(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137058
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】赤外線センサ素子、及び赤外線センサ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
G01J1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047203
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 邦之
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA11
2G065BE10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】赤外線センサ素子の感度を向上させる。
【解決手段】赤外線センサ素子は、基板と、基板表面に形成される第一絶縁膜と、第一絶縁膜の上に形成される熱電対とを備え、熱電対は、第一絶縁膜上に設けられた長尺状に形成された第一半導体材料と、第一半導体材料の上面、及び両側面を覆うように設けられた第二半導体材料と、第一半導体材料と第二半導体材料との間に配置された第二絶縁膜と、を含んで構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板表面に形成される第一絶縁膜と、
前記第一絶縁膜の上に形成される熱電対とを備え、
前記熱電対は、前記第一絶縁膜上に設けられた長尺状に形成された第一半導体材料と、前記第一半導体材料の上面、及び両側面を覆うように設けられた第二半導体材料と、前記第一半導体材料と前記第二半導体材料との間に配置された第二絶縁膜と、を含んで構成されている、
赤外線センサ素子。
【請求項2】
前記第一半導体材料の上面、及び両側面を覆うように設けられた第二半導体材料の長手方向直角断面積をA、
第一半導体材料の上にのみ第二半導体材料を形成したときの前記第二半導体材料の長手方向直角断面積をBとしたときに、
A=Bとなるように、前記第一半導体材料の上面、及び両側面を覆う前記第二半導体材料が形成されている、
請求項1に記載の赤外線センサ素子。
【請求項3】
基板の表面に第一絶縁膜を形成した後、前記第一絶縁膜の上に熱電対を形成する赤外線センサ素子の製造方法であって、
前記熱電対は、
前記第一絶縁膜上に長尺状であって、長手方向直角断面の幅がd1、厚さがt1となる第一半導体材料を形成し、
前記第一半導体材料の上面、及び両側面を覆うように第二絶縁膜を形成し、
前記第二絶縁膜に覆われた前記第一半導体材料、及び前記第一絶縁膜を覆うように、厚さがt1より薄いt3となる第二半導体材料を形成し、
前記第二半導体材料における前記第一半導体材料の上部に前記長手方向直角断面の幅がd2となるレジストを形成し、
前記第一絶縁膜を覆う厚さt3の第二半導体材料をエッチングにより除去し、
前記レジストを除去することで製造され、
下記の条件式を満たしている赤外線センサ素子の製造方法。
d2=d1+2×t3
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、赤外線センサ素子、及び赤外線センサ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線センサ素子として、第一半導体材料と第二半導体材料とを上下に積層した熱電対を有するサーモパイル型赤外線センサ素子がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
赤外線センサ素子においては、感度向上が求められている。
【0005】
本開示は、感度を向上させることができる赤外線センサ素子、及び赤外線センサ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る赤外線センサ素子は、基板と、基板表面に形成される第一絶縁膜と、前記第一絶縁膜の上に形成される熱電対とを備え、前記熱電対は、前記第一絶縁膜上に設けられた長尺状に形成された第一半導体材料と、前記第一半導体材料の上面、及び両側面を覆うように設けられた第二半導体材料と、前記第一半導体材料と前記第二半導体材料との間に配置された第二絶縁膜と、を含んで構成されている。
【0007】
第一半導体材料と第2半導体材料とが上下方向に積層されたタイプの熱電対においては、第一半導体材料の長手方向直角断面積に対応するように、第二半導体材料の長手方向直角断面積が決められている。
【0008】
熱電対の高さとしては、第一半導体材料の厚み(積層方向の高さ)+第2半導体材料の厚み(積層方向の高さ)となる。
【0009】
第一半導体材料の上に第二半導体材料を積層したタイプの熱電対において、感度を高めるには薄型化(高さを低くする)が有効であるが、第一半導体材料及び第二半導体材料は、各々所定の断面積が必用であるため、第一半導体材料及び第二半導体材料を単に薄くすることはできない。
【0010】
第1の態様に係る赤外線センサ素子の熱電対は、第一半導体材料の上面、及び両側面を覆うように第二半導体材料を設ける構成としたため、第一半導体材料の上面のみに第二半導体材料を積層した構成に比較して、第二半導体材料の所定の断面積を確保しつつ、言い換えれば、各半導体材料における所定の断面積を変えずに第一半導体材料の上面に位置する第二半導体材料の厚さを薄くして、熱電対の高さを低くすることができる。これにより、赤外線センサ素子の感度を高めることが可能となる。
【0011】
第2の態様に係る赤外線センサ素子は、第1の態様に係る赤外線センサ素子において、前記第一半導体材料の上面、及び両側面を覆うように設けられた第二半導体材料の長手方向直角断面積をA、第一半導体材料の上にのみ第二半導体材料を形成したときの前記第二半導体材料の長手方向直角断面積をBとしたときに、A=Bとなるように、前記第一半導体材料の上面、及び両側面を覆う前記第二半導体材料が形成されている。
【0012】
第2の態様に係る赤外線センサ素子の熱電対では、第一半導体材料の上面、及び両側面を覆うように設けられた第二半導体材料の長手方向直角断面積Aを、第一半導体材料の上にのみ第二半導体材料を形成したときの第二半導体材料の長手方向直角断面積Bと同じにしたので、第一半導体材料の上面のみに第二半導体材料を積層した構成に比較して、第二半導体材料の断面積を変えずに、第一半導体材料の上面に位置する第二半導体材料の厚さが薄くすることができる。
【0013】
第3の態様は、基板の表面に第一絶縁膜を形成した後、前記第一絶縁膜の上に熱電対を形成する赤外線センサ素子の製造方法であって、前記熱電対は、前記第一絶縁膜上に長尺状であって、長手方向直角断面の幅がd1、厚さがt1となる第一半導体材料を形成し、前記第一半導体材料の上面、及び両側面を覆うように第二絶縁膜を形成し、前記第二絶縁膜に覆われた前記第一半導体材料、及び前記第一絶縁膜を覆うように、厚さがt1より薄いt3となる第二半導体材料を形成し、前記第二半導体材料における前記第一半導体材料の上部に前記長手方向直角断面の幅がd2となるレジストを形成し、前記第一絶縁膜を覆う厚さt3の第二半導体材料をエッチングにより除去し、前記レジストを除去することで製造され、下記の条件式を満たしている。
d2=d1+2×t3
【0014】
第3の態様に係る赤外線センサ素子の製造方法によれば、第一絶縁膜の上に、長手方向直角断面の幅がd1、厚さがt1となる第一半導体材料が形成され、該第一半導体材料の上面、及び両側面を覆うように第二絶縁膜が形成される。そして、第二絶縁膜に覆われた第一半導体材料、及び第一絶縁膜を覆うように、厚さがt1より薄いt3となる第二半導体材料が形成される。
第二半導体材料における前記第一半導体材料の上部に前記長手方向直角断面の幅がd2=d1+2×t3となるレジストを形成し、第一絶縁膜を覆う厚さt3の第二半導体材料をエッチングにより除去すると、厚さt3の第二半導体材料で第一半導体材料の上面側、及び両側面側が覆われた熱電対を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、赤外線センサ素子の感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る赤外線センサを示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る赤外線センサ素子の斜視断面図である。
【
図3】比較例に係る熱電対と本発明の一実施形態に係る熱電対を示す長手方向直角断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る熱電対の長手方向に沿った縦面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る熱電対の製造工程を示す説明図である。
【
図6】比較例に係る熱電対の製造工程を示す説明図である。
【
図7】(A)は本発明の一実施形態に係る赤外線センサを示す断面図であり、(B)は比較例に係る赤外線センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0018】
[赤外線センサ]
図1は、赤外線センサ1の要部を示す斜視図であり、
図2は、赤外線センサ1の斜視断面図である。
図1、
図2に示すように、赤外線センサ1は、パッケージ10と、パッケージ10内に封止された赤外線センサ素子11と、を備えている。以下の説明では、赤外線センサ素子11の厚さ方向をZ方向(対向方向)とし、Z方向に直交する2方向をそれぞれX方向(第1方向)、Y方向(第2方向)として説明する。
【0019】
<パッケージ10>
パッケージ10は、いわゆる真空パッケージである。具体的に、パッケージ10は、ベース基板21と、リッド基板22と、を備えている。
ベース基板21は、Z方向を厚さ方向とする矩形板状である。ベース基板21の第1面21a(+Z側を向く面)には、+Z側に向けて開口する凹部24が形成されている。凹部24は、Z方向から見た平面視において、ベース基板21の中央部に形成されている。なお、ベース基板21の材料は、例えばシリコン等により形成されている。
【0020】
図2に示すように、リッド基板22は、Z方向に沿う断面視で-Z側に開口するカップ状に形成されている。具体的に、リッド基板22は、頂壁部31と、頂壁部31の外周縁から-Z側に延びる周壁部32と、を備えている。
周壁部32における-Z側端面は、ベース基板21の第1面21aの外周部分に、全周に亘って接合されている。これにより、ベース基板21とリッド基板22とで囲まれた部分は、赤外線センサ素子11を収容する収容空間S1を構成する。
【0021】
リッド基板22は、赤外線透過率の高い材料であることが好ましい。このような材料としては、シリコンやゲルマニウム、カルコゲン化物ガラス等が好適に用いられる。すなわち、本実施形態の赤外線センサ1は、対象物から放射される赤外線がリッド基板22を通じて収容空間S1内に入射する。
【0022】
<赤外線センサ素子11>
図1、
図2に示すように、赤外線センサ素子11は、メンブレン構造により形成された、いわゆるサーモパイル型のセンサ素子である。赤外線センサ素子11は、赤外線を受光するとともに、赤外線による温度変化に応じて熱起電力を発生させる。赤外線センサ素子11は、収容空間S1内に収容されている。具体的に、赤外線センサ素子11は、枠体49と、熱吸収部50と、第1梁部(梁部)51と、第2梁部(梁部)52と、を備えている。
【0023】
枠体49は、平面視で矩形枠状に形成された薄膜である。枠体49は、ベース基板21の第1面21a上に凹部24の周囲を取り囲むように設けられている。なお、枠体49は、シリコン等により形成されている。
【0024】
熱吸収部50は、Z方向を厚さ方向とする矩形(正方形)板状に形成されている。熱吸収部50は、凹部24に対してZ方向で対向する位置で、枠体49の内側に配置されている。
【0025】
なお、以下の説明では、第1梁部51を例にして説明し、第2梁部52のうち第1梁部51と対応する構成については適宜説明を省略する。
【0026】
第1梁部51は、Z方向から見てL字状に形成されている。第1梁部51は、突出部(第1延在部)60と、接続部(第2延在部)61と、を備えている。
突出部60は、基端部(熱吸収部50側の端部)において、熱吸収部50に接続されている。突出部60の基端部は、赤外線センサ素子11の温接点として機能する。
【0027】
接続部61は、突出部60の先端部(熱吸収部50とは反対側の端部)から+Y側に延在している。接続部61は、熱吸収部50に対してX方向に離間した状態で、第1辺50aに沿って延在している。接続部61の先端部(突出部60とは反対側の端部)は、枠体49に接続されている。接続部61の先端部は、赤外線センサ素子11における冷接点として機能する。
【0028】
なお、第2梁部52も第1梁部51と同様に構成されており、突出部60、及び接続部61と同様の突出部70、及び接続部71を備えている。接続部71は、熱吸収部50に対してX方向に離間した状態で、第2辺50bに沿って延在している。
【0029】
図1に示すように、各梁部51,52には、それぞれ2本の熱電対75が平行に設けられており、互いに隣接する一方の熱電対75と他方の熱電対75とが、一例として枠体49側で電気的に直列に接続されてサーモパイルを構成している。
【0030】
熱電対75は、一対の導電材(詳しくは後述)により形成されている。熱電対75は、各梁部51、52上において、枠体49と熱吸収部50との間を架け渡すように延びている。
熱電対75を構成する一対の導電材は、熱吸収部50側の端部において接続されている。熱電対75のうち、熱吸収部50側の端部は、突出部60(又は突出部70)の基端部(温接点)と熱吸収部50との境界部分を跨って配置されている。熱電対75のうち、枠体49側の端部は、接続部61(又は接続部71)の先端部(冷接点)と枠体49との境界部分を跨って配置されている。
【0031】
図4は、第1梁部51の熱電対75搭載部分の長手方向に沿った断面図であり、
図3(A)は、熱電対75の長手方向に直角な断面図である。
【0032】
本実施形態の熱電対75は、長手方向のほぼ全ての領域において第一半導体材料80と第二半導体材料82とが積層構造になっている。
第一半導体材料80は、一例としてp型ポリシリコンであり、第二半導体材料82は、一例としてn型ポリシリコンである。
【0033】
枠体49、熱吸収部50、第1梁部51、及び第2梁部52を構成する基板84の表面(上面)には、第一絶縁膜86が形成されており、第一絶縁膜86の上に、断面矩形で幅d1、厚さt1の第一半導体材料80が、梁部51の長手方向に沿って形成されている。
【0034】
第一半導体材料80には、上面(基板84とは反対側の面。熱吸収部50側の端部の一部分を除く部分)、及び両側面に第二絶縁膜88が形成されており、第二絶縁膜88の外側に一定厚さ(t3)の第二半導体材料82が形成されている(
図3(A)参照)。
言い換えれば、第二半導体材料82は、第一半導体材料80の第一絶縁膜86側を除く上面側、及び両側面側の3面側に設けられている。
【0035】
図4に示すように、熱電対75の熱吸収部50側の端部分において、第二絶縁膜88が部分的に除去されて第一半導体材料3と第二半導体材料4とが電気的に接続されており、接続部分が温接点とされている。
【0036】
[熱電対の製造工程]
図5は、本実施形態における熱電対75の製造工程例を説明するための熱電対75を断面で示した説明図である。
【0037】
(1) 基板84上に形成された第一絶縁膜86上に第一半導体材料80を形成するための半導体層を形成する。半導体層は例えばポリシリコンである。その半導体層をパターニングして、枠体49と熱吸収部50との間を架け渡すように延びる断面矩形(
図3(A)参照)の長尺状の第一半導体材料80を形成する。第一半導体材料80への不純物の導入は、半導体層をパターニングする前であってもよいし、パターニングした後であってもよい(
図5(A)参照。)。
【0038】
(2) 次に、第一半導体材料80の表面(上面、両側面)に第二絶縁膜88を形成する(
図4参照)。第二絶縁膜88は、例えば第一半導体材料3の表面を熱酸化させたシリコン酸化膜である。ただし、第二絶縁膜88はこれに限定されず、プラズマCVD等で形成したBPSG、NSG、TEOS等のシリコン酸化膜であってもよい。また、第二絶縁膜88は他の種類の絶縁膜であってもよいし、複数層の膜が積層された積層膜であってもよい。
【0039】
(3) 第一半導体材料80と、次に形成する第二半導体材料82との接続部の形成予定位置の第二絶縁膜88を除去する。第一半導体材料3の熱吸収部50側の先端側上面の第二絶縁膜88の一部分を除去する(
図4参照)。
【0040】
(4) 第二半導体材料82を形成するための第二半導体層82aを基板表面に形成する(
図5(B)参照)。第二半導体層82aは例えばポリシリコンである。第二半導体材料4への不純物の導入は、第二半導体層82aを次工程のエッチングをする前であってもよいし、エッチングをした後であってもよい。なお、基板表面に形成する第二半導体層82aの厚みは、
図5(B)に示すように、t3(第一半導体材料80の厚みt1(
図3(A)参照)より薄い)である。
【0041】
(5)
図5(B)に示すように、第一半導体材料80の上面側の第二半導体層82aの上面全体(全幅)に、レジスト90を形成する。レジスト90の幅は、
図3(A)に示すように、d2(=第一半導体材料80の幅d1+2×t3)である。
【0042】
(6) 次に、第二半導体層82aのエッチングを行う。このエッチングは、第二半導体層82aの厚み分(t3)だけ行う。エッチング後、レジスト90を除去することで、第一絶縁膜86の上に
図3(A)で示す断面を有する熱電対75(サーモパイル5)が形成される。
【0043】
(7) その後、
図7(A)に示すように、第一絶縁膜86、及び熱電対75を覆うように層間絶縁膜(保護膜の場合もある)92を形成する。層間絶縁膜92は、表面(上面)が平滑となるように形成され、熱電対75の上側の層間絶縁膜92の厚さはt4である。また、第一絶縁膜86の表面から層間絶縁膜92の表面までの高さ、言い換えれば層間絶縁膜92の最大の厚さはH1+t4=HAとなる。
【0044】
次に、比較例に係る熱電対の製造工程を
図6にしたがって説明する。なお、
図6において、上述した実施形態と同一構成には同一符号を付している。
(1) 基板84上に形成された第一絶縁膜86上に第一半導体材料80を形成する(
図6(A)参照)。
【0045】
(2) 次に、第一半導体材料80の表面(上面、両側面)に第二絶縁膜88を形成する。
【0046】
(3) 第一半導体材料80と、次に形成する第二半導体材料82との接続部の形成予定位置の第二絶縁膜88を除去する。
【0047】
(4) 第二半導体材料82を形成するための厚みt2の第二半導体層82aを基板表面に形成し、
図6(B)に示すように、第一半導体材料3の上面側を覆う第二半導体層82aの上面に、第一半導体材料80と同じ幅のレジスト90を形成する。
【0048】
(5) 次に、第二半導体層82aを、第二半導体層82aの厚み分だけエッチングを行う(
図6(C)参照)。エッチング後、レジスト90を除去することで、第一絶縁膜86の上に熱電対75(サーモパイル5)が形成されるが、第一半導体材料80の両側部に、第二半導体層82aの残りが発生する。本来であれば、第一半導体材料80と、第一半導体材料80の上側に形成される第二半導体材料82とで熱電対75が成立するが、第一半導体材料80の両側部に第二半導体層82aが残ると、残った第二半導体層82aがサイドスペーサのようになって熱の逃げ道となり、赤外線センサ素子11の感度低下を招く原因となる。
そのため、第一半導体材料80の両側部に形成されている第二半導体層82aを除去すべくエッチングを進めると、該第二半導体層82aは薄くなるものの、基板表面に形成した第一絶縁膜86がエッチングで削られ、いわゆるオーバーエッチングが発生してしまう。
【0049】
図3(B)には、第一半導体材料80の両側部に第二半導体層82aが残っていない比較例にかかる熱電対175が断面図にて示されている。熱電対175を成立させるため、第二半導体材料82は、第一半導体材料80と対応する断面積を有している。
上記実施形態の熱電対75を成立させるためには、熱電対75の第二半導体材料82の長手方向直角断面積Aを、熱電対175の第二半導体材料82の長手方向直角断面積Bと同じにすることが好ましい。
そのため、以下の関係式を満たすように、各部の寸法、例えば、第二半導体層82aの厚さt3、レジスト90の幅等を設定し、熱電対75を形成する(
図3(A),(B)参照)。
d2=d1+2×t3
d1×t2=(t1×t3)×2+d2×t3
d1×t2=熱電対175の第二半導体材料82の長手方向直角断面積B
(t1×t3)×2+d2×t3=熱電対75の第二半導体材料82の長手方向直角断面積A
【0050】
なお、各部の寸法には製造誤差が生じるので、熱電対75の第二半導体材料82の長手方向直角断面積Aが、熱電対175の第二半導体材料82の長手方向直角断面積Bに対して±10%程度であれば異なっていてもよい。
また、第一半導体材料80の長手方向直角断面積(d1×t1)と、第二半導体材料82の長手方向直角断面積Bとは、熱電対75の基本的な性能を得るために予め決められた所定の対応関係にあるが(設計値がある)、異なる場合もあり、同じ場合もあり、必要に応じて長手方向直角断面積の比率は変更される。
【0051】
<赤外線センサ1の作用>
本実施形態の赤外線センサ1では、対象物から放射される赤外線がリッド基板22の頂壁部31等を透過して熱吸収部50に入射する。これにより、熱吸収部50の温度が上昇する。熱吸収部50で吸収した熱は、各梁部51,52において突出部60,70に伝達された後、接続部61,71を通じてパッケージ10に伝達される。この際、突出部60,70の基端部(温接点)と接続部61,71の先端部(冷接点)との温度差に基づき、熱電対75に熱起電力が生じる。赤外線センサ素子11では、各熱電対75で発生した熱起電力が足し合わされ、電気信号として出力される。
【0052】
上記の関係式を満たすように熱電対75を形成することで、本実施形態の第二半導体材料82の厚みt3は、比較例の熱電対175の第二半導体材料82の厚みt2よりも薄くなる。そのため、本実施形態の熱電対75の高さH1が比較例の熱電対175のH2よりも低くなる。
【0053】
比較例に係る赤外線センサ素子においても、
図7(B)に示すように、第一絶縁膜86、及び熱電対175を覆うように層間絶縁膜92が形成される。比較例に係る赤外線センサにおける層間絶縁膜92の最大の厚さはH2+t4=HBであり、本実施形態の赤外線センサにおける層間絶縁膜92の最大の厚さHAよりも厚くなる(熱電対175の上を覆う層間絶縁膜92の厚みt4は、比較例、実施形態共に同じ前提。)。
即ち、本実施形態の赤外線センサ素子11における層間絶縁膜92の最大の厚さHAが、比較例に係る赤外線センサ素子における層間絶縁膜92の最大の厚さHBよりも薄くなるので、比較例に比べて感度を向上させることができる。
【0054】
[その他の実施形態]
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせても構わない。
【0055】
上記実施形態では、第一半導体材料80がp型ポリシリコンで、第二半導体材料82がn型ポリシリコンであったが、第一半導体材料80をn型ポリシリコンとし、第二半導体材料82をp型ポリシリコンとしてもよい。
【0056】
上記実施形態では、第一半導体材料80の幅寸法(d1)が厚み寸法(t1)よりも大であったが、第一半導体材料80の厚み寸法(t1)が幅寸法(d1)よりも大であってもよい。
【0057】
上記実施形態では、第一半導体材料80と第二半導体材料82とが熱吸収部50側の先端側で直接的に接続されていたが、第一半導体材料80と第二半導体材料82とをアルミニウム等の導電材料を介して接続してもよい。
【0058】
上述実施形態では、1つのパッケージ10に対して1つの赤外線センサ素子11が封止された構成を例にして説明したが、1つのパッケージ10に対して複数の赤外線センサ素子11がアレイ状に配列された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
11…赤外線センサ素子
75…熱電対
80…第一半導体材料
82…第二半導体材料
84…基板
86…第一絶縁膜
88…第二絶縁膜