IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137067
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】作業機械の物体検出システム
(51)【国際特許分類】
   G06V 10/70 20220101AFI20240927BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240927BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G06V10/70
G06T7/00 350B
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048429
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 守飛
(72)【発明者】
【氏名】國松 聡美
(72)【発明者】
【氏名】泉 枝穂
【テーマコード(参考)】
2D015
5L096
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB00
5L096BA02
5L096CA05
5L096GA34
5L096HA11
5L096JA16
5L096JA22
5L096JA25
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】環境設置センサ上の物体検出モデルの検出結果に基づき、ショベル上の物体検出モデルで未検出や誤検出が発生した場合に、教師データを自動生成することにより、教師データのデータ量および教師データの作成にかかるコストを削減することができる作業機械の物体検出システムを提供する。
【解決手段】現場管理装置40は、ショベル2に搭載された情報処理装置20と環境設置センサ3に搭載された情報処理装置30から受信した検出情報を照合し、互いの検出結果に差異がある場合、情報処理装置30から受信した検出情報に基づき、情報処理装置20の検出情報を補正する検出補正情報を生成し、情報処理装置20は、現場管理装置40から受信した前記検出補正情報を基に教師データを自動生成し、学習装置50は、情報処理装置20から受信した教師データを基に物体検出モデルの学習を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体検出モデルを用いて、作業機械に搭載された撮像装置で撮影した前記作業機械の周囲の画像データから、前記作業機械の周囲の物体を検出する第1情報処理装置と、
物体検出モデルを用いて、前記作業機械が稼働する施工現場に設置された撮像装置で撮影した前記作業機械の周囲の画像データから、前記作業機械の周囲の物体を検出する第2情報処理装置と、
前記第1情報処理装置の検出情報と前記第2情報処理装置の検出情報を照合する現場管理装置と、
画像データと教師情報とから構成される教師データに基づいて前記物体検出モデルの学習を行う学習装置と、を備える作業機械の物体検出システムであって、
前記現場管理装置は、前記第1情報処理装置の検出情報と前記第2情報処理装置の検出情報に差異が生じた場合、前記第2情報処理装置の検出情報に基づき、前記第1情報処理装置の検出情報を前記第2情報処理装置の検出情報に合致するように補正する検出補正情報を生成し、
前記第1情報処理装置は、前記現場管理装置で生成した前記検出補正情報に基づいて前記教師データを自動生成し、
前記学習装置は、前記第1情報処理装置で自動生成した前記教師データに基づいて前記物体検出モデルの学習を実行し、学習済みの前記物体検出モデルを前記第1情報処理装置に送信することを特徴とする作業機械の物体検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の物体検出システムにおいて、
前記現場管理装置は、前記第1情報処理装置の検出情報と前記第2情報処理装置の検出情報に差異が生じた場合、前記第2情報処理装置の検出情報に基づいて前記第1情報処理装置の検出情報を未検出状態から検出状態に補正するために必要な検出補正情報を生成する未検出補正情報生成処理、もしくは、前記第2情報処理装置の検出情報に基づいて前記第1情報処理装置の検出情報を誤検出状態から無検出状態に補正するために必要な検出補正情報を生成する誤検出補正情報生成処理を行うことを特徴とする作業機械の物体検出システム。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械の物体検出システムにおいて、
前記現場管理装置は、前記未検出補正情報生成処理として、前記第2情報処理装置の検出情報が前記作業機械の作業領域の内側であるか否かを判定し、内側である場合、前記第2情報処理装置の検出情報の内容と合致する前記第1情報処理装置の検出情報が存在するか否かを判定し、存在しない場合、前記第2情報処理装置の検出情報に基づいて前記第1情報処理装置の検出情報を未検出状態から検出状態に補正するために必要な検出補正情報を生成し、前記第1情報処理装置に前記検出補正情報を送信することを特徴とする作業機械の物体検出システム。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機械の物体検出システムにおいて、
前記現場管理装置は、前記誤検出補正情報生成処理として、前記第1情報処理装置の検出情報の内容と合致する前記第2情報処理装置の検出情報が存在するか否かを判定し、存在しない場合、前記第1情報処理装置の検出情報に基づいて前記第1情報処理装置の検出情報を誤検出状態から無検出状態に補正するために必要な検出補正情報を生成し、前記第1情報処理装置に前記検出補正情報を送信することを特徴とする作業機械の物体検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の物体検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
計算機の演算性能の向上により、近年、ディープラーニング等の機械学習による物体検出技術が目覚ましい進歩を遂げている。このような背景もあり、建設機械の分野においても機械学習を用いた物体検出技術の導入が昨今積極的に進められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、物体検出モデルを用いて撮像装置で撮影した車体周囲の画像データから検出対象の物体の存在の有無を検出する物体検出機能を有するショベルを備え、撮像装置で撮影した車体周囲の画像データに基づいて作成した教師データを現行の物体検出モデルに学習させ、生成された学習済み物体検出モデルをショベルに提供することにより、ショベルの物体検出性能を向上させる物体検出モデル更新機能を有するショベル支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/091002号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示された技術では、教師データの作成に用いられる画像データの撮影タイミングをショベルの走行時および旋回時としており、ショベルが動作する度に画像データを撮影する仕様となっているため、教師データのデータ量が増大する問題がある。また、画像データ毎に、管理者や作業者などがGUI(Graphical User Interface)を操作して手動で教師データを作成しなければならず、教師データの作成に多大なコストがかかる問題がある。
【0006】
また、一般的にショベル上の物体検出モデルは、ショベルが動作する度に検出対象となる領域が変更されるため、必要な学習シーンが多く、長期間にわたって検出精度が向上しにくい問題もある。その一方で、ショベルが稼働する施工現場内の物体を監視する目的で施工現場に設置されるショベルと同様の物体検出機能を有する環境設置センサ上の物体検出モデルは、検出対象となる領域が固定されており、必要な学習シーンが少ないため、短期間で検出精度が高精度になる特性を持っている。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、環境設置センサ上の物体検出モデルの検出結果に基づき、ショベル上の物体検出モデルで未検出や誤検出が発生した場合に、教師データを自動生成することにより、教師データのデータ量および教師データの作成にかかるコストを削減することができる作業機械の物体検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採用した。本発明に係る作業機械の物体検出システムは、物体検出モデルを用いて、作業機械に搭載された撮像装置で撮影した前記作業機械の周囲の画像データから、前記作業機械の周囲の物体を検出する第1情報処理装置と、物体検出モデルを用いて、前記作業機械が稼働する施工現場に設置された撮像装置で撮影した前記作業機械の周囲の画像データから、前記作業機械の周囲の物体を検出する第2情報処理装置と、前記第1情報処理装置の検出情報と前記第2情報処理装置の検出情報を照合する現場管理装置と、画像データと教師情報とから構成される教師データに基づいて前記物体検出モデルの学習を行う学習装置と、を備える作業機械の物体検出システムであって、前記現場管理装置は、前記第1情報処理装置の検出情報と前記第2情報処理装置の検出情報に差異が生じた場合、前記第2情報処理装置の検出情報に基づき、前記第1情報処理装置の検出情報を前記第2情報処理装置の検出情報に合致するように補正する検出補正情報を生成し、前記第1情報処理装置は、前記現場管理装置で生成した前記検出補正情報に基づいて前記教師データを自動生成し、前記学習装置は、前記第1情報処理装置で自動生成した前記教師データに基づいて前記物体検出モデルの学習を実行し、学習済みの前記物体検出モデルを前記第1情報処理装置に送信するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環境設置センサ上の物体検出モデルの検出結果に基づき、ショベル上の物体検出モデルで未検出や誤検出が発生した場合に、教師データを自動生成することにより、教師データのデータ量および教師データの作成にかかるコストを削減することができる。
【0010】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る物体検出システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るショベルの側面図である。
図3】実施形態に係るショベルの作業領域の模式図である。
図4】実施形態に係るショベルに搭載される情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る情報処理装置で実行される作業領域設定処理の構成を示すブロック図である。
図6】実施形態に係る情報処理装置で実行される物体検出処理の構成を示すブロック図である。
図7】実施形態に係る情報処理装置で実行される未検出教師データ生成処理の構成を示すブロック図である。
図8】実施形態に係る情報処理装置で実行される誤検出教師データ生成処理の構成を示すブロック図である。
図9】実施形態に係る環境設置センサに搭載される情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図10】実施形態に係る情報処理装置で実行される物体検出処理の構成を示すブロック図である。
図11】実施形態に係る現場管理装置の構成を示すブロック図である。
図12】実施形態に係る現場管理装置で実行される未検出補正情報生成処理の構成を示すブロック図である。
図13】実施形態に係る現場管理装置で実行される誤検出補正情報生成処理の構成を示すブロック図である。
図14】実施形態に係る学習装置の構成を示すブロック図である。
図15】実施形態に係る学習装置で実行される学習処理の構成を示すブロック図である。
図16】実施形態に係る情報処理装置で実行される作業領域設定処理のフローチャートである。
図17】実施形態に係る情報処理装置で実行される物体検出処理のフローチャートである。
図18】実施形態に係る情報処理装置で実行される未検出教師データ生成処理のフローチャートである。
図19】実施形態に係る情報処理装置で実行される誤検出教師データ生成処理のフローチャートである。
図20】実施形態に係る情報処理装置で実行される物体検出処理のフローチャートである。
図21】実施形態に係る現場管理装置で実行される未検出補正情報生成処理のフローチャートである。
図22】実施形態に係る現場管理装置で実行される誤検出補正情報生成処理のフローチャートである。
図23】実施形態に係る学習装置で実行される学習処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の実施形態に限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得る。施工現場では、作業機械が稼働している。作業機械は、土木作業、建設作業、解体作業等の各種作業に用いられる機械である。本実施形態では、作業機械が、クローラ式の油圧ショベル(以下、ショベルと記載する)である例について説明する。
【0013】
<物体検出システム>
図1は、実施形態に係る物体検出システム10の構成を示すブロック図である。
【0014】
物体検出システム10は、施工現場で稼働するショベル2に搭載された情報処理装置20と、施工現場に存在する物体を監視する環境設置センサ3に搭載された情報処理装置30と、無線ネットワーク網4を経由してショベル2に搭載された情報処理装置20および環境設置センサ3に搭載された情報処理装置30と通信する現場管理装置40および学習装置50とから構成される。なお、本実施形態では、ショベル2が1台、環境設置センサ3が1台の最小構成について説明しているが、ショベル2および環境設置センサ3は、任意の台数の構成であってもよい。
【0015】
<ショベル>
図2は、実施形態に係るショベル2の側面図である。
【0016】
ショベル2は、走行体2aと、走行体2aの上部に旋回可能に取り付けられた旋回体2bと、一端が旋回体2bに連結された多関節型のリンク機構よりなる作業フロント2dとを備えている。
【0017】
作業フロント2dは、一端が旋回体2bに連結されたブーム2eと、一端がブーム2eの他端に連結されたアーム2fと、一端がアーム2fの他端に連結されたバケット2gとを有しており、これらの各部材は、それぞれ上下方向に回動するように構成されている。
【0018】
旋回体2b上には、運転室2cが備えられている。また、この旋回体2b上の所要の部分には、動力系を構成するエンジンや駆動アクチュエータの駆動油圧回路等から構成され、ショベル2の起動停止及び動作全般を制御する運転制御装置が備えられている。運転室2c内には、オペレータが各駆動アクチュエータに対する動きの指示を入力するための複数の操作レバーが備えられる。それぞれの操作レバーを操作することにより、走行、旋回、そして、作業フロント2dを用いた各種動作が行われる。
【0019】
また、ショベル2には、作業領域内に存在する作業員および障害物などの検出対象の物体を検出する物体検出処理などを行う情報処理装置20が搭載される。情報処理装置20の構成要素については後述するが、情報処理装置20の構成要素である制御部21、記憶部25、表示部26、操作部27、警報部28、通信部29は運転室2cに搭載される。撮像部22および測距部23は、運転室2c上部、旋回体2b上後部、旋回体2b上左部、旋回体2b上右部などに複数搭載される。測位部24は旋回体2b上部に搭載される。
【0020】
<作業領域>
図3は、実施形態に係るショベル2の作業領域2Aの模式図である。
【0021】
ショベル2の作業領域2Aは、ショベル2の作業フロント2dを最大限展開した状態で旋回中心2Bを中心として旋回した場合にできる最大旋回半径2Cの最大旋回円とする。したがって、ショベル2の作業領域2Aは、ショベル2の旋回中心2Bが決定すれば、設計時の諸元から算出できる。
【0022】
なお、ショベル2に搭載される情報処理装置20上で動作する物体検出処理の検出対象領域は、ショベル2の作業領域2Aとする。
【0023】
一方で、環境設置センサ3に搭載される情報処理装置30上で動作する物体検出処理の検出対象領域は、環境設置センサ3の監視領域3Aとする。
【0024】
ショベル2の作業領域2Aと環境設置センサ3の監視領域3Aとが重複した(ショベル2の車体周囲の)重複領域100が本実施形態である物体検出システム10の効果が得られる領域となる。
【0025】
<情報処理装置(ショベル搭載)>
図4は、実施形態に係るショベル2に搭載される情報処理装置20の構成を示すブロック図である。
【0026】
情報処理装置20は、ショベル2の作業領域2A内に存在する作業員および障害物などの検出対象の物体を検出する実行環境として、制御部21、撮像部22、測距部23、測位部24、記憶部25、表示部26、操作部27、警報部28、通信部29を備える。
【0027】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read only memory)、RAM(Random Access Memory)およびこれらを接続するバスラインなどからなる一般的なコンピュータにより構成され、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み込むことで各種処理を実行する。
【0028】
撮像部22は、CCD(Charge Coupled Device)カメラや赤外線カメラなどの撮像装置から構成されており、ショベル2の車体周囲の様子を撮影する部位であり、撮影したデータは画像データとして記憶部25に保存される。また、画像データの撮影時に測位部24から取得した位置情報と、予め記憶部25に保存された撮像部22と測位部24との間のジオメトリ情報とに基づき、算出された測地座標系における撮像部22の撮像部位置姿勢情報がメタデータとして画像データと共に記憶部25に保存される。さらに、撮像部22の光学的中心や焦点距離などを含んだ撮像部特性情報がメタデータとして画像データと共に記憶部25に保存される。
【0029】
測距部23は、レーザスキャナやLiDAR(Light Detection and Ranging)などの測距装置から構成されており、ショベル2の車体と物体との距離を計測する部位であり、計測したデータは点群データとして記憶部25に保存される。
【0030】
測位部24は、GPS(Global Positioning System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位装置から構成されており、測地座標系における測位部24の位置情報を取得する部位であり、取得したデータは位置情報として記憶部25に保存される。
【0031】
記憶部25は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの記憶装置から構成されており、物体検出処理に用いる物体検出モデルなどの各種情報が記憶されている。
【0032】
表示部26は、液晶ディスプレイなどから構成されており、各種情報を表示する。操作部27は、ボタンスイッチなどから構成されており、各種操作を受け付ける。なお、表示部26と操作部27を統合してタッチパネルなどの構成であってもよい。
【0033】
警報部28は、ブザーやパトランプなどの警報装置から構成されており、物体検出処理により作業領域2A内に検出対象の物体が検出された場合、ショベル2のオペレータやショベル2の作業領域2A内に存在する作業員に対して警告を報知する。
【0034】
通信部29は、Wi-Fi6(登録商標)およびLTE(Long Term Evolution)などの無線通信規格に対応する通信装置から構成されており、無線通信により無線ネットワーク網4に接続し、現場管理装置40および学習装置50と通信する。
【0035】
<作業領域設定処理>
図5は、実施形態に係る情報処理装置20上で実行される作業領域設定処理200の構成を示すブロック図である。図16は、実施形態に係る情報処理装置20上で実行される作業領域設定処理200のフローチャートである。
【0036】
作業領域設定処理200は、施工現場内においてショベル2の作業領域2Aを設定する機能を実現する主体として制御部21で実行され、位置取得部201、旋回中心位置算出部202、旋回中心位置変化判定部203、作業領域情報生成部204、作業領域情報送信部205を備える。作業領域設定処理200の実行タイミングは、測位部24で測地座標系における測位部24の位置座標が取得された時とする。
【0037】
位置取得部201は、記憶部25に保存された測地座標系から現場座標系に座標変換する座標変換行列を用い、測位部24で取得された測地座標系における測位部24の位置座標から現場座標系における測位部24の位置座標を取得する(ステップS200)。
【0038】
旋回中心位置算出部202は、記憶部25に保存されたショベル2の車体に対する測位部24の取り付け位置と旋回中心2Bとのジオメトリ情報に基づき、位置取得部201で取得された現場座標系における測位部24の位置座標から現場座標系におけるショベル2の旋回中心2Bの位置座標を算出する(ステップS201)。
【0039】
旋回中心位置変化判定部203は、旋回中心位置算出部202で算出された現場座標系におけるショベル2の旋回中心2Bの位置座標が前回の作業領域設定処理200時に算出された現場座標系におけるショベル2の旋回中心2Bの位置座標から変化が生じたかを判定する(ステップS202)。
【0040】
作業領域情報生成部204は、旋回中心位置変化判定部203で前回と今回の作業領域設定処理200の間に現場座標系におけるショベル2の旋回中心2Bの位置座標に変化が生じたと判定された場合、記憶部25に保存されたショベル2のシリアル番号と、位置取得部201で測地座標系における測位部24の位置座標が取得された時の作業領域設定タイムスタンプと、旋回中心位置算出部202で算出された現場座標系におけるショベル2の旋回中心2Bの位置座標と、記憶部25に保存されたショベル2の最大旋回半径2Cとが記載されたテキストファイルを作業領域情報として生成する(ステップS203)。
【0041】
作業領域情報送信部205は、通信部29を介して作業領域情報生成部204で生成されたショベル2の作業領域情報を現場管理装置40に送信する(ステップS204)。
【0042】
<物体検出処理>
図6は、実施形態に係る情報処理装置20上で実行される物体検出処理210の構成を示すブロック図である。図17は、実施形態に係る情報処理装置20上で実行される物体検出処理210のフローチャートである。
【0043】
物体検出処理210は、ショベル2の作業領域2A内に存在する作業員および障害物などの検出対象の物体を検出する機能を実現する主体として制御部21で実行され、画像取得部211、点群取得部212、物体検出部213、物体位置算出部214、物体検出判定部215、警報指示部216、ショベル検出情報生成部217、ショベル検出情報送信部218、物体検出モデル更新部219を備える。物体検出処理210の実行タイミングは、撮像部22で画像データが取得された時とする。
【0044】
画像取得部211は、撮像部22が撮影するショベル2の車体周囲の様子を画像データ(環境認識データ)として取得する(ステップS210)。
【0045】
点群取得部212は、測距部23が計測するショベル2の車体周囲の物体の形状を点群データ(環境認識データ)として取得する(ステップS210)。
【0046】
物体検出部213は、記憶部25から読み込まれた物体検出モデルを用いて画像取得部211で取得した画像データからショベル2の車体周囲に存在する作業員や障害物などの検出対象の物体を検出する(ステップS211)。物体検出モデルには、例えば、物体検出精度と処理速度が共に良好なYOLO(You Only Look Once)又はSSD(Single Shot Multibox Detector)などを用いる。
【0047】
物体位置算出部214は、記憶部25に保存された撮像部22と測距部23の間のキャリブレーション情報を用い、点群取得部212で取得した点群データを画像取得部211で取得した画像データに投影し、物体検出部213から検出結果として出力された画像座標系における検出物体の位置や大きさを示すバウンディングボックスに基づき、バウンディングボックスの内部に投影された点群データの中から、検出物体の形状を表す点群データを抽出し、記憶部25に保存された測距部23のセンサ座標系から現場座標系に座標変換する座標変換行列を用い、現場座標系における検出物体の位置座標を算出する(ステップS212)。なお、現場座標系における検出物体の位置座標は、検出物体の輪郭を表す複数の代表点の座標とする。
【0048】
物体検出判定部215は、作業領域設定処理200の作業領域情報生成部204で生成された作業領域情報に含まれた現場座標系におけるショベル2の旋回中心2Bの位置座標およびショベル2の最大旋回半径2Cと、物体位置算出部214で算出された現場座標系における検出物体の位置座標とに基づき、ショベル2の作業領域2A内に検出物体が存在するかを判定する(ステップS213)。
【0049】
警報指示部216は、物体検出判定部215の判定結果においてショベル2の作業領域2A内に検出物体が存在すると判定された場合、表示部26および警報部28に警告を報知するように指示する。
【0050】
ショベル検出情報生成部217は、物体検出判定部215の判定結果においてショベル2の作業領域2Aに検出物体が存在すると判定された場合、記憶部25に保存されたショベル2のシリアル番号と、画像取得部211で画像データが取得された時の物体検出タイムスタンプと、検出物体の種別を示すクラスIDと、物体位置算出部214で算出された現場座標系における検出物体の位置座標とが記載されたテキストファイルをショベル検出情報として生成する(ステップS214)。
【0051】
ショベル検出情報送信部218は、通信部29を介してショベル検出情報生成部217で生成されたショベル検出情報を現場管理装置40に送信する(ステップS215)。
【0052】
物体検出モデル更新部219は、学習装置50の物体検出モデル送信部503(図15)から学習済み物体検出モデルを受信し、現行の物体検出モデルを学習済み物体検出モデルに更新する。
【0053】
<未検出教師データ生成処理>
図7は、実施形態に係る情報処理装置20上で実行される未検出教師データ生成処理220の構成を示すブロック図である。図18は、実施形態に係る情報処理装置20上で実行される未検出教師データ生成処理220のフローチャートである。
【0054】
未検出教師データ生成処理220は、現場管理装置40から受信した未検出補正情報に基づき、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象の物体の未検出が発生した未検出シーンを物体検出モデルに学習させる際に用いる未検出教師データを自動で生成する機能を実現する主体として制御部21で実行され、未検出補正情報取得部221、未検出教師データ生成部222、未検出教師データ送信部223を備える。未検出教師データ生成処理220の実行タイミングは、通信部29を介して現場管理装置40から受信した未検出補正情報が記憶部25に保存された時とする。
【0055】
未検出補正情報取得部221は、記憶部25から未検出補正情報を取得する(ステップS220)。
【0056】
未検出補正情報取得部221は、未検出教師データ生成処理220の処理対象とする未検出補正情報を取得する目的で実行される。
【0057】
未検出教師データ生成部222は、未検出補正情報取得部221で取得された未検出補正情報の中に記載された物体検出タイムスタンプに基づき、ショベル2の撮像部22で取得されて記憶部25に保存された画像データの中から、メタデータとして付与された画像取得タイムスタンプが前記物体検出タイムスタンプと同一時間の画像データを取得し、前記画像データが取得された時にメタデータとして付与された撮像部位置姿勢情報と、記憶部25に保存された測地座標系から現場座標系に座標変換する座標変換行列と、記憶部25に保存された撮像部22の撮像部特性情報とに基づき、現場座標系から前記画像データの画像座標系に座標変換する座標変換行列を算出し、前記未検出補正情報の中に記載された現場座標系における検出物体の位置座標に前記座標変換行列を乗算することで、当該画像データの画像座標系に検出物体の位置座標を投影することにより、前記画像データ上における検出物体の周囲を取り囲む外接矩形を算出し、前記外接矩形の左上頂点および右下頂点の座標をバウンディングボックス座標として抽出後、前記未検出補正情報の中に記載されたクラスIDと、前記バウンディングボックス座標とが記載されたテキストファイルを生成し、前記画像データと前記テキストファイル(教師情報とも称する)とから構成されるデータ群を未検出教師データとして生成する(ステップS221)。
【0058】
未検出教師データ生成部222は、未検出補正情報に基づき、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象の物体の未検出が発生した未検出シーンを物体検出モデルに学習させる際に用いる未検出教師データを自動で生成する目的で実行される。
【0059】
未検出教師データ送信部223は、通信部29を介して未検出教師データ生成部222で生成された未検出教師データを学習装置50に送信する(ステップS222)。
【0060】
未検出教師データ送信部223は、未検出教師データを物体検出モデルの学習環境である学習装置50に送信する目的で実行される。
【0061】
<誤検出教師データ生成処理>
図8は、実施形態に係る情報処理装置20上で実行される誤検出教師データ生成処理230の構成を示すブロック図である。図19は、実施形態に係る情報処理装置20上で実行される誤検出教師データ生成処理230のフローチャートである。
【0062】
誤検出教師データ生成処理230は、現場管理装置40から受信した誤検出補正情報に基づき、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象ではない物体の誤検出が発生した誤検出シーンを物体検出モデルに学習させる際に用いる誤検出教師データを自動で生成する機能を実現する主体として制御部21で実行され、誤検出補正情報取得部231、誤検出教師データ生成部232、誤検出教師データ送信部233を備える。誤検出教師データ生成処理230の実行タイミングは、通信部29を介して現場管理装置40から受信した誤検出補正情報が記憶部25に保存された時とする。
【0063】
誤検出補正情報取得部231は、記憶部25から誤検出補正情報を取得する(ステップS230)。
【0064】
誤検出補正情報取得部231は、誤検出教師データ生成処理230の処理対象とする誤検出補正情報を取得する目的で実行される。
【0065】
誤検出教師データ生成部232は、誤検出補正情報取得部231で取得された誤検出補正情報の中に記載された物体検出タイムスタンプに基づき、ショベル2の撮像部22で取得されて記憶部25に保存された画像データの中から、メタデータとして付与された画像取得タイムスタンプが前記物体検出タイムスタンプと同一時間の画像データを取得し、また、何も記載されていない空のテキストファイルを生成し、前記画像データと前記テキストファイル(教師情報とも称する)とから構成されるデータ群を誤検出教師データとして生成する(ステップS231)。
【0066】
誤検出教師データ生成部232は、誤検出補正情報に基づき、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象ではない物体の誤検出が発生した誤検出シーンを物体検出モデルに学習させる際に用いる誤検出教師データを自動で生成する目的で実行される。
【0067】
誤検出教師データ送信部233は、通信部29を介して誤検出教師データ生成部232で生成された誤検出教師データを学習装置50に送信する(ステップS232)。
【0068】
誤検出教師データ送信部233は、誤検出教師データを物体検出モデルの学習環境である学習装置50に送信する目的で実行される。
【0069】
<情報処理装置(環境設置センサ搭載)>
図9は、実施形態に係る環境設置センサ3に搭載される情報処理装置30の構成を示すブロック図である。
【0070】
情報処理装置30は、環境設置センサ3の監視領域3A内に存在する作業員および障害物などの検出対象の物体を検出する実行環境として、制御部31、撮像部32、測距部33、記憶部34、通信部35を備える。
【0071】
制御部31は、CPU、GPU、ROM、RAMおよびこれらを接続するバスラインなどからなる一般的なコンピュータにより構成され、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み込むことで各種処理を実行する。
【0072】
撮像部32は、CCDカメラや赤外線カメラなどの撮像装置から構成されており、環境設置センサ3の監視領域3Aの様子を撮影する部位であり、撮影したデータは画像データとして記憶部34に保存される。
【0073】
測距部33は、レーザスキャナやLiDARなどの測距装置から構成されており、環境設置センサ3と物体との距離を計測する部位であり、計測したデータは点群データとして記憶部34に保存される。
【0074】
記憶部34は、HDDやSSDなどの記憶装置から構成されており、物体検出処理に用いる物体検出モデルなどの各種情報が記憶されている。
【0075】
通信部35は、Wi-Fi6(登録商標)およびLTEなどの無線通信規格に対応する通信装置から構成されており、無線通信により無線ネットワーク網4に接続し、現場管理装置40および学習装置50と通信する。
【0076】
<物体検出処理>
図10は、実施形態に係る情報処理装置30上で実行される物体検出処理300の構成を示すブロック図である。図20は、実施形態に係る情報処理装置30上で実行される物体検出処理300のフローチャートである。
【0077】
物体検出処理300は、環境設置センサ3の監視領域3A内に存在する作業員および障害物などの検出対象の物体を検出する機能を実現する主体として制御部31で実行され、画像取得部301、点群取得部302、物体検出部303、物体位置算出部304、環境設置センサ検出情報生成部305、環境設置センサ検出情報送信部306、物体検出モデル更新部307を備える。物体検出処理300の実行タイミングは、撮像部32で画像データが取得された時とする。
【0078】
画像取得部301は、撮像部32が撮影する環境設置センサ3の監視領域3A内の様子を画像データ(環境認識データ)として取得する(ステップS300)。
【0079】
点群取得部302は、測距部33が計測する環境設置センサ3の監視領域3A内に存在する物体の形状を点群データ(環境認識データ)として取得する(ステップS300)。
【0080】
物体検出部303は、記憶部34から読み込まれた物体検出モデルを用いて画像取得部301で取得した画像データから環境設置センサ3の監視領域3A内に存在する作業員や障害物などの検出対象の物体を検出する(ステップS301)。物体検出モデルには、例えば、物体検出精度と処理速度が共に良好なYOLO又はSSDなどを用いる。
【0081】
物体位置算出部304は、記憶部34に保存された撮像部32と測距部33の間のキャリブレーション情報を用い、点群取得部302で取得した点群データを画像取得部301で取得した画像データに投影し、物体検出部303から検出結果として出力された画像座標系における検出物体の位置や大きさを示すバウンディングボックスに基づき、バウンディングボックス内部に投影された点群データの中から、検出物体の形状を表す点群データを抽出し、記憶部34に保存された測距部33のセンサ座標系から現場座標系に座標変換する座標変換行列を用い、現場座標系における検出物体の位置座標を算出する(ステップS302)。なお、現場座標系における検出物体の位置座標は、検出物体の輪郭を表す複数の代表点の座標とする。
【0082】
環境設置センサ検出情報生成部305は、記憶部34に保存された環境設置センサ3のシリアル番号と、画像取得部301で画像データが取得された時の物体検出タイムスタンプと、検出物体の種別を示すクラスIDと、物体位置算出部304で算出された現場座標系における検出物体の位置座標とが記載されたテキストファイルを環境設置センサ検出情報として生成する(ステップS303)。
【0083】
環境設置センサ検出情報送信部306は、通信部35を介して環境設置センサ検出情報生成部305で生成された環境設置センサ検出情報を現場管理装置40に送信する(ステップS304)。
【0084】
物体検出モデル更新部307は、学習装置50の物体検出モデル送信部503(図15)から学習済み物体検出モデルを受信し、現行の物体検出モデルを学習済み物体検出モデルに更新する。
【0085】
<現場管理装置>
図11は、実施形態に係る現場管理装置40の構成を示すブロック図である。
【0086】
現場管理装置40は、ショベル2および環境設置センサ3から受信した検出情報を一元管理(照合)し、ショベル2および環境設置センサ3から受信した検出結果に差異が生じた場合、環境設置センサ3から受信した検出情報に基づき、ショベル2の検出情報の誤りを補正(すなわち、ショベル2の検出情報を環境設置センサ3の検出情報に合致するように補正)する検出補正情報(未検出補正情報および誤検出補正情報)を生成する実行環境として、制御部41、記憶部42、通信部43、表示部44、操作部45を備える。現場管理装置40は、例えば、施工現場内に設置されたオンプレミスのサーバなどから構成される。
【0087】
制御部41は、CPU、ROM、RAM及びこれらを接続するバスライン等からなる一般的なコンピュータにより構成されており、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み込むことで各種処理を実行する。
【0088】
記憶部42は、HDDやSSDなどの記憶装置から構成される。
【0089】
通信部43は、Wi-Fi6(登録商標)などの無線通信規格に対応する通信装置から構成されており、無線通信により無線ネットワーク網4に接続し、ショベル2に搭載された情報処理装置20および環境設置センサ3に搭載された情報処理装置30と通信する。
【0090】
表示部44は、液晶ディスプレイなどから構成されており、各種情報を表示する。
【0091】
操作部45は、キーボードやマウスなどから構成されており、各種操作を受け付ける。
【0092】
<未検出補正情報生成処理>
図12は、実施形態に係る現場管理装置40上で実行される未検出補正情報生成処理400の構成を示すブロック図である。図21は、実施形態に係る現場管理装置40上で実行される未検出補正情報生成処理400のフローチャートである。
【0093】
未検出補正情報生成処理400は、環境設置センサ3から受信した環境設置センサ検出情報を基にショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象の物体の未検出が発生したかどうかを判定し、未検出が発生したと判定された場合、前記環境設置センサ検出情報を基に前記物体検出処理210の検出結果を未検出から検出と補正する未検出補正情報を生成する機能を実現する主体として制御部41で実行され、環境設置センサ検出情報取得部401、作業領域情報取得部402、作業領域内判定部403、ショベル検出情報取得部404、未検出判定部405、未検出補正情報生成部406、未検出補正情報送信部407を備える。未検出補正情報生成処理400の実行タイミングは、通信部43を介して環境設置センサ3から受信した環境設置センサ検出情報が記憶部42に保存された時とする。
【0094】
環境設置センサ検出情報取得部401は、記憶部42から環境設置センサ3から受信した環境設置センサ検出情報を取得する(ステップS400)。
【0095】
環境設置センサ検出情報取得部401は、未検出補正情報生成処理400の処理対象となる環境設置センサ検出情報を取得する目的で実行される。
【0096】
作業領域情報取得部402は、環境設置センサ検出情報取得部401で取得された環境設置センサ検出情報の中に記載された物体検出タイムスタンプに基づき、通信部43を介してショベル2から受信して記憶部42に保存された作業領域情報の中から、前記物体検出タイムスタンプと同一時間の作業領域設定タイムスタンプを持つ作業領域情報を取得する(ステップS401)。
【0097】
作業領域情報取得部402は、環境設置センサ3に搭載された情報処理装置30上で実行される物体検出処理300において検出対象の物体が検出された時のショベル2の作業領域情報を取得する目的で実行される。
【0098】
作業領域内判定部403は、環境設置センサ検出情報取得部401で取得された環境設置センサ検出情報の中に記載された現場座標系における検出物体の位置座標と、作業領域情報取得部402で取得された作業領域情報の中に記載された現場座標系におけるショベル2の旋回中心2Bの位置座標および最大旋回半径2Cとに基づき、現場座標系における検出物体の位置座標がショベル2の作業領域2Aの内側にあるかどうかを判定する(ステップS402)。
【0099】
作業領域内判定部403は、環境設置センサ3に搭載された情報処理装置30上で実行される物体検出処理300において検出対象の物体が検出された位置(検出情報)がショベル2の検出対象領域となる作業領域2Aの内側にあるかどうかを判定する目的で実行される。
【0100】
ショベル検出情報取得部404は、作業領域内判定部403により、環境設置センサ3に搭載された情報処理装置30上で実行される物体検出処理300において検出対象の物体が検出された位置(検出情報)がショベル2の検出対象領域となる作業領域の内側にあると判定された場合、環境設置センサ検出情報取得部401で取得された環境設置センサ検出情報の中に記載された物体検出タイムスタンプ、クラスIDおよび現場座標系における検出物体の位置座標と、作業領域情報取得部402で取得された作業領域情報の中に記載されたショベル2のシリアル番号とに基づき、通信部43を介してショベル2から受信して記憶部42に保存されたショベル検出情報の中から、同一時間かつ同一クラスIDかつ同一位置座標かつ同一シリアル番号が記載されたショベル検出情報を取得する(ステップS403)。
【0101】
ショベル検出情報取得部404は、環境設置センサ3に搭載された情報処理装置30上で実行される物体検出処理300の検出結果である環境設置センサ検出情報と検出内容が合致するショベル検出情報を取得する目的で実行される。
【0102】
未検出判定部405は、ショベル検出情報取得部404においてショベル検出情報が取得できなかった場合、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象の物体の未検出が発生したと判定する(ステップS404)。
【0103】
未検出判定部405は、環境設置センサ検出情報の検出内容と合致するショベル検出情報が存在するか否かを判定することにより、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象の物体の未検出が発生したかどうかを判定する目的で実行される。
【0104】
未検出補正情報生成部406は、未検出判定部405により、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象の物体の未検出が発生した(環境設置センサ検出情報の検出内容と合致するショベル検出情報が存在しない)と判定された場合、環境設置センサ検出情報取得部401で取得された環境設置センサ検出情報の中に記載された物体検出タイムスタンプ、クラスIDおよび現場座標系における検出物体の位置座標と、作業領域情報取得部402で取得された作業領域情報の中に記載されたショベル2のシリアル番号とに基づき、前記物体検出タイムスタンプ、前記クラスID、前記位置座標および前記シリアル番号が記載されたテキストファイルを未検出補正情報として生成する(ステップS405)。
【0105】
未検出補正情報生成部406は、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210で発生した検出対象の物体の未検出(の検出結果)を未検出から検出に補正するために必要な情報が記載された未検出補正情報を生成する目的で実行される。
【0106】
未検出補正情報送信部407は、未検出補正情報生成部406で生成された未検出補正情報の中に記載されたショベル2のシリアル番号に基づき、通信部43を介して前記シリアル番号に合致するショベル2に搭載された情報処理装置20に対して前記未検出補正情報を送信する(ステップS406)。
【0107】
未検出補正情報送信部407は、検出対象の物体の未検出が発生したショベル2に搭載された情報処理装置20に未検出補正情報生成部406で生成された未検出補正情報を送信する目的で実行される。
【0108】
<誤検出補正情報生成処理>
図13は、実施形態に係る現場管理装置40上で実行される誤検出補正情報生成処理410の構成を示すブロック図である。図22は、実施形態に係る現場管理装置40上で実行される誤検出補正情報生成処理410のフローチャートである。
【0109】
誤検出補正情報生成処理410は、環境設置センサ3から受信した環境設置センサ検出情報の存在の有無を基にショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象ではない物体の誤検出が発生したかどうかを判定し、誤検出が発生したと判定された場合、前記物体検出処理210の検出結果を誤検出から無検出と補正する誤検出補正情報を生成する機能を実現する主体として制御部41で実行され、ショベル検出情報取得部411、環境設置センサ検出情報取得部412、誤検出判定部413、誤検出補正情報生成部414、誤検出補正情報送信部415を備える。誤検出補正情報生成処理410の実行タイミングは、通信部43を介してショベル2から受信したショベル検出情報が記憶部42に保存された時とする。
【0110】
ショベル検出情報取得部411は、記憶部42からショベル2から受信したショベル検出情報を取得する(ステップS410)。
【0111】
ショベル検出情報取得部411は、誤検出補正情報生成処理410の処理対象となるショベル検出情報を取得する目的で実行される。
【0112】
環境設置センサ検出情報取得部412は、ショベル検出情報取得部411で取得されたショベル検出情報の中に記載された物体検出タイムスタンプ、クラスIDおよび現場座標系における検出物体の位置座標に基づき、通信部43を介して環境設置センサ3から受信して記憶部42に保存された環境設置センサ検出情報の中から、同一時間かつ同一クラスIDかつ同一位置座標が記載された環境設置センサ検出情報を取得する(ステップS411)。
【0113】
環境設置センサ検出情報取得部412は、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210の検出結果であるショベル検出情報と検出内容が合致する環境設置センサ検出情報を取得する目的で実行される。
【0114】
誤検出判定部413は、環境設置センサ検出情報取得部412において環境設置センサ検出情報が取得できなかった場合、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象ではない物体の誤検出が発生したと判定する(ステップS412)。
【0115】
誤検出判定部413は、ショベル検出情報の検出内容と合致する環境設置センサ検出情報が存在するか否かを判定することにより、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象ではない物体の誤検出が発生したかどうかを判定する目的で実行される。
【0116】
誤検出補正情報生成部414は、誤検出判定部413により、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210において検出対象ではない物体の誤検出が発生した(ショベル検出情報の検出内容と合致する環境設置センサ検出情報が存在しない)と判定された場合、ショベル検出情報取得部411で取得されたショベル検出情報に基づき、前記ショベル検出情報の中に記載されたショベル2のシリアル番号および物体検出タイムスタンプが記載されたテキストファイルを誤検出補正情報として生成する(ステップS413)。
【0117】
誤検出補正情報生成部414は、ショベル2に搭載された情報処理装置20上で実行される物体検出処理210で発生した検出対象ではない物体の誤検出(の検出結果)を誤検出から無検出に補正するために必要な情報が記載された誤検出補正情報を生成する目的で実行される。
【0118】
誤検出補正情報送信部415は、誤検出補正情報生成部414で生成された誤検出補正情報の中に記載されるショベル2のシリアル番号に基づき、通信部43を介して前記シリアル番号に合致するショベル2に搭載された情報処理装置20に対して前記誤検出補正情報を送信する(ステップS414)。
【0119】
誤検出補正情報送信部415は、検出対象ではない物体の誤検出が発生したショベル2に搭載された情報処理装置20に誤検出補正情報生成部414で生成された誤検出補正情報を送信する目的で実行される。
【0120】
<学習装置>
図14は、実施形態に係る学習装置50の構成を示すブロック図である。
【0121】
学習装置50は、ショベル2に搭載された情報処理装置20から受信した教師データ(未検出教師データおよび誤検出教師データ)を現行の物体検出モデルに学習させて学習済み物体検出モデルを生成する実行環境として、制御部51、記憶部52、通信部53、表示部54、操作部55を備える。学習装置50は、例えば、クラウド上に構築したサーバなどから構成される。
【0122】
制御部51は、CPU、ROM、RAM及びこれらを接続するバスライン等からなる一般的なコンピュータにより構成されており、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み込むことで各種処理を実行する。
【0123】
記憶部52は、HDDやSSDなどの記憶装置から構成される。
【0124】
通信部53は、LTEなどの無線通信規格に対応する通信装置から構成され、無線通信により無線ネットワーク網4に接続し、ショベル2に搭載された情報処理装置20と通信する。
【0125】
表示部54は、液晶ディスプレイなどから構成されており、各種情報を表示する。
【0126】
操作部55は、キーボードやマウスなどから構成されており、各種操作を受け付ける。
【0127】
<学習処理>
図15は、実施形態に係る学習装置50上で実行される学習処理500の構成を示すブロック図である。また、図23は、実施形態に係る学習装置50上で実行される学習処理500のフローチャートである。
【0128】
学習処理500は、ショベル2に搭載された情報処理装置20から受信した未検出教師データおよび誤検出教師データをショベル2の情報処理装置20で用いられている現行バージョンの物体検出モデルに学習させ、学習済み物体検出モデルを生成する機能を実現する主体として制御部51で実行され、教師データ取得部501、学習部502、物体検出モデル送信部503を備える。学習処理500の実行タイミングは、ショベル2から受信した教師データの数が所定の数を超過した時とする。
【0129】
教師データ取得部501は、通信部53を介してショベル2に搭載された情報処理装置20から受信し、記憶部52に保存されたショベル2に搭載された情報処理装置20で用いられている現行バージョンの物体検出モデルに学習させていない未学習の未検出教師データおよび誤検出教師データを取得する(ステップS500)。
【0130】
学習部502は、教師データ取得部501で取得した未学習の未検出教師データおよび誤検出教師データをショベル2に搭載された情報処理装置20で用いられている現行バージョンの物体検出モデルに転移学習させ、学習済み物体検出モデルを生成する。物体検出モデルの学習に転移学習を用いることで、学習に必要な未学習の教師データ数を少量に済ませることができ、学習時間も短時間に抑えることができる(ステップS501)。
【0131】
物体検出モデル送信部503は、通信部53を介して学習部502で生成された学習済み物体検出モデルをショベル2に搭載された情報処理装置20に送信する(ステップS502)。
【0132】
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態のショベル(作業機械)2の物体検出システム10は、物体検出モデルを用いて、作業機械に搭載された撮像装置(撮像部22)で撮影した前記作業機械の周囲の画像データから、前記作業機械の周囲の物体を検出する第1情報処理装置20と、物体検出モデルを用いて、前記作業機械が稼働する施工現場に設置された撮像装置(撮像部32)で撮影した前記作業機械の周囲の画像データから、前記作業機械の周囲の物体を検出する第2情報処理装置30と、前記第1情報処理装置20の検出情報と前記第2情報処理装置30の検出情報を照合(一元管理)する現場管理装置40と、画像データと教師情報とから構成される教師データに基づいて(第1情報処理装置20および第2情報処理装置30の物体検出に用いられる)前記物体検出モデルの学習を行う学習装置50と、を備え、前記現場管理装置40は、前記第1情報処理装置20の検出情報と前記第2情報処理装置30の検出情報に差異が生じた場合、前記第2情報処理装置30の検出情報に基づき、前記第1情報処理装置20の検出情報を前記第2情報処理装置30の検出情報に合致するように補正する検出補正情報を生成し、前記第1情報処理装置20は、前記現場管理装置40で生成した前記検出補正情報に基づいて前記教師データを自動生成し、前記学習装置50は、前記第1情報処理装置20で自動生成した前記教師データに基づいて前記物体検出モデルの学習を実行し、学習済みの前記物体検出モデルを前記第1情報処理装置20に送信する。
【0133】
前記現場管理装置40は、前記第1情報処理装置20の検出情報と前記第2情報処理装置30の検出情報に差異が生じた場合、前記第2情報処理装置30の検出情報に基づいて前記第1情報処理装置20の検出情報を未検出状態から検出状態に補正するために必要な検出補正情報を生成する未検出補正情報生成処理400、もしくは、前記第2情報処理装置30の検出情報に基づいて前記第1情報処理装置20の検出情報を誤検出状態から無検出状態に補正するために必要な検出補正情報を生成する誤検出補正情報生成処理410を行う。
【0134】
前記現場管理装置40は、前記未検出補正情報生成処理400として、前記第2情報処理装置30の検出情報が前記作業機械の作業領域の内側であるか否かを判定し、内側である場合、前記第2情報処理装置30の検出情報の内容と合致する前記第1情報処理装置20の検出情報が存在するか否かを判定し、存在しない場合、前記第2情報処理装置30の検出情報に基づいて前記第1情報処理装置20の検出情報を未検出状態から検出状態に補正するために必要な検出補正情報を生成し、前記第1情報処理装置20に前記検出補正情報を送信する。
【0135】
前記現場管理装置40は、前記誤検出補正情報生成処理410として、前記第1情報処理装置20の検出情報の内容と合致する前記第2情報処理装置30の検出情報が存在するか否かを判定し、存在しない場合、前記第1情報処理装置20の検出情報に基づいて前記第1情報処理装置20の検出情報を誤検出状態から無検出状態に補正するために必要な検出補正情報を生成し、前記第1情報処理装置20に前記検出補正情報を送信する。
【0136】
すなわち、本実施形態のショベル(作業機械)2の物体検出システム10では、現場管理装置40は、ショベル2に搭載された情報処理装置20と環境設置センサ3に搭載された情報処理装置30から受信した検出情報を照合し、互いの検出結果に差異がある場合、情報処理装置30から受信した検出情報に基づき、情報処理装置20の検出情報を補正する検出補正情報を生成し、情報処理装置20は、現場管理装置40から受信した前記検出補正情報を基に教師データを自動生成し、学習装置50は、情報処理装置20から受信した教師データを基に物体検出モデルの学習を行う。
【0137】
本実施形態によれば、環境設置センサ3上の物体検出モデルの検出結果に基づき、ショベル2上の物体検出モデルで未検出や誤検出が発生した場合に、教師データを自動生成することにより、教師データのデータ量および教師データの作成にかかるコストを削減することができる。
【0138】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形形態が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0139】
また、上記した実施形態のコントローラの各機能は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計することによりハードウェアで実現してもよい。また、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、コントローラ内の記憶装置の他に、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0140】
2…ショベル、3…環境設置センサ、4…無線ネットワーク網、10…物体検出システム、20…情報処理装置、30…情報処理装置、40…現場管理装置、50…学習装置、200…作業領域設定処理、201…位置取得部、202…旋回中心位置算出部、203…旋回中心位置変化判定部、204…作業領域情報生成部、205…作業領域情報送信部、210…物体検出処理、211…画像取得部、212…点群取得部、213…物体検出部、214…物体位置算出部、215…物体検出判定部、216…警報指示部、217…ショベル検出情報生成部、218…ショベル検出情報送信部、220…未検出教師データ生成処理、221…未検出補正情報取得部、222…未検出教師データ生成部、223…未検出教師データ送信部、230…誤検出教師データ生成処理、231…誤検出補正情報取得部、232…誤検出教師データ生成部、233…誤検出教師データ送信部、300…物体検出処理、301…画像取得部、302…点群取得部、303…物体検出部、304…物体位置算出部、305…環境設置センサ検出情報生成部、306…環境設置センサ検出情報送信部、400…未検出補正情報生成処理、401…環境設置センサ検出情報取得部、402…作業領域情報取得部、403…作業領域内判定部、404…ショベル検出情報取得部、405…未検出判定部、406…未検出補正情報生成部、407…未検出補正情報送信部、410…誤検出補正情報生成処理、411…ショベル検出情報取得部、412…環境設置センサ検出情報取得部、413…誤検出判定部、414…誤検出補正情報生成部、415…誤検出補正情報送信部、500…学習処理、501…教師データ取得部、502…学習部、503…物体検出モデル送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23