(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137095
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】既設の管状構造物を更生する方法
(51)【国際特許分類】
F16L 1/00 20060101AFI20240927BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20240927BHJP
B29C 63/30 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16L1/00 P
F16L55/18 Z
B29C63/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048472
(22)【出願日】2023-03-24
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケブラー
(71)【出願人】
【識別番号】592012650
【氏名又は名称】足立建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000225740
【氏名又は名称】南部化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】関根 吉史
(72)【発明者】
【氏名】石橋 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】林 徳治
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA04
4F211AA11
4F211AA15
4F211AD16
4F211AG01
4F211AH43
4F211AR07
4F211AR12
4F211SA17
4F211SC03
4F211SD01
4F211SD15
4F211SP22
4F211TA01
4F211TC09
4F211TN29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】既設管の更生方法において、大きな外圧がかかっても更生パネル同士の接続状態および止水効果が維持可能な方法を提供する。
【解決手段】内周面に複数の支持具を固定することと、複数の更生パネル100を複数の支持具に取り付けることとを含み、複数の支持具の各々は、複数の更生パネルのうちの少なくとも隣接する更生パネルを支持することが可能であるように構成されており、複数の支持具に複数の更生パネルを取り付けることと、環状構造物の周方向に更生パネルを配置することと、環状構造物の周方向に並ぶ隣接する更生パネルの間をシールすることとを含み、隣接する更生パネルの間をシールすることは、隣接する更生パネルの間に電熱線160を含む目地材150を配置することと、電熱線への通電により目地材を隣接する更生パネルに融着させることにより、隣接する更生パネル同士を固定することとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の管状構造物の内周面を更生する方法であって、
前記内周面に複数の支持具を固定することと、
複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることと
を含み、
前記複数の支持具の各々は、前記複数の更生パネルのうちの少なくとも隣接する更生パネルを支持することが可能であるように構成されており、
前記複数の支持具に複数の更生パネルを取り付けることとは、
前記環状構造物の周方向に更生パネルを配置することと、
前記環状構造物の周方向に隣接する更生パネルとの間をシールすることと
を含み、
前記隣接する更生パネルとの間をシールすることは、
前記隣接する更生パネルとの間に、電熱線を含む目地材を充填することと、
前記電熱線への通電により前記目地材を前記隣接する更生パネルに融着させることにより、前記隣接する更生パネル同士を固定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の支持具に複数の更生パネルを取り付けることは、
さらに前記環状構造物の軸方向に更生パネルを配置することと、
前記環状構造物の軸方向に隣接する更生パネルとの間をシールすることと
を含み、
前記隣接する更生パネル間の隙間をシールすることは、
前記隣接する更生パネルとの間に、電熱線を含む目地材を充填することと、
前記電熱線への通電により前記目地材を前記隣接する更生パネルに融着させることにより、前記隣接する更生パネル同士を固定することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記更生パネルは、PP(ポリプロピレン)またはFRP(繊維強化プラスチック)を含む樹脂製パネルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記目地材は、頭部と前記頭部と略直交する軸部とを有し、前記頭部に電熱線を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記目地材は略T字状部材である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記目地材は、軸部を有する略I字状部材であり、前記軸部に電熱線を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
既設の管状構造物の内周面を更生する方法であって、
前記内周面に複数の支持具を固定することと、
複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることと
を含み、
前記複数の支持具の各々は、前記複数の更生パネルのうちの隣接する第1の更生パネルの一方端部と第2の更生パネルの他方端部とを支持することが可能な第1の係合部を有するように構成されており、
前記支持具の前記第1の係合部に前記第1の更生パネルの一方端部と前記第2の更生パネルの他方端部とをスライド挿入することにより取り付けることと
を含む、方法。
【請求項8】
前記複数の支持具の各々は、さらに前記第2の更生パネルの一方端部と第3の更生パネルの他方端部とを挿入することが可能な第2の係合部を有するように構成されており、
前記支持具の前記第2の係合部に前記第2の更生パネルの一方端部と前記第3の更生パネルの他方端部とをスライド挿入することにより取り付けることと
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の更生パネルと前記第2の更生パネルと前記第3の更生パネルとを前記環状構造物の周方向および/または軸方向に配置することと、
前記環状構造物の周方向および/または軸方向に並ぶ隣接する前記第1の更生パネルと前記第2の更生パネルとの間の第1の隙間および前記第2の更生パネルと前記第3の更生パネルとの間の第2の隙間をシールすることと
を含み、
前記第1の隙間および前記第2の隙間をシールすることは、
前記第1の隙間および前記第2の隙間に、それぞれ電熱線を含む目地材を配置することと、
前記電熱線への通電により前記目地材の融着により前記第1の更生パネルと前記第2の更生パネルを固定するとともに、前記第2の更生パネルと前記第3の更生パネルとを固定さすることと
を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の管状構造物の内周面を、更生パネルを用いて更生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、老朽化した下水管などの既設管(既設の管状構造物であってもよい)に対しては、これを新たな配管に取り換える工事が大がかりなものとなることから、既設管を補強したり修復したりする工事が行われている。
【0003】
このような工事には、老朽化した既設管を新しい管と同等以上の働きをするように改良する更生工法が用いられている。
【0004】
更生工法の一例として、修復用部材として熱可塑性樹脂製の平板状の複数の長尺体を既設管の内面に沿って管状に設置し、この修復部材からなる管と既設管との隙間に充填材(例えば、モルタル、コンクリートなど)を充填して既設管を更生する方法において、平板状の長尺体同士を嵌合することで接続する方法ことが知られている(例えば、
図5を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の平板状の長尺体同士を嵌合による接続では、大きな外圧(例えば
図6に示す矢印に示す向きの力)がかかった際に、長尺体同士の状態が
図6における実線状態から一点鎖線状態のように長尺体同士の嵌合が外れる状態となる恐れがあり、それによって止水効果が不安定になるといった課題があった。本発明は、既設の管状構造物の内周面上に固定される更生パネルを用いて既設の管状構造物を更生可能とする更生方法、特に6000mmを超える大断面の既設管(管きょ)に対応可能な更生方法において、外圧がかかっても更生パネル同士の接続状態および止水効果が維持可能な方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の項目を提供する。
【0007】
(項目1)
既設の管状構造物の内周面を更生する方法であって、
前記内周面に複数の支持具を固定することと、
複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることと
を含み、
前記複数の支持具の各々は、前記複数の更生パネルのうちの少なくとも隣接する更生パネルを支持することが可能であるように構成されており、
前記複数の支持具に複数の更生パネルを取り付けることとは、
前記環状構造物の周方向に更生パネルを配置することと、
前記環状構造物の周方向に隣接する更生パネルとの間をシールすることと
を含み、
前記隣接する更生パネルとの間をシールすることは、
前記隣接する更生パネルとの間に、電熱線を含む目地材を充填することと、
前記電熱線への通電により前記目地材を前記隣接する更生パネルに融着させることにより、前記隣接する更生パネル同士を固定することと
を含む、方法。
【0008】
(項目2)
前記複数の支持具に複数の更生パネルを取り付けることは、
さらに前記環状構造物の軸方向に更生パネルを配置することと、
前記環状構造物の軸方向に隣接する更生パネルとの間をシールすることと
を含み、
前記隣接する更生パネル間の隙間をシールすることは、
前記隣接する更生パネルとの間に、電熱線を含む目地材を充填することと、
前記電熱線への通電により前記目地材を前記隣接する更生パネルに融着させることにより、前記隣接する更生パネル同士を固定することと
を含む、項目1に記載の方法。
【0009】
(項目3)
前記更生パネルは、PP(ポリプロピレン)またはFRP(繊維強化プラスチック)を含む樹脂製パネルである、項目1または2に記載の方法。
【0010】
(項目4)
前記目地材は、頭部と前記頭部と略直交する軸部とを有し、前記頭部に電熱線を備えている、項目1に記載の方法。
【0011】
(項目5)
前記目地材は略T字状部材である、項目4に記載の方法。
【0012】
(項目6)
前記目地材は、軸部を有する略I字状部材であり、前記軸部に電熱線を備えている、項目1に記載の方法。
【0013】
(項目7)
既設の管状構造物の内周面を更生する方法であって、
前記内周面に複数の支持具を固定することと、
複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることと
を含み、
前記複数の支持具の各々は、前記複数の更生パネルのうちの隣接する第1の更生パネルの一方端部と第2の更生パネルの他方端部とを支持することが可能な第1の係合部を有するように構成されており、
前記支持具の前記第1の係合部に前記第1の更生パネルの一方端部と前記第2の更生パネルの他方端部とをスライド挿入することにより取り付けることと
を含む、方法。
【0014】
(項目8)
前記複数の支持具の各々は、さらに前記第2の更生パネルの一方端部と第3の更生パネルの他方端部とを挿入することが可能な第2の係合部を有するように構成されており、
前記支持具の前記第2の係合部に前記第2の更生パネルの一方端部と前記第3の更生パネルの他方端部とをスライド挿入することにより取り付けることと
を含む、項目7に記載の方法。
【0015】
(項目9)
前記第1の更生パネルと前記第2の更生パネルと前記第3の更生パネルとを前記環状構造物の周方向および/または軸方向に配置することと、
前記環状構造物の周方向および/または軸方向に並ぶ隣接する前記第1の更生パネルと前記第2の更生パネルとの間の第1の隙間および前記第2の更生パネルと前記第3の更生パネルとの間の第2の隙間をシールすることと
を含み、
前記第1の隙間および前記第2の隙間をシールすることは、
前記第1の隙間および前記第2の隙間に、それぞれ電熱線を含む目地材を配置することと、
前記電熱線への通電により前記目地材の融着により前記第1の更生パネルと前記第2の更生パネルを固定するとともに、前記第2の更生パネルと前記第3の更生パネルとを固定さすることと
を含む、項目8に記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既設の管状構造物の内周面上に固定される更生パネルを用いて既設の管状構造物を更生可能とする更生方法において、大きな外圧がかかっても更生パネル同士の接続状態および止水効果が維持可能な方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の既設の管状構造物を更生する方法によって更生された更生管を示す図。
【
図2】本発明における更生パネルを固定する支持具と更生パネルとの接続構造を示す図。
【
図3】本発明における周方向に配置された第1の更生パネルと第2の更生パネルとを取り付けた部分を、1つの実施形態における目地材を用いてシールする工程を説明する図。
【
図4】本発明における周方向に配置された第1の更生パネルと第2の更生パネルとを取り付けた部分を、別の実施形態における目地材を用いてシールする工程を説明する図。
【
図5】本発明における軸方向に配置された第1の更生パネルと第2の更生パネルとを取り付けた部分を、目地材を用いてシールする工程を説明する図。
【
図6】従来の既設の管状構造物を更生する方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0019】
本発明は、既設の管状構造物の内周面上に固定される更生パネルを用いて既設の管状構造物を更生可能とする更生方法において、外圧がかかっても更生パネル同士の接続状態および止水効果が維持可能な方法を得ることを課題とし、
既設の管状構造物の内周面を更生する方法であって、
前記内周面に複数の支持具を固定することと、
複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることと
を含み、
前記複数の支持具の各々は、前記複数の更生パネルのうちの少なくとも隣接する第1のパネルと第2のパネルとを支持することが可能であるように構成されており、
前記複数の支持具に前記複数の更生パネルを取り付けることとは、
前記環状構造物の周方向に前記複数の更生パネルを配置することと、
前記環状構造物の周方向に並ぶ前記第1の更生パネルと前記第2の更生パネルとの間をシールすることと
を含み、
前記第1のパネルと前記第2の更生パネルとの間をシールすることは、
前記第1のパネルと前記第2の更生パネルとの間に、電熱線を含む目地材を配置することと、
前記電熱線への通電により前記目地材を前記第1の更生パネルと前記第2の更生パネルとに融着させることにより、前記第1の更生パネルと前記第2の更生パネル同士を固定することと
を含む、方法を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0020】
従って、本発明の更生方法は、既設の管状構造物の内周面を更生するものであって、既設の管状構造物の内周面に固定可能な複数の支持具を備え、これらの支持具の各々が、複数の更生パネルのうちの少なくとも隣接する第1の更生パネルと第2の更生パネルとを配置し、第1の更生パネルと第2の更生パネルとの間の隙間を、電熱線を含む目地材で充填するとともに、目地材で第1の更生パネルと第2の更生パネル同士を固定するものであれば、その他の構成は特に限定されるものではない。
【0021】
(既設の管状構造物)
既設の管状構造物の内周面の構造は、液体を流す流路として機能する形状であれば、任意であり得る。例えば、既設の管状構造物の内周面は、軸方向に垂直な断面の形状として円形、楕円形、菱形、平行四辺形、多角形四角形(六角形、八角形など)を有するものでもよい。さらに、既設の管状構造物の内周面は、管状構造物の軸方向に垂直な断面の形状として、馬蹄形などの形状を有していてもよい。なお、断面形状を馬蹄形にした既設の管状構造物の内周面は、U字溝のような上面壁が存在しないものであるが、ここでは、既設の管状構造物の内周面の構造は、このような上面壁の存在しない構造も含むものである。
【0022】
既設の管状構造物の材料は、鉄、ステンレスなどの金属材料でもよいし、コンクリート材でも樹脂材でもよい。また、コンクリート製の既設の管状構造物は、鉄筋を含むものでもよいし、金属製あるいは樹脂製の補強シート、炭素繊維で構成された補強シートなどの補強材を含むものでもよい。また、既設の管状構造物は、既設管の一部でもよいし、あるいは、既設管の全体でもよい。
【0023】
なお、以下の説明では、既設管のうちの更生の対象となる一部あるいは全部を既設管の被更生部ともいう。
【0024】
(更生パネル)
更生パネルは、既設管の修復用部材として使用される平板状体ものである。更生パネルの材質は、任意であり得る。例えば、金属製であってもよいし、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂製であってもよい。好ましくは、PP(ポリプロピレン)であり、さらに好ましくは、強度アップを目的にグラスファイバー、アラミド繊維、ケブラー繊維、ボロン繊維や炭素繊維などを含むFRP(繊維強化プラスチック)ものである。また、複数の更生パネルを使用する場合、それぞれ同じ材質であってもよいし、異なる材質を用いる場合であってもよい。
【0025】
さらに、更生パネルの形状や大きさは、任意であり得る。更生パネルは、例えば、長方形(短冊状など)の形状を有している。この場合、更生パネルは、長方形の長辺が管状構造物の軸方向に沿って延び、かつ、長方形の短辺が内周面に沿った内周方向に沿って延びるように配列されるのが好ましい。ここで、複数の更生パネルの各々に対して長方形のサイズは同一であるが、異なっていてもよい。また、複数の更生パネルの各々に対して長方形のサイズは横幅が異なっていてもよいし、長さが異なっていてもよいし、横幅および長さの両方が異なっていてもよい。
【0026】
例えば、1つの実施形態において、長方形からなる更生パネルのサイズは、短辺の長さが約50mm~約200mm、長辺の長さが約2500mm~約3000mmの短冊状である。このようなサイズ・形状とすることにより、既設管のサイズの変化に応じて更生パネルを選択することができ、任意のサイズの既設管に対応することが可能となる。
【0027】
更生パネルは、既設管の被更生部の内周面に沿った周方向および/または軸方向の両端部に、それぞれ支持具の係合部と係合する被係合部を有している。被係合部の形状など任意の形状であり得る。凸部であってもよいし凹部であってもよい。
【0028】
なお、被係合部を配置する位置は任意であり得る。例えば、更生パネルの略中央部に設けても良いが、好ましくは両端部にそれぞれ設けることが好ましい。そのようにすることでより確実に更生パネルを支持具に固定することが可能となる。
【0029】
(支持具)
支持具は、更生パネルを支持するものであって、既設の管状構造物の内周面に固定されるものである。既設の管状構造物の内周面全体を覆うには、支持具は複数設けられる。複数の支持具は、既設の管状構造物の一部あるいは全部(既設管の被更生部)の内周面に固定可能に構成され、複数の更生パネルのうちの少なくとも隣接する2つ更生パネル(第1の更生パネルと第2の更生パネル)を支持可能なものであればよく、その他の構成は限定されず、任意であり得る。
【0030】
例えば、複数の支持具の各々は、隣接する2つの更生パネルを支持する支持機構と、管状構造物の内周面と隣接する2つの更生パネルとの間の距離を調整可能な調整機構とを備えることが好ましい。上述の調整機構を備えることにより、例えば、既設管の被更生部の内周面の一部が凹んでいたり迫り出していたりしていたとしても、内周面と個々の更生パネルとの間の距離を調整することにより、既設管の被更生部の内周面の凸凹に拘わらず、更生パネルの表面が平坦になるように支持することができる。
【0031】
また、支持機構は、既設管の被更生部の内周面に固定される基部と、隣接する2つの更生パネルを係合するための係合部を有する本体と、本体を基部に連結するための連結部とを有するものでもよい。このような構成にすることにより、基部と本体部との連結部に、例えば、着脱可能な締結部材を用いることで、基部と本体部との相対位置を変えてこれらを固定することが可能となり、調整機構を簡単に実現できる。
【0032】
ただし、支持機構は、既設管の被更生部の内周面に固定される基部と、隣接する2つの更生パネルに係合するための係合部とが1部品で構成されており、上記のような連結部(基部と第の係合部との連結部)を含まないものでもよい。この場合、支持機構の構成は簡単なものとなる。
【0033】
係合部は、隣接する2つの更生パネルに係合可能であれば、その形状・構造などは任意であり得る。例えば、係合部は、隣接する2つの更生パネル(例えば、第1の更生パネルの一方端部および第2の更生パネルの他方端部)と係合可能に構成されている。例えば、隣接する2つの更生パネル(第1の更生パネルの一方端部および第2の更生パネルの他方端部)が凹部を有している場合には、係合部はその凹部と係合可能な凸部であり得る。また、隣接する2つの更生パネル(第1の更生パネルの一方端部および第2の更生パネルの他方端部)が凸部を有している場合には、係合部はその凸部と係合可能な凹部であり得る。1つの支持具に、係合部を複数備えていてもよい。上記関係は、例えば、第2の更生パネルの一方端部と第3の更生パネルの他方端部との関係においても同様である。
【0034】
また、係合部は、隣接する更生パネル(第1の更生パネルの一方端部と第2の更生パネルの他方端部)とを係合させた状態において、隣接する更生パネル(第1の更生パネルの一方端部と第2の更生パネルの他方端部)との間に隙間を形成する隙間形成部を備えるのが好ましい。
【0035】
また、係合部は、隣接する更生パネルそれぞれの被係合部をスライド挿入可能なように構成されている。詳細には、係合部は隣接する更生パネルの被係合部(例えば、第1の更生パネルの一方端部に形成される凸部および第2の更生パネルの他方端部に形成される凸部)が既設管の被更生部の軸方向(更生パネルの長手方向)に沿って挿通可能なように、既設管の被更生部の軸方向に沿った貫通部を有する。
【0036】
環状に配置された複数の支持具は、既設管の軸方向および/または周方向に沿った複数の位置に設けられていることが好ましい。これにより更生パネルを支持する力をより多くの支持具で分散して受け持つことができ、1つの支持具にかかる力をより低減することができる。
【0037】
(目地材)
目地材は、隣接する更生パネルの間の隙間を埋めてシール(止水効果)を持たせる部材である。目地材は、軟質部材を含むものであって、軟質な樹脂(例えば、熱可塑性エラストマー樹脂やウレタンゴム、シリコンゴムといったゴム系材料)であり得る。好ましくは、目地材は電熱線を含むものである。このように電熱線を含む目地材とすることで、環状構造物の軸方向および/または周方向において隣接する更生パネルの間の隙間に充填し、電熱線に通電することにより目地材を隣接する更生パネルに融着させることで、従来の嵌合による固定に比べてより強固に固定することが可能となる。その結果、地震動などにより隣接する既設管の継手部分で、対向する既設管の被更生部の中心軸がずれた場合でも、隣接する既設管の一方の被更生部に含まれる更生パネルと、隣接する既設管の他方の被更生部に含まれる更生パネルとの隙間が、目地材で塞がれた状態を維持することができる。これにより、隣接する既設管の継手部分で、一方の既設管の被更生部の中心軸と他方の既設管の被更生部の中心軸とのずれにより、一方の既設管の更生パネルと他方の既設管の更生パネルとの隙間のシール(止水効果)が破損するのを回避できる。また、更生パネルが、樹脂製パネルである場合においては、目地材の熱線への通電による発熱が樹脂パネルにも伝わり、樹脂パネルの一部も溶融させることでさらに強固に固定することが可能となる。
【0038】
目地材の形状などは任意であり得る。例えば、平板状であってもよいし、頭部と、頭部と略垂直方向に延びる軸部とからなる部材であってもよい。頭部と頭部略垂直方向に延びる軸部とからなる場合には略T字状であってもよいし、略I字状であってもよい。目地材の形状を略T字状とすることにより、隣接する更生パネルの間の隙間に略T字状の軸部を挿入することでより、隣接する更生パネル同士をより強固に固定することが可能となる。なお、電熱線を目地材のどの部分に設けるかは任意であり得る。例えば、目地材の形状が略T字状の場合において、頭部のみに設けても良いし、頭部と軸部とに設けても良い。
【0039】
なお、目地材は略I字状の軸部からなり、電熱線を軸部に設ける場合であってもよい。
【0040】
隣接する更生パネルの間に配置する目地材の個数などは任意であり得る。
(充填材)
ここで、充填材は、一般にセメント、水および砂を混合したモルタルである。ただし、充填材はモルタルには限定されず、セメント、水、および砂にさらに砂利を混合したコンクリートでもよいし、あるいは、モルタルに樹脂性混和剤を混ぜた樹脂モルタルでもよい。上述した支持具、更生パネル、および充填材を用いて既設の管状構造物の内周面を構成する方法(更生方法)は、内周面に支持具を固定すること、固定した支持具に更生パネルを取り付けることを含むものであれば、その他の工程は限定されるものではなく、任意であり得る。例えば、この更生方法では、既設の管状構造物の被更生部(既設の管状構造物における更生の対象となる部分)の全周に渡って、支持具の固定および更生パネルの取付けを行った後に、更生パネルと内周面との間に充填材を注入するようにしてもよい。
【0041】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0042】
(実施形態)
図1は、本発明の既設の管状構造物を更生する方法によって更生された更生管1000を示す図である。
図1(a)は、既設管10の被更生部10aの内周面に支持具120および複数の更生パネル100を取り付け、隣接する更生パネル100の間に目地材150を配置することによってシール作業が完了した状態を示し、
図1(b)は、既設管10の被更生部10aと複数の更生パネル100との間にモルタル180を注入した状態を示す。なお、モルタルを注入する際には、モルタルが固まるまでの間、モルタルの自重で更生パネル100が内側に迫り出さないように更生パネル100を支持する型枠部材を配してもよい。この型枠部材は、モルタルが固まった後は取り外される。これにより既設管10の被更生部10aを更生する作業が完了し、既設管10の被更生部10aが更生された更生管1000が得られる。
【0043】
このように実施形態1の更生管1000では、既設管(既設の管状構造物であってもよい)10における更生の対象となる部分(被更生部)10aの内周面に複数の支持具120を固定し、被更生部10aの内周面に沿って既設管の軸方向および/または周方向に沿って複数の更生パネル100を複数の支持具120に取り付けるようにしている。そして、隣接する更生パネル100の間に電熱線を有する目地材150を配置し、電熱線に電気を通すことによって目地材150が隣接する更生パネル100に溶着することによって、隣接する更生パネル100同士が、強固に固定されることが可能となる。
【0044】
また、複数の支持具120の各々は、既設管10の内面に垂直な方向の寸法が調整可能なるように伸縮自在の構造となっているので、既設管10の内面の凸凹、あるいは更生パネルの板取寸法に拘わらず、更生パネルを既設管10の内面に対して平坦に取り付けることができる。
【0045】
図2は、本発明における更生パネルを固定する支持具と更生パネルとの接続構造を示す図である。
図2は、既設管の周方向が紙面の左右方向であり、軸方向が紙面の直交方向となっている。
【0046】
図2に示す様に、被更生部10aの内周面に支持具120が固定される。支持具120は被更生部10aの内周面に固定される基部120aと隣接する更生パネル100(第1の更生パネル100aと第2の更生パネル100b、もしくは第2の更生パネル100bと第3の更生パネル100c)を支持する本体120bと基部120aと本体120bとを連結する連結部120cとを有する。また、本体120には、隣接する更生パネル100と係合する係合部を有する。係合部は、隣接する第1の更生パネル100aの一方端部102と第2の更生パネル100bの他方端部103と係合する第1の係合部122aを有するとともに、隣接する第2の更生パネル10bの一方端部104と第3の更生パネル100cの一方端部105と係合する第2の係合部122bを有している。また、第1係合部122aには隣接更生パネル100aと更生パネル100bとの間に第1の隙間S1を形成する第1の隙間形成部123aが設けられており、第2係合部122bには隣接する更生パネル100bと更生パネル100cとの間に第2の隙間S2を形成する第2の隙間形成部123bが形成されている。
【0047】
そして、支持具120の係合部(第1の係合部122aと第2の係合部122b)は、既設管の軸方向(
図2の紙面と垂直方向)に貫通部を有している。
【0048】
本発明の支持具は上述のような係合部(第1の係合部122aと第2の係合部122b)を有していることから、第2の更生パネル100bの他方端部113を第1の係合部122aに第2の更生パネル100bの一方端部114を第2の係合部123bに係合するように既設管の軸方向(
図2の紙面と垂直方向)からスライド挿入することで支持具120に第2の更生パネル100bを固定することが可能となる。同様に第1の更生パネルの一方端部102を第1の係合部122aに既設管の軸方向(
図2の紙面と垂直方向)からスライド挿入することで固定ことが可能となる。さらに、第1の更生パネルの他方端部101を係合する第3の係合部122cを設けることにより、第3の係合部および第1の係合部の協働によって、さらに簡単に第1の更生パネル100aを係合部に既設管の軸方向(
図2の紙面と垂直方向)から挿通固定することを可能とする。なお、
図2においては1つの支持具120において第1の係合部122a、第2の係合部122bおよび第3の係合部122cを備える場合を説明したが、1つの支持具において係合部を3つ以上設けても良いし、1つの支持具に係合部を1つだけ有するものとし、隣接する複数の支持具によって同様の構造を形成するようにしてもよい。
【0049】
本発明では、このように更生パネル100を支持具120に対して既設管の軸方向からスライド挿入することで固定する方式を採用することによって、従来の隣接する更生パネル同士を嵌合で固定する場合に比べて、外部から大きな外力を受けても係合部での係合が解除されることが防止され、より高い止水効果を得ることが可能となる。
【0050】
図3は、本発明における周方向に配置された第1の更生パネルと第2の更生パネルとを取り付けた部分を、第1の実施形態の目地材を用いてシールする工程を説明する図である。
【0051】
図3には、隣接する更生パネルの間に配置される目地材150を示す。目地材150は頭部150aと頭部150aに略直交する軸部150bとを有している。また、頭部150aには電熱線160を有している。なお、電熱線160は頭部150aだけでなく軸部150bに設けても良い。
【0052】
目地材150を第1の更生パネル100aと第2の更生パネル100bの間に形成される第1の隙間S1に充填する。同様に目地材150を第2の更生パネル100bと第3の更生パネル100cの間に形成される第2の隙間S2に充填する。そして、目地材150の充填後に目地材150の電熱線160への通電により、可撓性のある樹脂からなる目地材150が溶融しその両側に位置する更生パネル(第1の更生パネル100aと第2の更生パネル110b、第2の更生パネル100bと第3の更生パネル100c)とを融着することとなる。これにより従来の隣接する更生パネル同士を嵌合で固定する場合に比べて、強固に固定できるとともにより高い止水効果を得ることが可能となる。
【0053】
なお、
図4に示す目地材150とは別の実施形態としての目地材を
図5に示す。目地材151は、頭部151aと頭部151aに略垂直方向に延びる軸部151bを有し、電熱線161を頭部151aに備える点で、
図4の目地材150と共通するが、形状が略T字状ではなく略I字状である点で異なる。
【0054】
また別の実施形態としての目地材として、目地材152が採用し得る。目地材152は頭部を有さず軸部152bからなり、電熱線162を軸部152bに備えている。
【0055】
本発明は、上記に限らず様々な形状の目地材を採用し得る。そして、様々な目地材の形状などに応じて第1の構成パネル100aと第2の更生パネル100bの端部の形状も任意の形状を採用し得る。
【0056】
図5は、本発明における軸方向に配置された第1の更生パネルと第2の更生パネルとを取り付けた部分を、目地材を用いてシールする工程を説明する図である。
【0057】
図5に示す様に、既設管のつなぎ目に形成された隙間S3を挟んで対向する2つの被更生部10aの一方である第1の更生パネル100aと、対向する2つの被更生部10aの他方の第2の更生パネル100bとの隙間を、目地材を用いてシールする方法を説明するための図である。
【0058】
図5に示すように、既設管のつなぎ目S3を挟んで対向する2つの被更生部10aの一方の第1の更生パネル110aと、対向する2つの被更生部10aの他方の第2の更生パネル110との隙間S3に目地材150が充填されている。この目地材150には、電熱線160が設けられており、電熱線160への通電による発熱により目地材150の可撓性のある樹脂が溶融して、隣接する第1の更生パネル100aと第2の更生パネル100bの両方に融着することとなる。このように目地材150が既設管の軸方向に隣接する第1の更生パネル100aと第2の更生パネル100bとに融着した状態では、地震動などにより既設管のつなぎ目の隙間S3を挟んで対向する2つの被更生部の一方と他方(図示せず)とで軸方向がずれた場合でも、目地材150が対向する2つの被更生部の両方に融着した状態は維持することが可能となる。したがって、従来の隣接する更生パネル同士を嵌合固定する場合に比べて、より強固に固定することが可能であり、その結果高い止水効果を得ることが可能となる。
【0059】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、既設の管状構造物の内周面上に固定される更生パネルを含む更生体として、既設の管状構造物に対する更生パネルの固定強度を高めることができる更生体を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0061】
10 既設管
10a 被更生部
1000 更生管
100 更生パネル
100a 第1の更生パネル
101 第1の更生パネルの一方端部
102 第1の更生パネルの他方端部
100b 第2の更生パネル
103 第2の更生パネルの一方端部
104 第2の更生パネルの他方端部
100c 第3の更生パネル
105 第3の更生パネルの一方端部
120 支持具
122 係合部
122a 第1の係合部
122b 第2の係合部
122c 第3の係合部
123a 第1の隙間形成部
123b 第2の隙間形成部
150 目地材
150a 頭部
150b 軸部
160 電熱線
S1 第1の隙間
S2 第2の隙間
S3 つなぎ目