(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137106
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ガスケット及びコークス炉の昇温方法
(51)【国際特許分類】
F16K 17/40 20060101AFI20240927BHJP
C10B 29/00 20060101ALI20240927BHJP
C10B 21/10 20060101ALI20240927BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20240927BHJP
F16K 17/16 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16K17/40 Z
C10B29/00
C10B21/10
F16J15/06 N
F16K17/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048494
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 将貴
(72)【発明者】
【氏名】怒田 邦広
【テーマコード(参考)】
3H059
3H061
3J040
4H012
【Fターム(参考)】
3H059AA14
3H059BB22
3H059BB30
3H059CA02
3H059CA03
3H059CA17
3H059CA18
3H059CE01
3H059CF05
3H059DD08
3H059DD12
3H059EE02
3H059FF05
3H059FF07
3H061AA10
3H061BB13
3H061CC12
3H061CC19
3H061DD02
3H061EA45
3H061EB15
3H061EC01
3H061FA02
3H061FA03
3H061FA16
3H061FA17
3H061GG05
3H061GG19
3J040AA12
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA25
3J040FA01
3J040FA05
3J040FA13
3J040HA06
3J040HA21
4H012AA08
(57)【要約】
【課題】配管のフランジ部同士の間のシール性を確保しつつ、流体の遮断と流通の切り替えを容易になしうるガスケット及びコークス炉の昇温方法を提供する。
【解決手段】ガスケット10は、複数の配管本体3を各配管本体3に設けられたフランジ部3a同士を接続してなる配管2のフランジ部3a同士の間に設置される。ガスケット10は、フランジ部3a同士の間に挟まれ、フランジ部3a同士の間をシールするシール部11と、ガスケット10がフランジ部3a同士の間に設置される際に、配管2の流路を塞ぐ閉止部12とを備えている。閉止部12には、ガスケット10がフランジ部3a同士の間に設置された後、閉止部12に作用させる力によって破断可能な脆弱部14が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配管本体を各配管本体に設けられたフランジ部同士を接続してなる配管の前記フランジ部同士の間に設置されるガスケットであって、
前記フランジ部同士の間に挟まれ、該フランジ部同士の間をシールするシール部と、前記ガスケットが前記フランジ部同士の間に設置される際に、前記配管の流路を塞ぐ閉止部とを備え、
前記閉止部には、前記ガスケットが前記フランジ部同士の間に設置された後、前記閉止部に作用させる力によって破断可能な脆弱部が設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記脆弱部は、前記閉止部の一部に、前記閉止部の両面にわたる複数の貫通孔が間欠的に設けられることで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記閉止部の一部に、前記閉止部を構成する材料の厚みが前記脆弱部以外の閉止部における厚みよりも薄く形成される溝部で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項4】
前記閉止部は、前記配管の流路を塞ぐ時において曝される最高温度において、前記閉止部が軟化せず、溶融もしない耐熱材料を含んでいることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載のガスケット。
【請求項5】
前記耐熱材料は、無機材料の板であることを特徴とする請求項4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記無機材料の板は、前記脆弱部としての貫通孔または溝部のいずれかまたは両方を有し、前記無機材料の板の片面または両面には、前記脆弱部が破断する時の温度において無機材料よりも強度の低い材料が接合されて構成されていることを特徴とする請求項5に記載のガスケット。
【請求項7】
前記シール部の少なくとも一部は、前記無機材料の板の両面に流体のシールが可能な材料が接合されて構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のガスケット。
【請求項8】
請求項1に記載のガスケットを上昇管におけるフランジ部同士の間に設置して前記上昇管の流路を塞いだ後、コークス炉の炭化室を昇温し、昇温後であって前記炭化室に石炭を装入する前に、前記ガスケットの脆弱部を破断させて前記上昇管の内部の流体の流通を可能とすることを特徴とするコークス炉の昇温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の配管本体を各配管本体に設けられたフランジ部同士を接続してなる配管のフランジ部同士の間に設置されるガスケット及びコークス炉の昇温方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の配管本体を各配管本体に設けられたフランジ部同士を接続してなる配管のフランジ部同士の間においては、配管内部の流体の外部への漏洩や、配管外部からの気体や液体の配管内部への浸入を防ぐために、フランジ部同士の間をシールするガスケットが一般的に用いられる。また、配管のフランジ部同士の間に流路を塞ぐ閉止板を挿入して、流体の流通を止めることもよく行われる。
【0003】
例えば、コークス炉において、炭化室内に装入された石炭を乾留する際に発生するコークスガスやタールを外部に排出するために設けられている上昇管も配管の一種である。
特許文献1には、コークス炉の炉壁補修方法が開示されており、コークス炉の炉壁補修に際し、炭化室に連通した上昇管のフランジ部同士の間に封止板を挿入し、上昇管の内部のガス等の流通を閉止する例が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されるような上昇管での閉止作業はコークス炉を新規に建設したり、レンガの積み替え補修をした後のレンガ乾燥、昇温立ち上げ工程でも行われることがあり、上昇管の内部への炭化室からのガス流入を遮断することが主目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上昇管での閉止作業において、配管のフラン部同士の間に閉止板を挿入した場合、ガス遮断が必要な作業や工程が完了した後は、配管内のガス等の流体を流通させるために閉止板を取り除く作業が必要となる。その閉止板の取り除き作業では、フランジ部同士を一旦解体して閉止板を取り除き、当該フランジ部同士の間にシールのためのガスケットを挿入した後、再びフランジ部同士を接続するという工程が必要になる。
【0007】
この工程は、作業が複雑で、例えば、新設・更新コークス炉の立上直前の閉止板抜取作業には、安全面の課題に加え、周辺に配置する大型の設備群(例としてドライメーン)との取り合い制約から、フランジ部同士の開放作業が難しいことがある。安全面の課題としては、例えば、コークス炉の炉体昇温に伴い高温化した閉止板や上昇管設備への接触による火傷のリスクである。
【0008】
また、フランジ部間でのシール性が悪化すると、コークス炉立上げ後の炉操業における発生ガス(コークスガス)およびガス中の乾留副生物(例としてタール)の漏出の起点となり、上昇管基部での着火や慢性的なガス漏出による周辺環境の悪化を派生しうるという課題もある。
従って、本発明はこれら従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、配管のフランジ部同士の間のシール性を確保しつつ、流体の遮断と流通の切り替えを容易になしうるガスケット及びコークス炉の昇温方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るガスケットは、複数の配管本体を各配管本体に設けられたフランジ部同士を接続してなる配管の前記フランジ部同士の間に設置されるガスケットであって、前記フランジ部同士の間に挟まれ、該フランジ部同士の間をシールするシール部と、前記ガスケットが前記フランジ部同士の間に設置される際に、前記配管の流路を塞ぐ閉止部とを備え、前記閉止部には、前記ガスケットが前記フランジ部同士の間に設置された後、前記閉止部に作用させる力によって破断可能な脆弱部が設けられていることを要旨とする。
(2)また、(1)に記載のガスケットにおいて、前記脆弱部は、前記閉止部の一部に、前記閉止部の両面にわたる複数の貫通孔が間欠的に設けられることで構成されていることが好ましい。
(3)また、(1)に記載のガスケットにおいて、前記脆弱部は、前記閉止部の一部に、前記閉止部を構成する材料の厚みが前記脆弱部以外の閉止部における厚みよりも薄く形成される溝部で構成されていることが好ましい。
(4)また、(1)~(3)のうちのいずれかに記載のガスケットにおいて、前記閉止部は、前記配管の流路を塞ぐ時において曝される最高温度において、前記閉止部が軟化せず、溶融もしない耐熱材料を含んでいることが好ましい。
(5)更に、(4)に記載のガスケットにおいて、前記耐熱材料は、無機材料の板であることが好ましい。
(6)また、(5)に記載のガスケットにおいて、前記無機材料の板は、前記脆弱部としての貫通孔または溝部のいずれかまたは両方を有し、前記無機材料の板の片面または両面には、前記脆弱部が破断する時の温度において無機材料よりも強度の低い材料が接合されて構成されていることが好ましい。
(7)また、(5)又は(6)に記載のガスケットにおいて、前記シール部の少なくとも一部は、前記無機材料の板の両面に流体のシールが可能な材料が接合されて構成されていることが好ましい。
(8)更に、本発明の別の態様に係るコークス炉の昇温方法は、(1)~(7)のういちのいずれかに記載のガスケットを上昇管におけるフランジ部同士の間に設置して前記上昇管の流路を塞いだ後、コークス炉の炭化室を昇温し、昇温後であって前記炭化室に石炭を装入する前に、前記ガスケットの脆弱部を破断させて前記上昇管の内部の流体の流通を可能とすることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るガスケット及びコークス炉の昇温方法によれば、配管のフランジ部同士の間のシール性を確保しつつ、流体の遮断と流通の切り替えを容易になしうるガスケット及びコークス炉の昇温方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガスケットが設置されるコークス炉の炭化室の上昇管を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るガスケットの平面図である。
【
図4】
図3における矢印Aで示す部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0013】
図1には、本発明の一実施形態に係るガスケットが設置されるコークス炉の炭化室の上昇管が模式的に示されている。
図1に示す配管としての上昇管2は、コークス炉の炭化室1の上部に設けられ、炭化室1に装入された石炭を乾留する際に発生するコークス炉ガスやタールを外部に排出する。
この上昇管2は、複数(本実施形態にあっては4つ)の配管本体3を各配管本体3に設けられたフランジ部3a同士を接続してなる。各配管本体3は、円筒状に形成される。フランジ部3aは、円筒状の配管本体3の端部から外方に環状に突出する。コークス炉の炭化室1は、石炭装入時およびコークス排出時を除いて外気から遮断された空間であり、上昇管2及びベンド管5を介してドライメーン6に連通している。
【0014】
また、上昇管2の上端部には、水封弁4が設けられ、この水封弁4によって外気と遮断されている。また、ベンド管5とドライメーン6との連結部にも、水封弁(図示せず)が設けられている。
そして、上昇管2のフランジ部3a同士の間には、上昇管2の内部のガスやタールなどの流体の外部への漏洩や、上昇管2の外部からの気体や液体の流体の上昇管2の内部への浸入を防ぐための本実施形態に係るガスケット10(
図2乃至
図4参照)が設置される。
【0015】
このガスケット10は、上昇管2のフランジ部3a同士の間に挟まれ、フランジ部3a同士の間をシールするシール部11と、ガスケット10がフランジ部3a同士の間に設置される際に、上昇管2の流路を塞ぐ閉止部12とを備えている。
ここで、閉止部12は、ガスケット10がフランジ部3a同士の間に設置される際に、上昇管2の流路を塞ぎ、上昇管2の内部のガス等の流体の流通を閉止するものである。
【0016】
閉止部12は、
図2及び
図3に示すように、上昇管2の流路を塞ぐ円形状の耐熱材料としての無機材料板12a、即ち無機材料の板で構成されている。無機材料の板の例としては、金属板、セラミックス板が挙げられる。ただし、閉止部12は、無機材料の板のみで構成されている必要は必ずしもなく、上昇管2の流路を塞ぐ時において曝される最高温度において、閉止部12が軟化せず、溶融もしない耐熱材料を一部に含んでいる構成としてもよい。例えば、閉止部12において、上昇管2内でのガス等の流体の流通を抑止するために閉止部12の一部に耐熱性を有する板やシート状の材料を含んでいてもよい。
【0017】
また、シール部11は、上昇管2のフランジ部3a同士の間に挟まれてフランジ部3a同士の間をシールするものである。つまり、シール部11は、上昇管2のフランジ部3a同士の間に設置されて、上昇管2の内部のガスやタールなどの流体のフランジ部3a同士の間からの外部への漏洩や、上昇管2の外部からの気体や液体の流体の上昇管2の内部への浸入を防ぐ。このシール部11は、閉止部12の無機材料板12aから一体で外方に延長される無機材料板11a、即ち無機材料の板と、無機材料板11aの両面に接合されたシール材料部11bとで構成されている。シール材料部11bは、フランジ部3a同士の間で気体及び液体の流体のシールが可能な材料、即ち気体及び液体の流体の透過性が低く、フランジ部3aと接している部分で隙間が発生しにくい材料で構成される。シール材料部11bの材料としては、例えば、ゴム類、樹脂類、紙、コルク、黒鉛等が挙げられる。なお、シール部11は、全体ではなく、その一部が無機材料板11aと、無機材料板11aの両面に接合されたシール材料部11bとで構成されていてもよい。また、シール部11は、無機材料板11aがなく、シール材料部11bのみで構成してもよい。また、無機材料板11a自体がシール機能を有している場合は、無機材料板11aのみでシール部11を構成してもよい。
【0018】
シール部11には、
図2及び
図3に示すように、周方向に均等間隔で複数のボルト挿通孔13が上下に貫通するように形成されている。ガスケット10は、シール部11をフランジ部3a同士の間に挟みこみ、複数のボルト(図示せず)をボルト挿通孔13に挿通してナット(図示せず)で締結することにより、フランジ部3a同士の間に設置され、固定される。
【0019】
また、閉止部12には、
図2乃至
図4に示すように、ガスケット10がフランジ部3a同士の間に設置された後、閉止部12に作用させる力によって破断可能な脆弱部14が設けられている。この脆弱部14は、ガスケット10をフランジ部3a同士の間に設置した後に上昇管2を遮断する必要がなくなった後に、閉止部12の突き破り作業を容易になし得ることを目的として閉止部12に設けられる。
【0020】
脆弱部14は、
図2乃至
図4に示すように、閉止部12の一部(シール部11に近傍の部分)に、閉止部12の両面にわたる複数の貫通孔が間欠的に設けられることで構成されている。脆弱部14は、具体的には、閉止部12のシール部11の近傍の部分に、複数の貫通孔を円環状に間欠的に形成することで構成される。脆弱部14は、複数の貫通孔を間欠的に設ける場合のみならず、図示はしないが、閉止部12の一部に、閉止部12を構成する材料の厚みが脆弱部14以外の閉止部12における厚みよりも薄く形成される溝部で構成されていてもよい。
【0021】
脆弱部14として本実施形態のように貫通孔を設ける場合には、貫通孔をガス等の流体が流通する可能性があるが、ガス等の流体の流通を完全に閉止する必要がない場合も多いため、貫通孔によって脆弱部14を構成しても問題がないことが多い。貫通孔で脆弱部14を構成するか否かは、ガス等の流体の閉止の必要性に応じて適宜決定することが望ましい。一方、脆弱部14におけるガス等の流体の流通を防止したい場合には、前述したように、脆弱部14を閉止部12を構成する材料の厚みが脆弱部14以外の閉止部12における厚みよりも薄く形成される溝部で構成することが望ましい。また、脆弱部14におけるガス等の流体の流通を防止したい場合、貫通孔に閉止部12よりも強度の低い例えば樹脂などの材料で閉止するようにしてもよい。
【0022】
このように、閉止部12に脆弱部14を設ける構成とすることにより、外部からの力で閉止部12を突き破る際には、脆弱部14で破断が起き、フランジ部3a同士間のシール機能を有するシール部11は設置時のまま、一般的なフルフランジ型のガスケットとして残存する。これにより、上昇管2の内部のガスやタールなどの流体の外部への漏洩や、上昇管2の外部からの気体や液体の流体の上昇管2の内部への浸入を防ぐことができる。
【0023】
なお、本実施形態の上昇管2においては、
図1に示すように、フランジ部3a同士を接続する部分は、3つ存在している。この3つの部分において、それぞれガスケット10を設置する必要がある。このため、閉止部12を備えたガスケット10は、上昇管2の基部(最も下の部分)のフランジ部3a同士の間に設置し、それ以外の部分のフランジ部3a同士の間には、閉止部12のないガスケット10を設置するようにしてある。
【0024】
次に、本実施形態に係るコークス炉の昇温方法について説明する。
コークス炉の昇温を行う前に、ガスケット10を上昇管2のフランジ部3a同士の間に設置する。この際に、閉止部12を備えたガスケット10を、上昇管2の基部(最も下の部分)のフランジ部3a同士の間に設置し、それ以外の部分のフランジ部3a同士の間に、閉止部12のないガスケット10を設置するようにする。
【0025】
この際に、シール部11をフランジ部3a同士の間に挟みこみ、複数のボルト(図示せず)をボルト挿通孔13に挿通してナット(図示せず)で締結する。
そして、ガスケット10を上昇管2のフランジ部3a同士の間に設置した直後は、上昇管2の基部のフランジ部3a同士の間に設置したガスケット10では、閉止部12により上昇管2の内部のガス等の流体の流通は閉止された状態となる。
【0026】
そして、ガスケット10を上昇管2のフランジ部3a同士の間に設置した後、コークス炉の昇温を行う。新設または更新、補修を行ったコークス炉では、昇温により新たに設置した耐火物や炉体設備の乾燥及び昇温が行われる。この際に、上昇管2の基部のフランジ部3a同士の間に設置したガスケット10において、閉止部12により上昇管2の内部のガス等の流体の流通は閉止された状態となっており、上昇管2の内部のガス等の流体が上昇管2内を流通して外部に漏洩することはない。
【0027】
そして、耐火物や炉体設備が十分に乾燥及び昇温され、操業を開始しうる状態に遷移した段階で、水封弁4のカバーを開放して、上部から棒等の部材で上昇管2内に設置したガスケット10の閉止部12に打撃を与え、脆弱部14を破断させる。
これにより、上昇管2の内部のガス等の流体の流通が可能となる。
なお、ガスケット10の脆弱部14が破断されたとしても、フランジ部3a同士の間にはシール部11が存在し、シール部11によってフランジ部3a同士の間がシールされている。このため、上昇管2の内部のガス等の流体の外部への漏洩や、上昇管2の外部からの気体や液体の流体の上昇管2の内部への浸入を防ぐことができる。
【0028】
そして、破壊され炭化室1内に落下したガスケット10の一部の破片を、炭化室1の図示しない炉蓋を開放して回収し、その後、コークス炉の炭化室1に石炭を装入してコークスを製造すればよい。
炭化室1内に石炭を装入する前にガスケット10の破片を回収することなく、炭化室1に石炭を装入し、製造されたコークスとともにガスケット10の破片を回収してもよい。
【0029】
このように、本実施形態に係るガスケット10によれば、フランジ部3a同士の間に挟まれ、フランジ部3a同士の間をシールするシール部11と、ガスケット10がフランジ部3a同士の間に設置される際に、配管としての上昇管2の流路を塞ぐ閉止部12とを備えている。そして、閉止部12には、ガスケット10がフランジ部3a同士の間に設置された後、閉止部12に作用させる力によって破断可能な脆弱部14が設けられている。
【0030】
これにより、配管としての上昇管2のフランジ部3a同士の間のシール性を確保しつつ、流体の遮断と流通の切り替えを容易になしうるガスケット10を提供できる。
また、本実施形態に係るガスケット10によれば、脆弱部14は、閉止部12の一部に、閉止部12の両面にわたる複数の貫通孔が間欠的に設けられることで構成されている。
これにより、閉止部12の一部に複数の貫通孔を間欠的に設ける簡単な加工で脆弱部14を構成できる。
【0031】
また、本実施形態に係るガスケット10によれば、脆弱部14は、閉止部12の一部に、閉止部12を構成する材料の厚みが脆弱部14以外の閉止部12における厚みよりも薄く形成される溝部で構成されている。
これにより、簡単な構成で脆弱部14における気体等の流体の流通を防止することができる。
【0032】
また、本実施形態に係るガスケットによれば、閉止部12は、配管としての上昇管2の流路を塞ぐ時において曝される最高温度において、閉止部12が軟化せず、溶融もしない耐熱材料を含んでいる。
これにより、閉止部12が配管としての上昇管2の流路を塞ぐ時において曝される最高温度において、軟化せず、溶融もしないので、かかる最高温度のときでも配管としての上昇管2の流路を塞ぐ機能を果たすことができる。
【0033】
また、本実施形態に係るガスケットによれば、前述の耐熱材料は、無機材料の板(無機材料板12a)であるので、簡単に入手及び加工できる無機材料の板を用いて閉止部12を構成することができる。
また、本実施形態に係るガスケットによれば、シール部11の少なくとも一部は、無機材料の板(無機材料板11a)の両面に気体及び液体のシールが可能な材料(シール材料部11b)が接合されて構成されている。
【0034】
これにより、簡単な構成のシール部11でフランジ部3a同士の間をシールすることができる。
また、本実施形態に係るコークス炉の昇温方法によれば、ガスケット10を上昇管2におけるフランジ部3a同士の間に設置して上昇管2の流路を塞ぐ。その後、コークス炉の炭化室1を昇温し、昇温後であって炭化室1に石炭を装入する前に、ガスケット10の脆弱部14を破断させて上昇管2の内部の流体の流通を可能とする。
【0035】
これにより、上昇管2のフランジ部3a同士の間のシール性を確保しつつ、流体の遮断と流通の切り替えを容易になしうるガスケット10を用いてコークス炉の昇温を行うことができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
【0036】
例えば、ガスケット10は、上昇管2のフランジ部3a同士間に設置されているが、上昇管2以外の配管のフランジ部同士間に設置するようにしてもよい。
また、ガスケット10につき、閉止部12を備えたガスケット10は、上昇管2の基部(最も下の部分)のフランジ部3a同士の間に設置し、それ以外の部分のフランジ部3a同士の間には、閉止部12のないガスケット10を設置するようにしてある。これに限らず、閉止部12を備えたガスケット10を、上昇管2の上下方向の中段のフランジ部3a同士や上段のフランジ部3a同士の間に設置したり、3つの接続部分のすべてのフランジ部3a同士の間に設置するようにしても良い。
【0037】
また、閉止部12及びシール部11において、無機材料板12a及び無機材料板11a、即ち無機材料の板の片面または両面に、脆弱部14が破断する時の温度において無機材料よりも強度の低い材料を接合しても良い。この場合、無機材料板11aに、脆弱部14としての貫通孔または溝部のいずれかまたは両方を形成することが好ましい。
【実施例0038】
本発明の効果を検証すべく、
図2乃至
図4に示すガスケット10を、
図1に示す上昇管2を炭化室1に据え付ける際に、上昇管2の基部(最も下の部分)のフランジ部3a同士の間に設置した。
ガスケット10は、
図2乃至
図4に示すように、上昇管2のフランジ部3a同士の間に挟まれ、フランジ部3a同士の間をシールするシール部11と、ガスケット10がフランジ部3a同士の間に設置される際に、上昇管2の流路を塞ぐ閉止部12とを備えている。閉止部12には、ガスケット10がフランジ部3a同士の間に設置された後、閉止部12に作用させる力によって破断可能な脆弱部14が設けられている。
【0039】
閉止部12は、厚さ1.5mmの円板状の無機材料板12aとしてのステンレス鋼板で構成されている。また、シール部11は、閉止部12のステンレス鋼板から一体で外方に延長された無機材料板11aとしてのステンレス鋼板を備えている。そのステンレス鋼板の両面には、シール材料部11bとしてのそれぞれ厚さが2mmのシール機能を有する材料が被覆されている。本実施例においては、シール機能を有する材料としてゴムに無機繊維を配合した材料(バルカー♯6502相当)を使用した。シール部11には、
図2及び
図3に示すように、周方向に均等間隔で複数のボルト挿通孔13が上下に貫通するように形成されている。
【0040】
閉止部12には、上昇管2を構成する配管本体3の内周面から内側方向に3mm離れた位置に、閉止部12のステンレス鋼板を貫通する複数の貫通孔としてのスリットを、円環をなすように間欠的に破線状に設けた。この複数のスリットが脆弱部14となる。各スリットは、幅が0.5mm、配管本体3の周方向における長さが30mm、隣接するスリットの間隔は5mmとした。各スリットの幅、隣接するスリットの間隔、あるいは脆弱部14の厚みは、脆弱部14に与える外力によって適宜決めることができる。例えば、各スリットの長さ:隣接するスリットの間隔の比は、3:1~50:1の程度とすることができる。
【0041】
このガスケット10は、コークス炉の建設時の昇温工程において次のように利用した。
先ず、
図1に示す炭化室1を構築した後、上昇管2を炭化室1に据え付ける際に、上昇管2の基部(最も下の部分)のフランジ部3a同士の間にガスケット10を設置した。なお、上昇管2においては、
図1に示すように、フランジ部3a同士を接続する部分は、3つ存在している。この3つの部分において、それぞれガスケット10を設置する必要があるが、閉止部12を備えたガスケット10は、上昇管2の基部(最も下の部分)のフランジ部3a同士の間に設置し、それ以外の部分のフランジ部3a同士の間には、閉止部12のないガスケット10を設置した。
【0042】
この際に、シール部11をフランジ部3a同士の間に挟みこみ、複数のボルト(図示せず)をボルト挿通孔13に挿通してナット(図示せず)で締結した。
その後、炭化室1に熱風を流通させ、更に、炭化室1の両側の燃焼室(図示せず)でガスを燃焼させて炭化室1のレンガを加熱し、コークス炉の昇温を行った。
この際に、上昇管2の基部のフランジ部3a同士の間に設置したガスケット10において、閉止部12により上昇管2の内部のガス等の流体の流通は閉止された状態となっており、上昇管2の内部のガス等の流体が上昇管2内を流通して外部に漏洩することはなかった。
【0043】
そして、炭化室1の全体が所定の温度に達した後、水封弁4のカバーを開放して、上部から棒等の部材で上昇管2内に設置したガスケット10の閉止部12に打撃を与え、脆弱部14を破断させ、上昇管2の内部のガス等の流体の流通を可能にした。
なお、ガスケット10の脆弱部14が破断されたとしても、フランジ部3a同士の間にはシール部11が存在し、シール部11によってフランジ部3a同士の間がシールされている。このため、上昇管2の内部のガス等の流体の外部への漏洩や、上昇管2の外部からの気体や液体の上昇管2の内部への浸入を防ぐことができた。
【0044】
そして、破壊され炭化室1内に落下したガスケット10の一部の破片は、炭化室1の図示しない炉蓋を開放して回収した。
このようにして、上昇管2の内部のガス等の流体の流通を可能にした後、炭化室1内に石炭を装入してコークスを製造した。