(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137096
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】摺動部材
(51)【国際特許分類】
C25D 7/00 20060101AFI20240927BHJP
C22C 9/00 20060101ALI20240927BHJP
B32B 7/08 20190101ALI20240927BHJP
B32B 15/01 20060101ALI20240927BHJP
F16C 33/12 20060101ALI20240927BHJP
F16C 33/14 20060101ALI20240927BHJP
C25D 5/12 20060101ALI20240927BHJP
C22C 19/05 20060101ALN20240927BHJP
B22F 7/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C25D7/00 C
C22C9/00
B32B7/08
B32B15/01 D
F16C33/12 A
F16C33/14 Z
C25D5/12
C22C19/05 Z
B22F7/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048474
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】原田 英征
(72)【発明者】
【氏名】辻本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 祐磨
(72)【発明者】
【氏名】前川 優平
【テーマコード(参考)】
3J011
4F100
4K018
4K024
【Fターム(参考)】
3J011AA20
3J011DA01
3J011LA04
3J011QA03
3J011SB15
3J011SB20
3J011SE10
4F100AB01A
4F100AB16B
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4K018AA03
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4K024DA03
4K024GA01
(57)【要約】
【課題】Biを除去するための工数を低減しつつ、ライニング層と被覆層との接着力を向上する摺動部材を提供する。
【解決手段】本実施形態の摺動部材10は、Bi相17を含むライニング層11と、Niを含み、ライニング層11の表面に設けられ、ライニング層11との界面16において一部がライニング層11側へ侵入した侵入部19を形成している被覆層12と、を備える。ライニング層11と被覆層12との界面16を含む任意の観察領域20において、ライニング層11に含まれるBi相17の最大面積S1と、ライニング層11に侵入した侵入部19の最大面積S2との比の値R=S1/S2は、1.00≦R≦9.00である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bi相を含むライニング層と、
Niを含み、前記ライニング層の表面に設けられ、前記ライニング層との界面において一部が前記ライニング層側へ侵入した侵入部を形成している被覆層と、
を備える摺動部材であって、
前記ライニング層と前記被覆層との界面で前記侵入部を含む任意の観察領域において、前記ライニング層に含まれる前記Bi相の最大面積S1と、前記ライニング層に侵入した前記侵入部の最大面積S2との比の値R=S1/S2は、1.00≦R≦9.00である、
摺動部材。
【請求項2】
前記Bi相の最大面積S1は、
S1≦810μm2である、
請求項1記載の摺動部材。
【請求項3】
前記侵入部の最大面積S2は、
20μm2≦S2≦90μm2である、
請求項1記載の摺動部材。
【請求項4】
前記ライニング層に含まれるBiの濃度Cは、
0.1mass%≦C≦1.5mass%である、
請求項1記載の摺動部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Cu基のライニング層の表面にオーバレイ層が設けられた摺動部材が公知である(特許文献1)。特許文献1では、ライニング層に含まれる第2相成分を、ライニング層の表面から除去することにより、ライニング層とオーバレイ層との接合力の向上を図っている。また、オーバレイ層の安定を図るために、ライニング層の表面にNiの被覆層を設けることも開示されている。
しかしながら、ライニング層に含まれる第2相成分であるBiは、適用される機器の運転時における温度条件によっては、被覆層との界面においてBi-Ni化合物を生成する。このBi-Ni化合物は、ライニング層と被覆層との間の接着力の低下を招く原因となる。そのため、特許文献1のような構成を採用する場合、ライニング層の表面、すなわち被覆層と接する表面に存在するBi相を徹底的に除去する必要がある。このBi相の除去は、例えば酸を用いた洗浄、および超音波を照射する超音波洗浄など、長時間の洗浄を必要とし、大きな工数を必要とするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、Biを除去するための工数を低減しつつ、ライニング層と被覆層との接着力を向上する摺動部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために本実施形態の摺動部材は、Bi相を含むライニング層と、Niを含み、前記ライニング層の表面に設けられ、前記ライニング層との界面において一部が前記ライニング層側へ侵入した侵入部を形成している被覆層と、を備える。前記ライニング層と前記被覆層との界面を含む任意の観察領域において、前記ライニング層に含まれる前記Bi相の最大面積S1と、前記ライニング層に侵入した前記侵入部の最大面積S2との比の値R=S1/S2は、1.00≦R≦9.00である。
【0006】
本実施形態の摺動部材は、Bi相の最大面積S1と侵入部の最大面積S2との比の値Rを設定している。洗浄などによってBi相が除去されると、ライニング層は除去されたBi相に対応する凹部が形成される。そのため、この除去されたBi相に相当する凹部は、被覆層を形成するNiまたはNi合金によって置換される。これにより、Bi-Ni化合物の生成は低減される。また、ライニング層にBi相の一部が残存しても、Bi相の除去で形成された凹部にNiまたはNi合金が侵入部として侵入する。そのため、凹部に侵入した侵入部は、ライニング層に食い込んだ状態となる。その結果、被覆層は、所定の形状でライニング層に引っ掛かった状態となり、Bi-Ni化合物が形成されてもライニング層からの剥離が低減される。これらにより、ライニング層に含まれるBi相の洗浄が不十分であっても、ライニング層と被覆層との間の接合力は確保される。したがって、Biを除去するための工数を低減しつつ、ライニング層と被覆層との接着力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態による摺動部材の断面を示す模式図
【
図4】一実施形態による摺動部材の実施例および比較例の評価結果を示す概略図
【
図5】一実施形態による摺動部材の実施例の評価結果を示す概略図
【
図6】一実施形態による摺動部材の実施例の評価結果を示す概略図
【
図7】一実施形態による摺動部材の実施例の評価結果を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態による摺動部材を図面に基づいて説明する。
図1に示すように摺動部材10は、ライニング層11および被覆層12を備えている。摺動部材10は、例えば円筒状または半割状に形成され、軸受装置などに用いられる。ライニング層11は、裏金層13の一方の端面に設けられている。また、摺動部材10は、被覆層12の裏金層13と反対側に、さらにオーバレイ層14を備えている。つまり、被覆層12は、ライニング層11とオーバレイ層14との間に設けられた中間層である。オーバレイ層14の表面は、図示しない相手材と摺動する摺動面15を形成する。なお、摺動部材10は、2分割した筒状の半割状に限らず、周方向へ3つ以上に分割してもよい。
【0009】
ライニング層11は、Cu基の合金で形成されている。ライニング層11は、Cuを主成分とし、Biを含んでいる。ライニング層11は、0.1~2.0mass%のBiを含んでいる。Biは、例えば形成されたライニング層11の切削や研磨などの機械的な加工時において加工性の向上に寄与する。ライニング層11は、Cu基合金に限らず、Sn基合金やAl基合金であってもよい。オーバレイ層の厚さは、10μm~30μmに設定することが好ましい。ライニング層11の場合は、0.1mm~1.5mmに設定することが好ましい。この場合、被覆層12の厚さは、1μm~5μmに設定することが好ましい。
【0010】
被覆層12は、Niで形成されている。被覆層12は、Ni合金であってもよい。この場合、被覆層12は、Niに30mass%以下のCrなどを含んでいてもよい。被覆層12は、ライニング層11の裏金層13と反対側の面に例えばめっきなどによって形成される。ライニング層11と被覆層12との境界は、界面16である。裏金層13は、例えば鋼などのように、Feを主成分とする合金で形成されている。ライニング層11と裏金層13との間には、図示しない中間層など1つ以上の層を設けてもよい。オーバレイ層14は、例えばSnまたはSnを主成分とする合金で形成されている。なお、オーバレイ層14は、SnまたはSn基の合金ではなく、その他の元素または合金であってもよい。
【0011】
ライニング層11は、その組織中に、
図2に示すようにCu基の合金に添加されるBiを由来とするBi相17を含んでいる。Bi相17は、Cu基の合金の組織中に含まれているものの他、界面16に露出するものも存在する。ライニング層11は、裏金層13の表面に形成された後、例えば酸や水などによって洗浄される。これにより、ライニング層11に含まれているBi相17のうち、界面16に露出するBi相17は、洗浄によって大部分が除去される。ライニング層11と被覆層12との間の界面16は、概ね平坦に形成することが好ましい。但し、この界面16は、平坦に限るものではない。ライニング層11の界面16においてBi相17が除去されると、このBi相17が除去された部分はライニング層11側へ窪んだ凹部18を形成する。この凹部18を含む界面16に、例えばめっきなどによってNiまたはNi合金の被覆層12を形成すると、被覆層12を構成するNiまたはNi合金は一部がライニング層11の凹部18に侵入する。すなわち、界面16においてBi相17の除去によって形成された凹部18は、被覆層12を形成するNiまたはNi合金が充填される。これにより、被覆層12は、ライニング層11との界面16において、一部がライニング層11側へ侵入した侵入部19を形成する。この侵入部19は、ライニング層11と被覆層12との界面16よりも裏金層13側のライニング層11の内側へ食い込んでいる。
【0012】
本実施形態では、
図1および
図2に示す任意の観察領域20において、ライニング層11に含まれるBi相17の最大面積S1と、ライニング層11に侵入した侵入部19の最大面積S2とが測定される。比の値Rは、測定された最大面積S1および最大面積S2を用いて、R=S1/S2として算出される。観察領域20は、本実施形態の場合、ライニング層11と被覆層12との界面16を含む断面において、侵入部19を含む任意の範囲として設定される。観察領域20の寸法は、例えば厚さ方向へ450μm×幅600μmの範囲として設定される。なお、この観察領域20の寸法は、例示であり、侵入部19を観察できる範囲において任意の寸法に設定することができる。
【0013】
ライニング層11に含まれるBi相17の最大面積S1は、この観察領域20に含まれるBi相17のうち面積が最大であるBi相の面積である。Bi相17の面積は、界面に存在したであろう粒子の面積とライニング層11の内側に含まれている粒子の面積とが相関する。ここで、Bi相17の最大面積S1は、ライニング層11の内側に含まれているBi相17の粒子に基づいて測定される。例えば
図2に示すように観察領域20に複数のBi相17の粒子が含まれているとき、面積が最大となるBi相17の面積が最大面積S1である。観察領域20は、摺動部材10の軸に沿った方向、または軸に垂直な方向など、厚さ方向に切断した断面であり、侵入部19を観察できる範囲であれば任意の向きに設定することができる。また、この場合、観察領域20は、上述の厚さ方向へ450μm×幅600μmのように、ライニング層11の厚さ方向の長さに比較して、これに垂直な幅方向の長さを大きく設定している。
【0014】
侵入部19は、
図3に示すように侵入部19の界面16側の頂点21、22を仮想的な直線Lで結び、この直線Lよりもライニング層11側の領域として定義する。すなわち、侵入部19は、
図3において網掛けを施した領域である。そして、この直線Lよりもライニング層11側の領域の面積は、侵入部19の面積である。
図2に示すような観察領域20において複数の侵入部19が観察されるとき、これらの侵入部19のうち面積が最大の侵入部19の面積は、最大面積S2である。これらによって求められた最大面積S1および最大面積S2から、比の値Rは算出される。本実施形態では、比の値Rは、1.00≦R≦9.00である。
【0015】
ライニング層11に含まれるBi相17は、その最大面積S1がS1≦810μm2であることが好ましい。Bi相17の最大面積は、このように設定すれば、ライニング層と被覆層との接着力をより向上する。また、Bi相17は、例えばライニング層11の切削などの加工時における加工性の向上のために必須である。そこで、ライニング層11の加工性を担保するための観点から、Bi相17の最大面積S1は、20μm2≦S1であることが好ましい。ライニング層11に含まれるBi相17の最大面積S1は、S1≦810μm2であることが好ましい。侵入部19の最大面積S2は、20μm2≦S2≦90μm2であることが好ましい。このようにBi相17の最大面積S1を設定することにより、ライニング層11の切削などの加工時における加工性の向上と被覆層12との接着力の向上とを両立することができる。
【0016】
ライニング層11の表面にNiを含む被覆層12を形成する場合、ライニング層11に添加されているBi17が被覆層12に露出すると、Bi相17のBiが被覆層12へ拡散する。例えば摺動部材10の温度が100℃~250℃にあるとき、ライニング層11に含まれるBi相17のうち界面16で被覆層12と接するBiは被覆層12側へ拡散する。そのため、界面16付近には、ライニング層11を由来とするBiと被覆層12を由来とするNiとからBi-Ni化合物が生成しやすくなる。このBi-Ni化合物は、ライニング層11と被覆層12との接着力を低下させる。したがって、従来の場合、ライニング層11の界面16は、Bi相17の残留を避けてほぼ全量のBi相を除去するために大きな工数で徹底した高度な洗浄が必要となっている。
【0017】
一方、本実施形態では、ライニング層11の界面16は洗浄されるものの、従来のような高度な洗浄は必要としない。本実施形態の場合、界面16に露出するBi相17は、大部分が例えば酸による簡便な洗浄によって除去される。そして、ライニング層11は、界面16においてBi相17が除去されることにより、界面16に凹部18を形成する。ライニング層11に積層される被覆層12は、ライニング層11に形成された凹部18へ入り込み、侵入部19を形成する。これにより、形成された被覆層12は、侵入部19がライニング層11に侵入して噛み合った状態となる。本実施形態では、比の値Rを1.00≦R≦9.00と設定している。これにより、除去できなかったBi相17が凹部18に残存する場合でも、ライニング層11に侵入した侵入部19がライニング層11と充分に噛み合い、ライニング層11と被覆層12との界面16における強度つまり接着力が向上する。したがって、Bi相17を除去するための工数を低減しつつ、ライニング層11と被覆層12との接着力を向上することができる。
【0018】
次に、本実施形態の摺動部材10の製造方法について説明する。
ライニング層11は、Cu基の合金にBi相17が微細に分散している。このようなライニング層11は、例えば焼結を用いることによって形成される。焼結は、ライニング層11を形成するCu基合金の主成分となる青銅の粉末とBi相17を形成するBiの粉末とを混合して実行される。ライニング層11におけるBi相17の粒子の大きさは、材料として用いるBi粉末の粒度を変更することにより制御される。Bi相の粒子の大きさは、例えば粒度として75μm以下や38μm以下などで分級された粒子を配合することにより調整される。
【0019】
これら混合した粉末を焼結する一次焼結において、焼結温度は従来の焼結温度の4/5程度である600℃~800℃に設定される。これにより、粉末の一次焼結において、比較的細かいネック形成での粉末同士の結合にでき、Cu基のライニング層11は多孔質となる。その結果、一次焼結後のライニング層11に含まれるBi相17の粒子は、ライニング層11の多孔質の部分に微細に分散した状態で存在する。その後、例えば圧延などの後処理を施し、ライニング相11を作製した。
【0020】
後処理が施されたライニング層11は、界面16における酸化被膜の除去を目的として酸による洗浄が行なわれる。これにより、ライニング層11に含まれるBi相17は、イオン化傾向の違いによって、ライニング層11の主成分であるCuに先立って除去される。界面16においてBi相17が除去された部分は、凹部18を形成する。酸により洗浄されたライニング層11は、水洗などが行われた後、被覆層12が形成される。被覆層12は、例えばNiまたはNi合金のめっきによって形成される。本実施例の場合、ライニング層11は、酸および水による洗浄の他に厳密な洗浄が施されない。つまり、本実施形態のライニング層11は、凹部18などに微量のBiが残存していてもよい。めっきなどによって形成された被覆層12は、一部が凹部18へ侵入する。これにより、被覆層12は、ライニング層11側へ侵入した侵入部19を形成する。
【0021】
以下、本実施形態の摺動部材10の実施例について説明する。
実施例および比較例では、摺動部材10はライニング層11と被覆層12との接着強度に基づいて評価した。接着強度の評価は、めっきの接着強度を評価するための「JIS K5600-5-6」に規定されているクロスカット評価によって行なった。当該規定によるクロスカット評価の実施の前に設定した熱処理温度と時間との条件は、厳しい評価条件であることから、「分類0」、「分類1」および「分類2」を合格とした。実施例および比較例の試験片は、上述の製造方法に基づいて作成した後、使用条件を再現するために150℃で500hrの熱処理を加えた後、接着強度を評価した。
【0022】
図4は、比の値Rが接着強度に与える影響の評価を示している。実施例1~実施例3および比較例1は、いずれもライニング層11に含まれるBiの濃度Cを、2.0mass%としている。実施例1~実施例3に示すように、比の値Rは、1.00≦R≦9.00の範囲であれば、「分類2」であり、接着強度に影響を与えないことがわかる。一方、比の値Rが9.00より大きな比較例1は、「分類3」となり、接着強度が低下することがわかる。比の値Rの下限は、摺動部材10の加工性、特に切削性を考慮して、1.00としている。
【0023】
図5は、Bi相17の最大面積S1が接着強度に与える影響の評価を示している。実施例4~実施例7は、いずれもライニング層11に含まれるBiの濃度Cを、2.0mass%としている。実施例4~実施例7に示すように、比の値Rが一定であれば、Bi相17の最大面積S1は、小さいほど接着強度が高いことを示している。但し、上述のように、Bi相17の最大面積S1は、小さくなりすぎるとライニング層11の加工性に影響する。そのため、Bi相17の最大面積S1は、20μm
2以上とすることが好ましい。
【0024】
図6は、侵入部19の最大面積S2が接着強度に与える影響の評価を示している。実施例8~実施例11は、いずれもライニング層11に含まれるBiの濃度Cを、2.0mass%としている。実施例8~実施例11に示すように、比Rが一定であれば、侵入部19の最大面積S2は、小さいほど接着強度が高いことを示している。
【0025】
図7は、ライニング層11へ添加されるBiの濃度Cが接着強度に与える影響の評価を示している。比の値Rが一定であれば、濃度Cは、小さいほど接着強度が高いことを示している。但し、上述のように、Biの濃度はライニング層11の加工性に影響する。そのため、ライニング層11は、Biを添加するのが前提であり、実用上の観点から、下限値を0.1mass%としている。
【0026】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0027】
図面中、10は摺動部材、11はライニング層、12は被覆層、17はBi相、19は侵入部、20は観察領域を示す。