(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137108
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】熱風炉蓄熱用レンガの調査装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
C21B 9/02 20060101AFI20240927BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20240927BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C21B9/02
F27D21/00 A
F27D1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048496
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】堀川 透理
(72)【発明者】
【氏名】藤井 紀志
【テーマコード(参考)】
4K051
4K056
【Fターム(参考)】
4K051AA01
4K051AA03
4K051AB03
4K051BH01
4K056AA01
4K056AA14
4K056BA01
4K056BB01
4K056CA02
4K056FA19
(57)【要約】
【課題】劣化したレンガの改修境界を明確に決定することが可能な熱風炉蓄熱用レンガの調査装置及びその方法を提供する。
【解決手段】熱風炉11の蓄熱用のレンガBを調査するための装置及び方法であって、レンガBのカナール穴Cに挿入可能で且つカナール穴Cの伸長方向と直交する断面形状が略円形の検知部2と、カナール穴Cの伸長方向と直交する方向の検知部2の最大外径よりも同方向の最大寸法が小さく且つカナール穴Cの伸長方向に伸長する条体で且つその伸長方向と交差する方向に変形可能な支持部3と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風炉の蓄熱用のレンガを調査するための装置であって、
前記レンガのカナール穴に挿入可能で且つ前記カナール穴の伸長方向と直交する断面形状が略円形の検知部と、
前記カナール穴の伸長方向と直交する方向の前記検知部の最大外径よりも同方向の最大寸法が小さく且つ前記カナール穴の伸長方向に伸長する条体で且つその伸長方向と交差する方向に変形可能な支持部と、を備えた熱風炉蓄熱用レンガの調査装置。
【請求項2】
前記支持部は、筒状部材の内穴内に挿通され、
前記筒状部材は、前記カナール穴に挿入可能で且つ伸長方向と直交する方向の断面形状がリング状で且つ前記検知部の最大外径よりも最大外径が小さく且つ前記支持部の伸長方向に移動可能である、請求項1に熱風炉蓄熱用レンガの調査装置。
【請求項3】
前記筒状部材は、伸長方向の一方又は双方の端部の外径が最大外径よりも小さい、請求項2に記載の熱風炉蓄熱用レンガの調査装置。
【請求項4】
前記筒状部材は前記支持部の伸長方向に並べて配設され、隣接する筒状部材同士が径方向所定位置で互いに係合する、請求項2に記載の熱風炉蓄熱用レンガの調査装置。
【請求項5】
前記検知部を前記支持部ごと前記カナール穴に送給したりカナール穴から抜去したりする送給装置と、
前記検知部をカナール穴に送給できなくなるまでの検知部及び支持部の挿入長さを計測する計測装置と、
前記熱風炉の炉底を移動するための移動装置と、
前記送給装置、計測装置、及び移動装置を遠隔操作可能とする遠隔操作装置と、を備えた、請求項1に記載の熱風炉蓄熱用レンガの調査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の熱風炉蓄熱用レンガの調査装置を用いて、前記検知部を前記カナール穴に下方から挿入し、挿入可能な長さからカナール穴の詰まりの有無と詰まり位置を検出する熱風炉蓄熱用レンガの調査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風炉蓄熱用レンガの調査装置及びその方法、特に熱風炉の蓄熱室内に積み上げられているレンガの状態を調査するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉のような高温ガス(燃焼用空気)を必要とする設備では、蓄熱室を用いて高温の気体を発生させる熱風炉が設置されることが一般的である。熱風炉としては、気体が流通するカナール穴が設けられたギッターレンガ(以下、レンガ)を蓄熱室部分に積み上げて充填し、燃焼ガスなどの高温のガスとの熱交換によってレンガに蓄熱した熱を別の気体の昇温に用いる機構を有する設備が広く用いられる。この種の設備では、充填されたレンガが長年の使用によって劣化するため、レンガの交換を含む改修工事を定期的に行う必要がある。熱風炉蓄熱室の改修工事では、従来は積み上げられたレンガ全体を解体して積み直す方法が行われてきたが、近年は、積み上げられたレンガの中段以上又は上段のみを改修するような部分改修工事が一般的になっている。
【0003】
レンガの改修では、レンガの劣化、特にレンガの部分的な崩壊などによってカナール穴が詰まって圧力損失が大きくなり、燃焼ガスや燃焼用空気の流量が低下して高炉操業に必要な送風能力を維持できなくなったために改修に至ることが多い。レンガの詰まり状態を把握する方法としては、例えば、下記特許文献1に記載される方法が挙げられる。このレンガの詰まり状態検出方法は、定期的に圧力損失を測定し、この圧力損失から通気抵抗を求め、この通気抵抗から操業条件の差異による抵抗変化を除いて通気抵抗の経時変化を求め、この通気抵抗の変化に基づいてレンガの詰まり状態を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるレンガの詰まり状態検出方法では、積み上げられているレンガ全体の詰まり状態は把握できても、どのカナール穴が詰まっているかや高さ方向のどこで詰まっているかは把握することができない。すなわち、高さ方向に多数積み上げられているレンガのどの位置のレンガがどの程度劣化しているかは把握できないので、改修範囲の決定に際して明確な改修境界を決定することが困難であった。したがって、過剰な範囲を改修すれば改修費用の増加を招き、過小改修であれば詰まりを残したまま再稼働することになり、改修後も圧力損失が高い状態が継続されてしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、劣化したレンガの改修境界を明確に決定することが可能な熱風炉蓄熱用レンガの調査装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る熱風炉蓄熱用レンガの調査装置は、熱風炉の蓄熱用のレンガを調査するための装置であって、前記レンガのカナール穴に挿入可能で且つ前記カナール穴の伸長方向と直交する断面形状が略円形の検知部と、前記カナール穴の伸長方向と直交する方向の前記検知部の最大外径よりも同方向の最大寸法が小さく且つ前記カナール穴の伸長方向に伸長する条体で且つその伸長方向と交差する方向に変形可能な支持部と、を備えたことを要旨とする。
【0008】
また、本発明の更なる態様は、前記支持部は、筒状部材の内穴内に挿通され、前記筒状部材は、前記カナール穴に挿入可能で且つ伸長方向と直交する方向の断面形状がリング状で且つ前記検知部の最大外径よりも最大外径が小さく且つ前記支持部の伸長方向に移動可能であることを特徴とする。
本発明の更なる態様は、前記筒状部材は、伸長方向の一方又は双方の端部の外径が最大外径よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
本発明の更なる態様は、前記筒状部材は前記支持部の伸長方向に並べて配設され、隣接する筒状部材同士が径方向所定位置で互いに係合することを特徴とする。
本発明の更なる態様は、前記検知部を前記支持部ごと前記カナール穴に送給したりカナール穴から抜去したりする送給装置と、前記検知部をカナール穴に送給できなくなるまでの検知部及び支持部の挿入長さを計測する計測装置と、前記熱風炉の炉底を移動するための移動装置と、前記送給装置、計測装置、及び移動装置を遠隔操作可能とする遠隔操作装置と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る熱風炉蓄熱用レンガの調査方法は、上記の熱風炉蓄熱用レンガの調査装置を用いて、前記検知部を前記カナール穴に下方から挿入し、挿入可能な長さからカナール穴の詰まりの有無と詰まり位置を検出することを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱風炉蓄熱用レンガの調査装置及びその方法によれば、積み上げられたレンガのカナール穴に検知部を支持部ごと挿入し、その挿入可能な長さから、そのカナール穴の詰まりの有無と高さ方向のどの位置で詰まっているかを検出することができる。したがって、高さ方向に多数積み重ねられたレンガのうち、どのレンガがどの位置で劣化しているかを明確に把握することができ、その結果、劣化したレンガの改修境界を明確に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の熱風炉蓄熱用レンガの調査装置及びその方法が適用された熱風炉の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の熱風炉に充填されたレンガの平面図である。
【
図3】
図1の熱風炉に用いられた熱風炉蓄熱用レンガの調査装置の概略構成図である。
【
図4】本発明の調査装置に適用可能な検知部及び支持部と筒状部材の一例を示す一部断面正面図である。
【
図5】本発明の調査装置に適用可能な検知部及び支持部と筒状部材の他の例を示す一部断面正面図である。
【
図6】本発明の調査装置に適用可能な検知部及び支持部と筒状部材の更に他の例を示す一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の熱風炉蓄熱用レンガの調査装置及びその方法の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0014】
図1は、この実施形態の蓄熱用レンガの調査装置及びその方法が適用された熱風炉11の概略構成図であり、高炉に用いられる一般的な熱風炉の全体図である。熱風炉11は、燃焼室12と蓄熱室13を備えて構成され、両室は上部で連通されている。燃焼室12の下部にはバーナ14が設けられており、このバーナ14で可燃性ガスと空気を燃焼させて高温の燃焼ガスとする。一方、蓄熱室13の下部には、レンガ(ギッターレンガ)Bが積み上げられている。この例では、蓄熱室13の炉底に複数の支柱15が立設され、この支柱15の上方に板状の受け金物16が搭載固定され、この受け金物16の上にレンガBが多数積み上げられている。
図2には、このレンガBの平面図を示す。このレンガBには、積み上げ状態で上下方向に貫通するカナール穴Cが複数設けられており、積み上げた状態でカナール穴C同士が上下に連通する。すなわち、カナール穴Cは上下方向に伸長している。
【0015】
レンガBは、1段当たり1~1000個程度緊密に並べられ、それが高さ方向に100~300段程度積み上げられている。そのため、蓄熱室13の高さは大きいもので40m程度にもなるが、積み上げられたレンガBを上部から下部まで貫通するカナール穴Cを気体が抵抗なく通るように設計されている。このカナール穴Cを燃焼ガスが通過する際、レンガBのレンガ部Bbに熱が蓄えられる。高炉への送風時には、大量の空気をカナール穴C内に通して熱を奪い、1200℃程度まで昇温させる。しかし、長年使用した熱風炉11では、蓄熱室上部を覆うドームレンガやギッターレンガBそのものが劣化・崩壊し、レンガ屑がカナール穴C内に落下して詰まる現象が発生する。カナール穴Cが詰まると、前述のように圧力損失が大きくなるので、このカナール穴Cの詰まりを検出する手段が必要である。
【0016】
支柱15で支持される受け金物16と炉底の間には、燃焼ガスや空気の流路となる空間部が形成されている。この実施形態の熱風炉蓄熱用レンガの調査装置1は、この空間部内を炉底に沿って移動するように構成されている。
図3は、この調査装置1の概略構成図である。この調査装置1の概要を説明すると、炉底を移動しながら積み上げられたレンガBのカナール穴Cに下方から探査子を挿入する。そして、探査子が貫通するかどうかでカナール穴Cの詰まりの有無を検出すると共に、探査子が貫通できなかった場合に、その挿入長さからカナール穴Cの詰まりの高さ方向の位置を検出する。この調査装置1では、カナール穴Cの詰まりの探査子としてカナール穴Cに挿入可能な検知部2と、この検知部2を支持してカナール穴C内に差し込んでいくための支持部3を備えて構成される。この実施形態の検知部2は、カナール穴Cに挿入可能な大きさの球体で構成される。この検知部2は、カナール穴Cに挿入可能な形状であれば球体でなくともよいが、後述するように、カナール穴Cの詰まりの程度を規定するためにカナール穴Cへの挿入方向、すなわちカナール穴Cの伸長方向と直交する方向の断面形状を略円形とする。すなわち、この円形断面の外径を大きくするほど、カナール穴Cの狭小化の程度、つまり詰まりの程度を厳しく評価することができる。
【0017】
支持部3は、検知部2を支持し且つ検知部2をカナール穴C内に差し込んでいくのに必要な剛性を有する条体(すじ状のもの)で構成される。したがって、この支持部3はカナール穴Cの伸長方向に伸長し且つ積み上げられたレンガBの高さに相当する長尺な条体である。また、この支持部3は、検知部2を支持しながらカナール穴C内に差し込んでいく際に検知部2より先にカナール穴Cの詰まり部分に当接してはいけないので、カナール穴Cの伸長方向と直交する方向の検知部2の最大外径よりも同方向の最大寸法が小さく設定される。同時に、この支持部3(実質的には検知部2の高さ方向寸法を含む)の挿入長さでカナール穴Cの詰まりの高さ方向の位置を検出するので、伸長方向に伸縮しないことが求められる。一方、長尺な支持部3をまっすぐに維持した状態でレンガB下の空間部内を移動することは困難なので、この支持部3は伸長方向と交差する方向に変形可能である必要がある。すなわち、調査装置1上では、支持部3を巻き取ったり折り曲げたりした状態で収容し、検知部2をカナール穴C内に挿入して差し込んでいくときに支持部3を伸ばしながらカナール穴C内に送給する。このような特性を有する支持部3には、一例として、直線状態への復元性に優れたワイヤロープなどが適用可能である。
【0018】
この実施形態では、長尺な支持部3は巻き取りドラム4に巻き取られて調査装置1内に収容されている。この巻き取りドラム4は、図示しない駆動機構によって回転駆動されることで支持部3を巻き取ったり巻き出したりすることができ、これにより検知部2をカナール穴Cに送給したりカナール穴Cから抜去したりする送給装置を構成している。この巻き取りドラム4の上方には、円筒部材からなるガイド5が立設され、このガイド5の内部を通って支持部3の上端部が上向きに突出し、その上端に球体からなる検知部2が取り付けられている。このガイド5の上端の更に上方には、対向する2個1対のローラ6が支持部3を挟みつけるように配設されており、各ローラ6の外周面は条体で構成される支持部3の外周面に当接されている。したがって、このローラ6は、支持部3の巻き出し(巻き取り時も同様)に伴って回転するので、図示しない回転量検出装置によって回転量を検出することで支持部3の巻き出し量を検出することができる。このように支持部3の巻き出し量を検出することで、支持部3(検知部2を含む)のカナール穴C内への挿入長さを検出する計測装置が構成される。なお、支持部3の巻き出し量は巻き取りドラム4の巻き出し方向への回転量でも検出することが可能である。
【0019】
また、この調査装置1の下部には、炉底を移動するための車輪7が設けられており、図示しない駆動機構によって回転駆動されることで、調査装置1を炉底に沿って移動させる移動装置を構成している。なお、この車輪7にはクローラを取り付けてもよい。また、この調査装置1の上部には、検知部2と共に上方を撮像するビデオカメラ17が配設されている。このビデオカメラ17は、検知部2と共にカナール穴C(実質的には受け金物16に設けられたカナール穴C)を撮像し、検知部2の挿入対象となるカナール穴Cを検出するためのものである。このようにすることで、このビデオカメラ17で撮像されているカナール穴Cに検知部2を正確に挿入することができる。そして、この調査装置1には、ビデオカメラ17を含めて、送給装置(巻き取りドラム4の駆動機構)や計測装置(ローラ6の回転量検出装置)、移動装置(車輪7の駆動機構)を遠隔操作するための遠隔操作装置8が設けられている。この遠隔操作装置8は無線送受信装置を備え、この無線送受信装置を介してそれぞれの駆動機構や検出装置、ビデオカメラ17などの動作状態を遠隔操作することができる。
【0020】
なお、この実施形態では、ビデオカメラ17を調査装置1に搭載しているが、ビデオカメラ17は調査装置1と別置きであってもよい。また、カメラによる撮像画像に代えて、周知の位置計測装置を用い、検知部2の位置をカナール穴Cの位置に合わせるようにしてもよい。そして、このような装置を用いれば、装置の耐熱温度以下であれば、遠隔操作によって操業中にもカナール穴Cの調査を行うことができ、作業者の負担を減らすと共に調査の効率化も可能である。この実施形態の装置構成は一例であり、本発明に係る調査装置1は様々に設計可能である。例えば、調査装置1を受け金物16から吊り下げて水平方向に移動できるようにしてもよい。また、検知部2及び支持部3で構成される探査子を複数設けて、複数のカナール穴Cの調査を同時に行えるようにしてもよい。
【0021】
先に概説したように、支持部3を巻き出すことで検知部2をカナール穴C内で下方から上方に送給し、カナール穴Cの内部に詰まりが存在する場合は検知部2がそれ以上進まなくなるので、詰まりの位置を検出することができる。すなわち、詰まりに至るまでの支持部3の挿入長さがカナール穴Cの下端(実質的には受け金物16の下端)からの距離になる。その後、支持部3を巻き取って検知部2をカナール穴Cから抜去すれば、そのカナール穴Cの調査が完了する。この一連の作業を調査が必要なカナール穴Cに対して実施することで、レンガBの詰まり状態を把握することができる。ここでは、検知部2が通過できない状態を「詰まり」と規定する。この詰まりには、カナール穴Cが狭くなっている箇所も含まれる。この実施形態では、カナール穴Cがどの程度詰まっているか、すなわち、どの程度カナール穴Cが狭くなっているかを調査することができる。
【0022】
前述のようにカナール穴Cの伸長方向と直交する方向の検知部2の断面形状は略円形とする。検知部2の水平断面を円形とすることで、カナール穴C内での検知部2の向きに関わらず、検知部2の外径がカナール穴Cを通過するかどうかでカナール穴C内の空隙の大きさを検知することができる。気体が流通するカナール穴C内の空隙の大きさが検知部2の外径よりも小さいところで、検知部2をそれ以上差し込むことができなくなる。したがって、検知部2の外径を変更することで、カナール穴C内の空隙は、その部位を通過できる検知部2の外径より大きく、通過できない検知部2の外径より小さいと推定でき、カナール穴Cの狭小化の程度を推定できる。また、検知部2の外径に依存して、支持部3(検知部2を含む)の挿入長さが変化すると考えられる。すなわち、検知部2の外径が大きいほど、支持部3の挿入長さが短くなる可能性が高まる。この傾向を利用すれば、或る外径の検知部2で複数のカナール穴Cの調査を行った場合、挿入長さの平均値の小さい方が挿入長さの平均値の大きいものよりカナール穴Cが狭小化していると推定できる。また、同一のカナール穴Cに対して複数種の外径の検知部2で調査を行えば、そのカナール穴Cがどの位置でどの程度狭小化しているかを評価できる。カナール穴Cが狭小化しているほど、通気抵抗(圧力損失)が大きくなるので、カナール穴Cに許容される圧力損失に応じて検知部2の外径を設定することにより、その挿入長さによって圧力損失が規定値を上回る位置を推定できる。したがって、この圧力損失が規定値を上回る位置を改修境界として、それより上方のレンガBを改修範囲とすることができる。熱風炉11や操業条件に応じて許容できる圧力損失は異なるが、一般に検知部2の外径はカナール穴Cの内径の50%以上80%以下とすることが好ましい。
【0023】
支持部3は、検知部2をカナール穴C内に送給できる剛性を備えていればよい。一方で、支持部3を収容するためには、伸長方向と交差する方向に容易に変形できる方がよい。検知部2を差し込む際の支持部3の変形のしにくさと、調査装置1内に収容するための変形のしやすさを両立させる手段として、支持部3を筒状部材9の内穴9a内に挿通させてもよい。
図4は、
図3の調査装置1に適用可能な検知部2及び支持部3と筒状部材9の一例を示す一部断面正面図である。この例では、筒状部材9はストレートな円筒部材で構成されている。この筒状部材9は、支持部3の伸長方向に沿って複数配設されており、支持部3と共にカナール穴Cに挿入可能で且つ支持部3の伸長方向に移動可能である。この筒状部材9はストレートな円筒部材であるから、伸長方向と直交する方向の断面形状はリング状である。そして、詰まっているカナール穴Cに検知部2が突き当たる以前に筒状部材9が突き当たらないように、筒状部材9の最大外径は検知部2の最大外径よりも小さい。
【0024】
この筒状部材9は、検知部2をカナール穴C内に送給する際に支持部3と一緒に巻き出される。その際、下側の筒状部材9は上側の筒状部材9に押し付けられ、それが順次繰り返されて上端の筒状部材9が検知部2に押し付けられるので、支持部3の巻き出し剛性が十分でなくとも、検知部2は筒状部材9に押されてカナール穴C内に送給される。一方、支持部3を巻き取る際には、支持部3に沿って移動することにより筒状部材9同士が離れて空隙ができれば支持部3を湾曲させたり屈曲させたりすることが可能となり、例えば巻き取りドラム4への巻取りが可能となる。この筒状部材9の長さは5~20cm程度が好適であり、強度及び剛性の高い材料でできたパイプ、例えば鋼管を用いることができる。
【0025】
図5は、
図3の調査装置1に適用可能な検知部2及び支持部3と筒状部材9の他の例を示す一部断面正面図である。この筒状部材9も、内穴9a内に支持部3が挿通されている。また、この筒状部材9は、支持部3の伸長方向に沿って複数配設されており、支持部3と共にカナール穴Cに挿入可能で且つ支持部3の伸長方向に移動可能である。また、詰まっているカナール穴Cに検知部2が突き当たる以前に筒状部材9が突き当たらないように、筒状部材9の最大外径は検知部2の最大外径よりも小さい。この筒状部材9も、カナール穴Cの伸長方向と直交する方向の断面形状はリング状であるが、その外径は、伸長方向中央部が最大であり、伸長方向両端に向けて次第に先細りのテーパ状になっている。すなわち、この例の筒状部材9は、伸長方向の双方の端部の外径が最大外径よりも小さい。このようにすることにより、筒状部材9同士が当接している箇所で筒状部材9の両端が径方向に張り出しにくくなる。これにより、カナール穴Cの内周面との接触の可能性を減らすことができ、支持部3及び筒状部材9の巻き出し及び巻き取りを容易に行うことができる。その結果、カナール穴Cの調査効率が大幅に向上した。
【0026】
図6は、
図3の調査装置1に適用可能な検知部2及び支持部3と筒状部材9の更に他の例を示す一部断面正面図である。この筒状部材9も、内穴9a内に支持部3が挿通されている。また、この筒状部材9は、支持部3の伸長方向に沿って複数配設されており、支持部3と共にカナール穴Cに挿入可能で且つ支持部3の伸長方向に移動可能である。また、詰まっているカナール穴Cに検知部2が突き当たる以前に筒状部材9が突き当たらないように、筒状部材9の最大外径は検知部2の最大外径よりも小さい。この筒状部材9も、カナール穴Cの伸長方向と直交する方向の断面形状はリング状であるが、その外径は、図示下端部が最大であり、図示上端部に向けて次第に先細りのテーパ状になっている。すなわち、この例の筒状部材9は、伸長方向の一方の端部の外径が他方の端部の最大外径よりも小さい。更に、この例では、筒状部材9の図示下端部、すなわち外径が最大の伸長方向端部の径方向中央部に、下側の筒状部材9の上端、すなわち外径が最小の伸長方向端部が嵌入する凹部10が設けられている。したがって、上側の筒状部材9の下端部の凹部10内に下側の筒状部材9の上端部が嵌入し、これが支持部3の伸長方向に連続することで上下の筒状部材9が径方向の所定位置で係合する。これにより、筒状部材9同士が当接している箇所で筒状部材9の両端が径方向に張り出しにくくなる。したがって、カナール穴Cの内周面との接触の可能性を減らすことにより、支持部3及び筒状部材9の巻き出し及び巻き取りを容易に行うことができる。その結果、カナール穴Cの調査効率が大幅に向上した。
【0027】
このように、この実施形態では、積み上げられたレンガBのカナール穴Cに検知部2を支持部3ごと挿入し、その挿入可能な長さから、そのカナール穴Cの詰まりの有無と高さ方向のどの位置で詰まっているかを検出することができる。したがって、高さ方向に多数積み重ねられたレンガBのうち、どのレンガBがどの位置で劣化しているかを明確に把握することができ、その結果、劣化したレンガBの改修境界を明確に決定することができる。
【0028】
また、カナール穴C内に挿入可能な筒状部材9の内穴9a内に支持部3を挿通し、筒状部材9を支持部3の伸長方向に移動可能とすることで、検知部2を送給するのに必要な剛性を支持部3自体が有さない場合でも検知部2をカナール穴C内に送給することが可能となる。
また、筒状部材9の伸長方向の一方又は双方の端部の外径を最大外径よりも小さくすることにより、カナール穴Cの内周面と筒状部材9の接触の可能性を低くしてカナール穴Cの調査効率を向上することができる。
【0029】
また、支持部3の伸長方向に並べて配設される筒状部材9同士を径方向所定位置で互いに係合させることにより、カナール穴Cの内周面と筒状部材9の接触の可能性を低くしてカナール穴Cの調査効率を向上することができる。
また、検知部2を支持部3ごとカナール穴Cに送給する送給装置や支持部3の挿入長さを計測する計測装置、炉底を移動するための移動装置を遠隔操作可能とすることで、カナール穴Cの調査効率が向上すると共に作業者の負担が軽減される。
【0030】
以上、実施形態に係る熱風炉蓄熱用レンガの調査装置及びその方法について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 調査装置
2 検知部
3 支持部
4 巻き取りドラム(送給装置)
6 ローラ(計測装置)
7 車輪(移動装置)
8 遠隔操作装置
9 筒状部材
9a 内穴
11 熱風炉
13 蓄熱室
B レンガ(ギッターレンガ)
C カナール穴