(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137112
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240927BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20240927BHJP
B62D 7/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B62D6/00
A01B69/00 302
B62D7/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048500
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剣
(72)【発明者】
【氏名】新谷 晃市
(72)【発明者】
【氏名】西野 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】後 健蔵
【テーマコード(参考)】
2B043
3D034
3D232
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB11
2B043BA03
2B043BB01
2B043DA03
2B043DA13
2B043DA15
2B043DB12
2B043DC03
2B043ED01
3D034CA06
3D034CA10
3D034CB05
3D034CC06
3D034CC07
3D034CC08
3D034CC16
3D034CD03
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3D034CE12
3D232CC39
3D232CC50
3D232DA04
3D232DA06
3D232DA91
3D232DA96
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3D232EA01
3D232EA02
3D232EA04
3D232EA08
3D232EB02
3D232EB08
3D232EC20
3D232GG12
(57)【要約】
【課題】ユーザー等が機体状態と操向モードとの対応関係を自由に変更可能な作業車の提供。
【解決手段】機体と、機体に支持されるとともに操向可能な前走行装置と、機体に支持されるとともに操向可能な後走行装置と、操向操作を受け付ける操向操作具と、複数の操向モードにモード変更が可能であり、操向操作具が受け付けた操向操作に応じて前走行装置及び後走行装置のうちの少なくとも一方を操向する操向装置と、機体状態を取得する状態取得部と、機体状態と、機体状態に対応して用いるべき操向モードと、の対応関係を記憶する記憶部と、対応関係に基づいて、取得された機体状態に対応する操向モードへと操向装置をモード変更させる操向モード変更部と、受け付けた人為操作に基づいて、記憶部に記憶された対応関係を変更する変更部と、が備えられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に支持されるとともに操向可能な前走行装置と、
前記機体に支持されるとともに操向可能な後走行装置と、
操向操作を受け付ける操向操作具と、
複数の操向モードにモード変更が可能であり、前記操向操作具が受け付けた前記操向操作に応じて前記前走行装置及び前記後走行装置のうちの少なくとも一方を操向する操向装置と、
機体状態を取得する状態取得部と、
前記機体状態と、前記機体状態に対応して用いるべき前記操向モードと、の対応関係を記憶する記憶部と、
前記対応関係に基づいて、取得された前記機体状態に対応する前記操向モードへと前記操向装置をモード変更させる操向モード変更部と、
受け付けた人為操作に基づいて、前記記憶部に記憶された前記対応関係を変更する変更部と、が備えられている作業車。
【請求項2】
前記機体状態に、前記機体が前進可能な前進状態と、前記機体が後進可能な後進状態と、が含まれる請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記変更部は、前記後進状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記後走行装置のみを操向するRWSモードへ変更可能である請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記変更部は、前記後進状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記前走行装置のみを操向するFWSモードへ変更可能である請求項2に記載の作業車。
【請求項5】
前記変更部は、前記後進状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記前走行装置及び前記後走行装置を操向する4WSモードへ変更可能である請求項2に記載の作業車。
【請求項6】
前記機体に、圃場に対して作業を行う作業装置が備えられ、
前記機体状態に、前記作業装置が作業を行っている作業状態と、前記作業装置が作業を行っていない非作業状態と、が含まれる請求項1に記載の作業車。
【請求項7】
前記変更部は、前記非作業状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記後走行装置のみを操向するRWSモードへ変更可能である請求項6に記載の作業車。
【請求項8】
前記変更部は、前記非作業状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記前走行装置のみを操向するFWSモードへ変更可能である請求項6に記載の作業車。
【請求項9】
前記変更部は、前記非作業状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記前走行装置及び前記後走行装置を操向する4WSモードへ変更可能である請求項6に記載の作業車。
【請求項10】
原動機と、
前記原動機を始動する人為操作を受け付ける始動操作具と、
前記変更部による前記対応関係の変更のための人為操作を受け付ける選択操作具と、が備えられ、
前記始動操作具と前記選択操作具との両方が操作されたことに応じて前記変更部による前記対応関係の変更が可能な状態となるように構成されている請求項1から9の何れか一項に記載の作業車。
【請求項11】
前記変更部による前記対応関係の変更のための人為操作を受け付ける選択操作具が備えられ、
前記記憶部に、複数の前記対応関係が記憶されており、
前記選択操作具に、使用する前記対応関係を変更するための第一操作部と、使用する前記対応関係の変更を決定するための第二操作部と、が備えられている請求項1から9の何れか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された作業車(文献では「作業車両」)において、前走行装置(文献では「前車輪」)と後走行装置(文献では「後車輪」)との夫々が操向可能に構成されている。機体状態(文献では「作業機高さ」)に応じて、操向モードが、前走行装置のみを操向する操向モード(文献では「前輪操舵モード」)と、前走行装置と後走行装置との両方を操向する操向モード(文献では「四輪操舵モード」)と、に切替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に例示されたような従来の四輪操向可能な作業車では、複数の操向モードが機体状態に応じて切替可能な構成であっても、機体状態と、機体状態に応じて用いるべき操向モードと、の対応関係が固定されていた。このため、ユーザー等が機体状態と操向モードとの対応関係を変更したくても、対応関係は変更不能な構成であった。
【0005】
本発明の目的は、ユーザー等が機体状態と操向モードとの対応関係を自由に変更可能な作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車では、機体と、前記機体に支持されるとともに操向可能な前走行装置と、前記機体に支持されるとともに操向可能な後走行装置と、操向操作を受け付ける操向操作具と、複数の操向モードにモード変更が可能であり、前記操向操作具が受け付けた前記操向操作に応じて前記前走行装置及び前記後走行装置のうちの少なくとも一方を操向する操向装置と、機体状態を取得する状態取得部と、前記機体状態と、前記機体状態に対応して用いるべき前記操向モードと、の対応関係を記憶する記憶部と、前記対応関係に基づいて、取得された前記機体状態に対応する前記操向モードへと前記操向装置をモード変更させる操向モード変更部と、受け付けた人為操作に基づいて、前記記憶部に記憶された前記対応関係を変更する変更部と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、機体状態と、機体状態に応じて用いるべき操向モードと、の対応関係が記憶部に記憶されている。変更部は人為操作に基づいて当該対応関係を変更できる。そして記憶部は変更された対応関係を記憶できる。このことから、ユーザー等が機体状態と操向モードとの対応関係を、自由に変更できる。これにより、ユーザー等が機体状態と操向モードとの対応関係を自由に変更可能な作業車が実現される。
【0008】
本発明において、前記機体状態に、前記機体が前進可能な前進状態と、前記機体が後進可能な後進状態と、が含まれると好適である。
【0009】
本構成によって、ユーザー等が、前進状態と後進状態との夫々に応じて、使用を所望する操向モードを選択できる。
【0010】
本発明において、前記変更部は、前記後進状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記後走行装置のみを操向するRWSモードへ変更可能であると好適である。
【0011】
本構成であれば、オペレータ等が後進走行を行う際に、操向モードが自動的にRWSモードへ切替えられる。このため、オペレータ等は直感的な操作で後進走行時における操向を可能となり、後進走行が一層容易になる。
【0012】
本発明において、前記変更部は、前記後進状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記前走行装置のみを操向するFWSモードへ変更可能であると好適である。
【0013】
本構成であれば、オペレータ等が後進走行を行う際に、操向モードが自動的にFWSモードへ切替えられる。このため、オペレータ等は直感的な操作で後進走行時における操向を可能となり、後進走行が一層容易になる。
【0014】
本発明において、前記変更部は、前記後進状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記前走行装置及び前記後走行装置を操向する4WSモードへ変更可能であると好適である。
【0015】
本構成であれば、オペレータ等が後進走行を行う際に、操向モードが自動的に4WSモードへ切替えられる。このため、小回りが利く操向が可能となり、後進走行が一層容易になる。
【0016】
本発明において、前記機体に、圃場に対して作業を行う作業装置が備えられ、前記機体状態に、前記作業装置が作業を行っている作業状態と、前記作業装置が作業を行っていない非作業状態と、が含まれると好適である。
【0017】
本構成によって、ユーザー等が、作業状態と非作業状態との夫々に応じて、使用を所望する操向モードを選択できる。
【0018】
本発明において、前記変更部は、前記非作業状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記後走行装置のみを操向するRWSモードへ変更可能であると好適である。
【0019】
本構成であれば、オペレータ等が作業装置を停止する際に、操向モードが自動的にRWSモードへ切替えられる。このため、例えば作業装置の作業を伴う前進走行が終わった後に後進走行を行う際に、オペレータ等は直感的な操作で後進走行時における操向を可能となり、後進走行が一層容易になる。
【0020】
本発明において、前記変更部は、前記非作業状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記前走行装置のみを操向するFWSモードへ変更可能であると好適である。
【0021】
本構成であれば、オペレータ等が作業装置を停止する際に、操向モードが自動的にFWSモードへ切替えられる。このため、例えば作業装置の作業を伴う前進走行が終わった後に走行を行う際に、オペレータ等は直感的な操作で非作業状態時における操向を可能となり、非作業状態時における走行が一層容易になる。
【0022】
本発明において、前記変更部は、前記非作業状態に対応して用いるべき前記操向モードを、前記前走行装置及び前記後走行装置を操向する4WSモードへ変更可能であると好適である。
【0023】
本構成であれば、オペレータ等が作業装置を停止する際に、操向モードが自動的に4WSモードへ切替えられる。このため、例えば作業装置の作業を伴う前進走行が終わった後に走行を行う際に、小回りが利く操向を可能となり、非作業状態時における走行が一層容易になる。
【0024】
本発明において、原動機と、前記原動機を始動する人為操作を受け付ける始動操作具と、前記変更部による前記対応関係の変更のための人為操作を受け付ける選択操作具と、が備えられ、前記始動操作具と前記選択操作具との両方が操作されたことに応じて前記変更部による前記対応関係の変更が可能な状態となるように構成されていると好適である。
【0025】
本構成であれば、始動操作具と選択操作具との両方が操作されることによって、変更部による対応関係の変更が可能となる。始動操作具は、オペレータ等が原動機を始動する際に用いるものである。例えばオペレータが選択操作具のみを操作すると、意図せず対応関係が変更される虞が考えられるが、オペレータ等が対応関係を変更する際には、始動操作具と選択操作具との両方の操作が必要となる。これにより、オペレータ等が意図せず対応関係を変更してしまう虞が回避される。
【0026】
本発明において、前記変更部による前記対応関係の変更のための人為操作を受け付ける選択操作具が備えられ、前記記憶部に、複数の前記対応関係が記憶されており、前記選択操作具に、使用する前記対応関係を変更するための第一操作部と、使用する前記対応関係の変更を決定するための第二操作部と、が備えられていると好適である。
【0027】
本構成によって、オペレータ等は、機体状態に対応して用いるべき操向モードを第一操作部で選択でき、かつ、選択した操向モードを第二操作部で決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図6】機体状態と操向モードとの対応関係を示す図である。
【
図7】対応関係を変更する処理を示すフローチャート図である。
【
図8】向き修正モードの処理を示すフローチャート図である。
【
図9】向き修正モードの処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1~
図3において、「F」で示された矢印は前方向を示し、「B」で示された矢印は後方向を示し、「U」で示された矢印は上方向を示し、「D」で示された矢印は下方向を示し、「R」で示された矢印は右方向を示し、「L」で示された矢印は左方向を示している。
【0030】
〔トラクタの全体構成〕
図1~
図3に示すように、左右の前輪1、左右の後輪2によって、機体3が支持されている。機体3に運転部4が設けられている。運転部4に操向ハンドル20が備えられている。前輪1は特許請求の範囲に記載の『前走行装置』である。後輪2は特許請求の範囲に記載の『後走行装置』である。操向ハンドル20は特許請求の範囲に記載の『操向操作具』である。
【0031】
図1~
図3に示すように、機体3に、前部ミッションケース5と、後部ミッションケース6と、静油圧式の無段変速装置7と、機体フレーム8と、機体フレーム9と、エンジン10と、が備えられている。後部ミッションケース6の前部に無段変速装置7が連結され、チャンネル状の機体フレーム8が前部ミッションケース5と無段変速装置7とに亘って連結されている。左右の機体フレーム9が、前部ミッションケース5に連結されて前後方向に沿って配置されている。機体フレーム9に左右の前輪1が支持されている。左右の後輪2が、後部ミッションケース6に支持されている。エンジン10は特許請求の範囲に記載の『原動機』である。
【0032】
エンジン10は、前部ミッションケース5の前部及び機体フレーム9の上部に連結されている。エンジン10はボンネット11によって覆われている。エンジン10の動力が前部ミッションケース5の内部の伝動軸(不図示)及び伝動ギヤ(不図示)に伝達される。前部ミッションケース5と無段変速装置7とに亘って伝動軸(不図示)が接続され、エンジン10の動力が前部ミッションケース5から当該伝動軸を介して無段変速装置7に伝達される。
【0033】
前部ミッションケース5は、PTO軸17を有し、エンジン10からの動力を変速する。PTO軸17は、前部ミッションケース5から機体3の後端部まで延ばされる。前部ミッションケース5によって変速された動力は、無段変速装置7とPTO軸17とに分配される。
【0034】
無段変速装置7は、前進側及び後進側に無段階に変速可能に構成されている。無段変速装置7の動力が、後部ミッションケース6の内部の副変速装置(不図示)及び後輪デフ装置(不図示)を介して、左右の後輪2に伝達される。当該後輪デフ装置の直前から分岐された動力が、後部ミッションケース6と前部ミッションケース5とに亘って接続された伝動軸(不図示)を介して、前部ミッションケース5の前輪伝動用の伝動軸(不図示)から前輪デフ装置(不図示)に伝達されて、左右の前輪1に伝達される。
【0035】
後部ミッションケース6の左右側方の夫々に、左右の後伝動ケース18が備えられている。
図3の背面図では、左右の後伝動ケース18が、太線で囲まれ、かつ、灰色に色づけした状態で示されている。つまり、
図3の背面図は、左右の後伝動ケース18を明確に示すものである。後部ミッションケース6の左右両側部に、左右の後輪2への動力を出力する後走行出力部6Aが備えられている。左右の後伝動ケース18の夫々の横内端部18Aが後部ミッションケース6の後走行出力部6Aに連結される。左右の後伝動ケース18の夫々の機体横外部は下方に延ばされ、後伝動ケース18の横外端部18Bが後輪2に連結される。これにより、左右の後伝動ケース18の夫々は、後部ミッションケース6から出力された動力を左右の後輪2に伝達する。後部ミッションケース6から出力された動力は、後走行出力部6Aから後伝動ケース18の内部の伝動軸(不図示)を介して後輪2へ伝達される。これにより、左右の後輪2は回転する。後伝動ケース18は、後走行出力部6Aに連結される上連結部が、後輪2に連結される下連結部よりも高い位置に位置するように構成されている。
【0036】
前部ミッションケース5の前方に第一前伝動ケース19Aが備えられ、第一前伝動ケース19Aは機体横方向に沿って延びる。また、第一前伝動ケース19Aの左右側方の夫々に、左右の第二前伝動ケース19Bが備えられている。
図2の正面図では、第一前伝動ケース19Aの前方に位置する他の部材を透過させた状態で、第一前伝動ケース19Aが太線で明確に示されている。また、
図2の正面図では、左右の第二前伝動ケース19Bが、太線で囲まれ、かつ、灰色に色づけした状態で示されている。
【0037】
左右の第二前伝動ケース19Bの夫々の機体横内端部が第一前伝動ケース19Aの機体横外端部に連結される。左右の第二前伝動ケース19Bの夫々の機体横外部は下方に延ばされ、第二前伝動ケース19Bの機体横外端部が前輪1に連結される。前部ミッションケース5の前輪伝動用の動力が、第一前伝動ケース19Aの内部の前輪デフ装置(不図示)及び伝動軸(不図示)と、第二前伝動ケース19Bの内部の伝動ギヤ(不図示)と、を介して前輪1に伝達される。これにより、左右の前輪1は回転する。第二前伝動ケース19Bは、第一前伝動ケース19Aの機体横外端部に連結される部分が、前輪1に連結される部分よりも高い位置に位置するように構成されている。
【0038】
このように、本実施形態に示されるトラクタは、いわゆる『ハイクリアランス』と呼ばれる構成のトラクタである。
図2及び
図3に示すように、左右の後伝動ケース18が後部ミッションケース6の左右両側部から下方に延ばされるとともに、第二前伝動ケース19Bが第一前伝動ケース19Aの左右両端部から下方に延ばされている。つまり、本発明の走行装置は、機体正面視及び機体背面視において略門型形状に形成されている。このため、機体3の下方空間に、生育中の作物がそのまま植立できる空間が存在する。また、左右の前輪1は第一前伝動ケース19Aの縦軸芯まわりに揺動し、左右の後輪2は後伝動ケース18の縦軸芯まわりに揺動する。本実施形態のトラクタは四輪操舵を可能である。本実施形態のトラクタは、特に、圃場における畝間の中耕作業等に適している。
【0039】
図1~
図3に示すように、運転部4の側部に、人為操作を受け付ける切替操作具50が備えられている。切替操作具50は特許請求の範囲に記載の『選択操作具』である。
【0040】
機体3の後端部(後部ミッションケース6の後下部)に、三点リンク機構12が上下揺動可能に連結され、三点リンク機構12は作業装置を昇降させる。トラクタに装着される作業装置として、例えば、カルティベータ、ディスクハロー、パワーハロー、畝間の中耕除草管理機、播種装置、プランタ、施肥装置、切葉装置、摘芯装置、散布装置、畝立装置、マルチャー、ロータリーレーキ、テッダー、及び、草刈装置等であって良い。
【0041】
三点リンク機構12に、単一のトップリンク13と、左右のロアリンク14と、上下に揺動操作される左右のリフトアーム15と、が備えられている。ロアリンク14は機体3の後端部に上下揺動可能に連結されている。右のリフトアーム15と右のロアリンク14とに亘って、連係ロッド16が接続されている。左右のリフトアーム15が上下に揺動操作されることによって、左右のロアリンク14が上下に揺動し、作業装置が昇降操作される。
【0042】
PTO軸17が機体3の後端部に備えられている。PTO軸17は、エンジン10からの回転力を、ユニバーサルジョイント(不図示)を介して作業装置へ伝達する。PTO軸17は、最下降状態のロアリンク14よりも高い位置に設けられ、回転動力を出力する。
【0043】
〔四輪ステアリング機構の説明〕
図4に基づいて、本実施形態におけるステアリング機構の油圧回路を説明する。この油圧回路は、
図1~
図3に示す前輪1及び後輪2の操向操作に用いられる作動油の模式的な回路である。
【0044】
作動油が作動油貯留部21に貯留される。作動油ポンプ22は作動油貯留部21の作動油を吸引可能に構成される。この作動油に作動油ポンプ22の吸引力が作用すると、作動油に含まれる不純物がオイルフィルタ21Aによって取り除かれる。そして作動油が、吸引油路22iを経由して作動油ポンプ22に吸引され、吐出油路22fを経由してパワーステアリングユニット23とへ吐出される。
【0045】
パワーステアリングユニット23に、吐出油路22fと戻り油路23aとが接続される。吐出油路22fは作動油ポンプ22の吐出口と直結するため、作動油ポンプ22が作動した状態で、吐出油路22fにおける作動油の圧力は戻り油路23aにおける作動油の圧力よりも高い。このため、吐出油路22fが入り側の油路であって、戻り油路23aが戻り側の油路である。
【0046】
操向ハンドル20の操作量に基づいて、パワーステアリングユニット23から前輪操向アクチュエータ27と後輪操向アクチュエータ28との夫々に作動油が供給される。パワーステアリングユニット23に、前輪操向バルブ24と、後輪操向バルブ25と、が接続されている。
【0047】
パワーステアリングユニット23と前輪操向バルブ24との夫々に第一中間油路26aが接続されている。パワーステアリングユニット23と後輪操向バルブ25との夫々に第二中間油路26bが接続されている。更に、前輪操向バルブ24と後輪操向バルブ25との夫々に第三中間油路26cが接続されている。つまり、前輪1と後輪2との少なくとも一方が操向操作されるとき、作動油の流れは、第一中間油路26a、第三中間油路26c、第二中間油路26bの順番、または、第二中間油路26b、第三中間油路26c、第一中間油路26aの順番で経由する。
【0048】
前輪操向バルブ24に第一前輪油路27aと第二前輪油路27bとが接続されている。前輪操向アクチュエータ27の一端部に第一前輪油路27aが接続され、前輪操向アクチュエータ27の他端部に第二前輪油路27bが接続される。
【0049】
前輪操向バルブ24は、例えばソレノイドバルブである。前輪操向バルブ24は、第一前輪油路27aと第一中間油路26aとを連通接続するとともに第二前輪油路27bと第三中間油路26cとを連通接続する接続状態と、第一前輪油路27aと第一中間油路26aとを遮断するとともに第二前輪油路27bと第三中間油路26cとを遮断する遮断状態と、に切替可能に構成されている。前輪操向バルブ24は、遮断状態のとき、第一中間油路26aと第三中間油路26cとを連通接続する。
【0050】
前輪操向バルブ24が接続状態であると、前輪操向アクチュエータ27のロッドが作動油の圧力によって左右方向に摺動可能となる。これにより、前輪1が左右に操向可能な状態となる。前輪操向バルブ24が遮断状態であると、前輪操向アクチュエータ27のロッドが摺動不能となる。これにより、前輪1が非操向状態となる。
【0051】
前輪1が左右一方に操向操作されるとき、第一前輪油路27aと第二前輪油路27bとの一方が供給油路となり、第一前輪油路27aと第二前輪油路27bとの他方が戻り油路となる。そして、前輪操向アクチュエータ27のロッドが左右一方(戻り油路の位置する側)に摺動し、前輪1の向きが変化する。
【0052】
後輪操向バルブ25に第一後輪油路28aと第二後輪油路28bとが接続されている。後輪操向アクチュエータ28の一端部に第一後輪油路28aが接続され、後輪操向アクチュエータ28の他端部に第二後輪油路28bが接続される。
【0053】
後輪操向バルブ25は、例えばソレノイドバルブである。後輪操向バルブ25は、下記のストレート接続状態と、下記のクロス接続状態と、下記の遮断状態と、に切替可能に構成されている。後輪操向バルブ25のストレート接続状態は、第一後輪油路28aと第二中間油路26bとが連通接続されるとともに第二後輪油路28bと第三中間油路26cとが連通接続される状態である。後輪操向バルブ25のクロス接続状態は、第一後輪油路28aと第三中間油路26cとが連通接続されるとともに第二後輪油路28bと第二中間油路26bとが連通接続される状態である。後輪操向バルブ25の遮断状態は、第一後輪油路28aが第二中間油路26bと第三中間油路26cとの何れに対しても遮断し、かつ、第二後輪油路28bが第二中間油路26bと第三中間油路26cとの何れに対しても遮断した状態である。後輪操向バルブ25は、遮断状態のとき、第二中間油路26bと第三中間油路26cとを連通接続する。
【0054】
後輪操向バルブ25が接続状態であると、後輪操向アクチュエータ28のロッドが作動油の圧力によって左右方向に摺動可能となる。これにより、後輪2が左右に操向可能な状態となる。後輪操向バルブ25が遮断状態であると、後輪操向アクチュエータ28のロッドが摺動不能となる。これにより、後輪2が非操向状態となる。
【0055】
後輪2が左右一方に操向操作されるとき、第一後輪油路28aと第二後輪油路28bとの一方が供給油路となり、第一後輪油路28aと第二後輪油路28bとの他方が戻り油路となる。そして、後輪操向アクチュエータ28のロッドが左右一方(戻り油路の位置する側)に摺動し、後輪2の向きが変化する。
【0056】
このように、パワーステアリングユニット23は、第一前輪油路27aと第二前輪油路27bとを介して前輪操向アクチュエータ27における左右夫々のシリンダ室内に対して作動油を供給可能に構成される。同様に、パワーステアリングユニット23は、第一後輪油路28aと第二後輪油路28bとを介して後輪操向アクチュエータ28における左右夫々のシリンダ室内に対して作動油を供給可能に構成される。
【0057】
パワーステアリングユニット23におけるスプール(不図示)及び前輪操向バルブ24におけるスプールの切替動作によって、第一前輪油路27aは吐出油路22fと戻り油路23aとの一方に連通接続され、第二前輪油路27bは吐出油路22fと戻り油路23aとの他方に連通接続される。
【0058】
パワーステアリングユニット23におけるスプール(不図示)及び後輪操向バルブ25におけるスプールの切替動作によって、第一後輪油路28aは吐出油路22fと戻り油路23aとの一方に連通接続され、第二後輪油路28bは吐出油路22fと戻り油路23aとの他方に連通接続される。
【0059】
第二前輪油路27bと戻り油路23aとが連通接続されると、第一前輪油路27aと吐出油路22fとが連通接続される。この場合、前輪操向アクチュエータ27におけるシリンダの左側室内に作動油が供給され、ピストンロッドが機体右側へ摺動する。また、第二前輪油路27bと吐出油路22fとが連通接続されると、第一前輪油路27aと戻り油路23aとが連通接続される。この場合、前輪操向アクチュエータ27におけるシリンダの右側室内に作動油が供給され、ピストンロッドが機体左側へ摺動する。
【0060】
第二後輪油路28bと戻り油路23aとが連通接続されると、第一後輪油路28aと吐出油路22fとが連通接続される。この場合、後輪操向アクチュエータ28におけるシリンダの左側室内に作動油が供給され、ピストンロッドが機体右側へ摺動する。また、第二後輪油路28bと吐出油路22fとが連通接続されると、第一後輪油路28aと戻り油路23aとが連通接続される。この場合、後輪操向アクチュエータ28におけるシリンダの右側室内に作動油が供給され、ピストンロッドが機体左側へ摺動する。
【0061】
これらのシリンダにおけるピストンロッドが左右に摺動することによって、前輪1と後輪2との夫々が上下向き軸芯回りに揺動可能に構成されている。
【0062】
パワーステアリングユニット23から戻り油路23aへ排出された作動油は、オイルフィルタ29によって不純物を取り除かれ、そして作動油貯留部21に戻される。
【0063】
〔制御系について〕
図5に基づいて、本実施形態の作業車の制御系に関して説明する。この制御系に、操向装置40と、前輪角検出部41と、後輪角検出部42と、作業状態検出部43と、変速状態検出部44と、記憶部45と、変更部46と、操向モード変更部47と、判定部48と、報知部49と、が備えられている。作業状態検出部43と、変速状態検出部44と、は特許請求の範囲に記載の『状態取得部』である。
【0064】
操向装置40は、操向ハンドル20の操作量と、オペレータが切替操作具50を用いて選択した操向モードと、に基づいて、パワーステアリングユニット23と前輪操向バルブ24と後輪操向バルブ25との夫々を制御する。これにより、操向装置40は、前輪1と後輪2との夫々を操向可能である。
【0065】
操向装置40に、電子制御ユニット40Aが備えられている。電子制御ユニット40Aは、マイクロプロセッサやDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)、ソフトウェア、及び、ロジック回路等で構成可能である。この電子制御ユニット40Aは、複数の操向モードを管理する。つまり、操向装置40は、前輪1と後輪2との夫々に対する操向制御を可能であるとともに、操向制御の態様が異なる複数の操向モードを有する。なお、操向装置40に、パワーステアリングユニット23と前輪操向バルブ24と後輪操向バルブ25とが含まれても良い。
【0066】
複数の操向モードに、FWSモード(前輪操舵モード)と、RWSモード(後輪操舵モード)と、4WSモード(四輪操舵モード)と、CWSモード(クラブ操舵モード)と、向き修正モードと、が含まれる。操向装置40は、これらの操向モードに切替え可能に構成されている。そして操向装置40は、夫々の操向モードに応じて、前輪1を操向するか否かと、後輪2を操向するか否かと、後輪2を操向する際に操向ハンドル20が回る向きに対して後輪2を左右何れに操向するかと、を切替え可能に構成されている。
【0067】
以下、FWSモードとRWSモードと4WSモードとCWSモードとについて説明する。向き修正モードに関しては後述する。
【0068】
切替操作具50に、自動ボタン50Aと、FWSボタン50Bと、RWSボタン50Cと、4WSボタン50Dと、CWSボタン50Eと、が備えられている。切替操作具50は、操向装置40の操向モードを、FWSモードとRWSモードと4WSモードとCWSモードとの夫々に切替える操作を受け付け可能に構成されている。自動ボタン50Aに関しては後述する。
【0069】
FWSモードは前輪1のみを操向する操向モードである。換言すると、FWSモードは、前輪1を操向可能状態に設定し、かつ、後輪2を非操向状態に設定する操向モードである。オペレータがFWSボタン50Bを押すと、操向装置40の操向モードがFWSモードになる。操向装置40の操向モードがFWSモードのとき、電子制御ユニット40Aは、前輪操向バルブ24を接続状態に切替え、後輪操向バルブ25を遮断状態に切替える。つまり、操向装置40は、前輪1に対する操向制御を可能であるとともに、後輪2を非操向状態に設定する。これにより、トラクタの前輪操舵が可能となる。
【0070】
RWSモードは後輪2のみを操向する操向モードである。換言すると、RWSモードは、前輪1を非操向状態に設定し、かつ、後輪2を操向可能状態に設定する操向モードである。オペレータがRWSボタン50Cを押すと、操向装置40の操向モードがRWSモードになる。操向装置40の操向モードがRWSモードのとき、電子制御ユニット40Aは、前輪操向バルブ24を遮断状態に切替え、後輪操向バルブ25をクロス接続状態に切替える。つまり、操向装置40は、後輪2に対する操向制御を可能であるとともに、前輪1を非操向状態に設定する。これにより、トラクタの後輪操舵が可能となる。
【0071】
4WSモードは、前輪1及び後輪2を操向可能状態に設定する操向モードである。オペレータが4WSボタン50Dを押すと、操向装置40の操向モードが4WSモードになる。操向装置40の操向モードが4WSモードのとき、電子制御ユニット40Aは、前輪操向バルブ24を接続状態に切替え、後輪操向バルブ25をクロス接続状態に切替える。つまり、操向装置40は、前輪1及び後輪2に対する操向制御を可能である。これにより、トラクタの四輪操舵が可能となる。
【0072】
CWSモードは、前輪1及び後輪2を操向可能状態に設定する操向モードであって、かつ、後輪2が4WSモードの場合の向きと反対側の向きに操向される操向モードである。換言すれば、CWSモードは、前輪1及び後輪2を同じ方向へ操向する操向モードである。オペレータがCWSボタン50Eを押すと、操向装置40の操向モードがCWSモードになる。操向装置40の操向モードがCWSモードのとき、電子制御ユニット40Aは、前輪操向バルブ24を接続状態に切替え、後輪操向バルブ25をストレート接続状態に切替える。つまり、操向装置40は、前輪1及び後輪2に対する操向制御を可能である。これにより、トラクタのクラブ操舵が可能となる。
【0073】
このように、操向装置40は、複数の操向モードにモード変更が可能であり、操向ハンドル20が受け付けた操向操作に応じて前輪1及び後輪2のうちの少なくとも一方を操向する。詳しくは、操向装置40は、前輪操向バルブ24及び後輪操向バルブ25の状態を切り換えることにより、モード変更を行う。そして、パワーステアリングユニット23が第一中間油路26aまたは第二中間油路26bに作動油を供給することにより、前輪1及び後輪2の操向が行われる。
【0074】
なお、操向装置40の操向モードがRWSモードまたは4WSモードのとき、電子制御ユニット40Aは、後輪操向バルブ25をストレート接続状態に切替える構成であっても良い。また、操向装置40の操向モードがCWSモードのとき、電子制御ユニット40Aは、後輪操向バルブ25をクロス接続状態に切替える構成であっても良い。この構成は、後輪操向アクチュエータ28が後伝動ケース18に対して前側に配置されているか、後伝動ケース18に対して後側に配置されているか次第で、適宜変更可能である。
【0075】
前輪角検出部41は、前輪1における中立の向きを基準として、前輪1の左右に対する向きを検出する。前輪1における中立の向きとは、機体3が直進または略直進する向きである。
【0076】
後輪角検出部42は、後輪2における中立の向きを基準として、後輪2の左右に対する向きを検出する。後輪2における中立の向きとは、機体3が直進または略直進する向きである。
【0077】
作業状態検出部43は、作業装置が圃場に対して作業を行っているか否かを検出する。作業状態検出部43は、作業装置に接続されたセンサであっても良いし、PTO軸17の回転を検出するセンサであっても良いし、三点リンク機構12の昇降を検出するセンサであっても良い。
【0078】
変速状態検出部44は、無段変速装置7における変速状態を検出可能に構成されている。無段変速装置7における変速状態は、機体3が前進する前進状態と、機体3が後進する後進状態と、エンジン10の動力を前輪1と後輪2との何れにも伝達しない中立状態と、を含む。このため、変速状態検出部44は、機体3が前進しているか、後進しているか、停止しているかを検出可能である。なお、変速状態検出部44は、例えば運転部4に設けられた主変速レバーの状態を検出する構成であっても良い。
【0079】
あるいは、変速状態検出部44は、後部ミッションケース6の内部の副変速装置(不図示)における変速状態を検出可能な構成であっても良い。副変速装置の変速状態は、作業装置での作業を伴って機体3が前進する低速状態と、作業装置での作業を伴わずに機体3が前進する高速状態と、エンジン10の動力を前輪1と後輪2との何れにも伝達しない中立状態と、機体3が後進する後進状態と、を含む。この構成であっても、変速状態検出部44は、機体3が前進しているか、後進しているか、停止しているかを検出可能である。なお、変速状態検出部44は、例えば運転部4に設けられた副変速レバーの状態を検出する構成であっても良い。
【0080】
記憶部45と、変更部46と、操向モード変更部47と、に関しては、自動ボタン50Aに基づく操向モードの自動変更機能とともに後述する。
【0081】
判定部48は、前輪角検出部41及び後輪角検出部42から前輪1及び後輪2の向きに関する情報を取得する。そして判定部48は、非操向状態に設定された前輪1または後輪2の向きが中立の向きに対して予め設定された閾値以上にずれている場合に、中立ずれ状態が発生したと判定する。詳細に関しては後述するが、判定部48は、中立ずれ状態を判定すると、電子制御ユニット40Aに報知信号を送信する。中立ずれ状態とは、前輪1と後輪2とのうち非操向状態に設定された一方の向きが中立の向きに対して予め設定された閾値以上にずれている状態である。
【0082】
報知部49は、中立ずれ状態が発生したと判定部48によって判定されたことに応じて発報する。換言すると、報知部49は、前輪角検出部41及び後輪角検出部42の検出結果に基づいて、前輪1と後輪2とのうち非操向状態に設定された一方の向きが中立の向きに対して予め設定された閾値以上にずれている中立ずれ状態が発生したことに応じて発報する。
【0083】
〔自動ボタンに基づく操向モードの自動変更機能について〕
オペレータが自動ボタン50Aを押すと、電子制御ユニット40Aは、操向モード変更部47からモード変更の信号を受け付けて、操向モードを変更するように構成されている。
【0084】
記憶部45(メモリの一例)は、データを記憶するデバイスであり、EEPROMや不揮発性RAM(フラッシュメモリ、FeRAM等)といった記憶デバイスで構成される。記憶部45には、機体状態と、当該機体状態に対応して用いるべき操向モードと、の対応関係が記憶されている。
【0085】
機体状態と操向モードとの対応関係の一例を
図6に示す。
図6には、機体状態として、変速の状態と、作業装置の状態と、が示されている。変速の状態は、変速状態検出部44の検出結果であって、前進状態と中立状態と後進状態とが示されている。つまり、機体状態に、機体3が前進可能な前進状態と、機体3が後進可能な後進状態と、が含まれる。作業装置の状態は、作業状態検出部43の検出結果であって、作業状態と非作業状態とが示されている。つまり、機体状態に、作業装置が作業を行っている作業状態と、作業装置が作業を行っていない非作業状態と、が含まれる。
図6には、第一対応関係と、第二対応関係と、第三対応関係と、が示されている。これらの対応関係が記憶部45に記憶される。
【0086】
第一対応関係と第二対応関係と第三対応関係との夫々において、変速の状態が前進状態であって、かつ、作業装置の状態が作業状態であるとき、操向装置40の操向モードはFWSモードになる。第一対応関係と第二対応関係と第三対応関係との夫々において、変速の状態が前進状態であって、かつ、作業装置の状態が非作業状態であるとき、操向装置40の操向モードは4WSモードになる。第一対応関係において、変速の状態が後進状態であるとき、操向装置40の操向モードは、作業装置の状態に関係なく、FWSモードになる。第二対応関係において、変速の状態が後進状態であるとき、操向装置40の操向モードは、作業装置の状態に関係なく、RWSモードになる。第三対応関係において、変速の状態が後進状態であるとき、操向装置40の操向モードは、作業装置の状態に関係なく、4WSモードになる。オペレータが自動ボタン50Aを押すと、これら3つの対応関係のうち選択・設定されている対応関係に基づいて、操向装置40の操向モードが変更される。詳細に関しては後述するが、本実施形態では、自動ボタン50Aに基づく操向モードの自動変更機能で用いる対応関係が、変更可能なように構成されている。
【0087】
操向モード変更部47は、作業状態検出部43の検出結果と、変速状態検出部44の検出結果と、に基づいて機体状態を取得する。そして、操向モード変更部47は、機体状態に対応する操向モードを記憶部45から読み出して操向装置40に操向モードを変更させる。つまり、操向モード変更部47は、機体状態と、機体状態に対応して用いるべき操向モードと、の対応関係に基づいて、取得された機体状態に対応する操向モードへと操向装置40をモード変更させる。
【0088】
詳細に関しては後述するが、変更部46は、切替操作具50が受け付けた人為操作に基づいて、記憶部45に記憶された対応関係を変更する。つまり、変更部46は、機体状態と、機体状態に対応して用いるべき操向モードと、の対応関係を変更可能である。
【0089】
〔機体状態に対応する操向モードを変更する機能に関して〕
上述したように、オペレータが自動ボタン50Aを押すと、操向装置40は、機体状態に応じて操向モードを変更する。機体状態と操向モードとの対応関係が記憶部45に記憶されている。本実施形態では、変更部46が、記憶部45に記憶された機体状態と操向モードとの対応関係(
図6)を変更可能なように構成されている。
【0090】
図7に基づいて、機体状態と操向モードとの対応関係を変更する機能について説明する。詳述はしないが、トラクタに、エンジン10を始動する人為操作を受け付ける始動操作具30が備えられている。まず、エンジン10が停止した状態で、オペレータが自動ボタン50Aを押しながら、始動操作具30でエンジン10の始動操作を行うと、
図7のフローチャートが開始される。つまり、エンジン10の始動操作具30と切替操作具50との両方が操作されたことに応じて、変更部46による対応関係の変更が可能な状態となるように構成されている。
【0091】
まず、エンジン10が始動した後に、変更部46は、自動ボタン50Aの押下が終了したか否かを判定する(ステップ#01)。つまり、オペレータが自動ボタン50Aを押しながらエンジン10の始動操作を行って、エンジン10が始動した後、オペレータが自動ボタン50Aから手を離したか否かが、ステップ#01で判定される。自動ボタン50Aが押されている間(ステップ#01:No)、変更部46はステップ#01の判定を繰り返す。
【0092】
自動ボタン50Aが押されてない状態になると(ステップ#01:Yes)、変更部46は、自動ボタン50Aが再度押されたか否かを判定する(ステップ#02)。ステップ#02における自動ボタン50Aが押されたか否かの判定は、エッジセンシティブ方式の判定が用いられる。変更部46は、自動ボタン50Aが押された際の立上りエッジを検出する。このため、自動ボタン50Aの押し始めのタイミングに、ステップ#02の判定がYesの判定となる。なお、自動ボタン50Aが長押しされている場合にはステップ#02の判定がNoの判定となる構成であっても良い。
【0093】
自動ボタン50Aが押されると(ステップ#02:Yes)、機体状態に対応して使用する操向モードの対応関係が変更される(ステップ#03)。このため、本実施形態では、変更部46は、オペレータがステップ#02に基づいて自動ボタン50Aを押す度に、機体状態に対応して使用する操向モードの対応関係を、第一対応関係→第二対応関係→第三対応関係の順に変更する。第三対応関係が選択されている状態で自動ボタン50Aが押されると、変更部46は、当該対応関係を、再び第一対応関係に設定する。つまり、自動ボタン50Aが押される度に、ステップ#02とステップ#03との処理がループし、対応関係が第一対応関係→第二対応関係→第三対応関係の順番でループしながら変更される。
【0094】
このように、切替操作具50は、変更部46による対応関係の変更のための人為操作を受け付ける。自動ボタン50Aは、機体状態に対応して使用する操向モードの対応関係を変更するために用いられる。自動ボタン50Aは特許請求の範囲に記載の『第一操作部』である。
【0095】
自動ボタン50Aが押されていない場合(ステップ#02:No)、変更部46は、CWSボタン50Eが予め設定された時間以上に亘って長押しされたか否かを判定する(ステップ#04)。予め設定された設定時間は、例えば1秒~5秒の範囲で適宜変更可能である。CWSボタン50Eが設定時間以上に長押しされていない場合(ステップ#04:No)、ステップ#02の処理に戻る。CWSボタン50Eが設定時間以上に長押しされた場合(ステップ#04:Yes)、
図7のフローチャートが終了する。
【0096】
このように、CWSボタン50Eは、対応関係の変更を決定するために用いられる。CWSボタン50Eは特許請求の範囲に記載の『第二操作部』である。
【0097】
〔向き修正モードの機能について〕
前輪操向バルブ24が遮断状態のとき、前輪操向アクチュエータ27のロッドが摺動不能となり、前輪1が非操向状態となる。また、後輪操向バルブ25が遮断状態のとき、後輪操向アクチュエータ28のロッドが摺動不能となり、後輪2が非操向状態となる。しかし、例えば後輪2が非操向状態に設定されていても、後輪2が圃場の凹凸面から衝撃を受けたり、後輪操向アクチュエータ28の作動油がリークしたりすると、後輪2が中立の向きに対して左右に向きずれする、『中立ずれ』が発生する虞が考えられる。
【0098】
向き修正モードは、非操向状態に設定された前輪1または後輪2の向きを中立の向きに変更するための操向モードである。
【0099】
前輪1の向きは前輪角検出部41によって検出され、後輪2の向きは後輪角検出部42によって検出される。判定部48は、非操向状態に設定された前輪1または後輪2の向きを前輪角検出部41または後輪角検出部42から取得する。そして判定部48は、取得した当該向きが中立の向きに対して予め設定された閾値以上にずれている場合に中立ずれ状態が発生したと判定する。
【0100】
そして、報知部49は、当該中立ずれ状態が発生したと判定されたことに応じて発報する。換言すると、報知部49は、前輪角検出部41と後輪角検出部42との検出結果に基づいて、前輪1と後輪2とのうち非操向状態に設定された一方の向きが中立の向きに対して予め設定された閾値以上にずれている中立ずれ状態が発生したことに応じて発報する。
【0101】
切替操作具50における、自動ボタン50Aと、FWSボタン50Bと、RWSボタン50Cと、4WSボタン50Dと、CWSボタン50Eと、の夫々に、例えばLED等の表示灯が組み込まれている。つまり、報知部49に、切替操作具50に装着された表示灯が含まれ、表示灯は、点滅によって発報するように構成されている。また、報知部49に、ブザーやスピーカ等による音声報知も含まれる。
【0102】
図8に基づいて、後輪2で中立ずれが発生したときの向き修正モードの処理を説明する。まず、中立ずれ状態が発生してから予め設定された時間が経過したタイミングが
図8に示すフローチャートのスタートポイントとなる。このタイミングで報知部49が発報するように構成されている。つまり、報知部49は、前輪1と後輪2とのうち非操向状態に設定された一方において中立ずれ状態が発生してから予め設定された時間が経過した後に発報するように構成されている(ステップ#11)。具体的に、報知部49は、FWSボタン50Bの表示灯を点滅させ、かつ、運転部4におけるブザーやスピーカ等から音声報知を出力する。
【0103】
ステップ#12では、機体3が停車したか否かが判定される。機体3の停車は、変速状態検出部44の検出結果に基づいて判定される。つまり、エンジン10の動力を前輪1と後輪2との何れにも伝達しない中立状態が変速状態検出部44によって検出されると、電子制御ユニット40Aは機体3の停車を判定する(ステップ#12:Yes)。機体3が停車していなければ(ステップ#12:No)、ステップ#11とステップ#12との処理が繰り返される。つまり、操向装置40が操向モードを向き修正モードへ切替える条件に、機体3が停車状態にあることが含まれる。
【0104】
ステップ#13では、FWSボタン50Bが押下されたか否かが判定される。FWSボタン50Bが押下されなければ(ステップ#13:No)、ステップ#11~ステップ#13の処理が繰り返される。つまり、切替操作具50のFWSボタン50Bは、操向装置40の操向モードを向き修正モードへ切替える操作を受け付ける。
【0105】
オペレータがFWSボタン50Bを押下すると(ステップ#13:Yes)、操向装置40の操向モードが向き修正モードへ切替えられる(ステップ#14)。操向装置40は、操向可能状態に設定された前輪1の向きが中立の向きではなくても、操向モードを向き修正モードへ切替え可能に構成されている。そして、操向装置40は、非操向状態に設定されていた後輪2を操向可能状態に設定し、操向可能状態に設定されていた前輪1を非操向状態に設定する。具体的には、電子制御ユニット40Aは、前輪操向バルブ24を遮断状態に切替え、後輪操向バルブ25をクロス接続状態(またはストレート接続状態)に切替える。そして、オペレータが操向ハンドル20を操作することによって、後輪2のみに対する操向制御が可能となる。
【0106】
つまり、操向装置40は、FWSモードのときに、後輪2の向きが中立の向きに対して予め設定された閾値以上にずれ、かつ、切替操作具50のFWSボタン50Bが操作されると、操向モードを向き修正モードへ切替える。
【0107】
ステップ#15において、後輪2の向きが中立の向きに直ったか否かが判定される。この判定は、判定部48によって行われても良いし、電子制御ユニット40Aによって行われても良い。後輪2の向きが中立の向きに直らない間(ステップ#15:No)は、ステップ#15の処理が繰り返される。
【0108】
オペレータが操向ハンドル20で後輪2を操向操作して、後輪2の向きが中立の向きになったら(ステップ#15:Yes)、操向装置40の操向モードがFWSモードへ切替えられる(ステップ#16)。つまり、操向装置40は、向き修正モードによる後輪2の中立の向きへの変更が完了したら、FWSモードに戻る。換言すると、操向装置40は、向き修正モードによる走行装置の中立の向きへの変更が完了したら、向き修正モードから元の操向モードに戻る。
【0109】
操向装置40の操向モードがFWSモードへ戻ると、電子制御ユニット40Aは、前輪操向バルブ24を接続状態に切替え、後輪操向バルブ25を遮断状態に切替える。これにより、後輪2が非操向状態に設定され、前輪1が操向可能状態に設定される。
【0110】
図9に基づいて、前輪1で中立ずれが発生したときの向き修正モードの処理を説明する。まず、中立ずれ状態が発生してから予め設定された時間が経過したタイミングが
図9に示すフローチャートのスタートポイントとなる。このタイミングで報知部49が発報するように構成されている。つまり、報知部49は、前輪1と後輪2とのうち非操向状態に設定された一方において中立ずれ状態が発生してから予め設定された時間が経過した後に発報するように構成されている(ステップ#21)。具体的に、報知部49は、RWSボタン50Cの表示灯を点滅させ、かつ、運転部4におけるブザーやスピーカ等から音声報知を出力する。
【0111】
ステップ#22では、機体3が停車したか否かが判定される。機体3の停車は、変速状態検出部44の検出結果に基づいて判定される。つまり、エンジン10の動力を前輪1と後輪2との何れにも伝達しない中立状態が変速状態検出部44によって検出されると、電子制御ユニット40Aは機体3の停車を判定する(ステップ#22:Yes)。機体3が停車していなければ(ステップ#22:No)、ステップ#21とステップ#22との処理が繰り返される。つまり、操向装置40が操向モードを向き修正モードへ切替える条件に、機体3が停車状態にあることが含まれる。
【0112】
ステップ#23では、RWSボタン50Cが押下されたか否かが判定される。RWSボタン50Cが押下されなければ(ステップ#23:No)、ステップ#21~ステップ#23の処理が繰り返される。つまり、切替操作具50のRWSボタン50Cは、操向装置40の操向モードを向き修正モードへ切替える操作を受け付ける。
【0113】
オペレータがRWSボタン50Cを押下すると(ステップ#23:Yes)、操向装置40の操向モードが向き修正モードへ切替えられる(ステップ#24)。操向装置40は、操向可能状態に設定された後輪2の向きが中立の向きではなくても、操向モードを向き修正モードへ切替え可能に構成されている。そして、操向装置40は、非操向状態に設定されていた前輪1を操向可能状態に設定し、操向可能状態に設定されていた後輪2を非操向状態に設定する。具体的には、電子制御ユニット40Aは、後輪操向バルブ25を遮断状態に切替え、前輪操向バルブ24を接続状態に切替える。そして、オペレータが操向ハンドル20を操作することによって、前輪1のみに対する操向制御が可能となる。
【0114】
つまり、操向装置40は、RWSモードのときに、前輪1の向きが中立の向きに対して予め設定された閾値以上にずれ、かつ、切替操作具50のRWSボタン50Cが操作されると、操向モードを向き修正モードへ切替える。
【0115】
ステップ#25において、前輪1の向きが中立の向きに直ったか否かが判定される。この判定は、判定部48によって行われても良いし、電子制御ユニット40Aによって行われても良い。前輪1の向きが中立の向きに直らない間(ステップ#25:No)は、ステップ#25の処理が繰り返される。
【0116】
オペレータが操向ハンドル20で前輪1を操向操作して、前輪1の向きが中立の向きになったら(ステップ#25:Yes)、操向装置40の操向モードがRWSモードへ切替えられる(ステップ#26)。つまり、操向装置40は、向き修正モードによる前輪1の中立の向きへの変更が完了したら、RWSモードに戻る。換言すると、操向装置40は、向き修正モードによる走行装置の中立の向きへの変更が完了したら、向き修正モードから元の操向モードに戻る。
【0117】
操向装置40の操向モードがRWSモードへ戻ると、電子制御ユニット40Aは、後輪操向バルブ25をクロス接続状態(またはストレート接続状態)に切替え、前輪操向バルブ24を遮断状態に切替える。これにより、前輪1が非操向状態に設定され、後輪2が操向可能状態に設定される。
【0118】
報知部49は、非操向状態に設定された前輪1または後輪2の中立からのずれの度合いに応じて発報の態様を変更するように構成されても良い。例えば、前輪1または後輪2の中立からのずれの度合いが大きいほど、RWSボタン50CまたはFWSボタン50Bの表示灯の点滅間隔が短くなったり、ブザーやスピーカ等の音量が大きくなったりしても良い。なお、報知部49は、非操向状態に設定された前輪1または後輪2の中立からのずれの度合いに関係なく一様に発報する構成であっても良い。
【0119】
報知部49は、非操向状態に設定された前輪1または後輪2の中立ずれ状態が発生しているときに、中立からずれている前輪1または後輪2の向きを中立の向きに変更するための操向ハンドル20の操作方向を案内するように構成されても良い。例えば、運転部4のメータパネルに液晶やOLEDの表示パネルが備えられ、その表示パネルに操向ハンドル20の操作方向が表示される構成であっても良い。
【0120】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0121】
(1)切替操作具50は、特許請求の範囲に記載の『選択操作具』である。切替操作具50は、ボタン式ではなく、レバー式であっても良い。この場合、自動ボタン50Aと、FWSボタン50Bと、RWSボタン50Cと、4WSボタン50Dと、CWSボタン50Eと、に相当する位置にレバーで切替え可能な構成であっても良い。
【0122】
(2)前輪1は特許請求の範囲に記載の『前走行装置』であって、後輪2は特許請求の範囲に記載の『後走行装置』である。この実施形態に限定されず、前走行装置はクローラであっても良いし、後走行装置はクローラであっても良い。
【0123】
(3)操向ハンドル20は、特許請求の範囲に記載の『操向操作具』である。この実施形態に限定されず、操向操作具は、例えばスティックレバーであっても良い。
【0124】
(4)上述のパワーステアリングユニット23と前輪操向バルブ24と後輪操向バルブ25とが備えられない構成であっても良い。この場合、操向ハンドル20からの操向操作を前輪1と後輪2とへ伝達可能な伝達機構が備えられても良い。当該伝達機構は、クラッチ、チェーン、ベルト、歯車等の機構を含んで良い。当該伝達機構も、特許請求の範囲に記載の操向装置に含まれても良い。
【0125】
(5)
図6には、第一対応関係と、第二対応関係と、第三対応関係と、を例示した。上述の実施形態では、4種の機体状態と操向モードとの対応関係が3組プリセットされており、用いられる対応関係がプリセットの中から選択(変更)される。この実施形態に限定されず、例えば、後進状態に対応してCWSモードを使用する対応関係が記憶部45に記憶されても良い。また、前進状態に対応して、FWSモード、RWSモード、4WSモードと、CWSモードと、の何れかを使用する対応関係が記憶部45に記憶され、変更部46がこれらの対応関係も含めて変更可能な構成であっても良い。加えて、後進状態に対応して使用する操向モードの対応関係が、作業装置の作業状態と作業装置の非作業状態とで各別に設定されている構成であっても良い。すなわち、1つの機体状態に対応する操向モードを個別に変更可能なように、変更部46が構成されてもよい。例えば変更部46は、後進状態に対応して用いるべき操向モードを、FWSモードへ変更可能であっても良いし、4WSモードへ変更可能であっても良い。また、例えば変更部46は、作業装置の非作業状態に対応して用いるべき操向モードを、FWSモードへ変更可能であっても良いし、4WSモードへ変更可能であっても良い。
【0126】
(6)
図7に基づいて上述した実施形態では、オペレータ等が、エンジン10を始動するための始動操作具30と、自動ボタン50Aと、を操作すると、変更部46による対応関係の変更が可能な状態となる。この実施形態に限定されず、例えば、オペレータ等が、始動操作具30と、切替操作具50における何れかのボタンと、を操作すると、変更部46による対応関係の変更が可能な構成であっても良い。また、オペレータ等が、始動操作具30以外の専用操作具と、切替操作具50における何れかのボタンと、を操作すると、変更部46による対応関係の変更が可能な構成であっても良い。更に、オペレータ等が、切替操作具50における二つのボタンを操作すると、変更部46による対応関係の変更が可能な構成であっても良い。
【0127】
(7)
図7に基づいて上述した実施形態では、自動ボタン50Aが特許請求の範囲に記載の『第一操作部』であって、CWSボタン50Eが特許請求の範囲に記載の『第二操作部』である。この実施形態に限定されず、第一操作部は切替操作具50における何れか一つのボタンであって、第二操作部は切替操作具50において第一操作部として割り当てられたボタン以外の何れか一つのボタンであっても良い。
【0128】
(8)上述した実施形態では、エンジン10が特許請求の範囲に記載の『原動機』である。この実施形態に限定されず、エンジン10に代えて電動モータが備えられても良い。つまり、特許請求の範囲に記載の作業車は、内燃機関が備えられていない電動作業車であっても良い。この場合、例えば機体状態に、バッテリの残量が含まれても良い。
【0129】
(9)変速状態検出部44は、特許請求の範囲に記載の『状態取得部』である。変速状態検出部44は、例えば車速を検出する構成であっても良い。この場合、前進状態と後進状態との夫々は、変速の状態ではなく、前輪1と後輪2との少なくとも一方の回転方向及び車速の状態であっても良い。
【0130】
(10)上述した実施形態では、特許請求の範囲に記載の『状態取得部』は、変速の状態(前進状態、中立状態、後進状態)と、作業装置の状態(作業状態、非作業状態)と、を含む。この実施形態に限定されず、状態取得部は、変速の状態と作業装置の状態との一方を取得しても良い。
【0131】
(11)上述した実施形態において、報知部49は、前輪1または後輪2において中立ずれ状態が発生してから予め設定された時間が経過した後に発報するように構成されている。この実施形態に限定されず、報知部49は、前輪1または後輪2において中立ずれ状態が発生すると、直ちに発報する構成であっても良い。また、報知部49は、中立ずれ状態が発生し、かつ、機体3が停車状態である場合に発報するように構成されても良い。更に、報知部49は、中立ずれ状態が発生し、かつ、作業装置が作業を行っていない非作業状態である場合に発報するように構成されても良い。
【0132】
(12)上述の実施形態において、エンジン10が停止した状態で、オペレータが自動ボタン50Aを押しながら、始動操作具30でエンジン10の始動操作を行うと、
図7のフローチャートが開始される。この実施形態に限定されず、例えばオペレータが自動ボタン50Aを押しながら始動操作具30を操作して電子制御ユニット40Aの電源投入を行えば、エンジン10が停止した状態であっても、
図7のフローチャートが開始される構成で
あっても良い。
【0133】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、作業車に適用可能である。このため、本実施形態に例示されたトラクタに限定されず、種々の収穫機(例えばコンバイン、トウモロコシ収穫機、サトウキビ収穫機、ポテト収穫機、ビート収穫機、ニンジン収穫機等)、田植機、施肥管理機、自走式散布機、自走式草刈機等に適用可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 :前輪(前走行装置)
2 :後輪(後走行装置)
3 :機体
10 :エンジン(原動機)
20 :操向ハンドル(操向操作具)
40 :操向装置
43 :作業状態検出部(状態取得部)
44 :変速状態検出部(状態取得部)
45 :記憶部
46 :変更部
47 :操向モード変更部
50 :切替操作具(選択操作具)
50A :自動ボタン(第一操作部)
50E :CWSボタン(第二操作部)