(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137049
(43)【公開日】2024-10-04
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240927BHJP
E02F 3/38 20060101ALI20240927BHJP
E02F 9/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E02F9/22 E
E02F3/38 A
E02F9/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048403
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆弘
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003BA01
2D003BA03
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】作業装置の姿勢を所望の姿勢に容易に遷移させることを可能とする建設機械を提供すること。
【解決手段】掘削作業機1のバケット23に土砂が積載されたら、オペレータは、サイドレバー17を操作して、バケット23の開口が上を向き開口端が水平となる姿勢を維持しつつ、第1ブーム21aを上方に回動させる。このとき、オペレータがボタンスイッチを操作して第1ブーム21aの回動時に第2ブーム21bのオフセット動作を自動で行う自動制御機能を有効にしておくことで、第2ブーム21bは第1ブーム21aの傾きに応じて自動で右方向に揺動し、第1ブーム21aを上方に回動させる操作のみで掘削装置3の姿勢を旋回姿勢に遷移させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に回動するように機体に支持され、先端に装着されたバケットを平面視で左右方向にずれるように移動させるオフセット動作を行う作業装置と、前記作業装置を上下に回動させる操作を行う操作レバーと、を備える建設機械において、
前記操作レバーの操作と共に、前記オフセット動作を自動で行わせる自動制御を実行する制御装置と、
前記自動制御を有効にさせるスイッチと、
を備える建設機械。
【請求項2】
前記自動制御は、
前記作業装置を上方に回動させる前記操作レバーの操作と共に、前記オフセット動作の起点位置に向けて前記オフセット動作を行わせる第1自動制御と、
前記作業装置を下方に回動させる前記操作レバーの操作と共に、前記オフセット動作の起点位置から左又は右にずれる位置に向けて前記オフセット動作を行わせる第2自動制御と、
を含む請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1自動制御では、側面視で、前記バケットを水平に移動させる、
請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1自動制御では、平面視で、前記バケットを前方から後方に向けて移動させる、
請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2自動制御において、前記オフセット動作の目標位置を設定する目標位置設定手段を有する、
請求項4に記載の建設機械。
【請求項6】
前記目標位置設定手段は、前記スイッチが有効になったときの前記バケットの位置を前記オフセット動作の目標位置に設定する、
請求項5に記載の建設機械。
【請求項7】
前記作業装置の支持部が前記機体の運転部側方に配設されている、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の建設機械。
【請求項8】
前記スイッチが前記操作レバーに装着されている、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば掘削作業機等の建設機械には、左右一対のクローラ式の走行部を有する下部走行体と、下部走行体に旋回可能に接続された上部旋回体と、上部旋回体の旋回フレームに俯仰動可能に設けられた作業装置から構成されている。作業装置は、複数の油圧シリンダを有し、各油圧シリンダを駆動させることにより、作業装置を動作させるよう構成されている。
【0003】
例えば特許文献1には、所謂油圧ショベルであって、ブームシリンダによって作動するブームと、アームシリンダによって作動するアームと、作業具シリンダによって作動するバケットとから構成される作業装置を備え、ブームシリンダ、アームシリンダおよび作業具シリンダのストロークをそれぞれ検出するストローク検出手段と、当該ストローク検出手段の検出結果に基づいて、作業装置が走行姿勢になったことをオペレータに報知する報知手段を備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された構成では、報知手段は、作業装置が走行姿勢になったことをオペレータに報知するものである。したがって、作業装置を走行姿勢に遷移させるときには、例えば、オペレータが操作レバーを操作して、バケットの向きを一定に保ちつつ、ブームを起立させている。このため、オペレータには高度な作業装置の操作技術が要求され、経験の浅いオペレータでは、作業装置の姿勢を変更するのに時間がかかり、作業効率が低下するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、作業装置の姿勢を所望の姿勢に容易に遷移させることを可能とする建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る建設機械は、上下方向に回動するように機体に支持され、先端に装着されたバケットを平面視で左右方向にずれるように移動させるオフセット動作を行う作業装置と、前記作業装置を上下に回動させる操作を行う操作レバーと、を備える建設機械において、前記操作レバーの操作と共に、前記オフセット動作を自動で行わせる自動制御を実行する制御装置と、前記自動制御を有効にさせるスイッチと、を備えるものである。
【0008】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記自動制御は、前記作業装置を上方に回動させる前記操作レバーの操作と共に、前記オフセット動作の起点位置に向けて前記オフセット動作を行わせる第1自動制御と、前記作業装置を下方に回動させる前記操作レバーの操作と共に、前記オフセット動作の起点位置から左又は右にずれる位置に向けて前記オフセット動作を行わせる第2自動制御と、を含むものである。
【0009】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記制御装置は、前記第1自動制御では、側面視で、前記バケットを水平に移動させる、ものである。
【0010】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記制御装置は、前記第1自動制御では、平面視で、前記バケットを前方から後方に向けて移動させる、ものである。
【0011】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記制御装置は、前記第2自動制御において、前記オフセット動作の目標位置を任意に設定できる目標位置設定手段を有する、ものである。
【0012】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記目標位置設定手段は、前記スイッチが有効になったときの前記バケットの位置を前記オフセット動作の目標位置に設定する、ものである。
【0013】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記作業装置の支持部が前記機体の運転部側方に配設されている、ものである。
【0014】
本発明の他の態様に係る建設機械は、前記建設機械において、前記スイッチが前記操作レバーに装着されている、ものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、作業装置の姿勢を所望の姿勢に容易に遷移させることを可能とする建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の動作の概要を示す説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の作業装置の姿勢を示す説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る掘削作業機の作業装置の姿勢を示す説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る表示部に表示する遷移姿勢の設定画面の表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は建設機械の作業装置を所定の姿勢に遷移させる際に、オペレータの作業装置の操作を補助する構成を工夫することにより、オペレータの作業装置の操作性を向上させるものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本発明の実施の形態では、本発明に係る建設機械として、旋回作業車である掘削作業機(ショベル)を例にとって説明する。ただし、本発明に係る建設機械には、掘削作業機に限らず、例えば、クレーン作業機等の他の建設機械も含まれる。
【0019】
第1実施形態に係る掘削作業機1の全体構成について、
図1を用いて説明する。なお、以下では、特に方向視を定めない限り、掘削作業機1の運転席に着座したオペレータの位置を基準に、「前側」、「後側」、「左右側」、「平面側」又は「上側」、「底面側」又は「下側」と称する。
【0020】
図1に示すように、掘削作業機1は、所謂、超小旋回型の油圧ショベルと呼称されるものである。一般に、超小旋回型の油圧ショベルとは、後端旋回半径比(後端旋回半径×2を車幅で除した値×100)、フロント最小旋回半径比(フロント最小旋回半径または機体前部の旋回中心からの最大距離×2を車幅で除した値×100)がともに120%以内であるショベルである。
【0021】
掘削作業機1は、自走可能な走行車体2と、走行車体2に取り付けられた作業装置としての掘削装置3および排土装置4を備える。走行車体2は、走行部5を備えた下部走行体20Aと、下部走行体20Aの上部に旋回可能に設けられた上部旋回体20Bとから構成される。排土装置4は下部走行体20A側に取付けられ、掘削装置3は上部旋回体20B側に取付けられる。
【0022】
下部走行体20Aは、左右一対のクローラ式の走行部5,5と、左右の走行部5,5を支持するトラックフレーム6とを有する。
【0023】
走行部5は、トラックフレーム6を構成する所定のフレーム部分に支持された複数のスプロケット等の回転体に履帯を巻回した構成を有する。走行部5は、後端部に回転体としての駆動スプロケット5aを有する。トラックフレーム6は、左右の走行部5,5間に位置するセンターフレーム部6aと、センターフレーム部6aの左右両側に設けられたサイドフレーム部6bとを有する。
【0024】
左右の走行部5,5は、左右一対の走行用油圧モータ44,44により駆動する。走行用油圧モータ44は、作動油を供給されることで駆動する油圧アクチュエータである。走行用油圧モータ44は、各走行部5において、トラックフレーム6のサイドフレーム部6b等の所定の部位に取り付けられた状態で設けられており、駆動スプロケット5aを回転駆動させる。左右の走行用油圧モータ44,44がそれぞれ走行部5,5を動作させることで、掘削作業機1の前後直進走行または左右旋回走行が行われる。
【0025】
トラックフレーム6の前側には、排土装置4が取り付けられている。排土装置4は、左右の走行部5,5間において前後方向に伸延する一対の支持フレーム4bと、支持フレーム4bの先端側に設けられた排土板としてのブレード4aとを有する。排土装置4は、支持フレーム4bとトラックフレーム6との間に設けられたブレードシリンダ(図示せず)によって昇降回動可能に設けられている。
【0026】
旋回フレーム7は、平面視略円形状に構成され、上部旋回体20Bの基台となる底板を有する。旋回フレーム7は、トラックフレーム6に対して、旋回ベアリング6cを介して底板を接続することにより、トラックフレーム6上に、上下方向の軸線回りに左右いずれの方向にも旋回可能に設けられている。旋回フレーム7の後下部には、カウンタウエイト7aが設けられている。
【0027】
旋回フレーム7上には、運転部10が設けられている。運転部10の右側には、タンク部が設けられている。タンク部には、掘削作業機1が有する油圧シリンダ等の油圧アクチュエータに供給される作動油を収容する作動油タンクが設けられている。運転部10の床部8の左側が、運転部10に対するオペレータの乗降口となっている。
【0028】
また、旋回フレーム7上の後部には、駆動源として、原動機であるエンジン12が設けられている。エンジン12は、例えばディーゼルエンジンである。旋回フレーム7の後部および右側面はボンネットおよび外装カバーによって覆われ、その内部はエンジン12等を収容する機関室となっている。
【0029】
運転部10の床部8の下方には、各油圧アクチュエータへの作動油の給排を制御するコントロールバルブ48が配置されている。コントロールバルブ48には、ブームシリンダ26の油圧を計測する圧力センサ45が配設されている。
【0030】
運転部10は、掘削装置3、排土装置4および走行部5を運転・操作するためのものである。旋回フレーム7上には、運転部10に対してキャノピ13が設けられている。
【0031】
キャノピ13は、運転部10の右側面を覆うように床部8から立設された側板部39と、運転部10の右側から左方向に張り出して、運転部10の上方を覆うキャノピルーフ部38とを有する。側板部39の運転席15に着座したオペレータの目線位置に相当する領域には、機体の右側を目視可能とする窓部37が設けられている。
【0032】
キャノピルーフ部38は、右端側を側板部39に、後方側を旋回フレーム7の後部上方に立設された後支柱部36aに、左側中途部を後支柱部36aの左側前方に立設された補助支柱部36bにより支持されている。このようなキャノピ13を採用することで、運転部10の前方および左側が開放された状態となっている。
【0033】
運転部10においては、床部8の後側に運転席支持台14が設けられており、運転席支持台14上に運転席15が設けられている。運転席15の前方には、オペレータが把持する左右一対の操作レバーを有する走行レバー装置11が設けられている。床部8上において、走行レバー装置11を挟んだ左右両側には、作業用の複数の操作ペダル16が配設されている。
【0034】
また、運転部10において、運転席15の周囲には、掘削装置3等の作業装置を操作するための作業操作レバーであるサイドレバー17、ブレードレバー、スイッチ等の各種操作部を有する操作パネル部50、および、表示部49(
図2参照)等が設けられている。サイドレバー17は、前後左右の4方向にレバーを動かすことにより、後述する掘削装置3のブーム21、アーム22およびバケット23を操作する操作レバーである。サイドレバー17は、運転席15を挟んで左右一対設けられ、レバーの傾倒方向に掘削装置3の各部の動作が割り当てられている。
【0035】
運転部10の前端には、中実の丸棒または中空の鋼管を曲げ加工して形成した柵部材31が設けられている。柵部材31は、オペレータが前方の作業対象を確認するために前傾姿勢となったときに体を支える柵としての役割を果たすとともに、オペレータが運転部10に対して乗降するときの手摺りとしての役割を果たす。
【0036】
掘削装置3は、掘削作業機1の前側に設けられたフロント作業装置である。掘削装置3は、左右方向に揺動可能なオフセット式のブーム21を有している。ブーム21は、旋回フレーム7の前側に上下に回動可能に設けられた第1ブーム21aと、第1ブーム21aの先端側に左右方向に揺動可能に取付けられた第2ブーム21bと、第2ブーム21bの先端に左右方向に揺動可能に設けられた第3ブーム21cと、第1ブーム21aと第3ブーム21cとの間を連結するオフセットリンク24から成る。第3ブーム21cの先端には、アーム22が上下方向に回動可能に取り付けられ、さらにアーム22の先端にはバケット23が上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0037】
掘削装置3は、ブームシリンダ26(
図4参照)、オフセットシリンダ25、アームシリンダ27、作業具シリンダ28を駆動することにより、第1ブーム21a、第2ブーム21b、アーム22、バケット23をそれぞれ動作させる。例えば、オフセットシリンダ25が伸長・縮小することにより、第2ブーム21bが左右方向に揺動し、アーム22が第1ブーム21aに対して左右方向に平行移動する。この状態でブームシリンダ26の駆動により第1ブーム21aを前後方向に揺動させ、さらにアームシリンダ27を駆動してアーム22を回動させることにより、側溝等の掘削作業を行うことができる。なお、これらのシリンダは、いずれも油圧シリンダである。掘削装置3においては、作業内容に応じてバケット23に替えてグラップルまたはブレーカ等の他の作業具が装着される。
【0038】
図2に、掘削作業機1の主要な電気的構成を示す。なお、
図2においては、掘削装置3の動作制御に関連した構成を主に示す。
【0039】
掘削作業機1は、掘削作業機1全体の動作を制御するコントローラ40を備える。コントローラ40は、電子部品を配置した基板等が収容された制御装置であり、演算装置(CPU)46とメモリ47を含み、メモリ47に格納したプログラムを演算装置46で実行するものである。また、コントローラ40は、機能的構成として目標位置設定部141を有する。なお、コントローラ40の構成は、任意のハードウェア、ソフトウェア若しくはそれらの組み合わせにより各種機能を実現できるものであれば、特に限定されない。コントローラ40は、運転部10において、運転席15の右側に配置された操作パネル部50内もしくは運転席支持台14の内部等に配置されるが、これに限定されない。コントローラ40は、エンジン12および作動油タンク等の他の機械要素の配置との関係を考慮して、旋回フレーム7の所定の位置に配置される。
【0040】
掘削装置3の第1ブーム21aには角度センサ41、第2ブーム21bには角度センサ42、アーム22には角度センサ43が配設されている。角度センサ41,42,43は、ポテンショメータとも呼称されるものであり、回転角に応じた信号を出力するものである。したがって、角度センサ41は、第1ブーム21aを前後回動可能に支持する回動支軸であるブーム支持ピンの近傍に(
図4参照)、角度センサ42は、第1ブーム21aに対して第2ブーム21bを左右回動可能に支持する回動支軸である第2ブーム支持ピンの近傍に、角度センサ43は、第3ブーム21cに対してアーム22を回動可能に支持する回動支軸であるアーム支持ピンの近傍にそれぞれ配設される。なお、角度センサ41,42,43は、各回動支軸に対して設けられたポテンショメータに限定されず、掘削装置3を構成するアーム22等の各動作部位の回動角度または各動作部位同士を連結する回動支軸の回転角度を検出できるものであればよい。
【0041】
また、コントロールバルブ48のブームシリンダ26に接続される油圧管路には圧力センサ45が配設され、圧力センサ45の検出結果からバケット23内に収容された土砂等の重量を確認することが可能となっている。すなわち、バケット23の積載重量に応じてブーム21にかかる荷重が変動し、荷重の変動によりブームシリンダ26への負荷が変動することを利用することで、バケット23の積載重量を求めることができる。角度センサ41,42,43および圧力センサ45は、通信線と電力供給線とをチューブでまとめて一束としたワイヤハーネスを介して、運転部10に配置されたコントローラ40に電気的に接続される。
【0042】
コントローラ40は、運転部10に配置されたサイドレバー17、サイドレバー17に設けたスイッチボタン55、および、操作パネル部50に配置された複数のスイッチ51からの入力を受け付け、入力信号に応じた演算処理等を実行する。演算処理等の実行においては、角度センサ41,42,43および圧力センサ45等の各種センサ類から入力された検出結果が適宜利用される。また、コントローラ40は、処理結果として掘削装置3の姿勢などの機体の状態を示す情報等を表示部49に表示する。
【0043】
掘削装置3は、第1ブーム21aの先端側を最も後方まで仰動させ、かつアーム22を第1ブーム21a側に折畳み、バケット23をブーム21とアーム22の間に配置することにより、
図1に示すような超小旋回姿勢をとることができる。
【0044】
また、掘削作業機1では、旋回フレーム7上のタンク部と運転部10との間が掘削装置3の第1ブーム21aの移動領域となっている。また、キャノピ13における側板部39は、第1ブーム21aの移動領域と運転部10とを区画している。
【0045】
以上のような構成を備えた掘削作業機1においては、運転席15に着座したオペレータにより座席の前方に設置された走行レバー装置11、座席の側方に設置されたサイドレバー17、および、床部8に設置された操作ペダル16が適宜操作されることで、所望の動作・作業が行われる。
【0046】
掘削作業機1の動作について、
図3を参照して説明する。
図3は、掘削作業機1による掘削作業の様子を平面視により模式的に示した説明図である。
【0047】
例えば、片側一車線の道路において、車線の一方の通行を規制して水道管もしくはガス管等を埋設するための溝DH、あるいは排水のための溝(側溝)DHを、掘削作業機1により形成する作業を行う場合、
図3に示すように、車道のセンターラインCLと、歩道と車道を区画する縁石や家屋等の障害物WLとの間に、掘削作業機1と土砂運搬用のトラックを縦列駐車することになる。オペレータは、掘削装置3を動作させて溝DHを掘り進める掘削作業を実行し、地面から削り取った土砂等をバケット23内に積載する。しかる後、オペレータは上部旋回体20Bを右回りに180度旋回させ、さらにブーム21およびアーム22を操作してバケット23をトラックの荷台TBのアオリより上方の高さに上げトラックの荷台TBの上方の所定の位置まで移動させる。バケット23を排土の目標位置まで移動させたら、オペレータはバケット23を回動させる操作を行い、土砂等をバケット23内からトラックの荷台TBに排出させる。トラックの荷台TBへの土砂等の排出が終わると、再び掘削作業を行うため、オペレータの操作により、上部旋回体20Bの左旋回、続いてバケット23の掘削位置までの移動が行われる。また、掘削により形成した溝DHを埋め戻すための土砂等を、トラックの荷台TBから溝DHに移す作業も上部旋回体20Bを旋回させて掘削装置3を動作させることにより実行される。
【0048】
上部旋回体20Bを旋回させるときには、少なくともバケット23、アーム22、ブーム21が旋回時にセンターラインCLおよび障害物WLとの間の幅からはみ出さないようにしなければならない。また、バケット23に土砂等を積載した状態では、バケット23から積載物が落ちないようにするため、従来は、オペレータが、バケット23の開口端が水平となるように、バケット23の姿勢を維持し、さらに、機体前方左寄りの掘削位置からバケット23を運転部10よりも右側(
図3に破線で示す位置)になるように、第2ブーム21bを右に揺動させつつ第1ブーム21aを上方に回動させる操作を行っている。そして、掘削装置3の姿勢が、
図3に二点鎖線に示した円P内にバケット23、アーム22、ブーム21が収まる旋回姿勢となったら、矢印Rで示すように上部旋回体20Bを180度旋回させる。なお、円Pは、掘削作業機1のような超小旋回型の油圧ショベルにおいて、後端旋回半径比、および、フロント最小旋回半径比が120%以内となる範囲を示すものである。
【0049】
このように、従来の掘削から旋回までの掘削装置3の動作は、オペレータが左右のサイドレバー17を、経験により習得したタイミングでそれぞれ操作する手動操作によって実現されていた。第1ブーム21aの上下回動、第2ブーム21bの左右へのオフセット動作、および、バケット23の姿勢維持等、異なる部材の動作を複合的に実行させるため、オペレータには高度な操作技術が要求されていた。本実施形態に係る掘削作業機1では、掘削から旋回までの掘削装置3の動作を一部自動制御することにより、オペレータの操作を補助し、操作負担を軽減するものである。以下に自動制御による掘削装置3の姿勢遷移の一例を、
図4から
図6を参照して説明する。
【0050】
図4に示すように、オペレータが掘削装置3に掘削作業を実行させるときには、まず、オペレータはサイドレバー17を操作して、下部走行体20Aの接地面GL(
図4に二点鎖線で示す)より下方にバケット23を移動させる。このとき、バケット23を、オフセット動作の起点位置(オフセット0位置)から平面視で左右方向にずれるように移動させるオフセット動作を手動で行う。次にバケット23を回動させて地面を削る掘削作業を行う。掘削装置3の動作時には、第1ブーム21aの前後方向の回動角は角度センサ41により、第2ブーム21bの左右方向の回動角は角度センサ42により、アーム22の前後方向の回動角は角度センサ43によりそれぞれモニタされる。
【0051】
バケット23に土砂が積載されたら、オペレータは、サイドレバー17を操作して、バケット23の開口が上を向き開口端が水平となる姿勢を維持しつつ、第1ブーム21aを上方に回動させる。このとき、オペレータは、スイッチボタン55を操作して第1ブーム21aの回動時に第2ブーム21bのオフセット動作を自動で行う自動制御機能を有効にしておく。ここでの自動制御は、オフセット動作の起点位置に向けてバケット23を移動させる第1自動制御である。そうすると、第2ブーム21bは第1ブーム21aの傾きに応じて自動で右方向に揺動し、掘削装置3の姿勢は
図5に示す旋回姿勢に遷移する。
【0052】
自動制御機能の有効化は、例えば、オペレータがサイドレバー17を操作しているときに、サイドレバー17に設けられたスイッチボタン55を押すことにより行われる。スイッチボタン55からの信号は、コントローラ40に入力される。また、自動制御機能を有効にするための操作スイッチは、操作パネル部50に設けた複数のスイッチ51のいずれかに割り当てることができる。なお、本実施形態に係る掘削作業機1のように、オペレータが把持して操作するサイドレバー17にスイッチボタン55を配置すると、オペレータがサイドレバー17から手を離さなくともスイッチボタン55の操作ができることから、操作性が向上する。
【0053】
また、スイッチボタン55の出力信号は、掘削装置3を所定の姿勢に遷移させる命令となる遷移信号と言える。コントローラ40は、スイッチボタン55からの遷移信号をサイドレバー17が操作されているときに受け付け、第1ブーム21aの傾き角度に応じて第2ブーム21bの動作を制御する。言い換えると、コントローラ40では、サイドレバー17が操作され角度センサ41からの入力信号に基づいて求められた第1ブーム21aの傾き角度が変化している状態のときに、スイッチボタン55からの遷移信号を受け付けている。
【0054】
掘削装置3には、サイドレバー17の操作により動作する動作部位として、第1ブーム21a、第2ブーム21bおよびバケット23等が備えられているが、例えば、右サイドレバー17の前後方向への傾倒が第1ブーム21aの上下回動動作に割り当てられている場合、スイッチボタン55は、第1ブーム21aとは異なる動作部位である第2ブーム21bの自動制御に割り当てられる。例えば、掘削装置3の姿勢が
図5に示す旋回姿勢のときに、オペレータが右サイドレバー17を前方向(第1方向)に操作し、かつ、スイッチボタン55を押すと、コントローラ40は掘削装置3の姿勢を
図4に示す掘削姿勢(第1の姿勢)に遷移させる。また、掘削装置3の姿勢が掘削姿勢のときに、オペレータが右サイドレバー17を後方向(第2方向)に操作し、かつ、スイッチボタン55を押すと、コントローラ40は、掘削装置3の姿勢を旋回姿勢に遷移させる。
【0055】
自動制御機能は、トラックの荷台TPに排土するために上部旋回体20Bを旋回させる前の掘削装置3の姿勢を旋回姿勢に遷移させるとき(第1自動制御)だけでなく、他の姿勢に遷移させるときにも使用することができる。例えば、排土後に掘削装置3を旋回姿勢として上部旋回体20Bを旋回させた後に、再度掘削作業を行うために
図4に示すような掘削姿勢に遷移させる場合には、オペレータはサイドレバー17を操作して第1ブーム21aを下方に回動させる。このとき、第2ブーム21bの左方向への揺動は、第1ブーム21aの傾きに応じて自動制御され、機体に対して右寄りの位置にあったバケット23の位置が機体中央もしくは機体中央よりも左寄りの位置に自動的にオフセットされる(第2自動制御)。
【0056】
このような掘削姿勢に遷移させるオフセット動作(第2自動制御)において、バケット23の目標位置は、予めオフセット動作の目標位置として、コントローラ40のメモリ47に記憶さている。
【0057】
コントローラ40に設けられた機能的構成である目標位置設定部141(
図2参照)は、オペレータが指定した任意の位置をオフセット動作の目標位置に設定可能とする目標位置設定手段である。目標位置設定部141は、メモリ47に格納したプログラムを演算装置46で実行することにより実現される。
【0058】
第2自動制御における目標位置の設定は、例えば、以下の操作により行われる。オペレータが表示部49に表示されたモード選択画面から、目標位置設定モードを選択し、サイドレバー17を操作して手動によりバケット23をオフセット動作の起点位置(オフセット0位置)から平面視で左右方向にずれるように移動させるオフセット動作を行わせる。このオフセット動作中に、オペレータがスイッチボタン55を押すと、目標位置設定部141は、スイッチボタン55からの入力信号を受信したときのバケット23の位置を、掘削作業の目標位置として設定し、メモリ47に記憶させる。
【0059】
掘削作業の目標位置の設定が終わると、第2自動制御を有効状態として行う掘削作業においては、オペレータが第1ブーム21aを下方に回動させる操作を行ったときに、機体に対して右寄りの位置(起点位置)にあったバケット23の位置が機体中央もしくは機体中央よりも左寄りの位置に自動的にオフセットされる。
【0060】
また、自動制御機能は、オペレータがスイッチボタン55を押している間だけ有効としてもよく、スイッチボタン55を一度押して有効とし、その後にサイドレバー17をニュートラルポジションに戻したときに解除するようにしてもよい。また、スイッチボタン55をサイドレバー17の操作の前に押してスタンバイ状態としておき、サイドレバー17を操作している間だけ自動制御機能が有効となるようにしてもよい。
【0061】
本実施形態における自動制御機能は、実質的に第1ブーム21aの動作に連動させて第2ブーム21bの動作(オフセット動作)を自動化しているものであるから、
図3に示すような溝DHを形成するためバケット23が下部走行体20Aの接地面GLより下方にあるときに当該機能を有効とすると、溝DHの壁面にバケット23の側面が衝突することになる。このため、このような自動制御機能は、バケット23が下部走行体20Aの接地面GLより上方に移動した後に有効とすることが好ましい。例えば、オペレータがバケット23の上昇位置を目視で確認した後にスイッチボタン55を押すことで自動制御機能の有効としてもよい。また、スイッチボタン55が押された後、コントローラ40の判断により自動制御機能を有効としてもよい。このようにコントローラ40に自動制御機能を有効の可否を判断させる場合には、バケット23の位置をセンサ等の入力から求め、バケット23が所定の高さ位置に到達したか否かを判断基準とする。バケット23の位置は、設計上把握される機体の各動作部位の寸法と角度センサ41,42,43の検出結果から求めることが可能である。なお、本実施形態では掘削装置3の第1ブーム21a、第2ブーム21b、アーム22にそれぞれ角度センサ41,42,43を配設しているが、バケット23にも角度センサもしくは位置センサを配設し、当該センサの出力からコントローラ40がバケット23の位置を把握できるようにしてもよい。
【0062】
また、上部旋回体20Bを何度も旋回させて掘削作業と排土作業を繰り返し行う場合には、スイッチボタン55を押したときに、掘削姿勢(第1の姿勢)から旋回姿勢(第2の姿勢)への遷移を実行する第1自動制御を行うか、旋回姿勢(第2の姿勢)から掘削姿勢(第1の姿勢)への遷移を実行する第2自動制御を行うかを、コントローラ40が掘削装置3の現在状態に基づいて判定し、実行するようにしてもよい。なお、コントローラ40における掘削装置3の現在状態に基づく遷移姿勢の選択は、スイッチボタン55からの入力の前に行ってもよく、入力の後に行ってもよい。
【0063】
掘削装置3の現在状態を判定する判定条件としては、バケット23の土砂等の積載重量を用いることがきる。例えば、圧力センサ45が検出するブームシリンダ26の油圧の圧力値とバケット23に積載した積載物の重量とに相関関係があることから、コントローラ40は圧力センサ45からの入力信号を取得することにより、バケット23の積載重量を求めることができる。したがって、圧力センサ45の検出結果に基づく現在のバケット23の土砂等の積載重量を、旋回姿勢と掘削姿勢のいずれの姿勢に遷移させるかの判定条件とすることができる。コントローラ40がバケット23の積載重量からバケット23に土砂等が積載されていると判断した場合には、旋回姿勢への遷移が選択され、姿勢遷移動作における自動制御(第2ブーム21bの左右揺動動作の自動制御)が実行される。
【0064】
コントローラ40は、スイッチボタン55を押して自動制御機能を利用できる掘削装置3の姿勢遷移動作の遷移予定の姿勢(判定条件により選択された遷移対象の姿勢)を、表示部49に表示してもよい。スイッチボタン55の操作をサイドレバー17の傾倒操作の前に行う場合には、オペレータはスイッチボタン55を押す前に、これから行う操作により掘削装置3がとる姿勢を予め確認することができる。また、遷移予定の姿勢とともに、サイドレバー17の操作方向を表示部49に表示してもよい。掘削装置3の遷移予定の姿勢が表示部49に表示されているときに、サイドレバー17が所定の方向に操作され、コントローラ40にスイッチボタン55の操作信号が入力されたときには、コントローラ40は、表示部49に表示されている遷移予定の姿勢に掘削装置3の姿勢を遷移させる。
【0065】
また、表示部49が表示する遷移予定の姿勢が、オペレータの意図している姿勢と異なる場合には、スイッチボタン55と自動制御対象の遷移姿勢との対応付けの設定に誤りがあることもある。このような場合には、オペレータが表示部49からスイッチボタン55に対応付けて設定されている遷移姿勢を変更する。
【0066】
図6に、表示部49に表示する遷移姿勢の設定画面の表示例を示す。
図6に示すように、表示部49には、自動制御機能の利用が可能な姿勢が列挙され、画面操作は表示部49に設けたタッチパネルにより可能となっている。オペレータは、自動制御機能の利用が可能な各姿勢のうち、スイッチボタン55に対応させる姿勢を、ラジオボタン81をチェックして選択し、決定ボタンを押す。そして、オペレータの選択内容をコントローラ40のメモリ47に記憶させることで、設定変更は完了する。なお、遷移姿勢の設定画面で設定可能な掘削装置3の姿勢としては、旋回姿勢、輸送姿勢、待機姿勢、最上げ姿勢等が挙げられる。旋回姿勢は、上部旋回体20Bを旋回させるときの姿勢である(
図5参照)。輸送姿勢は、トレーラ等の荷台に機体を載置するときの姿勢であり、第1ブーム21aを前方に倒し、アーム22を機体側に折り曲げバケット23をアーム22よりも後方かつ下方に位置させ、バケット23の背面側をブレード4aの直上に位置させた姿勢である。待機姿勢は、掘削作業等の作業場所において駐機時に取る姿勢であり、第1ブーム21aを前方に倒し、第2ブーム21bとアーム22が平面視で直線状となるように位置させバケット23を接地させた姿勢である。また、最上げ姿勢は、バケット23がその作業場所で許容される最も高い位置に配置する姿勢である。
【0067】
また、コントローラ40に、表示部49に掘削装置3の遷移予定の姿勢が表示されているときに、スイッチボタン55の操作信号が入力されたときには、コントローラ40は、は作業装置(掘削装置3)を所定の姿勢(遷移予定の姿勢)に遷移させる。
【0068】
なお、上述した自動制御機能は、従来から掘削作業機1に搭載されている安全対策機能の動作を妨げるものではなく、自動制御機能よりも安全対策機能が優先される。安全対策機能としては、例えば、バケット23が運転部10に侵入することを回避するためのアーム22の自動回避機能、第1ブーム21aおよびアーム22の上方回動の上限以上への移動を制限する高さ制限機能等があげられる。なお、高さ制限機能は、高さ制限のある場所での作業に先立って該当の場所で予め手動で掘削装置3を動作させ、角度センサ41,43の検出値から得た情報を第1ブーム21aおよびアーム22の最大高さ位置としてコントローラ40のメモリ装置に記憶させることにより機能させることができる。
【0069】
上述した実施形態に係る掘削作業機1では、掘削装置3の姿勢変更において、第2ブーム21bの動作を第1ブーム21aの動作に連動させて自動制御させる命令信号(遷移信号)の出力スイッチとして、サイドレバー17に設けたスイッチボタン55を例に説明したが、これに限定されない。スイッチの配置は、運転部10に配置された操作レバーおよび操作スイッチの配置と、各操作レバーおよび操作スイッチに対する掘削装置3の各動作部位の操作割り当てを考慮して、適宜選択される。
【0070】
以上のような構成を備えた本実施形態に係る掘削作業機1は、次のような構成を備えていると言える。すなわち、掘削作業機1は、上下方向に回動するように機体に支持され、先端に装着されたバケット23を平面視で左右方向にずれるように移動させるオフセット動作を行う作業装置(掘削装置3)と、作業装置(掘削装置3)を上下に回動させる操作を行う操作レバー(サイドレバー17)と、を備え、操作レバー(サイドレバー17)の操作と共に、オフセット動作を自動で行わせる自動制御を実行する制御装置(コントローラ40)と、自動制御を有効にさせるスイッチ(スイッチ51、スイッチボタン55)と、を備えているものである。
【0071】
このような構成の掘削作業機1によれば、掘削装置3の姿勢を所定の姿勢に遷移させる動作が操作スイッチにより一部自動化されることから、掘削装置3の姿勢を変更するときのオペレータの操作負担が低減される。
【0072】
掘削作業機1において、自動制御は、作業装置(掘削装置3)を上方に回動させる操作レバー(サイドレバー17)の操作と共に、オフセット動作の起点位置に向けてオフセット動作を行わせる第1自動制御と、作業装置(掘削装置3)を下方に回動させる操作レバー(サイドレバー17)の操作と共に、オフセット動作の起点位置から左又は右にずれる位置に向けて前記オフセット動作を行わせる第2自動制御と、を含むものである。
【0073】
このような構成の掘削作業機1によれば、旋回時の掘削装置の姿勢におけるバケット23のオフセット0(ゼロ)に相当する位置を起点位置として、バケット23を作業位置から起点位置に戻すオフセット動作(第1自動制御)と起点位置から作業の目標位置に向かわせるオフセット動作(第2自動制御)とが自動制御機能として用意されており、第1自動制御および第2自動制御のそれぞれは、サイドレバー17の操作と共に行われる。すなわち、従来の煩雑なオフセット動作のための操作を、オペレータはサイドレバー17の操作のワンアクションで実現可能となる。このため、掘削、旋回、排土、旋回、掘削の順に繰り返し行われる側溝掘削等の作業におけるオペレータの操作負担が従来よりも低減され、経験の浅いオペレータでも上部旋回体20Bの旋回動作前後の掘削装置3の姿勢変更をスムーズに行うことが可能となる。これにより、側溝掘削等の作業効率も向上させることができる。土木工事等の作業において、作業効率を向上させることができる。
【0074】
掘削作業機1において、制御装置(コントローラ40)は、第1自動制御では、側面視で、バケット23を水平に移動させるものである。さらに、制御装置(コントローラ40)は、第1自動制御では、平面視で、バケット23を前方から後方に向けて移動させる、ものである。
【0075】
このような構成の掘削作業機によれば、オフセット動作中のバケット23の姿勢が維持され、バケット23内に積載した土砂等の積載物がこぼれ落ちることを防ぐことが可能となる。
【0076】
掘削作業機1において、制御装置(コントローラ40)は、第2自動制御において、オフセット動作の目標位置を設定する目標位置設定手段(目標位置設定部141)を有する、ものである。さらに、目標位置設定手段(目標位置設定部141)は、スイッチ(スイッチボタン55)が有効になったときのバケット23の位置をオフセット動作の目標位置に設定する、ものである。
【0077】
このような構成の掘削作業機1によれば、バケット23を移動させる目標位置を、作用場所に応じて任意に設定可能となる。また、スイッチボタン55がON(有効)になった時のバケットの位置を目標位置と設定できることから、オペレータの所望の位置を目標位置に設定することが容易に行える。
【0078】
掘削作業機1において、作業装置(掘削装置3)の支持部が機体(上部旋回体20B)の運転部10側方に配設されていることから、上部旋回体20Bを旋回させるときには、掘削装置3を上部旋回体20Bの前側に突出させることなく運転部10の側方にコンパクトに折り畳んだ姿勢で位置させることができる。
【0079】
掘削作業機1において、スイッチ(スイッチボタン55)が操作レバー(サイドレバー17)に装着されている、ものである。これにより、オペレータはサイドレバー17を把持した状態で、容易に自動制御のための操作を実行することが可能となる。
【0080】
また、制御装置(コントローラ40)は、作業装置(掘削装置3)の現在状態に関する判定条件に基づいて選択される姿勢に作業装置(掘削装置3)の姿勢を遷移させる、ものであってもよい。この場合、判定条件には、バケット23における被積載物の積載状態を採用できる。
【0081】
このような構成の掘削作業機1によれば、バケット23に土砂等を積載しているか否かによって、掘削装置3を次に遷移させる姿勢を選択している。例えば、バケット23に土砂を積載している状態は、掘削装置3が掘削を終えて排土のために上部旋回体20Bを旋回させる前の状態であると判断できる。このときには、第1ブーム21aを上方に回動させる操作により掘削装置3の姿勢を、上部旋回体20Bを旋回させるときの旋回姿勢に遷移させればよい。また、バケット23に土砂を積載していない状態は、掘削装置3が掘削作業を行う前の状態であると判断できる。このときには、例えば、旋回姿勢の掘削装置3の第1ブーム21aを下方に回動させる操作により掘削装置3の姿勢を、第2ブーム21bとアーム22が前後方向において直線状となる待機姿勢に遷移させればよい。いずれの場合も、第1ブーム21aの操作指示のみにより、他の動作部位の動作は自動制御されて所望の姿勢で要求される位置に移動する。このような判断を設けることにより、姿勢選択の誤りや操作スイッチの押し間違いによる誤動作を防止することができる。
【0082】
掘削作業機1は表示部49を備え、制御装置(コントローラ40)は、操作スイッチ(スイッチ51、スイッチボタン55)が操作されると、判定条件に基づいて選択された作業装置(掘削装置3)の遷移予定の姿勢を表示部49に表示させる、ものであってもよい。また、表示部49には、掘削装置3の遷移予定の姿勢だけでなく、姿勢遷移中であることを示す警告メッセージを表示するようにしてもよい。さらに、姿勢遷移中の報知は、表示部49への表示と同時、または、表示部49への表示にかえて、警報音を発生させることにより行ってもよい。
【0083】
掘削作業機1において、制御装置(コントローラ40)は、表示部49に作業装置(掘削装置3)の遷移予定の姿勢を表示されているときに、操作スイッチ(スイッチ51、スイッチボタン55)が操作された場合は作業機(掘削装置3)を所定の姿勢に遷移させる、ものであってもよい。これにより、オペレータは遷移予定の姿勢を表示部49で確認しつつ、実際の掘削装置3の姿勢遷移の様子を目視で確認することが可能となる。
【0084】
掘削作業機1において、制御装置(コントローラ40)は、操作スイッチ(スイッチ51、スイッチボタン55)の操作により作業装置(掘削装置3)が姿勢を遷移させているときに、操作部(サイドレバー17)からの操作を受け付けた場合は、作業装置(掘削装置3)の姿勢遷移の動作を停止させる、ものであってもよい。これにより、オペレータが遷移予定の姿勢と実際の掘削装置3の姿勢遷移の様子が相違すると気付いた場合にも、サイドレバー17を操作するだけで速やかに姿勢遷移の動作を中断させることができる。なお、このような姿勢遷移の動作の停止においては、サイドレバー17の操作入力の後、即座に動作を停止させるのではなく、掘削装置3の各動作部位が運転部10への侵入を禁止している安全域外にあるときには、移動速度を遅くしてオペレータに手動操作への切り替え猶予を与えるようにしてもよい。
【0085】
上述した実施形態では、オフセットブームを備えた掘削作業機1について説明したが、ブーメラン状のブームを備えた後方小旋回型の油圧ショベルに対して本発明を適用可能であることは勿論である。なお、後方小旋回型の油圧ショベルとは、旋回時に車体後方の安全が確保されるよう後端旋回半径比(後端旋回半径×2を車幅で除した値×100)が120%以下で、フロント最小旋回半径比(フロント最小旋回半径または機体前部の旋回中心からの最大距離×2を車幅で除した値×100)が120%を超えるショベルである。
【0086】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る建設機械は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0087】
なお、本発明は、以下の態様をとることができる。
(付記1)
上下方向に回動するように機体に支持され、先端に装着されたバケットを平面視で左右方向にずれるように移動させるオフセット動作を行う作業装置と、前記作業装置を上下に回動させる操作を行う操作レバーと、を備える建設機械において、
前記操作レバーの操作と共に、前記オフセット動作を自動で行わせる自動制御を実行する制御装置と、
前記自動制御を有効にさせるスイッチと、
を備える建設機械。
(付記2)
前記自動制御は、
前記作業装置を上方に回動させる前記操作レバーの操作と共に、前記オフセット動作の起点位置に向けて前記オフセット動作を行わせる第1自動制御と、
前記作業装置を下方に回動させる前記操作レバーの操作と共に、前記オフセット動作の起点位置から左又は右にずれる位置に向けて前記オフセット動作を行わせる第2自動制御と、
を含む(付記1)に記載の建設機械。
(付記3)
前記制御装置は、前記第1自動制御では、側面視で、前記バケットを水平に移動させる、
(付記2)に記載の建設機械。
(付記4)
前記制御装置は、前記第1自動制御では、平面視で、前記バケットを前方から後方に向けて移動させる、
(付記2)または(付記3)に記載の建設機械。
(付記5)
前記制御装置は、前記第2自動制御において、前記オフセット動作の目標位置を設定する目標位置設定手段を有する、
(付記2)から(付記4)の何れか1に記載の建設機械。
(付記6)
前記目標位置設定手段は、前記スイッチが有効になったときの前記バケットの位置を前記オフセット動作の目標位置に設定する、
(付記5)に記載の建設機械。
(付記7)
前記作業装置の支持部が前記機体の運転部側方に配設されている、
(付記1)から(付記6)の何れか1項に記載の建設機械。
(付記8)
前記スイッチが前記操作レバーに装着されている、
(付記1)から(付記7)の何れか1に記載の建設機械。
【符号の説明】
【0088】
1 掘削作業機(建設機械)
2 走行車両
3 掘削装置
5 走行部
7 旋回フレーム
8 床部
10 運転部
11 走行レバー装置
13 キャノピ
14 運転席支持台
15 運転席
17 サイドレバー(操作レバー)
20A 下部走行体
20B 上部旋回体
21 ブーム
21a 第1ブーム
21b 第2ブーム
21c 第3ブーム
22 アーム
23 バケット
25 オフセットシリンダ
26 ブームシリンダ
27 アームシリンダ
28 作業具シリンダ
40 コントローラ
41 角度センサ
42 角度センサ
43 角度センサ
45 圧力センサ
48 コントロールバルブ
49 表示部
50 操作パネル部
51 スイッチ
55 スイッチボタン(スイッチ)
141 目標位置設定部(目標位置設定手段)