる各事業者によってそれぞれ管理、所有される。つまり、二酸化炭素排出量算定システム100のブロックチェーン10は、生コンのサプライチェーンに関わる各事業者間で構成された、いわゆるコンソーシアム型である。なお、ブロックチェーン10は、複数の管理主体が存在するコンソーシアム型に限定されず、管理者が存在しないパブリック型や特定の管理者が存在するプライベート型であってもよい。
【0015】
このようにデータの耐改ざん性を有する情報共有型のプラットフォームの仕組みについては公知であり、トランザクションデータやハッシュ値、ナンス値は、ブロックチェーン10に保持される。ブロックチェーン10上で発行される非代替性トークン(NFT:Non-Fungible Token。以下、「NFT」という。)には、例えば、生コンのサプライチェーンに関わる各事業者間での取引内容に関する取引データ等が記録される他、データ格納サーバ12に格納される各種データと紐づけるためのリンクが記録される。
【0016】
データ格納サーバ12は、例えば、ウェブサーバ、アプリケーションサーバ及びデータベースが組み合わせられることによって構成されたものであり、二酸化炭素の排出量の算定に用いられる算出用データが格納されるデータ格納部12aと、データ格納部12aに格納された算出用データに基づいて二酸化炭素の排出削減量を演算する演算部12bと、を有する。
【0017】
データ格納サーバ12は、ブロックチェーン10の外部、いわゆるオフチェーンに設けられているが、データ格納サーバ12を設けず、すべてのデータをブロックチェーン10に記録するようにしてもよい。
【0018】
なお、データ格納サーバ12を設けることなく、取引データ及び算出用データといったすべてのデータをブロックチェーン10に記録することも可能であるが、データ量が増大すると、ブロックチェーン10を構成する各ノード11のデータ保存容量が増大するとともに、トランザクションの増加によって各ノード11間のデータ通信量が増大することになる。このため、ブロックチェーン10へのデータの記録に多大な時間を要してしまうおそれがある。
【0019】
したがって、ブロックチェーン10へのデータの記録を円滑に行うためには、データ格納サーバ12をブロックチェーン10とは別に設けることによって、ブロックチェーン10内で共有されるデータの容量を低減させることが好ましい。なお、データ格納部12aと演算部12bとは、1つのサーバ内に設けられていてもよいし、別々のサーバに設けられていてもよい。
【0020】
情報処理端末13A~13Fは、生コンのサプライチェーンに関わる後述の各事業者や二酸化炭素排出量算定システム100を管理するシステム管理者、二酸化炭素排出量算定方法等を検証する検証機関がそれぞれ管理、所有する事業者端末であり、入力部と、表示部と、通信部と、これら各部を制御する制御部と、制御部で実行されるプログラム等が記憶される記憶部と、有する一般的なパーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォンやタブレット端末といった携帯型の端末であってもよい。なお、情報処理端末13A~13Fはノード11を兼ねるものであってもよい。
【0021】
情報処理端末13A~13Fが割り当てられる事業者、すなわち、生コンのサプライチェーンに関わる事業者としては、例えば、
図1に示されるように、建設現場(打設現場)において生コンやコンクリート製品を使用する建設業者といった第1事業者SC1、第1事業者SC1からの注文に応じて生コンを製造する生コン工場といった第2事業者SC2、第2事業者SC2に生コンの原材料であるポルトランドセメント等を納入するセメント工場といった第3事業者SC3、第3事業者SC3に生コンの原材料の素材となる石灰石等を納入する石灰石採石場といった第4事業者SC4が挙げられる。
【0022】
第2事業者SC2には、生コン工場の他に例えば建設現場にプレキャストコンクリートを納入するPC工場が含まれ、第3事業者SC3には、セメント工場の他に例えば第2事業者SC2に高炉スラグを納入する製鉄所やフライアッシュを納入する火力発電所、再生セメントを納入する再生セメント工場、骨材を納入する砕石工場が含まれる。また、第4事業者SC4には、石灰石採石場の他に例えば砕石工場に骨材の原石を納入する原石掘削場や再生骨材工場に解体材を納入する解体現場が含まれる。なお、生コンのサプライチェーンに関わる事業者は、これらに限定されるものではない。
【0023】
上述のような生コンのサプライチェーンに関わる各事業者SC1~SC4によって事業者間での取引内容に関する取引データ等が各情報処理端末13A~13Fを介して入力されると、取引データ毎にNFTが発行されるとともに取引データの内容は、二酸化炭素の排出量の算定に用いられる算出用データとしてデータ格納部12aに格納される。
【0024】
取引データには、第1事業者SC1の場合、生コンの納入場所、納入された生コン(納入済み生コン)の打設日、打設箇所、打設量、打設した生コンの配合等の生コン打設関連情報が含まれ、第2事業者SC2の場合、第1事業者SC1に納入した生コン(納入済み生コン)の納入量及びその配合、納入発日時、納入着日時、各材料の供給元、各材料の仕入日、練り混ぜ方法とそれに伴うエネルギー消費量、輸送手段及び輸送距離等が含まれ、第3事業者SC3の場合、第2事業者SC2に納入した原材料の納入量、製造方法とそれに伴うエネルギー消費量、原材料の素材の供給元、素材の仕入日、輸送手段及び輸送距離等が含まれ、第4事業者SC4の場合、第3事業者SC3に納入した素材の納入量、採取方法とそれに伴うエネルギー消費量、輸送手段及び輸送距離等が含まれる。したがって、ブロックチェーン10上に記録された各種情報を参照、或いはデータ格納部12aに格納された各種情報を、NFTを介して参照することにより、信頼性のある取引履歴情報や原材料の流通状況を取得することができる。なお、取引データに含まれる内容はこれらに限定されるものではない。また、取引データに取引者間の秘匿事項が含まれる場合、データ格納部12a内のデータへのアクセスを制限するようにしてもよい。
【0025】
また、データ格納部12aには、第2事業者SC2が第1事業者SC1に納入可能な生コンの詳細仕様が記載された配合計画書や第3事業者SC3が第2事業者SC2に納入可能な生コンの原材料の詳細仕様が記載された仕様書、第4事業者SC4が第3事業者SC3に納入可能な生コンの原材料の素材の詳細仕様が記載された仕様書が各事業者SC2~4により随時入力される。
【0026】
このため、例えば、第1事業者SC1は、各第2事業者SC2が入力した配合計画書を参照し、建造物に要求される強度を満たす生コンを選定して発注量や発注配合を決定することが可能である。また、第2事業者SC2は、各第3事業者SC3が入力した仕様書を参照し、第1事業者SC1から受注した生コンを製造するために必要な原材料を選定して発注することが可能であり、第3事業者SC3は、各第4事業者SC4が入力した仕様書を参照し、第2事業者SC2から受注した生コンの原材料を製造するために必要な素材を選定して発注することが可能である。
【0027】
つまり、二酸化炭素排出量算定システム100は、受発注業務や納品受領確認業務等を電子化することが可能なプラットフォームとしても機能する。
【0028】
また、データ格納部12aには、二酸化炭素の排出量の算定に用いられる算出用データとして、標準的な生コンに含有されるセメント成分の比率や骨材の比率といった標準的な配合に関する標準データと、生コン及びその原材料等の製造過程及び流通過程で生じる二酸化炭素の排出原単位(排出係数)を含む排出データと、がシステム管理者によって予め格納される。二酸化炭素の排出原単位は、学会等において公知となっている数値であり、後述のように、各事業者の製造工程及び輸送工程に対応した排出原単位がそれぞれ設定される。なお、排出データには、排出原単位の他に、製造や流通の過程で消費されるエネルギー消費量といった直接的に計測ないし推定された実情に見合った一次データが含まれていてもよく、この場合、排出原単位は、一次データを取得することができなかったときに二酸化炭素の排出量を概算するために用いられる。
【0029】
二酸化炭素排出量算定システム100では、データ格納部12aに格納された上述の算出用データを用いて、建造物を建造するために使用された生コンやコンクリート製品が製造及び流通する過程において削減されたと推定される二酸化炭素の排出削減量が演算部12bにより算出されるとともに、各事業者SC1~SC4が二酸化炭素の排出量の削減に貢献した度合が演算部12bにより算定される。
【0030】
次に、建造物が建造される過程で削減される二酸化炭素の排出削減量ER、すなわち、建造物の建造を発注した施主による二酸化炭素の排出削減量ERの算出方法について説明する。
【0031】
施主の排出削減量ERは、建造物を建造するために使用された生コンを製造及び輸送する全工程において、各事業者SC1~SC4が削減した二酸化炭素の排出削減量ER1~ER4を足し合わせることによって求められる。
【0032】
まず、建造物を建造するために使用された生コンを製造及び輸送する全工程のうち、第1事業者SC1が関わる工程において、第1事業者SC1が削減した二酸化炭素の排出削減量ER1の算出について説明する。
【0033】
第1事業者SC1は、建造物の施主に対して、第1事業者SC1が建造物の建造において取り扱うことができる環境配慮型の生コン、すなわち、従来の標準的な生コンよりもその製造過程における二酸化炭素の排出削減効果が高い生コンの採用を提案し、施主の承認に基づいて、環境配慮型の生コンを製造可能な第2事業者SC2へと生コンの製造を発注することで生コンの製造等の工程に関わっている。
【0034】
第1事業者SC1の二酸化炭素の排出削減量ER1を算出するために、以下の二酸化炭素の排出原単位(排出係数)が算出用データとしてデータ格納部12aに格納されている。
・単位重量のポルトランドセメントを製造する際に排出される二酸化炭素排出量(C1p)
・単位重量の高炉セメントB種を製造する際に排出される二酸化炭素排出量(C1b)
・単位重量の高炉スラグ微粉末を製造する際に排出される二酸化炭素排出量(C1s)
・単位重量のフライアッシュを製造する際に排出される二酸化炭素排出量(C1f)
・単位重量の再生セメントを製造する際に排出される二酸化炭素排出量(C1r)
・単位重量の細骨材を採取等する際に排出される二酸化炭素排出量(C1fa)
・単位重量の粗骨材を採取等する際に排出される二酸化炭素排出量(C1ca)
なお、これらは環境配慮型の生コンに含まれる原料の一例であり、算出用データとしてデータ格納部12aに格納される二酸化炭素の排出原単位はこれらの原料に限定されるものではなく、例えば、環境配慮型の生コンに含まれる原料が新たに追加された場合、新たな原料の排出原単位が追加される。
【0035】
一方、算出用データとしてデータ格納部12aに格納された取引データには、以下の項目が含まれている。
・納入された環境配慮型の生コンの総重量(Q1)
・環境配慮型の生コンの総重量のうちのポルトランドセメントの重量(Q1p)
・環境配慮型の生コンの総重量のうちの高炉セメントB種の重量(Q1b)
・環境配慮型の生コンの総重量のうちの高炉スラグ微粉末の重量(Q1s)
・環境配慮型の生コンの総重量のうちのフライアッシュの重量(Q1f)
・環境配慮型の生コンの総重量のうちの再生セメントの重量(Q1r)
・環境配慮型の生コンの総重量のうちの細骨材の重量(Q1fa)
・環境配慮型の生コンの総重量のうちの粗骨材の重量(Q1ca)
・納入された環境配慮型の生コンと同仕様の標準的な生コンの総重量のうちのポルトランドセメントの重量(Q1pS)
・納入された環境配慮型の生コンと同仕様の標準的な生コンの総重量のうちの細骨材の重量(Q1faS)
・納入された環境配慮型の生コンと同仕様の標準的な生コンの総重量のうちの粗骨材の重量(Q1caS)
なお、生コンが同仕様であるとは、コンクリート種類、呼び強度、スランプ及び粗骨材の最大寸法が同じであることを意味する。
【0036】
演算部12bでは、これら算出用データに基づき、第1事業者SC1が第2事業者SC2に発注した環境配慮型の生コン、すなわち、第2事業者SC2から第1事業者SC1に納入された環境配慮型の生コンが全てポルトランドセメントを主原料とする標準的な生コンであったと仮定した場合に、その製造及び輸送等の工程において生じたと推定される二酸化炭素の排出量が第1事業者SC1の基準排出量(ベースライン排出量)EB1としてまず求められる。
【0037】
基準排出量EB1は、以下の式(1)により求められる。
EB1=C1p・Q1pS+C1fa・Q1faS+C1ca・Q1caS (1)
【0038】
続いて、演算部12bでは、上記算出用データに基づき、第2事業者SC2から第1事業者SC1へと実際に納入された環境配慮型の生コン、すなわち、二酸化炭素の排出量を削減するためにポルトランドセメントの代替材料として高炉セメントB種や高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、再生セメントを用いた生コンを製造し、輸送する際に生じたと推定される二酸化炭素の排出量が第1事業者SC1の実質排出量(プロジェクト排出量)EP1として求められる。
【0039】
実質排出量EP1は以下の式(2)により求められる。
EP1=C1p・Q1p+C1b・Q1b+C1s・Q1s+C1f・Q1f+C1r・Q1r+C1fa・Q1fa+C1ca・Q1ca (2)
【0040】
そして、演算部12bは、第1事業者SC1の基準排出量EB1から第1事業者SC1の実質排出量EP1を差し引くことによって求められた、基準排出量EB1と実質排出量EP1との差分を、
図2に示されるように、第1事業者SC1の排出削減量ER1として算出する。
【0041】
このように排出削減量ER1を算出するにあたって、環境配慮型の生コンに含まれる各原材料のそれぞれの量について考慮することにより、排出削減量ER1を精度よく算出することができる。
【0042】
なお、実質排出量EP1を算出するにあたって、納入された環境配慮型の生コンに含まれる原材料のそれぞれの重量は、第2事業者SC2がデータ格納部12aに予め入力した配合計画書と第2事業者SC2と第1事業者SC1との間で取引された情報が含まれる取引データに入力された生コンの重量とから求められてもよい。
【0043】
また、上記例では、第1事業者SC1に固まっていない状態のコンクリートが納入される場合について説明したが、PC工場(第2事業者SC2)において製造されたプレキャストコンクリートが納入される場合も同様にして第1事業者SC1の排出削減量ER1が求められる。
【0044】
続いて、建造物を建造するために使用された生コンを製造及び輸送する全工程のうち、第2事業者SC2が関わる工程において、第2事業者SC2が削減した二酸化炭素の排出削減量ER2の算出について説明する。
【0045】
第2事業者SC2は、第1事業者SC1から受注した環境配慮型の生コンを製造し、建設現場へと環境配慮型の生コンを輸送することで生コンの製造等の工程に関わっている。
【0046】
第2事業者SC2の二酸化炭素の排出削減量ER2を算出するために、以下の二酸化炭素の排出原単位(排出係数)が算出用データとしてデータ格納部12aに格納されている。
・単位重量の生コンを標準的な従来の混練装置または混練方法により練り混ぜる際に排出される標準二酸化炭素排出量(C2mB)
・単位重量の生コンを従来とは異なる混練装置または混練方法であって、従来よりも二酸化炭素の排出量を削減可能な混練装置または混練方法により練り混ぜる際に排出される対策二酸化炭素排出量(C2mP)
・単位重量の生コンを単位距離だけ標準的な従来の貨物車両(アジテータトラック等)により輸送する際に貨物車両から排出される標準二酸化炭素排出量(C2tB)
・単位重量の生コンを単位距離だけ従来とは異なる貨物車両であって、従来の貨物車両よりも二酸化炭素の排出量を削減可能な貨物車両により輸送する際に排出される対策二酸化炭素排出量(C2tP)
【0047】
なお、上述の対策二酸化炭素排出量(C2mP,C2tP)の値は、第2事業者SC2から新たな混練方法や新たな輸送方法が申請されることに応じて、新たな混練方法や新たな輸送方法による二酸化炭素の排出量が実測ないし推定された後、システム管理者によって登録される。また、このように新たな方法として登録された方法が第2事業者SC2間において一般的な方法となった段階で標準的な値である標準二酸化炭素排出量(C2mB,C2tB)の値は、対策二酸化炭素排出量(C2mP,C2tP)の値に更新される。
【0048】
一方、算出用データとしてデータ格納部12aに格納された取引データには、以下の項目が含まれている。
・納入された環境配慮型の生コンの総重量(Q1)
・生コンの輸送距離(生コン工場から建設現場までの距離)(L2)
【0049】
演算部12bでは、これら算出用データに基づき、第2事業者SC2から第1事業者SC1に納入された環境配慮型の生コンが標準的な混練装置または混練方法により練り混ぜられ、標準的な輸送方法により輸送されたと仮定した場合に、その製造及び輸送において生じたと推定される二酸化炭素の排出量が第2事業者SC2の基準排出量(ベースライン排出量)EB2としてまず求められる。
【0050】
基準排出量EB2は、以下の式(3)により求められる。
EB2=C2mB・Q1+C2tB・Q1・L2 (3)
【0051】
続いて、演算部12bでは、上記算出用データに基づき、第2事業者SC2から第1事業者SC1へと実際に納入された生コン、すなわち、二酸化炭素の排出量を削減するために新たな混練装置または混練方法で練り混ぜられるとともに、新たな輸送方法によって輸送された環境配慮型の生コンの混練及び輸送において生じたと推定される二酸化炭素の排出量が第2事業者SC2の実質排出量(プロジェクト排出量)EP2として求められる。
【0052】
実質排出量EP2は以下の式(4)により求められる。
EP2=C2mP・Q1+C2tP・Q1・L2 (4)
【0053】
そして、演算部12bは、第2事業者SC2の基準排出量EB2から第2事業者SC2の実質排出量EP2を差し引くことによって求められた、基準排出量EB2と実質排出量EP2との差分を、第2事業者SC2の排出削減量ER2として算出する。
【0054】
他の第2事業者SC2(例えば、第1事業者SC1にプレキャストコンクリートを納入するPC工場)についても同様の方法により排出削減量ER2が算出される。
【0055】
なお、上記式(4)において、実質排出量EP2を算出するにあたっては、排出データとして登録された排出原単位(C2mP,C2tP)が用いられているが、二酸化炭素の排出量を削減する対策が施された混練方法や輸送方法において計測されたエネルギー消費量の一次データが排出データとして入力されている場合には、排出原単位に代えて一次データを用いて実質排出量EP2を算出してもよい。つまり、排出データには、排出原単位及び一次データの何れか、または、両方が含まれる。また、生コン工場やPC工場といった第2事業者SC2から建設現場までの距離は、予めデータベース化されデータ格納部12aに格納されていてもよい。
【0056】
次に、建造物を建造するために使用された生コンを製造及び輸送する全工程のうち、第3事業者SC3が関わる工程において、第3事業者SC3が削減した二酸化炭素の排出削減量ER3の算出について説明する。なお、以下では、第3事業者SC3が第2事業者SC2に生コンの原材料であるポルトランドセメントを納入するセメント工場であり、第2事業者SC2から受注したポルトランドセメントを製造し、第2事業者SC2へとポルトランドセメントを輸送することで生コンの製造等の工程に関わっている場合を例にして説明する。
【0057】
第3事業者SC3の二酸化炭素の排出削減量ER3を算出するために、以下の二酸化炭素の排出原単位(排出係数)が算出用データとしてデータ格納部12aに格納されている。
・単位重量のポルトランドセメントを標準的な従来の製造方法により製造する際に排出される標準二酸化炭素排出量(C3pB)
・単位重量のポルトランドセメントを従来とは異なる製造方法であって、従来の製造方法よりも二酸化炭素の排出量を削減可能な製造方法により製造する際に排出される対策二酸化炭素排出量(C3pP)
・単位重量のポルトランドセメントを単位距離だけ標準的な従来の貨物車両により輸送する際に貨物車両から排出される標準二酸化炭素排出量(C3tB)
・単位重量のポルトランドセメントを単位距離だけ従来とは異なる貨物車両であって、従来の貨物車両よりも二酸化炭素の排出量を削減可能な貨物車両により輸送する際に排出される対策二酸化炭素排出量(C3tP)
【0058】
なお、上述の対策二酸化炭素排出量(C3pP,C3tP)の値は、第3事業者SC3から新たな製造方法や新たな輸送方法が申請されることに応じて、新たな製造方法や新たな輸送方法による二酸化炭素の排出量が実測ないし推定された後、システム管理者によって登録される。また、このように新たな方法として登録された方法が第3事業者SC3間において一般的な方法となった段階で標準的な値である標準二酸化炭素排出量(C3pB,C3tB)の値は、対策二酸化炭素排出量(C3pP,C3tP)の値に更新される。
【0059】
一方、算出用データとしてデータ格納部12aに格納された取引データには、以下の項目が含まれている。
・納入されたポルトランドセメントの総重量(Q3)
・ポルトランドセメントの輸送距離(セメント工場から生コン工場までの距離)(L3)
【0060】
演算部12bでは、これら算出用データに基づき、第3事業者SC3から第2事業者SC2に納入されたポルトランドセメントが標準的な製造方法により製造され、標準的な輸送方法により輸送されたと仮定した場合に、その製造及び輸送において生じたと推定される二酸化炭素の排出量が第3事業者SC3の基準排出量(ベースライン排出量)EB3としてまず求められる。
【0061】
基準排出量EB3は、以下の式(5)により求められる。
EB3=C3pB・Q3+C3tB・Q3・L3 (5)
【0062】
続いて、演算部12bでは、上記算出用データに基づき、第3事業者SC3から第2事業者SC2へと実際に納入されたポルトランドセメント、すなわち、二酸化炭素の排出量を削減するために新たな製造方法で製造されるとともに、新たな輸送方法によって輸送されたポルトランドセメントの製造及び輸送において生じたと推定される二酸化炭素の排出量が第3事業者SC3の実質排出量(プロジェクト排出量)EP3として求められる。
【0063】
実質排出量EP3は以下の式(6)により求められる。
EP3=C3pP・Q3+C3tP・Q3・L3 (6)
【0064】
そして、演算部12bは、第3事業者SC3の基準排出量EB3から第3事業者SC3の実質排出量EP3を差し引くことによって求められた、基準排出量EB3と実質排出量EP3との差分を、第2事業者SC2に納入されたポルトランドセメントの総重量(Q3)によって除することにより、第2事業者SC2に納入されたポルトランドセメントの単位重量あたりの二酸化炭素の排出削減量((EB3-EP3)/Q3)を求める。
【0065】
このように求められた単位重量あたりの排出削減量((EB3-EP3)/Q3)に、上述の取引データから把握される第1事業者SC1に納入された生コンに含まれる第3事業者SC3で製造されたポルトランドセメントの量を乗じることによって、第3事業者SC3の排出削減量ER3が算出される。
【0066】
高炉セメントB種や高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、再生セメントを第2事業者SC2に納入する他の第3事業者SC3についても同様の方法により排出削減量ER3がそれぞれ算出される。
【0067】
なお、上記式(6)において、実質排出量EP3を算出するにあたっては、排出データとして登録された排出原単位(C3pP,C3tP)が用いられているが、二酸化炭素の排出量を削減する対策が施された製造方法や輸送方法において計測されたエネルギー消費量の一次データが排出データとして入力されている場合には、排出原単位に代えて一次データを用いて実質排出量EP3を算出してもよい。
【0068】
次に、第1事業者SC1に納入された生コンを製造及び輸送する全工程のうち、第4事業者SC4が関わる工程において、第4事業者SC4が削減した二酸化炭素の排出削減量ER4の算出について説明する。なお、以下では、第4事業者SC4が第3事業者SC3(砕石工場)に生コンの粗骨材の素材となる原石を納入する採石場であり、第3事業者SC3から受注した原石を採取し、第3事業者SC3へと原石を輸送することで生コンの製造等の工程に関わっている場合を例にして説明する。
【0069】
第4事業者SC4の二酸化炭素の排出削減量ER4を算出するために、以下の二酸化炭素の排出原単位(排出係数)が算出用データとしてデータ格納部12aに格納されている。
・単位重量の粗骨材原石を標準的な従来の採取方法により採取する際に排出される標準二酸化炭素排出量(C4caB)
・単位重量の粗骨材原石を従来とは異なる採取方法であって、従来の採取方法よりも二酸化炭素の排出量を削減可能な採取方法により採取する際に排出される対策二酸化炭素排出量(C4caP)
・単位重量の粗骨材原石を単位距離だけ標準的な従来の貨物車両や船舶により輸送する際に貨物車両や船舶から排出される標準二酸化炭素排出量(C4tB)
・単位重量の粗骨材原石を単位距離だけ従来とは異なる貨物車両や船舶であって、従来の貨物車両や船舶よりも二酸化炭素の排出量を削減可能な貨物車両や船舶により輸送する際に排出される対策二酸化炭素排出量(C4tP)
【0070】
なお、上述の対策二酸化炭素排出量(C4caP,C4tP)の値は、第4事業者SC4から新たな採取方法や新たな輸送方法が申請されることに応じて、新たな採取方法や新たな輸送方法による二酸化炭素の排出量が実測ないし推定された後、システム管理者によって登録される。また、このように新たな方法として登録された方法が第4事業者SC4間において一般的な方法となった段階で標準的な値である標準二酸化炭素排出量(C4caB,C4tB)の値は、対策二酸化炭素排出量(C4caP,C4tP)の値に更新される。
【0071】
一方、算出用データとしてデータ格納部12aに格納された取引データには、以下の項目が含まれている。
・納入された粗骨材原石の総重量(Q4)
・粗骨材原石の輸送距離(採石場から砕石工場までの距離)(L4)
【0072】
演算部12bでは、これら算出用データに基づき、第4事業者SC4から第3事業者SC3に納入された粗骨材原石が標準的な採取方法により採取され、標準的な輸送方法により輸送されたと仮定した場合に、その採取及び輸送において生じたと推定される二酸化炭素の排出量が第4事業者SC4の基準排出量(ベースライン排出量)EB4としてまず求められる。
【0073】
基準排出量EB4は、以下の式(7)により求められる。
EB4=C4caB・Q4+C4tB・Q4・L4 (7)
【0074】
続いて、演算部12bでは、上記算出用データに基づき、第3事業者SC3から第2事業者SC2へと実際に納入された粗骨材原石、すなわち、二酸化炭素の排出量を削減するために新たな採取方法で採取されるとともに、新たな輸送方法によって輸送された粗骨材原石の採取及び輸送において生じたと推定される二酸化炭素の排出量が第4事業者SC4の実質排出量(プロジェクト排出量)EP4として求められる。
【0075】
実質排出量EP4は以下の式(8)により求められる。
EP4=C4caP・Q4+C4tP・Q4・L4 (8)
【0076】
そして、演算部12bは、第4事業者SC4の基準排出量EB4から第4事業者SC4の実質排出量EP4を差し引くことによって求められた、基準排出量EB4と実質排出量EP4との差分を、第3事業者SC3に納入された粗骨材原石の総重量(Q4)によって除することにより、第3事業者SC3に納入された粗骨材原石の単位重量あたりの二酸化炭素の排出削減量((EB4-EP4)/Q4)を求める。
【0077】
このように求められた単位重量あたりの排出削減量((EB4-EP4)/Q4)に、上述の取引データから把握される第1事業者SC1に納入された生コンに含まれる第4事業者SC4で採取された粗骨材の量を乗じることによって、第4事業者SC4の排出削減量ER4が算出される。
【0078】
他の第4事業者SC4、例えば、セメント工場(第3事業者SC3)に石灰石を納入する第4事業者SC4や砕石工場(第3事業者SC3)に細骨材の原石を納入する第4事業者SC4、再生骨材工場(第3事業者SC3)に解体材を納入する第4事業者SC4についても同様の方法により排出削減量ER4がそれぞれ算出される。
【0079】
なお、上記式(8)において、実質排出量EP4を算出するにあたっては、排出データとして登録された排出原単位(C4caP,C4tP)が用いられているが、二酸化炭素の排出量を削減する対策が施された採取方法や輸送方法において計測されたエネルギー消費量の一次データが排出データとして入力されている場合には、排出原単位に代えて一次データを用いて実質排出量EP4を算出してもよい。
【0080】
このようにして算出された各事業者SC1~SC4の二酸化炭素の排出削減量ER1~ER4を足し合わせることによって、
図3に示されるように、建造物の施主の二酸化炭素の排出削減量ERが求められる。
【0081】
換言すると、建造物の施主の二酸化炭素の排出削減量ERは、
図3に示されるように、建造物を建造するために使用された環境配慮型の生コンが、標準的な生コンであったと仮定した場合に、その製造過程及び輸送過程において生じたと推定される基準二酸化炭素排出量EBと、建造物を建造するために実際に使用された環境配慮型の生コン、すなわち、各事業者SC1~SC4が二酸化炭素の排出量を削減するための各種対策を講じた生コンを製造し、輸送する際に生じたと推定される実質二酸化炭素排出量EPと、の差分である。
【0082】
基準二酸化炭素排出量EBと実質二酸化炭素排出量EPとの差分(排出削減量ER)を演算部12bによって演算する演算工程は、建設現場に生コンを納入し際に第2事業者SC2が事業者端末を介して取引データを入力する入力工程が行われ、第1事業者SC1によって生コンの受入れ確認が行われた後に実行される。
【0083】
したがって、演算部12bによって算定される排出削減量ERや基準二酸化炭素排出量EB、実質二酸化炭素排出量EPについては、建造物が完成した後ではなく、生コンが納入される度に確認したり、毎日確認ないし報告したりすることが可能である。また、建造物の一部分、例えば、基礎構造部と上部構造部のように求められる性能が異なる部位についてそれぞれ削減効果を確認したり、所定の期間内に納入された生コンのみについて削減効果を確認したり、特定の事業者が製造に関わった生コンのみについて削減効果を確認したりすることも可能である。
【0084】
また、上述のように、二酸化炭素排出量算定システム100は、生コンのサプライチェーンに関わる各事業者間で構成されたブロックチェーン10を採用していることから、各事業者が対等な関係で利用することができるとともに、演算部12bによって算定される排出削減量ERや基準二酸化炭素排出量EB、実質二酸化炭素排出量EPの重複計上を防止することができる。また、ブロックチェーン10は、データの真正性、改ざん防止性を有することから、例えば、排出削減量ERをカーボンクレジット化する際に、公的認証機関に対して提出する申請書を、二酸化炭素排出量算定システム100を介して作成することも可能である。
【0085】
また、演算部12bでは、上述のようにして求められた建造物の施主の二酸化炭素の排出削減量ERによって、各事業者SC1~SC4の二酸化炭素の排出削減量ER1~ER4をそれぞれ除することによって、建造物を建造するために使用された環境配慮型の生コンの二酸化炭素の排出削減量ERに対する各事業者SC1~SC4の貢献度合(ER1/ER,ER2/ER,ER3/ER,ER4/ER)がそれぞれ求められる。
【0086】
このため、例えば、従来の標準的なコンクリートより高価であるものの二酸化炭素の排出量の削減効果が高い環境配慮型のコンクリートの使用を促進するために、公的な認証機関によって、二酸化炭素の排出削減量ERがカーボンクレジット化された場合には、上述の貢献度合に応じてカーボンクレジットを各事業者SC1~SC4や施主に適宜分配することにより、生コンのサプライチェーンに関わる各事業者SC1~SC4や施主の二酸化炭素削減に対する意識を高めることができる。
【0087】
なお、貢献度合を決定するにあたっては、上述の二酸化炭素の排出削減量ER1~ER4だけではなく、標準的な生コンに代えて環境配慮型の生コンを製造等するために必要となった工数の増加や設備投資に要した費用、貨物車両の入れ替えに要した費用といった各事業者SC1~SC4でのコストの増加が加味されてもよい。
【0088】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0089】
上述の二酸化炭素排出量算定システム100では、打設現場に納入された環境配慮型のコンクリートに代えて標準的なコンクリートが納入された場合にその製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の基準排出量と、環境配慮型のコンクリートの製造過程及び流通過程において生じたと推定される二酸化炭素の実質排出量と、の差分が二酸化炭素の排出削減量として算出される。
【0090】
このように、建設現場に納入された環境配慮型のコンクリートによる二酸化炭素の排出削減効果を求めることによって、コンクリートを製造及び流通するサプライチェーンに関わる各事業者の二酸化炭素の排出削減に対する貢献度合を把握することが可能となる。
【0091】
また、各事業者の貢献度合が把握されることで、サプライチェーン上のどの部分において二酸化炭素の削減効果が高いかを適切に評価することが可能となり、結果として、各事業者の二酸化炭素削減に対する意識を高めることができる。
【0092】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0093】
上記実施形態では、排出削減量ERや基準二酸化炭素排出量EB、実質二酸化炭素排出量EPを演算部12bによって算定するにあたって、生コンのサプライチェーンに関わる複数の事業者SC1~SC4の取引データが用いられている。これに代えて、排出削減量ERや基準二酸化炭素排出量EB、実質二酸化炭素排出量EPは、第1事業者SC1と第2事業者SC2との間の取引データのみに基づいて算定されてもよい。この場合、排出削減量ERに付与されたカーボンクレジットを、例えば、第2事業者SC2が製造した生コンに含まれるセメント成分の比率に応じて第2事業者SC2に配分することによって、第2事業者SC2の二酸化炭素削減に対する意識を高めることができる。
【0094】
また、上記実施形態では、標準的な生コンのセメント成分は、全てポルトランドセメントとしている。これに代えて、標準的な生コンのセメント成分には、ポルトランドセメント以外に所定の割合の高炉セメントB種が含まれていてもよく、標準的な生コンの成分は、生コンが用いられる建築物の部位、例えば、建築物の基礎構造部と上部構造部とで切り替えられてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、生コンの製造過程及び流通過程において二酸化炭素が排出される場合について主に説明したが、環境配慮型の生コンに二酸化炭素と接触すると二酸化炭素を吸収する特殊な混和材が含まれている場合には、この混和材が単体またはコンクリートに含有された状態で流通する過程において吸収された二酸化炭素の量を、各事業者SC1~SC4の二酸化炭素の実質排出量EP1~EP4からそれぞれ減算し、最終的な二酸化炭素の排出削減量ER1~ER4を算定するようにしてもよい。
【0096】
例えば、第1事業者SC1は、特殊な混和材を含むコンクリートを高濃度の二酸化炭素と接触(炭酸化養生)させることによって大量の二酸化炭素を吸収させ、この過程で吸収された二酸化炭素の吸収量を公知の手法により計測ないし推定し、計測ないし推定された吸収量を上述の二酸化炭素の実質排出量EP1から減算するようにしてもよい。また、各事業者SC2~SC4は、特殊な混和材を製造ないし輸送する過程において二酸化炭素を常時吸収させ、この過程で吸収された二酸化炭素の吸収量を公知の手法により計測ないし推定し、計測ないし推定された吸収量を上述の二酸化炭素の実質排出量EP2~EP4から減算するようにしてもよい。なお、特殊な混和材及びこれを含むコンクリートによって吸収された二酸化炭素の吸収量については、上述の二酸化炭素の実質排出量EP1~EP4と合算することなく、二酸化炭素の排出削減量ERとは別に二酸化炭素固定量としてカーボンクレジット化されてもよい。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0098】
例えば、二酸化炭素の排出量を求める上記各式(1)~(8)は一例でありこれらに限定されるものではなく、同義の数式であればどのような数式であってもよく、例えば、二酸化炭素の排出量をさらに厳密に算出可能な式であってもよいし、二酸化炭素の排出量を概算できる程度に簡素化された式であってもよい。
【符号の説明】
【0099】
100・・・二酸化炭素排出量算定システム
10・・・ブロックチェーン
11・・・ノード
12・・・データ格納サーバ
12a・・・データ格納部
12b・・・演算部
13A~13F・・・情報処理端末(事業者端末)
SC1~SC4・・・事業者