(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137057
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 35/00 20060101AFI20240930BHJP
B62J 37/00 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
B62J35/00 E
B62J37/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036675
(22)【出願日】2023-03-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 亮二
(57)【要約】
【課題】蒸発燃料を燃料タンクから排出しつつ、旋回時等に液体燃料が燃料タンクから排出されることを防止する鞍乗型車両を提供すること。
【解決手段】燃料タンクと液体燃料と蒸発燃料とを分離する気液セパレータとを備えた鞍乗型車両であって、前記燃料タンクは前記蒸発燃料の排出口が形成された上壁を有し、前記気液セパレータは前記排出口を塞ぐように前記上壁に設けられ、前記排出口と連通した気液分離室を形成するカップ部材と、前記気液分離室に設けられ、前記排出口を開閉する弁体とを備え、前記カップ部材は前記気液分離室と連通する側部開口部を有する側部と前記気液分離室と連通する底部開口部を有する底部とを備え、前記弁体は、前記底部と前記排出口との間に配置され、かつ、前記底部開口部を介して前記気液分離室に流入する前記液体燃料に押されて前記排出口の側に変位し、該排出口の周囲に当接する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料(200)を収容する燃料タンク(119)と、
前記燃料タンク内の上部に設けられ、前記液体燃料と該液体燃料から蒸発した蒸発燃料とを分離する気液セパレータ(1)と、
を備えた鞍乗型車両(100)であって、
前記燃料タンク(119)は、前記蒸発燃料の排出口(119b)が形成された上壁(119a)を有し、
前記気液セパレータ(1)は、
前記排出口(119b)を塞ぐように前記上壁(119a)に設けられ、前記排出口(119b)と連通した気液分離室(20)を形成するカップ部材(2)と、
前記気液分離室(20)に設けられ、前記排出口(119b)を開閉する弁体(3)と、を備え、
前記カップ部材(2)は、側部(21)と、前記側部(21)の底面に位置する底部(22)と、を備え、
前記側部(21)は、前記気液分離室と連通する側部開口部(23)を有し、
前記底部(22)は、前記気液分離室と連通する底部開口部(24)を有し、
前記弁体(3)は、
前記底部(22)と前記排出口(119b)との間に配置され、かつ、前記底部開口部(24)を介して前記気液分離室(20)に流入する前記液体燃料(200)に押されて前記排出口(119b)の側に変位し、該排出口(119b)の周囲に当接する、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記弁体(3)は、板部材である、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
前記底部(22)には、前記底部開口部(24)よりも上方に突出した突起部(22b)が形成されており、
前記板部材(3)は、前記突起部(22b)に載置されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鞍乗型車両であって、
前記底部(22)は、前記底部開口部(23)の周囲において、前記突起部(25)が形成されていない部分(22a)を有している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
前記底部(22)は、前記底部開口部(24)よりも上方に突出し、かつ、前記底部開口部(24)の周囲に離間して配置された複数の突起部(22b)が形成されており、
前記板部材(3)は、前記複数の突起部に載置されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項5に記載の鞍乗型車両であって、
前記複数の突起部(22b)は、前記側部開口部(23)と対向する位置に配置される対向突起部(P)を含み、
前記対向突起部(P)は、側部開口部(23)と離間している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記底部開口部(24)は、前記底部(22)の中央部に形成されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項7に記載の鞍乗型車両であって、
前記底部(22)は、前記底部(22)の外周縁部(22c)から前記底部開口部(24)へ向かって下方に傾斜している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記側部開口部(23)は、前記底部開口部(24)よりも開口面積が小さい、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項10】
請求項2に記載の鞍乗型車両であって、
前記板部材(3)の板厚(t2)は、前記カップ部材(21)の板厚(t1)よりも薄い、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクに収容された液体燃料は蒸発する。燃料タンクが密閉されていると燃料タンクの内圧が増加するため、蒸発燃料を外部に排出してキャニスタに吸着する構造が採用されている。これにより蒸発燃料が自然環境に影響することを防止する。蒸発燃料の排出口から液体燃料も流出することを防止するために、燃料タンクに気液セパレータを設けた構造が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗型車両は四輪車に比べて燃料タンクの配置スペースが小さく、その薄型化も望まれる。例えば、スクータ型などの鞍乗型車両は乗員用のシートの下方に燃料タンクを配置しているためスペースが小さい。したがって、気液セパレータと燃料タンク内の油面との距離はより短い方が望ましい。一方、鞍乗型車両は旋回時にバンクする。気液セパレータと燃料タンク内の油面との距離が短いとバンク時に液体燃料が気液セパレータに流入し易くなり、液体燃料がキャニスタ側へ排出されることを防止する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、蒸発燃料を燃料タンクから排出しつつ、旋回時または所定角度以上の傾斜時に液体燃料が燃料タンクから排出されることを防止する鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
液体燃料(200)を収容する燃料タンク(119)と、
前記燃料タンク内の上部に設けられ、前記液体燃料と該液体燃料から蒸発した蒸発燃料とを分離する気液セパレータ(1)と、
を備えた鞍乗型車両(100)であって、
前記燃料タンク(119)は、前記蒸発燃料の排出口(119b)が形成された上壁(119a)を有し、
前記気液セパレータ(1)は、
前記排出口(119b)を塞ぐように前記上壁(119a)に設けられ、前記排出口(119b)と連通した気液分離室(20)を形成するカップ部材(2)と、
前記気液分離室(20)に設けられ、前記排出口(119b)を開閉する弁体(3)と、を備え、
前記カップ部材(2)は、側部(21)と、前記側部(21)の底面に位置する底部(22)と、を備え、
前記気液分離室と連通する第一の開口部(23)を有する側部(21)と、
前記気液分離室と連通する第二の開口部(24)を有する底部(22)と、を備え、
前記弁体(3)は、
前記側部(21)は、前記気液分離室と連通する側部開口部(23)を有し、
前記底部(22)は、前記気液分離室と連通する底部開口部(24)を有し、
前記弁体(3)は、
前記底部(22)と前記排出口(119b)との間に配置され、かつ、前記底部開口部(24)を介して前記気液分離室(20)に流入する前記液体燃料(200)に押されて前記排出口(119b)の側に変位し、該排出口(119b)の周囲に当接する、
ことを特徴とする鞍乗型車両が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蒸発燃料を燃料タンクから排出しつつ、旋回時または所定角度以上の傾斜時に液体燃料が燃料タンクから排出されることを防止する鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の左側面図。
【
図2】(A)は
図1の鞍乗型車両の燃料タンクの部分断面図、(B)は2つの開口部の開口面積の比較図。
【
図3】(A)はカップ部材の平面図、(B)は弁体の斜視図。
【
図4】(A)及び(B)は通常状態とバンク状態の気液セパレータの動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
<車両の構成>
図1は本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両(以下、単に車両という)100の左側面図である。なお、各図において、矢印D1は車両100の前後方向を示し、Fが前側、Bが後側を示す。矢印D2は車両1の車幅方向を示し、車両100の前進方向で見て、Lが左側、Rが右側を示す。D1方向及びD2方向は水平方向である。矢印D3は車両100の上下方向を示し、Uが上側、Dが下側を示す。
【0011】
車両100は、操向ハンドル102と、乗員が着座するシート109との間に、乗員の脚を載せるステップフロア108が設けられたスクータ型の自動二輪車である。しかし、本発明は他の種類の鞍乗型車両にも適用可能である。
【0012】
車体フレーム101の前端には、ヘッドパイプ104が固定されている。ヘッドパイプ104は、操向ハンドル102から下方に延びるステアリングステム103を回動自在に軸支する。ステアリングステム103の下部には、前輪110を回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク105が固定されている。
【0013】
操向ハンドル102の前側にはヘッドライト111およびメータ装置114を支持する前側ハンドルカウル113が設けられている。操向ハンドル102の後側には後側ハンドルカウル115が設けられている。メータ装置114には、車速、燃料の残量等の各種の情報が表示される。ヘッドパイプ104及びステアリングステム103は、カバー116で覆われている。車両100の前部には、フロントコンビネーションランプ107が配設されている。
【0014】
ステップフロア108の後方には、駆動源としてのエンジンと変速機とを一体に構成したユニットスイング式のパワーユニット106が揺動自在に軸支されている。パワーユニット106には駆動輪である後輪112が回転自在に軸支されており、パワーユニット106は後輪112を回転させる。パワーユニット106の後端部は、リヤクッション118によって車体に吊り下げられている。
【0015】
パワーユニット106の上方には、エンジンに、浄化された空気を供給するエアクリーナ117が取り付けられている。エンジンが発生する負圧によってエアクリーナ117に導入された空気は、エアクリーナ117の内部のエアフィルタによって濾過されてエンジンに供給される。
【0016】
パワーユニット106の上方には燃料タンク119が配置されている。燃料タンク119はエンジンに供給される液体燃料を収容する。本実施形態の場合、燃料タンク119をシート109の下に配置しているが、燃料タンク119の配置部位はこの部位に限られず、例えば、ステップフロア108の下であってもよい。
【0017】
<気液セパレータ>
図2(A)は燃料タンク119の部分断面図である。燃料タンク119にはガソリンなどの液体燃料200が収容されている。液体燃料200は揮発性を有する。燃料タンク119は、液体燃料200が蒸発して生じた蒸気燃料を排出する排出口119bが形成された上壁119aを有する。上壁119aは本実施形態の場合、燃料タンク119の天部を形成する。排出口119bは、模式的に図示する配管120を介してキャニスタ121に接続されており、排出口119bから排出された蒸気燃料はキャニスタ121で捕捉される。補捉された蒸気燃料は例えばエンジンの吸気系に供給される。
【0018】
排出口119bから液体燃料200が排出されることを防止するため、燃料タンク119内には気液セパレータ1が設けられている。気液セパレータ1は、液体燃料200の油面201よりも上方に設けられており、液体燃料200と蒸発燃料とを分離する。気液セパレータ1は、カップ部材2と、弁体3とを備える。
【0019】
図2(A)に加えて
図3(A)及び
図3(B)も参照する。
図3(A)はカップ部材2の平面図であり、弁体3の位置を破線で図示している。
図2(A)は
図3(A)のa-a線断面図に相当する。
図3(B)は弁体3の斜視図である。
【0020】
カップ部材2は排出口119bを下方から塞ぐように上壁119aに設けられている。カップ部材2は上方が開放したカップ形状を有しており、排出口119bと連通した気液分離室20を形成する。気液分離室20は側部21と底部22とによって画定される、上方が開放した空間である。
【0021】
側部21は、円筒形状の周壁部21aと周壁部21aの上端において径方向に突出した円環形状のフランジ部21bとを含む。フランジ部21bが上壁119aに固着されて気液セパレータ1が上壁119aに固定される。側部21には側部開口部23が形成されている。側部開口部23は、周壁部21aの上端及びフランジ部21bにわたって径方向に延設された溝の形態の開口部であり、本実施形態の場合、カップ部材2の上端部で、かつ、D1方向の後部の部位に形成されている。側部開口部23上側は上壁119aの内面で閉鎖されており、側部開口部23はD1方向に延びる気体の通路を形成している。側部開口部23は気液分離室20に開口しており、気液分離室20と、燃料タンク119の内部空間とに連通している。
【0022】
底部22は、その外周縁部22cの平面視形状が円形であり、その中央部に底部開口部24が形成されている。気液分離室20内の各所に液体燃料200が存在しても、中央の底部開口部24から、よりスムーズに排出することができる。本実施形態の場合、底部開口部24は、底部22をD3方向に貫通する円形の孔である。本実施形態の場合、底部開口部24は排出口119bの真下に位置している。
図3(B)に示すように、側部開口部23の開口面積S1と底部開口部24の開口面積S2とを比較すると開口面積S1の方が開口面積S2よりも小さい。側部開口部23に対する液体燃料200の流入を抑制する一方、気液分離室20内の液体燃料200を底部開口部24から排出し易くすることができる。
【0023】
底部22は、その外周縁部22cから底部開口部24へ水平に延びる平坦部22aと、平坦部22aから上方に突出した複数の突起部22bとを含む。平坦部22aは突起部22bが形成されていない部分ということもできる。底部開口部24は平坦部22aに形成されており、各突起部22bは底部開口部24よりも上方に突出している。
【0024】
本実施形態では、3つの突起部22bが底部開口部24の周囲に、周方向に等ピッチで配置されている。3つの突起部22bのうちの突起部Pは側部開口部23と対向する位置に配置されている。側部開口部23から流入した液体燃料200及び蒸気燃料が突起部Pに衝突してその分離を促進することができる。突起部PはD1方向で距離Lだけ側部開口部23と離間している。突起部Pと側部開口部23との間にごみ等が溜まって、側部開口部23が詰まることを防止できる。
【0025】
弁体3は、気液分離室20内において、底部22と排出口119bとの間に配置されている。各突起部22bの天部は弁体3が載置される載置面を形成している。複数の突起部22bにより弁体3を安定して支持することができる。弁体3は、本実施形態の場合、円形の板部材である。弁体3は例えば金属製の薄板であり、その板厚t2は、カップ部材2の板厚t1よりも薄い。車両100が垂直姿勢で走行している場合や停車している場合、弁体3は、その自重により、3つの突起部22bに載置された状態にある。気液分離室20は、弁体3が気液分離室20内をD3方向に変位可能な容積を有している。
【0026】
以上の構成からなる気液セパレータ1の作用について、
図2(A)、
図4(A)及び
図4(B)を参照して説明する。
図4(A)及び
図4(B)は
図3(A)のb-b線断面図に相当し、
図4(A)は車両100が垂直姿勢の場合の気液セパレータ1の作用を、
図4(B)は車両100が左側へ大きくバンクした姿勢の場合の気液セパレータ1の作用をそれぞれ示している。
【0027】
図2(A)及び
図4(A)に示すように車両100が垂直姿勢の場合、燃料タンク100内の液体燃料200の油面201は気液セパレータ1よりも下方にあり、気液セパレータ1は液体燃料200と離間している。弁体3は、その自重により、3つの突起部22bに載置され、排出口119bと離間した状態にあり、排出口119bを開放している。
【0028】
蒸気燃料は、例えば、
図2(A)において矢印d1で示すように側部開口部23から気液分離室20に流入し、矢印d2で示すように排出口119bから燃料タンク119の外部に排出される。これにより燃料タンク119の内圧の上昇を抑制できる。すなわち、側部開口部23は蒸気燃料の導入口として機能する。
【0029】
車両100の走行中に油面201が揺れ、側部開口部23や底部開口部24に液体燃料の液滴が気液分離室20に流入する場合があるが、液体燃料は自重により矢印d3で示すように底部開口部24から燃料タンク119内に戻り、気液分離室20から排出される。すなわち、底部開口部24は液体燃料の戻り口又は排出口として機能する。これにより液体燃料が排出口119bから燃料タンク119外へ流出することを抑制できる。底部22には複数の突起部22bが形成されているものの、これらは底部開口部24の周方向に離間しているため、突起部22b間を液体燃料200が流れて底部開口部24に到達する。したがって、弁体3を複数の突起部22bで安定的に支持しつつ、液体燃料200をよりスムーズに排出することができる。
【0030】
車両100が旋回時に大きくバンクした場合等、所定角度以上に車両100が傾斜した時に、
図4(B)に示すように燃料タンク100内の液体燃料200の油面201は、気液セパレータ1の底部開口部24よりも高い位置にあり、気液セパレータ1が液体燃料200に浸漬する場合がある。この場合、底部開口部24を介して液体燃料200が気液分離室20に流入し、排出口119bへ向かう。このとき、弁体3は、
図4(B)において矢印で示すように、流入する液体燃料200に押されて排出口119bの側に変位し、排出口119bの周囲に弁体3が当接する。弁体3によって排出口119bが閉鎖される。このため、排出口119bから液体燃料200が流出することを抑制することができる。
【0031】
弁体3を複数の突起部22bに載置する構成としたことで、底部22と弁体3との接触面積を低減できる。液体燃料200の表面張力により弁体3が底部22に張り付くことを防止し、弁体3をよりスムーズに変位させることができる。側部開口部23はカップ部材2のD1方向で後部に(車両前後方向で後方に)位置しているので、車両100が旋回時に大きくバンクした場合、バンクの方向に関わらず、液体燃料200が流入しづらい。
【0032】
以上のとおり、本実施形態によれば、蒸発燃料を燃料タンク119から排出しつつ、旋回時に液体燃料200が燃料タンク119から排出されにくくすることができる。車両100のバンク時等においては、排出口119bの周囲に弁体3が直接当接するので、気液分離室20のD3方向の高さを短くして気液セパレータ1の薄型化が図れる。気液分離室20への液体燃料200の流入圧力を利用して弁体3を変位させて排出口119bを閉鎖するので、気液セパレータ1の構造の簡素化も図れる。
【0033】
弁体3は板部材であるので、気液セパレータ1の薄型化を更に図れる。板部材3の板厚t2は、カップ部材21の板厚t1よりも薄いので、気液分離室20のD3方向の高さを短くして気液セパレータ1の薄型化を更に図れると共に、車両100のバンク時に弁体3が排出口119bの側へ変位し易くすることができる。
【0034】
<第二実施形態>
第一実施形態では、突起部22bを3つ設けたが、突起部22bの数は2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
図5(A)は本実施形態におけるカップ部材2の平面図であり、1つの突起部22b’を設けた例を示している。突起部22b’は、D1方向で前側の部分が切り欠かれた、底部開口部24を囲むC字型を有している。突起部22b’は側部開口部23と対向する部分を有しているが、D1方向に距離Lだけ離間している。
【0035】
<第三実施形態>
第一実施形態では、底部22が平坦部22aを有する構造としたが、平坦部22aを傾斜部としてもよい。
図5(B)はその一例を示し、
図3(A)のb-b線断面図に相当する本実施形態のカップ部材2の断面図である。
【0036】
底部22は、第一実施形態の平坦部22aに代えて、その外周縁部22cから底部開口部24へ向かって下方に傾斜した傾斜部22a’を有している。傾斜部22aは底部開口部24を中心とした円錐台形状を有している。底部開口部24の周囲は平坦(水平)である。突起部22bは第一実施形態の突起部22bと同様の構成である。底部22が傾斜部22a’を有することで、矢印d4で示すように、液体燃料が底部開口部24を介して気液分離室20外へ排出され易くなる。気液分離室20内の液体燃料200を底部開口部24から、よりスムーズに排出することができる。
【0037】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は少なくとも以下の各項目の鞍乗型車両を開示している。
【0038】
項目1.
液体燃料(200)を収容する燃料タンク(119)と、
前記燃料タンク内において、前記液体燃料の油面(201)よりも上方に設けられ、前記液体燃料と該液体燃料から蒸発した蒸発燃料とを分離する気液セパレータ(1)と、
を備えた鞍乗型車両(100)であって、
前記燃料タンク(119)は、前記蒸発燃料の排出口(119b)が形成された壁部(119a)を有し、
前記気液セパレータ(1)は、
前記排出口(119b)を塞ぐように前記上壁(119a)に設けられ、前記排出口(119b)と連通した気液分離室(20)を形成するカップ部材(2)と、
前記気液分離室(20)に設けられ、前記排出口(119b)を開閉する弁体(3)と、を備え、
前記カップ部材(2)は、側部(21)と、前記側部(21)の底面に位置する底部(22)と、を備え、
前記側部(21)は、前記気液分離室と連通する側部開口部(23)を有し、
前記底部(22)は、前記気液分離室と連通する底部開口部(24)を有し、
前記弁体(3)は、
前記底部(22)と前記排出口(119b)との間に配置され、かつ、前記底部開口部(24)を介して前記気液分離室(20)に流入する前記液体燃料(200)に押されて前記排出口(119b)の側に変位し、該排出口(119b)の周囲に当接する、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、蒸発燃料を燃料タンクから排出しつつ、旋回時または所定角度以上の傾斜時に液体燃料が燃料タンクから排出されにくくする鞍乗型車両を提供することができる。前記排出口へ前記弁体が移動し、前記排出口の周囲に直接当接する構成なので、前記気液セパレータの薄型化が図れる。前記気液分離室への液体燃料の流入圧力を利用して前記弁体を変位させるので、前記気液セパレータの構造の簡素化を図れる。
【0039】
項目2.
項目1に記載の鞍乗型車両であって、
前記弁体(3)は、板部材である、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記気液セパレータの薄型化を更に図れる。
【0040】
項目3.
項目2に記載の鞍乗型車両であって、
前記底部(22)は、前記底部開口部(24)よりも上方に突出した突起部(22b)が形成されており、
前記板部材(3)は、前記突起部(22b)に載置されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記液体燃料の表面張力により前記板部材が前記底部に張り付くことを防止し、前記板部材をよりスムーズに変位させることができる。
【0041】
項目4.
項目3に記載の鞍乗型車両であって、
前記底部(22)は、前記底部開口部(23)の周囲において、前記突起部(25)が形成されていない部分(22a)を有している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記気液分離室内の前記液体燃料を前記第二の開口部から、よりスムーズに排出することができる。
【0042】
項目5.
項目2に記載の鞍乗型車両であって、
前記底部(22)は、前記底部開口部(24)よりも上方に突出し、かつ、前記底部開口部(24)の周囲に離間して配置された複数の突起部(22b)が形成されており、
前記板部材(3)は、前記複数の突起部に載置されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記複数の突起部により前記板部材を安定して支持することができ、しかも、前記気液分離室内の前記液体燃料を前記第二の開口部から、よりスムーズに排出することができる。
【0043】
項目6.
項目5に記載の鞍乗型車両であって、
前記複数の突起部(22b)は、前記側部開口部(23)と対向する位置に配置される対向突起部(P)を含み、
前記対向突起部(P)は、側部開口部(23)と離間している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記一つの突起部により、前記第一の開口部から流入した前記液体燃料及び前記蒸気燃料の分離を促進すると共に、前記第一の開口部がごみ等で詰まることを防止できる。
【0044】
項目7.
項目1に記載の鞍乗型車両であって、
前記底部開口部(24)は、前記底部(22)の中央部に形成されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記気液分離室内の各所に前記液体燃料が存在しても、前記第二の開口部から、よりスムーズに排出することができる。
【0045】
項目8.
項目7に記載の鞍乗型車両であって、
前記底部(22)は、前記底部(22)の外周縁部(22c)から前記底部開口部(24)へ向かって下方に傾斜している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記気液分離室内の前記液体燃料を前記第二の開口部から、よりスムーズに排出することができる。
【0046】
項目9.
項目1に記載の鞍乗型車両であって、
前記側部開口部(23)は、前記底部開口部(24)よりも開口面積が小さい、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記第一の開口部に対する前記液体燃料の流入を抑制する一方、前記気液分離室内の前記液体燃料を前記第二の開口部から排出し易くすることができる。
【0047】
項目10.
項目2に記載の鞍乗型車両であって、
前記板部材(3)の板厚(t2)は、前記カップ部材(21)の板厚(t1)よりも薄い、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記気液セパレータの薄型化を更に図れると共に、前記板部材が変位し易くすることができる。
【0048】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 気液セパレータ、2 カップ部材、3 弁体、23 側部開口部、24 底部開口部、119b排出口