(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137105
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E05D 13/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
E05D13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048493
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖山 龍生
(72)【発明者】
【氏名】村山 徳和
【テーマコード(参考)】
2E032
【Fターム(参考)】
2E032FA03
2E032FC02
2E032FD03
(57)【要約】
【課題】組立作業を煩雑化することなく障子の不用意な脱落を防止する。
【解決手段】枠体10に対して左右方向に移動可能に配設された障子20A,20Bを備え、障子20A,20Bの上部には、上下方向に沿った長孔34を介してネジ部材40を螺合することにより外れ止め部品30が設けられた建具であって、障子20A,20Bの縦框22,23には、外れ止め部品30の両側に位置する部分に互いに対向する2つの対向壁部22b,23gが設けられ、外れ止め部品30には、長孔34の開口範囲に対応する領域において対向壁部22b,23gのそれぞれに圧接される弾性係合片35が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に対して左右方向に移動可能に配設された障子を備え、
前記障子の上部には、上下方向に沿った長孔を介してネジ部材を螺合することにより外れ止め部品が設けられた建具であって、
前記障子の框には、前記外れ止め部品の両側に位置する部分に互いに対向する2つの対向壁部が設けられ、
前記外れ止め部品には、前記長孔の開口範囲に対応する領域において前記対向壁部の少なくとも一方に圧接される弾性係合片が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記外れ止め部品には、前記対向壁部をガイドとしてスライド可能となるスライドガイド部が前記長孔の開口範囲に対応する領域外となる部分にまで設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記外れ止め部品には、前記対向壁部のそれぞれに圧接するように前記弾性係合片が互いに対称となるように2つ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記弾性係合片は、前記対向壁部に対して傾斜するように延在していることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項5】
前記外れ止め部品には、前記弾性係合片から互いに等距離となる位置に前記長孔が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項6】
前記対向壁部は、前記障子を構成する縦框において見付け方向に延在し、かつ前記障子の内周側となる縁部の間が見込み方向に延在する框基壁部によって互いに連結され、
前記外れ止め部品は、前記長孔を介して前記框基壁部に前記ネジ部材を螺合することによって前記障子に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項7】
前記外れ止め部品は、前記弾性係合片よりも上方となる部分に前記スライドガイド部を有し、前記スライドガイド部よりも上方となる部分に幅の狭い枠係合部を有し、前記枠係合部を介して前記枠体の上枠に係合することにより前記枠体に対する前記障子の上方への移動を制限することを特徴とする請求項2に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関するもので、より詳細には障子の上端部に設けた外れ止め部品を枠体に係合させることによって枠体からの障子の脱落を防止するようにした建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ケンドン方式で枠体に障子を建て込む建具では、障子の上端部に外れ止め部品を配設するようにしたものがある。外れ止め部品は、枠体に係合することで枠体に対する障子の上方への移動を制限し、不用意に障子が脱落する事態を防止することが可能となる。通常、外れ止め部品には、上下に沿った長孔が設けられており、この長孔を介して障子にネジ部材を螺合することで取り付けてられている。これにより、ネジ部材を緩めて外れ止め部品を下方にスライドさせることで枠体に対する障子の建て込みを可能とする一方、建て込み後に外れ止め部品を上方にスライドさせた状態に維持することで障子の脱落を防止することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の外れ止め部品は、ネジ部材を螺合する以前の状態においては手で押さえておかなければ上下方向の位置を維持することが困難であり、ネジ部材を螺合する際の作業が困難になる等、組立作業を煩雑化する要因となる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、組立作業を煩雑化することなく障子の不用意な脱落を防止することのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠体に対して左右方向に移動可能に配設された障子を備え、前記障子の上部には、上下方向に沿った長孔を介してネジ部材を螺合することにより外れ止め部品が設けられた建具であって、前記障子の框には、前記外れ止め部品の両側に位置する部分に互いに対向する2つの対向壁部が設けられ、前記外れ止め部品には、前記長孔の開口範囲に対応する領域において前記対向壁部の少なくとも一方に圧接される弾性係合片が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外れ止め部品に弾性係合片を設けているため、障子に設けられた対向壁部の間に配置すれば弾性係合片が圧接することによって外れ止め部品がその位置に維持されることになる。従って、上下方向に沿った長孔を介してネジ部材を螺合する際に外れ止め部品を手で押さえておく必要がなく、組立作業を煩雑化することおそれがない。しかも、長孔の開口範囲に対応する領域に弾性係合片を設けるようにしているため、ネジ部材を螺合する際に回転方向の外力が加えられた場合にも弾性係合片が撓む事態が抑えられ、外れ止め部品が傾斜した状態で障子に取り付けられる問題を招来するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である建具の縦断面図である。
【
図3】
図1に示した建具の要部を示す縦断面図である。
【
図4】
図1に示した建具に適用する外れ止め部品を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)におけるX-X線断面図、(d)は側面図、(e)は(B)におけるY-Y線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1~
図3は、本発明の実施の形態である建具を示すものである。ここで例示する建具は、枠体10に室外側の外障子20A及び室内側の内障子20Bをそれぞれ左右方向に移動可能に配設した引き違い窓と称されるものである。
【0011】
枠体10は、左右の縦枠11、上枠12及び下枠13を四周組することによって構成したものである。外障子20A及び内障子20Bは、それぞれガラス等のパネル21の四周に左右の縦框22,23、上框24及び下框25を装着することによって構成したものである。下框25にはそれぞれ戸車26が設けてあり、戸車26を介して左右方向に移動することが可能である。枠体10の縦枠11、上枠12、下枠13及び障子20A,20Bの縦框22,23、上框24及び下框25は、それぞれがアルミニウム合金等の金属や樹脂によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。本実施の形態では、左右の縦枠11として互いに同一の断面形状を有したものを適用している。また、外障子20A及び内障子20Bは、下框25のみ断面形状が互いに異なるものを適用し、上框24、戸先となる縦框(以下、区別する場合に戸先框22という)、召し合わせとなる縦框(以下、区別する場合に召し合わせ框23という)については、それぞれが互いに同一の断面形状を有したもの適用している。さらに、内障子20Bについては、上框24と下框25とが互いに対称形状となるものを適用している。但し、外障子20Aは、上下に沿った高さ寸法が内障子20Bの高さ寸法よりもわずかに大きくなるように設定してある。
【0012】
左右の縦枠11は、それぞれ縦枠本体11a及び2つのガイド突条11bを有して構成してある。縦枠本体11aは、外形が長方形の中空状を成すものである。ガイド突条11bは、縦枠本体11aの内周側となる見込み面において両側の縁部からそれぞれ内周側に向けて突出したものである。図示の例では、互いに対向するようにガイドヒレ11cを設けることによってそれぞれのガイド突条11bが構成してある。
【0013】
上枠12は、上枠本体12a及び2つの上方ガイドレール12bを有して構成してある。上枠本体12aは、外形が長方形の中空状を成すものである。上方ガイドレール12bは、上枠本体12aの内周側となる見込み面において両側の縁部からそれぞれ内周側に向けて突出したもので、上枠本体12aの長手に沿った全長に設けてある。図示の例では、内周側端部が平坦面となる中空状の上方ガイドレール12bが互いに対称形状となるように形成してある。上方ガイドレール12bの相互間隔は、縦枠11のガイド突条11bの相互間隔と等しい。
【0014】
下枠13は、下枠本体13a及び2つの下方ガイドレール13b,13cを有して構成してある。下枠本体13aは、外形が異形の中空状を成すものである。図からも明らかなように、下枠本体13aの外周側となる見込み面はほぼ水平に延在する一方、内周側となる見込み面は、室外側に位置する部分が室内側に位置する部分よりも外周側に位置するように段階状となっている。下方ガイドレール13b,13cは、下枠本体13aの内周側となる見込み面において両側の縁部からそれぞれ内周側に向けて突出したもので、下枠本体13aの長手に沿った全長に設けてある。室内側の下方ガイドレール13bは、室内側の上方ガイドレール12bに対してほぼ対称となる中空形状に構成してある。室外側の下方ガイドレール13cは、下枠本体13aから内周側に向けて突出した後に適宜屈曲することにより、見込み方向に沿った平坦面を有するように構成したものである。下枠本体13aの外周側となる見込み面からの室外側の下方ガイドレール13cの突出寸法は、室内側の下方ガイドレール13bよりも小さい。下方ガイドレール13b,13cの相互間隔は、上方ガイドレール12bの相互間隔と等しい。下方ガイドレール13b,13c及び上方ガイドレール12bは、縦枠11とともに上枠12及び下枠13を四周組した場合に互いに対向するように構成してある。
【0015】
戸先框22は、縦框本体(框基壁部)22a、2つの対向壁部22b及び2つのパネル支持壁部22cを有して構成してある。縦框本体22aは、外形が長方形の中空状を成すものである。対向壁部22bは、縦框本体22aの外周側となる見込み面において両側の縁部からそれぞれ外周側に向けて突出したものである。対向壁部22bの突出縁部において互いに対向する部分には、装着部22dが互いに突出するように設けてあり、さらにそれぞれの装着部22dに気密材22eが装着してある。縦框本体22aと装着部22dとの間には、縦框本体22aの中空部のほぼ1/3程度の隙間が確保してある。パネル支持壁部22cは、縦框本体22aの内周側となる見込み面において両側の縁部からそれぞれ内周側に向けて突出したものである。パネル支持壁部22cの突出縁部において互いに対向する部分には、挟持片22fが互いに突出するように設けてあり、さらにそれぞれの挟持片22fの相互間にシール部材22gを介してパネル21の縁部が挟持してある。
【0016】
召し合わせ框23は、縦框本体(框基壁部)23a及び2つのパネル支持壁部23bを有して構成してある。縦框本体23aは、外形が長方形の中空状を成すものである。縦框本体23aの中空部は、見込み方向に対向する2つの対向壁部23gの相互間隔が戸先框22の対向壁部22bの相互間隔とほぼ等しい寸法を有し、かつ見付け方向に沿った内部の寸法が縦框本体22aと装着部22dとの間に確保した寸法よりも大きくなるように構成してある。図中の符号23cは、召し合わせ框23が互いに召し合わせの位置に配置された場合に相互に係合する煙返しである。パネル支持壁部23bは、縦框本体23aの内周側となる見込み面において両側の縁部からそれぞれ内周側に向けて突出したものである。パネル支持壁部23bの突出縁部において互いに対向する部分には、挟持片23dが互いに突出するように設けてあり、さらにそれぞれの挟持片23dの相互間にシール部材23eを介してパネル21の縁部が挟持してある。
【0017】
図3に示すように、戸先框22及び召し合わせ框23には、それぞれの縦框本体22a,23aに上框24の上方ガイドレール12bが挿入可能となる幅の建て込み用の切欠溝22h,23fが設けてある。
【0018】
上框24及び内障子20Bの下框25は、横框本体24a、2つのガイド壁部24b及び2つのパネル支持壁部24cを有して構成してある。横框本体24aは、外形が長方形の中空状を成すものである。横框本体24aの見込み方向に沿った寸法は、縦框22に設けた対向壁部22bの相互間隔に嵌合することのできるように構成してある。ガイド壁部24bは、横框本体24aの外周側となる見込み面において両側の縁部からそれぞれ外周側に向けて突出したものである。ガイド壁部24bの突出縁部において互いに対向する部分には、装着部24dが互いに突出するように設けてあり、さらにそれぞれの装着部24dに気密材24eが装着してある。パネル支持壁部24cは、横框本体24aの内周側となる見込み面において両側の縁部からそれぞれ内周側に向けて突出したものである。パネル支持壁部24cの突出縁部において互いに対向する部分には、挟持片24fが互いに突出するように設けてあり、さらにそれぞれの挟持片24fの相互間にシール部材24gを介してパネル21の縁部が挟持してある。
【0019】
図からも明らかなように、横框本体24aには、外周側となる部分及び中空内部となる部分にそれぞれビスホール24hが設けてある。これらのビスホール24hは、縦框22,23との間を連結するための連結ネジSが螺合されるものである。
【0020】
外障子20Aの下框25は、下框本体25a、2つのガイド壁部25b及び2つのパネル支持壁部25cを有して構成してある。下框本体25aは、外形が長方形の中空状を成すものである。下框本体25aの見込み方向に沿った寸法は、横框本体24aと同じであり、下框本体25aの見付け方向に沿った寸法は、横框本体24aよりも大きく構成してある。ガイド壁部25bは、下框本体25aの外周側となる見込み面において両側の縁部からそれぞれ外周側に向けて突出したものである。ガイド壁部25bの突出縁部において互いに対向する部分には、装着部25dが互いに突出するように設けてあり、さらにそれぞれの装着部25dに気密材25eが装着してある。パネル支持壁部25cは、下框本体25aの内周側となる見込み面において両側の縁部からそれぞれ内周側に向けて突出したものである。パネル支持壁部25cの突出縁部において互いに対向する部分には、挟持片25fが互いに突出するように設けてあり、さらにそれぞれの挟持片25fの相互間にシール部材25gを介してパネル21の縁部が挟持してある。
【0021】
上記のように構成した障子20A,20Bには、それぞれの上部に外れ止め部品30が取り付けてある。外れ止め部品30は、外障子20Aの戸先框22、外障子20Aの召し合わせ框23、内障子20Bの戸先框22、内障子20Bの召し合わせ框23のそれぞれに個別に設けたもので、互いに同一形状に構成してある。より具体的に説明すると、戸先框22には、縦框本体22aと装着部22dとの間の隙間に外れ止め部品30が配設してある。召し合わせ框23には、縦框本体22aの中空部に外れ止め部品30が配設してある。
図4に示すように、本実施の形態では、スライドガイド部31、挿入ガイド部32、枠係合部33を有し、これらスライドガイド部31、挿入ガイド部32、枠係合部33を樹脂によって一体に成形した外れ止め部品30を適用している。
【0022】
スライドガイド部31は、戸先框22に設けた対向壁部22bの相互間隔よりもわずかに小さい幅で、縦框本体22aと装着部22dとの間の隙間よりも小さい板厚に構成した板状を成す部分である。挿入ガイド部32は、スライドガイド部31の一方の端部から延在する狭幅の板状を成す部分であり、枠係合部33は、スライドガイド部31の他方の端部から延在する狭幅の板状を成す部分である。これら挿入ガイド部32及び枠係合部33は、それぞれの幅方向の中心がスライドガイド部31の幅方向の中心と合致するように設けてある。枠係合部33は、上框24に設けた装着部24dの相互間隔よりも小さい一様の幅を有するように構成してある。挿入ガイド部32には、延在端部の両側に先端に向けて相互間隔が漸次小さくなるように傾斜面32aが設けてある。挿入ガイド部32からスライドガイド部31の一部に至る部分には長孔34が設けてあり、挿入ガイド部32の両側にはそれぞれ弾性係合片35が設けてある。
【0023】
長孔34は、挿入ガイド部32の幅方向の中心となる位置に幅方向に直交する方向に沿って延在したものである。長孔34の幅は、ネジ部材40の頭部40aを挿通不可、かつ軸部40bを挿通可能とする寸法に形成してある。図からも明らかなように、挿入ガイド部32から枠係合部33に至る部分には、一方の表面に溝状の収容凹部36が設けてある。また、収容凹部36においてスライドガイド部31及び枠係合部33に対応する部分には、それぞれネジ挿通孔37が形成してある。収容凹部36は、ネジ部材40の頭部40aを収容することのできる幅及び深さを有した直線状の凹所であり、幅方向の中心となる位置に形成してある。収容凹部36の一端部は挿入ガイド部32の端面に開口し、他端部は枠係合部33において閉塞している。ネジ挿通孔37は、上述した連結ネジSの頭部を挿通可能とする大きさを有した貫通孔であり、上枠12に設けたビスホール24hのピッチと同一のピッチとなるように設けてある。図中の符号38は、挿入ガイド部32の裏面において長孔34の両側となる部分に設けた突出部である。この突出部38は、挿入ガイド部32の裏面に上述した連結ネジSの頭部が挿通可能となる隙間を確保するためのものである。
【0024】
2つの弾性係合片35は、それぞれが挿入ガイド部32に設けた傾斜面32aに沿う状態で互いに拡開する方向に延在した後、延在端部が互いに近接する方向に向けて屈曲したものである。図からも明らかなように、弾性係合片35の先端部は、それぞれ長孔34の開口範囲に対応する領域内に位置するように設定してある。また弾性係合片35は、板厚に比して小さい板幅に形成したもので、先端部が互いに近接離反する方向に弾性的に変形することが可能である。無負荷状態において2つの弾性係合片35は、最大幅が戸先框22に設けた対向壁部22bの相互間隔よりも大きくなる一方、互いに近接する方向に撓めた場合に対向壁部22bの相互間に挿入可能となるように構成してある。
【0025】
上記のように構成した外れ止め部品30は、障子20A,20Bを枠体10に建て込む以前に、外障子20Aの戸先框22、外障子20Aの召し合わせ框23、内障子20Bの戸先框22、内障子20Bの召し合わせ框23のそれぞれに装着しておく。具体的に説明すると、戸先框22については、対向壁部22bの間において縦框本体22aと装着部22dとの間の隙間に外れ止め部品30を挿入し、長孔34を介して縦框本体22aにネジ部材40を螺合することによって上端部に外れ止め部品30が取り付けてある。召し合わせ框23については、縦框本体22aの中空部に外れ止め部品30を挿入し、長孔34を介して縦框本体22aにネジ部材40を螺合することによって上端部に外れ止め部品30が取り付けてある。このとき、上述したように外れ止め部品30には、傾斜面32aを有した挿入ガイド部32が設けてあるとともに、傾斜面32aに沿って弾性係合片35が設けてある。従って、対向壁部22bの相互間や縦框本体22aの内部に挿入する作業を容易に実施することができるとともに、傾斜作用によって弾性係合片35を容易に弾性変形させることができる。しかも、戸先框22では、対向壁部22bの相互間に挿入した時点で弾性係合片35が対向壁部22bのそれぞれに圧接され、召し合わせ框23では、縦框本体22aの内部に挿入した時点で弾性係合片35が対向壁部23gのそれぞれに圧接されることになる。すなわち、外れ止め部品30は、縦框22,23に対して挿入しさえすれば、弾性係合片35が圧接することによってその位置に維持された状態となる。これにより、ネジ部材40を螺合する際に外れ止め部品30を手で押さえておく必要がなくなるため、組立作業を容易化することができるようになる。
【0026】
図3中において右側に示すように、障子20A,20Bを枠体10に建て込む際には、ネジ部材40が長孔34の上端部に位置するように縦框22,23に対して外れ止め部品30の位置を下げておく。この状態においては、縦框22,23に設けた切欠溝22h,23fに対して外れ止め部品30の枠係合部33が突出する寸法が小さくなる。従って、この切欠溝22h,23fに上方ガイドレール12bが挿入する状態でケンドン方式で障子20A,20Bを建て込めば、枠体10に対して左右方向に移動可能となる状態で障子20A,20Bを配設することができる。
【0027】
枠体10に障子20A,20Bを建て込んだ後においては、ネジ部材40を弛緩して外れ止め部品30を上方に移動させ、
図3中において左側に示すように、枠係合部33が上方ガイドレール12bの近接した状態で再びネジ部材40を螺合すれば、枠体10に対する障子20A,20Bの上方への移動が制限されることになる。ここで、上述の外れ止め部品30では、弾性係合片35が長孔34の開口範囲に対応する領域において対向壁部22b,23gに圧接するため、ネジ部材40を螺合する際に外れ止め部品30に回転方向の外力が加えられた場合にも、弾性係合片35が撓む事態が抑えられる。さらに、スライドガイド部31が長孔34の開口範囲に対応する領域外においても対向壁部22b,23gに当接するため、ネジ部材40を螺合する際に外れ止め部品30に回転方向の外力が加えられた場合にも、外れ止め部品30が傾斜する事態を防止することができる。これらの結果、外れ止め部品30を手で押さえておかなくても、外れ止め部品30が傾斜した状態で障子20A,20Bに固定される問題を招来するおそれがない。従って、障子20A,20Bに対して上方に移動させるような外力が加えられた場合にも枠体10から不用意に脱落する事態を確実に防止することができる。また、障子20A,20Bを左右方向に移動させる際に障子20A,20Bが転ぶ事態を招来するおそれがないため、操作がスムーズになる等、操作性の点でも有利となる。
【0028】
なお、上述した実施の形態では、障子を2枚備えた引き違い窓を例示しているが、本発明はこれに限定されず、少なくとも1枚の障子が左右方向に移動するものであれば良い。また、外れ止め部品として2つの弾性係合片を有したものを例示しているが、少なくとも1つ弾性係合片を有していれば良い。なお、弾性係合片を2つ設ける場合に上述した実施の形態ではこれら弾性係合片から等距離となる位置に長孔を設けているが、必ずしもこれに限定されない。さらに、弾性係合片として対向壁部に対して傾斜するように延在したものを例示しているが、円弧状に湾曲するように弾性係合片を構成しても良い。
【0029】
以上のように、本発明に係る建具は、枠体に対して左右方向に移動可能に配設された障子を備え、前記障子の上部には、上下方向に沿った長孔を介してネジ部材を螺合することにより外れ止め部品が設けられた建具であって、前記障子の框には、前記外れ止め部品の両側に位置する部分に互いに対向する2つの対向壁部が設けられ、前記外れ止め部品には、前記長孔の開口範囲に対応する領域において前記対向壁部の少なくとも一方に圧接される弾性係合片が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、外れ止め部品に弾性係合片を設けているため、障子に設けられた対向壁部の間に配置すれば弾性係合片が圧接することによって外れ止め部品がその位置に維持されることになる。従って、上下方向に沿った長孔を介してネジ部材を螺合する際に外れ止め部品を手で押さえておく必要がなく、組立作業を煩雑化することおそれがない。しかも、長孔の開口範囲に対応する領域に弾性係合片を設けるようにしているため、ネジ部材を螺合する際に回転方向の外力が加えられた場合にも弾性係合片が撓む事態が抑えられ、外れ止め部品が傾斜した状態で障子に取り付けられる問題を招来するおそれがない。
【0030】
また本発明は、上述した建具において、前記外れ止め部品には、前記対向壁部をガイドとしてスライド可能となるスライドガイド部が前記長孔の開口範囲に対応する領域外となる部分にまで設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ネジ部材を螺合する際にスライドガイド部が対向壁部の表面に当接するため、外れ止め部品が傾斜した状態で取り付けられる事態をより確実に防止することができる。
【0031】
また本発明は、上述した建具において、前記外れ止め部品には、前記対向壁部のそれぞれに圧接するように前記弾性係合片が互いに対称となるように2つ設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、対向壁部に対して弾性係合片のみが当接した状態となるため、スライドガイド部が当接する場合に比べて外れ止め部品を容易に上下にスライドさせることができ、例えば外れ止め部品の位置調整を行う操作を容易化することが可能となる。
【0032】
また本発明は、上述した建具において、前記弾性係合片は、前記対向壁部に対して傾斜するように延在していることを特徴としている。
この発明によれば、弾性係合片を対向壁部に当接させれば傾斜作用によって撓むため、外れ止め部品を対向壁部の間に挿入する作業が容易となる。
【0033】
また本発明は、上述した建具において、前記外れ止め部品には、前記弾性係合片から互いに等距離となる位置に前記長孔が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、外れ止め部品を左右対称形状とすることができ、障子の左右に取り付ける外れ止め部品を共用化することができる。
【0034】
また本発明は、上述した建具において、前記対向壁部は、前記障子を構成する縦框において見付け方向に延在し、かつ前記障子の内周側となる縁部の間が見込み方向に延在する框基壁部によって互いに連結され、前記外れ止め部品は、前記長孔を介して前記框基壁部に前記ネジ部材を螺合することによって前記障子に取り付けられていることを特徴としている。
この発明によれば、障子の側方から見付け方向に沿ってネジ部材を螺合すれば外れ止め部品を取り付けることができるため、障子を枠体に建て込んだ状態で外れ止め部品の位置を調整する作業を行うことができる。
【0035】
また本発明は、上述した建具において、前記外れ止め部品は、前記弾性係合片よりも上方となる部分に前記スライドガイド部を有し、前記スライドガイド部よりも上方となる部分に幅の狭い枠係合部を有し、前記枠係合部を介して前記枠体の上枠に係合することにより前記枠体に対する前記障子の上方への移動を制限することを特徴としている。
この発明によれば、幅の狭い枠係合部を上枠に係合させることにより、障子の脱落を防止することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 枠体、12 上枠、12a 上枠本体、12b 上方ガイドレール、20A,20B 障子、22,23 縦框、22a,23a 縦框本体、22b,23g 対向壁部、30 外れ止め部品、31 スライドガイド部、32 挿入ガイド部、32a 傾斜面、33 枠係合部、34 長孔、35 弾性係合片、36 収容凹部、37 ネジ挿通孔、38 突出部、40 ネジ部材、40a 頭部、40b 軸部