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  • 特開-包材用シート 図1
  • 特開-包材用シート 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137087
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】包材用シート
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/32 20060101AFI20240927BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65D75/32
B65D77/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048460
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】照島 功祐
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA30
3E067AB83
3E067AC01
3E067BA01A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067BC02A
3E067CA04
3E067CA07
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA06
3E067FB02
(57)【要約】
【課題】厚さ方向への成型加工量が大きくても(深絞りでも)金属箔の剥離が生じない包材用シートを提供する。
【解決手段】金属箔6を含み且つ厚さ方向への加圧成形によって絞り部(収容部)3が形成される包材用シート5であって、金属箔6の両面にナイロン(ポリアミド)フィルム7が接合されて積層される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔を含み且つ厚さ方向への加圧成形によって絞り部が形成される包材用シートであって、
前記金属箔の両面にポリアミドフィルムが接合されて積層された、包材用シート。
【請求項2】
一方の前記ポリアミドフィルムの前記金属箔と反対側の面にポリエチレンテレフタレートフィルムが接合されて積層された、請求項1に記載の包材用シート。
【請求項3】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムは、前記絞り部の外側となる面に積層される、請求項2に記載の包材用シート。
【請求項4】
他方の前記ポリアミドフィルムの前記金属箔と反対側の面にカバーシートで封止するためのシーラント層が接合されて積層された、請求項2に記載の包材用シート。
【請求項5】
前記接合にポリウレタン接着剤が使用され、前記金属箔よりも前記絞り部側には脂肪族系硬化剤が用いられ、前記金属箔よりも前記絞り部の外側には芳香族系硬化剤が用いられた、請求項1乃至4の何れか1項に記載の包材用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包材用シート、特に厚さ方向への加圧成形によって絞り部が形成される包材用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、コンタクトレンズを個包装するための新規な包材が記載されている。この包材は、被包装物であるコンタクトレンズを収容する収容部が形成された容器と、コンタクトレンズが収容された収容部を封止するように容器に接合されるカバーシートで構成される。製品は、コンタクトレンズと食塩水などの薬液が収容部内に封入される。カバーシートは、平坦な積層樹脂シート部材である。容器は、積層樹脂シート部材(包材用シート)を厚さ方向に加圧成型(冷間成型)して窪ませることによって収容部を形成する。すなわち、収容部は加圧成型で形成される絞り部である。
【0003】
容器に用いられる包材用シートには、収容部を遮光すると共に水蒸気バリア機能や酸素バリア機能を付与すべく金属箔が積層されている。この金属箔には、例えばアルミニウム箔が用いられる。この金属箔を保護するために、金属箔の両面には樹脂フィルムが積層されている。この樹脂フィルムには、ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルムが適当とされている。PETフィルムは、強度、耐水性、耐薬品性などに優れる。また、製品化されたコンタクトレンズパッケージは、オートクレーブなどの熱処理が施されるが、特に延伸化されたPETフィルムは耐熱性にも優れる。なお、この容器用の積層樹脂シート部材には、カバーシートが接合される面に、例えばカバーシートを簡易にはがすことが可能なシーラント層が接合によって積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6379037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、コンタクトレンズを収容する容器の収容部を深くしたいという要求がある。そこで、金属箔の両面にPETフィルムが積層された上記包材用シートを用いて、深い収容部を冷間成型で形成すると、PETフィルムと金属箔が剥離してしまうという現象が生じる。このように金属箔が剥離すると、金属箔そのものに亀裂(クラック)が生じ、遮光機能や、内容物の水分の蒸散につながりかねない水蒸気バリア機能が損なわれる。また、酸素バリア機能も劣化するので、酸化による内容物の変質も懸念される。したがって、厚さ方向への成型加工量が大きくても(深絞りでも)金属箔の剥離が生じない包材用シートが望まれる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、厚さ方向への成型加工量が大きくても(深絞りでも)金属箔の剥離が生じない包材用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る包材用シートは、金属箔を含み且つ厚さ方向への加圧成型によって絞り部が形成される包材用シートであって、前記金属箔の両面にポリアミドフィルムが接合されて積層されたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の包材用シートによれば、金属箔の両面に、柔らかく、変形追従性の良いポリアミドフィルムが接合によって積層されているので、厚さ方向への成型加工量が大きくても(深絞りでも)金属箔の変形と同様にポリアミドフィルムが変形し、これによりポリアミドフィルムと金属箔が剥離しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の包材用シートの一実施形態を示す概略断面図である。
図2図1の包材用シートが用いられるコンタクトレンズパッケージの組立説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の包材用シートの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0010】
図1は、包材用シート5の一実施形態を示す概略断面図であり、図2は、図1の包材用シート5を用いたコンタクトレンズパッケージの組立説明図である。このコンタクトレンズパッケージは、上記特許文献1に記載される新規な包材と同様に、被包装物であるコンタクトレンズ1を収容する収容部3が形成された容器2と、コンタクトレンズ1が収容された収容部3を封止するように容器2に接合されるカバーシート11で構成される。カバーシート11は、従来既存の平坦な積層樹脂シート部材と同様であり、金属箔の両面に樹脂フィルム、例えばPETフィルムが接合により積層されて構成される。また、カバーシート11の容器2側の面には、容器2の包材用シート5と同様に、後述するようなシーラント層9が接合により積層されている。製品としてのコンタクトレンズパッケージは、容器2の収容部3内に、コンタクトレンズ1と食塩水などの薬液を収容し、その上から収容部3を封止するようにカバーシート11が容器2の平坦部に接合される。
【0011】
図1は、容器2に用いられる包材用シート5であり、金属箔6を含む積層樹脂フィルムで構成される。金属箔6には、アルミニウム箔が用いられる。金属箔6は、前述のように、容器2に遮光機能を付与するためのものである。遮光性は、コンタクトレンズパッケージにおける感光性材料の劣化を防止するために必要とされる。コンタクトレンズパッケージの感光性材料としては、染料、ビタミン、薬品、コーティングなどが挙げられる。また、前述のように、金属箔6は、水蒸気バリア機能や酸素バリア機能も有する。この金属箔6の厚さは、一例として、30μmである。
【0012】
この包材用シート5は、図の上側が収容部3側であり、下側が収容部3の外側になるので、以下では、図の上側を容器2としての内側、下側を容器2としての外側として説明する。この包材用シート5は、アルミニウム箔からなる金属箔6の内側と外側にポリアミド樹脂製のフィルム(以下、ナイロンフィルム)7が接着剤によって接合されて積層されている。このナイロンフィルム7には、延伸化(二軸延伸)されたものを使用する。二軸延伸フィルムは、製膜の際にフィルムを横と縦の二方向に引き伸ばして製造されたものを指し、二軸延伸ナイロンフィルム7は、強度、特に圧縮強度、突き刺し強度、柔軟性、強靭性、耐深絞り性、耐屈曲ピンホール性、ガスバリアー性、耐摩耗性、耐熱性、耐寒性などに優れる。この容器内側及び外側のナイロンフィルム7の厚さは、一例として、15μmである。
【0013】
外側のナイロンフィルム7の外側には、ポリエステルテレフタレート樹脂製のフィルム(以下、PETフィルム)8が接着剤によって接合されて積層されている。このPETフィルム8には、延伸化(二軸延伸)されたものを使用する。二軸延伸PETフィルム8は、強度、特に突き刺し強度、耐熱性、強靭性、耐寒性、耐水性、耐薬品性などに優れる。このPETフィルム8は、後述するように、主に外側のナイロンフィルム7を保護するために積層される。このPETフィルム8の厚さは、一例として、12μmである。
【0014】
内側のナイロンフィルム7の内側には、カバーシート11を接合するためのシーラント層9が接着剤によって接合されて積層されている。このシーラント層9は、カバーシート11の容器接合面にも設けられており、カバーシート11と容器2を熱溶着(ヒートシール)するために用いられている。この実施形態では、カバーシート11と容器2の接合部に一部、未接合の部分(図2における容器2の平坦な部分)を設けておき、その未接合の部分からカバーシート11をユーザが剥がす、いわゆるイージーピール機能を有する。このシーラント層9は、3層の積層フィルム構造からなり、熱処理(オートクレーブ)に対応するために、ポリプロピレンを主成分とする。各フィルムは、内側のナイロンフィルム側に配設され、内側のナイロンフィルム7との貼り合わせのためのラミネート層、そのラミネート層の容器内側に配設され、製膜時の核を構成する支持層、カバーシート11側に配設され、イージーピール機能を発揮するイージーピール層を構成する。製膜時には、溶融した3種類の樹脂を押し出し、熱によって互いに接着させる、共押フィルムとして製膜される。このシーラント層9に用いられるフィルムは、延伸されていない(無延伸)フィルムが用いられる。前述のように、延伸フィルムは強靭性を有する一方、無延伸フィルムは、柔らかく、伸びやすいという性質がある。そのため、後述する深絞り成型時に変形にうまく追従できる。このシーラント層9の厚さは、一例として、30μmである。
【0015】
図2に示す容器2は、容器用の包材用シート5を雄型と雌型で冷間加圧して成型される。この容器2は、カバーシート11と接合される平坦部(シートのまま)から一段外側に窪んだ皿型凹部と、この皿型凹部の中央部に形成され、コンタクトレンズ1が収容される収容部(絞り部)3を備えている。皿型凹部は、平面視長円形状であり、収容部3は、略半球状である。皿型凹部の長円は長軸が35mm程度、短軸が20mm程度であり、深さが2mm程度、半球状の収容部3は、直径が16mm程度、深さが7mm程度である。従来のコンタクトレンズ用の容器2と比べて、収容部3の深さが大きくなっている。この容器2を、金属箔6の内側と外側にPETフィルムが積層された従来の包材用シートで冷間成型すると、収容部3が深絞りとなり、皿型凹部と収容部3の繋ぎ部分(図のA部)で金属箔6と容器外側のPETフィルムの剥離が生じた。金属箔6の剥離が生じると、その後、金属箔6に亀裂(クラック)が生じ、容器2の遮光性が損なわれると共に水蒸気バリア機能や酸素バリア機能も損なわれる。剥離は、容器2の外側で且つ紙の折り方でいう谷折りの部分で生じる。この谷折り部分では、図2からも推察されるように、容器外側のPETフィルムに大きな圧縮力が作用する。PETフィルムも、通常の絞り加工であれば十分な圧縮強度を示すが、この実施形態の深絞り加工では、圧縮強度が不足していたのではないかと考えられる。
【0016】
これに対し、図1に示す包材用シート5を用いて図2の容器2を冷間成型しても、金属箔6と容器外側のナイロンフィルム7は剥離しない。これは、前述したナイロンフィルム7の特性、特に圧縮強度の高さが大きいと考えられるが、後述する金属箔6と容器外側のナイロンフィルム7の接合に用いられる接着剤も寄与している。一方、この容器2を用いたコンタクトレンズパッケージは、収容部3内にコンタクトレンズ1(と薬液)を封止した後、オートクレーブ(熱処理)が施される。容器外側にナイロンフィルム7が剥き出しになっていると、オートクレーブ後、熱水中に含まれる酸素による酸化劣化が生じることがある。これに対し、容器外側のナイロンフィルム7の外側に耐熱性の優れたPETフィルム8を積層することで、ナイロンフィルム7のひびの発生を防止することができる。
【0017】
また、金属箔6の内側にシーラント層9を直接貼り合わせた場合、容器2を冷間成型したときに金属箔6の隅部にしわが生じる。これは、前述のように伸びやすい無延伸フィルムからなるシーラント層9が金属箔6と接しているためであると考えられる。これに対し、金属箔6とシーラント層9の間に、ナイロンフィルムやPETフィルムなどの延伸フィルムを挟むことによって、それらが金属箔6とシーラント層9の間の緩衝材のようにふるまい、しわの発生を抑制することができる。ただし、この実施形態のような深絞りの場合には、ナイロンフィルムとPETフィルムの性能差から、ナイロンフィルム7を内挿しないと金属箔6との間に剥離の懸念がある。こうしたことから、金属箔6とシーラント層9の間にナイロンフィルム7を介装した。
【0018】
この実施形態の包材用シート5における金属箔6、ナイロンフィルム7、PETフィルム8、シーラント層9の接合には、全て2液混合型のポリウレタン接着剤が用いられる。すなわち、図1に示すように、積層される各層間には接着剤によるポリウレタン層10が形成されている。ポリウレタンは、周知のように比較的柔らかく、したがって冷間成型時の各層の変形に追従して変形すると共に、圧縮強度に優れていることから上記谷折り部分における各層間の剥離防止に有効と考えられる。そして、金属箔6と容器外側のナイロンフィルム7の接合、及び、容器外側のナイロンフィルム7とPETフィルム8の接合には芳香族系イソシアネート硬化剤を用い、金属箔6と容器内側のナイロンフィルム7の接合、及び、容器内側のナイロンフィルム7とシーラント層9の接合には脂肪族系イソシアネート硬化剤を用い、主剤には何れもポリオールを用いた。すなわち、金属箔6であるアルミニウム箔を挟んで容器2の外側と内側で硬化剤を変えている。主剤に用いられるポリオールについては、凝集力が高く、密着強度が高いという特性がある。また、芳香族系イソシアネート硬化剤は、脂肪族系イソシアネート硬化剤と比較して、反応性に優れ、且つ、接合強度も大きい。一方、脂肪族系イソシアネートは、この実施形態の内容物であるコンタクトレンズ1や薬液に対する適正に対応する。この実施形態では、金属箔6であるアルミニウム箔がバリア層として機能するので、それよりも容器外側では、例えば接合強度だけを考慮して芳香族系イソシアネート硬化剤を使用した。そして、これらのポリウレタン接着剤の選択・使用によって、上記のように金属箔6と外側ナイロンフィルム7の剥離を効果的に防止することができた。
【0019】
このように、この実施形態の包材用シート5では、金属箔6を含み且つ厚さ方向への加圧成形によって被包装物であるコンタクトレンズ1を収容する収容部(絞り部)3が形成される場合に、金属箔6の両面にナイロン(ポリアミド)フィルム7が接合されて積層されていることから、深さの大きい収容部3を冷間成型する場合であっても金属箔6とナイロンフィルム7の剥離を防止することができる。
また、一方のナイロンフィルム7、具体的には容器外側のナイロンフィルム7の金属箔6と反対側の面にPETが接合されて積層されていることから、コンタクトレンズパッケージのように熱処理が施される場合であってもナイロンフィルム7の熱劣化を防止することができる。
【0020】
また、他方のナイロンフィルム7、具体的には容器内側のナイロンフィルム7の金属箔6と反対側の面にシーラント層9が接合されて積層されていることから、コンタクトレンズパッケージに必要なカバーシート11を簡易に接合して収容部3を封止することができる。
また、フィルム7、8や金属箔6の接合にポリウレタン接着剤が使用され、金属箔6よりも収容部3側、すなわち容器内側には脂肪族系硬化剤が用いられ、金属箔6よりも収容部3の外側、すなわち容器外側には芳香族系硬化剤が用いられていることから、内容物(被包装物)であるコンタクトレンズ1や薬剤の内容物適正に対応すると共に、容器外側のナイロンフィルム7と金属箔6の接合強度を確保することができる。
【0021】
以上、実施形態に係る包材用シート5について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施形態では、コンタクトレンズパッケージの容器2に用いられる包材用シート5についてのみ説明したが、本発明の包材用シートは、その他の如何なる用途、特に金属箔6を有し且つ厚さ方向への加圧成型によって絞り部が形成されるものであれば、如何様な用途でも適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 コンタクトレンズ(被包装物)
2 容器
3 収容部(絞り部)
5 包材用シート
6 金属箔
7 ナイロン(ポリアミド)フィルム
8 PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム
9 シーラント層
10 ポリウレタン層
11 カバーシート
図1
図2